JP6007647B2 - イオン性ポリマーおよびその製造方法 - Google Patents
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Description
方法(1):1つのペンダント基に複数のイオン交換基を有するモノマーを合成し、該モノマーを、テトラフルオロエチレン(TFE)等と重合する方法(例えば、非特許文献1)。
(X1)−SO2F基を有するポリマーの前記−SO2F基を−SO2NH2基に変換する工程。
(X2)前記−SO2NH2基を有するポリマーにFSO2(CF2)3SO2Fを反応させ、前記−SO2NH2基同士を架橋しつつ、前記−SO2NH2基の一部を−SO2NHSO2(CF2)3SO2F基に変換する工程。
(X3)前記−SO2NHSO2(CF2)3SO2F基を−SO2NHSO2(CF2)3SO3H基に変換する工程。
(Y1)−SO2F基を有するポリマーの前記−SO2F基を−SO2NH2基に変換する工程。
(Y2)前記−SO2NH2基を有するポリマーにFSO2(CF2)3Iを反応させ、前記−SO2NH2基を−SO2NHSO2(CF2)3I基に変換する工程。
(Y3)前記−SO2NHSO2(CF2)3I基を−SO2NHSO2(CF2)3SO3H基に変換する工程。
(Z1)前記−SO2NH2基を有するポリマーに、過剰のFSO2(CF2)nSO2Fに例示されるFSO2基を少なくとも2個有する化合物を反応させ、前記−SO2NH2基を−SO2NHSO2(CF2)nSO2F基に変換する工程。
(Z2)前記−SO2NHSO2(CF2)nSO2F基を−SO2NHSO2(CF2)nSO3H基に変換する工程。
方法(2)で得られるポリマーは、実質的に架橋を有するため、溶剤への溶解性に劣る。そのため、該ポリマーの溶液化が難しく、キャスト法等のコーティング法を使用することによる電解質膜の薄膜化が困難である。
また、方法(2)および(4)で使用するFSO2(CF2)3SO2Fは、例えば、I(CF2)3Iの末端をSO2F基に変換することで合成される。I(CF2)3Iは、ICF2IにTFEを付加する方法で合成される(J.Org.Chem 69(7)2394(2004)等。)が、該方法ではI(CF2)2I、I(CF2)4I等が副生し、精製が困難である。特に、不純物としてFSO2(CF2)4SO2Fが含まれると、後述するように、該FSO2(CF2)4SO2Fは両端の官能基の反応性が等しいためにゲル化が生じやすくなる、さらにポリマーの含水率が過度に高くなる等の問題がある。
また、FSO2(CF2)3SO2Fは、FSO2(CH2)3SO2Fを電解フッ素化する方法でも合成できる。しかし、FSO2(CH2)3SO2Fの合成は多数の工程を要するし、かつ収率も高いとは言えず実用的とは言い難い。また、電解フッ素化の収率も低く、充分にフッ素化されていない不純物が残存し、精製が非常に困難である。このため、得られた材料を例えば燃料電池用電解質材料に使用した場合、耐久性が充分に発揮されない可能性がある。
(A)下式(1)で表される基を有する繰り返し単位を有するポリマーの前記式(1)で表される基を、下式(2)で表される基に変換する工程。
(B)前記工程(A)で得られたポリマーと下式(3)で表される化合物とを、前記式(2)で表される基に対する、前記式(3)で表される化合物のモル比が0.5〜20となるように反応させ、前記ポリマーの前記式(2)で表される基を下式(4)で表される基に変換する工程。
(C)前記工程(B)で得られた前記ポリマーの前記式(4)で表される基を下式(5)で表される基に変換する工程。
−SO2F ・・・(1)
−SO2NZ1Z2 ・・・(2)
FSO2(CF2)2SO2F ・・・(3)
−SO2N−(M+)SO2(CF2)2SO2F ・・・(4)
−SO2N−(M+)SO2(CF2)2SO2X−(M+)(SO2Rf)m ・・・(5)
(ただし、Z1およびZ2はそれぞれ独立に水素原子、1価の金属元素、および−Si(R)3からなる群から選ばれる基である。Rは水素原子、またはエーテル性酸素原子を有してもよい炭素数1〜12の1価の有機基であり、3つのRは互いに同じ基でもよく、異なる基でもよい。M+は水素イオン、1価の金属カチオン、または有機アミン由来の1価のカチオンである。Xは酸素原子または窒素原子である。mは、Xが酸素原子のときは0、Xが窒素原子であるときは1である。Rfは、1個以上のエーテル性酸素原子を有してもよい炭素数1〜10のペルフルオロアルキル基である。)
また、本発明のイオン性ポリマーは、高いイオン交換容量と低い含水率を両立できる。
(A)下記基(1)を有する繰り返し単位を有するポリマー(以下、「ポリマー(i)」という。)の基(1)を、下記基(2)に変換する工程。
(B)前記工程(A)で得られたポリマーと下記化合物(3)で表される化合物を反応させ、前記ポリマー(i)の基(2)を下記基(4)に変換する工程。
(C)前記工程(B)で得られた前記ポリマーの基(4)を下記基(5)に変換する工程。
−SO2F ・・・(1)
−SO2NZ1Z2 ・・・(2)
FSO2(CF2)2SO2F ・・・(3)
−SO2N−(M+)SO2(CF2)2SO2F ・・・(4)
−SO2N−(M+)SO2(CF2)2SO2X−(M+)(SO2Rf)m ・・・(5)
(ただし、Z1およびZ2はそれぞれ独立に水素原子、1価の金属元素、および−Si(R)3からなる群から選ばれる基である。Rは水素原子、またはエーテル性酸素原子を有してもよい炭素数1〜12の1価の有機基であり、3つのRは互いに同じ基でもよく、異なる基でもよい。M+は水素イオン、1価の金属カチオン、または有機アミン由来の1価のカチオンである。Xは酸素原子または窒素原子である。mは、Xが酸素原子のときは0、Xが窒素原子であるときは1である。Rfは、1個以上のエーテル性酸素原子を有してもよい炭素数1〜10のペルフルオロアルキル基である。)
ポリマー(i)の側鎖の基(1)を基(2)に変換し、基(2)を有するポリマー(以下、「ポリマー(ii)」という。)を得る。
Z1およびZ2の1価の金属元素としては、例えば、アルカリ金属が挙げられる。なかでも、入手の容易さ、経済性の観点ではナトリウムおよび/またはカリウム、溶媒への膨潤性・溶解性を必要とする場合はリチウムが好ましい。
Z1およびZ2の−Si(R)3としては、例えば、−Si(CH3)3等が挙げられる。
方法(α):基(2)のZ1およびZ2が水素原子、すなわち基(2)が−SO2NH2基である場合。
方法(β):基(2)のZ1およびZ2の少なくとも一方が、1価の金属元素および−Si(R)3からなる群から選ばれる基である場合。
以下、方法(α)および(β)のそれぞれについて詳細に説明する。
ポリマー(i)にアンモニアを接触させ、側鎖の基(1)を−SO2NH2基に変換する。ポリマー(i)にアンモニアを接触させる方法としては、例えば、ポリマー(i)にアンモニアを直接接触させる方法、ポリマー(i)を溶解したポリマー溶液にアンモニアを吹き込んでバブリングする方法、ポリマー(i)を溶媒に膨潤させた状態でアンモニアと接触させる方法等が挙げられる。
アンモニアを接触させる際の温度は、−80℃〜50℃が好ましく、−30℃〜30℃がより好ましい。
方法(β)としては、例えば、下記の方法(β1)および方法(β2)が挙げられる。
方法(β1):基(1)を有するポリマー(i)にNHZ11Z21(Z11およびZ21はそれぞれ独立に、水素原子、1価の金属元素および−Si(R)3からなる群から選ばれる基であり、少なくとも一方が1価の金属元素または−Si(R)3である。)を接触させ、基(1)を−SO2NZ11Z21基に変換する。
方法(β2):基(1)を有するポリマー(i)にアンモニアを接触させ、基(1)を−SO2NH2基に変換した後、さらに1価の金属元素の酸化物、水酸化物、炭酸塩、水素化物等を反応させる方法や、さらに(R)3SiNHSi(R)3を反応させる方法等により−SO2NZ11Z21基に変換する。ただし、−SO2NH2基を−SO2NZ11Z21基に変換する方法は、前記方法に限られるものではない。
方法(β2)においてポリマー(i)にアンモニアを接触させる方法としては、方法(α)で挙げた方法と同じ方法が挙げられる。
また、工程(A)で使用するポリマー(i)は、フッ素ガス等を使用して、予めポリマー末端の不安定基をフッ素化して安定基に変換しておくことが好ましい。これにより、得られるイオン性ポリマーの耐久性が向上する。
−(OCF2CFR1)aOCF2(CFR2)bSO2F ・・・(11)
−(OCF2CFR1)aOCF2(CFR2)bSO2NZ1Z2 ・・・(21)
(ただし、R1およびR2は、それぞれ独立にフッ素原子、塩素原子、または1個以上のエーテル性酸素原子を有してもよい炭素数1〜10のペルフルオロアルキル基である。aは、0、1、または2であり、bは、0〜6の整数である。Z1、Z2は前記のとおりである。)
R2は、フッ素原子または−CF3基が好ましい。
aは、0〜2が好ましい。
bは、1〜5が好ましい。
−O−(CF2)2SO2F、
−OCF2CF(CF3)O(CF2)2SO2F等。
CF2=CF−O−(CF2)2SO2F、
CF2=CF−OCF2CF(CF3)O(CF2)2SO2F等。
これらの中でも、得られたイオン性ポリマーの含水率を低減するためには側鎖の短いモノマーが好ましく、また、側鎖が有するエーテル性酸素原子が少ないモノマーが好ましい。これらの観点では、CF2=CF−O−(CF2)2SO2Fが好ましい。
また、ポリマー(i)としては、−CF2−O−(CF2)2SO2Fを有する繰り返し単位を有するポリマーも好ましく、エーテル性酸素原子が主鎖に直結しているモノマーよりも、立体障害の高い−CF2−基が主鎖に直結している方が硬いポリマー(i)が得られやすく、また特開昭58−96630号公報に記載されているように短い工程で収率良く合成でき、工業的に低コストとなる観点では、CF2=CF−CF2−O−(CF2)2SO2Fが特に好ましい。
他のモノマーとしては、例えば、テトラフルオロエチレン(TFE)、ヘキサフルオロプロピレン(HFP)、フッ化ビニリデン、クロロトリフルオロエチレン、トリフルオロエチレン、ビニルエーテル類(CF2=CF−O−C3F7、CF2=CF−O−CF2−CF(CF3)−O−C3F7、エチレン、プロピレン、1−ブテン、イソブチレン、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル等。)等が挙げられる。また、パーフルオロ(2,2−ジメチル−1,3−ジオキソール)、パーフルオロ(1,3−ジオキソール)、パーフルオロ(2,−メチル−1,3−ジオキソール)、パーフルオロ(2,−エチル−1,3−ジオキソール)、パーフルオロ(2,2−ジエチル−1,3−ジオキソール)、パーフルオロ(2−メチレン−4−メチル−1,3−ジオキソラン)、パーフルオロ(2−メチレン−4−エチル−1,3−ジオキソラン)、パーフルオロ(2−メチレン−4−ブチル−1,3−ジオキソラン)、2,2,4−トリフルオロ−5−トリフルオロメトキシ−1,3−ジオキソールなどの環状モノマーや、パーフルオロ(3−ブテニルビニルエーテル)、パーフルオロ[(1−メチル−3−ブテニル)ビニルエーテル]、パーフルオロ(アリルビニルエーテル)、1,1’−[(ジフルオロメチレン)ビス(オキシ)]ビス[1,2,2−トリフルオロエテン]等の環化重合性モノマーを使用してもよい。
なかでも、得られるポリマーの耐久性等の点から、パーフルオロモノマーが好ましく、共重合性の点からは特にTFEを使用するのが好ましい。
ポリマー(i)の重合方法は、公知の重合方法を採用できる。
ポリマー(ii)に化合物(3)を反応させ、基(2)を基(4)に変換したポリマー(以下、「ポリマー(iii)」という。)を得る。基(2)が基(21)である場合、下記基(41)を有する繰り返し単位を有するポリマー(iii)が得られる。
−(OCF2CFR1)aOCF2(CFR2)bSO2N−(M+)SO2(CF2)2SO2F ・・・(41)
(ただし、R1、R2、a、b、Z1、およびZ2は前記のとおりである。)
化合物(3)の純度としては、ガスクロマトグラフィーによる測定において、98%以上が好ましく、99%以上がより好ましく、99.5%以上がさらに好ましい。また、化合物(3)のプロトンNMRによる測定においては、重溶媒に含まれる溶媒由来のC−H結合以外のC−H結合のピークが非検出であることが好ましい。
非プロトン性極性溶媒とは、容易にプロトンを与えることのない溶媒である。非プロトン性極性溶媒としては、例えば、N,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)、N,N−ジメチルフォルムアミド(DMF)、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン(DMI)、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)、ジメチルスルホキシド、スルホラン、γブチロラクトン、アセトニトリル、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、CH3O(CH2CH2O)cCH3(ただし、cは1〜4の整数である。)等が挙げられる。中でもポリマーに対する親和性等の観点から、DMAc、DMF、DMI、NMP、アセトニトリルが好ましく、DMF、DMAc、アセトニトリルがより好ましい。
3級有機アミンとしては、例えば、N,N’−テトラメチルエチレンジアミン(TMEDA)、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン(1,4-Diazabicyclo[2.2.2]octane)等の3級アミン化合物等が挙げられる。
反応促進剤の使用量は、基(2)に対して、1〜20が好ましく、2〜5がより好ましい。反応促進剤の使用量が下限値以上であれば、高いイオン交換容量を有するイオン性ポリマーが得られやすい。反応促進剤の使用量が上限値以下であれば、過剰な試薬を効率良く除去・精製することができる。
工程(B)では、化合物(3)の加水分解等の副反応を抑制する観点から、非プロトン性極性溶媒および反応促進剤は脱水処理を施したものを使用することが好ましい。脱水処理としては、特に限定されず、例えば、モレキュラーシーブスを使用する方法が挙げられる。
工程(B)におけるポリマー(ii)と化合物(3)の反応の反応温度は、0〜150℃が好ましく、20〜80℃がより好ましい。前記反応温度が下限値以上であれば、反応効率が向上する。前記反応温度が上限値以下であれば、架橋反応や分解反応等の好ましくない副反応を抑制しやすい。
工程(B)で得られたポリマー(iii)の基(4)を基(5)に変換し、イオン性ポリマーを得る。基(4)が基(41)である場合、下記基(51)を有する繰り返し単位を有するイオン性ポリマーが得られる。
−(OCF2CFR1)aOCF2(CFR2)bSO2N−(M+)SO2(CF2)2SO2X−(M+)(SO2Rf)m ・・・(51)
(ただし、R1、R2、a、b、m、Z1、Z2、X−、M+、Rfは、前記のとおりである。)
基(5)のRfは、炭素数1〜10のペルフルオロアルキル基が好ましく、炭素数1〜4のペルフルオロアルキル基がより好ましい。
−O−(CF2)2SO2N−(M+)SO2(CF2)2SO2X−(M+)(SO2Rf)m、
−OCF2CF(CF3)O(CF2)2SO2N−(M+)SO2(CF2)2SO2X−(M+)(SO2Rf)m等。
方法(γ1):基(5)の末端が−SO2−O−M+基の場合。
方法(γ2):基(5)の末端が−SO2−N−M+(SO2Rf)基の場合。
ポリマー(iii)の基(4)の末端−SO2F基を、−SO2−O−M+基に変換する方法としては、例えば、水、または水とアルコール類(メタノール、エタノール等。)若しくは極性溶媒(ジメチルスルホキシド等。)の混合液を溶媒とするNaOH、KOH等の塩基性溶液を用いて加水分解する方法が挙げられる。これにより、基(4)の末端−SO2F基が、−SO3Na基、−SO3K基等に変換される。また、その後、塩酸、硝酸、硫酸等の酸の水溶液で処理することで、−SO3Na基、−SO3K基等を酸型化し、−SO3H基(スルホン酸基)に変換できる。
加水分解および酸型化処理の温度は、特に限定されるものではないが、10〜100℃が好ましく、50〜90℃がより好ましい。
ポリマー(iii)の基(4)の末端−SO2F基を、−SO2−N−M+(SO2Rf)基に変換する方法としては、米国特許5463005号明細書、Inorg.Chem.32(23)5007頁(1993年)に記載の方法等の公知の方法が使用できる。すなわち、ポリマー(iii)中の−SO2F基をスルホンアミド等と反応させ、塩基由来の塩型のスルホンイミド基に変換でき、その後にさらに塩酸や硫酸等の水溶液で酸型化することで酸型のスルホンイミド基に変換できる。また、ポリマー(iii)を、アンモニアと接触させて−SO2F基をスルホンアミド基に変換した後、アルカリ金属フッ化物や有機アミン等の塩基性化合物の存在下にトリフルオロメタンスルホニルフルオライド、ペンタフルオロエタンスルホニルフルオライド、ノナフルオロブタンスルホニルフルオライド、ウンデカフルオロシクロヘキサンスルホニルフルオライド等の−SO2F基を有する化合物と接触させることで変換できる。
さらに、化合物(3)は、合成の際に化合物(3)のC−F結合がC−H結合となった不純物が少ないため、高純度のものを得ることが容易である。そのため、優れた耐久性を有するイオン性ポリマーが得られることが期待できる。また、工程(A)〜(C)の前に、ポリマー(i)の不安定末端を、フッ素ガス等を使用して予めペルフルオロ末端の安定末端に変換できるので、より耐久性が優れたイオン性ポリマーが得られることが期待できる。
固体高分子電解質膜は、例えば、工程(B)で得られたポリマー(iii)を溶媒に溶解した溶液を使用したキャスト法で製膜する、ポリマー(iii)を溶融押出しする、ポリマー(iii)を加熱プレスする等の製膜方法でフィルム化した後に、工程(C)を行うことで得られる。また、ポリマー(i)を前記製膜方法でフィルム化した後に、工程(A)〜(C)を行うことでも得てもよい。また、工程(A)〜(C)を行うことで得られたイオン性ポリマーを前記製膜方法で成膜してもよい。
また、固体高分子電解質膜には、本発明のイオン性ポリマーに、ポリテトラフルオロエチレン多孔体、ポリテトラフルオロエチレン繊維(フィブリル)等を配合して補強してもよい。
TFEと、下式(m1)で表されるモノマーを重合することで得られた、−SO2F基が1.1mmol/g含まれているポリマーを、フッ素ガスと接触させてフッ素化し、安定化させたポリマー(以下、「ポリマー1」という。)を得た。
CF2=CF−OCF2CF(CF3)O(CF2)2SO2F ・・・(m1)
得られたポリマー1の10gを、CF3(CF2)5Hの500gとともに撹拌機付き耐圧容器に入れ、140℃に加熱撹拌して溶液を調製した。この溶液を、撹拌機およびドライアイスコンデンサーを取り付けた1Lフラスコに仕込み、20〜25℃の室温下、フラスコをドライアイスで冷却しながら、アンモニアが常に還流し、かつ内温が−30℃以下にならないようにバブリングを10時間継続したところ、溶液が白濁し、白色の固体が析出した。ドライアイス冷却を中止し、20〜25℃の室温下、16時間撹拌を継続した後、この溶液を濾過し、得られた固体を3規定塩酸にて6回洗浄し、さらに超純水にて5回洗浄した後、乾燥し、白色固体9.8gを得た。
得られた白色固体を赤外分光分析法により分析したところ、1467cm−1付近のポリマー1が有するSO2F基由来のピークが消失し、−1388cm−1付近のSO2NH2基由来のピークが生成していることを確認した(以下、「ポリマー2」という。)。
次に、ポリマー2の1gと、モレキュラーシーブス4Aを使用して脱水したN,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)の20gを、冷却コンデンサー付きフラスコに投入して溶解した後、窒素シール下に、N,N’−テトラメチルエチレンジアミン(TMEDA)の1.02g、ついでFSO2(CF2)2SO2F(BSTFE)の2.34gを仕込み、80℃、48時間の条件で加熱撹拌した。BSTFEと、ポリマー2が有する−SO2NH2基とのモル比は8:1とした。
得られた溶液は均一な溶液でゲル化は認められなかった。
反応前の溶液(DMAcにポリマー2を溶解した溶液)および得られた反応溶液に、ヘキサフルオロベンゼンを標準液(−162.5ppm)として微量添加し19F−NMRを測定したところ、反応前の溶液では−116.2ppm付近に観測されたCF2−SO2NH2由来のピークが消失し、−104.0ppm、−115.3ppm付近、−110.6ppm付近に−CF2−SO2N−M+SO2CF2−CF2−SO2Fに由来するピークの生成が確認された。この反応液をガラスシャーレ上にキャストし、80℃で一晩、次いで80℃で2時間減圧乾燥し、最後に180℃で30分間乾燥し、250μm前後の膜厚の膜を得た。
次に、得られた膜をメタノール性KOH水溶液(KOH濃度15質量%)中に80℃で一晩浸漬した後、洗浄水のpHが7になるまで水洗し、さらに3規定塩酸水にて4回洗浄し、10質量%過酸化水素水(80℃)に一晩浸漬し、再度3規定塩酸水にて洗浄して膜中に残留しているカリウムを取り除いた。その後、洗浄水のpHが7になるまで水洗した。
得られた膜のIR分析をしたところ、該膜は、ポリマー1の−SO2F基が消失し、−SO2NHSO2(CF2)2SO3H基に変換されたポリマーからなる膜であった。
BSTFEと、ポリマー2が有する−SO2NH2基とのモル比を4:1(例2)、2:1(例3)に変更した以外は、例1と同様にして、工程(A)および工程(B)を行った。得られた反応液は、ゲル化が認められず、均一な溶液であった。さらに、例1と同様にして工程(C)を行って膜を得た。
得られた膜のIR分析をしたところ、いずれの例についても、該膜は、ポリマー1の−SO2F基が、−SO2NHSO2(CF2)2SO3H基に変換されたポリマーからなる膜であった。
BSTFEの2.34gの代わりに、FSO2(CF2)4SO2F(BSOFB)の3.22gを使用した以外は、例1と同様して工程(A)〜(C)を行い、膜を得た。工程(B)における、BSOFBと、ポリマー2が有する−SO2NH2基とのモル比は8:1とした。
得られた膜のIR分析をしたところ、該膜は、ポリマー1の−SO2F基が−SO2NHSO2(CF2)4SO3H基に変換されたポリマーからなる膜であった。
BSTFEの代わりにBSOFBを使用し、BSOFBと、ポリマー2が有する−SO2NH2基とのモル比を2:1とした以外は、例1と同様にして工程(A)と、工程(B)の加熱撹拌までを実施した。得られた反応液には若干のゲル分が認められ、例3における工程(B)後の溶液よりも粘度が高かった。その後、得られた溶液を水に投入し、凝集した固体を集め、再度DMAcに約5質量%濃度で溶解しようとしたところ、不溶な成分が認められ、その後の工程が行えなかった。
膜を80℃で2時間以上乾燥し、80℃の温水に16時間浸漬した後、水が25℃以下になるまで冷却してから膜を取り出し、膜表面に付着した水を濾紙でふき取り、膜の質量を測定した(質量W1)。次いで、この膜を80℃で5時間以上乾燥し、さらに窒素雰囲気のデシケータにて一晩乾燥した後、そのままデシケータ内で質量を測定し(質量W2)、(W1−W2)/W2を含水率(%)とした。
工程(B)で使用した変性剤(化合物(3)等)の種類およびその比率、ならびに例1〜4で得られた膜の含水率を測定した結果を表1に示す。なお、表1における略号を以下の意味を示す。
BSTFE:FSO2(CF2)2SO2F。
BSOFB:FSO2(CF2)4SO2F。
TFEと下式(m2)のモノマーを重合することで得られた、−SO2F基が1.0mmol/g含まれているポリマーを、フッ素ガスと反応させてフッ素化し、安定化させたポリマー(以下、「ポリマー3」という。)を、工程(A)においてポリマー1の代わりに使用し、それにより得られたポリマー(以下、「ポリマー4」という。)を、工程(B)においてポリマー2の代わりに使用し、ポリマー4が有する−SO2NH2基とのモル比を4:1に変更した以外は、例1と同様にして、ポリマーの−SO2F基が−SO2NHSO2(CF2)2SO3H基に変換されたポリマーからなる膜を得た。
CF2=CF−OCF2CF(CF3)O(CF2)2SO2F ・・・(m2)
得られた膜の80℃での伝導度を測定した結果を図1に示す。
前記ポリマー1を、成型温度240℃で押し出し成型した、厚み50μmのフィルム(以下、「フィルム1」という。)を得た。得られたフィルム1を、ジメチルスルホキシド/水酸化カリウム/水=30/15/65(質量比)の溶液(80℃)に一晩浸漬し、水洗した後、3規定塩酸水にて4回洗浄し、10質量%過酸化水素水(80℃)に一晩浸漬し、再度3規定塩酸水にて洗浄し、フィルム中に残留しているカリウム分を取り除き、最後に洗浄液のpHが7になるまで超純水で洗浄、乾燥してイオン性ポリマー(末端基が−SO3H基)からなるフィルムを得た。
得られたフィルムの80℃での伝導度を測定した結果を図1に示す。
前記ポリマー1の代わりに、前記ポリマー3を使用した以外は、例7と同様にしてイオン性ポリマー(末端基が−SO3H基)からなるフィルムを得た。
得られたフィルムの80℃での伝導度を測定した結果を図1に示す。
ポリマーの伝導度は、下記方法により求めた。
ポリマーからなる5mm幅のフィルムまたは膜に、5mm間隔で4端子電極が配置された基板を密着させ、公知の4端子法により、温度80℃、相対湿度30〜95%の恒温恒湿条件下にて、10kHz、1Vの交流電圧でフィルムまたは膜の抵抗を測定し、該結果から伝導度を算出した。
TFEと下式(m3)のモノマーを重合することで得られた、−SO2F基が1.1mmol/g含まれているポリマーを、フッ素ガスと反応させてフッ素化し、安定化させたポリマー(以下、「ポリマー5」という。)を得た。工程(A)においてポリマー1の代わりにポリマー5を使用し、それにより得られたポリマー(以下、「ポリマー6」という。)を、工程(B)においてポリマー2の代わりに使用し、ポリマー6が有する−SO2NH2基とのモル比を4:1に変更した以外は、例1と同様にして、ポリマーの−SO2F基が−SO2NHSO2(CF2)2SO3H基に変換されたポリマーからなる膜を得た。
CF2=CF−CF2O(CF2)2SO2F ・・・(m3)
得られた膜の含水率を測定したところ、含水率は130%であった。また得られた膜の伝導度を測定した結果を図2に示す。
前記ポリマー1の代わりに、前記ポリマー5を使用した以外は、例7と同様にしてイオン性ポリマー(末端基が−SO3H基)からなるフィルムを得た。
得られたフィルムの80℃での伝導度を測定した結果を図2に示す。
Claims (3)
- 下記工程(A)〜(C)を有するイオン性ポリマーの製造方法。
(A)下式(1)で表される基を有する繰り返し単位を有するポリマーの前記式(1)で表される基を、下式(2)で表される基に変換する工程。
(B)前記工程(A)で得られたポリマーと下式(3)で表される化合物とを、前記式(2)で表される基に対する、前記式(3)で表される化合物のモル比が0.5〜20となるように反応させ、前記ポリマーの前記式(2)で表される基を下式(4)で表される基に変換する工程。
(C)前記工程(B)で得られた前記ポリマーの前記式(4)で表される基を下式(5)で表される基に変換する工程。
−SO2F ・・・(1)
−SO2NZ1Z2 ・・・(2)
FSO2(CF2)2SO2F ・・・(3)
−SO2N−(M+)SO2(CF2)2SO2F ・・・(4)
−SO2N−(M+)SO2(CF2)2SO2X−(M+)(SO2Rf)m ・・・(5)
(ただし、Z1およびZ2はそれぞれ独立に水素原子、1価の金属元素、および−Si(R)3からなる群から選ばれる基である。Rは水素原子、またはエーテル性酸素原子を有してもよい炭素数1〜12の1価の有機基であり、3つのRは互いに同じ基でもよく、異なる基でもよい。M+は水素イオン、1価の金属カチオン、または有機アミン由来の1価のカチオンである。Xは酸素原子または窒素原子である。mは、Xが酸素原子のときは0、Xが窒素原子であるときは1である。Rfは、1個以上のエーテル性酸素原子を有してもよい炭素数1〜10のペルフルオロアルキル基である。) - 前記式(1)で表される基を有するポリマーが、主鎖および側鎖の炭素原子に結合した水素原子が全てフッ素原子に置換されたペルフルオロポリマーである、請求項1に記載のイオン性ポリマーの製造方法。
- 下式(5’)で表される基を有する繰り返し単位を有するイオン性ポリマー。
−SO2N−(M+)SO2(CF2)2SO2 N −(M+)(SO2Rf ) ・・・(5’)
(ただし、M+は水素イオン、1価の金属カチオン、または有機アミン由来の1価のカチオンである。R fは、1個以上のエーテル性酸素原子を有してもよい炭素数1〜10のペルフルオロアルキル基である。)
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