まず図1を参照して、部品実装システムの全体構成を説明する。部品実装システム1は、表示パネル等の基板2に接着テープを介して電子部品を実装する第1の部品実装機構を有する上流側設備1Aと、上流側設備1Aよりも下流(紙面右側)に配設され、上流側設備1Aから搬出された基板2に同じく接着テープを介して電子部品を実装する第2の部品実装機構を有する下流側設備1Bを一の水平方向(X方向)に並列させ、さらに上流側設備1Aと下流側設備1Bとの間に基板受け渡しステージ3を配設して構成される。
なお、上流側設備1Aのさらに上流側(X1方向側)にも部品実装作業を行う機能を有する設備(図示省略)が配設されており、この設備と上流側設備1Aとの間にも基板受け渡しステージ3と同一構成の基板受け渡しステージ4が設けられている。本実施の形態において、上流側設備1Aと下流側設備1Bの構成は同一であるため、以下、両者を区別する必要がある場合を除き上流側設備1Aに限定して説明する。また、X方向と水平面内で直交する方向をY方向と称する。
図1において、基板受け渡しステージ3,4は基板2を載置可能な基板載置テーブル3a,4aをそれぞれ備えており、テーブル昇降機構によって個別に昇降する。基板載置テーブル3aには、上流側設備1Aから搬入された基板2が載置される。基板載置テーブル3a上の基板2は、後述する下流側設備1Bが備える第5の基板搬送ヘッド71によって取り出される。基板受け渡しステージ3内において基板載置テーブル3aが配設される領域は、上流側設備1Aと下流側設備1Bとの間で基板2の受け渡しを行う受け渡しエリアAとなっている。また基板載置テーブル4aには、上流側設備1Aよりもさらに上流に配設されている設備から搬入された基板2が載置され、基板載置テーブル4aに載置された基板2は後述する上流側設備1Aが備える第1の基板搬送ヘッド61により取り出される。
ここで図2を参照して、基板2について説明する。基板2は、表示パネルを構成するガラス基板を2枚重ね合わせた構成となっている。基板2の相直交する2つの縁部2a,2bは、片側のガラス基板の回路形成面が露呈した部品実装面となっており、縁部2a,2bに設けられた接続用端子には、電子部品9が圧着により実装される。
図1において、基台1a上には、テープ貼付け部5、仮圧着部6及び本圧着部7を含む複数の作業部がX方向に並列して配置されている。また、これらの作業部の前方側(Y1方向側)には基板搬送部8が配設されている。本実施の形態では、上流側設備1Aに配設されたテープ貼付け部5、仮圧着部6及び本圧着部7が第1の部品実装機構を構成し、下流側設備1Bに配設されたテープ貼付け部5、仮圧着部6及び本圧着部7が第2の部品実装機構を構成する。
このように部品実装システム1は、基板2に電子部品9を実装する第1の部品実装機構を有する上流側設備1Aと、上流側設備1Aよりも下流に配設され、受け渡しエリアAを介して上流側設備から受け渡された基板2に電子部品9を実装する第2の部品実装機構を有する下流側設備1Bとを備えた構成となっている。
図1及び図3において、テープ貼付け部5は基板2に部品接合用の接着テープを貼り付ける作業部であり、基板保持部20と圧着機構25を含んで構成される。基板保持部20は、下からXテーブル21X、Yテーブル21Y、Zθテーブル21Z及び水平回転駆動機構21θを順に段積みし、さらに基板2を保持する基板保持テーブル22を水平回転駆動機構21θ上に設けて成る。基板保持テーブル22は円盤状に成型され、且つ水平回転駆動機構21θに垂直軸周りに回転自在に装着されている。
Xテーブル21X、Yテーブル21Yは、基板保持テーブル22を水平移動させるXYテーブル機構を構成し、Zテーブル21Zは、基板保持テーブル22を昇降させる昇降機構を構成する。なお、後述する基板保持部30,40,50も同様のXYテーブル機構、昇降機構及び水平回転駆動機構を有している。
図3において、基板保持部20の上方にはカメラ23がX方向に移動可能に配設されており、カメラ23は基板保持テーブル22上の基板2を撮像する。これにより、基板2に設けられた認識マークを認識して基板2の位置を検出する。そして、この位置検出結果に基づいて基板保持部30の各機構を駆動することにより、基板保持テーブル22は所定の方向に移動し、基板2を後述する圧着ツール15による圧着位置に位置決めすることができる。基板保持部20の後方には下受部24が配設されている。下受部24は、基板保持テーブル22に保持された基板2の縁部を圧着ツール15による圧着位置において下方から支持する。
下受部24の上方には、圧着機構25が配設されている。圧着機構25は、縦フレーム10にテープ供給リール11、接着テープ切断部13、リーダテープ剥離機構14、圧着ツール15、リーダテープ回収リール16を配置した構成となっている。テープ供給リール11は巻回状態で収納した積層テープ12を下流側に供給する。積層テープ12は、ベースとなるリーダテープに電子部品をボンディングするための接着テープを積層した構成となっている。接着テープ切断部13は積層テープ12に対して進退する切断刃を備えており、この切断刃によりテープ供給リール11から引き出された積層テープ12のうち接着テープのみを所望の長さで切断する。これにより、個片化した接着テープ(以下、「個片テープ12a(図4)」と称する)が形成される。
テープ貼り付け動作は、まず、圧着ツール15が下降して積層テープ12を押し下げる。そして、基板保持テーブル22に保持された基板2の上面に対して個片テープ12aを押しつけることにより、基板2の縁部に個片テープ12aを圧着して貼り付ける。リーダテープ剥離機構14は、基板2に貼り付けられた状態の個片テープ12aからピン14aによってリーダテープを剥離する。リーダテープ回収リール16は、個片テープ12aから剥離された後のリーダテープを巻き取って回収する。
図1及び図4において、仮圧着部6は、個片テープ12aが貼り付けられた基板2に電子部品9を搭載して仮圧着する作業部であり、基板保持部30と圧着機構35を含んで構成される。基板保持部30は、下からXテーブル31X、Yテーブル31Y、Zθテーブル31Z及び水平回転駆動機構31θを順に段積みし、さらに基板2を保持する基板保持テーブル32を水平回転駆動機構31θ上に設けて成る。基板保持テーブル32の構成は基板保持テーブル22と同一である。基板保持部30の各機構を駆動することにより、基板保持テーブル32に保持された基板2の縁部を、後述する圧着ツール38による圧着位置に位置合わせすることができる。
基板保持部30の後方には、透明体で製作されたブロック状の下受部33が配設されている。下受部33は、基板保持テーブル32に保持された基板2の縁部を圧着ツール38による圧着位置において下方から支持する。下受部33の下方には観察カメラ34A,34Bが配設されており、下受部33を透して下受部33上に位置した基板2の縁部を下方から観察し、基板2に形成された認識マークを認識する。また観察カメラ34A,34Bは、圧着ツール38によって搬送され下受部33の上方に位置する電子部品9を、下受部33を透して下方から観察する。
下受部33の上方には圧着機構35が配設されており、図1に示す圧着機構35のインデックステーブル35aに設けられた保持ヘッド36を矢印方向に順次インデックス回転させることにより、電子部品供給部37から取り出された電子部品9を下受部33上の圧着位置まで搬送する。図4において、保持ヘッド36は下方に延出した圧着ツール38を備えており、圧着ツール38は圧着位置において下面に電子部品9を保持した状態で位置し、この電子部品9を圧着位置に位置合わせされた基板2の上面に仮圧着する。
図1及び図5において、本圧着部7は、基板2に仮圧着された電子部品9を本圧着する作業部であり、X方向に並列した第1の本圧着部7A、第2の本圧着部7Bを備えている。第1の本圧着部7A、第2の本圧着部7Bは、それぞれ基板保持部40,50と、圧着ツール45,55を含んで構成される。
図5において、基板保持部40は、下からXテーブル41X、Yテーブル41Y、Zテーブル41Z及び水平回転駆動機構41θを順に段積みし、さらに基板2を保持する基板保持テーブル42を水平回転駆動機構41θ上に設けて成る。基板保持部50は、基板保持部40と共通のXテーブル41Xの上に、Yテーブル51Y、Zテーブル51Z及び水平回転駆動機構51θを順に段積みし、さらに基板保持テーブル52を水平回転駆動機構51θ上に設けて成る。基板保持部40,50の各機構を駆動することにより、基板保持テーブル42,52に保持された基板2の縁部を、圧着ツール45による第1の圧着位置,圧着ツール55による第2の圧着位置にそれぞれ移動させることができる。
基板保持部50の後方には、下受部43が配設されている。下受部43は、基板保持テーブル42に保持された基板2の縁部を圧着ツール45による第1の圧着位置において下方から支持する。同様に、基板保持部50の後方には下受部53が配設されており、基板保持テーブル52に保持された基板2の縁部を圧着ツール55による第2の圧着位置において下方から支持する。
基板保持部40,50の上方には、カメラ44がX方向に移動可能に配設されており、カメラ44は基板保持テーブル42,52上の基板2を撮像する。この撮像により、基板2に設けられた認識マークを認識して基板2の位置を検出する。そして、この位置検出結果に基づいて基板保持部40,50の各機構を駆動することにより、基板保持テーブル42,52は水平方向にそれぞれ個別に移動し、基板2を第1の圧着位置、第2の圧着位置にそれぞれ位置決めする。
下受部43,53の上方には、圧着ツール45,55がそれぞれ配設されている。本圧着動作では、電子部品9が個片テープ12a上に仮圧着された基板2の縁部をそれぞれ対応する圧着位置に位置決めし、各圧着ツール45,55を基板2に対して下降させて押圧状態を所定の時間保持することにより、電子部品9は基板2に個片テープ12aを介して本圧着される。
次に基板搬送部8について説明するが、ここでは上流側設備1A、下流側設備1Bに分けて説明する。図1において、上流側設備1Aに設けられた基板搬送部8Aは、X方向に伸びて成るベース部60に第1の基板搬送ヘッド61、第2の基板搬送ヘッド62、第3の基板搬送ヘッド63、第4の基板搬送ヘッド64をそれぞれ配設した構造となっている。ベース部60はサーボモータ等を駆動源とした直動機構65(図6)によってX方向に移動し、これにより複数の基板搬送ヘッド61〜64によって各作業部間で基板2を同時に搬送することができる。
下流側設備1Bに設けられた基板搬送部8Bは、基板搬送部8Aと同様に、X方向に伸びて成るベース部70に第5の基板搬送ヘッド71、第6の基板搬送ヘッド72、第7の基板搬送ヘッド73、第8の基板搬送ヘッド74をそれぞれ配設した構造となっている。ベース部70はサーボモータ等を駆動源とした直動機構75(図6)によってX方向に移動し、これにより複数の基板搬送ヘッド71〜74によって各作業部間で基板2を同時に搬送することができる。
それぞれの設備に備えられた基板搬送ヘッド61〜64,71〜74は吸着パッドを有しており、この吸着パッドを介して基板2を吸着して保持することができる。それぞれの設備のテープ貼付け部5、仮圧着部6、本圧着部7間で基板2を搬送する際には、基板保持テーブル22,32,42,52を基板搬送ヘッド61〜64,71〜74が有する吸着パッドの下方に移動させる。
第1の基板搬送ヘッド61と第2の基板搬送ヘッド62は、ベース部60に直接結合されている。第3の基板搬送ヘッド63は第1のシリンダ機構66を介してベース部60に結合されており、第4の基板搬送ヘッド64は第2のシリンダ機構67を介してベース部60に結合されている。同様に、第5の基板搬送ヘッド71と第6の基板搬送ヘッド72は、ベース部70に直接結合されている。また、第7の基板搬送ヘッド73は第3のシリンダ機構76を介してベース部70に結合されており、第8の基板搬送ヘッド74は第4のシリンダ機構77を介してベース部70に結合されている。
第1の基板搬送ヘッド61、第2の基板搬送ヘッド62は、基板受け渡しステージ4からテープ貼付け部5へ、テープ貼付け部5から仮圧着部6へそれぞれ基板2を搬送する。また第3の基板搬送ヘッド63、第4の基板搬送ヘッド64は、仮圧着部6から本圧着部7へ、本圧着部7から受け渡しエリアA(基板受け渡しステージ3内の基板載置テーブル3a)へそれぞれ基板2を搬送する。このとき、第1のシリンダ機構66が有するロッド66aを伸縮させることにより、第3の基板搬送ヘッド63によって本圧着部7へ基板2を搬送する際の搬送先を、基板保持テーブル42,52の何れかに切り替えることができる。また、第2のシリンダ機構67が有するロッド67aを伸縮させることにより、第4の基板搬送ヘッド64によって本圧着部7から基板2を取り出す際の取り出し元を、基板保持テーブル42,52の何れかに切り替えることができる。また、受け渡しエリアAへの基板2の搬送は、ベース部60の下流側(X2方向側)への移動の他、第2のシリンダ機構67のロッド67aの伸ばし動作を行うことによってなされる。
上記構成において、第4の基板搬送ヘッド64は、上流側設備1Aと受け渡しエリアAとの間を移動自在に設けられ、上流側設備1Aから受け渡しエリアAまで基板2を搬送する上流側搬送部となっている。また第2のシリンダ機構67は、上流側設備1Aと受け渡しエリアAとの間で上流側搬送部を移動させる上流側搬送部移動機構となっている。さらに上流側搬送部移動機構は、基板2の搬送方向であるX方向に伸縮自在なロッド67aを含むシリンダ機構を有している。
第5の基板搬送ヘッド71、第6の基板搬送ヘッド72は、受け渡しエリアAから下流側設備1Bのテープ貼付け部5へ、テープ貼付け部5から仮圧着部6へそれぞれ基板2を搬送する。また第7の基板搬送ヘッド73、第8の基板搬送ヘッド74は、仮圧着部6から本圧着部7へ、本圧着部7から下流側設備1Bのさらに下流に設けられた基板受け渡しステージ(図示省略)へそれぞれ基板2を搬送する。なお、第3のシリンダ機構76、第4のシリンダ機構77が有する各ロッド76a,77aの伸縮による基板2の移送先の変更、及び基板受け渡しステージへの基板2の搬送は、上流側設備1Aで説明した態様と同じである。
上記構成において、第5の基板搬送ヘッド71は、受け渡しエリアAと下流側設備1Bとの間を移動自在に設けられ、受け渡しエリアAまで搬送された基板2を受け取って受け渡しエリアAから下流側設備1Bまで基板2を搬送する下流側搬送部となっている。また直動機構75は、受け渡しエリアAと下流側設備1Bとの間で第5の基板搬送ヘッド71(下流側搬送部)を移動させる下流側搬送部移動機構となっている。
第5の基板搬送ヘッド71によって基板載置テーブル3aから基板2を取り出す際には、ベース部70をX1方向に移動させる。したがって、第4の基板搬送ヘッド64と第5の基板搬送ヘッド71が受け渡しエリアAへ同時に進入したとき、両者は衝突する。
次に図6を参照して、部品実装システム1の制御系について説明する。上流側設備1A、下流側設備1Bにそれぞれ備えられた制御部80,90は、通信部81,91、テープ貼付け制御部82,92、仮圧着制御部83,93、本圧着制御部84,94、移動機構制御部85,95及びインターロック機構86,96を含んで構成される。また、制御部80はインターロック監視部87をさらに有している。制御部80,90はそれぞれの設備に設けられたテープ貼付け部5、仮圧着部6、本圧着部7及び基板搬送部8と接続されているとともに、上流側設備1Aと下流側設備1Bは通信部81,91を介して通信可能に接続されている。
テープ貼付け制御部82,92は、テープ貼付け部5を構成する各機構を制御することにより、基板2に個片テープ12a(接着テープ)を貼付けるテープ貼付け作業を実行する。仮圧着制御部83,93は、仮圧着部6を構成する各機構を制御することにより、基板2に貼り付けられた個片テープ12a上に電子部品9を仮圧着する仮圧着作業を実行する。本圧着制御部84,94は、本圧着部7を構成する各機構を制御することにより、基板2に仮圧着された電子部品9を押圧して本圧着する本圧着作業を実行する。
移動機構制御部85は、直動機構65を制御することによって基板搬送ヘッド61〜64をX方向に移動させる。また移動機構制御部85は、第1のシリンダ機構66、第2のシリンダ機構67(上流側搬送部移動機構)を制御することによって、ロッド66a,67aを伸縮させて第3の基板搬送ヘッド63、第4の基板搬送ヘッド64をそれぞれX方向に移動させる。
移動機構制御部95は、直動機構75を制御することによって基板搬送ヘッド71〜74をX方向に移動させる。また、第3のシリンダ機構76、第4のシリンダ機構77を制御することによって、ロッド76a,77aを伸縮させて第7の基板搬送ヘッド73,第8の基板搬送ヘッド74をそれぞれX方向に移動させる。これにより、基板搬送ヘッド61〜64,71〜74を介して基板受け渡しステージ3,4を含む複数の作業部間での基板搬送動作を実行する。
インターロック機構86,96は、上流側設備1Aと下流側設備1Bが通信部81,91を介してインターロック信号の送受信を行うことにより、基板搬送ヘッド61〜64,71〜74の作動状況を検知する。そして、一方の設備が他方の設備からのインターロック信号を受信している間、移動機構制御部85,95は一方の設備に備えられた基板搬送ヘッド61〜64,71〜74の作動を制限する。すなわちインターロック機構86,96は、上流側設備1Aと下流側設備1Bが備える基板搬送ヘッド61〜64,71〜74の衝突を回避するための衝突回避手段となっている。
インターロック信号の送信は、基板受け渡しステージ3への基板2の搬送又は基板2の受け取りを開始するタイミングで行われる。すなわち上流側設備1Aにおいては、基板2を保持した第4の基板搬送ヘッド64が受け渡しエリアA(基板受け渡しステージ3)に向かって移動(進入)を開始するタイミング、下流側設備1Bにおいては、第5の基板搬送ヘッド71が受け渡しエリアAに向かって移動を開始するタイミングでなされる。なお、インターロック信号の送信は、相手方の設備から同信号が送信されていないことが条件となる。
インターロック信号の送信の解除は、基板搬送動作が終了したタイミングでなされる。すなわち上流側設備1Aにおいては、第2のシリンダ機構67のロッド67aをX1方向に縮ませることによって第4の基板搬送ヘッド64が受け渡しエリアAから退避した後のタイミング、下流側設備1Bにおいては、直動機構75を介してベース部70をX2方向に移動させることによって第5の基板搬送ヘッド71が受け渡しエリアAから退避した後のタイミングでなされる。
インターロック監視部87は、上流側設備1Aが下流側設備1Bへインターロック信号を送信している間、下流側設備1Bの第5の基板搬送ヘッド71が当該信号を無視して受け渡しエリアAへの移動を開始したかを検知する。
本発明の部品実装システム1は以上のような構成から成り、次に図7〜図9を参照して、一の設備内における一連の基板搬送動作について説明する。本例では、上流側設備1Aを例に挙げる。まず図7(a)に示すように、移動機構制御部85はベース部60を介して基板搬送ヘッド61〜64を上流側へ移動させ、第1の基板搬送ヘッド61を基板受け渡しステージ4に、第2の基板搬送ヘッド62をテープ貼付け部5に、第3の基板搬送ヘッド63を仮圧着部6に、第4の基板搬送ヘッド64を本圧着部7(第1の本圧着部7A)にそれぞれ位置合わせする。このとき、第1のシリンダ機構66、第2のシリンダ機構67のロッド66a,67aは予め縮ませておく。そして、基板載置テーブル4aに搬入された基板2Aを第1の基板搬送ヘッド61によって保持する。
次いで図7(b)に示すように、移動機構制御部85はベース部60を介して基板搬送ヘッド61〜64を下流側へ移動させ、第1の基板搬送ヘッド61をテープ貼付け部5に、第2の基板搬送ヘッド62を仮圧着部6に、第3の基板搬送ヘッド63を本圧着部7(第1の本圧着部7A)に、第4の基板搬送ヘッド64を本圧着部7と基板受け渡しステージ3の間の領域にそれぞれ位置合わせする。次いで、移動機構制御部85は基板保持テーブル22に基板2Aを受け渡す。その後、基板2Aに対してはテープ貼付け作業が行われる。この間、基板受け渡しステージ4には上流側から基板2Bが新たに搬入される。
次いで図7(c)に示すように、基板搬送ヘッド61〜64を前述と同様の態様により上流側へ移動させた後、基板載置テーブル4aに搬入された基板2Bを第1の基板搬送ヘッド61によって保持するとともに、テープ貼付け作業を終えた基板2Aを第2の基板搬送ヘッド62によって保持する。次いで図7(d)に示すように、基板搬送ヘッド61〜64を前述と同様の態様により下流側へ移動させた後、基板保持テーブル22に基板2Bを受け渡すとともに、基板保持テーブル32に基板2Aを受け渡す。その後、基板2Aに対しては仮圧着作業が行われるとともに、基板2Bに対してはテープ貼付け作業が行われる。
次いで図8(a)に示すように、基板搬送ヘッド61〜64を上流側へ移動させた後、基板載置テーブル4aに搬入された基板2Cを第1の基板搬送ヘッド61によって保持するとともに、テープ貼付け作業を終えた基板2Bを第2の基板搬送ヘッド62によって保持する。さらに、仮圧着作業を終えた基板2Aを第3の基板搬送ヘッド63によって保持する。次いで図8(b)に示すように、基板搬送ヘッド61〜64を下流側へ移動させた後、基板保持テーブル22に基板2Cを受け渡すとともに、基板保持テーブル32に基板2Bを受け渡す。さらに、第1の本圧着部7Aの基板保持テーブル42に基板2Aを受け渡す。その後、基板2Aに対しては第1の本圧着部7Aで本圧着作業が行われるとともに、基板2Bに対しては仮圧着作業が行われる。さらに、基板2Cに対してはテープ貼付け作業が行われる。
次いで図8(c)に示すように、基板搬送ヘッド61〜64を上流側へ移動させた後、基板載置テーブル4aに搬入された基板2Dを第1の基板搬送ヘッド61によって保持するとともに、テープ貼付け作業を終えた基板2Cを第2の基板搬送ヘッド62によって保持する。さらに、仮圧着作業を終えた基板2Bを第3の基板搬送ヘッド63によって保持する。このとき、第1の本圧着部7Aでは基板2Aの本圧着作業が引き続き行われている。すなわち、第1の本圧着部7A(第2の本圧着部7B)での作業時間は、他の作業部での作業時間よりも長い。したがって、ここでは第4の基板搬送ヘッド64によって基板2Aを保持しない。図8(c)では、本圧着作業のため基板2Aが第1の圧着位置まで移動していること伴い、基板2A及び基板保持テーブル42の図示を省略している。
次いで図8(d)に示すように、基板搬送ヘッド61〜64を下流側へ移動させるとともに、第1のシリンダ機構66のロッド66aを上限まで伸ばす。そして、基板保持テーブル22に基板2Dを受け渡すとともに、基板保持テーブル32に基板2Cを受け渡す。さらに、ロッド66aを介して第2の本圧着部7Bの前方側の領域まで移動した第3の基板搬送ヘッド63によって基板保持テーブル52に基板2Bを受け渡す。その後、基板2Bに対しては第2の本圧着部7Bにて本圧着作業が行われるとともに、基板2Cに対しては仮圧着作業が行われる。さらに、基板2Dに対してはテープ貼付け作業が行われる。
次いで図9(a)に示すように、基板搬送ヘッド61〜64を上流側へ移動させた後、基板受け渡しステージ4に搬入された基板2Eを第1の基板搬送ヘッド61によって保持するとともに、テープ貼付け作業を終えた基板2Dを第2の基板搬送ヘッド62によって保持する。さらに、第1のシリンダ機構66のロッド66aを縮ませた状態で第3の基板搬送ヘッド63によって基板2Cを保持するとともに、第1の本圧着部7Aで本圧着作業を終えた基板2Aを第4の基板搬送ヘッド64によって保持する。この間、第2の本圧着部7Bに搬送された基板2Bは本圧着作業のため第2の圧着位置まで移動している。
次いで図9(b)に示すように、基板搬送ヘッド61〜64を下流側へ移動させるとともに、第2のシリンダ機構67のロッド67aを上限まで伸ばす。そして、基板保持テーブル22に基板2Eを受け渡すとともに、基板保持テーブル32に基板2Dを受け渡す。さらに第1の本圧着部7Aの基板保持テーブル42に基板2Cを受け渡すとともに、基板載置テーブル3aに基板2Aを受け渡す。その後、基板2Cに対しては第1の本圧着部7Aで本圧着作業が行われるとともに、基板2Dに対しては仮圧着作業が行われる。さらに、基板2Eに対してはテープ貼付け作業が行われる。
ロッド67aを伸ばすタイミングは、直動機構65によって基板搬送ヘッド61〜64を下流側へ移動させた後、又は直動機構65によって基板搬送ヘッド61〜64を下流側へ移動させている間の何れでもよい。このように、第4の基板搬送ヘッド64(上流側搬送部)は、ロッド67aが伸びることによって受け渡しエリアAまで移動する。
次いで図9(c)に示すように、基板搬送ヘッド61〜64を上流側へ移動させた後、基板載置テーブル4aに搬入された基板2Fを第1の基板搬送ヘッド61によって保持するとともに、テープ貼付け作業を終えた基板2Eを第2の基板搬送ヘッド62によって保持する。さらに、第3の基板搬送ヘッド63によって基板2Dを保持するとともに、第2のシリンダ機構67のロッド67aを上限まで伸ばした状態のまま第4の基板搬送ヘッド64によって基板保持テーブル52上の基板2Bを保持する。第4の基板搬送ヘッド64によって基板2Bを保持した後、第2のシリンダ機構67のロッド67aを縮ませる。このとき、基板2Cは本圧着作業のために第1の圧着位置まで移動しているため、基板2Bと基板2Cは干渉しない。
次いで図9(d)に示すように、基板搬送ヘッド61〜64を下流側へ移動させるとともに、第1のシリンダ機構66のロッド66a、第2のシリンダ機構67のロッド67aを上限まで伸ばす。そして、基板保持テーブル22に基板2Fを受け渡すとともに、基板保持テーブル32に基板2Eを受け渡す。さらに、基板保持テーブル52に基板2Dを受け渡すとともに、第4の基板搬送ヘッド64によって基板載置テーブル3aに基板2Bを受け渡す。なお、基板載置テーブル3aに基板2Bを受け渡す前に、第5の基板搬送ヘッド71によって基板載置テーブル3aに載置された基板2Aを予め取り出しておく。これまで説明した動作を反復して継続することで、基板2の搬送が行われる。
以上説明した基板搬送動作は、上流側設備1Aに備えられた第4の基板搬送ヘッド64と下流側設備1Bに備えられた第5の基板搬送ヘッド71が衝突しないよう、インターロック機構86,96を介して第2のシリンダ機構67、直動機構75を制御することによってなされる。そして上流側設備1Aでは、以下に説明する受け渡しエリアAへの第4の基板搬送ヘッド64の進入判断処理に基づいて、基板搬送ヘッド61〜64の移動を制御する。
次に図10を参照して、受け渡しエリアAへの第4の基板搬送ヘッド64の進入判断処理について説明する。本圧着を終えた基板2を含め、上流側設備1Aにおいて各種の作業を終えた基板2を基板搬送ヘッド61〜64によって保持して下流側への移送準備が完了したならば、移動機構制御部85は下流側設備1Bからインターロック信号が送信されているか判断する(ST1:インターロック信号送信有無判断工程)。すなわちこの工程では、第5の基板搬送ヘッド71が受け渡しエリアAへ移動しているかを判断している。より簡潔にいえば、ここでは第4の基板搬送ヘッド64を受け渡しエリアAへ進入させてもよいかの確認を行う。図11に示すように、下流側設備1Bからインターロック信号が上流側設備1Aへと送信されている場合(矢印a)、その送信が途切れるまで直動機構65の駆動、及び第2のシリンダ機構67の駆動、すなわちロッド67aの伸ばし動作は保留される。
(ST1)で下流側設備1Bからのインターロック信号の送信が途切れたならば、移動機構制御部95は下流側設備1Bへインターロック信号を送信する(ST2:インターロック信号送信工程)(図11(a)に示す矢印b)。すなわちこの工程では、第5の基板搬送ヘッド71が受け渡しエリアAから退避した後に、上流側設備1Aから下流側設備1Bへインターロック信号を送信する。そして、上流側設備1Aからインターロック信号が送信されている間、通常であれば、基板搬送ヘッド71〜74の上流側への移動、換言すれば第5の基板搬送ヘッド71の受け渡しエリアAへの進入は制限される。
上流側設備1Aから下流側設備1Bへインターロック信号を送信したならば、図12(a)に示すように、移動機構制御部85は直動機構65を制御してベース部60を下流側へ移動させるとともに、第2のシリンダ機構67のロッド67aを伸ばすことによって第4の基板搬送ヘッド64の受け渡しエリアAへの進入を開始する(矢印c)(ST3:受け渡しエリア進入工程)。便宜上、図12では第4の基板搬送ヘッド64のみが基板2を保持しているが、実際には他の基板搬送ヘッド61〜63も基板2を保持している。
次いで、移動機構制御部85はロッド67aが上限まで伸びきったか判断する(ST4:ロッド伸び判断工程)。ロッド67aが上限まで伸びきっていない場合、移動機構制御部85は下流側設備1Bの移動機構制御部95が何らかの要因でインターロック信号を無視して直動機構75を駆動させることにより、第5の基板搬送ヘッド71が受け渡しエリアAへの進入を開始したか判断する(ST5:受け渡しエリア進入開始有無判断工程)。ここでの判断は、インターロック監視部87による監視状況に基づいてなされる。
ここで、下流側設備1Bが上流側設備1Aからのインターロック信号を無視する場合として想定される要因について説明する。一般に、部品実装システム1は部品実装機構を有する設備を複数連結して構成され、本実施の形態では上流側設備1Aと下流側設備1Bがこれに該当する。そして、受け渡しエリアAを介して1枚の基板2を複数の設備間で受け渡し、各設備で所定の実装作業が行われることによって1枚の実装基板が生産される。このような生産形態下では、一の設備に備えられた基板搬送ヘッドが作動している間は他方の設備に備えられた基板搬送ヘッドの作動を制限することによって、受け渡しエリアA内における双方の衝突を回避することが求められる。これを実現するための一の手段として、インターロック機構が用いられる。
しかしながら、部品実装システム1を構成する複数の設備は同一のキャリアで統一されるとは限らず、また同一のキャリアであっても設備間の機種が相違する場合がある。これらの相違に起因して、設備間でインターロック機構が十分に機能せず、一の設備が他の設備からのインターロック信号を無視するような事態が起こり得る。また、同じ機種の設備を揃えた場合であっても、双方の設備からインターロック信号が同時に送信されたような場合には、インターロック機能が正常に機能しない事態が起こり得る。なお、これまで述べた要因は一例である。
そして本実施の形態のように、第2のシリンダ機構67のロッド67aを伸ばすことによって第4の基板搬送ヘッド64を受け渡しエリアAへ進入させる形態下では、インターロック信号を無視して下流側設備1Bの第5の基板搬送ヘッド71が受け渡しエリアAへ進入を開始したとき、シリンダ機構の設計上の理由によりロッド67aの伸び動作を途中で停止させることが困難な場合がある。
(ST5)で、上流側設備1Aからのインターロック信号の送信を無視して下流側設備1Bからインターロック信号が上流側設備1Aへ送信されてきた場合(図11に示す矢印d)、すなわち第5の基板搬送ヘッド71が上流側設備1Aからのインターロック信号を無視して受け渡しエリアAへの進入を開始したことを検知した場合(図12(b)に示す矢印e)、移動機構制御部85は直動機構65の駆動を直ちに停止させるとともに第2のシリンダ機構67のロッド67aを縮ませ(図12(c)に示す矢印f)、第4の基板搬送ヘッド64を上流側設備1A側へ戻す(ST6:ロッド戻し工程)。これにより、第4の基板搬送ヘッド64を受け渡しエリアAから退避させて第5の基板搬送ヘッド71との衝突を回避することができる。
一方、(ST4)で第2のシリンダ機構67のロッド67aが上限まで伸びきった場合、受け渡しエリアAへの進入判断処理を終了する。そして、移動機構制御部85は下流側の各作業部に基板2を移送した後、基板搬送ヘッド61〜64を上流側へ移動させる。
以上説明したように、移動機構制御部85は、第4の基板搬送ヘッド64(上流側搬送部)が上流側設備1Aから受け渡しエリアAに向けて移動しているときに、第5の基板搬送ヘッド71(下流側搬送部)が受け渡しエリアAに向けて移動を開始したことを検知したとき、第4の基板搬送ヘッド64を上流側設備1A側に戻すようにしている。より具体的には、移動機構制御部85は第2のシリンダ機構67のロッド67aを伸ばすことによって第4の基板搬送ヘッド64が受け渡しエリアAに向けて移動しているときに、第5の基板搬送ヘッド71が受け渡しエリアAに向けて移動を開始したことを検知したとき、ロッド67aを縮ませるようにしている。
これにより、第5の基板搬送ヘッド71が上流側設備1Aから送信されるインターロック信号を無視して受け渡しエリアAへの進入を開始した場合であっても、第4の基板搬送ヘッド64を基板受け渡しエリアAから退避させて第5の基板搬送ヘッド71との衝突を回避することができる。特に、本発明は上流側搬送部を移動させる手段として、ロッド67aの伸び動作を途中で停止させることができないシリンダ機構を用いた場合や、機種の異なる設備間で基板2の受け渡しを行うように構成された部品実装システム1においてきわめて有用な効果を奏する。
次に図13を参照して、本発明のその他の実施の形態について説明する。なお、本実施の形態で説明した構成と同一のものについては説明を省略する。ここでは、下流側設備1Bの制御部90にインターロック監視部を新たに設けるとともに、下流側設備1Bの基板搬送部8Cが備えるベース部70をX方向へ移動させる手段として、直動機構75に替えて伸縮自在なロッド78aを有する第5のシリンダ機構78を用いる。すなわち移動機構制御部95は、ロッド78aを伸ばすことにより第5の基板搬送ヘッド71を基板受け渡しエリアAに移動させ、また、ロッド78aを縮ませることにより第5の基板搬送ヘッド71を下流側設備1B内のテープ貼付け部5まで移動させる。
このように、その他の実施の形態では第5のシリンダ機構78が下流側搬送部移動機構となっており、移動機構制御部95はこの下流側搬送部移動機構を制御する。また下流側搬送部移動機構は、基板2の搬送方向であるX方向に伸縮自在なロッド78aを含むシリンダ機構を有し、第5の基板搬送ヘッド71(下流側搬送部)は、ロッド78aが伸びることによって受け渡しエリアAまで移動する。
その他の実施の形態では、下流側設備1Bから送信されるインターロック信号を無視して第4の基板搬送ヘッド64が受け渡しエリアAに進入を開始したことをインターロック監視部によって検知したときに、第5の基板搬送ヘッド71を下流側設備1Bに戻す。すなわち、移動機構制御部95は、第5の基板搬送ヘッド71(下流側搬送部)が下流側設備1Bから受け渡しエリアAに向けて移動しているときに、第4の基板搬送ヘッド64(上流側搬送部)が受け渡しエリアAに向けて移動を開始したことを検知したとき、第4の基板搬送ヘッド64を下流側設備1B側に戻す。より具体的には、移動機構制御部95はロッド78aを伸ばすことによって第5の基板搬送ヘッド71が受け渡しエリアAに向けて移動しているときに、第4の基板搬送ヘッド64が受け渡しエリアAに向けて移動を開始したことを検知したとき、ロッド78aを縮ませる。これにより、第4の基板搬送ヘッド64と第5の基板搬送ヘッド71の衝突を回避することができる。
本発明はこれまで説明した実施の形態に限定されるものではない。例えば、上流側搬送部は基板搬送ヘッドに限定されず、シリンダ機構を用いて受け渡しエリアに進入して基板2を搬送するものであればよい。例えば、ロッドの伸縮によって受け渡しエリアに対して進退可能な基板載置テーブルを上流側設備1Aに設けるとともに、受け渡しエリアに対して進退可能な基板保持アームを下流側設備に設ける。かかる構成を用いた場合の基板2の受け渡し動作は、まず、上流側設備1Aの移動機構制御部85がロッドを伸ばして基板2が載置された基板載置ステージを受け渡しエリアに移動させる。次いで、下流側設備1Bの移動機構制御部が基板保持アームを基板載置テーブルの上方まで移動させた後、当該基板保持アームを下降させる。そして、基板保持アームが有する吸着パッドを介して基板載置テーブル上の基板2を取り出す。このような形態下においては、ロッドを伸ばすことによって基板載置テーブルが受け渡しエリアへ移動しているときに基板保持アームが受け渡しエリアへ進入していることを検知した場合に、ロッドを縮ませて基板載置ステージを上流側設備1Aへ戻すことによって、基板載置テーブルと基板保持アームの衝突を回避することができる。