以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳述する。図1〜図6は立軸平面研削盤に採用した場合の本発明の第1の実施形態を例示する。図1は立軸平面研削盤1を示し、この立軸平面研削盤1は、回転テーブル2上に装着されたワークWの上端面を、砥石軸3の下端に装着され且つ砥石軸3廻りに回転する砥石4により平面研削するように構成されている。
回転テーブル2は周方向の略等配位置に配置され且つワークWをクランプする複数個、例えば2個のワーククランプ装置5を有し、各ワーククランプ装置5が投入排出位置Aと研削位置Bとに位置するようにベッド6上に立軸心廻りにインデックス可能に装着されている。なお、この実施形態のワークWは、外径が軸心方向に略同径の直円面を有する偏平円筒体であるが、その他の形状のものでもよい。
砥石軸3は昇降ヘッド7に立軸心廻りに回転自在に設けられ、この砥石軸3の下端に砥石4が着脱自在に装着されている。砥石軸3はベルト等の伝動機構8を介して駆動モータ9により駆動される。昇降ヘッド7はベッド6上のコラム10に昇降自在に装着されている。
ワーククランプ装置5には、構造的に簡単且つ小型で安価に製作できるダイヤフラムチャック式のものが採用されている。このワーククランプ装置5は、図2〜図5に示すように、底壁12を有するリング状の支持枠13と、支持枠13内で底壁12上に略同心状に固定された有底状のシリンダ14と、外周部がシリンダ14の開口端側に固定されたダイヤフラム15と、ダイヤフラム15上に周方向に所定間隔をおいて配置された複数個、例えば4個のクランプ爪16,16Aと、各クランプ爪16,16A間の略中央でダイヤフラム15上に昇降自在に配置されたワーク台17と、ワーク台17を上昇位置に付勢するワーク台付勢手段18と、4個のクランプ爪16,16Aの内の周方向に隣り合う2個のクランプ爪16間に配置され且つワーク台17上のワークWの外側面を他の2個のクランプ爪16A側へと弾性的に押圧する弾性押圧手段19とを備え、全体として上下に薄い偏平状に構成されている。
ダイヤフラム15は弾性変形により昇降する昇降部15aをクランプ爪16,16Aに対応して環状に備え、シリンダ14内にエアを供給したときにピストン(図示省略)等の押圧により弾性力に抗して昇降部15aが上昇し、シリンダ14内のエアを抜いたときに弾性力により昇降部15aが下降するようになっており、このダイヤフラム15の昇降部15aの上下動により、上昇時に各クランプ爪16,16Aを内側のクランプ姿勢から外側のアンクランプ姿勢へと開放し、下降時に各クランプ爪16,16Aをアンクランプ姿勢からクランプ姿勢へと閉じるようになっている。
各クランプ爪16,16Aは平面視円弧状の取り付け部21と、この取り付け部21の略中央から上側に突出する当接部22とを有し、取り付け部21がダイヤフラム15の昇降部15a上に略同心状に設けられた取り付け台23にネジ等の固定具により着脱自在に固定されている。この4個のクランプ爪16,16Aは、図3に示すように周方向に所定の間隔をおいて配置されており、弾性押圧手段19の両側のクランプ爪16間の間隔が大となり、この弾性押圧手段19側を除く他のクランプ爪16,16A間の間隔が小となっている。各クランプ爪16,16Aの当接部22はワークWの外側面の外径形状に対応して形成されており、アンクランプ姿勢のときに上開き状となり、ワークWを本クランプするクランプ姿勢のときにワークWの外側面に沿って略平行状になる。
クランプ爪16はワークWの外径が当接部22に倣い、その外径を基準にワークWをクランプする構造であればよい。例えば軸心方向に大径部と小径部とを有するワークWを対象とするクランプ爪16,16Aの場合には、大径部に対応する大径用当接部と、小径部に対応する小径用当接部とを設けて、その各当接部がワークWの外径に倣い、その外径を基準にワークWをクランプするようにしてもよい。従って、当接部22はワークWの外側面に対して軸心方向の複数箇所で間欠的にワークWに当接するものでもよい。なお、このような場合にもクランプ爪16,16Aの当接部22は、大径部と小径部との何れか一方に当接してワークWを本クランプするようにしてもよい。
また複数個のクランプ爪16,16Aは、ワークWの外形状を考慮してそのクランプに最適な位置を選択して配置すればよい。例えば、ワークWの外形状が円筒面状の場合には、複数個のクランプ爪16,16Aを周方向の等配位置に配置することも可能である。
ワーク台17は図5に示すように、上面にワークWを載置するための載置面24を有し、昇降体25、受け台26及びワーク台付勢手段18を介してダイヤフラム15上に昇降自在に設けられている。ワーク台17は昇降体25上にボルト等の固定具27により着脱自在に装着されている。
載置面24は、弾性押圧手段19によりワークWの外側面の上部側を水平方向に押圧したときに、ワークWの外側面が弾性押圧手段19と反対側にある2個のクランプ爪16Aに倣い易くなるように、2個のクランプ爪16A側が若干高くなる傾斜角度αの傾斜面状になっている(図6参照)。この載置面24の高い部分24aと低い部分との高低差は、ワークWの外径が同一の場合でも、そのワークWの外径に対するワーク台17の径の大小、ワーク台17と2個のクランプ爪16Aとの間隔の大小等によっても異なるが、例えば0.05mm〜1.00mm程度であることが望ましい。
なお、載置面24の高い部分24aは載置面24のクランプ爪16A側の端部である必要はなく、ワークWの重心位置よりもクランプ爪16A側にあればよい。従って、載置面24は略同一高さの水平状とし、その載置面24の弾性押圧手段19と反対側の離れた位置に突起等により高い部分24aを設けて、この高い部分24aによりワーク台17上のワークWを傾斜させるようにしてもよい。
またワークWの外径に対してワーク台17の外径を十分に小さくする等して、弾性押圧手段19によりワークWの上部側を押圧したときに、ワークWがワーク台17のクランプ爪16A側の端縁を支点としてクランプ爪16Aの当接部22側へと傾斜するようにした場合には、ワーク台17の載置面24は略水平状に設けてもよい。従って、ワーク台17の載置面24は必ずしもクランプ爪16A側に向けて徐々に高くなる傾斜状である必要はない。
昇降体25は図5に示すように下向きに開口する凹部28を略同心状に備え、受け台26の上向きに開口する凹部29内に上下摺動自在に嵌合されると共に、受け台26にボルト等の固定具30により固定された上蓋31から上側に突出している。なお、ワーク台17と昇降体25は一体に設けてもよい。
ワーク台付勢手段18は、通常は昇降体25が上蓋31に当接する上昇位置にワーク台17を保持し、4個のクランプ爪16,16AがワークWを外径基準に本クランプするときに、仮クランプ状態にある2個のクランプ爪16Aがアンクランプ姿勢からクランプ姿勢へと閉じる動作に連動して昇降体25を下降させるものであり、コイル状の圧縮バネ33により構成され、昇降体25の凹部28内で昇降体25と受け台26との間に介在されている。
受け台26はダイヤフラム15の上側に突出する連結部材34の上端部に、ワーク台17の載置面24の傾斜角度αだけダイヤフラム15の軸心Yに対して傾斜して固定され、ダイヤフラム15上の位置決めピン35により位置決めされている。即ち、昇降体25を上下摺動自在に案内する受け台26の摺動面26aは直円筒状であり、その軸心Xは図6(a)に示すようにワーク台17の載置面24に対して略直角に形成されている。一方、受け台26はその摺動面26aの軸心Xがワーク台17の載置面24の傾斜角度αだけダイヤフラム15の軸心Yに対して傾斜して連結部材34の上端部に固定され、ワーク台17の載置面24の傾斜方向が変化しないように位置決めピン35によりダイヤフラム15に位置決めされている。
従って、このように昇降体25を案内する受け台26の摺動面26aの軸心Xをダイヤフラム15の軸心Yに対して傾斜角度αだけ傾斜させておき、この受け台26を位置決めピン35によりダイヤフラム15に位置決めすることにより、ワーク台17の載置面24を受け台26の摺動面26aの軸心Xと略直角にできる等、受け台26に対するワーク台17、昇降体25の廻り止め等が不要で構造的に簡単にできると共に、組み立てミス等の発生を防止できる利点がある。
連結部材34は支持枠13の底壁12から突出する突出部(図示省略)に着脱自在に固定されると共に、ダイヤフラム15を相対上下動自在に貫通して受け台26に挿通されている。なお、連結部材34は上端に頭部36を有し、この頭部36の下側に受け台26が固定されている。
ワーク台17はダイヤフラム15の昇降部15aの上下動と関係なく、受け台26により昇降体25を介して上下動自在に支持され、通常は圧縮バネ33の付勢により上昇位置に保持されている。そして、ワーク台17はクランプ爪16,16Aがワーク台17に載置されたワークWを本クランプするときに、ワークWを介して加わる下向きの荷重により圧縮バネ33に抗して下降し、クランプ爪16,16AによるワークWの本クランプを助けるようになっている。
昇降体25上には、受け台26と昇降体25との間にクーラント等が入らないように、ワーク台17の下側で受け台26及び上蓋31等を上側から覆うカバー37が設けられている。連結部材34にはエア供給孔39が、受け台26には排出孔40が夫々設けられている。また昇降体25には外周の周溝38aと、この周溝38aと凹部18とを連通させる連通孔38bとが設けられている。そして、受け台26、昇降体25の内部空間には常時エア供給孔39からエアを供給して、受け台26、昇降体25の内部空間のエア圧を周辺よりも若干高めに保つことによりクーラント、研削屑等の異物が入らないようにしている。
弾性押圧手段19は図3、図5に示すように、支持枠13上に設けられた固定枠42と、この固定枠42の上下方向の揺動軸43により揺動自在に枢支された揺動アーム44と、揺動アーム44の先端部に設けられた押圧部45と、揺動アーム44を固定枠42に対して押圧方向に付勢する揺動アーム付勢手段46と、押圧部45を揺動アーム44に対して押圧方向に付勢する押圧部付勢手段47と、押圧部45によるワークWの押し過ぎを規制するストッパ48と、ローディング装置(図示省略)の昇降動作に連動して揺動アーム44を揺動させる連動機構49とを備えている。
固定枠42は支持枠13に一体でもよいし、ネジ等の固定具により着脱自在に設けてもよい。押圧部45はワーク台17上に投入されたワークWの側面の上部を略径方向に水平に押圧するためのもので、押圧ボルト等により構成されており、揺動アーム44の先端部にワークWの略中心方向に摺動自在に挿通されると共に、押圧部付勢手段47により揺動アーム44に対して押圧方向に付勢されている。押圧部付勢手段47は押圧部45の頭部45aと揺動アーム44との間で押圧部45に套嵌された圧縮バネ51により構成されている。なお、押圧部付勢手段47は揺動アーム44と押圧部45との構造に応じて圧縮バネ51の他、引張バネ、つる巻きバネ、その他の弾性体により構成してもよい。
揺動アーム付勢手段46は圧縮バネ52により構成されている。圧縮バネ52は揺動軸43から押圧部45側に離れた位置で揺動アーム44に設けられたバネ受け部53と、このバネ受け部53と対向して固定枠42に設けられたバネ受け部54との間に介在され、揺動アーム44を揺動軸43廻りにワークWの押圧方向に付勢するようになっている。なお、揺動アーム付勢手段46は固定枠42と揺動アーム44との構造に応じて圧縮バネ52の他、引張バネ、つる巻きバネ、その他の弾性体により構成してもよい。
弾性押圧手段19の押圧部45による押圧力は、ワークWを2個のクランプ爪16Aとの間で仮クランプできれば十分であり、各クランプ爪16,16AがワークWをクランプする力よりも十分に小さく設定されている。なお、押圧部45の押圧力は押圧部付勢手段47の圧縮バネ51により決定される。
ストッパ48はボルト等により構成され、固定枠42上の固定部55に揺動アーム44に対応して螺合されている。なお、ストッパ48は揺動アーム44の後退方向への揺動位置を規制できれば、揺動アーム44のどの部位に当接するように設けてもよい。またストッパ48は揺動アーム44の規制位置を調整できるように固定部55に進退可能に設けてもよい。
連動機構49は図3、図4に示すように、ローディング装置が下降したときに押圧部45をワークWの投入領域から外側に後退させ、ローディング装置が上昇したときに押圧部45の後退を解除するためのものであり、揺動アーム44に形成されたピン孔と、固定枠42に形成された案内孔58と、ローディング装置に下向きに設けられ且つ投入排出位置Aでのローディング装置の上下動によりピン孔57、案内孔58に挿脱自在に挿入される操作ピン59とを備えている。
操作ピン59は下端にテーパ部を有する。固定枠42の案内孔58はローディング装置が投入排出位置Aにあるときの操作ピン59の軸心上に設けられている。揺動アーム44のピン孔57は揺動アーム44がストッパ48に当接した状態のときにその内周の被操作部57aが案内孔58内に突出した位置にあり、ローディング装置の下降により操作ピン59がピン孔57を経て案内孔58に挿入されるときに、操作ピン59により被操作部57aが反押圧方向に操作されて、押圧部45がワークWの投入領域から外側に移動すべく揺動アーム44を揺動軸43廻りに反押圧方向に揺動させるようになっている。
このような構成の立軸平面研削盤1において、ワークWの上端面を砥石4により平面研削するに際して、ワークWの外径を基準にその外径の軸心に対して略直角に研削する場合には、次のような方法により行う。先ずローディング装置により投入排出位置Aにあるワーククランプ装置5にワークWを投入し、そのワークWをワーククランプ装置5により上向き状態でクランプする。次に回転テーブル2がインデックスして、ワークWを投入排出位置Aから砥石4の下の研削位置Bへと移動させた後、砥石軸3廻りに回転する砥石4を下降させてワークWの上端面を研削する。
ワークWの研削が終了すると、砥石4の上昇後に回転テーブル2がインデックスして、研削前のワークWを投入排出位置Aから研削位置Bに、研削済みのワークWを研削位置Bから投入排出位置Aに夫々移動させて行く。そして、投入排出位置Aではワーククランプ装置5が研削済みのワークWをアンクランプし、ローディング装置が下降して研削済みのワークWを掴み、その後にローディング装置が上昇して研削済みのワークWを外部へ排出する。
投入排出位置Aにおいて、ローディング装置によりワーククランプ装置5にワークWを投入する際には、ダイヤフラム15の昇降部15aが上昇して各クランプ爪16,16Aが外側に開放したアンクランプ姿勢にあり、略径方向に相対向するクランプ爪16,16Aの当接部22の上側の間隔が広がっている。そして、ローディング装置によりワークWをワーク台17の直上まで移動させた後、ローディング装置を下降させて、図6(a)に示すようにワークWをアンクランプ姿勢にあるクランプ爪16,16A間のワーク台17上に載置する。
このときローディング装置が下降を開始すると、図4に実線及び二点鎖線で示すように、先ず操作ピン59が揺動アーム44のピン孔57から固定枠42の案内孔58へと挿入され、その操作ピン59により揺動アーム44の被操作部57aが反押圧方向(後退方向)に押圧されるので、揺動アーム44が揺動アーム付勢手段46に抗しながら揺動軸43廻りに反押圧方向へと揺動する。このため下降中のワークWが弾性押圧手段19の押圧部45に達する前に、揺動アーム44の先端部に設けられた押圧部45がワークWの投入領域の外側へと後退し、その後にワークWがワーク台17の上側近傍まで下降してワーク台17の載置面24上に載置される。従って、ワーク台17の上側に弾性押圧手段19があり、その押圧部45がワーク台17の上側へと突出した状態にあるにも拘わらず、その押圧部45と干渉することなくワークWをワーク台17上に容易且つ円滑に投入することができる。
ローディング装置がワーク台17上でワークWの把持を解除すると、ワークWの下端面がワーク台17の載置面24に載り、ワークWは載置面24の傾斜角度αに応じて押圧部45側へと僅かに傾斜した状態となる。そして、ワークWを投入後のローディング装置が弾性押圧手段19の押圧部45よりも上側に上昇すると、その後に操作ピン59が揺動アーム44のピン孔57から上側へと抜けて、操作ピン59による揺動アーム44の後退側への押圧が解除される。
そして、揺動アーム44が揺動アーム付勢手段46の付勢により揺動軸43廻りに押圧方向に揺動して、その押圧部45がワーク台17上のワークWの外側面の上部を押圧する。これによって図6(b)に示すようにワーク台17上のワークWの反対側の外側面をアンクランプ姿勢にある2個のクランプ爪16Aの当接部22に沿って押し付けることができ、その外側面がクランプ爪16Aの当接部22に倣う状態で弾性押圧手段19の押圧部45と2個のクランプ爪16AとによりワークWを仮クランプすることができる。
このとき押圧部45がワークWの外側面の上部を低い側から水平方向に押圧すれば、ワーク台17上のワークWは、載置面24の高い側を支点として低い側が載置面24から浮き上がって起き上がり、その外側面が2個のクランプ爪16Aの当接部22に沿って倣う状態となる。即ち、押圧部45がワークWの上部を押圧すれば、ワークWは載置面24の高い側を支点として起き上がりながら2個のクランプ爪16A側へと摺動するか、又は摺動して下端部が2個のクランプ爪16Aの当接部22に当接した後に、その下端部を支点として起き上がる等によって、その外側面を2個のクランプ爪16Aの当接部22に沿って容易に倣わせることができる。
押圧部45によりワークWを水平方向に押圧する際には、ワークWがクランプ爪16Aの当接部22に当接するときの当接位置よりも上側を押圧することになる。この場合、当接位置はワークWの外形状、クランプ爪16Aの当接部22の構造等によって異なり、ワークWの下端又はその近傍とは限らないが、ワークW、クランプ爪16Aの外形状、構造等が決まれば、それに応じて当接位置は略一定位置に定まる。従って、比較的小さい押圧力でワークWを押圧するためには、その当接位置からできるだけ上側に離れた位置を押圧位置とすることが望ましい。
次にダイヤフラム15の昇降部15aを下降させて、ワークWの仮クランプ状態を保ちながら4個のクランプ爪16,16AによりワークWを本クランプする。即ち、ダイヤフラム15の昇降部15aが下降すると、その下降に伴って4個のクランプ爪16,16Aが内側へと起立してクランプ姿勢へと閉じる。このとき2個のクランプ爪16Aは弾性押圧手段19の押圧部45との間でワークWを仮クランプした状態のままで内側へと起立するが、弾性押圧手段19の押圧部45の押圧力(押圧部付勢手段47による付勢力)が各クランプ爪16,16Aのクランプ力よりも小さいので、2個のクランプ爪16Aが仮クランプ状態のワークWを介して弾性押圧手段19の押圧部45を押し返し、押圧部付勢手段47に抗して後退する。
このためワークWは2個のクランプ爪16Aと弾性押圧手段19の押圧部45とによって仮クランプされた状態のままで4個のクランプ爪16,16Aの中央側へと移動し、ワークWが4個のクランプ爪16,16Aの中央に位置したときに、仮クランプしていた2個のクランプ爪16Aの当接部22と同様に、他の2個のクランプ爪16の当接部22がワークWの外側面に沿って当接して、図6(c)に示すように4個のクランプ爪16,16AによりワークWを本クランプする。
仮クランプ中のワークWはその下端面がワーク台17の載置面24の高い部分に載った状態にあるため、4個のクランプ爪16,16AによりワークWを外径基準に本クランプする際に、仮クランプ状態のままで2個のクランプ爪16Aを内側へと閉じると、ワークWを介してワーク台17に下向きの外力が加わることになる。するとワーク台17は昇降体25を介して受け台26に対して昇降自在であり、ワーク台付勢手段18により上向きに付勢されているので、ワークWを介して下向きの外力が加わればワーク台17がワーク台付勢手段18に抗して下降する。このためワーク台17に載った状態でワークWを仮クランプするにも拘わらず、ワークWの動きに合わせてワーク台17が下降することにより、仮クランプ状態のワークWの姿勢を保ったままで4個のクランプ爪16,16Aによる本クランプへとスムーズに移行することができる。
この結果、4個のクランプ爪16,16AによりワークWを外径基準に確実に本クランプできるため、その状態で砥石4によりワークWの上端面を平面研削することによって、ワークWの研削側端面を外径基準に略直角に研削することができ、ワークWの外径と研削側端面との直角度を保証することができる。
またワーククランプ装置5は各クランプ爪16,16Aがダイヤフラム15に装着されたダイヤフラムチャック式であるため、ダイヤフラム15を駆動するシリンダ14にエア配管することにより構成できる等、ワーククランプ装置5自体の構造を簡単にでき、大型化や製作コストの高騰を抑制することができる。
しかも周方向に4個のクランプ爪16,16Aを配置し、その1箇所のクランプ爪16間の周方向の間隔を大にして弾性押圧手段19の押圧部45を配置し、他の各クランプ爪16,16A間の周方向の間隔を小さくし略均等にすることにより、押圧部45によりワークWを2個のクランプ爪16A間に向かって略均等に押圧しながら、その2個のクランプ爪16Aと押圧部45との3点でワークWを安定して確実に仮クランプでき、その後に4個のクランプ爪16,16Aによる外径基準の本クランプの信頼性も向上する。
更にワーク台17は2個のクランプ爪16A側が高くなっており、弾性押圧手段19の押圧部45でワークWの外側面の上部側を押圧したときに、ワーク台17の高い側を支点としてワークWが起き上がるため、ワークWの外径をアンクランプ姿勢にある2個のクランプ爪16Aの当接部22に沿って容易に倣わせることができる。また仮にワークWの外側面とクランプ爪16Aの当接部22との間に多少の隙間があっても、ワーク台17上でのワークWの起き上がりによりワークWとワーク台17との摩擦抵抗が小さくなるため、ワークWをアンクランプ姿勢のクランプ爪16A側へとスムーズに移動させることができる。
図7は本発明の第2の実施形態を例示する。この実施形態では、ワーク台17の載置面24が傾斜角度αだけ傾斜した状態で上下動するように、受け台26の上蓋31により昇降体25を上下摺動自在に案内している。
受け台26はその上面に傾斜角度αの傾斜取り付け面26bを有し、この傾斜取り付け面26bに固定具30により上蓋31が着脱自在に固定されている。上蓋31は受け台26の傾斜取り付け面26bに当接する下面に対して略直角に形成された摺動面31aを同心状に備え、その摺動面31aにより昇降体25が上下摺動自在に支持案内されている。ワーク台26の載置面24は摺動面31aに対して略直角であり、上蓋31の下面と略平行である。なお、昇降体25の下部側は受け台26の内周面に遊嵌されている。他の構成は第1の実施形態と同様である。
このように受け台26上の上蓋31により昇降体25を案内するようにしてもよい。この場合には、受け台26の上面に傾斜角度αの傾斜取り付け面26bを設けることにより、ワーク台26の載置面24をダイヤフラム15の軸心Yに対して傾斜角度αで傾斜させることができる。また受け台26の傾斜取り付け面26b以外の部分はワーク台26の載置面24に略平行又は略直角に形成すればよいので、ワーク台26、昇降体25及び受け台26の夫々の加工を容易にできる利点がある。
しかも組み立てに際しては受け台26を位置決めピン35でダイヤフラム15に位置決めした後、その受け台26の傾斜取り付け面26bに上蓋31を固定具30で固定すればよく、第1の実施形態と同様に容易に組み立てることができる。
図8は本発明の第3の実施形態を例示する。この実施形態の揺動アーム44は、固定枠42上に配置された主体部60と、この主体部60から固定枠42の下側へと突出する下側部61とを有し、その下側部61にピン孔57が形成されている。固定枠42には、操作ピン59の軸心上の通孔62に装着され且つ操作ピン59を挿脱自在に案内する案内筒63とが設けられている。案内筒63は固定枠42から上側に突出しており、この案内筒63と干渉しないように、揺動アーム44の主体部60には切り欠き部64が形成されている。他の構成は第1の実施形態と同様である。
この場合には、ローディング装置が下降する際に、操作ピン59が先ず案内筒63に案内されながら下降して下側部61のピン孔57へと進入し、第1の実施形態と同様にその被操作部57aを操作して揺動アーム44を揺動軸43廻りに後退方向へと揺動させる。このように操作ピン59を案内筒63で案内しながら、その操作ピン59により案内筒63の下側近傍にある下側部61の被操作部57aを操作することによって、操作ピン59に加わる負荷を軽減できその変形等の損傷を少なくすることができる。
図9は本発明の第4の実施形態を例示する。弾性押圧手段19の押圧部45はワークWの外側面の上部側を斜め上側に向かって上向きに押圧するように構成されている。ワーク台17の載置面24は押圧部45と反対側に高い部分24aがあるが、水平状でもよい。他の構成は第1の実施形態と同様である。
このように弾性押圧手段19の押圧部45によりワークWの外側面の上部を上向きに押圧することによっても、ワーク台17上のワークWが高い部分24aを支点として、又はワークWの当接部22に対する当接位置を支点として起き上がり、アンクランプ姿勢にある2個のクランプ爪16Aの当接部22に沿って当接させることができる。
また押圧部45によるワークWの押圧方向を、ワーク台17の載置面24と略平行又は載置面24の傾斜角度αよりも上向きとすることによって、押圧部45によるワークWの押圧時に下向きの分力が発生しなくなり、ワーク台17上のワークWが載置面24に沿って摺動するときの摺動抵抗も小さくできる。従って、押圧部45はワーク台17上のワークWを水平方向に押圧する他、斜め上向きに押圧するように配置してもよい。
図10、図11は本発明の第5の実施形態を例示する。この実施形態では、ワーク台17をクランプ爪16,16Aと同数の複数個、例えば4個の受け部66に分割し、その各受け部66をクランプ爪16,16Aの当接部22の内周側に一体に設けている。
受け部66は、クランプ爪16,16Aの取り付け部21から内側に突出する突出部67の内端に、取り付け部21に沿って略同心状に平面視円弧状に形成されている。そして、弾性押圧手段19の押圧部45と反対側の2個の受け部66は押圧部45と反対側の端部が高くなり、押圧部45側の2個の受け部66は押圧部45に近い側の端部が低くなるように、各受け部66の上端に略連続状に傾斜する受け面66aが形成されている。
このような構成の場合にも、仮クランプ状態のワークWを4個のクランプ爪16によりクランプする際に、各クランプ爪16のクランプ動作と一体に受け部66が下降するため、その受け部66によってワークWの動きが規制されるようなことはない。従って、各クランプ爪16,16Aに一体に受け部66を設けて、その各受け部66によりワーク台17を構成することも可能であり、これによってワーククランプ装置5全体の構造を更に簡素化することができる。なお、受け部66はクランプ爪16,16Aと同数である必要はなく、受け部66のないクランプ爪16,16Aを含んでワーククランプ装置5を構成してもよい。また各受け部66は略同じ高さとしてもよい。
図12、図13は本発明の第6の実施形態を例示する。この実施形態の受け部66は、クランプ爪16,16Aの当接部22の略内側に対応して突出部67の内端に平面視棒状の突起等により形成されている。この受け部66は、押圧部45と反対側の2個の受け部66が高くなり、押圧部45側の2個の受け部66が低くなるように形成されている。このような場合にも、第5の実施形態と同様に実施することができる。
図14は本発明の第7の実施形態を例示する。この実施形態のワークWは、円筒面部69とこの円筒面部69から径方向の外側へと放射状に突出する突出部70とを有する。このようなワークWの場合にも、円筒面部69、突出部70の何れかに対応してクランプ爪16,16A、押圧部45を配置することにより、そのワークWを外径基準でクランプして平面研削することができる。なお、図14のワークWは、円筒面部69の外周に略同一幅の突出部70が略等配位置にあるが、各突出部70の周方向の幅、各突出部70間の周方向の間隔が異なるものでもよい。
クランプ爪16,16A、弾性押圧手段19は図14(a)〜(c)に示すように配置すればよい。図14(a)の場合には、円筒面部69に対応して各クランプ爪16,16Aが配置され、1個の突出部70に対応して弾性押圧手段19の押圧部45が配置されている。また図14(b)の場合には、各突出部70に対応して各クランプ爪16,16Aが配置され、1個の突出部70に対応して弾性押圧手段19の押圧部45が配置されている。更に図14(c)の場合には、円筒面部69に対応して各クランプ爪16が配置され、その1箇所のクランプ爪16と並べて押圧部45が配置されている。
以上、本発明の各実施形態について説明したが、本発明はこの実施形態に限定されるものではない。例えば実施形態では、回転テーブル2にワーククランプ装置5を備えた立軸平面研削盤1について例示しているが、砥石軸3を横方向に配置した横軸平面研削盤、砥石軸3を斜め方向に配置した傾斜軸平面研削盤等でも同様に実施できる。横軸平面研削盤、傾斜軸平面研削盤の場合には、下側のクランプ爪16Aと上側の弾性押圧手段19とでワークWを仮クランプし、その仮クランプ状態を保ちながら本クランプに移行するようにすればよい。
また平面研削盤用のワーククランプ装置5の他に、平面研削盤から分離された独立のワーククランプ装置5に採用することも可能であり、平面研削盤、その他の各種の加工装置に採用可能な汎用品としてもよい。またワーククランプ装置5はダイヤフラムチャック式以外のもの、例えばコレットにより各クランプ爪16が開閉するコレットチャック式でもよい。ダイヤフラム15等以外の他の連動手段により複数個のクランプ爪16を連動して開閉するようにしたものでもよい。従って、各クランプ爪16,16Aの駆動形式は別に問題ではない。
ダイヤフラム15に複数個のクランプ爪16,16Aを備えたワーククランプ装置5の場合でも、そのクランプ爪16,16Aの数は2個以上の複数個あればよく、また各クランプ爪16,16Aは略等配位置に配置してもよいし、ワークWの外周形状に応じて不規則に配置してもよい。従って、実施形態に例示のようにクランプ爪16,16Aが4個のものに限定されるものではない。
また弾性押圧手段19の押圧部45との間でワークWを仮クランプする場合のクランプ爪16Aは1個でもよいし、2個、3個等の複数個でもよい。クランプ爪16,16Aが周方向に複数個ある場合に、その複数個のクランプ爪16,16Aの内の一部である1個又は複数個のクランプ爪16Aと弾性押圧手段19とでワークWを仮クランプできるようにすればよい。
例えば、クランプ爪16,16Aが周方向に4個ある場合には、その4個のクランプ爪16,16Aの一部である1個、2個又は3個のクランプ爪16Aと弾性押圧手段19とによりワークWを仮クランプできればよい。但し、その1個、2個又は3個のクランプ爪16Aは、ワークWに対して弾性押圧手段19と略反対側にあるものとなる。
またクランプ爪16Aが1個の場合には、この1個のクランプ爪16Aとの間でワークWを仮クランプするように押圧部45を周方向に複数個設けてもよい。例えば2個の押圧部45でワークWを1個のクランプ爪16A側に押圧して、そのワークWの外側面が1個のクランプ爪16Aに沿って倣うようにすれば、その状態でワークWを仮クランプすることができ、その後、全てのクランプ爪16,16AでワークWを外径基準でクランプすることができる。なお、クランプ爪16,16Aの当接部22が周方向に所定の長さを有するような場合には、1個のクランプ爪16Aと1個の押圧部45とによりワークWを仮クランプすることも可能である。
弾性押圧手段19は揺動軸43廻りに揺動する揺動式のものを例示しているが、ワークWの略径方向に略直線的に出退するように構成してもよい。またローディング装置の昇降に連動して弾性押圧手段19を出退させる連動機構49は操作ピン59、ピン孔57により構成しているが、ローディング装置の機構等に応じて他の構成のものを採用することも可能である。
クランプ爪16,16Aがアンクランプ状態のときにワーク台17を上昇位置に規制できる場合には、ワーク台17がダイヤフラム15の昇降部15aの上下動に連動して上下動するようにしてもよい。例えば、受け台26を連結部材34に対して摺動自在に設け、この受け台26の上昇位置を連結部材34の規制部36で規制するように構成すれば、アンクランプ状態のときのワーク台17の上昇位置を略一定に維持できるので、ダイヤフラム15の昇降部15aが下降してクランプ爪16,16Aがアンクランプ状態からクランプ状態に移行するときに、ワーク台17、受け台26がダイヤフラム15に連動して下降するようにしてもよい。
この場合、ダイヤフラム15の昇降部15aの下降量に対して、クランプ爪16,16AがワークWをクランプするときのワークWの下降量が大であれば、昇降体25、ワーク台付勢手段18によりその下降量の差を吸収すればよい。また両者の下降量を一致させておけば、昇降体25、ワーク台付勢手段18等を省略して、ワーク台17と受け台26とを一体化することもできる。
第1の実施形態では、受け台26の摺動面26aの軸心Xをダイヤフラム15の軸心Yに対して傾斜状とし、ワーク台17の上側の載置面24を昇降体25と受け台26との摺動面の軸心Xに対して略直角に形成することにより、ワーク台17の上側の載置面24をダイヤフラム15の軸心Yに対して傾斜させているが、昇降体25、受け台26をダイヤフラム15の軸心Yに平行に設け、ワーク台17の上側の載置面24をダイヤフラム15の軸心Yに対して傾斜状に形成してもよい。その場合には、昇降体25と受け台26との摺動面が円筒面状であるため、クランプ爪16Aに対してワーク台17の載置面24の傾斜方向が略一定となるように、案内キーその他の案内手段、廻り止め手段、位置決め手段等を介して相対上下動自在に結合する必要がある。
また複数個のクランプ爪16,16Aをダイヤフラム15により駆動する場合には、ワーク台17の載置面24はダイヤフラム15の軸心Yに対して傾斜させればよいが、ダイヤフラム15を使用しないワーククランプ装置5の場合には、複数個のクランプ爪16,16AがワークWを本クランプしたときのワークWの軸心、即ち本クランプ状態にある複数個のクランプ爪16,16A間の中心軸に略直角な平面を基準に、その平面に対してワーク台17の載置面24を若干(傾斜角度α)傾斜させてもよい。
第1の実施形態では、受け台26により昇降体25を直接案内し、また第2の実施形態では、受け台26により上蓋31を介して昇降体25を間接的に案内している。従って、何れの場合にも、載置面24が傾斜角度αで傾斜するワーク台17を上下動自在に支持案内することが可能であることから、これらの受け台26及び上蓋31により、載置面24が傾斜角度αで傾斜するワーク台17を上下動自在に支持し案内する一つの支持案内手段26,31が構成されている。
また第2の実施形態では、受け台26の上面に傾斜取り付け面26bを設け、上蓋31の下面を摺動面31aに対して略直角にしているが、受け台26の上面をダイヤフラム15の軸心Yに対して略直角にし、上蓋31の下面に傾斜角度αの傾斜取り付け面を設け、この傾斜取り付け面に対して上蓋31の摺動面31aを略直角に形成することも可能である。
各実施形態のワークWは外側面が線対称に形成されたものを例示しているが、非対称のものでもよい。但し、非対称のワークWの場合には、ワーククランプ装置5側の各クランプ爪16,16A及び弾性押圧手段19とワークWとが干渉しないように、ワーククランプ装置5側に位置決め手段を設けることが望ましい。その場合に例えば昇降体25及びカバー37から外れた位置でワークWを位置決めするように、受け台26から上側に突出するように位置決め突起を設けることが考えられる。