[シート状伸長性有機基材]
本発明のシート状伸長性有機基材においては、伸長性ポリマー母材中に、応力発光体と樹脂材料とを含む応力発光部(応力発光ポリマー部)が部分的に且つ一体的に形成されている。そして、前記応力発光部の表面形状又は当該シート状伸長性有機基材表面を投影面としたときの投影形状(シート状伸長性有機基材の表面側から見た形状;以下、「基材表面投影形状」と称する場合がある)が、中実状、線状又は輪帯状である。このようなシート状伸長性有機基材では、応力による発光の効率を高めるため応力発光部を硬くしても、有機基材を全体として伸長させることができる。このため、曲面等の3次元形状を有する構造物への装着が可能である。また、可動部、伸縮部、折り曲げ部を有する構造体へ装着することもできる。さらに、伸長性有機基材を伸長させることにより、応力発光部に応力が加わることで、該応力発光部を発光させることができる。
本発明のシート状伸長性有機基材において、応力発光部は該有機基材の広範囲に亘る領域に形成されていてもよく、該有機基材の一定の広さを持つ所定の領域に局所的に形成されていてもよい。
図1は本発明のシート状伸長性有機基材の一例を示す概略斜視図である。図2は図1のシート状伸長性有機基材のII−II線断面を示す概略斜視図である。図1及び2において、シート状伸長性有機基材1は、伸長性ポリマー母材2(伸長性ポリマー母材部)と、該伸長性ポリマー母材2中に部分的に且つ一体的に形成されている応力発光部3とで構成されている。
図1及び2の例では、応力発光部3は中実状であり、応力発光部3の表面形状又は基材表面投影形状も中実状である。中実状とは、伸長性ポリマー母材との境界より内方全体が応力発光部を構成する材料で埋まった状態であることを意味する。したがって、この場合、応力発光部においては、その領域の内部に伸長性ポリマー母材部は存在しない。
応力発光部3は伸長性ポリマー母材2中に部分的且つ一体的に形成されていればよく、例えば、1箇所のみに形成されていてもよく、複数の箇所に非連続的に散在若しくは点在していてもよい。応力発光部3の形状は特に限定されず、目的に応じて適宜選択でき、例えば、略円柱状、略直方体状等の柱状(特に、シート厚み方向に延びる柱状)、不定形状等のいずれであってもよい。
このシート状伸長性有機基材において、中実状の応力発光部3の面方向の長軸(最長部)の長さ(例えば、直径)は、例えば0.05mm〜10cmである。この長さが小さすぎると、応力発光部の利用価値が小さくなり、逆に大きすぎると、製造しにくくなる。中実状の応力発光部3の面方向の長軸(最長部)の長さは、好ましくは0.1mm以上、より好ましくは0.5mm以上、さらに好ましくは1mm以上、特に好ましくは2mm以上であり、とりわけ5mm以上が好ましい。また、中実状の応力発光部3の面方向の長軸の長さ(最長部)の上限は、8cmが好ましく、5cmが特に好ましい。
中実状の応力発光部3は伸長性ポリマー母材2中のどの部位に形成されていてもよいが、中実状の応力発光部3を有効に活用できる点で、少なくとも一方の表面に露出した状態で形成されているのが好ましい。中実状の応力発光部3の表面形状(少なくとも一方の表面形状)、又は応力発光部3が表面に露出していない場合は応力発光部3のシート状伸長性有機基材1の表面(少なくとも一方の表面)を投影面としたときの投影形状(シート状伸長性有機基材1表面側から見た形状)は、略円形(真円、楕円等)、略多角形(略三角形、略矩形、略五角形、略六角形等)、無定形(不定形)、あるいは、文字、記号若しくは数字を表す形状;周知の図形、マークを表す形状などのいずれであってもよい。中実状の応力発光部3の前記表面形状又は基材表面投影形状が略多角形の場合、その内角は90度以下であってもよく、90度を超える角度であってもよい。製造のし易さの点からは、中実状の応力発光部3の前記表面形状又は基材表面投影形状は略円形、略矩形であるのが好ましい。
前記伸長性ポリマー母材2中に中実状の応力発光部3が複数形成されている場合、該複数の応力発光部3はランダムに形成されていてもよく、規則的パターンで形成されていてもよい。複数の応力発光部3が規則的パターンで形成されている場合、隣接する応力発光部3間の距離(最短距離)は、例えば、0.05mm〜50cmであり、該距離の上限は、好ましくは30cm、より好ましくは20cm、さらに好ましくは15cm、特に好ましくは10cmである。また、該距離の下限は、好ましくは0.1mm、より好ましくは1mm、さらに好ましくは3mm、特に好ましくは5mmである。
また、複数の中実状の応力発光部3が規則的パターンで形成されている場合、隣接する中実状の応力発光部3の中心(重心)間の距離は、例えば、5mm〜80cmであり、該距離の上限は、好ましくは50cm、より好ましくは30cm、さらに好ましくは20cm、特に好ましくは12cmである。また、該距離の下限は、好ましくは10mm、より好ましくは15mm、さらに好ましくは20mm、特に好ましくは25mmである。
予め中実状の応力発光部3を規則的パターンで形成しておけば、切断により、多数のシート状伸長性有機基材1を効率よく製造できる。なお、中実状の応力発光部3が複数形成されている場合、複数の応力発光部3の形状、大きさは同一であっても異なっていてもよい。複数の応力発光部3が同じ形状及び大きさである場合には、同一の形状及び大きさを有するシート状伸長性有機基材を生産効率よく製造できる。
図3は本発明のシート状伸長性有機基材の他の例(部分)を示す概略斜視図である。図3において、シート状伸長性有機基材1は、伸長性ポリマー母材2(伸長性ポリマー母材部)と、該伸長性ポリマー母材2中に部分的に且つ一体的に形成されている応力発光部3とで構成されている。応力発光部3は伸長性ポリマー母材2中に部分的に且つ一体的に形成されていればよく、例えば、1箇所のみに形成されていてもよく、複数の箇所に非連続的に形成されていてもよく、また複数の応力発光部が交差していてもよい。
図3の例において、応力発光部3の表面形状又は基材表面投影形状は線状であり、該「線」は所定の幅を有している。前記線状の種類は、特に限定されず、例えば、直線状、折れ線状、波線状や弧線状等の曲線、無定形線状の何れであってもよい。また、前記表面形状又は基材表面投影形状が直線状である応力発光部を複数有している場合、該複数の応力発光部は平行であってもよく、交差していてもよく、またねじれの位置にあってもよい。
応力発光部3の表面形状又は基材表面投影形状である線の幅(線幅)は、目的や用途に応じて適宜設定でき、例えば0.01mm〜5cmである。応力発光部3の表面形状又は基材表面投影形状である線の幅(線幅)の下限は、好ましくは0.05mm、さらに好ましくは0.1mmである。応力発光部3の表面形状又は基材表面投影形状である線の幅(線幅)の上限は、好ましくは2cm、さらに好ましくは1cmである。応力発光部3の表面形状又は基材表面投影形状である線の長さは、目的や用途に応じて適宜設定でき、例えば0.5mm〜10mである。応力発光部3の表面形状又は基材表面投影形状である線の長さの下限は、好ましくは5mm、さらに好ましくは1cmである。応力発光部3の表面形状又は基材表面投影形状である線の長さの上限は、好ましくは5m、さらに好ましくは1mである。応力発光部3の表面形状又は基材表面投影形状である線の長さと線幅の比(線の長さ/線幅)は、例えば3以上であり、好ましくは5以上、より好ましくは10以上、さらに好ましくは50以上、特に好ましくは100以上である。
応力発光部3は伸長性ポリマー母材2中のどの部位に形成されていてもよい。例えば、応力発光部3は、シート状伸長性有機基材1の少なくとも一方の表面に露出した状態で形成されていてもよく、またシート状伸長性有機基材1の表面に露出していない状態で形成されていてもよい。応力発光部3がシート状伸長性有機基材1の少なくとも一方の表面に露出した状態で形成されている場合、応力発光部3の表面形状と基材表面投影形状とは、形状や大きさが異なっていてもよい(内部で膨らみがある場合等)。応力発光部3がシート状伸長性有機基材1の表面に露出していない状態で形成されている場合には、応力発光部3のシート状伸長性有機基材1の表面(少なくとも一方の表面)を投影面としたときの投影形状(シート状伸長性有機基材1表面側から見た形状)が線状である。
応力発光部3を有効に活用できる観点からは、応力発光部3はシート状伸長性有機基材1の少なくとも一方の表面に露出した状態で形成されているのが好ましい。
前記伸長性ポリマー母材2中に応力発光部3が複数形成されている場合、該複数の応力発光部3はランダムに形成されていてもよく、規則的パターンで形成されていてもよい。予め応力発光部3を規則的パターンで形成しておけば、切断により、多数のシート状伸長性有機基材1を効率よく製造できる。なお、応力発光部3が複数形成されている場合、複数の応力発光部3の形状、大きさは同一であっても異なっていてもよい。複数の応力発光部3が同じ形状及び大きさである場合には、同一の形状及び大きさを有するシート状伸長性有機基材を生産効率よく製造できる。
複数の応力発光部3が規則的パターンで形成されている場合、複数の応力発光部3の前記表面形状又は基材表面投影形状における各中心線は平行であってもよく、交差していてもよい。
複数の応力発光部3の前記表面形状又は基材表面投影形状における中心線が平行である場合、隣接する応力発光部3の前記表面形状又は基材表面投影形状における中心線間の距離(シート状伸長性有機基材表面又はシート状伸長性有機基材投影面での中心線間の距離)は、例えば0.01mm〜50cmである。隣接する応力発光部3の前記表面形状又は基材表面投影形状の中心線間の距離の下限は、好ましくは0.1mm、さらに好ましくは1mmである。隣接する応力発光部3の前記表面形状又は基材表面投影形状の中心線間の距離の上限は、好ましくは20cm、さらに好ましくは10cm、特に好ましくは5cmである。また、複数の応力発光部3の前記表面形状又は基材表面投影形状の中心線が平行である場合、隣接する応力発光部3間の距離(シート状伸長性有機基材表面又はシート状伸長性有機基材投影面での距離)は、例えば、0.01mm〜50cmであり、該距離の上限は、好ましくは30cm、より好ましくは20cm、さらに好ましくは15cm、特に好ましくは10cmである。また、該距離の下限は、好ましくは0.1mm、より好ましくは1mm、さらに好ましくは3mmである。さらに、複数の応力発光部3の前記表面形状又は基材表面投影形状の中心線が平行である場合、応力発光部3の前記表面形状又は基材表面投影形状における線幅と前記隣接する応力発光部3間の距離との比は、例えば、前者/後者=0.01〜100である。この比の上限は、好ましくは80、さらに好ましくは50であり、下限は、好ましくは0.1、さらに好ましくは1である。
図4に本発明のシート状伸長性有機基材のうち応力発光部の表面形状又は基材表面投影形状が線状であるシート状伸長性有機基材について、表面側から見たときの応力発光部のパターン形状(表面形状又は基材表面投影形状)の例を示す。なお、各図において、四角形の外枠は必ずしもシート状伸長性有機基材の輪郭形状を示すものではない。図4の右上の図は、前記表面形状又は基材表面投影形状が直線状の複数の応力発光部が等間隔で平行に形成されている例である。この例では、応力発光部はシートの長さ方向に対して直角に形成されているが、シートの長さ方向に対して平行にあるいは斜めに形成されていてもよい。図4の右下の図は、前記表面形状又は基材表面投影形状が折れ線状の複数の応力発光部が等間隔で形成されている例である。この例では、複数の応力発光部の前記表面形状又は基材表面投影形状の中心線は互いに平行である。なお、この例では、応力発光部の前記表面形状又は基材表面投影形状の中心線はシートの長さ方向に対して直角に延びているが、シートの長さ方向に対して平行にあるいは斜めに延びていてもよい。図4の左上の図は、前記表面形状又は基材表面投影形状が直線状のシート長さ方向に対して斜めに延びる複数の等間隔の応力発光部群と、前記表面形状又は基材表面投影形状が直線状のシート長さ方向に対して斜めに延びる別の複数の等間隔の応力発光部群とが互いに交差して、網目状を呈している例である。図4の左中央の図は、前記表面形状又は基材表面投影形状が直線状のシート長さ方向に対して平行に延びる複数の等間隔の応力発光部群と、前記表面形状又は基材表面投影形状が直線状のシート長さ方向に対して垂直に延びる複数の等間隔の応力発光部群とが互いに交差して、網目状を呈している例である。図4の左下の図は、前記表面形状又は基材表面投影形状が折れ線状のシート幅方向に延びる複数の等間隔の応力発光部群と、前記表面形状又は基材表面投影形状が折れ線状のシート長さ方向に延びる複数の等間隔の応力発光部群とが互いに交差して、複雑な形状の網目状を呈している例である。
図5の(1)〜(7)は、それぞれ、本発明のシート状伸長性有機基材1の例を示す断面図(応力発光部3の前記表面形状又は基材表面投影形状である線の延びる方向に対して垂直な面で切断したときの断面図)である。この図に示されるように、応力発光部3の断面形状は、矩形、蹄形、弓形、半円形、円形、楕円形、ダンベル形など種々の形状をとり得る。応力発光部3の上記断面形状は、伸長性ポリマー母材形成用材料及び応力発光部形成用材料の種類、組成、粘度;応力発光部形成用材料の伸長性ポリマー母材形成用材料層への適用方法(滴下、注入等)、適用箇所、適用量;伸長性ポリマー母材及び応力発光部を形成する際の条件等により調整できる。応力発光部形成用の塗布液を伸長性ポリマー母材形成用材料層へ適用した後、硬化等により応力発光部が形成されるまでの時間が長い場合には、塗布液が横方向に拡散して、図5の(7)のようなダンベル形状の応力発光部が形成される場合がある。
図6は本発明のシート状伸長性有機基材のさらに他の例を示す概略斜視図である。図7は図6のシート状伸長性有機基材のVII−VII断面を示す概略斜視図である。図6及び7において、シート状伸長性有機基材1は、伸長性ポリマー母材2(伸長性ポリマー母材部)と、該伸長性ポリマー母材2中に部分的に且つ一体的に形成されている筒状の応力発光部3とで構成されている。3aは筒状の応力発光部3の筒状の空洞部に当たる領域(部位)であり、伸長性ポリマー材料で構成されている。この伸長性ポリマー材料は伸長性ポリマー母材部2を構成する材料と同一であっても異なっていてもよい。
筒状の応力発光部3は伸長性ポリマー母材2中に部分的に且つ一体的に形成されていればよく、例えば、1箇所のみに形成されていてもよく、複数の箇所に非連続的に散在若しくは点在していてもよい。
筒状の応力発光部3の表面形状又は基材表面投影形状は輪帯状であり、所定の幅を有する環状を呈している。前記輪帯の形状(外周形状及び/又は内周形状、特に外周形状)は特に限定されず、目的に応じて適宜選択でき、例えば、略円形(真円、楕円等)、略多角形(略三角形、略矩形、略五角形、略六角形等)、無定形(不定形)、あるいは、文字、記号若しくは数字を表す形状;周知の図形、マークを表す形状などのいずれであってもよい。筒状の応力発光部3の表面形状又は基材表面投影形状が略多角形の場合、その内角は90度以下であってもよく、90度を超える角度であってもよい。製造のし易さの点からは、筒状の応力発光部3の表面形状又は基材表面投影形状(外周形状及び/又は内周形状、特に外周形状)は略円形、略矩形であるのが好ましい。
このシート状伸長性有機基材において、筒状の応力発光部3の面方向の長軸(外周をなす形状の最長部)の長さ(例えば、直径)は、例えば0.05mm〜10cmである。この長さが小さすぎると、筒状の応力発光部の利用価値が小さくなり、逆に大きすぎると、製造しにくくなる。筒状の応力発光部3の面方向の長軸(外周をなす形状の最長部)の長さは、好ましくは0.1mm以上、より好ましくは0.5mm以上、さらに好ましくは1mm以上、特に好ましくは2mm以上であり、とりわけ5mm以上が好ましい。また、筒状の応力発光部3の面方向の長軸の長さ(外周をなす形状の最長部)の上限は、8cmが好ましく、5cmが特に好ましい。
筒状の応力発光部3の表面形状又は基材表面投影形状である輪帯の幅(すなわち、筒状の応力発光部3の外周面と内周面との距離;厚さ)は、目的に応じて適宜選択できるが、通常、筒状の応力発光部3の面方向の長軸(外周をなす形状の最長部)の長さの1〜40%である。前記輪帯の幅(筒状の応力発光部3の厚さ)の下限は、筒状の応力発光部3の面方向の長軸(外周をなす形状の最長部)の長さに対して、好ましくは2%、さらに好ましくは5%である。また、前記輪帯の幅(筒状の応力発光部3の厚さ)の上限は、筒状の応力発光部3の面方向の長軸(外周をなす形状の最長部)の長さに対して、好ましくは30%、さらに好ましくは20%である。また、前記輪帯の幅(筒状の応力発光部3の厚さ)は、より具体的には、例えば0.01mm〜4cmであり、その下限は、好ましくは0.02mm、より好ましくは0.1mm、さらに好ましくは0.2mm、特に好ましくは0.4mm、とりわけ1mmであり、上限は、好ましくは3cm、より好ましくは2cmである。
筒状の応力発光部3は伸長性ポリマー母材2中のどの部位に形成されていてもよい。例えば、筒状の応力発光部3は、シート状伸長性有機基材1の少なくとも一方の表面に露出した状態で形成されていてもよく、またシート状伸長性有機基材1の表面に露出していない状態で形成されていてもよい。筒状の応力発光部3がシート状伸長性有機基材1の少なくとも一方の表面に露出した状態で形成されている場合、筒状の応力発光部3の表面形状と基材表面投影形状とは、形状や大きさが異なっていてもよい(内部で膨らみがある場合等)。筒状の応力発光部3がシート状伸長性有機基材1の表面に露出していない状態で形成されている場合には、筒状の応力発光部3のシート状伸長性有機基材1の表面(少なくとも一方の表面)を投影面としたときの投影形状(シート状伸長性有機基材1表面側から見た形状)が輪帯状である。
筒状の応力発光部3を有効に活用できる観点からは、筒状の応力発光部3はシート状伸長性有機基材1の少なくとも一方の表面に露出した状態で形成されているのが好ましい。
前記伸長性ポリマー母材2中に筒状の応力発光部3が複数形成されている場合、該複数の筒状の応力発光部3はランダムに形成されていてもよく、規則的パターンで形成されていてもよい。複数の筒状の応力発光部3が規則的パターンで形成されている場合、隣接する筒状の応力発光部3間の距離(最短距離)は、例えば、0.05mm〜50cmであり、該距離の上限は、好ましくは30cm、より好ましくは20cm、さらに好ましくは15cm、特に好ましくは10cmである。また、該距離の下限は、好ましくは0.1mm、より好ましくは1mm、さらに好ましくは3mm、特に好ましくは5mmである。
また、複数の筒状の応力発光部3が規則的パターンで形成されている場合、隣接する筒状の応力発光部3の中心(重心)間の距離は、例えば、5mm〜80cmであり、該距離の上限は、好ましくは50cm、より好ましくは30cm、さらに好ましくは20cm、特に好ましくは12cmである。また、該距離の下限は、好ましくは10mm、より好ましくは15mm、さらに好ましくは20mm、特に好ましくは25mmである。
予め筒状の応力発光部3を規則的パターンで形成しておけば、切断により、多数のシート状伸長性有機基材1を効率よく製造できる。なお、筒状の応力発光部3が複数形成されている場合、複数の筒状の応力発光部3の形状、大きさは同一であっても異なっていてもよい。複数の筒状の応力発光部3が同じ形状及び大きさである場合には、同一の形状及び大きさを有するシート状伸長性有機基材を生産効率よく製造できる。
筒状の応力発光部3の筒状の空洞部に当たる領域3aは、伸長性ポリマー材料で構成されている。この伸長性ポリマー材料からなる領域内には、さらに、表面形状又は基材表面投影形状が、(i)略円形、略多角形、無定形、又は文字、記号若しくは数字を表す形状、(ii)輪帯状、又は(iii)線状である応力発光部が1又は2以上形成されていてもよい。応力発光部の表面形状又は基材表面投影形状が輪帯状である場合、すなわち応力発光部が筒状である場合、該筒状の空洞部に相当する領域は、筒状の応力発光部の筒状の空洞部に相当する領域と同様、伸長性ポリマー材料で構成される。
前記図5の(1)〜(7)は、それぞれ、上記筒状の応力発光部を有するシート状伸長性有機基材の断面図(筒状応力発光部の表面形状又は筒状応力発光部のシート状伸長性有機基材表面を投影面としたときの投影形状である輪帯の延びる方向に対して垂直な面で切断したときの断面図)(筒の片側の断面のみを示す)をも示すものである。この図に示されるように、筒状の応力発光部3の断面形状(筒壁の断面)は、矩形、蹄形、弓形、半円形、円形、楕円形、ダンベル形など種々の形状をとり得る。筒状の応力発光部3の上記断面形状は、伸長性ポリマー母材形成用材料及び筒状の応力発光部形成用材料の種類、組成、粘度;筒状の応力発光部形成用材料の伸長性ポリマー母材形成用材料層への適用方法(滴下、注入等)、適用箇所、適用量;伸長性ポリマー母材及び筒状の応力発光部を形成する際の条件等により調整できる。筒状の応力発光部形成用の塗布液を伸長性ポリマー母材形成用材料層へ適用した後、硬化等により筒状の応力発光部が形成されるまでの時間が長い場合には、塗布液が横方向に拡散して、図5の(7)のようなダンベル形状の筒状の応力発光部が形成される場合がある。
本発明のシート状伸長性有機基材において、応力発光部3と伸長性ポリマー母材部2の界面(境界部)近傍においては、組成及び/又は物性(伸び特性、硬度等)が徐々に変化するグラデーション(グラディエント)をなしていてもよい。応力発光部3と伸長性ポリマー母材部2の界面近傍にこのようなグラデーションを有するシート状伸長性有機基材1は、例えば該シート状伸長性有機基材1を伸長させた時、応力発光部3と伸長性ポリマー母材部2との界面で切れにくいという特性を有する。また、応力発光部3と伸長性ポリマー母材部2の界面(境界部)近傍だけでなく、応力発光部3及び/又は伸長性ポリマー母材部2の多くの部分或いは全体に亘ってグラデーションを呈していてもよい。グラデーション部を有するシート状伸長性有機基材において、応力発光部3と伸長性ポリマー母材部2との境界は、伸長性ポリマー母材部2の非グラデーション部の硬度[伸長性ポリマー母材部の全体に亘ってグラデーションを呈している場合は、硬度の最も低い箇所の硬度]と、応力発光部3の非グラデーション部の硬度[応力発光部3の全体に亘ってグラデーションを呈している場合には、硬度の最も高い箇所の硬度]の平均値を結ぶ線によって定めることができる。
本発明のシート状伸長性有機基材1の厚みは、例えば0.01mm以上であり、好ましくは0.03mm以上、さらに好ましくは0.05mm以上である。シート状伸長性有機基材1の厚みの上限は、例えば1cmであり、好ましくは5mm、さらに好ましくは2mmである。
前記応力発光部3は、シート状伸長性有機基材1の一方の表面から所定の深さまで連続して形成されていてもよく、シート状伸長性有機基材1の一方の表面から他方の表面に至るまで連続して形成されていてもよい。また、前記応力発光部3は、シート状伸長性有機基材1の内部に埋没されて形成されてもよい。前記応力発光部3の厚み方向の長さ(厚み)は、有用性の観点等から、上記何れの場合も、シート状伸長性有機基材1の厚みの少なくとも1/50が好ましく、より好ましくは少なくとも1/20、さらに好ましくは少なくとも1/10、特に好ましくは少なくとも1/4である。また、例えば、応力発光部3がシート状伸長性有機基材1の一方の表面から連続して形成されている場合などには、前記応力発光部3の厚み方向の長さ(厚み)は、さらに、シート状伸長性有機基材1の厚みの少なくとも1/3、中でも少なくとも1/2(とりわけ、少なくとも2/3)であるのが望ましい。
本発明のシート状伸長性有機基材の引張試験(試験片の幅10mm、チャック間距離50mm、温度23℃、65%RH、引張速度200mm/min)における伸度(破断伸び)は、好ましくは10%以上、より好ましくは30%以上、さらに好ましくは50%以上、特に好ましくは100%以上であり、強度(破断応力)は、好ましくは1.0MPa以上、より好ましくは2.0MPa以上、さらに好ましくは3.0MPa以上である。前記強度は高いほどよいが、上限は、例えば100MPaであり、通常は50MPa以下である。
本発明のシート状伸長性有機基材においては、発光効率の観点から、応力発光部3は伸長性が伸長性ポリマー母材2より低いのが好ましい。本発明のシート状伸長性有機基材は、引張試験機を用いた伸長試験(温度25℃)において、該シート状伸長性有機基材を1.5倍(元の長さの150%)まで伸長させた際(但し、1.5倍まで伸長しないシート状有機基材については、1.25倍まで伸長させた際)、応力発光部3の伸長率S1(%)(元の長さに対する伸びた長さの割合)は、49%以下が好ましく、より好ましくは40%以下、さらに好ましくは25%以下、特に好ましくは10%以下である。
また、本発明のシート状伸長性有機基材は、引張試験機を用いた伸長試験(温度25℃)において、該シート状伸長性有機基材を1.5倍(元の長さの150%)まで伸長させた際(但し、1.5倍まで伸長しないシート状有機基材については、1.25倍まで伸長させた際)、伸長性ポリマー母材部2の伸長率S2(%)(元の長さに対する伸びた長さの割合)と応力発光部3の伸長率S1(%)の比率[S2(%)/S1(%)]が1より大きい(例えば、1.1以上)のが好ましい。このようなシート状伸長性有機基材では、該基材を一方向に伸長させた際、伸長性ポリマー母材部2が伸長しても、応力発光部3が伸長しにくく、伸長性ポリマー母材部2の伸長による応力が応力発光部3に伝わり、応力発光部3が発光する。前記比率[S2(%)/S1(%)]は、より好ましくは2以上であり、さらに好ましくは5以上(特に10以上)である。
さらに、本発明のシート状伸長性有機基材は、引張試験機を用いた伸長試験(温度25℃)において、該シート状伸長性有機基材を1.5倍(元の長さの150%)まで伸長させた際(但し、1.5倍まで伸長しないシート状有機基材については、1.25倍まで伸長させた際)、伸長性ポリマー母材部2の伸長率S2(%)と応力発光部3の伸長率S1(%)の差[S2(%)−S1(%)]は、20%以上であるのが好ましく、40%以上であるのがより好ましい。
本発明のシート状伸長性有機基材において、伸長性ポリマー母材2はさらに伸縮性を有していてもよい。伸長性ポリマー母材2が伸縮性を有する伸長性有機基材は、可動部、伸縮部、折り曲げ部を有する構造物に好適に適用できる。伸長性ポリマー母材2を構成するポリマーとして伸縮性を有するポリマーを選択することにより、シート状伸長性有機基材1に伸縮性を付与できる。このような伸縮性を有するシート状伸長性有機基材において、引張試験機を用いた50%伸長時のヒステリシス試験(試験片の幅10mm、チャック間距離50mm、温度23℃、65%RH、引張速度200mm/min)により得られる伸長回復率は、50%以上であるのが好ましく、より好ましくは60%以上、さらに好ましくは70%以上(特に好ましくは80%以上)である。
また、本発明のシート状伸長性有機基材では、通常、伸長性ポリマー母材2は軟質であり、応力発光部3は硬質である。例えば、本発明のシート状伸長性有機基材においては、ゴム硬度計を用いた硬さ試験(試験片30mm×30mmのシート状伸長性有機基材1の10枚積層品、針押し込み10秒後の硬さ、温度25℃)により求めた応力発光部3の硬さH1と伸長性ポリマー母材2の硬さH2との比(H1/H2)が1より大きいことが好ましく、より好ましくは1.01以上、さらに好ましくは1.10以上、特に好ましくは1.20以上である。
また、伸長性ポリマー母材2及び応力発光部3の硬さの尺度として引張弾性率を用いることもできる。本発明のシート状伸長性有機基材においては、固体粘弾性測定装置(サンプルサイズ:長さ25mm×幅3mm、チャック間距離:5mm、モード:時間分散、温度:27℃、周波数:1Hz、初期歪み:0.2%、測定時間:120秒、測定回数:10回)により測定した応力発光部3の引張弾性率E’1(Pa)と伸長性ポリマー母材2の引張弾性率E’2(Pa)の比(E’1/E’2)が1より大きいことが好ましく、より好ましくは5以上、さらに好ましくは10以上、特に好ましくは100以上である。
さらに、伸長性ポリマー母材2及び応力発光部3の硬さの尺度としてナノインデンテーション測定(ナノインデンターを使用)における荷重を用いることもできる。前記シート状伸長性有機基材においては、ナノインデンテーション測定(押し込み深さ4μm、押し込み速度1.5μm/秒、温度25℃)における応力発光部3の荷重P1と伸長性ポリマー母材2の荷重P2との比(P1/P2)が1より大きいことが好ましく、より好ましくは1.01以上、さらに好ましくは1.10以上、特に好ましくは1.50以上である。
本発明のシート状伸長性有機基材において、応力発光部3のナノインデンテーション測定(ナノインデンターを使用)における押し込み深さ4μmにおける荷重(使用圧子:Berkovich、測定方法:単一押し込み試験、押し込み深さ:4μm、押し込み速度:1.5μm/秒、温度:25℃))は、応力発光効率の観点から、100μN以上であるのが好ましく、300μN以上であるのがより好ましく、500μN以上であるのがさらに好ましく、700μN以上であるのが特に好ましい。該押し込み深さ4μmにおける荷重の上限は、特に制限は無いが、例えば、15mN、より好ましくは10mNである。
本発明のシート状伸長性有機基材において、伸長性ポリマー母材部2のナノインデンテーション測定(ナノインデンターを使用)における押し込み深さ4μmにおける荷重(使用圧子:Berkovich、測定方法:単一押し込み試験、押し込み深さ:4μm、押し込み速度:1.5μm/秒、温度:25℃))は、1000μN未満であるのが好ましく、700μN未満であるのがより好ましく、500μN未満であるのがさらに好ましく、300μN未満であるのが特に好ましい。該押し込み深さ4μmにおける荷重の下限は、特に制限は無いが、例えば、10μN、より好ましくは5μNである。
[伸長性ポリマー母材]
本発明において、伸長性ポリマー母材2は、伸長性(又はさらに伸縮性)を有するポリマーにより構成することができる。伸長性(又はさらに伸縮性)を有するポリマーとしては、例えば、ポリウレタン系ポリマー(特に、分子内にポリアクリル部を有するウレタンアクリル系ポリマー)、ポリウレア系ポリマー、ポリウレタンウレア系ポリマー、ポリオレフィン系ポリマー(特に、ポリジエン系ポリマー)、シリコーン系ポリマー、ポリエステル系ポリマー、ポリエーテル系ポリマー、ポリアミド系ポリマー、ポリスチレン系ポリマー、ガラス転移温度(Tg)の低いアクリル系ポリマー(Tgが、例えば5℃未満、好ましくは0℃以下、さらに好ましくは−5℃以下のアクリル系ポリマー)などが挙げられる。これらのポリマーは、通常、柔軟性を有している。これらのポリマーは、単独で、又は2種以上を組み合わせて使用できる。これらのポリマーの伸長性ポリマー母材を構成するポリマー全体に占める割合は、30重量%以上が好ましく、より好ましくは50重量%以上、さらに好ましくは70重量%以上、特に好ましくは90重量%以上である。
これらの中でも、ポリウレタン系ポリマー(特に、分子内にポリアクリル部を有するウレタンアクリル系ポリマー)、ポリウレア系ポリマー、ポリウレタンウレア系ポリマー、ポリオレフィン系ポリマー(特に、ポリジエン系ポリマー)、シリコーン系ポリマー、ポリスチレン系ポリマー(例えば、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体等のスチレン系熱可塑性エラストマー等)が特に好ましい。伸長性(又はさらに伸縮性)を有するポリマーとしては、市販品(ポリマー単体、ポリマーの水分散液、ポリマーの有機溶媒溶液等)を使用することもできる。
伸長性ポリマー母材部2は、例えば支持体上に、伸長性ポリマー母材を構成するポリマーの液状前駆体を塗工して伸長性ポリマー母材形成用材料層を形成し、該伸長性ポリマー母材形成用材料層の所定部位に応力発光部の形成材料を配した後、該伸長性ポリマー母材形成用材料層中の液状前駆体を目的のポリマーへ転化することにより形成できる。前記液状前駆体としては、前記ポリマーに誘導できるモノマー(エネルギー線硬化性モノマー等)、該モノマーの部分重合物、硬化又は架橋により前記ポリマーに誘導できる硬化又は架橋前ポリマーなどが挙げられる。前記液状前駆体の目的のポリマーへ転化は、例えば、重合(エネルギー線や熱による重合等)、硬化、架橋反応などにより行うことができる。
また、伸長性ポリマー母材部2は、例えば支持体上に、伸長性ポリマー母材を構成するポリマーを含む溶液若しくは分散液を塗工して伸長性ポリマー母材形成用材料層を形成し、該伸長性ポリマー母材形成用材料層の所定部位に応力発光部の形成材料を配した後、該伸長性ポリマー母材形成用材料層中の溶媒を乾燥除去することにより形成することもできる。前記ポリマーを含む溶液に用いる溶媒としては、前記ポリマーを溶解できる溶媒であればよく、例えば、酢酸エチル等のエステル;トルエン等の芳香族炭化水素等の炭化水素;アセトン等のケトン;塩化メチレン等のハロゲン化炭化水素;ラクトン;アミド;ラクタム;水;これらの混合溶媒等が挙げられる。前記ポリマーを含む分散液としては、水分散液(乳化重合後の反応液等)などが挙げられる。
さらに、伸長性ポリマー母材部2は、例えば支持体上に、伸長性ポリマー母材を構成するポリマー単体により伸長性ポリマー母材形成用材料層を形成し、該伸長性ポリマー母材形成用材料層の所定部位に応力発光部の形成材料を配した後、溶融・冷却処理(ホットメルト処理)を行うことにより形成することもできる。この場合の伸長性ポリマー母材形成用材料層は、前記ポリマー単体を一般的なフィルム成形法(押出成形、射出成形、圧縮成形、ホットメルト処理等)に付すことにより形成できる。この場合、伸長性ポリマー母材形成用材料層と伸長性ポリマー母材は実質的に同一の材料組成で構成されることが多い。なお、溶融・冷却処理とは、溶融した後、冷却することを意味する。
本発明において、伸長性ポリマー母材部2は、例えば、ポリウレタン鎖、ポリウレア鎖、ポリウレタンウレア鎖、ポリオレフィン鎖(特に、ポリジエン鎖)、シリコーン鎖、ポリエステル鎖、ポリエーテル鎖、ポリアミド鎖、ポリスチレン系ポリマー鎖及びポリアクリル鎖からなる群より選択される少なくとも1種のポリマー鎖を有し、且つ主鎖又は側鎖にエネルギー線硬化性基A1を有する硬化性ポリマーP、又は該硬化性ポリマーPとエネルギー線硬化性基A2を有する硬化性モノマーMとの混合物にエネルギー線を照射して硬化させることにより形成できる。前記硬化性ポリマーP、該硬化性ポリマーPとエネルギー線硬化性基A2を有する硬化性モノマーMとの混合物は、前記ポリマーの前駆体である。
エネルギー線としては、α線、β線、γ線、中性子線、電子線などの電離性放射線、紫外線、可視光線などが挙げられる。中でも、紫外線及び電子線が好ましく、特に紫外線が好ましい。
前記エネルギー線硬化性基A1、A2としては、それぞれ、例えば、(メタ)アクリロイル基、ビニル基等の炭素−炭素不飽和結合を含む基(ラジカル重合性基を含む基);エポキシ基、オキセタニル基等のカチオン重合性基などが挙げられる。主鎖又は側鎖にエネルギー線硬化性基A1を有する硬化性ポリマーPにおけるエネルギー線硬化性基A1がラジカル重合性基を含む基である場合には、エネルギー線硬化性基A2を有する硬化性モノマーMにおけるエネルギー線硬化性基A2もラジカル重合性基を含む基であるのが好ましく、主鎖又は側鎖にエネルギー線硬化性基A1を有する硬化性ポリマーPにおけるエネルギー線硬化性基A1がカチオン重合性基である場合には、エネルギー線硬化性基A2を有する硬化性モノマーMにおけるエネルギー線硬化性基A2もカチオン重合性基であるのが好ましい。
前記硬化性ポリマーPは、エネルギー線硬化性基A1及び反応性官能基R1を有する化合物と、分子内に前記反応性官能基R1に対して反応性を有する反応性官能基R2を有し、且つポリウレタン鎖、ポリウレア鎖、ポリウレタンウレア鎖、ポリオレフィン鎖(特に、ポリジエン鎖)、シリコーン鎖、ポリエステル鎖、ポリエーテル鎖、ポリアミド鎖及びポリアクリル鎖からなる群より選択される少なくとも1種のポリマー鎖を有するポリマーとを反応させることにより得ることができる。
前記反応性官能基R1と反応性官能基R2の組合せ(順序を問わない)としては、例えば、ヒドロキシル基とイソシアネート基との組合せ、ヒドロキシル基とエポキシ基との組合せ、カルボキシル基又は酸無水物基とイソシアネート基との組合せ、カルボキシル基又は酸無水物基とエポキシ基との組合せ、アミノ基とイソシアネート基との組合せ、アミノ基とエポキシ基との組合せ、Si−H基と炭素−炭素二重結合を有する基との組合せなどが挙げられる。
反応性官能基R2を有し且つポリウレタン鎖を有するポリマーは、ポリイソシアネート化合物と、長鎖ポリオール化合物、及び必要に応じて用いられる鎖伸長剤や他のイソシアネート反応性化合物とを、慣用の方法で反応させることにより得ることができる。
ポリイソシアネート化合物としては、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート等の脂肪族ジイソシアネート;イソホロンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネート、ノルボルネンジイソシアネート、ノルボルナンジイソシアネート等の脂環式ジイソシアネート;ナフタレンジイソシアネート、フェニレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、ジフェニルジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ジフェニルエーテルジイソシアネート、ジフェニルプロパンジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート;キシリレンジイソシアネート、テトラメチレンキシリレンジイソシアネート等の芳香脂肪族ジイソシアネート;ダイマー酸ジイソシアネートなどが挙げられる。
長鎖ポリオール化合物としては、例えば、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリオレフィンポリオール、ポリアクリルポリオールなどが挙げられる。長鎖ポリオールの数平均分子量は、通常、500以上であり、好ましくは500〜10000、より好ましくは550〜4000である。長鎖ポリオールは単独で又は2種以上を組み合わせて使用できる。
ポリエーテルポリオールとしては、例えば、ポリエチレンエーテルグリコール、ポリプロピレンエーテルグリコール、ポリテトラメチレンエーテルグリコール(PTMG)などのポリアルキレンエーテルグリコールの他、エチレンオキシド−プロピレンオキシド共重合体などのモノマー成分として複数のアルキレンオキシドを含む(アルキレンオキサイド−他のアルキレンオキサイド)共重合体などが挙げられる。
ポリエステルポリオールとしては、例えば、多価アルコールと多価カルボン酸との縮合重合物;環状エステル(ラクトン)の開環重合物;多価アルコール、多価カルボン酸及び環状エステルの3種類の成分による反応物などを用いることができる。多価アルコールと多価カルボン酸との縮合重合物において、多価アルコールとしては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、1,5−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6−ヘキサンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、グリセリン、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、シクロヘキサンジオール類(1,4−シクロヘキサンジオールなど)、シクロヘキサンジメタノール類(1,4−シクロヘキサンジメタノールなど)、ビスフェノール類(ビスフェノールAなど)、糖アルコール類(キシリトールやソルビトールなど)などを用いることができる。一方、多価カルボン酸としては、例えば、マロン酸、マレイン酸、コハク酸、アジピン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカンジオン酸等の脂肪族ジカルボン酸;1,4−シクロヘキサンジカルボン酸等の脂環式ジカルボン酸;テレフタル酸、イソフタル酸、オルトフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、トリメリット酸等の芳香族ジカルボン酸などが挙げられる。また、環状エステルの開環重合物において、環状エステルとしては、例えば、プロピオラクトン、β−メチル−δ−バレロラクトン、ε−カプロラクトンなどが挙げられる。3種類の成分による反応物において、多価アルコール、多価カルボン酸、環状エステルとしては、前記例示のものなどを用いることができる。
ポリカーボネートポリオールとしては、例えば、多価アルコールとホスゲン、クロロギ酸エステル、ジアルキルカーボネート又はジアリールカーボネートとの反応物;環状炭酸エステル(アルキレンカーボネートなど)の開環重合物などが挙げられる。具体的には、多価アルコールとホスゲンとの反応物において、多価アルコールとしては、前記例示の多価アルコール(例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6−ヘキサンジオール等)を用いることができる。また、環状炭酸エステルの開環重合物において、アルキレンカーボネートとしては、例えば、エチレンカーボネート、トリメチレンカーボネート、テトラメチレンカーボネート、ヘキサメチレンカーボネートなどが挙げられる。なお、ポリカーボネートポリオールは、分子内にカーボネート結合を有し、末端がヒドロキシル基である化合物であればよく、カーボネート結合とともにエステル結合を有していてもよい。ポリカーボネートポリオールの代表的な例として、ポリヘキサメチレンカーボネートジオール、ポリヘキサメチレンカーボネートジオールにラクトンを開環付加重合して得られるジオール、ポリヘキサメチレンカーボネートジオールとポリエステルジオール又はポリエーテルジオールとの共縮合物などが挙げられる。
ポリオレフィンポリオールは、オレフィンを重合体又は共重合体の骨格(又は主鎖)の成分とし且つ分子内に(特に末端に)ヒドロキシル基を少なくとも2つ有するポリオールである。前記オレフィンとしては、末端に炭素−炭素二重結合を有するオレフィン(例えば、エチレン、プロピレン等のα−オレフィンなど)であってもよく、また末端以外の部位に炭素−炭素二重結合を有するオレフィン(例えば、イソブテンなど)であってもよく、さらにはジエン(例えば、ブタジエン、イソプレンなど)であってもよい。ポリオレフィンポリオールの代表的な例として、ブタジエンホモポリマー、イソプレンホモポリマー、ブタジエン−スチレンコポリマー、ブタジエン−イソプレンコポリマー、ブタジエン−アクリロニトリルコポリマーなどのブタジエン若しくはイソプレン系ポリマーの末端をヒドロキシル基に変性したものが挙げられる。
ポリアクリルポリオールは、(メタ)アクリレートを重合体又は共重合体の骨格(又は主鎖)の成分とし且つ分子内に(特に末端に)ヒドロキシル基を少なくとも2つ有するポリオールである。(メタ)アクリレートとしては、(メタ)アクリル酸アルキルエステル[例えば、(メタ)アクリル酸C1-20アルキルエステルなど]が好適に用いられる。
前記鎖伸長剤としては、熱可塑性ポリウレタンの製造に通常用いられる鎖伸長剤を使用でき、その種類は特に制限されないが、低分子量のポリオール、ポリアミン等を用いることができる。鎖伸長剤の分子量は、通常、500未満であり、好ましくは300以下である。鎖伸長剤は単独で又は2種以上を組み合わせて使用できる。
鎖伸長剤の代表的な例として、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6−ヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノールなどのポリオール(特に、ジオール);ヘキサメチレンジアミン、3,3′−ジメチル−4,4′−ジアミノジシクロヘキシルメタン、4,4′−メチレンビス−2−クロロアニリンなどのポリアミン(特に、ジアミン)などが挙げられる。
ポリウレタン鎖を有するポリマーとしては、ポリイシソアネート化合物、長鎖ポリオール化合物、及び必要に応じて鎖伸長剤、他のイソシアネート反応性化合物とを、ポリイソシアネートのイソシアネート基のモル数と、長鎖ポリオール及び鎖伸長剤等が有するイソシアネート反応性基(水酸基、アミノ基等)のモル数との比(NCO/イソシアネート反応性基)が、0.8〜2.0、特に0.95〜1.5となる範囲で反応させて得られたものが好ましい。上記反応には、反応を促進するため、必要に応じて、第3級アミン、有機金属化合物、スズ化合物等の触媒を用いてもよい。
ポリウレタン鎖を有するポリマーの末端がイソシアネート基である場合には、該イソシアネート基を反応性官能基R2として利用できる。この場合、前記エネルギー線硬化性基A1及び反応性官能基R1を有する化合物として、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートなどを用いることができる。
また、ポリウレタン鎖を有するポリマーの末端がヒドロキシル基である場合には、該ヒドロキシル基を反応性官能基R2として利用できる。この場合、前記エネルギー線硬化性基A1及び反応性官能基R1を有する化合物として、(メタ)アクリロイルオキシエチルイソシアネートなどを用いることができる。
反応性官能基R2を有し且つポリウレア鎖を有するポリマー、反応性官能基R2を有し且つポリウレタンウレア鎖を有するポリマー、反応性官能基R2を有し且つポリオレフィン鎖(特に、ポリジエン鎖)を有するポリマー、反応性官能基R2を有し且つシリコーン鎖を有するポリマー、反応性官能基R2を有し且つポリエステル鎖を有するポリマー、反応性官能基R2を有し且つポリエーテル鎖を有するポリマー、反応性官能基R2を有し且つポリアミド鎖を有するポリマー、反応性官能基R2を有し且つポリアクリル鎖を有するポリマーも公知乃至慣用の方法により得ることができる。
そして、これらの反応性官能基R2を有し且つ特定のポリマー鎖を有するポリマーに、該ポリマーの有する反応性官能基R2の種類に応じて、前記エネルギー線硬化性基A1及び反応性官能基R1を有する化合物を反応させることにより、前記主鎖又は側鎖にエネルギー線硬化性基A1を有する硬化性ポリマーPを製造できる。
本発明において、前記エネルギー線硬化性基A2を有する硬化性モノマーMとしては、(メタ)アクリロイル基、ビニル基等の炭素−炭素不飽和結合を含む基(ラジカル重合性基)を有する化合物;エポキシ基、オキセタニル基等のカチオン重合性基を有する化合物が挙げられる。これらの中でも、ラジカル重合性基を含む化合物が好ましい。なお、エネルギー線硬化性基A2を有する硬化性モノマーMは1種単独で又は2種以上を組み合わせて使用できる。
エネルギー線硬化性基A2を有する硬化性モノマーMにおいて、エネルギー線硬化性基A2がラジカル重合性基である化合物としては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸s−ブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸ペンチル、(メタ)アクリル酸イソペンチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸ヘプチル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸ノニル、(メタ)アクリル酸イソノニル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸イソデシル、(メタ)アクリル酸ウンデシル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸トリデシル、(メタ)アクリル酸テトラデシル、(メタ)アクリル酸ペンタデシル、(メタ)アクリル酸ヘキサデシル、(メタ)アクリル酸ヘプタデシル、(メタ)アクリル酸オクタデシル、(メタ)アクリル酸ノナデシル、(メタ)アクリル酸エイコシルなどの(メタ)アクリル酸C1-20アルキルエステル;(メタ)アクリル酸シクロペンチル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸イソボルニルなどの脂環式基を有する(メタ)アクリル酸エステル;(メタ)アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸フェノキシエチルなどの芳香族炭化水素基を有する(メタ)アクリル酸エステル;(メタ)アクリル酸メトキシエチル、(メタ)アクリル酸エトキシエチルなどの(メタ)アクリル酸アルコキシアルキル;(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸4−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸6−ヒドロキシヘキシル、ビニルアルコール、アリルアルコールなどの水酸基(ヒドロキシル基)含有モノマー;(メタ)アクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸、イソクロトン酸、無水マレイン酸、無水イタコン酸、2−カルボキシエチル(メタ)アクリレート、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルコハク酸、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルフタル酸などのカルボキシル基又は酸無水物基含有モノマー;ビニルスルホン酸ナトリウム、アリルスルホン酸、スチレンスルホン酸、(メタ)アクリルアミドプロパンスルホン酸、スルホプロピル(メタ)アクリレートなどのスルホン酸基含有モノマー;2−ヒドロキシエチルアクリロイルフォスフェートなどのリン酸基含有モノマー;(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸メチルグリシジルなどのエポキシ基含有モノマー;(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−メトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミドなどアミド基含有モノマー;N−ビニル−2−ピロリドン、N−ビニル−2−ピペリドン、N−ビニル−2−カプロラクタム、N−ビニルピペラジン、N−ビニルピロール、N−ビニルイミダゾール、(メタ)アクリロイルモルホリンなどの含窒素複素環含有モノマー;(メタ)アクリル酸テトラヒドロフルフリルなどの含酸素複素環含有モノマー;(メタ)アクリル酸アミノエチル、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸t−ブチルアミノエチルなどのアミノ基含有モノマー;アクリロニトリルやメタクリロニトリルなどのシアノ基含有モノマー;シクロヘキシルマレイミド、イソプロピルマレイミドなどのイミド基含有モノマー;2−メタクリロイルオキシエチルイソシアネートなどのイソシアネート基含有モノマー;スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエンなどのスチレン系モノマー;エチレン、プロピレン、イソプレン、ブタジエン、イソブチレンなどのオレフィン系モノマー;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニルなどのビニルエステル系モノマー;ビニルアルキルエーテルなどのビニルエーテル系モノマー;塩化ビニル;塩化ビニリデン;フッ素原子含有基を有する(メタ)アクリル酸エステル;ケイ素原子含有基を有する(メタ)アクリル酸エステルなどが挙げられる。
エネルギー線硬化性基A2を有する硬化性モノマーMにおいて、エネルギー線硬化性基A2がラジカル重合性基である化合物としては、上記のほか、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンEO付加トリ(メタ)アクリレート、グリセリンPO付加トリ(メタ)アクリレート、アリル(メタ)アクリレート、ビニル(メタ)アクリレート、ジビニルベンゼン、エポキシアクリレート、ポリエステルアクリレート、ウレタンアクリレートなどの多官能性モノマーを使用することもできる。なお、「EO」はエチレンオキサイド、「PO」はプロピレンオキサイドを示す。
エネルギー線硬化性基A2を有する硬化性モノマーMにおいて、エネルギー線硬化性基A2がカチオン重合性基である化合物としては、エポキシ基、オキセタニル基等のカチオン重合性基を有する公知の化合物を使用できる。
前記エネルギー線硬化性基A2を有する硬化性モノマーMの中でも、ラジカル重合性基を有する硬化性モノマーが好ましい。特に、前記硬化性モノマーMとして、少なくとも、(メタ)アクリル酸C1-20アルキルエステルを用いるのが好ましい。また、伸長性ポリマー母材2と応力発光部3との界面における密着強度を向上させるため、硬化性モノマーMとして応力発光部を構成するポリマーのモノマーと同種のモノマー(特に、同一モノマー)を用いるのも好ましい。
硬化性モノマーMとして(メタ)アクリル酸C1-20アルキルエステルを用いる場合、硬化性モノマー全体に占める(メタ)アクリル酸C1-20アルキルエステルの割合は、例えば、10重量%以上(10〜100重量%)、好ましくは40重量%以上(40〜100重量%)、より好ましくは50重量%以上(50〜100重量%)、さらに好ましくは60重量%以上(60〜100重量%)である。また、硬化性モノマーMとして(メタ)アクリル酸C1-20アルキルエステルとともに、(メタ)アクリル酸イソボルニルなどの脂環式基を有する(メタ)アクリル酸エステル、(メタ)アクリル酸等のカルボキシル基又は酸無水物基含有モノマーや(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル等のヒドロキシル基含有モノマーを用いてもよい。この場合、(メタ)アクリル酸イソボルニルなどの脂環式基を有する(メタ)アクリル酸エステル、カルボキシル基又は酸無水物基含有モノマー、ヒドロキシル基含有モノマーの使用量は、硬化性モノマー全体に対して、それぞれ、例えば0〜90重量%(0.1〜90重量%程度)、好ましくは0〜50重量%(0.1〜50重量%程度)の範囲から選択することができ、1〜45重量%程度用いてもよい。
伸長性ポリマー母材2は、前記のように、硬化性ポリマーP、又は該硬化性ポリマーPと硬化性モノマーMとの混合物にエネルギー線を照射して硬化させることにより形成できる。この際、通常、光重合開始剤が用いられる。
エネルギー線硬化性基A1、A2がラジカル重合性基の場合には、光重合開始剤として、例えば、ベンゾインエーテル系光重合開始剤、アセトフェノン系光重合開始剤、α−ケトール系光重合開始剤、芳香族スルホニルクロリド系光重合開始剤、光活性オキシム系光重合開始剤、ベンゾイン系光重合開始剤、ベンジル系光重合開始剤、ベンゾフェノン系光重合開始剤、ケタール系光重合開始剤、チオキサントン系光重合開始剤等が用いられる。
上記ベンゾインエーテル系光重合開始剤としては、例えば、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインプロピルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、アニソールメチルエーテルなどが挙げられる。上記アセトフェノン系光重合開始剤としては、例えば、2,2−ジエトキシアセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、4−フェノキシジクロロアセトフェノン、4−(t−ブチル)ジクロロアセトフェノンなどが挙げられる。上記α−ケトール系光重合開始剤としては、例えば、2−メチル−2−ヒドロキシプロピオフェノン、1−[4−(2−ヒドロキシエチル)フェニル]−2−メチルプロパン−1−オンなどが挙げられる。上記芳香族スルホニルクロリド系光重合開始剤としては、例えば、2−ナフタレンスルホニルクロライドなどが挙げられる。上記光活性オキシム系光重合開始剤としては、例えば、1−フェニル−1,1−プロパンジオン−2−(o−エトキシカルボニル)−オキシムなどが挙げられる。上記ベンゾイン系光重合開始剤としては、例えば、ベンゾインなどが挙げられる。上記ベンジル系光重合開始剤としては、例えば、ベンジルなどが挙げられる。上記ベンゾフェノン系光重合開始剤としては、例えば、ベンゾフェノン、ベンゾイル安息香酸、3,3′−ジメチル−4−メトキシベンゾフェノン、ポリビニルベンゾフェノン、α−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトンなどが挙げられる。上記ケタール系光重合開始剤としては、例えば、ベンジルジメチルケタールなどが挙げられる。上記チオキサントン系光重合開始剤としては、例えば、チオキサントン、2−クロロチオキサントン、2−メチルチオキサントン、2,4−ジメチルチオキサントン、イソプロピルチオキサントン、2,4−ジイソプロピルチオキサントン、ドデシルチオキサントンなどが挙げられる。
エネルギー線硬化性基A1、A2がカチオン重合性基である場合には、光重合開始剤として、公知乃至慣用のカチオン硬化触媒を用いることができる。
光重合開始剤の使用量としては、特に限定されないが、硬化性化合物全量100重量部に対して、例えば0.01〜3重量部であり、その上限は、好ましくは1重量部、さらに好ましくは0.5重量部であり、その下限は、好ましくは0.02重量部、さらに好ましくは0.05重量部である。
本発明において、伸長性ポリマー母材2を構成する伸長性(又はさらに伸縮性)を有するポリマーにおいて、ポリウレタン鎖、ポリウレア鎖、ポリウレタンウレア鎖、ポリオレフィン鎖(特に、ポリジエン鎖)、シリコーン鎖、ポリエステル鎖、ポリエーテル鎖及びポリアミド鎖からなる群より選択される少なくとも1種のポリマー鎖を有する場合には、該少なくとも1種のポリマー鎖部のポリマー全体に占める割合は、20重量%以上(例えば、20〜100重量%)が好ましく、より好ましくは25重量%以上(例えば、25〜90重量%)、さらに好ましくは30重量%以上(例えば、30〜75重量%)程度である。この割合が小さすぎると、伸長性が低下しやすくなる。なお、伸長性ポリマー母材2を構成する伸長性(又はさらに伸縮性)を有するポリマーが、ガラス転移温度(Tg)の低いアクリル系ポリマー(Tgが、例えば5℃未満、好ましくは0℃以下、さらに好ましくは−5℃以下のアクリル系ポリマー)である場合には、ポリマー全体に占めるポリアクリル鎖の割合は100重量%であってもよい。
伸長性ポリマー母材部2には、必要に応じて、例えば、架橋剤(例えば、イソシアネート系架橋剤、エポキシ系架橋剤、メラミン系架橋剤、過酸化物系架橋剤、尿素系架橋剤、金属アルコキシド系架橋剤、金属キレート系架橋剤、金属塩系架橋剤、カルボジイミド系架橋剤、オキサゾリン系架橋剤、アジリジン系架橋剤、アミン系架橋剤など)、架橋促進剤、シランカップリング剤、粘着付与樹脂(ロジン誘導体、ポリテルペン樹脂、石油樹脂、油溶性フェノールなど)、老化防止剤、充填剤、着色剤(顔料や染料など)、紫外線吸収剤、酸化防止剤、可塑剤、軟化剤、界面活性剤、帯電防止剤などの添加剤が、本発明の特性を損なわない範囲で含まれていてもよい。
[応力発光部]
本発明において、応力発光部3は応力発光体と樹脂材料とを含む。応力発光体としては、特に限定されず、公知の応力発光体(応力発光材料)を利用できる。応力発光体として、例えば、スピルネル構造、コランダム構造やβ−アルミナ構造を有するもの、ケイ酸塩、欠陥制御型アルミン酸塩、多色型応力発光材料、ウルツ鉱型構造とせん亜鉛鉱型構造が共存する構造を持つ酸化物、硫化物、セレン化物又はテルル化物を主成分とする応力発光材料などが挙げられる。また、応力発光体として、希土類元素(Y、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu)又は遷移金属元素(V、Mn、Cr等)を発光中心元素として含むアルカリ土類金属アルミン酸塩、希土類元素を添加したアルカリ土類金属チタン酸塩等を使用できる(特開2005−82794号公報、特開2007−101278号公報、特開2010−77437号公報、特開2010−180280号公報等参照)。上記アルカリ土類金属として、Ca、Sr、Baなどが挙げられる。上記アルカリ土類金属、希土類元素、遷移金属元素は、それぞれ、単独で又は2種以上を組み合わせて使用できる。
応力発光部3を構成する樹脂材料(ポリマー材料)としては、伸長性ポリマー母材2を構成するポリマー材料と比較して、より硬い材料、より弾性率の高い材料、或いはより伸長性の低い材料が好ましい。応力発光部3を構成する樹脂材料(ポリマー材料)としてこのような材料を選択することにより、応力発光部3における応力発光効率を高めることができる。また、シート状伸長性有機基材全体を伸長させる際、応力が応力発光部3に伝わり、該応力発光部3を発光させることができる。
応力発光部3を構成するポリマーは1種単独であってもよく、2種以上の混合物であってもよい。
応力発光部3としては、例えば、(i)ホモポリマーのTgが5℃以上(より好ましくは15℃以上、さらに好ましくは50℃以上)であるモノマー[特に、(メタ)アクリル系モノマー]に由来する構成単位を、ポリマーの全構成単位に対して、50重量%以上(より好ましくは60重量%以上、さらに好ましくは80重量%以上)含むポリマー[例えば、Tgが5℃以上、好ましくは15℃以上のポリマー(特に、アクリル系ポリマー)]を含有するポリマー材料、(ii)硬化性基(ラジカル重合性基、カチオン重合性基)を分子内に2以上有する多官能モノマーに由来する構成単位を、ポリマーの全構成単位に対して、50重量%以上(より好ましくは60重量%以上、さらに好ましくは80重量%以上)含むポリマー[とりわけ、ラジカル重合性基を分子内に2以上有する多官能モノマー(特に、アクリル系多官能モノマー)に由来する構成単位が、ポリマーの全構成単位に対して、50重量%以上(より好ましくは60重量%以上、さらに好ましくは80重量%以上)含むポリマー]を含有するポリマー材料、又は(iii)引張弾性率が0.1MPa以上(より好ましくは0.5MPa以上、さらに好ましくは1MPa以上、特に好ましくは5MPa以上)のポリマー材料で構成できる。
前記(i)の場合、ホモポリマーのTgが5℃以上であるモノマーに由来する構成単位をポリマーの全構成単位に対して50重量%以上含むポリマーの、応力発光部3を構成するポリマー材料全体に占める割合は、例えば5重量%以上、好ましくは10重量%以上、さらに好ましくは15重量%以上であり、50重量%以上(例えば90重量%以上)であってもよい。前記(ii)の場合、硬化性基を分子内に2以上有する多官能モノマーに由来する構成単位をポリマーの全構成単位に対して50重量%以上含むポリマーの、応力発光部3を構成するポリマー材料全体に占める割合は、例えば5重量%以上、好ましくは10重量%以上、さらに好ましくは15重量%以上であり、50重量%以上(例えば90重量%以上)であってもよい。
前記(i)において、ホモポリマーのTgが5℃以上であるモノマーとして、例えば、イソボルニルアクリレート(ホモポリマーのTg:97℃)、シクロヘキシルアクリレート(ホモポリマーのTg:15℃)などの脂環式基を有する(メタ)アクリル酸エステル;t−ブチルアクリレート(ホモポリマーのTg:41℃)などの(メタ)アクリル酸第3級アルキルエステル;メタクリル酸メチル(ホモポリマーのTg:105℃)、メタクリル酸エチル(ホモポリマーのTg:65℃)、メタクリル酸ブチル(ホモポリマーのTg:20℃)、メタクリル酸イソブチル(ホモポリマーのTg:67℃)などのメタクリル酸C1-4アルキルエステル;スチレン(ホモポリマーのTg:100℃)などのスチレン系モノマー;アクリロニトリル(ホモポリマーのTg:100℃)などが挙げられる。
前記(ii)において、多官能モノマーとして、例えば、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンEO付加トリ(メタ)アクリレート、グリセリンPO付加トリ(メタ)アクリレートなどが挙げられる。多官能モノマーの中でも3官能以上(例えば、3〜6官能)の多官能モノマーが最も好ましい。
前記(iii)において、引張弾性率が0.1MPa以上のポリマーとしては、引張弾性率が0.1MPa以上のポリマー(1種又は2種以上のポリマーの混合物)であれば特に限定されず、例えば、ポリウレタン系ポリマー、ポリウレア系ポリマー、ポリウレタンウレア系ポリマー、ポリオレフィン系ポリマー、シリコーン系ポリマー、ポリエステル系ポリマー、ポリエーテル系ポリマー、ポリアミド系ポリマー、ポリスチレン系ポリマー、アクリル系ポリマー等の中から選択して使用できる。ポリマーを2種以上含む場合は、ポリマー混合物の引張り弾性率が0.1MPa以上であればよい。
引張弾性率が0.1MPa以上のポリマーの代表的な例として、例えば、Tgが5℃以上(より好ましくは20℃以上)であるポリウレタン系ポリマー;スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体(SBS)の水素添加物(SEBS)やスチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体(SIS)の水素添加物(SEPS)等のポリスチレン系ポリマー;ポリメタクリル酸メチル等のアクリル系ポリマーなどが挙げられる。引張弾性率が0.1MPa以上のポリマー材料としては、これらのポリマーを、例えば50重量%以上、特に80重量%以上含むのが好ましい。
応力発光部3は、該応力発光部3を構成するポリマー材料の前駆体を該ポリマー材料に転化して形成されたポリマー部、前記ポリマー材料を含む溶液若しくは分散液中の溶媒を乾燥除去して形成されたポリマー部、前記ポリマー材料を溶融・冷却処理して形成されたポリマー部等の何れであってもよい。
応力発光部3を、前記(i)ホモポリマーのTgが5℃以上であるモノマーに由来する構成単位をポリマーの全構成単位に対して50重量%以上含むポリマーを含有するポリマー材料で構成する場合は、例えば、前記ホモポリマーのTgが5℃以上であるモノマーをモノマー全体の50重量%以上含むモノマー成分を伸長性ポリマー母材形成用材料層の所定部位に配した後、エネルギー線を照射して硬化(重合)させることにより形成できる。この場合、ホモポリマーのTgが5℃以上であるモノマー以外の他のモノマーとして、例えば、前記エネルギー線硬化性基A2を有する硬化性モノマーMとして例示したモノマーを適宜選択して使用できる。
応力発光部3を、前記(ii)硬化性基を分子内に2以上有する多官能モノマーに由来する構成単位をポリマーの全構成単位に対して50重量%以上含むポリマーを含有するポリマー材料で構成する場合は、例えば、前記多官能モノマーをモノマー全体の50重量%以上含むモノマー成分を伸長性ポリマー母材形成用材料層の所定部位に配した後、エネルギー線を照射して硬化(重合)させることにより形成できる。この場合、前記多官能モノマー以外の他のモノマーとして、前記エネルギー線硬化性基A2を有する硬化性モノマーMとして例示したモノマーのうち単官能モノマーを適宜選択して使用できる。
応力発光部3を形成する際には、通常、硬化性基を硬化させるため光重合開始剤が用いられる。光重合開始剤としては、特に限定されず、前記伸長性ポリマー母材2を形成する場合と同様の光重合開始剤を使用できる。光重合開始剤の使用量としては、特に限定されないが、硬化性化合物全量100重量部に対して、例えば0.01〜3重量部であり、その上限は、好ましくは1重量部、さらに好ましくは0.5重量部であり、その下限は、好ましくは0.02重量部、さらに好ましくは0.05重量部である。
応力発光部3を、前記(iii)引張弾性率が0.1MPa以上のポリマー材料で構成する場合には、前記ポリマーに誘導できるモノマー(エネルギー線硬化性モノマー等)又はその部分重合物を重合するか、又は前記ポリマーに硬化又は架橋により誘導できる硬化又は架橋前ポリマーを硬化又は架橋することにより応力発光部3を形成することができる。
応力発光部3には、必要に応じて、例えば、架橋剤(例えば、イソシアネート系架橋剤、エポキシ系架橋剤、メラミン系架橋剤、過酸化物系架橋剤、尿素系架橋剤、金属アルコキシド系架橋剤、金属キレート系架橋剤、金属塩系架橋剤、カルボジイミド系架橋剤、オキサゾリン系架橋剤、アジリジン系架橋剤、アミン系架橋剤など)、架橋促進剤、シランカップリング剤、粘着付与樹脂(ロジン誘導体、ポリテルペン樹脂、石油樹脂、油溶性フェノールなど)、老化防止剤、充填剤、着色剤(顔料や染料など)、紫外線吸収剤、酸化防止剤、可塑剤、軟化剤、界面活性剤、帯電防止剤などの添加剤が、本発明の特性を損なわない範囲で含まれていてもよい。
応力発光部3を構成する材料のうちポリマーとしては、伸長性ポリマー母材と応力発光部の一体性、密着性等の観点から、伸長性ポリマー母材を構成するポリマーと同種のポリマー、或いは伸長性ポリマー母材を構成するポリマーが有するポリマー鎖(主鎖又は側鎖)と同種のポリマー鎖を主鎖又は側鎖に有するポリマーであることが好ましい。
より具体的には、伸長性ポリマー母材を構成するポリマーと応力発光部を構成するポリマーの好ましい組合せとして、ポリウレタン系ポリマー同士の組合せ、ポリウレア系ポリマー同士の組合せ、ポリウレタンウレア系ポリマー同士の組合せ、ポリオレフィン系ポリマー同士の組合せ、シリコーン系ポリマー同士の組合せ、ポリエステル系ポリマー同士の組合せ、ポリエーテル系ポリマー同士の組合せ、ポリアミド系ポリマー同士の組合せ、ポリスチレン系ポリマー同士の組合せ、アクリル系ポリマー同士の組合せが挙げられる。また、ポリスチレン系ポリマーとアクリル系ポリマーとの組合せも好ましい。さらに、前記好ましい組合せとして、ポリウレタン鎖を有するポリマー同士の組合せ、ポリウレア鎖を有するポリマー同士の組合せ、ポリウレタンウレア鎖を有するポリマー同士の組合せ、ポリオレフィン鎖を有するポリマー同士の組合せ、シリコーン鎖を有するポリマー同士の組合せ、ポリエステル鎖を有するポリマー同士の組合せ、ポリエーテル鎖を有するポリマー同士の組合せ、ポリアミド鎖を有するポリマー同士の組合せ、ポリスチレン系ポリマー鎖を有するポリマー同士の組合せ、ポリアクリル鎖を有するポリマー同士の組合せが挙げられる。
これらの中でも、伸長性ポリマー母材を構成するポリマーと応力発光部を構成するポリマーの好ましい組合せとして、ポリウレタン系ポリマー同士の組合せ、ポリウレタン鎖を有するポリマー同士の組合せ、ポリスチレン系ポリマー同士の組合せ、ポリスチレン系ポリマー鎖を有するポリマー同士の組合せ、アクリル系ポリマー同士の組合せ、ポリアクリル鎖を有するポリマー同士の組合せ、ポリスチレン系ポリマーとアクリル系ポリマーとの組合せが特に好ましい。
[シート状伸長性有機基材の製造]
本発明のシート状伸長性有機基材は、例えば、下記の工程A、工程B及び工程Cを経ることにより製造できる。
工程A:支持体上に、伸長性ポリマー母材を構成するポリマー(a)の液状前駆体、前記ポリマー(a)を含む溶液若しくは分散液、又は前記ポリマー(a)単体により伸長性ポリマー母材形成用材料層を形成する工程
工程B:前記伸長性ポリマー母材形成用材料層の所定部位に、応力発光部形成用材料を配する工程、
工程C:応力発光部形成用材料を所定部位に配した伸長性ポリマー母材形成用材料層に対して、反応、溶媒の乾燥除去処理、及び溶融・冷却処理から選択された少なくとも1つの処理を施して、伸長性ポリマー母材中に応力発光部が部分的に且つ一体的に形成されたシート状伸長性有機基材を得る工程
まず、工程Aでは、支持体上に、伸長性ポリマー母材を構成するポリマー(a)の液状前駆体、前記ポリマー(a)を含む溶液若しくは分散液、又は前記ポリマー(a)単体により伸長性ポリマー母材形成用材料層を形成する。
工程Aにおいて、支持体としては、特に限定されないが、例えばセパレータを用いることができる。セパレータとしては、特に限定されず、慣用の剥離紙、剥離処理層を有するセパレータ、フッ素ポリマーからなる低接着性基材、無極性ポリマーからなる低接着性基材などを使用できる。上記剥離処理層を有するセパレータとしては、例えば、シリコーン系、長鎖アルキル系、フッ素系、硫化モリブデン等の剥離処理剤により表面処理されたプラスチックフィルムや紙等が挙げられる。上記フッ素ポリマーからなる低接着性基材におけるフッ素系ポリマーとしては、例えば、ポリテトラフルオロエチレン、ポリクロロトリフルオロエチレン、ポリフッ化ビニル、ポリフッ化ビニリデン、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、クロロフルオロエチレン−フッ化ビニリデン共重合体等が挙げられる。また、上記無極性ポリマーとしては、例えば、オレフィン系樹脂(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレンなど)等が挙げられる。なお、セパレータは公知乃至慣用の方法により製造することができる。また、セパレータの厚さ等も特に限定されない。
伸長性ポリマー母材を構成するポリマー(a)の液状前駆体としては、ポリマー(a)に誘導できるモノマー(エネルギー線硬化性モノマー等)、該モノマーの部分重合物、硬化又は架橋によりポリマー(a)に誘導できる硬化又は架橋前ポリマーなどが挙げられる。これらの混合物であってもよい。ポリマー(a)を含む溶液若しくは分散液としては、ポリマー(a)の水溶液又は有機溶媒溶液、ポリマー(a)の水分散液、有機溶媒分散液が挙げられる。溶媒としては、前記[伸長性ポリマー母材]の項で例示したものを使用できる。
伸長性ポリマー母材を構成するポリマー(a)の液状前駆体、又は前記ポリマー(a)を含む溶液若しくは分散液により伸長性ポリマー母材形成用材料層を形成する場合には、例えば、支持体上に、これらを塗工することにより、伸長性ポリマー母材形成用材料層を形成できる。塗工液の粘度は、作業性等の観点から、塗工する際の温度(例えば10〜40℃の範囲内の所定温度、特に25℃)において、例えば、0.1〜50Pa・sであり、その上限は、好ましくは30Pa・s、さらに好ましくは20Pa・sであり、下限は、好ましくは0.5Pa・s、さらに好ましくは1Pa・sである。この粘度が低すぎると形状の保持が困難になりやすく、逆に高すぎると塗工作業性が低下しやすくなる。
塗工方法は特に限定されず、例えば、マイヤーバー、ブレードコーター、エアナイフコーター、ロールコーター、ダイコーター等のコーター、押出機、印刷機などを使用できる。
前記ポリマー(a)単体により伸長性ポリマー母材形成用材料層を形成する場合には、例えば、支持体上に、所定量のポリマー(a)単体を置き、その上にさらに支持体(セパレータ等)を載せ、これを加熱下(ポリマーの溶融温度以上の温度)でプレスすることにより伸長性ポリマー母材形成用材料層を形成できる。また、支持体上に、ポリマー(a)を押出成形することにより伸長性ポリマー母材形成用材料層を形成できる。さらに、ポリマー(a)を用いて、適宜な成形法により別途伸長性ポリマー母材形成用材料層となる層を作製しておき、これを支持体上に転写することにより伸長性ポリマー母材形成用材料層を形成することもできる。
なお、伸長性ポリマー母材形成用材料層の形成は、適宜な型を用いて行うこともできる。この場合には、前記形成用材料の粘度は前記範囲より低くてもよい。
前記伸長性ポリマー母材形成用材料層の厚みは、例えば、0.01mm〜1cmであり、その上限は、好ましくは5mm、さらに好ましくは2mmであり、下限は、好ましくは0.03mm、さらに好ましくは0.05mmである。
次に、工程Bでは、前記伸長性ポリマー母材形成用材料層の所定部位に、応力発光部形成用材料を配する。応力発光部形成用材料は、固体、液体、溶液、分散液等の何れであってもよい。応力発光部形成用材料としては、応力発光部を構成する材料(b)(応力発光体と樹脂材料を含む)の前駆体(例えば、エネルギー線硬化性組成物)、応力発光部を構成する材料(b)自体、応力発光部を構成する材料(b)を含む溶液若しくは分散液などを用いることができる。
工程Bにおいて、応力発光部形成用材料としては、応力発光部を、例えば前記ウレタンアクリル系ポリマーを含有するポリマーを含む材料で構成する場合は、例えば、末端に(メタ)アクリロイル基を有するポリウレタンと1種又は2種以上のアクリル系モノマーを少なくとも含むモノマー成分、又はその部分重合物を含有する硬化性組成物(エネルギー線硬化性組成物等)を使用できる。この硬化性組成物は、通常、重合開始剤を含んでいる。
前記伸長性ポリマー母材形成用材料層の所定部位に、応力発光部形成用材料を配する方法(手段)としては、特に限定されず、例えば、(1)応力発光部形成用材料を、伸長性ポリマー母材形成用材料層の所定箇所に、上から、応力発光部の横断面形状が所望の形状となるように、塗工、滴下、載置、打ち込み又は印刷する方法、(2)応力発光部形成用材料を、液状の形態で、伸長性ポリマー母材形成用材料層の所定箇所に、応力発光部の横断面形状が所望の形状となるように、注入する方法、(3)前記伸長性ポリマー母材形成用材料層を形成した支持体とは別の支持体上に、応力発光部の形成材料を、応力発光部の横断面形状が所望の形状となるように、塗工、滴下、載置又は印刷し、これを前記伸長性ポリマー母材形成用材料層上へ転写する方法などが挙げられる。
応力発光部形成用材料が液状である場合には、該液の粘度は、作業性等の観点から、塗工、滴下等する際の温度(例えば10〜40℃の範囲内の所定温度、特に25℃)において、例えば、10〜50000mPa・sであり、その上限は、好ましくは30000mPa・s、さらに好ましくは20000mPa・sであり、下限は、好ましくは20mPa・s、さらに好ましくは30mPa・sである。この粘度が低すぎると所望の形状の応力発光部が得られにくくなり、逆に高すぎると塗工作業性が低下しやすくなる。
塗工、滴下、載置、打ち込み、印刷、注入、転写は、特に限定されず、公知乃至慣用の方法で行うことができる。例えば、滴下は適宜な滴下装置、注入は、注射器等を使用できる。印刷としては、例えば、スクリーン印刷などが挙げられる。
前記伸長性ポリマー母材形成用材料層の所定部位に配する応力発光部形成用材料の種類、使用量、粘度等を選択、調整することにより、応力発光部の大きさ(面方向の大きさ及び高さ)をコントロールできる。応力発光部を複数形成する場合は、適宜な間隔をおいて、応力発光部形成用材料を適用する。なお、応力発光部形成用材料の滴下、注入箇所を規制する手段を用いることにより、応力発光部の形状を制御できる。応力発光部の大きさが比較的大きい場合は滴下法を用いることが多く、応力発光部の大きさが比較的小さい場合は注入法を用いることが多い。滴下法の場合は、滴下装置の先端部が伸長性ポリマー母材形成用材料に接触しないため汚れないという利点がある。注入法の場合は、滴下法よりも応力発光部形成用材料が伸長性ポリマー母材形成用材料層に対して拡散しにくいという利点がある。
なお、応力発光部形成用材料として、応力発光部を構成する材料(b)の前駆体であるエネルギー線硬化性組成物を用いる場合には、該エネルギー線硬化性組成物(塗布液)を伸長性ポリマー母材形成用材料層の所定部位に配する際、エネルギー線硬化性組成物(塗布液)の周辺部(伸長性ポリマー母材形成用材料層)への拡散を抑制するため、該エネルギー線硬化性組成物にポリマーを含有させるのが好ましい。特に、伸長性ポリマー母材中に応力発光部を多数形成する場合には、塗布液を伸長性ポリマー母材形成用材料層の所定部位に所定の個数配した後、エネルギー線を照射する工程に移行すると、初期に塗布液を配した箇所では、時間の経過により塗布液が周辺部に拡散し(滲み)、その状態で硬化して、所望する形状や大きさの応力発光部が得られなかったり、応力発光部の輪郭が鮮明でなくなったりすることがある。このような場合、エネルギー線硬化性組成物(塗布液)中にポリマーを含有させておくと、該塗布液中に含まれているモノマー等が周辺部(伸長性ポリマー母材形成用材料層)へ拡散するのを抑制でき、多数の応力発光部を形成する場合でも、形状、大きさの揃った、輪郭が鮮明な応力発光部を形成することができる。この方法は、特に、エネルギー線硬化性組成物(塗布液)を伸長性ポリマー母材形成用材料層の多数の所定部位に滴下により配する場合に大きな拡散抑制効果が得られる。
前記エネルギー線硬化性組成物中に配合するポリマーの重量平均分子量としては、特に限定されないが、例えば1000以上、好ましくは2000以上、さらに好ましくは3000以上である。ポリマーの重量平均分子量が低すぎると、拡散抑制効果が小さくなりやすい。また、ポリマーの重量平均分子量があまりに大きすぎると、組成物(塗布液)の粘度が高くなりすぎて塗布作業性が低下する場合がある。この観点からは、ポリマーの重量平均分子量の上限は、例えば、5000000、好ましくは1000000、さらに好ましくは100000である。前記エネルギー線硬化性組成物(塗布液)中のポリマーの含有量は、例えば5重量%以上、好ましくは10重量%以上、さらに好ましくは20重量%以上である。ポリマーの含有量が5重量%未満の場合には前記拡散抑制効果が小さい。また、ポリマーの含有量が多すぎると、エネルギー線硬化性組成物(塗布液)の粘度が高くなりすぎて塗布作業性が低下しやすくなる。この観点から、前記エネルギー線硬化性組成物(塗布液)中のポリマーの含有量の上限は、例えば95重量%、好ましくは90重量%、さらに好ましくは85重量%である。
前記エネルギー線硬化性組成物中に配合するポリマーとしては、応力発光部に要求される物性(特性)を損なわないポリマーであれば特に制限はないが、伸長性ポリマー母材と応力発光部の一体性、密着性等の観点から、伸長性ポリマー母材を構成するポリマーと同種のポリマー、或いは伸長性ポリマー母材を構成するポリマーが有するポリマー鎖(主鎖又は側鎖)と同種のポリマー鎖を主鎖又は側鎖に有するポリマーであることが好ましい。
前記エネルギー線硬化性組成物(塗布液)としては、該塗布液を伸長性ポリマー母材形成用材料層上に滴下して(滴下量約0.03μL)から60秒後における伸長性ポリマー母材形成用材料層上の塗布液の直径が、滴下直後の塗布液の直径に対して1.2倍以下となるものが好ましく、1.15倍以下となるものがより好ましい。また、該塗布液を伸長性ポリマー母材形成用材料層上に滴下して(滴下量約0.03μL)から120秒後における伸長性ポリマー母材形成用材料層上の塗布液の直径が、滴下直後の塗布液の直径に対して1.4倍以下となるものが好ましく、1.3倍以下となるものがより好ましい。滴下して60秒後或いは120秒後の塗布液の前記直径が滴下直後の塗布液の直径と比較して大きくなるような塗布液からは、狙った形状のパターンシート[伸長性ポリマー母材中に応力発光部が多数形成された(例えば、規則的パターンで形成された)シート状伸長性有機基材]が得られないことがある。
応力発光部形成用材料の塗工、滴下、載置、打ち込み、印刷、注入又は転写の後、必要に応じて、応力発光部形成用材料が伸長性ポリマー母材形成用材料層の所定の深さまで浸透、移行、沈降するまで放置する。
そして、工程Cでは、応力発光部形成用材料を所定部位に配した伸長性ポリマー母材形成用材料層に対して、反応、溶媒の乾燥除去処理、及び溶融・冷却処理(ホットメルト処理)から選択された少なくとも1つの処理を施して、伸長性ポリマー母材中に応力発光部が部分的に且つ一体的に形成されたシート状伸長性有機基材を得る。
反応としては、エネルギー線や熱による重合反応、硬化又は架橋反応等が挙げられる。溶媒の乾燥除去は、溶媒の種類等に応じて、適当な温度で行う。溶媒の乾燥除去は、常圧で行ってもよく、減圧下に行ってもよい。前記溶融は、伸長性ポリマー母材形成用材料層と応力発光部形成用材料のうち少なくとも樹脂材料がともに溶融する温度で行うのが好ましい。
本発明において、工程Aにおいて用いる伸長性ポリマー母材形成用材料の形態と、工程Bにおいて用いる応力発光部形成用材料の形態との組合せは特に制限はなく、任意に組み合わせることができる。例えば、伸長性ポリマー母材形成用材料として、エネルギー線硬化性材料[ポリマー(a)の液状前駆体(シロップ等)]を用いる場合、溶剤系材料[ポリマー(a)を含む溶液]を用いる場合、分散液系材料[ポリマー(a)を含むエマルション等]を用いる場合、ホットメルト性材料[ポリマー(a)単体]を用いる場合のそれぞれにおいて、応力発光部形成用材料としては、溶剤系材料(ポリマー溶液)、分散液系材料(ポリマーエマルション等)、エネルギー線硬化性材料[ポリマーの液状前駆体(シロップ等)]、固体[ホットメルト性材料(ポリマー単体)などの何れの形態の材料を用いることもできる。より具体的には、前記伸長性ポリマー母材形成用材料と前記応力発光部形成用材料の形態は、エネルギー線硬化性材料(エネルギー線硬化性シロップ等)同士の組合せ、溶剤系材料(溶液)同士の組合せ、分散液系材料(エマルション等)同士の組合せ、ホットメルト性材料同士の組合せのほか、溶剤系材料(溶液)と分散液系材料(エマルション等)との組合せ(順序不同)、ホットメルト性材料と溶剤系材料(溶液)との組合せ(順序不同)、ホットメルト性材料と分散液系材料(エマルション等)との組合せ(順序不同)などの何れであってもよい。工程Cにおいて、それぞれの材料の形態に適した処理を行うことにより、伸長性ポリマー母材中に応力発光部が部分的に且つ一体的に形成されたシート状伸長性有機基材を得ることができる。
なお、応力発光部と伸長性ポリマー母材部の界面近傍において、組成及び/又は物性(伸び特性、硬度等)に関してグラデーションをなしているシート状伸長性有機基材は、例えば、伸長性ポリマー母材形成用材料及び応力発光部形成用材料として、互いに共通又は類似する材料(溶媒、モノマー等)を用いたり、互いに親和性のある材料(溶媒、モノマー等)を用いることにより製造することができる。具体的には、例えば、伸長性ポリマー母材形成用材料及び応力発光部形成用材料を、ともにアクリル系モノマーを含む材料(ポリマーの液状前駆体等)で構成することにより、上記のグラデーションを得ることができる。このようなグラデーションは、モノマー成分、溶媒等の拡散、移行と、その後の硬化、溶媒の乾燥除去等により形成される。従って該グラデーションを有するシート状伸長性有機基材のグラデーション部では、各部位[応力発光部、伸長性ポリマー母材部]の形成用材料から想定される組成とは異なるものとなる。なお、グラデーションの程度(幅)は、伸長性ポリマー母材形成用材料及び応力発光部形成用材料(溶媒、モノマー等)の種類や量により調整できる。また、前記のように、応力発光部形成用材料としてエネルギー線硬化性組成物を用いる場合において、該エネルギー線硬化性組成物中にポリマーを配合する場合には、該ポリマーの種類、量、重量平均分子量等によりグラデーションの程度(幅)を調整することもできる。
本発明のシート状伸長性有機基材の製造法においては、シート状伸長性有機基材を効率よく製造できる観点から、以下の態様(I)〜(III)が好ましい。
(I)工程Aにおいて、支持体上に、前記ポリマー(a)の液状前駆体であるエネルギー線硬化性組成物により伸長性ポリマー母材形成用材料層を形成し、工程Bにおいて、前記伸長性ポリマー母材形成用材料層の所定部位に、応力発光部を構成する材料(b)の前駆体であるエネルギー線硬化性組成物を配し、工程Cにおいて、前記材料(b)の前駆体であるエネルギー線硬化性組成物を所定部位に配した伸長性ポリマー母材形成用材料層にエネルギー線を照射し、前記2つのエネルギー線硬化性組成物を硬化させて、伸長性ポリマー母材中に応力発光部が部分的に且つ一体的に形成されたシート状伸長性有機基材を得る方法。
(II)工程Aにおいて、支持体上に、前記ポリマー(a)を含む溶液若しくは分散液により伸長性ポリマー母材形成用材料層を形成し、工程Bにおいて、前記伸長性ポリマー母材形成用材料層の所定部位に、応力発光部を構成する材料(b)[例えば、ポリマー等]又は該材料(b)を含む溶液若しくは分散液を配し、工程Cにおいて、応力発光部を構成する材料(b)又は該材料(b)を含む溶液若しくは分散液を所定部位に配した伸長性ポリマー母材形成用材料層に対し、溶媒の乾燥除去処理を施して、伸長性ポリマー母材中に応力発光部が部分的に且つ一体的に形成されたシート状伸長性有機基材を得る方法。
(III)工程Aにおいて、支持体上に、前記ポリマー(a)単体により伸長性ポリマー母材形成用材料層を形成し、工程Bにおいて、前記伸長性ポリマー母材形成用材料層の所定部位に、応力発光部を構成する材料(b)を配し、工程Cにおいて、応力発光部を構成する材料(b)を所定部位に配した伸長性ポリマー母材形成用材料層に対し、溶融・冷却処理(ホットメルト処理)を施して、伸長性ポリマー母材(A)中に応力発光部が部分的に且つ一体的に形成されたシート状伸長性有機基材を得る方法。
本発明のシート状伸長性有機基材は、より具体的には、例えば、下記の工程を経ることにより製造できる。
工程A1:支持体上に伸長性ポリマー母材形成用エネルギー線硬化性組成物層を形成する工程
工程B1:前記伸長性ポリマー母材形成用エネルギー線硬化性組成物層の所定部位に、応力発光部の横断面形状が所望の形状となるように、応力発光部形成用エネルギー線硬化性組成物を配する(含有させる)工程
工程C1:前記応力発光部形成用エネルギー線硬化性組成物を配した伸長性ポリマー母材形成用エネルギー線硬化性組成物層にエネルギー線を照射して、前記応力発光部形成用エネルギー線硬化性組成物及び伸長性ポリマー母材形成用エネルギー線硬化性組成物層を硬化させて、伸長性ポリマー母材中に応力発光部が部分的に且つ一体的に形成された伸長性を有するシート状有機基材を得る工程
この方法は、上記(I)の態様の具体例であり、図8はその概略説明図(断面図)である。図8の(a)は工程A1、(b)は工程B1、(c)、(d)、(e)、(f)[又は、(d′)、(e′)、(f)]は工程C1に該当する。
工程A1では、支持体4上に伸長性ポリマー母材形成用エネルギー線硬化性組成物層20を形成する。支持体4としては前記のものを使用できる。
前記伸長性ポリマー母材形成用エネルギー線硬化性組成物層20は、例えば、前記のポリウレタン鎖、ポリウレア鎖、ポリウレタンウレア鎖、ポリオレフィン鎖(特に、ポリジエン鎖)、シリコーン鎖、ポリエステル鎖、ポリエーテル鎖、ポリアミド鎖、ポリスチレン系ポリマー鎖及びポリアクリル鎖からなる群より選択される少なくとも1種のポリマー鎖を有し、且つ主鎖又は側鎖にエネルギー線硬化性基A1を有する硬化性ポリマーP、又は該硬化性ポリマーPとエネルギー線硬化性基A2を有する硬化性モノマーMとの混合物、及び光重合開始剤を含むエネルギー線硬化性組成物を支持体4上に塗工することにより形成できる。
前記硬化性組成物には、必要に応じて溶剤を添加してもよいが、後で溶剤を除去する工程が増えるので、溶剤を使用しないのが好ましい。また、前記硬化性組成物には、熱による重合を防止するため、必要に応じて重合禁止剤を添加してもよい。
前記硬化性組成物はシロップ状であるのが好ましい。前記硬化性組成物の粘度、塗工方法は前記と同様である。なお、伸長性ポリマー母材形成用エネルギー線硬化性組成物層20の形成は、適宜な型を用いて行うこともできる。この場合には、前記硬化性組成物の粘度は前記範囲より低くてもよい。
前記伸長性ポリマー母材形成用エネルギー線硬化性組成物層20の厚みは前記と同様である。
工程B1では、前記伸長性ポリマー母材形成用エネルギー線硬化性組成物層20中に、応力発光部形成用エネルギー線硬化性組成物30を配する(含有させる)。
工程B1は、例えば、応力発光部を構成するポリマーの前駆体、例えば、末端に(メタ)アクリロイル基を有するポリウレタンと1種又は2種以上のアクリル系モノマーを少なくとも含むモノマー成分又はその部分重合物、及び光重合開始剤を含有するエネルギー線硬化性組成物を、前記伸長性ポリマー母材形成用エネルギー線硬化性組成物層20の所定箇所に上から添加(滴下)したり、前記伸長性ポリマー母材形成用エネルギー線硬化性組成物層20中の所定箇所に注入したりすることにより行うことができる。また、前記モノマー成分又はその部分重合物、及び光重合開始剤を含有するエネルギー線硬化性組成物を塗工・滴下した支持体から前記伸長性ポリマー母材形成用エネルギー線硬化性組成物層20上へ転写することによっても行うことができる。
前記応力発光部形成用エネルギー線硬化性組成物30はシロップ状であるのが好ましい。応力発光部形成用エネルギー線硬化性組成物30の粘度は、作業性等の観点から、塗工する際の温度(例えば10〜40℃の範囲内の所定温度、特に25℃)において、例えば、10〜50000mPa・sであり、その上限は、好ましくは30000mPa・s、さらに好ましくは20000mPa・sであり、下限は、好ましくは20mPa・s、さらに好ましくは30mPa・sである。この粘度が低すぎると所望の形状が得られにくくなり、逆に高すぎると塗工作業性が低下しやすくなる。
応力発光部形成用エネルギー線硬化性組成物30の添加、注入方法は特に限定されず、例えば、注射器、適宜な滴下装置等を使用できる。また、応力発光部形成用エネルギー線硬化性組成物30の転写方法は特に限定されず、例えば、グラビアコーターなどの凹版塗工機を用いる方法、応力発光部形成用エネルギー線硬化性組成物30を塗工・滴下した支持体と伸長性ポリマー母材形成用エネルギー線硬化性組成物層20を貼り合わせる方法等を使用できる。
応力発光部形成用エネルギー線硬化性組成物30の使用量及び粘度を調整することにより、硬化後の応力発光部3の大きさ(面方向の大きさ及び高さ)をコントロールできる。応力発光部3を複数形成する場合は、適宜な間隔をおいて、応力発光部形成用エネルギー線硬化性組成物30を適用する。なお、応力発光部形成用エネルギー線硬化性組成物30の添加又は注入箇所を規制する手段を用いることにより、硬化後の応力発光部3の形状を制御することができる。
工程C1では、前記応力発光部形成用エネルギー線硬化性組成物30を含有させた伸長性ポリマー母材形成用エネルギー線硬化性組成物層20にエネルギー線を照射して、前記応力発光部形成用エネルギー線硬化性組成物30及び伸長性ポリマー母材形成用エネルギー線硬化性組成物層20を硬化させ、伸長性ポリマー母材2中に応力発光部3が部分的に且つ一体的に形成された伸長性を有するシート状有機基材を得る。
図8ではエネルギー線として紫外線(UV)を用いているが、前記のように、α線、β線、γ線、中性子線、電子線などの電離性放射線や、可視光線であってもよい。
エネルギー線の照射エネルギー、照射時間、照射方法などは特に限定されず、光重合開始剤を活性化させて、モノマー成分の反応を生じさせることができればよい。
エネルギー線の照射装置としては、慣用のものを使用できる。例えば、紫外線を照射する場合には、水銀灯、蛍光灯、ナトリウムランプ、メタルハライドランプ、キセノンランプ、ネオン管、ネオンランプ、高輝度放電灯などを用いることができる。
エネルギー線照射の際、酸素による硬化阻害を防止する目的や、表面を平滑にする目的のため、前記応力発光部形成用エネルギー線硬化性組成物30を含有させた伸長性ポリマー母材形成用エネルギー線硬化性組成物層20の表面にカバーフィルム5を積層してもよい。カバーフィルム5としては、前記支持体4と同様のセパレータなどを使用できる。カバーフィルム5の積層は、例えば、ハンドローラー等を用いて行うことができる。
エネルギー線照射は数段階に分けて行ってもよい。例えば、紫外線を照射する場合、図8の(c)に示すように、予め高い照度(例えば、50〜1000mW/cm2)にて短時間照射(例えば、積算照射量10〜1000mJ/cm2)した後、図8の(d)に示すように、前記カバーフィルム5を積層し、その後、図8の(e)に示すように、低い照度(例えば、1〜40mW/cm2)にて長時間照射(例えば、積算照射量500〜10000mJ/cm2)してもよい。このように、エネルギー線照射を数段階に分けて照射することにより、ハンドローラーによるカバーフィルム5の積層時の作業性を向上することができる。図中、200は部分硬化した伸長性ポリマー母材形成用エネルギー線硬化性組成物層であり、300は部分硬化した応力発光部形成用エネルギー線硬化性組成物である。
エネルギー線照射を1段で行う場合には、例えば、工程B1の後、図8の(d′)に示すように、前記応力発光部形成用エネルギー線硬化性組成物30を含有させた伸長性ポリマー母材形成用エネルギー線硬化性組成物層20の表面にカバーフィルム5を積層し、図8の(e′)に示すように紫外線を照射してもよい。この場合の紫外線の照度は、例えば1〜40mW/cm2、積算照射量は、例えば500〜10000mJ/cm2である。
上記のようにして応力発光部形成用エネルギー線硬化性組成物30及び伸長性ポリマー母材形成用エネルギー線硬化性組成物層20を硬化させた後、図8の(f)に示されるように、必要に応じてカバーフィルム5、支持体4を剥離し、必要に応じて適宜な大きさに切断し、シート状伸長性有機基材1として使用に供される。切断操作はカバーフィルム5や支持体4の剥離前に行ってもよい。
また、本発明のシート状伸長性有機基材は、より具体的に、下記の工程を経ることにより製造することもできる。
工程A2:支持体上に伸長性ポリマー母材を構成するポリマーaを含む溶液又は分散液を塗工して、伸長性ポリマー母材形成用材料層を形成する工程
工程B2:前記伸長性ポリマー母材形成用材料層の所定部位に、応力発光部を構成するポリマーを含有する溶液若しくは分散液を、応力発光部Aの横断面形状が所望の形状となるように、塗工、滴下、載置、打ち込み、印刷等により配する(含有させる)工程
工程C2:前記応力発光部を構成するポリマーを含有する溶液若しくは分散液を配した伸長性ポリマー母材形成用材料層を乾燥して、溶媒を除去し、伸長性ポリマー母材中に応力発光部が部分的に且つ一体的に形成された伸長性を有するシート状有機基材を得る工程
この方法は、上記(II)の態様の具体例であり、図9はその概略説明図(断面図)である。図9の(g)は工程A2、(h)は工程B2、(i)、(j)は工程C2に相当する。符号21は伸長性ポリマー母材を構成するポリマーを含む溶液又は分散液からなる層(伸長性ポリマー母材形成用材料層)、符号31は応力発光部を構成するポリマーを含有する溶液若しくは分散液を示す。符号1、2、3、4は前記と同じである。
さらに、本発明のシート状伸長性有機基材は、より具体的に、下記の工程を経ることにより製造することもできる。
工程A3:支持体上に伸長性ポリマー母材を構成するポリマーaを、熱プレス、押出成形等によりシート化して、伸長性ポリマー母材形成用材料層を形成する工程
工程B3:前記伸長性ポリマー母材形成用材料層の所定部位に、応力発光部を構成するポリマーを、応力発光部Aの横断面形状が所望の形状となるように、載置又は滴下(溶融物)等により配する(含有させる)工程
工程C3:前記応力発光部を構成するポリマーを配した伸長性ポリマー母材形成用材料層を加熱溶融した後、冷却して、伸長性ポリマー母材中に応力発光部が部分的に且つ一体的に形成された伸長性を有するシート状有機基材を得る工程
この方法は、上記(III)の態様の具体例であり、図10はその概略説明図(断面図)である。図10の(k)は工程A3、(l)は工程B3、(m)、(n)は工程C3に該当する。符号22は伸長性ポリマー母材を構成するポリマーからなるシート(伸長性ポリマー母材形成用材料層)、符号32は応力発光部を構成するポリマーを示す。符号1、2、3、4は前記と同じである。
さらにまた、本発明のシート状伸長性有機基材は、より具体的に、下記の工程を経ることにより製造することもできる。この方法は、上記図8に示す方法の変法であり、操作順序以外は基本的に図8に示す方法と同じである。
工程D:支持体上に、応力発光部の横断面形状が所望の形状となるように、応力発光部形成用エネルギー線硬化性組成物を配し、これにエネルギー線を照射して、部分硬化(半硬化)した応力発光部形成用エネルギー線硬化性組成物層を形成する工程
工程E:別の支持体(セパレータ)上に伸長性ポリマー母材形成用エネルギー線硬化性組成物層を形成し、このシートを、上記支持体上に部分硬化(半硬化)した応力発光部形成用エネルギー線硬化性組成物層が形成されたシートに、伸長性ポリマー母材形成用エネルギー線硬化性組成物層側が部分硬化(半硬化)した応力発光部形成用エネルギー線硬化性組成物層側になるようにして、貼り合わせる工程
工程F:部分硬化(半硬化)した応力発光部形成用エネルギー線硬化性組成物層と伸長性ポリマー母材形成用エネルギー線硬化性組成物層とにエネルギー線を照射して、これらを硬化させて、伸長性ポリマー母材中に応力発光部が部分的に且つ一体的に形成された伸長性を有するシート状有機基材を得る工程
図11はこの方法を示す概略説明図(断面図)である。図11の(o)、(p)、(q)は工程D、(r)は工程E、(s)、(t)は工程Fに該当する。符号1、2、3、4は前記と同じである。符号5はセパレータ(カバーフィルム)である。符号20は伸長性ポリマー母材形成用エネルギー線硬化性組成物層、符号30は応力発光部形成用エネルギー線硬化性組成物、符号300は部分硬化した応力発光部形成用エネルギー線硬化性組成物である。
工程Dにおいて、応力発光部形成用エネルギー線硬化性組成物層を紫外線を照射して部分硬化させる際、紫外線の照度は、例えば1〜40mW/cm2、積算照射量は、例えば10〜1000mJ/cm2である。また、工程Fにおいて、部分硬化(半硬化)した応力発光部形成用エネルギー線硬化性組成物層と伸長性ポリマー母材形成用エネルギー線硬化性組成物層を紫外線を照射して硬化させる際、紫外線の照度は、例えば1〜40mW/cm2、積算照射量は、例えば500〜10000mJ/cm2である。
上記のようにして部分硬化(半硬化)した応力発光部形成用エネルギー線硬化性組成物層と伸長性ポリマー母材形成用エネルギー線硬化性組成物層を硬化させた後、図11の(t)に示されるように、必要に応じてセパレータ(カバーフィルム)5、支持体4を剥離し、必要に応じて適宜な大きさに切断し、シート状伸長性有機基材1として使用に供される。切断操作はセパレータ(カバーフィルム)5や支持体4の剥離前に行ってもよい。
こうして得られるシート状伸長性有機基材1は、応力発光部を有する伸長性部材(又は、応力発光部を有する伸縮性部材)として、例えば、応力分布測定用シート(特に、3次元形状を有する構造物や、伸縮部、可動部、折り曲げ部を有する構造物等の応力分布を測定する応力分布測定用シート)、衣服(暗闇で光る衣服等)、装飾品(暗闇で光る装飾品等)、安全用品(光る靴等)、家屋構成部材(歩くと光る床、触ると光る手すり等)、玩具などに利用することができる。
なお、シート状伸長性有機基材の少なくとも一方の面に粘着剤層を設けて粘着シート又は粘着テープとして使用することもできる。伸長性ポリマー母材及び/又は応力発光部が粘着性を有する場合には、粘着剤層を設けることなく、粘着テープ又はシートとして用いることができる。粘着剤層を構成する粘着剤としては、特に制限は無く、アクリル系粘着剤、ゴム系粘着剤、シリコーン系粘着剤等、公知の粘着剤を使用できる。
以下、本発明について実施例及び比較例を挙げてさらに具体的に説明するが、本発明はこれらにより何ら限定されるものではない。
製造例1(母材シロップの製造)
冷却管、温度計、および攪拌装置を備えた反応容器に、(メタ)アクリル系モノマーとして、イソボルニルアクリレート(商品名「IBXA」、大阪有機化学工業(株)製)を71重量部、n−ブチルアクリレート(BA、東亜合成(株)製)を19重量部、アクリル酸(AA)を10重量部、ポリオールとして、数平均分子量650のポリ(オキシテトラメチレン)グリコール(PTMG650、三菱化学(株)製)を68.4重量部、触媒としてジラウリン酸ジブチルスズ(DBTL)0.01重量部を投入し、攪拌しながら、水添キシリレンジイソシアネート(HXDI、三井化学ポリウレタン(株)製)を25.5重量部滴下し、65℃で5時間反応させ、ウレタンポリマー−アクリル系モノマー混合物を得た。その後、さらにヒドロキシエチルアクリレート(商品名「アクリックス HEA」、東亜合成(株)製)6.1重量部を投入し、65℃で1時間反応することでアクリロイル基末端ウレタンポリマー−アクリル系モノマー混合物を得た。その後、光重合開始剤としてビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニル−フォスフィンオキシド(商品名「イルガキュア819」、チバ・スペシャリティ・ケミカルズ(株)製)を0.15重量部添加することにより、母材シロップを得た。なお、イソシアネート基含有成分およびポリオール(ヒドロキシル基含有成分)のNCO/OH(官能基の当量比)は1.25、ポリマー濃度は50wt%であった。得られたシロップの粘度(25℃)は8Pa・sであった。
製造例2(応力発光ポリマー部形成用シロップAの製造)
冷却管、温度計、および攪拌装置を備えた反応容器に、ポリオールとして、数平均分子量650のポリ(オキシテトラメチレン)グリコール(PTMG650、三菱化学(株)製)を59.1重量部、触媒としてジラウリン酸ジブチルスズ(DBTL)0.01重量部を投入し、攪拌しながら、水添キシリレンジイソシアネート(HXDI、三井化学ポリウレタン(株)製)を28.3重量部滴下し、65℃で5時間反応させ、さらにヒドロキシエチルアクリレート(商品名「アクリックス HEA」、東亜合成(株)製)12.6重量部を投入し、65℃で1時間反応することでアクリロイル基末端ウレタンポリマーを得た。
このアクリロイル基末端ウレタンポリマー12.5重量部に対し、トリメチロールプロパンEO付加トリアクリレート(商品名「ビスコート#360」、大阪有機化学工業(株)製)を37.5重量部、応力発光体(商品名「TAIKO−ML−1」、大光炉材(株)社製)を50重量部、光重合開始剤としてビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニル−フォスフィンオキシド(商品名「イルガキュア819」、チバ・スペシャリティ・ケミカルズ(株)製)を0.15重量部添加することにより、応力発光ポリマー部形成用シロップAを得た。
製造例3(応力発光ポリマー部形成用シロップBの製造)
製造例1で得られた母材シロップ50重量部に対して応力発光体商品名「TAIKO−ML−1」、大光炉材(株)社製)を50重量部添加することにより、応力発光ポリマー部形成用シロップBを得た。
実施例1
セパレータ(商品名「MRF38」、三菱樹脂(株)製、長さ400mm、幅240mm、厚み38μm)の表面に、製造例1で得られた母材シロップをアプリケータにて塗工し、厚み180μmの母材シロップ層を形成した。この母材シロップ層の所定部位にディスペンサー(商品名「SM300DS−S、MPP−1」、武蔵エンジニアリング(株)製)を用いて、製造例2で得られた応力発光ポリマー部形成用シロップA(約0.03μL)を注入し、島状の応力発光ポリマー部形成用シロップ部を3mm間隔(中心間距離)で形成した。そして、上から、紫外線ランプ(BLタイプ)により紫外線を照射し(紫外線照度:3.4mW/cm2、積算照射量:100mJ/cm2)、母材シロップ及び応力発光ポリマー部形成用シロップを半硬化させた後、半硬化したシロップ上にカバーセパレータ(商品名「MRF38」、三菱樹脂(株)製、長さ400mm、幅240mm、厚み38μm)をハンドローラーにて貼り合わせ、さらに紫外線ランプ(BLタイプ)により紫外線を照射し(紫外線照度:3.4mW/cm2、積算照射量:2000mJ/cm2)、母材シロップの硬化物(=伸長性ポリマー母材)中に略円柱状の応力発光ポリマー部形成用シロップ硬化部(=応力発光ポリマー部)(直径約1mm)が所定の間隔[3mm間隔(中心間の距離)、16個×16個]で配置された伸長性有機基材(厚み:180μm)を得た。
実施例2(転写法による作製)
セパレータ(商品名「MRF38」、三菱樹脂(株)製、厚み38μm)の表面の所定部位に、ディスペンサー(商品名「SM300DS-S、MPP−1」、武蔵エンジニアリング(株)製)を用いて、上から、製造例2で得られた応力発光ポリマー部形成用シロップA(約0.03μL)を3mm間隔(中心間距離)で滴下した。この応力発光ポリマー部パターン形成後、即座に、上から、紫外線ランプ(BLタイプ)により紫外線を照射し(紫外線照度:3.4mW/cm2、積算照射量:100mJ/cm2)、応力発光ポリマー部形成用シロップを部分硬化(半硬化)させた。
一方、セパレータ(商品名「MRF38」、三菱樹脂(株)製、厚み38μm)の表面に、製造例1で得られた母材シロップをアプリケータにて塗工し、厚み180μmの母材シロップ層を形成した。
上記の母材シロップ層を形成したシートを、上記の半硬化した応力発光ポリマー部が形成されたシート上に、母材シロップ層側が半硬化した応力発光ポリマー部側となるように、ハンドローラーにて貼り合わせ、さらに紫外線ランプ(BLタイプ)により紫外線を照射し(紫外線照度:3.4mW/cm2、積算照射量:2000mJ/cm2)、母材シロップの硬化物(=伸長性ポリマー母材)中に略円柱状の応力発光ポリマー部形成用シロップ硬化部(=応力発光ポリマー部)(直径約1mm)が所定の間隔[3mm間隔(中心間の距離)、16個×16個]で配置された伸長性有機基材(厚み:180μm)を得た。
実施例3
応力発光ポリマー部形成用シロップAを応力発光ポリマー部形成用シロップBに変更した以外は実施例1と同様の操作を行い、伸長性有機基材(厚み:180μm)を得た。
比較例1 乳鉢にエポキシ樹脂としてEpok812(主剤、応研商事(株)社製)を21.3重量部、DDSA(硬化剤、応研商事(株)社製)を28重量部、DMP−30(重合促進剤、応研商事(株)社製)を0.65重量部を投入し、そこに応力発光体(商品名「TAIKO−ML−1」、大光炉材(株)社製)を50重量部を添加し、乳鉢で応力発光体をすりつぶしながら混合した。脱泡のため30分静置した後、セパレータ(商品名「MRF38」、三菱樹脂(株)製、長さ400mm、幅240mm、厚み38μm)の表面にアプリケータにて厚み100μmとなるように塗工した。その後、60℃で12時間加熱することにより、有機基材(厚み:100μm)を得た。
評価試験
実施例及び比較例で作成した各有機基材について以下の評価試験を行った。結果を表1に示す。
<応力発光性の確認>
暗闇で有機基材の応力発光部(=応力発光ポリマー部)に応力(硬質の棒で局所的に押さえつける、もしくは強くこする)を加え、発光状態を目視で確認した。
〇:応力を加えると発光が確認される
×:応力を加えても発光が確認されない
<曲面追従性>
1L丸底フラスコの底部の3次元曲面部に、有機基材を50mm×50mmに切り分けたサンプルを1L丸底フラスコに追従するように貼り付けた。その時の状態で曲面追従性を評価した。
〇:シワや浮きもなくキレイに貼りつけられている
×:シワや浮きが発生している
<破断伸びの測定>
実施例および比較例で得られた有機基材を幅10mm、長さ50mm超に切断し、チャック間距離が50mmとなるように設置して、引張試験機(商品名「Autograph AG−X 200N」、(株)島津製作所製)によりS−S試験(温度:23℃、湿度:65%RH、引張速度:200mm/min)を行った。この測定値をもとに、破断伸びを求めた
<伸び量の測定>
実施例で得られた有機基材の25%伸長時(元の長さの125%における応力発光部の伸長方向の伸長率S1(%)と、応力発光部形成用シロップ硬化部(応力発光部)以外の部位(伸長性ポリマー母材部)の伸長方向の伸長率S2(%)を計測した。
伸長率S1(%)は、応力発光部の伸長方向の径(基材表面の略円の径)を伸長の前後で測定し、式:{(伸長後の長さ−伸長前の長さ)/(伸長前の長さ)}×100)により計算で求めた。
伸長率S2(%)は、応力発光部形成用シロップ硬化部以外の部位(伸長性ポリマー母材部)の伸長方向に6箇所印を付けておき、隣り合う印の間の長さを伸長の前後で測定し、式:{(伸長後の長さ−伸長前の長さ)/(伸長前の長さ)}×100)により計算で求めた。なお比較例のサンプルでは十分に伸長できないため測定できなかった。
<伸縮性の評価(伸長回復率の測定)>
実施例で得られた有機基材のサンプル(幅10mm)を、応力発光部がチャック間(50mm)に入るように設置して、引張試験機(商品名「Autograph AG−X 200N」、(株)島津製作所製)により50%伸長時のヒステリシス試験(温度:23℃、引張速度:200mm/min、除荷速度:200mm/min)を行い、残留歪(伸長後に荷重が0となった時点での伸び量)を測定した。この測定値を基に、伸長回復率を{25mm(50%伸長時の伸び量)−(残留歪)}/25mm(50%伸長時の伸び量)×100により計算で求めた。なお比較例のサンプルでは十分に伸長できないため測定できなかった。
<硬さの評価(ナノインデンターによる測定)>
実施例および比較例で得られた有機基材のサンプルの応力発光部(パターン中央部、比較例では有機基材自体に相当)、伸長性ポリマー母材部(応力発光部パターン間の中央部)について、ナノインデンター(商品名「Triboindenter」、Hysitron(株)製)にて、所定の条件(使用圧子:Berkovich、測定方法:単一押し込み試験、押し込み深さ:4μm、押し込み速度:1.5μm/秒、温度:25℃)で押し込み深さ4μmにおける荷重を測定した。
<応力発光輝度の評価(応力発光輝度測定装置による測定)>
実施例および比較例で得られた有機基材のサンプルの応力発光部を図12に示すような応力発光輝度測定装置に暗室下でセットし、UV・可視光源(商品名「LC8」、浜松ホトニクス(株)製)により2分間光照射した後に消灯した。光センサーモジュール(商品名「H10723−110」、浜松ホトニクス(株)社製)で得られた輝度電圧をペーパレスレコーダ(商品名「TR−V500」、キーエンス(株)社製)と卓上試験機(商品名「EZ Test」、(株)島津製作所社製)に取り込み、輝度電圧の変化をモニターした。輝度減衰曲線の傾きが緩やかとなったところで、卓上試験機にセットした圧縮治具(材質:ステンレス、形状:長さ60mm×直径12mmの円柱状)にて1mm/分の速度で圧縮を開始した。圧縮荷重が200Nとなったところで圧縮治具を原点に戻し、応力発光輝度(=圧縮時のピーク発光輝度−圧縮開始直前の発光輝度)(pW)を求めた。