(実施の形態1)
以下、本発明の実施の形態1に係るアンテナシステム10を、図1〜図3を参照して説明する。アンテナシステム10は、図1に示すように、アンテナ装置11と、和信号増幅変換機12と、差信号増幅変換機13と、信号受信機14と、追尾受信機15と、アンテナ制御装置16と、を備えている。
アンテナ装置11は、例えばパラボラアンテナ等の複数のアンテナ本体と、アンテナ本体の方位角およびアンテナ本体の仰角を別々に調整することが可能な駆動装置と、受信した電波(信号)から和信号および差信号を生成する受信回路と、を備えている。
アンテナ装置11は、アンテナ制御装置16から送信された制御電圧を受信すると、受信した制御電圧に従って駆動装置を制御して、アンテナ本体の方位角と仰角とを変更する。このようにして、アンテナ装置11は、アンテナ本体の主ビーム軸を、移動衛星に向ける。
また、アンテナ装置11は、和信号を生成すると、生成した和信号を、和信号増幅変換機12に出力し、差信号を生成すると、生成した差信号を、差信号増幅変換機13に出力する。
また、アンテナ装置11は、アンテナ本体に取り付けられた角度検出エンコーダ(方位角用エンコーダおよび仰角用エンコーダ)から出力される信号を受信し、アンテナ本体の主ビーム軸の方位角の実測値(具体的には、AZ実角度)およびアンテナ本体の主ビーム軸の仰角の実測値(具体的には、EL実角度)を求める。そして、アンテナ装置11は、AZ実角度およびEL実角度を、アンテナ制御装置16に出力する。
和信号増幅変換機12は、アンテナ装置11から出力された和信号を増幅し、増幅した和信号の周波数を低い周波数に変換する。ここで、和信号とは、複数のアンテナ本体で受信された信号のそれぞれを加え合わせた信号である。
差信号増幅変換機13は、アンテナ装置11から出力された差信号を増幅し、増幅した差信号の周波数を低い周波数に変換する。ここで、差信号とは、複数のアンテナ本体で受信された信号のそれぞれを差し引いた信号である。
信号受信機14は、周波数変換された和信号を受信して、例えば測定器等に出力する。
追尾受信機15は、周波数変換された和信号および周波数変換された差信号を受信して、移動衛星の方向を示す座標、移動衛星の方向を示す座標に対するアンテナ本体の主ビーム軸の方位角のずれ値Auto_Error_Xと、移動衛星の方向を示す座標に対するアンテナ本体の主ビーム軸の仰角のずれ値Auto_Error_Yと、を求める。また、追尾受信機15は、方位角のずれ値Auto_Error_Xおよび仰角のずれ値Auto_Error_Yを、アンテナ制御装置16に出力する。
アンテナ制御装置16は、アンテナ本体の主ビーム軸の方位角および仰角を制御するための制御電圧を生成して、制御電圧をアンテナ装置11に出力することで、アンテナ本体の主ビームの方位角および仰角を制御する。アンテナ制御装置16は、予め求められている移動衛星の位置を示す軌道予測値(移動衛星の位置を例えば1秒毎に、緯度および経度、または方位角および仰角で示した予測値)を用いてアンテナ本体の主ビームの方向を制御するプログラム追尾と、方位角のずれ値Auto_Error_Xおよび仰角のずれ値Auto_Error_Yを用いてアンテナ本体の主ビームの方向を制御する自動追尾と、を、ユーザの指示に応じて切り換える。
具体的には、アンテナ制御装置16は、図示しない入力装置を介して、アンテナ本体をプログラム追尾させるユーザ指示を受けた場合、アンテナ本体の制御に必要な時間刻みで内挿法を用いた計算を行い、移動衛星の軌道予測値から、AZプログラム指示値およびELプログラム指示値を求める。そして、アンテナ制御装置16は、AZプログラム指示値とAZ実角度との角度差およびELプログラム指示値とEL実角度との角度差を計算し、それらの角度差に対応する制御電圧を、アンテナ装置11に出力する。すると、アンテナ装置11は、この制御電圧に基づき、アンテナ本体の主ビーム軸を制御する。
ここで、AZプログラム指示値は、アンテナ本体の主ビーム軸を移動衛星に向けるために、アンテナ本体の主ビーム軸の方位角を制御するための指示値である。また、ELプログラム指示値は、アンテナ本体の主ビーム軸を移動衛星に向けるために、アンテナ本体の主ビーム軸の仰角を制御するための指示値である。
また、アンテナ制御装置16は、図示しない入力装置を介して、アンテナ装置11を自動追尾させるユーザ指示を受けた場合、AZプログラム指示値およびELプログラム指示値に加え、追尾受信機15から出力された方位角のずれ値Auto_Error_Xおよび仰角のずれ値Auto_Error_Yと、アンテナ装置11から出力されたAZ実測値およびEL実測値(アンテナ本体の主ビーム軸の方位角の実測値および仰角の実測値)と、を取得する。そして、アンテナ制御装置16は、取得した各値から、和信号と差信号との位相差(固定の位相差に加え、例えば温度等で変動する位相差を含む)を求める。その後、アンテナ制御装置16は、求めた位相差分、方位角のずれ値Auto_Error_Xおよび仰角のずれ値Auto_Error_Yを補正する。即ち、アンテナ制御装置16は、求めた位相差分の誤差を、和信号および差信号から生成されることで誤差を含んでいる、方位角のずれ値Auto_Error_Xおよび仰角のずれ値Auto_Error_Yから取り除く。そして、アンテナ制御装置16は、補正後の方位角のずれ値Auto_Error_Xおよび補正後の仰角のずれ値Auto_Error_Yをゼロする制御電圧を、アンテナ装置11に出力する。すると、アンテナ装置11は、この制御電圧に基づき、アンテナ本体の主ビーム軸を制御する。
上述した追尾受信機15は、図2に示すように、和信号_AGC(Automatic Gain Control)回路21と、差信号_AGC回路22と、90度移相器23と、I信号_検波器24と、Q信号_検波器25と、座標変換部26と、インターフェイス部27と、を備えている。
和信号_AGC回路21は、アンテナ装置11を自動追尾させるユーザ指示が行われることでアンテナ装置11から和信号が出力されると、和信号の振幅に応じて増幅率を変化させて、入力された和信号を増幅する。和信号_AGC回路21は、増幅後の和信号を、90度移相器23およびQ信号_検波器25に出力する。また、和信号_AGC回路21は、増幅率の増加に比例して増加する増幅電圧を、差信号_AGC回路22に出力する。
差信号_AGC回路22は、アンテナ装置11を自動追尾させるユーザ指示が行われることでアンテナ装置11から差信号が出力されると、和信号_AGC回路21から出力された増幅電圧の値に応じて増幅率を変化させて、入力された差信号を増幅する。即ち、差信号_AGC回路22は、和信号_AGC回路21と同程度の増幅率で、入力された差信号を増幅する。よって、差信号_AGC回路22から出力される増幅後の差信号は、和信号_AGC回路21から出力される増幅後の和信号と、同程度の増幅率の振幅になる。差信号_AGC回路22は、増幅後の差信号を、I信号_検波器24およびQ信号_検波器25に出力する。
I信号_検波器24は、90度移相器23から出力された和信号で、差信号_AGC回路22から出力された差信号を検波する。言い換えれば、I信号_検波器24は、90度移相器23から出力された和信号と、差信号_AGC回路22から出力された差信号と、の積を出力する。I信号_検波器24は、検波後の信号(以後、「I信号」と称する)を、座標変換部26に出力する。I信号_検波器24から出力されるI信号は、和信号が最大値を示す方位角および差信号が最小値を示す方位角を示している。
90度移相器23は、和信号_AGC回路21から出力された増幅後の和信号の位相を90度シフトさせる。90度移相器23は、位相を90度シフトさせた増幅後の和信号を、I信号_検波器24に出力する。
Q信号_検波器25は、和信号_AGCから出力された和信号(位相がシフトされていない和信号)で、差信号_AGC回路22から出力された差信号を検波する。言い換えれば、Q信号_検波器25は、和信号_AGC回路21から出力された和信号と、差信号_AGC回路22から出力された差信号と、の積を出力する。Q信号_検波器25は、検波後の信号(以後、「Q信号」と称する)を、座標変換部26に出力する。Q信号_検波器25から出力されるQ信号は、和信号が最大値を示す仰角および差信号が最小値を示す仰角を示している。
座標変換部26は、I信号_検波器24から出力されたI信号の振幅を、移動衛星の方向を示す座標に対するアンテナ本体の主ビーム軸の方位角のずれ値Auto_Error_Xに対応付けた、I信号対応表を記憶している。このI信号対応表は、アンテナ本体の主ビーム軸と移動衛星の方向を示す座標とのずれが大きくなって、受信したI信号の振幅が大きくなると、方位角のずれ値Auto_Error_Xが大きくなるよう、I信号の振幅と方位角のずれ値Auto_Error_Xとを対応付けている。
また、座標変換部26は、Q信号_検波器25から出力されたQ信号の振幅を、移動衛星の方向を示す座標に対するアンテナ本体の主ビーム軸の仰角のずれ値Auto_Error_Yに対応付けた、Q信号対応表を記憶している。このQ信号対応表は、アンテナ本体の主ビーム軸と移動衛星の方向を示す座標とのずれが大きくなって、受信したQ信号の振幅が大きくなると、仰角のずれ値Auto_Error_Yが大きくなるよう、Q信号の振幅と方位角のずれ値Auto_Error_Yとを対応付けている。
座標変換部26は、I信号_検波器24から出力されたI信号を受信すると、受信したI信号の振幅とI信号対応表とを対比して、方位角のずれ値Auto_Error_Xを特定する。その後、座標変換部26は、方位角のずれ値Auto_Error_Xを、アンテナ制御装置16に出力する。
また、座標変換部26は、Q信号_検波器25から出力されたQ信号を受信すると、受信したQ信号の振幅とQ信号対応表とを対比して、仰角のずれ値Auto_Error_Yを特定する。その後、座標変換部26は、仰角のずれ値Auto_Error_Yを、アンテナ制御装置16に出力する。
更に、座標変換部26は、方位角のずれ値Auto_Error_Xおよび仰角のずれ値Auto_Error_Yと移動衛星の方向を示す座標とを対応付けた、座標対応表を記憶している。よって、座標変換部26は、方位角のずれ値Auto_Error_Xおよび仰角のずれ値Auto_Error_Yを特定すると、特定した方位角のずれ値Auto_Error_Xおよび仰角のずれ値Auto_Error_Yと座標対応表とを対比して、移動衛星の方向を示す座標を特定する。その後、座標変換部26は、移動衛星の方向を示す座標を、アンテナ制御装置16に出力する。
インターフェイス部27は、例えば、座標変換部26に記憶させるI信号対応表およびQ信号対応表を、外部装置から受信し、受信したI信号対応表およびQ信号対応表を、座標変換部26に出力する。また、アンテナ制御装置16が正常に動作しているかを監視する監視信号を、アンテナ制御装置16から受信する。
アンテナ制御装置16は、図2に示すように、座標補正部31と、変換表用インターフェイス部32と、指示値生成部33と、位相演算部34と、を備えている。
座標補正部31は、座標変換部26から出力された、移動衛星の方向を示す座標、方位角のずれ値Auto_Error_Xおよび仰角のずれ値Auto_Error_Yを受信する。そして、座標補正部31は、移動衛星の方向を示す座標、方位角のずれ値Auto_Error_Xおよび仰角のずれ値Auto_Error_Yを、位相演算部34に転送する。
また、座標補正部31は、移動衛星の方向を示す座標、方位角のずれ値Auto_Error_Xおよび仰角のずれ値Auto_Error_Yの転送後に、位相演算部34から出力された、和信号と差信号との位相差Δγを受信する。すると、座標補正部31は、この位相差Δγ分、方位角のずれ値Auto_Error_Xを補正することで、移動衛星の方向を示す座標に対するアンテナ本体の主ビーム軸の最終的な方位角のずれ値AZ_Xを求める。この最終的な方位角のずれ値AZ_Xは、和信号が最大値を示す方位角と、差信号が最小値を示す方位角とが一致している。
また、座標補正部31は、この位相差Δγ分、仰角のずれ値Auto_Error_Yを補正することで、移動衛星の方向を示す座標に対するアンテナ本体の主ビーム軸の最終的な仰角のずれ値EL_Yを求める。この最終的な方位角のずれ値EL_Yは、和信号が最大値を示す仰角と、差信号が最小値を示す仰角とが一致している。
ここで、座標補正部31は、最終的な方位角のずれ値AZ_Xと、最終的な方位角のずれ値AZ_Xをゼロにするための方位角制御電圧の電圧値とを対応付けた、AZ変換表を記憶している。また、座標補正部31は、最終的な仰角のずれ値EL_Yと、最終的な仰角のずれ値EL_Yをゼロにするための仰角制御電圧の電圧値とを対応付けた、EL変換表を記憶している。
よって、座標補正部31は、最終的な方位角のずれ値AZ_Xを求めると、最終的な方位角のずれ値AZ_XとAZ変換表とを対比して、方位角制御電圧の電圧値を求める。そして、座標補正部31は、求めた電圧値を示す方位角制御電圧を、アンテナ装置11に出力する。アンテナ装置11は、出力された方位角制御電圧の電圧値に応じて、アンテナ本体の主ビーム軸の方位角を制御する。
また、座標補正部31は、最終的な仰角のずれ値EL_Yを求めると、最終的な仰角のずれ値EL_YとEL変換表とを対比して、仰角制御電圧の電圧値を求める。そして、座標補正部31は、求めた電圧値を示す仰角制御電圧を、アンテナ装置11に出力する。アンテナ装置11は、出力された仰角制御電圧の電圧値に応じて、アンテナ本体の主ビーム軸の仰角を制御する。
このようにして、アンテナ装置11は、アンテナ本体の主ビーム軸の方位角および仰角を制御することで、アンテナ本体の主ビーム軸を移動衛星に向ける。
変換表用インターフェイス部32は、例えば、座標補正部31に記憶させるAZ変換表およびEL変換表を、外部装置から受信し、受信したAZ変換表およびEL変換表を、座標補正部31に出力する。また、追尾受信機15が正常に動作しているかを監視する監視信号を、追尾受信機15から受信する。
指示値生成部33は、移動衛星の軌道予測値(移動衛星の位置を例えば1秒毎に、緯度および経度、または方位角および仰角で示した予測値)を、外部装置から受信し、受信した軌道予測値から、アンテナ本体の主ビーム軸の方位角を制御するための指示値であるAZプログラム指示値およびアンテナ本体の主ビーム軸の仰角を制御するための指示値であるELプログラム指示値を求める。
そして、指示値生成部33は、アンテナ装置11をプログラム追尾させるユーザ指示を受けた場合、アンテナ本体の制御に必要な時間刻みで内挿法を用いた計算を行い、移動衛星の軌道予測値から、AZプログラム指示値およびELプログラム指示値を求める。そして、指示値生成部33は、AZプログラム指示値およびELプログラム指示値を、座標補正部31に出力する。
ここで、座標補正部31は、AZプログラム指示値と、AZプログラム指示値を実現する方位角制御電圧の電圧値とを対応付けた、AZプログラム変換表を記憶している。また、座標補正部31は、ELプログラム指示値と、ELプログラム指示値を実現する仰角制御電圧の電圧値とを対応付けた、ELプログラム変換表を記憶している。
よって、座標補正部31は、アンテナ装置11をプログラム追尾させるユーザ指示が行われることでAZプログラム指示値を受信すると、AZプログラム指示値とAZ実角度との角度差を示すAZ角度差を計算し、AZ角度差とAZプログラム変換表とを対比して、方位角制御電圧の電圧値を求める。そして、座標補正部31は、求めた電圧値を示す方位角制御電圧を、アンテナ装置11に出力する。アンテナ装置11は、出力された方位角制御電圧の電圧値に応じて、アンテナ本体の主ビーム軸の方位角を制御する。
また、座標補正部31は、アンテナ装置11をプログラム追尾させるユーザ指示が行われることでELプログラム指示値を受信すると、ELプログラム指示値とEL実角度との角度差を示すEL角度差を計算し、EL角度差とELプログラム変換表とを対比して、仰角制御電圧の電圧値を求める。そして、座標補正部31は、求めた電圧値を示す仰角制御電圧を、アンテナ装置11に出力する。アンテナ装置11は、出力された仰角制御電圧の電圧値に応じて、アンテナ本体の主ビーム軸の仰角を制御する。
一方、指示値生成部33は、アンテナ装置11を自動追尾させるユーザ指示を受けた場合、アンテナ本体の制御に必要な時間刻みで内挿法を用いた計算を行い、移動衛星の軌道予測値から、AZプログラム指示値およびELプログラム指示値を求める。そして、指示値生成部33は、AZプログラム指示値およびELプログラム指示値を、位相演算部34に出力する。
位相演算部34は、アンテナ装置11を自動追尾させるユーザ指示を受けた場合、指示値生成部33から出力されたAZプログラム指示値およびELプログラム指示値と、座標補正部31から出力された移動衛星の方向を示す座標、移動衛星の方向を示す座標に対する方位角のずれ値Auto_Error_Xおよび移動衛星の方向を示す座標に対する仰角のずれ値Auto_Error_Yと、アンテナ装置11を自動追尾させるユーザ指示が行われることでアンテナ装置11から出力されたAZ実角度およびEL実角度と、から、和信号と差信号との位相差Δγを求める。そして、位相演算部34は、求めた位相差Δγを、座標補正部31に出力する。
位相演算部34が、アンテナ装置11を自動追尾させるユーザ指示を受けた場合に、和信号と差信号との位相差Δγを求める詳細な処理を、図3を参照して説明する。
まず、位相演算部34は、任意の時刻t1に、次の値を取得する。即ち、位相演算部34は、指示値生成部33から出力されたAZプログラム指示値およびELプログラム指示値と、アンテナ装置11から出力されたAZ実角度およびEL実角度と、座標変換部26から出力された移動衛星の方向を示す座標、移動衛星の方向を示す座標に対する方位角のずれ値Auto_Error_Xおよび移動衛星の方向を示す座標に対する仰角のずれ値Auto_Error_Yの値と、を取得する(記憶する)。
ここで、位相演算部34は、時刻t1に、「PAZ1」であるAZプログラム指示値および「PEL1」であるELプログラム指示値を、指示値生成部33から取得し、「AZ1」であるAZ実角度および「EL1」であるEL実角度を、アンテナ装置11から取得し、「TX1,TY1」である移動衛星の方向を示す座標、移動衛星の方向を示す座標に対して「XX1」である方位角のずれ値Auto_Error_Xおよび移動衛星の方向を示す座標に対して「YY1」である仰角のずれ値Auto_Error_Yを、座標変換部26から取得したとする。
このとき、位相演算部34は、図3(a)に示すように、AZプログラム指示値「PAZ1」およびELプログラム指示値「PEL1」を始点として、AZ実角度「AZ1」およびEL実角度「EL1」を終点とする第1ベクトルCを求める。
また、位相演算部34は、図3(a)に示すように、移動衛星の方向を示す座標「TX1,TY1」を始点として、方位角のずれ値Auto_Error_X「XX1」および仰角のずれ値Auto_Error_Y「YY1」を終点とする第2ベクトルAを求める。
次に、位相演算部34は、時刻t1から例えば0.1秒経過後の時刻t2に、次の値を取得する。即ち、位相演算部34は、指示値生成部33から出力されたAZプログラム指示値およびELプログラム指示値と、アンテナ装置11から出力されたAZ実角度およびEL実角度と、座標変換部26から出力された移動衛星の方向を示す座標、移動衛星の方向を示す座標に対する方位角のずれ値Auto_Error_Xおよび移動衛星の方向を示す座標に対する仰角のずれ値Auto_Error_Yの値と、を取得する(記憶する)。
ここで、位相演算部34は、時刻t2に、「PAZ2」であるAZプログラム指示値および「PEL2」であるELプログラム指示値を、指示値生成部33から取得し、「AZ2」であるAZ実角度および「EL2」であるEL実角度を、アンテナ装置11から取得し、「TX2,TY2」である移動衛星の方向を示す座標、移動衛星の方向を示す座標に対して「XX2」である方位角のずれ値Auto_Error_Xおよび移動衛星の方向を示す座標に対して「YY2」である仰角のずれ値Auto_Error_Yを、座標変換部26から取得したとする。
このとき、位相演算部34は、図3(b)に示すように、AZプログラム指示値「PAZ2」およびELプログラム指示値「PEL2」を始点として、AZ実角度「AZ2」およびEL実角度「EL2」を終点とする第1ベクトルDを求める。
また、位相演算部34は、図3(b)に示すように、移動衛星の方向を示す座標「TX2,TY2」を始点として、方位角のずれ値Auto_Error_X「XX2」および仰角のずれ値Auto_Error_Y「YY2」を終点とする第2ベクトルBを求める。
上述した時刻t1および時刻t2のときの各値を重畳してプロットすると、図3(c)に示す通りになる。
図3(c)に示す通り、移動衛星の方向を示す座標は、時刻t1から時刻t2に、ベクトルEで示される分、移動している。具体的には、移動衛星の方向を示す座標は、座標「TX1,TY1」を始点とし、座標「TX2,TY2」を終点するベクトルEで示される分、移動している。また、AZプログラム指示値およびELプログラム指示値も、時刻t1から時刻t2に、ベクトルEで示される分、移動している。具体的には、AZプログラム指示値およびELプログラム指示値は、AZプログラム指示値PAZ1およびELプログラム指示値PEL1を始点とし、AZプログラム指示値PAZ2およびELプログラム指示値PEL2を終点とするベクトルEで示される分、移動している。
このとき、第1ベクトルDの始点を第1ベクトルCの始点に一致させ、即ち、第1ベクトルDをベクトルD’とした場合、第1ベクトルCとベクトルD’との両終点の変化を示すベクトルPは、第1ベクトルC−ベクトルD’(=第1ベクトルD)で表される。
また、第2ベクトルBの始点を第2ベクトルAの始点に一致させ、即ち、第2ベクトルBをベクトルB’とした場合、第2ベクトルAとベクトルB’との両終点の変化を示すベクトルPは、第2ベクトルA−ベクトルB’(=第2ベクトルB)で表される。
ここで、第2ベクトルAおよび第2ベクトルBは、和信号と差信号との位相差Δγを含んだ、方位角のずれ値Auto_Error_Xおよび仰角のずれ値Auto_Error_Yから求められている。よって、第2ベクトルA−ベクトルB’(=第2ベクトルB)で表されるベクトルPは、和信号と差信号との位相差Δγの影響を含んでいる。従って、第2ベクトルA−ベクトルB’(=第2ベクトルB)で表されるベクトルPは、和信号と差信号との位相差Δγに起因して移動衛星の方向を示す座標を中心に角度Δγ分、回転している。
なお、和信号と差信号との位相差Δγは、AZプログラム指示値、ELプログラム指示値、AZ実測値およびEL実測値に影響を与えない。なぜならば、これらの値は、和信号および差信号から求められる値ではないからである。よって、第1ベクトルC−ベクトルD’(=第1ベクトルD)で表されるベクトルPは、回転していない。
従って、第1ベクトルC−ベクトルD’(=第1ベクトルD)で表されるベクトルPを、移動衛星の方向を示す座標を中心に角度Δγ分回転させたベクトルは、第2ベクトルA−ベクトルB’(=第2ベクトルB)で表されるベクトルに、同一座標上において等しいと考えることができる。よって、位相演算部34は、第1ベクトルC−ベクトルD’(=第1ベクトルD)で表されるベクトルPを、移動衛星の方向を示す座標を中心に角度Δγ分回転させたベクトルと、第2ベクトルA−ベクトルB’(=第2ベクトルB)で表されるベクトルとが、同一座標上で等しくなるとして、回転の角度Δγ(位相差Δγ)を求める。
具体的には、位相演算部34は、各値が、図3(c)に示す関係である場合、次のようにして、回転の角度Δγを求める。
なお、時刻t1と時刻t2との時間差は0.1秒差であるので、地球の自転の影響はゼロとみなすことができる。さらに、時刻t1と時刻t2との時間差においては、プログラム指示値で示される移動衛星の移動量と、移動衛星の実際の移動量とは、同じとみなすことができる。よって、この時間差は、回転の角度Δγ(位相差Δγ)の算出に影響を与えない。
このとき、第1ベクトルC−ベクトルD’(=第1ベクトルD)で表されるベクトルPを、位相演算部34は、次のように表す。即ち、演算位相部34は、第1ベクトルC−ベクトルD’(=第1ベクトルD)で表されるベクトルPを、([AZ1−PAZ1]−[AZ2−PAZ2],[EL1−PEL1]−[EL2−PEL2])で表す。ここで、[AZ1−PAZ1]−[AZ2−PAZ2]をx、[EL1−PEL1]−[EL2−PEL2]をyとすると、位相演算部34は、第1ベクトルC−ベクトルD’(=第1ベクトルD)で表されるベクトルPを、(x,y)で表す。
また、第2ベクトルA−ベクトルB’(=第2ベクトルB)で表されるベクトルPを、位相演算部34は、次のように表す。即ち、演算位相部34は、第2ベクトルA−ベクトルB’(=第2ベクトルB)で表されるベクトルPを、(XX1−XX2,YY1−YY2)で表す。なお、方位角のずれ値Auto_Error_Xおよび仰角Auto_Error_Yは、移動衛星の方向を示す座標を基準にしたずれの量を示しているため、第2ベクトルA−第2ベクトルBで表されるベクトルPを求める場合、第1ベクトルC−ベクトルD’(=第1ベクトルD)で表されるベクトルPと異なり、始点の値(移動衛星の方向を示す座標の値)を減算する必要がない。ここで、XX1−XX2をrx、YY1−YY2をryとすると、位相演算部34は、第2ベクトルA−第2ベクトルBで表されるベクトルPを、(rx,ry)で表す。
ここで、前述の通り、位相演算部34は、第1ベクトルC−ベクトルD’(=第1ベクトルD)で表されるベクトルPを、移動衛星の方向を示す座標を中心に角度Δγ分回転させたベクトルと、第2ベクトルA−ベクトルB’(=第2ベクトルB)で表されるベクトルPとが、同一座標上で等しくなるとしている。よって、位相演算部34は、図4(a)の式1に示すように、第1ベクトルC−第1ベクトルDで表されるベクトルP(x,y)を角度Δγ分(位相差Δγ分)、回転させたベクトルが、第2ベクトルA−第2ベクトルBで表されるベクトルP(rx,ry)と、同一座標上で等しくなるという関係を導く。
即ち、位相演算部34は、第2ベクトルA−第2ベクトルBで表されるベクトルP(rx,ry)を、(x×cosΔγ+y×sinΔγ,−x×sinΔγ+y×cos×Δγ)で表す関係を導く。この関係から、位相演算部34は、図4(b)の式2に示す式を導き、導いた式2に、即ち、tan−1(rx×y−ry×x)÷(rx×x+ry×y)の式に、各値x,y,rx,ryを代入し、角度Δγ(位相差Δγ)を求める。
なお、位相演算部34は、アンテナ装置11を自動追尾させるユーザ指示を受けた場合、自動追尾を解除するユーザ指示を受けるまで、上述した処理を繰り返し実行して(時刻t1と時刻t2との次は、例えば、時刻t2と時刻t3との各値を取得して処理を繰り返し)、変動位相差Δγを繰り返し求める。
位相演算部34は、求めた位相差Δγ(角度Δγ)を、座標補正部31に出力する。すると、座標補正部31は、取得した位相差Δγを、前回求められた位相差Δγに加算して(取得した位相差Δγがマイナスの場合は減算して)、最終位相差γを求める。
そして、座標補正部31は、図4(c)の式3に示すように、最終位相差γ分、方位角のずれ値Auto_Error_Xを示すベクトルおよび仰角のずれ値Auto_Error_Yを示すベクトルを、移動衛星の方向を示す座標を中心に逆回転させることで、最終的な方位角のずれ値AZ_Xを示すベクトルおよび最終的な仰角のずれ値EL_Yを示すベクトルを求める。
即ち、座標補正部31は、方位角のずれ値Auto_Error_Xを示すベクトル×cos(最終位相差γ)−仰角のずれ値Auto_Error_Yを示すベクトル×sin(最終位相差γ)を求めることで、最終的な方位角のずれ値AZ_Xを示すベクトルを求める。また、座標補正部31は、方位角のずれ値Auto_Error_Xを示すベクトル×sin(最終位相差γ)+仰角のずれ値Auto_Error_Yを示すベクトル×cos(最終位相差γ)を求めることで、最終的な仰角のずれ値EL_Yを示すベクトルを求める。
そして、座標補正部31は、最終的な方位角のずれ値AZ_Xを示すベクトルを求めると、ずれ値AZ_Xを示すベクトルの長さとAZ変換表とを対比して、方位角制御電圧の電圧値を求める。そして、座標補正部31は、求めた電圧値を示す方位角制御電圧を、アンテナ装置11に出力する。アンテナ装置11は、出力された方位角制御電圧の電圧値に応じて、アンテナ本体の主ビーム軸の方位角を制御する。
また、座標補正部31は、最終的な仰角のずれ値EL_Yを示すベクトルを求めると、ずれ値EL_Yを示すベクトルの長さとEL変換表とを対比して、仰角制御電圧の電圧値を求める。そして、座標補正部31は、求めた電圧値を示す仰角制御電圧を、アンテナ装置11に出力する。アンテナ装置11は、出力された仰角制御電圧の電圧値に応じて、アンテナ本体の主ビーム軸の仰角を制御する。
なお、座標補正部31は、アンテナ装置11を自動追尾させるユーザ指示を受けた場合、自動追尾を解除するユーザ指示を受けるまで、位相演算部34から出力される新たな位相差Δγを取得する度に、上述した処理を繰り返し実行して、最終的な方位角のずれ値AZ_Xを示すベクトルおよび最終的な仰角のずれ値EL_Yを示すベクトルを求める。
上述した通り、本実施の形態1のアンテナシステム10は、ベクトルA,BとベクトルC,Dとの関係から、和信号と差信号との位相差Δγを求める。そして、アンテナシステム10は、位相差Δγから求まる最終位相差γ分、方位角のずれ値Auto_Error_Xを示すベクトルおよび仰角のずれ値Auto_Error_Yを示すベクトルを、移動衛星の方向を示す座標を中心に逆回転させることで、最終的な方位角のずれ値AZ_Xおよび最終的な仰角のずれ値EL_Yを求める。よって、本実施の形態のアンテナシステム10によれば、温度変動や湿度変動或いは信号を伝達するケーブルの捻れ等で、和信号と差信号との位相に、固定の位相差に加え、変動する位相差が発生していても、これらの影響を低減させることができる。よって、和信号と差信号との位相に、固定の位相差に加え、変動する位相差が発生していても、アンテナ本体の主ビーム軸を、移動衛星に向けることができる。従って、本実施の形態のアンテナシステム10によれば、アンテナ本体の主ビーム軸を移動衛星に向ける追尾の発散を防止することが可能である。
(実施の形態2)
次に、本発明の実施の形態2に係るアンテナシステム100を、図5〜図11を参照して説明する。実施の形態2に係るアンテナシステム100は、実施の形態1に係るアンテナシステム10で使用した位相演算部34を、位相演算部101に変更し、実施の形態1に係るアンテナシステム10で使用した座標補正部31を、座標補正部102に変更したものである。よって、実施の形態2に係るアンテナシステム100については、実施の形態1のアンテナシステム10と同一の構成・同一の処理については同一の番号を付している。
実施の形態2に係るアンテナシステム100は、例えば、図5(a),(b)で示すように、方位角のずれ値Auto_Error_Xおよび仰角のずれ値Auto_Error_Yに、和信号と差信号との位相差Δγの影響が含まれている場合、アンテナシステム100は、実施の形態1に係るアンテナシステム10と同様に、位相差Δγの影響を、方位角のずれ値Auto_Error_Xおよび仰角のずれ値Auto_Error_Yから取り除く。
更に、実施の形態2に係るアンテナシステム100は、例えば、図5(a),(b)で示すように、I信号_検波器24から出力されるI信号の振幅とQ信号_検波器25から出力されるQ信号の振幅とが一致していない等で、Auto_Error_X軸(方位角のずれ値Auto_Error_Xがプロットされる軸)と、Auto_Error_Y軸(仰角のずれ値Auto_Error_Yがプロットされる軸)とが、直交していない場合、直交の不一致の影響を、方位角のずれ値Auto_Error_Xおよび仰角のずれ値Auto_Error_Yから取り除く。
このように、アンテナシステム100は、和信号と差信号との位相差での影響に加え、Auto_Error_X軸とAuto_Error_Y軸との直交のずれでの影響を、方位角のずれ値Auto_Error_Xおよび仰角のずれ値Auto_Error_Yから取り除いて、最終的な方位角のずれ値AZ_Xおよび最終的な仰角のずれ値EL_Yを求める。
なお、Auto_Error_X軸は、詳細には、衛星の方向を示す座標を原点とし、方位角のずれ値Auto_Error_Xを、最終位相差γ分、逆回転させた、方位角のずれ値が表される軸である。また、Auto_Error_Y軸は、詳細には、移動衛星の方向を示す座標を原点とし、仰角のずれ値Auto_Error_Yを、最終位相差γ分、逆回転させた、仰角のずれ値が表される軸である。
位相演算部101は、図6に示すように、アンテナ装置11を自動追尾させるユーザ指示を受けた場合、実施の形態1に係る位相演算部34と同様に、指示値生成部33から出力されたAZプログラム指示値およびELプログラム指示値と、座標補正部31から出力された移動衛星の方向を示す座標、方位角のずれ値Auto_Error_Xおよび仰角のずれ値Auto_Error_Yと、アンテナ装置11から出力されたAZ実角度およびEL実角度と、から、和信号と差信号との位相差Δγを求める。そして、位相演算部101は、求めた位相差Δγを、座標補正部102に出力する。
更に、位相演算部101は、アンテナ装置11を自動追尾させるユーザ指示を受けた場合、指示値生成部33から出力されたAZプログラム指示値およびELプログラム指示値と、座標補正部102から出力された移動衛星の方向を示す座標、方位角のずれ値Auto_Error_Xおよび仰角のずれ値Auto_Error_Yと、アンテナ装置11から出力されたAZ実角度およびEL実角度と、から、Auto_Error_X軸およびAuto_Error_Y軸の直交からのずれ量(直交に対するずれ角度)を示す直交度Δωeを求める。そして、位相演算部101は、求めた直交度Δωeを、座標補正部102に出力する。
座標補正部102は、直交度Δωeおよび位相差Δγを受信すると、直交度Δωeでの影響を、方位角のずれ値Auto_Error_Xおよび仰角のずれ値Auto_Error_Yの値から取り除いて、更には、位相差Δγでの影響を、方位角のずれ値Auto_Error_Xおよび仰角のずれ値Auto_Error_Yの値から取り除いて、最終的な方位角のずれ値AZ_Xおよび最終的な仰角のずれ値EL_Yを求める。
位相演算部101が直交度Δωeを求めるための準備処理を、図7〜図9を参照して説明する。
まず、位相演算部101は、例えば、図5(a)に示す、時刻t1における移動衛星の方向を示す座標と、時刻t1におけるプログラム指示値(AZプログラム指示値,ELプログラム指示値)とを、図7に示すように、一致させる。このとき、AZプログラム指示値およびELプログラム指示値を原点として、原点とAZ実角度とを結ぶAZ軸(AZプログラム指示値に対するAZ実測値の差が表される軸)に対し、XX1点と原点とを結ぶAuto_Error_X軸が、角度Δα1分傾いているとする。また、原点とEL実角度とを結ぶEL軸(ELプログラム指示値に対するEL実測値の差が表される軸)に対し、YY1点と原点とを結ぶAuto_Error_Y軸が、角度Δα2分傾いているとする。
この傾きは、位相差Δγでの回転分と直交度Δωeでの回転分とに分解することができる。この傾きを分解した場合、位相差Δγでの回転分は、図8(a)で示す通りになり、直交度Δωeでの回転分は、図8(b)で示す通りになる。
即ち、図8(b)に示す通り、AZプログラム指示値およびELプログラム指示値を原点とし、AZ軸およびEL軸で示される直交座標系と、移動衛星の方向を示す座標を同一の原点とし、Auto_Error_X軸およびAuto_Error_Y軸で示される座標系と、を重ねたとき、Auto_Error_X軸とAuto_Error_Y軸とが直交しておらず、Auto_Error_X軸がAZ軸に対して原点を中心に規定角度Δωe(直交度Δωe)分、正回転し、Auto_Error_Y軸がEL軸に対して原点を中心に規定角度Δωe(直交度Δωe)分、逆回転している。
このときに、位相演算部101は、規定角度Δωeを求めるために、ベクトル分解を行う。このベクトル投影について、図9を参照して説明する。図9は、図8(b)に対応している。
即ち、図8(b)と同様、Auto_Error_X軸とAuto_Error_Y軸とは、直交していない。また、Auto_Error_X軸がAZ軸に対して原点を中心に規定角度Δωe(直交度Δωe)分、正回転し、Auto_Error_Y軸がEL軸に対して原点を中心に規定角度Δωe(直交度Δωe)分、逆回転している。
このとき、角度β,δ,εは、それぞれ、図9に示す式で表される。即ち、角度β=90+2×角度Δωeであり、角度δ=(360−2×角度β)/2=180−角度β=90−2×角度Δωeであり、角度ε=β−角度Δωe=90+角度Δωeである。
また、原点O(AZプログラム指示値およびELプログラム指示値)を始点として、AZ軸上にプロットされたAZ差の点(AZプログラム指示値に対するAZ実測値の差の点、以後、「AZ差点」と称す)を終点とするAZベクトルの長さを1として、原点O(移動衛星の方向を示す座標)を始点として、Auto_Error_X軸にプロットされたAZ1’点を終点とするAZ1’ベクトルの長さをX1とすると、正弦定理から、次の式が成り立つ。即ち、図10(a)に示すように、1/sin(角度δ)=X1/sin(角度ε)。これは、1/sin(90−2×角度Δωe)=X1/sin(90+角度Δωe)に変形できる。更に、これは、1/cos(2×角度Δωe)=X1/cos(角度Δωe)に変形できる。よって、AZベクトルを、Auto_Error_X軸に分解した場合、AZ1’ベクトルの長さは、X1=cos(角度Δωe)/cos(2×角度Δωe)で表される。
また、原点Oを始点として、EL軸上にプロットされたEL差の点(ELプログラム指示値に対するEL実測値の差の点、以後、「EL差点」と称す)を終点とするELベクトルの長さを1として、原点Oを始点として、Auto_Error_X軸にプロットされたAZ2’点を終点とするAZ2’ベクトルの長さをX2とすると、正弦定理から、次の式が成り立つ。即ち、図10(b)に示すように、1/sin(角度δ)=−X2/sin(角度Δωe)。これは、1/sin(90−2×角度Δωe)=−X2/sin(角度Δωe)に変形できる。更に、これは、1/cos(2×角度Δωe)=−X2/sin(角度Δωe)に変形できる。よって、ELベクトルを、Auto_Error_X軸に分解した場合、AZ2’ベクトルの長さは、X2=−sin(角度Δωe)/cos(2×角度Δωe)で表される。
また、ELベクトルの長さを1として、原点Oを始点とし、Auto_Error_Y軸にプロットされたEL1’点を終点とするEL1’ベクトルの長さをY1とすると、正弦定理から、次の式が成り立つ。即ち、図10(c)に示すように、1/sin(角度δ)=Y1/sin(角度ε)。これは、1/sin(90−2×角度Δωe)=Y1/sin(90+角度Δωe)に変形できる。更に、これは、1/cos(2×角度Δωe)=Y1/cos(角度Δωe)に変形できる。よって、ELベクトルを、Auto_Error_Y軸に分解した場合、EL1’ベクトルの長さは、Y1=cos(角度Δωe)/cos(2×角度Δωe)で表される。
そして、AZベクトルの長さを1として、原点Oを始点とし、Auto_Error_Y軸にプロットされたEL2’点を終点とするEL2’ベクトルの長さをY2とすると、正弦定理から、次の式が成り立つ。即ち、図10(d)に示すように、1/sin(角度δ)=−Y2/sin(角度Δωe)。これは、1/sin(90−2×角度Δωe)=−Y2/sin(角度Δωe)に変形できる。更に、これは、1/cos(2×角度Δωe)=−Y2/sin(角度Δωe)に変形できる。よって、AZベクトルを、Auto_Error_Y軸に分解した場合、EL2’ベクトルの長さは、Y2=−sin(角度Δωe)/cos(2×角度Δωe)で表される。
上述の4つの関係から、Auto_Error_X軸上に、AZベクトルおよびELベクトルを分解した場合、分解後のAZ’ベクトルは、X1+X2と表され、図10(e)の式4に示すように、AZ’ベクトル={1/cos(2×角度Δωe)}×{cos(角度Δωe)×AZベクトル−sin(角度Δωe)×ELベクトル)}になる。ここで、Auto_Error_X軸は、方位角のずれ値Auto_Error_Xがプロットされる軸であるので、AZ’ベクトルは、方位角のずれ値Auto_Error_Xを示す。よって、Auto_Error_X軸上に、AZベクトルおよびELベクトルを分解した場合、分解後のAZ’ベクトル(Auto_Error_X軸に平行なベクトル)は、角度Δωe(直交度Δωe)回転したAuto_Error_Xを示すベクトルに等しいと考えることができる。
また、Auto_Error_Y軸上に、AZベクトルおよびELベクトルを分解した場合、分解後のEZ’ベクトルは、Y1+Y2と表され、図10(e)の式4に示すように、EL’ベクトル={1/cos(2×角度Δωe)}×{−sin(角度Δωe)×AZベクトル+cos(角度Δωe)×ELベクトル)}になる。ここで、Auto_Error_Y軸は、仰角のずれ値Auto_Error_Yがプロットされる軸であるので、EL’ベクトルは、仰角のずれ値Auto_Error_Yを示す。よって、Auto_Error_Y軸上に、AZベクトルおよびELベクトルを分解した場合、分解後のEL’ベクトル(Auto_Error_Y軸に平行なベクトル)は、角度Δωe(直交度Δωe)回転したAuto_Error_Yを示すベクトルに等しいと考えることができる。
このようにして求めた図10(e)に示す式4と図4(a)に示す式1とを用いて、位相演算部101が、直交度Δωeおよび和信号と差信号との位相差Δγを求める処理を、図11を参照して説明する。
位相演算部101は、ベクトル分解および回転させたAZベクトルおよびELベクトルが、それぞれ、直交度Δωeおよび位相差Δγの影響を含む、方位角のずれ値Auto_Error_Xを示すベクトルおよび仰角のずれ値Auto_Error_Yを示すベクトルに等しいとする。これを、式で表すと、図11の式5の通りになる。
この図11に示す式5は、式6に示すように変形される。ここで、図7に示すように、回転Δγ+直交度Δωe=角度Δα1であり、回転Δγ−直交度Δωe=角度Δα2であるので、式6を、角度Δα1,Δα2を用いて表すと、式6は、式7に示すように変形される。
この式7に基づいて、位相演算部101は、直交度Δωeおよび位相差Δγを求める。
具体的には、まず、位相演算部101は、任意の時刻t1に、次の値を取得する。即ち、位相演算部101は、指示値生成部33から出力されたAZプログラム指示値およびELプログラム指示値と、アンテナ装置11から出力されたAZ実角度およびEL実角度と、座標変換部26から出力された移動衛星の方向を示す座標、移動衛星の方向を示す座標に対する方位角のずれ値Auto_Error_Xおよび移動衛星の方向を示す座標に対する仰角のずれ値Auto_Error_Yの値と、を取得する(記憶する)。
ここで、位相演算部101は、図3(a)に示す場合と同様、時刻t1に、「PAZ1」であるAZプログラム指示値および「PEL1」であるELプログラム指示値を、指示値生成部33から取得し、「AZ1」であるAZ実角度および「EL1」であるEL実角度を、アンテナ装置11から取得し、「TX1,TY1」である移動衛星の方向を示す座標、移動衛星の方向を示す座標に対して「XX1」である方位角のずれ値Auto_Error_Xおよび移動衛星の方向を示す座標に対して「YY1」である仰角のずれ値Auto_Error_Yを、座標変換部26から取得したとする。
次に、位相演算部101は、時刻t1から例えば0.1秒経過後の時刻t2に、次の値を取得する。即ち、位相演算部101は、指示値生成部33から出力されたAZプログラム指示値およびELプログラム指示値と、アンテナ装置11から出力されたAZ実角度およびEL実角度と、座標変換部26から出力された移動衛星の方向を示す座標、移動衛星の方向を示す座標に対する方位角のずれ値Auto_Error_Xおよび移動衛星の方向を示す座標に対する仰角のずれ値Auto_Error_Yと、を取得する(記憶する)。
ここで、位相演算部101は、図3(b)に示す場合と同様、時刻t2に、「PAZ2」であるAZプログラム指示値および「PEL2」であるELプログラム指示値を、指示値生成部33から取得し、「AZ2」であるAZ実角度および「EL2」であるEL実角度を、アンテナ装置11から取得し、「TX2,TY2」である移動衛星の方向を示す座標、移動衛星の方向を示す座標に対して「XX2」である方位角のずれ値Auto_Error_Xおよび移動衛星の方向を示す座標に対して「YY2」である仰角のずれ値Auto_Error_Yを、座標変換部26から取得したとする。
そして、位相演算部101は、第1ベクトルC−ベクトルD’(=第1ベクトルD、図3(c)参照)で表されるベクトルPを、直交度Δωe分、回転させ(ベクトル分解に相当)、更に、移動衛星の方向を示す座標を中心に角度Δγ分、逆回転させたベクトルと、第2ベクトルA−ベクトルB’(=第2ベクトルB、図3(c)参照)で表されるベクトルPとが、同一座標上で等しくなるとして、位相演算部101は、直交度Δωeおよび位相差Δγを求める。
言い換えれば、位相演算部101は、第1ベクトルC−ベクトルD’(=第1ベクトルD)で表されるベクトルPに、Auto_Error_X軸の傾き角度Δα1およびAuto_Error_Y軸の傾き角度Δα2を反映させたベクトルと、第2ベクトルA−ベクトルB’(=第2ベクトルB)で表されるベクトルPとが、同一座標上で等しくなるとして、直交度Δωeおよび位相差Δγを求める。
ここで、図3(c)に示す関係から、図11の式7に示すAZベクトルの変化[AZ1−PAZ1]−[AZ2−PAZ2]をx、図11の式7に示すELベクトルの変化[EL1−PEL1]−[EL2−PEL2]をyとすると、AZベクトルおよびELベクトルの2つのベクトルの変化を示す、即ち、第1ベクトルCとベクトルD’との両終点の変化を示す、第1ベクトルC−ベクトルD’(=第1ベクトルD)で表されるベクトルPは、(x,y)で示される。
また、図3(c)に示す関係から、図11の式7に示す方位角のずれ値Auto_Error_Xを示すベクトルの変化XX1−XX2をrx、仰角のずれ値Auto_Error_Yを示すベクトルの変化YY1−YY2をryとすると、方位角のずれ値Auto_Error_Xを示すベクトルおよび仰角のずれ値Auto_Error_Yを示すベクトルの2つのベクトルの変化を示す、即ち、第2ベクトルAとベクトルB’との両終点の変化を示す、第2ベクトルA−ベクトルB’(=第2ベクトルB)で表されるベクトルPは、(rx,ry)で示される関係になる。よって、図11に示す式7は、図11に示す式8に変形される。
即ち、第2ベクトルA−第2ベクトルBで表されるベクトルP(rx,ry)は、({1/〈cos(角度Δα1−角度Δα2)〉}×{x×cos(角度Δα1)+y×sin(角度Δα2)},{1/〈cos(角度Δα1−角度Δα2)〉}×{−x×sin(角度Δα1)+y×cos(角度Δα2)})と表される。
この式8から、位相演算部101は、図11に示すように、sin(角度Δα1+角度θ)=y/(√(rx2+ry2))の関係を求め、cos(角度Δα2+角度θ)=x/(√(rx2+ry2))の関係を求め、更に、tanθ=ry/rxの関係を求める。これらの式に、位相演算部101は、各値rx,ry,x,yを代入し、角度Δα1および角度Δα2を求める。
ここで、前述の通り、角度Δα1は、位相差Δγ+直交度Δωeで表され、角度Δα2は、位相差Δγ−直交度Δωeで表される(図7参照)。よって、位相差Δγは、(角度Δα1+角度Δα2)/2で示され、直交度Δωeは、(角度Δα1−角度Δα2)/2で示される。従って、位相演算部101は、既に求めている角度Δα1および角度Δα2を、(角度Δα1−角度Δα2)/2に代入して直交度Δωeを求め、(角度Δα1+角度Δα2)/2に代入して位相差Δγを求める。
なお、位相演算部101は、アンテナ装置11を自動追尾させるユーザ指示を受けた場合、自動追尾を解除するユーザ指示を受けるまで、上述した処理を繰り返し実行して(時刻t1と時刻t2との次は、例えば、時刻t2と時刻t3との各値を取得して処理を繰り返し)、直交度Δωeおよび位相差Δγを繰り返し求める。
位相演算部101は、求めた直交度Δωeおよび位相差Δγを、座標補正部102に出力する。すると、座標補正部102は、取得した直交度Δωeを、前回求められた直交度Δωeに加算して(取得した直交度Δωeがマイナスの場合は減算して)、最終直交度ωを求める。また、座標補正部102は、取得した位相差Δγを、前回求められた位相差Δγに加算して(取得した位相差Δγがマイナスの場合は減算して)、最終位相差γを求める。
そして、座標補正部102は、図11の式6で示される2行×2列の行列部分を逆回転させて、AZ_Xの値およびEL_Yの値を求める。つまり、座標補正部102は、図11の式9に示すように、方位角のずれ値Auto_Error_Xを示すベクトルおよび仰角のずれ値Auto_Error_Yを示すベクトルを、最終直交度ωe分、回転させ(ベクトル分解に相当)、更に、回転後の方位角のずれ値Auto_Error_Xを示すベクトルおよび仰角のずれ値Auto_Error_Yを示すベクトルを、移動衛星の方向を示す座標を中心に角度Δγ分、逆回転することで、最終的な方位角のずれ値AZ_Xを示すベクトルおよび最終的な仰角のずれ値EL_Yを示すベクトルを求める。
具体的には、座標補正部102は、方位角のずれ値Auto_Error_Xを示すベクトル×cos(最終直交度ωe+最終位相差γ)−仰角のずれ値Auto_Error_Yを示すベクトル×sin(最終直交度ωe−最終位相差γ)を求めることで、最終的な方位角のずれ値AZ_Xを示すベクトルを求める。また、座標補正部102は、方位角のずれ値Auto_Error_Xを示すベクトル×sin(最終直交度ωe+最終位相差γ)+仰角のずれ値Auto_Error_Yを示すベクトル×cos(最終直交度ωe−最終位相差γ)から、最終的な仰角のずれ値EL_Yを示すベクトルを求める。
そして、座標補正部102は、最終的な方位角のずれ値AZ_Xを示すベクトルを求めると、ずれ値AZ_Xを示すベクトルの長さとAZ変換表とを対比して、方位角制御電圧の電圧値を求める。そして、座標補正部102は、求めた電圧値を示す方位角制御電圧を、アンテナ装置11に出力する。アンテナ装置11は、出力された方位角制御電圧の電圧値に応じて、アンテナ本体の主ビーム軸の方位角を制御する。
また、座標補正部102は、最終的な仰角のずれ値EL_Yを示すベクトルを求めると、ずれ値EL_Yを示すベクトルの長さとEL変換表とを対比して、仰角制御電圧の電圧値を求める。そして、座標補正部102は、求めた電圧値を示す仰角制御電圧を、アンテナ装置11に出力する。アンテナ装置11は、出力された仰角制御電圧の電圧値に応じて、アンテナ本体の主ビーム軸の仰角を制御する。
なお、座標補正部102は、アンテナ装置11を自動追尾させるユーザ指示を受けた場合、自動追尾を解除するユーザ指示を受けるまで、位相演算部101から出力される新たな直交度Δωeおよび位相差Δγを取得する度に、上述した処理を繰り返し実行して、最終的な方位角のずれ値AZ_Xを示すベクトルおよび最終的な仰角のずれ値EL_Yを示すベクトルを求める。
上述した通り、本実施の形態2のアンテナシステム100は、Auto_Error_X軸とAuto_Error_Y軸とが直交していない場合、直交度Δωeを求め、直交度Δωeから求まる最終直交度ωe分、方位角のずれ値Auto_Error_Xを示すベクトルおよび仰角のずれ値Auto_Error_Yを示すベクトルを、回転させる。また、アンテナシステム100は、和信号と差信号との位相差Δγを求め、位相差Δγから求まる最終位相差γ分、回転後の方位角のずれ値Auto_Error_Xを示すベクトルおよび仰角のずれ値Auto_Error_Yを示すベクトルを、移動衛星の方向を示す座標を中心に逆回転させることで、最終的な方位角のずれ値AZ_Xおよび最終的な仰角のずれ値EL_Yを求める。よって、本実施の形態のアンテナシステム100によれば、例えば、I信号_検波器24から出力されるI信号の振幅とQ信号_検波器25から出力されるQ信号の振幅とが一致していない等で、Auto_Error_X軸およびAuto_Error_Y軸に、直交の不一致が発生しており、且つ、温度変動や湿度変動或いは信号を伝達するケーブルの捻れ等で、和信号と差信号との位相に、固定の位相差に加え、変動する位相差が発生していても、これらの影響を低減させることができる。これにより、上述の場合でも、アンテナ本体の主ビーム軸を、移動衛星に向けることができる。従って、本実施の形態のアンテナシステム100によれば、アンテナ本体の主ビーム軸を移動衛星に向ける追尾の発散を防止することが可能である。
以上、本発明の実施の形態を説明したが、この発明は上記の実施の形態に限定されず、種々の変形および応用が可能である。
上述した各実施の形態の位相演算部34,101で求められた位相差Δγに、ノイズ等の影響で、ばらつきが発生する場合、位相演算部34,101は、次のようにして、位相差Δγを求めてもよい。即ち、位相演算部34,101は、例えば、時刻t1〜時刻t9までの、AZプログラム指示値およびELプログラム指示値と、Auto_Error_Xの値およびAuto_Error_Yの値と、AZ実角度およびEL実角度と、を取得し、取得した各値から、合計8つの位相差Δγを求める。そして、位相演算部34,101は、求めた8つの位相差Δγを平均して、最終的な位相差Δγを求めてもよい。
また、上述した実施の形態2の位相演算部101で求められた直交度Δωeに、ノイズ等の影響で、ばらつきが発生する場合、位相演算部101は、次のようにして、直交度Δωeを求めてもよい。即ち、位相演算部101は、例えば、時刻t1〜時刻t5までの、AZプログラム指示値およびELプログラム指示値と、Auto_Error_Xの値およびAuto_Error_Yの値と、AZ実角度およびEL実角度と、を取得し、取得した各値から、合計4つの直交度Δωeを求める。そして、位相演算部101は、求めた4つの直交度Δωeを平均して、最終的な直交度Δωeを求めてもよい。
また、上述した実施の形態の位相演算部101で求められた位相度Δγおよび直交度Δωeに、ノイズ等の影響で、ばらつきが発生する場合、位相演算部101は、次のようにして、位相度Δγおよび直交度Δωeを求めてもよい。即ち、位相演算部101は、例えば、時刻t1〜時刻t11までの、AZプログラム指示値およびELプログラム指示値と、Auto_Error_Xの値およびAuto_Error_Yの値と、AZ実角度およびEL実角度と、を取得し、取得した各値から、合計10つの位相度Δγおよび直交度Δωeを求める。そして、位相演算部101は、求めた10つの位相度Δγおよび直交度Δωeに最小二乗法を適用して、最終的な位相度Δγおよび直交度Δωeを求めてもよい。
上述した各実施の形態の位相演算部34,101は、AZプログラム指示値およびELプログラム指示値と、Auto_Error_Xの値およびAuto_Error_Yの値と、AZ実角度およびEL実角度と、を取得する時間間隔を、最終的な方位角のずれ値AZ_Xおよび最終的な仰角のずれ値EL_Yを1回求めるのに費やす時間(即ち、位置サーボループ演算周期)の5倍以上の間隔、にしてもよい。こうすることで、アンテナ本体の主ビーム軸を移動衛星に向ける追尾が発散することを防止できる。
また、上述した各実施の形態の位相演算部34,101は、AZプログラム指示値およびELプログラム指示値と、Auto_Error_Xの値およびAuto_Error_Yの値と、AZ実角度およびEL実角度と、を取得する時間間隔を、アンテナ制御装置16から出力された制御電圧でアンテナ本体の方位角および仰角が制御される1回の期間(即ち、位置サーボループの応答時間)に、等しくしてもよい。こうすることでも、アンテナ本体の主ビーム軸を移動衛星に向ける追尾が発散することを防止できる。
また、上述した各実施の形態の座標補正部31,102は、アンテナ本体の主ビーム軸と移動衛星との実角度のずれがごく僅かである場合、言い換えれば、位相演算部34,101で求められた位相差Δγが予め定められた最小値よりも小さい値である場合、方位角のずれ値Auto_Error_Xおよび仰角のずれ値Auto_Error_Yから位相差Δγの影響を取り除くことなく、方位角のずれ値Auto_Error_Xおよび仰角のずれ値Auto_Error_Yをそのまま、方位角制御電圧および仰角制御電圧に変換してもよい。これは、アンテナ本体の主ビーム軸と移動衛星との実角度のずれがごく僅かである場合、位相演算部34,101で求められた位相差Δγに誤差が多く含まれることから、この位相差Δγを用いて、アンテナ本体の主ビーム軸と移動衛星とのずれが補正されることを防止するためである。
また、上述した各実施の形態の位相演算部34,101は、追尾受信機15に内蔵される受信強度検出器(受信した信号から信号強度を検出する装置)から、受信した信号の強度を取得する。そして、位相演算部34,101は、取得した強度のゆらぎ(ばらつき)を求め、求めたゆらぎに、予め定められた係数を積算することで、方位角のずれ値Auto_Error_Xおよび仰角のずれ値Auto_Error_Yの熱雑音でのゆらぎ(ばらつき)を求める。その後、位相演算部34,101は、方位角のずれ値Auto_Error_Xおよび仰角のずれ値Auto_Error_Yのゆらぎの二乗平均を求め、これを、閾値に設定する。その後、位相演算部34,101は、取得した方位角のずれ値Auto_Error_Xおよび仰角のずれ値Auto_Error_Yが閾値以上か否かを判定する。
そして、方位角のずれ値Auto_Error_Xおよび仰角のずれ値Auto_Error_Yが閾値以上と位相演算部34,101で判定された場合、方位角のずれ値Auto_Error_Xおよび仰角のずれ値Auto_Error_Yが熱雑音でゆらいでいるため、信号の受信状態が正常であることから、座標補正部31,102は、方位角のずれ値Auto_Error_Xおよび仰角のずれ値Auto_Error_Yから位相差Δγの影響を取り除いて、方位角制御電圧および仰角制御電圧に変換する。
一方、方位角のずれ値Auto_Error_Xおよび仰角のずれ値Auto_Error_Yが閾値未満であると位相演算部34,101で判定されると、方位角のずれ値Auto_Error_Xおよび仰角のずれ値Auto_Error_Yが熱雑音でゆらいでおらず、信号の受信状態が異常であることから、座標補正部31,102は、方位角のずれ値Auto_Error_Xおよび仰角のずれ値Auto_Error_Yをそのまま、方位角制御電圧および仰角制御電圧に変換する。このように構成することでも、位相演算部34,101で求められた位相差Δγに誤差が多く含まれる場合に、この位相差Δγを用いて、アンテナ本体の主ビーム軸と移動衛星とのずれが補正されることを防止することができる。
また、上述した各実施の形態の座標補正部31,102は、求めた直交度Δωeを、前回求めた直交度Δωeに加算して、最終直交度ωeを求めた。また、座標補正部31,102は、求めた位相差Δγを、前回求めた位相差Δγに加算して、最終位相差γを求めた。しかし、座標補正部31,102は、次のようにして、最終直交度ωeおよび最終位相差γを求めてもよい。
即ち、座標補正部31,102は、求めた直交度Δωeが、予め定められた第1の最大値よりも大きい場合、前回求めた直交度Δωeに今回求めた直交度Δωeを加えることなく、前回求めた直交度Δωeを、最終直交度ωeにする。また、座標補正部31,102は、前回求めた直交度Δωeが、第1の最大値以下であり、且つ、予め定められた第1の基準値よりも大きい場合、求めた直交度Δωeを、前回求めた直交度Δωeに加算して、最終直交度ωeを求める。そして、座標補正部31,102は、求めた直交度Δωeが、第1の基準値以下の場合、求めた直交度Δωeを例えば2倍して、その値を、前回求めた直交度Δωeに加算して、最終直交度ωeを求めてもよい。
同様に、座標補正部31,102は、求めた位相差Δγが、予め定められた第2の最大値よりも大きい場合、前回求めた位相差Δγに今回求めた位相差Δγを加えることなく、前回求めた位相差Δγを、最終位相差γにする。また、座標補正部31,102は、前回求めた位相差Δγが、第2の最大値以下であり、且つ、予め定められた第2の基準値よりも大きい場合、求めた位相差Δγを、前回求めた位相差Δγに加算して、最終位相差γを求める。そして、座標補正部31,102は、求めた位相差Δγが、第2の基準値以下の場合、求めた変動位相差Δγを例えば2倍して、その値を、前回求めた変動位相差Δγに加算して、最終位相差γを求めてもよい。
このようにして、最終直交度ωeおよび最終位相差γを求めることで、座標補正部31,102は、アンテナ本体の主ビーム軸と移動衛星とのずれの補正に、外乱の影響が含まれることを低減できる。
その他にも、座標補正部31,102は、求めた最終位相差Δγが、予め定められた閾値以上である場合に、方位角のずれ値Auto_Error_Xおよび仰角のずれ値Auto_Error_Yの補正を行い、求めた最終位相差Δγが、予め定められた閾値未満である場合に、方位角のずれ値Auto_Error_Xおよび仰角のずれ値Auto_Error_Yの補正を行わないようにしてもよい。また、座標補正部102は、求めた最終直交度Δωeが、予め定められた閾値以上である場合に、方位角のずれ値Auto_Error_Xおよび仰角のずれ値Auto_Error_Yの補正を行い、求めた最終直交度Δωeが、予め定められた閾値未満である場合に、方位角のずれ値Auto_Error_Xおよび仰角のずれ値Auto_Error_Yの補正を行わないようにしてもよい。こうすることでも、アンテナ本体の主ビーム軸と移動衛星とのずれの補正に、外乱の影響が含まれることを低減できる。
また、アンテナシステム10,100は、受信した電波の周波数毎の位相差Δγに応じて、方位角のずれ値Auto_Error_Xおよび仰角のずれ値Auto_Error_Yを補正してもよい。この場合、アンテナシステム10,100を、次のように構成すればよい。即ち、座標変換部26は、アンテナ本体で受信した電波の周波数毎に、衛星の方向を示す座標、方位角のずれ値Auto_Error_Xおよび仰角のずれ値Auto_Error_Yを求める。また、位相演算部34,101は、第2ベクトルA,Bを、電波の周波数毎に求める。そして、位相演算部34,101は、電波の周波数毎に、位相差Δγを求める。更に、位相演算部34,101は、位相差Δγ分、方位角のずれ値Auto_Error_Xを示すベクトルおよび仰角のずれ値Auto_Error_Yを示すベクトルを、移動衛星の方向を示す座標を中心に逆回転させる。このように構成することで、アンテナシステム10,100は、アンテナ本体の主ビーム軸の方位角および仰角を周波数毎の位相差Δγに応じて制御することができる。
また、アンテナシステム10,100は、受信した電波の周波数毎の直交度Δωe応じて、方位角のずれ値Auto_Error_Xおよび仰角のずれ値Auto_Error_Yを補正してもよい。この場合、アンテナシステム10,100を、次のように構成すればよい。即ち、座標変換部26は、アンテナ本体で受信した電波の周波数毎に、衛星の方向を示す座標、方位角のずれ値Auto_Error_Xおよび仰角のずれ値Auto_Error_Yを求める。そして、位相演算部101は、電波の周波数毎に、直交度Δωeを求める。更に、位相演算部101は、直交度Δωe分、方位角のずれ値Auto_Error_Xを示すベクトルおよび仰角のずれ値Auto_Error_Yを示すベクトルを、回転させる。このように構成することで、アンテナシステム10,100は、アンテナ本体の主ビーム軸の方位角および仰角を周波数毎の直交度Δωeに応じて制御することができる。
また、アンテナシステム10,100は、位相差Δγ、具体的には、固定の位相差に加え、例えば温度等で変動する位相差を含む位相差Δγを求め、この位相差Δγ分、方位角のずれ値Auto_Error_Xおよび仰角のずれ値Auto_Error_Yを補正したが、これに限られるものではない。即ち、追尾受信機15内の線路長の違い等を特定して固定の位相差が予め求められ、その固定の位相差分、方位角のずれ値Auto_Error_Xおよび仰角のずれ値Auto_Error_Yが、予め補正されている場合、アンテナシステム10,100は、求めた位相差Δγから、予め求められている固定の位相差を減算し、減算して求めた位相差分、方位角のずれ値Auto_Error_Xおよび仰角のずれ値Auto_Error_Yを補正してもよい。この構成の場合、予め求められた固定の位相差分、方位角のずれ値Auto_Error_Xおよび仰角のずれ値Auto_Error_Yが予め補正されているシステムに対しても、アンテナシステム10,100を適用することができる。
なお、上述の実施の形態において、アンテナシステム10,100を制御するプログラムは、フレキシブルディスク、CD−ROM(Compact Disc Read−Only Memory)、DVD(Digital Versatile Disc)、MO(Magneto−Optical Disc)等のコンピュータが読み取り可能な記録媒体に格納して配布し、そのプログラムを、コンピュータ等にインストールすることにより、アンテナシステム10,100で行った演算を実行するシステムを構成してもよい。
また、上述のプログラムをインターネット等の通信ネットワーク上の所定のサーバ装置が有するディスク装置等に格納しておき、例えば、搬送波に重畳させて、ダウンロード等するようにしてもよい。
また、アンテナシステム10,100で行った演算を、各OS(Operating System)が分担して実現する場合、又は、OSとアプリケーションとの協働により実現する場合等には、OS以外の部分のみを媒体に格納して配布してもよく、また、ダウンロード等してもよい。