以下、本発明の好適な実施の形態について、添付の図面を参照しつつ、詳細に説明する。ただし、以下の説明において特に断らない限り、方向や向きに関する記述は、当該説明の便宜上、図面に対応するものであり、例えば実施品、製品または権利範囲等を限定するものではない。
<1. 第1の実施の形態>
図1は、第1の実施の形態における上肢用編地1aを用いたサポーター10aを示す図である。図1の(a)は、サポーター10aを着用した人体の右腕を背面から観察した図である。また、図1の(b)は、サポーター10aを着用した人体の右腕を前面から観察した図である。さらに、図1の(c)は、サポーター10aを着用した人体の右腕を右側面から観察した図である。
サポーター10aは、上肢用編地1aと、第1アンカー部5と、第2アンカー部6とを備える人体保護用の被服である。すなわち、第1の実施の形態における上肢用編地1aは、人体保護用の被服であるサポーター10aの一部として用いられている。なお、詳細は後述するが、サポーター10aは人体を保護するとともに、人体の動きを支援(補助)する機能も有している。
上肢用編地1aは、第1編目領域30a,30bおよび第2編目領域40a,40bを備えている。また、上肢用編地1aは、サポーター10aを着用した人体の上肢の少なくとも一部を被う筒状の編地である。
なお、以下の説明では、編糸が編まれる方向を、「編む方向」と称するとともに、編む方向と平行となる方向を「編む方向に沿う方向」と称する場合がある。上肢用編地1aは筒状の編地であるので、編む方向は外周に沿った方向となる。編む方向は、上肢用編地1aが第1アンカー部5側から編まれるか、第2アンカー部6側から編まれるかによって変わる。以下では、サポーター10aを着用した者が右腕を前に突き出した状態で、着用者から見て、当該右腕を反時計回りに回る方向を編む方向として説明するが、もちろんこれに限定されるものではない。
図2は、編糸2が第1編目3を形成している様子を示す図である。図2に示すように、以下の説明では、仮想線(一点鎖線)で示す矩形領域内の編糸2で囲まれる領域(ニードルループおよびシンカーループで形成される領域)を1つの「編目」と称する。図2に示す箇所では、編目としての第1編目3が編糸2によって連続して形成されている。
図3は、第1編目3と第2編目4とを比較する図である。第2編目4は、第1編目3と同様に編糸2により形成される編目である。また、第1編目3と実質的に同じ編目形状で、かつ、第1編目3より小さいサイズの編目である。なお、編目形状とは、編目内において当該編目を形成する糸の軌跡形状を意味し、編目形状に関して「実質的に同じ」の意味するところについては後述する。
このように、編目のサイズの異なる2種類以上の編目から構成される上肢用編地1aは、例えば、特開2012−031542号公報に記載されている丸編機で編むことが可能である。丸編機とは、往復運動する編針間に、シンカーを出入りさせて主に筒状の編地を編成する編機である。従来技術であるため詳細は省略するが、上記特許文献では、編糸を乗せる位置に関して高低差のあるシンカートップとシンカーエクボとをシンカーに設け、シンカーを進出させる際(編目を形成する際)にいずれの位置に編糸を乗せるかを決定する。これにより、編地において、編目の一目単位ごとに、大きいサイズの編目とするか小さいサイズの編目とするかを選別できる。したがって、編地における任意の位置に大きいサイズの編目と小さいサイズの編目とを配置することができ、本実施の形態における上肢用編地1aを製造するのに好適である。
図4は、従来の技術による編地9を例示する図である。図4では、縦方向および横方向(編む方向)に4つの編目が並び、全部で16個の編目で構成されている部分を示している。図4に示す編地9には、編目のサイズが大きい編目として、9個の大編目90と、2個の大編目91と、2個の大編目92と、1個の大編目93が示されている。また、編目のサイズが小さい編目として、それぞれ1個の小編目94と、小編目95とが示されている。
このように、特開2012−031542号公報に記載されている丸編機によれば、先述のように、編地において、編目の一目単位ごとに、大きいサイズの編目とするか小さいサイズの編目とするかを選別し、配置することができる。すなわち、例えば、大きいサイズの編目の中の任意の位置に小さいサイズの編目を形成し、配置できる。
なお、図4から明らかであるが、例えば、大編目90と大編目91は、厳密には、編目形状が異なっている。また、大編目90と小編目95も、編目のサイズだけでなく、厳密には、編目形状も異なっている。それは、編目のサイズが大きい大編目90,91,92,93の中に、編目のサイズが小さい小編目94,95が混ざっているために、本来は大編目90あるいは小編目94として形成されるべき編目において、編糸が引っ張られて、一部変形し歪んでしまうからである。しかし、ここでは、編糸が引っ張られることによる編目形状の変形については無視し、大編目90,91,92,93と、小編目94,95とは、いずれも「実質的に同じ」編目形状であるとみなす。
また、上肢用編地1aは、上記丸編機で製造されたものに限定されるものではなく、他の方法によって製造されてもよい。すなわち、上記丸編機は、上肢用編地1aが装置により量産的に製造可能であることを示すに過ぎず、極端に言えば、上肢用編地1aは手編みで製造されてもよい。
図1に戻って、第1編目領域30a,30bは、第1編目3(図3)により構成される領域である。また、第2編目領域40a,40bは、編目のサイズが第1編目3に比べて小さい第2編目4(図3)により構成される領域である。第1の実施の形態において、第1編目領域30a,30bは第2編目4を含まない領域であり、第2編目領域40a,40bは第1編目3を含まない領域である。
図1に示すように、上肢用編地1aでは、第1編目領域30a,30bと、第2編目領域40a,40bは、互いに隣接した領域として配置されている。すなわち、上肢用編地1aでは、編目のサイズが大きい第1編目3と編目のサイズが小さい第2編目4とが、第1編目領域30a,30bと第2編目領域40a,40bとの境界において互いに隣接する。したがって、上肢用編地1aにおいて、第1編目3および第2編目4の一部に変形や歪みが生じるが、本来、これらは「実質的に同じ」編目形状である。すなわち、上肢用編地1aは、編糸2により形成される第1編目3と、当該編糸2により形成され、第1編目3と実質的に同じ編目形状で、かつ、第1編目3より小さいサイズの第2編目4とを備えている。
一般に、同じ編糸で同じ編目形状で編まれる(編成される)編地であれば、編目のサイズに応じて伸縮率が変化し、着用した際に当接する人体部分に加わる圧力(着圧)が変化する。編目のサイズが比較的大きい編目で編まれた部分は、編地としての伸縮性が比較的高くなり、着圧は低くなる。一方で、編目のサイズが小さい編目で編まれた部分は、伸縮性が比較的低くなるため、着圧は高くなる。
先述のように、第1の実施の形態における上肢用編地1aは、第1編目領域30a,30bを第1編目3で構成するとともに、第2編目領域40a,40bを第2編目4で構成する。これによって、第1編目領域30a,30bに被われる部位に加わる着圧を第2編目領域40a,40bに被われる部位に加わる着圧に比べて低くすることができる。すなわち、上肢用編地1aは、人体の上肢の部位ごとに、異なる着圧を加えることができる。
図5は、市場の様々な既製品80,81,82,83およびサポーター10aについて、着圧を測定した結果を示す図である。図5には、エアパック式着圧測定機(型番「A0101-G」)により3回測定したときの平均値を示す。また、周径が282[mm]の木製円柱(20代および30代男性の上腕囲平均は280[mm])の中央にエアパック(半径1[cm])を貼付した上に、サンプル(各製品)を装着して1分後の測定値を記録した。
なお、既製品80は、部分によって異なる着圧を付加する製品ではない。
また、既製品81および既製品82における「縫製間」とは、縫製によりベース部材に取り付けられ、当該縫製により周囲を取り囲まれた部分を示す。一般にこのような部分は、ベース部材と、編み立てが異なる生地が使用されていたり、編目のサイズが違ったり、素材が異なっていたりする部分である。
また、既製品83における「支持部」とは、ベース部材より伸縮抵抗の大きい部分であり、「肘頭当接部」とは、ベース部材より伸縮抵抗の小さい部分である。
さらに、サポーター10aの「密」とは、第2編目領域40a,40bのように、第2編目4で構成された部分であり、サポーター10aの「粗」とは、第1編目領域30a,30bのように、第1編目3で構成された部分である。
図5から明らかなように、サポーター10aは、着圧値が低い部分と着圧値が高い部分との着圧差が6[hPa]である。すなわち、サポーター10aは、異なる着圧を付加する製品中で、着圧差が最大である。したがって、裁断、増し糸や添え糸、縫製による異なる部材の付加、あるいは、シールや樹脂を付着させるといった手法を用いなくても、メリハリのある着圧が実現されていることがわかる。したがって、これらを用いる場合に比べて、製造工程を簡略化でき、コストを抑制することができる。
また、上記のとおり、上肢用編地1aは、着圧差を設けるために、別制作の生地を縫製する必要がないので、皮膚に縫い目による跡が残りにくく、縫い目によるテンション差もでない。
また、上記のとおり、上肢用編地1aは、着圧差を設けるために、シールや樹脂を付着させるといった手法を用いる必要がないので、通気性が阻害されることがない。また、シールと生地との間で皺や折れが発生することがない。また、シールや樹脂は摩擦が大きいために、運動中に、表面のシールや樹脂の部分が床や壁に接触し、被服が脱げるという問題があるが、上肢用編地1aはシールや樹脂によるコーティングは必要ないので、そのような問題が発生しにくい。
また、上肢用編地1aは、着圧が低い「粗」部分においても、測定値が6[hPa]であり、充分なフィット感が得られ、着心地が良好であることもわかる。すなわち、上肢用編地1aは、筒状の伸縮性を有する繊維製品として製造されており、密着性が高く、腕の形状に沿った着用感を得ることができる。
図6は、第1編目領域30aと第2編目領域40bとの境界における編目状態を例示する図である。図6には、編糸2が編まれる方向に沿う方向において互いに隣接する第1編目3aおよび第2編目4aが示されている。第1編目3aは、第2編目4aの反対側において第1編目3bと隣接する。また、第2編目4aは、第1編目3aの反対側において、第2編目4bと隣接する。そして、第1編目3aと第2編目4aは、いずれも実質的に同じ編目形状である。
このように、第1編目領域30aと第2編目領域40bとの境界において、第1編目3b、第1編目3a、第2編目4a、第2編目4bという並びが形成されている。すなわち、第1編目3aと第2編目4aとの編目一つの間に、編目の大きいサイズの第1編目3から、編目の小さいサイズの第2編目4に変化する。なお、詳細は図示しないが、第2編目領域40bと第1編目領域30bとの境界では、第2編目4、第2編目4、第1編目3、第1編目3という並びが形成されて、編目一つの間に、編目の小さいサイズの第2編目4から、編目の大きいサイズの第1編目3に変化する。
例えば、特開平9−195104号公報に記載の技術は、編成カムの上下動で同一コース内で編目長を変え得る装置が備えられた丸編機でパンティストッキング用の編地を製造する技術である。このようにして製造される当該編地では、一目単位で編目長(編目のサイズ)を変化させることができず、目的のサイズにまで編目を小さく(あるいは大きく)変更できるまで、3目〜数目を要する。編目のサイズが、グラデーションのように順次に変化する当該編地では、着圧の作用箇所(あるいは非作用箇所)を明確に区切ることが困難であり、メリハリのある分圧(着圧の使い分け)が困難である。また、着圧の作用箇所(あるいは非作用箇所)を小さくすることが難しく、細分化が困難である。
これに対して、上肢用編地1aは、先述のように、一目単位に編目の大小を変化させることができるので、着圧の作用箇所(あるいは非作用箇所)を明確に区切ることができ、先述のようにメリハリのある分圧(着圧の使い分け)が可能である。また、着圧の作用箇所(あるいは非作用箇所)として、極端に言えば、一つの第2編目4(あるいは第1編目3)のみにより構成される箇所を形成することも可能であり、細分化も容易である。
また、図6に示すように、第1編目3aと第2編目4aは、互いに連続する編糸2で形成されている。言い換えれば、第1編目領域30a,30bと、第2編目領域40a,40bとの境界においても、連続した編糸2で編まれている。したがって、当該境界において、切断された糸の端部などが存在することはない。これにより、切断部などにより皮膚が刺激されることがないので、上肢用編地1aを用いたサポーター10aの着用感が低下することはない。
図7は、図5に示した既製品80,81,82,83およびサポーター10aについて、厚さを測定した結果を示す図である。図7には、ショッパー型厚さ測定機(株式会社安田精機製作所製「No.129-A」)により10回測定したときの平均値を示す。
なお、既製品81,82における「縫製部」とは、縫製されている縫い目の部分を示す。また、既製品83における「カット端部」とは、ベース部材と支持部との境界部分を示す。
図7を見れば、上肢用編地1aの薄さは、既製品80,81,82と比べても遜色のない程度に薄いことがわかる。
また、上肢用編地1aを用いたサポーター10aは、第1編目領域30a,30b(第1編目3)と、第2編目領域40a,40b(第2編目4)との段差が、わずかに0.04[mm]しかない。そして、サポーター10a以外で最も段差の少ない既製品83と比べても、1/14程度に抑制されている。すなわち、上肢用編地1aは、着圧が変化する境界において生地の段差がほとんどないと言えるレベルである。したがって、縫製部を有する既製品81,82と比較して、上肢用編地1aは、筒状の連続した編組織として編成されているため、縫い目による段差(凹凸)を感じない。また、カット端部を有する既製品83と比べても充分に段差が小さい。したがって、上肢用編地1a(サポーター10a)は、着圧を変化させる構造による着心地の低下を抑制することができる。
図8は、図5および図7に示した既製品80,81,82,83およびサポーター10aについて、曲げ特性を測定した結果を示す図である。図8には、KES法による曲げ剛性測定装置(カトーテック株式会社製「KES-FB2」)を用いて、3回測定したときの平均値を示す。
図8によれば、サポーター10aにおける曲げ硬さは、第1編目領域30a,30bにおいて0.006[gf・cm2/cm]であり、第2編目領域40a,40bにおいて0.004[gf・cm2/cm]である。そして、その差は、0.002[gf・cm2/cm]である。他の既製品80,81,82,83と比べて同等、もしくは柔らかく、曲げやすいことが分かる。
図1に戻って、第2編目領域40a,40bは、腕の動きに沿った箇所に配置された帯状の領域である。また、第2編目領域40a,40bの長手方向の端部は、それぞれ第1アンカー部5および第2アンカー部6に連結している。
人間が上腕を曲げたり伸ばしたりする際には、それぞれの動きに対応した屈筋群および伸筋群が機能する。第2編目領域40a,40bは、着用時に、これら屈筋群および伸筋群の筋腹の両脇部近傍を被うように位置が決められている。すなわち、着用時の上肢における体組織(上肢の筋肉)の位置に応じて、第1編目3(第1編目領域30a,30b)または第2編目4(第2編目領域40a,40b)のうちの少なくともいずれかの位置が決定されている。より詳細に言えば、第1の実施の形態における上肢用編地1aでは、第2編目領域40a,40bが体組織の位置に応じて位置が決定されており、その他の領域が第1編目領域30a,30bとなっている。
これにより、サポーター10aは、あたかも、人体の上肢にテーピングを施したかのような効果を簡単に得ることができる。したがって、上腕を動かす筋肉の筋腹部の両脇から第2編目領域40a,40bによって補助することができる。また、当該筋腹部分に対応する箇所に比較的着圧の低い第1編目領域30a,30bを設けることにより、これらの筋腹部分を押さえて筋機能を阻害することを防ぐことができる。
第1アンカー部5および第2アンカー部6は、上肢用編地1aとは異なる編み立て生地部分であり、上肢用編地1aの両端部にそれぞれ設けられて上肢用編地1aの編目がほつれないようにする機能を有している。第1アンカー部5および第2アンカー部6については、従来の技術を適宜適用することができるため、詳細な説明は省略する。
なお、第1アンカー部5および第2アンカー部6が比較的高い着圧値を有するように構成すれば、人の動きによるサポーター10aの位置ズレを抑制できる。ただし、上肢用編地1aは、人体の上肢に比較的密着した構造である。したがって、あまり極端に第1アンカー部5および第2アンカー部6の着圧を上げなくても、上肢用編地1aの位置ズレを抑制できている。第1アンカー部5および第2アンカー部6の着圧を高くすると、血行が阻害されるなどのおそれが生じる。
以上のように、第1の実施の形態における上肢用編地1aは、人体の上肢の少なくとも一部を被うものであって、編糸2により形成される第1編目3と、編糸2により形成され、第1編目3と実質的に同じ編目形状で、かつ、第1編目3より小さいサイズの第2編目4とを備えている。そして、着用時の上肢における体組織の位置に応じて、第1編目3または第2編目4のうちの少なくともいずれかの位置が決定されており、第1編目3および第2編目4は、編糸2が編まれる方向に沿う方向において互いに隣接する第1編目3aおよび第2編目4aを含み、第1編目3aは、第2編目4aの反対側において第1編目3または第2編目4のうちのいずれかと隣接し、第2編目4aは、第1編目3aの反対側において、第1編目3または第2編目4のうちのいずれかと隣接し、第1編目3aと第2編目4aは、互いに連続する編糸2で形成されている。これにより、人体の上肢の部位ごとに、異なる着圧を加えつつも、着用感の悪化を抑制することができる。また、第1編目3および第2編目4の位置が一目単位で決定されているので、体組織の位置に応じた正確な位置に着圧を生じさせる領域(第2編目領域40a,40b)を配置でき、人体への適切な作用が期待できる。
なお、本実施の形態における上肢用編地1aでは、第1編目領域30a,30bと第2編目領域40a,40bとの境界において、第1編目3、第1編目3、第2編目4、第2編目4という並びか、または、第2編目4、第2編目4、第1編目3、第1編目3という並びが形成される例のみ説明した。しかし、最小の作用箇所として、第1編目3、第1編目3、第2編目4、第1編目3という並びや、第1編目3、第2編目4、第1編目3、第1編目3という並びが形成されてもよい。また、最小の非作用箇所として、第2編目4、第1編目3、第2編目4、第2編目4という並びや、第2編目4、第2編目4、第1編目3、第2編目4といった並びが形成されてもよい。さらには、第1編目3、第2編目4、第1編目3、第2編目4といった並びや、第2編目4、第1編目3、第2編目4、第1編目3といった並びが形成されてもよい。
また、上肢の筋肉の位置に応じて、第1編目3または第2編目4のうちの少なくともいずれかの位置を決定することにより、例えば、筋肉を保護したり、筋肉による動きを支援することもできる。
<2. 第2の実施の形態>
図9は、第2の実施の形態におけるサポーター10bを示す図である。図9の(a)は、サポーター10bを着用した人体の右腕を背面から観察した図である。また、図9の(b)は、サポーター10bを着用した人体の右腕を前面から観察した図である。さらに、図9の(c)は、サポーター10bを着用した人体の右腕を右側面から観察した図である。なお、第2の実施の形態におけるサポーター10bにおいて、第1の実施の形態におけるサポーター10aと同様の構成および機能を有する部材については同符号を付し、適宜、説明を省略する。以下の実施の形態においても同様である。
第2の実施の形態におけるサポーター10bは、上肢用編地1aの代わりに、上肢用編地1bを用いている点が、第1の実施の形態におけるサポーター10aと異なっている。
上肢用編地1bは、第1編目領域30a,30bの代わりに、第1編目領域30a,30bと同様に第1編目3により構成された第1編目領域30cを備えている。また、上肢用編地1bは、第2編目領域40a,40bの代わりに、第2編目領域40a,40bと同様に第2編目4により構成された第2編目領域40c,40d,40e,40f,40g,40h,40i,40j,40kを備えている。
上肢用編地1bにおいて、第1編目領域30cは、いわばベース部材を構成しており、比較的広い領域を占めている。
一方、第2編目領域40cないし40kは、第1の実施の形態における第2編目領域40a,40bに比べて、様々な形状で、かつ、細分化された領域を形成している。上肢用編地1bも、上肢用編地1aと同様に、一目単位で第1編目3および第2編目4の位置が決定されるため、このような形状とすることが可能である。そして、これらの位置は、筋肉の動きに沿った箇所となるように決定されている。
このように、第2の実施の形態における上肢用編地1bは、屈筋群や伸筋群といった複数の筋肉をまとめて意識するよりも、個々の筋肉の位置に応じて、細かく、かつ、正確に、第1編目3および第2編目4の位置が決定されている。すなわち、筋繊維や骨格に沿わせた任意の形状および配置に第2編目領域40cないし40kが決定されていることにより、サポーター10bは、よりきめ細かな運動支援が可能である。
<3. 第3の実施の形態>
上記実施の形態では、上肢の筋肉の位置に応じて、第1編目3または第2編目4のうちの少なくともいずれかの位置を決定する例について説明した。そして、第2編目領域40aないし40kは、腕の動きに沿った箇所に配置されていた。しかし、第1編目3または第2編目4を上肢の筋肉の位置に応じて配置する場合であっても、上記実施の形態とは逆に、例えば、第2編目4の位置を、腕の動きに沿わない位置として決定することも可能である。
図10は、第3の実施の形態におけるサポーター10cを示す図である。図10の(a)は、サポーター10cを着用した人体の右腕を背面から観察した図である。また、図10の(b)は、サポーター10cを着用した人体の右腕を前面から観察した図である。さらに、図10の(c)は、サポーター10cを着用した人体の右腕を右側面から観察した図である。
第3の実施の形態におけるサポーター10cは、上肢用編地1aの代わりに、上肢用編地1cを用いている点が、第1の実施の形態におけるサポーター10aと異なっている。
上肢用編地1cは、第1編目領域30a,30bの代わりに、第1編目領域30a,30bと同様に第1編目3により構成された第1編目領域30dを備えている。また、上肢用編地1cは、第2編目領域40a,40bの代わりに、第2編目領域40a,40bと同様に第2編目4により構成された第2編目領域40m,40nを備えている。
上肢用編地1cにおいて、第1編目領域30dは、いわばベース部材を構成しており、第2編目領域40m,40n以外の比較的広い領域を占めている。しかし、第1の実施の形態における第1編目領域30a,30bの位置と比較すると、第1編目領域30dは、上腕を動かす筋肉の、主に、筋腹部両脇近傍に位置している。すなわち、第1編目領域30dは、上肢の筋肉の位置に応じてその位置が決定されているものの、第1および第2の実施の形態とは逆に、屈筋群や伸筋群の筋腹部両脇近傍に位置している。
第1編目領域30dは、第1編目3により構成される領域であるから、着圧値は比較的低い領域である。すなわち、第3の実施の形態におけるサポーター10cでは、屈筋群や伸筋群の筋腹部両脇近傍を保持する機能は、サポーター10aに比べれば劣る。
一方、第2編目領域40mは、第1アンカー部5と第2アンカー部6とを連結するように長手方向に帯状に延びた形状の領域であって、上腕の関節内側において最も幅が狭くなっている。また、第2編目領域40nは、小指と薬指の付け根付近から肘に向けて、徐々に幅が狭くなるような形状の領域である。そして、このような形状により、第2編目領域40m,40nの位置は、屈筋群や伸筋群の筋腹部を被う位置に決定されている。
第2編目領域40m,40nは、第2編目4により構成される領域であるから、着圧値は比較的高い領域である。すなわち、第3の実施の形態におけるサポーター10cでは、屈筋群や伸筋群の動きを補助するのではなく、逆に、動きを抑制する。これにより、サポーター10cは、屈筋群や伸筋群の過剰な収縮を予防し、例えば、上肢の怪我や故障を防止することができる。また、屈筋群や伸筋群に着圧をかけ動きを抑制することで、同じ運動でもより高い負荷を筋肉に与えることができる。そのためサポーター10cを着用して筋肉に加圧した状態でトレーニングをすることで、筋力の増大、またはそれに伴う筋肉の増量を達成することも可能である。
<4. 第4の実施の形態>
第2編目4の位置を腕の動きに沿わない箇所に決定する例としては、第3の実施の形態に示す例に限定されるものではない。
図11は、第4の実施の形態におけるサポーター10dを示す図である。図11の(a)は、サポーター10dを着用した人体の右腕を背面から観察した図である。また、図11の(b)は、サポーター10dを着用した人体の右腕を前面から観察した図である。さらに、図11の(c)は、サポーター10dを着用した人体の右腕を右側面から観察した図である。
第4の実施の形態におけるサポーター10dは、上肢用編地1aの代わりに、上肢用編地1dを用いている点が、第1の実施の形態におけるサポーター10aと異なっている。
上肢用編地1dは、第1編目領域30a,30bの代わりに、第1編目領域30a,30bと同様に第1編目3により構成された第1編目領域30e,30f,30gを備えている。また、上肢用編地1dは、第2編目領域40a,40bの代わりに、第2編目領域40a,40bと同様に第2編目4により構成された第2編目領域40p,40qを備えている。
上肢用編地1dにおいて、第1編目領域30e,30f,30gおよび第2編目領域40p,40qは、いずれも、上肢用編地1dの外周に沿う、円筒状(リング状)の領域として形成されている。すなわち、第1アンカー部5から第2アンカー部6に向かって、第1編目領域30e、第2編目領域40p、第1編目領域30f、第2編目領域40p、第1編目領域30gの順で、各領域が並んで配置されている。そして、第2編目領域40p,40qが、上腕の筋肉の腹筋部、および、前腕の筋肉の腹筋部に配置されるように、第1編目領域30e,30f,30gの幅(長手方向の幅)が決定されている。
このように、第4の実施の形態における上肢用編地1dは、第1編目領域30e,30f,30gおよび第2編目領域40p,40qの形状と、第1編目領域30e,30f,30gの幅とによって、第2編目4(第2編目領域40p,40q)の位置が、上肢の筋肉の位置に応じて決定されている。そして、第2編目領域40p,40qは、上腕の動きに沿わない箇所に配置されている。
これにより、第4の実施の形態におけるサポーター10dは、屈筋群や伸筋群の動きを補助するのではなく、逆に、動きを抑制する。これにより、サポーター10dは、サポーター10cと同様の効果を得ることができる。
<5. 第5の実施の形態>
上記実施の形態では、第1編目3および第2編目4の位置は、上肢の筋肉の位置に応じて決定されていた。しかし、第1編目3および第2編目4の位置を決定する基準となる体組織は、筋肉に限定されるものではない。すなわち、本発明に係る人体保護用の被服は、体の動きを補助したり、抑制したりするものに限定されない。
図12は、第5の実施の形態におけるサポーター10eを示す図である。図12の(a)は、サポーター10eを着用した人体の右腕を背面から観察した図である。また、図12の(b)は、サポーター10eを着用した人体の右腕を前面から観察した図である。さらに、図12の(c)は、サポーター10eを着用した人体の右腕を右側面から観察した図である。
第5の実施の形態におけるサポーター10eは、上肢用編地1aの代わりに、上肢用編地1eを用いている点が、第1の実施の形態におけるサポーター10aと異なっている。
上肢用編地1eは、第1編目領域30a,30bの代わりに、第1編目領域30a,30bと同様に第1編目3により構成された第1編目領域30hを備えている。また、上肢用編地1eは、第2編目領域40a,40bの代わりに、第2編目領域40a,40bと同様に第2編目4により構成された第2編目領域40r,40sを備えている。
本来、人体保護用の被服によって人体の意図した部位に着圧を加えるためには、当該被服を正しい向きで、正しい位置に着用しなければならない。しかし、上肢用の被服の両端部(サポーター10eにおいては第1アンカー部5および第2アンカー部6)はよく似た円形形状の開口部であり、伸縮性があるため、上下逆さまに装着しても着用できなくはない場合がある。すなわち、このような被服では上下方向の向きの判断が困難である。また、上肢用の被服は円筒状の編地であるため、装着されている上肢を略中心軸にして自由に回転させることが可能である。すなわち、このような被服では上肢に対する正しい回転の向きの判断が困難である。さらに、上端部を上腕のどの位置にまで上げればよいのかも、一見しただけでは判断しにくい。すなわち、このような被服では、上下位置の判断が困難である。
上肢用編地1eでは、第1アンカー部5と連結する部分を頂点とした略二等辺三角形状となるように第2編目領域40rの形状が決定されている。また、第2編目領域40sは、第2アンカー部6と連結する部分を頂点とした略逆二等辺三角形状となるように形状が決定されている。
そして、第2編目領域40rは、長手方向のサイズが、第2編目領域40sに比べて、一見して短いとわかるサイズとなっている。これにより、サポーター10eを着用する者は、長手方向に小さいサイズの三角形(すなわち、第2編目領域40r)が、上にくるように装着するのが正しい上下方向の向きであると記憶しておけば、以後、上下方向の向きを誤ることはない。
また、第2編目領域40rと第2編目領域40sとの間は、第1編目領域30hが配置されている。第1編目領域30hのうち、第2編目領域40rと第2編目領域40sとの間に設けられている部分は、サポーター10eが正しい上下位置に配置されたときに、上肢の関節に位置するように決定されている。すなわち、この部分が関節の位置となるまで、第1アンカー部5をたくしあげるだけで、サポーター10eを正しい上下位置に装着できる。
さらに、サポーター10eを正しく装着した状態で、上肢を下方に垂らし、手のひらを胴体側に向けたときに、第2編目領域40rおよび第2編目領域40sが外側(胴体側と逆側)に向くように、第2編目領域40rおよび第2編目領域40sの位置が決定されている。したがって、これを基準にすれば、正しい回転の位置に装着することができる。
以上のように、第5の実施の形態における上肢用編地1eでは、第1編目3の位置または第2編目4の位置が、着用時の上肢に対する上肢用編地1eの向きを示すように決定されている。これにより、着用する際に、混乱したり、向きなどを誤ることがなく、正しく着用することができる。したがって、正しい位置に着圧を加えたり、正しい位置を保護したりすることができる。
<6. 第6の実施の形態>
第5の実施の形態では、第1編目3および第2編目4の位置は、第1編目3の位置または第2編目4の位置が、着用時の上肢に対する上肢用編地1eの向きを示すように決定されている例について説明した。しかし、着用時の上肢に対する向きを示すように決定されている例はこのような例に限定されるものではない。
図13は、第6の実施の形態におけるサポーター10fを示す図である。図13の(a)は、サポーター10fを着用した人体の右腕を背面から観察した図である。また、図13の(b)は、サポーター10fを着用した人体の右腕を前面から観察した図である。さらに、図13の(c)は、サポーター10fを着用した人体の右腕を右側面から観察した図である。
第6の実施の形態におけるサポーター10fは、上肢用編地1aの代わりに、上肢用編地1fを用いている点が、第1の実施の形態におけるサポーター10aと異なっている。
上肢用編地1fは、第1編目領域30a,30bの代わりに、第1編目領域30a,30bと同様に第1編目3により構成された第1編目領域30iを備えている。また、上肢用編地1fは、第2編目領域40a,40bの代わりに、第2編目領域40a,40bと同様に第2編目4により構成された第2編目領域40tを備えている。
図13の(c)に示すように、第2編目領域40tは、第1アンカー部5側の端部が裾が広がった形状で、第2アンカー部6に向かうにつれて幅が狭くなり、第2アンカー部6側の端部は鋭く尖った先端形状の領域である。したがって、サポーター10fを着用しようとする者は、第2編目領域40tの形状を確認し、先の尖った方が手の方向となるようにサポーター10fの上下方向を判断することができる。
さらに、サポーター10fを正しく装着した状態で、上肢を下方に垂らし、手のひらを胴体側に向けたときに、第2編目領域40tが外側に向くように、第2編目領域40tの位置が決定されている。したがって、これを基準にすれば、正しい回転の位置に装着することができる。
また、第6の実施の形態における第2編目領域40tには、文字(本実施の形態では、図13の(c)に示すように「CROSS PRO」の文字)や柄が表現されており、向きや回転の向きが容易に判断しやすいように構成されている。
以上のように、第6の実施の形態におけるサポーター10fにおいても、第5の実施の形態と同様の効果を得ることができる。
また、文字や柄と併用することにより、さらに、着用するときの向きや位置を容易に正しく判断できる。
<7. 第7の実施の形態>
第1編目3および第2編目4の位置を決定するときに基準となる体組織は、上記実施の形態に示した例に限定されるものではない。
図14は、第7の実施の形態におけるサポーター10gを示す図である。図14の(a)は、サポーター10gを着用した人体の右腕を背面から観察した図である。また、図14の(b)は、サポーター10gを着用した人体の右腕を前面から観察した図である。さらに、図14の(c)は、サポーター10gを着用した人体の右腕を右側面から観察した図である。
第7の実施の形態におけるサポーター10gは、上肢用編地1aの代わりに、上肢用編地1gを用いている点が、第1の実施の形態におけるサポーター10aと異なっている。
上肢用編地1gは、第1編目領域30a,30bの代わりに、第1編目領域30a,30bと同様に第1編目3により構成された第1編目領域30jを備えている。また、上肢用編地1gは、第2編目領域40a,40bの代わりに、第2編目領域40a,40bと同様に第2編目4により構成された第2編目領域40u,40vを備えている。
第7の実施の形態における第1編目領域30jは、上肢の関節の位置に応じて位置が決定されている。より詳細には、上肢の関節の内側および外側を取り囲む位置に第1編目領域30jが形成されている。
一方で、上肢の関節以外の部位は、第2編目領域40u,40vによって被われている。
以上のように、第7の実施の形態における上肢用編地1gは、第1編目3または第2編目4の位置を、上肢の関節の位置に応じて決定する。特に、サポーター10gにおける第1編目3(第1編目領域30j)の位置は、上肢の関節の位置である。これにより、比較的柔らかい第1編目領域30jによって関節を被うことになるので、関節の動きを阻害することがなく、動きやすい被服を提供できる。
<8. 第8の実施の形態>
第1編目3または第2編目4の位置を、上肢の関節の位置に応じて決定する例は、第7の実施の形態に示した例に限定されるものではない。
図15は、第8の実施の形態におけるサポーター10hを示す図である。図15の(a)は、サポーター10hを着用した人体の右腕を背面から観察した図である。また、図15の(b)は、サポーター10hを着用した人体の右腕を前面から観察した図である。さらに、図15の(c)は、サポーター10hを着用した人体の右腕を右側面から観察した図である。
第8の実施の形態におけるサポーター10hは、上肢用編地1aの代わりに、上肢用編地1hを用いている点が、第1の実施の形態におけるサポーター10aと異なっている。
上肢用編地1hは、第1編目領域30a,30bの代わりに、第1編目領域30a,30bと同様に第1編目3により構成された第1編目領域30kを備えている。また、上肢用編地1hは、第2編目領域40a,40bの代わりに、第2編目領域40a,40bと同様に第2編目4により構成された第2編目領域40wを備えている。
第8の実施の形態における第1編目領域30kは、第7の実施の形態における第1編目領域30jと同様に、上肢の関節の位置に応じて位置が決定されている。しかし、第1編目領域30kは、上肢の関節の外側(肘)周辺部のみを円状に取り囲むように形成されている。
上肢用編地1hにおいて、第2編目領域40wは、第1の実施の形態において示した第2編目領域40a,40bと同様に、薄くて、曲げやすいという特性がある。したがって、関節の内側に第2編目領域40wを配置したとしても、腕が曲げにくくなることはなく、動きを制限することはない。
以上のように、第8の実施の形態における上肢用編地1hは、第1編目3または第2編目4の位置を、上肢の関節の位置に応じて決定する。特に、サポーター10hにおける第1編目3(第1編目領域30k)の位置は、上肢の関節の外側(肘)の周辺を円形に取り囲む位置である。これにより、比較的柔らかい第1編目領域30kによって肘を被うことになるので、関節の動きを阻害することがなく、動きやすい被服を提供できる。
<9. 第9の実施の形態>
第1編目3または第2編目4の位置を、上肢の関節の位置に応じて決定する例は、第7および第8の実施の形態に示した例に限定されるものではない。
図16は、第9の実施の形態におけるサポーター10iを示す図である。図16の(a)は、サポーター10iを着用した人体の右腕を背面から観察した図である。また、図16の(b)は、サポーター10iを着用した人体の右腕を前面から観察した図である。さらに、図16の(c)は、サポーター10iを着用した人体の右腕を右側面から観察した図である。
第9の実施の形態におけるサポーター10iは、上肢用編地1aの代わりに、上肢用編地1iを用いている点が、第1の実施の形態におけるサポーター10aと異なっている。
上肢用編地1iは、第1編目領域30a,30bの代わりに、第1編目領域30a,30bと同様に第1編目3により構成された第1編目領域30mを備えている。また、上肢用編地1iは、第2編目領域40a,40bの代わりに、第2編目領域40a,40bと同様に第2編目4により構成された第2編目領域40xを備えている。
第9の実施の形態における第2編目領域40xは、第8の実施の形態における第1編目領域30kと同様に、上肢の関節の位置に応じて位置が決定されているとともに、上肢の関節の外側(肘)周辺部のみを円状に取り囲むように形成されている。
すなわち、第9の実施の形態における上肢用編地1iは、第8の実施の形態における上肢用編地1hと異なり、第2編目4の位置が上肢の関節の位置である。第2編目領域40xは、第2編目4で構成されているため、第1編目領域30mに比べて、編目が詰まっており、強度が高い。したがって、第9の実施の形態における上肢用編地1iは、肘関節部位を補強できるので、破損しにくい被服を提供できる。
なお、比較的強度の高い第2編目4によって保護するのは、被服そのものに限定されるものではない。肘部は比較的頻繁に外部の物体と接触するが、上肢用編地1iは、接触時の外力から肘部そのものを保護することもできる。また、上肢の怪我の位置を第2編目領域40xの位置として決定し、接触等によって当該怪我がさらに悪化することを防止してもよい。
<10. 第10の実施の形態>
第1編目3および第2編目4の位置を決定するときに基準となる体組織は、上記実施の形態に示した例に限定されるものではない。
図17は、第10の実施の形態におけるサポーター10jを示す図である。図17の(a)は、サポーター10jを着用した人体の右腕を背面から観察した図である。また、図17の(b)は、サポーター10jを着用した人体の右腕を前面から観察した図である。さらに、図17の(c)は、サポーター10jを着用した人体の右腕を右側面から観察した図である。
第10の実施の形態におけるサポーター10jは、上肢用編地1aの代わりに、上肢用編地1jを用いている点が、第1の実施の形態におけるサポーター10aと異なっている。
上肢用編地1jは、第1編目領域30a,30bの代わりに、第1編目領域30a,30bと同様に第1編目3により構成された第1編目領域30nを備えている。また、上肢用編地1jは、第2編目領域40a,40bの代わりに、第2編目領域40a,40bと同様に第2編目4により構成された第2編目領域41a,41b,41c,41d,41e,41f,41g,41h,41i,41j,41k,41m,41n,41p,41q,41r,41s,41t,41uを備えている。
第10の実施の形態における第2編目領域41aないし41uは、上肢の経穴(ツボ)の位置に応じて位置が決定されている。より詳細には、第2編目領域41aは「小海」の経穴に、第2編目領域41bは「支正」の経穴に、第2編目領域41cは「養老」の経穴に対応した位置に決定されている。また、第2編目領域41dは「青霊」の経穴に、第2編目領域41eは「少海」の経穴に、第2編目領域41fは「霊道」の経穴に対応した位置に決定されている。また、第2編目領域41gは「通里」の経穴に、第2編目領域41hは「陰げき」の経穴に、第2編目領域41iは「神門」の経穴に対応した位置に決定されている。また、第2編目領域41jは「臂臑」の経穴に、第2編目領域41kは「手理」の経穴に、第2編目領域41mは「肘りょう」の経穴に対応した位置に決定されている。また、第2編目領域41nは「曲池」の経穴に、第2編目領域41pは「手三里」の経穴に、第2編目領域41qは「上廉」の経穴に対応した位置に決定されている。さらに、第2編目領域41rは「下廉」の経穴に、第2編目領域41sは「温溜」の経穴に、第2編目領域41tは「偏歴」の経穴に、第2編目領域41uは「陽谿」の経穴に対応する位置に決定されている。
一方で、上記以外の部位は、第1編目領域30nによって被われている。
これにより、第1編目領域30nとの着圧の差によって、各経穴を刺激することができる。特に、上肢用編地1jは、一目単位で第2編目4の位置が決定されているため、比較的小さな対象である経穴ごとに、着圧を加える領域を形成できる。なお、サポーター10jは、第2編目4によって加えられる着圧によって経穴を刺激するだけでなく、編目のサイズの大小によって各経穴の位置を着用者に知らせるという効果もある。したがって、第2編目4の位置を、例えば着用者自身が指圧することにより、容易に、かつ、効果的にツボを刺激することができる。
なお、経穴の位置、数、種類は、ここに示したものに限定されるものではない。また、ここに列挙された経穴のすべてに対応しなければならないわけでもない。例えば、刺激する経穴がいずれか1つだけであってもよいし、効果の類似する経穴に絞って対応していてもよい。
<11. 第11の実施の形態>
上記実施の形態では、第1編目3により構成される第1編目領域と、第2編目4により構成される第2編目領域とによって、2段階の着圧値の変化を設ける例を説明した。しかし、一目単位で第1編目3および第2編目4の位置を決定することによって、擬似的に、3段階以上の着圧値の異なる領域を形成することも可能である。
図18は、第11の実施の形態におけるサポーター10kを示す図である。図18は、サポーター10kを着用した人体の右腕を右側面から観察した図である。
第11の実施の形態におけるサポーター10kは、上肢用編地1aの代わりに、上肢用編地1kを用いている点が、第1の実施の形態におけるサポーター10aと異なっている。
上肢用編地1kは、第1編目領域30a,30bの代わりに、第1編目領域30a,30bと同様に第1編目3により構成された第1編目領域30pを備えている。また、上肢用編地1kは、第2編目領域40a,40bの代わりに、第2編目領域40a,40bと同様に第2編目4により構成された第2編目領域41v,41w,41x,41yを備えている。
さらに、上肢用編地1kは、第1編目3と第2編目4とが実質的に均一な比率で混在する第1混在編目領域50、第2混在編目領域51、第3混在編目領域52a,52bを備える。
図19は、第1混在編目領域50、第2混在編目領域51および第3混在編目領域52a,52bの編目パターンを例示する図である。図19の(a)は、第1混在編目領域50の編目パターンを示す。また、図19の(b)は、第2混在編目領域51の編目パターンを示す、さらに、図19の(c)は、第3混在編目領域52a,52bの編目パターンを示す。
図19において、小さな正方形で囲まれた領域が1つの編目の位置を示す。したがって、図19では、8個×8個の編目で構成された領域について例示している。また、図19において、斜線によるハッチングを施した編目は第2編目4が配置される編目であり、ハッチングのない編目は第1編目3が配置される編目である。
第1混在編目領域50は、図19の(a)に示す編目パターンが繰り返されることにより、第1編目3と第2編目4とが混在する領域である。言い換えれば、図19の(a)に示す8個×8個の編目パターンが、第1混在編目領域50における基準編目パターンとなっている。このように、基準編目パターンが繰り返されて配置されていることにより、第1混在編目領域50内において、第1編目3と第2編目4との存在比率は実質的(巨視的)に均一化されている。本実施の形態における第1混在編目領域50は、第1編目3と第2編目4とが43:21(近似的には、2:1)の比率で混在している。
第2混在編目領域51は、図19の(b)に示す編目パターンが繰り返されることにより、第1編目3と第2編目4とが混在する領域である。すなわち、図19の(a)に示す8個×8個の編目パターンが、第2混在編目領域51における基準編目パターンとなっている。このように、基準編目パターンが繰り返されて配置されていることにより、第2混在編目領域51内においても、第1編目3と第2編目4との存在比率は実質的に均一化されている。本実施の形態における第2混在編目領域51は、第1編目3と第2編目4との比率が1:1となっている。
第3混在編目領域52a,52bは、図19の(c)に示す編目パターンが繰り返されることにより、第1編目3と第2編目4とが混在する領域である。すなわち、図19の(c)に示す8個×8個の編目パターンが、第3混在編目領域52a,52bにおける基準編目パターンとなっている。このように、基準編目パターンが繰り返されて配置されていることにより、第3混在編目領域52a,52b内においても、第1編目3と第2編目4との存在比率は実質的に均一化されている。本実施の形態における第3混在編目領域52a,52bは、第1編目3と第2編目4との比率が21:43(近似的には、1:2)となっている。
このことから、第11の実施の形態における上肢用編地1kでは、第1編目3と第2編目4とが混在する混在編目領域において、第1混在編目領域50、第2混在編目領域51および第2混在編目領域52a(52b)は、互いに異なる比率で第1編目3と第2編目4とが混在する。
第1混在編目領域50、第2混在編目領域51および第3混在編目領域52a(52b)を比較すると、第1編目3の比率が最も高い第1混在編目領域50が最も着圧値が低くなり、次いで第2混在編目領域51の着圧値が低くなる。すなわち、第11の実施の形態における混在編目領域の中では、第3混在編目領域52a(52b)の着圧値が最も高くなる。
さらに、第2編目4を含まない第1編目領域30pが最も着圧値が低い領域となり、逆に、第1編目3を含まない第2編目領域41v,41w,41x,41yが着圧値の最も高い領域となる。
以上のように、上肢用編地1kは、図19に示すような3つの基準編目パターンを定義して用いることにより、2種類のサイズの編目(第1編目3および第2編目4)だけで、擬似的に、5段階の着圧の異なる領域を形成しているのである。そして、基準編目パターンにおける第1編目3と第2編目4との比率を変化させることで、任意の着圧値の領域を形成することができる。
なお、、第1編目3と第2編目4との比率は、上記実施の形態に示した例に限定されるものではない。また、図18に示すように、第2編目領域41v,41wは、第1編目領域30pと隣接している部分を含んでいる。すなわち、上肢用編地1kは、着圧値を段階的に変化させる部分だけでなく、このような部分と第1ないし第10の実施例に示した例と同様に着圧値の低い領域から急に高い領域に変化させた部分との併用も可能である。
<12. 第12の実施の形態>
本発明の上肢用編地は、人体の上体を被う被服の袖部に用いることも可能である。
図20は、第12の実施の形態におけるウェア7aを示す図である。図20の(a)は、ウェア7aを着用した人体の右腕を背面から観察した図である。また、図20の(b)は、ウェア7aを着用した人体の右腕を前面から観察した図である。さらに、図20の(c)は、ウェア7aを着用した人体の右腕を右側面から観察した図である。
第12の実施の形態におけるウェア7aは、スリーブ(袖部)70、胴体部71、および、縫い代72を備えており、人体の上体を被う被服である。
スリーブ70は、上肢用編地11および第2アンカー部6を備えており、第2アンカー部6の反対側の端部は、ウェア7aの縫い代72に、縫製により取り付けられている。なお、図20において図示を省略しているが、スリーブ70にも縫い代72と縫い合わされるための縫い代が備えられている。
上肢用編地11は、編糸2によって形成された第1編目3および第2編目4により構成されている。図20において、第1編目3および第2編目4の配置(分布)は図示を省略しているが、上記実施の形態における上肢用編地1aないし1kにおける配置を適宜適用してもよいし、他の配置としてもよい。
このように、ウェア7aは、袖部に上肢用編地11を備えるスリーブ70を採用することにより、上記実施の形態と同様の効果を得ることができる。
<13. 第13の実施の形態>
人体の上体を被う被服に本発明に係る上肢用編地を取り付ける手法は、第12の実施の形態に示した手法に限定されるものではない。
図21は、第13の実施の形態におけるウェア7bを示す図である。図21の(a)は、ウェア7bを着用した人体の右腕を背面から観察した図である。また、図21の(b)は、ウェア7bを着用した人体の右腕を前面から観察した図である。さらに、図21の(c)は、ウェア7bを着用した人体の右腕を右側面から観察した図である。
第13の実施の形態におけるウェア7bは、スリーブ(袖部)73、胴体部74、および、取付部75を備えており、人体の上体を被う被服である。
スリーブ73は、上肢用編地12および第2アンカー部6を備えているとともに、第2アンカー部6の反対側の端部に取付部76を備えている。
取付部75および取付部76は、例えば、面ファスナー、ファスナー、ボタン、あるいは、ホックなどを備えており、互いに取付が可能である。もちろん、互いに取付が可能であれば、これらの構成に限定されるものではない。なお、図21においては説明の都合上、取付部75および取付部76は離間した状態で示しているが、通常、ウェア7bはスリーブ73を胴体部74に取り付けてから着用されるものである。
上肢用編地12は、編糸2によって形成された第1編目3および第2編目4により構成されている。図21においても、第1編目3および第2編目4の配置(分布)は図示を省略しているが、上記実施の形態における上肢用編地1aないし1kにおける配置を適宜適用してもよいし、他の配置としてもよい。
このように、ウェア7bは、袖部に上肢用編地12を備えるスリーブ73を採用することにより、上記実施の形態と同様の効果を得ることができる。
また、第13の実施の形態におけるウェア7bは、スリーブ73を着脱することが可能である。
<14. 変形例>
以上、本発明の好適な実施の形態について説明してきたが、上記好適な実施の形態は本質的に例示であって、本発明は上記好適な実施の形態に限定されるものではなく、様々な変形が可能である。
例えば、第1編目3と第2編目4とにおける編目のサイズの比率は、図3に示した例に限定されない。
また、編糸2の素材や形状(例えば断面形状)、構成(例えば芯部材に何らかのコーティングが施された構成)等は特に限定されるものではない。ただし、本発明の効果を高めるためには、伸縮性のある糸であることが好ましい。また、例えば、編糸2として、DCY(Double Covered Yarn)やFTY(Filament Twisted Yarn)に替えることにより、同じ形状、同じサイズの編目でも着圧値を変化させることもできる。
また、上記実施の形態では、編糸2のみで構成される例を示したが、着圧を高めたい箇所に増糸や添え糸を用いて編糸2と併用してもよい。その場合、着用感は従来通りとなるが、従来に比べて着圧差を大きくすることができる。
また、上記実施の形態では、第1編目3および第2編目4は実質的に同じ編目形状の例について説明した。ただし、第1編目3の編目形状と、第2編目4の編目形状とが互いに異なっていてもよい。あるいは、異なる編目形状の他の編目と混在してもよい。例えば、平編、フロート編、メッシュ編、タック編、それらとの混合であってもよい。その場合は、編目形状が変化することにより、段差の形成助長されるため、着心地は多少低下する場合がある。
また、上肢の血管の位置に応じて、第1編目3または第2編目4のうちの少なくともいずれかの位置を決定してもよい。その場合は、例えば、動脈への圧迫を抑制することができる。すでに説明したように、本発明によれば、小さな非着圧領域(第1編目3により構成される領域)を形成することも容易にできるので、表皮近傍に血管が存在する箇所に、必要最小限の小さな非着圧領域を設けて、血流を阻害しないようにしつつ、他の広い範囲に着圧を加えることも可能である。
また、上記実施の形態では、説明の都合上、上肢のうちの右腕についてのみ説明したが、本発明は右腕にのみ適用されるものではなく、左腕であってもよい。