以下に、図面を参照しながら本発明を実施するための複数の形態を説明する。各形態において先行する形態で説明した事項に対応する部分には同一の参照符号を付して重複する説明を省略する場合がある。各形態において構成の一部のみを説明している場合は、構成の他の部分については先行して説明した形態と同様とする。実施の各形態で具体的に説明している部分の組合せばかりではなく、特に組合せに支障が生じなければ、実施の形態同士を部分的に組み合せることも可能である。
(第1の実施形態)
本発明を適用した第1の実施形態について、図1〜図16を参照して説明する。
図1に示すように、車両用空調装置1は、ヒートポンプサイクル10、空調ユニット30、および、制御手段である制御装置2等を備えている。ヒートポンプサイクル10は、車室内への送風空気の温度を調整する蒸気圧縮式のヒートポンプサイクルである。空調ユニット30は、ヒートポンプサイクル10によって温度調整された送風空気を車室内へ吹き出す。制御装置2は、車両用空調装置1の各種構成機器の作動を制御する所謂エアコンECUである。
ヒートポンプサイクル10は、送風空気を冷却して車室内を冷房する冷房モード(冷房運転)の冷媒回路と、送風空気を加熱して車室を暖房する暖房モード(暖房運転)の冷媒回路とを切替え可能に構成されている。図2では、暖房モードにおける冷媒の流通部分を実線で示し、冷媒の流通が中止された部分を破線で示している。また、図3では、冷房モードにおける冷媒の流通部分を実線で示し、冷媒の流通が中止された部分を破線で示している。
ヒートポンプサイクル10は、圧縮機11、室内凝縮器12(室内熱交換器に相当)、室外熱交換器13、室内蒸発器14、アキュムレータ15、暖房用膨張弁21(減圧手段に相当)、冷房用膨張弁22、電磁弁23、および逆止弁24等を備えている。
圧縮機11は、吸入した冷媒を圧縮して吐出する流体機械である。室内凝縮器12は、送風空気を加熱する加熱用熱交換器である。室内蒸発器14は、送風空気を冷却する冷却用熱交換器である。暖房用膨張弁21および冷房用膨張弁22は、冷媒を減圧膨張させる減圧装置である。電磁弁23は、冷房モードの冷媒回路と、暖房モードの冷媒回路とを切り替える冷媒回路切替手段である。
ヒートポンプサイクル10では、例えば、冷媒としてHFC系冷媒(具体的には、R134a)を採用しており、高圧側冷媒圧力が冷媒の臨界圧力を超えない蒸気圧縮式の亜臨界冷凍サイクルを構成している。
圧縮機11は、例えば車室外となる車両のボンネット内に配置され、ヒートポンプサイクル10において冷媒を吸入し、圧縮して吐出し、吐出容量が固定された固定容量型の圧縮機構を電動モータにて駆動する電動圧縮機として構成されている。固定容量型の圧縮機構としては、具体的に、スクロール型圧縮機構、ベーン型圧縮機構等の各種圧縮機構を採用することができる。
電動モータは、例えばインバータから出力される交流電圧によって、その回転数が制御される交流モータである。インバータは、制御装置2から出力される制御信号に応じた周波数の交流電圧を出力する。この回転数制御出力によって、圧縮機11の冷媒吐出能力が変更される。
圧縮機11の吐出口側には、室内凝縮器12の冷媒入口側が接続されている。室内凝縮器12は、空調ユニット30において車室内へ送風される送風空気の空気通路を形成する空調ケース31(空調ダクトに相当)内に配置されて、その内部を流通する冷媒と送風空気とを熱交換させることで送風空気を加熱する加熱用熱交換器である。
室内凝縮器12の冷媒出口側には、暖房モード時に冷媒を減圧させる暖房用膨張弁21を介して室外熱交換器13の冷媒入口側が接続されている。暖房用膨張弁21は、例えば、全開機能付き電気式膨張弁である。暖房用膨張弁21は、全開機能付き電気式膨張弁に限定されるものではない。暖房用膨張弁21として、例えば、全開機能のない電気式膨張弁と、この電機式膨張弁と並列に設けられた開閉弁とで構成してもかまわない。
室外熱交換器13は、ボンネット内に配置されて、内部を流通する冷媒と室外ファン13aから送風された車室外の空気(外気)とを熱交換させる。室外熱交換器13は、暖房運転時には、低圧冷媒を蒸発させて吸熱作用を発揮する蒸発器として機能する。室外熱交換器13は、冷房運転時には、高圧冷媒を放熱させる放熱器として機能する。
室外ファン13aは、制御装置2から出力される制御電圧によって回転数(送風能力)が制御される電動式送風機である。室外熱交換器13の冷媒出口側には、冷房モード時に冷媒を減圧させる冷房用膨張弁22を介して室内蒸発器14の冷媒入口側が接続されている。
冷房用膨張弁22としては、例えば、全閉機能付き電気式膨張弁等の可変絞り機構を用いることができる。また、冷房用膨張弁22は、冷房モード時に冷媒を減圧させる機能を発揮できれば、これに限定されるものではない。冷房用膨張弁22は、全閉機能のない電気式膨張弁であってもよい。また、冷房用膨張弁22は、可変絞りに限定されることなく、オリフィス、キャピラリチューブ等の固定絞りを採用することもできる。
室外熱交換器13の冷媒出口側と室内蒸発器14の冷媒入口側とを繋ぐ冷媒通路には、逆止弁24が設けられている。逆止弁24は、室外熱交換器13の冷媒出口から室内蒸発器14の冷媒入口への冷媒の流通を許容し、逆方向への冷媒の流通を禁止する。
室外熱交換器13の冷媒出口側には、逆止弁24、冷房用膨張弁22および室内蒸発器14をバイパスする通路に電磁弁23が設けられている。電磁弁23は、冷房モードにおける冷媒回路、暖房モードにおける冷媒回路を切り替える冷媒回路切替手段を構成し、制御装置2から出力される制御信号によって、その作動が制御される開閉弁である。具体的には、電磁弁23は、冷房モード時に閉じられ、暖房モード時に開放される。
なお、電磁弁23が開いた状態で冷媒が電磁弁23を通過する際に生じる圧力損失は、電磁弁23が閉じた状態で冷媒が冷房用膨張弁22を通過する際に生じる圧力損失に対して極めて小さい。したがって、冷房用膨張弁22が全閉機能を有していなくても、電磁弁23が開いた状態では、室外熱交換器13から流出した冷媒のほぼ全流量が電磁弁23を通過してアキュムレータ15側へ流れる。
室内蒸発器14は、空調ケース31内のうち、室内凝縮器12の送風空気流れの上流側に配置されて、その内部を流通する冷媒と送風空気とを熱交換させて送風空気を冷却する冷却用熱交換器である。室内蒸発器14の冷媒出口側には、アキュムレータ15の入口側が接続されている。アキュムレータ15は、内部に流入した冷媒の気液を分離して、サイクル内の余剰冷媒を蓄える気液分離器である。さらに、アキュムレータ15の気相冷媒出口には、圧縮機11の吸入口側が接続されている。
次に、空調ユニット30について説明する。空調ユニット30は、例えば、車室内最前部のインストルメントパネルの内側に配置されている。空調ユニット30は、その外殻を形成する空調ケース31内に、送風機32、室内蒸発器14、室内凝縮器12、エアミックスドア34等を収容する。空調ケース31は、ある程度の弾性を有し、強度的にも優れた樹脂(例えば、ポリプロピレン)にて成形されており、その内部に車室内へ送風される送風空気の空気通路を形成している。空調ケース31の送風空気流れ最上流側には、ケース内へ車室内の空気(内気)と外気とを切替導入する内外気切替装置33が配置されている。
内外気切替装置33は、空調ケース31内へ内気を導入させる内気導入口及び外気を導入させる外気導入口の開口面積を、内外気切替ドアによって連続的に調整して、内気の風量と外気の風量との風量割合を連続的に変化させる。内外気切替ドアは、内外気切替ドア用の電動アクチュエータによって駆動される。この電動アクチュエータは、制御装置2から出力される制御信号によって、その作動が制御される。
内外気切替装置33の空気流れ下流側には、内外気切替装置33を介して吸入した空気を車室内へ向けて送風する送風機32が配置されている。送風手段である送風機32は、例えば、遠心多翼ファンを電動モータにて駆動する電動送風機であって、制御装置2から出力される制御電圧によって回転数(送風量)が制御される。
送風機32の空気流れ下流側には、室内蒸発器14および室内凝縮器12が、送風空気の流れに対して、室内蒸発器14、室内凝縮器12の順に配置されている。空調ケース31内には、室内蒸発器14を通過後の送風空気のうち、室内凝縮器12を通過させる風量と室内凝縮器12を通過させない風量との風量割合を調整するエアミックスドア34が配置されている。エアミックスドア34は、エアミックスドア駆動用の電動アクチュエータによって駆動される。この電動アクチュエータは、制御装置2から出力される制御信号によって、その作動が制御される。
本実施形態では、暖房モード時には、図2に示すように、室内蒸発器14を通過後の送風空気の全風量を室内凝縮器12へ流入させる暖房位置に、エアミックスドア34を変位させる。したがって、室内蒸発器14を通過後の送風空気は、室内凝縮器12を通過して温風通路を流れ、複数の吹出用の開口部の上流側に形成されたエアミックス部35に至る。冷房モード時には、図3に示すように、室内蒸発器14を通過後の送風空気の全風量を室内凝縮器12を迂回させる冷房位置に、エアミックスドア34を変位させる。したがって、室内蒸発器14を通過後の送風空気は、冷風通路を流れ、複数の吹出用の開口部の上流側に形成されたエアミックス部35に至る。
空調ケース31の空気流れ最下流部には、室内凝縮器12を通過した送風空気あるいは室内凝縮器12を迂回した送風空気を、空調対象空間である車室内へ吹き出すための開口(詳細図示を省略)が設けられている。この開口としては、車両前面窓ガラス内側面に向けて空調風を吹き出すデフロスタ開口部、車室内の乗員の上半身に向けて空調風を吹き出すフェイス開口部、乗員の足元に向けて空調風を吹き出すフット開口部が設けられている。これらの開口部の空気流れ下流側は、それぞれ空気通路を形成するダクトを介して、車室内に設けられたセンターフェイス吹出口、サイドフェイス吹出口等からなるフェイス吹出口、フット吹出口およびデフロスタ吹出口(図示を省略)に接続されている。
したがって、冷房モード時に、エアミックスドア34の開度を調整して、室内蒸発器14にて冷却された送風空気の一部を室内凝縮器12で再加熱することで、吹出口から車室内へ吹き出される送風空気の温度を調整するようにしてもよい。
また、デフロスタ開口部、フェイス開口部およびフット開口部の空気流れ上流側には、それぞれ、デフロスタ開口部の開口面積を調整するデフロスタドア、フェイス開口部の開口面積を調整するフェイスドア、フット開口部の開口面積を調整するフットドアが配置されている。
フェイスドア、デフロスタドアおよびフットドアは、吹出口モードを切替える吹出口モード切替手段を構成するものであって、リンク機構等を介して、吹出口モードドア駆動用の電動アクチュエータに連結されて連動して回転操作される。なお、この吹出口モードドア駆動用の電動アクチュエータも、制御装置2から出力される制御信号によって、その作動が制御される。
また、吹出口モード切替手段によって切り替えられる吹出口モードとしては、フェイスモード、バイレベルモード、フットモード、およびフットデフロスタモードがある。フェイスモードは、センターフェイス吹出口等から車室内乗員の上半身に向けて空気を吹き出す。バイレベルモードは、センターフェイス吹出口とフット吹出口の両方を開口して車室内乗員の上半身と足元に向けて空気を吹き出す。フットモードは、フット吹出口を全開するとともにデフロスタ吹出口を小開度だけ開口して、フット吹出口から主に空気を吹き出す。フットデフロスタモードは、フット吹出口及びデフロスタ吹出口を同程度開口して、フット吹出口及びデフロスタ吹出口の双方から空気を吹き出す。さらに、乗員が図示を省略した操作パネルに設けられた吹出モード切替スイッチをマニュアル操作することによって、デフロスタ吹出口を全開してデフロスタ吹出口からフロント窓ガラス内面に空気を吹き出すデフロスタモードとすることもできる。
次に、電気制御部について説明する。制御装置2は、CPU、ROM及びRAM等を含む周知のマイクロコンピュータとその周辺回路とから構成されている。そして、そのROM内に記憶された空調制御プログラムに基づいて各種演算、処理を行い、その出力側に接続された圧縮機11、暖房用膨張弁21、冷房用膨張弁22、電磁弁23、送風機32、上記した各種電動アクチュエータ等の作動を制御する。
制御装置2は、暖房運転時には、電磁弁23を開き、冷房用膨張弁22を閉じて、図2に示すようにヒートポンプサイクル10に冷媒を循環する。また、制御装置2は、冷房運転時には、電磁弁23を閉じ、暖房用膨張弁21を全開として、図3に示すようにヒートポンプサイクル10に冷媒を循環する。
制御装置2の入力側には、冷媒温度圧力センサ61、冷媒温度センサ62、吹出温度センサ63、室内温度センサ64等の空調制御用のセンサ群の検出信号が入力される。さらに、制御装置2の入力側には、車室内前部の計器盤付近の図示を省略した操作パネルに設けられた各種空調操作スイッチからの操作信号が入力される。
冷媒温度圧力センサ61は、室内凝縮器12から流出し暖房用膨張弁21へ流入する前の冷媒の温度および圧力を検出する。冷媒温度センサ62は、室外熱交換器13から流出する室外熱交換器出口における冷媒温度を検出する。吹出温度センサ63は、室内凝縮器12を通過直後の車室内へ吹き出される空気温度を検出する。室内温度センサ64は、車室内の空気温度を検出する。
制御装置2は、その出力側に接続された各種空調用構成機器を制御する制御手段が一体に構成された制御装置である。制御装置2は、室内蒸発器14で送風空気を冷却する冷房運転と、室内凝縮器12で送風空気を加熱する暖房運転とを制御することができる。
次に、上記構成に基づき車両用空調装置1の暖房運転時の作動について説明する。
図4に示すように、制御装置2は、暖房運転を開始すると、まず、車室内の温度を目標暖房温度に向けて上昇させる室温上昇運転モードを設定して室温上昇運転を行う(ステップ100)。
ステップ100を実行する室温上昇運転モードでは、制御装置2は、圧縮機11の回転数を、例えば許容最大回転数として、室内凝縮器12における空気加熱能力を大きくする。これに加え、送風機32による送風量を、例えば最大設定風量として、車両用空調装置1の暖房能力を大きくする。このとき、制御装置2は、暖房用膨張弁21の開度を、ヒートポンプサイクル10のCOP(成績係数)が最適となるように調節する。具体的には、制御装置2は、冷媒温度圧力センサ61が検出する冷媒の温度および圧力に基づいて、室内凝縮器12から流出する冷媒の過冷却度が目標過冷却度となるように、暖房用膨張弁21の開度を調節する。
制御装置2は、ステップ100を実行して室温上昇運転を行っているときには、室内温度センサ64の検出値に基づいて、車室内の温度が目標暖房温度に到達したか否かを監視している(ステップ150)。ステップ150において、車室内の温度が目標暖房温度に到達していないと判断した場合には、ステップ100へリターンする。ステップ150において、車室内の温度が目標暖房温度に到達したと判断した場合には、車室内の温度を目標暖房温度に維持する室温維持運転モードに設定を切り替える(ステップ200)。
制御装置2は、ステップ100による室温上昇運転モードからステップ200による室温維持運転モードへモード設定を切り替えるときには、以下のように圧縮機11、暖房用膨張弁21、および送風機32の制御状態を切り替える。
制御装置2は、車室内温度が目標暖房温度へ到達した時点の状態に対して、送風機32による送風量を所定風量にまで低下させる。制御装置2は、送風機32による送風量を、室温上昇運転モード時の送風量に比して、予め決められた所定の送風量にまで小とする。ここで、予め決められた所定の送風量とは、例えば運転者等のユーザが選択する目標風量レベルに対応して設定される予め決められた送風量である。例えばユーザが、空調装置の操作盤の操作により所定の風量レベルを選択している場合には、当該風量レベルに対応した送風量が予め決められた所定の送風量である。例えばユーザが、空調装置の操作盤の操作により自動運転モードを選択している場合には、制御装置2が車内外の環境条件等に基づいて演算して設定した風量レベルに対応した送風量が予め決められた所定の送風量である。
制御装置2は、送風機32による送風量を所定風量にまで低下させるとともに、車室内温度が目標暖房温度へ到達した時点の状態に対して、吹出温度センサ63が検出する吹出温度が所定温度A℃となるように圧縮機11の回転数を低下させる。制御装置2は、室温上昇運転モード時の回転数に比して、圧縮機11の回転数を、目標吹出温度に対応して決められる所定の回転数にまで低くする。
また、制御装置2は、室内凝縮器12から流出する冷媒の過冷却度が所定の目標過冷却度となるように、車室内温度が目標暖房温度へ到達した時点の状態に対して、暖房用膨張弁21の開度を下降させる。制御装置2は、室内凝縮器12から流出する冷媒の過冷却度が所定の目標過冷却度となるように、室温上昇運転モード時の開度に比して、暖房用膨張弁21の開度を、目標吹出温度に対応して決められる所定の開度にまで小とする。
ここで、暖房用膨張弁21の開度制御に用いる所定の目標過冷却度は、ステップ100において暖房用膨張弁21の開度制御に用いていた目標過冷却度と同一である。すなわち、室温上昇運転モードから室温維持運転モードへモード設定を切り替えるときには、室内凝縮器12から流出する冷媒の過冷却度が所定の目標過冷却度と一致した状態を維持するように、暖房用膨張弁21の開度を下降させる。
ステップ200における圧縮機11、暖房用膨張弁21、および送風機32の制御に関しては、後で詳述する。制御装置2は、ステップ200を実行して室温維持運転を行っているときには、圧縮機11の回転数が許容最大回転数に到達したか否かを監視している(ステップ250)。ステップ250において、圧縮機11の回転数が許容最大回転数に到達していないと判断した場合には、ステップ200へリターンする。ステップ250において、圧縮機11の回転数が許容最大回転数に到達したと判断した場合には、車室内へ吹き出す空気の温度を維持する温感維持運転モード(吹出温維持運転モード)に設定を切り替える(ステップ300)。
ステップ200、ステップ200からステップ300への運転モード切り替え、および、ステップ300における、圧縮機11、暖房用膨張弁21、および送風機32の制御に関して、以下に説明する。
まず、圧縮機11の回転数制御について説明する。図5に示すように、室温維持運転モード時には、制御装置2は、まず、吹出温度センサ63が検出する吹出温度が所定温度A℃となるように圧縮機11の回転数を設定する(ステップ221)。そして、吹出温度センサ63が検出する検出値に基づいて、吹出温度が所定温度A℃未満となったか否かを監視している(ステップ222)。ステップ222において、吹出温度が所定温度A℃を下回っていないと判断した場合には、ステップ221へリターンする。ステップ222において、吹出温度が所定温度A℃を下回ったと判断した場合には、吹出温度をA℃に維持するように圧縮機11の回転数を上昇させる(ステップ223)。
ステップ223を実行したら、圧縮機11の回転数が許容最大回転数に到達したか否か判断する(ステップ250)。ステップ250において圧縮機11の回転数が許容最大回転数に到達していないと判断した場合には、ステップ222へリターンする。ステップ250において圧縮機11の回転数が許容最大回転数に到達したと判断した場合には、例えば暖房運転を停止するまで、圧縮機11の回転数を許容最大回転数に固定する(ステップ320)。
次に、暖房用膨張弁21の開度制御について説明する。図6に示すように、制御装置2は、室温維持運転モードを開始するときには、まず、ヒートポンプサイクル10のCOPが最適となるように暖房用膨張弁21の弁開度を調節する(ステップ231)。具体的には、冷媒温度圧力センサ61が検出する冷媒の温度および圧力に基づいて、室内凝縮器12から流出する冷媒の過冷却度が目標過冷却度となるように、暖房用膨張弁21の開度を調節する。この目標過冷却度は、室温上昇運転モード時の目標過冷却度と同一である。すなわち、室温上昇運転モードから室温維持運転モードへのモード切り替えを行っても、まずは、室温上昇運転モード時から継続してステップ231を実行することになる。
ステップ231を実行したら、冷媒温度センサ62の検出値に基づいて、室外熱交換器13の出口冷媒温度が所定温度B℃未満になったか否かを判断する(ステップ232)。所定温度B℃は、例えば外気温度に関連した温度として設定することができる。ステップ232は、室外熱交換器13の温度の関連物理量に基づいて、室外熱交換器13に所定量の着霜がある所定着霜状態であるか否か判定する着霜判定手段に相当する。
ステップ232において出口冷媒温度がB℃以上であると判断した場合には、ステップ231へリターンする。ステップ232において出口冷媒温度がB℃未満になった(B℃を下回った)と判断した場合には、室外熱交換器13の出口冷媒温度をB℃に維持するように暖房用膨張弁21の弁開度を上昇させる(ステップ233)。
そして、暖房運転を停止するまで(ステップ400)、ステップ232およびステップ233を継続して実行する。ステップ231〜ステップ233までの制御が、図4におけるステップ230およびステップ330の膨張弁開度制御に相当する。
次に、送風機32の送風量制御について説明する。図7に示すように、室温維持運転モード時には、制御装置2は、まず、送風機32の送風量を所定送風量とする(ステップ210)。この所定送風量は、設定可能な最大風量よりも低い風量である。そして、圧縮機11の回転数が許容最大回転数に到達したか否かを監視する(ステップ250)。
ステップ250において圧縮機11の回転数が許容最大回転数に到達していないと判断した場合には、ステップ210へリターンする。ステップ250において圧縮機11の回転数が許容最大回転数に到達したと判断した場合には、ステップ311へ進む。
ステップ311では、吹出温度センサ63が検出する検出値に基づいて、吹出温度が所定温度A℃未満となったか否かを監視する。ここで、所定温度A℃は、前述の圧縮機回転数制御のステップ220で採用していた所定温度A℃である。ステップ311で、吹出温度が所定温度A℃未満になった(A℃を下回った)と判断した場合には、吹出温度をA℃に維持するように送風機32の送風量を低下させる(ステップ312)。
ステップ312を実行したら、送風機32の送風量が最低設定風量Cm3/h以下となったか否かを判断する(ステップ313)。すなわち、送風機32の送風量が最低設定風量に到達したか否かを判断する。ステップ313において送風機32の送風量がCm3/hに到達していないと判断した場合には、ステップ311へリターンする。ステップ313において送風機32の送風量がCm3/hに到達したと判断した場合には、例えば暖房運転を停止するまで、送風機32の送風量を最低設定風量Cm3/hに固定する(ステップ314)。
制御装置2が、暖房運転時には、上述したように圧縮機11、暖房用膨張弁21、および送風機32を制御することにより、車両用空調装置1は、以下に説明するように作動する。
図8に示すように、暖房運転が開始されると、車室内の温度を目標暖房温度に向けて上昇させる室温上昇運転モードが設定され室温上昇運転が行われる。そして、車室内の温度が目標暖房温度に到達すると、運転モードが室温維持運転モードに切り替えられる。室温維持運転モードが設定され室温維持運転を行っているときに、圧縮機11の回転数が許容最大回転数に到達してしまい、室温維持が困難な状態となったときには、運転モードが温感維持運転モードに切り替えられる。温感維持運転モードが設定され温感維持運転を行っているときには、車室内の温度は徐々に低下するものの、車室内への吹出温度は維持され、低下することがない。
図9に示すように、室内温度が目標暖房温度に到達して室温上昇運転モードから室温維持運転モードへのモード切り替え時には、圧縮機11、送風機32、および暖房用膨張弁21は、以下に述べるように制御される。
圧縮機11は、切り替え判定時よりも回転数が低下される。圧縮機11の回転数は、所定の吹出温度になるように制御される。圧縮機11の回転数は、室温上昇運転モード時の回転数に比して、目標吹出温度に対応して決められる所定の回転数にまで低くなる。このとき送風機32は切り替え判定時よりも送風量が低下される。送風機32の風量は所定の風量になるように制御される。送風機32による送風量は、室温上昇運転モード時の送風量に比して、予め決められた所定の送風量にまで小となる。また、このとき暖房用膨張弁21は、切り替え判定時よりも弁開度が絞られる。暖房用膨張弁21の弁開度は、室内凝縮器12から流出する冷媒の過冷却度が所定の過冷却度になるように制御される。暖房用膨張弁21の開度は、室温上昇運転モード時の開度に比して、目標吹出温度に対応して決められる所定の開度にまで小となる。
室温上昇運転モード時には、室温上昇速度を優先させるため大きな暖房能力が必要である。これに対し、室温維持運転モード時には、暖房に必要な暖房能力が小さくして室温を維持する。このように暖房能力を抑制することで消費電力を抑えることができる。
室温維持運転モード時には、室温上昇運転モード時から継続して室外熱交換器13への着霜が進行している。このような状態でCOPが最適となるようにヒートポンプサイクル10の運転を行っていると、室外熱交換器13への着霜が促進され、室外熱交換器13の出口冷媒温度が所定温度(例えば前述したB℃)に到達してしまう。
室外熱交換器13の出口冷媒温度が所定温度にまで低下した場合には、室温維持を行いつつ着霜を抑制する運転に切り替えられる。すなわち、室温維持運転モード中に、室温維持COP優先運転から室温維持着霜抑制運転に切り替えられる。
室外熱交換器出口冷媒温度が所定温度に到達して室温維持COP優先運転から室温維持着霜抑制運転への切り替え時には、圧縮機11、送風機32、および暖房用膨張弁21は、以下に述べるように制御される。
圧縮機11は、切り替え判定時よりも回転数が上昇される。圧縮機11の回転数は、所定の吹出温度になるように制御される。圧縮機11の回転数は、室外熱交換器13出口冷媒温度が所定温度に到達したときの、目標吹出温度に対応して決められる所定の回転数に比して、高くされる。このとき送風機32の送風量は変更されない。送風機32の送風量は、予め決められた所定の送風量を維持する。送風機32の送風量は、例えば運転者が選択する目標風量レベルに対応して設定される予め決められた送風量を維持する。送風機32の送風量は維持され、室内凝縮器12における熱交換量が維持される。圧縮機11の回転数制御は、車室内への吹出温度を低下させなければよく、例えば吹出温度を若干上昇させるものであってもよい。
また、このとき暖房用膨張弁21は、切り替え判定時から弁開度が徐々に開かれる。暖房用膨張弁21の弁開度は室外熱交換器出口冷媒温度が所定温度となるように(例えばB℃を維持するように)制御される。暖房用膨張弁21の弁開度は、室外熱交換器13出口冷媒温度が所定温度に到達したときの、目標吹出温度に対応して決められる所定の弁開度に比して、大とされる。暖房用膨張弁21の弁開度制御は、室外熱交換器13の温度を低下させなければよく、例えば室外熱交換器13の温度の若干上昇させるものであってもよい。
室温維持着霜抑制運転への切り替え後は、室外熱交換器出口冷媒温度が所定温度以下にならないように、圧縮機11回転数、および、暖房用膨張弁21の絞り量が調整される。これにより、車室内の温度を維持する暖房能力を発揮しつつ、室外熱交換器13への着霜を抑制する(着霜の進行を遅らせる)ことができる。
室温維持着霜抑制運転を行っていくと、暖房用膨張弁21の開度が徐々に上昇するとともに、圧縮機11の回転数も徐々に上昇していく。圧縮機11の回転数が許容最大回転数に到達してしまい、回転数上昇が困難になったときには、運転モードが室温維持運転モードから温感維持運転モードへ切り替えられる。
圧縮機回転数が許容最大回転数に到達して室温維持運転モードから温感維持運転モードへの切り替え時には、圧縮機11、送風機32、および暖房用膨張弁21は、以下に述べるように制御される。
圧縮機11の回転数は変更されない。圧縮機11の回転数は、許容最大回転数が維持される。このとき、送風機32の送風量は、切り替え判定時から徐々に低下される。送風機32の送風量は、車室内への吹出温度が所定吹出温度となるように(例えばA℃を維持するように)制御される。送風機32の送風量は、室温維持着霜抑制運転で設定されていた送風量に比して、小とされる。送風機32の送風量制御は、車室内への吹出温度を低下させなければよく、例えば吹出温度を若干上昇させるものであってもよい。
また、このとき暖房用膨張弁21は、切り替え判定時から弁開度が徐々に開かれる。暖房用膨張弁21の弁開度は室外熱交換器出口冷媒温度が所定温度となるように(例えばB℃を維持するように)制御される。暖房用膨張弁21の弁開度は、室温維持着霜抑制運転で設定されていた弁開度に比して、大とされる。暖房用膨張弁21の弁開度制御は、室外熱交換器13の温度を低下させなければよく、例えば室外熱交換器13の温度の若干上昇させるものであってもよい。
このように、室温維持運転モードから温感維持運転モードへの切り替え後は、室外熱交換器出口冷媒温度が所定温度以下にならないように、暖房用膨張弁21の絞り量、および、送風機32の送風量が調整される。これにより、車室内への吹出温度を維持しつつ、室外熱交換器13への着霜を抑制する(着霜の進行を遅らせる)ことができる。すなわち、室温維持着霜抑制運転から温感維持着霜抑制運転へ切り替えることができる。
上述の構成および作動によれば、制御装置2は、車室内の温度を目標暖房温度に維持するようにヒートポンプサイクル10に冷媒を循環する室温維持運転モード時に、室外熱交換器13が所定着霜状態に到達したと判定したときには、室温維持着霜抑制運転を行う。このとき、所定着霜状態を判定した時点の状態に対して、送風機32による送風量を維持しつつ、車室内への吹出温度を低下させないように圧縮機11の回転数を上昇させる。これらとともに、室外熱交換器13の温度が低下しないように暖房用膨張弁21の開度を上昇させる。
これによると、制御装置2は、暖房運転中に室温維持運転を行っているときに、室外熱交換器13に所定量の着霜がある状態に到達したと判定した場合には、室外熱交換器13の温度が低下しないように暖房用膨張弁21の開度を上昇させる。したがって、室外熱交換器13への着霜の進行を抑制することができる。また、これに合わせて、送風機32による送風量を維持しつつ、車室内への吹出温度を低下させないように圧縮機11の回転数を上昇させる。したがって、車室内への吹出風量および吹出温度を低下させずに、車室内の温度を維持する暖房運転を行なうことができる。これらにより、ユーザの不快感を防ぎつつ、室外熱交換器13の着霜を抑制することができる。
すなわち、制御装置2は、車室内の温度を目標暖房温度に維持するようにヒートポンプサイクル10に冷媒を循環する室温維持運転モード時に、室外熱交換器13が所定着霜状態に到達したと判定したときには、室温維持着霜抑制運転を行う。このとき、所定着霜状態を判定した時点の状態に対して、送風機32による、予め決められた所定の送風量を維持しつつ、目標吹出温度に対応して決められる所定の回転数に比して、圧縮機11の回転数を高くする。これらとともに、目標吹出温度に対応して決められる所定の開度に比して、暖房用膨張弁21の開度を大とする。
これによると、制御装置2は、暖房運転の室温維持運転を行っているときに、室外熱交換器13に所定量の着霜がある状態に到達したと判定された場合には、判定時点の目標吹出温度に対応して決められる所定の開度に比して、暖房用膨張弁21の開度を大とする。これに伴い、室外熱交換器13へ流入する冷媒の温度を上昇させて室外熱交換器13の温度低下を抑止することができる。したがって、室外熱交換器13への着霜の進行を抑制することが可能である。
ここで、暖房用膨張弁21の開度を大として室外熱交換器13の温度低下を抑止しただけでは、ヒートポンプサイクル10の暖房能力が低下してしまう。そこで、室外熱交換器13に所定量の着霜がある状態に到達したと判定された場合には、送風機32による送風量を予め決められた所定の送風量に維持しつつ、判定時点の目標吹出温度に対応して決められる所定の回転数に比して、圧縮機11の回転数を高くする。これに伴い、車室内への吹出風量を維持しつつ、ヒートポンプサイクル10の暖房能力の低下を抑制して車室内への吹出温度を低下を抑止することができる。したがって、車室内への吹出風量および吹出温度を低下させることなく、車室内の暖房を行なうことができる。これらにより、ユーザの不快感を防ぎつつ、室外熱交換器13の着霜を抑制することができる。
また、制御装置2は、室温維持着霜抑制運転中に、圧縮機11の回転数が許容最大回転数に到達した場合には、吹出温維持着霜抑制運転へ切り替える。吹出温維持着霜抑制運転では、許容最大回転数への到達時点の状態に対して、圧縮機11の回転数を維持しつつ、室外熱交換器13の温度が低下しないように暖房用膨張弁21の開度を上昇させる。これらとともに、車室内への吹出温度を低下させないように送風機32による送風量を低下させる。
これによると、制御装置2は、室温維持運転を行っているときに、圧縮機11回転数が許容最大回転数に到達してしまった場合には、圧縮機11回転数を許容最大回転数としたまま、室外熱交換器13の温度が低下しないように暖房用膨張弁21の開度を上昇させる。したがって、室外熱交換器13への着霜の進行を抑制することができる。また、これに合わせて、車室内への吹出温度を低下させないように送風機32による送風量を低下させる。したがって、車室内の温度維持は困難になるものの、車室内への吹出温度が低下することを抑止することができる。これらにより、室温維持が困難となってもユーザに向かって吹き出す空気の温度を低下させないことでユーザの不快感を防ぎつつ、室外熱交換器13の着霜を抑制することができる。
すなわち、制御装置2は、室温維持着霜抑制運転中に、圧縮機11の回転数が許容最大回転数に到達した場合には、吹出温維持着霜抑制運転へ切り替える。吹出温維持着霜抑制運転では、許容最大回転数への到達時点の状態に対して、圧縮機11の回転数を許容最大回転数に維持しつつ、室温維持着霜抑制運転で設定した開度に比して、暖房用膨張弁21の開度を大とする。これらとともに、室温維持着霜抑制運転で設定した送風量に比して、送風機32による送風量を小とする。
これによると、制御装置2は、室温維持着霜抑制運転を行っているときに、圧縮機11回転数が許容最大回転数に到達してしまった場合には、圧縮機11回転数を許容最大回転数に維持したまま、暖房用膨張弁21の開度を、室温維持着霜抑制運転で設定した開度に比して大とする。これにより、室外熱交換器13の温度低下を抑制して、室外熱交換器13への着霜の進行を抑制することができる。
ここで、圧縮機11の回転数を維持しつつ暖房用膨張弁21の開度を大として室外熱交換器13の温度低下を抑止しただけでは、ヒートポンプサイクル10の暖房能力が低下して吹出温度が低下してしまう。そこで、送風機32による送風量を、室温維持着霜抑制運転で設定した送風量に比して小とする。これにより、車室内の温度維持は困難になるものの、車室内への吹出温度が低下することを抑止することができる。これらにより、室温維持が困難となってもユーザに向かって吹き出す空気の温度を低下させないことでユーザの不快感を防ぎつつ、室外熱交換器13の着霜を抑制することができる。
また、制御装置2は、暖房運転を開始した直後は、車室内の温度を目標暖房温度に向けて上昇させる室温上昇運転モードを設定し、車室内の温度が目標暖房温度へ到達した場合に、室温維持運転モードへ設定を切り替える。
室温維持運転モードへ設定を切り替えるときには、目標暖房温度への到達時点の状態に対して、送風機32による送風量を所定風量にまで低下させるとともに、車室内への吹出温度が所定温度となるように圧縮機11の回転数を低下させる。これらとともに、室内凝縮器12から流出する冷媒の過冷却度が所定の目標過冷却度となるように、暖房用膨張弁21の開度を下降させる。
これによると、制御装置2は、暖房運転開始直後からは、まず、室温上昇運転で室温を上昇させ、車室内の温度が目標暖房温度へ到達した場合に、室温上昇運転から室温維持運転へモード切り替えを行う。このモード切り替えを行う際には、送風機32による送風量を所定風量にまで低下させるとともに、吹出温度が所定温度となるように圧縮機11の回転数を低下させる。また、室内凝縮器12から流出する冷媒の過冷却度が所定の目標過冷却度となるように、暖房用膨張弁21の開度を下降させる。これらにより、暖房運転を開始して室温上昇の必要がなくなったときには、効率が良好な状態で省エネルギー運転を行うことができる。
すなわち、制御装置2は、暖房運転を開始した直後は、車室内の温度を目標暖房温度に向けて上昇させる室温上昇運転モードを設定し、車室内の温度が目標暖房温度へ到達した場合に、室温上昇運転モードから室温維持運転モードへ設定を切り替える。
室温維持運転モードへ設定を切り替えるときには、目標暖房温度への到達時点の状態に対して、送風機32による送風量を、室温上昇運転モード時の送風量に比して、予め決められた所定の送風量にまで小とするとともに、室温上昇運転モード時の回転数に比して、圧縮機11の回転数を目標吹出温度に対応して決められる所定の回転数にまで低くする。これらとともに、室内凝縮器12から流出する冷媒の過冷却度が所定の目標過冷却度となるように、室温上昇運転モード時の開度に比して、暖房用膨張弁21の開度を、目標吹出温度に対応して決められる所定の開度にまで小とする。
これによると、制御装置2は、暖房運転開始直後からは、まず、室温上昇運転で室温を上昇させ、車室内の温度が目標暖房温度へ到達した場合に、室温上昇運転から室温維持運転へモード切り替えを行う。このモード切り替えを行う際には、室温上昇運転モード時の送風量に比して、送風機32による送風量を予め決められた所定の送風量にまで小とする。これに合わせて、室温上昇運転モード時の回転数に比して、圧縮機11の回転数を目標吹出温度に対応して決められる所定の回転数にまで低くする。したがって、車室内への吹出温度を目標吹出温度とすることができる。これに加えて、室温上昇運転から室温維持運転へモード切り替えを行う際には、室内凝縮器12から流出する冷媒の過冷却度が所定の目標過冷却度となるように、室温上昇運転モード時の開度に比して、暖房用膨張弁21の開度を目標吹出温度に対応して決められる所定の開度にまで小とする。これらにより、暖房運転を開始して室温上昇の必要がなくなったときには、効率が良好な状態で省エネルギー運転を行うことができる。
また、制御装置2は、暖房運転を開始した直後からCOP優先運転を行い、室外熱交換器13への着霜が所定量となる所定着霜状態を検出したときには、COP優先運転から着霜抑制運転に切り替える。しかしながら、着霜抑制運転を開始した後も、COPを徐々に低下させるように圧縮機11回転数および暖房用膨張弁21開度を制御している(図9参照)。したがって、着霜抑制のみを考慮してCOPを低下させた場合(図9に破線で示した比較例参照)よりも、累積COPを向上することができる。
また、従来から一般的であった、暖房運転開始時から圧縮機の回転数を比較的大きくし(例えば許容最大回転数とし)、膨張弁の開度も比較的大きくする、着霜抑制制御よりも、累積COPを大きく向上することができる。
上述した実施形態では説明を省略していたが、室外熱交換器13として、図10〜図13に示す熱交換器70を用いることができる。
熱交換器70は、冷媒RF、冷却水WT(冷媒へ熱を供給するための媒体に相当)、および空気ARの三者間の熱交換を提供する。熱交換器70は、冷媒RFと冷却水WTとの間、冷媒RFと空気ARとの間、および冷却水WTと空気ARとの間の熱交換を提供する。熱交換器70は、冷媒または冷却水を流通させる複数のチューブ、複数のチューブの両端に配置された集合タンクおよび分配タンクなどの部品を有する。
冷却水WTは、例えばハイブリッド車両のエンジン、電動発電機、インバータ回路、電池、制御回路等の外部熱源を冷却する冷却水である。冷却水WTは、例えば、外部熱源を冷却して適正な温度に保つための冷却回路を循環する熱運搬媒体である。
熱交換器70は、内部に冷媒を流通させる複数の冷媒チューブ16aを有している。冷媒チューブ16aは、空気から吸熱する冷媒RFが流される熱交換用のチューブである。冷媒チューブ16aは、長手方向に垂直な断面の形状が扁平形状の扁平チューブである。熱交換器70は、内部に冷却水を流通させる複数の水チューブ43a(媒体チューブに相当)も有している。水チューブ43aは、例えば着霜抑制や除霜のための熱を供給するための媒体が流される熱交換用のチューブである。水チューブ43aは、除霜のための媒体を流すための除霜媒体チューブとも呼ばれる。水チューブ43aは、長手方向に垂直な断面の形状が扁平形状の扁平チューブである。以下、冷媒チューブ16aと水チューブ43aとをチューブ16a、43aと呼ぶ場合がある。
複数のチューブ16a、43aは、それらの外表面の広い平坦面が、空気ARの流れに対してほぼ平行となるように配置されている。複数のチューブ16a、43aは、互いに所定の間隔を開けて配置されている。複数のチューブ16a、43aの周囲には、空気ARが流れるための空気通路16b、43bが形成されている。空気通路16b、43bは、放熱用空気通路および吸熱用空気通路の少なくともいずれかとして使われる。
複数のチューブ16a、43aは、空気ARの流れに直交する方向に列をなすように配置されている。さらに、複数のチューブ16a、43aは、空気ARの流れ方向に沿って多列をなすように配置されている。図11を参照して明らかなように、複数のチューブ16a、43aは、二列をなすように配置することができる。複数のチューブ16a、43aは、空気ARの流れ方向の上流側に位置する上流列と、上流列より下流側に位置する下流列とを形成するように配置されている。
図10および図11に示すように、熱交換器70は、いわゆるタンクアンドチューブ型の熱交換器である。冷媒チューブ16aおよび水チューブ43aは、空気ARの流れ方向に沿って2列をなすように配置されている。冷媒チューブ16aおよび水チューブ43aは、上流列および下流列の両方において、交互に配置されている。従って、吸熱用の空気通路16bと放熱用の空気通路43bとは、共有されている。共通化された通路16b、43bには、フィン50が配置されている。フィン50は、それに隣接するチューブ16a、43aに接合されている。複数のチューブ16a、チューブ43aと、複数のフィン50とが積層され、接合されることによって熱交換部71が形成されている。この熱交換部71は、冷媒RFと、冷却水WTと、空気ARとを含む複数、例えば3つの流体の間の熱交換を提供している。
複数のチューブ16a、チューブ43aの長手方向一端側、図中の下方には、冷媒および冷却水の集合または分配のための第1タンク16cが配置されている。第1タンク16cは、冷媒の受け入れと、冷媒の排出とを担うから、冷媒タンクとも呼ばれる。第1タンク16cは、冷却水をひとつの水チューブ43aから他の水チューブ43aへ案内する連結部も提供する。
複数のチューブ16a、チューブ43aの長手方向他端側、図中の上方には、冷媒および冷却水の集合または分配のための第2タンク43cが配置されている。第2タンクは、冷却水の受け入れと、冷却水の排出とを担うから、水タンクとも呼ばれる。第2タンクは、冷媒をひとつの冷媒チューブ16aから他の冷媒チューブ16aへ案内する連結部も提供する。
図11に示すように、冷媒RFと冷却水WTとは、熱交換器70内のほとんどの部分(主に熱交換部71)において対向流となって流れる。実線の矢印は、冷媒RFの流れを示す。破線の矢印は、冷却水WTの流れを示す。
冷媒RFは入口配管164を介して第1タンク16cの分配空間へ流入し、下流列の冷媒チューブ16aへ流入する。冷媒は、下流列の冷媒チューブ16a内を、図中の下から上へ流れる。下流列の冷媒チューブ16aから流出した冷媒は、第2タンク43cの空間を介して、上流列の冷媒チューブ16aへ流入する。冷媒は、上流列の冷媒チューブ16aを図中の上から下へ流れる。上流列の冷媒チューブ16aから流出した冷媒は、第1タンク16cの集合空間にて集合した後に、出口配管165から流出する。よって、熱交換器70では、冷媒が、下流列から上流列へUターン状に流れる。
冷却水WTは入口配管434を介して第2タンク43cの分配空間へ流入し、上流列の水チューブ43aへ流入する。冷却水は、上流列の水チューブ43a内を、図中の上から下へ流れる。上流列の水チューブ43aから流出した冷媒は、第1タンク16cの空間を介して、下流列の水チューブ43aへ流入する。冷却水は、下流列の水チューブ43aを図中の下から上へ流れる。下流列の水チューブ43aから流出した冷却水は、第2タンク43cの集合空間にて集合した後に、出口配管435から流出する。よって、熱交換器70では、冷却水が、上流列から下流列へUターン状に流れる。
冷媒チューブ16aと水チューブ43aとは、ひとつの冷媒チューブ16aの隣に、フィン50を介してひとつの水チューブ43aが位置するように配置されている。この配置は、冷媒チューブ16aの近傍に成長する霜に、熱を水チューブ43aから効率的に伝えるために有効である。熱交換器70の上流列の少なくとも一部分において、ひとつの冷媒チューブ16aを2つの水チューブ43aの間に配置している。また、熱交換器70の上流列の少なくとも一部分において、ひとつの水チューブ43aを2つの冷媒チューブ16aの間に配置している。言い換えると、冷媒チューブ16aと水チューブ43aとは、少なくとも上流列において、交互に配置されている。さらに、冷媒チューブ16aと水チューブ43aとは、下流列においても、交互に配置することができる。
冷媒チューブ16aが吸熱するための空気通路16bと、水チューブ43aが放熱するための空気通路43bとが、共通の空気通路によって提供されている。このため、冷媒チューブ16aへの着霜を水チューブ43aの熱によって効率的に抑制したり、冷媒チューブ16aの近傍に成長した霜を、水チューブ43aの熱によって効率的に除霜することができる。
図12に示すように、フィン50は、空気ARとの熱交換を促進するためのルーバー50aを有する。ルーバー50aは、チューブ16a、43aの間に対応する範囲に形成することができる。フィン50は、上流列をなす複数のチューブ16a、43aの上流端FDより、空気ARの流れの上流に向けて突出する突出部50bを有する。突出部50bは、ルーバー50aを備えない板状部分によって提供することができる。フィン50は、空気ARの流れの上流側に、上流端50cを有する。フィン50は、空気ARの流れの上流側へ向けてのみ突出するように配置することができる。
フィン50は、少なくとも水チューブ43a側において水チューブ43aより空気ARの流れの上流側に向けて突出する突出部50bを有する。突出部50bの水チューブ43a側には、側部がある。この側部は、フィン50の山の頂面と谷の開口とを含む。突出部50bの側部は、水チューブ43aの近傍に位置付けられるから、側部は霜によって覆われにくい。よって、霜が発生しても、側部から空気ARを導入することができる。この構成によると、着霜による空気通路の閉塞を抑制できるから、耐着霜性に優れた熱交換器70が提供される。
冷媒チューブ16aの両側に配置された2つのフィン50は、冷媒チューブ16aより空気ARの流れの上流側に向けて、隙間50dを形成するように突出している。2つのフィン50の間であって、それらの間に配置されたチューブ16a、43aより上流側には、隙間50dが形成される。言い換えると、2つのフィン50は、冷媒チューブ16aの上流側において、除霜によって生成した融解水を流すことができる隙間50dをそれらの間に形成する突出部50bをそれぞれ有する。フィン50は、隙間50dが、突出部50b上に付着した霜が溶けて生成される融解水の排出通路を提供できる程度に突出している。隙間50dは、上流列に配置されたすべての冷媒チューブ16aの上流側に形成される。隙間50dは、上流列に配置されたすべての水チューブ43aの上流側にも形成される。
複数のチューブ16a、43aは、重力方向の上下方向へ延びるように配置されている。隙間50dは、冷媒チューブ16aに沿って延びている。よって、隙間50dは、熱交換器70の車両への設置状態において、重力方向の上下に延びている。よって、融解水が重力によって流れやすい。隙間50dは、チューブ16a、43aのほぼ全長にわたって溝状に延びている。
隙間50dは、チューブ16a、43aの高さThr、Thwに相当する幅を有している。冷媒チューブ16aは高さThrを有する。水チューブ43aは高さThwを有する。本例では、高さThrと高さThwとは同じである。チューブ16a、43aの高さThr、Thwは、フィン50の平均的なピッチFpの半分より小さい。冷媒チューブ16aの高さThrは、フィン50のピッチFpの半分より小さい(Th<Fp/2)。本例では、Thr<Fp/2、かつThw<Fp/2に設定されている。Fp/2は、フィン50のひとつの襞の幅に相当する。この構成は、フィン50の襞から隙間50dへの融解水DWの排出を促進するために貢献する。この構成によると、突出部50bの間に形成される隙間50dの高さは、冷媒チューブ16aの高さThrに相当するから、隙間50dの高さをフィンピッチFpの半分より小さくすることができる。この結果、融解水は、隙間50dに流れ易くなる。この結果、コルゲートフィン50の襞の間に融解水が溜まることが抑制される。
隙間50dの両側には、フィン50の複数の山部と谷部とが対向して位置付けられている。融解水は、これら複数の山の上を伝うようにして流れ落ちてゆく。融解水は、その表面張力によって、フィン50の表面上において水滴をなすことがある。隙間50dの両側に位置する複数の山部は、融解水の水滴が山部から山部へ次々と移動してゆく程度に近い距離に位置付けられている。
冷媒チューブ16aの両側に位置する2つのフィン50は、フィン50の山部が、冷媒チューブ16aの両側の多くの範囲において、ほぼ交互に位置するように配置されている。複数の山部は、上下方向に沿って、冷媒チューブ16aの両側に交互に位置づけられている。フィン50は、変形しやすいため、冷媒チューブ16aの全域において上記交互配置を実現することは困難である。しかし、フィン50の山数の設定と、フィン50の位置の設定により、冷媒チューブ16aの長さ方向の多くの範囲、例えば半分を超える範囲で上記交互配置を実現することができる。この構成は、隙間50d内において上から下への融解水DWの流れを促進するために貢献する。上から下へ流れる融解水は、両側に位置する山部に左右交互に接触しながら流れ落ちてゆく。この結果、隙間50d内に融解水が水滴となって溜まることが抑制される。
図13は、フィン50上における霜の塊FRの成長の過程を段階S0から段階S4によって示している。段階S0では霜が付着していない。段階S0では、空気ARは、フィン50の上流端50cの間の開口からまっすぐに流入する。段階S0では、フィン50の全体が霜に阻害されることなく熱交換に貢献する。
暖房運転によって冷媒チューブ16aが冷えると、霜の塊FRが徐々に成長してゆく(着霜が進行してゆく)。段階S1から段階S4に図示されるように、霜の塊FRは、フィン50の表面から徐々に成長する。霜の塊FRは、冷媒チューブ16aの近傍から成長を開始する。霜の塊FRは、冷媒チューブ16aから、隣に位置する水チューブ43aに向けて徐々に成長する。この結果、霜の塊FRの成長過程においては、冷媒チューブ16aの近傍に厚く、水チューブ43aの近傍に薄く霜の塊FRが形成される。この結果、霜の塊FRは、フィン50上の空気通路を、冷媒チューブ16aの近傍から水チューブ43aへ向けて徐々に閉塞してゆく。
さらに、霜の塊FRは、空気ARの上流側においてより大きく、厚く成長する。これは、上流から湿度の高い空気ARが供給されるからである。この結果、霜の塊FRは、フィン50上の空気通路を、上流端から下流側へ向けて徐々に閉塞してゆく。しかも、霜の塊FRは、フィン50の上流端50cより上流に向けて延び出してゆく。この結果、霜の塊FRはフィン50の上流端50cの周囲に、厚く成長してゆく。
段階S1および段階S2では、上流端50cに厚い霜の塊FRが形成されている。空気ARは、依然として、上流端50cの間から流入することができる。フィン50の山部と山部との間の谷部は、フィン50の側方にも開口している。言い換えると、フィン50は、チューブ16a、43aより上流側において、空気ARの流れ方向と直交する方向、すなわちチューブ16a、43aの列方向に向けても開口している。このため、空気ARの一部は、フィン50の側部からも空気通路16b、43bに流入する。この結果、霜の塊FRが形成された後でも、空気通路16b、43bへの空気ARの入口が大きく維持される。したがって、霜の塊FRが成長しても、空気ARの流量の低下が抑制されるから、霜の付着に起因する熱交換器70の熱交換性能の低下が抑制される。
霜の塊FRがさらに成長すると、上流端50cの間が完全に閉塞される。しかし、霜の塊FRが上流端50cの間を閉塞しても、まだ、水チューブ43aの上流側においては、フィン50の側部を通して空気ARが空気通路16b、43bに流入できる。したがって、霜の塊FRが成長しても、空気ARの流量の低下が抑制されるから、霜の付着に起因する熱交換器70の熱交換性能の低下が抑制される。
霜の塊FRがさらに成長すると、霜の塊FRは隣の水チューブ43aに到達し、空気通路16b、43bを完全に閉塞する。段階S4は、完全に閉塞された状態を示している。
フィン50の突出量は、段階S3に図示されるような、フィン50の側部から空気ARが流れ込む状態を作り出すように設定されている。つまり、フィン50は、空気の流れの上流側に面する端部が霜の塊FRで閉塞されても、突出部50bの側部から空気通路16b、43bへ空気ARを導入することができるように突出している。言い換えると、フィン50は、霜の塊FRの成長過程において、霜の塊FRが隣りの水チューブ43aに到達する前に、霜の塊FRが上流端50cの間の隙間を閉塞するほどに突出している。この結果、フィンの上流側の端部が閉塞されるほどに霜が成長しても、側部から空気を導入できる。
このように、上述した熱交換器70によると、霜の付着に起因する熱交換性能の低下が抑制される。言い換えると、耐着霜性能が向上する。
室外熱交換器13に上述した熱交換器70を採用すれば、以下に述べる特徴点により大きな効果を得ることができる。 室外熱交換器13は、相互に間隔を空けて配列され、冷媒が内部を流通する複数の冷媒チューブ16aと、隣り合う冷媒チューブ16aの間に形成された空気通路に設けられ、冷媒チューブ16aに熱的に接合されたフィン50とを備えている。フィン50は、空気通路の空気の流入側において、冷媒チューブ16aよりも空気の流れの上流側に向けて突出する突出部50bを有している。
これによると、室外熱交換器13に着霜が起こる場合には、フィン50の突出部50bから着霜が始まり、冷媒チューブ16a間の空気通路は閉塞され難い。したがって、着霜による室外熱交換器13の性能低下を抑制することができ、着霜判定手段の判定閾値である所定着霜量を比較的大きくすることができる。このようにして、室外熱交換器13への着霜抑制状態を比較的長時間保つことができる。
また、室温維持着霜抑制運転中に、圧縮機11の回転数が許容最大回転数に到達するまでの時間を遅らせることができ、室温維持着霜抑制運転を比較的長時間行うことができる。
さらに、室外熱交換器13は、冷媒が内部を流通する冷媒チューブ16a、および、冷媒へ熱を供給するための媒体が内部を流通する媒体チューブである水チューブ43a、を含む複数のチューブ16a、43aを備えている。隣り合うチューブ16a、43aの間に、冷媒チューブ16a内を流通する冷媒へ熱を供給する空気が流通する空気通路が形成されている。
これによると、水チューブ43a内を流通する媒体からの熱によっても、室外熱交換器13への着霜を抑制することができる。したがって、室外熱交換器13の着霜を確実に抑制することができる。
上述した熱交換器70の熱交換部71の説明では省略していたが、図10に示す熱交換部71は、空気流通方向から見たときに、上下方向の寸法が横方向(幅方向)の寸法よりも若干小さくなっている。すなわち、室外熱交換器13は、冷媒が内部を流通する複数の冷媒チューブ16aを相互に間隔を空けて配列した熱交換部71を有している。そして、熱交換部は、冷媒チューブ16aの配列方向の寸法が、冷媒チューブ16aの延在方向の寸法よりも大きくなっている。
これによると、熱交換部71の冷媒流路断面積を比較的大きくすることが容易である。したがって、室外熱交換器13の冷媒チューブ16a内の圧力損失を低下させることができる。これにより、圧力損失による冷媒チューブ16a下流部の温度低下を抑制して、冷媒チューブ16aの全域に亘って着霜を確実に抑制することができる。
図14に示すように、室外熱交換器13の熱交換部71が複数パス(図示例では2パス)である場合には、1パス分の熱交換部において、上記特徴を有することが好ましい。すなわち、熱交換部71に矢印で示すように冷媒が流通する場合には、同一方向に冷媒が流通する2つの熱交換部71a、71bが形成される。これらの熱交換部71a、71bのそれぞれにおいて、冷媒チューブの配列方向の寸法HEWが、冷媒チューブの延在方向の寸法HELよりも大きいことが好ましい。
図14に例示した室外熱交換器13では、図15に示した比較例の熱交換器913の熱交換部971a、971bと比較して明らかなように、1パス分の熱交換部71a、71bの幅寸法HEWを比較的大きく確保することができる。これにより、冷媒チューブ16aの配列本数を比較的多数として、冷媒流路断面積を比較的大きくすることができる。
以上述べたように、熱交換器70は、3つの特徴的な着霜対策構成を有して耐着霜性能を向上した熱交換器である。このような耐着霜性能に優れる熱交換器を室外熱交換器13に採用することにより、室温維持着霜抑制運転時間を比較的長くすることが容易である。
図16を用いて、耐着霜性能に優れる熱交換器70を室外熱交換器13に採用した場合の効果について説明する。図16では、横軸が室内凝縮器12出口における冷媒のエンタルピを示している。横軸の右方ほど冷媒の乾き度が大きくなり(あるいは過冷却度が小さくなり)、左方ほど冷媒の過冷却度が大きくなる。一方、縦軸は圧縮機11の回転数を示している。
図16では、暖房能力を一定(例えばサイクル高圧側冷媒圧力および送風機送風量を一定)とするように、圧縮機11の回転数を制御する場合のグラフを示している。グラフ中、非着霜状態とは、室外熱交換器に着霜がない場合を示している。本例着霜状態とは、本実施形態の室外熱交換器13に所定の着霜がある場合を示している。また、比較例着霜状態とは、前述した着霜対策構成を有していない熱交換器を室外熱交換器に採用し、本例着霜状態と同一の着霜量がある場合を示している。
COP優先運転でCOP最適制御を行っている場合には、冷媒の過冷却度を比較的高く保つように(図の比較的左方部で)サイクル冷媒循環が制御される。これにより、室外熱交換器13における吸熱量が大きくなりCOPが向上する。ところが、室外熱交換器13の吸熱量が大きいと着霜の進行も大きくなる。したがって、室外熱交換器13の吸熱性能が比較的早期に低下してしまう。
これに対し、着霜抑制運転を行っている場合には、冷媒の過冷却度が比較的低い、もしくは、冷媒が乾き度を有するように(図の比較的右方部で)サイクル冷媒循環が制御される。この場合には、室外熱交換器13における吸熱量が比較的小さくなる。これに伴い、室外熱交換器13への着霜の進行が抑制される。したがって、室外熱交換器13の吸熱性能は比較的長時間維持される。
図16に示された圧縮機回転数は、室温維持に必要な暖房能力を発揮するための回転数である。暖房能力は、圧縮機の仕事量と室外熱交換器の吸熱量との和である。したがって、着霜により室外熱交換器の吸熱量が低下した場合には、圧縮機の回転数を上昇させて室外熱交換器の吸熱量低下分を補う必要がある。
COP優先運転を行っている場合には、室外熱交換器吸熱量が比較的大きいため、圧縮機回転数は比較的小さい。しかし、前述したように、着霜の進行が比較的早いので、圧縮機回転数も比較的速やかに上昇する。
一方、着霜抑制運転を行っている場合には、室外熱交換器吸熱量が比較的小さいため、圧縮機回転数は比較的大きい。しかし、前述したように、着霜の進行が比較的遅いので、圧縮機回転数も比較的緩やかに上昇する。
これらより、図16に示すように比較的右方の領域でヒートポンプサイクルの冷媒循環を行った方が、圧縮機が許容最大回転数に到達するまでの時間が長くなる。すなわち、一定の暖房能力を発揮できる時間が長くなる。
本実施形態では、COP優先制御から室温維持着霜抑制制御に切り替えると、室内凝縮器12出口における冷媒エンタルピが小さくなり、室外熱交換器13の吸熱量が低下する(図示右方領域に移動する)。これに伴い、圧縮機11の回転数が上昇する(COPが悪化する)が、室外熱交換器13への着霜の進行は遅くなる。したがって、着霜による圧縮機回転数上昇を抑制し、圧縮機11の回転数が許容最大回転数に到達するまでの時間を延長させることができる。
室外熱交換器への所定量の着霜後にCOP優先制御から室温維持着霜抑制制御に制御切り替えを行うと、比較例の熱交換器の場合には、許容最大回転数にまで速やかに上昇してしまい、暖房能力の維持が困難である。これに対して、本例の着霜対策構成を有する熱交換器70の場合には、同一着霜量でも比較例に対して圧縮機回転数の上昇を抑制して、暖房能力の維持が容易である。したがって、熱交換器70を室外熱交換器13に採用すれば、室温維持着霜抑制運転を比較的長時間実施することが可能である。
着霜条件下でCOP優先制御から室温維持着霜抑制制御に制御を切り替えると、比較例の熱交換器に比較して、本例の熱交換器の方が冷媒乾き度領域(図示右方領域、図16に示す白抜き矢印で示した領域)で使用することができる。したがって、室温維持着霜抑制運転時間を増大できる効果が大きい。 (他の実施形態)
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明は上述した実施形態に何ら制限されることなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲において種々変形して実施することが可能である。
上記実施形態では、室外熱交換器13の出口冷媒温度に基づいて、室外熱交換器13に所定の着霜量がある所定着霜状態に到達したか否かを判定していたが、これに限定されるものではない。所定着霜状態に到達したか否かの判定は室外熱交換器13の温度もしくはその関連物理量に基づいて行うものであればよい。例えば、室外熱交換器13の出口における冷媒圧力に代表されるヒートポンプサイクル低圧側圧力であってもよい。
また、着霜抑制運転を行う際には、室外熱交換器13の出口冷媒温度に基づいて暖房用膨張弁21の弁開度を調節していたが、これに限定されるものではない。着霜抑制運転における弁開度の調整も、室外熱交換器13の温度もしくはその関連物理量に基づいて行うものであればよい。例えば、室外熱交換器13の出口における冷媒圧力に代表されるヒートポンプサイクル低圧側圧力であってもよい。
また、例えば図17に示すように、圧縮機11の回転数が上昇して所定回転数に到達したか否かを判定する(ステップ732)ものであってもよい。ステップ732において圧縮機11回転数が所定回転数に到達したと判断した場合には、COP優先運転から着霜抑制運転へ制御を切り替える。着霜抑制運転では、暖房用膨張弁21の弁開度を圧縮機回転数の関数として制御して弁開度を上昇させる(ステップ733)ことができる。
また、例えば図18に示すように、暖房開始後の時間が経過して所定時間に到達したか否かを判定する(ステップ832)ものであってもよい。ステップ832において暖房開始後経過時間が所定時間に到達したと判断した場合には、COP優先運転から着霜抑制運転へ制御を切り替える。着霜抑制運転では、暖房用膨張弁21の弁開度を暖房開始後の経過時間の関数として制御して弁開度を上昇させる(ステップ833)ことができる。
また、例えば図19に示すように、第1の実施形態と同様に、室外熱交換器13の出口冷媒温度が所定温度に到達したか否かで所定着霜状態に到達したか否かを判定する(ステップ232)。そして、ステップ232において室外熱交換器13の出口冷媒温度が所定温度に到達したと判断した場合には、COP優先運転から着霜抑制運転へ制御を切り替える。着霜抑制運転では、室内凝縮器12から流出する冷媒の過冷却度(S.C.)が室外熱交換器13の出口冷媒温度の関数となるように暖房用膨張弁21の弁開度を調節する(ステップ933)ことができる。
室外熱交換器13の所定着霜状態を検出する判定するステップと、着霜抑制運転を実行する際に暖房用膨張弁21の弁開度を調節するステップとは、適宜組み合わせることが可能である。
また、各例において室外熱交換器13の所定着霜状態を判定するステップでは、判定特性値を固定された閾値と比較していたが、これに限定されるものではない。例えば、閾値を、外気温度の関数としてもかまわない。また、着霜抑制運転において暖房用膨張弁21の弁開度を調節する際の関係式に、例えば外気温度を変数として加えてもかまわない。
また、上記実施形態では、吹出温度センサ63が検出する車室内への吹出温度に基づいて圧縮機11の回転数や送風機32の送風量等を制御する場合があったが、これに限定されるものではない。吹出温度の関連物理量に基づいて圧縮機11や送風機32等を制御するものであってもよい。吹出温度の関連物理量としては、例えば以下に挙げるものがある。一例は、圧縮機11の吐出冷媒温度と送風機32の送風量との組み合わせである。他の一例は、圧縮機11の吐出冷媒圧力と送風機32の送風量との組み合わせである。他の一例は、圧縮機11の吐出冷媒温度と室内凝縮器12からの流出冷媒温度との温度差と、送風機32の送風量との組み合わせである。他の一例は、圧縮機11の吐出冷媒のエンタルピと室内凝縮器12からの流出冷媒のエンタルピとのエンタルピ差と、送風機32の送風量との組み合わせである。他の一例は、室内凝縮器12の外表面温度(例えばフィンの温度)である。
また、上記実施形態では、冷媒温度圧力センサ61が検出する冷媒温度および冷媒圧力から算出される冷媒の過冷却度に基づいて暖房用膨張弁21の弁開度等を制御する場合があったが、これに限定されるものではない。室内凝縮器12から流出し暖房用膨張弁21へ流入する前の冷媒の過冷却度の関連物理量に基づいて暖房用膨張弁21の弁開度等を制御するものであってもよい。過冷却度の関連物理量としては、例えば、圧縮機11の吐出冷媒温度と送風機32の送風量との組み合わせがある。
また、上記実施形態で車室内温度に基づいて制御を行う場合には、室内温度センサ64が検出する車室内の温度を用いていたが、車室内温度の関連物理量を用いてもかまわない。車室内温度の関連物理量としては、例えば、車室内への吹出温度と吹出時間との組み合わせがある。
また、制御時に用いる圧縮機11の回転数は、制御装置2が圧縮機11に出力する回転数指令値であったが、これに限定されるものではない。回転数指令値の関連物理量であればよく、例えば、圧縮機11の消費電力をフィードバックして用いてもかまわない。
また、制御時に用いる送風機32の送風量は、制御装置2が送風機32に出力する送風量指令値であったが、これに限定されるものではない。送風量指令値の関連物理量であればよく、例えば、送風機32の回転数をフィードバックして用いてもかまわない。また、例えば、室内凝縮器12への流入空気温度と室内凝縮器12からの流出空気温度との温度差であってもよい。また、例えば、室内凝縮器12への流入冷媒温度と室内凝縮器12からの流出冷媒温度との温度差であってもよい。
また、室外熱交換器13の吸熱量の関連物理量としては、室内凝縮器12から流出する冷媒の過冷却度の他に、例えば、以下に挙げるものがある。一例は、外気温度と、車速と、室外熱交換器13の出口冷媒温度との組み合わせである。他の一例は、室内凝縮器12の放熱性能と、圧縮機11の消費電力値との組み合わせである。
また、上記実施形態では、室外熱交換器13として、3つの特徴的な着霜対策構成を有して耐着霜性能を向上した熱交換器70を採用していたが、これに限定されるものではない。少なくとも1つの着霜対策構成を有して耐着霜性能を向上した熱交換器であればよい。
すなわち、例えば図20に示すような室外熱交換器であってもよい。この熱交換器は、相互に間隔を空けて配列され冷媒が内部を流通する複数の冷媒チューブ16aと、隣り合う冷媒チューブ16aの間に形成された空気通路に設けられ冷媒チューブ16aに熱的に接合されたフィン50とを備えている。フィン50は、空気通路の空気の流入側において、冷媒チューブ16aよりも空気の流れの上流側に向けて突出する突出部50bを有している。
また、例えば図21に示すような室外熱交換器であってもよい。この熱交換器は、冷媒が内部を流通する冷媒チューブ16a、および、冷媒へ熱を供給するための媒体が内部を流通する媒体チューブである水チューブ43a、を含む複数のチューブ16a、43aを備えている。隣り合うチューブ16a、43aの間に、冷媒チューブ16a内を流通する冷媒へ熱を供給する空気が流通する空気通路が形成されている。
また、例えば、媒体チューブを有しないとともに、フィンが突出部を有さず、熱交換部の寸法関係で着霜対策を行う室外熱交換器であってもよい。この熱交換器は、冷媒が内部を流通する複数の冷媒チューブを相互に間隔を空けて配列した熱交換部を有している。そして、熱交換部は、冷媒チューブの配列方向の寸法が、冷媒チューブの延在方向の寸法よりも大きくなっている。
また、上記実施形態では、暖房運転のうち、室温維持運転モード時に、室外熱交換器が所定着霜状態に到達したことを検出した場合に、着霜抑制運転を開始するものであったが、これに限定されるものではない。暖房運転中であれば、例えば、室温上昇運転モード時であってもかまわない。圧縮機が許容最大回転数未満で駆動している場合には、室温上昇運転モード時であっても、本発明を適用することができる。
また、上記実施形態では、車両用空調装置のヒートポンプサイクルは、暖房運転と冷房運転とを切り替え可能であったが、これに限定されるものではない。例えば、暖房運転のみを行うヒートポンプサイクルを用いた車両用空調装置であっても、本発明を適用して有効である。