[第1実施形態]
図1には、本発明の第1実施形態に係るプリテンショナ機構28(ギヤ機構36を含む)が適用されたウェビング巻取装置10が分解斜視図にて示されており、図2には、ウェビング巻取装置10が一側方から見た側面図にて示されている。なお、図面では、車幅方向外側を矢印OUTで示し、車両前後方向一側を矢印FRで示し、車両上方を矢印UPで示す。
図1及び図2に示す如く、本実施形態におけるウェビング巻取装置10には、支持部材としての金属製で断面U字形板状のフレーム12が設けられており、フレーム12には、背面側の背板12Aと、一側方の脚板12Bと、他側方の脚板12Cと、が設けられている。ウェビング巻取装置10は、フレーム12の背板12Aにおいて、車両の骨格部材としての矩形筒状のピラー(図示省略)内に固定されており、これにより、ウェビング巻取装置10が車両に設置されて、ウェビング巻取装置10の正面側、一側方及び上方が、それぞれ車幅方向外側、車両前後方向一側(車両前側又は車両後側)及び車両上方へ向けられている。
フレーム12内には、引張部材としての巻取軸14が設けられている。
巻取軸14には、巻取部材としての金属製で略円柱状のスプール16が設けられており、スプール16は、フレーム12の脚板12Bと脚板12Cとの間に回転自在に支持されている。スプール16には、長尺帯状のウェビング18(ベルト)が基端側から巻取られており、ウェビング18は、フレーム12から上側へ延出されて、車両のシート(図示省略)に着座した乗員に装着可能にされている。また、スプール16が巻取方向(図1及び図2の矢印Aの方向)へ回転されることで、ウェビング18がスプール16に巻取られると共に、ウェビング18がスプール16から引出されることで、スプール16が引出方向(図1及び図2の矢印Bの方向)へ回転される。
スプール16の脚板12B側には、規制部(ロック部)としての金属製で略円板状のロックギヤ20が設けられており、ロックギヤ20は、脚板12Bを回転自在に貫通している。ロックギヤ20は、フォースリミッタ機構を構成するエネルギー吸収部としてのトーションシャフト(図示省略)を介してスプール16に連結されており、ロックギヤ20は、スプール16に対し同軸上に配置されると共に一体回転可能にされている。また、ロックギヤ20の外周には、ラチェット歯20A(外歯)が複数等間隔で形成されている。
図4及び図5(A)にも示す如く、ロックギヤ20には、円状の挿入孔22が形成されており、挿入孔22は、ロックギヤ20を同軸上に貫通している。挿入孔22の周面には、断面湾曲矩形状の挿入凹部22Aが所定数(本実施形態では2個)形成されており、所定数の挿入凹部22Aは、挿入孔22の周方向に等間隔に配置されると共に、それぞれロックギヤ20の軸方向に平行にロックギヤ20を貫通している。挿入凹部22Aの底面(挿入孔22とは反対側の面)には、被連結部としての長尺矩形板状のシェアピン22Bが一体に形成されており、シェアピン22Bは、長手方向を挿入孔22の軸方向に平行に配置されると共に、幅方向を挿入孔22の径方向に平行に配置されている。
ロックギヤ20には、規制手段(ロック手段)としてのロック機構24が連絡可能にされており、ロック機構24には、規制部材(ロック部材)としてのロックプレート26が設けられている。ロックプレート26は、フレーム12の脚板12Bに回動可能に支持されており、ロックプレート26には、ロック歯26Aが形成されている。ウェビング18のスプール16からの急激な引出し時や車両の急減速時には、ロック機構24が作動されることで、ロックプレート26が回動されて、ロック歯26Aがロックギヤ20のラチェット歯20Aに噛合(係合)される。これにより、ロックギヤ20の引出方向への回転が規制(ロック)されて、スプール16の引出方向への回転が規制される(スプール16の巻取方向への回転は許容される)。
フレーム12の脚板12C外側には、付勢部材としてのぜんまいばね(図示省略)が設けられている。ぜんまいばねは、スプール16に連結されており、ぜんまいばねは、スプール16に巻取方向への付勢力を作用させている。
フレーム12の脚板12B外側には、ラック&ピニオン方式によるプリテンショナ機構28が設けられている。
フレーム12の脚板12B外側には、金属製で箱状のカバー(図示省略)が固定されており、カバー内は、脚板12B側及び下側に開放されている。
カバー内の下部には、案内部材としての金属製で円筒状のシリンダ30の上部が固定されており、シリンダ30は、脚板12Bから下側に延出されると共に、軸方向が上側へ向かうに従い背板12A側(車幅方向内側)へ向かう方向に傾斜されている。
シリンダ30の下端内には、移動手段としての略円柱状のガスジェネレータ32が同軸上に挿入かつ固定されており、ガスジェネレータ32は、シリンダ30の下端を閉塞している。ガスジェネレータ32は、車両の制御装置34に電気的に接続されており、車両の衝突時(車両の衝突が検出された際、車両の緊急時である所定の機会)には、制御装置34の制御によって、プリテンショナ機構28が作動されることで、ガスジェネレータ32が高圧のガスを瞬時に発生してシリンダ30の下端内に供給する。
プリテンショナ機構28は、ギヤ機構36を備えている。
ギヤ機構36には、第1ギヤとしての金属製のメインピニオン38が設けられており、メインピニオン38は、カバー内の上部に配置されている。メインピニオン38の脚板12Bとは反対側の部分には、円柱状の支持軸38Aが同軸上に一体に形成されており、支持軸38Aがカバーに回転自在に支持されることで、メインピニオン38がカバーに回転自在に支持されている。
図4及び図5(A)にも示す如く、メインピニオン38の脚板12B側の部分には、略円柱状の連結軸38Bが同軸上に一体に形成されており、連結軸38Bの周面には、連結部としての長尺矩形板状の連結板38Cが一体に所定数(本実施形態では2個)形成されている。所定数の連結板38Cは、連結軸38Bの周方向に等間隔に配置されており、連結板38Cは、長手方向を連結軸38Bの軸方向に平行に配置されると共に、幅方向を連結軸38Bの径方向に平行に配置されている。連結軸38Bは、ロックギヤ20の挿入孔22に挿入かつ嵌合されると共に、連結板38Cは、ロックギヤ20の挿入凹部22Aのシェアピン22Bより引出方向側に挿入されており、連結板38Cが挿入凹部22Aの引出方向側の側面とシェアピン22Bとの間に挟持されて、メインピニオン38がロックギヤ20及びスプール16に対し同軸上に配置されると共に一体回転可能にされている。
メインピニオン38には、支持軸38Aの脚板12B側において、第1小ギヤとしてのメイン小ギヤ40が同軸上に一体に形成されており、メイン小ギヤ40の外周には、小ギヤ歯40A(外歯)が複数等間隔で形成されている。メインピニオン38には、メイン小ギヤ40の脚板12B側(メイン小ギヤ40と連結軸38Bとの間)において、第1大ギヤとしてのメイン大ギヤ42が同軸上に一体に形成されており、メイン大ギヤ42の外周には、大ギヤ歯42A(外歯)が複数等間隔で形成されている。小ギヤ歯40A及び大ギヤ歯42Aは、断面略二等辺三角形状にされており、小ギヤ歯40A及び大ギヤ歯42Aの強度は、基端側から先端側に向かうに従い徐々に小さくされている。また、メイン大ギヤ42は、メイン小ギヤ40に比し径を大きくされている。
ギヤ機構36には、第2ギヤとしての金属製のサブピニオン44が設けられており、サブピニオン44は、カバー内の上部におけるメインピニオン38の背板12Aとは反対側(車幅方向外側)において、メインピニオン38と軸方向を平行にされて配置されている。サブピニオン44の脚板12Bとは反対側の部分には、円柱状の回転軸44Aが同軸上に一体に形成されており、回転軸44Aがカバーの案内部としての案内孔(図示省略)に回転自在に支持されることで、サブピニオン44がカバーに回転自在に支持されている。カバーの案内孔は、メインピニオン38の周方向に沿って長尺にされており、サブピニオン44は、回転軸44Aを案内孔の長手方向に案内されて、メインピニオン38の周方向に所定範囲で公転(移動)可能にされている。回転軸44Aは、付勢手段(図示省略)によって下側に付勢されており、サブピニオン44は、付勢手段の付勢力によって回転軸44Aを案内孔の下端に当接されて、メインピニオン38の下側において位置決めされている。
サブピニオン44には、回転軸44Aの脚板12B側において、第2小ギヤとしてのサブ小ギヤ46が同軸上に一体に形成されており、サブ小ギヤ46は、メインピニオン38のメイン小ギヤ40と同一の構成にされて、外周にメイン小ギヤ40と同一の小ギヤ歯40Aが複数等間隔で形成されている。サブピニオン44には、サブ小ギヤ46の脚板12B側において、第2大ギヤとしてのサブ大ギヤ48が同軸上に一体に形成されており、サブ大ギヤ48は、メインピニオン38のメイン大ギヤ42と同一の構成にされて、外周にメイン大ギヤ42と同一の大ギヤ歯42Aが複数等間隔で形成されている。
メインピニオン38のメイン大ギヤ42(大ギヤ歯42A)とサブピニオン44のサブ大ギヤ48(大ギヤ歯42A)とは、噛合されており、メインピニオン38が巻取方向へ回転される際には、サブピニオン44が巻取方向(図1及び図2の矢印Cの方向)へ回転されると共に、メインピニオン38が引出方向へ回転される際には、サブピニオン44が引出方向(図1及び図2の矢印Dの方向)へ回転される。
ギヤ機構36には、移動部材としての金属製のピストン50が設けられており、ピストン50は、シリンダ30内に同軸上に挿入されている。
ピストン50には、下端において円柱状の基部50Aが同軸上に設けられると共に、基部50Aの直上において円板状のフランジ50Bが同軸上に設けられており、フランジ50Bは、基部50Aの外周全体に突出されて、シリンダ30の内周面に略嵌合されている。
基部50Aの外周には、シール部材としての円環状かつ断面X字状のXリング52が配置されており、Xリング52は、ゴム製等にされて、弾性及びシール性を有している。Xリング52は、弾性変形された状態で、基部50Aの外周面、フランジ50Bの下面及びシリンダ30の内周面における全周に接触されており、Xリング52は、シリンダ30とピストン50との間をシールしている。
ピストン50には、フランジ50Bより上側において、略長尺矩形柱状のラック54が設けられており、ラック54の長手方向は、ピストン50の軸方向に平行に配置されている。
ラック54の背板12A側の部分には、第1ラック部としてのメインラック部56が設けられており、メインラック部56には、ラック54の長手方向に沿ってラック歯54Aが複数等間隔で形成されている。ラック歯54Aは、断面台形状にされており、ラック歯54Aの強度は、基端側から先端側に向かうに従い徐々に小さくされている。ラック54の背板12Aとは反対側の部分には、第2ラック部としてサブラック部58が設けられており、サブラック部58には、ラック54の長手方向に沿ってメインラック部56と同一のラック歯54Aが複数等間隔で形成されている。
メインラック部56のラック歯54Aとサブラック部58のラック歯54Aとは、ラック54の長手方向における位置が異なっており、メインラック部56のラック歯54A間のラック54長手方向における中央にサブラック部58のラック歯54Aのラック54長手方向における中央が配置されると共に、サブラック部58のラック歯54A間のラック54長手方向における中央にメインラック部56のラック歯54Aのラック54長手方向における中央が配置されている。また、サブラック部58の最上のラック歯54Aは、メインラック部56の最上のラック歯54Aに比し上側に配置されている。
ラック54は、シリンダ30の上端から延出されており、ラック54の上端は、メインピニオン38のメイン小ギヤ40とサブピニオン44のサブ小ギヤ46との間の下側近傍に配置されている。
次に、本実施形態の作用を説明する。
以上の構成のウェビング巻取装置10では、車両のシートに着座した乗員にウェビング18が装着された際に、ぜんまいばねがスプール16に巻取方向への付勢力を作用させることで、ウェビング18の緩みが除去される。
車両の衝突時には、ウェビング18がスプール16から急激に引出され又は車両が急減速されて、ロック機構24が作動されることで、ロックプレート26が回動されて、ロックプレート26のロック歯26Aがロックギヤ20のラチェット歯20Aに噛合される。これにより、ロックギヤ20の引出方向への回転が規制されて、スプール16の引出方向への回転が規制されることで、ウェビング18のスプール16からの引出しが規制されて、ウェビング18が乗員を拘束する。
さらに、図3に示す如く、車両の衝突時には、制御装置34の制御によって、プリテンショナ機構28が作動されることで、ガスジェネレータ32が高圧のガスを瞬時に発生してシリンダ30内の下端に供給する。このため、シリンダ30とピストン50との間がXリング52によってシールされた状態が維持されつつ、ピストン50(基部50A及びフランジ50B)及びXリング52が当該ガスの圧力を下側(他側)から受けて、ピストン50及びXリング52が上側(一側、軸方向)へ移動される。これにより、ピストン50のラック54が、メインラック部56(ラック歯54A)においてメインピニオン38のメイン小ギヤ40(小ギヤ歯40A)に噛合されると共に、サブラック部58(ラック歯54A)においてサブピニオン44のサブ小ギヤ46(小ギヤ歯40A)に噛合されることで、メインピニオン38及びサブピニオン44がラック54によって巻取方向へ回転されると共に、メインピニオン38のメイン大ギヤ42(大ギヤ歯42A)とサブピニオン44のサブ大ギヤ48(大ギヤ歯42A)との噛合によりメインピニオン38がサブピニオン44によって巻取方向へ回転される。
メインピニオン38が巻取方向へ回転された際には、乗員からウェビング18を介してスプール16及びロックギヤ20に引出方向への回転力が作用されており、図5(B)に示す如く、メインピニオン38(連結軸38B)の連結板38Cがロックギヤ20(挿入凹部22A)のシェアピン22Bを破断して、メインピニオン38がロックギヤ20に対し巻取方向へ空転された後に、連結板38Cが挿入凹部22Aの巻取方向側の側面に当接する。このため、メインピニオン38と一体にロックギヤ20が巻取方向へ回転されて、スプール16が巻取方向へ回転されることで、スプール16にウェビング18が巻取られて(引張られて)、ウェビング18による乗員の拘束力が増加される。
ここで、上述の如く、ピストン50が上側へ移動されて、ピストン50のラック54が、メインラック部56においてメインピニオン38のメイン小ギヤ40に噛合されると共に、サブラック部58においてサブピニオン44のサブ小ギヤ46に噛合されることで、メインピニオン38及びサブピニオン44がラック54によって巻取方向へ回転されると共に、メインピニオン38がサブピニオン44によって巻取方向へ回転される。
このため、ラック54からの荷重をメイン小ギヤ40とサブ小ギヤ46とに分散でき、メイン小ギヤ40及びサブ小ギヤ46の径を小さくしても、ラック54からの荷重に対するメイン小ギヤ40及びサブ小ギヤ46の強度を確保できる。これにより、ラック54の移動ストロークを短くできて、ラック54の移動方向(長手方向)寸法を短くでき、ピストン50及びシリンダ30の軸方向寸法を短くできて、ギヤ機構36及びプリテンショナ機構28を小型化できる。
また、ラック54では、メインラック部56のラック歯54Aとサブラック部58のラック歯54Aとのラック54移動方向における位置が異なっており、メインラック部56(ラック歯54A)のメイン小ギヤ40(小ギヤ歯40A)への噛合位置とサブラック部58(ラック歯54A)のサブ小ギヤ46(小ギヤ歯40A)への噛合位置とがラック54の移動方向において異なっている。このため、メインラック部56(ラック歯54A)のメイン小ギヤ40(小ギヤ歯40A)への噛合位置とサブラック部58(ラック歯54A)のサブ小ギヤ46(小ギヤ歯40A)への噛合位置とがラック54の移動方向において同一にされる場合に比し、メイン小ギヤ40(小ギヤ歯40A)のメインラック部56(ラック歯54A)から荷重を受ける部分の強度(小ギヤ歯40Aのラック歯54Aとの接触線及びラック54移動方向に沿った断面積)とサブ小ギヤ46(小ギヤ歯40A)のサブラック部58(ラック歯54A)から荷重を受ける部分の強度(小ギヤ歯40Aのラック歯54Aとの接触線及びラック54移動方向に沿った断面積)との合計のラック54の移動による変化を小さくできて、当該合計の最低値を大きくできる。これにより、メイン小ギヤ40(小ギヤ歯40A)及びサブ小ギヤ46(小ギヤ歯40A)の必要強度を小さくできて、メイン小ギヤ40及びサブ小ギヤ46の径を一層小さくでき、ラック54の移動ストロークを一層短くできて、ギヤ機構36及びプリテンショナ機構28を一層小型化できる。
特に、メインラック部56のラック歯54A間のラック54移動方向における中央にサブラック部58のラック歯54Aのラック54移動方向における中央が配置されると共に、サブラック部58のラック歯54A間のラック54移動方向における中央にメインラック部56のラック歯54Aのラック54移動方向における中央が配置されている。このため、メイン小ギヤ40(小ギヤ歯40A)のメインラック部56(ラック歯54A)から荷重を受ける部分の強度とサブ小ギヤ46(小ギヤ歯40A)のサブラック部58(ラック歯54A)から荷重を受ける部分の強度との合計のラック54の移動による変化を最小にできて、当該合計の最低値を最大にできる。これにより、メイン小ギヤ40(小ギヤ歯40A)及びサブ小ギヤ46(小ギヤ歯40A)の必要強度を一層小さくできて、メイン小ギヤ40及びサブ小ギヤ46の径を一層小さくでき、ラック54の移動ストロークを一層短くできて、ギヤ機構36及びプリテンショナ機構28を一層小型化できる。
さらに、ピストン50が上側へ移動された際には、ラック54(サブラック部58)がサブピニオン44(サブ小ギヤ46)に当接された後で、少なくともラック54(メインラック部56)がメインピニオン38(メイン小ギヤ40)に当接されるまで(例えばラック54のラック歯54Aが接触されるメインピニオン38及びサブピニオン44の小ギヤ歯40Aの合計が2個以上(好ましくは3個以上)になるまで)、上述の如く、メインピニオン38(連結軸38B)の連結板38Cがロックギヤ20(挿入凹部22A)のシェアピン22Bを破断して、メインピニオン38及びサブピニオン44がロックギヤ20及びスプール16に対し巻取方向へ空転される。このため、メイン小ギヤ40(小ギヤ歯40A)のメインラック部56(ラック歯54A)から荷重を受ける部分の強度とサブ小ギヤ46(小ギヤ歯40A)のサブラック部58(ラック歯54A)から荷重を受ける部分の強度との合計が大きくなるまでメインピニオン38及びサブピニオン44がラック54からの荷重をスプール16に伝達することを抑制できる。これにより、メインピニオン38及びサブピニオン44の必要強度を一層小さくできて、メインピニオン38及びサブピニオン44の径を一層小さくでき、ラック54の移動ストロークを一層短くできて、ギヤ機構36及びプリテンショナ機構28を一層小型化できる。
また、ピストン50が上側へ移動された際には、ラック54がメインピニオン38(メイン小ギヤ40)から作用される荷重(反力)をサブピニオン44(サブ小ギヤ46)によって受けることができると共に、ラック54がサブピニオン44(サブ小ギヤ46)から作用される荷重(反力)をメインピニオン38(メイン小ギヤ40)によって受けることができる。このため、例えば、ラック54がメインピニオン38及びサブピニオン44から作用される荷重(反力)をカバーによって受ける必要がないため、ラック54のカバーとの摩擦による移動エネルギーのロスを低減でき、ラック54の上側への移動によってメインピニオン38及びサブピニオン44を効果的に巻取方向へ回転させることができて、スプール16にウェビング18を効果的に巻取ることができる。
さらに、例えば図6に示す如く、ピストン50が上側へ移動された際には、ラック54がメインラック部56においてメインピニオン38(メイン小ギヤ40)に当接される前にサブラック部58においてサブピニオン44(サブ小ギヤ46)に当接されて、サブピニオン44がラック54から上側への移動力を作用される。このため、サブピニオン44が、付勢手段の付勢力に抗して、回転軸44Aをカバーの案内孔の長手方向に案内されて、メインピニオン38の周方向に沿って上側に公転されることで、ラック54(サブラック部58)のサブピニオン44(サブ小ギヤ46)への噛合位置が調整可能にされている。
例えば、図7(A)に示す如く、ラック54(サブラック部58)のラック歯54Aがサブピニオン44(サブ小ギヤ46)の小ギヤ歯40Aの引出方向側の面に当接された場合には、図7(B)に示す如く、サブピニオン44が、上側に公転されると共に、サブ大ギヤ48のメイン大ギヤ42との噛合によって引出方向へ回転されて、当該ラック歯54Aと当該小ギヤ歯40Aとが接触された状態が維持される。
図8(A)に示す如く、ラック54(サブラック部58)のラック歯54Aの先端以外の部分がサブピニオン44(サブ小ギヤ46)の小ギヤ歯40Aの先端に当接された場合には、図8(B)に示す如く、サブピニオン44が、上側に公転されると共に、サブ大ギヤ48のメイン大ギヤ42との噛合によって引出方向へ回転されて、当該ラック歯54Aと当該小ギヤ歯40Aの巻取方向側の小ギヤ歯40Aとが当接される。
図9(A)に示す如く、ラック54(サブラック部58)のラック歯54Aの先端角部がサブピニオン44(サブ小ギヤ46)の小ギヤ歯40Aの先端に当接された場合には、図9(B)に示す如く、サブピニオン44が、上側に公転されると共に、サブ大ギヤ48のメイン大ギヤ42との噛合によって引出方向へ回転されて、当該ラック歯54Aと当該小ギヤ歯40Aの巻取方向側の小ギヤ歯40Aとが当接される。
図10(A)に示す如く、ラック54(サブラック部58)のラック歯54Aがサブピニオン44(サブ小ギヤ46)の小ギヤ歯40Aの巻取方向側の面に当接された場合には、図10(B)に示す如く、サブピニオン44が、上側に公転されると共に、サブ大ギヤ48のメイン大ギヤ42との噛合によって引出方向へ回転されて、当該ラック歯54Aと当該小ギヤ歯40Aの巻取方向側の小ギヤ歯40Aとが当接される。
以上により、特に、図8(A)及び図9(A)に示す如く、ラック54(サブラック部58)のラック歯54Aがサブピニオン44(サブ小ギヤ46)の小ギヤ歯40Aの先端に当接された場合でも、図8(B)及び図9(B)に示す如く、サブピニオン44が上側に公転されると共に引出方向へ回転されて、当該ラック歯54Aと当該小ギヤ歯40Aとの接触が解除される。このため、当該ラック歯54Aと当該小ギヤ歯40Aとが食付くことを抑制でき、又は、当該ラック歯54Aと当該小ギヤ歯40Aとの食付きを容易に解除でき、ラック54(サブラック部58)からサブピニオン44(サブ小ギヤ46)への力伝達のロスの発生を抑制できる。これにより、ラック54の移動力をサブピニオン44に効率的に伝達できて、スプール16にウェビング18を一層効果的に巻取ることができる。
しかも、例えば、図7(A)〜図10(A)に示す如く、ラック54(サブラック部58)のラック歯54Aがサブピニオン44(サブ小ギヤ46)の小ギヤ歯40Aに当接された後には、図7(B)〜図10(B)に示す如く、サブピニオン44が上側に公転されて、メインピニオン38がメイン大ギヤ42のサブ大ギヤ48との噛合によって巻取方向へ回転されることで、ラック54(メインラック部56)のメインピニオン38(メイン小ギヤ40)への噛合位置が調整可能にされている。このため、ラック54(メインラック部56)のラック歯54Aがメインピニオン38(メイン小ギヤ40)の小ギヤ歯40Aの先端に当接されることを抑制できて、当該ラック歯54Aと当該小ギヤ歯40Aとが食付くことを抑制でき、ラック54(メインラック部56)からメインピニオン38(メイン小ギヤ40)への力伝達のロスの発生を抑制できる。これにより、ラック54の移動力をメインピニオン38に効率的に伝達できて、スプール16にウェビング18を一層効果的に巻取ることができる。
また、サブピニオン44の回転軸44Aが、付勢手段によって下側に付勢されて、カバーの案内孔下端に当接されることで、サブピニオン44が位置決めされている。このため、ピストン50が上側へ移動された際に、例えば回転軸44Aがカバーの案内孔の上部に配置されていて、サブピニオン44がラック54によって上側に十分に公転できないことを抑制でき、ラック54(メインラック部56及びサブラック部58)からメインピニオン38(メイン小ギヤ40)及びサブピニオン44(サブ小ギヤ46)への力伝達のロスの発生を確実に抑制できる。
さらに、このようにラック54からメインピニオン38及びサブピニオン44への力伝達のロスの発生を抑制できるため、ラック54の移動によって初めてメインピニオン38をスプール16と一体回転可能に連結するクラッチ機構を不要にでき、部品点数を低減できる。
[第2実施形態]
図11には、本発明の第2実施形態に係るプリテンショナ機構28(ギヤ機構36を含む)が適用されたウェビング巻取装置70が分解斜視図にて示されており、図12には、ウェビング巻取装置70が一側方から見た側面図にて示されている。
本実施形態におけるウェビング巻取装置70は、上記第1実施形態と、ほぼ同様の構成であるが、以下の点で異なる。
図11及び図12に示す如く、本実施形態におけるウェビング巻取装置70では、巻取軸14において、ロックギヤ20の挿入孔22に挿入凹部22A及びシェアピン22Bが設けられていない。ロックギヤ20のスプール16とは反対側の面には、クラッチ機構を構成する円柱状のクラッチ凹部72が形成されており、クラッチ凹部72の外周面は、摩擦係数が高くされている。
プリテンショナ機構28では、ロックギヤ20のスプール16とは反対側において、クラッチ機構を構成するクラッチ部材としての金属製で略円環板状のクラッチプレート74が配置されており、クラッチプレート74は、カバー内に保持されている。
クラッチプレート74の内周には、L字形板状の延出部74Aが所定数(本実施形態では6個)一体に形成されており、所定数の延出部74Aは、クラッチプレート74の周方向に沿って等間隔に配置されている。延出部74Aの先端には、柱状の噛込部74Bが一体に形成されており、噛込部74Bは、延出部74Aからロックギヤ20側へ突出されて、ロックギヤ20のクラッチ凹部72内に挿入されている。噛込部74Bは、クラッチ凹部72の外周面から離間されており、クラッチプレート74は、ロックギヤ20の回転を許容している。
ギヤ機構36では、メインピニオン38の連結軸38Bに連結板38Cが設けられておらず、連結軸38Bがロックギヤ20の挿入孔22に挿入かつ嵌合されることで、メインピニオン38がロックギヤ20及びスプール16に対し同軸上に配置されると共に相対回転可能にされている。
メインピニオン38のメイン大ギヤ42より連結軸38B側の部分には、クラッチ機構を構成するクラッチ部76が同軸上に形成されており、クラッチ部76は、ロックギヤ20のクラッチ凹部72内に挿入されている。クラッチ部76の外周面には、所定数(本実施形態では6個)の凸部76Aが形成されており、所定数の凸部76Aは、クラッチ部76の周方向に沿って等間隔に配置されている。凸部76Aの巻取方向側面は、引出方向へ向かうに従いクラッチ部76の径方向外側へ向かう方向に傾斜されており、クラッチ部76には、各凸部76Aの巻取方向側において、クラッチプレート74の噛込部74Bが装着(圧接)されている。
ラック54の上端は、メインピニオン38のメイン小ギヤ40とサブピニオン44のサブ小ギヤ46との間の下側に配置されており、ラック54(サブラック部58)の最上のラック歯54Aは、サブ小ギヤ46の小ギヤ歯40Aに接触されている。
ここで、図13に示す如く、車両の衝突時には、制御装置34の制御によって、プリテンショナ機構28が作動されることで、ガスジェネレータ32が高圧のガスを瞬時に発生してシリンダ30内の下端に供給する。このため、シリンダ30とピストン50との間がXリング52によってシールされた状態が維持されつつ、ピストン50(基部50A及びフランジ50B)及びXリング52が当該ガスの圧力を下側(他側)から受けて、ピストン50及びXリング52が上側(一側、軸方向)へ移動される。これにより、ピストン50のラック54が、メインラック部56(ラック歯54A)においてメインピニオン38のメイン小ギヤ40(小ギヤ歯40A)に噛合されると共に、サブラック部58(ラック歯54A)においてサブピニオン44のサブ小ギヤ46(小ギヤ歯40A)に噛合されることで、メインピニオン38及びサブピニオン44がラック54によって巻取方向へ回転されると共に、メインピニオン38のメイン大ギヤ42(大ギヤ歯42A)とサブピニオン44のサブ大ギヤ48(大ギヤ歯42A)との噛合によりメインピニオン38がサブピニオン44によって巻取方向へ回転される。
メインピニオン38が巻取方向へ回転された際には、クラッチプレート74の噛込部74Bがメインピニオン38のクラッチ部76における凸部76Aの巻取方向側面を引出方向に相対移動されることで、クラッチプレート74の延出部74Aがクラッチプレート74の外周側へ変形移動されつつ、噛込部74Bがロックギヤ20のクラッチ凹部72外周面側へ移動される。このため、メインピニオン38がロックギヤ20に対し巻取方向へ空転され後に、噛込部74Bがクラッチ部76(凸部76Aの周面)とロックギヤ20(クラッチ凹部72の外周面)との間に噛込まれる(係合される)ことで、メインピニオン38、クラッチプレート74、ロックギヤ20及びスプール16が一体回転可能にされる。これにより、クラッチプレート74のカバー内への保持が解除されて、メインピニオン38と一体にクラッチプレート74、ロックギヤ20及びスプール16が巻取方向へ回転されることで、スプール16にウェビング18が巻取られて(引張られて)、ウェビング18による乗員の拘束力が増加される。
このため、本実施形態でも、クラッチ機構を不要にできる効果を除き、上記第1実施形態と同様の作用及び効果を奏することができる。
特に、ピストン50が上側へ移動された際には、ラック54(サブラック部58)がサブピニオン44(サブ小ギヤ46)に押圧された後で、少なくともラック54(メインラック部56)がメインピニオン38(メイン小ギヤ40)に当接されるまで(例えばラック54のラック歯54Aが接触されるメインピニオン38及びサブピニオン44の小ギヤ歯40Aの合計が2個以上(好ましくは3個以上)になるまで)、上述の如く、クラッチプレート74の噛込部74Bがメインピニオン38(クラッチ部76)の凸部76Aの巻取方向側面を引出方向に相対移動されて、メインピニオン38及びサブピニオン44がクラッチプレート74、ロックギヤ20及びスプール16に対し巻取方向へ空転される。このため、メイン小ギヤ40(小ギヤ歯40A)のメインラック部56(ラック歯54A)から荷重を受ける部分の強度とサブ小ギヤ46(小ギヤ歯40A)のサブラック部58(ラック歯54A)から荷重を受ける部分の強度との合計が大きくなるまでメインピニオン38及びサブピニオン44がラック54からの荷重をスプール16に伝達することを抑制できる。これにより、メインピニオン38及びサブピニオン44の必要強度を一層小さくできて、メインピニオン38及びサブピニオン44の径を一層小さくでき、ラック54の移動ストロークを一層短くできて、ギヤ機構36及びプリテンショナ機構28を一層小型化できる。
なお、上記第2実施形態では、サブピニオン44をメインピニオン38の周方向に公転可能にした。しかしながら、サブピニオン44をメインピニオン38の周方向に公転不能にしてもよい。
また、上記第1実施形態及び第2実施形態では、ラック54がサブピニオン44(サブ小ギヤ46)に噛合した後にメインピニオン38(メイン小ギヤ40)に噛合する。しかしながら、ラック54がメインピニオン38(メイン小ギヤ40)に噛合した後にサブピニオン44(サブ小ギヤ46)に噛合してもよく、また、ラック54がメインピニオン38(メイン小ギヤ40)とサブピニオン44(サブ小ギヤ46)とに同時に噛合してもよい。
さらに、上記第1実施形態及び第2実施形態では、メインピニオン38とサブピニオン44とをラック54の移動方向における異なる位置に配置した。しかしながら、メインピニオン38とサブピニオン44とをラック54の移動方向における同一位置に配置してもよい。
しかも、上記第1実施形態及び第2実施形態では、ラック54におけるメインラック部56のラック歯54Aとサブラック部58のラック歯54Aとをラック54の移動方向における異なる位置に配置した。しかしながら、ラック54におけるメインラック部56のラック歯54Aとサブラック部58のラック歯54Aとをラック54の移動方向における同一位置に配置してもよい。
また、上記第1実施形態及び第2実施形態では、メインピニオン38(メイン大ギヤ42)とサブピニオン44(サブ大ギヤ48)とを噛合させて直接連絡した。しかしながら、メインピニオン38(メイン大ギヤ42)とサブピニオン44(サブ大ギヤ48)とを所定数の中間ギヤを介して間接的に連絡してもよい。
さらに、本発明は、シートベルト装置におけるセレクタブルフォースリミッタの切替機構や、ラッププリテンショナ機構や、バックルプリテンショナ機構のような作動によりラックが移動されて第1ギヤ及び第2ギヤが回転されるギヤ機構に適用してもよい。