以下に、実施の形態に係るレーザ加工装置を図面に基づいて詳細に説明する。以下に示される実施の形態により本発明が限定されるものではない。
実施の形態1.
図1は、実施の形態1に係るレーザ加工装置を示す斜視図である。実施の形態1に係るレーザ加工装置1は、ワークWにレーザ光LLを照射してワークWを加工する加工ヘッド4と、ワークWを載置し、かつ少なくとも2個のマーク3を有するテーブル2と、加工ヘッド4とテーブル2との相対位置を変更する駆動装置10,20と、マーク3を読み取る読取装置8と、レーザ光LLの照射方向を変更し、かつ読取装置8がマーク3を読み取ることによって得られたマーク3の位置を用いてレーザ光LLの照射方向を補正する機構4Gと、を含む。
加工ヘッド4は、機構4Gと、光学系7とを含む。機構4Gは、レーザ光LLの照射方向を変更する。加工ヘッド4が有する光学系7は、機構4Gから照射されたレーザ光LLをテーブル2のワークWの表面で結像させるfθレンズ及びレーザ光LLの焦点を調整する焦点調整機構を含む。機構4Gの構造及び動作については後述する。
テーブル2は、ワークWを載置する第1面2Psと、第1面2Psに対向する第2面2Prと、第1面Ps及び第2面Prを接続する側面2SA,2SB,2SC,2SDとを有する。第1面2Ps及び第2面2Prの形状は、いずれも長方形である。長方形は、正方形を含む。このため、テーブル2の形状は、直方体となる。
テーブル2は、第1面2Psの加工領域2WAにワークWを載置する。加工領域2WAは、第1面2Psの外縁2EGよりも内側の領域である。加工ヘッド4は、加工領域2WAの外側の物体を加工することはできない。テーブル2は、第1面2Ps及び第2面2Prの一辺と平行な方向である第1方向と、第1方向に交差する第2方向との2方向に移動する。第1方向及び第2方向に直交する方向は第3方向である。実施の形態1において、第1方向と第2方向とは直交、すなわち90度で交差するが、第1方向と第2方向とは90度以外で交差してもよい。以下において適宜、第1方向をX方向、第2方向をY方向、第3方向をZ方向と称する。第1機構5の第1ミラー5Mは、レーザ光LLの照射方向を第1方向であるX方向に沿って変更し、第2機構6の第2ミラー6Mは、レーザ光LLの照射方向を第2方向であるY方向に沿って変更する。
テーブル2は、第1面2Psに第1マークであるマーク3を有する。実施の形態1において、テーブル2は3個のマーク3を有するが、前述した通り、テーブル2は少なくとも2個のマーク3を有していればよい。実施の形態1において、マーク3の形状は円形であるが、これに限定されず、十字形状であってもよい。実施の形態1において、マーク3は、テーブル2に固定されている。このようにすることで、マーク3とテーブル2との位置関係が固定されるので、読取装置8がマーク3を読み取る際の位置ずれを抑制できる。
テーブル2は、第1面2Ps、すなわちワークWが載置される面に複数のマーク3を有する。第1面2Psは1つの平面なので、読取装置8は、読取部を第1面2Psと対向させていれば、姿勢を変更せずに第1面2Psのすべてのマーク3を読み取ることができる。
実施の形態1において、加工ヘッド4はレーザ加工装置1の静止系に固定されており、テーブル2が移動する。このため、駆動装置10,20は、テーブル2を移動させることによって、加工ヘッド4とテーブル2との相対位置を変更する。実施の形態1において、駆動装置10は、加工ヘッド4とテーブル2とのX方向における相対位置を変更する。駆動装置20は、加工ヘッド4とテーブル2とのY方向における相対位置を変更する。以下において、駆動装置10を適宜、第1駆動装置10と称し、駆動装置20を適宜、第2駆動装置20と称する。
第1駆動装置10は、基台11と、レール12A,12Bと、案内部材13A,13Bと、ナット14と、ねじ15と、アクチュエータ16とを含む。基台11は、レール12A,12B及びアクチュエータ16が取り付けられて、これらを支持する。レール12A,12Bは、X方向に沿って延びている。両方のレール12A,12Bは、互いに平行に配置される。案内部材13Aは、レール12Aに取り付けられて、レール12Aが延びる方向、すなわちX方向に移動する。案内部材13Bは、レール12Bに取り付けられて、レール12Bが延びる方向に移動する。
案内部材13A,13Bは、第2駆動装置20の基台21に取り付けられる。案内部材13A,13Bはレール12A,12Bに沿って移動するので、基台21もレール12A,12Bに沿って移動する。
ナット14は、第2駆動装置20の基台21に取り付けられる。ねじ15は、ナット14にねじ込まれる。実施の形態1において、アクチュエータ16は電動機である。アクチュエータ16のシャフトにねじ15が取り付けられる。ねじ15が回転することにより、ナット14がねじ15の延びる方向に移動するので、ナット14が取り付けられた基台21は、ねじ15の延びる方向に移動する。実施の形態1において、ねじ15の延びる方向は、レール12A,12Bが延びる方向と同一のX方向なので、基台21は、ねじ15が回転すると、レール12A,12Bに沿って移動する。アクチュエータ16は、ねじ15を回転させることにより、基台21をレール12A,12Bに沿って移動させる。
アクチュエータ16は、エンコーダ17を有している。実施の形態1において、エンコーダ17はロータリーエンコーダである。エンコーダ17は、アクチュエータ16のシャフトの回転角度、すなわちねじ15の回転角度を検出する。アクチュエータ16は、第1ドライバ30Xによって制御される。
第2駆動装置20は、基台21と、レール22A,22Bと、案内部材23A,23Bと、ナット24と、ねじ25と、アクチュエータ26とを含む。基台21は、レール22A,22B及びアクチュエータ26が取り付けられて、これらを支持する。レール22A,22Bは、Y方向に沿って延びている。両方のレール22A,22Bは、互いに平行に配置される。案内部材23Aは、レール22Aに取り付けられて、レール22Aが延びる方向、すなわちY方向に移動する。案内部材23Bは、レール22Bに取り付けられて、レール22Bが延びる方向に移動する。
案内部材23A,23Bは、テーブル2に取り付けられる。案内部材23A,23Bはレール22A,22Bに沿って移動するので、基台21もレール22A,22Bに沿って移動する。
ナット24は、第2駆動装置20の基台21に取り付けられる。ねじ25は、ナット24にねじ込まれる。実施の形態1において、アクチュエータ26は電動機である。アクチュエータ26のシャフトにねじ25が取り付けられる。ねじ25が回転することにより、ナット24がねじ25の延びる方向に移動するので、ナット24が取り付けられたテーブル2は、ねじ25の延びる方向に移動する。実施の形態1において、ねじ25の延びる方向は、レール22A,22Bが延びる方向と同一のY方向なので、基台21は、ねじ25が回転すると、レール22A,22Bに沿って移動する。アクチュエータ26は、ねじ25を回転させることにより、テーブル2をレール22A,22Bに沿って移動させる。
アクチュエータ26は、エンコーダ27を有している。実施の形態1において、エンコーダ27はロータリーエンコーダである。エンコーダ27は、アクチュエータ26のシャフトの回転角度、すなわちねじ25の回転角度を検出する。アクチュエータ26は、第2ドライバ30Yによって制御される。
テーブル2は、第2駆動装置20を介して第1駆動装置10に取り付けられる。第1駆動装置10は、第2駆動装置20、より具体的には基台21、アクチュエータ26、ねじ25及びナット24を介してテーブル2をX方向に移動させる。第2駆動装置20は、直接テーブル2をY方向に移動させる。テーブル2をX方向に移動させるねじ15の回転角度は、ナット14の送り量に比例するので、エンコーダ17の検出値により、テーブル2のX方向への移動量が求められる。テーブル2をY方向に移動させるねじ25の回転角度は、ナット24の送り量に比例するので、エンコーダ27の検出値により、テーブル2のY方向への移動量が求められる。
実施の形態1において、第1駆動装置10及び第2駆動装置20の少なくとも一方が、加工ヘッド4とテーブル2との相対位置を変更するが、このようなものに限定されない。加工ヘッド4とテーブル2との相対位置は、テーブル2が静止して加工ヘッド4が移動することによって変更されてもよい。また、加工ヘッド4とテーブル2との相対位置は、テーブル2がX方向又はY方向のいずれか一方に移動し、加工ヘッド4がテーブル2の移動方向とは異なる方向に移動することによって変更されてもよい。
読取装置8は、テーブル2の第1面2Psが有するマーク3を読み取る。実施の形態1において、読取装置8は、CCD(Charge Coupled Device)イメージセンサ又はCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)イメージセンサを撮像素子として備えたカメラであるが、このようなものに限定されない。実施の形態1において、読取装置8は、レーザ加工装置1の静止系に取り付けられている。第1駆動装置10及び第2駆動装置20の少なくとも一方によってテーブル2が移動することにより、読取装置8とテーブル2との相対位置が変化する。
次に、機構4Gについて説明する。機構4Gは、第1機構5及び第2機構6を有する。第1機構5は、第1ミラー5M及び第1アクチュエータ5Aを有する。第1ミラー5Mは、レーザ発信装置9から照射されたレーザ光LLを第2機構6に向けて反射する。第1アクチュエータ5Aは、第1ミラー5Mの傾きを変更することにより、第2機構6へ向かうレーザ光LLの照射方向を変更する。第2機構6は、第2ミラー6M及び第2アクチュエータ6Aを有する。第2ミラー6Mは、第1機構5の第1ミラー5Mに反射されたレーザ光LLを、テーブル2に向けて反射する。第2アクチュエータ6Aは、第2ミラー6Mの傾きを変更することにより、テーブル2へ向かうレーザ光LLの照射方向を変更する。
第1機構5の第1ミラー5Mは、レーザ光LLの照射方向を第1方向に沿って変更する。第2機構6の第2ミラー6Mは、レーザ光LLの照射方向を第2方向に沿って変更する。第1方向と第2方向とは互いに交差、実施の形態1では互いに直交する。実施の形態1において、レーザ光LLは炭酸ガスレーザであるが、種類は限定されない。実施の形態1において、第1アクチュエータ5A及び第2アクチュエータ6Aは電動機であるが、第1ミラー5M及び第2ミラー6Mの傾きを変更できればよく、電動機に限定されない。
機構4Gは、読取装置8がテーブル2のマーク3を読み取ることによって得られたマーク3の位置を用いて、レーザ光LLの照射方向を補正する。実施の形態1において、レーザ加工装置1が設置場所に据え付けられた後に、レーザ加工装置1が操業を開始してワークWの加工に用いられると、レーザ加工装置1のX方向及びY方向の少なくとも一方の移動の精度が変化することがある。レーザ加工装置1の操業時に得られたマーク3の位置が、据付け時に得られた情報から変化している場合、レーザ加工装置1のX方向及びY方向の少なくとも一方の移動の精度が変化している可能性がある。この場合、機構4Gは、レーザ加工装置1が据え付けられた後、かつ生産に用いられているときに得られたマーク3の位置を用いてレーザ光LLの照射方向を補正する。このような機構4Gの動作により、レーザ加工装置1は、ワークWの加工精度の低下を抑制できる。
実施の形態1において、レーザ加工装置1は、制御装置31によって制御される。制御装置31は、図1に示されるように、処理部32と、記憶部33と、入出力部34とを含む。処理部32は、CPU(Central Processing Unit)のようなプロセッサである。記憶部33は、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、ハードディスクドライブ、ストレージデバイス又はこれらを組み合わせた記憶装置である。入出力部34は、制御装置31と、制御装置31に接続される外部機器とのインターフェースの役割を果たすインターフェース回路である。
図1に示される第1アクチュエータ5A、第2アクチュエータ6A、読取装置8、レーザ発信装置9、エンコーダ17,27、第1ドライバ30X、第2ドライバ30Y、及び入力装置35は、入出力部34に接続される。処理部32は、入出力部34を介して読取装置8の検出値、エンコーダ17,27の検出値、及び入力装置35から入力された情報を取得する。また、処理部32は、入出力部34を介して、第1アクチュエータ5A、第2アクチュエータ6A、レーザ発信装置9、第1ドライバ30X、及び第2ドライバ30Yに制御のための信号を送信する。
記憶部33は、レーザ加工装置1を制御するための処理を制御装置31が実行するためのコンピュータプログラムを記憶している。処理部32は、前述したコンピュータプログラムを記憶部33から読み出して、レーザ加工装置1を制御する。
制御装置31は、第1ドライバ30Xを介してアクチュエータ16を制御し、第2ドライバ30Yを介してアクチュエータ26を制御する。制御装置31は、エンコーダ17の検出値及びエンコーダ27の検出値を用いてアクチュエータ16及びアクチュエータ26を制御する。エンコーダ17の検出値は、アクチュエータ16のシャフト及びねじ15の回転角度であり、エンコーダ27の検出値は、エンコーダ27の検出値、すなわちアクチュエータ26のシャフト及びねじ25の回転角度である。
入力装置35は、レーザ加工装置1を動作させるための命令及びデータを入力する装置である。入力装置35は、入力部35I及び表示部35Mを有する。実施の形態1において、入力部35Iは、キーボード、ボタン又はタッチパネルであるがこれらに限定されない。表示部35Mは、液晶ディスプレイであるがこれに限定されない。表示部35Mは、制御装置31の記憶部33に記憶されている情報及びレーザ加工装置1に発生したエラーの情報を表示することができる。表示部35Mが表示する情報は、これらに限定されない。次に、レーザ加工装置1が設置場所に設置されたときの処理を説明する。
図2は、実施の形態1に係るレーザ加工装置が設置されたときの処理の一例を示すフローチャートである。この処理は、本実施形態に係るレーザ加工方法の設定工程を含む。図3は、実施の形態1に係るレーザ加工装置が設置されたときにテーブルの送りピッチが計測される状態を示す図である。図4は、実施の形態1に係るレーザ加工装置が有するテーブルの送りピッチを計測した結果の一例を示す図である。
レーザ加工装置1は、製造元から出荷されると、製造現場に搬入される。製造現場に搬入されたレーザ加工装置1は、設置場所に設置され、据え付けられる。レーザ加工装置1は、設置場所に設置され、据え付けられると、ステップS101において、テーブル2のX方向及びY方向の送りピッチが計測される。実施の形態1において、送りピッチは、ねじ15又はねじ25の単位回転量あたりにおけるテーブル2の移動量である。
より具体的には、X方向の送りピッチは、図1に示されるテーブル2をX方向に移動させるねじ15、すなわちアクチュエータ16のシャフトが1回転したときに、テーブル2がX方向に移動した距離である。Y方向の送りピッチは、図1に示されるテーブル2をY方向に移動させるねじ25、すなわちアクチュエータ26のシャフトが1回転したときに、テーブル2がY方向に移動した距離である。送りピッチはこれらに限定されず、ねじ15又はねじ25の回転角度1度あたりにおけるテーブル2の移動量であってもよいし、エンコーダ17,27の1パルスあたりにおけるテーブル2の移動量であってもよい。
X方向におけるテーブル2の移動量は、図3に示される非接触式の測長器36Xが計測する。Y方向におけるテーブル2の移動量は、図3に示される非接触式の測長器36Yが計測する。測長器36X,36Yは、レーザ計測器が用いられるが、これに限定されるものではない。測長器36X,36Yは、図1に示される制御装置31の入出力部34に接続される。X方向における送りピッチを計測する場合、制御装置31は、第1ドライバ30Xを介してアクチュエータ16のシャフトを回転させながら、エンコーダ17の検出値及び測長器36Xの検出値を取得する。制御装置31は、Y方向における送りピッチを計測する場合、第2ドライバ30Yを介してアクチュエータ26のシャフトを回転させながら、エンコーダ27の検出値及び測長器36Yの検出値を取得する。
図4は、X方向の送りピッチが計測された結果の一例を示している。図4に示される結果は、エンコーダ17の検出値Exrと、測長器36Xの検出値XPrとが対応付けられている。図4に示される例において、エンコーダ17の検出値Exrはパルス数であり、測長器36Xの検出値XPrは長さである。検出値XPrの単位はmmであるとする。図4に示される例において、アクチュエータ16のシャフト、すなわちねじ15が1回転すると、エンコーダ17の検出値Exrは1000パルスであるとする。図4中の符号Nは、ねじ15が回転した数を示している。図4に示される例では、ねじ15がk回転したときの各回転におけるエンコーダ17の検出値Exrと、測長器36Xの検出値XPrとが示されている。kは、1以上の整数である。
図4に示される例において、レーザ加工装置1は、ねじ15が1回転すると、テーブル2はX方向に10mm移動するように設計されているものとする。すなわち、レーザ加工装置1は、X方向の送りピッチが10mmに設計されている。
図4に示される結果は、ねじ15の1回転あたりにおけるX方向の送りピッチがばらついていることを示している。このばらつきは、レーザ加工装置1の製造における誤差及び設置場所の影響によるものである。制御装置31は、ステップS102において、送りピッチの計測結果に基づき、テーブル2の移動に関する補正値を求める。次においては、制御装置31が、X方向の送りピッチの計測結果に基づき、X方向におけるテーブル2の移動に関する補正値を求める例が説明される。補正値は、X方向の送りピッチを設計値とするために必要なねじ15の回転量とすることができる。
図4に示される例では、ねじ15の2回転目において、送りピッチは設計値に対して0.15mm不足している。このため、処理部32は、ねじ15の2回転目は0.15mm、エンコーダ17の検出値Exrでは15パルス分、ねじ15を多く回転させる。この場合、補正値Exrcは、エンコーダ17のパルスで1015パルスとなる。
図4に示される例では、ねじ15のk回転目において、送りピッチは設計値に対して0.12mm余分である。このため、処理部32は、ねじ15のk回転目は0.12mm、エンコーダ17の検出値Exrでは12パルス分、ねじ15を少なく回転させる。この場合、補正値Exrcは、エンコーダ17のパルスで988パルスとなる。
制御装置31は、ねじ15の各回転において補正値Exrcを求め、記憶部33に記憶させる。制御装置31は、テーブル2をX方向に移動させる場合、記憶部33から補正値Exrcを読み出す。そして、制御装置31は、テーブル2の送り量がその指令値となるように、読み出した補正値Exrcを用いてアクチュエータ16を制御する。
Y方向におけるテーブル2の移動に関する補正値も、X方向と同様に求められる。実施の形態1では、制御装置31がテーブル2の移動に関する補正値を求めたが、制御装置31とは異なる装置が補正値を求めて、制御装置31の記憶部33に記憶させてもよい。
テーブル2の移動に関する補正値が得られたら、ステップS103において、レーザ加工装置1は、テーブル2の第1面2Psに載置された基板を加工する。この加工は、図1に示される機構4Gの動作量を求めるために必要な処理である。
図5は、実施の形態1に係るレーザ加工装置が有する機構の動作量を求めるための処理を説明する図である。図6は、実施の形態1に係るレーザ加工装置による基板の加工点と、設計値との関係を示す図である。
ステップS103において、制御装置31は、加工ヘッド4を制御する。加工ヘッド4は、制御装置31からの命令を受けて、テーブル2の第1面2Psに載置された基板SBにレーザ光LLを照射して、基板SBの表面に第2マークであるマークDTを形成する。制御装置31は、加工ヘッド4がマークDTを基板SBの表面に形成する毎に、図1に示されるアクチュエータ16,26を制御して、テーブル2をX方向及びY方向の少なくとも一方に、予め定められた大きさだけ移動させ、加工ヘッド4によるマークDTの形成を繰り返す。このとき、レーザ加工装置1が基板SBの表面に格子状に複数のマークDTを形成する場合、制御装置31は、ステップS102で得られた補正値を用いて、アクチュエータ16,26を制御する。このようにして、制御装置31は、図5に示されるように、基板SBの表面に、格子状に複数のマークDTを形成する。
図6は、基板SBの表面に格子状に形成された複数のマークDTのうち一部を示している。加工ヘッド4によって形成されたマークDTは、マークDTr11,DTr12,・・・DTr33の9個である。以下において、これらを適宜、実マークDTr11,DTr12,・・・DTr33と称する。これらを区別する必要がない場合、実マークDTrと称する。符号DTd11,DTd12,・・・DTd33は、マークDTの本来の位置、すなわち設計値の位置を示す。以下において、マークDTの設計値の位置を適宜、設計位置DTd11,DTd12,・・・DTd33と称する。これらを区別する必要がない場合、設計位置DTdと称する。
図6に示されるように、設計位置DTdと、実マークDTrの位置とは異なることがある。これは、レーザ加工装置1の製造における誤差及び設置場所の影響によるものである。レーザ加工装置1は、加工ヘッド4が有する機構4Gによってレーザ光LLの照射方向を変更することで、設計位置DTdと、実マークDTrの位置とのずれを補正する。
図7は、実施の形態1に係るレーザ加工装置が有する機構の動作量を説明するための図である。図7は、機構4G、より具体的には第2機構6が有する第2ミラー6Mと、第2ミラー6Mから基板SBの表面SBpに照射されるレーザ光LLの位置P1,P2とを示している。第2ミラー6Mの姿勢がBSで示される状態であるときに、第2ミラー6Mから基板SBの表面SBpに照射されるレーザ光LLの位置が位置P1である。第2ミラー6Mの姿勢がVPで示される状態であるときに、第2ミラー6Mから基板SBの表面SBpに照射されるレーザ光LLの位置が位置P2である。
第2ミラー6Mの姿勢がBSで示される状態からVPで示される状態に変化すると、基板SBの表面SBpに照射されるレーザ光LLの位置は、位置P1から位置P2に変化する。第2ミラー6Mの姿勢VPの状態は、レーザ光LLが第2ミラー6Mで反射される位置を中心として、第2ミラー6Mが、姿勢BSの状態から角度θyだけ傾いた状態である。第2機構6は、第2ミラー6Mの姿勢を変更することにより、基板SBの表面SBpに照射されるレーザ光LLの位置を変更することができる。
第1機構5の第1ミラー5Mからのレーザ光LLが、第2ミラー6Mで反射される位置から基板SBの表面SBpまでの距離をLzとする。レーザ光LLが第2ミラー6Mで反射される位置から基板SBの表面SBpまでの距離Lzは、第2ミラー6Mの姿勢によっては変化しない。第2ミラー6Mが姿勢VPである場合、位置P1と位置P2との距離ΔYは、角度θyを用いて、式(1)で求めることができる。距離ΔYは、Y方向における距離である。角度θyは、式(2)で求めることができる。
ΔY=Lz×tanθy・・(1)
θy=tan−1(ΔY/Lz)・・(2)
このように、第2機構6は、第2ミラー6Mの角度θyを変更することにより、Y方向において基板SB又はワークWにレーザ光LLが照射される位置を変更することができる。第1機構5も第2機構6と同様に、第1ミラー5Mの角度θxを変更することにより、X方向において基板SB又はワークWにレーザ光LLが照射される位置を変更することができる。
具体的には、第1機構5の第1ミラー5Mがレーザ光LLを反射する位置と、第2ミラー6Mがレーザ光LLを反射する位置との距離をLyとする。第1ミラー5Mが第1の位置から第2の位置に傾いたときの角度をθxとする。第1の位置から第2の位置に傾いた場合に、基板SB又はワークWの表面に照射されるレーザ光LLがX方向に移動した距離をΔXとする。この場合、距離ΔXは、角度θxを用いて、式(3)で求めることができる。角度θxは、式(4)で求めることができる。
ΔX=Ly×tanθx・・(3)
θx=tan−1(ΔX/Ly)・・(4)
このように、機構4Gは、第1ミラー5Mの角度θx及び第2ミラー6Mの角度θyの少なくとも一方を変更することで、基板SB又はワークWの表面に照射されるレーザ光LLの位置を変更することができる。ΔXを、図6に示される設計位置DTdと実マークDTrの位置との、X方向におけるずれとし、ΔYを、図6に示される設計位置DTdと実マークDTrの位置との、Y方向におけるずれとする。距離Ly,Lzは既知なので、ΔX,ΔY、距離Ly,Lzから、第1機構5の第1ミラー5Mの角度θx及び第2機構6の第2ミラー6Mの角度θyが得られる。
制御装置31は、ステップS104において、基板SBに形成された実マークDTr11,DTr12,・・・DTr33を読取装置8に読み取らせる。このとき、制御装置31は、テーブル2が有するマーク3A,3B,3Cを読取装置8に読み取らせる。制御装置31は、読取装置8が実マークDTr11,DTr12,・・・DTr33及びマーク3A,3B,3Cを読み取ったときのX方向における位置及びY方向における位置を、エンコーダ17,27の検出値から求める。エンコーダ17,27の検出値から得られたX方向における位置及びY方向における位置が、実マークDTr11,DTr12,・・・DTr33の位置である。設計位置DTd11,DTd12,・・・DTd33は、レーザ加工装置1の設計情報から予め求められる。実施の形態1においては、レーザ加工装置1の読取装置8がマーク3及び実マークDTrを読み込むがこれに限定されない。制御装置31は、レーザ加工装置1が備える読取装置8以外の装置にマーク3及び実マークDTrを読み込ませ、結果を取得してもよい。
ステップS105において、制御装置31は、設計位置DTd及び実マークDTrの位置から、両者のX方向におけるずれΔX及びY方向におけるずれΔYを求める。制御装置31は、得られたずれΔX及びΔYから、第1機構5の第1ミラー5Mの角度θx及び第2機構6の第2ミラー6Mの角度θyを求める。この角度θx,θyが、設計位置DTdでの機構4Gの動作量、すなわち機構4Gが有する第1ミラー5M及び第2ミラー6Mの動作量となる。機構4Gは、得られた角度θx,θyを用いて第1ミラー5M及び第2ミラー6Mを動作させて、ワークWに照射されたレーザ光LLの位置が設計位置DTdとなるように、レーザ光LLの照射方向を変更する。
図8は、実施の形態1に係るレーザ加工装置による基板の加工点の位置における機構の動作量が記述されたデータテーブルの一例を示す図である。制御装置31は、それぞれの設計位置DTd及びそれぞれの実マークDTrの位置から、両者のX方向におけるずれΔX及びY方向におけるずれΔYを求め、得られたずれΔX及びΔYから、それぞれの設計位置DTdにおける第1ミラー5Mの角度θx及び第2ミラー6Mの角度θyを求める。制御装置31は、それぞれの設計位置DTdと、求めた第1ミラー5Mの角度θx及び第2ミラー6Mの角度θyとから、データテーブルTBGを作成し、記憶部33に記憶させる。
データテーブルTBGは、それぞれの設計位置DTd11,DTd12,・・・DTd33に対する第1ミラー5Mの角度θx及び第2ミラー6Mの角度θyが対応付けられて記述されている。実施の形態1において、データテーブルTBGは、X方向にm個、Y方向にn個の合計m×n個の設計位置DTdについての角度θx,θyを有している。m,nは、それぞれ2以上の整数である。
前述したステップS103、ステップS104及びステップS105は、実施の形態1に係るレーザ加工方法の設定工程に対応する。実施の形態1において、制御装置31がデータテーブルTBGを作成して記憶部33に記憶させるが、制御装置31とは異なる装置がデータテーブルTBGを作成して、制御装置31の記憶部33に記憶させてもよい。
図9は、実施の形態1に係るレーザ加工装置のテーブルが有するマークの位置の情報が記述されたデータテーブルの一例を示す図である。ステップS104において求められたマーク3の位置(Xb,Yb)は、データテーブルTBFに記述される。このように、マーク3の位置は、レーザ加工装置1が設置場所に設置された段階得られる。マーク3Aの位置は(Xb1,Yb1)であり、マーク3Bの位置は(Xb2,Yb2)であり、マーク3Cの位置は(Xb3,Yb3)である。実施の形態1において、データテーブルTBFは、制御装置31が作成して記憶部33に記憶させるが、制御装置31とは異なる装置がデータテーブルTBFを作成して、制御装置31の記憶部33に記憶させてもよい。
図10は、実施の形態1において、実マークの位置及び実マークの位置とテーブルが有するマークとの距離が記述されたデータテーブルの一例を示す図である。図11は、実施の形態1において、実マークの位置とテーブルが有するマークとの距離を説明するための図である。データテーブルTBRは、位置(X1,Y1),(X2,Y2),・・・(Xm,Yn)、及び距離ΔLA,ΔLB,ΔLCが記述されている。位置(X1,Y1),(X2,Y2),・・・(Xm,Yn)は、図5に示される基板SBに形成された実マークDTr11,DTr12,・・・DTrmnの位置である。距離ΔLA,ΔLB,ΔLCは、実マークDTrと、テーブル2が有するそれぞれのマーク3A,3B,3Cとの距離である。距離ΔLA,ΔLB,ΔLCは、それぞれの実マークDTr11,DTr12,・・・DTrmn毎に求められる。
実マークDTrmnについて、距離ΔLA,ΔLB,ΔLCは、それぞれ式(5)、式(6)、式(7)のようになる。
ΔLA=√{(Xb1−Xm)2+(Yb1−Yn)2}・・(5)
ΔLB=√{(Xb2−Xm)2+(Yb2−Yn)2}・・(6)
ΔLC=√{(Xb3−Xm)2+(Yb3−Yn)2}・・(7)
実施の形態1において、データテーブルTBRは、制御装置31が作成して記憶部33に記憶させるが、制御装置31とは異なる装置がデータテーブルTBRを作成して、制御装置31の記憶部33に記憶させてもよい。
図12は、実施の形態1に係るレーザ加工装置が設置場所に設置された後、かつ操業時に実行される処理の一例を示すフローチャートである。図13は、実施の形態1に係るレーザ加工装置の設置時と操業時とにおける、実マークの位置とテーブルが有するマークとの距離を説明するための図である。操業時に実行される処理は、実施の形態1に係るレーザ加工方法における補正工程を含む。補正工程は、レーザ加工装置1が設置場所に設置された後、かつレーザ加工装置1の操業が開始、すなわちレーザ加工装置1によるワークWの加工が開始された後に実行される。
図1に示されるレーザ加工装置1がワークWを加工するにあたり、ステップS201において、制御装置31は、読取装置8が、テーブル2が有する複数のマーク3を読み取るタイミングか否かを判定する。複数のマーク3を計測するタイミングは特に限定されるものではないが、レーザ加工装置1のワークWを交換するタイミングが例示される。
複数のマーク3を読み取るタイミングでない場合(ステップS201、No)、制御装置31は、レーザ加工方法の補正工程を終了させる。複数のマーク3を読み取るタイミングである場合(ステップS201、Yes)、ステップS202において、制御装置31は、読取装置8に、テーブル2が有する複数のマーク3を読み取らせる。制御装置31は、読取装置8がマーク3を読み取ったときのエンコーダ17,27の検出値を取得する。そして、制御装置31は、マーク3のX方向における位置及びY方向における位置を求める。以下において、ステップS202の読み取り結果から得られたマーク3Aの位置を(Xa1,Ya1)、マーク3Bの位置を(Xa2,Ya2)、マーク3Cの位置を(Xa3,Ya3)とする。
次に、制御装置31は、記憶部33からデータテーブルTBFを読み出し、レーザ加工装置1の設置時に取得したマーク3Aの位置(Xb1,Yb1)、マーク3Bの位置(Xb2,Yb2)、及びマーク3Cの位置(Xb3,Yb3)を取得する。レーザ加工装置1が設置された後に設置面のレベルが変化したような場合、テーブル2の移動の精度は設置時と比較して変化することがある。この変化は、マーク3の位置の変化に現れる。
ステップS203において、制御装置31は、レーザ加工装置1の設置後、レーザ加工装置1の加工が開始された後に取得したマーク3の位置が、レーザ加工装置1の設置時におけるマーク3の位置から変化した量を求める。マーク3の位置が変化した量は、それぞれのマーク3A,3B,3CのX方向における位置の差分及びY方向における位置の差分であってもよいし、ステップS202で取得されたマーク3の位置と設置時におけるマーク3の位置との距離であってもよい。
マーク3の位置が変化した量が閾値未満である場合(ステップS203、No)、制御装置31は、レーザ加工方法の補正工程を終了させる。マーク3の位置が変化した量が閾値以上である場合(ステップS203、Yes)、制御装置31は、ステップS204を実行する。実施の形態1において、閾値は、テーブル2の移動の精度の許容値とする。
マーク3の位置が変化した量が閾値以上である場合(ステップS203、Yes)、テーブル2の移動の精度が許容できなくなっている可能性がある。この場合、レーザ加工装置1が設置されたときに求められた機構4Gの動作量では、設計位置DTdにレーザ光LLを照射できない可能性がある。このため、制御装置31は、ステップS204において、機構4Gの動作量を求める。
実施の形態1において、制御装置31は、ステップS202の読み取り結果から得られたマーク3の位置と、設定工程で得られた実マークDTrの位置との距離を用いて、レーザ加工装置1の操業が開始された後の実マークDTrの位置を求める。制御装置31は、レーザ加工装置1の操業が開始された後の実マークDTrの位置から、機構4Gの動作量を求める。
制御装置31は、記憶部33に記憶されているデータテーブルTBRを記憶部33から、それぞれの実マークDTr11,DTr12,・・・DTrmnに対応した距離ΔLA,ΔLB,ΔLCを取得する。制御装置31は、レーザ加工装置1の加工が開始された後のマーク3Aの位置(Xa1,Ya1)、マーク3Bの位置(Xa2,Ya2)、及びマーク3Cの位置(Xa3,Ya3)と、操業後におけるそれぞれの実マークDTr11,DTr12,・・・DTrmnの位置(XA1,YA1),(XA2,YA2),・・・(XAm,YAn)との距離を求める。操業後におけるそれぞれの実マークDTr11,DTr12,・・・DTrmnの位置(XA1,YA1),(XA2,YA2),・・・(XAm,YAn)は、未知数である。次の説明では、操業後の実マークDTrmnを例とする。
マーク3Aの位置(Xa1,Ya1)と、操業後における実マークDTrmnの位置(Xam,Yan)との距離ΔLAaは式(8)で求められる。マーク3Aの位置(Xa1,Ya1)と実マークDTrmnの位置(Xm,Yn)との距離ΔLBaは式(9)で求められる。マーク3Aの位置(Xa1,Ya1)と実マークDTrmnの位置(Xm,Yn)との距離ΔLCaは式(10)で求められる。
ΔLAa=√{(Xa1−XAm)2+(Ya1−YAn)2}・・(8)
ΔLBa=√{(Xa2−XAm)2+(Ya2−YAn)2}・・(9)
ΔLCa=√{(Xa3−XAm)2+(Ya3−YAn)2}・・(10)
制御装置31は、レーザ加工装置1の操業が開始された後のマーク3Aの位置を用いて求められた距離ΔLAa,ΔLBa,ΔLCaの比率が、レーザ加工装置1の設置時において求められた距離ΔLA,ΔLB,ΔLCの比率と同一になるという条件で、実マークDTrmnの位置(Xm,Yn)を決定する。すなわち、制御装置31は、式(11)が成立する条件で、実マークDTrmnのX座標であるXm及びY座標であるYnを求める。
ΔLAa:ΔLBa:ΔLCa=ΔLA:ΔLB:ΔLC・・(11)
制御装置31は、式(8)から式(11)を用いて、操業後におけるすべての実マークDTr11,DTr12,・・・DTrmnの位置(Xa1,Ya1),(Xa2,Ya2),・・・(Xam,Yan)を求める。制御装置31は、操業後における実マークDTrの位置と、それぞれの実マークDTrに対応する設計位置DTdとの位置から、両者のX方向におけるずれΔX及びY方向におけるずれΔYを求める。制御装置31は、得られたずれΔX及びΔYから、第1機構5の第1ミラー5Mの角度θx及び第2機構6の第2ミラー6Mの角度θyを求める。この角度θx,θyが、レーザ加工装置1の加工が開始された後の補正工程によって得られた、設計位置DTdでの機構4Gの動作量、すなわち機構4Gが有する第1ミラー5M及び第2ミラー6Mの動作量となる。前述したステップS202及びステップS204は、実施の形態1に係るレーザ加工方法の補正工程に対応する。
機構4Gは、ステップS204で得られた動作量、すなわち角度θx,θyを用いて第1ミラー5M及び第2ミラー6Mを動作させて、ワークWに照射されたレーザ光LLの位置が設計位置DTdとなるように、レーザ光LLの照射方向を変更する。このようにすることで、レーザ加工装置1は、マーク3の位置が変化した量が閾値以上である場合であっても、ワークWに照射されるレーザ光LLの位置と、設計位置DTdとのずれを低減できる。その結果、レーザ加工装置1は、設置場所に設置され、操業が開始された後において、ワークWを載置するテーブル2の移動の精度の低下を抑制できるので、ワークWの加工精度の低下を抑制できる。レーザ加工装置1の補正工程に要する時間は、読取装置8がマーク3を読み取る時間、及び読み取りによって得られたマーク3の位置を用いて機構4Gの動作量を求める時間である。このため、補正工程に要する時間は、サービスマンによるメンテナンスに要する時間と比較して大幅に短いので、レーザ加工装置1は補正工程の回数を多くすることができる。その結果、レーザ加工装置1は、テーブル2の移動の精度を設置時の状態に維持しやすくなるので、設置時におけるワークWの加工精度を維持しやすくなる。
レーザ加工装置1は、レーザ光LLの照射によりテーブル2の温度が上昇し、変形又は移動の精度が変化する可能性がある。レーザ加工装置1は、操業が開始された後に得たマーク3の位置を用いて、ワークWに照射されたレーザ光LLの位置が設計位置DTdとなるように第1ミラー5M及び第2ミラー6Mを動作させる。このため、テーブル2が温度によって変形したり、温度によってテーブル2の移動の精度が変化したりした場合であっても、レーザ加工装置1は、テーブル2の変形の影響及びテーブル2の移動の精度の低下を抑制できるので、ワークWの加工精度の低下を抑制できる。
レーザ加工装置1の補正工程は、ワークWの交換のような加工の空き時間で行われるので、レーザ加工装置1が製造できない時間を低減できる。図1に示されるテーブル2の加工領域2WAの外側にマーク3が配置されることにより、テーブル2にワークWが載置されている状態でもレーザ加工装置1の補正工程を実現できる。このため、レーザ加工装置1は、加工中に補正工程を実行することができるので、製造できない時間をさらに低減できる。
レーザ加工装置1が設置され、レーザ加工装置1による操業が開始された後にテーブル2の移動の精度が変化することがある。レーザ加工装置1は、操業の開始により製品の製造が開始された後でも、テーブル2が有する複数のマーク3の位置を用いて、ワークWに照射されるレーザ光LLの位置が設計位置DTdとなるように、機構4Gの動作量を求めることができる。このため、レーザ加工装置1は、操業が開始された後にテーブル2の移動の精度が変化した場合でも、サービスマンによるメンテナンスを受けなくてもワークWの加工精度の低下を抑制できる。その結果、サービスマンによるメンテナンスの時間を削減できるという利点もある。
マークの数の変形例.
図14から図17は、実施の形態1の変形例に係るレーザ加工装置のテーブルを示す平面図である。図14に示されるレーザ加工装置1aが有するテーブル2aは、加工領域2WAaの外側に4個のマーク3A,3B,3C,3Dを有する。図15に示されるレーザ加工装置1bが有するテーブル2bは、加工領域2WAbの外側に4個以上のマーク3を有する。図15に示されるレーザ加工装置1bは、補正工程において、実マークDTr11の周辺に存在する3個のマーク3Aから機構4Gの動作量を求め、実マークDTrmnの周辺に存在する3個のマーク3Cから機構4Gの動作量を求める。
図16に示されるレーザ加工装置1cが有するテーブル2cは、4個以上のマーク3を有し、さらに加工領域2WAc内にもマーク3を有する。図16に示されるレーザ加工装置1cは、補正工程において、実マークDTr11の周辺に存在する3個のマーク3Aから機構4Gの動作量を求め、実マークDTrmnの周辺に存在する3個のマーク3Iから機構4Gの動作量を求める。変形例において、テーブル2cは、加工領域2WAの内側と外側との両方にマーク3を有するが、加工領域2WAの内側のみにマーク3を有してもよい。
テーブル2,2a,2b,2cが有するマーク3の数が増加することにより、マーク3の数が少ない場合と比較して、レーザ加工装置1,1a,1b,1cは、テーブル2,2a,2b,2cの移動の精度の変化をより小さい範囲で検出できる。すなわち、レーザ加工装置1,1a,1b,1cは、マーク3の数が増加することにより、テーブル2,2a,2b,2cの移動の精度の変化を検出する分解能が高くなるので、テーブル2,2a,2b,2cの移動の精度の低下を抑制する効果は大きくなる。レーザ加工装置1,1a,1b,1cは、読取装置8がマーク3を読み取る時間の増加及びマーク3が配置される領域が許容できる範囲で、多くのマークを有することができる。
テーブル2,2a,2b,2cが有する複数のマーク3は、少なくとも2方向に沿って配列される。複数のマークが配列される2方向は交差していればよく、直交していなくてもよい。
図17に示されるレーザ加工装置1dが有するテーブル2dは、2個のマーク3A,3Bを有している。2個のマーク3A,3Bは、X方向沿って配列されているが、Y方向に沿って配列されていてもよい。
図18及び図19は、実施の形態1の変形例に係るレーザ加工装置のテーブルが2個のマークを有する場合に、実マークの位置を求める方法を説明するための図である。テーブル2dが2個のマーク3A,3Bを有する場合、レーザ加工装置1dの設置時において、マーク3Aの位置が(Xb1,Yb1)、マーク3Bの位置が(Xb2,Yb2)であるとする。レーザ加工装置1dの設置後、かつ操業が開始された後において、マーク3Aの位置は(Xa1,Ya1)、マーク3Bの位置は(Xa2,Ya2)であるとする。レーザ加工装置1dの設置時から操業が開始された後の間に、実マークDTrmnが移動したとする。移動後における実マークDTrを、符号DTamnで表す。以下において、移動後における実マークDTrを、適宜、移動後実マークDTamnと称する。図18中の距離ΔLAはマーク3Aと実マークDTrmnとの距離であり、距離ΔLBはマーク3Bと実マークDTrmnとの距離である。
レーザ加工装置1dの設置時から操業が開始された後の間において、マーク3A,3B及び実マークDTrmnは移動するが、そのときのベクトルをVA,VB及びVDとする。移動後実マークDTamnの位置、すなわちベクトルVDの終点EDは、ベクトルVAの始点SとベクトルVBの始点Sとを一致させたとき、両者の終点EA,EBを結ぶ線上に存在する。ベクトルVDの終点EDは、ベクトルVAの終点EAとベクトルVBの終点EBとの距離を、ΔLA:ΔLBの比率で分割する位置となる。このような条件で、移動後実マークDTamnの位置が決定される。
このように、実施の形態1において、テーブル2,2a,2b,2c,2dは、少なくとも2個のマーク3を有していればよいが、3個のマーク3により、2方向の変化はより確実に検出されるので好ましい。
マークの取付構造の変形例.
図20は、実施の形態1に係るレーザ加工装置において、マークの取付構造の変形例を示す図である。レーザ加工装置1eが有するテーブル2eは、第1面2Psに複数の穴2Hを有する。マーク3eは、穴2Hに取り付けられる。また、穴2Hに取り付けられたマーク3eは、穴2Hから取り外される。このように、マーク3eは、テーブル2eに着脱される。補正工程が実行されない場合、マーク3eはテーブル2eから取り外され、保管されることが可能になるので、レーザ加工装置1eの加工時に汚れにくくなるという利点がある。
マークの位置の変形例.
図21及び図22は、実施の形態1に係るレーザ加工装置において、マークの位置の変形例を示す図である。図21に示されるレーザ加工装置1fのテーブル2fは、側面2SA,2SB,2SC,2SDにマーク3を有する。図22に示されるレーザ加工装置1gのテーブル2gは、第2面2Prにマーク3を有する。このように、マーク3は、テーブル2f,2gの第1面2Ps以外に設けられていてもよい。テーブル2fが、側面2SA,2SB,2SC,2SDにマーク3を有することにより、読取装置8は、Z方向におけるテーブル2fの変形も検出できる。また、レーザ加工装置1f,1gは、設置環境によって、第1面2Psと対向する位置に読取装置8を配置できない場合であっても、テーブル2f,2gの第1面2Ps以外にマーク3が設けられることにより、読取装置8によるマーク3の読み取りを実現できることがある。このため、レーザ加工装置1f,1gは、配置の自由度が向上するという利点がある。
実施の形態1及び変形例では、X方向及びY方向におけるテーブル2,2a,2b,2c,2d,2e,2f,2gの移動の精度の低下を抑制したが、Z方向におけるテーブル2,2a,2b,2c,2d,2e,2f,2gの変形も抑制されてもよい。この場合、レーザ加工装置1,1a,1b,1c,1d,1e,1f,1gの制御装置31は、マーク3及び実マークDTrのX方向及びY方向における位置に加え、Z方向における位置も取得する。そして、制御装置31は、取得した、マーク3及び実マークDTrのZ方向における位置を用いて、操業が開始された後における実マークDTrのZ方向における位置を求める。この場合、制御装置31は、前述したように、操業開始の前後において、複数のマーク3の位置と実マークDTrの位置とから得られた複数の距離の比率が同一になるという条件で、操業が開始された後における実マークDTrのZ方向における位置を求める。
制御装置31は、操業が開始された後における実マークDTrのZ方向における位置を用いて、ワークWの表面にレーザ光LLが結蔵するように、加工ヘッド4が有する光学系7の焦点調整機構を制御する。このような処理により、制御装置31は、テーブル2,2a,2b,2c,2d,2e,2f,2gにZ方向の変形が発生した場合でも、前述した変形に起因する影響を低減できるので、Z方向においてもワークWの加工精度の低下を抑制できる。
以上の実施の形態に示した構成は、本発明の内容の一例を示すものであり、別の公知の技術と組み合わせることも可能であるし、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、構成の一部を省略又は変更することも可能である。