JP5999697B2 - 発塵抑制用組成物及び水硬性粉状組成物 - Google Patents

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本発明は、発塵抑制用組成物、及び発塵が抑制された水硬性粉状組成物に関する。
従来、粉塵発生防止のための様々な方法が知られている。例えば、特許文献1には、軟弱地盤の土質改良に用いられる発塵が抑制された固化材として、セメント系固化材に、(a)水3〜10質量%および(b)凝結遅延剤としてデキストリン、グルコン酸ナトリウムの何れかを0.1〜0.4質量%を添加してなる地盤改良用発塵抑制型固化材が記載されている。
また、ゲルを形成する発塵抑制剤として、特許文献2には、特定の平均分子量を有し、0.0001〜0.01重量%の固形分濃度を有する直鎖状のポリ(メタ)アクリルアミド水溶液あるいは水分散液であって、固形分濃度が0.01重量%を超えることにより保水性ゲルを形成するポリ(メタ)アクリルアミド水溶液あるいは水分散液からなる粉塵処理剤が記載されている。
また、特許文献3には、急結性コンクリートの吹付け工法においてリバウンド率や粉塵量を低減できる、アルギン酸塩とポリアクリル酸塩を含有してなるリバウンド低減剤が記載されている。
特開2003−13064号公報 特開2008−248225号公報 特開2001−261397号公報
本発明の目的は、セメント、軟弱地盤の改良等に用いられるセメント系固化材、石灰等のカルシウム系粉体を取り扱う際に発生する粉塵を、カルシウム系粉体に添加することで十分に抑制することができ、かつ、カルシウム系粉体の保管期間が長期間になっても、発塵抑制の効果が持続する発塵抑制用組成物、及び、発塵抑制用組成物とカルシウム系粉体とを含み、強度発現性が良好な水硬性粉状組成物を提供することにある。
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、デンプン類と、特定の水和遅延剤とを含む発塵抑制用組成物によれば、前記の目的を達成することができることを見出し、本発明を完成した。
すなわち、本発明は、以下の[1]〜[]を提供するものである。
[1] デンプン類と、水和遅延剤とを含む発塵抑制用組成物であって、前記水和遅延剤が、クエン酸、グルコン酸、または、これらの酸のナトリウム塩もしくはカリウム塩であることを特徴とする発塵抑制用組成物。
[2] 前記デンプン類が、デンプン、及び化工デンプンから選ばれる少なくとも1種である、前記[1]に記載の発塵抑制用組成物。
] さらに、水を含む前記[1]または[2]に記載の発塵抑制用組成物。
] 前記[1]〜[]のいずれかに記載の発塵抑制用組成物と、カルシウム系粉体とを含む水硬性粉状組成物。
本発明の発塵抑制用組成物は、カルシウム系粉体に添加することによって、該カルシウム系粉体を取り扱う際に発生する粉塵を十分に抑制することができ、かつ、カルシウム系粉体の保管期間が長期間になっても、発塵抑制の効果を持続させることができる。
また、本発明の水硬性粉状組成物は、該水硬性粉状組成物を取り扱う際に発生する粉塵が十分に抑制され、該水硬性粉状組成物の保管期間が長期間になっても、発塵抑制の効果が持続し、かつ、強度発現性に優れている。
本発明で用いられるデンプン類とは、デンプンの他に化工デンプンを含む。ここで、化工デンプンとは、デンプンに物理的、酵素的または化学的処理を行なったものをいい、具体的には、アルファー化デンプン、デキストリン、酸化デンプン、酵素処理デンプン、デンプン誘導体等が挙げられる。デンプン誘導体としては、エーテル化デンプン、エステル化デンプン、架橋デンプン等が挙げられる。エーテル化デンプンの具体例としては、デンプングリコール酸ナトリウム、ヒドロキシプロピルデンプン、カチオンデンプン等が挙げられる。エステル化デンプンの具体例としては、酢酸デンプン、リン酸デンプン、オクテニルコハク酸デンプン等が挙げられる。架橋デンプンの具体例としては、リン酸架橋デンプン、アセチル化アジピン酸架橋デンプン、アセチル化リン酸架橋デンプン、ヒドロキシプロピル化リン酸架橋デンプン、リン酸モノエステル化リン酸架橋デンプン等が挙げられる。デンプンの状態はアルファデンプン、ベータデンプンのどちらの状態でもよい。
中でも、発塵抑制効果の継続性、及び、後述する発塵抑制用組成物の強度発現性等の観点から、好ましくはデンプン、又はアルファー化デンプン、より好ましくはデンプンである。
これらは、1種を単独で、または2種以上を組み合わせて用いることができる。
本発明で用いられる水和遅延剤とは、カルシウム系粉体が水と接触した際に起こる水和反応を遅延させるものであればよく、具体的には、ヒドロキシカルボン酸もしくはその塩、糖類、無機酸もしくはその塩等が挙げられる。ヒドロキシカルボン酸としては、例えば、クエン酸、グルコン酸、リンゴ酸、酒石酸、ヘプトン酸、ガラクトン酸等が挙げられる。ヒドロキシカルボン酸の塩としては、例えば、ナトリウム塩、カリウム塩等が挙げられる。糖類としては、例えば、グルコース、サッカロース、デキストリン等が挙げられる。無機酸としては、例えば、リン酸、硼酸等が挙げられる。無機酸の塩としては、例えば、ナトリウム塩、カリウム塩等が挙げられる。
中でも、発塵抑制効果の継続性、及び、後述する水硬性粉状組成物の強度発現性等の観点から、好ましくはクエン酸もしくはその塩、グルコン酸もしくはその塩、グルコース、より好ましくはクエン酸もしくはその塩、グルコン酸もしくはその塩、特に好ましくはクエン酸もしくはその塩である。
水和遅延剤としては、市販のセメントの凝結遅延剤、生石灰の水和遅延剤等を用いることができる。
これらは、1種を単独で、または2種以上を組み合わせて用いることができる。
本発明の発塵抑制用組成物は、上述したデンプン類と、水和遅延剤とを含むものである。
また、発塵抑制用組成物は、さらに水を含んでもよい。
水としては、特に限定されるものではなく、水道水等を用いることができる。
上記発塵抑制用組成物を、セメント、セメントを含む粉状組成物(例えば、セメント系固化材等)、石灰、石灰を含む粉状組成物(例えば石灰系固化材)等の水硬性を有するカルシウム系粉体(以下、「発塵抑制処理対象物」ともいう。)に添加、混合することで、カルシウム系粉体の発塵を抑制することができる。
本発明の発塵抑制用組成物に含まれるデンプン類と水和遅延剤との質量比(デンプン類/水和遅延剤)は、好ましくは99/1〜1/99、より好ましくは95/5〜5/95、さらに好ましくは90/10〜10/90、さらに好ましくは50/50〜15/85、特に好ましくは40/60〜20/80である。
上記質量比が99/1を超える場合、本発明の発塵抑制用組成物を発塵抑制処理対象物に用いた場合に、発塵の抑制が不十分となる場合がある。上記質量比が1/99未満の場合、本発明の発塵抑制用組成物を用いた発塵抑制処理対象物の強度発現性が低下する場合がある。また、本発明の発塵抑制用組成物を含む水硬性粉状組成物の保管期間が長くなった場合に、発塵の抑制が不十分となる場合がある。
また、発塵抑制処理対象物100質量部に対する、本発明の発塵抑制用組成物に含まれるデンプン類と水和遅延剤の合計量は、好ましくは0.1〜2.0質量部、より好ましくは0.3〜1.8質量部、特に好ましくは0.5〜1.5質量部である。
該量が0.1質量部未満では、本発明の発塵抑制用組成物を発塵抑制処理対象物に用いた場合に、発塵の抑制が不十分となる場合がある。該量が2.0質量部を超えると、コストが高くなるとともに、本発明の発塵抑制用組成物を用いた発塵抑制処理対象物の強度発現性が低下する場合がある。
また、発塵抑制処理対象物100質量部に対する、本発明の発塵抑制用組成物に含まれる水の量は、好ましくは1〜10質量部、より好ましくは2〜9質量部、特に好ましくは3〜7質量部である。
該量が1質量部未満では、本発明の発塵抑制用組成物を発塵抑制処理対象物に用いた場合に、発塵の抑制が不十分となる場合がある。該量が10質量部を超えると、本発明の発塵抑制用組成物を用いた発塵抑制処理対象物の強度発現性が低下する場合がある。
本発明の水硬性粉状組成物は、上記発塵抑制用組成物とカルシウム系粉体とを含むものである。
該水硬性粉状組成物の製造方法としては、(1)カルシウム系粉体とデンプン類を混合してなる混合物に、あらかじめ水和遅延剤と水を混合してなる水溶液を添加しながら混練する方法、(2)水と、デンプン類と、水和遅延剤とを混合して、水溶液又は懸濁液を調製し、該水溶液または懸濁液をカルシウム系粉体に添加しながら混練する方法等が挙げられる。
中でも、作業性の観点から(1)の方法が好ましい。
本発明の水硬性粉状組成物を固化材として用いた場合、運搬、保存、施工時等において、粉塵の発生が少なく、作業性に優れている。また、土壌等に用いた場合、強度発現性が良好である。
上記カルシウム系粉体がセメントの場合、セメントを含む水硬性粉状組成物と、水(混練水)と、細骨材とを混合することでモルタルを得ることができる。また、セメントを含む水硬性粉状組成物と、水(混練水)と、細骨材と、粗骨材とを混合することでコンクリートを得ることができる。これらは強度発現性が良好である。
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
使用材料としては、以下に示す材料を使用した。
(1)デンプン類:デンプン(川光物産社製、商品名「玉三コーンスターチ」)
(2)水和遅延剤A:クエン酸(試薬)
(3)水和遅延剤B:グルコン酸ナトリウム(試薬)
(4)水和遅延剤C:グルコース(試薬)
(5)水:水道水
(6)カルシウム系粉体:セメント系固化材(太平洋セメント社製、商品名「ジオセット200」)
(7)試料土:関東ローム
[実施例1]
セメント系固化材100質量部に対してデンプン0.15質量部を添加して混合した。得られた混合物に、クエン酸0.5質量部と水5質量部をあらかじめ混合してなる水溶液を添加して混合し、水硬性粉状組成物を製造した。
得られた水硬性粉状組成物を1日、7日、10日間、20℃の条件下で保管したのち、それぞれの発塵量を測定した。
発塵量は、テフロン処理防塵固化材技術資料の付録−1「テフロン処理防塵固化材の発塵試験方法」に準じ、浮遊粉塵量として測定した。なお、テフロンは登録商標である。デジタル粉塵計は、柴田科学社製のデジタル粉じん計P−5L型を用いた。具体的には、内径7.5cm、高さ10cmの円筒状の試料落下装置の片側を平滑なプラスチック板で蓋をして、試験落下装置の中に得られた水硬性粉状組成物200gを強く締固めないように注意し、緩めに秤量した。
内径39cm、高さ59cmの円筒容器の頂部投入口(直径7.5cm)より水硬性粉状組成物200gを自然落下させ、底面より高さ45cmの位置の容器内の浮遊粉塵量(相対濃度CPM[Count Per Minute])を散乱光式デジタル粉塵計により測定した。
浮遊粉塵量の測定は、試料落下直後から1分間計測を連続して5回行い、試料投入前の測定値(ダークカウント)を差し引いた値の幾何平均値を、下記式(1)より求め、当該試料の「発塵量」とした。結果を表1に示す。
LogX=1/5Σlog(X−d) ・・・(1)
(上記式(1)中、Xは個々の測定値を示し、dはダークカウントを示す。)
また、得られた水硬性粉状組成物を7日間、20℃の条件下で保管したのち、該水硬性粉状組成物を固化材として土壌に添加した場合の一軸圧縮強さを測定した。
具体的には、試料土(関東ローム)に、上記水硬性粉状組成物を固形分換算で300kg/m添加して混合し、JGS 0821「安定処理土の締固めをしない供試体作製方法」に準じて、φ5cm×10cmの円柱供試体を作製した。該供試体の材齢7日の一軸圧縮強さをJIS A1216「土の一軸圧縮試験方法」に準じて測定した。結果を表1に示す。
[実施例2]
クエン酸の代わりにグルコン酸ナトリウムを用いた以外は実施例1と同様にして水硬性粉状組成物を得た。得られた水硬性粉状組成物の発塵量、及び該水硬性粉状組成物を固化材として土壌に添加した場合の一軸圧縮強さを実施例1と同様にして測定した。結果を表1に示す。
参考例1
クエン酸の代わりにグルコースを用いた以外は実施例1と同様にして水硬性粉状組成物を得た。得られた水硬性粉状組成物の発塵量、及び該水硬性粉状組成物を固化材として土壌に添加した場合の一軸圧縮強さを実施例1と同様にして測定した。結果を表1に示す。
[比較例1]
セメント系固化材の発塵量、及び該セメント系固化材を土壌に添加した場合の一軸圧縮強さを実施例1と同様にして測定した。結果を表1に示す。
[比較例2]
セメント系固化材100質量部に、クエン酸0.5質量部と水5質量部をあらかじめ混合してなる水溶液を添加して混合し、水硬性粉状組成物を製造した。
得られた水硬性粉状組成物の発塵量、及び該水硬性粉状組成物を固化材として土壌に添加した場合の一軸圧縮強さを実施例1と同様にして測定した。結果を表1に示す。
[比較例3]
セメント系固化材100質量部に、グルコン酸ナトリウム0.5質量部と水5質量部をあらかじめ混合してなる水溶液を添加して混合し、水硬性粉状組成物を製造した。
得られた水硬性粉状組成物の発塵量、及び該水硬性粉状組成物を固化材として土壌に添加した場合の一軸圧縮強さを実施例1と同様にして測定した。結果を表1に示す。
[比較例4]
セメント系固化材100質量部に対してデンプン0.15質量部を添加して混合した。得られた混合物に水5質量部を添加して混合し、水硬性粉状組成物を製造した。得られた水硬性粉状組成物の発塵量、及び該水硬性粉状組成物を固化材として土壌に添加した場合の一軸圧縮強さを実施例1と同様にして測定した。結果を表1に示す。
Figure 0005999697
表1より、本発明の発塵抑制用組成物とカルシウム系粉体とを含む水硬性粉状組成物は、長期にわたって発塵量が抑制されていることがわかる。また、該水硬性粉状組成物を固化材として土壌に添加した場合、一軸圧縮強さが、デンプン類、水和遅延剤及び水を含まない比較例1と同等以上であり、良好であることがわかる。

Claims (4)

  1. デンプン類と、水和遅延剤とを含む発塵抑制用組成物であって、
    前記水和遅延剤が、クエン酸、グルコン酸、または、これらの酸のナトリウム塩もしくはカリウム塩であることを特徴とする発塵抑制用組成物。
  2. 前記デンプン類が、デンプン、及び化工デンプンから選ばれる少なくとも1種である、請求項1に記載の発塵抑制用組成物。
  3. さらに、水を含む、請求項1または2に記載の発塵抑制用組成物。
  4. 請求項1〜のいずれか1項に記載の発塵抑制用組成物と、カルシウム系粉体とを含む水硬性粉状組成物。
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