上記従来の電磁弁のように、弁部の開閉動作に伴って作動液を弁室とバネ室(背圧室)との間で循環させることは、バネ室に存在する気泡を効率良く作動液とともに外部に排出する上で極めて有効である。ところで、上記従来の電磁弁においては、作動液の循環を実現するために、形状の異なる複数の連通路を形成するようになっている。一般に、形成する貫通孔の孔形状が異なるほど、或いは、孔形状が複雑になるほど、加工に必要な工具(例えば、ドリル等)の維持管理や貫通孔の加工精度の管理等が必要となる。例えば、上記従来の電磁弁が採用するような断面積が軸方向に沿って変化するテーパ孔等では、孔加工に専用の工具(ドリル等)が必要となる。又、加工する孔の深さが深い場合には工具の破損が発生しやすくなる一方で加工精度の確保が必要となり、更には、異なる形状の貫通孔を加工するために複数の加工工程の設定も必要となるため、製造コストの増大が懸念される。
本発明は、上記した問題に対処するためになされたものであり、その目的の一つは、製造コストの低減を達成して気泡に起因する自励振動を抑制することができる電磁弁を提供することにある。
上記目的を達成するための本発明による電磁弁は、ハウジングと、プランジャと、ロッドと、少なくとも2つの第1連通路及び第2連通路と、ソレノイドと、付勢手段とを備えている。
前記ハウジングは、内部に弁部が設けられるとともに外部から前記弁部へ作動液が流入する流入ポート及び前記弁部を通過した作動液が外部へ流出する流出ポートが形成されるものである。前記プランジャは、前記ハウジングの内部に収容されて前記ハウジングに形成されたガイド部によって進退可能に支持されるものである。前記ロッドは、大径部と小径部とを有していて前記プランジャに対して前記大径側が一体的に組み付けられるとともに前記小径部側に前記プランジャの進退に応じて前記弁部を形成する弁座に当接又は離間して前記弁部を開閉する弁体が形成されるものである。前記第1連通路及び前記第2連通路は、それぞれ、前記プランジャに形成されており、前記ハウジングの内部にて前記プランジャによって区画された前記弁部側の弁室と前記弁部と反対側の背圧室とを連通するものである。前記ソレノイドは、前記ハウジングの周囲に配置されて前記プランジャ及び前記ロッドを一体的に電磁力により(例えば、前記弁部の開弁方向に)吸引するものである。前記付勢手段は、前記ハウジングの前記背圧室に設けられて前記プランジャ及び前記ロッドを一体的に付勢力により(例えば、前記弁部の閉弁方向に)付勢するものである。
本発明による電磁弁の特徴の一つは、前記弁室側にて前記ロッドの前記大径部の外周面と前記ハウジングの内周面とによって囲まれて形成される流路であって前記弁座から前記第1連通路に至る第1流路と前記弁座から前記第2連通路に至る第2流路とが、前記弁座から前記第1連通路に到達する作動液に作用する流通に伴う抵抗が前記弁座から前記第2連通路に到達する作動液に作用する流通に伴う抵抗よりも小さくなるように形成され、かつ前記ハウジングに形成される流出ポートを、前記第2連通路側にのみ設けたことにある。
これによれば、弁室内において、ロッドの大径部の外周面とハウジングの内周面とによって囲まれて形成される第1流路を介して弁座から第1連通路に到達する作動液に作用する流通に伴う抵抗を、ロッドの大径部の外周面とハウジングの内周面とによって囲まれて形成される第2流路を介して弁座から第2連通路に到達する作動液に作用する流通に伴う抵抗よりも小さくすることができる。このため、弁座から流入した作動液の多くは、流通に伴う抵抗が小さい(流れやすい)第1流路から第1連通路を通って背圧室に流れる。一方、第2流路は第1流路に比して流通に伴う抵抗が大きいために弁座から流入した作動液が第2連通路を通って背圧室に流れにくく、その結果、第1連通路を通って背圧室まで流れた作動液が第2連通路を通って弁室に戻る。すなわち、第1流路における流通に伴う抵抗を第2流路における流通に伴う抵抗よりも小さくすることにより、弁室と背圧室との間で作動液が第1連通路から第2連通路を通るように整流して一方向の循環流を生じさせることができる。従って、例えば、背圧室に気泡が存在している場合であっても、生じさせた循環流によって効率良く気泡を排出することができる。
特に、前記ハウジングに形成される流出ポートは、作動液の流通に伴う抵抗が大きくなる第2流路に接続される第2連通路側のみに設けられる。言い換えれば、作動液の流通に伴う抵抗の小さい第1流路側に流出ポートが設けられない。従って、弁座から流入した作動液は、その大部分が外部に流出することなく、第1流路を介して第1連通路に到達して背圧室に向けて流れる。その結果、弁室と背圧室との間で作動液が第1連通路から第2連通路を通るように強く整流して一方向の循環流をより確実に生じさせることができる。従って、例えば、背圧室に気泡が存在している場合であっても、生じさせた循環流によってより効率良く気泡を排出することができる。
又、この場合、前記第1連通路及び前記第2連通路は、それぞれ、前記プランジャの中心軸と平行に形成されており、前記第1流路と前記第2流路とを、前記プランジャの中心軸を含み、かつ、前記第1連通路の中心軸及び前記第2連通路の中心軸からの距離が等しい平面に対して非対称となるように形成することができる。
これによれば、第1流路と第2流路とは、プランジャの中心軸を含み、かつ、第1連通路の中心軸及び第2連通路の中心軸からの距離が等しい平面に対して非対称となる。すなわち、このように第1流路と第2流路とが互いに非対称となることにより、例えば、前記平面に直交する平面における第1流路の流路断面積と第2流路の流路断面積とを互いに異ならせることができる。これにより、第1流路を介して弁座から第1連通路に到達する作動液に作用する流通に伴う抵抗が、第2流路を介して弁座から第2連通路に到達する作動液に作用する流通に伴う抵抗よりも小さくなるように差を生じさせることができ、その結果、弁室と背圧室との間で作動液が第1連通路から第2連通路を通るように整流して一方向の循環流を生じさせることができる。従って、例えば、背圧室に気泡が存在している場合であっても、生じさせた循環流によって効率良く気泡を排出することができる。
又、これらの場合、前記第1流路を介して前記弁座から前記第1連通路に到達する作動液に作用する流通に伴う抵抗が前記第2流路を介して前記弁座から前記第2連通路に到達する作動液に作用する流通に伴う抵抗よりも小さくなるように、前記弁室側にて前記ロッドの前記大径部の外周面と前記ハウジングの内周面とによって囲まれて形成される前記第1流路及び前記第2流路のうちの少なくとも一方に前記流通に伴う抵抗に差を生じさせる抵抗差形成部を設けることができる。
この場合、前記抵抗差形成部を、例えば、前記ロッドの前記大径部の外周面に設けることができ、より具体的に、前記ロッドの前記大径部の外周面に設けられる前記抵抗差形成部を、前記第1流路を形成する前記ロッドの前記大径部の外周面に形成した切り欠き、前記第2流路を形成する前記ロッドの前記大径部の外周面に設けた突起物、及び、前記第1流路及び前記第2流路を形成する前記ロッドの前記大径部の外周面の前記第2流路方向への偏心のうちの少なくとも一つにより形成することができる。
これによれば、抵抗差形成部を設けることにより、第1流路を介して弁座から第1連通路に到達する作動液に作用する流通に伴う抵抗が、第2流路を介して弁座から第2連通路に到達する作動液に作用する流通に伴う抵抗よりも小さくなるように差を生じさせることができ、その結果、弁室と背圧室との間で作動液が第1連通路から第2連通路を通るように整流して一方向の循環流を生じさせることができる。従って、例えば、背圧室に気泡が存在している場合であっても、生じさせた循環流によって効率良く気泡を排出することができる。又、このように抵抗差形成部をロッドの大径部の外周面に設ける場合には、極めて容易にかつ安価に加工することができる。従って、特に、抵抗差形成部を設ける場合には、第1連通路及び第2連通路、すなわち、貫通孔を複雑な断面形状に加工する必要がなく、その結果、電磁弁の製造コストを低減することができる。
また、本発明の他の特徴は、前述したハウジング、プランジャ、ロッド、第1連通路、第2連通路、ソレノイド及び付勢手段を備えた電磁弁において、前記弁室側にて前記ロッドの前記大径部の外周面と前記ハウジングの内周面とによって囲まれて形成される流路であって前記弁座から前記第1連通路に至る第1流路と前記弁座から前記第2連通路に至る第2流路とのうちの少なくとも一方の流路側であって、前記ハウジングの内周面に、前記弁座から前記第1連通路に到達する作動液に作用する流通に伴う抵抗が前記弁座から前記第2連通路に到達する作動液に作用する流通に伴う抵抗よりも小さくなるように,前記流通に伴う抵抗に差を生じさせる抵抗差形成部を設けたことにある。この場合、前記ハウジングの内周面に設けられる前記抵抗差形成部は、例えば、前記第2流路を形成する前記ハウジングの内周面に設けた突起物である。
これによれば、ハウジングの内周面に対して抵抗差形成部を設けることにより、第1流路を介して弁座から第1連通路に到達する作動液に作用する流通に伴う抵抗が、第2流路を介して弁座から第2連通路に到達する作動液に作用する流通に伴う抵抗よりも小さくなるように差を生じさせることができ、その結果、弁室と背圧室との間で作動液が第1連通路から第2連通路を通るように整流して一方向の循環流を生じさせることができる。従って、例えば、背圧室に気泡が存在している場合であっても、生じさせた循環流によって効率良く気泡を排出することができる。又、抵抗差形成部をハウジングの内周面に設ける場合には、極めて容易にかつ安価に加工することができる。従って、特に、抵抗差形成部を設ける場合には、第1連通路及び第2連通路、すなわち、貫通孔を複雑な断面形状に加工する必要がなく、その結果、電磁弁の製造コストを低減することができる。
更に、前記本発明の他の特徴を有する電磁弁においても、前記ハウジングに形成される流出ポートを、前記第2連通路側にのみ設けるとよい。
これによれば、前記ハウジングに形成される流出ポートは、作動液の流通に伴う抵抗が大きくなる第2流路に接続される第2連通路側のみに設けられる。言い換えれば、作動液の流通に伴う抵抗の小さい第1流路側に流出ポートが設けられない。従って、弁座から流入した作動液は、その大部分が外部に流出することなく、第1流路を介して第1連通路に到達して背圧室に向けて流れる。その結果、弁室と背圧室との間で作動液が第1連通路から第2連通路を通るように強く整流して一方向の循環流をより確実に生じさせることができる。従って、例えば、背圧室に気泡が存在している場合であっても、生じさせた循環流によってより効率良く気泡を排出することができる。
a.第1実施形態
以下、本発明の実施形態に係る電磁弁について図面を用いて説明する。図1は、本発明の第1実施形態に係る電磁弁Aの構成を示す断面図である。電磁弁Aは、所謂、常閉電磁弁であり、弁体ユニット10を備えている。
弁体ユニット10は、ロッド11、プランジャ(可動子)12及びバネ13を有している。ロッド11は、基端側に所定の長さにわたって径の細い挿入部11aが形成され、先端側に後述するシート30に形成された弁座31に着座して作動液の連通を遮断(阻止)するように半球状の弁体11bが形成されている。更に、ロッド11は、図2にて拡大して示すように、基端側の挿入部11aと小径部である先端側の弁部11bとの間の大径部である中間部分にて、その中心軸に平行な断面における断面形状が非対称となる、抵抗差形成部としての非対称部11cが形成されている。非対称部11cは、図3にて図2におけるA−A断面図及び図4にて斜視図を概略的に示すように、本来、円筒形状である中間部分において、例えば、その周方向にて外周面の一部に切り欠き部分11c1を設けることにより形成される。
プランジャ12は、図1に示すように、円筒状に形成された磁性体であり、ロッド11の挿入部11aが嵌め込まれて固定されるシャフト嵌合穴12aが中心軸と同軸に設けられている。プランジャ12は、後述するハウジング20の内部に配置されており、ハウジング20の内部を弁室21とバネ室22とに区画する。そして、プランジャ12は、弁室21と背圧室であるバネ室22とを連通させる複数の連通路、具体的に、本実施形態においては2つの連通路として第1連通路12b及び第2連通路12cが形成されている。ここで、第1連通路12b及び第2連通路12cは、それぞれ、プランジャ12の中心軸に対して平行にかつ一定の内径を維持して形成される貫通孔(ストレート孔)である。又、プランジャ12には、中心軸と同軸に設けられていて、軸方向への変位を規制するストッパ12dが形成されている。
バネ13は、図1に示すように、ロッド11及びプランジャ12を閉弁方向、すなわち、ロッド11の弁体11bをシート30の弁座31に着座させる方向に付勢する付勢力を発生するものである。そして、バネ13は、プランジャ12に形成されたストッパ12dとともに、後述するハウジング20のバネ収容穴20f内に収容される。
ハウジング20は、固定子として機能するものであり、図1に示すように、円柱状に形成された磁性体である本体部20aに、厚みが薄い円筒部20bが同軸となるように一体的に結合された形状に形成される。円筒部20bは、開口端部から所定長さにわたって設けられており、内部に収容したプランジャ12の軸方向への進退を案内(ガイド)する。このため、以下の説明においては、このハウジング20を構成する円筒部20bをガイド部20bとも称呼する。又、円筒部20bは、非磁性の円環部20cを介して本体部20aに結合されるようになっている。又、円筒部20bには、端部の開口部20dの内壁から外面へと径方向に貫通し、作動液を外部に排出する流出ポート20eが対向して2箇所に設けられている。更に、本体部20aには、プランジャ12に形成されたストッパ12d及びバネ13を収容するバネ収容穴20fが形成されている。
又、ハウジング20内部に形成される弁室21はプランジャ12の先端面とシート部30の上端面とによって区画されるとともに、ロッド11の中間部分(大径部)に形成した非対称部11cにおける外周面とガイド部20b(すなわち、ハウジング20)の内周面とによって区画される空間であり、この弁室21にはロッド11の弁体11b及びシート30の弁座31によって構成される弁部が含まれる。ハウジング20内部に形成される背圧室としてのバネ室22は、プランジャ12を挟んで弁室21と反対側にて、プランジャ12の後端面と本体部20aの下端面及びバネ収容穴20fの内面とによって区画されるとともに、ガイド部20b(すなわち、ハウジング20)の内周面によって区画される空間であり、バネ収容穴20fに収容されたバネ13が配設されている。
シート30は、図1に示すように、円筒状に形成された非磁性体である本体部30aに、中心軸と同軸に作動液が流入する流入ポート30bが設けられている。流入ポート30bは、深部において細くなっており、細くなった流入ポート30bとシート30(本体部30a)の端部との境界部分に弁座31が形成されている。弁座31は、弁体ユニット10を構成するロッド11の弁体11bがバネ13に付勢力によって当接(着座)することにより、流入ポート30bから弁室21への作動液の流入を遮断する。逆に、弁座31は、ロッド11の弁体11bが後述するソレノイド40による吸引力(電磁力)によって離間することにより、流入ポート30bから弁室21への作動液の流入を許可する。尚、以下の説明において、ロッド11の弁体11bが弁座31から離間する方向を「第1方向」と称呼し、ロッド11の弁体11bが弁座31に当接する(着座する)方向を「第2方向」と称呼する場合がある。そして、シート30は、弁座31が設けられた端部からハウジング20の開口部20dに圧入され、ハウジング20から脱落しないように強固に嵌め込まれる。
ここで、弁体ユニット10及びシート30のハウジング20への組付けを説明しておく。まず、ハウジング20に対して弁体ユニット10が組み付けられる。すなわち、ロッド11の挿入部11aをプランジャ12のシャフト嵌合穴12aに挿入して一体的に組み付ける。このとき、図3及び図4に示すように、ロッド11の非対称部11cを形成する切り欠き部分11c1がプランジャ12の第1連通路12b側に配置されるように、ロッド11がプランジャ12に組み付けられる。そして、プランジャ12のストッパ12dにバネ13を挿通させておき、この状態の弁体ユニット10をプランジャ12側を先頭にしてハウジング20の円筒部20b内部に挿入する。続いて、シート30がハウジング20の円筒部20b内部に嵌め込まれることにより、弁体ユニット10は、ロッド11の弁体11bが第1方向又は第2方向に移動することが可能となる。尚、バネ13がハウジング20の本体部20aに形成されたバネ収容穴20fに圧縮されて収容されることにより、ロッド11及びプランジャ12には第2方向に向けて付勢する付勢力が常に作用するようになっている。すなわち、電磁弁Aは、通常、ロッド11の弁体11bがシート31の弁座31に着座した閉弁状態を維持するようになっている。
又、電磁弁Aは、ソレノイド40を備えている。ソレノイド40は、コイル41、コイルヨーク42及びリングヨーク43を有する。コイル41は、プランジャ12の外部を囲うように、ハウジング20の外部において巻回されている。コイルヨーク42は、カップ状に形成された磁性体であり、コイル41の径方向外側にてコイル41を囲うように配置される。リングヨーク43は、円盤状の磁性体であり、中央の挿通孔がハウジング20の円筒部20bの外周に嵌め込まれることにより固定される。コイルヨーク42は、ハウジング20の本体部20a及びリングヨーク43に取り付けられる。このように、コイル41は、磁性体であるコイルヨーク42及びリングヨーク43によってその外周が覆われる。
このように構成される常閉の電磁弁Aにおいては、ソレノイド40のコイル41に開弁電流、より具体的には、バネ13による第2方向への付勢力に抗してロッド11及びプランジャ12を第1方向に移動させるために必要な電磁力な吸引力(ソレノイド力)をコイル41に発生させる電流よりも大きな電流が供給されると、図5に示すように、ロッド11の弁体11bがシート30の弁座31から離間して開弁状態に移行する。これにより、シート30の流入ポート30bを介してハウジング20の弁室21に向けて作動液が流入し、流入した作動液の一部はハウジング20の流出ポート20eから外部に流出する。
このため、開弁直後においては、シート30の流入ポート30b内部の液圧が一時的に低下し、その結果、バネ13の付勢力によってロッド11及びプランジャ12が押し返されて弁体11bが再び弁座31に着座する。これにより、開弁電流が継続して供給されている状況下では、流入ポート30b内部の液圧が上昇すると再び弁体11bが弁座31から離間して電磁弁Aが開弁する。このように、電磁弁Aの開弁直後においては、ロッド11の弁体11bが弁座31に繰り返し当接する(着座する)自励振動が発生する可能性があり、このことが、例えば、異音の発生に繋がる虞がある。そして、このような自励振動は、バネ室22に気泡が存在することによって一層助長される。従って、バネ室22に存在し得る気泡は、バネ室22から排出されることが望ましい。
そこで、本実施形態に係る電磁弁Aは、バネ室22に存在する気泡を効率良く排出するために、ロッド11に非対称部11cを形成し、弁室21とバネ室22との間に循環流を生じさせる。具体的に、本実施形態に係る電磁弁Aにおいては、弁室21内にて、ロッド11の中間部分(大径部)の外周面とガイド部20b(すなわち、ハウジング20)の内周面とによって形成される流路であって、シート30の流入ポート30bから弁座31を介して弁室21内に流入した作動液がプランジャ12に形成された第1連通路12bに向けて流れる流路(以下、第1流路と称呼する)と、シート30の流入ポート30bから弁座31を介して弁室21内に流入した作動液がプランジャ12に形成された第2連通路12cに向けて流れる流路(以下、第2流路と称呼する)とが形成される。又、本実施形態に係る電磁弁Aにおいては、上述したように、ロッド11の非対称部11cを形成する切り欠き部分11c1がプランジャ12の第1連通路12b側に配置されるように、ロッド11がプランジャ12に組み付けられる。
これにより、ロッド11の非対称部11cの外周面とガイド部20b(ハウジング20)の内周面とによって囲まれて形成される第1流路と第2流路は、図3に示すように、プランジャ12の中心軸を含みかつ第1連通路12bの中心軸及び第2連通路12cの中心軸からの距離が等しい仮想的な平面に対して非対称となるため、仮想的な平面に対して直交する平面(図3における紙面に平行な平面)における第1流路側と第2流路側の流路断面積の大きさが異なる。具体的に、本実施形態における電磁弁Aにおいては、ロッド11の非対称部11cを含んで形成される第1流路及び第2流路に関し、図3に示すように、プランジャ12の第1連通路12bの形成位置(すなわち、貫通孔の孔位相)に非対称部11cの切り欠き部分11c1を合わせることにより、第1流路側の流路断面積を大きくすることができる。一方、図3に示すように、プランジャ12の第2連通路12cの形成位置(孔位相)に非対称部11cの円弧部分を合わせることにより、第2流路側の流路断面積を第1流路側に比して小さくすることができる。
この結果、第1流路を介して第1連通路12bに到達する作動液に作用する流通に伴う抵抗(所謂、圧損)に比して、第2流路を介して第2連通路12cに到達する作動液に作用する流通に伴う抵抗(圧損)が大きくなる。従って、シート30の流入ポート30bから弁座31を介して弁室21内に流入した作動液は、流通に伴う抵抗の大きな第2流路よりも流通に伴う抵抗の小さい第1流路を選択的に流通する。これにより、コイル41に開弁電流が供給されて、図5に示すように、ロッド11の弁体11bが弁座31から離間して開弁状態に移行することによって弁室21内に流入した作動液の大部分は第1連通路12bを通って弁室21からバネ室22に流通し、バネ室22に到達した作動液は第2連通路12cを通って弁室21に戻る。
すなわち、ロッド11の中間部分(大径部)に抵抗差形成部としての非対称部11cを形成しておき、一定の内径を有する第1連通路12b及び第2連通路12cに至るまでの第1流路及び第2流路における流通に伴う抵抗の大きさを異ならせることにより、図5に示したように、弁室21とバネ室22との間で第1連通路12bから第2連通路12cを通るように整流して一方向に流れる循環流を生じさせることができる。これにより、バネ室22の近傍に溜まりやすい気泡を作動液とともに第2連通路12cを介して、例えば、第2連通路12c側の流出ポート20eまで流通させることができる。従って、例えば、第2連通路12c側の流出ポート20eから外部に作動液とともに気泡を効率良く排出することができ、自励振動の発生を抑制することができて異音の発生を防止することができる。又、ロッド11に対して非対称部11cを構成する切り欠き部分11c1を形成し、この切り欠き部分11c1を第1連通路12bに合わせて配置することによって電磁弁Aの内部に作動液の循環流を良好に生じさせることができるため、第1連通路12b及び第2連通路12cを単純な一定の内径を有する貫通孔、所謂、ストレート孔として形成することができる。従って、極めて容易に、かつ、安価にプランジャ12に第1連通路12b及び第2連通路12cを設けることができる。
ところで、上述した電磁弁Aの適用が可能な油圧装置として、例えば、車両のブレーキ制御装置を挙げることができる。以下、電磁弁Aを車両のブレーキ制御装置に適用する場合を説明する。図6は、電磁弁Aの適用が可能な車両のブレーキ制御装置100の概略システム構成図である。この車両のブレーキ制御装置100は、所謂、電子制御式ブレーキシステム(ECB)であり、ブレーキペダル110と、マスタシリンダユニット120と、動力液圧発生装置130と、ブレーキユニット140と、液圧制御弁装置150と、ブレーキ制御を司るブレーキECU180とを含んで構成される。
マスタシリンダユニット120は、マスタシリンダ121とリザーバ122とを備えている。マスタシリンダ121は、加圧ピストン121a,121bを備えたタンデム式であり、ブレーキペダル110の踏み込み操作に伴って入力されるペダル踏力に対して、それぞれ、所定の倍力比を有するマスタシリンダ圧Pmc_FR,Pmc_FLを発生する。マスタシリンダ121の上部には、作動液(ブレーキオイル)を貯留するリザーバ122が設けられている。これにより、マスタシリンダ121においては、ブレーキペダル110の踏み込み操作が解除されて加圧ピストン121a,121bが後退しているときに、加圧ピストン121a,121bによって形成される加圧室121a1,121b1がリザーバ122と連通するようになっている。尚、加圧室121a1,121b1は、それぞれ、後述するマスタ圧配管111,112を介して液圧制御弁装置150と連通するようになっている。
動力液圧発生装置130は、加圧ポンプ131とアキュムレータ132とを備えている。加圧ポンプ131は、その吸入口がリザーバ122に接続され、吐出口がアキュムレータ132に接続され、モータ133を駆動することにより作動液を加圧する。アキュムレータ132は、加圧ポンプ131により加圧された作動液の圧力エネルギーを窒素等の封入ガスの圧力エネルギーに変換して蓄える。又、アキュムレータ132は、マスタシリンダユニット120に設けられたリリーフバルブ123に接続されている。リリーフバルブ123は、作動液の圧力が所定の圧力以上に高まった場合に開弁し、作動液をリザーバ122に戻す。
ブレーキユニット140は、図6に示すように、車両の各車輪にそれぞれ設けられるブレーキユニット140FR,140FL,140RR,140RLからなる。尚、以下の説明においては、車輪ごとに設けられる構成についてその符号の末尾に、右前輪についてはFR、左前輪についてはFL、右後輪についてはRR,左後輪についてはRLを付すものとするが、特に車輪位置を特定する必要がない場合には、末尾に符号を省略する。各車輪にそれぞれ設けられるブレーキユニット140FR,140FL,140RR,140RLは、ブレーキロータ141FR,141FL,141RR,141RLとブレーキキャリパ内に内蔵されたホイールシリンダ142FR,142FL,142RR,142RLとを備える。ここで、ブレーキユニット140は、4輪ともディスクブレーキ式に限定されるものではなく、例えば、4輪ともドラムブレーキ式であってもよいし、前輪がディスクブレーキ式、後輪がドラムブレーキ式等のように任意に組み合わせたものであってもよい。
ホイールシリンダ142FR,142FL,142RR,142RLは、液圧制御弁装置150に接続されて同装置150を介して供給される作動液の液圧が伝達されるようになっている。そして、液圧制御弁装置150を介して伝達される(供給される)液圧(油圧)により、車輪と共に回転するブレーキロータ141FR,141FL,141RR,141RLにブレーキパッドを押し付けて車輪に制動力を付与する。
液圧制御弁装置150は、各ホイールシリンダ142FR,142FL,142RR,142RLに接続される4つの個別流路151FR,151FL,151RR,151RLと、個別流路151FR,151FL,151RR,151RLを連通する主流路152と、個別流路151FR,151FLとマスタ圧配管111,112とを接続するマスタ圧流路153,154と、主流路152とアキュムレータ圧配管113とを接続するアキュムレータ圧流路155とを備えている。ここで、マスタ圧流路153,154、及び、アキュムレータ圧流路155は、それぞれ、主流路152に対して並列に接続される。
各個別流路151FR,151FL,151RR,151RLには、それぞれ、保持弁161FR,161FL,161RR,161RLが設けられる。各保持弁161は、開弁状態では主流路152と各ホイールシリンダ142との間の作動液の連通を許可し、閉弁状態では主流路152と各ホイールシリンダ142との間の作動液の連通を禁止するものである。具体的に、左前輪側のブレーキユニット140FL及び右後輪側のブレーキユニット140RRに設けられた保持弁161FL,161RRは、ソレノイドの非通電時にバネの付勢力により開弁状態を維持し、ソレノイドへの通電中においてのみ閉弁状態となる常開の電磁弁(電磁開閉弁)である。
一方、右前輪側のブレーキユニット140FR及び左後輪側のブレーキユニット140RLに設けられた保持弁161FR,161RLは、ソレノイドの非通電時にバネの付勢力により閉弁状態を維持し、ソレノイドへの通電中においてのみ開弁状態となる常閉の電磁弁(電磁開閉弁)である。従って、上述した常閉の電磁弁Aは、保持弁161FR,161RLとして採用することができる。ここで、保持弁161(増圧弁)として電磁弁Aを採用した場合、電磁弁Aの流入ポート30bは個別流路151FR,151RLの上流側(主流路152側)が接続され、流出ポート20eは個別流路151FR,151RLの下流側に接続される。
又、各個別流路151FR,151FL,151RR,151RLには、それぞれ、減圧用個別流路156FR,156FL,156RR,156RLが接続される。各減圧用個別流路156は、リザーバ流路157に接続される。リザーバ流路157は、リザーバ配管114を介してリザーバ122に接続される。
各減圧用個別流路156FR,156FL,156RR,156RLには、その途中部分に、それぞれ、減圧弁162FR,162FL,162RR,162RLが設けられている。各減圧弁162は、開弁状態では各減圧用個別流路156を介してリザーバ流路157と各ホイールシリンダ142との間の作動液の連通を許可して各ホイールシリンダ142のホイールシリンダ圧を低下させ、閉弁状態ではリザーバ流路157と各ホイールシリンダ142との間の作動液の連通を禁止するものである。具体的に、減圧弁162RLは、ソレノイドの非通電時にスプリングの付勢力により開弁状態を維持し、ソレノイドへの通電中においてのみ閉弁状態となる常開の電磁開閉弁である。
一方、減圧弁162FR,162FL,162RRは、ソレノイドの非通電時にバネの付勢力により閉弁状態を維持し、ソレノイドへの通電中においてのみ開弁状態となる常閉の電磁弁(電磁開閉弁)である。従って、上述した常閉の電磁弁Aは、減圧弁162FR,162FL,162RRとして採用することができる。ここで、減圧弁162として電磁弁Aを採用した場合、電磁弁Aの流入ポート30bは減圧用個別流路156FR,156FL,156RRの上流側(ホイールシリンダ142FR,142FL,142RR側)が接続され、流出ポート20eは減圧用個別流路156FR,156FL,156RRの下流側を介してリザーバ流路157に接続される。
マスタ圧流路153,154は、それぞれ、その途中部分にマスタカット弁163,164が設けられる。マスタカット弁163,164は、ソレノイドの非通電時にバネの付勢力により開弁状態を維持し、ソレノイドへの通電中においてのみ閉弁状態となる常開の電磁弁(電磁開閉弁)である。このようにマスタカット弁163,164を設けることにより、マスタカット弁163,164が閉弁状態にあるときには、マスタシリンダ121とホイールシリンダ142FR,142FLとの間の接続が遮断されることによって作動液の流通が禁止され、マスタカット弁163,164が開弁状態にあるときには、マスタシリンダ121とホイールシリンダ142FR,142FLとが接続されることによって
作動液の流通が許容される。
アキュムレータ圧流路155には、その途中部分に増圧リニア制御弁165Aが設けられる。又、アキュムレータ圧流路155が接続される主流路152とリザーバ流路157との間には、減圧リニア制御弁165Bが設けられる。増圧リニア制御弁165A及び減圧リニア制御弁165Bは、ソレノイドの非通電時にバネの付勢力により閉弁状態を維持し、ソレノイドへの通電量(電流値)の増加に伴って弁開度を増加させる常閉の電磁リニア制御弁である。尚、常閉の電磁リニア制御弁では、内蔵されたバネが弁体を閉弁方向に付勢するバネ力と、相対的に高圧の作動液が流通する一次側(入口側)及び相対的に低圧の作動液が流通する二次側(出口側)の差圧によって弁体が開弁方向に付勢される差圧力との差分として表される閉弁力により閉弁状態を維持する。一方、ソレノイドへの通電により発生する弁体を開弁させる方向に作用する電磁吸引力が上記閉弁力を上回った場合、すなわち、電磁吸引力>閉弁力(=ばね力−差圧力)を満たす場合には、弁体に作用する力のバランスに応じた開度で開弁する。
又、マスタ圧流路154に接続されるマスタ圧配管112には、ストロークシミュレータ170が接続される。ストロークシミュレータ170は、ピストン170a及びバネ170bを備えており、ドライバによるブレーキペダル110のブレーキ操作量に応じた量の作動液を内部に導入する。そして、ストロークシミュレータ170は、作動液を内部に導入することに合わせてピストン170aをバネ170bの付勢力に抗して変位させることにより、ドライバによるブレーキペダル110のストローク操作を可能とするとともに、ブレーキ操作量に応じた反力を発生させてドライバのブレーキ操作フィーリングを良好にするものである。このストロークシミュレータ170は、シミュレータ流路171及び常閉の電磁弁(電磁開閉弁)であるシミュレータカット弁172を介してマスタ圧配管112に接続される。従って、上述した常閉の電磁弁Aを、このシミュレータカット弁172として採用することも可能である。尚、この場合、ストロークシミュレータ170をマスタ圧配管111に接続することも可能である。
動力液圧発生装置130及び液圧制御弁装置150は、ブレーキECU180により駆動制御される。ブレーキECU180は、CPU、ROM、RAM等からなるマイクロコンピュータを主要構成部品とするものであり、ポンプ駆動回路、電磁弁駆動回路、各種のセンサ信号を入力するインターフェース、通信インターフェース等を備えている。液圧制御弁装置150に設けられた各電磁弁(各電磁開閉弁)161〜164,172及びリニア制御弁165A,165Bは、全てブレーキECU180に接続され、ブレーキECU180から出力されるソレノイド駆動信号により開閉状態及び開度(リニア制御弁)が制御される。又、動力液圧発生装置130に設けられたモータ133についても、ブレーキECU180に接続され、ブレーキECU180から出力されるモータ駆動信号により駆動制御される。
又、液圧制御弁装置150には、アキュムレータ圧センサ181、マスタシリンダ圧センサ182,183、制御圧センサ184が設けられる。アキュムレータ圧センサ181は、アキュムレータ圧流路155における作動液の液圧、すなわち、アキュムレータ圧流路155は、アキュムレータ圧配管113を介してアキュムレータ132と連通しているためアキュムレータ圧Paccを検出する。マスタシリンダ圧センサ182は、マスタ圧流路153における作動液の液圧、すなわち、マスタ圧流路153はマスタ圧配管111を介して加圧室121a1と連通しているためマスタシリンダ圧Pmc_FRを検出する。マスタシリンダ圧センサ183は、マスタ圧流路154における作動液の液圧、すなわち、マスタ圧流路154はマスタ圧配管112を介して加圧室121b1と連通しているためマスタシリンダ圧Pmc_FLを検出する。制御圧センサ184は、主流路152における作動液の液圧、すなわち、制御圧Pxを検出する。
又、ブレーキECU180には、ブレーキペダル110に設けられたストロークセンサ185が接続される。ストロークセンサ185は、ドライバによるブレーキペダル110の踏み込み量(操作量)であるペダルストロークSmを検出する。又、ブレーキECU180には、車輪速センサ186が接続される。車輪速センサ186は、左右前後輪の回転速度である車輪速Vxを検出する。更に、ブレーキECU180には、ドライバに対して車両のブレーキ装置に発生した異常を報知するインジケータ187が接続される。インジケータ187は、ブレーキECU180による制御に従い、発生した異常を報知する。
次に、ブレーキECU180が実行するブレーキ制御について説明する。ブレーキECU180は、通常において、動力液圧発生装置130から出力される液圧(より詳しくは、アキュムレータ圧Pacc)を増圧リニア制御弁165A及び減圧リニア制御弁165Bにて調圧し、主流路152を介して各ホイールシリンダ142に伝達するリニア制御モードによりブレーキ制御を実行する。
まず、ブレーキECU180は、図7に示すように、常開のマスタカット弁163,164をソレノイドへの通電により閉弁状態に維持するとともに、シミュレータカット弁172をソレノイドへの通電により開弁状態に維持する。又、ブレーキECU180は、増圧リニア制御弁165A及び減圧リニア制御弁165Bのソレノイドへの通電量(電流値)を制御し、通電量に応じた開度に制御する。又、ブレーキECU180は、常開の保持弁161FL,161RRを開弁状態に維持するとともに常閉の保持弁161FR,161RLをソレノイドへの通電により開弁状態に維持し、常閉の減圧弁162FR,162FL,162RRを閉弁状態に維持するとともに常開の減圧弁162RLをソレノイドへの通電により閉弁状態に維持する。
このように液圧制御弁装置150を構成する各電磁弁(電磁開閉弁)の開弁状態又は閉弁状態が制御されることにより、マスタカット弁163,164が共に閉弁状態に維持されるため、マスタシリンダ121から出力されるマスタシリンダ圧Pmc_FR,Pmc_FLは、ホイールシリンダ142FR,142FLに伝達されない。一方、増圧リニア制御弁165A及び減圧リニア制御弁165Bがソレノイドの通電制御状態にあるため、動力液圧発生装置130から出力されるアキュムレータ圧Paccが増圧リニア制御弁165A及び減圧リニア制御弁165Bによって調圧されて4輪のホイールシリンダ142に伝達される。この場合、保持弁161が開弁状態に維持されるとともに減圧弁162が閉弁状態に維持されるため、各ホイールシリンダ142は、主流路152により連通されており、制御圧Pxすなわちホイールシリンダ圧Pwcが4輪で全て同じ値となる。
ここで、ブレーキECU180は、ドライバがブレーキペダル110を踏み込み操作(以下、単に「ブレーキ操作」とも称呼する。)すると、ブレーキ操作量として、マスタシリンダ圧センサ182により検出されるマスタシリンダ圧Pmc_FR、マスタシリンダ圧センサ183により検出されるマスタシリンダ圧Pmc_FL及びストロークセンサ185により検出されるペダルストロークSmのうちの少なくとも一つを取得し、マスタシリンダ圧Pmc_FR、マスタシリンダ圧Pmc_FL及び/又はペダルストロークSmの増大に伴って増大する目標制動力を演算する。尚、ブレーキ操作量については、マスタシリンダ圧Pmc_FR、マスタシリンダ圧Pmc_FL及び/又はペダルストロークSmを取得することに代えて、例えば、ブレーキペダル110に対するペダル踏力を検出する踏力センサを設けて、ペダル踏力に基づいて目標制動力を演算するように実施することも可能である。
そして、ブレーキECU180は、演算した目標制動力に基づいて、この目標制動力に対応した各ホイールシリンダ142の目標液圧を演算し、制御圧Px(すなわち、ホイールシリンダ圧Pwc)が目標液圧と等しくなるように、フィードバック制御により増圧リニア制御弁165A及び減圧リニア制御弁165Bの駆動電流を制御する。すなわち、ブレーキECU180は、制御圧センサ184によって検出された制御圧Pxが目標液圧に追従するように、増圧リニア制御弁165A及び減圧リニア制御弁165Bのソレノイドへの通電量(電流値)を制御する。
これにより、リニア制御モードにおいては、作動液が動力液圧発生装置130から増圧リニア制御弁165A及び主流路152を介して各ホイールシリンダ142に供給され、ホイールシリンダ圧Pwcが増加して車輪に制動力を発生させる。又、リニア制御モードにおいては、ホイールシリンダ142から作動液が、例えば、主流路152及び減圧リニア制御弁165Bを経てリザーバ流路157に排出されることにより、ホイールシリンダ圧Pwcが低下して車輪に発生する制動力を適切に調整することができる。
そして、例えば、ドライバによるブレーキ操作が解除されると、ブレーキECU180は、各減圧弁162を閉弁状態から開弁状態に移行させて、各ホイールシリンダ142におけるホイールシリンダ圧Pwcを低下させる。この場合、電磁弁Aを採用した減圧弁162FR,162FL,162RRにおいては、開弁電流が供給されることによって、図5に示したように、ロッド11の弁体11bがシート30の弁座から離間して開弁状態に移行する。これにより、ホイールシリンダ142FR,142FL,142RR内の作動液がシート30の流入ポート30bを介してハウジング20の弁室21に向けて流入する。そして、減圧弁162FR,162FL,162RRすなわち電磁弁Aにおいては、第1流路を介して第1連通路12bに到達する作動液に作用する流通に伴う抵抗に比して第2流路を介して第2連通路12cに到達する作動液に作用する流通に伴う抵抗が大きいため、流入した作動液は、上述したように、流通に伴う抵抗の大きな第2流路よりも流通に伴う抵抗の小さい第1流路を選択的に流通する。
これにより、減圧弁162FR,162FL,162RRに開弁電流が供給されると、図5に示したように、弁室21内に流入した作動液は第1連通路12bを通って弁室21からバネ室22に流通しバネ室22に到達した作動液は第2連通路12cを通って弁室21に戻るようになり、弁室21とバネ室22との間で一方向に流れる循環流が生じる。従って、減圧弁162FR,162FL,162RRすなわち電磁弁Aにおけるバネ室22の近傍に溜まりやすい気泡を作動液とともに第2連通路12cを介して、例えば、第2連通路12c側の流出ポート20eまで流通させることができる。これにより、流出ポート20eからリザーバ流路157を介してリザーバ122に作動液とともに気泡を排出することができ、自励振動の発生を抑制することができて異音の発生を防止することができる。
以上の説明からも理解できるように、上記第1実施形態における電磁弁Aによれば、少なくともロッド11の大径部である中間部分の外周面とガイド部20b(すなわち、ハウジング20)の内周面とによって囲まれて形成される第1流路と第2流路において、作動液に作用する流通に伴う抵抗の大きさ(流路断面積の大きさ)を異ならせることができる。より具体的に、上記第1実施形態における電磁弁Aにおいては、弁体ユニット10を構成するロッド11の中間部分(大径部)に非対称部11c、より詳しくは、ロッド11に切り欠き部分11c1を形成することができる。これにより、第1流路と第2流路とは、プランジャ12の中心軸を含みかつ第1連通路12bの中心軸及び第2連通路12cの中心軸からの距離が等しい仮想的な平面に対して非対称となり、仮想的な平面に対して直交する平面における第1流路側と第2流路側の流路断面積の大きさを異ならせることができる。そして、上記第1実施形態における電磁弁Aにおいては、プランジャ12の第1連通路12bの形成位置(すなわち、貫通孔の孔位相)に非対称部11cの切り欠き部分11c1を合わせ、プランジャ12の第2連通路12cの形成位置(孔位相)に非対称部11cの円弧部分を合わせることにより、第2流路側の流路断面積を第1流路側に比して小さくすることができる。
このため、シート30の流入ポート30bから弁座31を介して弁室21内に流入した作動液は、流通に伴う抵抗の大きな第2流路よりも流通に伴う抵抗の小さい第1流路を選択的に流通する。これにより、弁室21内に流入した作動液の多くが第1連通路12bを通って弁室21からバネ室22に流通し、バネ室22に到達した作動液は第2連通路12cを通って弁室21に戻るようになり、弁室21とバネ室22との間で一方向に流れる(整流された)循環流を生じさせることができる。
従って、この循環流により、バネ室22の近傍に溜まりやすい気泡を作動液とともに第2連通路12cを介して流出ポート20eまで流通させて、流出ポート20eから外部に作動液とともに気泡を排出することができ、自励振動の発生を抑制することができて異音の発生を防止することができる。又、ロッド11に対して非対称部11cを構成する切り欠き部分11c1を形成し、この切り欠き部分11c1を第1連通路12b又は第2連通路12cに合わせて配置することによって電磁弁Aの内部に作動液の循環流を良好に生じさせることができるため、第1連通路12b及び第2連通路12cを単純な一定の内径を有する貫通孔として形成することができる。従って、極めて容易に、かつ、安価にプランジャ12に第1連通路12b及び第2連通路12cを設けることができる。
b.第2実施形態
上記実施形態においては、ハウジング20、より具体的には、円筒部20b(ガイド部20b)に対して、収容するプランジャ12に形成された第1連通路12b及び第2連通路12cのそれぞれの対応して流出ポート20eを2箇所形成するように実施した。ところで、このように、第1連通路12b及び第2連通路12cのそれぞれに対応して流出ポート20eを形成した場合、言い換えれば、流通に伴う抵抗が小さい第1流路側及び流通に伴う抵抗が大きい第2流路側のそれぞれに流出ポート20eを形成した場合、発生する循環流によって弁室21内に流入した作動液の大部分はバネ室22を経由して第2連通路12c側(第2流路側)の流出ポート20eから外部に排出される。しかし、流通に伴う抵抗の小さい第1流路を介して弁座31から第1連通路12bに流れる作動液であっても、第1連通路12b(第1流路側)に形成された流出ポート20eから外部に排出される。
この場合、バネ室22近傍に存在する気泡を循環流により外部に効率良く排出するためには、より強い循環流を生じさせることが必要である。このため、図8に示すように、弁部31からの流通に伴う抵抗が大きくバネ室22から弁室21に作動液が流れる第2連通路12c側にのみ流出ポート20eを形成する、言い換えれば、弁部31からの流通に伴う抵抗が小さく弁室21からバネ室22に作動液が流れる第1連通路12b側には流出ポート20eを形成することなく実施することも可能である。以下、この第2実施形態を具体的に説明するが、上記第1実施形態と同一部分に同一の符号を付し、その説明を省略する。
この第2実施形態においても、図8に示すように、上記第1実施形態と同様にして、ロッド11の挿入部11aをプランジャ12のシャフト嵌合穴12aに挿入して一体的に組み付ける。このとき、この第2実施形態においても、図8にてA−Aを示すように、ロッド11の非対称部11cを形成する切り欠き部分11c1がプランジャ12の第1連通路12b側に配置されるように、ロッド11がプランジャ12に組み付けられる。これにより、この第2実施形態においても、ロッド11の非対称部11cの外周面とガイド部20b(すなわち、ハウジング20)の内周面とによって囲まれて形成される第1流路と第2流路は、図8に示すように、プランジャ12の中心軸を含みかつ第1連通路12bの中心軸及び第2連通路12cの中心軸からの距離が等しい仮想的な平面に対して非対称となるため、仮想的な平面に対して直交する平面(図8における紙面に平行な平面)における第1流路側と第2流路側の流路断面積の大きさが異なる。具体的に、この第2実施形態においても、プランジャ12の第1連通路12bの形成位置(孔位相)に非対称部11cの切り欠き部分11c1を合わせ、プランジャ12の第2連通路12cの形成位置(孔位相)に非対称部11cの円弧部分を合わせることにより、第2流路側の流路断面積を第1流路側に比して小さくする。
そして、この第2実施形態においては、ロッド11の非対称部11cにおける切欠き部分11cの形成位置(形成位相)と、プランジャ12の第1連通路12b言い換えれば第2連通路12cの形成位置(孔位相)とを合わせることに加えて、ガイド部20b(すなわち、ハウジング20)に形成される流出ポート20eの形成位置(すなわち、貫通孔の孔位相)をも合わせるように、弁体ユニット10をハウジング20に組み付ける。より具体的に、この第2実施形態においては、図8に示すように、ハウジング20の円筒部20bすなわちガイド部20bの周方向にて1箇所の流出ポート20eが形成されている。このため、プランジャ12の第1連通路12bの孔位相(言い換えれば、第2連通路12cの孔位相)に非対称部11cの切り欠き部分11c1を合わせた弁体ユニット10をハウジング20に組み付ける際には、形成された流出ポート20eの孔位相に対して第2連通路12cの孔位相を合わせる。これにより、ロッド11の非対称部11cにおける切欠き部分11cの形成位置(形成位相)と、プランジャ12の第1連通路12b言い換えれば第2連通路12cの形成位置(孔位相)と、ガイド部20bに形成される流出ポート20eの形成位置(孔位相)とを合わせることができる。
そして、このように、切欠き部分11cの形成位相、第2連通路12cの孔位相、及び、流出ポート20eの孔位相を合わせることにより、図8に示すように、弁部31からの流通に伴う抵抗が大きくバネ室22から弁室21に作動液が流れる側にのみ流出ポート20eを形成することができる。これにより、コイル41に開弁電流が供給されて、図9に示すように、ロッド11の弁体11bが弁座31から離間して開弁状態に移行することによって弁室21内に流入した作動液の大部分は第1連通路12bを通って弁室21からバネ室22に流通し、バネ室22に到達した作動液は第2連通路12cを通って弁室21に戻る。すなわち、この第2実施形態においても、ロッド11に非対称部11cを形成しておき、一定のの内径を有する第1連通路12b及び第2連通路12cに至るまでの第1流路及び第2流路における流通に伴う抵抗の大きさを異ならせることにより、弁室21とバネ室22との間で一方向に流れる循環流を生じさせることができる。
このとき、流通に伴う抵抗の小さい第1流路側(第1連通路12b側)には、流出ポート20eが形成されていないため、流入ポート30bから弁座31を介して弁室21内に流入して第1流路を流れる作動液は、外部に排出されることなく第1連通路12bまで流れる。すなわち、第1流路を流れる作動液はほぼ全量が第1連通路12bを流通し、その結果、強い循環流を生じさせる、言い換えれば、作動液の流れをより強く整流することができる。これにより、この第2実施形態においては、より確実に、バネ室22の近傍に溜まりやすい気泡を作動液とともに第2連通路12cを介して流出ポート20eから外部に排出することができ、自励振動の発生をより確実に抑制することができて異音の発生を防止することができる。
又、この第2実施形態においても、ロッド11に対して非対称部11cを構成する切り欠き部分11c1を形成し、この切り欠き部分11c1を第1連通路12b又は第2連通路12cに合わせて配置することによって電磁弁Aの内部に作動液の循環流を良好に生じさせることができるため、第1連通路12b及び第2連通路12cを単純な一定の内径を有するストレート孔として形成することができる。更に、ハウジング20のガイド部20bに形成する流出ポート20eの数を低減することもできる。従って、上記第1実施形態と同様に、極めて容易に、かつ、安価にプランジャ12に第1連通路12b及び第2連通路12cを設けることができるとともに、例えば、電磁弁Aのトータルの製造コストを低減することができる。
c.変形例
上記第1実施形態及び第2実施形態においては、ロッド11に切り欠き部分11c1を設け、この切り欠き部分11c1により非対称部11cを形成するように実施した。そして、このように切り欠き部分11c1を設けて非対称部11cを形成することにより、第1流路及び第2流路の流路断面積を異ならせることができ、その結果、第1流路及び第2流路の流通に伴う抵抗の大きさを異ならせて弁室21からバネ室22に向かう流れとバネ室22から弁室21に向かう流れからなる循環流を生じさせるようにした。この場合、第1流路及び第2流路の流通に伴う抵抗の大きさをそれぞれ異ならせることができれば良いため、ロッド11に切り欠き部分11c1を設けて非対称部11cを形成することに代えて、例えば、断面円状のロッド11の中間部分(大径部)に対してプランジャ12の第2連通路12cに対応する位置(形成位相)に突部分(突起物)を設けて非対称部11cを形成するように実施することも可能である。又は、ロッド11の中心軸に対して非対称部11cの中心軸をプランジャ12の第2連通路12cに対応する側に偏心させて実施することも可能である。
又、上記第1実施形態及び第2実施形態においては、ロッド11に非対称部11cを形成することにより、第1流路及び第2流路の流路断面積を異ならせて、第1流路及び第2流路の流通に伴う抵抗の大きさを異ならせるように実施した。この場合、第1流路及び第2流路の流通に伴う抵抗の大きさをそれぞれ異ならせることができれば良いため、例えば、弁室21を形成するハウジング20、より詳しくは、ガイド部20b(円筒部20b)の内周面のうち、プランジャ12の第2連通路12cに対応する位置、すなわち、第2流路内に対して突起物等を組み付けて、第1流路及び第2流路の断面積を異ならせて実施することも可能である。
このように、ロッド11に切り欠き部分11c1を設けて非対称部11cを形成することに代えて、ロッド11に突部分(突起物)を設けたり、非対称部11cの中心軸を偏心させたり、或いは、ガイド部20bの内周面に突起物等を設けて実施する場合であっても、上記第1実施形態及び第2実施形態の場合と同様に、確実に循環流を生じさせることができる。従って、上記第1実施形態及び第2実施形態の場合と同等の効果を得ることができる。
本発明の実施にあたっては、上記各実施形態及び変形例に限定されるものではなく、本発明の目的を逸脱しない限りにおいて、種々の変更が可能である。
例えば、上記各実施形態及び変形例においては、プランジャ12に形成される第1連通路12b及び第2連通路12cが、プランジャ12の中心軸に対して平行にかつ一定の内径を維持して形成される単純なストレート孔であるとして実施した。これにより、第1連通路12b及び第2連通路12cを極めて容易に、かつ、安価に形成することができる。しかし、第1連通路12b及び第2連通路12cの孔形状については、一定の内径を有する(すなわち、断面積が変化しない)単純な貫通孔に限定されるものではなく、例えば、第1連通路12bを弁室21からバネ室22に向けて貫通孔の内径が徐々に小さくなる(すなわち、断面積が小さくなる)テーパ孔から形成し、第2連通路12cをバネ室22から弁室21に向けて貫通孔の内径が徐々に小さくなる(すなわち、断面積が小さくなる)テーパ孔から形成するように実施可能であることは言うまでもない。この場合には、第1連通路12b及び第2連通路12cをプランジャ12に形成する際のコストの増大が懸念されるが、上記各実施形態及び変形例と同様の効果が期待できる。
又、上記各実施形態及び変形例においては、車両に搭載されるブレーキ制御装置100に電磁弁Aを適用可能である場合を例示して説明した。この場合、例えば、当業者の知識に基づいて、車両のブレーキ制御装置100以外の各種油圧装置に適用して実施可能であることは言うまでもない。