以下、図面を参照しながら、本発明に係る魚釣用電動リールの実施形態について説明する。
図1から図9は本発明に係る魚釣用電動リールの第1の実施形態を示す図であり、図1は平面図、図2はハンドル側から見た側面図、図3は後方側から見た後面図、図4は内部機構を部分的に示した平面図、図5は内部駆動機構を側方から見た概略図、図6は制御ケースおよび操作部材の中央位置における断面図、図7は図4のA−A線に沿う断面図、図8は操作部材の斜視図、そして、図9は操作部材の正面図である。
なお、以下の説明において、前後方向、左右方向、上下方向は、図1および図2に記載の方向と定義する。
図1に示すように、第1の実施形態に係る魚釣用電動リールは、左右のフレーム3a,3bに左右カバー4a,4bを取着して構成される左右側板5A,5Bを具備したリール本体5を有している。リール本体5を構成する一方の側板(右側板5B)側には、巻取り操作される手動ハンドル6が設けられており、左右側板5A,5B間には、釣糸が巻回されるスプール7が、回転軸であるスプール軸7a(図7参照)を中心に回転可能に支持されている。また、左右のフレーム3a,3b間には、リール本体を釣竿R(図10〜図14参照)に装着するためのリール脚5aが形成されている。
本実施形態では、スプール7の前方側における左右側板5A,5B間に駆動モータ8を保持しており、スプール7は、手動ハンドル6の巻取り操作および駆動モータ8の回転駆動によって、動力伝達機構10を介して釣糸巻取り方向に回転駆動される。
駆動モータ8については、スプール7の内部に設置する構成であっても良いが、本実施形態のように、スプール7の前方に設置することで、スプール7の糸巻き量を確保しつつ、リール本体5を可及的にコンパクト化することが可能となる。なお、本発明は、ある程度の大きな魚がヒットしたときに、一方の手でリール本体5を把持し、他方の手でリール本体5前方の釣竿を握持しながら操作部材(後述する)を安定して操作することができる(後述する)ことから、そのような操作部材は、比較的大きな魚釣用電動リールに適用することもできる。具体的には、本発明に関する操作部材は、PEライン5号を300m以上巻回できるスプールを備えた中型以上の比較的幅が大きい魚釣用電動リールに適用することもできる。
動力伝達機構10については、駆動モータ8の回転駆動力を減速してスプール7側に伝達する機能(減速機構12および伝達ベルト13(図4参照)などによって果たされる)、駆動モータ8が回転駆動しても手動ハンドル6を連れ回しさせない機能や手動ハンドル6の逆回転を防止する機能(ラチェット14を含む)などを備えた公知のものによって構成することが可能である。また、そのような動力伝達機構10については、左側板5A側に配設されていても良いし、右側板5B側に配設されていても良く、あるいは、左右側板それぞれに振り分けて配設されていても良い。なお、図4において、符号16は、ハンドル6に結合されたハンドル軸、符号18は、ハンドル軸16に回転可能に支持されたドライブギヤ、符号20は、ドライブギヤ18に噛合するピニオンであり、これらは前述した動力伝達機構10を構成する。また、図中、符号21は、魚釣時にスプール7から釣糸が繰り出された際にスプール7の回転にドラグ力を付与する公知のドラグ機構であり、リール本体5とハンドル6との間には、ドラグ機構21によるドラグ力の調整を行なうための星型のドラグ調整ノブ(スタードラグ)22が設けられている。
スプール7の前方の左右側板5A,5B間には、スプール7に対して均等に釣糸を巻回する機能を備えた公知のレベルワインド機構23(図5参照)が設置されている。また、リール本体5を構成する左右側板5A,5B間のスプール7の上方には、駆動モータ8を制御する制御部100(制御基板100A,100Bを有する)を収容した箱型の制御ケース102が配設されている。本実施形態の制御ケース102は、リール本体5を構成する左右側板5A,5Bの表面と面一状になるように構成されている。
制御ケース102に収容される制御部100は、魚釣用電動リールの動作を制御するCPU(Central Processing Unit)、糸長を計測したり、駆動モータの出力を可変制御するための各種プログラムや設定情報などを記憶したROM(Read Only Memory)、一時記憶領域としてのRAM(Random Access Memory)等を実装した制御基板(マイクロコンピュータ)および各種駆動回路を実装した回路基板を備えており、制御基板は、各作動要素との間で信号の送受信がなされ、動作を制御する。なお、本実施形態の制御部100は、図6に示すように、制御基板100A、および回路基板100Bを上下方向に配置することによって構成されているが、これらを1枚の基板で構成しても良い。
リール本体5内には、ピニオン20を軸方向に移動させてスプール7を釣糸巻き取り状態/フリー回転状態に切り換える公知のクラッチ機構30(図5参照)が配設されている。このクラッチ機構30は、動力伝達機構10に介在されて手動ハンドル6および駆動モータ8からの動力伝達を継脱する機能を備えており、本実施形態では、右側板5B側に設置されている。このクラッチ機構30を構成するクラッチプレート31には、動力伝達をON状態からOFF状態に切り換えるクラッチOFF切換部材32と、動力伝達をOFF状態からON状態に切り換えるクラッチON切換部材33が係合している。
本実施形態におけるクラッチOFF切換部材32は、クラッチOFF操作の後にスプール7のサミング操作へと速やかに移行できるように、スプール7の後方側の左右側板5A,5B間に橋設された構成となっており、図5に示す状態から、その表面となる操作部32aに親指を載置して下方に押し下げ操作することで、クラッチ機構30をON状態からOFF状態に切り換えるよう構成されている。このクラッチOFF切換部材32は、前記クラッチプレート31に係合する振り分け保持バネ35によって、図5に示すクラッチON位置とクラッチOFF位置(図示せず)との間で振り分け保持される。
また、本実施形態におけるクラッチON切換部材33は、右側板5B側に設置されており、振り分け保持バネ35によってクラッチON位置とクラッチOFF位置との間で揺動可能となるよう振り分け保持されている。この場合、クラッチON切換部材33は、クラッチON状態では、図2、図5に示すように、右側板5Bの表面と略面一状となり、クラッチOFF状態では、右側板5Bの表面から突出するようになっている。このクラッチON切換部材33は、スプール7に巻回された釣糸に対して親指の腹部でサミング操作している状態から容易にON操作できるように(左手操作の場合、左側板の後端側を支点として親指が届き易いように)、巻回されている釣糸の側方でやや後方側に設置されていることが好ましい。
なお、クラッチON切換部材33は、上記のように揺動される機械式以外にも、電気式(例えば、ソレノイドを利用したもの)で構成されていても良い。また、クラッチOFF切換部材32と一体部材で構成されていても良い。
リール本体5には、駆動モータ8に対して電力を供給するための給電部38が設けられている。この給電部38は、左側板5Aの前方側の下面領域に形成されており、この給電部38に対しては、着脱可能な携帯バッテリ(図示せず)を装着したり、あるいは、足元に置いたバッテリや釣り船に設置されている電源部から電力供給される給電コード38a(図14参照)が装着される。
制御ケース102は、図7に示すように、スプール7に対して上方で、その回転軸(この回転軸としては、本実施形態ではスプール7の外側に駆動モータ8が配置されているためスプール軸7aが該当するが、スプール7の内部に駆動モータ8が配置される別の形態ではスプール軸7aが存在しないためモータ8の回転軸が該当する)近傍からレベルワインド機構23および駆動モータ8を覆うような大きさを備えている。
また、制御ケース102の後方部分には、駆動モータ8の出力を調整する操作部材40が配置されている。本実施形態の操作部材40は、スプール7の上方の左右側板5A,5B間に支軸41によって回転可能に支持されており、操作部材40は、制御ケース102の後端縁102a(図6参照)に沿って配設されている。また、支軸41は、スプール軸7aと略平行に配設されており、これにより操作部材40は、スプール側にも露出した状態となり、前後方向(図1に示す平面視)に加え、上下方向(図3に示す後面視)に向けて回転操作できるように構成されている。なお、操作部材40については、制御ケース102の後端縁102aに前方に向けて凹陥部を形成しておき、制御ケースに対して回転可能に支持する構成であっても良い。
操作部材40は、左右側板5A,5B間に支持された状態で、サミング操作からクラッチON操作を介したモータ出力調整操作へのスムーズな移行を可能にするためにスプール7の上方に配置されており、少なくとも両側板5A,5Bの内側面近傍(両側板5A,5Bの内側)にそれぞれ前後方向に回転操作可能に配設される2つの操作部45,45を有する。本実施形態では、これらの2つの操作部45,45が、左右のフレーム3a,3bの内側で、リール本体5の左右方向の中心軸線O(図1参照)に対してほぼ左右対称に振り分け配置されている。なお、本実施形態では、操作部45,45が2つ設けられているが、操作部45の数は限定されない。要は、操作部45が少なくとも両側板5A,5Bの内側面近傍(両側板5A,5Bの内側)に配置されていさえすればよく、操作部45が1つであってもよく或いは3つ以上であっても構わない。その場合、両側板5A,5Bの内側面近傍にある操作部45以外の操作部は、両側板5A,5Bの内側面近傍にあってもよく、あるいは、それ以外の位置に配設されても構わない。
本実施形態において、各操作部45は略円筒形を成しており、その表面に親指(親指の腹部)を当て付けて前後方向に転がすことが可能となっており、回転操作が可能なダイヤル状(いわゆるジョグダイヤル状)の操作部(ダイヤル状操作部とも称する)としての機能を備えている。操作部45の軸方向長さL(図9参照)は、親指を下方側から(スプール7の表面から)当て付けて容易に上下方向に回転操作したり、上方側から押え付けて、容易に前後方向に回転操作できるように、3〜15mm程度あることが好ましい。また、このような構成では、操作部45の表面に、周方向に亘って連続する凹凸45a等(滑り抑制部)を形成しておくことが好ましく、これにより、当て付けた指を滑らせることなく、回転操作を容易かつ安定して行なうことが可能となる。
なお、操作部45の直径は、10〜20mmであることが好ましい。また、操作部45,45間の離間距離Wは12〜30mm程度(図9参照)に設定することが好ましい。これにより、釣人の微妙な指の前後方向の動きをモータの速度調整に反映できる。また、操作部45は、本実施形態では左右のフレーム3a,3bの内側に配設されているが、両側板5A,5Bの内側面近傍であれば他の部位に配設されてもよい。
また、操作部45を構成する略円筒状とは、内部が中実であっても良いし、全体或いは部分的に空洞部があるものを含む概念である。また、その外形状については、正確な円筒形状は勿論、図に示すような凹凸45aが形成されていたり、指を押し付けることが可能な突起部(図示せず)が形成されたものであっても良い。あるいは、軸方向の中間部分が膨出していたり、窪んでいるなど、軸方向に親指の腹部が当接できて回転操作ができるような外形状を備えたものであっても良い。また、回転表面が制御ケース102の表面から突出していても良いし、略面一状にされていても良い。
また、本実施形態において、操作部45,45同士の間は、これらの操作部45,45と一体に回転動作する中間操作体42として形成されている。この場合、中間操作体42は、操作部45,45と一体に形成されて操作部45,45同士を連結する。しかしながら、中間操作体42は、操作部45,45と一体に回転動作できれば、操作部45,45と別体であっても構わない。無論、別の実施形態として、操作部45,45同士の間の部位が操作部45,45と連動して動作せず、単なる指当て部としてリール本体5に固定されていてもよく、あるいは、中間操作体42それ自体が存在せず、操作部45,45間がこれらを離間させる単なる空間として形成されていても構わない。
中間操作体42は平板形を成すレバー状操作体として形成されており、その少なくとも一方の側部(本実施形態では、両側部)には、操作部45との境界部位に、中間操作体42に指(親指)を載置した際にその指が当て付く段差部43が形成されている。
中間操作体42は、前述したように板状に形成されて表面が平坦状になっており、親指の腹部を載せることができる程度の大きさ(段差部間の幅W(=操作部45,45間の離間距離)が12〜30mm程度;図9参照)に形成されている。また、段差部43は、中間操作体42に指を載置した際に、指の軸方向の移動を規制するものであれば良く、本実施形態では、前述したように、中間操作体42の両側に中間操作体42の表面に対して高くなる段差を生じさせる略円筒状の操作部45を一体形成することで構成されている。具体的には、段差部の厚さT(図6参照)については1〜6mm程度にすることが好ましく、これにより、中間操作体42に載置した指の座りを安定させることが可能となる。
中間操作体42は、単に平坦面として構成しても良いが、図8および図9に示されるように、指を載置した際、その座りが安定するように、表面に凹部42aを形成しておくことが好ましい。このため、凹部42aの周囲42bは盛り上がった状態となり、凹部42aに指を載置すると、腹部が安定し、操作性の向上が図れるようになる。また、凹部42aの表面には、滑りを抑制して操作性を向上するための手段(滑り抑制部)、例えば、図示のように、支軸41方向に沿った複数の突起42cを形成したり、高摩擦部材等(図示せず)を被着しておくことが好ましい。これにより、表面での滑りを抑制し安定した操作を行なうことが可能となる。さらに、周囲42bの縁部42b’については、断面視で湾曲面としておくことが好ましい。すなわち、このような湾曲面としておくことで、凹部42aに載置している指を後方にずらし操作部42を押し上げ操作する際の指の当たりが良くなり、操作性が向上する。
また、中間操作体42は、図6および図7に示すように、駆動モータ8の出力がゼロのとき、制御ケース102の表面と略同一方向となるように配設されていることが好ましい。このような配置態様にすることで、駆動モータ8の出力がゼロの状態(魚の当たりを待っている状態)では、親指をそのまま中間操作体42に載置しておくことができ、サムレストとしての機能を発揮することもできる。このことは、操作部45に関しても同様に適用できる。
また、中間操作体42は、左右両側に位置される前述した各操作部45の表面から径方向外方に突出するような大きさに形成しておくことが好ましい。これにより、中間操作体42を指で容易に摘み易くなるとともに、スプール7のサミング操作からクラッチON操作を介した中間操作体42の押し上げ操作への移行がし易くなり(中間操作体42の押し上げ操作が容易になり)、また、中間操作体42の視認性も良好になる。また、中間操作体42は、図9に示すように、先端に移行するに従って軸方向の幅が減少するように構成することで、糸絡みし難くすると共に指の当たりを良くし、回転操作し易くすることができる。さらに、中間操作体42の高さH(支軸41の中心から先端縁までの高さ;図9参照)については、10〜20mm程度に設定しておくことが好ましい。これは、10mm以上あれば、駆動モータの速度がゼロからMAX手前まで容易に摘めることができ、かつ、図12および図13に示されるように、速度MAX(最も倒したとき)にしたときでも容易に摘むことが可能であり、20mm以下に設定しておくことで、スプール7のサミング操作からクラッチON操作を介した中間操作体42の押し上げ操作へのスムーズな移行を阻害しないようにすることが可能となる。更に、このような寸法設定により、糸絡みを防止できるとともに、不用意な動作による意図しない巻き上げを防止でき、また、外部衝撃等での破損の虞も回避できる。
また、本実施形態において、操作部45の近傍には、リール本体5を把持する手の指の腹部を載置可能な指載置部90が設けられている。具体的には、指載置部90は、各操作部45,45の外側部(操作部45に対して中間操作体42と反対の側)に隣接して位置される。このような指載置部90は、例えば操作部45の外側端部位から径方向および軸方向に延出または膨出して設けられており(それにより、センサや軸受等の他の構成要素を指載置部90の内部に配置することもでき有益である)、リールおよび釣竿を手で保持し易くするという役目を果たすことができる。なお、指載置部90の表面は、操作部45の表面と面一に形成されてもよく、その軸方向寸法(幅寸法)は、8〜15mmであることが好ましい。また、指載置部90は、これに指を載置している待機状態からその指で隣接する操作部45をスムーズに素早く操作できるように、その形状(例えば円弧状の曲面形状(逆R形状)など)および操作部45との位置関係が設定されている。
操作部材40を支持する前記支軸41には、図1に示すように、操作部45(したがって、中間操作体42)の操作角度を検知する検知手段、具体的には、角度センサ110が設置されており、支軸41の回転位置に応じた操作位置信号を出力する。すなわち、角度センサ110は、操作部45(中間操作体42)の操作位置に応じて操作信号を出力し、駆動モータ8の出力は、各操作部45の操作位置に応じて調整することが可能となっている。なお、角度センサ110は、それぞれの操作部45(中間操作体42)の操作角度に応じた信号を生成する機能を備えたものであれば良く、例えば、操作部45の操作量に応じた抵抗値の変化を出力するポテンショメータを備えたもの、磁石を装着して回転位置に応じて磁界の変化を検出するもの、操作量に応じたパルスを生成するエンコーダを備えたものなど、様々な構造のものを適用することが可能である。
支軸41は、スプール7の回転軸(スプール軸7a)と略平行となるように回転可能に支持されており、かつ、操作部材40は、制御ケース102の後端縁に沿って配設されているため、操作部45(および中間操作体42)は、略前後方向および上下方向に変位できるようになっている。なお、中間操作体42は、段差部43によって窪んだ状態にあるため、中間操作体42の表面に親指を当接させた際、親指の位置が大きく横にずれることがなく、リール本体5の重心や給電部38にかかる力(給電コードに引っ張られる力や携帯バッテリの重量負荷などで、釣竿Rの長手軸を中心に回転負荷による力)によるねじれ負荷に対し、操作性が低下することがなくなる。この場合、中間操作体42を回転させた際の指(親指)の位置の横方向のずれを考慮すると、上記した略平行の範囲については、スプール7の回転軸に対して±30°の範囲内であれば良い。すなわち、±30°の範囲内であれば、リール本体5を把持した状態で、中間操作体42を自由に回転しても、指(親指)の位置が横方向にずれ難くなり、リール本体を把持保持した際のバランスが悪くなることがない。
上述したように、制御ケース102には、駆動モータ8の駆動を制御する制御部100が収容されており(図6参照)、操作部45(中間操作体42)の回転操作量に応じて駆動モータ8の出力を調整するようになっている。この場合、制御部100は、各操作部45(中間操作体42)を前方に向けて回動操作することで、駆動モータ8の出力が上昇するように設定されている。これにより、クラッチOFFにして釣糸を出すこと、および、クラッチONにして釣糸を巻くこと、を頻繁に繰り返す操作(仕掛けにテンションを与えた状態で底だちを取る(海底付近の一般に言う底釣りにおいて、水深に合わせて糸の繰り出し量を調整する)操作)を行なう際、親指をそのまま前方に延ばして、操作部45(中間操作体42)を押し上げるような操作をする(例えば、クラッチOFF切換部材32を指で操作してそのまま指を斜め前方に延ばしてクラッチON切換部材33を操作し、更に、その指を前方に延ばして操作部45(42)を押し上げ操作する)ことで、釣糸の巻き取り操作が瞬時に行えるようになり、操作性の向上が図れるようになる。
なお、操作部45(中間操作体42)の回転操作量と駆動モータ8の出力との関係については任意である。本実施形態では、各操作部45(中間操作体42)の基準位置(図6および図7に示すように、操作部42が制御ケース102の表面と略面一状になる位置)をモータの出力値ゼロとして、略120°前方に回転操作した際、モータ出力がMaxになるように設定されている。もちろん、各操作部45(中間操作体42)を後方に向けて回転操作した際に、駆動モータ8の出力が上昇するように設定しても良い。
また、制御ケース102の表面には、繰り出された釣糸の長さ(糸長情報)などを表示する表示部(液晶表示部)120が設けられており、また、その周囲には、各種の情報が設定可能な複数の操作ボタン121a,121bが配設されている。この操作ボタン121a,121bは、例えば、投入した仕掛けを所望の深さで停止させる深さ情報、駆動モータ8の出力の可変範囲を変更する出力範囲設定情報など、釣人から各種の情報を受け付ける機能を有する。
また、前記フレームには、スプール7に巻回されている釣糸の繰り出し量を検知することが可能な糸長計測装置(図示せず)が配設されている。この糸長計測装置は、スプール7が釣糸の繰り出し/巻き取りで回転駆動された際、例えば、回転部分に装着されたマグネットと、これを検知する磁気センサによって実際の回転量や回転方向を検知し、その検知信号を生成し、制御部100で演算して表示部120に表示させる。
次に、上記した構成の魚釣用電動リールの作用、効果について、図10〜図14を参照して説明する。
上記したように、本実施形態における駆動モータ8の出力を調整する操作部材40は、左右の両側板5A,5Bの内側面近傍にそれぞれ前後方向に回転操作可能に2つの操作部45,45(中間操作体42を挟んで両サイドに形成された2つの操作部45,45)を備えているため、状況に応じたモータ出力の調整操作が行なえ、操作性の対応に優れた構成となる。すなわち、手持ち状態、釣竿をロッドキーパに設置した置き竿状態を想定したり、底だちを頻繁に取る操作(クラッチを切って釣糸を出し、クラッチを入れて釣糸を少し巻く操作を繰り返し行なう操作)や、仕掛け回収モード(スプールの高速巻き取り)を想定した際、状況に応じて、その釣人にとって操作し易い操作部45,45,42を選択して複合的な操作を行なうことが可能となる。
例えば、釣竿Rと共にリール本体5を把持している手持ち状態、あるいは、ロッドキーパに釣竿をセットしている置き竿状態などでは、図10および図11に示すように、リール本体5を把持している手の親指で左右のいずれかの操作部45を選択的に操作することができ、あるいは、中間操作体42を操作することができ、更には、指載置部90に指を当て付けておくこともできる。
すなわち、図10は、左手で釣竿Rと共にリール本体5を把持している状態を示しているが、この場合、左手の親指との間の距離が遠い右側の操作部45よりも距離が近い左側の操作部45を操作する方が一般に楽であり自然な場合が多い。特に、幅および重量が比較的大きい中型以上のリールを手持ち状態で操作する場合には、一般に脇(左手で把持する場合には左脇)に竿尻を挟んでリールを手で把持する(場合により、リール本体5を把持する手と反対側の手でリール本体5の前方の釣竿Rを握持する(図12参照))が、その際には、リールを把持する手にリールおよび竿(仕掛けを含む)の両方の重量がかかり、そのため、リールを把持する手の親指を動かせる範囲が制約され、多くの場合、リール把持側に近い操作部45(図10の場合には、左側の操作部45)を操作する方が容易となる(図10の二点鎖線参照)。また、魚の当たりを待っている状態で親指を待機させる置き場所としても、やはり、リール把持側に近い指載置部90(図10の場合には、左側の指載置部90)がサムレストとして望ましくなる(図10の二点鎖線参照)。すなわち、そのような指載置部90を選択することにより、釣竿Rと共にリール本体5を保持し易く、また、保持力も強固となる。
無論、釣人の手の大きさによっては、あるいは、状況によっては、リール把持側から遠い操作部45(図10の場合には、右側の操作部45)を操作することも想定でき、また、同様に、魚の当たりを待っている状態で親指を待機させる置き場所として、リール把持側から遠い指載置部90(図10の場合には、右側の指載置部90)がサムレストとして選択される場合も想定できる。また、左手の親指を中間操作体42に当て付けてサムレストとしての機能を果たさせてもよい(この場合、操作部42の両サイドには、段差部43が存在しており、かつ、操作部42の凹部42aに腹部を位置させておくことができるため、指の左右方向への振れが抑制されて座りが良くなる)。特に、この中間操作体42は、平面状に形成されているため、手持ち状態および置き竿状態にかかわらず、親指と人差し指で摘まんで操作することができ(特許文献1に開示されているような従来のレバータイプの操作部材と同様な駆動モータの出力調整が行える)、例えば、仕掛けをシャクリ上げる操作を繰り返す場合(例えば、イカ釣りのいわゆ電動シャクリの場合)に有益である。
なお、前述したように、重量および幅が比較的大きい中型リールの場合には、それを手持ち状態で操作する際に、リールを把持する手の親指を動かせる範囲が制約されることから、操作部45の僅かな回転量(操作量)でモータ出力が大きく変化し得るように、操作部45の外径を小型リールの場合と比べて大きく設定することが好ましい。
一方、図11は、右手で釣竿Rと共にリール本体5を把持している状態を示しているが、この場合、右手の親指との間の距離が遠い左側の操作部45よりも距離が近い右側の操作部45を操作する方が一般に楽であり自然な場合が多い。特に、幅および重量が比較的大きい中型以上のリールを手持ち状態で操作する場合には、前述したように、右脇に竿尻を挟んでリールを右手で把持する(場合により、リール本体5を把持する右手と反対側の左手でリール本体5の前方の釣竿Rを握持する(図13参照))が、その際には、リールを把持する右手にリールおよび竿(仕掛けを含む)の両方の重量がかかり、そのため、リールを把持する右手の親指を動かせる範囲が制約され、多くの場合、リール把持側に近い右側の操作部45を操作する方が容易となる(図11の二点鎖線および図14参照)。また、魚の当たりを待っている状態で親指を待機させる置き場所としても、やはり、リール把持側に近い右側の指載置部90がサムレストとして望ましくなる(図11の二点鎖線参照)。すなわち、そのような指載置部90を選択することにより、釣竿Rと共にリール本体5を保持し易く、また、保持力も強固となる。
無論、釣人の手の大きさによっては、あるいは、状況によっては、リール把持側から遠い左側の操作部45を操作することも想定でき、また、同様に、魚の当たりを待っている状態で親指を待機させる置き場所として、リール把持側から遠い左側の指載置部90がサムレストとして選択される場合も想定できる。また、右手の親指を中間操作体42に当て付けてサムレストとしての機能を果たさせてもよい
また、一連の複合的な操作としては様々な形態が考えられるが、いずれにしても、左右の両側板5A,5B間の限られたスペースの中で操作し易い操作部42,45,45を選択して少ない指の移動量で容易に操作を行なうことができる。特に、リール本体5を把持する手と反対側の手でリール本体5の前方の釣竿Rを握持している状態では、その握持している手を放すことなく巻き取り操作することができることから、大きい魚が掛かったとき、あるいは、ロッドキーパに釣竿をセットするときに当たりがあったときなど、釣竿Rを握持している手を放すことなく咄嗟に巻き取り操作に移行することができる。
例えば、左手で釣竿Rと共にリール本体5を把持して、左手の親指を左側の指載置部90に載置している状態で、仕掛け(錘)を海底へ向けて落として仕掛け(または錘)を所定の棚あるいは海底に位置させる場合には、左側の指載置部90に載置している指を後方に僅かにずらしてその指でクラッチOFF切換部材32を押し下げ、そのまま、その指を前方へ僅かにずらすことにより、繰り出されているスプール7上の釣糸を制動するべくサミング操作へ移行できる。そして、最終的に所定の棚または海底に錘が到達した時点で、反対側の右手で(場合により、サミングしている左手の親指を右へ移動させて)クラッチON切換部材33を押し下げてクラッチをONにする。また、左手の親指を左側の指載置部90に載置している状態で、魚がヒットした場合には、左側の指載置部90に載置している指を右側へ僅かにずらすだけで左側の操作部45を操作して、スプール7を巻き取り駆動することが可能となる。このような一連の操作を左右の両側板5A,5B間の限られたスペースの中で少ない指の移動量で行えることは、特に、仕掛けにテンションを与えた状態で底だちを取る(海底付近の一般に言う底釣りにおいて、水深に合わせて糸の繰り出し量を調整する)操作を頻繁に繰り返す場合などにおいて有益である。無論、操作部45が両側にあることから、両手を巧みに使って様々な複合操作を行なうことも可能である。
一方、右手で釣竿Rと共にリール本体5を把持して、右手の親指を右側の指載置部90に載置している状態で、仕掛け(または錘)を海底へ向けて落として仕掛け(または錘)を所定の棚あるいは海底に位置させる場合にも、右側の指載置部90に載置している指を後方に僅かにずらしてその指でクラッチOFF切換部材32を押し下げ、そのまま、その指を前方へ僅かにずらすことにより、繰り出されているスプール上の釣糸を制動するべくサミング操作へ移行すればよい。そして、最終的に所定の棚または海底に錘が到達した時点で、サミングしている右手の親指を前方へ移動させてクラッチON切換部材33を押し下げてクラッチをONにする。この場合、反対側の左手でクラッチON切換部材33を操作せずに済むため有益である。無論、左右両側にクラッチON切換部材33が設置されていれば、左手でも右手と同様な操作が可能になり(両手を使わずに片手で一連の全ての操作を完了でき)便利である。また、右手の親指を右側の指載置部90に載置している状態で、魚がヒットした場合には、右側の指載置部90に載置している指を左側へ僅かにずらすだけで右側の操作部45を操作して、スプールを巻き取り駆動することが可能となる。
また、釣人の手の大きさによっては、あるいは、状況によっては、前述したように、中間操作体42をサムレストとして使用してもよく、その場合には、中間操作体42に載せている指を左右のいずれかにずらして、操作部45に当て付け、そのまま回転操作すること(あるいは、操作部45に載せている指を左右のいずれかにずらして、中間操作体42に当て付け、そのまま回転操作すること)で行なうことも可能である。すなわち、一方の手でリール本体5を把持しながらスプール7の巻き取り操作をするに際しては、釣人の好みにより、中間操作体42を押し上げるように操作したり、操作部45を転がすように操作することもでき、操作性の向上が図ることができる。
以上説明したように、本実施形態によれば、リール本体5に、モータ出力を調整する操作部45,45が少なくとも2つ設けられているため、釣竿Rとリール本体5の保持状態を状況に応じて変化させても、モータ出力の調整を容易に且つ速やかに行うことができる。特に、本実施形態では、これらの操作部45,45が左右の両側板5A,5Bの内側面近傍(両側板5A,5Bの内側)にそれぞれ前後方向に回転操作可能に配設されるため、手によるリールの把持形態に応じて操作し易い操作部45,45(あるいは、操作体42)を選択することができ、指の少ない移動量で(指を側板5A,5Bの外方へ大きく移動させる必要なく)これらの操作部45,45(あるいは、操作体42)を左右のいずれの側からでも(ハンドル側および反ハンドル側のいずれの側からでも)操作できる。すなわち、手によるリール本体5の把持(保持)形態にかかわらず、リール本体5を確実に保持しつつ、自然な指の前後方向の移動操作でモータ出力の増減調節を行なうことができ、手によるリールの把持(保持)形態やモータ出力調整等の釣場の状況に応じた複合的な操作を無理なく容易に行なえる(左右の両側板5A,5B間の限られたスペースの中で操作し易い操作部42,45,45を選択して少ない指の移動量で一連の複合的な操作を容易に行なうことができる)。
図15は、本発明の第2の実施形態に係る魚釣用電動リールを示している。図示のように、本実施形態の魚釣用電動リールは、操作部材40の形態が前述した第1の実施形態と異なる。すなわち、本実施形態では、左右の操作部45,45間に設けられる中間操作体42が、第1の実施形態のようにレバー状ではなく、操作部45と同様の円筒形に形成されている。この場合、中間操作体42の外径は、段差43を形成するように操作部45の外径よりも小さく設定され、また、中間操作体42の表面には、凹凸状の滑り抑制部が形成されてもよい(操作部45と同様にダイヤル状操作体として形成されてもよい)。なお、それ以外の構成は第1の実施形態と同様である。このような構成によれば、操作部材40がコンパクト且つ軽量になるため、設計の自由度が大きくなり、リール本体の小型化にも寄与できる。
図16は本発明の第3の実施形態に係る魚釣用電動リールを示している。図示のように、本実施形態の魚釣用電動リールも、操作部材40の形態が前述した第1の実施形態と異なる。すなわち、本実施形態では、第2の実施形態の変形例として、右側の操作部45が省かれ、中間操作体42が右側の指載置部90に至るまで延びている。なお、それ以外の構成は第1の実施形態と同様である。
このように、操作部45が左右側板5A,5Bのいずれかの内側面近傍(左右側板5A,5B間の内側)に配置されていさえすれば、左右の両側板5A,5B間の限られたスペースの中で少ない指の移動量で操作できるため、操作性が良好となる。なお、右側の操作部45を省く代わりに、左側の操作部45を省いてもよい。その場合には、中間操作体42が左側の指載置部90に至るまで延びる。
図17は本発明の第4の実施形態に係る魚釣用電動リールを示している。図示のように、本実施形態の魚釣用電動リールも、操作部材40の形態が前述した第1の実施形態と異なる。すなわち、本実施形態では、第3の実施形態の変形例として、右側の操作部45のみならず中間操作体42も省かれ、左右の両側板5A,5B間に左側操作部45のみが配設されている。なお、それ以外の構成は第1の実施形態と同様である。
このように、操作部45が左右側板5A,5Bのいずれかの内側面近傍(左右側板5A,5B間の内側)に配置されていさえすれば、左右の両側板5A,5B間の限られたスペースの中で少ない指の移動量で操作できるため、操作性が良好となる。なお、左側の操作部45と中間操作体42とを省き、左右の両側板5A,5B間に右側操作部45のみが配設されてもよい。
図18は、本発明の第5の実施形態に係る魚釣用電動リールを示している。図示のように、本実施形態の魚釣用電動リールも、操作部材40の形態が前述した第1の実施形態と異なる。すなわち、本実施形態では、左右の操作部45が、第1の実施形態の中間操作体42と同様にレバー状に(レバー状操作部として)形成される一方で、中間操作体42が第2の実施形態と同様に円筒形に形成されている。この場合、操作部45は、中間操作体42の表面から径方向外方に突出するような大きさに形成されており、これにより、図19に示されるように操作部45を指で容易に摘み易くなるとともに、スプール7をサミングしながら容易に押し上げ操作し易くなる。また、各操作部45の表面には、座りが安定するように、凹部45aを形成しておくことが好ましい。つまり、本実施形態の操作部45は、第1の実施形態の中間操作体42の構成をそのまま適用でき、したがって、前述した詳細な説明は繰り返さない。
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、駆動モータの出力を調整する操作部材が、少なくとも側板の内側面近傍(両側板の内側)に前後方向に回転操作可能に配設される少なくとも1つの操作部を有していれば良く、その操作部材の設置位置、設置方法、および操作方向など、適宜変形することが可能である。