JP5995244B2 - 塑性加工ツールの研磨研削方法 - Google Patents
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Description
表面に凹凸形状や曲面が形成された塑性加工ツール、例えば、金型に対しては、その表面粗度を設計上の値まで高めるために、砥粒を用いた研磨や研削が行われている。
例えば、特許文献1には、粒径の異なる研磨粒子を含むスラリーを用いて複数段の研磨を効率的に行う研磨方法が開示されている。
このような金型の研磨及び研削においては、従来、作業員が研磨及び研削を必要とする金型の表面の粗さを計測し、計測された粗さの結果や表面の感触などから作業者が自らの知識や経験などに基づいて最適と考えられる砥石の粗さ(砥粒径)を選択し、選択した粗さの砥粒を用いて研磨及び研削を実施していた。
また、このような状況に対応すべく特許文献1の技術を用いたとしても、特許文献1の技術は、多段研磨の方法を開示するものであって、最適な砥石を選んで加工条件を設定する方法ではない。そのため、金型の表面粗さに対して最適な砥粒を選んで加工条件を設定する場合には、特許文献1の技術は十分に対応することができないものとなっていた。
即ち、本発明の塑性加工ツールの研磨研削方法は、塑性加工ツールの表面を研磨または研削するに際しては、前記塑性加工ツールの表面粗さ(Ri)を計測し、前記計測された表面粗さ(Ri)と前記塑性加工ツールの目標粗さ(Rn)との比である粗さ比(dR=Rn/Ri)を求め、前記求められた粗さ比(dR)が1/10以下となる(dR≦1/10)場合には、前記計測された表面粗さ(R i )の1/10の粒径を有する砥粒を備えた加工具を選択し、前記求められた粗さ比(dR)が1/10より大きくなる(dR>1/10)場合には、前記目標粗さ(R n )の粒径を有する砥粒を備えた加工具を選択し、前記選択した加工具に関する加工条件を設定し、前記選択した加工具と設定した加工条件を用いて、前記塑性加工ツールの表面を研磨または研削することを特徴とする。
なお、好ましくは、前記塑性加工ツールが金型または圧延ロールであるとよい。
以下、本発明に係る塑性加工ツール3の研磨研削方法の第1実施形態を、図面に基づき詳しく説明する。
図1は、本発明の塑性加工ツール3の研磨研削方法で選び出された加工具2を用いて、塑性加工ツール3の表面4を研磨または研削する方法を模式的に示した図である。また、図2は、本発明の研磨研削方法における砥粒の選び方を示した図である。
塑性加工ツール3の研磨研削方法は、金型3の表面4を研磨するに際しては、金型3の
表面粗さ(Ri)を計測し、計測された表面粗さ(Ri)と金型3の目標粗さ(Rn)との比である粗さ比(dR=Rn/Ri)を求めて、その求められた粗さ比(dR)が1/10以下となる(dR≦1/10)場合には、計測された表面粗さ(Ri)の1/10に対応した粒径を有する砥粒を備えた砥石2を選択する。逆に求められた粗さ比(dR)が1/10より大きくなる(dR>1/10)場合には、目標粗さ(Rn)に対応した粒径を有する砥粒を備えた砥石2を選択する。砥石2を選択した後は、その選択した砥石2に関する加工条件を設定し、選択した砥石2と設定した加工条件を用いて、金型3の表面4を研磨する方法である。なお、最適な砥粒を選び出す判断基準(粗さ比の基準)を1/10とすることは、本願発明者らが鋭意研究を重ねた結果、知見したものである。とはいえ、判断基準は厳格に1/10である必要はなく、1/9や1/11であってもよい。
次に、第1研磨ステップ(前加工ステップ)にて研磨された金型3の表面粗さ(R1)を計測する。その計測された塑性加工ツール3の表面粗さ(R1)と目標粗さ(Rn)との比である粗さ比(dR1=Rn/R1)を求める。そして、求められた粗さ比(dR1)に基づいて、第2研磨ステップ(後加工ステップ)で用いる砥石2を選択する。すなわち、図2に示すように、求められた粗さ比(dR1)が1/10以下(dR1≦1/10)となる場合には、計測された表面粗さ(R1)の1/10程度(相当)の砥粒を備えた砥石2を選択する。一方、求められた粗さ比(dR1)が1/10より大きくなる(dR1>1/10)場合には、目標粗さ(Rn)程度(相当)の粒径を有する砥粒を備えた砥石2を選択する。
第2研磨ステップにて研磨された金型3の表面粗さ(R2)を計測する。計測された塑性加工ツール3の表面粗さ(R2)と目標粗さ(Rn)との比である粗さ比(dR2=Rn/R2)を求める。そして、求められた粗さ比(dR2)を基に第1研磨ステップと同様な手法により、第3研磨ステップで用いる砥石2を選択する。続いて、選択した砥石2を移動させるための位置データや、砥石2の回転数及び送り速度などの加工条件を設定する。選択した砥石2と設定した加工条件に基づいて、金型3の表面4に対して研磨を再度行ってゆく。
このように、本発明の塑性加工ツール3の研磨研削方法を用いることで、さまざまな表面粗さを備えた金型3(塑性加工ツール3)に対しても最適な砥粒を選び出して研磨及び研削を行うことができる。
[第2実施形態]
第1実施形態で述べた塑性加工ツール3の研磨研削方法は、作業員が自らの手で(手動で)金型3の研磨を行う際に用いることができる方法であるが、最も好適に用いられるものとしては、塑性加工ツール3を自動で研磨するシステムが考えられる。
図4は、本発明の塑性加工ツール3の研磨研削システム1でのCAMデータの作成手順を示した図である。
図4に示すように、本発明の研磨研削システム1は、第1実施形態で述べた塑性加工ツール3の研磨研削方法を自動的に行えるようにしたものである。
その後、計測値が反映された3次元モデル上で、計測された表面粗さ(Ri)と目標粗さ(Rn)との比である粗さ比(dR=Rn/Ri)を求め、求められた粗さ比(dR)が1/10以下(dR≦1/10)となる場合には、表面粗さ(Ri)の1/10に対応した粒径を有する砥粒を備えた砥石2を選択すると共に、求められた粗さ比(dR)が1/10より大きく(dR>1/10)なる場合には、目標粗さ(Rn)に対応した粒径を有する砥粒を備えた砥石2を選択する。ここで、砥石2の選定手法は、第1実施形態で述べたものと略同じである。
以上述べた、研磨研削システム1での研磨の手順を詳しく述べれば、まず、図2及び図4に示すように、研磨研削システム1において、3次元形状計測器を用いて、曲面など複雑な形状を有する金型3の表面形状を計測し、その金型3の表面粗さ(R0)を計測する。その計測された表面形状及び表面粗さ(R0)の結果を、金型3の3次元モデルへ反映する。
第1研磨ステップ(前加工ステップ)にて、実際に研磨された金型3の表面形状及び表面粗さ(R1)を3次元形状計測器で計測する。その計測された表面形状及び表面粗さ(R1)の結果を再び金型3の3次元モデルへ反映する。
以降、同様に加工ステップを繰り返しながら、金型3の表面4が目標粗さ(Rn)になるまで、上記した金型3の表面4に対して研磨を行う。
以上まとめれば、本発明の研磨研削システム1は、前加工ステップにて研磨された金型3の表面形状及び表面粗さ(Ri)を計測し、計測した表面粗さ(Ri)と目標粗さ(Rn)との乖離、すなわち表面粗さ(Ri)と目標粗さ(Rn)との比より、後加工ステップに用いる最適な砥石2を自動的に選択すると共に、その砥石2に関する加工条件を自動的に設定し、その加工条件を基に金型3の研磨をすることができる。
なお、今回開示された実施形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。
本実施形態の塑性加工ツール3に関して、鍛造や成型に用いられる金型3を例に挙げて説明したが、例えば、押出ダイス、圧延ロールなど塑性加工に用いられる工具であれば、どのようなものであってもよい。また、塑性加工ツール3の表面粗さ(Ri)及び目標粗さ(Rn)を算術平均粗さ(Ra)で説明したが、最大高さ(Ry)や、十点平均粗さ(Rz)であってもよい。
2 加工具(砥石)
3 塑性加工ツール(金型)
4 表面
Claims (4)
- 塑性加工ツールの表面を研磨または研削するに際しては、
前記塑性加工ツールの表面粗さ(Ri)を計測し、
前記計測された表面粗さ(Ri)と前記塑性加工ツールの目標粗さ(Rn)との比である粗さ比(dR=Rn/Ri)を求め、
前記求められた粗さ比(dR)が1/10以下となる(dR≦1/10)場合には、前記計測された表面粗さ(R i )の1/10の粒径を有する砥粒を備えた加工具を選択し、
前記求められた粗さ比(dR)が1/10より大きくなる(dR>1/10)場合には、前記目標粗さ(R n )の粒径を有する砥粒を備えた加工具を選択し、
前記選択した加工具に関する加工条件を設定し、
前記選択した加工具と設定した加工条件を用いて、前記塑性加工ツールの表面を研磨または研削することを特徴とする塑性加工ツールの研磨研削方法。 - 複数の加工ステップを経て塑性加工ツールの表面を研磨または研削するに際しては、
前加工ステップにて研磨または研削された塑性加工ツールの表面粗さ(Ri)を計測し、
前記計測された塑性加工ツールの表面粗さ(Ri)と目標粗さ(Rn)との比である粗さ比(dR=Rn/Ri)を求め、
前記求められた粗さ比(dR)に基づいて、後加工ステップで用いる加工具を選択する
ことを特徴とする請求項1に記載の塑性加工ツールの研磨研削方法。 - 前記塑性加工ツールの表面粗さ(Ri)及び目標粗さ(Rn)は、算術平均粗さ(Ra)であることを特徴とする請求項1または2に記載の塑性加工ツールの研磨研削方法。
- 前記塑性加工ツールが金型または圧延ロールであることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の塑性加工ツールの研磨研削方法。
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