JP5994355B2 - 永久磁石形同期電動機の制御装置 - Google Patents
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Description
また、301は平滑コンデンサ203の電圧Ed1を検出する直流電圧検出器、302は直流電圧指令値Ed1 *を出力する直流電源、303は直流電圧抑制回路、304は位置検出器、305は回転数演算回路、306は回転数指令値N*及び回転数演算値Nが入力される回転数制御回路、307はインバータ主回路204の半導体スイッチング素子に対する駆動パルスを出力する制御回路である。
ここで、d軸とは、モータ205の回転子永久磁石(磁極)による磁束に平行な方向の座標軸をいい、q軸とは前記磁束と直交する方向(d軸に直交する方向)の座標軸をいう。
制御回路307は、電流制御器や2相/3相座標変換器(何れも図示せず)等を備えている。この制御回路307は、q軸電流を調整してモータ205に対するブレーキトルクを所定値に制御し、d軸電流を調整してモータ205からの回生エネルギーを所定値に制御するように駆動パルスを生成する。
また、この従来技術において、モータ205の通常運転時の制御と回生時の制御との切り替えは、直流電圧抑制回路303内の制御系レベルで行わなければならない。この場合、制御系の切替時にしばしば生じる不連続や不安定などの問題を回避するためには、切替動作自体を適切に制御することが必要となり、システムが一層複雑化するおそれがある。
この埋込磁石形同期電動機のトルクとd,q軸電流との関係は非線形であり、トルクを制御することに関してd軸電流とq軸電流とを独立に制御することはできないため、図6に示したような従来技術は適していない。
つまり、図6の従来技術を埋込磁石形同期電動機の駆動システムに適用すると、所望のトルク制御精度を得ることができず、速度制御系や位置制御系などのシステム全体の不安定化を招く恐れがある。
通常、電動機の高速運転時における弱め磁束制御では、電動機の回転速度や電動機の電圧指令などの情報に基づいてd軸電流指令値を決定している。しかし、図6の従来技術はこれらの情報を考慮せずに、力率を0近傍に保って回生エネルギーを制御する目的のもとでd軸電流指令値Id *を独立に決定している。このため、上記従来技術では、弱め磁束制御を行いながら回生エネルギーを制御することが理論上成立せず、定出力領域の高速運転から減速するといった運転パターンは実現不可能である。
しかしながら、図6の従来技術では、回生エネルギーによる直流中間電圧の上昇を抑制するときに、力率を0近傍に保つことのみを考慮して制御しているので、前述した第1の目的のみを重視することになる。つまり、図6の従来技術では目的を分けて回生エネルギーを制御できないので、前述した第2の目的のように、直流中間電圧の上昇をできる限り速やかに抑制することが重要なアプリケーションには適用不可能である。
また、本発明の他の目的は、電動機の通常運転時の制御と回生エネルギーの制御とを切り替える必要がなく、シームレスな制御を可能にした制御装置を提供することにある。
更に、本発明の別の目的は、突極性がある埋込磁石形同期電動機にも適用可能な制御装置を提供することにある。
少なくとも前記電動機のトルク指令値に基づいてd軸電流指令値及びq軸電流指令値を演算する電流指令演算手段を有し、
前記電流指令演算手段は、前記電動機のトルク指令値から演算した第1の磁束指令値を前記電力変換器の電圧制限値及び前記電動機の速度に応じて第1の出力制限手段により制限した第2の磁束指令値と、磁束補正係数と、を乗じて第3の磁束指令値を演算する第1の演算手段と、
前記電動機の回生運転時における前記第3の磁束指令値を、前記電動機の定速運転時及び加速運転時よりも大きい値に調整するための演算手段であって、前記電力変換器の電圧制限値と電圧指令値振幅との偏差を増幅して得た前記磁束補正係数を上下限値により制限して出力する第2の出力制限手段を備えた第2の演算手段と、
前記トルク指令値とトルク演算値との偏差を増幅して得た負荷角指令値と、前記第2の演算手段から出力される前記第3の磁束指令値と、を用いて前記d軸電流指令値及びq軸電流指令値を演算する第3の演算手段と、を備え、
前記第2の演算手段は、
前記直流中間電圧及び速度指令値に応じて、前記磁束補正係数の上限値として、前記電動機の定速運転時及び加速運転時の第1の上限値、または、前記電動機の回生エネルギー制御時の上限値であって前記第1の上限値より大きい第2の上限値または第3の上限値、のうちの何れかを選択して出力する磁束補正係数上限値演算手段を有し、前記第2の上限値が一定値であり、かつ、前記第3の上限値が、予め設定されたパターンに基づき前記直流中間電圧に応じて変化する値であることを特徴とする。
電動機の通常運転時においては、上位の制御系から電流指令演算手段に与えられたトルク指令値を磁束指令値及び負荷角指令値のディメンションに換算してから、d,q軸電流指令値を生成する。すなわち、電流指令演算手段は、電動機の回生エネルギーを制御することに直接関係する電動機の磁束量を容易に操作することができる。また、本発明の制御装置は、電動機の通常運転時において、電力変換器の直流中間電圧に比例する電圧制限値と電圧指令値振幅との偏差を磁束調節手段により積分して磁束補正係数を生成し、その上下限値を第2の出力制限手段により制限して磁束補正係数を調整する。
そこで、回生エネルギー制御が必要な時には、磁束補正係数の上限値を100%より大きい値に設定すれば、直流中間電圧の上昇を自動的に抑制することが可能である。言い換えると、本発明の制御系は、通常運転時の制御と回生エネルギー制御との両方を同一構成の制御系により行うことができる。
通常運転時の制御と回生エネルギー制御との切り替えは、磁束補正係数の上限値の設定のみを変更すればよい。従って、本発明によれば、回生エネルギー制御のために新たな制御系を追加したり制御系レベルを切り替えたりする必要もなく、簡潔かつシームレスなシステムを実現することができる。
すなわち、本発明の制御装置は、定出力領域における弱め磁束制御が常に可能な構成を備えており、永久磁石形同期電動機の定トルク領域は勿論、高速運転となる定出力領域においても、同じ構成の制御系によって回生エネルギー制御を実現することができる。
第1の設定手段は、磁束補正係数の上限値を直接かつ一定値に設定する手段であり、この手段により設定される上限値は、請求項における第2の上限値に相当する。実際の運転条件または電動機のパラメータなどに合わせて、第2の上限値として磁束補正係数の上限値を設定することにより、直流中間電圧の上昇を速やかに抑制することができる。
一方、第2の設定手段は、予め用意した直流中間電圧と磁束補正係数の上限値との関係パターンに基づいて、直流中間電圧の変動に応じて自動的に磁束補正係数の上限値を設定する。この手段により設定される上限値は、請求項における第3の上限値に相当する。この第2の設定手段を用いることにより、必要な磁束量のみを増加させてシステム全体を高効率に維持することができる。
上述した第1または第2の設定手段のうちのどちらを選択するかは、電動機の運転状態や直流中間電圧などの情報を用いて判断する。すなわち、本発明は、効率の観点だけではなく、応答性の観点も考慮しながら、回生エネルギー制御の目的に応じて磁束補正係数の上限値を調整することにより、磁束指令値を制御するものである。
また、本発明によれば、通常運転時の制御と回生エネルギー制御とを切り替える必要がなく、シームレスな制御が可能であると共に、突極性の有無に関わらず各種の永久磁石形同期電動機に適用することができる。
まず、永久磁石形同期電動機80を駆動する主回路について説明する。
図1において、50は三相交流電源であり、整流回路60は交流電源50の三相交流電圧を整流して直流中間電圧に変換する。この直流中間電圧はPWMインバータからなる電力変換器70に供給され、電動機80を駆動するための所定の振幅、周波数を有する三相交流電圧に変換される。
図1において、電圧検出器12は、電力変換器70の入力となる直流中間電圧Edcを検出する。磁極位置検出器90は永久磁石形同期電動機80の回転子の磁極位置θ1を検出し、速度検出器91は電動機80の速度ω1を検出する。
電圧制限値演算器22は、直流中間電圧Edcにほぼ比例する電圧制限値Valimを演算する。この電圧制限値Valimは、直流中間電圧Edcから決まる電力変換器70の最大出力電圧以下とする。
また、電流指令演算部18は、直流中間電圧Edc及び速度指令値ω*から、回生エネルギー制御時において、直流中間電圧Edcの上昇を抑制し、かつ、所望のトルクを出力するようなd,q軸電流指令値id *,iq *を演算する。
上記の電流指令演算部18は本発明の主要部を構成するものであり、その詳細については後述する。
PWM回路13は、相電圧指令値vu *,vv *,vw *及び直流中間電圧Edcからゲート信号を生成する。電力変換器70はこのゲート信号に基づいて内部の半導体スイッチング素子を制御することにより、電動機80の端子電圧を相電圧指令値vu *,vv *,vw *に制御する。
図2において、磁束指令演算器111は、請求項における第1の演算手段に相当し、トルク指令値τ*から第1の磁束指令値Ψ0 *を演算する。第1の磁束指令値Ψ0 *は、トルク/電流が最大になる条件で演算するが、この演算をオンラインにより実行するのは困難である。そこで、磁束指令演算器111では、トルク/電流が最大になる磁束指令値のテーブルを予め用意しておき、運転時にはこのテーブルを利用することにより、トルク指令値τ*から第1の磁束指令値Ψ0 *を演算する。
磁束調節器122の出力側には、第2の出力制限器123が設けられている。この出力制限器123の上限値を「KΨmax」、下限値を「0.0」とすることにより、第1磁束補正係数KΨ0を制限して第2磁束補正係数KΨを得る。上記の上限値KΨmaxは、磁束補正係数上限値演算器124により求められる。なお、磁束補正係数上限値演算器124の詳細については後述する。
乗算器125は、第2磁束補正係数KΨと第2の磁束指令値Ψ1 *とを乗算し、第3の磁束指令値Ψ*を求める。
ここで、磁束調節器122、第2の出力制限器123、磁束補正係数上限値演算器124、乗算器125等は、請求項における第2の演算手段を構成している。
加算器135は、負荷角指令値のフィードフォワード補償値δ0 *と補正値δPI *とを加算して負荷角指令値δ*を演算する。
前述したように、磁束調節器122により求められた第1磁束補正係数KΨ0は、出力制限器123により上下限値が制限される。実際、出力制限器123の上限値KΨmaxを調整することのみにより、回生エネルギー制御を実現することができる。
一方、回生エネルギー制御時には、電動機80から発生した回生エネルギーによって直流中間電圧Edcが自然に増加することにより、磁束調節器122により演算した第1磁束補正係数KΨ0も自動的に大きくなる。その際、上限値KΨmaxを通常運転時の値「1.0」のままに設定しておくと、第2磁束補正係数KΨは「1.0」以上にならず、直流中間電圧Edcの上昇を抑制することができない。
磁束補正係数上限値演算器124では、通常運転時と回生エネルギー制御時とを場合分けして上限値KΨmaxを選択し、出力する。
まず、通常運転時の上限値KΨmaxは、「1.0」に設定される。この通常運転時の上限値KΨmaxは、請求項における第1の上限値である。
これに対し、回生エネルギー制御時には、上限値設定器126または上限値演算器127の何れか一方を使用して上限値KΨmaxを決定する。上限値設定器126により設定される上限値KΨmaxは、請求項における第2の上限値に相当し、上限値演算器127により演算される上限値KΨmaxは、請求項における第3の上限値に相当する。
これらの上限値設定器126と上限値演算器127とは、アプリケーションの目的に応じて使い分ければよい。
なお、図4の横軸に示すEdcrated,Edcmaxは、それぞれ定格直流中間電圧,最大許容可能な直流中間電圧を意味する。
上限値選択器128は、まず、運転状態(速度指令値ω*)と直流中間電圧検出値Edcとを取得する(ステップS1)。そして、速度指令値ω*に基づき、運転状態が減速時と判断された場合には(ステップS2 Yes)、回生エネルギーにより直流中間電圧Edcが確実かつ顕著に上昇する減速状態に対して速やかに直流中間電圧Edcを抑制するために、磁束補正係数の上限値KΨmaxを「1.0」より大きい一定値とする(ステップS3)。すなわち、上限値設定器126により設定された上限値KΨmaxを選択する。
更に、直流中間電圧Edcが上昇していない場合には、通常運転時と判断し、上限値KΨmaxとして「1.0」を選択する(ステップS7)。
なお、図2に示した磁束指令演算器111、負荷角指令演算器112、電流指令演算器133、及びトルク演算器134においては、永久磁石形同期電動機80の磁束と電流との関係方程式、及び、トルクと電流との関係方程式を直接導入することが望ましい。これにより、埋込磁石形同期電動機などの突極性が大きい電動機に対しても、回生エネルギー制御をしながら所望のトルクを正確かつ自動的に制御することができる。
更に、図1では電動機80の磁極位置情報、速度情報を磁極位置検出器90、速度検出器91により検出しているが、本発明は、いわゆる位置・速度センサレス方式により、磁極位置・速度を演算により推定する場合にも適用可能である。
11w:w相電流検出器
12:電圧検出器
13:PWM回路
14:電流座標変換器
15:電圧座標変換器
16,19d,19q:減算器
17:速度調節器
18:電流指令演算部
20d:d軸電流調節器
20q:q軸電流調節器
21:電圧振幅演算器
22:電圧制限値演算器
50:三相交流電源
60:整流回路
70:電力変換器
80:永久磁石形同期電動機
90:磁極位置検出器
91:速度検出器
111:磁束指令演算器
112:負荷角指令演算器
121,131:減算器
122:磁束調節器
123:出力制限器
124:磁束補正係数上限値演算器
125:乗算器
126:上限値設定器
127:上限値演算器
128:上限値選択器
132:負荷角調節器
133:電流指令演算器
134:トルク演算器
135:加算器
141:磁束制限値演算器
142:出力制限器
Claims (1)
- 半導体電力変換器により駆動される永久磁石形同期電動機の電流を、回転子磁極による磁束に平行な成分のd軸電流と前記磁束に直交する成分のq軸電流とに分離して制御することにより、前記電動機を制御する制御装置において、
少なくとも前記電動機のトルク指令値に基づいてd軸電流指令値及びq軸電流指令値を演算する電流指令演算手段を有し、
前記電流指令演算手段は、
前記電動機のトルク指令値から演算した第1の磁束指令値を前記電力変換器の電圧制限値及び前記電動機の速度に応じて第1の出力制限手段により制限した第2の磁束指令値と、磁束補正係数と、を乗じて第3の磁束指令値を演算する第1の演算手段と、
前記電動機の回生運転時における前記第3の磁束指令値を、前記電動機の定速運転時及び加速運転時よりも大きい値に調整するための演算手段であって、前記電力変換器の電圧制限値と電圧指令値振幅との偏差を増幅して得た前記磁束補正係数を上下限値により制限して出力する第2の出力制限手段を備えた第2の演算手段と、
前記トルク指令値とトルク演算値との偏差を増幅して得た負荷角指令値と、前記第2の演算手段から出力される前記第3の磁束指令値と、を用いて前記d軸電流指令値及びq軸電流指令値を演算する第3の演算手段と、
を備え、
前記第2の演算手段は、
前記直流中間電圧及び速度指令値に応じて、前記磁束補正係数の上限値として、前記電動機の定速運転時及び加速運転時の第1の上限値、または、前記電動機の回生エネルギー制御時の上限値であって前記第1の上限値より大きい第2の上限値または第3の上限値、のうちの何れかを選択して出力する磁束補正係数上限値演算手段を有し、
前記第2の上限値が一定値であり、かつ、前記第3の上限値が、予め設定されたパターンに基づき前記直流中間電圧に応じて変化する値であることを特徴とする永久磁石形同期電動機の制御装置。
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