JP5992909B2 - 微生物核酸の定性的および定量的検出 - Google Patents

微生物核酸の定性的および定量的検出 Download PDF

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Description

本発明は、少なくとも第1対照核酸、または異なる濃度の第1および第2対照核酸を用いる、微生物核酸の定性的および定量的検出のための新規の方法および使用に関する。その方法は核酸の増幅、好ましくはポリメラーゼ連鎖反応に基づく。さらに、前記の方法および使用を実施するための構成要素を含むキットを提供する。
分子診断学の分野では、核酸増幅反応を用いる微生物核酸の検出および定量が重要な役割を果たしている。献血のC型肝炎ウィルス(HCV)、ヒト免疫不全ウィルス(HIV)、および/またはB型肝炎ウィルス(HBV)の存在に関する型にはまったスクリーニングは、核酸増幅および検出反応の大規模適用の一例である。後者は様々な異なる技法を含み、最も一般的に用いられる技法は、1984年にKary Mullisにより導入されたポリメラーゼ連鎖反応(PCR)である。PCRに基づく分析に関する自動化された系は、しばしばPCRプロセスの間の生成物の増幅のリアルタイム検出を利用する。そのような方法への鍵は、レポーター基または標識を有する修飾オリゴヌクレオチドの使用である。
生物学的試料中の微生物核酸の定性的検出は、例えば個体の感染を認識するために重要である。それにより、微生物感染の検出のためのアッセイに関する1つの重要な要求は、偽陰性または偽陽性の結果を回避することであり、これはそのような結果がほぼ必然的にそれぞれの患者の処置に関する深刻な結果につながると考えられるためである。従って、特にPCRに基づく方法において、定性的内部対照核酸がその検出混合物に添加される。前記の対照は、試験結果の有効性を確証するために特に重要である:少なくとも微生物核酸に関する陰性結果の場合では、その定性的内部対照反応は与えられた設定内で反応を示さなければならず、すなわち、その定性的内部対照は検出されなければならず、そうでなければその試験自体が無効であると考えられる。しかし、定性的構成において、陽性の結果の場合には前記の定性的内部対照は必ずしも検出されなければならないわけではない。定性試験に関して、その反応の感度が保証されており、従って厳密に制御されていることは特に重要である。結果として、その定性的内部対照の濃度は、例えばわずかな阻害の状況においてさえもその定性的内部対照が検出されず、従ってその試験が無効になるように、比較的低くなければならない。
他方で、試料中の微生物核酸の単なる存在または非存在の検出に加えて、前記の核酸の量を決定することがしばしば重要である。例として、ウイルス疾患の病期および重症度をそのウイルス負荷量に基づいて評価することができる。さらに、あらゆる療法の監視は、その療法の成功を評価するために、個体の中に存在する病原体の量に基づく情報を必要とする。定量的アッセイに関して、微生物核酸の絶対量を決定するための基準としての役目を果たす定量標準核酸を導入する必要がある。定量は、外部較正を参照するか、または内部定量標準を提供するかのどちらかにより達成することができる。
外部較正の場合、既知の量の同一または比較可能な核酸を用いる別の反応において標準曲線を作成する。続いて、微生物核酸の絶対量を、その分析される試料を用いて得られた結果の前記の標準関数との比較により決定する。しかし、外部較正は、可能性のある抽出手順、その多様な有効性、および可能性があり、そしてしばしばその増幅および/または検出反応を阻害する予測できない因子の存在がその対照において反映されないという不都合を有する。
この状況は、試料に関連するあらゆる作用に当てはまる。従って、抽出手順の不成功または試料に基づく他の要因により試料が陰性と判定される一方で検出および定量化されるべき微生物核酸が実際にはその試料中に存在するという可能性がある。
これらの理由および他の理由のため、その試験反応自体に内部定量標準を添加するのが好都合である。その内部定量標準は、定量試験において少なくとも以下の2つの機能を有する:
i)それはその反応の有効性を監視する。
ii)それは力価計算における基準としての役目を果たし、従って阻害の作用を補正し、調製および増幅プロセスを制御してより正確な定量を可能にする。従って、標的が陰性である反応においてのみ陽性でなければならない定性試験における定性的内部対照核酸とは対照的に、定量試験における定量標準核酸は2つの機能を有する:反応対照および反応較正。従って、それは標的が陰性である反応および標的が陽性である反応の両方において陽性かつ有効でなければならない。
それはさらに、高い核酸濃度の計算に関して信頼できる基準値を与えるのに適していなければならない。従って、その内部定量標準核酸の濃度は比較的高い必要がある。
その定性的内部対照核酸および/または内部定量標準核酸は、競合的、非競合的または部分的に競合的であることができる。競合的な定性的内部対照核酸および/または内部定量標準核酸は本質的にその標的と同じプライマー結合部位を有し、従って同じプライマーに関して標的として競合する。競合的構成の利点の中には、例えばそのアッセイに導入しなければならない異なるプライマーのセットがより少なく、従ってそれの費用および全体的な複雑さが低減されることがある。さらに、そのプライマーの機能性は、標的プライマー特異的である阻害作用として監視される。非競合的な定性的内部対照核酸および/または内部定量標準核酸はその標的と異なるプライマー結合部位を有し、従って異なるプライマーに結合する。そのような構成の利点には、とりわけ、その反応混合物中の異なる核酸の1回の増幅事象があらゆる競合作用なしに互いに独立して起こることができるという事実が含まれる。部分的に競合的な内部定量標準核酸を用いるPCRでは、そのそれぞれの対照核酸および標的核酸の少なくとも1つが同じプライマーに関して競合するが、少なくとも1つの他の標的核酸は異なるプライマーに結合する。
上記で記述したような定量的および定性的アッセイの原理は互いと比較した場合に異なる要求を示すため、また様々な国における規制条件を考慮して、当技術において用いられる一般的なアプローチは、同じ標的核酸に関する別々の定量的および定性的アッセイの開発であった(例えばYang et al., J Agr Food Chem 2005, 53, 6222-6229を参照)。
本発明は、いくつかの利点を示す代わりの解決策を提供する。
Yang et al., J Agr Food Chem 2005, 53, 6222-6229
本発明は、微生物核酸を同時に定性的および定量的に検出するための新規の方法および使用に関する。その方法は核酸の増幅、好ましくはポリメラーゼ連鎖反応に基づく。手短には、その微生物核酸の特定の配列部分および少なくとも第1対照核酸を、1種類以上の特異的なプライマーペアを用いて増幅および検出する。従って、本発明の1つの主題は以下のことである:
生物学的試料中の微生物核酸を同時に検出および定量化するための方法であって、前記の方法は以下のことを含む:
a)前記の微生物核酸を単離および精製し;
b)少なくとも第1対照核酸、前記の微生物核酸の別個の配列部分に、および前記の対照核酸の別個の配列部分に、特異的にハイブリダイズする1種類以上のプライマーペア、ならびにこれらの1種類以上のプライマーペアにより増幅された配列のそれぞれに特異的にハイブリダイズするプローブを含む反応混合物を提供し、ここで前記の微生物核酸および前記の対照核酸は異なるプローブにハイブリダイズする;
c)前記の生物学的試料を前記の反応混合物に添加し;
d)1回以上のサイクル工程を実施し、ここでサイクル工程は増幅工程を含み、この増幅工程は、もし前記の試料中に存在するならば前記の微生物核酸に由来する1個以上の増幅産物を生成することおよび前記の対照核酸に由来する増幅産物を生成することを含み、ここでサイクル工程はハイブリダイズ工程を含み、このハイブリダイズ工程は前記のプライマーペアにより増幅された配列を前記のプローブとハイブリダイズさせることを含み、ここでそれらのプローブはドナー蛍光部分および対応するアクセプター蛍光部分で標識されており、それらのプローブのそれぞれは異なる蛍光色素を有する;
e)前記の増幅産物により生成する、前記の対照核酸および前記の微生物核酸の濃度に比例する蛍光シグナルを検出および測定し、ここで前記の対照核酸の増幅産物の存在は前記の微生物核酸に関する増幅産物の非存在下においてさえもその反応混合物において増幅が起こっていることを示す。
図1aは、市販のCOBAS AmpliPrep/COBAS TaqMan HIV−1検査の定量的リアルタイムPCR反応に関する内部対照増殖曲線をグラフにおいて示す。そのPCR反応は、5log10の範囲に及ぶHIV−1標的濃度および標的陰性試料を含んでいた。高い標的濃度がその反応中に存在する場合(“標的高陽性”参照)、その内部定量標準核酸(QS)により到達される蛍光レベルは、HIV−1標的が存在しないPCR反応(“標的陰性”参照)の場合におけるよりも有意に低い。そのQSは、定量的結果の出力に関して力価を計算することが可能であるために、全ての標的濃度において有効でなければならないので、そのQSに関する最小蛍光強度レベル設定(“RFImin”)は低い。3種類の市販の検査:COBAS AmpliPrep/COBAS TaqMan HBV、HCVおよびHIV−1における定量的結果の出力に関するRFIminの設定を、表1において示す。 図1bは、市販のCOBAS AmpliPrep/COBAS TaqMan HIV−1検査のリアルタイムPCR反応に関する内部対照増殖曲線をグラフにおいて示す。全てのPCR反応はHIV−1標的陰性試料を含んでいた。その内部対照増殖曲線の蛍光レベルは狭い範囲内に束ねられており(bundled)、その定性的内部対照核酸(IC)に関する最小蛍光強度レベル設定(“RFImin”)は高い。標的陽性反応において、そのICはRFIminよりも下であってよく、無効となってよい;標的の存在下では、そのPCR反応に関する結果はなお有効である。COBAS AmpliPrep/COBAS TaqMan HBV、HCVおよびHIV−1検査に関する定性的結果の出力に関して最適化されたRFIminの設定を、表1において示す。 図2は、armored RNA粒子の生成を示す:armored RNA粒子の生成のための発現ベクターおよびarmored RNA粒子の電子顕微鏡観察。armored RNA粒子は大腸菌(E.coli)中で組み立てられる。lac−オペロンの導入後、MS−2バクテリオファージのMS−2コートタンパク質の遺伝子、対照配列、パッケージングシグナルおよびTrrnBターミネーターの上流のプラスミド配列が含まれるmRNAが転写される。コートタンパク質が翻訳された後、その粒子の組成物は自然に1コピーのmRNAのパッキングを起こす。 図3は、HCV標的、第1対照核酸および第2対照核酸を含有するリアルタイムPCR反応に関して得られた正規化された増殖曲線を示す。 図4aは、HCV−RNAおよびQSの同時増幅を示す。QSおよびHCV−RNA両方の蛍光強度は、標準シグナルをもたらす反応(図4b参照)におけるよりも低い。 図4bは、HCV−RNAおよびQSの同時増幅を示す。両方の反応は結果として標準蛍光強度をもたらす。比較のため、抑制された蛍光曲線を有する図4aを参照;その2つの図における異なる強度も留意されたい。
本発明は、先行技術を越える多数の利点を示す。特に、本発明はそのように同じ試薬を用いるあらゆる所与の微生物核酸に関する定性的および定量的アッセイの一般的な設計を可能にする。
一部の態様において、上記で記述した第1対照核酸は内部定量標準核酸および定性的内部対照核酸の両方の役目を果たすことができる。従って、それは2つの別々の試験または試験キットそれぞれの必要性を排除する。2つの別々の試験の実施は追加の採血により患者に負担をかけ、その定量および定性試験が両方とも費用の払い戻しがある場合にはその健康管理システムに追加の費用を負わせる可能性がある。さらに、定量および定性試験両方に関して結果が出るまでの時間が、順次行なう定性的および定量的試験と比較した場合に低減する。
好ましくは、前記の第1対照核酸は定性的および定量的結果を得るための異なる基準に従って評価される。好ましい態様において、リアルタイムPCRの間に得られた生データの同じセットを2つの異なる試験パラメーター設定に対して分析する。有効な定性的対照核酸に関して適用される定性的試験パラメーター設定は、定量的結果の出力に必要な内部定量標準に関して適用されるパラメーター設定と比較してより厳密である。定量反応における内部定量標準核酸に関する設定は、標的の存在がその内部定量標準核酸のそれぞれの増殖曲線に影響を及ぼし得るほど厳密であることはできない(図1a参照)。
従って、本発明の好ましい態様は上記で記述した方法であり、ここでその第1対照核酸は、定量標準核酸として、または定性的内部対照核酸としての役目を果たすために、異なる基準に従って分析される。
他の態様において、以下の理由により、第1および第2対照核酸を異なる濃度で用いることが好都合である可能性がある:通常、定量試験における内部定量標準核酸(単数または複数)は、それらが高濃度の標的核酸を有する試料においてもなお増幅および検出されるように、ある程度高い濃度を有する。従って、時には、特にその増幅反応が部分的に抑制されている場合、検出限界(LOD)に近い低い陽性の試料の検出のための対照としてのそれの使用可能性は与えられない。その場合、高度に濃縮された対照核酸はそれぞれのアッセイの十分な感度の尺度としての役目を果たすことができない。
従って、本発明の好ましい観点は以下のものである:
生物学的試料中の微生物核酸を同時に検出および定量化するための方法であって、前記の方法は以下のことを含む:
a)前記の微生物核酸を単離および精製し;
b)異なる濃度の第1および第2対照核酸、前記の微生物核酸の別個の配列部分に、および前記の対照核酸の別個の配列部分に、特異的にハイブリダイズする1種類以上のプライマーペア、ならびにこれらの1種類以上のプライマーペアにより増幅された配列のそれぞれに特異的にハイブリダイズするプローブを含む反応混合物を提供し、ここで前記の微生物核酸ならびに前記の第1対照核酸および前記の第2対照核酸は異なるプローブにハイブリダイズする;
c)前記の生物学的試料を前記の反応混合物に添加し;
d)1回以上のサイクル工程を実施し、ここでサイクル工程は増幅工程を含み、この増幅工程は、もし前記の試料中に存在するならば前記の微生物核酸に由来する1個以上の増幅産物を生成することならびに前記の第1対照核酸および前記の第2対照核酸に由来する増幅産物を生成することを含み、ここでサイクル工程はハイブリダイズ工程を含み、このハイブリダイズ工程は前記のプライマーペアにより増幅された配列を前記のプローブとハイブリダイズさせることを含み、ここでそれらのプローブはドナー蛍光部分および対応するアクセプター蛍光部分で標識されており、それらのプローブのそれぞれは異なる蛍光色素を有する;
e)前記の第1対照核酸および前記の微生物核酸の増幅産物により生成する、それらの濃度に比例する蛍光シグナルを検出および測定し、および/または同時に前記の第2対照核酸の前記の増幅産物により生成された蛍光シグナルを検出し、ここで前記の第2対照核酸の増幅産物の存在は前記の微生物核酸に関する増幅産物の非存在下においてさえもその反応混合物において増幅が起こっていることを示す。
本発明に従う、同じ対照試薬内での異なる濃度の第1および第2対照核酸の利用は、上記で述べた問題を克服する。より低い、または最も低い濃度を有する核酸は定性的アッセイに関する定性的内部対照核酸に対応しており、陰性の結果が有効か否かを判定する能力を確実にし、すなわち陰性の結果はその内部対照核酸が検出されない場合は無効である。
本発明によれば、当業者は、単一のアッセイで両方を実施することによる定量的および定性的構成を開発すること、従って開発費用を低減すること、必要とする物質および労働力がより少ないこと、製造費用を低減すること、ならびにアッセイを確立するのに必要な時間も削減することの間の相乗作用を利用することができる。さらに、追加の採血により患者に負担をかける患者の二重の検査が避けられ、定量および定性試験が両方とも費用の払い戻しがある場合にはその健康管理システムに関する費用も低減される。
その定性的内部対照核酸および/または内部定量標準核酸は、競合的、非競合的または部分的に競合的であることができる。
“競合的”は、プライマーを含む増幅反応において、それぞれの対照核酸および標的核酸(単数または複数)が少なくとも本質的に同じプライマー結合部位を有し、従って同じプライマーに関して競合することを意味する。競合的構成の利点の中には、例えばそのアッセイに導入しなければならない異なるプライマーのセットがより少なく、従ってそれの費用および全体的な複雑さが低減されることがある。さらに、そのプライマーの機能性は、標的プライマー特異的である阻害作用として監視される。
“非競合的”は、そのそれぞれの対照核酸および標的核酸(単数または複数)が異なるプライマー結合部位を有し、従って異なるプライマーに結合することを意味する。そのような構成の利点には、とりわけ、その反応混合物中の異なる核酸の1回の増幅事象があらゆる競合作用なしに互いに独立して起こることができるという事実が含まれる。
“部分的に競合的”は、そのそれぞれの対照核酸およびその標的核酸の少なくとも1つが同じプライマーに関して競合するが、少なくとも1つの他の標的核酸は異なるプライマーに結合することを意味する。
本発明の方法(単数または複数)に従って、内部定量標準核酸を第1対照核酸として用いることにより、試料特異的な阻害作用だけでなく、おそらく定量標準核酸および微生物核酸に関する増幅および検出反応を同時に妨げる試料非特異的な阻害作用(標的領域に無関係な阻害)も均一化され(leveled)、結果としてより正確な力価がもたらされる。“内部”は、その第1対照核酸が、別々の実験においてではなく、その微生物核酸と同じ反応混合物内で増幅、検出および定量化されることを意味する。
本発明の別の好ましい観点は上記で記述した方法であり、ここでその第1対照核酸は定量標準核酸であり、その第2対照核酸は定性的内部対照核酸である。
当業者は、同じ実験から信頼できる定性的情報だけでなく場合により同等に信頼できる定量的情報も引き出すことができる。従って、別の観点において本発明は以下のものに関する:
さらに以下のことを含む、上記で記述した方法:
工程e)において、前記の微生物核酸および前記の第1対照核酸により生成されたシグナルの比較により、前記の生物学的試料中の前記の微生物核酸の量を決定する。
好ましい態様において、その第1対照核酸および第2対照核酸は本質的に同じ配列を有する。好ましくは、それらは同じプライマー結合部位を有するが、異なるプローブ結合部位を有する。
これは、その定性的および定量的測定のための対照核酸が、同じ選択された結合配列に基づき、アッセイの性能に関して、およびその分析物の配列(単数または複数)の点から見て、同じ好都合な特性を共有することができるという利点を与える。
一般に用いられる分子生物学および核酸化学の技法は当技術分野の技術の範囲内であり、文献において説明されている。例えば、Sambrook J. et al., Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory Press, ニューヨーク州コールドスプリングハーバー, 1989, Gait, M.J.(編者)1984; Nucleic Acid Hybridization, Hames, B.D., and Higgins, S.J.(編者)1984; およびシリーズ、Methods in Enzymology, Academic Press, Inc.を参照。
“同時に”は、本発明の意味において、例えば核酸の検出および定量化のような2つの作用が同じ反応または反応混合物内で実施されることを意味する。
“反応混合物”は、本発明において用いられる場合、少なくとも生物学的反応または化学反応を促進するための全ての構成要素を含む。それはあらゆる分離した区画なしの単一の体積であり、すなわち、前記の“反応混合物”中に存在する全ての構成要素は、互いに直接接触している。
“生物学的試料”は、天然起源のあらゆる試料であることができる。好ましくは、“生物学的試料”はヒトに由来し、それは体液である。本発明の好ましい態様において、その“生物学的試料”は血液である。
当技術で既知であるように、“ヌクレオシド”は塩基−糖の組み合わせである。ヌクレオシドの塩基部分は通常は複素環式塩基である。そのような複素環式塩基の2つの最も一般的な種類は、プリン類およびピリミジン類である。
“ヌクレオチド”は、さらにヌクレオシドの糖部分に共有結合したホスフェート基を含む“ヌクレオシド”である。ペントフラノシル糖が含まれる“ヌクレオシド”に関して、そのホスフェート基はその糖の2’、3’または5’ヒドロキシル部分のいずれかに結合していることができる。“ヌクレオチド”は、“オリゴヌクレオチド”、より一般的には本明細書において“オリゴマー化合物”または“ポリヌクレオチド”と表され、より一般的には“ポリマー化合物”と表されるものの“単量体単位”である。上記のものに関する別の一般的な表現は、デオキシリボ核酸(DNA)およびリボ核酸(RNA)である。
本発明によれば、“オリゴマー化合物”は“単量体単位”からなる化合物であり、それは“ヌクレオチド”のみ、または“非天然化合物”(下記参照)、より具体的には“修飾ヌクレオチド”(または“ヌクレオチド類似体”)もしくは“非ヌクレオチド化合物”のみ、またはそれらの組み合わせであってよい。“オリゴヌクレオチド”および“修飾オリゴヌクレオチド”(または“オリゴヌクレオチド類似体”)は、本発明の文脈において“オリゴマー化合物”の亜集団である。
この発明の文脈において、用語“オリゴヌクレオチド”は、“単量体単位”としての複数の“ヌクレオチド”から形成された“ポリヌクレオチド”を指し、すなわち、“オリゴヌクレオチド”は、“単量体単位”を有するリボ核酸(RNA)およびデオキシリボ核酸(DNA)の“オリゴマー化合物”または“ポリマー化合物”の特定の亜集団に属する。そのホスフェート基は一般にその“オリゴヌクレオチド”のヌクレオシド間主鎖を形成するものとして言及される。RNAおよびDNAの通常の結合または主鎖は、3’から5’へのホスホジエステル結合である。
本発明に従う“オリゴヌクレオチド”および“修飾オリゴヌクレオチド”(下記参照)は、主に当技術で記述されており当業者に既知であるように合成することができる。特定の配列のオリゴマー化合物を調製するための方法は当技術で既知であり、それには例えば適切な配列のクローニングおよび制限処理(restriction)、ならびに直接的な化学合成が含まれる。化学合成法には、例えばNarang S. A. et al., Methods in Enzymology 68 (1979) 90-98により記述されたホスホトリエステル法、Brown E. L., et al., Methods in Enzymology 68 (1979) 109-151により開示されたホスホジエステル法、Beaucage et al., Tetrahedron Letters 22 (1981) 1859において開示されたホスホルアミダイト法、Garegg et al., Chem. Scr. 25 (1985) 280-282において開示されたH−ホスホネート法、および米国特許第4,458,066号において開示された固体支持体法が含まれてよい。
上記で記述した方法に関して、その核酸は二本鎖または一本鎖の形で存在することができ、それによりその二本鎖核酸はその方法が実施される前に加熱により変性し(すなわち熱変性)、すなわち一本鎖になる。
別の態様において、プライマーおよび/またはそのプローブは化学的に修飾されてよく、すなわちそのプライマーおよび/またはそのプローブは修飾されたヌクレオチドまたは非ヌクレオチド化合物を含む。そのプローブまたはそのプライマーは、従って修飾オリゴヌクレオチドである。
“修飾ヌクレオチド”(または“ヌクレオチド類似体”)はいくつかの修飾により天然の“ヌクレオチド”と異なるが、なお塩基、ペントフラノシル糖、ホスフェート部分、塩基様、ペントフラノシル糖様およびホスフェート様の部分、またはそれらの組み合わせからなる。例えば、“標識”を“ヌクレオチド”の塩基部分に結合させることができ、それにより“修飾ヌクレオチド”が得られる。“ヌクレオチド”中の天然塩基を例えば7−デアザプリンにより置き換えることもでき、それによっても“修飾ヌクレオチド”が得られる。用語“修飾ヌクレオチド”または“ヌクレオチド類似体”は、本出願において互換的に用いられる。“修飾ヌクレオシド”(または“ヌクレオシド類似体”)は、上記で“修飾ヌクレオチド”(または“ヌクレオチド類似体”)に関して概説したような様式でのいくつかの修飾により天然の“ヌクレオシド”と異なる。
“非ヌクレオチド化合物”は天然の“ヌクレオチド”と異なるが、それはこの発明の意味においてなお−“ヌクレオチド”と同様に−“オリゴマー化合物”の“単量体単位”であることができる。従って、“非ヌクレオチド化合物”は“ヌクレオチド”と共に“オリゴマー化合物”を形成することができなければならない。さらに“非ヌクレオチド化合物”は塩基様、ペントフラノシル糖様またはホスフェート様の部分を含有することができるが、それらの全てが“非ヌクレオチド化合物”中に同時に存在するわけではない。
“修飾オリゴヌクレオチド”(または“オリゴヌクレオチド類似体”)は“オリゴマー化合物”の別の特定の亜集団に属し、1個以上の“ヌクレオチド”、1個以上の“非ヌクレオチド化合物”または“修飾ヌクレオチド”を“単量体単位”として有する。従って、用語“修飾オリゴヌクレオチド”(または“オリゴヌクレオチド類似体”)は実質的に“オリゴヌクレオチド”に類似した様式で機能する構造を指し、本出願全体にわたって互換的に用いられている。合成の視点から、“修飾オリゴヌクレオチド”(または“オリゴヌクレオチド類似体”)は、例えばホスフェート主鎖、リボース単位またはヌクレオチド塩基の適切な修飾による“オリゴヌクレオチド”の化学修飾により作ることができる(Uhlmann and Peyman, Chemical Reviews 90 (1990) 543; Verma S., and Eckstein F., Annu. Rev. Biochem. 67 (1998) 99-134)。代表的な修飾には、ホスホジエステルヌクレオシド間結合の代わりのホスホロチオエート、ホスホロジチオエート、メチルホスホネート、ホスホトリエステルもしくはホスホルアミデートヌクレオシド間結合;天然のプリンおよびピリミジン塩基の代わりにデアザ−もしくはアザ−プリンおよび−ピリミジン、5もしくは6位に置換基を有するピリミジン塩基;2、6もしくは8位もしくは7位(7−デアザプリン類として)に変更された置換基を有するプリン塩基;アルキル−、アルケニル−、アルキニルもしくはアリール部分、例えば低級アルキル基、例えばメチル、エチル、プロピル、ブチル、tert−ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、もしくはフェニル、ベンジル、ナフチルのようなアリール基を有する塩基;例えばそれらの2’位に置換基を有する糖類;または炭素環式もしくは非環式の糖類似体が含まれる。この発明の精神と調和する他の修飾は、当業者には既知である。そのような“修飾オリゴヌクレオチド”(または“オリゴヌクレオチド類似体”)は、天然の“オリゴヌクレオチド”(または天然の線に沿った合成“オリゴヌクレオチド”)と機能的に互換性があるが構造的に異なるものとして最もよく記述される。より詳細には、典型的な修飾がVerma S., and Eckstein F., Annu. Rev. Biochem. 67 (1998) 99-134またはWO 02/12263において開示されている。加えて、ヌクレオシド単位がヌクレオシド間ホスフェートまたは糖ホスフェート結合の代わりをする基を通して連結されている修飾を行うことができる。そのような結合には、Verma S., and Eckstein F., Annu. Rev. Biochem. 67 (1998) 99-134において開示されている結合が含まれる。ヌクレオシド単位を連結するためにホスフェート結合以外が利用される場合、そのような構造も“オリゴヌクレオシド”と記述されてきた。
“核酸”および“標的核酸”または“微生物核酸”は、当業者に既知であるような“ヌクレオチド”のポリマー化合物である。“標的核酸”または“微生物核酸”は、本明細書において、分析されるべき試料中の“核酸”、すなわち試料中のその存在、非存在および/または量を決定するべき“核酸”を意味するように用いられる。従って、この場合はその核酸が標的であり、従って“標的核酸”と表すこともできる。本発明によれば、その標的核酸は微生物由来であるため、その標的核酸は“微生物核酸”とも呼ばれる。例えば、血液がHCVを含有しているかどうかを決定しなければならない場合、その“標的核酸”または“微生物核酸”はHCVの核酸である。
“微生物”はあらゆるウイルス、細菌、古細菌(archaean)、真菌またはあらゆる単細胞真核生物を意味する。
“微生物の”は、“微生物”に由来する、または属することを意味する。
“検出する”は、特定の対象、例えば標的またはシグナルの存在または非存在を決定することを意味する。
“定量化する”は、特定の対象、例えば標的またはシグナルの量を決定することを意味する。
“測定する”は、特定の対象、例えば標的またはシグナルの少なくとも相対的な値を決定することを意味する。
第1および第2対照核酸を用いる本発明の特定の態様の意味において、その第1対照核酸は“内部定量標準核酸”としての役目を果たす。“内部定量標準核酸”は“核酸”であり、従って当業者に既知であるような“ヌクレオチド”のポリマー化合物である。“内部定量標準核酸”の場合では、その核酸は同時に“その反応の有効性に関する対照として、および定量する”ための、すなわちその“標的核酸”または“微生物核酸”の量を決定するための基準として用いるのに適切であり、そのように用いられる。この目的に関して、その“内部定量標準核酸”はその“標的核酸”または“微生物核酸”と一緒に全ての可能性のある試料調製工程を経る。さらに、それはその方法全体を通してその同じ反応混合物内で処理される。その“内部定量標準核酸”は、直接または間接的に、その標的核酸の存在下または非存在下の両方において検出可能なシグナルを生成しなければならない。この目的に関して、その“内部定量標準核酸”の濃度は、それぞれの試験において、感度を損なわないように、しかし例えば非常に高い標的濃度においても検出可能なシグナルを生成するように、注意深く最適化されなければならない。好ましくは、その“内部定量標準核酸”、すなわちその第1対照核酸に関する濃度範囲は、反応あたり100コピー〜反応あたり100000コピーの範囲を含むであろう。その“内部定量標準核酸”の可能性のある濃度は、例えばHIVに関して:1000コピー/反応、HCVに関して:7500コピー/反応であってよいが、これらの濃度は当業者に既知であるようにその特定のアッセイに適合されてよい。そのそれぞれのアッセイの検出限界(LOD)の点では、その“内部定量標準核酸”に関する濃度範囲は好ましくは20〜5000×LOD、より好ましくは20〜1000×LOD、最も好ましくは20〜500×LODである。反応混合物中のその“内部定量標準核酸”の終濃度は、成し遂げられる定量的測定範囲に依存する。その“内部定量標準核酸”は、例えばDNA、RNAまたはPNA、armored DNAまたはarmored RNA、およびそれらの修飾された形態であることができる。
さらに、本発明の意味において、その第2対照核酸は“定性的内部対照核酸”としての役目を果たす。“定性的内部対照核酸”は、定性的検出アッセイの試験結果の有効性を確証するために特に重要である:少なくとも陰性の結果の場合では、その定性的内部対照核酸が検出されなければならず、そうでなければその試験自体が機能していないと考えられる。しかし、定性的構成において、陽性の結果の場合にはその定性的内部対照核酸は必ずしも検出されなければならないわけではない。定性試験に関して、その反応の感度が保証されており、従って厳密に制御されていることが重要である。結果として、その定性的内部対照核酸の濃度は、わずかな阻害の状況においてさえもその試験が無効であると考えられるように、比較的低くなければならない。それは、それぞれのアッセイおよびその感度に注意深く適合させなければならない。好ましくは、その“定性的内部核酸”、すなわちその第2対照核酸に関する濃度範囲は、反応あたり1コピー〜反応あたり1000コピーの範囲を含む。そのそれぞれのアッセイの検出限界(LOD)に関して、それの濃度は好ましくはアッセイのLOD〜そのLODの25倍の値である。より好ましくは、それは2×〜20×LOD、または2×〜15×LOD、または2×〜10×LODである。さらにもっと好ましくは、それは3×〜7×LODである。
“検出限界”または“LOD”は、予め定められたヒット率(hitrate)を有する試料中の核酸の最も低い検出可能な量または濃度を意味する。低い“LOD”は高感度に相当し、高い“LOD”は低感度に相当する。その“LOD”は通常は、特にその核酸がウイルス核酸である場合には単位“cp/ml”により、またはIU/mlとしてのどちらかで表される。“cp/ml”は“ミリリットルあたりのコピー数”を意味し、ここで“コピー”はそれぞれの核酸のコピーである。IU/mlは“国際単位/ml”を表し、WHO標準を指す。標的に応じて、臨床的分子診断アッセイにおけるLODの値は典型的には1000cp/ml未満である。好ましくは、本発明の状況において実施されるアッセイにおけるLODは1〜500cp/mlである。
LOCを計算するための広く用いられている方法は、“プロビット分析”である。それは、刺激(用量)および量子的(quantal)(全か無か)応答の間の関係を分析する方法である。典型的な量子的応答実験において、動物のグループに異なる用量の薬物を与える。それぞれの用量レベルでの死亡パーセントを記録する。次いで、これらのデータをプロビット分析を用いて分析することができる。プロビットモデルは、応答パーセントが累積正規分布として用量の対数と関連していると仮定する。すなわち、用量の対数は、その累積正規から死亡パーセントを読み取るための変数として用いることができる。他の確率分布ではなくその正規分布を用いることは、可能な用量の高い終端および低い終端において予測される応答率に影響を及ぼすが、中央付近ではほとんど影響を有しない。
“プロビット分析”は、異なる“ヒット率”で適用され得る。当技術で既知であるように、“ヒット率”は一般にパーセント[%]で表され、分析物の特定の濃度における陽性結果の百分率を示す。従って、例えば、LODを95%ヒット率で測定でき、これは、そのLODは有効な結果の95%が陽性である設定に関して計算されることを意味する。
用語“プライマー”は、本明細書において当業者に既知であるように用いられ、“オリゴマー化合物”、主に“オリゴヌクレオチド”を指すが、鋳型依存性DNAポリメラーゼによるDNA合成を“始動させる(prime)”ことができる“修飾オリゴヌクレオチド”、すなわち、例えばそのオリゴヌクレオチドの3’末端が遊離3’−OH基を提供し、それにさらなる“ヌクレオチド”が鋳型依存性DNAポリメラーゼにより結合されて、3’から5’へのホスホジエステル結合が確立され、それによりデオキシヌクレオシド三リン酸が用いられ、それによりピロホスフェートが放出されるものも指す。
用語“プローブ”も本発明の文脈においてオリゴヌクレオチドであるが、以下の特定の機能を有する:それは反応混合物中の他の核酸に、好ましくはそれらの検出を可能にするためにハイブリダイズする。従って、好ましくはそれらのプローブは特定の核酸に特異的に結合する。プローブは好ましくは少なくとも1個の標識を有する。プローブは例えば異なる色素で、そのそれぞれのプローブを互いに独立して検出および測定できるように標識することができる。
しばしば“レポーター基”と呼ばれる“標識”は、一般に核酸、特に“オリゴマー化合物”または“修飾オリゴヌクレオチド”およびそれに結合したあらゆる核酸をその試料の残りの部分から識別可能にする基である(“標識”が結合している核酸は、標識した核酸結合化合物、標識プローブまたは単にプローブと呼ぶこともできる)。本発明に従う好ましい標識は蛍光標識であり、それは例えばフルオレセイン色素、ローダミン色素、シアニン色素、およびクマリン色素のような“蛍光色素”である。本発明に従う好ましい“蛍光色素”は、FAM、HEX、CY5、JA270、Cyan、CY5.5、LC−Red 640、LC−Red 705である。
上記で記述した方法に関して、その核酸は二本鎖または一本鎖の形で存在することができ、それによりその二本鎖核酸はその方法が実施される前に加熱により変性し(すなわち熱変性)、すなわち一本鎖になる。
別の好ましい態様において、プライマーおよび/またはプローブは化学的に修飾されてよく、すなわちそのプライマーおよび/またはそのプローブは修飾されたヌクレオチドまたは非ヌクレオチド化合物を含む。そのプローブまたはそのプライマーは、従って修飾オリゴヌクレオチドである。
“検出可能なシグナル”は、“微生物核酸”、“内部対照核酸”または“定性的標準核酸”のような化合物により“生成され”、その化合物をその試料の残りの部分から識別可能にするシグナルである。本発明によれば、前記の“検出可能なシグナル”は定量化することができ、または定性的様式で分析することができる。“検出可能なシグナル”は、例えば放射性であり、または発光シグナルのように光学的であることができる。本発明に従う好ましい“検出可能なシグナル”は、“蛍光色素”により放出される蛍光シグナルである。
PCR反応の“阻害”または“抑制”は、試料の大部分において観察される標準的な反応と比較してより効率の低いPCR反応を意味する。その“阻害”または“抑制”作用は、対照および/または標的に関する増殖曲線の低減した蛍光レベルにおいて、遅延したCT値において、その増殖曲線の傾きの変化において、その反応特性の転換点または他の特徴における変化においてのいずれかで見ることができる。その“阻害”または“抑制”作用は、変化した試料調製の有効性、試料に関連する作用、可能性がありそしてしばしば予測できないその増幅および/または検出反応を阻害する因子の存在、ならびに他の理由の結果もたらされ得る。従って、抽出手順の不成功または他の試料に基づく要因により試料が陰性と判定される一方で検出および定量化されるべき微生物核酸が実際にはその試料中に存在することがある可能性がある。
“生成すること”は、直接または間接的にもたらすことを意味する。従って、“検出可能なシグナル”の文脈において、“生成すること”は、例えば蛍光シグナルを放出する蛍光色素の場合において“直接もたらすこと”、または“誘発すること”もしくは“誘導すること”の意味で“間接的にもたらすこと”を意味することができる;例えば、“蛍光色素”などの“標識”により、または“蛍光色素”などの“標識”を有する核酸プローブにより、“検出可能なシグナル”を“生成する”“微生物核酸”。
当業者に既知であるように、プライマーおよびプローブの文脈における用語“特異的な”または“特異的にハイブリダイズする”は、別個の核酸に“特異的な”プライマーまたはプローブがストリンジェントな条件下でその核酸に結合するという意味を含む。好ましくは、本発明に従う方法において用いられるプライマーおよびプローブは、その微生物核酸および/またはその第1および第2対照核酸の配列の一部と少なくとも80%同一である。
“ポリメラーゼ連鎖反応”(PCR)は、数ある参考文献の中でも米国特許第4,683,202号、第4,683,195号、第4,800,159号、および第4,965,188号において開示されており、本発明に従う方法に用いられる最も好ましい核酸増幅技法である。PCRは典型的には選択された核酸鋳型(例えば、DNAまたはRNA)に結合する2種類以上のオリゴヌクレオチドプライマーを用いる。本発明において有用なプライマーには、微生物核酸または定量標準核酸の核酸配列内で核酸合成の開始点として作用することができるオリゴヌクレオチドが含まれる。プライマーは一般に用いられる方法による制限消化物から精製することができ、またはそれは合成により生成することができる。そのプライマーは好ましくは増幅における最大効率のために一本鎖であるが、プライマーは二本鎖であることができる。二本鎖プライマーをまず変性させ、すなわち鎖を分離するための処理をする。二本鎖核酸の変性の1つの方法は加熱によるものである。“熱安定性ポリメラーゼ”は熱安定性であるポリメラーゼ酵素であり、すなわちそれは、鋳型に相補的なプライマー伸長産物の形成を触媒し、二本鎖鋳型核酸の変性が達成されるのに必要な時間、高温にさらされた際に、不可逆的に変性することがない酵素である。一般に、その合成はそれぞれのプライマーの3’末端において開始され、その鋳型鎖に沿って5’から3’への方向に進行する。熱安定性ポリメラーゼは、サーマス・フラバス(Thermus flavus)、T.ルベール(T.ruber)、T.サーモフィラス(T.thermophilus)、T.アクアチカス(T.aquaticus)、T.ラクテウス(T.lacteus)、T.ルーベンス(T.rubens)、バチルス・ステアロサーモフィラス(Bacillus stearothermophilus)、およびメタノサーマス・フェルビダス(Methanothermus fervidus)から単離されてきた。それでもなお、熱安定性でないポリメラーゼも、その酵素が補充されるならば、PCRアッセイにおいて用いることができる。鋳型核酸が二本鎖である場合、それをPCRにおいて鋳型として用いることができる前に、2つの鎖を分離する必要がある。鎖の分離は、物理的、化学的または酵素的手段を含めたあらゆる適当な変性法により成し遂げることができる。それらの核酸鎖を分離する1つの方法は、その核酸をそれが大部分変性される(例えば、50%、60%、70%、80%、90%または95%より多くが変性される)まで加熱することを伴う。鋳型核酸を変性させるために必要な加熱条件は、例えば緩衝塩濃度ならびに変性させる核酸の長さおよびヌクレオチド組成に依存するであろうが、典型的には、温度および核酸の長さなどの反応の特徴に応じた時間、約90℃から約105℃までの範囲である。変性は典型的には約3秒〜4分(例えば5秒〜2分30秒、または10秒〜1.5分)実施される。二本鎖鋳型核酸を熱により変性させる場合、その反応混合物を、それぞれのプライマーが前記の微生物核酸および/または内部標準核酸上のそれの標的配列にアニーリングするのを促進する温度まで冷却させる。アニーリングの温度は、通常は約35℃から約75℃まで(例えば約40℃から約70℃まで;約45℃から約66℃まで)である。アニーリングの時間は、約5秒から約1分まで(例えば、約10秒から約50秒まで;約15秒から約40秒まで)であることができる。次いでその反応混合物を、前記ポリメラーゼの活性が促進または最適化される温度、すなわちそのアニーリングしたプライマーから伸長が起きて前記の微生物核酸および/または内部標準核酸に相補的な産物が生成されるのに十分な温度に調節する。その温度は、核酸鋳型にアニーリングしているそれぞれのプライマーから伸長産物が合成されるのに十分であるべきだが、伸長産物をそれの相補的な鋳型から変性させるほど高くてはならない(例えば、その伸長のための温度は一般に約35°から80℃まで(例えば、約40℃から約75℃まで;約45℃から約72℃まで)の範囲である)。伸長時間は、約5秒から約5分まで(例えば約10秒から約3分まで;約15秒から約2分まで;約20秒から約1分まで)であることができる。新たに合成された鎖は二本鎖分子を形成し、それは次の反応工程で用いられ得る。鎖分離、アニーリング、および伸長の工程は、その微生物核酸および/または内部標準核酸に対応する望まれる量の増幅産物が生成されるのに必要なだけ多く繰り返すことができる。その反応における制限要因は、その反応中に存在するプライマー、熱安定性酵素、およびヌクレオシド三リン酸の量である。そのサイクル工程(すなわち、変性、アニーリング、および伸長)は、好ましくは少なくとも1回繰り返される。検出における使用に関して、サイクル工程の回数は、例えばその試料の性質に依存するであろう。その試料が核酸の複雑な混合物である場合、検出に十分な標的配列を増幅するために、より多くのサイクル工程が必要とされるであろう。一般にそのサイクル工程を少なくとも約20回繰り返すが、40回、60回、さらに100回ほどの多数回、繰り返してもよい。
PCRとは別の核酸増幅反応には、リガーゼ連鎖反応(LCR;Wu D. Y. and Wallace R. B., Genomics 4 (1989) 560-69;およびBarany F., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 88 (1991)189-193);ポリメラーゼリガーゼ連鎖反応(Barany F., PCR Methods and Applic. 1 (1991) 5-16);Gap−LCR(WO 90/01069);修復連鎖反応(EP 0439182 A2)、3SR(Kwoh D. Y. et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 86 (1989) 1173-1177; Guatelli J.C., et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 87 (1990) 1874-1878; WO 92/08808)、およびNASBA(米国特許第5,130,238号)が含まれる。さらに、鎖置換増幅(SDA)、転写媒介性増幅(TMA)、およびQ−ベータ−増幅(総説に関して、例えばWhelen A. C. and Persing D. H., Annu. Rev. Microbiol. 50 (1996) 349-373; Abramson R. D. and Myers T. W., Curr Opin Biotechnol 4 (1993) 41-47を参照)がある。
適切な核酸検出方法は当業者に既知であり、Sambrook J. et al., Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory Press(ニューヨーク州コールドスプリングハーバー) 1989、およびAusubel F. et al.: Current Protocols in Molecular Biology 1987, J. Wiley and Sons(ニューヨーク)のような標準的な教科書に記述されている。核酸検出工程を行う前に、例えば沈殿工程のようなさらなる精製工程があってもよい。その検出方法には、二本鎖DNAの中にインターカレートし、その後それの蛍光を変化させるエチジウムブロミドのような、特異的な色素の結合またはインターカレーションが含まれてよいが、それに限定されない。その精製された核酸を、場合により制限消化した後に電気泳動法により分離し、その後、可視化することもできる。特定の配列に対するオリゴヌクレオチドハイブリダイゼーションおよびそれに続くそのハイブリッドの検出を利用する、プローブに基づくアッセイもある。当業者に既知のさらなる工程の後にその核酸を配列決定することも可能である。好ましい鋳型依存性核酸ポリメラーゼは、Z05 DNAポリメラーゼおよびその変異体である。本発明において有用な他の鋳型依存性核酸ポリメラーゼは、TaqポリメラーゼおよびTthポリメラーゼである。本発明に従う方法に有用なさらに他の核酸ポリメラーゼは、当業者には既知である。
本発明の状況において、その微生物核酸およびその対照核酸のそれぞれは、それらを検出の間に互いから識別可能にするために、異なる標識を有する異なるプローブに結合する。従って、前記の異なるプローブは、好ましくは異なる蛍光色素を有し、異なる波長の蛍光を放射する。これらの異なる蛍光シグナルは、好都合には、リアルタイムPCRを実施するためのほとんどの装置において用いられているような蛍光検出器の異なるチャンネルで互いに独立して検出することができる。
やはり好ましくは、その微生物核酸、第1対照核酸および第2対照核酸に関する結果は、1つのディスプレイ上で異なるマスクで、または異なるディスプレイにおいて可視化される。
本発明の意味において、核酸の“精製”、“単離”または“抽出”は以下のことに関する:核酸を上記で言及したアッセイの内の1種類において分析できる前に、それらは異なる構成要素の複雑な混合物を含有する生物学的試料から精製、単離または抽出されなければならない。しばしば、その第1工程に関して、その核酸の濃縮を可能にするプロセスが用いられる。細胞またはウイルス粒子の内容物を放出させるために、それらを酵素で、または化学物質で処理して、その細胞壁またはウイルス粒子を溶かす、分解する、または変性させることができる。このプロセスは、一般に溶解と呼ばれる。そのような溶解された物質を含有する、結果として得られた溶液は、溶解物と呼ばれる。溶解の間にしばしば直面する問題は、目的の構成要素を分解する他の酵素、例えば核酸を分解するデオキシリボヌクレアーゼまたはリボヌクレアーゼが溶解手順の間に目的の構成要素と接触することである。これらの分解酵素は細胞外にも存在する可能性があり、または溶解前に異なる細胞区画中に空間的に分離されていた可能性がある。溶解が起こるにつれて、目的の構成要素が前記の分解酵素に曝露されるようになる。このプロセスの間に放出される他の構成要素は、例えば、リポ多糖類のファミリーに属し、細胞に対して毒性であり、ヒトまたは動物の療法において用いることが意図される生成物に問題を引き起こし得るエンドトキシンである可能性がある。
上記で言及した問題に取り組むための様々な手段が存在する。核酸を遊離させることを意図する場合、カオトロピック剤、例えばチオシアン酸グアニジン、または陰イオン性、陽イオン性、双性イオン性もしくは非イオン性界面活性剤を用いるのが一般的である。前に記述した酵素または望まれないタンパク質を急速に分解するプロテアーゼを用いるのも好都合である。しかし、これは前記の物質または酵素が後の工程で試薬または構成要素を妨げ得るという別の問題を生じさせる可能性がある。
そのような溶解または上記で言及した試料調製プロセスにおいて好都合に用いることができる酵素は、タンパク質基質中のアミド結合を切断し、プロテアーゼ類または(互換的に)ペプチダーゼ類として分類される酵素である(Walsh, 1979, Enzymatic Reaction Mechanisms. W. H. Freeman and Company, サンフランシスコ, 第3章参照)。先行技術で用いられているプロテアーゼ類は、アルカリ性プロテアーゼ類(WO 98/04730)または酸性プロテアーゼ類(米国特許第5,386,024号)を含む。先行技術において核酸の単離における試料調製に広く用いられてきたプロテアーゼは、中性pH付近で活性であり、当業者にサブチリシンとして知られているプロテアーゼのファミリーに属する、トリチラキウム・アルバム(Tritirachium album)からのプロテイナーゼKである(例えば、Sambrook J. et al., Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory Press, ニューヨーク州コールドスプリングハーバー, 1989参照)。高アルカリ性および高温の両方においてその活性を保持する強いプロテアーゼである酵素エスペラーゼは、上記で言及した溶解または試料調製プロセスにおける使用に特に好都合である(EP 1 201 753)。
溶解工程の後の試料調製工程において、目的の構成要素がさらに濃縮される。目的の非タンパク質性構成要素が例えば核酸である場合、それらは通常はそれらがプローブに基づくアッセイにおいて用いられる前にその複雑な溶解混合物から抽出される。
核酸の精製のためのいくつかの方法が存在する:
−例えば以下のような、配列依存性の、または生体分子特異的な(biospecific)方法:
・親和性クロマトグラフィー
・固定された捕捉オリゴヌクレオチドへのハイブリダーゼーション
−例えば以下のような、配列非依存性の、または物理化学的な方法:
・例えばフェノール−クロロホルムによる液体−液体抽出
・例えば純粋なエタノールによる沈殿
・濾紙による抽出
・セチル−トリメチル−アンモニウム−ブロミドのようなミセル形成剤による抽出
・固定されたインターカレートする色素、例えばアクリジン誘導体への結合
・シリカゲルまたは珪藻土(diatomic earths)への吸着
・カオトロピック条件下での磁性ガラス粒子(MGP)またはオルガノシラン粒子への吸着。
他の表面が可能であるが、ガラス表面への核酸の吸着は精製目的で特に興味深い。核酸がガラス表面に結合する挙動を利用して核酸を天然の環境から単離するための多くの手順が近年提案されてきた。修飾されていない核酸が標的である場合、数ある理由の中でも、その核酸を修飾しなくてもよく、天然の核酸でさえも結合し得るため、シリカ表面を有する物質への核酸の直接結合が好ましい。これらのプロセスは様々な文献により詳細に記述されている。例えば、Vogelstein B. et al., Proc. Natl. Acad. USA 76 (1979) 615-9において、核酸をヨウ化ナトリウムの存在下でアガロースゲルから粉砕フリントガラスに結合させるための手順が提案されている。プラスミドDNAを細菌からガラス粉上で過塩素酸ナトリウムの存在下で精製することが、Marko M. A. et al., Anal. Biochem. 121 (1982) 382-387において記述されている。DE-A 37 34 442において、酢酸を用いたファージ粒子の沈殿およびペルクロレートによるファージ粒子の溶解による、ガラス繊維フィルター上での一本鎖M13ファージDNAの単離が記述されている。ガラス繊維フィルターに結合した核酸を洗浄し、次いでメタノール含有トリス/EDTA緩衝液で溶離する。ラムダファージからDNAを精製するための類似の手順が、Jakobi R. et al., Anal. Biochem. 175 (1988) 196-201において記述されている。その手順は、カオトロピック塩溶液中でのガラス表面への核酸の選択的結合、およびアガロース、タンパク質または細胞残留物のような夾雑物からの核酸の分離を伴う。ガラス粒子を夾雑物から分離するために、その粒子を遠心分離するか、または流体をガラス繊維フィルターを通して吸引するかのどちらかで処理することができる。しかし、これはその手順が大量の試料を処理するために用いられることを妨げる制限的な工程である。塩およびエタノールを添加することにより沈殿させた後の核酸を固定するための磁性粒子の使用はより好都合であり、例えばAlderton R. P. et al., S., Anal. Biochem. 201 (1992) 166-169およびPCT GB 91/00212において記述されている。この手順では、核酸を磁性粒子と共に凝集させる。その凝集物を、磁場をかけて洗浄工程を行なうことにより元の溶媒から分離する。1回の洗浄工程の後、その核酸をトリス緩衝液に溶解させる。しかし、この手順はその沈殿が核酸に選択的でないという点で不都合を有する。それどころか、様々な固体および溶解した物質も同様に凝集される。その結果、この手順は、存在する可能性があるかなりの量の、特異的な酵素反応のあらゆる阻害物質を除去するためには用いることができない。多孔質の特定のガラス母材中に磁性粒子を含有し、ストレプトアビジンを含有する層で覆われた磁性多孔質ガラスも、市場で入手可能である。この製品は、生物学的物質が複雑な調製工程においてそれらがビオチンに共有結合するように修飾される場合、生物学的物質、例えば、タンパク質または核酸を単離するために用いることができる。磁化可能な特定の吸着体は、非常に効率的であり、自動化された試料調製に適していることが証明された。フェリ磁性および強磁性ならびに超常磁性顔料がこの目的のために用いられる。最も好ましいMGP、および磁性ガラス粒子を用いる方法は、WO 01/37291において記述されている方法である。本発明の状況で核酸の単離に特に有用なのは、R. Boom et al. (J Clin Microbiol. 28 (1990), 495-503)に従う方法である。
標的核酸が含まれる核酸をそれらの天然環境から精製および単離した後、その標的核酸を検出することができる。
1態様において、本発明の方法には夾雑を避けるための工程が含まれる。例えば、1回のサーマルサイクラーの運転と次の運転の間で夾雑を低減または排除するための、ウラシル−DNAグリコシラーゼを利用する酵素的方法が、米国特許第5,035,996号、第5,683,896号および第5,945,313号において記述されている。加えて、本発明の方法を実施する際には、標準的な実験室封じ込めの実施および手順が望ましい。封じ込めの実施および手順には、方法の異なる工程に関する別々の作業領域、封じ込めフード、バリアーフイルターピペットティップ、および専用の空気置換(air displacement)ピペットが含まれるが、それらに限定されない。人員による一貫した封じ込めの実施および手順が、臨床試料を取り扱う診断実験室における正確さのために必要である。
上記で述べた方法は、好ましくはドナー蛍光部分とアクセプター蛍光部分の間の蛍光共鳴エネルギー転移(FRET)に基づく。代表的なドナー蛍光部分はフルオレセインであり、代表的な対応するアクセプター蛍光部分にはLC−Red 640、LC−Red 705、Cy5、およびCy5.5が含まれる。典型的には、その検出工程にはそのドナー蛍光部分により吸収される波長で試料を励起すること、およびその対応するアクセプター蛍光部分により放射される波長を可視化および/または測定することが含まれる。本発明によれば、その検出の後にFRETの定量化が行なわれる。好ましくは、その検出工程はそれぞれのサイクル工程の後に実施される。最も好ましくは、その検出工程はリアルタイムで実施される。商業的に入手可能なリアルタイムPCR機器(例えば、LightCycler(商標)またはTaqMan(登録商標))を用いることにより、PCR増幅およびその増幅産物の検出を単一の密閉された反応区画、例えばキュベット中で組み合わせることができ、サイクル時間が劇的に低減する。検出が増幅と同時に起こるため、リアルタイムPCR法では増幅産物の操作に関する必要性が省かれ、増幅産物間の交差汚染の危険性が減少する。リアルタイムPCRは処理時間を大きく低減し、臨床実験室における従来のPCR技術の魅力的な代替法である。
以下の特許出願は、LightCycler(商標)技術において用いられるようなリアルタイムPCRを記述している:WO 97/46707、WO 97/46714およびWO 97/46712。LightCycler(商標)機器は高品質光学系を利用する微量蛍光光度計と組み合わせられた迅速なサーマルサイクラーである。この迅速な熱サイクル技法は、反応容器として薄いガラスキュベットを用いる。反応チャンバーの加熱および冷却は、加熱された空気および周囲の空気を交互に用いることにより制御される。低質量の空気およびキュベットの容量に対して高い割合の表面積のために、その熱チャンバー内で非常に迅速な温度交換速度を達成することができる。
TaqMan(登録商標)技術は、2種類の蛍光部分で標識された一本鎖ハイブリダイゼーションプローブを利用する。第1の蛍光部分が適切な波長の光で励起されると、その吸収されたエネルギーはFRETの原理に従って第2の蛍光部分に移される。その第2の蛍光部分は一般にクエンチャー分子である。この形式において用いられる典型的な蛍光色素は、例えば、とりわけFAM、HEX、CY5、JA270、CyanおよびCY5.5である。PCR反応のアニーリング工程の間に、その標識されたハイブリダイゼーションプローブは標的核酸(すなわち増幅産物)に結合し、それに続く伸長段階の間に、Taqまたは当業者に既知の別の適切なポリメラーゼ、例えば好ましいZ05ポリメラーゼの5’から3’へのエキソヌクレアーゼ活性により分解される。結果として、その励起された蛍光部分およびクエンチャー部分は空間的に互いから分離された状態になる。結果として、クエンチャーの非存在下で第1の蛍光部分が励起された際に、その第1の蛍光部分からの蛍光放射を検出することができる。
上記の両方の検出形式において、その放出されたシグナルの強度を元の標的核酸分子の数と相関させることができる。
FRETの代替法として、増幅産物を蛍光DNA結合色素(例えばSYBRGREEN I(登録商標)またはSYBRGOLD(登録商標)(Molecular Probes))のような二本鎖DNA結合色素を用いて検出することができる。二本鎖核酸との相互作用の際に、そのような蛍光DNA結合色素は適当な波長の光により励起された後に蛍光シグナルを放射する。核酸にインターカレートする色素のような二本鎖DNA結合色素を用いることもできる。二本鎖DNA結合色素を用いる場合、通常、増幅産物の存在の確認のために融解曲線分析が実施される。
FRETと関連する分子ビーコンも、本発明のリアルタイムPCR法を用いる増幅産物の存在の検出のために用いることができる。分子ビーコン技術は、第1の蛍光部分および第2の蛍光部分で標識されたハイブリダイゼーションプローブを用いる。その第2の蛍光部分は一般にクエンチャーであり、その蛍光標識は典型的にはそのプローブのそれぞれの末端に位置する。分子ビーコン技術は、二次構造形成(例えばヘアピン)を可能にする配列を有するプローブオリゴヌクレオチドを用いる。プローブ内での二次構造形成の結果として、プローブが溶液中にある場合、両方の蛍光部分は空間的に近くにある。増幅産物へのハイブリダイゼーションの後、そのプローブの二次構造は壊され、その蛍光部分は互いから分離された状態になり、従って適切な波長の光での励起後にその第1の蛍光部分の放射を検出することができる。
従って、本発明に従う好ましい方法は上記で記述したFRETを用いる方法であり、ここで前記のプローブは、前記の第1および第2の蛍光部分の間の空間的近接を可能にする核酸配列を含む。
効率的なFRETは、その蛍光部分が直接局所的に近くにある場合で、かつそのドナー蛍光部分の放射スペクトルがそのアクセプター蛍光部分の吸収スペクトルと重複する場合にのみ起こり得る。
従って、本発明の好ましい態様において、前記のドナーおよびアクセプター蛍光部分は、前記プローブ上で互いに5ヌクレオチドより大きくない範囲内にある。
さらに好ましい態様において、前記のアクセプター蛍光部分はクエンチャーである。
上記のように、TaqMan形式では、PCR反応のアニーリング工程の間にその標識されたハイブリダイゼーションプローブがその標的核酸(すなわち増幅産物)に結合し、それに続く伸長段階の間にTaqまたは当業者に既知の別の適切なポリメラーゼ、例えば好ましいZ05ポリメラーゼの5’から3’へのエキソヌクレアーゼ活性により分解される。
従って、好ましい態様において、本発明に従う方法では、5’から3’へのエキソヌクレアーゼ活性を有するポリメラーゼ酵素を増幅に用いる。
本発明に従う方法は、ウイルス核酸に好都合に適用することができる。従って、本発明の好ましい態様において、その微生物核酸はウイルス核酸である。
ウイルス核酸の中でも、本発明に従う方法はHCVに好都合に適用することができる。従って、本発明の好ましい態様において、その微生物核酸はHCVの核酸である。しかし、本発明はあらゆる他の微生物核酸にも適用することができることは理解されなければならない。
どのようにして内部標準に基づくTaqMan形式での定量結果の計算を行うかの例を以下で記述する。全PCR運転からの機器補正蛍光値の入力データから力価を計算する。標的核酸、例えば微生物核酸、および内部定量標準核酸の役目を果たす第1対照核酸を含有する試料のセットに対して、指定されたような温度プロフィールを用いるサーマルサイクラー上でPCRを行う。そのPCRプロフィールの間の選択された温度および時間において、試料に濾波された光を照射し、それぞれの試料に関してその標的核酸およびその内部定量標準核酸に関する濾波された蛍光データを収集する。PCR運転が完了した後、その蛍光読み取り値を処理して、その内部定量標準核酸に関する1セットの色素濃度データおよびその標的核酸に関する1セットの色素濃度データを得る。色素濃度データのそれぞれのセットを同じ様式で処理する。いくつかの妥当性(plausibility)チェックの後、その内部定量標準核酸およびその標的核酸に関してエルボー(elbow)値(CT)を計算する。エルボー値は、その標的核酸またはその内部定量標準核酸の蛍光が予め定められた閾値(蛍光濃度)と交差する点として定義される。力価の決定は、その標的核酸およびその内部定量標準核酸が同じ効率で増幅されるという仮定、ならびに計算されたエルボー値において等量の標的核酸および定量標準核酸のアンプリコンのコピーが増幅され、検出されるという仮定に基づく。従って、(CTQS−CT標的)は、log(標的濃度/QS濃度)に対して線形であり、ここで“QS”はその内部定量標準核酸を表す。次いで、例えば以下の方程式:
T’=10(a(CTQS−CT標的)2+b(CTQS−CT標的)+c)
におけるような多項較正式を用いることにより、その力価Tを計算することができる。
この多項式の定数およびその内部定量標準核酸の濃度は既知であり、従ってその式の中の唯一の変数は差(CTQS−CT標的)である。
どのようにしてTaqManにおける定性的結果の計算を行うかの例を以下で記述する:全PCR運転からの機器補正蛍光値の入力データを分析する。おそらく標的核酸、例えば微生物核酸、および定性的内部対照核酸の役目を果たす対照核酸を含有する試料のセットに対して、指定されたような温度プロフィールを用いるサーマルサイクラー上でPCRを行う。そのPCRプロフィールの間の選択された温度および時間において、試料に濾波された光を照射し、それぞれの試料に関してその標的核酸およびその定性的内部対照核酸に関する濾波された蛍光データを収集する。PCR運転が完了した後、その蛍光読み取り値を処理して、その定性的内部対照核酸に関する1セットの色素濃度データおよびその標的核酸に関する1セットの色素濃度データを得る。色素濃度データのそれぞれのセットを同じ様式で処理する。その定性的内部対照核酸および存在するならばその標的核酸に関してエルボー値(CT)を計算する。エルボー値は、その標的核酸またはその内部定量標準核酸の蛍光が予め定められた閾値(蛍光濃度)と交差する点として定義される。その定性的内部対照は、指定された範囲内のCTが得られ、かつその蛍光が予め定められた最小蛍光強度を上回る場合、有効である。標的CTが得られない場合、その定性的内部対照は有効でなければならない。標的CTが得られた場合、それはその試料中の標的核酸の存在を示し、その定性的内部対照は有効または無効どちらであってもよい。
上記の方法のいずれも本発明の意味において好ましく、ここで前記の第1および前記の第2対照核酸は1つの対照試薬内で提供される。
信頼できる定性的検出のために、および同時に信頼できる定量のために、異なる濃度の第1および第2対照核酸を含む対照試薬の概念は、微生物核酸を標的とするあらゆるそれぞれのアッセイに好都合に用いることができる。
従って、本発明の別の観点は、微生物核酸をリアルタイムPCRにより同時に検出および定量化するための異なる濃度の第1および第2対照核酸の使用である。上記で記述した使用はさらに好ましく、ここで前記の第1および第2対照核酸は同じプライマーペアまたは異なるプライマーペアにより増幅されるが、異なるプローブにハイブリダイズする。
本発明に従う方法におけるこの概念の使用は特に好ましい。従って、別の観点において、本発明は、上記で記述した方法(単数または複数)に従って微生物核酸を同時に検出および定量化するための異なる濃度の第1および第2対照核酸の使用に関する。
本発明は、生物学的試料中の微生物核酸をリアルタイムPCRにより同時に検出および定量化するためのキットも提供し、このキットは異なる濃度の第1および第2対照核酸、前記の微生物核酸の別個の配列部分に、ならびに前記の第1および第2対照核酸の別個の配列部分に、特異的にハイブリダイズする1種類以上のプライマーペア、ならびにこれらの1種類以上のプライマーペアにより増幅された配列のそれぞれに特異的にハイブリダイズするプローブを含み、ここで前記の第1および第2対照核酸は1つの対照試薬内で提供される。
好ましい態様において、本発明は、上記で記述した方法のいずれかに従って生物学的試料中の微生物核酸を同時に検出および定量化するためのキットを提供し、このキットは異なる濃度の第1および第2対照核酸、前記の微生物核酸の別個の配列部分に、ならびに前記の第1および第2対照核酸の別個の配列部分に、特異的にハイブリダイズする1種類以上のプライマーペア、ならびにこれらの1種類以上のプライマーペアにより増幅された配列のそれぞれに特異的にハイブリダイズするプローブを含む。
本発明のさらに好ましい観点は上記で記述したようなキットであり、ここで前記の第1および第2対照核酸は同じプライマーペアにより増幅されるが異なるプローブにハイブリダイズし、従って競合的構成を提供する。しかし、非競合的または部分的に競合的なアッセイおよびそのそれぞれの方法を実施するためのキットも本発明に含まれることは理解されなければならない。
そのようなキットはさらに、当技術で既知であるように、その試料調製手順の間に用いることができるプラスチック製品、例えば96もしくは384ウェル形式のマイクロタイタープレートまたは普通の反応チューブ(例えばEppendorf(ドイツ、ハンブルク)により製造されたもの)、および本発明に従う方法を実施するための全ての他の試薬を含んでいてよい。従って、そのキットは追加で核酸への親和性を有する材料を含有することができ、好ましくは核酸への親和性を有する材料はシリカ表面を有する材料を含む。好ましくは、シリカ表面を有する材料はガラスである。最も好ましくは、核酸への親和性を有する材料は磁性ガラス粒子を含む組成物である。そのキットはさらに、または追加で、プロテアーゼ試薬、および細胞の溶解を可能にする、例えばカオトロピック剤、界面活性剤もしくはアルコール類またはそれらの混合物を含有する溶解緩衝液を含むことができる。本発明に従うキットのこれらの構成要素は、チューブまたは保管容器中で別々に提供されてよい。その構成要素の性質に応じて、これらは単一のチューブまたは保管容器中で提供されることすら可能である。そのキットはさらに、または追加で、核酸が磁性ガラス粒子に結合した際のその磁性ガラス粒子の洗浄工程に適した洗浄溶液を含む。この洗浄溶液は、上記で記述したように、エタノールおよび/またはカオトロピック剤を緩衝液中に含有していてもよく、あるいはエタノールおよび/またはカオトロピック剤なしの酸性pHを有する溶液であってもよい。しばしば、その洗浄溶液または他の溶液は、使用前に希釈しなければならない原液として提供される。そのキットはさらに、または追加で、溶離液または溶離緩衝液、すなわちその磁性ガラス粒子に結合した核酸を溶離するための溶液または緩衝液(例えば10mMトリス、1mM EDTA、pH8.0)または純水を含んでいてよい。さらに、核酸の精製プロセスのために用いることができる追加の試薬または緩衝液も存在していてよい。
好ましくは、そのキットは5’から3’へのエキソヌクレアーゼ活性を有するポリメラーゼ酵素を含む。そのキットが逆転写活性を有する酵素を含むことも好ましい。
別の好ましい態様において、そのキットは5’から3’へのエキソヌクレアーゼ活性および逆転写活性を有するポリメラーゼ酵素を含む。
本発明の好ましい態様において、本発明に従う方法は分析システム内で実施される一連の方法中に組み込まれており、それによって好ましくは自動化可能なプロセスを形成している。
従って、本発明の好ましい観点は以下のものである:
生物学的試料中の微生物核酸をリアルタイムPCRにより同時に検出および定量化するための分析システムであって、システムは以下のものを含むシステム:
−前記の微生物核酸を単離および精製するための溶解緩衝液および容器を含む、試料調製モジュール
−その中で上記で記述した方法を実施する反応容器を含む、増幅および検出モジュール
−上記のようなキット。
その試料調製モジュールは、好都合には、上記で記述した試料調製手順のための構成要素、すなわち、例えば磁性ガラス粒子およびそれらを溶液から分離するための磁石、プロテアーゼ試薬、カオトロピック塩溶液、ならびに粗製の試料および試料調製に必要な試薬を収容する1個以上の容器を含むことができる。
その増幅および検出モジュール中の反応容器は、例えばマイクロタイタープレート、遠心分離用バイアル、溶解チューブ、または本発明に従う反応混合物を収容するのに適したあらゆる他のタイプの容器であることができる。
本発明の好ましい態様において、その分析システムは、本発明の方法を実施するための試薬を収容する保管モジュールを含む。
前記の保管モジュールはさらに、本発明の方法に有用な他の構成要素、例えば使い捨て用品、例えばピペットティップまたは増幅および検出モジュール内で反応容器として用いるための容器さえも含むことができる。
本発明の好ましい態様において、その分析システムには生物学的試料を最初のチューブからその分析システム上で使用可能な容器に移すための前分析(preanalytical)システムモジュールが含まれる。
本発明のさらに別の好ましい態様において、その分析システムは生物学的試料を試料調製モジュールから増幅および検出モジュールに移すための移動モジュールを含む。
たとえ前記の移動を手作業で行うことが可能であるとしても、その移動が例えばロボット装置、例えば電動の移動ラックまたはロボットピボットアームにより行われる自動化されたシステムを用いるのが好ましい。
自動化可能なプロセスは、そのプロセスの工程が人による外部からの制御または影響がほとんどまたは全くなくても作動できる装置または機械を用いて実施するのに適していることを意味する。自動化された方法は、その自動化可能な方法の工程が人による外部からの制御または影響がほとんどまたは全くなくても作動できる装置または機械を用いて実施されることを意味する。その方法のための準備工程だけは手動で行わなければならない可能性があり、例えば貯蔵容器を充填および設置しなければならず、試料の選択および当業者に既知のさらなる工程、例えば制御コンピューターの操作は、人が行わなければならない。その装置または機械は、例えば自動的に液体を添加し、試料を混合し、または特定の温度での保温工程を実施することができる。典型的には、そのような機械または装置は、単一の工程およびコマンドが指定されているプログラムを実行するコンピューターにより制御されるロボットである。
従って、好ましくは、本発明に従う分析システムはさらにシステムの構成要素を制御するための制御ユニットを含む。
そのような制御ユニットは、前記の分析システムの種々の構成要素が正確に、そして正確なタイミングで、働き、相互作用すること、例えば試料などの構成要素を協調した様式で反応モジュールに移動させることを確実にするためのソフトウェアを含むことができる。その制御ユニットは、リアルタイムオペレーティングシステム(RTOS)を動かす処理装置も含むことができ、それはリアルタイムアプリケーションを意図するマルチタスクオペレーティングシステムである。言い換えれば、そのシステム処理装置は、リアルタイムな制約、すなわちシステム負荷に関係のない、事象からシステム応答までの操作上の期限を管理することができる。それは、そのシステム内の種々のユニットが与えられた命令に従って正確に作動および応答することをリアルタイムに制御する。
本発明に従う使用、キットおよび分析システムの全ての他の好ましい態様および態様の具体的記述は、本発明に従う方法に関して言及したものである。
実施例1:第1対照核酸を、定性的および定量的結果の出力を得るための異なる基準に従って評価する
COBAS AmpliPrep/COBAS TaqMan HBV、HCVおよびHIV−1検査は商業的に入手可能なリアルタイムPCR検査であり、それらはウイルス標的HBV、HCVおよびHIV−1の正確な定量化に最適化されてきた。それらのアッセイは、PCR反応混合物の試料調製ユニットから増幅/検出ユニットへの自動化された移動のためのドッキングステーションを含む完全に自動化されたCOBAS AmpliPrep/COBAS TaqManシステム上、または手作業での移動を含むCOBAS AmpliPrep/COBAS TaqManシステム上、またはCOBAS AmpliPrep/COBAS TaqMan48システム上のいずれかで用いられる。
COBAS AmpliPrep/COBAS TaqMan HCV検査を、1セットの同一の試薬を用いる同時定量および定性検査の結果を提供するためのアプローチを研究するための例として用いた。その検査は15IU/mLの検出限界を有し、市場に出ている定量的HCV検査だけでなく定性的HCV検査にも匹敵する、またはそれよりも良い最高水準の感度を示す。この高い感度のため、その検査を定性的HCV検査としても用いることが試みられてきた。定量検査の主な焦点は正確なHCV力価を提供することであり、一方で定性検査の主な焦点はそのアッセイの高い感度を確実にすることである。COBAS AmpliPrep/COBAS TaqMan HCV検査は本来は処置の成功を定量的に監視するために開発されたため、そのアッセイを一切の変更なしで用いても信頼できる定性的結果を提供することができるかどうかの分析を行った。データの再吟味によって、稀に起こるPCRの効率がより低い事象において、15IU/mLの感度がその現在のデータ分析設定ではその定量検査により保証されないことが明らかになった。阻害されたが有効なQS結果を示しているPCR反応および失敗した標的(2183IU/mL)検出の例を下記に示す:
有効なQSであるため有効な結果をもたらした阻害されたPCR反応、および“標的が検出されなかった”結果を、図4aにおいて示す。そのQSは、0.8相対蛍光単位に相当する蛍光閾値設定を超えたため、有効であった。
同じ試料の繰り返し検査は、標準的なPCR反応および2183IU/mLのHCV力価の結果を示した(図4b)。
従って、一切の変更のない定量的COBAS AmpliPrep/COBAS TaqMan HCV検査は、定性検査として用いることはできない。
上記で言及した検査を用いて、そのIC/QS対照核酸のデータ分析パラメーター設定を、信頼できる定性的結果の出力が達成されるように最適化した。一般的適用可能性を実証するために、その最適化をCOBAS AmpliPrep/COBAS TaqManシステム上での市販のHBV、HCVおよびHIV−1アッセイの3種類全てに関して追加で行った。そのパラメーター設定における最小相対蛍光強度(RFImin)閾値をかなり上げることにより、その3種類全ての定量検査の感度は、確実にそれらを信頼できる定性的結果の出力をもたらすために用いることができるものになる。その相対的パラメーター設定を下記の表1において示す:
Figure 0005992909

9.0の定性的RFIminの設定は、上記でHCVに関して示した例における阻害されたPCR反応を無効とするであろう。
定性的結果の出力のための上記のRFIminの設定は、図1aにおいて示したように、標的の存在がそのIC/QS増殖曲線の蛍光強度に影響を及ぼす可能性があるため、定量的結果の出力のために同時に用いることはできない。結果として、その定性的RFIminの設定は、高い標的濃度の存在下では高い割合のIC/QS無効反応をもたらす。それに対し、ICは標的の存在下で有効であってはならないため、これはその定性的結果の出力の有効性には影響を及ぼさない。しかし、その定量的反応の有効性は著しく影響を受ける。
従って、1つのIC/QSを有する同じ試験試薬が、保証されたその試験の感度を伴う信頼できる定性的結果の出力および許容できるほどに低いレベルのQSの無効な結果を伴う信頼できる定量検査の結果の両方を提供するために用いられる場合、これはその生データを本明細書で提案したような2つの異なるパラメーター設定のセットを用いて分析することによってのみ達成することができる。
実施例2:異なる濃度の第1および第2対照核酸を、同じ試験試薬で定量的および定性的結果の出力を得るために用いる
その目標は、同じ試験試薬のセットを用いて信頼できる定性的結果の出力および信頼できる定量検査結果の両方を提供することである。この目標に取り組むためのこのアプローチにおいて、内部対照核酸を含有する試薬は、2種類の異なるarmored RNA粒子を有する配合物を含む。以下の試薬をこの実験のために用いることができる:
a)COBAS AmpliPrep/COBAS TaqMan HCV検査の試料調製試薬類(磁性粒子懸濁液;プロテアーゼ溶液、溶解緩衝液;溶離緩衝液);
b)約1000コピー/反応の濃度レベルのQS armored粒子、および約100コピー/反応の濃度レベルのIC armored粒子。armored RNA粒子の生成を下記の図2において示す。そのarmored粒子により封入される転写産物は、異なるプライマー結合部位および異なるプローブ結合部位を有する。それらのプローブは、black hole quencher BHQと一緒に蛍光標識HEXおよびCY5で標識されている;
c)マグネシウム試薬;
d)以下を含むマスターミックス試薬:
−Z05DNAポリメラーゼおよびUNG
−3種類の異なるプライマーペア:標的HCVに対するもの、第1対照核酸に対するもの、および第2対照核酸に対するもの
−3種類の異なるプローブ:FAMおよびBHQで標識された標的に対するもの、HEXおよびBHQで標識された第1対照核酸に対するもの、ならびにCY5およびBHQで標識された第2対照核酸に対するもの、
−アプタマー
−dNTP(dUTP、dATP、dCTP、dGTP、dTTP)
−マスターミックス緩衝剤成分(酢酸カリウム、グリセロール、トリシン、DMSO、ベタイン、IGEPAL、水)。
その試料調製および増幅/検出工程は、COBAS AmpliPrep/COBAS TaqMan HCV検査のために確立された標本抽出パラメーターおよびPCRファイルを用いて実施される。それらの3種類の異なる蛍光色素に関する増殖曲線を求め、それを図3において示す。
HCV試料に関して、定量的結果の出力を得るために、その力価を以下のように決定する:PCR運転が完了した後、その蛍光読み取り値を処理して、QS核酸(HEX蛍光標識)に関する1セットの色素濃度データ、定性的標準核酸(Cy5蛍光標識)に関する1セットの色素濃度データ、および標的核酸(FAM蛍光標識)に関する1セットの色素濃度データを得る。色素濃度データの3種類全てのセットを同じ様式で処理する。その定量的および定性的標準核酸ならびにその標的核酸に関してエルボー値(CT)を計算する。エルボー値は、その標的核酸またはそれらの2種類の内部対照核酸が予め定められた閾値(蛍光濃度)と交差する点として定義される。
定量的結果の出力に関しては、力価の決定を、HEXおよびFAMに関する色素濃度データのみを分析することにより行う。力価の決定は、その標的核酸およびそのQS核酸が同じ効率で増幅されるという仮定、ならびに計算されたエルボー値において等量の標的核酸およびQS核酸のアンプリコンのコピーが増幅され、検出されるという仮定に基づく。従って、(CTQS−CT標的)は、log(標的濃度/QS濃度)に対して線形である。次いで、例えば以下の方程式:
T’=10(a(CTQS−CT標的)2+b(CTQS−CT標的)+c)
におけるような多項較正式を用いることにより、その力価Tを計算することができ、ここでその式の中の唯一の変数は差(CTQS−CT標的)である。
定性的結果の出力に関しては、CY5およびFAMに関する色素濃度データのみを分析する。CY5およびFAMに関する色素濃度データを比較することにより、そのソフトウェアはそのPCR反応が標的陰性または標的陽性のどちらであるかを決定する。そのPCR反応が標的陽性である場合、そのICの結果は無視され、従ってそれは有効でも無効でもよい。そのPCR反応が標的陰性である場合、その結果はそのICが有効な結果を示している場合にのみ有効である。上記で示した実施例において、全ての反応は低レベルのHCV標的を含有しており−そのそれぞれの試験結果の有効性とは関係ないが−全ての反応は有効なICを示す。

Claims (4)

  1. 生物学的試料中の微生物核酸を同時に検出および定量化するための方法であって、以下のことを含む方法:
    a)前記の微生物核酸を単離および精製し;
    b)第1対照核酸が定量標準核酸であり、第2対照核酸が定性的内部対照核酸である異なる濃度の第1および第2対照核酸、前記の微生物核酸の別個の配列部分に、および前記の対照核酸の別個の配列部分に、特異的にハイブリダイズする1種類以上のプライマーペア、ならびにこれらの1種類以上のプライマーペアにより増幅された配列のそれぞれに特異的にハイブリダイズするプローブを含む反応混合物を提供し、ここで前記の微生物核酸ならびに前記の第1対照核酸および前記の第2対照核酸は異なるプローブにハイブリダイズする;
    c)単離および精製された微生物核酸を前記の反応混合物に添加し;
    d)1回以上のサイクル工程を実施し、ここでサイクル工程は増幅工程を含み、この増幅工程は、もし前記の試料中に存在するならば前記の微生物核酸に由来する1個以上の増幅産物を生成することならびに前記の第1対照核酸および前記の第2対照核酸に由来する増幅産物を生成することを含み、ここでサイクル工程はハイブリダイズ工程を含み、このハイブリダイズ工程は前記のプライマーペアにより増幅された配列を前記のプローブとハイブリダイズさせることを含み、ここでそれらのプローブはドナー蛍光部分および対応するアクセプター蛍光部分で標識されており、それらのプローブのそれぞれは異なる蛍光色素を有する;
    e)前記の第1対照核酸および前記の微生物核酸の増幅産物により生成する、それらの濃度に比例する蛍光シグナルを検出および測定し、同時に前記の第2対照核酸の前記の増幅産物により生成された蛍光シグナルを検出し、ここで前記の第2対照核酸の増幅産物の存在は前記の微生物核酸に関する増幅産物の非存在下においてさえもその反応混合物において増幅が起こっていることを示し、および前記の微生物核酸および前記の第1対照核酸により生成されたシグナルの比較により、前記の生物学的試料中の前記の微生物核酸の量を決定する
  2. 増幅が5’から3’へのエキソヌクレアーゼ活性を有するポリメラーゼ酵素を用いる、請求項に記載の方法。
  3. 前記の第1対照核酸が前記の微生物核酸の検出限界の20〜5000倍の濃度で存在し、前記の第2対照核酸が前記の微生物核酸の検出限界の1〜25倍の濃度で存在する、請求項1又は2に記載の方法。
  4. 前記の第1および前記の第2対照核酸が1つの対照試薬内で提供される、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
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