JP5991328B2 - 鋼製煙突の内部ライニング厚推定方法及び内部ライニング劣化診断方法 - Google Patents
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Description
通煙停止時の煙突ライニング点検方法としては、ライニングの脱落、亀裂、浮き等の劣化状況の把握のため、筒身に設置された点検用マンホールから内部を覗き込むような簡易な目視によるものがある。
また、煙突の上部に梁を設置し、この梁に取付けたシーブに、ウインチに巻回したワイヤーを掛けて煙突内部に垂下し、ワイヤーの先端部に乗用ゴンドラを固定し、この乗用ゴンドラに作業員が乗り、乗用ゴンドラに設けられた操作装置を操作してウインチを作動し、ゴンドラを昇降させ、ライニングの目視点検に加えて、打音検査やライニングサンプルを採取し、詳細な劣化分析を行うものもある。
また、煙突頂部と底部に張ったガイドワイヤーにビデオカメラを配置した荷台を設置し、昇降させることで煙突内部を撮影するといった無人での煙突内部点検方法もある(例えば、特許文献1参照。)。
コアリングの採取は、煙突周りに点検デッキが存在する場合はデッキより行い、デッキが無い場合は、煙突外部を昇降することができる乗用ゴンドラを設置し、ゴンドラ上より行っている。サンプリング箇所は鉄皮とライニングからなる補修材料にて閉塞処置が施される。
また、煙突筒身の鉄皮温度を測定し、運転条件、外気条件を考慮した理論式よりライニング厚みを算出し、内部劣化状況を把握するといった診断方法もある(例えば、特許文献3参照。)。
また、乗用ゴンドラを用いた内部点検方法では、長時間に及ぶ高所作業であることやライニング材の損傷部分が落下してくる可能性があり、作業者の安全上の問題がある。
また、有人、無人(特許文献1参照)に関わらず、内部点検方法では通煙中に点検を行うことが不可能であり、例えば製鉄所の焼結工場煙突(例えば200mの高さを有する)のように、年間の通煙停止時間が極めて短い煙突においては、点検、機具の設置、解体に要する時間を確保することが難しいといった課題がある。
また、煙突のような超高層建築物では、ゴンドラ設置に高額な費用が掛かり、コストが高くなるという問題もある。
また、特許文献3に記載の方法では煙突筒身の鉄皮温度が広範囲に渡り急変していない箇所でのライニング厚が施工時の厚みであると仮定し、劣化箇所のライニング厚を算出しているため、ライニング施工時に詳細なライニング厚測定を行い、厚み算出の基準となる煙突の周方向及び高さ方向での施工時のライニングの厚みを記録出来ていない煙突に関しては適用出来ないという問題がある。
さらに、内部ライニングの経年劣化著しい煙突では、ライニング施工時の厚みが維持されている箇所が存在しない、あるいはその特定が極めて難しく、ライニング厚算出の基準となる箇所の厚みは実測を行わない限り、不明確といった課題があった。
前記鋼製煙突の外部における熱伝達率である外部熱伝達率及び前記鋼製煙突の内部における熱伝達率である内部熱伝達率を用いてライニング厚と鉄皮温度との関係を規定した理論式を構築する理論式構築工程と、煙突外部より前記鋼製煙突の複数箇所においてコアリングでライニングをサンプリングしてライニング厚を求めると共に該コアリング位置における鉄皮温度を実側するライニング厚及び鉄皮温度実測工程と、該ライニング厚及び鉄皮温度実側工程で得られた実際のライニング厚と鉄皮温度とに基づいて、前記理論式の外部熱伝達率及び/又は内部熱伝達率を補正して補正理論式を得る補正理論式取得工程と、前記鋼製煙突の高さ方向の所定位置において鉄皮温度を実測する鉄皮温度実測工程と、該鉄皮温度実測工程で実測された鉄皮温度と前記補正理論式とに基づいて当該位置のライニング厚を推定するライニング厚推定工程とを備えたことを特徴とするものである。
ライニング厚推定工程で得られたライニング厚が予め定めた限界ライニング厚よりも薄い場合にライニング劣化が限界を超えていると判定する判定工程とを有することを特徴とするものである。
前記鋼製煙突の外部における熱伝達率である外部熱伝達率及び前記鋼製煙突の内部における熱伝達率である内部熱伝達率を用いてライニング厚と鉄皮温度との関係を規定した理論式を構築する理論式構築工程と、煙突外部より前記鋼製煙突の複数箇所においてコアリングでライニングをサンプリングしてライニング厚を求めると共に該コアリング位置における鉄皮温度を実側するライニング厚及び鉄皮温度実測工程と、該ライニング厚及び鉄皮温度実側工程で得られた実際のライニング厚と鉄皮温度とに基づいて、前記理論式の外部熱伝達率及び/又は内部熱伝達率を補正して補正理論式を得る補正理論式取得工程と、予め設定したラインング限界厚になったときの鉄皮温度を前記補正理論式に基づいて算出するライニング限界厚時鉄皮温度算出工程と、前記鋼製煙突の高さ方向の所定位置において鉄皮温度を実測する鉄皮温度実測工程と、該鉄皮温度実測工程で実測された鉄皮温度が前記ライニング限界厚時鉄皮温度算出工程で算出された鉄皮温度よりも高い場合にライニング劣化が限界を超えていると判定する判定工程とを有することを特徴とするものである。
本実施の形態に係る鋼製煙突の内部ライニング厚推定方法は、鉄皮3とライニング5(図3参照)を有する鋼製煙突1(図1及び図2参照)のライニング厚を推定する鋼製煙突1の内部ライニング厚推定方法であって、鋼製煙突1の外部における熱伝達率である外部熱伝達率及び鋼製煙突1の内部における熱伝達率である内部熱伝達率を用いてライニング厚と鉄皮温度との関係を規定した理論式を構築する理論式構築工程と、煙突外部より鋼製煙突1の複数箇所においてコアリングでライニング5をサンプリングしてライニング厚を求めると共に該コアリング位置における鉄皮温度を実側するライニング厚及び鉄皮温度実測工程と、該ライニング厚及び鉄皮温度実側工程で得られた実際のライニング厚と鉄皮温度とに基づいて、理論式の外部熱伝達率及び/又は内部熱伝達率を補正して補正理論式を得る補正理論式取得工程と、鋼製煙突1の高さ方向の所定位置において鉄皮温度を実測する鉄皮温度実測工程と、該鉄皮温度実測工程で実測された鉄皮温度と補正理論式とに基づいて当該位置のライニング厚を推定するライニング厚推定工程とを備えたことを特徴とするものである。
以下、鋼製煙突及び上記各工程を詳細に説明する。
鋼製煙突1の筒身は、薄肉の鉄皮3と、排ガスからの鉄皮3の保護を目的とし、鉄皮3の内側に施される厚肉のライニング5からなる(図3参照)。
ライニング材としては耐酸キャスタブルが広く用いられており、ライニング5は排ガスに起因する経年劣化により表層より徐々に脱落していく。そこで、上記の鋼製煙突の内部ライニング厚推定方法によりライニング厚を推定する。
理論式構築工程は、鋼製煙突1の外部における熱伝達率である外部熱伝達率及び鋼製煙突1の内部における熱伝達率である内部熱伝達率を用いてライニング厚と鉄皮温度との関係を規定した理論式を構築する工程である。
ここで「理論式を構築する」とは、対象とする鋼製煙突1の各寸法や使用されるライニング5の材質、流入する排ガスの温度や流量等に基づいて、理論式中を規定する外部熱伝達率及び内部熱伝達率などの各値を具体的に決定することをいう。
構築した理論式にライニング厚又は鉄皮温度のいずれか一方の具体的な値を代入することで、他方の値を得ることができる。
高さ方向の各位置での鉄皮温度を推定するためには、煙突内部における各位置での排ガス温度を推定する必要がある。図1はこの排ガス温度の推定方法を説明するモデル図である。
図1において、Q0は煙突内に導入される排ガス流量、T0は煙突内に導入される排ガス温度、Tcは外気温度、Aは煙道断面積を示している。これらは、煙突の仕様及び操業条件によって決定される。
排ガスが導入される位置から煙突頂部までを微小部分にn等分して各微小部分の高さをl1、l2・・・ln-1、lnとし、下式(1)〜式(4)に基づいて、n位置での排ガス流量Qn、排ガス流速vn、微小煙突高さ当たりの放熱量Hnを算出し、煙突の高さ方向における排ガス温度Tnの推移を導出した。
なお、下式(3)において1/Rは熱貫流率、下式(4)においてCpは定圧比熱である。
煙突断面における温度分布を図3に基づいて説明する。図3は、ライニング5と鉄皮3の断面上に、煙突内部から煙突外部に亘る温度分布を曲線で図示している。図3において、Tnは排ガス温度、Tn0がライニング表面温度、Tn1がライニング5と鉄皮3の境界部分における温度、Tn2が鉄皮温度、Tcが外気温度をそれぞれ示している。
鉄皮温度実測工程は、煙突外部より鋼製煙突1の複数箇所においてコアリングでライニング5をサンプリングしてライニング厚を求めると共に該コアリング位置における鉄皮温度を実側する工程である。
この工程は、理論式を補正する根拠のために実測するものである。
温度測定は例えばサーモビュアを用いて行う。
補正理論式取得工程は、実測値(ライニング厚及び鉄皮温度実側工程で得られた実際のライニング厚と鉄皮温度)に基づいて、理論式中の外部熱伝達率hc及び/又は内部熱伝達率hhを補正して補正理論式を得る工程である。
補正方法の具体例は後述する実施例において詳細に説明する。
鉄皮温度実測工程は、鋼製煙突1の高さ方向の所定位置において鉄皮温度を実測する工程である。
温度測定は、ライニング厚及び鉄皮温度実測工程と同様に、例えばサーモビュアを用いて行う。
ライニング厚推定工程は、鉄皮温度実測工程で実測された鉄皮温度と補正理論式とに基づいて当該実測位置のライニング厚を推定する工程である。
具体的には、式(5)及び式(6)より、鉄皮温度実測工程で実測された鉄皮温度Tn2と補正後の外部熱伝達率hc及び/又は内部熱伝達率hhに基づいてライニング厚trを求める。
上記実施の形態1では、内部ライニング劣化診断方法の一例として補正理論式と実測された鉄皮温度に基づいて該鉄皮温度の実測位置におけるライニング厚を推定して(ライニング厚推定工程)、該推定値に基づいてライニング劣化の判定をする(判定工程)方法を挙げたが、内部ライニング劣化診断方法は上記のものに限られない。
例えば、実施の形態1のようにライニング厚に基づいて劣化状態を判定するのではなく、鉄皮温度に基づいて判定を行うようにしてもよい。このような内部ライニング劣化診断方法について本実施の形態で説明する。
上記の理論式構築工程、ライニング厚及び鉄皮温度実測工程、補正理論式取得工程、鉄皮温度実測工程は、実施の形態1と同様であるのでその説明を省略し、ライニング限界厚時鉄皮温度算出工程と判定工程について詳細に説明する。
ライニング限界厚時鉄皮温度算出工程は、ライニング限界厚時鉄皮温度を補正理論式に基づいて算出する工程である。
算出したライニング限界厚時鉄皮温度の一例を図4に示す。
図4は、製鉄所焼結工場の高さ200mの鋼製煙突1において、ライニング限界厚を30mmとした場合のライニング限界厚時鉄皮温度を一部抜粋して表したものである。
図4において横軸は鉄皮温度[℃]、縦軸は高さ[m]をそれぞれ表しており、実線の折れ線がライニング限界厚時鉄皮温度を表している。なお、図4には、比較のために鉄皮温度実測工程で実測された鉄皮温度の平均値[℃]を棒グラフで表し、また参考としてライニング厚が60mmのとき(初期におけるライニング厚)の鉄皮温度の理論値を破線の折れ線で表している。
図4に示すように、高さが高くなるほどライニング限界厚時鉄皮温度は低くなっている。
判定工程は、鉄皮温度実測工程で実測された鉄皮温度がライニング限界厚時鉄皮温度算出工程で算出されたライニング限界厚時鉄皮温度よりも高い場合にライニング劣化が限界を超えていると判定する工程である。
図4に示すものの場合、高さ140m以上においては、実測された鉄皮温度が概ねライニング限界厚時鉄皮温度よりも高くなっており、ライニング劣化が限界を超えていると判定できる。また、高さ76m以下においては、実測された鉄皮温度はライニング限界厚時鉄皮温度よりも十分に低く、ライニング厚が十分であることを意味している。
本実施例は、図1に示す鋼製煙突1の高さ120mについて計算を行った。
本実施例において、煙道断面積A=34.61[m2]、熱貫流率1/R=164.47[W/m・K]、定圧比熱Cp=1381.48[J/m3℃]、外気温度Tc=9[℃]とした。
上記各パラメータ及び式(1)〜式(4)より排ガス温度Tn=118.51[℃]を得た。
そして、鉄皮厚ts=0.012[m]、ライニング熱伝導率kr=0.482[W/(K・m)]、鉄皮熱伝導率ks=52[W/(K・m)]、外部熱伝達率hc=20.66[W/(K・m2)]、内部熱伝達率hh=59.50[W/(K・m2)]として、理論式を構築した(理論式構築工程)。
比較のために、補正前の理論式を用いて、ライニング厚tr=0.06[m]の場合の鉄皮温度Tn2(理論値)を算出した。その結果、式(5)より熱流束q=576.6[W/m2]となり、式(6)より鉄皮温度Tn2(理論値)=36.9[℃]となった。
以上のように、鉄皮温度Tn2(理論値)と鉄皮温度Tn2(実測値)の誤差は1.1[℃]であった。
補正理論式は、理論式(上記式(5)及び式(6))の外部熱伝達率hcと内部熱伝達率hhのいずれか一方又は両方を補正することで得ることができる。外部熱伝達率hcは外気の流れの変化によって影響を受けやすいので、本実施例では、外部熱伝達率hcのみを補正するものとした。
具体的には、式(5)におけるhcをa・hcと仮定し(aは補正係数)、この式(5)を式(6)に代入するとともに、鉄皮温度Tn2=38.0[℃]、ライニング厚tr=0.06[m]としてa・hcを求めた。その結果、a・hc=19.63[W/(K・m2)]となり、すなわち補正係数a=0.95となった。
3 鉄皮
5 ライニング
Claims (3)
- 内面にライニングを有する鋼製煙突の前記ライニングの厚みを推定する鋼製煙突の内部ライニング厚推定方法であって、
前記鋼製煙突の外部における熱伝達率である外部熱伝達率及び前記鋼製煙突の内部における熱伝達率である内部熱伝達率を用いてライニング厚と鉄皮温度との関係を規定した理論式を構築する理論式構築工程と、煙突外部より前記鋼製煙突の複数箇所においてコアリングでライニングをサンプリングしてライニング厚を求めると共に該コアリング位置における鉄皮温度を実側するライニング厚及び鉄皮温度実測工程と、該ライニング厚及び鉄皮温度実側工程で得られた実際のライニング厚と鉄皮温度とに基づいて、前記理論式の外部熱伝達率及び/又は内部熱伝達率を補正して補正理論式を得る補正理論式取得工程と、前記鋼製煙突の高さ方向の所定位置において鉄皮温度を実測する鉄皮温度実測工程と、該鉄皮温度実測工程で実測された鉄皮温度と前記補正理論式とに基づいて当該位置のライニング厚を推定するライニング厚推定工程とを備えたことを特徴とする鋼製煙突の内部ライニング厚推定方法。 - 請求項1に記載の鋼製煙突の内部ライニング厚推定方法を用いた鋼製煙突の内部ライニング劣化診断方法であって、
ライニング厚推定工程で得られたライニング厚が予め定めた限界ライニング厚よりも薄い場合にライニング劣化が限界を超えていると判定する判定工程とを有することを特徴とする鋼製煙突の内部ライニング劣化診断方法。 - 内面にライニングを有する鋼製煙突の前記ライニングの劣化状態を診断する鋼製煙突の内部ライニング劣化診断方法であって、
前記鋼製煙突の外部における熱伝達率である外部熱伝達率及び前記鋼製煙突の内部における熱伝達率である内部熱伝達率を用いてライニング厚と鉄皮温度との関係を規定した理論式を構築する理論式構築工程と、煙突外部より前記鋼製煙突の複数箇所においてコアリングでライニングをサンプリングしてライニング厚を求めると共に該コアリング位置における鉄皮温度を実側するライニング厚及び鉄皮温度実測工程と、該ライニング厚及び鉄皮温度実側工程で得られた実際のライニング厚と鉄皮温度とに基づいて、前記理論式の外部熱伝達率及び/又は内部熱伝達率を補正して補正理論式を得る補正理論式取得工程と、予め設定したラインング限界厚になったときの鉄皮温度を前記補正理論式に基づいて算出するライニング限界厚時鉄皮温度算出工程と、前記鋼製煙突の高さ方向の所定位置において鉄皮温度を実測する鉄皮温度実測工程と、該鉄皮温度実測工程で実測された鉄皮温度が前記ライニング限界厚時鉄皮温度算出工程で算出された鉄皮温度よりも高い場合にライニング劣化が限界を超えていると判定する判定工程とを有することを特徴とする鋼製煙突の内部ライニング劣化診断方法。
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