ところで、電動リールには、コンパクト化が求められるだけでなく、同時に、大きな巻上力(モータ出力)も求められる。特に小型で高性能の電動リールでは、リールサイズを小型化しつつ大出力の比較的大型のモータを必要とするという、いわば相反する要件を同時に満たさなければならない。また、コンパクト化にあっては、リールの前後方向(竿軸方向)のコンパクト化と同時に、高さ方向のコンパクト化(ロープロファイル化)も求められるため、大きな巻上力(モータ出力)のために大きなモータ(大きな断面積)が必要となる場合には、必然的に、モータのハウジング(モータ自体のケース部またはモータを収容するリール本体部分)と、スプールから繰り出される釣糸の糸道との間にスペースを確保することが難しくなり、結果として、スプールから繰り出される釣糸とモータのハウジングとが干渉するという問題が生じる。
また、このことに加えて、魚の引きなどにより釣竿が大きく撓った状態では、釣糸がリールの下方へ向けて大きく傾くため、釣糸とモータのハウジングとの干渉が更に起こり易くなり、あるいは、ロープロファイル化の要求が厳しくなる場合にも、電動リールの上部に位置される制御ケースの下面とレベルワインド機構のラインガイド部の上面との間の干渉を避けるために、ラインガイド部の配置位置を低くする必要が生じるため、モータのハウジングと釣糸との干渉が更に生じ易くとなるという悪循環をもたらす。
このように、リールの軽量小型化および高性能化が求められる昨今では、リールのコンパクト化とモータの高出力化(モータの大型化)という、いわば相反する要件を同時に満たすことが求められており、そのため、釣糸とモータのハウジングとの干渉をいかにして回避できるかが大きなポイントとなる。
本発明は、上記した問題に着目してなされたものであり、コンパクトなリールサイズに比して大型のモータを組み合わせた場合でも、釣糸とモータのハウジングとの干渉を発生しにくくする魚釣用電動リールを提供することを目的とする。
また、請求項1に記載の発明は、リール本体の左右側板間に回転可能に設けられ、釣糸が巻回されるスプールと、前記スプールの前方のリール本体に設けられ、前記スプールを回転駆動する駆動モータと、前記スプールに釣糸を平行に巻回案内するためのレベルワインド機構とを備える魚釣用電動リールにおいて、前記駆動モータのハウジングは、前記スプールから前記レベルワインド機構を経由して延びる釣糸に対面する部位が平坦部として形成され、釣糸を挿通案内する前記レベルワインド機構のラインガイドが前記駆動モータの前方に配置され、前記スプールから前記ラインガイドへと延びる釣糸に対面する前記駆動モータのハウジングの前記平坦部は、リール本体が水平に配置された状態でリール本体の前方に向かって水平面に対して斜め上向きに延在するように形成されていることを特徴とする。
この請求項1に記載の発明によれば、スプールからレベルワインド機構を経由して延びる釣糸に対面する駆動モータのハウジング(モータハウジング)の部位が平坦部として形成され、前記平坦部は、リール本体が水平に配置された状態で水平面に対して斜めに延在するように形成されているため、ロープロファイル化を図る場合に或いはコンパクトなリールサイズに比して大型のモータを組み合わせた場合でも、釣糸と駆動モータのハウジングとの干渉を発生しにくくすることができる。また、駆動モータの前方側にラインガイドが配置されているため、魚の引きなどにより釣竿が大きく撓って釣糸がリールの下方へ向けて大きく傾いた場合でも、駆動モータのハウジングと釣糸との干渉が発生しにくくなる。それに加えて、本構成では、スプールからラインガイドへと延びる釣糸に対面する部位が平坦部として形成され、該平坦部は、リール本体が水平に配置された状態でリール本体の前方に向かって水平面に対して斜め上向きに延在するように形成されているため、ロープロファイル化の実現のためにラインガイドの配置位置を低く設定しても、釣糸と駆動モータのハウジングとの干渉が発生しにくくなる。なお、上記構成において、駆動モータのハウジングとは、駆動モータ自体のケース部、または、駆動モータを収容するリール本体の構成部分のことであり、要は、ラインガイドから導出される釣糸に対面する駆動モータ側の最外露出部分のことである。また、本発明では、駆動モータが配置されるリール本体の側が前方、スプールが配置されるリール本体の側が後方、左右側板が配置されるリール本体の側が左右(側方モータの側部)、釣竿に取り付けられるリール本体の側が下方、その反対側が上方として方向が規定される。
また、請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、前記ラインガイドの釣糸挿通孔の後端下縁からスプール7の釣糸巻回胴部の外周面上の接点へと延ばした接線をラインL1とし、前記平坦部の延在方向に延びるラインをL2とすると、L1とL2とが略平行であることを特徴とする。
この請求項2に記載の発明によれば、請求項1に記載の発明と同様の作用効果が得られるとともに、上記ラインL1,L2が略平行に設定されることにより、ラインガイドから延びる釣糸の傾斜角度にほぼ沿って平坦部が延在するようになり、釣糸と駆動モータのハウジングとの干渉を効率良く防止できる。なお、ここでも、「略平行」とは、ラインL1,L2同士の成す角度が0°である完全な平行を含むほか、ラインL1,L2同士の成す角度が−10°〜10°の範囲も含む。
また、請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の発明において、前記ラインL2が水平面に対して成す角度は5°以上30°以下であることを特徴とする。
この請求項3に記載の発明によれば、請求項2に記載の発明と同様の作用効果が得られるとともに、実際の釣りの状況に適合した平坦部傾斜配置形態を実現でき、釣糸と駆動モータのハウジングとの干渉を効果的に防止できる。なお、ラインL2が水平面に対して成す角度は、7°以上20°以下が更に好ましい。
また、請求項4に記載の発明は、請求項2に記載の発明において、前記ラインL2が前記ラインL1よりも下方に位置されることを特徴とする。
この請求項4に記載の発明によれば、請求項2に記載の発明と同様の作用効果が得られるとともに、釣糸と駆動モータのハウジングとの干渉を確実に防止できる。
また、請求項5に記載の発明は、請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載の発明において、前記リール本体は、釣竿に装着されるリール脚取付け部を有し、前記リール脚取付け部の下面から前記スプールの回転軸までの高さが、前記リール脚取付け部の下面から前記駆動モータの回転軸までの高さと略同一であることを特徴とする。
この請求項5に記載の発明によれば、請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載の発明と同様の作用効果が得られるとともに、リール脚取付け部の下面からスプールの回転軸までの高さが、リール脚取付け部の下面から駆動モータの回転軸までの高さと略同一であるため、すなわち、リール脚取付け部に対してスプールの高さと駆動モータの高さとをほぼ揃えたため、リール脚取付け部、駆動モータ、スプールがバランス良く配置され、駆動モータの上方における駆動モータのハウジングと釣糸との干渉、および、駆動モータの下方における駆動モータとリール脚取付け部との干渉、の両方を防止しつつ、ロープロファイル化を容易に実現できる。なお、ここで、「略同一」とは、±3mm以内の誤差を含む概念である。
また、請求項6に記載の発明は、請求項1ないし請求項5のいずれか1項に記載の発明において、前記リール本体は、釣竿に装着されるリール脚取付け部を有し、前記リール脚取付け部の下面から前記レベルワインド機構のラインガイドの上端までの高さが、前記リール脚取付け部の下面から前記スプールのフランジ部の最大外径部までの最大高さよりも低いことを特徴とする。
この請求項6に記載の発明によれば、請求項1ないし請求項5のいずれか1項に記載の発明と同様の作用効果が得られるとともに、ロープロファイル化を更に促進できる。つまり、このような高さ設定をすることにより、例えばラインガイドの上方に存在する制御ケースなどのリール構成要素の設置高さをラインガイドとの干渉を防止しつつ低くすることができる(あるいは、制御ケースの厚みを確保して、大きな糸巻き量を確保できる)ため、ロープロファイル化の厳しい要求に対応できる。このような高さ設定は、なによりも、駆動モータハウジングの平坦部の傾斜配置形態により実現できるものである。
また、請求項7に記載の発明は、請求項1ないし請求項6のいずれか1項に記載の発明において、リール本体を構成する部材が駆動モータの前記ハウジングを兼ねていることを特徴とする。
この請求項7に記載の発明によれば、請求項1ないし請求項6のいずれか1項に記載の発明と同様の作用効果が得られるとともに、リール本体を構成する部材が駆動モータのハウジングを兼ねているため、駆動モータを覆う外周壁の総厚みを薄くでき、結果として、釣糸とモータのハウジングとの干渉を更に防止できる。
本発明によれば、コンパクトなリールサイズに比して大型のモータを組み合わせた場合でも、釣糸とモータのハウジングとの干渉を発生しにくくする魚釣用電動リールが得られる。
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態について説明する。
図1〜図10は本発明の第1の実施形態を示している。図1に示されるように、本実施形態の魚釣用電動リール1は、左右のフレーム3a,3bに左右カバー4a,4bを取着して構成される左右側板5A,5Bを具備したリール本体5を有している。リール本体5を構成する一方の側板(右側板5B)側には、巻取り操作される手動ハンドル6が設けられており、左右側板5A,5B間には、釣糸が巻回されるスプール7がスプール軸7a(図6参照)を中心に回転可能に支持されている。また、本実施形態では、スプール7の前方側における左右側板5A,5B間に駆動モータ8を保持しており、スプール7は、手動ハンドル6の巻取り操作および駆動モータ8の回転駆動によって、動力伝達機構10を介して釣糸巻取り方向に回転駆動される。
なお、駆動モータ8については、スプール7の内部に設置する構成も考えられるが、本実施形態では、スプール7の前方に設置することで、スプール7の糸巻き量を確保しつつ、リール本体5の可及的なコンパクト化を図るようにしている。また、動力伝達機構10については、駆動モータ8の回転駆動力を減速してスプール7側に伝達する機能(減速機構102および伝達ベルト100などによって果たされる)、駆動モータ8が回転駆動しても手動ハンドル6を連れ回しさせない機能や手動ハンドル6の逆回転を防止する機能(ラチェット104を含む)などを備えた公知のものによって構成することが可能である。また、そのような動力伝達機構10については、左側板5A側に配設されていても良いし、右側板5B側に配設されていても良く、或いは、左右側板それぞれに振り分けて配設されていても良い。なお、図中、116はハンドル6に結合されたハンドル軸、118は、ハンドル軸116に回転可能に支持されたドライブギア、120はドライブギア118に噛合するピニオンであり、これらは前述した動力伝達機構10を構成する。また、図中、125は魚釣時にスプール7から釣糸が繰り出された際にスプール7の回転にドラグ力を付与する公知のドラグ機構である。また、リール本体5とハンドル6との間には、ドラグ機構125によるドラグ力の調整を行なうための星型のドラグ調整ノブ(スタードラグ)139が設けられている。
また、図5〜図9に示されるように、スプール7の前方の左右側板5A,5B間には、スプール7に対して均等に釣糸を巻回する機能を備えた公知のレベルワインド機構142が設置されている。この場合、レベルワインド機構142のラインガイド142aは、スプール7と駆動モータ8との間に配置されており、これにより、ラインガイドの配置位置を低くすることができ、リール上下方向の高さを抑えて電動リールの小型化を図ることができる。さらに、リール本体5を構成する左右側板5A,5B間のスプール7の上方には、駆動モータ8を制御する制御部100を具備する制御ケース15が配設されている。
また、リール本体5内には、ピニオン120を軸方向に移動させてスプール7を釣糸巻き取り状態/フリー回転状態に切り換える公知のクラッチ機構17が配置されている。このクラッチ機構17は、動力伝達機構10に介在されて手動ハンドル6および駆動モータ8からの動力伝達を継脱する機能を備えており、本実施形態では、右側板5B側に設置されている。このクラッチ機構17を構成するクラッチプレートには、図1に示されるように、動力伝達をON状態からOFF状態に切り換えるクラッチOFF切り換え部材18と、動力伝達をOFF状態からON状態に切り換えるクラッチON切り換え部材19が係合している。
本実施形態におけるクラッチOFF切り換え部材18は、スプール7をサミングしながら操作が可能となるように、スプール7の後方側の左右側板5A,5B間に橋設された構成となっており、図6に示す状態から押し下げ操作することで、クラッチ機構17をON状態からOFF状態に切り換えるよう構成されている。クラッチOFF切り換え部材18は、図5に示される振り分け保持バネ400によって、図7に示すクラッチON位置とクラッチOFF位置(図示せず)との間で振り分け保持される。
また、本実施形態におけるクラッチON切り換え部材19は、右側板5B側に設置されており、振り分け保持バネ400(図5参照)によって、クラッチON位置とクラッチOFF位置との間で揺動可能となるよう振り分け保持されている。
リール本体5には、駆動モータ8に対して電力を供給するための給電部20が設けられている。この給電部20は、左側板5Aの前方側の下面領域に形成されており、この給電部20に対しては、着脱可能な携帯バッテリ22(図10参照)を装着したり、或いは、足元に置いたバッテリや釣り船に設置されている電源部から電力供給される給電コードが装着される。
制御ケース15の後方部分には、駆動モータ8の出力を調整する操作部材25が配置されている。この操作部材25は、スプール7の上方に位置して、前後方向(釣竿方向)に変位できるように支持されている。ここで、スプール7の上方とは、スプールに釣糸が巻回された状態において、サミング操作しながら操作が可能となるように、操作領域(親指が当接する操作領域)が、スプール7の回転軸よりも前方側に多少オフセットしていることが好ましい。本実施形態における操作部材は、回転可能な形状となっており、詳細には、操作性が良好となるように、略円筒形状に構成され、その外表面(回転表面)が、左右側板間でスプール7を露出させる開口領域に面して、回転する方向が前後方向(後方側から見ると上下方向)となるように支持されている。
操作部材25は、リール本体5を、リール脚取付け部5aを介して釣竿Rに装着した際に、図10に示すように、釣竿Rとともにリール本体5を片手で把持保持した状態の手の親指Tが届く位置であって、制御ケース15の表示部(液晶パネル)16の後方側の位置に配設されている。
また、制御ケース15の後方部位には、後方から親指でサミングしたまま指先で操作部材25に触れるように開放部210が設けられ、この開放部210内に操作部材25が配置されている。ここで、開放部210は、スプール7側(後方側)に向かって開放幅が広がる「ハ」の字形状を成しており、制御ケース15の後端縁で開口している。そのような形状によれば、スプール7上のどの位置においてもサミング操作から操作部材25の操作への移行を障害なくスムーズに行なえるため有益である。
上記のように、操作部材25を、釣竿Rとともにリール本体5を把持保持した状態でサミング操作しながら操作可能な位置に配設したことで、釣竿Rとリール本体5を保持した姿勢で片手操作を行うことが可能となる。また、親指Tでサミングしながら、親指Tの指先で操作部材25に触れていることが可能であるため、サミングによるアタリを感知しながら、即座にモータ駆動による巻き取りが可能となる。さらに、操作部材25は、略前後方向に移動可能となっていることから、同時にサミングしたり離したりする(接触させたり離す)指の動きと同一方向となり、操作性が良好となる。
なお、図6等に示すように、制御ケース15の後方側下端部分に、操作部材25とスプール7との間で後方側に向けて突出する誤動作防止部としての保護カバー15cを設けておくことが好ましい。このような保護カバー15cを形成しておくことにより、釣糸を巻き取り操作する際、釣糸に付着したゴミや異物が操作部材25に当たることを防止して、誤動作が生じることを防止することが可能となる。
また、上記した制御ケース15には、図6に明確に示されるように、駆動モータ8の駆動を制御する制御部100(制御基板120A,120B)が収容されており、操作部材25の回転操作量に応じて駆動モータ8の出力を調整するようになっている。この場合、制御部100は、操作部材25を前方に向けて回転操作することで、駆動モータ8の出力が上昇するように設定されている。すなわち、釣糸の巻き取りをする際、サミングしている親指をそのまま前方に延ばして、操作部材25を押し上げるような操作をすることで釣糸の巻き取り操作が行えるため、操作性の向上が図れるようになる。
なお、操作部材25の回転操作量と駆動モータ8の出力との関係については任意であるが、本実施形態では、操作部材25の基準位置をモータの出力値0として、120°前方に回転操作した際、モータ出力がMaxになるように設定されている。すなわち、前方方向に向けて操作した際に増速とすることで、釣竿とリール本体を持つ手に負荷がかかる高速巻き取り時に、より前方を把持できるので、把持保持性が高くなり、操作性が良く、疲れ難くなる。
もちろん、操作部材25については、後方に向けて回転操作した際に、駆動モータ8の出力が上昇するように設定しても良い。このような操作部材の構成によれば、スプールをサミングしている親指の第一関節を折り曲げる動作をするだけで、サミング操作をONからOFFにすると同時に、操作部材を手前側に回転操作(駆動モータの増速回転)することができ操作性の良い構成となる。なお、操作部材25の操作回転角は角度センサ130によって検出される。
前記制御ケース15の表面には、繰り出された釣糸の長さ(糸長情報)などを表示する表示部(液晶表示部)16が設けられており、また、その周囲には、各種の情報が設定可能な複数の操作ボタン216が配設されている。なお、本実施形態において、操作ボタン216は、図1に明確に示されるように、制御ケース15の上面において、表示部16と操作部材25との間で且つ釣竿Rとともにリール本体5を把持保持した状態で親指が届く位置とされている。
また、本実施形態において、スプール7の前方側に配設される駆動モータ8は、図6,8,9に示されるように、リール本体5を構成する構成部材8Aに凹所を形成し、この凹所にモータ本体を収容するモータケース8Bを収容配置して構成される。すなわち、リール本体5の構成部材であるハウジング8Aがモータケース8Bの外周を取り囲むことにより駆動モータ8の外枠が形成される。具体的には、駆動モータ8のハウジング8Aは、ラインガイド142aから導出される釣糸Lに対面する部位が平坦部8Aaとして形成され、この平坦部8Aaに対応して、内側のモータケース8Bにも平坦部8Aaと重ね合わされる部位に平坦部8Baが形成されている。すなわち、モータケース8Bは(したがって、前記凹所も)、側面視で上下方向がつぶれた円形状となっている。この結果、円形状に形成されるモータ(凹所)と比較すると、上下方向に短縮化が図れるようになる。なお、ハウジング8Aの平坦部8Aaの釣糸L側(上方側)は、複数の部材で構成してもよく、例えば、リール本体5と一体の部材の表層側を樹脂部材や耐摩耗性の高い部材と組み合わせたり、フロントカバー305と兼用したものであってもよい。
モータケース8Bの内面には、平坦部8Baを除く位置に、磁界を構成する磁石233が周方向に沿って取着されている。この場合、磁石233は、モータケース8Bの内面に対し接着剤等によって固着しても良いし、保持手段によって係止するようにしても良く、更には、磁石233は、周方向に沿って所定間隔おいて取着されていても良い。また、磁石233については、その外側に磁気回路を構成して磁力の漏洩を防止する継鉄(ヨーク)を取着しても良いが、ハウジング8Aにそのようなヨークとしての機能を持たせても良い。
なお、ハウジング8Aは、右側板側がそのまま開口すると共に、左側板側には底壁が形成されており、この底壁の中心部分に軸受を介して駆動軸231を回転可能に支持している。
この駆動軸231には、モータケース8Bの内面に取着された磁石233に対向して駆動モータ8の構成部材である電機子235(磁石233に対向するコイル235aを有する)が装着されており、かつ、電機子235の軸方向右側板側に、電機子235に電流を供給する図示しない整流子が装着されている。
また、本実施形態において、駆動モータ8のハウジング8Aの平坦部8Aaは、リール本体5が水平に配置された状態でリール本体5の前方に向かって水平面に対して斜め下向きに延在するように形成されている。具体的には、図9に示されるように、ラインガイド142aの釣糸挿通孔143の前端下縁143’と、この前端下縁143’を通る仮想直線L’を前端下縁143’を中心に駆動モータ8側へ回転させたときに仮想直線L’が最初に接触するハウジング8Aの部位Pとを結ぶラインをL1とし、平坦部8Aaの延在方向に延びるラインをL2とすると、L1とL2とが略平行(15°以内の角度を互いに成していてもよい)に設定されている。また、ラインL2が水平面Oに対して成す角度θは5°以上30°以下、好ましくは7°〜20°に設定される。
また、本実施形態では、スプール7、駆動モータ8、および、リール脚取付け部5aの配置関係をバランス良く設定して、釣糸Lと駆動モータ8のハウジング8Aとの間の干渉を防止しつつ、ロープロファイル化を容易に可能とするべく、これらの構成要素の高さ寸法が設定されている。具体的には、図6に示されるように、リール脚取付け部5aの下面99からスプール7の回転軸7aまでの高さH2が、リール脚取付け部5aの下面99から駆動モータ8の回転軸231までの高さH1と略同一(±3mmの誤差を含む)になっている。更に、リール脚取付け部5aの下面99からレベルワインド機構142のラインガイド142aの上端までの高さH3が、リール脚取付け部5aの下面99からスプール7のフランジ部7bの最大外径部までの最大高さH4よりも低く設定されている。
以上説明したように、本実施形態によれば、レベルワインド機構142のラインガイド142aがスプール7と駆動モータ8との間に配置されることにより、ラインガイド142の配置位置を低くすることができるため(図6等参照)、リール上下方向の高さを抑えて電動リールの小型化を図ることができる。また、ラインガイド142aから導出される釣糸Lに対面するハウジング8Aの部位が平坦部8Aaとして形成され、平坦部8Aaは、リール本体5が水平に配置された状態でリール本体5の前方に向かって水平面に対して斜め下向きに延在するように形成されているため、本構成のようにラインガイド142aの配置位置を低く設定しても、更には、図7に示されるように魚の引きなどにより釣竿Rが大きく撓って釣糸Lがリールの下方へ向けて大きく傾いた場合でも、駆動モータ8のハウジング8Aと釣糸Lとの干渉が発生しにくくなる。このように、本構成では、駆動モータ8のハウジング8Aの平坦部8Aaの傾斜配置形態のおかげにより、コンパクトなリールサイズに比して大型のモータを組み合わせた場合でも、釣糸Lと駆動モータ8のハウジング8Aとの干渉は発生しにくくなる。
また、本実施形態では、ラインガイド142aの前端下縁143’と、前端下縁143’を通る仮想直線L’を前端下縁143’を中心に駆動モータ8側へ回転させたときに仮想直線L’が最初に接触するハウジング8Aの部位Pとを結ぶラインをL1とし、平坦部8Aaの延在方向に延びるラインをL2とすると、L1とL2とが略平行になっている。これにより、ラインガイド142aから延びる釣糸Lの傾斜角度にほぼ沿って平坦部8Aaが延在するようになり、釣糸Lと駆動モータ8のハウジング8Aとの干渉を効率良く防止できる。
また、本実施形態によれば、リール脚取付け部5aの下面99からスプール7の回転軸7aまでの高さH2が、リール脚取付け部5aの下面99から駆動モータ8の回転軸231までの高さH1と略同一であるため、すなわち、リール脚取付け部5aに対してスプール7の高さと駆動モータ8の高さとをほぼ揃えたため、リール脚取付け部5a、駆動モータ8、スプール7がバランス良く配置され、駆動モータ8の上方における駆動モータ8のハウジング8Aと釣糸Lとの干渉、および、駆動モータ8の下方における駆動モータ8とリール脚取付け部5aとの干渉、の両方を防止しつつ、ロープロファイル化を容易に実現できる。
また、本実施形態では、リール脚取付け部5aの下面99からラインガイド142aの上端までの高さH3が、リール脚取付け部5aの下面99からスプール7のフランジ部7bの最大外径部までの最大高さH4よりも低く設定されているため、ロープロファイル化を更に促進できる。つまり、このような高さ設定をすることにより、制御ケース15の設置高さをラインガイド142aとの干渉を防止しつつ低くすることができる(あるいは、制御ケース15の厚みを確保して、大きな糸巻き量を確保できる)ため、ロープロファイル化の厳しい要求に対応できる。このような高さ設定は、なによりも、駆動モータハウジング8Aの平坦部8Aaの傾斜配置形態により実現できるものである。
図11および図12は本発明の第2の実施形態を示している。本実施形態では、特に図11に明確に示されるように、リール本体5を構成する部材が駆動モータ8のハウジングを兼ねている。すなわち、モータケース8Bがリール本体5を構成する部材(第1の実施形態におけるハウジング8A)によって形成されている。
また、この構成において、電機子235の軸方向右側板側に設けられて電機子235に電流を供給する整流子237は、ハウジング8Aの右側板側の開口(前述した凹所の開口)から突出しており、この開口部分には、ハウジング8A近傍の右フレーム3bに螺着される固定ネジによってハウジング8Aに着脱可能となるように端部カバー340が装着される。この端部カバー340は、予め一つのユニットとして構成されており、その径方向内側には、整流子337に接触して電流を流すブラシ341と、このブラシ341を保持するブラシホルダ342が組み込まれてネジで取付け固定されている。そして、このブラシホルダ342には、端子343が一体的に組み込まれており、リード線344を介して外部電源に接続されるようになっている。
また、端部カバー340には、軸方向内側から順に、駆動軸231を回転可能に支持する一方向クラッチ346と、駆動軸231を回転可能に支持する軸受347とを保持した保持体348が組み込まれている。この場合、一方向クラッチ346は、手動ハンドル6を巻取り操作した際に空回りすることなく、かつ駆動モータ8が駆動された際、スプール7側に動力を伝達するように、駆動軸231を一方向のみに回転することを許容するものである。なお、それ以外の構成は第1の実施形態と同一である。
このように、本実施形態では、リール本体5を構成する部材が駆動モータ8のハウジングを兼ねているため、駆動モータ8を覆う外周壁の総厚みを薄くでき、結果として、釣糸Lとモータ8のハウジング8Aとの干渉を更に防止できる。
図13および図14は本発明の第3の実施形態を示している。図示のように、本実施形態では、スプール7と駆動モータ8とレベルワインド機構142のラインガイド142aとの間の配置関係が前述した2つの実施形態と異なる。すなわち、前述した2つの実施形態では、スプール7と駆動モータ8との間にラインガイド142aが配置されているが、本実施形態では、スプール7とラインガイド142aとの間に駆動モータ8が配置されている。つまり、駆動モータ8の前方側にラインガイド142aが配置されている。また、このような配置に対応して、前述した駆動モータ8のハウジング8Aの平坦部8Aaの傾斜方向も前述した実施形態と逆に設定されている。以下、これについて詳しく説明する。
前述した実施形態と同様、スプール7の前方側に配設される駆動モータ8は、リール本体5を構成する構成部材8Aに凹所を形成し、この凹所にモータ本体を収容するモータケース8Bを収容配置して構成される。すなわち、リール本体5の構成部材であるハウジング8Aがモータケース8Bの外周を取り囲むことにより駆動モータ8の外枠が形成される。また、前述した実施形態と同様に、駆動モータ8のハウジング8Aは、スプール7からラインガイド142aへと向かう(延びる)釣糸Lに対面する部位が平坦部8Aaとして形成され、この平坦部8Aaに対応して、内側のモータケース8Bにも平坦部8Aaと重ね合わされる部位に平坦部8Baが形成されている。この場合も、ハウジング8Aの平坦部8Aaの釣糸L側(上方側)は、複数の部材で構成してもよく、例えば、リール本体5と一体の部材の表層側を樹脂部材や耐摩耗性の高い部材と組み合わせてもよい。なお、モータケース8Bの内側には、前述した実施形態と同様の形態で、磁石233、電機子235、および、コイル235aが配設される。また、スプール7と駆動モータ8とラインガイド142aとの間の配置関係および平坦部8Aaの傾斜方向に関連して、本実施形態では、リール脚取付け部5aの前側部分5a’が第1の実施形態よりも前方に位置されている。
また、本実施形態において、駆動モータ8のハウジング8Aの平坦部8Aaは、リール本体5が水平に配置された状態でリール本体5の前方に向かって水平面に対して斜め上向き(リール本体5の後方に向かって水平面に対して斜め下向き)に延在するように形成されており、それにより、スプール7からラインガイド142aへと向かう釣糸Lとハウジング8Aとの干渉を回避するようになっている。具体的には、図14に示されるように、ラインガイド142aの釣糸挿通孔143の後端下縁143”からスプール7の回転軸7aと同軸の釣糸巻回胴部7cの外周面上の点(スプール7の底径位置にある接点)P’へと延ばした接線(スプール7に巻回された釣糸Lの全てが繰り出された状態でスプール7からラインガイド142aへと延びる釣糸Lの延在経路にほぼ相当する)をL1、平坦部8Aaの延在方向に延びるラインをL2とすると、L1とL2とが略平行(15°以内の角度を互いに成していてもよい)に設定されている。また、接線L1(したがってラインL2(平坦部8Aaの傾斜角度)も)が水平面Oに対して成す角度θは5°以上30°以下、好ましくは7°〜20°、更に好ましくは10°に設定される。
なお、ハウジング8Aと釣糸Lとの干渉を回避するためには、少なくとも平坦部8Aaが接線L1よりも下側となるように駆動モータ8を可能な限り下方に位置させることが望まれる(第1の実施形態も同様にL2がL1よりも下方に位置されることが望まれる)が、駆動モータ8をあまり下げ過ぎると、リール脚取付け部5aを釣竿のリールシートに装着する際にリール1の一部が釣竿またはリールシートと干渉して釣竿に対するリール1の装着が困難になる場合があるため、その点に留意する必要がある。しかしながら、本実施形態の場合には、平坦部8Aaがリール本体5の前方に向かって水平面に対して斜め上向きに延在するように形成されているため、釣竿またはリールシートとの干渉を回避できるスペース(釣竿を受けるためのスペース)を第1の実施形態よりも大きく確保でき有益である。また、このような干渉の回避に加えて、スプール7からラインガイド142aを通じた釣糸Lの滑らかな延在経路を実現するため(釣糸Lがラインガイド142aに対して局所的に負荷を及ぼさないようにするため)、ラインガイド142aの釣糸挿通孔143の底面は略円弧状を成していることが好ましい。
また、前述した実施形態と同様、本実施形態においても、スプール7、駆動モータ8、および、リール脚取付け部5aの配置関係をバランス良く設定して、釣糸Lと駆動モータ8のハウジング8Aとの間の干渉を防止しつつ、ロープロファイル化を容易に可能とするべく、これらの構成要素の高さ寸法が設定される。具体的には、図13に示されるように、リール脚取付け部5aの下面99からスプール7の回転軸7aまでの高さH2が、リール脚取付け部5aの下面99から駆動モータ8の回転軸231までの高さH1と略同一(±3mmの誤差を含む)になっている。更に、リール脚取付け部5aの下面99からレベルワインド機構142のラインガイド142aの上端までの高さH3が、リール脚取付け部5aの下面99からスプール7のフランジ部7bの最大外径部までの最大高さH4よりも低く設定されている。
以上説明したように、本実施形態によれば、スプール7とラインガイド142aとの間に駆動モータ8が配置されているため、すなわち、駆動モータ8の前方側にラインガイド142aが配置されているため、図7に示されるように魚の引きなどにより釣竿Rが大きく撓って釣糸Lがリールの下方へ向けて大きく傾いた場合でも問題ないだけでなく、釣糸が引き出される等によって糸巻き量が少なくなった場合においても、駆動モータ8のハウジング8Aと釣糸Lとの干渉が発生しにくくなる。それに加えて、本実施形態では、スプール7からラインガイド142aへと向かう釣糸Lに対面する部位が平坦部8Aaとして形成され、平坦部8Aaは、リール本体5が水平に配置された状態でリール本体5の前方に向かって水平面に対して斜め上向きに延在するように形成されているため、ロープロファイル化の実現のためにラインガイド142aの配置位置を低く設定しても、釣糸Lと駆動モータ8のハウジング8Aとの干渉が発生しにくくなる。
また、本実施形態では、ラインガイド142aの釣糸挿通孔143の後端下縁143”からスプール7の釣糸巻回胴部7cの外周面上の点(スプール7の底径位置にある接点)P’へと延ばした接線をL1、平坦部8Aaの延在方向に延びるラインをL2とすると、L1とL2とが略平行に設定されているため、スプール7からラインガイド142aへと向かう釣糸Lの傾斜角度にほぼ沿って平坦部8Aaが延在するようになり、釣糸Lと駆動モータ8のハウジング8Aとの干渉を効率良く防止できる。また、スプール7と駆動モータ8とラインガイド142aとの間の配置関係および平坦部8Aaの傾斜方向に関連して、本実施形態では、リール脚取付け部5aの前側部分5a’が第1の実施形態よりも前方に位置されている。このようにリール脚取付け部5aの前側部分5a’が前方に広がって位置されていると、この前側部分5a’からリールシートに装着する形態において装着性を向上でき有益である。