以下、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、以下に説明する本実施形態は特許請求の範囲に記載された本発明の内容を不当に限定するものではなく、本実施形態で説明される構成の全てが本発明の解決手段として必須であるとは限らない。
図1は魚の形を模した手動走行玩具10の底面図であり、図2は手動走行玩具10の平面図であり、図3は手動走行玩具10を走行方向D1の後方から見た背面図である。図1〜図3において、手動走行玩具10は、例えば魚の頭部、胴部、背びれ及び脇ひれ等の形態を有する玩具本体20と、玩具本体20の底面20Aよりも下方に突出して走行面1に接する車輪30と、玩具本体20の走行方向D1の後端側位置に支持された例えば尾ひれの形態を有する揺動部40と、を有する。
本実施形態に係る手動走行玩具10は、図1及び図2において、手動走行玩具10を手で押し離すことで車輪30が回転して走行方向D1に向けて走行する。車輪30の回転に伴い、揺動部40を矢印A1方向及びB1方向に往復揺動運動させる。本実施形態に係る手動走行玩具10は、揺動部40の往復揺動運動によって揺動部40が玩具本体20に外力を付与して(すなわち、揺動部40が往復揺動運動することにより、玩具本体20を付勢して)、走行する玩具本体20を、揺動部40が揺動する矢印A2方向及びB2方向に往復運動(本実施形態においては、往復傾斜運動)させるものである。
つまり、本実施形態では車輪30が回転されて、回転−揺動変換機構50により揺動部がA1方向及びB1方向に往復揺動運動すると、揺動部40が揺動された方向に揺動部40が玩具本体20に外力を付与して(すなわち、揺動部40が揺動された方向に、揺動部40が玩具本体20を付勢して)、走行中の玩具本体20を走行方向D1と交差するA2方向及びB2方向に動かしている(本実施形態においては、傾斜させている)。それにより、玩具本体20に付加された揺動部40の動きによって玩具本体20自体の動きに変化をもたらすことにより、より面白味のある動き、例えば魚が泳ぐ様子を模した動きをする手動走行玩具10を提供することができる。
このような動きをする手動走行玩具10は、図1に示す平面視において走行方向D1と直交するD2方向にて車輪30の幅Wよりも両外側に位置し、図3に示すように玩具本体20の底面20Aよりも下方に高さH2だけ突出し、かつ、車輪30の接地面の高さH1(H1>H2)まで到達しない2つの側方倒れ防止部材20B,20Cを有することができる。
側方倒れ防止部材20Bは、図3に示す玩具本体20がB2方向に傾斜した時に走行面1に接触して傾斜を規制するものである。側方倒れ防止部材20Cも同様に、図3に示す玩具本体20がA2方向に傾斜した時に走行面1に接触して傾斜を規制するものである。2つの側方倒れ防止部材20B,20Cを設けることで、玩具本体20に付加された揺動部40の動きによって玩具本体20自体の振る舞いに変化をもたらしながら、玩具本体20が倒れることなく走行方向D1に走行し続けることができる。また、車輪30以外では側方倒れ防止部材20B,20Cと走行面1との接触を局所的にすることで、走行抵抗を少なくすることができる。走行抵抗を小さくするには、2つの側方倒れ防止部材20B,20Cの各々は、走行面1と面接触する面積を小さくするか、あるいは点接触若しくは線接触する形状に形成することができる。
玩具本体20は、特に図1に示す一つの車輪30を有する場合には、図1に示す底面視において走行方向D1にて車輪30よりも前側(下流側、車輪30よりも玩具本体20の走行方向D1の前端側)の位置にて、図3に示す底面20Aよりも下方に突出する前倒れ防止部材20Dを有することができる。前倒れ防止部材20Dの底面20Aからの突出量は、車輪30が底面20Aより突出する突出高さH1と同じかそれ以下に設定することができる。こうすると、玩具本体20を手で押し離した際に玩具本体20が前倒れしようとしても、前倒れ防止部材20Dが走行面1と接触して玩具本体20の前倒れを規制することができる。また、車輪30以外では前倒れ防止部材20Dと走行面1との接触を局所的にすることで、走行抵抗を少なくすることができる。前倒れ防止部材20Dも同様に走行抵抗を小さくするために、走行面1と面接触する面積を小さくするか、あるいは点接触若しくは線接触する形状に形成することができる。
前倒れ防止部材20Dは、玩具本体20を手で押し離した際に玩具本体20が前倒れすることを防止するために設けるのが好ましい。ただし、特に図1に示す一つの車輪30を有する場合には、前倒れ防止部材20Dに代えて、あるいは前倒れ防止部材20Dと共に、図1に示す底面視において走行方向D1にて車輪30よりも後側(上流側、車輪30よりも玩具本体20の走行方向D1の後端側)の位置にて、図3に示す底面20Aよりも下方に突出する後倒れ防止部材を設けても良い(図示省略)。後倒れ防止部材は、手動走行玩具10の総重量の重心位置よりも、玩具本体20の走行方向D1の前端側に、車輪30の縦中心線C2が位置している時に有用である。この後倒れ防止部材もまた、前倒れ防止部材20Dと同様にして走行抵抗を小さくするように形成することができる。
図1に示す車輪30は、図1の走行方向D1と直交する方向D2において玩具本体20の幅を略二等分する中心線C1上に位置して例えば一つ設けられている。車輪30は中心線C1で略二等分される幅Wを有する。
玩具本体20が裏面を除いた領域で露出する部分は、例えば頭部21と左側部22と右側部23とに分割されている。左側部22に左脇ひれ22Aが設けられ、右側部23には右脇ひれ23Aと背びれ23Bとが設けられる。
左側部22と右側部23との間に、図1及び図3に示す二分割可能な保持部24,25が収容される。保持部24,25は、走行方向D1に対する後方と裏面にのみ露出している。
図4及び図5は、車輪30、回転−揺動変換機構50及び揺動部40を示す側面図、平面図である。図4及び図5に示すように、車輪30は両側面より突出する車軸30Aを有する。車軸30Aは、図5に示すように平面視で走行方向D1と直交する方向D2に沿って設けられている。車軸30Aは、2つの保持部24,25に回転可能に保持される。2つの保持部24,25の間には、車輪30の回転運動を揺動部40の揺動運動に変換する回転−揺動変換機構50が車輪30と併設される。
回転−揺動変換機構50は、図4に示す車輪30の一側面に固定される偏心カム51を含む。偏心カム51のカム面の輪郭は例えば円形である。偏心カム51の中心P2は、車輪30の中心P1よりも距離δ1だけ偏心している。また、偏心カム51は車輪30に固定されており、車輪30と一体に回転する。
図6(A)(B)は回転−揺動変換機構50及び揺動部40の正面図及び平面図である。回転−揺動変換機構50は、図4〜図5に示すカムフォロア52と、揺動駆動部53とをさらに含む。カムフォロア52は、偏心カム51の周面と係合する第1係合部例えば第1溝部52Aと、揺動駆動部53と係合する第2係合部例えば第2溝部52Bとを含む。カムフォロア52は、偏心カム51が一回転することで一往復駆動(移動ストローク=2×δ1)される。具体的には、図4に示すように、偏心カム51の中心P2が縦中心線C2上にて最上位位置にある時に車輪30がA3方向に1/4回転されると、偏心カム51と係合する第1溝部52Aを有するカムフォロア52はA4方向に距離δ1だけ前進駆動される。続いて車輪30がA3方向にさらに1/4回転されると、偏心カム51の中心P2が縦中心線C2上の最下位位置に設定される。それにより、カムフォロア52はB4方向に距離δ1だけ後退駆動される。続いて車輪30がB3方向にさらに1/4回転されると、偏心カム51の中心P2が縦中心線C2から走行後端側位置に設定され、カムフォロア52はB4方向に距離δ1だけ後退駆動される。続いて車輪30がB3方向に1/4回転されると、偏心カム51の中心P2が縦中心線C2上にて最上位位置に戻り、カムフォロア52はA4方向に距離δ1だけ前進駆動される。こうして、車輪30が一回転する間に、揺動部40はA1方向への揺動、B1方向への復帰、B1方向への揺動及びA1方向への復帰を実施する。
図4〜図6(A)(B)に示す揺動駆動部53は、カムフォロア52が駆動されることに伴い揺動縦軸53Aの廻りに揺動して、揺動駆動部53と連結部41を介して連結された揺動部40を揺動させる。図4に示すように、揺動駆動部53の本体部53Bより上下に突出する揺動縦軸53Aは、図1に示すように2つの保持部24,25に回転自在に保持される(図1では揺動縦軸53Aの下端の支持を示している)。図6(A)(B)に示すように、本体部53Bは、揺動縦軸53Aとは距離δ2だけ偏心した位置に、揺動縦軸53Aと平行な軸部53Cを有する。図5に示すように、カムフォロア52の第2溝部52Bは、揺動駆動部53の軸部53Cと係合する。それにより、図5及び図6(B)に示すように、カムフォロア52がA4方向に前進駆動されると、揺動駆動部53の本体部53Bは揺動縦軸53Aの廻りに揺動し、揺動部40をA1方向に揺動させる。カムフォロア52がB4方向に後退駆動されると、揺動駆動部53の本体部53Bは揺動縦軸53Aの廻りに揺動し、揺動部40をB1方向に揺動させる。
ここで、車輪30が回転されることにより、揺動部40が揺動された方向に揺動部40が玩具本体20に外力を付与して(すなわち、揺動部40が揺動された方向に、揺動部40が玩具本体20を付勢して)、走行する玩具本体20を走行方向D1と交差する方向A2,B2に動かす(本実施形態では傾斜させる)ための条件について考察する。
車輪30が走行する際に揺動部40から車輪30が受ける負荷は、図5に示すように揺動部40の重心Gから揺動縦軸53Aまでの距離をL1とすると、負荷は、揺動部40の重さ(質量)と、距離L1に比例する。この負荷が大きすぎると、車輪30は回転しないか、若しくは回転後直ちに停止してしまう。このため、揺動部40は軽くなるようにしている。また、車輪30を揺動部40よりも重くしている。なぜなら、走行により車輪30に発生する運動エネルギーは車輪30の質量に比例するので、車輪30の質量が大きくなれば、揺動部40を動かすために使えるエネルギーも大きくなり、また、ある速度で揺動部40を動かすために必要な運動エネルギーは、揺動部40の質量が小さい程小さくて済むため、車輪30と揺動部40の質量の差が大きい程、揺動部40が長く揺動させられるからである。なお、もし、揺動部40が車輪30よりも重いと、車輪30に発生する運動エネルギーに対して揺動部40を揺動させるのに必要な運動エネルギーが大きくなり、揺動部40が揺動する時間は短くなる。
揺動部40は一般に樹脂により成形されることを考慮すると、車輪30を揺動部40より重い材料、例えば金属または金属を含む複合材料が好ましい。また、車輪30は走行面1との間で発生する摩擦力(あるいはグリップ力)をある程度大きく確保する必要がある。揺動部40から車輪30が受ける負荷を考慮すると、摩擦力が小さいと、走行面1上で車輪30が滑って回転しなくなり、揺動部40を揺動させることができなくなってしまう懸念があるからである。特に、走行面1はテーブル表面や床面等の滑りやすい面が想定されるので、車輪30の材質は重量及び接地面との間で発生する摩擦力の双方を考慮して決定する必要がある。本実施形態では、車輪30を、真鍮にて形成し、接地面を適度な表面粗さに加工しているが、これは一例に過ぎず、上述のとおり、車輪の材質は重量及び接地面との間で発生する摩擦力の双方を考慮して決定するのがよい。
次に、本実施形態では、玩具本体20を走行方向D1と交差する方向A2,B2に動かす程の外力を、揺動部40が玩具本体20に付与し易くしている。このために、図1に示す平面視において、揺動部40が少なくとも一方に最大に揺動した位置にある時の揺動部40の重心Gの位置は、車輪30の接地面の幅Wの範囲外としている。このように、車輪30の幅Wより外れた位置に揺動部40の重心Gが移動することにより、車輪30は平衡バランスを崩しやすくなる。こうして、玩具本体20は、揺動部40がA1方向に振れればA2方向に動きやすく(本実施形態では傾斜し易く)、揺動部40がB1方向に振れればB2方向に動きやすく(本実施形態では傾斜し易く)なる。
本実施形態では、図1に示すよう揺動部40が一方に最大に揺動する振れ角θは、例えばθ=30°としている。この振れ角θは、偏心カム51の偏心量δ1(図4参照)と、揺動縦軸53Aと軸部63Cとの中心間距離δ2(図6(B)参照)とを用いると、軸部53Cが揺動縦軸53Aを中心に揺動すること(つまり厳密にはδ1より短い距離だけ水平移動する)を考慮すると、図6(C)に模式的に示す三角関数から、ほぼθ=arctan(δ1/δ2)で与えられる。
ここで、図5に示すように、揺動部40の重心Gから揺動縦軸53Aまでの距離L1は、揺動部40の全長を二等分する位置P3から揺動縦軸53Aまでの距離L2よりも短くすることが好ましい。こうすると、車輪30が走行する際に揺動部40から車輪30が受ける負荷(揺動部40の重さと、揺動部40の重心Gから揺動縦軸53Aまでの距離L1に比例する)を小さくでき、手動走行玩具10の走行距離を長くすることができるからである。
玩具本体20を走行方向D1と交差する方向A2,B2に動かす(本実施形態では、傾斜させる)外力によって、玩具本体20が動き易くするため(つまり、揺動部40が、玩具本体20を走行方向D1と交差する方向A2,B2に付勢しやすくするため)には、玩具本体20、車輪30及び回転−揺動変換機構50の総重量も軽くする必要がある。本実施形態では、車輪30以外は樹脂により成形することで、上述した総重量を軽くしている。
また、図4に示す車輪30の縦中心線C2の走行方向D1での位置は、手動走行玩具10の総重量(玩具本体20、車輪30、揺動部40及び回転−揺動変換機構50の総重量)の重心位置(図示せず)又はそれに近い前後位置に設定することが好ましい。玩具本体20を走行方向D1と交差する方向A2,B2に動かす程の外力を車輪30に作用させ易くなり(つまり、玩具本体20を走行方向D1と交差する方向A2,B2に付勢しやすくなり)、玩具本体20が動きやすく(本実施形態では傾斜し易く)なるからである。
車輪30の半径rは、揺動部40の重量との関係や一回転当たりの走行距離により決定することができる。車輪30はなるべく大きくする方が望ましいが、重量が重過ぎると、手動走行玩具10の総重量が重くなりすぎ、揺動部40より与えられる外力(揺動部40による付勢)ではA2またはB2方向に動かせない虞が生ずるので、車輪30の重さとの関係で半径rの上限に規制が設けられる。車輪30の半径rを大きくして重量を減らすには車輪30の幅Wを薄くすることができるが、走行時の左右に揺れた時の安定感を確保する関係で幅Wの下限にも制約が設けられる。
これらのことを考慮しながら、車輪30の一回転あたりの走行距離も考慮して、車輪30の半径rは決定される。車輪30の一回転あたりの走行距離は2πrで与えられる。上述した通り、車輪30が一回転する毎に揺動部40はA1方向とB1方向とに一往復して揺動される。車輪30の一回転あたりの走行距離2πrが短いと、車輪30が一回転する毎に玩具本体20がA2方向とB2方向とに一往復して傾斜する動きが速過ぎて目視し難くなる。そこで、車輪30の半径rをr≧9mmとし、少なくとも走行距離2πr=およそ56.5mm以上で玩具本体20がA2方向とB2方向とに一往復して動く(本実施形態では、傾斜する)ようにしている。なお、本実施形態のように、玩具本体20をA2方向とB2方向に傾斜させる場合、車輪の半径rを大きくすることは、車輪30の重心位置を高くするので、玩具本体20がA2,B2方向に傾斜し易くなることでも有利となる。
次に、図7(A)(B)を参照して、回転−揺動変換機構の変形例について説明する。図7(A)に示すように同心軸で2つの車輪31,31を有する場合には、図7(B)に示す偏心カム51Aを2つの車輪31,31の間に設け、この偏心カム51Aを含む回転−揺動変換機構50Aの一部を2つの車輪31,31の間に設けることができる。こうすると、走行方向D1と直交するD2方向において回転−揺動変換機構50Aの静止時での平衡バランスが向上し、静止時での姿勢を安定させることができる。なお、図5に示す実施形態では、平面視において、走行方向D1と直交する方向D2にて、車輪30と、回転−揺動変換機構50の一部とが並んで配置される。こうすると、走行方向と直交する幅方向D2において玩具本体20の静止時での平衡バランスが崩れやすく、揺動部40からの外力により走行中の玩具本体20は図7(B)よりも傾き易くなる。
図7(A)(B)に示す回転−揺動変換機構50Aでも図5に示す回転−揺動変換原理を用いることができるが、それに代えてラック&ピニオン方式を採用している。回転−揺動変換機構50Aのカムフォロア54は、偏心カム51Aと係合する溝54A(図7(B)参照)と、ラック54B(図7(A)参照)とを有する。回転−揺動変換機構50Aの揺動駆動部55は、揺動縦軸55Aと、揺動縦軸55Aに固定された駆動ギア55Bと、揺動縦軸55Aと平行な軸部55Cと、軸部55Cに固定されてラック54B及び駆動ギア55Bと歯合するピニオンギア55Dと、を有する。
車輪31,31の回転に伴いカムフォロア54がA4方向に後退すると、ラック54Bによりピニオンギア55DがA5方向に回転し、それにより駆動ギア55Bが回転されて揺動部40がA1方向に揺動する。同様に、車輪31,31の回転に伴いカムフォロア54がB4方向に前進すると、ラック54Bによりピニオンギア55DがB5方向に回転し、それにより駆動ギア55Bが回転されて揺動部40がB1方向に揺動する。従って、回転−揺動変換機構50Aによっても、回転−揺動変換機構50と同様にして揺動部40を揺動させることができる。なお、回転−揺動変換機構50の重量を軽減することから、カムフォロア54及び揺動駆動部55は樹脂により成形することができる。
ここで、揺動部40が最大に揺動した位置にある時の揺動部40の重心Gの位置は、図7(A)に示す2つの車輪31,31の接地面のうち走行方向D1と直交するD2方向での両端に位置する外縁間の幅Wの範囲外とすることができる。このように、D2方向での両端に位置する2つの車輪31,31の外縁間の幅Wより外れた位置に揺動部40の重心Gが移動することにより、車輪30は平衡バランスを崩しやすくなる。こうして、玩具本体20は揺動部40がA1方向に振れればA2方向に動きやすく(本実施形態では傾斜し易く)、揺動部40がB1方向に振れればB2方向に動きやすく(本実施形態では、傾斜し易く)なる。
図8は、上述した車輪30,31の接地面の形状に関する変形例を示している。図8に示す車輪30(31)の接地面は、走行方向D1と直交するD2方向での幅の中心位置P4が両端P5よりも高さδ3だけ突出している。このような条件を満たす形状は様々に考えられるが、本実施形態においては、接地面の形状を湾曲させることによって上記の条件が満たされるようにしている。こうすると、玩具本体20は静止時においても傾斜しやすくなり、揺動部40の揺動による外力により走行中の玩具本体20が傾斜しやすくなる。なお、車輪30(31)の中心部分に、中心位置P4を含む幅狭の平坦面を設けても良い。
玩具本体20を傾き易くさせる構造は、玩具本体20が前輪及び後輪を有する場合にも適用できる。図9は、前輪と例えば2つの後輪33,34を有する手動走行玩具を模式的に示す平面図である。図9に示す2つの後輪33,34は、図7(A)に示す2つの車輪31,31に適用される回転−揺動変換機構50Aを有することができる。2つの後輪33,34に代えて、一つの後輪を備え、図4及び図5に示す回転−揺動変換機構50を有するものであってもよい。図9に示す手動走行玩具であっても、図4及び図5に示す回転−揺動変換機構50または図7(A)に示す回転−揺動変換機構50Aにより揺動される揺動部40の外力により(すなわち、揺動部40による付勢により)走行中の玩具本体20を動かす(本実施形態では、傾斜させる)ことができる。この場合、3つの車輪32,33,34は実質的に同じ外径を有しても良い。また、後輪33,34は図8に示す湾曲した接地面を有していてもよい。また、玩具本体20の静止時での直立性(自立性)を高めるように、前輪32または後輪33,34のいずれか一方の接地面の少なくとも中心部分を平坦面とさせ、他方の接地面を図8に示す湾曲した形状とすることができる。なお、後輪33,34がその中心部分に、中心位置P4を含む幅狭の平坦面を有する場合、その後輪33,34の平坦面は前輪32の幅方向での中心部分に設けられる平坦面よりも狭くすることで、玩具本体20を動かしやすく(本実施形態では、傾斜しやすく)することができる。こうして、玩具本体20の静止時での直立性(自立性)を前輪32により安定させる一方で、玩具本体20の走行中に揺動部40からの外力によって(すなわち、揺動部40からの付勢によって)玩具本体20を動かす(本実施形態では、傾動させる)機能を確保できる。
図10は、複合材料で形成された車輪30を示している。図10において、車輪30は、車軸30Aを有する基材30Bと、基材30Bを覆って接地面を形成する被覆材30Cとを含む。基材30Bは被覆材30Cと異なる材質からなり、被覆材30Cは同一走行面との間で発生する摩擦力が基材30Bよりも大きい。このことで、接地面と車輪30との間で発生する摩擦力(グリップ力)が高くすることができる。例えば、基材30BをPOM(ポリアセタール樹脂)とし、被覆材30Cを例えばクロロプレンゴムとすることができる。また、基材30Bと被覆材30Cとの総重量(すなわち、車輪30の総重量)は、揺動部40よりも大きくすることが望ましい。このとき、基材30Bまたは被覆材30Cのいずれか一方は揺動部40よりも比重が大きい材料から形成しても良い。これにより、車輪30は揺動部40よりも重くし易くなる。、
図11及び図12は、揺動部40の揺動に伴う玩具本体20の一方向への動き(本実施形態では傾斜)を大きくする変形例を示している。図11では、平面視において、揺動縦軸53Aは、車輪30の幅方向D2の中心線C1から偏移した位置にある。こうすると、揺動部40の揺動に伴う玩具本体20のA1方向への動き(本実施形態では、傾斜)が大きくなり、走行中の玩具本体20の動きに変化を持たせることができ、少なくともA1方向への動きは大きくなるので目視し易くなる。図12では、平面視において、揺動縦軸53Aは、車輪30の幅Wの範囲から外れた位置にある。こうすると、揺動部40の揺動に伴う玩具本体20のA1方向への動き(本実施形態では、傾斜)がさらに大きくなり、走行中の玩具本体20の動きをさらに変化させることができ、少なくともA1方向への動きは大きくなるので目視し易くなる。
以上説明してきた実施形態によれば、回転−揺動変換機構50が少なくとも一つの車輪の回転運動を揺動部40の揺動運動に変換し、揺動部40が揺動された方向に揺動部40が玩具本体20に外力を付与して(つまり、揺動部40が玩具本体20を付勢して)、玩具本体20を揺動部40が揺動している方向、すなわち、走行方向D1と交差する方向D2に動かして(本実施形態では、傾斜させて)いる。つまり、本実施形態における手動走行玩具10は、揺動部40の揺動方向へと交互に動きながら(本実施形態では、傾斜しながら)走行する。したがって、玩具本体20に付加された揺動部40の動きによって玩具本体20自体の動きに変化をもたらすことにより、より面白味のある動きをする手動走行玩具10、例えば、魚が泳ぐ様子を模した動きをする手動走行玩具10を提供することができる。また、本実施形態のような場合は、駆動源や玩具本体20を傾斜させるための部品を別途設ける必要がないため、材料費を低減することも可能である。
また、以上説明してきた実施形態では、揺動時の揺動部40の重心の位置Gは、車輪が一つであれば車輪の接地面の幅の範囲外に設定している。複数の車輪の場合には、揺動時の揺動部40の重心の位置Gは、複数の車輪の接地面のうち走行方向と直交する方向D2での両端に位置する外縁間の幅の範囲外とする。
なお、走行する際に揺動部40から車輪が受ける負荷は、揺動部40の重さ(質量)と、揺動部の重心から揺動縦軸までの距離L1に比例する。この負荷が大きすぎると、車輪は回転しないか、若しくは回転後直ちに停止してしまう。このため、揺動部40は軽くなるようにしている。また、車輪を揺動部40よりも重くしている。なぜなら、走行により車輪30に発生する運動エネルギーは車輪30の質量に比例するので、車輪30の質量が大きくなれば、揺動部40を動かすために使えるエネルギーも大きくなり、また、ある速度で揺動部40を動かすために必要な運動エネルギーは、揺動部40の質量が小さい程小さくて済むため、車輪と揺動部40の質量の差が大きい程、揺動部40が長く揺動させられるからである。次に、車輪の上述した幅より外れた位置に揺動部40の重心を移動させることにより、車輪は平衡バランスを崩しやすくなり、走行中の玩具本体20は揺動部40が振れた方向に動きやすく(本実施形態では、傾斜し易く)なる。
また、以上説明してきた実施形態では、前記揺動部40の重心から前記揺動縦軸までの距離L1は、前記揺動部の全長Lを二等分する位置P3から前記揺動縦軸までの距離L2よりも短くしている。こうすると、車輪が走行する際に揺動部40から車輪が受ける負荷(揺動部40の重さと、揺動部40の重心から揺動縦軸までの距離L1に比例する)を小さくでき、手動走行玩具10の走行距離を長くすることができるからである。
また、以上説明してきた実施形態では、平面視において、前記走行方向D1と直交する方向D2にて、前記少なくとも一つの車輪と、前記回転−揺動変換機構の一部とを並んで配置している。こうすると、走行方向D1と直交する幅方向D2において玩具本体20の静止時での平衡バランスが崩れ、揺動部40からの外力により(つまり、揺動部40からの付勢により)走行中の玩具本体20が傾斜する。
また、以上説明してきた実施形態では、前記少なくとも一つの車輪は、前記車軸に離間して支持される2つの車輪を含み、前記2つの車輪の間に、前記回転−揺動変換機構の一部を配置している。こうすると、走行方向D1と直交する幅方向D2において玩具本体20の静止時での平衡バランスが向上し、静止時での姿勢が安定する。
また、以上説明してきた実施形態では、前記少なくとも一つの車輪の前記接地面は、前記走行方向D1と直交する方向D2での幅の中心部分を両端よりも突出させている。こうすると、玩具本体20は静止時においてもその車軸が水平状態から外れるように傾斜しやすくなり、揺動部40の揺動による外力により(つまり、揺動部40の揺動による付勢により)、走行中の玩具本体20が動く(本実施形態では、傾斜する)。
また、以上説明してきた実施形態では、前記少なくとも一つの車輪は、基材30Bと、前記基材30Bを覆って接地面を形成する被覆材30Cとを含み、前記被覆材30Cは同一走行面との間で発生する摩擦力を前記基材30Bよりも大きくしている。こうすると、被覆材30Cによって車輪の接地面との間で発生する摩擦力(グリップ力)を高めることができる。
また、以上説明してきた実施形態では、玩具本体20と、前記玩具本体20の底面よりも下方に突出して走行面に接し、車軸を中心に回転する少なくとも一つの車輪と、前記玩具本体の走行方向の後端側位置に支持される揺動縦軸を中心として揺動されて、前記揺動縦軸に揺動可能に固定される揺動部40と、前記少なくとも一つの車輪の回転運動を前記揺動部40の揺動運動に変換する回転−揺動変換機構と、平面視において前記走行方向D1と直交する方向D2にて両端に位置する前記車輪の最端面よりも両外側に位置し、前記玩具本体20の底面よりも下方に突出し、かつ、前記車輪の接地面の高さまで到達しない2つの側方倒れ防止部材20B、20Cと有する手動走行玩具20としている。このことにより、回転−揺動変換機構が少なくとも一つの車輪の回転運動を揺動部40の揺動運動に変換し、揺動部40が揺動された方向に揺動部40が玩具本体20に外力を付与して、玩具本体20を揺動部40が揺動している方向、すなわち、走行方向D1と交差する方向D2に動かす(本実施形態では、傾斜させる)。つまり、玩具本体20を揺動方向へと交互に動かしながら(本実施形態では、傾斜させながら)走行する。したがって、玩具本体20に付加された揺動部40の動きによって玩具本体20自体の動きに変化をもたらすことにより、より面白味のある動きをする手動走行玩具20を提供することができる。加えて、2つの側方倒れ防止部材20B,20Cを設けることで、玩具本体20に付加された揺動部40の動きによって玩具本体20自体の動きに変化をもたらしながら、玩具本体20が倒れることなく走行方向D1に走行し続けることができる。また、車輪以外では側方倒れ防止部材20B,20Cと走行面との接触を局所的にすることで、走行抵抗を少なくすることができる。
また、以上説明してきた実施形態では、前記玩具本体20は、平面視において前記走行方向D1にて前記少なくとも一つの車輪よりも前側の位置にて、前記底面よりも下方に突出する前倒れ防止部材20Dを有している。こうすると、玩具本体20を手で押し離した際に玩具本体20が前倒れしようとしても、前倒れ防止部材20Dが走行面と接触して玩具本体20の前倒れを規制することができる。また、車輪以外では前倒れ防止部材20Dと走行面との接触を局所的にすることで、走行抵抗を少なくすることができる。
また、以上説明してきた実施形態では、前記玩具本体20は、平面視において前記走行方向D1にて前記少なくとも一つの車輪よりも後側の位置にて、前記底面よりも下方に突出する後倒れ防止部材を有するようにしている。この後倒れ防止部材は、前倒れ防止部材20Dに代えて、あるいは前倒れ防止部材20Dに追加して設けることができる。特に、後倒れ防止部材は、手動走行玩具10の総重量の重心位置よりも玩具本体20の走行方向D1の前端側に車輪の縦中心線(重心)が位置している時など、後倒れし易い構造に有用である。
なお、上記のように本実施形態について詳細に説明したが、本発明の新規事項及び効果から実体的に逸脱しない多くの変形が可能であることは当業者には容易に理解できるものである。従って、このような変形例は全て本発明の範囲に含まれるものとする。例えば、明細書又は図面において、少なくとも一度、より広義または同義な異なる用語と共に記載された用語は、明細書又は図面のいかなる箇所においても、その異なる用語に置き換えることができる。