JP5984320B2 - ホリナートカルシウム含有フィルムコーティング錠 - Google Patents

ホリナートカルシウム含有フィルムコーティング錠 Download PDF

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Description

本発明は、ホリナートカルシウムを含んでなる錠剤で、光に対して安定でかつレーザー印刷が可能なフィルムコーティング錠に関するものである。
ホリナートカルシウム(日本医薬品一般名称)は、(2S)−2−{[4−[(2−アミノ−5−ホルミル−4−オキソ−5,6,7,8−テトラヒドロ−1H−プテリジン−6−イル)メチルアミノ]ベンゾイル]アミノ}ペンタンジオイックアシドのカルシウム塩であり、胃ガン、結腸・直腸ガンに対するフルオロウラシルの抗腫瘍効果の増強剤として用いられている。
ホリナートカルシウムは非特許文献1および非特許文献2に記載されているように、曝光により錠剤表面の色が黄色化する。本医薬品が市場で流通している状態や、無包装状態で保存された錠剤を想定すると、錠剤の着色抑制技術の開発が望まれる。
曝光により着色する錠剤は、通常は、素錠に酸化チタンを含有するフィルムをコーティングすることにより改善することが知られている(特許文献1、特許文献2)。
本発明者らは、ホリナートカルシウムを含有する錠剤においても、酸化チタン(遮光剤)を含有するフィルムでコーティングすると曝光による黄色化を防止することができた。しかしながら、曝光後に純度試験を実施したところ、フィルムコーティングを施す前の素錠では確認されなかったホリナート由来の構造未知の分解生成物が大幅に増加し、その分解生成物の含量がICH Q3B「新有効成分含有医薬品のうち製剤の不純物に関するガイドライン」における構造決定の必要な閾値を越えるという問題があることが判明した。
この分解生成物は、酸化チタンを含有しないフィルムコーティングでは増加しない。このことから、酸化チタンを触媒としたホリナートの特異的な光分解により生成するものと考えられた。
一方、錠剤の識別性を向上させるために、フィルム錠にレーザーを照射して製品名等を鮮明に印刷する方法があるが、レーザー印刷を可能とするためには、フィルム層に酸化チタン等の変色誘起金属酸化物を含有していなければならない。
ホリナートカルシウムを含有する錠剤で、光に対して安定なフィルム錠に関する発明は見当たらないし、酸化チタンを含有するフィルムでコーティングされた錠剤でありながら光に対して安定なホリナートカルシウムを含有する錠剤に関する発明も見当たらない。現在市販されているホリナートカルシウムを含有する錠剤は、UV吸収機能を持つPTPに充填された素錠をアルミニウム製のペット袋で包装したものである。しかし、こうした錠剤は無包装では曝光により黄色化するという問題がある。もちろん、素錠であるため、錠剤表面に製品名等の鮮明な印刷はされていない。
特開2000−191516号公報 特開2007−145717号公報
医薬品インタビューフォーム「ロイコボリン錠25mg」、2013年1月 医薬品インタビューフォーム「ユーゼル錠25mg」、2012年9月
本発明の課題は、ホリナートカルシウムを含有する錠剤で、無包装の状態で光にさらされてもホリナートの構造未知の分解生成物が増加せず、黄色化も抑制され、錠剤表面にレーザーを照射して製品名等の鮮明な印字が可能である等の効果が期待されるフィルムコーティング錠を提供することにある。
本発明者は、前記課題を解決するため鋭意検討した。
先ず、フィルムコーティングを施した固形医薬組成物でのみホリナート由来の構造未知の分解生成物が増加した原因を追究した。その結果、曝光による黄色化の抑制のために添加していた酸化チタン(遮光剤)を除去したフィルムコーティングではホリナートの分解物が生成されないことが分かり、その分解物は酸化チタンを触媒としたホリナートの特異的な光分解により生成するものであることを見出した。しかしながら、酸化チタンを除去したフィルムコーティングでは着色の抑制が充分ではなかった。そこで、ホリナートカルシウムを含有する素錠に、第1層としてポリビニルアルコール系ポリマーとタルクを含有するフィルムをコーティングし、更にその上に第2層として、水溶性ポリマーとタルクと酸化チタンを含有するフィルムをコーティングすることにより、光に対して安定でレーザー印刷を可能とした錠剤が得られることを見出し、さらに検討を加え、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、
(1)ホリナートカルシウムを素錠中に含有するフィルムコーティング錠剤であって、フィルムコーティング層中に遮光剤が含有されている錠剤、
(2)フィルムコーティング層中に水溶性ポリマーを含有し、水溶性ポリマーがヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、エチルセルロース、メチルセルロース、ポリビニルアルコール、ポリビニルアルコール・アクリル酸・メタクリル酸メチル共重合体、ポリビニルアルコール・ポリエチレングリコール共重合体、ポリビニルピロリドン、メタクリル酸コポリマーより選ばれる1以上である、前記(1)に記載のフィルムコーティング錠、
(3)水溶性ポリマーが、ポリビニルアルコール又はポリビニルアルコール・アクリル酸・メタクリル酸メチル共重合体より選ばれる1以上を含む、前記(2)に記載のフィルムコーティング錠、
(4)水溶性ポリマーが、ポリビニルアルコール・アクリル酸・メタクリル酸メチル共重合体を含む、前記(2)に記載のフィルムコーティング錠、
(5)遮光剤が、酸化チタン、黄色三二酸化鉄、三二酸化鉄より選ばれる1以上を含む、前記(1)〜(4)のいずれかに記載のフィルムコーティング錠、
(6)遮光剤が、酸化チタンを含む、前記(1)〜(4)のいずれかに記載のフィルムコーティング錠、
(7)ホリナートカルシウムを含有する素錠に、第1層として水溶性ポリマーとタルクを含有するフィルムをコーティングし、その上に第2層として水溶性ポリマーとタルクと酸化チタンを含有するフィルムをコーティングした、前記(1)〜(6)のいずれかに記載のフィルムコーティング錠、
(8)第1層のフィルムの水溶性ポリマーがポリビニルアルコール・アクリル酸・メタクリル酸メチル共重合体である、前記(7)に記載のフィルムコーティング錠、
(9)第2層のフィルムの水溶性ポリマーがヒプロメロースである、前記(7)又は(8)に記載のフィルムコーティング錠、
(10)第1層のフィルムのコーティング量が素錠重量に対して1.5〜2重量%であり、第2層のフィルムのコーティング量が素錠重量に対して1.5〜2重量%である、前記(7)〜(9)のいずれかに記載のフィルムコーティング錠、
(11)第2層のフィルム中の酸化チタンの量が、第2層のフィルム重量に対して2.5〜10重量%である、前記(7)〜(10)のいずれかに記載のフィルムコーティング錠、を提供するものである。
本発明の錠剤は光に対して安定である。本発明の錠剤は、例えば無包装の状態で120万Lux・Hrの量の光を曝光しても、錠剤中のホリナートの構造未知の分解生成物が増加することはなく、錠剤の外観も変化せず、色差(ΔE)は1.6以下である等の効果が期待される。なおかつ、本発明の錠剤は第2層に酸化チタンを含有することで、レーザー照射によって錠剤の表面に製品名等を鮮明に印刷することが可能であり、識別性の優れた錠剤を提供することが可能である。
以下、本発明につき、詳しく説明する。
本発明のフィルムコーティングを施す前の錠剤は、例えば、素錠、チュアブル錠などが挙げられ、好ましくは素錠であり、素錠にフィルムコーティングを施してフィルムコーティング錠とすることが出来る。
本発明に係る素錠を製造するための添加物としては、通常用いられている賦形剤、崩壊剤、及び滑沢剤を使用することができる。
本発明で用いられる賦形剤としては、例えば、乳糖、白糖、ショ糖、果糖、ブドウ糖、麦芽糖、還元麦芽糖、粉糖、粉末飴、ラクチトール、イソマル等の糖類、エリスリトール、ソルビトール、キシリトール、D−マンニトール等の糖アルコール、トウモロコシデンプン、バレイショデンプン、コメデンプン、コムギデンプン等の天然デンプン、結晶セルロース等が挙げられる。好ましくは、乳糖及び結晶セルロースからなる群から少なくとも1種が選ばれる。
本発明で用いられる崩壊剤としては、例えば、部分アルファ化でんぷん、クロスカルメロースナトリウム、カルメロースカルシウム、カルボキシメチルスターチナトリウム、クロスポビドン、コーンスターチ、カルメロース及び低置換度ヒドロキシピロピルセルロースからなる群から選択される。好ましくは、部分アルファ化でんぷんおよびカルボキシメチルスターチナトリウムであり、より好ましくは部分アルファ化でんぷんである。
本発明で用いられる滑沢剤としては、例えば、ステアリン酸カルシウム、モノステアリン酸グリセリン、ステアリン酸マグネシウム、ショ糖脂肪酸エステル、ステアリン酸、タルクからなる群から少なくとも1種が選ばれる。好ましくはステアリン酸マグネシウムである。
本発明に係る第1層のコーティング層には、水溶性ポリマーであるコーティング剤とタルクを含有する。必要に応じて、可塑剤、着色剤を含有することができ、場合によっては第2層のコーティング層で使用可能な遮光剤を含有し得る。
本発明の第1層のコーティング層で用いられる水溶性ポリマーであるコーティング剤としては、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、エチルセルロース、メチルセルロース、ポリビニルアルコール、ポリビニルアルコール・アクリル酸・メタクリル酸メチル共重合体、ポリビニルアルコール・ポリエチレングリコール共重合体、ポリビニルピロリドン、メタクリル酸コポリマー等が挙げられる。好ましくは、ポリビニルアルコール又はポリビニルアルコール・アクリル酸・メタクリル酸メチル共重合体等のポリビニルアルコール系ポリマーであり、さらに好ましくはポリビニルアルコール・アクリル酸・メタクリル酸メチル共重合体である。
そのコーティング剤の使用量は、通常、本発明に係る第1層のコーティング層の全量に対して35〜90重量%の範囲が好ましい。
本発明の第1層のコーティング層で用いられる可塑剤としては、ポリエチレングリコール、クエン酸トリエチル、モノステアリン、プロピレングリコール、グリセリン、フタル酸ジエチル、フタル酸ジブチル、ポロクサマー、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリソルベート等が挙げられる。好ましくはポリエチレングリコールである。
その可塑剤の使用量は、通常、本発明に係る第1層のコーティング層の全量に対して5〜15重量%の範囲が好ましい。
本発明の第1層のコーティング層で用いられるタルクの使用量は、通常、本発明に係る第1層のコーティング層の全量に対して5〜50重量%の範囲が好ましい。
本発明のフィルムコーティング錠剤は、第1層のコーティング層のみを含む場合と第1層及び第2層のコーティング層の両方を含む場合のそれぞれで実施されることが考えられるが、後者の方が本発明の実施形態としてより好ましい。
本発明に係る第2層のコーティング層には、遮光剤のほか、水溶性ポリマーであるコーティング剤とタルクを含有する。必要に応じて、可塑剤、着色剤を含有することができる。
本発明の第2層のコーティング層で用いられる水溶性ポリマーであるコーティング剤としては、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、エチルセルロース、メチルセルロース、ポリビニルアルコール、ポリビニルアルコール・アクリル酸・メタクリル酸メチル共重合体、ポリビニルアルコール・ポリエチレングリコール共重合体、ポリビニルピロリドン、メタクリル酸コポリマー等が挙げられる。好ましくは、ヒドロキシプロピルメチルセルロースである。
そのコーティング剤の使用量は、通常、本発明に係る第2層のコーティング層の全量に対して25〜87.5重量%の範囲が好ましい。
本発明の第2層のコーティング層で用いられる可塑剤としては、ポリエチレングリコール、クエン酸トリエチル、モノステアリン、プロピレングリコール、グリセリン、フタル酸ジエチル、フタル酸ジブチル、ポロクサマー、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリソルベート等が挙げられる。好ましくはポリエチレングリコールである。
その可塑剤の使用量は、通常、本発明に係る第2層のコーティング層の全量に対して5〜15重量%の範囲が好ましい。
本発明の第2層のコーティング層で用いられるタルクの使用量は、通常、本発明に係る第2層のコーティング層の全量に対して5〜50重量%の範囲が好ましい。
本発明の第2層のコーティング層で用いられる遮光剤としては、酸化チタン、硫酸バリウム、硫酸マグネシウム、亜鉛、酸化亜鉛、亜鉛華、黄色三二酸化鉄、三二酸化鉄等が挙げられる。好ましくは酸化チタン、黄色三二酸化鉄、三二酸化鉄より選ばれる1以上を含み、より好ましくは酸化チタンを含む。
本発明のコーティング層で用いられる遮光剤(タルク除く)の使用量は、通常、本発明に係る素錠の全量に対して0.01〜2重量%の範囲が好ましい。また、酸化チタンの使用量は、通常、本発明に係るコーティング層の全量に対して2.5〜10重量%の範囲がより好ましい。但し、本発明の第1層目のコーティング層には酸化チタンが含有されないことが好ましい。
本発明における錠剤は、良好な溶出性を示す。第15改正日本薬局方溶出試験法に基づき、精製水900mL・パドル回転数50rpmでの溶出試験において、溶出試験開始から15分のサンプル時点におけるホリナートの溶出率が85%以上である。
本発明における錠剤の製剤化は、製剤分野において自体公知の方法により行えばよい。本発明において錠剤の製造方法は特に限定されないが(但し、より好適な実施形態は以下前者に記載の直接打錠による製造方法である)、例えば以下の方法により製することができる。
ホリナートカルシウム及び添加剤[賦形剤(乳糖及び結晶セルロース)及び崩壊剤(部分アルファ化デンプン)等]を混合し、得られた混合物に、添加剤[滑沢剤(ステアリン酸マグネシウム)等]を混合して、圧縮成型することで素錠を得ることができる。
また、ホリナートカルシウム及び添加剤[賦形剤(乳糖及び結晶セルロース)及び崩壊剤(部分アルファ化デンプン)等]を混合し、得られた混合物を、精製水で造粒し、乾燥する。得られたホリナートカルシウム含有造粒物に、添加剤[滑沢剤(ステアリン酸マグネシウム)等]を混合して、圧縮成型することで素錠を得ることもできる。ホリナートカルシウムを含有する得られた素錠は、曝光による黄色化抑制等の目的でその表面の一部または全部を水溶性ポリマー等のコーティング剤で被覆してもよい。
素錠の成型方法については、特に限定されないが、商業的に製造する場合はロータリー式打錠機を用いた圧縮成形法が用いられる。本発明で得られる錠剤の形状は特に限定されず、円形錠、円形R錠、円形隅角錠、円形2段R錠や異形錠等のいずれの形状でもよいが、フィルムコーティングを施す場合は、R錠等が好ましい。
フィルムコーティングの方法については、特に限定されないが、商業的に製造する場合はフィルムコーティング機を用いたコーティング法が用いられる。得られた素錠をフィルムコーティング機に仕込み、第1層のフィルム成分を水に懸濁してこれをスプレーすれば第1層のフィルム層のみを含むフィルムコーティング錠が得られる。さらに続けて第2層のフィルム成分を水に懸濁してこれをスプレーすれば、第1層及び第2層のフィルム層を含むフィルムコーティング錠が得られる。
以下、実施例、比較例及び試験例を挙げて本発明を説明するが、本発明を限定するものではない。
(1)色調変化の測定方法
光照射(ナガノサイエンス株式会社製:光安定性試験装置LTL−200D3CJ−14、色比較・検査用D65蛍光ランプ使用、照射強度3000lxを400時間、総照射量120万lx・hr)後、分光式色差計(日本電飾工業株式会社製:SE6000型)を用いて、曝光前後の錠剤表面の色調変化をΔE*(CIE L*a*b*)で数値化できる。
(2)分解生成物含量の測定方法
光照射(ナガノサイエンス株式会社製:光安定性試験装置LTL−200D3CJ−14、色比較・検査用D65蛍光ランプ使用、照射強度3000lxを400時間、総照射量120万lx・hr)後、HPLCを用いて曝光前後の分解生成物の含量を測定できる。測定条件を以下に示す。
「HPLC測定条件」
検出器:フォトダイオードアレイ検出器
測定波長:254nm
カラム:ワイエムシィ株式会社製 YMC−Pack Triart C18(4.6×150、3μm)
カラム温度:45℃
移動相A:リン酸水素二ナトリウム十二水和物溶液(287→100000)/メタノール/テトラブチルアンモニウムヒドロキシド試液混液(385:110:4)にリン酸を加えてpH7.0に調整した液
移動相B:メタノール
グラジエント条件:以下の表1に示す通りに設定した。移動相組成は容量%で記載した。

分析時間:45分
流量:1.2mL/分
試料注入量:20μL
試料溶液の調整:ホリナートカルシウム25mg相当のホリナートカルシウム含有固形医薬組成物を精製水・メタノール混液(精製水80:メタノール20)を用いて40mLとする。
本発明における曝光により生成される構造未知の分解生成物とは、上記手法による分解生成物の解析において、ホリナートのピークの保持時間に対して、相対保持時間1.165及び相対保持時間1.234に出現するピークである。なお、各分解生成物の含量は各分解生成物のピーク面積をホリナートのピーク面積で除して100をかけた数値とする。
実施例、比較例中の乳糖水和物はDFE pharma社製の「Pharmatose(登録商標)200M」及びフロイント産業株式会社製の「ダイラクトーズS(登録商標)」を使用した。結晶セルロースは旭化成ケミカルズ株式会社製の「セオラス(登録商標)PH−101」および「セオラス(登録商標)UF−702」を使用した。カルボキシメチルスターチナトリウムはROQUETTE社製の「GLYCOLYS(登録商標)」を使用した。部分アルファ化デンプンは旭ケミカルズ株式会社製の「PCS(登録商標)」を使用した。ステアリン酸マグネシウムは太平化学産業株式会社製の「ステアリン酸マグネシウム 植物性」を使用した。ホリナートカルシウムはGMT Fine Chemicals SAの「ホリナートカルシウム」を使用した。ヒドロキシプロピルメチルセルロースは信越化学株式会社製の「TC−5R」を使用した。ポリビニルアルコール・アクリル酸・メタクリル酸メチル共重合体は大同化成工業株式会社製の「POVACOAT(登録商標)−F」を使用した。ポリエチレングリコールは三洋化成株式会社製の「マクロゴール6000 SP」を使用した。タルクは松村産業株式会社製の「クラウンタルク」を使用した。酸化チタンはフロイント産業株式会社製の「酸化チタンA−HR」を使用した。
ホリナートカルシウム64.06g、乳糖水和物(ダイラクトーズS)161.94g、結晶セルロース(UF−702)48g及び部分アルファ化デンプン42gをポリエチレン製の袋に投入し、混合した。次いで、この混合物にステアリン酸マグネシウム4gを加え、ポリエチレン製の袋にて混合した。次いで、この混合物を、ロータリー式打錠機(菊水製作所:VELA5−M型)を用いて直径8mmに圧縮成形し、素錠を得た。次いで、得られた素錠をコーティング機(パウレック社製:DRC−200型)に投入し、ポリビニルアルコール・アクリル酸・メタクリル酸メチル共重合体41.7g、マクロゴール7.6g、及びタルク22.7gを精製水647gに懸濁したコーティング液を噴霧し、第1層目のフィルムをコーティングした。次いで、第1層目のフィルムをコーティングした錠剤をコーティング機(パウレック社製:DRC−200型)に投入し、ヒプロメロース39.6g、マクロゴール7.2g、酸化チタン3.6g及びタルク21.6gを精製水633.1gに懸濁したコーティング液を噴霧し、下記組成のコーティング錠剤を得た(表2)。

[比較例1]
ホリナートカルシウム64.06g、乳糖水和物(ダイラクトーズS)161.94g、結晶セルロース(UF−702)48g及び部分アルファ化デンプン42gをポリエチレン製の袋に投入し、混合した。次いで、この混合物にステアリン酸マグネシウム4gを加え、ポリエチレン製の袋にて混合した。次いで、この混合物を、ロータリー式打錠機(菊水製作所:VELA5−M型)を用いて直径8mmに圧縮成形し、下記組成の素錠を得た(表3)。

[比較例2]
ホリナートカルシウム64.06g、乳糖水和物(ダイラクトーズS)161.94g、結晶セルロース(UF−702)48g及び部分アルファ化デンプン42gをポリエチレン製の袋に投入し、混合した。次いで、この混合物にステアリン酸マグネシウム4gを加え、ポリエチレン製の袋にて混合した。次いで、この混合物を、ロータリー式打錠機(菊水製作所:VELA5−M型)を用いて直径8mmに圧縮成形し、素錠を得た。次いで、得られた素錠をコーティング機(パウレック社製:DRC−200型)に投入し、ヒプロメロース41.7g、マクロゴール7.6g、及びタルク22.7gを精製水647gに懸濁したコーティング液を噴霧し、第1層目のフィルムをコーティングした。次いで、第1層目のフィルムをコーティングした錠剤をコーティング機(パウレック社製:DRC−200型)に投入し、ヒプロメロース39.6g、マクロゴール7.2g、酸化チタン3.6g及びタルク21.6gを精製水633.1gに懸濁したコーティング液を噴霧し、下記組成のコーティング錠剤を得た(表4)。

[比較例3]
ホリナートカルシウム65.06g、乳糖水和物(ファーマトース200M)208.54g、結晶セルロース(PH−101)54g、部分アルファ化デンプン10.8g及びデンプングリコール酸ナトリウム18gを撹拌造粒機(パウレック社製:バーチカルグラニュレータFM−VG−01型)に投入し、粉体を撹拌させながら、精製水80gを投入し、造粒した。得られた造粒物を流動層造粒機(パウレック社製:MP−01型)にて乾燥し、整粒機(パウレック社製:QC−197S型)にて整流した。得られた整粒品356.4gにステアリン酸マグネシウム3.6gを加え、ポリエチレン製の袋にて混合した。次いで、この混合物にステアリン酸マグネシウム4gを加え、ポリエチレン製の袋にて混合した。次いで、この混合物を、ロータリー式打錠機(菊水製作所:VELA5−M型)を用いて直径8mmに圧縮成形し、下記組成の素錠を得た(表5)。

[比較例4]
ホリナートカルシウム65.06g、乳糖水和物(ファーマトース200M)208.54g、結晶セルロース(PH−101)54g、部分アルファ化デンプン10.8g及びデンプングリコール酸ナトリウム18gを撹拌造粒機(パウレック社製:バーチカルグラニュレータFM−VG−01型)に投入し、粉体を撹拌させながら、精製水80gを投入し、造粒した。得られた造粒物を流動層造粒機(パウレック社製:MP−01型)にて乾燥し、整粒機(パウレック社製:QC−197S型)にて整流した。得られた整粒品356.4gにステアリン酸マグネシウム3.6gを加え、ポリエチレン製の袋にて混合した。次いで、この混合物にステアリン酸マグネシウム4gを加え、ポリエチレン製の袋にて混合した。次いで、この混合物を、ロータリー式打錠機(菊水製作所:VELA5−M型)を用いて直径8mmに圧縮成形し、素錠を得た。次いで、得られた素錠をコーティング機(パウレック社製:DRC−200型)に投入し、ヒプロメロース22.56g、マクロゴール2.4g、タルク2.4g及び酸化チタン1.44gを精製水352.6gに懸濁したコーティング液を噴霧し、下記組成の単層のコーティング錠剤を得た(表6)。

[比較例5]
ホリナートカルシウム65.06g、乳糖水和物(ファーマトース200M)208.54g、結晶セルロース(PH−101)54g、部分アルファ化デンプン10.8g及びデンプングリコール酸ナトリウム18gを撹拌造粒機(パウレック社製:バーチカルグラニュレータFM−VG−01型)に投入し、粉体を撹拌させながら、精製水80gを投入し、造粒した。得られた造粒物を流動層造粒機(パウレック社製:MP−01型)にて乾燥し、整粒機(パウレック社製:QC−197S型)にて整流した。得られた整粒品356.4gにステアリン酸マグネシウム3.6gを加え、ポリエチレン製の袋にて混合した。次いで、この混合物にステアリン酸マグネシウム4gを加え、ポリエチレン製の袋にて混合した。次いで、この混合物を、ロータリー式打錠機(菊水製作所:VELA5−M型)を用いて直径8mmに圧縮成形し、素錠を得た。次いで、得られた素錠をコーティング機(パウレック社製:DRC−200型)に投入し、ヒプロメロース22.56g、マクロゴール2.4g及びタルク2.4gを精製水352.6gに懸濁したコーティング液を噴霧し、第1層目のフィルムをコーティングした。次いで、第1層目のフィルムをコーティングした錠剤をコーティング機(パウレック社製:DRC−200型)に投入し、ヒプロメロース22.56g、マクロゴール2.4g、タルク2.4g及び酸化チタン1.44gを精製水352.6gに懸濁したコーティング液を噴霧し、下記組成のコーティング錠剤を得た(表7)。

[試験例]
実施例1ならびに比較例1、2、3、4及び5で得られた各々の錠剤について、照射強度3000lxを400時間、総照射量120万lx・Hrとなるまで曝光し、錠剤表面の色の変化量及びホリナートの分解生成物の含量を測定した。なお、ホリナートの分解生成物の含量は、ホリナートの保持時間に対して相対保持時間1.165及び相対保持時間1.234に出現する構造未知の分解生成物の含量の和とし、曝光前後の差を構造未知の分解生成物の増加量とした。測定した結果を表8に示した。なお、表中のN.D.はホリナートの構造未知の分解生成物が検出されなかったことを示す。

素錠を製する際、湿式造粒法を用いた比較例3、比較例4及び比較例5について述べる。比較例3は素錠であり、曝光により著しく変色するが、ホリナートの構造未知の分解生成物は増加しない。比較例4は素錠に酸化チタンを含有するフィルムを被覆したコーティング錠であり、曝光による着色は抑制されるが、ホリナートの構造未知の分解生成物が増加するという問題が発生する。比較例5は素錠に第1層としてヒプロメロースとタルクを含有するフィルムを被覆し、第2層としてヒプロメロースとタルクと酸化チタンを含有するフィルムを被覆したコーティング錠であり、曝光による変色は抑制され、比較例4よりもホリナートの構造未知の分解生成物の増加も抑制されたが、その程度は十分ではなかった。しかしながら、コーティングの層を2層に分け、第1層目の酸化チタンを含有しないフィルム上に、第2層目の酸化チタンを含有するフィルムをコーティング態様、すなわち、ホリナートカルシウムを含有する素錠と酸化チタンを直接接触させないフィルム態様であれば、ホリナートの構造未知の分解生成物の増加を低減できることを確認することができた。
素錠を製する際、直接打錠により製造した実施例1、比較例1及び比較例2について述べる。比較例1は素錠であり、湿式造粒法で製した素錠である比較例3と比べて、同等レベルの変色度合いであり、ホリナートの構造未知の分解生成物も同じように増加しなかった。比較例2は素錠に第1層としてヒプロメロースとタルクを含有するフィルムを被覆し、第2層としてヒプロメロースとタルクと酸化チタンを含有するフィルムを被覆したコーティング錠であり、比較例3(湿式造粒法で素錠を製し第1層としてヒプロメロースとタルクを含有するフィルムを被覆し、第2層としてヒプロメロースとタルクと酸化チタンを含有するフィルムを被覆したコーティング錠)と同様に曝光による変色は抑制されたが、微量のホリナートの構造未知の分解生成物の増加が確認された。
実施例1は素錠に第1層としてポリビニルアルコール・アクリル酸・メタクリル酸メチル共重合体とタルクを含有するフィルムを被覆し、第2層としてヒプロメロースとタルクと酸化チタンを含有するフィルムを被覆したコーティング錠であり、曝光による変色は抑制され、かつ、ホリナートの構造未知の分解生成物の増加は完全に抑制された。さらに、本製剤は第2層のフィルムに酸化チタンを含有しているため、錠剤表面にレーザー照射することにより、製品名等を鮮明に印刷することが可能である。
よって以上の結果より、フィルムコーティング層(好ましくは第1層と第2層のフィルム層を含むもの)の存在や、さらには素錠を直接打錠により製造する等の各種の製造条件の検討によって、光による着色性の抑制や分解生成物の増加の低減等の有利な効果を顕著にもったホリナートカルシウムを含有する錠剤が製造可能であることが明らかになった。
本発明によれば、ホリナートカルシウムを含有する錠剤で、無包装状態で光にさらされても黄色化せず、ホリナートの構造未知の分解生成物も増加せず、錠剤表面にレーザーを照射して製品名等の鮮明な印字が可能なフィルムコーティング錠を提供することができる。

Claims (2)

  1. ホリナートカルシウムを含有する素錠に、第1層としてポリビニルアルコール・アクリル酸・メタクリル酸メチル共重合体を含む水溶性ポリマーとタルクを含有するフィルムをコーティングし、その上に第2層として水溶性ポリマーとタルクと酸化チタンを含有するフィルムをコーティングした、フィルムコーティング層中に素錠の全量に対して0.01〜2重量%の遮光剤が含有され、さらに其の遮光剤が酸化チタンを含む、フィルムコーティング錠。
  2. 第1層のフィルムのコーティング量が素錠重量に対して1.5〜2重量%であり、第2層のフィルムのコーティング量が素錠重量に対して1.5〜2重量%である、請求項1に記載のフィルムコーティング錠。
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