以下、本発明に係る縦管の施工方法、及びこの施工方法に用いる作業架台の実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
図1は、人孔内に設置した螺旋案内路付き縦管の一例を示す説明図であり、図2は前記縦管の概要を示す説明図である。
図示するように、人孔41の内部には、高落差接合の下水道管として縦管1が設置される。縦管1には、上部に接続する上方下水道44からの下水が流入し、流域下水道の幹線である下方下水道45に合流する。
(縦管の全体構成)
本発明に係る縦管の施工方法及び作業架台の説明に先立ち、人孔41内に設置する縦管1の概略構成について説明する。
図2に示すように、縦管1には、螺旋状の板状体である螺旋案内板が高さ方向に配設されて螺旋案内路11が形成されている。螺旋案内路11の螺旋ピッチは、縦管1の高さや、下水の計画流量及び必要速度等に応じて、適宜選択される。
縦管1の上部では、螺旋案内路11の中心部に、内部が空洞とされた中心筒(空気抜き芯筒)12が一体に設けられている。例示の形態では、螺旋案内路11の上から3ピッチ分に対して中心筒12が配設されている。
中心筒12は、例えば縦管1の内径の約1/3の管径を有する小口径の円筒管を用いて形成され、縦管1と同心となるように配設されている。また、図1に示すように、中心筒12の上端は、縦管1の頂部よりも上方位置まで延出されて、人孔41上部の流入枡43内に開放されている。縦管1の下部にあっては、螺旋案内路11の中心部に、中心筒12とほぼ同寸の空洞部が形成されおり、中心筒は設けられていない。
かかる螺旋案内路11の中心部は、中心筒12及び空洞部を設けることにより、縦管1内を下水が流下する間に、下水に含まれる空気を排出する作用をなし、空気連行量を低減させる。
中心筒12の上部の側面には、平板状のガイド板13が設けられている。ガイド板13は、縦管1の管軸方向に沿って配設され、中心筒12の上端近傍の高さ位置から螺旋案内路11の始端部までの間に形成されている。これにより、下水は、上方下水道44から縦管1に流入する際に、ガイド板13に沿って螺旋案内路11の上部へ導かれ、螺旋の回転方向に流れ始める。そして、下水は、螺旋案内路11に沿って流れ、旋回流を形成しながら縦管1内を流下する。その過程で、下水は流下エネルギーを減勢させ、下水に含まれている空気を分離する。
縦管1に用いられる材料は特に限定されるものではないが、強度や耐久性等の観点から、例えば、硬質塩化ビニル樹脂、FRP、又はポリカーボネート等の合成樹脂系材料が好ましい。また、これらのほかに、FRPとモルタルとの積層体である繊維強化プラスチックモルタル(いわゆるFRPM)や、合成樹脂とセメント等との複合材料等も縦管1に好適に用いられる。中心筒12や螺旋案内路11は、強度や加工性等の観点から、FRP又は塩化ビニル樹脂等により形成されることが好ましく、塩化ビニル樹脂とFRPとの積層体から形成されてもよい。
螺旋案内路11を通って旋回流となった下水は、縦管1の管底へ到達する。図1に示すように、縦管1の底部は、人孔41の底部に打設されたコンクリートの土台42に支持されている。
また、図2に示すように、縦管1の底部には、下水の流出管14が取り付けられる。流出管14は、その管頂部が螺旋案内路11の下端と同等または当該下端より低い高さ位置となるように接続される。例示の形態では、流出管14は、縦管1と人孔41との間、及び人孔41と下方下水道45との間にわたり、横方向に配設されている。
下水は、流出管14から排出されて下方下水道45に合流する。縦管1の底部と、人孔41の底部内壁との間には、モルタル等の充填材が現場打ちされて一体化が図られる。
(縦管の分割構成)
縦管1は、下水の流入部から流出部までが一体とされた1本の管体から構成されてもよいが、人孔41の口径が比較的小さく、人孔41と縦管1との間に十分な作業スペースが設けられない場合には、1本の管体を人孔41内に搬入することは困難である。そのため、縦管1は、施工作業やその後のメンテナンスを行いやすくするために、複数の縦管部材2に分割して形成されている。
図1及び図2に示した形態では、縦管1は、上から順に、第1縦管部材21、第2縦管部材22、第3縦管部材23、第4縦管部材24、第5縦管部材25の、複数の縦管部材2が接続されて構成されている。下部の第5縦管部材25には、流出管14が接続されている。
図3、4は、縦管1を構成する前記複数の縦管部材2の例を示している。図3は、第1縦管部材21の断面図であり、内部に中心筒12及び螺旋案内路11の上部が設けられている。第1縦管部材21の中心筒12には、別体とされた短管状の中心筒12が上端部に接続されて上方へ延長される。図4は、第2縦管部材22の断面図であり、中心筒12の下部及び螺旋案内路11が設けられている。
縦管部材2は、上端開口部に接続受け口201が設けられている。接続受け口201は、円筒状の内周面を有する。接続受け口201の内周面の上部には、環状の止水部材202が備えられている。また、接続受け口201の内周面には、内周側に僅かに突出する段部203が形成されている。
互いに接続される上下の縦管部材2、例えば、図3に示す第1縦管部材21と図4に示す第2縦管部材22とは、下側に位置する第2縦管部材22の接続受け口201に、上側に位置する第1縦管部材21の下端部(挿し口)が嵌め込まれて接続される。上側の第1縦管部材21は、下端縁が、下側の第2縦管部材22の接続受け口201の内周側の段部203に当接する。第1縦管部材21の外周面には、第2縦管部材22の止水部材202が密着し、止水性が確保される。また、これにより、下側の第2縦管部材22に対する上側の第1縦管部材21の相対位置が確定し、縦管1の一部を構成するものとなる。
(縦管の施工方法)
次に、実施形態に係る縦管1の施工方法について図面を参照しつつ説明する。
本施工方法は、大きくは次の各工程を含む構成とされている。すなわち、人孔41の上下方向に沿ってガイド51を設置する工程(準備工程)と、縦管部材2の外周面に複数の環状治具(6,7,8)を取り付ける工程(取付工程)と、縦管部材2をガイド51に沿って人孔41内に吊り降ろす工程(搬入工程)と、先に吊り降ろした縦管部材2に対して後から吊り降ろした縦管部材2を接続する工程(接続工程)と、縦管部材2を人孔41に固定する工程(固定工程)とを含む構成とされている。
流域下水道の幹線(下方下水道45)は地中の比較的深い位置に計画されることが多く、例えば、20〜25mの深さに計画される。このため、公共下水道の上方下水道44との接続点では、20m前後の高落差接合となる。図1に例示する形態では、人孔41は、概ね15〜20mの高さを有し、内径が2.60m(2600mm)で形成されている。
このような人孔41に対して、縦管1は、人孔41と略同等の高さを有する。また、例えば、縦管1は外径が2.288m(2288mm)とされ、内径が2.20m(2200m)とされている。この場合には、人孔41の内周面と縦管1の外周面との隙間は、160mm程度となる。
・準備工程(図5、図6参照)
図5は、縦管部材2を搬入前の人孔41を示す説明図であり、図6は、人孔41の横断面図である。
縦管1の施工開始時、人孔41の上部には、流入枡43が地上に開放された状態で設けられ、流入枡43の内部に作業スペースが確保されている。
縦管部材2の搬入作業等に先立って、人孔41の内壁にガイド51を設置する(準備工程)。ガイド51には、例えば、断面L字状の山型鋼(アングル)を用いることができる。すなわち、図6に示すように、山型鋼の一方の鋼片を人孔41の内壁に当接し、後施工アンカー等の緊結部材511で固定し、他方の鋼片を人孔41の内壁に突出させる。ガイド51の設置は、かかる山型鋼を複数本、人孔41の軸芯方向と平行に連続させて配設し、それぞれ複数箇所で固定することにより行う。これにより、人孔41の内壁に上下方向に沿って連続する1本のガイド51を設けることができる。
また、準備工程として、人孔41の内壁に沿って複数本の反力用線材52を上下方向に配設する。反力用線材52には、適宜のワイヤロープを用いることができる。図5に示すように、反力用線材52の下端を、後施工アンカーやボルト頭部がリング状に形成されたアイボルト等を用いて、人孔41の下部内壁に打付けて固定する。また、反力用線材52の上端を、流入枡43又は人孔41の内壁に固定する。ただし、反力用線材52の上端は、必ずしも固定する必要はなく、例えば人孔41の上方に設けられている手摺等にフック等を用いて係止させて設置してもよい。また、図6に示すように、これらの複数本の反力用線材52は、人孔41の内周面に略均等間隔で配設することが好ましい。
例示の形態では、人孔41の内壁に3本の反力用線材52を設置している。このように、反力用線材52は少なくとも3本、人孔41に設けられることが好ましい。4本以上のワイヤロープを、人孔41内に均等間隔で配設する構成であってもよい。なお、反力用線材52に張力を生じるように固定する必要はなく、図5に示すように、多少の緩みがあってもよい。
人孔41内には、あらかじめ流出管14を搬入し、下方下水道45側に仮置きしておく。また、縦管部材2が設置される人孔41の底部の表面を、平滑に整備しておくことが好ましい。
・取付工程
人孔41内に吊り降ろす縦管部材2には、複数の環状治具を取り付ける(取付工程)。環状治具には、支持具6、吊り受け具7、及び芯出し具8の少なくとも3種類が含まれる。
図7は、支持具6の上面図であり、図8は、吊り受け具7の上面図であり、図9は、芯出し具8の上面図である。なお、図7〜図9において、破線にて示される縦管部材2は、縦管部材2の内周面を示している。
図7に示す支持具6は、人孔41の内壁に対して縦管部材2を固定するための環状治具である。支持具6は、縦管部材2の外周面に取り付けられる開環状の帯状バンド61と、帯状バンド61の外周側に張り出した固定部62とを備えている。
帯状バンド61は、帯状のステンレススチール又はスチール等の金属製板材により形成されている。この帯状バンド61は、上面視で略半円形状に湾曲形成された一対の半バンドからなり、これらの半バンドをボルト・ナット63により相互に緊結して、縦管部材2を内側に抱持するように構成されている。
帯状バンド61は、この支持具6だけでなく、後述する吊り受け具7及び芯出し具8にも、ほぼ同様の構成(71,81)により備えられている。なお、帯状バンド61は、上面視で略円形の開環状の構成とされても、また湾曲形状の長バンドと短バンドとの組み合わせにより略環状をなす構成とされてもよい。
帯状バンド61に設けられる固定部62は、図7に示すように、台座部621と、台座部621に対して進退する構成の進退部622とを備えている。台座部621は、略矩形に折曲形成されたステンレススチール等の金属製板材が、帯状バンド61の外周面に接合されて突設されている。台座部621の内側には、ナットが内装されている。進退部622は、台座部621のナットに対してねじ込まれるボルト部と、ボルト部の頭部に一体に設けられた円盤部とを有する。
固定部62は、帯状バンド61の外周の複数箇所に均等間隔で配設されている。固定部62の個数は特に限定されないが、例示の形態では、固定部62は帯状バンド61の外周面の4箇所に均等間隔で配置されている。
これにより、支持具6は、帯状バンド61に突設された固定部62が、進退部622を回すことでその突出量を調整可能とされる。各進退部622を回して固定部62を伸張させて突っ張らせることにより、人孔41の内壁に圧設させ、縦管部材2を固定することができる。
図8に示す吊り受け具7は、縦管部材2を吊り下げるための吊りワイヤ54等の線材を連結する環状治具である。吊り受け具7は、略半円形状の一対の半バンドからなる帯状バンド71と、吊り片72とを有する。吊り片72は、半バンドの開放端部が折曲されて形成されている。吊り片72には、締めボルト73及びナットが締結される。吊り受け具7の2箇所に設けられる締めボルト73の軸部には、吊りワイヤ等が連結される。
例示の形態では、吊りワイヤを均等位置に配設する必要があることから、帯状バンド71を一対の半バンドから構成し、縦管部材2の外周面に略環状に取り付けて、縦管部材2の外周面の対向する位置に締めボルト73を配置する。これにより、縦管部材2を容易かつ安定的に吊り下げることが可能となる。
なお、吊り受け具7は、後述するように、縦管部材2の外周面において、接続受け口201の下部に、接続受け口201に係止させるように取り付けられる。このため、人孔41と縦管部材2との隙間寸法に加え、接続受け口201の厚み寸法を見込んで、吊り片72を突出させている。したがって、吊り片72には、十分な太さの締めボルト73を締結することができる。
図9に示す芯出し具8は、縦管部材2と人孔41との相対位置を規定する環状治具である。例示する芯出し具8は、縦管部材2の外周面に沿って固定される帯状バンド81と、帯状バンド81の外周に張り出した複数のスペーサ部82と一つのスライド部83とを備えている。
帯状バンド81は、略半円形状の一対の半バンドからなる。スペーサ部82は、帯状バンド81の外周全体に対して分散させて配設されている。各スペーサ部82は、帯状バンド81の外周面に接合された台座部821と、台座部821の外周側に添設された当接板822とを備える。台座部821及び当接板822は、前記支持具6に設けられた固定部62のように突出量を調整しうるものではなく、一定の突出量で帯状バンド81に設けられている。
例えば、台座部821は、I型断面又はH型断面の金属製部材からなり、帯状バンド81に溶接接合されている。当接板822は、円盤状のプレート材からなり、台座部821に溶接接合されている。当接板822の縁部は、外面側が面取りされている。
かかるスペーサ部82の突出量は、人孔41の内径と縦管部材2の外径との寸法差、すなわち、人孔41と縦管1と計画隙間寸法と、帯状バンド81の厚みを考慮して決定される。例えば、芯出し具8の帯状バンド81の外周面から人孔41の内壁までの隙間寸法が、147mmであるとき、これより僅かに小さい125mmの突出寸法によりスペーサ部82が形成される。
また、スペーサ部82は、芯出し具8に3個以上設けられることが好ましく、帯状バンド81の外周部のどちらか一方側に偏ることなく、分散させて配置される。例えば、帯状バンド81の外周180°の範囲内に、3個のスペーサ部82が偏って設けられないようにすることが好ましい。図9に示す芯出し具8の場合、一対の半バンドにスペーサ部82がそれぞれ2個ずつ設けられ、全体として4個のスペーサ部82が配置されている。複数のスペーサ部82は、帯状バンド81の外周部に互いに均等な間隔で配設されてもよいが、必ずしも均等な間隔で配設されなくともよい。
スライド部83は、帯状バンド81の一方の半バンドの外周面に突設されている。スライド部83は、人孔41の内壁に設けたガイド51の形状に対応し、ガイド51に沿って走行しうる形状に形成されている。図9に示す形態では、断面L字状の山型鋼のガイド51(図6参照)に対応させて、スライド部83は溝形状に形成されている。より具体的には、スライド部83は、帯状バンド81の外周面に2枚のスライド板材831が向き合わせて立設されている。2枚のスライド板材831は、互いの間に形成される溝が、軸芯方向と平行となるように配設される。これにより、溝形状のスライド部83が形成されている。各スライド板材831の背面と帯状バンド81の外面との間には、補強プレート832が接合されている。
スライド部83において、2枚のスライド板材831の相互間隔は、例えばガイド51の厚みが10mmであるのに対し、30mm程度の間隔とされている。すなわち、スライド部83は、ガイド51とスライド板材831との間に若干の余裕寸法をもって摺動しうるよう構成されている。これにより、縦管部材2をガイド51に沿わせつつ、容易かつ正確に人孔41内に吊り降ろすことが可能となる。
なお、芯出し具8におけるスライド部83の構成と、人孔41に設けるガイド51の構成は、上述の構成に限定されるものではない。例えば、溝型鋼(チャンネル)をガイド51に用いて、人孔41の内壁に2本のレールが突出するようにガイド51を設けてもよい。これに対し、芯出し具8のスライド部83を、2本のガイド51の間に係合する一つの突片として設けてもよく、これらの組み合わせはどのようであってもよい。
かかる構成の環状治具を、前記複数の縦管部材2の全てに対してそれぞれ取り付ける。
取付工程では、縦管部材2の上端寄りに支持具6を取り付け、縦管部材2の接続受け口201の下部に係止させて吊り受け具7を取り付け、縦管部材2の下端寄りに芯出し具8を取り付ける。縦管部材2の外周面には、帯状バンド61,71,81を開放し、一対の半バンドの開放端が互いに対向するように組み付けて、ボルト・ナット等により緊結して略環状に取り付ける(図2、図10参照)。
このとき、支持具6を、縦管部材2のできるだけ上端寄りに取り付けることが好ましい。これにより、縦管部材2を人孔41内に吊り降ろした際、当該縦管部材2の上方から支持具6の固定部62を操作しやすく、固定部62の突出量を容易に調整することができる。
また、縦管部材2の接続受け口201の段差に係止させて、吊り受け具7を取り付けることが好ましい。これにより、吊り受け具7を介して縦管部材2を吊り下げたとき、縦管部材2に固定された吊り受け具7は上端縁が接続受け口201に係止するので、安定的に支持されることとなる。また、人孔41内へは、縦管部材2を傾けることなく略垂直状態で管軸方向に沿って吊り降ろす。そのため、吊り受け具7を縦管部材2の上端寄りに取り付けることで、縦管部材2を縦吊りにして安定的に支持しつつ搬入することができる。
なお、最上部に接続される第1縦管部材21は、図3に示したように、接続受け口を有しない。そのため、あらかじめ第1縦管部材21の上端寄りの外周面に、吊り受け具7の係止段部211を形成している。係止段部211は、第1縦管部材21の外周面の一定の高さラインに、縦管部材2と同じFRP等の樹脂材料を積層又は接着することにより形成することができる。
また、芯出し具8を、縦管部材2の下端寄りに取り付けることが好ましい。これにより、人孔41内へ縦管部材2を吊り降ろす際、早期に、人孔41に対する縦管部材2の径方向の位置決めがなされて、スライド部83及びスペーサ部82を介して、スムーズに降下させることができる。
・搬入工程(図10、図11参照)
次に、縦管部材2に取り付けた吊り受け具7の各締めボルト73に、吊りワイヤ54を連結し、玉掛けする。次いで、環状治具(6,7,8)を取り付けた縦管部材2を、揚重機械により縦吊りにして、人孔41内へ吊り降ろす(搬入工程)。
図10は、搬入工程を示す説明図であり、図11は、搬入工程における縦管部材2に取り付けた芯出し具8と人孔41とを示す上面図である。
複数の縦管部材2のうち、まず始めに、第5縦管部材25に吊りワイヤ54を連結して吊り上げ、人孔41内へ吊り降ろす。第5縦管部材25の内部には、中心筒のない螺旋案内路11の下端部が設けられている。この第5縦管部材25の下端部には、流出管14に接続される流出口251が設けられている。
図10に示すように、吊り上げた第5縦管部材25を、人孔41の上端へ搬送し、第5縦管部材25に取り付けた芯出し具8を人孔41の内壁に摺接させながら吊り降ろす。このとき、芯出し具8のスライド部83を人孔41のガイド51に係合させ、人孔41に対する第5縦管部材25の吊り降ろし方向を規制する。また、芯出し具8の外周面の4方向に突出したスペーサ部82を、人孔41の内壁に摺接させ又は当たらない程度に沿わせながら、第5縦管部材25を吊り降ろす。これにより、人孔41に対する第5縦管部材25の径方向の位置決めがなされる。
図11に示すように、第5縦管部材25の外周面に取り付けた芯出し具8は、人孔41の内壁との間に一定の間隔を確保する。人孔41のガイド51と芯出し具8のスライド部83とは、余裕寸法をもって係合している。このため、第5縦管部材25を、ガイド51に沿って軸芯方向にスムーズに吊り降ろすことができる。また、ガイド51とスライド部83との間に余裕寸法が設けられていても、芯出し具8の4個のスペーサ部82が人孔41の内壁との間隔を一定に保持するので、芯ずれしたり傾いたりすることなく、第5縦管部材25を降下させることができる。したがって、芯出し具8を用いて縦管部材2を人孔41に挿入する、という単一作業だけで、縦管部材2と人孔41との芯出しを容易に行うことができる。
第5縦管部材25を人孔41の底部まで吊り降ろした後、玉掛けを外し、人孔41への固定作業を行う。すなわち、支持具6に備えられた各進退部622を回して固定部62を伸張させ、人孔41の内壁に突っ張らせる(図7参照)。これにより、固定部62を人孔41の内壁に圧設させ、第5縦管部材25を固定することができる。また、下方下水道45側に仮置きした流出管14を、第5縦管部材25の流出口251に接続する。流出管14の接続は、流出口251に接着剤等で接着した後、FRP等を積層することにより行う。
上記の第5縦管部材25の搬入工程と同様の手順に基づいて、第4縦管部材24を人孔41内へ吊り降ろす。その後、次に説明する作業架台を利用して、第5縦管部材25に第4縦管部材24を接続する。
・作業架台(図12〜図14参照)
前記縦管の施工方法に用いられる作業架台の実施形態について、図12〜図14を参照しつつ説明する。
図12〜図14は、実施形態に係る作業架台10を示し、図12は正面図、図13は平面図、図14は斜視図である。
作業架台10は、吊りワイヤが連結されて人孔41内を昇降するフレーム体110と、フレーム体110に支持された床版120とを備えて、複数の縦管部材2を相互に接続するのに用いられる。
フレーム体110は、溝型鋼、角型鋼、又はパイプ等の金属製棒材が組まれて形成されている。具体的に、フレーム体110は、上面視で略正三角形状に組まれた第1横桟111と、第1横桟111の端部に立設された支柱112と、支柱112の上端部間に架設されるとともに上面視で略正三角形状に組まれた第2横桟113とを備えている。さらに、フレーム体110は、支柱112の中間部に前記横桟111、113と平行に架設された第1補強桟114と、一方の支柱112の上端部と、他方の支柱112の下端部との間に斜めに架設された第2補強桟115(ブレース)とを備えている。
第2横桟113は、各角部の上面及び下面にプレート116が接合されている。すなわち、プレート116は、支柱112の上側の端部近傍にそれぞれ備えられている。各プレート116には、環状体130が立設されている。
上面側のプレート116の環状体130は、上向きに備えられ、吊りワイヤ54を連結して玉掛けするのに用いられる。また、下面側のプレート116の環状体130は、下向きに備えられ、例えばレバーホイスト等の牽引具に設けられたフック等を係止するのに用いられる。
図13に示すように、作業架台10の床版120は、円形の金属製プレート材からなり、縦管部材2の内径に対応する円盤状に形成されている。上記のとおり、縦管部材2の内径は2.20m(2200m)であるので、例示の形態では、床版120の直径もほぼ同等の寸法により形成されている。
床版120は、略正三角形状に組まれた第1横桟111の天面に設置されるとともに各支柱112の内側に配設され、第1横桟111に対して一体に接合されている。図14に示すように、床版120は、外周部が第1横桟111の外側に部分的にはみ出すような形で納められている。床版120の下面には、第1横桟111の長さ方向の中間部に直角に接続する支持桟117が接合され、床版120の第1横桟111からはみ出した部分を支持している。これにより、3本の支柱112は、床版120の周縁部に略均等間隔で配設されている。
床版120の中心部には、作業者が出入り可能な円形の開口部121が設けられている。開口部121には、この開口部121の孔径より大きい円盤状の蓋材122が嵌め合わせられている。蓋材122の下面には、開口部121の縁部に沿う係止リブ123が垂設されている。係止リブ123は、開口部121に対応する円形に連続的に配設された構成であっても、また、間欠的に配設された構成であってもよい。これにより、開口部121は、必要時に蓋材122を外して開放するものとされている。
なお、作業架台10は、人孔41内を昇降するフレーム体110と、フレーム体110に支持された床版120とを有し、フレーム体110の支柱112が床版120の周縁部に略均等間隔で配設され、各支柱112の近傍に環状体130が備えられた構成であれば、上記の形態に限定されない。例えば、フレーム体110は、上面視で矩形、多角形、又は円形に組まれた構成であってもよい。これに対して床版120も、円盤状であるに限らず、矩形状、多角形状等であってもよい。また、牽引具としてのレバーホイスト55が係止される環状体130は、支柱112の近傍に設けられていればよく、上記の形態に限定されない。フレーム体110の支柱112は、少なくとも3本設けられていることにより、後述するように、作業架台10から縦管部材2の上端部に下向き荷重を効果的に作用させることが可能となる。
・接続工程(図15、図16参照)
次に、上記のような作業架台10を利用して、第5縦管部材25に第4縦管部材24を接続する(接続工程)。
この接続工程では、後に吊り降ろした縦管部材2(第4縦管部材24)の上端部に、作業者を乗せた作業架台10を吊り降ろし、この作業架台10から当該縦管部材2(第4縦管部材24)に対して下向き荷重を作用させる。そして、後から吊り降ろした縦管部材2(第4縦管部材24)の下端部の挿し口を、先に吊り降ろした縦管部材2(第5縦管部材25)の上端部の接続受け口201に嵌入する。
図15は、接続工程を示す説明図であり、図16は、図15に示す縦管部材2の接続作業を拡大して示す説明図である。
第4縦管部材24を人孔41のガイド51に沿って吊り降ろすことで第4縦管部材24と人孔41との芯出しが行われ、かつ、第5縦管部材25と同一の軸芯上に第4縦管部材24が配置されて芯合わせがなされる。第4縦管部材24に取り付けた芯出し具8により、容易かつ適正に芯出し及び芯合わせを行うことができる。したがって、吊り降ろした第4縦管部材24は、人孔41に対する相対位置を調整する必要がなく、第4縦管部材24を搬入後、直ちに第5縦管部材25との接続作業に取りかかることができる。
図15に示すように、まず、作業架台10を、人孔41内の第4縦管部材24の上端部まで吊り降ろす。第5縦管部材25と第4縦管部材24とは、人孔41内に吊り降ろされて、相互に芯合わせされた状態ではあるが、接続された状態にはない。つまり、第5縦管部材25の上に第4縦管部材24を吊り降ろした段階では、完全に接続されたものではなく、仮設置されているに過ぎない。第4縦管部材24の下端部の挿し口を、止水部材202を備えた第5縦管部材25の接続受け口201に接続するには、大きな挿入抵抗を有する。このため、第4縦管部材24の上方から下向き荷重を均等にかける必要がある。
接続工程においては、人孔41の内壁に沿って配設した3本の反力用線材52と、作業架台10とを、3つのレバーホイスト55を介してそれぞれチェーンで連結する。図16に示すように、作業架台10の作業者は、レバーホイスト55のフック551を、作業架台10に下向きに備えられた環状体130に係止して連結する。また、レバーホイスト55のチェーンの一端を、作業架台10と略同等の高さ位置の反力用線材52に連結して固定する(連結部552)。かかる反力用線材52とチェーンとの連結部552は、作業者の手の届く高さ位置であってよい。
次いで、複数のレバーホイスト55を複数の作業者で同時に操作して、レバーホイスト55のチェーンを上方又は斜め上方に巻き上げる。この操作により、チェーンは、反力用線材52との連結部552と、レバーホイスト55との間で緊張されるとともに、作業架台10の方向へ引き寄せられる。これにより、作業架台10を、反力用線材52との連結部552に対して一定量だけ降下させることができる。
作業者は、作業架台10の降下量を確認しながら、レバーホイスト55の一斉操作を繰り返し、作業架台10の底部で第4縦管部材24の上端部を均等に押圧する。かかる作業により、第4縦管部材24に対して下向き荷重を作用させ、第5縦管部材25の接続受け口201に、第4縦管部材24の下端部を挿入する。接続受け口201の内周面の段部203(図4参照)に、挿し口が到達すると、第5縦管部材25と第4縦管部材24との接続が完了する。
なお、反力用線材52と作業架台10とは、レバーホイスト55を介したチェーンにより連結されるに限らず、連結材はチェーンのほかにワイヤやロープ等の索条体であってもよい。また、牽引具としてはレバーホイスト55に限られず、電動式や油圧式の牽引工具であってもよい。
接続工程においては、縦管部材2に対して下向き荷重を作用させる前に、作業架台10の蓋材122を外して、開口部(121)から、作業者が第4縦管部材24の内部に入り、第5縦管部材25と第4縦管部材24との螺旋案内路11の繋ぎ目を確認する作業を行うことができる。仮に、第5縦管部材25と第4縦管部材24とが芯ずれしていたり、螺旋案内路11の繋ぎ目がずれていたりした場合には、第4縦管部材24を吊り直し、前記搬入工程をやり直すことで対応することができる。
・固定工程
次に、第5縦管部材25に接続した第4縦管部材24を人孔41に固定する(固定工程)。固定作業は、作業架台10に乗った作業者により行うことができる。作業者は、作業架台10から、第4縦管部材24の上端部の支持具6を操作する。支持具6に備えられた固定部62をねじ回して伸張させて、人孔41の内壁に突っ張らせることで、固定部62を人孔41の内壁に圧設することができる。これにより、第4縦管部材24を人孔41の内壁に固定する。支持具6の固定部62は、支持具6の外周の複数箇所に均等に配設されているので、各固定部62を突っ張らせて固定することで、第4縦管部材24が人孔41の内壁に確実に固定されたものとなる。
接続工程および固定工程を終えた後、作業架台10をいったん吊り上げて、人孔41の内部から退避させる。次いで、第3縦管部材23を人孔41内に搬入する。その後、作業架台10を再度吊り降ろして、接続工程と固定工程とを行い、順次、各工程を繰り返す。最後の第1縦管部材21の固定作業が完了すれば、人孔41内に複数の縦管部材2からなる縦管1が形成される。
以上のように縦管1を設置した後、縦管部材2の内部に進入して、螺旋案内路11の接合作業を行う。また、中心筒12の上部を延長し、流入枡43に対して支持固定する。縦管1と人孔41との間隙にモルタル等の充填材を打設して、人孔41と縦管1とを一体化してもよい。以上により、縦管1の施工が完了する。
上記のように構成される縦管1の施工方法により、縦管部材2を効率よく円滑に吊り降ろし、同時に縦管部材2同士の芯合わせ作業と、縦管部材2の人孔41に対する芯出し作業とを容易かつ適正に行うことができる。また、縦管部材2の接続作業は、縦管部材2を吊り降ろした後、作業架台10を用いて確実かつ効率よく行うことができる。このとき、縦管部材2の接続状態を確認することができ、芯ずれ等の有無も把握することができる。したがって、従来の施工方法に比べて縦管1の施工精度が格段に高められ、信頼性の向上を図ることができる。