JP5981079B1 - 造形材料吐出ヘッドと造形方法および流路構造体と流路から造形材料を吐出するための加熱板 - Google Patents

造形材料吐出ヘッドと造形方法および流路構造体と流路から造形材料を吐出するための加熱板 Download PDF

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Abstract

板材などの非常に安価な材料で、しかも容易に作製することができる流路構造体を用い、光硬化性樹脂からなる造形材料でも、所定量の造形材料を所定の場所に吐出することができる造形材料吐出ヘッドを提供する。ほぼ同じ形状の断面が細長の貫通孔を有する板状体を複数枚重ねて、貫通孔の両端が閉塞されることにより、貫通孔の孔と垂直方向で、かつ、細長の長手方向に流路を形成すると共に、板状体の少なくとも1つの端部に流路と連通して吐出口が形成される流路構造体(1)と、貫通孔の一端側である流路の一面を閉塞する薄板(31)と、その反対側に設けられ、流路内に熱作用を及ぼす加熱板(4)と、貫通孔の他端側である流路の他面に設けられる閉塞板(7)と、吐出口の近傍に設けられ、流路の方向に沿って光を照射するLED(8)と、を具備している。

Description

本発明は、3次元プリンタで立体造形物を製造する場合などに、造形材料を吐出する造形材料吐出ヘッドと3次元造形用の造形方法、およびそれに用いられる流路構造体と流路から造形材料を吐出するための加熱板に関する。
近年、コンピュータを利用して3次元プリンタにより立体造形物を製造することが盛んに行われている。このような3次元プリンタは、断面形状の集合体として立体モデルが表現される。そのため、3次元プリンタは、造形材料を吐出するノズルが3次元で移動されながら、または造形物側のテーブルが移動されながら、所定の場所に造形材料が吐出されることにより造形物が形成される。このような造形物を形成する材料の一例として、例えば熱可塑性樹脂や融点の低い金属のように、温度を上昇させて融解状態にする材料が挙げられる。また、光硬化性樹脂(紫外線硬化性樹脂)に光を当てて選択的に硬化させる光造形法や、光硬化性樹脂や熱可塑性樹脂、ワックスなどをインクジェットノズルから吐出することで積層造形するインクジェット方式などが知られている。
このような造形材料を吐出する装置としては、例えば図10に示されるような構造のものが知られている(例えば非特許文献1参照)。すなわち、図10において、ヒータブロック63の一端側にノズル61がねじ込まれ、他端部側にバレル62がねじまれ、バレル62にワイヤ状または棒状の造形材料が挿入される。そして、バレル62により造形材料が一定の割合で送り込まれ、ヒータブロック63の熱により造形材料が加熱されて融解し、ノズル61の先端部の吐出口61aから融解した造形材料が一定量ずつ吐出される。この吐出口61aの位置が3次元の所望の図形を描くようにコンピュータで制御されてxyz方向に相対移動する。これにより、融解した造形材料が吐出されることにより、所望の立体形状の造形物が作製される。このヒータブロック63の周囲には、図示しないヒータが設けられており、造形材料が融解するようにヒータブロック63が所定の温度に上昇されている。
一方、2次元画像を形成するのに主として用いられるインクジェット方式では、複数のノズルからインク滴(液滴)が吐出されて所定の記録媒体上に画像形成が行われる。この記録ヘッドとしては、アクチュエータによってノズルに連通する圧力室に例えばピエゾ素子などの圧電素子により圧力変動を発生させ、ノズル開口部からインク滴が吐出される。また、ノズルの底面にヒータ(発熱体)が配置され、そのヒータによる極部加熱により発泡させ、その気泡が合体して沸騰することにより吐出されるサーマルインクジェットの方式も知られている(非特許文献2の7〜9頁、35頁参照)。
「3Dプリンタではじめるデジタルモノづくり」(門田和雄著、日刊工業新聞社、103頁) 「インクジェット」(日本画像学会編2008年9月10日発行)
前述のように、円筒状のノズル61やバレル62を作製してヒータブロック63に固定する構造では、材料費や製造コストが嵩むという問題がある。また、光硬化性樹脂のように、室温で液状の材料に対しては、ヒータブロックやバレルは必要ないが、円筒状のノズルでは、内部で樹脂が硬化した場合には、使用できなくなり、無駄が大きくなる。
さらに、造形材料を吐出するには、吐出ノズルと造形物とを相対的に移動しながら、連続的に、または間欠的に造形材料が吐出される。そのため、2次元のインクジェット方式のように、同一面で必要な複数の小面積に並列的造形材料を吐出することができない。一方、前述のインクジェット方式を造形材料の吐出ヘッドに使用しようとしても、インクジェット方式は、ピエゾ素子の圧電効果を利用したもので、その体積変化量は非常に小さい。そのため、用紙に文字や画像を2次元的に印刷する程度の量であればよいが、造形物を作製するための大量の造形材料を一度に吐出させることはできない。結果的に、小さい造形物なら作製され得るが、大きな造形物を作製するには不向きである。すなわち、3次元造形物を作製するには、時間がかかって、現実的ではない。
また、ヒータを配置するサーマル方式でも、液体ではない流動体のような粘度の大きい造形材料は、沸騰させられない。すなわち、粘度の大きい造形材料には適用することができないという問題がある。そのため、前述のように、ノズルから連続的に造形材料を吐出させる方式が一般的に用いられている。
本発明は、このような問題を解決するためになされたもので、光硬化性樹脂のように、液体ではない流動物で、粘度の大きい材料でも、所定量の造形材料を所定の場所に吐出することができ、吐出口または造形テーブルのいずれかをスキャンしながら短時間で造形物を作製することができる造形材料吐出ヘッドを提供することを目的とする。
本発明の他の目的は、ネジの切られた円筒状の高価なノズルなどを用いることなく、板材などの非常に安価な材料で、しかも簡単な構造で安価に形成され得る流路構造体を提供することにある。
本発明のさらに他の目的は、造形材料を所望の複数の吐出口から同時に熱作用により吐出することができる加熱板を提供することにある。
本発明のさらに他の目的は、造形材料を流動させる流路に熱的作用により所望の流路のみから造形材料を吐出することにより造形物を作製する立体造形物の造形方法を提供することにある。
本発明の立体造形用の造形材料吐出ヘッドは、細長の貫通孔を有する板状体が少なくとも前記貫通孔が一致するように、少なくとも2枚重ね合された流路板、および前記流路板の両面で前記貫通孔の両端を閉塞する閉塞板を有し、前記流路板を構成する少なくとも1枚の板状体に前記貫通孔と連通して、かつ、前記板状体を貫通しない凹みにより、前記貫通孔の幅より狭く端部に達する吐出口が形成され、前記貫通孔を造形材料の流路として前記吐出口より造形材料を吐出する流路構造体と、前記貫通孔の一端側の前記閉塞板が薄板からなり、前記薄板の前記流路と反対側に設けられ、前記流路内に熱作用を及ぼす加熱板と、前記吐出口の近傍に設けられ、前記流路の方向に沿って光を照射する発光素子と、を具備している。
本発明の流路構造体は、細長の貫通孔を有する板状体が少なくとも前記貫通孔が一致するように、少なくとも2枚重ね合された流路板と、前記流路板の両面で前記貫通孔を閉塞する閉塞板とを有し、前記流路板を構成する少なくとも1枚の板状体に前記貫通孔と連通して、かつ、前記板状体を貫通しない凹みにより、前記貫通孔の幅より狭く端部に達する吐出口が形成され、前記貫通孔を造形材料の流路として前記吐出口より造形材料を吐出する構造になっている。
前記板状体の貫通孔が複数個並列して形成されることにより複数個の並列した流路が形成され、前記加熱板が、前記複数個の並列した流路をカバーするように設けられる絶縁基板と、該絶縁基板上に形成されると共に、前記複数の流路のそれぞれに対応して形成される発熱抵抗体と、該発熱抵抗体のそれぞれの両端部に個別に電圧を印加し得るように形成される一対の電極と、を具備している。
本発明の立体造形物の造形方法は、細長の貫通孔を有する板状体が少なくとも前記貫通孔が一致するように、少なくとも2枚重ね合された流路板、および前記流路板の両面で前記貫通孔の両端を閉塞する閉塞板を有し、前記流路板を構成する少なくとも1枚の板状体に前記貫通孔と連通して、かつ、前記板状体を貫通しない凹みにより、前記貫通孔の幅より狭く端部に達する吐出口が形成され、前記貫通孔を造形材料の流路として前記吐出口より造形材料を吐出する流路構造体を形成し、前記流路の一面を薄板で形成し、該薄板の前記流路と反対側に加熱板を配置し、該加熱板により特定の流路のみに瞬間的な熱作用を及ぼすことにより特定の流路の造形材料を吐出させながら造形することを含むことを特徴とする。
本発明の吐出ヘッドによれば、造形材料の流路の一側壁に薄板を介して流路に熱作用をする加熱板が設けられているので、流路を複数個有すれば、複数の小面積(画素)に同時に造形材料を吐出することができる。しかも、熱作用による造形材料の膨張または薄板の変形により造形材料を吐出させるため、インクジェットなどによる吐出よりもはるかに多くの造形材料を一度に吐出することができる。その結果、光硬化性樹脂のように粘度の大きい液状の造形材料でも、複数の小面積(画素)に多くの造形材料を吐出しながら光により硬化されるので、大形の造形物でも短時間で形成することができる。
また、板状体からなる流路構造体によれば、安い板材料が用いられ、しかも、流路が非常に簡単に形成されるため、コストダウンが図られる。しかも、流路は貫通孔により形成され、吐出口は板状体への凹みにより形成されるので、製造が非常に容易である。この流路構造体は、光硬化性樹脂に限定されず、通常の加熱融解型の吐出ヘッドであっても、利用できる。すなわち、この流路構造体の一側壁に流路内の造形材料を加熱する加熱板が設けられ、別の側壁に薄板を介した吐出駆動用の加熱板が設けられることにより、前述の光硬化性樹脂の場合と同様に使用し得る。
前記加熱板が、前記複数個の並列した流路をカバーするように設けられる絶縁基板と、該絶縁基板上に形成されると共に、前記複数の流路のそれぞれに対応して形成される発熱抵抗体と、該発熱抵抗体のそれぞれの両端部に個別に電圧を印加し得るように一対の電極が形成されることにより、流路ごとに加熱して各流路に個別に熱作用を及ぼすことができるので、流路が複数個形成されていれば、複数個の流路が独立して制御され得る。
本発明の立体造形物の造形方法によれば、光硬化性樹脂を造形材料として使用する場合でも、流路を複数個形成しておくことにより、複数の所望の場所に一度に造形材料を吐出することができ、短時間で大形の造形物を作製することができる。
本発明の一実施形態の造形材料吐出ヘッドを説明する側面図である。 図1Aの吐出ヘッドの吐出面側の平面図である。 図1Aの分解説明図である。 図1Aの流路構造体の1枚の板状体を説明する平面図の一例である。 図1Aの加熱板による熱作用の一例である熱歪み発生部材の一例を説明する平面図である。 図4Aの変形例を示す図10Aと同様の図である。 図4Aの変形例を示す図10Aと同様の図である。 図1Aの加熱板の一例を説明するカバー基板を除いた平面図である。 図5Aの層構造を説明する側面の説明図である。 図1Aの加熱板の他の例を説明するカバー基板を除いた平面図である。 図1Aに示される吐出ヘッドの流路構造体の他の構造例の造形材料の導入口側(取付板側)から見た上面側の説明図である。 図6Aの矢視Bの平面図である。 図6Bの矢視Cの平面図である。 1個の流路に2個の吐出口が形成された他の例を説明する図である。 流路構造体が2個図示しない仕切板を介して重ねられたときの取付板側から見た図6Aと同様の上面側の説明図である。 図7Aの吐出口側から見た図6Cと同様の平面図である。 図1Aの吐出ヘッドを2個接合して吐出口が2列に形成される吐出ヘッドの例を示す図1Aと同様の図である。 図8Aの供給口側(取付板側)から見た平面図である。 図8Aの吐出口側から見た平面図である。 吐出口部分の構造の変形例を示す図である。 図9Aの他の変形例を示す図である。 図9Aのさらに他の変形例を示す図である。 従来の造形材料の吐出用ノズルの一例を示す断面説明図である。
つぎに、図面を参照しながら本発明の造形材料吐出ヘッドおよびそれに用いる流路構造体と加熱板が説明される。図1A〜1Bに、本発明の一実施形態による造形材料吐出ヘッドの側面図および吐出口側から見た上面図がそれぞれ示され、図2にその分解図が示されている。本実施形態の造形材料吐出ヘッドは、図2にその分解図が示されるように、ほぼ同じ形状の断面が細長の貫通孔を有する板状体10(10a、10b)を複数枚重ねて、貫通孔の両端が閉塞されることにより、貫通孔の貫通方向と垂直方向で、かつ、細長の長手方向に流路12を形成すると共に、板状体10の少なくとも1つの端部に流路12と連通して吐出口13が形成される流路構造1体と、貫通孔の一端側である流路12の一面を閉塞する薄板31と、薄板31の流路12と反対側に設けられ、流路12内に熱作用を及ぼす加熱板4と、貫通孔の他端側である流路12の他面に設けられる閉塞板7と、吐出口13の近傍に設けられ、流路12の方向に沿って光を照射する発光素子(LED)8と、を具備している。LED8は、吐出された光硬化性樹脂のような造形材料を固化させるのに用いられる。
光硬化性樹脂は、例えば300〜400nm程度の紫外線硬化性樹脂や400nm以上の可視光で硬化する樹脂などの光により硬化する樹脂である。前述のLED8は、この光硬化性樹脂を硬化させ得る波長の光であればよい。
流路構造体1は、一実施形態では、細長の貫通孔を有する板状体10(10a、10b)が少なくとも貫通孔が一致するように、少なくとも2枚重ね合された流路板1aと、流路板1aの両面で貫通孔を閉塞する閉塞板31、7とを有し、流路板1aを構成する少なくとも1枚の板状体10に貫通孔と連通して貫通孔の幅より狭く端部に達する吐出口13が形成され、貫通孔を造形材料の流路12として吐出口13より造形材料を吐出する構造になっている。閉塞板は、閉塞のために設けられる閉塞板7とか薄板31に限らず、例えば造形材料を加熱するための加熱板の絶縁基板が直接貫通孔を閉塞するように設けられるものでもよい。
図1A〜1Bに示される例では、2枚の板状体10a、10b(図3に示されるように、共通して指す場合10)が重ね合されて接合されている。各板状体10には、図3に示されるように、流路12が貫通孔として形成され、造形材料が流動するように形成されている。さらに、その流路12と連結して、それぞれの一端部に吐出口13が形成されている。この吐出口13は、板状体10を貫通しないで、厚さの半分程度の深さに凹みとして形成されていてもよい。この凹みは、ハーフエッチングまたはスタンピング、または機械加工などにより形成される。この凹みの形状(吐出口13の断面形状)は、図1Bに示されるような矩形形状には限定されず、円形やその他の形状でも構わない。この吐出口13の数、すなわち凹みの数は、用途に応じて必要な個数に形成される。また、この凹みの形成の際に、吐出ヘッドの長さに合せた位置に同様の凹みによる溝15(図3参照)が形成され、直角方向に曲げやすくされている。この貫通孔の折り曲げ部の近傍は材料供給口14になる。この材料供給口14は、取付板5に形成される開口51(図6A、図7A参照)と連通するように形成されている。図2に示されるように、曲げられた部分は取付板5に固定する取付部16となる。17は流路構造体1を取付板5にネジで固定する際の孔(貫通孔)である。
板状体10は、熱伝導に優れ、貫通孔17や凹みなどの加工が容易な材料により形成される。その観点からは、薄い金属板が好ましい。一例として、図3に示される板状体10は、厚さが0.6mm程度のステンレス板であり、吐出口13の先端部から折り曲げ用の溝15までの寸法Aが13mm、溝15から、吐出口13と反対側の端部までの寸法Bが7.5mmで、幅Cが10mmである。しかし、この寸法は一例であり、この例に限定されない。また、流路12の幅が2mm、吐出口13の幅は0.4mm〜0.8mm、貫通孔17の直径はφ3.2mmが例示される。この程度の厚さのステンレス板であれば、打抜き加工により前述の流路12や貫通孔17およびその外形形状は容易に形成される。外形形状は、用途により種々の大きさに形成される。また、吐出口13付近の形状も用途により自由に形成される。このような板状体10での形成により、流路12は板状体10への貫通孔により形成され、吐出口13は、板状体10の半分ぐらいの深さに形成された凹み部により形成されているので、材料費も、加工費も非常に安価になる。さらに、流路12が貫通孔と、その両端を閉塞する閉塞板7、31(薄板)で形成される。この閉塞板7は、薄い板材またはフィルムが好ましい。
さらに、板厚も前述の例示に限定されるものではなく、用途に応じて種々の厚さのものが使用され得る。さらに板状体10の重ね合せの枚数も2枚に限定されるものではなく、さらに多くすることもできる。重ね合せる枚数を多くすれば、同じ流路12と連結する数多くの吐出口13が形成され得る。吐出量を種々変更し得る造形材料吐出ヘッドが得られる。すなわち、流路構造体1の複数枚の板状体10の少なくとも1枚に貫通孔12と連通する凹みが形成されることにより吐出口13が形成される。なお、各板状体10は、図3に示されるように形成され、外形や流路12の部分は各板状体10で共通している。しかし、吐出口13とする凹みは、その形状、数量などが異なる。例えば後述される図8Cに示される吐出口13cが形成されるための板状体10は、2枚の板状体10で、その凹みが対称になるように形成されている。また、このように2枚の板状体10を重ね合せて吐出口13が形成される場合、同じ大きさの凹みや同じ形状の凹みであることには限定されない。0.4mm幅の凹みと0.2mm幅の凹みとが重ね合されてもよいし、矩形状と円形状の凹みが向かい合されてもよい。
吐出口13は、例えばハーフエッチングにより形成される。すなわち、吐出口13が形成される部分以外の場所にレジストマスクが形成され、エッチング液に浸漬されたり、エッチング液をスプレーで吹き付けるスプレーエッチングをしたりすることにより形成される。また、電解エッチングをすることもできる。エッチングの深さはエッチング液に晒される時間に応じて制御される。あまり深くエッチングされると、機械的強度が低下するので、板状体10の板厚の半分程度以下とすることが好ましい。板状体10が薄くて、大きな吐出口13を形成できない場合には、例えば、図8Cの吐出口13cに示されるように、2枚の板状体10の向かい合う位置に同様の凹みを形成しておくことにより(前述のように凹みの位置は2枚の板状体10で異なる)、板状体10が重ね合された際に両方の凹みを合せた深さの吐出口13cが形成される。また、この凹みを金型などによるスタンピングにより形成する場合、金型の形状などにより球状や円筒状の凹みが形成され得る。このようなスタンピングで行う場合、打抜き加工(外形や貫通孔17)、溝15の加工、もしくは折り曲げと同時に、または連続的に凹みが形成される。
このように貫通孔(流路12)や凹み(吐出口13)が形成された、例えば2枚の板状体10が、例えば耐熱性接着剤などにより2枚重ね合せて接合される。そして、溝15(図3参照)で、それぞれ反対側に折り曲げられ、折り曲げられた取付部16が取付板5に固定されることにより、図2に示されるように、流路構造体1が形成される。この溝15は形成されなくても折り曲げや切断は可能である。この重ね合せの際に、前述の貫通孔17や外形の凸部などが位置合せとして用いられる。なお、板状体10が3枚のときは、真ん中の板状体10は切断される。
この流路構造体1への薄板31や閉塞板7の接合は、例えば、耐熱性接着剤により接着されてもよいが、取り外しが容易な接着剤が好ましい。あるいはネジ止めなどにより接合されてもよい。これらが取り外し自在に接合されることにより、造形材料が流路12内で固まっても、分解清掃がなされ得る。その結果、メンテナンスが容易になる。
図3に示されるように、流路12は、その流路12の延びる方向と直角方向に複数個並列して形成され得る。そして、複数個の流路12のそれぞれの第1側壁部が、薄板31で形成され、その薄板31を介して加熱板4が設けられると共に、加熱板4が複数個の流路12のうち、特定の流路12のみを加熱するように形成され、加熱板4の瞬間的加熱(加熱板4での加熱は数msであるが、造形材料への熱作用は熱伝導を考慮すると数十msになる)により特定の流路12のみから造形材料を吐出するように形成されている。
流路構造体1の他面側には、閉塞板7が薄板31と同様に流路12を構成する貫通孔の開口部を閉塞するように接合されている。この閉塞板7により第2側壁部122(図2参照)が形成されている。流路構造体1の分解清掃を容易にするため、分解が容易な状態で接合されることが好ましい。この閉塞板7としては、熱伝導率の小さい材料が好ましいが、熱膨張率差に基づく反りが防止される点から、加熱板4の絶縁基板41と同じ熱膨張率を有する材料もしくは絶縁基板41と同じ材料が用いられることが好ましい。
図1Aに示されるように、この流路構造体1の一面に薄板31が流路12の第1側壁面121(図2参照)として設けられている。そして、さらに流路12を局部的に加熱し得る加熱板4が熱歪み発生部材32を介して設けられている。加熱板4の瞬間的加熱により薄板31の変形で流路12内の造形材料を吐出し得る。流路構造体1の他面には閉塞板7が設けられ、流路12の第2側面(図3参照)を構成している。なお、流路12の第3側壁面は流路板1aの貫通孔の側壁(板状体10の板厚部)で形成され、流路12が完全に密閉路になっている。この吐出ヘッドは、造形材料を加熱する必要のない構造に形成されているが、この閉塞板7は、流路構造体1の流路12内の造形材料を加熱する必要がある場合には、造形材料加熱用の加熱板が設けられてもよい。
流路構造体1の一面側に設けられる加熱板4は、流路12が複数個ある場合、流路12ごとに外部からの信号により選択的パルス電流の印加などにより加熱することができるように形成されている。この加熱板4により特定の流路12にパルス電圧が印加されると、その流路12が薄板31を介して加熱され、その流路12の内部の造形材料が膨張する。その結果、その流路12内の造形材料が押し出されてその流路12の吐出口13から造形材料が吐出される。すなわち、この例では、図1Aに示される熱歪み発生部材32(3)は不要である。換言すると、加熱板4により特定の流路12内の造形材料の体積増加または薄板31の熱膨張による流路12の体積変化に基づき流路12内の造形材料を吐出することができる。
この場合、薄板31が熱膨張率の大きい材料で形成されていれば、その流路に沿って膨張し、後述される熱歪み発生部材の場合と同様の変化で造形材料が吐出され得る。また、薄板31の熱膨張率が大きくなくても、直接造形材料の温度が上昇すると、材料その物の体積が増大する。その結果、流路12内の造形材料は吐出口13の方に押し出され、吐出口13から造形材料が吐出される。この場合も加熱板4が瞬間的に発熱させられることにより、膨張が瞬時に起こり、発熱作用が解除されると温度が瞬時に低下し、体積は元に戻る。その結果、いずれの方法によっても、瞬時に造形材料が吐出され、その後は吐出が止まる。なお、造形材料は常に造形材料供給口側から供給され、流路12内の流動状態の造形材料は、流路12内に充満した状態を維持している。この造形材料は、光硬化性樹脂の種類により粘度は異なるが、いずれの場合も流動物であるため、吐出口13を下側にセッティングすることにより、自重で流路12内に充満される。もし、自重により落下しない場合は、加圧することにより、常に流路12内に充満させることができる。
一方、図1Aに示されるように、薄板31と加熱板4との間の薄板31に熱歪み発生部材3(金属片または非金属片からなるピース32;図4A参照)が貼り付けられてもよい。この熱歪み発生部材3は、例えば薄板31と熱膨張率の異なる材料で、各流路12に沿ったピース32(図4A参照)などで形成される。このピース32が加熱されると、薄板31とピース32との熱膨張率の差に基づき薄板31に反りの変形が生じる。この場合、ピース32の熱膨張率が薄板31よりも大きいと、流路12内に食い込むように薄板31が変形するので、ピース32の幅は流路の幅より狭いことが好ましい。逆にピース32の方が薄板31よりも熱膨張率が小さいと、薄板31が外側に引っ張られるように変形が生じる。従って、この場合はピース32の幅は制限されない。薄板31が内側に食い込むように変形すれば、それに伴い流路12内の造形材料は押し出される。また、外側に引っ張られても、加熱板4による加熱は瞬間的なパルス加熱であるため、直ちに加熱は止まり、薄板31の変形は元に戻る。そのため、流路12内の体積は、一旦大きくなりその後元に戻るため、元に戻る際に流路12内の造形材料は押し出されて吐出口13から吐出される。従って、薄板31とピース32との間の熱膨張率は、差があればよく、どちらが大きいという必要はない。この熱歪み発生部材3は、後に詳述されるように、薄板31との間で熱膨張率の差を生じさせなくても、直接バイメタルが貼り付けられてもよい。その詳細例が図4A〜4Cおよび図5A〜5Cを参照して説明される。
図4Aには、ピース32が薄板31に貼り付けられる構造例が示されている。図4Aには、また、加熱板4のヒータ42がその位置を示すため二点鎖線で示されている。この薄板31は、前述の図3に示される流路構造体1の複数の流路12のそれぞれの一面を被覆するように貼り付けられている。すなわち、1枚の薄板31が全ての流路12の一面を閉塞するように形成されていることが製造上簡単で好ましい。この薄板31は、例えば0.6mm程度の厚さの、アルミニウム合金板などからなる金属板でもよいし、変形しやすい多孔質セラミックスでもよいし、また、ポリエチレン、ポリテトラフルオロエチレンなどの耐熱性絶縁フィルムでもよい。耐熱性があり、変形しやすく、熱を伝達しやすい材料であることが好ましい。
この薄板31は、目的に応じて、熱膨張率が大きく変形しやすい材料、膨張率が小さくて変形しやすい材料など、種々の材料が用いられる。前者の例としては、例えば真鍮などの銅合金、アルミニウム合金(ジュラルミン)などで、熱膨張率は20〜30ppm/℃である。後者の例としては、Fe合金(Fe-Ni-Crの比率が異なる)、ステンレス鋼などの金属板で、熱膨張係数(線膨張率)は6ppm前後になる。非金属板でも構わない。この薄板31は、目的に応じて、0.05〜0.6mm厚程度のいずれかの厚さのものが用いられ得る。例えば熱歪み発生部材3としてのピース32と共に、加熱により変形し得るように形成される場合には、薄板31にピース32が貼り合され、加熱されることにより、薄板31とピース32との熱膨張率の差に基づき薄板31を変形させ、それに伴って流路12内の造形材料を吐出させることができる。この場合には、薄板31は第1ピース32との熱膨張率の差が大きく、かつ、変形しやすい材料が選ばれる。例えば、薄板31として、前述のアルミニウム合金板(線膨張率:23ppm/℃)または銅合金(線膨張率:約20ppm/℃)が用いられる場合、ピース32として、0.1mm〜0.2mm厚程度の42Fe-Ni合金板(線膨張率:6ppm/℃)が用いられ得る。ここで、流路構造体1を構成する板状体10は鉄合金が用いられている。
なお、この薄板31の熱膨張率を利用しないで、例えば後述されるバイメタルを熱歪み発生部材3として薄板31に貼り付けることもできる。この場合、薄板31の熱膨張率は小さい方が好ましい。また、熱歪み発生部材3を設けないで、直接流路12内の造形材料を加熱し膨張させるか、または薄板31自身を熱膨張させて吐出することもできる。この場合には、この薄板31の熱膨張率は大きく変形しやすいものが好ましく、絶縁フィルムなどが用いられ得る。なお、薄板31やピース32として、金属の例が挙げられたが、金属に限らず、例えば半導体セラミックパッケージなどに用いられるセラミックスや、圧電材料などの無機物質板、石英ガラス(線膨張率:0.5ppm/℃)などが用いられてもよい。
例えば流路12が幅1mm×深さ1mm×長さ5mm=5μl(マイクロリットル)=5000nl(ナノリットル)の場合に、吐出量(吐出口13の大きさで定まる)が0.3mm×0.3mm×0.05mm厚=0.0045mm3=4.5nl(ナノリットル)であり、ABSの体積膨張率は1℃当たり(6〜13)×10-5であるので、10×10-5として10℃で0.1%膨張する(流路12内の10%が100℃上がったとすると平均10℃の上昇)。従って、5000nl×0.1%=5nlで、上記吐出量より多くなり、少量の吐出の場合には、造形材料の熱膨張だけで充分に吐出させることができる。
また、熱歪み発生部材3を構成するピース32は、各流路12に沿って形成されるが、図4Aに示される例では、その根元側(吐出口13と反対側)が連結部32aにより連結されて、櫛歯状に形成されている。この根元側はヒータ42の位置から離れているため、温度も殆ど上昇しない。そのため、薄板31との熱膨張率差に基づく影響は殆ど生じない。一方、各流路12に沿ってピース32を1個ずつ貼り付けるのは手間がかかるが、連結部32aがあると、各流路12に合せてピース32を位置合せするのが非常に容易になる。従って、連結部32aの位置合せをしてピース32が貼り付けられ得る。図4Aでは、流路構造体1の表面に薄板31が貼り付けられ、その表面にピース32が貼り付けられた状態が示されており、この上に設けられる加熱板4のヒータ42の位置が二点鎖線で示されている。すなわち、ピース32の先端部側が加熱されるようになっている。その結果、連結部32aの方は、加熱板4による温度上昇を殆どもたらさない。
図4Bに示される例は、図4Aと同様の図であるが、ピース32の根元側が連結部32aで連結されるだけではなく、各ピース32の先端部側にハット部32bが形成されている。このハット部32bは連結されないで各流路12に沿ったピース32毎に独立して形成されている。このようなハット部32bが形成されることにより、ピース32と薄板31との接着力が向上し、ヒートサイクルに対しても剥離が生じにくくなる。すなわち、加熱板4のヒータ42の近傍では温度が上昇して熱膨張率差に基づく応力が発生する。そのため、剥離力が大きくなる。しかし、ハット部32bではそれ程温度は上昇しないので、熱歪みによる応力が働きにくい。その結果、応力のかかりやすいピース32の両端部が連結部32aとハット部32bとでしっかりと固定される。すなわち、ピース32の剥離力が抑制される。
図4Cは、熱歪み発生部材3の他の実施形態を示す図である。すなわち、この例は、2種類の材料の熱膨張率差に基づく変形をピース32と薄板31の熱膨張率の差を利用しないで、前述のピース32と第2のピース33とで形成されている。この場合、薄板31の熱膨張率は問題にしていないので、絶縁フィルムなど薄い有機フィルムが用いられ得る。この場合、ピース32と第2のピース33との熱膨張率の差に基づく変形が発生する。その変形により薄板31が押し込まれたり、引っ張られたりすることにより、造形材料が吐出される。この場合、連結部32aで連結されないで、独立したピース32でもよく、市販のバイメタルが用いられ得る。すなわち、熱歪み発生部材3が、熱膨張率の異なる少なくとも2種類の板材の接合により形成されるバイメタルからなり、そのバイメタルが流路12に沿って薄板31に接合されてもよい。この場合も、薄板31が外側に引っ張られるような第2ピース33またはバイメタルの貼り付けであれば、その幅に制限されないが、薄板31が流路12内に食い込む変形をする場合には、第2ピースまたはバイメタルの幅を流路12の幅より狭くすることが好ましい。また、この場合も、第2ピース33は金属片に限らず、非金属片でも構わない。なお、熱歪み発生部材3は、熱膨張率の異なる2種類の材料を貼り合せるだけではなく、2種類の熱膨張率の異なる材料に限定されるものではない。その間に中間の熱膨張率を有する第3の板材が介在されていてもよく、種々の変形をなし得る。
図5A〜5Bは、加熱板4の一例を説明する平面図および側面図である。この加熱板4は、図5Bに側面図が、図4Aに保護膜45を除去した状態の平面図がそれぞれ示される構造になっている。すなわち、絶縁基板41上に、発熱抵抗体からなるヒータ42が形成され、その両端部には第1導電端子(電極)43と第2導電端子(電極)44が形成されている。そして、この上面にガラスなどからなる保護膜45が設けられ、ヒータ42と第1および第2の導電端子43、44が保護されている。
絶縁基板41は、アルミナなどからなる熱伝導率の優れた絶縁性の基板が用いられる。形状および寸法は、目的とする造形物に応じて、吐出口13の数が多くなれば流路構造体1が大きくなり、加熱板4、すなわち絶縁基板41もそれに合せて大きくなる。なお、流路構造体1の1個に対して、加熱板4が複数個で形成されてもよい。そのため、目的に応じて必要な大きさの絶縁基板41が用いられるが、例えば、2個の流路12に対して、10mm角程度で、0.6mm厚程度のアルミナ基板が用いられる。外形も矩形状には限定されないで、必要とされる流路構造体1の形状に合せて形成される。従って、流路12が12本形成される場合には、10mm×60mm程度の大きさになる。外形も矩形状には限定されないで、必要とされる流路構造体1の形状に合せて形成される。この絶縁基板41の大きさとしては一般的には5mm角から35mm角程度の大きさに形成されるが、これに限らず、例えば10mm×220mmなどの大型のものでもよく、ラインヘッドの吐出口の数などに合せて長いものも形成され得る。さらに、この加熱板4を何個も並べることにより、絶縁基板41がラインヘッドなどの大きさに合せられてもよい。
ヒータ(発熱抵抗体)42は、たとえばAg、Pd、RuO2、Pt、金属酸化物、ガラスなどの粉末を適宜選択して混合することにより温度係数、抵抗値などが最適に調整される。この混合材料は、ペースト状にして塗布され、焼成される。それにより発熱抵抗体22が形成されている。焼成により形成される抵抗膜のシート抵抗は固形絶縁粉末の量によって変えられる。両者の比率により抵抗値や温度係数を変えられる。また、導体(第1および第2の導電端子43、44)として使用する材料としては、Agの割合を多くし、Pdを少なくした同様のペースト状にした材料が用いられる。そうすることにより、発熱抵抗体42と同様に、導体も印刷により形成され得る。端子接続の関係で使用温度により変る必要がある場合もある。Agが多い程抵抗値を低くすることができる。
この第1および第2の導電端子(電極)43、44は、前述の図1Aに示されるように、リード47が接続され、電源が接続されて発熱抵抗体42に通電される構造になっている。この電源は、パルス電圧が瞬間的に印加されるようになっている。
この図5Aに示される例では、第1導電端子43が複数の流路12に沿って設けられるヒータ42の各先端部を連結して共通電極として形成されている。そして第2導電端子44は、それぞれ個別端子として導出され、個々の流路12の単位で信号が印加され得る。なお、図5Aにおいて、45はヒータ42、導電端子43、44の表面を被覆して保護する保護膜の形成範囲である。このヒータ42に印加される電圧が増やされることにより、吐出量が多くなる。また、発熱抵抗体(ヒータ42)が2か所に形成され、加熱のタイミングがずらされることによっても吐出量が増加され得る。この例が次に説明される。
すなわち、図5Cに示されるように、ヒータ(発熱抵抗体)42が2個以上に分割され、それぞれの第1ヒータ42a、第2ヒータ42bに別々に独立して電圧が印加されてもよい。すなわち、図5Cにおいて、44aは第3導電端子、44bは第4導電端子であり、この例では、第1ヒータ42aと第2ヒータ42bとが直列に接続された部分に第4導電端子44bが接続されている。その結果、第1導電端子43と第3導電端子44aとの間に電圧が印加されれば、前述の図5Aに示される例と殆ど同じになる。しかし、第1導電端子43と第4導電端子44bとの間に電圧が印加されれば、第2のヒータ42bのみが加熱される。また、第3導電端子44aと第4導電端子44bとの間に電圧が印加されることにより、第1のヒータ42aのみが加熱される。この両者の電圧の印加を数ミリ秒〜数十ミリ秒の間隔をあけて連続的に電圧が印加され得る。このような信号電圧の印加により吐出量の種々の制御が行われ得る。
この加熱板4には、造形物の微小単位での造形材料の吐出の観点から、前述のように、パルス電圧が印加されることが好ましい。このパルス電圧の印加時間は、数m(ミリ)秒の非常に短い時間であるが、瞬間的にヒータ42の温度が上昇し、その温度がピース32に伝わり、ピース32と薄板31の間、またはピース32と第2のピース33との間で変形が生じる。薄板31の変形により、吐出口13から造形材料が吐出される。このパルス電圧の印加は、通常のサーマルプリンタなどの各画素の信号を印加するのと同様(例えば特開昭57-98373号公報)で、データはシリアルにシフトレジスタに入れられ、電圧の印加はパラレルアウトで必要箇所だけ通電することにより行われ得る。加熱量の制御は、このシフトレジスタとAND回路の間にラッチ回路を入れて、パルス印加時間を変化させ得る。
前述の図3に示されるように、流路12が複数列に形成されることにより、図1Bに示されるように、吐出口13がライン状に並列したライン型吐出ヘッドが得られる。しかし、この吐出口13は、1個の流路12に1個とは限らない。すなわち、図6Aには、吐出口と反対側の造形材料を導入する取付板5側から見た図が、図6Bには、図6Aの矢視Bから見た図が、図6Cには、図6Bの矢視C、すなわち吐出口13側から見た図(層構造は示されないで簡略化した図)、がそれぞれ示されるように、小さい吐出口13aと大きい吐出口13bが1個の流路12に形成され、大きい吐出口13bと小さい吐出口13aを交互にライン状に並列した吐出ヘッドが得られる。この吐出口13の大きさ、形状はこの例に限定されない。任意の形状の組合せで形成される。なお、取付板5には、前述のように、バレルは取り付けられず、開口51が流路12の造形材料供給口14(図3参照)に連通するように形成されている。この吐出口13a、13bは、両方同時に吐出する場合もあるし、いずれか一方から吐出するが、他方は閉塞される場合もある。この吐出口13の分岐は、図6Dに示されるように、同じ大きさの吐出口13e、13fが流路12の両側端部に形成される構造でもよい。
このように吐出口13が形成されることにより、吐出口13のピッチが狭くなり、より一層きめ細かい微細な造形物が作製され得る。なお、この吐出口13e、13fは一列に形成されないで2列以上に形成されてもよい。流路構造体1の板状体10の積層枚数を増やすことにより、1つの流路12から一列ではない多数の吐出口13が形成され得る。このように、流路12の1個に対して複数個の吐出口13が接続して形成されることにより、多彩な造形物が得られる。また、このような微細化は、吐出ヘッドをx方向にも半ピッチ程度動かす、いわゆるシャトル方式を採用することもできる。造形物テーブルはy方向やz方向にも移動することができる。そうすることにより、1回のy方向の移動で2層分積層することができるし、同様に3層以上も可能になり得る。
図7A〜7Bは、図1Aに示される流路構造体1が、図示しない閉塞板を介して2個重ねられ、両側に図示しない前述の薄板31および加熱板4等が設けられる。その結果、開口51も吐出口13a、13bも、それぞれ2列のライン状に形成された2列ラインヘッドが得られる。それぞれ図6Aと図6Cと同様の図が示されている。この例では、吐出口13の形成例の異なる2組の流路構造体1が2個重ねられている。この構成にすることにより、材料が異なる複数種類の造形材料または色の異なる複数の造形材料を用いることができる。さらに、1スキャンで多色、かつ、凹凸のある造形物の1層を形成することができる。
図8Aは、図1Aに示される吐出ヘッドが2個、加熱板4と反対側が対向するように、厚い閉塞板71を挟んで接合された例である。なお、重ねる個数は2個には限定されない。このようにすることにより、図8Cに吐出口13a、13c側から見た平面図が示されるように、複数の吐出口13を有するラインヘッドが2列に形成される。この造形材料吐出ヘッドは、ラインヘッドが2列に形成されるというだけではなく、図8Cに示されるように、吐出口13aと吐出口13cとで吐出口13の大きさが変えられ得る。その結果、造形材料の吐出量が自由に変更され得る。勿論、この2列で、吐出口13a、13cの大きさがさらに変えられてもよい。図8Aにおいて、8は光硬化樹脂を硬化させるLEDである。なお、図8Aで、加熱板4の保護膜45は省略されて図示されていない。
図8Bは、取付板5側から見た平面図である。図8Bおよび図8Cから明らかなように、この2列のラインヘッドでは、流路の位置が半ピッチずれるように形成されてもよい。吐出口13も半ピッチずれて形成されている。このようにラインヘッドを複数列形成する場合に、半ピッチずらせた組合せがあると、ピッチ間に造形材料の不足分がなくなり精度の優れた造形物を作製することができる。これらの構成にすることにより、材料が異なる複数種類の造形材料または色の異なる複数の造形材料を用いることができる。さらに、1スキャンで多色、かつ、凹凸のある造形物の2層以上を形成することができる。この場合も、前述の図6Cや図6Dの場合と同様に、吐出口13の数を増やすこともできるし、一列に吐出口13を整列させる必要はない。また、吐出口13が半ピッチずらされる必要もない。なお、図8Bで5は取付板、51は材料供給口に通じる開口である。また、このように複数列に吐出口13の列が形成される場合、その列に応じて吐出口13の鉛直方向の位置が容易に変えられる。2組の吐出ヘッドがずらせて接合されるだけで得られる。鉛直方向の位置が例えば1mm程度異ならせることにより、1回のスキャンで2層以上の造形物が形成され得るので、より一層早く造形物が作製され得る。
また、このように、流路12の数が多く、吐出口13がライン状に複数個形成されることにより、多色型の造形物などの場合でも簡単に作製され得る。さらに、主剤と硬化剤が別個に吐出されて混合されることも容易になる。また、図9Aに吐出ヘッドの図1Aと同様の概略図が示されるように、流路構造体1の吐出口13側の先端部は、流路12の延びる方向に位置ずれが形成され、段差dを有する構造にすることもできる。2枚の板状体10の長さを変えておくことにより形成される。流路構造体1が段差を有しなくても、2個以上の吐出ヘッドが先端の吐出口13に段差を有するように重ねて使用されてもよい。すなわち、吐出口が造形テーブルと交差する向きになるように複数列配列し、前記複数列の少なくとも2列で前記吐出口の列の鉛直方向の高さが異なり、前記吐出口の列の下に設けられる造形テーブルのx−y方向の1回のスキャンにより少なくとも2層分の造形物を形成することができる。
この段差dは、例えば吐出された造形材料の高さが1mm程度であれば、この段差dも1mm程度にし、造形テーブルのスキャンの方向が長い板状体10aの方向から短い板状体10bの方向に造形物がスキャンされるようにすることにより、連続的に造形材料を吐出する場合でも、吐出された造形材料が吐出ヘッドで削られることはない。その結果、綺麗な造形物が形成され得る。逆に吐出した造形材料の頭を削り取るように段差が形成されてもよい。そうすれば表面が平坦で綺麗な造形物が作製され得る。このような形状にするのは、材料の性質、粘度などを変える場合に、次の層を付着しやすい平面にしたり、吐出しやすくしたり、付着しやすくしたりするために行われる。また、吐出物が一定の厚さを保つようにしたり、窪みの間隔を保ったりするなど、吐出物をある程度加工できるようにするためである。
また、段差ではなく、図9Bに示されるように、2枚の板状体10a、10bが斜め方向に切断された構造にされてもよい。そうすることによっても、同様に吐出した造形材料の吐出ヘッドによる欠落が防止される。なお、図9Bおよび図9Cでは、吐出口13の部分のみが示されている。さらに、図9Cに示される例は、段差が2枚の板状体10a、10bの間で形成されるのではなく、1枚目の板状体10aの半分程度の厚さともう1枚の板状体10bの全体が凹ませた形状になっている。造形材料の吐出量が多い場合には、吐出された造形材料の広がり余地が確保され得る。なお、図9Aで、加熱板4などは概念的に示されている。
さらに、図示されてはいないが、吐出ヘッドの先端部が造形物に対して、直角ではなく、傾けた状態で造形材料を吐出させながら、相対的にスキャンされてもよい。そうすることにより、連続的に造形材料が吐出される場合でも、前述の段差が付けられたり、先端部が斜めにカットされたりしたのと同様の効果を発揮する。厚さの厚い造形物を得やすくなる。要するに、造形物の形状に合せて吐出ヘッドの先端部の形状が変えられたり、設置の角度が調整されたりすることにより、厚い造形物でも効率よく形成され得る。
この実施形態によれば、加熱板4により、複数の吐出口13の特定の吐出口13から適宜造形材料が吐出され得るので、例えば造形テーブルをスキャンしながら、造形物の特定の場所のみに造形材料を吐出することができる。また、吐出口が複数個形成されることにより、造形物の2か所以上を同時に形成することができる。さらに、複数個の吐出口が形成されることにより、吐出口の大きさを変えて吐出量を変化させることも可能になる。また、種々の色の造形材料を吐出することもできる。すなわち、造形材料を吐出後に混合することもできるし、予め混合した種々の色や材料からなる造形材料を準備しておくことにより、それぞれ別の吐出口から所望の場所に所望の造形材料が吐出され得る。その結果、大きな造形物でも自在に短時間で製造され得る。
また、ライン状に複数個の吐出口が形成された吐出ヘッドが複数個並置されることにより、さらに吐出口の数が増え、1回のスキャンで一度に多数の場所に造形物が形成され得る。このような構造であれば、2液性の樹脂を用い、樹脂主剤が一列目の吐出口により吐出され、次の列の吐出口から硬化剤が吐出されることにより、反応硬化させることもできる。さらに複数列の吐出ヘッドの吐出口の鉛直方向の位置が列ごとにずらされることにより、吐出口の低い位置のヘッドで造形材料が吐出された後に、高い位置の吐出口の列で同じスキャンの工程で造形材料が吐出されることにより、1回のスキャンで2層以上の造形物が形成され得る。その結果、大きな造形物でも、非常に短時間で形成され得る。
本発明の熱歪み発生部材による薄板の変形による造形材料の吐出または流路内の造形材料の温度を上昇させることによる造形材料の吐出の方法によれば、瞬間的(数ms〜数十ms)に造形材料の吐出を制御することができるので、造形テーブルをスキャンさせながら造形材料を吐出させることができるので、大きな造形物でも、非常に容易に作製することができる。
さらに、本実施形態の複数列に形成されるライン状ヘッドの列ごとに吐出口の高さを変えて吐出させる方法によれば、1回のスキャンで2層以上の造形物を形成することができるので、大きな造形物でも非常に短時間で作製することができる。なお、各層の厚さを変えることもできる。
1 流路構造体
1a 流路板
3 熱歪み発生部材
4 加熱板
5 取付板
7 閉塞板
8 LED
10 板状体
12 流路
13 吐出口
14 供給材料導入口
15 溝
16 取付部
31 薄板
32 ピース
32a 連結部
32b トップ部
33 第2ピース
41 絶縁基板
42 ヒータ(発熱抵抗体)
43 第1導電端子
44 第2導電端子

Claims (13)

  1. 細長の貫通孔を有する板状体が少なくとも前記貫通孔が一致するように、少なくとも2枚重ね合された流路板、および前記流路板の両面で前記貫通孔の両端を閉塞する閉塞板を有し、前記流路板を構成する少なくとも1枚の板状体に前記貫通孔と連通して、かつ、前記 板状体を貫通しない凹みにより、前記貫通孔の幅より狭く端部に達する吐出口が形成され、前記貫通孔を造形材料の流路として前記吐出口より造形材料を吐出する流路構造体と、前記貫通孔の一端側の前記閉塞板が薄板からなり、前記薄板の前記流路と反対側に設けられ、前記流路内に熱作用を及ぼす加熱板と、
    前記吐出口の近傍に設けられ、前記流路の方向に沿って光を照射する発光素子と、
    を具備する造形材料吐出ヘッド。
  2. 前記細長の貫通孔からなる流路が前記板状体に複数個並列して形成され、前記加熱板は、前記複数個の流路のうち特定の流路ごとに前記熱作用を与えられるように形成されてなる請求項1記載の造形材料吐出ヘッド。
  3. 前記薄板と前記加熱板との間に、熱歪み発生部材が接合され、
    前記加熱板の瞬間的加熱による前記熱歪み発生部材の加熱で、前記薄板の変形により前記流路内の造形材料を吐出する請求項1または2記載の造形材料吐出ヘッド。
  4. 前記加熱板により前記流路内の造形材料または前記流路に沿った前記薄板の熱膨張による造形材料の体積増加または前記薄板の膨張による前記流路の体積変化に基づき前記流路内の造形材料を吐出する請求項1または2記載の造形材料吐出ヘッド。
  5. 前記加熱板は、絶縁基板上に発熱抵抗体がそれぞれの流路に沿って形成され、特定の流路の熱歪み発生部材または特定の流路内の造形材料もしくは前記薄板を加熱し得るように形成されてなる請求項1〜4のいずれか1項に記載の造形材料吐出ヘッド。
  6. 細長の貫通孔を有する板状体が少なくとも前記貫通孔が一致するように、少なくとも2枚重ね合された流路板と、
    前記流路板の両面で前記貫通孔を閉塞する閉塞板とを有し、
    前記流路板を構成する少なくとも1枚の板状体に前記貫通孔と連通して、かつ、前記板状 体を貫通しない凹みにより、前記貫通孔の幅より狭く端部に達する吐出口が形成され、前記貫通孔を造形材料の流路として前記吐出口より造形材料を吐出する流路構造体。
  7. 前記流路板に前記吐出口がライン状に複数個並列して形成されることによりライン型吐出 ヘッドを形成し得る請求項6記載の流路構造体。
  8. 前記流路の1個に対して複数個の前記吐出口が接続して形成されてなる請求項6または7記載の造流路構造体。
  9. 前記加熱板が、前記複数個の並列した流路をカバーするように設けられる絶縁基板と、該絶縁基板上に形成されると共に、前記複数の流路のそれぞれに対応して形成される発熱抵抗体と、該発熱抵抗体のそれぞれの両端部に個別に電圧を印加し得るように形成される一対の電極と、を具備する請求項2〜5のいずれか1項に記載の吐出ヘッド。
  10. 前記流路ごとに形成される発熱抵抗体が2以上に分割されて、その分割部に第3の電極が形成され、それぞれに独立して電圧を印加し得るように形成されてなる請求項記載の吐出ヘッド。
  11. 光硬化性樹脂を用いた立体造形物の造形方法であって、細長の貫通孔を有する板状体が少なくとも前記貫通孔が一致するように、少なくとも2枚重ね合された流路板、および前記流路板の両面で前記貫通孔の両端を閉塞する閉塞板を有し、前記流路板を構成する少なくとも1枚の板状体に前記貫通孔と連通して、かつ、前記板状体を貫通しない凹みにより、前記貫通孔の幅より狭く端部に達する吐出口が形成され、前記貫通孔を造形材料の流路として前記吐出口より造形材料を吐出する流路構造体を形成し、前記流路の一面を薄板で形成し、該薄板の前記流路と反対側に加熱板を配置し、該加熱板により特定の流路のみに瞬間的な熱作用を及ぼすことにより特定の流路の造形材料を吐出させながら造形することを含む立体造形物の造形方法。
  12. 前記熱作用を、前記特定の流路内の造形材料の熱膨張または前記特定の流路に沿った前記薄板の熱膨張を局所的に起させることにより行う請求項11記載の造形方法。
  13. 前記板状体の貫通孔が複数個並列して形成されることにより複数個の並列した流路を形成し、前記加熱板を、前記複数個の並列した流路のそれぞれを独立して電圧を印加し加熱し得る発熱抵抗体を有するように形成し、前記薄板と前記加熱板との間に前記薄板とは熱膨張率の異なるピースを設けることにより、またはバイメタルを設けることにより、前記加熱板による加熱で熱膨張率の差に基づく熱歪みにより前記薄板を変形させることにより行う請求項11記載の造形方法。
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