以下、本発明の実施の形態について説明する。なお、本発明の図面において、同一の参照符号は、同一部分または相当部分を表わすものとする。
<実施の形態1>
図1に、本発明の化合物半導体太陽電池の一例の模式的な断面構成図を示す。この化合物半導体太陽電池において、支持基板101(たとえば厚さ400μm)上には、金属層102、p型InGaAsからなるコンタクト層35(たとえば厚さ0.4μm)、p型InGaPからなるBSF層34(たとえば厚さ0.1μm)、p型InGaAsからなるベース層33(たとえば厚さ3μm)、n型InGaAsからなるエミッタ層32(たとえば厚さ0.1μm)およびn型InGaPからなる窓層31(たとえば厚さ0.1μm)、がこの順序で積層されている。ここで、p型InGaAsからなるベース層33とn型InGaAsからなるエミッタ層32との接合体からボトムセル40aが構成されている。なお、n型InGaPからなる窓層31の格子定数およびn型InGaAsからなるエミッタ層32の格子定数はそれぞれ、p型InGaAsからなるベース層33の格子定数と同等程度とされる。
また、n型InGaPからなる窓層31上には、n型In0.82Ga0.18P層30(たとえば厚さ1μm)、n型In0.79Ga0.21P層29(たとえば厚さ0.25μm)、n型In0.75Ga0.25P層28(たとえば厚さ0.25μm)、n型In0.71Ga0.29P層27(たとえば厚さ0.25μm)、n型In0.67Ga0.33P層26(たとえば厚さ0.25μm)、n型In0.63Ga0.37P層25(たとえば厚さ0.25μm)、n型In0.59Ga0.41P層24(たとえば厚さ0.25μm)、n型In0.55Ga0.45P層23(たとえば厚さ0.25μm)、n型In0.51Ga0.49P層22(たとえば厚さ0.25μm)およびn+型In0.48Ga0.52P層21(たとえば厚さ0.25μm)がこの順序で積層されている。ここで、n型In0.82Ga0.18P層30、n型In0.79Ga0.21P層29、n型In0.75Ga0.25P層28、n型In0.71Ga0.29P層27、n型In0.67Ga0.33P層26、n型In0.63Ga0.37P層25、n型In0.59Ga0.41P層24、n型In0.55Ga0.45P層23、n型In0.51Ga0.49P層22およびn+型In0.48Ga0.52P層21からバッファ層41が構成されている。
また、バッファ層41上には、n+型AlInP層110(たとえば厚さ0.05μm)、n++型In0.48Ga0.52P層111(たとえば厚さ0.02μm)、p++型AlGaAs層112(たとえば厚さ0.02μm)およびp+型AlInP層113(たとえば厚さ0.05μm)がこの順に積層されている。ここで、n+型AlInP層110、n++型In0.48Ga0.52P層111、p++型AlGaAs層112およびp+型AlInP層113からトンネル接合層50aが構成されている。
また、トンネル接合層50a上には、p型In0.48Ga0.52PからなるBSF層114(たとえば厚さ0.1μm)、p型GaAsからなるベース層115(たとえば厚さ3μm)、n型GaAsからなるエミッタ層116(たとえば厚さ0.1μm)およびn型In0.48Ga0.52Pからなる窓層117(たとえば厚さ0.1μm)がこの順序で積層されている。ここで、p型GaAsからなるベース層115とn型GaAsからなるエミッタ層116との接合体からミドルセル40bが構成されている。
また、n型In0.48Ga0.52Pからなる窓層117上には、n+型AlInP層118(たとえば厚さ0.05μm)、n++型In0.48Ga0.52P層119(たとえば厚さ0.02μm)、p++型AlGaAs層120(たとえば厚さ0.02μm)およびp+型AlInP層121(たとえば厚さ0.05μm)がこの順に積層されている。ここで、n+型AlInP層118、n++型In0.48Ga0.52P層119、p++型AlGaAs層120およびp+型AlInP層121からトンネル接合層50bが構成されている。
また、p+型AlInP層121上には、p型AlInPからなるBSF層122(たとえば厚さ0.05μm)、p型In0.48Ga0.52Pからなるベース層123(たとえば厚さ0.65μm)、n型In0.48Ga0.52Pからなるエミッタ層124(たとえば厚さ0.05μm)およびn型AlInPからなる窓層125(たとえば厚さ0.05μm)がこの順に積層されている。ここで、p型In0.48Ga0.52Pからなるベース層123とn型In0.48Ga0.52Pからなるエミッタ層124との接合体からトップセル40cが構成されている。
また、n型AlInPからなる窓層125上に、n型GaAsからなるコンタクト層126(たとえば厚さ0.4μm)および反射防止膜127が形成され、コンタクト層126上に電極層128が形成されている。
なお、図1に示す化合物半導体太陽電池においては、ボトムセル40aを構成する化合物半導体層、ミドルセル40bを構成する化合物半導体層およびトップセル40cを構成する化合物半導体層の順にバンドギャップが大きくなっている。
また、ボトムセル40aを構成する化合物半導体層のバンドギャップエネルギは0.9eV以上1.1eV以下であることが好ましい。この場合には、上記のトップセル40c、ミドルセル40bおよびボトムセル40aからなる3接合構造の化合物半導体太陽電池の理論効率が45%以上となる傾向にある。
以下、図2〜図4の断面構成図を参照して、図1に示す構成の化合物半導体太陽電池の製造方法の一例について説明する。
まず、図2に示すように、たとえば直径50mmのGaAs基板130をMOCVD(Metal Organic Chemical Vapor Deposition)装置内に設置し、このGaAs基板130上に、GaAsと選択エッチングが可能なエッチングストップ層となるn型In0.48Ga0.52Pからなるエッチングストップ層131、n型GaAsからなるコンタクト層126、n型AlInPからなる窓層125、n型In0.48Ga0.52Pからなるエミッタ層124、p型In0.48Ga0.52Pからなるベース層123およびp型AlInPからなるBSF層122をこの順にMOCVD法によりエピタキシャル成長させる。
次に、p型AlInPからなるBSF層122上に、p+型AlInP層121、p++型AlGaAs層120、n++型In0.48Ga0.52P層119およびn+型AlInP層118をこの順にMOCVD法によりエピタキシャル成長させる。
次に、n+型AlInP層118上に、n型In0.48Ga0.52Pからなる窓層117、n型GaAsからなるエミッタ層116、p型GaAsからなるベース層115、およびp型In0.48Ga0.52PからなるBSF層114をこの順にMOCVD法によりエピタキシャル成長させる。
次に、p型In0.48Ga0.52PからなるBSF層114上に、p+型AlInP層113、p++型AlGaAs層112、n++型In0.48Ga0.52P層111およびn+型AlInP層110をこの順にMOCVD法によりエピタキシャル成長させる。
次に、n+型AlInP層110上に、n+型In0.48Ga0.52P層21、n型In0.51Ga0.49P層22、n型In0.55Ga0.45P層23、n型In0.59Ga0.41P層24、n型In0.63Ga0.37P層25、n型In0.67Ga0.33P層26、n型In0.71Ga0.29P層27、n型In0.75Ga0.25P層28、n型In0.79Ga0.21P層29およびn型In0.82Ga0.18P層30をMOCVD法によりエピタキシャル成長させる。
次に、n型In0.82Ga0.18P層30上に、n型InGaP層31、n型InGaAsからなるエミッタ層32、p型InGaAsからなるベース層33、p型InGaPからなるBSF層34およびp型InGaAsからなるコンタクト層35をこの順にMOCVD法によりエピタキシャル成長させる。
ここで、GaAsの形成にはAsH3(アルシン)およびTMG(トリメチルガリウム)を用い、InGaPの形成にはTMI(トリメチルインジウム)、TMGおよびPH3(ホスフィン)を用い、InGaAsの形成にはTMI、TMGおよびAsH3を用い、AlInPの形成にはTMA(トリメチルアルミニウム)、TMIおよびPH3を用い、AlGaAsの形成には、TMA、TMGおよびAsH3を用い、AlInGaAsの形成には、TMA、TMI、TMGおよびAsH3を用いることができる。
その後、図3に示すように、p型InGaAsからなるコンタクト層35の表面上にたとえばAu(たとえば厚さ0.1μm)/Ag(たとえば厚さ3μm)の積層体からなる金属層102により支持基板101を貼り付ける。
次に、図4に示すように、GaAs基板130をアルカリ水溶液にてエッチングした後に、n型In0.48Ga0.52Pからなるエッチングストップ層131を酸水溶液にてエッチングする。
次に、n型GaAsからなるコンタクト層126上にフォトリソグラフィによりレジストパターンを形成した後、コンタクト層126の一部をアルカリ水溶液を用いたエッチングにより除去する。そして、残されたコンタクト層126の表面上に再度フォトリソグラフィによりレジストパターンを形成し、抵抗加熱蒸着装置およびEB(Electron Beam)蒸着装置を用いて、たとえばAuGe(12%)(たとえば厚さ0.1μm)/Ni(たとえば厚さ0.02μm)/Au(たとえば厚さ0.1μm)/Ag(たとえば厚さ5μm)の積層体からなる電極層128を形成する。
次に、メサエッチングパターンを形成した後、アルカリ水溶液および酸溶液を用いてメサエッチングを行なう。そして、EB蒸着法により、たとえばTiO2膜(たとえば厚さ55nm)およびAl2O3膜(たとえば厚さ85nm)の積層体を形成して反射防止膜127を形成する。これにより、化合物半導体太陽電池の受光面が化合物半導体の成長方向と反対側に位置する図1に示す構成の化合物半導体太陽電池を得ることができる。
ここで、図1に示す構成の化合物半導体太陽電池は、ボトムセル40aとミドルセル40bとの間にバッファ層41が設置された構成となっている。そして、ボトムセル40aとバッファ層41とは隣り合う位置に配置されて互いに接しており、ボトムセル40aを構成する化合物半導体層のうちp型InGaAsからなるベース層33と、バッファ層41を構成する化合物半導体層のうちボトムセル40a最も近い位置に配置されているn型In0.82Ga0.18P層30との格子定数差比が0.15%以上0.74%以下であることを特徴としている。
これは、本発明者が鋭意検討した結果、互いに隣り合うボトムセル40aとバッファ層41とにおいて、ボトムセル40aを構成する化合物半導体層のうちp型InGaAsからなるベース層33と、バッファ層41を構成する化合物半導体層のうちボトムセル40a最も近い位置に配置されているn型In0.82Ga0.18P層30との格子定数差比が0.15%以上0.74%以下の範囲内に収まるようにした場合には後述するように化合物半導体太陽電池の特性を向上することができることを見い出したことによるものである。
なお、格子定数差比(%)は、下記の式(1)により算出することができる。
格子定数差比(%)=(100×(a1−a2))/(a1) …(1)
上記の式(1)において、a1は、バッファ層を構成する化合物半導体層のうちボトムセルに最も近い位置に設置されている化合物半導体層(本実施の形態ではn型In0.82Ga0.18P層30)の格子定数を示す。
また、上記の式(1)において、a2は、ボトムセルを構成する化合物半導体層のうちベース層となる化合物半導体層(本実施の形態ではp型InGaAsからなるベース層33)の格子定数を示す。
なお、本実施の形態において格子定数差比は、ボトムセル40aを構成するp型InGaAsからなるベース層33の組成を調整することにより上記の範囲内に収まるように調整しているが、ボトムセル40aを構成する化合物半導体層のうちベース層とバッファ層41を構成する化合物半導体層のうちボトムセル40a最も近い位置に配置されている化合物半導体層の少なくとも一方の組成を調整することにより上記の格子定数差比を0.15%以上0.74%以下の範囲内に収めることができる。
また、上記の格子定数差比は0.3%以上0.5%以下の範囲内にあることが好ましい。上記の格子定数差比が0.3%以上0.5%以下の範囲内にある場合には、化合物半導体太陽電池の特性がさらに向上する傾向にある。
また、エミッタ層32および窓層31の厚さはそれぞれ、ベース層33およびn型In0.82Ga0.18P層30の厚さに対して非常に薄いため、エミッタ層32および窓層31の存在の有無は上記の格子定数差比にほとんど影響を与えないものと考えられる。
また、本明細書において、化合物の化学式において化合物を構成する元素の組成比が記載されておらず、その組成について特に言及されていないものについては、その組成比は特に限定されず、適宜設定することが可能であることを意味している。
また、本明細書において、化合物の化学式において化合物を構成する元素の組成比が記載されている場合でも、本発明はその組成比の構成に限定されるものではない。
<実施の形態2>
図5に、本発明の化合物半導体太陽電池の他の一例の模式的な断面構成図を示す。図5に示す構成の化合物半導体太陽電池においては、n型AlInGaPからなるエミッタ層324とp型AlInGaPからなるベース層323との接合体からトップセル40cが構成されている点に特徴がある。
図5に示す構成の化合物半導体太陽電池において、支持基板101上には、金属層102、p型InGaAsからなるコンタクト層35、p型InGaPからなるBSF層34、p型InGaAsからなるベース層33、n型InGaAsからなるエミッタ層32およびn型InGaPからなる窓層31がこの順序で積層されている。ここで、p型InGaAsからなるベース層33とn型InGaAsからなるエミッタ層32との接合体からボトムセル40aが構成されている。
また、n型InGaPからなる窓層31上には、n型In0.82Ga0.18P層30、n型In0.79Ga0.21P層29、n型In0.75Ga0.25P層28、n型In0.71Ga0.29P層27、n型In0.67Ga0.33P層26、n型In0.63Ga0.37P層25、n型In0.59Ga0.41P層24、n型In0.55Ga0.45P層23、n型In0.51Ga0.49P層22およびn+型In0.48Ga0.52P層21がこの順序で積層されている。ここで、n型In0.82Ga0.18P層30、n型In0.79Ga0.21P層29、n型In0.75Ga0.25P層28、n型In0.71Ga0.29P層27、n型In0.67Ga0.33P層26、n型In0.63Ga0.37P層25、n型In0.59Ga0.41P層24、n型In0.55Ga0.45P層23、n型In0.51Ga0.49P層22およびn+型In0.48Ga0.52P層21からバッファ層41が構成されている。
また、バッファ層41上には、n+型AlInP層110、n++型In0.48Ga0.52P層111、p++型AlGaAs層112およびp+型AlInP層113がこの順に積層されている。ここで、n+型AlInP層110、n++型In0.48Ga0.52P層111、p++型AlGaAs層112およびp+型AlInP層113からトンネル接合層50aが構成されている。
また、トンネル接合層50a上には、p型In0.48Ga0.52PからなるBSF層114、p型GaAsからなるベース層115、n型GaAsからなるエミッタ層116およびn型In0.48Ga0.52Pからなる窓層117がこの順序で積層されている。ここで、p型GaAsからなるベース層115とn型GaAsからなるエミッタ層116との接合体からミドルセル40bが構成されている。
また、n型In0.48Ga0.52Pからなる窓層117上には、n+型AlInP層118、n++型In0.48Ga0.52P層119、p++型AlGaAs層120およびp+型AlInP層121がこの順に積層されている。ここで、n+型AlInP層118、n++型In0.48Ga0.52P層119、p++型AlGaAs層120およびp+型AlInP層121からトンネル接合層50bが構成されている。
また、p+型AlInP層121上には、p型AlInPからなるBSF層122、p型AlInGaPからなるベース層323(たとえば厚さ3μm)、n型AlInGaPからなるエミッタ層324(たとえば厚さ0.1μm)およびn型AlInPからなる窓層125がこの順に積層されている。ここで、p型AlInGaPからなるベース層323とn型AlInGaPからなるエミッタ層324との接合体からトップセル40cが構成されている。
また、n型AlInPからなる窓層125上に、n型GaAsからなるコンタクト層126および反射防止膜127が形成され、コンタクト層126上に電極層128が形成されている。
なお、図5に示す化合物半導体太陽電池においては、ボトムセル40aを構成する化合物半導体層、ミドルセル40bを構成する化合物半導体層およびトップセル40cを構成する化合物半導体層の順にバンドギャップが大きくなっている。
以下、図6〜図8の断面構成図を参照して、図5に示す構成の化合物半導体太陽電池の製造方法の一例について説明する。
まず、図6に示すように、たとえば直径50mmのGaAs基板130をMOCVD(Metal Organic Chemical Vapor Deposition)装置内に設置し、このGaAs基板130上に、GaAsと選択エッチングが可能なエッチングストップ層となるn型In0.48Ga0.52Pからなるエッチングストップ層131、n型GaAsからなるコンタクト層126、n型AlInPからなる窓層125、n型AlInGaPからなるエミッタ層324、p型AlInGaPからなるベース層323およびp型AlInPからなるBSF層122をこの順にMOCVD法によりエピタキシャル成長させる。
次に、p型AlInPからなるBSF層122上に、p+型AlInP層121、p++型AlGaAs層120、n++型In0.48Ga0.52P層119およびn+型AlInP層118をこの順にMOCVD法によりエピタキシャル成長させる。
次に、n+型AlInP層118上に、n型In0.48Ga0.52Pからなる窓層117、n型GaAsからなるエミッタ層116、p型GaAsからなるベース層115、およびp型In0.48Ga0.52PからなるBSF層114をこの順にMOCVD法によりエピタキシャル成長させる。
次に、p型In0.48Ga0.52PからなるBSF層114上に、p+型AlInP層113、p++型AlGaAs層112、n++型In0.48Ga0.52P層111およびn+型AlInP層110をこの順にMOCVD法によりエピタキシャル成長させる。
次に、n+型AlInP層110上に、n+型In0.48Ga0.52P層21、n型In0.51Ga0.49P層22、n型In0.55Ga0.45P層23、n型In0.59Ga0.41P層24、n型In0.63Ga0.37P層25、n型In0.67Ga0.33P層26、n型In0.71Ga0.29P層27、n型In0.75Ga0.25P層28、n型In0.79Ga0.21P層29およびn型In0.82Ga0.18P層30をMOCVD法によりエピタキシャル成長させる。
次に、n型In0.82Ga0.18P層30上に、n型InGaP層31、n型InGaAsからなるエミッタ層32、p型InGaAsからなるベース層33、p型InGaPからなるBSF層34およびp型InGaAsからなるコンタクト層35をこの順にMOCVD法によりエピタキシャル成長させる。
その後、図7に示すように、p型InGaAsからなるコンタクト層35の表面上にたとえばAu(たとえば厚さ0.1μm)/Ag(たとえば厚さ3μm)の積層体からなる金属層102により支持基板101を貼り付ける。
次に、図8に示すように、GaAs基板130をアルカリ水溶液にてエッチングした後に、n型In0.48Ga0.52Pからなるエッチングストップ層131を酸水溶液にてエッチングする。
次に、n型GaAsからなるコンタクト層126上にフォトリソグラフィによりレジストパターンを形成した後、コンタクト層126の一部をアルカリ水溶液を用いたエッチングにより除去する。そして、残されたコンタクト層126の表面上に再度フォトリソグラフィによりレジストパターンを形成し、抵抗加熱蒸着装置およびEB(Electron Beam)蒸着装置を用いて、たとえばAuGe(12%)(たとえば厚さ0.1μm)/Ni(たとえば厚さ0.02μm)/Au(たとえば厚さ0.1μm)/Ag(たとえば厚さ5μm)の積層体からなる電極層128を形成する。
次に、メサエッチングパターンを形成した後、アルカリ水溶液および酸溶液を用いてメサエッチングを行なう。そして、EB蒸着法により、たとえばTiO2膜(たとえば厚さ55nm)およびAl2O3膜(たとえば厚さ85nm)の積層体を形成して反射防止膜127を形成する。これにより、化合物半導体太陽電池の受光面が化合物半導体の成長方向と反対側に位置する図5に示す構成の化合物半導体太陽電池を得ることができる。
ここで、図5に示す構成の化合物半導体太陽電池は、ボトムセル40aとミドルセル40bとの間にバッファ層41が設置された構成となっている。そして、ボトムセル40aとミドルセル40bとは隣り合う位置に配置されて互いに接しており、ボトムセル40aを構成する化合物半導体層のうちp型InGaAsからなるベース層33と、バッファ層41を構成する化合物半導体層のうちボトムセル40a最も近い位置に配置されているn型In0.82Ga0.18P層30との格子定数差比が0.15%以上0.74%以下であること、好ましくは0.3%以上0.5%以下であることを特徴としている。
したがって、図5に示す構成の化合物半導体太陽電池においても、互いに隣り合うボトムセル40aとバッファ層41とにおいて、ボトムセル40aを構成する化合物半導体層のうちp型InGaAsからなるベース層33と、バッファ層41を構成する化合物半導体層のうちボトムセル40a最も近い位置に配置されているn型In0.82Ga0.18P層30との格子定数差比が0.15%以上0.74%以下、好ましくは0.3%以上0.5%以下であることから、後述するように化合物半導体太陽電池の特性を向上することができる。
本実施の形態における上記以外の説明は、実施の形態1と同様であるため、その説明については省略する。
<実施の形態3>
図9に、本発明の化合物半導体太陽電池の他の一例の模式的な断面構成図を示す。図9に示す構成の化合物半導体太陽電池は、p型Ge基板上に化合物半導体層を成長させることによって形成されている点に特徴がある。
図9に示す構成の化合物半導体太陽電池において、支持基板201(たとえば厚さ400μm)上には、金属層202、p型InGaAsからなるコンタクト層203(たとえば厚さ0.4μm)、p型InGaPからなるBSF層34、p型InGaAsからなるベース層33、n型InGaAsからなるエミッタ層32およびn型InGaPからなる窓層31がこの順序で積層されている。ここで、p型InGaAsからなるベース層33とn型InGaAsからなるエミッタ層32との接合体からボトムセル40aが構成されている。
また、n型InGaPからなる窓層31上には、n型In0.82Ga0.18P層30、n型In0.79Ga0.21P層29、n型In0.75Ga0.25P層28、n型In0.71Ga0.29P層27、n型In0.67Ga0.33P層26、n型In0.63Ga0.37P層25、n型In0.59Ga0.41P層24、n型In0.55Ga0.45P層23、n型In0.51Ga0.49P層22およびn+型In0.48Ga0.52P層21がこの順序で積層されている。ここで、n型In0.82Ga0.18P層30、n型In0.79Ga0.21P層29、n型In0.75Ga0.25P層28、n型In0.71Ga0.29P層27、n型In0.67Ga0.33P層26、n型In0.63Ga0.37P層25、n型In0.59Ga0.41P層24、n型In0.55Ga0.45P層23、n型In0.51Ga0.49P層22およびn+型In0.48Ga0.52P層21からバッファ層41が構成されている。
また、バッファ層41上には、n+型AlInP層110(たとえば厚さ0.05μm)、n++型In0.48Ga0.52P層111(たとえば厚さ0.02μm)、p++型AlGaAs層112(たとえば厚さ0.02μm)およびp+型AlInP層113(たとえば厚さ0.05μm)がこの順に積層されている。ここで、n+型AlInP層110、n++型In0.48Ga0.52P層111、p++型AlGaAs層112およびp+型AlInP層113からトンネル接合層50aが構成されている。
また、トンネル接合層50a上には、p型In0.48Ga0.52PからなるBSF層114(たとえば厚さ0.1μm)、p型InGaAsからなるベース層215(たとえば厚さ3μm)、n型InGaAsからなるエミッタ層216(たとえば厚さ0.1μm)およびn型In0.48Ga0.52Pからなる窓層117(たとえば厚さ0.1μm)がこの順序で積層されている。ここで、p型InGaAsからなるベース層215とn型InGaAsからなるエミッタ層216との接合体からミドルセル40bが構成されている。
また、n型In0.48Ga0.52Pからなる窓層117上には、n+型AlInP層118(たとえば厚さ0.05μm)、n++型In0.48Ga0.52P層119(たとえば厚さ0.02μm)、p++型AlGaAs層120(たとえば厚さ0.02μm)およびp+型AlInP層121(たとえば厚さ0.05μm)がこの順に積層されている。ここで、n+型AlInP層118、n++型In0.48Ga0.52P層119、p++型AlGaAs層120およびp+型AlInP層121からトンネル接合層50bが構成されている。
また、p+型AlInP層121上には、p型AlInPからなるBSF層122(たとえば厚さ0.05μm)、p型In0.48Ga0.52Pからなるベース層223(たとえば厚さ0.65μm)、n型In0.48Ga0.52Pからなるエミッタ層224(たとえば厚さ0.05μm)およびn型AlInPからなる窓層125(たとえば厚さ0.05μm)がこの順に積層されている。ここで、p型In0.48Ga0.52Pからなるベース層223とn型In0.48Ga0.52Pからなるエミッタ層224との接合体からトップセル40cが構成されている。
また、n型AlInPからなる窓層125上に、n型GaAsからなるコンタクト層226および反射防止膜127が形成され、コンタクト層226上に電極層128が形成されている。
なお、図9に示す化合物半導体太陽電池においては、ボトムセル40aを構成する化合物半導体層、ミドルセル40bを構成する化合物半導体層およびトップセル40cを構成する化合物半導体層の順にバンドギャップが大きくなっている。
以下、図10〜図12の断面構成図を参照して、図9に示す構成の化合物半導体太陽電池の製造方法の一例について説明する。
まず、図10に示すように、たとえば直径50mmのGe基板230をMOCVD(Metal Organic Chemical Vapor Deposition)装置内に設置し、このGe基板230上に、n型GaAsからなるコンタクト層226、n型AlInPからなる窓層125、n型In0.48Ga0.52Pからなるエミッタ層224、p型In0.48Ga0.52Pからなるベース層223およびp型AlInPからなるBSF層122をこの順にMOCVD法によりエピタキシャル成長させる。
次に、p型AlInPからなるBSF層122上に、p+型AlInP層121、p++型AlGaAs層120、n++型In0.48Ga0.52P層119およびn+型AlInP層118をこの順にMOCVD法によりエピタキシャル成長させる。
次に、n+型AlInP層118上に、n型In0.48Ga0.52Pからなる窓層117、n型InGaAsからなるエミッタ層216、p型InGaAsからなるベース層215、およびp型In0.48Ga0.52PからなるBSF層114をこの順にMOCVD法によりエピタキシャル成長させる。
次に、p型In0.48Ga0.52PからなるBSF層114上に、p+型AlInP層113、p++型AlGaAs層112、n++型In0.48Ga0.52P層111およびn+型AlInP層110をこの順にMOCVD法によりエピタキシャル成長させる。
次に、n+型AlInP層110上に、n+型In0.48Ga0.52P層21、n型In0.51Ga0.49P層22、n型In0.55Ga0.45P層23、n型In0.59Ga0.41P層24、n型In0.63Ga0.37P層25、n型In0.67Ga0.33P層26、n型In0.71Ga0.29P層27、n型In0.75Ga0.25P層28、n型In0.79Ga0.21P層29およびn型In0.82Ga0.18P層30をMOCVD法によりエピタキシャル成長させる。
次に、n型In0.82Ga0.18P層30上に、n型InGaP層31、n型InGaAsからなるエミッタ層32、p型InGaAsからなるベース層33、p型InGaPからなるBSF層34およびp型InGaAsからなるコンタクト層203をこの順にMOCVD法によりエピタキシャル成長させる。
その後、図11に示すように、p型InGaAsからなるコンタクト層203の表面上にたとえばAu(たとえば厚さ0.1μm)/Ag(たとえば厚さ3μm)の積層体からなる金属層202により支持基板201を貼り付ける。
次に、図12に示すように、Ge基板230をフッ化水素水溶液にてエッチングする。
次に、n型GaAsからなるコンタクト層226上にフォトリソグラフィによりレジストパターンを形成した後、コンタクト層226の一部をアルカリ水溶液を用いたエッチングにより除去する。そして、残されたコンタクト層226の表面上に再度フォトリソグラフィによりレジストパターンを形成し、抵抗加熱蒸着装置およびEB(Electron Beam)蒸着装置を用いて、たとえばAuGe(12%)(たとえば厚さ0.1μm)/Ni(たとえば厚さ0.02μm)/Au(たとえば厚さ0.1μm)/Ag(たとえば厚さ5μm)の積層体からなる電極層128を形成する。
次に、メサエッチングパターンを形成した後、アルカリ水溶液および酸溶液を用いてメサエッチングを行なう。そして、EB蒸着法により、たとえばTiO2膜(たとえば厚さ55nm)およびAl2O3膜(たとえば厚さ85nm)の積層体を形成して反射防止膜127を形成する。これにより、化合物半導体太陽電池の受光面が化合物半導体の成長方向と反対側に位置する図9に示す構成の化合物半導体太陽電池を得ることができる。
ここで、図9に示す構成の化合物半導体太陽電池は、ボトムセル40aとミドルセル40bとの間にバッファ層41が設置された構成となっている。そして、ボトムセル40aとミドルセル40bとは隣り合う位置に配置されて互いに接しており、ボトムセル40aを構成する化合物半導体層のうちp型InGaAsからなるベース層33と、バッファ層41を構成する化合物半導体層のうちボトムセル40a最も近い位置に配置されているn型In0.82Ga0.18P層30との格子定数差比が0.15%以上0.74%以下であること、好ましくは0.3%以上0.5%以下であることを特徴としている。
したがって、図9に示す構成の化合物半導体太陽電池においても、互いに隣り合うボトムセル40aとバッファ層41とにおいて、ボトムセル40aを構成する化合物半導体層のうちp型InGaAsからなるベース層33と、バッファ層41を構成する化合物半導体層のうちボトムセル40a最も近い位置に配置されているn型In0.82Ga0.18P層30との格子定数差比が0.15%以上0.74%以下、好ましくは0.3%以上0.5%以下であることから、後述するように化合物半導体太陽電池の特性を向上することができる。
本実施の形態における上記以外の説明は、実施の形態1および実施の形態2と同様であるため、その説明については省略する。
<実施の形態4>
図13に、本発明の化合物半導体太陽電池の他の一例の模式的な断面構成図を示す。図13に示す構成の化合物半導体太陽電池は、p型Ge基板上に化合物半導体層を成長させることによって形成されており、n型AlInGaPからなるエミッタ層422とp型AlInGaPからなるベース層423との接合体からトップセル40cが構成されている点に特徴がある。
図13に示す構成の化合物半導体太陽電池において、支持基板201上には、金属層202、p型InGaAsからなるコンタクト層203、p型InGaPからなるBSF層34、p型InGaAsからなるベース層33、n型InGaAsからなるエミッタ層32およびn型InGaPからなる窓層31がこの順序で積層されている。ここで、p型InGaAsからなるベース層33とn型InGaAsからなるエミッタ層32との接合体からボトムセル40aが構成されている。
また、n型InGaPからなる窓層31上には、n型In0.82Ga0.18P層30、n型In0.79Ga0.21P層29、n型In0.75Ga0.25P層28、n型In0.71Ga0.29P層27、n型In0.67Ga0.33P層26、n型In0.63Ga0.37P層25、n型In0.59Ga0.41P層24、n型In0.55Ga0.45P層23、n型In0.51Ga0.49P層22およびn+型In0.48Ga0.52P層21がこの順序で積層されている。ここで、n型In0.82Ga0.18P層30、n型In0.79Ga0.21P層29、n型In0.75Ga0.25P層28、n型In0.71Ga0.29P層27、n型In0.67Ga0.33P層26、n型In0.63Ga0.37P層25、n型In0.59Ga0.41P層24、n型In0.55Ga0.45P層23、n型In0.51Ga0.49P層22およびn+型In0.48Ga0.52P層21からバッファ層41が構成されている。
また、バッファ層41上には、n+型AlInP層110、n++型In0.48Ga0.52P層111、p++型AlGaAs層112およびp+型AlInP層113がこの順に積層されている。ここで、n+型AlInP層110、n++型In0.48Ga0.52P層111、p++型AlGaAs層112およびp+型AlInP層113からトンネル接合層50aが構成されている。
また、トンネル接合層50a上には、p型In0.48Ga0.52PからなるBSF層114、p型InGaAsからなるベース層215、n型InGaAsからなるエミッタ層216およびn型In0.48Ga0.52Pからなる窓層117がこの順序で積層されている。ここで、p型InGaAsからなるベース層215とn型InGaAsからなるエミッタ層216との接合体からミドルセル40bが構成されている。
また、n型In0.48Ga0.52Pからなる窓層117上には、n+型AlInP層118、n++型In0.48Ga0.52P層119、p++型AlGaAs層120およびp+型AlInP層121がこの順に積層されている。ここで、n+型AlInP層118、n++型In0.48Ga0.52P層119、p++型AlGaAs層120およびp+型AlInP層121からトンネル接合層50bが構成されている。
また、p+型AlInP層121上には、p型AlInPからなるBSF層122、p型AlInGaPからなるベース層423(たとえば厚さ3μm)、n型AlInGaPからなるエミッタ層422(たとえば厚さ0.05μm)およびn型AlInPからなる窓層125(たとえば厚さ0.1μm)がこの順に積層されている。ここで、p型AlInGaPからなるベース層423とn型AlInGaPからなるエミッタ層422との接合体からトップセル40cが構成されている。
また、n型AlInPからなる窓層125上に、n型GaAsからなるコンタクト層226および反射防止膜127が形成され、コンタクト層226上に電極層128が形成されている。
なお、図13に示す化合物半導体太陽電池においては、ボトムセル40aを構成する化合物半導体層、ミドルセル40bを構成する化合物半導体層およびトップセル40cを構成する化合物半導体層の順にバンドギャップが大きくなっている。
以下、図14〜図16の断面構成図を参照して、図13に示す構成の化合物半導体太陽電池の製造方法の一例について説明する。
まず、図14に示すように、たとえば直径50mmのGe基板230をMOCVD(Metal Organic Chemical Vapor Deposition)装置内に設置し、このGe基板230上に、n型GaAsからなるコンタクト層226、n型AlInPからなる窓層125、n型AlInGaPからなるエミッタ層422、p型AlInGaPからなるベース層423およびp型AlInPからなるBSF層122をこの順にMOCVD法によりエピタキシャル成長させる。
次に、p型AlInPからなるBSF層122上に、p+型AlInP層121、p++型AlGaAs層120、n++型In0.48Ga0.52P層119およびn+型AlInP層118をこの順にMOCVD法によりエピタキシャル成長させる。
次に、n+型AlInP層118上に、n型In0.48Ga0.52Pからなる窓層117、n型InGaAsからなるエミッタ層216、p型InGaAsからなるベース層215、およびp型In0.48Ga0.52PからなるBSF層114をこの順にMOCVD法によりエピタキシャル成長させる。
次に、p型In0.48Ga0.52PからなるBSF層114上に、p+型AlInP層113、p++型AlGaAs層112、n++型In0.48Ga0.52P層111およびn+型AlInP層110をこの順にMOCVD法によりエピタキシャル成長させる。
次に、n+型AlInP層110上に、n+型In0.48Ga0.52P層21、n型In0.51Ga0.49P層22、n型In0.55Ga0.45P層23、n型In0.59Ga0.41P層24、n型In0.63Ga0.37P層25、n型In0.67Ga0.33P層26、n型In0.71Ga0.29P層27、n型In0.75Ga0.25P層28、n型In0.79Ga0.21P層29およびn型In0.82Ga0.18P層30をMOCVD法によりエピタキシャル成長させる。
次に、n型In0.82Ga0.18P層30上に、n型InGaP層31、n型InGaAsからなるエミッタ層32、p型InGaAsからなるベース層33、p型InGaPからなるBSF層34およびp型InGaAsからなるコンタクト層203をこの順にMOCVD法によりエピタキシャル成長させる。
その後、図15に示すように、p型InGaAsからなるコンタクト層203の表面上にたとえばAu(たとえば厚さ0.1μm)/Ag(たとえば厚さ3μm)の積層体からなる金属層202により支持基板201を貼り付ける。
次に、図16に示すように、Ge基板230をフッ化水素水溶液にてエッチングする。
次に、n型GaAsからなるコンタクト層226上にフォトリソグラフィによりレジストパターンを形成した後、コンタクト層226の一部をアルカリ水溶液を用いたエッチングにより除去する。そして、残されたコンタクト層226の表面上に再度フォトリソグラフィによりレジストパターンを形成し、抵抗加熱蒸着装置およびEB(Electron Beam)蒸着装置を用いて、たとえばAuGe(12%)(たとえば厚さ0.1μm)/Ni(たとえば厚さ0.02μm)/Au(たとえば厚さ0.1μm)/Ag(たとえば厚さ5μm)の積層体からなる電極層128を形成する。
次に、メサエッチングパターンを形成した後、アルカリ水溶液および酸溶液を用いてメサエッチングを行なう。そして、EB蒸着法により、たとえばTiO2膜(たとえば厚さ55nm)およびAl2O3膜(たとえば厚さ85nm)の積層体を形成して反射防止膜127を形成する。これにより、化合物半導体太陽電池の受光面が化合物半導体の成長方向と反対側に位置する図13に示す構成の化合物半導体太陽電池を得ることができる。
ここで、図13に示す構成の化合物半導体太陽電池は、ボトムセル40aとミドルセル40bとの間にバッファ層41が設置された構成となっている。そして、ボトムセル40aとミドルセル40bとは隣り合う位置に配置されて互いに接しており、ボトムセル40aを構成する化合物半導体層のうちp型InGaAsからなるベース層33と、バッファ層41を構成する化合物半導体層のうちボトムセル40a最も近い位置に配置されているn型In0.82Ga0.18P層30との格子定数差比が0.15%以上0.74%以下であること、好ましくは0.3%以上0.5%以下であることを特徴としている。
したがって、図13に示す構成の化合物半導体太陽電池においても、互いに隣り合うボトムセル40aとバッファ層41とにおいて、ボトムセル40aを構成する化合物半導体層のうちp型InGaAsからなるベース層33と、バッファ層41を構成する化合物半導体層のうちボトムセル40a最も近い位置に配置されているn型In0.82Ga0.18P層30との格子定数差比が0.15%以上0.74%以下、好ましくは0.3%以上0.5%以下であることから、後述するように化合物半導体太陽電池の特性を向上することができる。
本実施の形態における上記以外の説明は、実施の形態1〜3と同様であるため、その説明については省略する。
<化合物半導体太陽電池の作製>
まず、図2に示すように、直径50mmのGaAs基板130をMOCVD装置内に設置し、このGaAs基板130上に、n型In0.48Ga0.52Pからなるエッチングストップ層131、厚さ0.4μmのn型GaAsからなるコンタクト層126、厚さ0.05μmのn型AlInPからなる窓層125、厚さ0.05μmのn型In0.48Ga0.52Pからなるエミッタ層124、厚さ0.65μmのp型In0.48Ga0.52Pからなるベース層123および厚さ0.4μmのp型AlInPからなるBSF層122をこの順にMOCVD法によりエピタキシャル成長させた。
次に、厚さ0.05μmのp型AlInPからなるBSF層122上に、厚さ0.05μmのp+型AlInP層121、厚さ0.02μmのp++型AlGaAs層120、厚さ0.02μmのn++型In0.48Ga0.52P層119および厚さ0.05μmのn+型AlInP層118をこの順にMOCVD法によりエピタキシャル成長させた。
次に、n+型AlInP層118上に、厚さ0.1μmのn型In0.48Ga0.52Pからなる窓層117、厚さ0.1μmのn型GaAsからなるエミッタ層116、厚さ3μmのp型GaAsからなるベース層115、および厚さ0.1μmのp型In0.48Ga0.52PからなるBSF層114をこの順にMOCVD法によりエピタキシャル成長させた。
次に、p型In0.48Ga0.52PからなるBSF層114上に、厚さ0.05μmのp+型AlInP層113、厚さ0.02μmのp++型AlGaAs層112、厚さ0.02μmのn++型In0.48Ga0.52P層111および厚さ0.05μmのn+型AlInP層110をこの順にMOCVD法によりエピタキシャル成長させた。
次に、n+型AlInP層110上に、厚さ0.25μmのn+型In0.48Ga0.52P層21、厚さ0.25μmのn型In0.51Ga0.49P層22、厚さ0.25μmのn型In0.55Ga0.45P層23、厚さ0.25μmのn型In0.59Ga0.41P層24、n型In0.63Ga0.37P層25、厚さ0.25μmのn型In0.67Ga0.33P層26、厚さ0.25μmのn型In0.71Ga0.29P層27、厚さ0.25μmのn型In0.75Ga0.25P層28、厚さ0.25μmのn型In0.79Ga0.21P層29および厚さ1μmのn型In0.82Ga0.18P層30をMOCVD法によりエピタキシャル成長させた。
次に、n型In0.82Ga0.18P層30上に、厚さ0.1μmのn型InGaP層31、厚さ0.1μmのn型InGaAsからなるエミッタ層32、厚さ3μmのp型InGaAsからなるベース層33、厚さ0.1μmのp型InGaPからなるBSF層34および厚さ0.4μmのp型InGaAsからなるコンタクト層35をこの順にMOCVD法によりエピタキシャル成長させた。
その後、図3に示すように、p型InGaAsからなるコンタクト層35の表面上にたとえばAu(厚さ0.1μm)/Ag(厚さ3μm)の積層体からなる金属層102により支持基板101を貼り付けた。
次に、図4に示すように、GaAs基板130をアルカリ水溶液にてエッチングした後に、n型In0.48Ga0.52Pからなるエッチングストップ層131を酸水溶液にてエッチングした。
次に、n型GaAsからなるコンタクト層126上にフォトリソグラフィによりレジストパターンを形成した後、コンタクト層126の一部をアルカリ水溶液を用いたエッチングにより除去する。そして、残されたコンタクト層126の表面上に再度フォトリソグラフィによりレジストパターンを形成し、抵抗加熱蒸着装置およびEB(Electron Beam)蒸着装置を用いて、たとえばAuGe(12%)(厚さ0.1μm)/Ni(厚さ0.02μm)/Au(厚さ0.1μm)/Ag(厚さ5μm)の積層体からなる電極層128を形成した。
次に、メサエッチングパターンを形成した後、アルカリ水溶液および酸溶液を用いてメサエッチングを行なう。そして、EB蒸着法により、TiO2膜(厚さ55nm)およびAl2O3膜(厚さ85nm)の積層体を形成して反射防止膜127を形成した。これにより、化合物半導体太陽電池の受光面が化合物半導体の成長方向と反対側に位置する図1に示す構成の化合物半導体太陽電池を得た。
ここで、上記の化合物半導体太陽電池としては、No.1〜No.7の7種類を作製した。そして、No.1〜No.4およびNo.6〜No.7の化合物半導体太陽電池については、バッファ層41の製造時の最上層となるn型In0.82Ga0.18P層30の組成を一定にした状態でボトムセル40aのベース層33の組成をそれぞれ変えて作製するとともに、窓層31およびエミッタ層32についてもそれぞれベース層33の格子定数と同等程度となるように組成を変えて作製した。
また、No.5の化合物半導体太陽電池については、No.1〜No.4およびNo.6〜No.7の化合物半導体太陽電池とは、バッファ層41を構成する各p型InGaP層の組成を変えるとともに、ボトムセル40aのベース層33の組成も変えて作製した。
<サンプルの作製>
次に、ボトムセル40aの評価を行なうために、上記のNo.1〜No.7の化合物半導体太陽電池のそれぞれから、p++型AlGaAs層112、p+型AlInP層113、BSF層114、ミドルセル40b、窓層117、トンネル接合層50b、BSF層122、トップセル40c、窓層125、コンタクト層126、反射防止膜127および電極層128を除去し、その後、露出したn++型In0.48Ga0.52P層111の表面に電極528を形成した。これにより、No.1〜No.7の化合物半導体太陽電池のそれぞれから、図17の模式的断面図に示す構成のNo.1〜No.7のサンプルをそれぞれ作製した。
なお、上記のNo.1〜No.7の化合物半導体太陽電池からのNo.1〜No.7のサンプルの作製においては、化合物半導体太陽電池のNo.とサンプルのNo.とが対応していることは言うまでもない。
<評価>
上記のNo.1〜No.7の化合物半導体太陽電池のそれぞれの作製の途中において最表面に露出したp型InGaAsからなるコンタクト層35の表面状態を目視で観察した。また、上記のNo.1〜No.7のサンプルのそれぞれについて電流−電圧特性を測定し、その電流−電圧特性から開放電圧を測定した。その結果を表1、図18および図19に示す。
表1において、表面状態の評価AおよびBはそれぞれ以下の表面状態を表わしている。A…p型InGaAsからなるコンタクト層35の表面状態が良好。
B…p型InGaAsからなるコンタクト層35の表面状態が不良。
また、図18および図19において、円で囲まれた数値は、上記のNo.1〜No.7のサンプルのそれぞれのサンプルのNo.を示している。
また、図18は、上記のNo.1〜No.7のサンプルのそれぞれのボトムセル40aのベース層33のEg(バンドギャップエネルギ;単位eV)とボトムセル40aのVoc(開放電圧;単位V)との関係を示しており、横軸がEgを示し、縦軸がVocを示している。
また、図18中の傾きを有する直線Voc=Eg−0.4は、ボトムセル40aのベース層33の結晶性が一番良い状態と仮定したときのEgとVocとの関係を示しており、図18中の黒丸の位置がこの直線に近い程、ボトムセル40aの特性が優れていることを示している。
また、図18に示されるGaAsからの格子定数不整合率は、GaAsとボトムセル40aのベース層33との間の格子定数の不整合の度合いを示している。
また、図19は、上記のNo.1〜No.7のサンプルのそれぞれの電圧(単位V)と電流密度(単位A/cm2)との関係(電流−電圧特性)を示しており、横軸が電圧を示し、縦軸が電流密度を示している。
<結果>
表1、図18および図19に示すように、No.3〜No.7の化合物半導体太陽電池は、No.2の化合物半導体太陽電池と比較して、p型InGaAsからなるコンタクト層35の表面状態に優れていた。
また、表1、図18および図19に示すように、No.3〜No.7のサンプルは、No.1〜No.2のサンプルと比較して、ボトムセル40aの開放電圧などの特性に優れることが確認された。
これは、No.3〜No.7の化合物半導体太陽電池およびNo.3〜No.7のサンプルにおいてはそれぞれ、バッファ層41のn型In0.82Ga0.18P層30の格子定数a1と、ボトムセル40aのベース層33の格子定数a2との格子定数差比(100×(a1−a2)/(a1))が0.15%以上0.74%以下の範囲内にあるためと考えられる。
また、上記の格子定数差比が0.3%以上0.5%以下であるNo.3〜No.5のサンプルにおいては、さらに特性が優れる傾向が見られた。
なお、本実施例においては、バッファ層41のn型In0.82Ga0.18P層30の格子定数a1と、ボトムセル40aのベース層33の格子定数a2とはそれぞれ、上記のNo.1〜No.7の化合物半導体太陽電池の金属層102による支持基板101の貼り付け前の状態のものをそれぞれX線回折装置に設置し、受光面とは反対側(p型InGaAsからなるコンタクト層35側)からX線を照射することによって、X線回折法により求めた。
また、本実施例においては、ボトムセル40aの特性の評価を行なっているが、ボトムセル40a上にバッファ層41を介してミドルセル40bおよびトップセル40cなどの化合物半導体光電変換セルを設置してたとえば2接合または3接合などの多接合型の化合物半導体太陽電池を作製した場合にも、ボトムセル40aの優れた特性に起因して上記の多接合型の化合物半導体太陽電池の特性も向上することが考えられる。
また、本実施例においては、主に、ボトムセル40aのベース層33の組成を変えることによって上記の格子定数差比を変更しているが、バッファ層41のn型In0.82Ga0.18P層30の組成を変えることによって上記の格子定数差比を変更してもよく、ボトムセル40aのベース層33の組成およびバッファ層41のn型In0.82Ga0.18P層30の組成をそれぞれ変えることによっても上記の格子定数差比を変更してもよい。
今回開示された実施の形態および実施例はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。