JP5980569B2 - 野球又はソフトボール用圧縮バット、及び野球又はソフトボール用圧縮バットの製造方法 - Google Patents

野球又はソフトボール用圧縮バット、及び野球又はソフトボール用圧縮バットの製造方法 Download PDF

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本発明は、野球又はソフトボール用の圧縮バット、及びそれらの製造方法に関するものである。
従来より、木製バットの材料として、青ダモ材、トネリコ材、ヤチダモ材、ホワイトアッシュ材、メープル材等の広葉樹散孔材が使用されている。一般に、これら木製バット材料のうち青ダモ材やトネリコ材は、白木の状態で切削加工して使用することができるものの、現状ではこれら木材資源が枯渇してその調達が困難になってきている。一方、ヤチダモ材は資源そのものは豊富であるものの、その性質上、木材の孔圏内の導管径が大きく、また、導管が数層にもなっているため、白木の状態で切削加工したものを木製バットとして使用すると、反復打球によって木材の導管部に負荷が掛かって木製バットの内部構造に変化が生じることがあった。このため、木製バットとしての強度が十分に維持できないといった問題があった。
このような問題を解決すべく、特許文献1に記載されるような所謂圧縮バットが提案され、実用化されるに至っている。圧縮バットは、木製バットの木質部及び導管部の細胞内にフェノール樹脂、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂等の合成樹脂を強制的に注入して硬化させた後、金型内で圧縮し、加熱硬化させて製造されるものである。含浸される合成樹脂によりその比重が増加し、これにより、圧縮バットの強度を向上させることができる。
ここで、従来の圧縮バットは、次のような工程を経て製造されている。図6(a)に示すように、まず、材料となる木材を円筒形状に切削加工して円筒体80を形成する。次に、円筒体80をフェノール樹脂、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂等の合成樹脂含有溶液81が充填された樹脂含浸装置82内に配置し、真空又は加圧等の方法によって円筒体80に合成樹脂含有溶液81を含浸させる。その後、合成樹脂含有溶液81が含浸された円筒体80を樹脂含浸装置82から取り出し、図6(b)に示すように、断面半円形状の成形面を備えた一対の金型83内で熱圧して圧縮加工することにより含浸された合成樹脂を硬化せしめる。最後に、合成樹脂が硬化した円筒体80をバット形状に切削加工することにより木製の圧縮バット85を製造するものである。
特開2002−191739
しかし、このような従来の製造方法では、図7(a)に示すように、円筒体80に含浸された合成樹脂は、圧縮バット85の表面からおよそ1〜2mmの部分で圧縮硬化されて樹脂含浸部86を形成するに過ぎない。したがって、圧縮バット85の内部にはその効果が及ばず、圧縮バット85の表面の僅かな範囲しか補強の効果が期待できないものであった。また、図7(b)に示すように、合成樹脂を含浸硬化後、円筒体80をバット形状に切削加工しているため、圧縮バット85の打球部85a表面の樹脂含浸部86は切削されることなく保持されるものの、グリップ部85c側では樹脂含浸部86が切削されてしまって補強の効果が維持できなくなってしまう。さらに、樹脂含浸部86の厚みが僅かであることから、グリップ部85cと打球部85aとの間をつなぐテーパー部85bにおいては、打球部85aに比べて僅かに径が細くなる部分であってもその表面の樹脂含浸部86が切削されてしまうため、テーパー部85bのほぼ全体に亘って補強の効果を維持することができなくなってしまう。その結果、樹脂含浸部86は圧縮バット85の打球部85aに残存するのみとなり、圧縮バット85全体の広い領域に亘っての補強効果を期待することはできないものであった。一方、バット形状に切削後に合成樹脂を含浸させて圧縮硬化させる方法も提案されているが、テーパー部85b及びグリップ部85cの形状がバットの種類によって様々に異なることから、この方法でも打球部85aのみを圧縮加工することが一般的となっている。
また、含浸させる合成樹脂自体、木材に比べてその比重が大きく、さらに合成樹脂の種類によってもそれぞれ特有の比重を持っていることから、バットとして最適な比重を確保する観点から見ると、どのような樹脂を選択するか、或いはどの程度の注入量を確保するかによって得られる圧縮バット85の比重が左右されてしまうことになる。その結果、選択する合成樹脂の種類、及びその注入量に制約が生じてしまうという問題もあった。そして、合成樹脂を含浸させる工程では、合成樹脂を溶融させるための有機溶剤を多量に使用する必要があり、環境面からも好ましくないものであった。
本発明は、このような従来技術の問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、合成樹脂を含浸させなくても、高強度で優れた耐久性を備えることが可能な圧縮バットを提供することである。また、別の目的は、合成樹脂を含浸させる工程を経なくても、高強度で優れた耐久性を備えることが可能な圧縮バットを製造するための製造方法を提供することである。
上記の目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、木材を圧縮させてなる圧縮バットであって、打球部の周面における周方向には、木材の圧縮率が異なるとともに異なる密度を有する領域が複数存在することを要旨とする。
複数の突部が長手方向に延びる長尺状の木材を圧縮させて径方向断面円形状とすると、突部が形成された部分と突部が形成されていない部分とで木材の圧縮率が異なる。突部が形成された部分での圧縮率がより大きくなるため、突部が形成された部分を圧縮させてなる部分は、突部が形成されていない部分と比較してより高密度な領域を形成することができる。その結果、径方向断面円形状となった木材周面における周方向の複数箇所が、より大きな圧縮率で圧縮されて高密度領域を形成する。そして、周方向表面に複数形成された高密度領域により、圧縮バット全体の強度を向上させることができる。また、木材を圧縮することにより、当該圧縮された部分ではその比重が増加し、木材全体としての比重も増加することになる。これにより、合成樹脂を含浸させなくても、野球又はソフトボール用バットとして好適な比重を備えるとともに、圧縮バット全体の強度を向上させてその耐久性を向上させることができる。
なお、ここで言う突部とは、長尺状の木材の径方向断面の中心から周面に向かって直線を引いた場合に、最も短い距離を半径とする仮想円を基準として、中心から周面に向かう距離が前記半径より長い部分を言うものとする。すなわち、長尺状の木材を径方向断面円形状のバットに圧縮した場合に、前記仮想円より周方向に突出した突部はより積極的に圧縮されるため高密度な領域を形成することになる。
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、前記異なる密度を有する領域が、打球部の先端からグリップ部基端に至る部分に亘って存在することを要旨とする。
突部が形成された部分を圧縮することにより形成される高密度領域が、圧縮バットの先端から基端に亘って存在しているため、圧縮バット全体に高強度を付与することができる。これにより、圧縮バットにさらなる耐久性を付与することができる。
上記の目的を達成するために、請求項3に記載の発明は、木材を圧縮させてなる圧縮バットの製造方法であって、複数の突部が長手方向に延びる長尺状の木材に高圧水蒸気を注入して該木材を軟化木材とする軟化工程と、前記軟化木材を金型内にて加圧して、径方向の断面が円形状の圧縮木材とする圧縮工程と、前記圧縮木材から水分を蒸発させて硬化木材とする固定化工程と、前記硬化木材をバット形状に切削加工する切削工程と、を含むことを要旨とする。
複数の突部が長手方向に延びる長尺状の木材を圧縮して径方向断面円形状とすると、突部が形成された部分と突部が形成されていない部分とで木材の圧縮率が異なる。圧縮工程では、突部が形成された部分での圧縮率がより大きくなるため、突部が形成された部分を圧縮させてなる部分は、突部が形成されていない部分と比較してより高密度な領域を形成することになる。圧縮工程を経た長尺状の木材は、その周面における周方向の複数箇所が、より大きな圧縮率で圧縮されて、周方向表面に複数の高密度領域が形成された圧縮木材となる。したがって、圧縮木材の材料強度を好適に向上させることができる。また、使用する木材の材質を考慮して圧縮工程前の長尺状の木材の径方向の断面形状、大きさ、突部の形状等を適宜選択すれば、突部が形成された部分での圧縮率が変わる。これにより、高密度領域における比重を適宜変更することができるため、圧縮バット全体の比重を好適な値にすることが可能となる。使用する木材の材質、特にその比重が異なる木材を使用した場合であっても、野球又はソフトボール用バットとして好適な比重を備えるとともに、均質な特性の圧縮バットを得ることができる。
また、圧縮工程前に高圧水蒸気により軟化木材としてから圧縮工程を行い、圧縮工程後に水分を蒸発させて硬化木材とするため、軟化された木材に対して圧力を負荷することとなり、原料となる木材に過度の負荷が掛かることが抑制される。木材内部での剥離、ひび割れ等を好適に抑制することができる。
さらに、突部が形成された部分を径方向断面円形状に圧縮することから、突部が形成された部分を圧縮させてなる部分ではその内部に至るまで高密度領域が形成される。そのため、切削工程において硬化木材を切削して圧縮バットの形状とした場合であっても、打球部のみならず、より径が細く切削量の多い部分にまで高密度領域を残存させることができる。圧縮バットの打球部先端から、より径の細い部分に至るまで存在する高密度領域によって、圧縮バット全体に高い強度を付与することができ、その耐久性を向上させることができる。これにより、合成樹脂を含浸させる工程を経なくても、高強度で優れた耐久性を備えた圧縮バットを製造することができる。
なお、ここで言う突部とは、請求項1に記載の発明と同様、長尺状の木材の径方向断面の中心から周面に向かって直線を引いた場合に、最も短い距離を半径とする仮想円を基準として、中心から周面に向かう距離が前記半径より長い部分を言うものとする。
本発明によれば、合成樹脂を含浸させなくても、高強度で優れた耐久性を備えることが可能な圧縮バットを提供することができる。また、本発明によれば、合成樹脂を含浸させる工程を経なくても、高強度で優れた耐久性を備えることが可能な圧縮バットを製造するための製造方法を提供することができる。
圧縮バットを製造する製造方法を説明する図。(a)は、長尺状の木材の斜視図。(b)は、軟化工程及び圧縮工程において金型内に配置された軟化木材を表す正面図。(c)は、圧縮工程において金型内で加圧された圧縮木材を表す正面図。(d)は、圧縮工程により得られた圧縮木材の斜視図。(e)は、切削工程により得られた成形物(圧縮バット)の斜視図。 圧縮木材の高密度領域を表す断面図。 圧縮バットの説明図。(a)は、圧縮バットの側面図。(b)は、(a)における1−1線断面図。(c)は、(a)における2−2線断面図。 硬化木材の比重分布を表す断面図。 長尺体の変更例。 従来の圧縮バットの製造方法を説明する図。(a)は、木材に合成樹脂を含浸させる工程を説明する図。(b)は、合成樹脂を含浸させた木材を金型内で圧縮する工程を説明する図。 従来の圧縮バットの製造方法により製造された圧縮バットの図。(a)は、圧縮バットの打球部の径方向断面図。(b)は圧縮バットの長手方向の断面図。
以下、野球用の圧縮バット(以下、圧縮バットという。)について、図1及び図2を参照して説明する。
(圧縮バットの製造方法)
図1(a)に示すように、本実施形態の圧縮バットは、木材を切削した長尺体10を材料木材として形成される。長尺体10は端面11が矩形状の直方体として形成されている。ここでは、長尺体10において、相対する一対の側面のうち図1(a)の上下面に位置する側面12の短手方向の長さlが、他方の一対の側面13の短手方向の長さmよりやや短くなるように形成されている。また、側面12の短手方向の長さlは、最終的に形成される圧縮バットの打球部の直径よりやや長くなるように形成されている。なお、長尺体10の長手方向の長さは、最終製品としての圧縮バットの長手方向の長さよりやや長くなるように形成されている。
長尺体10には長手方向に延びる複数の突部14が形成されている。ここで突部14とは、長尺体10の径方向断面の中心から周面に向かって直線を引いた場合に、最も短い距離を半径とする仮想円15を基準として、中心から周面に向かう距離が前記半径より長い部分を言うものとする。本実施形態では、長尺体10の矩形状の端面11において、端面11の中心をその中心とし、側面12の短手方向の長さlをその直径とする仮想円15を想定したとき、仮想円15の外部に位置する部分が本発明の突部に相当する。具体的には、長尺体10の長手方向に延びる4本の側辺近傍に本実施形態の突部14が形成されていることになる。
長尺体10に使用される木材は、野球用バットとして一般的に使用されるものであれば特に限定されるものではない。例えば、トネリコ材、ヤチダモ材、青ダモ材、ホワイトアッシュ材、メープル材、ホオノキ材等の広葉樹散孔材が挙げられる。木材を圧縮する圧縮工程後に野球用バットとして好適な比重を保持する観点から言えば、出発材料としての木材の比重が0.2〜0.6のものを使用することが好ましい。
次に、長尺体10に高圧水蒸気を注入して軟化木材20とする軟化工程、該軟化木材20を金型70内で加圧して圧縮木材30とする圧縮工程、該圧縮木材30から水分を蒸発させて硬化木材40とする固定化工程、及び硬化木材40を切削加工する切削工程について順に説明する。なお、これら各工程のうち、軟化工程、圧縮工程、及び固定化工程は、長尺体10及び金型70を内部に収容可能な内部空間を備えた加工装置内で行う。
まず、長尺体10を軟化木材20とする軟化工程について説明する。軟化工程は、高圧水蒸気を長尺体10に接触させることにより行う。加工装置内には後に説明する圧縮工程で木材の圧縮に使用する金型70があらかじめ配置されている。図1(b)、(c)に示すように、金型70は、上型71と下型72とからなり、上型71の下面71bには、径方向断面が半円状の成形面71aが凹接されるとともに、下型72の上面72bには、径方向断面が半円状の成形面72aが凹接されている。これにより、上型71の下面71bと下型72の上面72bを接触させると、内部に円筒形状の成形空間73が形成される。成形空間73の断面の直径は、圧縮バットの打球部の直径よりやや大きくなるように形成されている。
図1(b)に示すように、まず、水平に設置された下型72から上型71を分離して金型70を型開きし、下型72の成形面72a上に長尺体10を載置する。このとき、下型72の成形面72a上で長尺体10の側面12が水平となるよう位置調整する。その後、加工装置を密閉して該加工装置内の脱気を行う。そして、脱気された加工装置内に高圧水蒸気を導入する。この状態で長尺体10を加工装置内に保持すると、所定時間後、長尺体10内に水蒸気が含浸され、木質部及び導管部等からなる木材組織が軟化された軟化木材20が得られる。なお、長尺体10に接触させる高圧水蒸気の温度範囲、或いは、長尺体10を高圧水蒸気に接触させる時間については長尺体10を構成する木材の材質によって適宜決定することができる。例えば、120〜160℃の高圧水蒸気に10〜60分接触させることで、長尺体10を軟化させるとともに、その含水率を高めることができる。
続いて、軟化木材20を金型70内にて加圧して圧縮木材30とする圧縮工程について説明する。
加工装置内で型開きされた状態の金型70の下型72の成形面72aに載置された軟化木材20に対し、上型71と下型72との間に圧力を負荷しつつ型締めを行って軟化木材20をプレス加工する。プレス加工時に負荷する圧力は、長尺体10を構成する木材の材質、或いは、長尺体10の断面形状及び大きさ等によって適宜決定することができる。なお、軟化木材20の含水率を保持するために、加工装置内には軟化工程における高圧水蒸気と同程度の温度の高圧水蒸気が充填された状態となっている。
金型70に所定の圧力を所定時間負荷することにより金型70の成形空間73内で軟化木材20が圧縮されて、成形面71a、72aに沿った円筒形状の圧縮木材30が得られる。ここで得られた圧縮木材30は、直方体の長尺体10を軟化、圧縮することにより円筒形状とされていることから、長尺体10の側辺近傍に位置する突部14が圧縮されてなる部分ではその圧縮率が大きくなっている。図2に示すように、この部分では木材の密度が高くなった高密度領域31が形成され、長尺体10を構成する木材に比べてその比重が高くなっている。
次に圧縮木材30から水分を蒸発させて硬化木材40とする固定化工程について説明する。
まず、前記圧縮工程で得られた圧縮木材30を金型70の成形空間73内に保持したままの状態で加工装置内の温度をさらに昇温させ、圧縮木材30に対して、軟化工程及び圧縮工程より高温での高圧水蒸気処理を行う。このときの昇温幅は、長尺体10を構成する木材の材質やその断面形状、大きさ等によって適宜決定することができるが、例えば、軟化工程及び圧縮工程における加工装置内の温度からさらに20〜80℃昇温させることが好ましい。なお、木材の耐熱温度の観点から言うと、昇温により加工装置内が200℃以下に設定されるようにすることがより好ましい。高圧水蒸気処理を所定時間行なった後、加熱装置内への高圧水蒸気の導入を停止し、余熱状態で加工装置内を真空にする。この状態で、圧縮木材30を加工装置内に所定時間保持する。その後、加工装置内の真空状態を解除し、加工装置内の温度が常温に戻るまでさらに保持し続ける。これにより、図1(d)に示すように、圧縮木材30の水分が蒸発されてその含水率が低下するとともに、圧縮木材30内部の木材組織の構造が固定化され、その圧縮状態が維持された硬化木材40が得られる。その後、加工装置を開放して内部から金型70とともに硬化木材40を取り出す。ここで得られた硬化木材40は、圧縮バットに適した含水率を備えるとともに、木材組織の内部構造が固定化されて、含水率が変化しない状態に維持されている。
続いて、硬化木材40を切削加工する切削工程について説明する。図1(e)に示すように、硬化木材40を切削することにより野球用のバットの形状に加工された成形物50が形成される。その後、成形物50の表面に研磨加工、表面塗装等を施すことにより圧縮バット60が製造される。
以上説明したように、軟化工程、圧縮工程、固定化工程、及び切削工程を経ることにより、全体の比重が0.6〜0.8で、含水率が6〜12%の圧縮バット60を得ることができる。
このようにして得られた圧縮バット60内の密度分布について図3を参照して説明する。図3(a)に示すような形状に切削加工されて得られた圧縮バット60は、その周面のみならず、その内部に至るまで木材の高密度領域64が形成されている。図3(b)は、図3(a)の圧縮バット60における1−1線断面図であり、打球部61での木材の密度分布を表している。打球部61の周面における周方向には、高密度領域64が複数表出するとともに、高密度領域64の密度より低い密度を有する領域65も複数表出している。また、高密度領域64は、打球部61の内部にまで形成されている。さらに、図3(c)は、図3(a)の圧縮バット60における2−2線断面図であるが、グリップ部63でも同様に周面における周方向には、高密度領域64が複数表出するとともに、高密度領域64の密度より低い密度を有する領域65が複数表出している。そして、高密度領域64は、グリップ部63の内部にまで形成されている。このような内部構造は、打球部61とグリップ部63との間に位置するテーパー部62においても同様である。このように、本実施形態の圧縮バットの製造方法により得られた圧縮バット60では、打球部61の先端から、グリップ部63の基端に至るまで、その周面における周方向に異なる密度を有する領域が複数存在するとともに、材料木材の密度より高い密度を備えた高密度領域64が圧縮バット60の内部にまで形成されることになる。
(作用)
以上詳述した本実施形態の圧縮バットの製造方法の作用について以下に説明する。
直方体の長尺体10を軟化、圧縮することにより円筒形状の圧縮木材30を形成していることから、圧縮木材30において、長尺体10の側辺近傍に位置する突部14を圧縮してなる部分には高密度領域31が形成される。圧縮バット60は、周方向に高密度領域31が複数存在する圧縮木材30を硬化させて切削することにより成形されているため、圧縮バット60の周方向にも圧縮木材30と同様に高密度領域64が複数存在することになる。
また、軟化木材20を圧縮させてなる圧縮木材30の高密度領域31ではその比重が大きくなるとともに、圧縮木材30を硬化、切削して成形された圧縮バット60の高密度領域64でもその比重が大きくなる。
圧縮木材30における高密度領域31は、圧縮木材30の内部にまで形成されていることから、圧縮木材30を切削加工されて圧縮バット60として成形された場合にも、打球部61のみならず、グリップ部63に至るまで高密度領域64が存在することになる。圧縮木材30に形成された高密度領域31は、その領域を保持したまま圧縮バット60の高密度領域64として形成される。したがって、圧縮バット60の表面だけでなく内部にまで高密度領域64が形成される。
長尺体10を高圧水蒸気に所定時間曝すことで、長尺体10を構成する木材は、木質部及び導管部等の木材組織が熱軟化して可塑的状態に移行する。可塑化状態に移行した軟化木材20は、小さな応力でも変形し易くなる。
(効果)
以上詳述した本実施形態によれば、次のような効果を奏することができる。
(1)内部にまで高密度領域31が形成された圧縮木材30を固定化して硬化木材40としているため、硬化木材40を切削して成形された成形物50では、その先端から基端に至るまでその周面及び内部に亘って高密度領域を存在させることができる。したがって、得られた圧縮バット60の全体に亘って高密度領域64が存在することになり、圧縮バット60の強度を好適に高めることが可能となる。合成樹脂を含浸させることなく、耐久性に優れた圧縮バット60を得ることができる。
(2)長尺体10を圧縮して圧縮木材30とすることにより、材料木材の比重を高めることができる。材料木材に合成樹脂を含浸させなくても、圧縮バット60に野球用バットとして好適な比重を付与することができる。
(3)長尺体10を圧縮して圧縮木材30とする際の圧縮率を変えることで、得られる圧縮バット60の比重を調整することができる。長尺体10を構成する木材の比重によって、長尺体10の形状、大きさを適宜調整すれば、野球用バットとして好適な比重を実現することができる。また、長尺体10を構成する木材の材質にばらつきがあったとしても、その材質を均質化することができる。使用する木材が持つ個々の材質のばらつきを減少させ、均一な特性を備えた圧縮バット60を提供することができる。
(4)高圧水蒸気により長尺体10を軟化させて軟化木材20として変形し易くしていることから、金型内で圧縮する際、軟化木材20内部に過度の負荷が掛かることを抑制することができる。木材等の高分子物体は低温域では組織が硬く、いわゆるガラス状態にあるが、軟化点を超えた状態に置くと可塑化状態に移行してその形状を変形させることが可能となる。このような状態で圧縮工程を行うことで、木材組織内部での剥離、ひび割れ等を好適に抑制することができる。
(5)合成樹脂を含浸させる工程が存在しないため、合成樹脂を溶解する有機溶媒を多量に使用する必要がない。環境面にも配慮した優れた製造方法を提供することができる。
なお、上記実施形態は以下のように変更してもよく、また、以下の変更例を組み合わせて適用してもよい。
・ 本実施形態では、複数の突部14が長手方向に延びる長尺体10として直方体のものを使用したが、形状はこれに限定されるものではない。図5(a)に示すように、端面11が五角形状の長尺体10でもよく、或いは端面11が三角形状、六角形状等の多角形状のものでもよい。図5(b)に示すように、端面11が楕円形状であってもよい。また、図5(c)に示すように、長尺状の木材の相対する一対の側面のうち一方の側面13が平面状に形成されるとともに、他方の側面12が曲面状に形成されていてもよい。さらに、図5(d)に示すように、多角柱体に形成されず、凸部16と凹部17とが交互に形成されているものでもよく、図5(e)に示すように、端面11において不規則に形成された凸部16が、長尺体10の長手方向に延びるものでもよい。或いは、図5(f)に示すように、凸部16が長尺体10の長手方向の長さ全体に亘って形成されるものではなく、長手方向の長さより短い凸部16が複数形成されるようにしてもよい。これらいずれの場合も、長尺体10の端面11の中心から周面に向かって直線を引いた場合に、最も短い距離を半径とする仮想円15を基準として、前記中心から周面に向かう距離が前記半径より長い部分を突部14と言うものとする。
・ 本実施形態では、圧縮バット60の打球部61先端からグリップ部63基端に至るまで高密度領域64が存在するようにしたが、これに限定されるものではない。打球部61先端からグリップ部63の途中まで形成されていてもよく、テーパー部62の基端まで形成されていてもよく、また、テーパー部62の途中まで形成されていてもよい。長手方向に延びる突部の形状により、圧縮バット60内部における高密度領域64の形成態様を適宜変更することができる。
・ 本実施形態では、長尺体10を直方体として形成したがこの形状に限定されるものではない。長尺体10の一方の端面11と他方の端面11の大きさを異なるように形成して、一方の端面11から他方の端面11に向けて長尺体10の側面12、13の短手方向の長さl、mが徐々に小さくなるように形成してもよい。このような長尺体10を圧縮させて形成された圧縮バット60では、グリップ部63側での高密度領域64の残存量をより多くすることが可能となる。
・ 本実施形態では、長尺体10の両端面11がともに長方形状の直方体として形成したが、一方の端面11の形状と他方の端面11の形状とを異なるように形成してもよい。つまり、一方の端面11側での突部14の数と、他方の端面11側での突部14の数とが異なるように形成してもよい。
・ 本実施形態では、長尺体10の側面12の短手方向の長さlを側面13の短手方向の長さmより短くなるようにl<mとして形成したが、l=mであってもよく、また、l>mであってもよい。
・ 本実施形態では、合成樹脂を含浸させることなく、圧縮バット60を形成したが、場合によっては、合成樹脂を含浸させる工程を付加してもよい。
・ 本実施形態では、固定化工程において加工装置内の温度を20〜80℃昇温させたが、このような方法に限定されない。昇温幅をこれと異なるように設定してもよく、或いは、昇温させることなく固定化処理を行なってもよい。
・ 本実施形態では、野球用バットを製造する製造方法として具体化したが、これに限定されるものではない。ソフトボール用バットの製造方法として具体化してもよく、また、ノック用に使用される野球用バットの製造方法として具体化してもよい。
上記実施形態及び変更例から把握できる技術的思想について記載する。
(イ)前記長尺状の木材は、断面多角形状である。
(ロ)木材を圧縮させてなる圧縮バットの製造方法であって、合成樹脂を含浸させる工程を含まない圧縮バットの製造方法。
(実施例)
材料木材としてホオノキを用い、切削することにより長尺体10を形成した。長尺体10は、側面12の短手方向の長さlを65mm、側面13の短手方向の長さmを75mm、長手方向の長さを1000mmとして形成した。長尺体10を加工装置内の金型70内に配置し、該加工装置内の脱気を行った後、加工装置内に120〜160℃の高圧水蒸気を導入した。高圧水蒸気導入後、加工装置内に20〜30分保持すると、水蒸気が長尺体10に含浸され、木質部及び導管部等からなる木材組織が軟化された軟化木材20が得られた。続いて、軟化木材20が載置された金型70の下型72に対して上型71を型閉めし、加工装置内に120〜160℃の高圧水蒸気を充填させた状態を保持しながらプレス加工による圧縮を行った。プレス加工は、徐々に圧力を加えるようにして軟化木材20に急激に過度の負荷が加わらないようにして行い、圧力を加え始めてから5分経過後には最終的に14〜16kg/cmの圧力となるようにして行った。ここで得られた円筒形状の圧縮木材30を金型70の成形空間73内に保持したまま加工装置内に導入する高圧水蒸気の温度をさらに20〜40℃昇温させて140〜180℃での高圧水蒸気処理を行なった。この状態で圧縮木材30を加工装置内に10〜20分保持し、その後加工装置への高圧水蒸気の導入を停止した。余熱状態のなか、加工装置内の脱気を行って真空状態とし、30〜40分経過後加工装置内の真空状態を解除して加工装置内が常温に戻るまで放置した。常温に戻った後、加工装置内から圧縮木材30の形状が固定された硬化木材40を取り出した。
このようにして得られた硬化木材40について、図4に丸囲み数字で表された部位での比重を実測した数値を表1に示す。比重の測定方法は、各部位から三角柱状或いは直方体状の試験片を切り出し、それぞれの体積及び質量を実測することによりその比重を算出したものである。なお、圧縮前の長尺体10の比重は0.462、圧縮後の硬化木材40の全体の比重は0.579であった。
表1では、硬化木材40全体の比重に対する比率が1以上の部位を高密度領域31として表している。図4及び表1から明らかなように、高密度領域31は、硬化木材40の内部にまで形成されていることがわかる。
10…長尺体(長尺状の木材)、14…突部、20…軟化木材、30…圧縮木材、40…硬化木材、60…圧縮バット、61…打球部、63…グリップ部、70…金型。

Claims (3)

  1. 木材を圧縮させてなる圧縮バットであって、
    球部の周面における周方向には、木材の圧縮率が異なるとともに異なる密度を有する領域が複数存在する圧縮バット。
  2. 前記異なる密度を有する領域が、打球部の先端からグリップ部基端に至る部分に亘って存在する請求項1に記載の圧縮バット。
  3. 木材を圧縮させてなる圧縮バットの製造方法であって、
    複数の突部が長手方向に延びる長尺状の木材に高圧水蒸気を注入して該木材を軟化木材とする軟化工程と、
    前記軟化木材を金型内にて加圧して、径方向の断面が円形状の圧縮木材とする圧縮工程と、
    前記圧縮木材から水分を蒸発させて硬化木材とする固定化工程と、
    前記硬化木材をバット形状に切削加工する切削工程と、
    を含む圧縮バットの製造方法。
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