JP5980519B2 - Ampk活性化剤 - Google Patents

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本発明は、AMPK活性化剤に関する。本発明は、特には、AMPK活性化剤を含有する運動代替組成物、肥満予防および/もしくは改善組成物、細胞賦活組成物、皮膚外用組成物、または飲食品に関する。
AMPK(AMP−activated protein kinase)は、酵母から植物、哺乳動物に至るほとんどの真核細胞に広く発現するセリン/スレオニンキナーゼであり、細胞のエネルギー代謝の調節因子として重要な役割を担っている。AMPKは、細胞内AMP:ATP比の上昇(細胞内ATPレベルの低下)に反応して活性化され、エネルギー生産経路の下流の基質をリン酸化することにより、脂肪酸酸化や糖取り込みなどを促進し、ATPレベルを回復させる。AMPKは、触媒作用を有するαサブユニットと、調節作用を有するβサブユニットとγサブユニットとから構成される3量体である。αサブユニットには、AMPKα1とAMPKα2のサブタイプがあり、両者とも、同じβ、γサブユニットと複合体を形成する。
これまでに、AMPKを活性化させる物質は、持久筋力の低下防止・向上に効果があることが示されている(非特許文献1)。また、AMPKの活性化は、線虫(C.elegans)において老化を遅らせることが示されており、哺乳動物においても加齢に関連した病理的変化の治療標的としても重要視されている(非特許文献2)。一方、AMPKα1及びAMPKα2の両方の活性が低下した変異マウスでは、正常なマウスであれば脂肪量が減少するだけの運動量を与えても、脂肪量が有意に減少しないことが近年確認されており(特許文献1)、AMPK機能の低下は、耐糖能異常、高脂血症、高血圧、冠動脈疾患、動脈硬化性疾患などのリスクファクターであることが示唆されている。
AMPKの活性化に関する研究において、最も影響力の高いとされる発見の一つに、AMPK活性化が骨格筋の構築に直接的に結びつくことを示されたことが挙げられる。Ronald Evans博士らは、AMPKアゴニストであるAICAR(5−アミノイミダゾール−4−カルボキサミド)をマウスに4週間にわたって経口摂取させたところ、運動をさせていないにも拘らず走行時の持久力が44%向上することを確認した(非特許文献3)。また、同報告によると、AICAR摂取群は、コントロール群のマウスに比べ、体重に対する皮下脂肪の割合が減少し、体重に変化がない状態での酸素消費量が向上する。
したがって、AMPKを活性化させる薬剤は、耐糖能異常、高脂血症、高血圧、冠動脈疾患、動脈硬化性疾患、肥満などの予防及び治療や、筋肉量・筋力の増強による健康増進に有用であると考えられている。
最近の研究により、AMPKは、AICARの他、糖尿病治療薬であるメトフォルミン等によっても活性化されることが見出されている(非特許文献4)。しかし、これらの化学合成薬剤は、副作用を有するという問題があり、食品中への使用が困難であった。そのため、副作用が少なく、安全性の高い、様々な用途に加工性の優れたAMPK活性化剤が望まれている。
一方、牛の生乳は、優良な栄養価値を持つことから幅広く消費され、優れたカルシウム源として広く認知されている。一方で、生乳に含まれるホエイタンパク質が、骨の強化に機能的に働くことが、いくつかの報告により示唆されている(非特許文献5、6)。特に、牛のミルク由来のホエイタンパク質の塩基性画分は、骨生理学的に有用であることが証明されており、その主とする作用機序は破骨細胞による骨吸収阻害を介したものと考えられている。また、最近になって、ホエイタンパク質の低分子画分(1−30kDa)において、骨形成の促進を担う活性成分が、濃縮乳清活性タンパク質(Concentrated Bovine whey milk active Protein;CBP)画分として特定された(非特許文献7)。同報告において、卵巣摘出された若齢ラットのCBP摂取群では、対照群に比べ有意に大腿の骨強度を増加したことが示されている。しかしながら、ホエイタンパク質及びCBP画分のAMPKに対する作用は、これまで全く知られていない。
特開2007−082508号公報 Steinberg, G.R.et al., Physiol Rev., Vol. 89, No. 3, pp. 1025-78(2009) Mair , W. et al., Nature, Vol. 470, No. 7334, pp. 404-8(2011) Narkar, V.A. et al., Cell, Vol. 134, No. 3, pp. 405-15(2008) Minokoshi, Y. et al., Nature, Vol. 415, No. 6869, pp. 339-43(2002) Rao, P.U. et al., Indian J. Biochem. Biophys., Vol. 10, No. 2, pp. 87-90(1973) Donovan, S.M. et al., Annu. Rev. Nutr., Vol. 14, pp. 147-67(1994) Lee, J. et al., Biosci Biotechnol Biochem., Vol. 72, No. 1, pp. 1-6(2008)
本発明は、副作用が少なく、安全性の高い、様々な用途に加工性の優れたAMPK活性化剤を提供することを目的とする。
本発明者らは、AMPK活性化に有効な成分を探索した結果、ホエイタンパク質及びそのCBP画分がAMPK活性化作用を有し、耐糖能異常、高脂血症、高血圧、冠動脈疾患、動脈硬化性疾患、肥満などの予防及び治療や、筋肉量・筋力の増強による健康増進に有用であることを見出した。
さらに、本発明者らは、ホエイタンパク質が皮膚線維芽細胞に対する細胞賦活化効果を有し、皮膚老化の防止を目的とした皮膚外用組成物に有用であることを見出した。
すなわち、本発明は、一実施例形態によれば、ホエイタンパク質またはホエイタンパク質の断片を含有するAMPK活性化剤を提供するものである。
前記ホエイタンパク質は、βラクトグロブリンであることが好ましい。
前記ホエイタンパク質の断片は、Tyr−Leu−Leu−Phe(配列番号1)、Ala−Leu−Pro−Met(配列番号2)、His−Ile−Arg−Leu(配列番号3)、Asp−Ile−Gln−Lys−Val−Ala−Gly−Thr−Trp(配列番号4)およびSer−Phe−Asn−Pro−Thr−Gln−Leu−Glu−Glu−Gln−Cys−His−Ile(配列番号5)からなる群から選択される1以上のペプチド断片を含むことが好ましい。
前記ホエイタンパク質またはホエイタンパク質の断片は、N末端および/またはC末端が修飾されることにより誘導体化されていることが好ましい。
また、本発明は、別の実施形態によれば、上記AMPK活性化剤を含有する運動代替組成物、肥満予防および/または改善組成物、皮膚外用組成物、細胞賦活組成物、ならびに飲食品を提供するものである。
本発明に係るAMPK活性化剤は、食経験の豊富な安全な食品である生乳に含まれる天然の成分を原料としているため、極めて安全生が高く、副作用を伴うことなくAMPK活性を増強させることができる。また、本発明に係るAMPK活性化剤を用いることにより、副作用がなく安全な運動代替組成物、肥満予防および/または改善組成物、皮膚外用組成物、細胞賦活組成物、ならびに飲食品を提供することが可能となる。
マウス由来筋芽細胞(C2C12細胞)における、βラクトグロブリンによるAMPK活性化を示す図である。 マウス由来筋芽細胞(C2C12細胞)における、βラクトグロブリン加水分解物によるAMPK活性化を示す図である。 HPLC分離したホエイタンパク質断片画分のAMPK活性化を確認した図である。 HPLC分離したホエイタンパク質断片画分15について質量分析を行った図である。 マウス由来筋芽細胞(C2C12細胞)における、合成したβラクトグロブリン断片によるAMPK活性化を示す図である。 未精製ホエイタンパク(レーンa)、βラクトグロブリンを高濃度に含有するよう調製されたホエイタンパク(β−LG−WP、レーンb)、βラクトグロブリン精製品(β−LG、レーンc)、およびαラクトアルブミン精製品(α−LA、レーンd)の電気泳動結果を示す図である。 βラクトグロブリン高含有のホエイタンパクのヒト由来皮膚線維芽細胞(NHDF細胞)に対する細胞賦活効果を示す図である。 βラクトグロブリン高含有のホエイタンパクのヒト由来皮膚線維芽細胞(NHDF細胞)に対する細胞賦活効果を示す図である。 βラクトグロブリン高含有のホエイタンパクおよび合成したβラクトグロブリン断片のヒト由来皮膚線維芽細胞(NHDF細胞)に対する細胞賦活効果を示す図である。
本発明は、第一実施形態によれば、AMPK活性化剤である。本実施形態によるAMPK活性化剤は、ホエイタンパク質またはホエイタンパク質の断片を含んでなる。
「ホエイタンパク質」とは、ウシ、ヒツジ、ヒトなどの生乳から、カゼインと乳脂肪を取り除いた乳清(ホエイ)に含まれるタンパク質の総称である。主なホエイタンパク質としては、例えば、βラクトグロブリン、αラクトアルブミン、免疫グロブリン、グリコマクロペプチド、ラクトフェリンなどが挙げられる。本実施形態で使用されるホエイタンパク質は、好ましくはウシのβラクトグロブリン(配列番号7)である。
本実施形態のAMPK活性化剤に含まれるホエイタンパク質の断片は、好ましくはβラクトグロブリンの断片である。特に好ましくは、βラクトグロブリンの102〜105番目のアミノ酸配列であるTyr−Leu−Leu−Phe(配列番号1)、βラクトグロブリンの142〜145番目のアミノ酸配列であるAla−Leu−Pro−Met(配列番号2)、βラクトグロブリンの146〜149番目のアミノ酸配列であるHis−Ile−Arg−Leu(配列番号3)、βラクトグロブリンの11〜19番目のアミノ酸配列であるAsp−Ile−Gln−Lys−Val−Ala−Gly−Thr−Trp(配列番号4)、またはβラクトグロブリンの150〜162番目のアミノ酸配列であるSer−Phe−Asn−Pro−Thr−Gln−Leu−Glu−Glu−Gln−Cys−His−Ile(配列番号5)である。
ホエイタンパク質は、ウシの生乳から抽出、限外濾過、電気透析、エバポレーション、逆浸透などによって得られたものを用いることができる。あるいは、微生物を用いて生合成したものや、有機合成化学的に人工合成したものであってもよい。
ホエイタンパク質の断片は、ホエイタンパク質を加水分解することにより得られたものを用いることができる。あるいは、微生物を用いて生合成したものや、有機合成化学的に人工合成したものであってもよい。
ホエイタンパク質を加水分解することによりホエイタンパク質断片を得る場合には、ホエイタンパク質溶解液を、キモトリプシン、トリプシン、ペプシンなどの酵素により得ることができる。ホエイタンパク質の加水分解物は、HPLC(ゲルろ過およびODSカラム)において各々のペプチド含有画分を精製する。さらに、単一のホエイタンパク質ペプチド成分を得るために、イオン交換クロマトグラフィーおよびカーボンカラムを用いて精製し得ることができる。
ホエイタンパク質またはホエイタンパク質断片を微生物により生合成する場合には、ホエイタンパク質またはホエイタンパク質断片をコードする遺伝子を導入した発現ベクターを作製し、発現ベクターを発現用の宿主細胞である微生物に導入し、得られた形質転換体を培養し、得られた培養物からホエイタンパク質またはホエイタンパク質の断片を分離精製することが可能である。宿主細胞である微生物には、大腸菌、枯草菌、放線菌、酵母など一般的なものを用いることができる。例えば、大腸菌としては、JM109株などがよく用いられる。また、分離精製は、通常の方法に従って行うことができ、例えば、イオン交換クロマトグラフィー、カラムクロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィーなどが挙げられる。
ホエイタンパク質またはホエイタンパク質断片を有機合成化学的に人工合成する場合には、従来公知の液相法または固相法により合成することが可能である。例えば、ペプチド合成機器を用いて、一般的プロトコールに従って、C末端よりFmoc法により合成することができる。合成されたペプチドは、例えばHPLC(逆相カラム)などにより精製することができる。
ホエイタンパク質またはホエイタンパク質の断片は、N末端またはC末端あるいはそれらの両方が修飾されることにより誘導体化されていてもよい。生体内における安定性を改善するためである。N末端修飾の例としては、アセチル化、サクシニル化、アシル化などが挙げられる。C末端修飾の例としては、アミド化などが挙げられる。特に好ましくは、N末端はアセチル化、C末端はアミド化により誘導体化される。
上記のように得られたホエイタンパク質、もしくはホエイタンパク質断片、またはそれらの誘導体は、これらから選ばれる単独または2以上の混合物を、AMPK活性化剤の有効成分とすることができる。AMPK活性化剤は、有効成分のみから構成されていてもよいが、さらに任意の成分として、担体を含んでいてもよい。担体は、公知の飲食品用担体、化粧品用担体、医薬部外品用担体、または治療薬用担体などであってよい。
AMPK活性化剤を製造するには、定法に従って、ホエイタンパク質、もしくはホエイタンパク質断片、またはそれらの誘導体を、必要に応じて上記公知の担体と組み合わせて製剤化すればよい。AMPK活性化剤において、有効成分であるホエイタンパク質、もしくはホエイタンパク質断片、またはそれらの誘導体は、各形態に応じた範囲で適切な摂取量となるように含有されれば良い。AMPK活性化剤において、有効成分であるホエイタンパク質、もしくはホエイタンパク質断片、またはそれらの誘導体は、その摂取量が、通常成人1日当たり0.01mg/kg(体重)以上、好ましくは0.1mg/kg(体重)以上となるように、AMPK活性化剤における含有量を調製することが好ましいが、かかる範囲には限定されない。摂取量の上限は、1日当たり、120mg/kg(体重)以下が好ましく、12mg/kg(体重)以下がより好ましい。
AMPK活性化剤は、医薬品として製造することができる。この場合には、AMPK活性化剤は、AMPK活性化効果を有するホエイタンパク質、もしくはホエイタンパク質断片、またはそれらの誘導体を、薬学的に許容できる液状又は固体状の担体と配合することにより製造される。また、所望により、溶剤、分散剤、乳化剤、緩衝剤、安定剤、賦形剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤などを加えて、錠剤、顆粒剤、散剤、粉末剤、カプセル剤等の固形剤や、通常液剤、懸濁剤、乳剤などの液剤とすることができる。
AMPK活性化剤を経口用医薬品とする場合は、錠剤、丸剤、カプセル剤、散剤、細粒剤、顆粒剤等とすることができ、たとえば、デンプン、乳糖、白糖、マンニット、カルボキシメチルセルロース、コーンスターチ、無機塩などが利用される。また経口剤の調製にあたっては、更に結合剤、崩壊剤、界面活性剤、潤沢剤、流動性促進剤、矯味剤、着色剤、香料などを配合することもできる。たとえば、錠剤または丸剤とする場合は、所望によりショ糖、ゼラチン、ヒドロキシプロピルセルロースなどの糖衣または胃溶性もしくは腸溶性物質のフィルムで被覆してもよい。液体組成物からなる経口剤とする場合は、薬理学的に許容される乳濁剤、溶液剤、懸濁剤、シロップ剤などとすることができ、例えば、精製水、エタノールなどが担体として利用される。また、さらに所望により湿潤剤、懸濁剤のような補助剤、甘味剤、風味剤、防腐剤などを添加してもよい。
AMPK活性化剤を非経口用医薬品とする場合は、常法に従い本発明の前記有効成分を希釈剤としての注射用蒸留水、生理食塩水、ブドウ糖水溶液、注射用植物油、ゴマ油、落花生油、大豆油、トウモロコシ油、プロピレングリコール、ポリエチレングリコールなどに溶解ないし懸濁させ、必要に応じ、殺菌剤、安定剤、等張化剤、無痛化剤などを加えることにより調製することができる。また、固体組成物を製造し、使用前に無菌水または無菌の注射用溶媒に溶解して使用することもできる。
さらに上記AMPK活性化剤には、所望により、着色剤、保存剤、香料、風味剤、甘味剤などの薬学的に許容される添加物や他の治療薬を含有させることができる。
また、AMPK活性化剤の製剤化に際しては、安定化剤を配合することが好ましい。安定化剤としては、例えば、アルブミン、グロブリン、ゼラチン、マンニトール、グルコース、デキストラン、エチレングリコールなどが挙げられる。
製剤中に含有される有効成分の量は、種々の条件、例えば抽出溶媒の種類、使用した溶媒の使用量等によっても変動する。そのため、有効成分の量は、上記好ましい摂取量より少ない量で十分な場合もあるし、あるいは範囲を超えて必要な場合もある。
AMPK活性化剤を医薬部外品として製造する場合には、飴類、ガム類、歯磨き粉類、液体歯磨き剤類、ジェル状歯磨き剤類、飲料類等とすることができる。また、医薬部外品には、医薬部外品で通常用いられている任意成分を、本発明の目的を達成する範囲内で配合することができる。
医薬部外品は、この分野で通常知られた慣用的な方法により製造される。
医薬部外品におけるホエイタンパク質、もしくはホエイタンパク質断片、またはそれらの誘導体の添加量は、医薬部外品の形態ごとに応じた範囲で前述した摂取量となる量であれば良く、医薬部外品には、0.0003〜10重量%の範囲内で添加することが好ましい。例えば、固体状の医薬部外品に対し、0.0003〜10重量%、液体状の医薬部外品に対し、0.0003〜5重量%、ジェル又はペースト状の医薬部外品に対し、0.0003〜5重量%の範囲内で添加することが好ましい。さらに具体的には、以下に限定されないが、例えば、ペットガムには、0.0003〜5重量%、歯磨き粉に対し、0.0003〜5重量%の範囲内で添加することが好ましい。
本実施形態のAMPK活性化剤は、運動代替組成物、肥満予防および/または改善組成物、細胞賦活組成物、皮膚外用組成物の成分として添加することができる他、飲食品に添加することができる。
本実施形態のAMPK活性化剤は、耐糖能異常、高脂血症、高血圧、冠動脈疾患、動脈硬化性疾患、肥満予防及び治療や、筋力の増強による健康増進に有用である。また、本実施形態のAMPK活性化剤は、皮膚の張りや肌の保湿性の改善に有用である。
本発明は、第二実施形態によれば、AMPK活性化剤を含有する運動代替組成物である。本実施形態による運動代替組成物は、ホエイタンパク質、もしくはホエイタンパク質断片、またはそれらの誘導体から選ばれる単独または2以上の混合物を含んでなるAMPK活性化剤と、任意の成分とを含有する。ここでいう任意の成分は、通常の医薬品成分または医薬部外品成分であってよく、通常用いられている各種形態、例えば、散剤、顆粒剤、錠剤、カプセル剤、液剤等として製品化される。
「運動代替組成物」とは、運動をしなくても、運動をしたときと同様に脂質代謝や糖代謝などのエネルギー代謝を活性化することができる組成物を意味する。
運動代替組成物におけるホエイタンパク質、もしくはホエイタンパク質断片、またはそれらの誘導体の添加量は、組成物の形態ごとに応じた範囲で前述した摂取量となる量であれば良い。例えば、0.0003〜10重量%の範囲内で添加することが好ましい。
本実施形態の運動代替組成物は、経口的または非経口的に摂取されることができ、好ましくは、経口的に摂取される。
本実施形態の運動代替組成物は、AMPKを活性化することにより、運動したのと同様のエネルギー消費の促進をもたらすため、運動不足や老化を原因とする筋力低下、血行不良など種々の症状の予防または改善に有用である。また、運動代替組成物は、運動をしなくても運動したのと同様のエネルギー消費の促進をもたらすため、運動をすることができない身体障害者にも有用である。
本発明は、第三実施形態によれば、AMPK活性化剤を含有する肥満予防および/または改善組成物である。本実施形態による肥満予防および/または改善組成物は、ホエイタンパク質、もしくはホエイタンパク質断片、またはそれらの誘導体から選ばれる単独または2以上の混合物を含んでなるAMPK活性化剤と、任意の成分とを含有する。ここでいう任意の成分は、通常の医薬品成分または医薬部外品成分であってよく、通常用いられている各種形態、例えば、散剤、顆粒剤、錠剤、カプセル剤、液剤等として製品化される。
「肥満予防および/または改善組成物」とは、体脂肪や内臓脂肪の蓄積を抑制または低減させることにより、肥満症状を予防および/または改善できる組成物を意味する。
肥満予防および/または改善組成物におけるホエイタンパク質、もしくはホエイタンパク質断片、またはそれらの誘導体の添加量は、組成物の形態ごとに応じた範囲で前述した摂取量となる量であれば良い。例えば、0.0003〜10重量%の範囲内で添加することが好ましい。
本実施形態の肥満予防および/または改善組成物は、経口的または非経口的に摂取されることができ、好ましくは、経口的に摂取される。
本実施形態の肥満予防および/または改善組成物は、AMPKを活性化することにより、脂質代謝を促進し、体脂肪および内臓脂肪を低減させ、または、脂肪の蓄積を抑制して、肥満症状を予防または改善するために有用である。
本発明は、第四実施形態によれば、AMPK活性化剤を含有する細胞賦活組成物である。本実施形態による細胞賦活組成物は、ホエイタンパク質、もしくはホエイタンパク質断片、またはそれらの誘導体から選ばれる単独または2以上の混合物を含んでなるAMPK活性化剤と、任意の成分とを含有する。ここでいう任意の成分は、通常の医薬品成分または医薬部外品成分であってよく、通常用いられている各種形態、例えば、散剤、顆粒剤、錠剤、カプセル剤、液剤等として製品化される。
「細胞賦活組成物」とは、細胞の活性を向上させる機能を有する組成物を意味する。
細胞賦活組成物におけるホエイタンパク質、もしくはホエイタンパク質断片、またはそれらの誘導体の添加量は、組成物の形態ごとに応じた範囲で前述した摂取量となる量であれば良い。例えば、0.0003〜10重量%の範囲内で添加することが好ましい。
本実施形態の細胞賦活組成物は、経口的または非経口的に摂取されることができ、好ましくは、経口的に摂取される。
本実施形態の細胞賦活組成物は、AMPKを活性化することにより、細胞の生理活動を亢進させ、皮膚の張りや肌の保湿性を改善させるために有用である。また、本実施形態の細胞賦活組成物は、AMPKを活性化することにより、細胞の生理活動を亢進させ、細胞におけるコラーゲン産生を促進させるために有用である。
本発明は、第五実施形態によれば、AMPK活性化剤を含有する皮膚外用組成物である。本実施形態による皮膚外用組成物は、ホエイタンパク質、もしくはホエイタンパク質断片、またはそれらの誘導体から選ばれる単独または2以上の混合物を含んでなるAMPK活性化剤と、任意の成分とを含有する。ここでいう任意の成分は、医薬品成分、医薬部外品成分、化粧品成分であってよく、好ましくは化粧品成分である。
本実施形態の皮膚外用組成物は、化粧品とすることができる。化粧品には、老化防止用化粧品、クレンジング用化粧品、頭髪用化粧品、入浴用化粧品、医療用化粧品などが挙げられる。また、それらは、顔料、化粧水、美容液、乳液、クリーム、ジェル、パック、リポソーム、液状、粘土状、ソリッド粉末状化粧料、エアゾール化粧料、ハップ剤等のスキンケア化粧品、下地クリーム、ファンデーションなどのメークアップ化粧品としてそのまま使用するものの他、エアゾール式、ポンプ式、または押出し式、もしくはこれらに類する機構で噴射する化粧品や、浴剤など、様々な剤型により提供されうる。
本実施形態の皮膚外用組成物を化粧品として提供する場合には、水、アルコール、界面活性剤(カチオン、アニオン、ノニオン、両性界面活性剤等)、保湿剤(グリセリン、1,3−ブチレングリコール、プロピレングリコール、アミノ酸、尿素、ピロリドンカルボン酸塩、核酸類、単糖類、少糖等およびそれらの誘導体ほか)、増粘剤(多糖類、ポリアクリル酸塩、カルボキシビニルポリマー、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、キチン、キトサン、アルギン酸、カラギーナン、キサンタンガム、メチルセルロース等およびそれらの誘導体ほか)、ワックス、ワセリン、炭化水素飽和脂肪酸、不飽和脂肪酸、シリコン油等およびそれらの誘導体、トリ(カプリル・カプリン酸)グリセリル、トリオクタン酸グリセリル等のトリグリセライド類、ステアリン酸イソプロピル等のエステル油類、天然油脂類(オリーブ油、椿油、アボガド油、アーモンド油、カカオ脂、月見草油、ブドウ種子油、マカデミアンナッツ油、ユーカリ油、ローズヒップ油、スクワラン、オレンジラフィー油、ラノリン、セラミド等)、防腐剤(オキシ安息香酸誘導体、デヒドロ酢酸塩、感光素、ソルビン酸、フェノキシエタノール等およびそれらの誘導体ほか)、殺菌剤(イオウ、トリクロカルバアニリド、サリチル酸、ジンクピリチオン、ヒノキチオール等およびそれらの誘導体ほか)、紫外線吸収剤(パラアミノ安息香酸、メトキシケイ皮酸等およびそれらの誘導体ほか)、抗炎症剤(アラントイン、グリチルリチン酸等およびそれらの誘導体ほか)、抗酸化剤(トコフェロール、BHA、BHT等およびそれらの誘導体ほか)、キレート剤(エデト酸、ヒドロキシエタンジホスホン酸等およびそれらの誘導体ほか)、動植物エキス(アシタバ、アロエ、エイジツ、オウゴン、オウバク、海藻、カリン、カミツレ、甘草、キウイ、キュウリ、クワ、シラカバ、トウキ、ニンニク、ボタン、ホップ、マロニエ、ラベンダー、ローズマリー、ユーカリ、ミルク、各種ペプタイド、プラセンタ、ローヤルゼリー等およびこれらの含有成分精製物または発酵物ほか)、pH調整剤(無機酸、無機酸塩、有機酸、有機酸塩等およびそれらの誘導体ほか)、ビタミン類(ビタミンA類、ビタミンB類、ビタミンC、ビタミンD類等およびそれらの誘導体ほか)、酸化チタン、タルク、マイカ、シリカ、酸化亜鉛、酸化鉄、シリコンおよびこれらを加工処理した粉体類等を、本発明の目的を達成する範囲内で配合することができる。なお、化粧料を構成する成分は決して上述に限られるものではなく、化粧料に用い得る成分であれば自由に選択が可能である。
ハップ剤においては上記成分に加えて、基剤(カオリン、ベントナイト等)、ゲル化剤(ポリアクリル酸塩、ポリビニルアルコール等)を本発明の目的を達成する範囲内で配合することができる。
浴剤においては、硫酸塩、炭酸水素塩、ホウ酸塩、色素、保湿剤を本発明の目的を達成する範囲内で適宜配合し、パウダータイプ、液剤タイプに調製が可能である。
本実施形態の皮膚外用組成物におけるホエイタンパク質、もしくはホエイタンパク質断片、またはそれらの誘導体の含有量は、皮膚外用剤の形態ごとに応じた範囲で前述した摂取量となるような量であればよい。例えば、化粧品には、0.0003〜10重量%の範囲内で添加することが好ましく、液状の化粧品に対して0.0003〜5重量%、クリーム状の化粧品に対して0.0003〜10重量%、粉末状の化粧品に対して0.0003〜5重量%の範囲内で添加することが好ましい。さらに具体的には、以下に限定されないが、例えば、化粧水には、0.0003〜5重量%、化粧用クリームには、0.0003〜10重量%の範囲内で添加することが好ましい。
本実施形態の皮膚外用組成物は、AMPKを活性化することにより、皮膚細胞の生理活動を亢進させ、皮膚の張りや肌の保湿性を改善させるために有用である。また、本実施形態の細胞賦活組成物は、AMPKを活性化することにより、皮膚細胞の生理活動を亢進させ、皮膚細胞におけるコラーゲン産生を促進させるために有用である。
本発明は、第六実施形態によれば、AMPK活性化剤を含有する飲食品である。本実施形態による飲食品は、ホエイタンパク質、もしくはホエイタンパク質断片、またはそれらの誘導体から選ばれる単独または2以上の混合物を含んでなるAMPK活性化剤と、任意の飲食品成分とを含有する。ここでいう任意の飲食品成分は、一般加工食品成分の他、栄養補助食品成分であってもよい。
本実施形態の飲食品は、一般加工食品とすることができる。一般加工食品には、例えば、パン類、菓子類、麺類、肉製品・水産加工品、穀類の加工品、加工野菜・加工果実、加工卵、乳製品、粉類、即席菓子の素、食用油脂、スープの素、粉末飲料、調味料、食品添加物、飲料類、飼料などが挙げられる。
一般加工食品におけるホエイタンパク質、もしくはホエイタンパク質断片、またはそれらの誘導体の添加量は、一般加工食品の形態ごとに応じた範囲で前述した摂取量となる量であれば良く、一般加工食品には、0.00002〜80重量%の範囲内で添加することが好ましい。例えば、液状の飲食品に対し0.00002〜80重量%、固体状の飲食品に対し0.025〜70重量%の範囲内で添加することが好ましい。
また、本実施形態の飲食品は、栄養補助食品とすることができる。栄養補助食品には、例えば、ビタミン剤などの栄養補助剤の他、栄養補助飲料、動物用健康食品、特定保健用食品、栄養機能食品、保健機能食品等が含まれる。また、それらは、通常用いられている各種形態、例えば、散剤、顆粒剤、錠剤、カプセル剤、液剤、フィルム等として製品化される。製品化に際しては、ホエイタンパク質、もしくはホエイタンパク質断片、またはそれらの誘導体の単独または2以上とともに、賦形剤、結合剤、崩壊剤、崩壊抑制剤、吸収促進剤、吸着剤、滑沢剤、着色剤、保存剤、香料、風味剤、甘味剤等が配合される。
栄養補助食品におけるホエイタンパク質、もしくはホエイタンパク質断片、またはそれらの誘導体の添加量は、栄養補助食品の形態ごとに応じた範囲で前述した摂取量となる量であれば良く、栄養補助食品には、0.00002〜80重量%の範囲内で添加することが好ましい。例えば、液状の栄養補助食品に対し0.00002〜80重量%、固体状の栄養補助食品に対し0.025〜70重量%、錠剤状の栄養補助食品に対し、0.025〜70重量%の範囲内で添加することが好ましい。さらに具体的には、以下に限定されないが、例えば、保健用飲料には、0.0002〜80重量%、機能性烏龍茶には、0.0002〜40重量%の範囲内で添加することが好ましい。
本実施形態の飲食品は、運動不足や老化に伴う筋力低下等の症状の改善又は予防、肥満症状および肥満に伴う疾患の改善または予防、たるみの改善による皮膚の張りや肌の保湿性の改善、血行不良の改善による毛髪の柔軟性や張りの改善に有用である。
以下に実施例および処方例を挙げ、本発明について更に説明する。なお、これらは本発明を何ら限定するものではない。
<実施例1:筋芽細胞におけるβラクトグロブリンのAMPK活性化作用>
マウス由来筋芽細胞であるC2C12細胞は、10%ウシ血清を添加したダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)中で、5%CO、37℃にて継代培養した。AMPK活性化試験の際は、C2C12細胞を35mmディッシュに播種し、80%コンフルエント状態になったら、2%ウマ血清を含むDMEM培地に交換し、C2C12細胞が分化するまで2日に1回の割合で新しい2%ウマ血清を含むDMEM培地に交換した。試験の前日に、再度新しい2%ウマ血清を含むDMEM培地に交換した。培養液を除去後、50、100、または500μg/mLのβラクトグロブリンを含むDMEM(0.146g/LのL−グルタミン、1.8g/Lのグルコース、2.5g/Lの炭酸ナトリウム、2%ウマ血清)を加え、24時間培養した。なお、βラクトグロブリンは、ウシ由来精製βラクトグロブリン(Sigma−Aldrich社製)を用いた。その後、培地を吸引除去し、冷PBSで2回洗浄し、細胞溶出液にて溶出させた。サンプルは短時間の超音波処理後に95℃で5分加熱し、遠心分離を行った。
得られた上清サンプルは、8%ポリアクリルアミド−SDSゲルに供され、電気泳動後、PVDF膜に転写した。転写後のPVDF膜を、ブロッキング溶液中で1時間インキュベートして非特異的な結合を減らした後、anti−phospho−AMPK抗体(Cell signaling社製)またはanti−AMPK抗体(Cell signaling社製)を一次抗体として4℃で一晩インキュベート、ホースラディッシュペルオキシダーゼ(HRP)標識抗体(GE Healthcare Biosciences社製)を二次抗体として、1時間インキュベートを行い、最終的にECL Plus Western Blotting Detection System(GE Healthcare Biosciences社製)を用いて検出を行った。また、同様の方法を用いて、恒常的に発現することで知られるグリセルアルデヒド3リン酸脱水素酵素(GAPDH)を標準タンパクとして測定した。
結果を図1に示す。未変性のβラクトグロブリンが、AMPK活性化作用を有することが明らかとなった。このことから、βラクトグロブリンは、耐糖能異常、高脂血症、高血圧、冠動脈疾患、動脈硬化性疾患、肥満などの予防及び治療や、筋肉量・筋力の増強による健康増進に有用であることが示唆された。
さらに、図2では、βラクトグロブリン加水分解物によるAMPK活性化作用を評価した。βラクトグロブリン加水分解物は、未変性のβラクトグロブリンをキモトリプシン処理することにより調製した。この結果、βラクトグロブリンの加水分解物は、未変性βラクトグロブリンよりもさらに強いAMPK活性化作用を有することが明らかとなった。
<実施例2:AMPK活性化作用を有するβラクトグロブリン断片のアミノ酸配列決定>
βラクトグロブリン加水分解物のうちの、特にどのペプチド断片が強いAMPK活性化作用を有するかを特定するために、βラクトグロブリン加水分解物をクロマニック社製の逆相C−18カラムを取り付けた日本分光社製の液体高速クロマトグラフィーにより分離精製し、各精製画分について、実施例1と同様にしてAMPK活性化作用を評価した。
結果を図3に示す。4〜6番目の非常に低分子の画分と、15番目の画分について、強いAMPK活性化作用が確認された。
15番目の画分を、さらに質量分析法により解析し、βラクトグロブリン断片の同定を行った(図4)。この結果、15番目の画分に含まれる断片は、βラクトグロブリンの11〜19番目のアミノ酸配列であるAsp−Ile−Gln−Lys−Val−Ala−Gly−Thr−Trp(配列番号4)および150〜162番目のアミノ酸配列であるSer−Phe−Asn−Pro−Thr−Gln−Leu−Glu−Glu−Gln−Cys−His−Ile(配列番号5)であることが明らかとなった。
また、4〜6番目の画分に含まれる非常に低分子のβラクトグロブリン断片については、生体内の消化酵素反応により生成されることがすでに知られている主要な低分子断片(配列番号1〜6)を人工的に合成し、実施例1と同様にしてAMPK活性化作用を評価した。
結果を図5に示す。βラクトグロブリンの146〜148番目のアミノ酸配列であるHis−Ile−Arg(HIR、レーン2、配列番号6)、146〜149番目のアミノ酸配列であるHis−Ile−Arg−Leu(HIRL、レーン3、配列番号3)、142〜145番目のアミノ酸配列であるAla−Leu−Pro−Met(ALPM、レーン4、配列番号2)、および、102〜105番目のアミノ酸配列であるTyr−Leu−Leu−Phe(YLLF、レーン5、配列番号1)は、いずれもAMPK活性化作用を有するが、特に、His−Ile−Arg−Leu(配列番号3)、Ala−Leu−Pro−Met(配列番号2)、および、Tyr−Leu−Leu−Phe(配列番号1)が強いAMPK活性化作用を有することが明らかとなった。
以上の結果から、βラクトグロブリン断片のうち、βラクトグロブリンの102〜105番目のアミノ酸配列であるTyr−Leu−Leu−Phe(配列番号1)、βラクトグロブリンの142〜145番目のアミノ酸配列であるAla−Leu−Pro−Met(配列番号2)、βラクトグロブリンの146〜149番目のアミノ酸配列であるHis−Ile−Arg−Leu(配列番号3)、βラクトグロブリンの11〜19番目のアミノ酸配列であるAsp−Ile−Gln−Lys−Val−Ala−Gly−Thr−Trp(配列番号4)、およびβラクトグロブリンの150〜162番目のアミノ酸配列であるSer−Phe−Asn−Pro−Thr−Gln−Leu−Glu−Glu−Gln−Cys−His−Ile(配列番号5)が、特にAMPK活性化剤として優れていることが示された。
<実施例3:皮膚線維芽細胞におけるβラクトグロブリンの細胞賦活効果>
βラクトグロブリンによりAMPKを活性化した場合に、皮膚線維芽細胞において細胞賦活効果が得られるかどうかを検証した。ヒト由来皮膚線維芽細胞であるNHDF細胞(新生児/雄)は、線維芽細胞専用の培地である106S培地に、2%ウシ血清とヒト皮膚線維芽細胞専用の増殖添加剤を添加したものにより、5%CO、37℃にて継代培養した。
βラクトグロブリンによる細胞賦活効果を、イムノブロッティング法により検証した。NHDF細胞は、6ウェルプレートに播種し、試験開始時に、2%ウシ血清を添加したDMEMに培地交換し、刺激時間が0、4、8、または24時間になるように、適時に所定濃度のβラクトグロブリン高含有ホエイタンパク質(β−LG−WP、Seperex Nutritional社製、図6)を添加し、試験開始から合計24時間培養した。その後、培地を吸引除去し、冷PBSで2回洗浄し、細胞溶出液にて溶出させた。サンプルは短時間の超音波処理後に95℃で5分加熱し、遠心分離を行った。
得られた上清サンプルは、8%ポリアクリルアミド−SDSゲルに供され、電気泳動後、PVDF膜に転写された。転写後のPVDF膜を、ブロッキング溶液中で1時間インキュベートして非特異的な結合を減らした後、anti−type I collagen抗体(Millipore社製)を一次抗体とし、ホースラディッシュペルオキシダーゼ(HRP)標識抗体(santa cruz社製)を二次抗体として、各1時間インキュベートを行い、最終的にECL Plus Western Blotting Detection System(GE Healthcare Biosciences社製)を用いて検出を行った。また、同様の方法を用いて、恒常的に発現することで知られるグリセルアルデヒド3リン酸脱水素酵素(GAPDH)を標準タンパクとして測定した。
なお、βラクトグロブリン高含有ホエイタンパク質(β−LG−WP)は、Seperex Nutritional社の所有する専売工程により調整されたものであり、工程の概略は以下の通りである。ウシ由来の生乳を脱脂処理、低温殺菌、限外濾過、噴霧乾燥を行った。得られた濃縮物を希釈し、ディアフィルトレーション(30kDa膜)によって主要な非ホエイタンパク質を除去した。さらに、得られた浸透液について限外濾過/ディアフィルトレーション(1kDa膜)を行い、低分子を除去した。得られたβ−LG−WPは、1〜30kDaのタンパク質を含有し、特にβラクトグロブリンを高濃度で含有する(図6)。
結果を図7及び8に示す。β−LG−WPは、ポジティブコントロールであるインスリン様増殖因子(IGF−I)と比較しても、非常に強いコラーゲン産生効果を示すことが明らかとなった。この結果から、βラクトグロブリンは、皮膚細胞を賦活化し、皮膚老化を防止するために有用であることが示唆された。
さらに、Q−PCR法により、βラクトグロブリン断片による細胞賦活効果を検証した。NHDF細胞は、6ウェルプレートに播種し、試験開始時に、2%ウシ血清を添加したDMEMに培地交換し、刺激時間が6時間になるように、適時に所定濃度のβラクトグロブリン高含有ホエイタンパク質またはβラクトグロブリン断片を添加し、試験開始から合計6時間培養した。その後、培地を吸引除去し、冷PBSで2回洗浄し、全RNAの抽出サンプルとして用いた。
全RNAの抽出は、Qiagen社製のRNeasy Mini Kitを用いて、製造社の指定する方法に従って単離を行った。得られたRNAは、逆転写反応を行うまで、RNaseフリーの水中にて−80℃で保存された。cDNAの合成は、PrimeScript II High Fidelity RT−PCR Kit(タカラバイオ社製)を用いて製造社の指定する方法に従って行った。I型コラーゲンの転写物は、TaqMan Gene Expression Assays(Applied Biosystems社製)により特異的に増幅され、同社製のApplied Biosystems 7500 Real Time PCR systemを用いて、I型コラーゲンの発現レベルについて定量を行った。定量を正規化するため、ハウスキーピング遺伝子である18Sを採用し、同様に発現レベルについての定量を行った。
結果を図9に示す。実施例2において特に強いAMPK活性化作用が確認されたβラクトグロブリン断片であるAla−Leu−Pro−Met(ALPM、配列番号2)、His−Ile−Arg−Leu(HIRL、配列番号3)による刺激を行ったサンプルでは、βラクトグロブリンによる刺激を行った場合と同様の強いコラーゲン産生効果が確認された。この結果から、βラクトグロブリン断片も、βラクトグロブリンと同様に皮膚細胞を賦活化し、皮膚老化を防止するために有用であることが示唆された。
このように、ホエイタンパク質またはホエイタンパク質断片は、AMPK活性化作用を有していることが新たに確認された。これらのホエイタンパク質またはホエイタンパク質断片を含むAMPK活性化剤、および前記AMPK活性化剤を含有する運動代替剤、肥満予防および/または改善剤、皮膚外用剤、ならびに飲食品は、AMPK活性化作用を有するものとして有用である。
また、実施例で示したように、βラクトグロブリンの加水分解物は、未変性βラクトグロブリンに比べて強いAMPK活性化作用を有することから、βラクトグロブリンの加水分解物の方が、投与効率を向上できる。また、βラクトグロブリンの加水分解物のうち特定のペプチドであるTyr−Leu−Leu−Phe(配列番号1)、Ala−Leu−Pro−Met(配列番号2)、His−Ile−Arg−Leu(配列番号3)、Asp−Ile−Gln−Lys−Val−Ala−Gly−Thr−Trp(配列番号4)、Ser−Phe−Asn−Pro−Thr−Gln−Leu−Glu−Glu−Gln−Cys−His−Ile(配列番号5)が、AMPK活性化に特に有効なペプチドとして特定された。これにより、製剤時において、生乳の加水分解処理および精製だけでなく、人工的な化学合成や生合成に加え、誘導体化することも可能となる。誘導体化により、薬剤の安定性の向上や皮膚への浸透性を高めることでき、製品化する上での取り扱いも容易となり、生産効率を向上できる。
<処方例>
ホエイタンパク質、もしくはホエイタンパク質断片、またはそれらの誘導体を有効成分として含む本発明のAMPK活性化剤、および前記AMPK活性化剤を含有する運動代替剤、肥満予防および/または改善剤、皮膚外用剤、ならびに飲食品の製造について、上記結果に従い、以下にその処方例を示す。
有効成分は、ホエイタンパク質、もしくはホエイタンパク質断片、またはそれらの誘導体から選ばれる単独または2以上の混合物である。好ましくはTyr−Leu−Leu−Phe(配列番号1)、Ala−Leu−Pro−Met(配列番号2)、His−Ile−Arg−Leu(配列番号3)、もしくは、Asp−Ile−Gln−Lys−Val−Ala−Gly−Thr−Trp(配列番号4)、またはそれらの誘導体から選択される単独または2種類の混合物の配合である。
各処方例は、各製品の製造における常法により製造したものでよく、配合量のみを示した。また、本発明はこれらに限定されるわけではない。
ホエイタンパク質、もしくはホエイタンパク質断片、またはそれらの誘導体から選ばれる単独または2以上の混合物を含んでなるAMPK活性化剤は、皮膚外用組成物として調製することができる。
ホエイタンパク質、もしくはホエイタンパク質断片、またはそれらの誘導体から選ばれる単独または2以上の混合物を含んでなるAMPK活性化剤は、通常の飲食物中に添加して、AMPK活性化剤を含む飲食品とすることができる。
ホエイタンパク質、もしくはホエイタンパク質断片、またはそれらの誘導体から選ばれる単独または2以上の混合物を含んでなるAMPK活性化剤は、医薬部外品として調製することができる。
ホエイタンパク質、もしくはホエイタンパク質断片、またはそれらの誘導体から選ばれる単独または2以上の混合物を含んでなるAMPK活性化剤は、医薬品として調製することができる。
本発明のAMPK活性化剤の有効成分であるホエイタンパク質およびホエイタンパク質断片ペプチドは、食品としても使用可能なものであって、安全性において特に問題になる点はない。

Claims (3)

  1. 精製されたβラクトグロブリンまたはβラクトグロブリンの断片を含んでなるAMPK活性化剤を含有する細胞賦活組成物
  2. 前記βラクトグロブリンの断片は、
    Tyr−Leu−Leu−Phe(配列番号1)、
    Ala−Leu−Pro−Met(配列番号2)、
    His−Ile−Arg−Leu(配列番号3)、
    Asp−Ile−Gln−Lys−Val−Ala−Gly−Thr−Trp(配列番号4)および
    Ser−Phe−Asn−Pro−Thr−Gln−Leu−Glu−Glu−Gln−Cys−His−Ile(配列番号5)
    からなる群から選択される1以上のペプチド断片を含む、請求項1に記載の細胞賦活組成物
  3. 前記βラクトグロブリンまたはβラクトグロブリンの断片は、N末端および/またはC末端が修飾されることにより誘導体化されている、請求項1または2に記載の細胞賦活組成物
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