以下では、この発明の実施の形態を、添付図面を参照して詳細に説明する。
図1は、基板処理装置1の構成を示す図解的な断面図である。図2は、基板処理装置1の構成を説明するための図解的な平面図である。図2には、基板処理装置1のうち、処理液ノズル(ノズル)4およびノズルアーム15に関連する構成を主として記載しており、これらに直接関連のない構成は適宜省略している。
この基板処理装置1は、基板の一例としての円形の半導体ウエハW(以下、単に「ウエハW」という。)におけるデバイス形成領域側の表面(主面)に対して、薬液の一例としての希ふっ酸による洗浄処理(たとえば、ポリマー残渣除去処理)を施すための枚葉型の装置である。
基板処理装置1は、ウエハWを処理するための処理モジュールM1を有している。処理モジュールM1は、密閉チャンバ(チャンバ)2と、密閉チャンバ2の内部空間内で1枚のウエハWを水平に保持するとともに、その中心を通る鉛直軸線まわりにウエハWを回転させるスピンチャック(基板保持手段)3と、密閉チャンバ2の内部空間内で、スピンチャック3に保持されたウエハWの表面に処理液(薬液または不活性ガス溶存水)を供給するための処理液ノズル4とを備えている。この処理モジュールM1では、密閉チャンバ2の内部空間には、スピンチャック3全体ではなく、その一部(スピンベース43や挟持部材44など)のみが収容されており、また、処理液ノズル4を支持するノズルアーム15を駆動するための直線駆動機構36が、密閉チャンバ2外に配置されている。そのため、密閉チャンバ2の内部空間を効果的に減少しており、当該内部空間はウエハWに対して洗浄処理を施すための最小限の広さにされている。
密閉チャンバ2は、上部開口(開口)5および下部開口200を有する略円筒状のチャンバ本体6と、上部開口5を開閉するための蓋部材7とを備えている(図2では、密閉チャンバ2から蓋部材7を除いた状態を示している)。蓋部材7は、チャンバ本体6に対して回転可能に設けられている。密閉チャンバ2は、チャンバ本体6と蓋部材7との間をシールする第1液体シール構造(第1シール構造)8をさらに備えている。この第1液体シール構造8は、チャンバ本体6の上端部と蓋部材7の周縁部との間をシール用液体(純水)でシールし、密閉チャンバ2の内部空間を、密閉チャンバ2外の雰囲気から遮断している。チャンバ本体6の下部開口200は、スピンチャック3により閉塞されている。
チャンバ本体6は、密閉チャンバ2の内部空間を区画する隔壁9を有している。隔壁9は、スピンチャック3によるウエハWの回転軸線C(以下、単に「回転軸線C」という)に対して略回転対称な形状を有している。隔壁9は回転軸線Cを中心とする略円筒状の円筒部10と、円筒部10の上端から中心側斜め上方(回転軸線Cに近づく方向)に延びる傾斜部11と、円筒部10の下端部に連結された平面視環状の底部12とを備えている。円筒部10における上端部分を除く部分は、下方に向かうに従って厚肉に形成されている。底部12とスピンチャック3(のカバー部材45)との間は、第2液体シール構造(第2シール構造)13によってシールされている。傾斜部11には、その内外面を貫通する通過孔14が形成されている。この通過孔14はノズルアーム15(後述する)が挿通するものであり、基準線L1(後述する)上に設けられている。
傾斜部11の内面は、回転軸線Cを中心とする円錐状の第1円錐面17を有している。円筒部10の内面は、回転軸線Cを中心とする円筒面18と、回転軸線Cを中心とする円錐状の廃液案内面19とを有している。ウエハWへの薬液処理時またはリンス処理時には、回転状態にあるウエハWの周縁から飛散される処理液(薬液またはリンス液)は、主として円筒面18および廃液案内面19に受け止められる。そして、円筒面18に受け止められて廃液案内面19に流下した処理液、および廃液案内面19に受け止められた処理液が、廃液案内面19から排気液溝20(後述する)に案内される(導かれる)。
蓋部材7は、ウエハWよりもやや大径の略円板状をなしている。前述の第1液体シール構造8は、蓋部材7の外周部とチャンバ本体6の隔壁9の上端部との間をシールしている。蓋部材7において周縁部を除く部分が、円形をなす平板部21を形成している。平板部21の下面は、スピンチャック3に保持されたウエハWの表面と対向する水平平坦面からなる基板対向面23を形成している。
蓋部材7の上面には、回転軸線Cと共通の軸線に沿う上回転軸24が固定されている。この上回転軸24は中空に形成されていて、その内部には、ウエハW表面にリンス液としての炭酸水を供給するための処理液上ノズル25が挿通されている。処理液上ノズル25は、スピンチャック3に保持されたウエハW表面の回転中心に向けて処理液を吐出するための処理液上吐出口26を有している。処理液上ノズル25には、炭酸水バルブ27を介して炭酸水が供給されるようになっている。また、上回転軸24の内壁と処理液上ノズル25の外壁との間は、ウエハWの中心部に向けて不活性ガスとしての窒素ガスを供給するための不活性ガス流通路(不活性ガス供給手段)28を形成している。不活性ガス流通路28は、基板対向面23に開口する不活性ガス吐出口(不活性ガス供給手段)29を有している。この不活性ガス流通路28には、不活性ガスバルブ(不活性ガス供給手段)30を介して窒素ガスが供給されるようになっている。
上回転軸24は、略水平に延びて設けられた蓋アーム31の先端部から垂下した状態で、その先端部に回転可能に取り付けられている。すなわち、蓋部材7は、蓋アーム31により保持されている。上回転軸24には、蓋部材7をスピンチャック3によるウエハWの回転に略同期させて回転させるための蓋部材回転機構32が結合されている。
蓋アーム31には、蓋アーム31を昇降させるための蓋部材昇降機構33が結合されている。この蓋部材昇降機構33により、蓋部材7を、チャンバ本体6の上部開口5を閉塞する閉位置(図1に示す位置)と、この閉位置から上方に離間し、チャンバ本体6の上部開口5を開放する開位置(図12Aに示す位置)との間で昇降させることができる。蓋部材7は、閉位置にあるときおよび開位置にあるときの双方で、蓋アーム31により保持されている。
チャンバ本体6の隔壁9の内面(より具体的には、第1円錐面17と円筒面18との間の境界部分)には、密閉チャンバ2内を洗浄するための洗浄液ノズル34が設けられている。洗浄液ノズル34は、たとえば、連続流の状態で洗浄液を吐出するストレートノズルであり、チャンバ本体6の隔壁9の内面に、その吐出口を斜め上方に向けて取り付けられている。洗浄液ノズル34の吐出口から吐出された洗浄液は、蓋部材7の下面の中央部と周縁部との中間位置に向けて吐出される。洗浄液ノズル34には、洗浄液バルブ35を介して、洗浄液供給源(図示せず)からの洗浄液(たとえば純水)が供給されるようになっている。
処理液ノズル4は、スピンチャック3の上方で延びるノズルアーム15の先端部に取り付けられている。ノズルアーム15は、水平方向に直線状に延びた棒状をなし、密閉チャンバ2の内外に跨って延びている。ノズルアーム15は、回転軸線C上を通る直線状の基準線L1に沿っており(図2参照)、その断面形状が矩形形状である(図5および図6参照)。ノズルアーム15は、密閉チャンバ2外に配設された直線駆動機構36によって基準線L1に沿う方向に移動可能に支持されている。
ノズルアーム15は、チャンバ本体6の隔壁9に形成された通過孔14を挿通している。この通過孔14は基準線L1上に位置している。基準線L1に沿って延びるノズルアーム15がその基準線L1に沿って移動するので、隔壁9における基準線L1上は、ノズルアーム15が常に通過する位置である。その位置に通過孔14が設けられているので、通過孔14の大きさを最小限のサイズに留めることができる。ノズルアーム15とチャンバ本体6の隔壁9との間は、第3シール構造37によってシールされている。
処理液ノズル4には、処理液供給管38が接続されている。処理液供給管38には、後述する配管内調合ユニット51(図8参照)から処理液としての薬液およびリンス液が選択的に供給されるようになっている。処理液供給管38に処理液(薬液またはリンス液)が供給されることにより、処理液ノズル4から処理液を吐出させることができる。
図2に示すように、直線駆動機構36は、ノズル駆動モータ139と、ノズル駆動モータ139の出力軸140と回転自在なプーリ141との間に架け渡されたタイミングベルト142と、タイミングベルト142の途中部に結合された連結部材143と、連結部材143の移動を規制して、その連結部材143を基準線L1に沿う方向にのみに移動させるリニアガイド144とを備えている。連結部材143は、ノズルアーム15の基端部に連結されて、このノズルアーム15を支持している。ノズル駆動モータ139が回転駆動すると、タイミングベルト142が回転し、このタイミングベルト142に結合された連結部材143が基準線L1に沿って移動する。これにより、ノズル駆動モータ139の回転駆動力をノズルアーム15に入力することができ、ノズルアーム15を基準線L1に沿って移動させることができる。
このノズルアーム15の移動により、処理液ノズル4を、スピンチャック3に保持されたウエハWの側方の退避位置(図1に示す状態。図2では実線で図示)と、スピンチャック3に保持されたウエハWの表面上(図2に二点鎖線で図示)との間を移動させることができ、ウエハWの表面上で、処理液ノズル4からの処理液の吐出位置を移動させることができる。このように、直線駆動機構36が密閉チャンバ2外に配置されるので、密閉チャンバ2の小型化を図ることができる。
再び図1のみを参照して、スピンチャック3について説明する。スピンチャック3は、水平に延びるベース(露出部分)40と、ベース40上に固定されたスピンモータ41と、このスピンモータ41の回転駆動力が入力される鉛直方向に延びる回転軸42と、回転軸42の上端に水平に取り付けられた円盤状のスピンベース(基板保持回転手段)43と、このスピンベース43上に配置された複数個の挟持部材(基板保持回転手段)44と、スピンモータ41の側方を包囲するカバー部材(露出部分)45とを備えている。スピンベース43は、たとえば、ウエハWよりも直径がやや大きな円盤状の部材である。カバー部材45の下端は、ベース40の外周に固定されている。カバー部材45とベース40とは密着しており、これらカバー部材45とベース40とによって構成されるケーシング内に、密閉チャンバ2外の雰囲気が流入しないようになっている。カバー部材45の上端はスピンベース43の近傍にまで及んでいる。カバー部材45の上端部には、鍔状部材46が取り付けられている。
具体的には、鍔状部材46は、カバー部材45から径方向外方へ略水平に張り出す水平部47と、水平部47の径方向途中部から鉛直下方に垂れ下がる内壁部48と、水平部47の外周縁から鉛直下方に垂れ下がる外壁部49と一体的に備えている。内壁部48および外壁部49は、それぞれ、回転軸線Cを中心とする円筒状に形成されている。内壁部48の下端と外壁部49の下端とは略同じ高さに設定されている。
複数個の挟持部材44は、スピンベース43の上面周縁部においてウエハWの外周形状に対応する円周上で適当な間隔を空けて配置されている。複数個の挟持部材44は、互いに協働して1枚のウエハWを水平な姿勢で挟持(保持)することができる。複数個の挟持部材44によってウエハWが保持された状態で、スピンモータ41の回転駆動力が回転軸42に入力されることにより、保持されたウエハWがその中心を通る鉛直な回転軸線まわりに回転される。
この実施形態では、スピンチャック3はチャンバ本体6の下部開口200を閉塞している。スピンベース43および挟持部材44が密閉チャンバ2内に収容されており、カバー部材45のほとんど全ての部分とベース40とが密閉チャンバ2外に露出している。そして、鍔状部材46の内壁部48が、チャンバ本体6とスピンチャック3との間をシールする第2液体シール構造13の一部を構成している。
なお、スピンチャック3としては、挟持式のものに限らず、たとえば、ウエハWの裏面を真空吸着することにより、ウエハWを水平な姿勢で保持し、さらにその状態で鉛直な回転軸線まわりに回転することにより、その保持したウエハWを回転させることができる真空吸着式のもの(バキュームチャック)が採用されてもよい。
また、この実施形態では、スピンチャック3は昇降可能な構成とされている。基板処理装置1は、スピンチャック3を、処理位置(処理液処理位置。図1に示す位置)とスピンドライ位置(乾燥位置。図12Eに示す位置)とチャンバ洗浄位置(図12Fに示す位置)との間で昇降させるチャック昇降機構(昇降手段)100を備えている。このチャック昇降機構100は、たとえばボールねじ機構やモータなどによって構成されており、たとえばスピンチャック3のベース40に結合されている。処理位置は、スピンチャック3に保持されたウエハWに対して薬液処理またはリンス処理を施すための位置である。スピンドライ位置は、処理位置から上方に離反し、当該ウエハWに対して乾燥処理を施すための位置であり、また、搬送ロボット(図示せず)との間でウエハWを受け渡すための位置である。チャンバ洗浄位置は、密閉チャンバ2の内壁(すなわち、蓋部材7の基板対向面23およびチャンバ本体6の隔壁9の内面)を洗浄するための位置である。
この実施形態では、第1液体シール構造8、第2液体シール構造13および第3シール構造37によって、密閉チャンバ2の内部空間と密閉チャンバ2外の空間とが確実に遮断されている。したがって、密閉チャンバ2外の雰囲気の密閉チャンバ2内への進入や、密閉チャンバ2内の雰囲気の密閉チャンバ2外への漏洩を防止することができる。
図3は、第1液体シール構造8およびその周辺の構成を説明するための図解的な断面図である。図1および図3を参照して、第1液体シール構造8およびその周辺の構成について説明する。
蓋部材7の周縁部には、蓋部材7の周縁から鉛直下方に垂れ下がる円筒状のシール環101と、シール環101よりも径方向内方で下方に突出する平面視円環状の突条102とが備えられている。突条102の断面形状は三角形状であり、突条102の下面103は、回転軸線Cから離れるに従って低くなる円錐状をなしている。
チャンバ本体6の隔壁9の上端部、すなわち傾斜部11の上端部には、シール用液体としての純水を溜めることができる第1シール溝104が全周に渡って形成されている。第1シール溝104は回転軸線C(図1参照)を中心とする平面視円環状に形成されている。具体的には、傾斜部11の上端部には、平面視円環状の平坦面からなる上端面105と、上端面105の内周縁から鉛直上方に立ち上がる円筒状の内壁部106と、上端面105の外周縁から鉛直上方に立ち上がる円筒状の外壁部107とが一体的に備えられている。この上端面105、内壁部106の外面および外壁部107の内面は、断面略U字状をなしており、上端面105、内壁部106の外面および外壁部107の内面によって第1シール溝104が形成されている。第1シール溝104上にシール環101が位置している。シール環101と第1シール溝104とによって、第1液体シール構造8が構成されている。第1液体シール構造8にはシール用液体としての純水が溜められている。
蓋部材7が閉位置にある状態では、シール環101の下端部は、第1シール溝104の底部との間に微小な隙間を保って第1シール溝104に収容される。第1シール溝104には純水(シール用液体)が溜められているので、蓋部材7が閉位置にある状態では、シール環101は第1シール溝104に入り込んで、純水に浸漬される。そのため、シール環101と第1シール溝104との間が純水によってシールされている。
蓋部材7の側方には、純水を吐出するためのシール用液体供給ノズル108が、その吐出口を第1シール溝104に向けて配置されている。シール用液体ノズル108からの純水の吐出は、基板処理装置1の起動状態において常時行われている。そのため、第1シール溝104には常時純水が溜められている。
内壁部106の上端面は、外壁部107の上端面よりも高い位置に設定されている。そのため、第1シール溝104から溢れた純水は、外壁部107の上端面上を通ってチャンバ本体6外に流れ、チャンバ本体6の外周を伝って流下する。そのため、第1シール溝104に溜められた後の純水が、チャンバ本体6内、すなわち密閉チャンバ2内に流入することはない。チャンバ本体6の外周を伝って流下する純水は、密閉チャンバ2外に設けられた廃液路(図示せず)を通して廃液される。
そして、蓋部材7が閉位置にある状態で蓋部材回転機構32が駆動されると、蓋部材7が、回転軸線Cまわりに回転する。第1シール溝104と、回転状態にあるシール環101との間が純水によってシールされているので、蓋部材7の回転中においても、密閉チャンバ2の内部空間を、密閉チャンバ2外の雰囲気から遮断することができる。
蓋部材7が比較的大径(この実施形態ではウエハWよりも大径)であり、そのため、シール環101および第1シール溝104の半径も比較的大径である。したがって、蓋部材7の高速回転時(たとえば乾燥処理時)にはシール環101の周速が大きくなり、第1シール溝104から多量の純水が飛散するおそれがある。しかしながら、第1シール溝104には純水が常時供給されているので、シール環101が純水に常に浸漬されている。これにより、蓋部材7とチャンバ本体6との間を長期に渡ってシールすることができる。
また、蓋部材7が閉位置(図1および図3に示す状態)にあるときは、突条102の下面103が傾斜部11の第1円錐面17と略同一平面状にある。後述するように、チャンバ洗浄時においては、蓋部材7の基板対向面23に洗浄液としての純水が供給される。基板対向面23に供給された純水は、蓋部材7の回転による遠心力を受けて、基板対向面23を伝って蓋部材7の周縁部へと移動し、突条102の下面103へと達する。下面103と第1円錐面17とが略同一平面状をなしているので、下面103に達した純水が第1円錐面17へとスムーズに移動する。したがって、蓋部材7の基板対向面23に供給された処理液を、チャンバ本体6の隔壁9の内面にスムーズに案内することができる。
図4は、図1に示す第2液体シール構造13およびその周辺の構成を説明するための図解的な断面図である。図1および図4を参照して、第2液体シール構造13およびその周辺の構成について説明する。
チャンバ本体6の底部12には、その底部12の底壁の内周縁から鉛直上方に立ち上がる内壁部146と、底部12の底壁における径方向途中部から鉛直上方に立ち上がる外壁部147とが形成されている。内壁部146の外面と外壁部147の内面および底部12の底面によって、シール用液体としての純水を溜めるための第2シール溝148が形成されている。第2シール溝148は回転軸線Cを中心とする円環状に形成されている。第2シール溝148は断面U字状をなしており、その上方には鍔状部材46の内壁部48が位置している。第2シール溝148には、シール用液体としての純水が溜められている。
また、外壁部147の外面、ならびに底部12の外周面および底面によって排気液溝20が形成されている。排気液溝20は、ウエハWの処理に用いられた処理液(薬液や不活性ガス溶存水)や洗浄液を廃液し、また、密閉チャンバ2の内部空間の雰囲気を排気するためのシール用液体としての純水を溜めるためのものである。排気液溝20は、第2シール溝148を取り囲むように回転軸線C(図示せず)を中心とする円環状に形成されている。排気液溝20は断面U字状をなしており、その底部には、排気液路110(図4では不図示。図1参照)の一端が接続されている。排気液路110の他端は、気液分離器(図示せず)を介して、廃液処理設備(図示せず)や排気処理設備(図示せず)へと接続されている。排気液溝20の上方には、鍔状部材46の外壁部49が位置している。
スピンチャック3が処理位置(図1に示す位置)にある状態では、内壁部48の下端部は、第2シール溝148の底部との間に微小な隙間を保って第2シール溝148に収容される。
スピンチャック3がスピンドライ位置(図12Eに示す位置)に位置するときは、内壁部48の下端部は第2シール溝148の一部と左右方向に重なっている。すなわち、この状態においても、内壁部48の下端部が第2シール溝148に収容されている。
第2シール溝148には、純水配管201を介して純水が供給されるようになっている。第2シール溝148への純水の供給は、基板処理装置1の起動状態において常時行われている。そのため、第2シール溝148には常時、純水が満杯に溜められている。第2シール溝148から溢れた純水は、排気液溝20に流入し、排気液溝20から排気液路110を通って機外の廃液設備へと案内される。
図5は、図1に示す第3シール構造37の構成を説明するための図解的な断面図である。図6は、図5の切断面線VI−VIから見た断面図である。図7は、図5の切断面線VII−VIIから見た断面図である。
第3シール構造37は、通過孔14を覆うように隔壁9の外側側面に固定的に取り付けられた気体シール部(気体供給部材)111と、気体シール部111に当該気体シール部111に対して隔壁9と反対側に固定的に取り付けられる液体シール部(洗浄液供給部材)121とを備えている。
液体シール部121は、厚肉の矩形板状をなす液体シール本体122を有している。液体シール本体122の中央部には、ノズルアーム15が挿通するための第1挿通孔(液体シール用挿通孔)123(図5参照)が形成されている。第1挿通孔123は液体シール本体122をその厚み方向に貫通している。第1挿通孔123の断面形状は、ノズルアーム15の断面形状と整合する矩形形状をなしている。
気体シール部111は、厚肉の矩形板状をなす気体シール本体112を有している。気体シール本体112の中央部には、ノズルアーム15が挿通するための第2挿通孔113(図5参照)が形成されている。第2挿通孔113は気体シール本体112をその厚み方向に貫通している。第2挿通孔113の断面形状は、ノズルアーム15の断面形状と整合する矩形形状をなしている。
気体シール部111の第2挿通孔113および液体シール部121の第1挿通孔123は隔壁9の通過孔14に連通している。気体シール本体112の一方面(図5における右面)は、チャンバ本体6の隔壁9の外面に密着状態で接合されている。液体シール本体122の一方面(図5における右面)は、気体シール本体112の他方面(図5における左面)に密着状態で接合されている。したがって、通過孔14、第2挿通孔113および第1挿通孔123を連通する空間内の雰囲気が、隔壁9と気体シール部111との間、または気体シール部111と液体シール部121との間から漏出することはない。
ノズルアーム15は、第1挿通孔123の内周面および第2挿通孔113の内周面に摺動可能に挿通されている。液体シール部121と、第1挿通孔123を挿通するノズルアーム15の外表面との間には、後述するように、ノズルアーム15の外表面上をその全周に渡って取り囲む四角環状の第1流通路130が形成されている。その第1流通路130が、シール用液体としての純水で液密にされている。また、気体シール部111と、第2挿通孔113を挿通するノズルアーム15の外表面との間には、後述するように、ノズルアーム15の外表面上をその全周に渡って取り囲む四角環状の第2流通路120が形成されている。
薬液処理中およびリンス処理中にウエハWから飛散した処理液(薬液、または薬液を含むリンス液)がノズルアーム15の外表面に付着するおそれがある。薬液がノズルアーム15の外表面で乾燥して結晶化すると、その薬液の乾燥物がパーティクルとなって、スピンチャック3上で回転しているウエハWを汚染するおそれもある。
しかしながら、四角環状の第1流通路130内が純水で液密にされているので、ノズルアーム15の外表面に純水(洗浄液)が接液し、この純水によって、ノズルアーム15の外表面に付着した処理液(薬液またはリンス液)が洗い流される。すなわち、ノズルアーム15の外表面を純水によって洗浄することができる。
また、四角環状の第2流通路120内を窒素ガスが流通するので、ノズルアーム15の外表面に付着した純水(液体シール部121によって付着した純水)などが除去され、ノズルアーム15の外表面が乾燥される。
さらに、気体シール部111が、液体シール部121よりも密閉チャンバ2の内部空間側に配置されている。したがって、密閉チャンバ2内に進出されるとき、ノズルアーム15の外表面の各位置は、窒素ガスを供給された後に密閉チャンバ2に進入される。液体シール部121によってノズルアーム15の外表面に付着した純水は、気体シール部111の窒素ガスによって除去される。これにより、純水の密閉チャンバ2の内部空間への引込みを確実に防止することができる。
次に、図5および図6を参照して液体シール部121について詳しく説明する。
第1挿通孔123(図5参照)の内周面には、厚み方向の中央位置に、その周方向全域に渡って四角環状の第1環状溝124が形成されている。第1環状溝124におけるノズルアーム15の上面と対向する部分には、厚み方向および鉛直方向の双方に直交する方向(図5における紙面直交方向。図6および図7における左右方向。以下、単に「左右方向」という)の中央部と液体シール本体122の上端面とを接続する液体導入接続路125が開口している。液体導入接続路125は鉛直方向に沿って延びて液体シール本体122の上端面に開口し、その開口部分が、シール用液体としての純水を導入するための液体導入口126を形成している。液体導入口126には、純水供給源(図示せず)からの純水が供給されるようになっている。
第1環状溝124におけるノズルアーム15の下面と対向する部分には、左右方向の中央部と液体シール本体122の下端面とを接続する液体導出接続路127が開口している。液体導出接続路127は鉛直方向に沿って延びて液体シール本体122の下端面に開口し、その開口部分が、純水を導出するための液体導出口128を形成している。液体導出口128には、当該液体導出口128に導出された純水を廃液設備へと案内する廃液路129(図5参照)が接続されている。
ノズルアーム15が第1環状溝124を挿通した状態では、第1環状溝124とノズルアーム15の外表面(上面、下面および両側面)との間に四角環状の第1流通路130が形成される。この第1流通路130は、液体導入口126および液体導出口128とそれぞれ連通している。
液体導入口126に供給されて、液体導入接続路125を流通する純水は、第1流通路130を、ノズルアーム15の上面における左右方向の一方側部分(図6に示す上面の右側部分)、ノズルアーム15の一方側側面(右側側面)およびノズルアーム15の下面における左右方向の一方側部分(図6に示す下面の右側部分)に沿って移動しつつ液体導出接続路127を通って液体導出口128から排出される。
また、液体導入口126に供給された純水は、第1流通路130を、ノズルアーム15の上面における左右方向の他方側部分(図6に示す上面の左側部分)、ノズルアーム15の他方側側面(左側側面)およびノズルアーム15の下面における左右方向の他方側部分(図6に示す下面の左側部分)に沿って移動しつつ液体導出接続路127を通って液体導出口128から排出される。これにより、液体シール本体122の内周面とノズルアーム15の外表面との間が純水によってシールされる。
次に、図5および図7を参照して気体シール部111について詳しく説明する。
気体シール部111(図5参照)は、厚肉の矩形板状をなす気体シール本体112を有している。気体シール本体112の中央部には、ノズルアーム15が挿通するための第2挿通孔113が形成されている。第2挿通孔113は気体シール本体112をその厚み方向に貫通している。第2挿通孔113の断面形状は、ノズルアーム15の断面形状と整合する矩形形状をなしている。
第2挿通孔113の内周面には、厚み方向の中央位置に、その周方向全域に渡って四角環状の第2環状溝114が形成されている。第2環状溝114におけるノズルアーム15の上面と対向する部分には、左右方向の中央部と気体シール本体112の上端面とを接続する気体導入接続路115が開口している。気体導入接続路115は鉛直方向に沿って延びて気体シール本体112の上端面に開口し、その開口部分が、シール用液体としての窒素ガスを導入するための気体導入口116を形成している。気体導入口116には、窒素ガス供給源(図示せず)からの窒素ガスが供給されるようになっている。
第2環状溝114におけるノズルアーム15の下面と対向する部分には、左右方向の中央部と気体シール本体112の下端面とを接続する気体導出接続路117が開口している。気体導出接続路117は鉛直方向に沿って延びて気体シール本体112の下端面に開口し、その開口部分が、窒素ガスを導出するための気体導出口118を形成している。気体導出口118には、当該気体導出口118に導出された窒素ガスを排気処理設備へと案内する排気路119(図5参照)が接続されている。
ノズルアーム15が第2環状溝114を挿通した状態では、第2環状溝114とノズルアーム15の外表面(上面、下面および両側面)との間に四角環状の第2流通路120が形成される。この第2流通路120は、気体導入口116および気体導出口118とそれぞれ連通している。
気体導入口116に供給されて、気体導入接続路115を流通する窒素ガスは、第2流通路120を、ノズルアーム15の上面における左右方向の一方側部分(図7に示す上面の右側部分)、ノズルアーム15の一方側側面(右側側面)およびノズルアーム15の下面における左右方向の一方側部分(図7に示す下面の右側部分)に沿って移動しつつ気体導出接続路117を通って気体導出口118から排出される。
また、気体導入口116に供給された窒素ガスは、第2流通路120を、ノズルアーム15の上面における左右方向の他方側部分(図7に示す上面の左側部分)、ノズルアーム15の他方側側面(左側側面)およびノズルアーム15の下面における左右方向の他方側部分(図7に示す下面の左側部分)に沿って移動しつつ気体導出接続路117を通って気体導出口118から排出される。これにより、気体シール本体112の内周面とノズルアーム15の外表面との間が窒素ガスによってシールされる。
図8は、処理モジュールM1(図1参照)に対して処理液を供給するための構成の模式図である。基板処理装置1は、純水中の酸素を脱気し、当該純水中に不活性ガスを添加して不活性ガス溶存水を生成する不活性ガス溶存水生成ユニット50と、処理モジュールM1に対して処理液を供給するための処理液供給モジュールM2とをさらに備えている。
不活性ガス溶存水生成ユニット50は、純水供給源(図示せず)から供給された純水から不活性ガス溶存水を生成することができる。不活性ガス溶存水生成ユニット50によって生成された不活性ガス溶存水は、処理液供給モジュールM2に供給される。不活性ガス溶存水生成ユニット50は、たとえば、気体透過性および液体不透過性を有する中空糸分離膜を介して、純水からの酸素の脱気および純水への不活性ガスの添加を行うものである。このような構成の不活性ガス溶存水生成ユニット50としては、たとえば、メンブラーナ社製の商品名「リキセル(商標)分離膜コンタクター」を用いることができる。不活性ガス溶存水生成ユニット50の具体的な構成は、たとえば特開2004−22572号公報に示されている。
不活性ガス溶存水生成ユニット50は、供給された純水中の酸素濃度が、たとえば20ppb以下になるまで酸素を脱気する。また、不活性ガス溶存水生成ユニット50は、純度の高い窒素ガス(窒素ガスの濃度が、たとえば99.999%〜99.999999999%のもの)を純水中に添加して、窒素濃度が、たとえば7ppm〜24ppmの不活性ガス溶存水を生成する。不活性ガス溶存水中の窒素濃度をこの範囲内の値にすることにより、不活性ガス溶存水中の酸素濃度が時間の経過とともに上昇することを抑制または防止することができる。
処理液供給モジュールM2は、この図8では、処理液供給管38に処理液を供給するための構成のみを示しているが、処理液上ノズル25などの他のノズルに処理液を吐出するための構成に処理液を供給することができる。処理液供給モジュールM2は、薬液原液と不活性ガス溶存水とを混合して処理液としての薬液を調合する配管内調合ユニット51と、配管内調合ユニット51に薬液原液を供給する薬液供給ユニット53とを備えている。
「薬液原液」とは、不活性ガス溶存水との混合前の薬液を意味する。薬液原液の例としては、ふっ酸(HF)、塩酸(HCL)、ふっ酸とIPA(イソプロピルアルコール)の混合液、フッ化アンモニウム(NH4F)を例示できる。薬液原液としてふっ酸を用いた場合には、配管内調合ユニット51において、ふっ酸と不活性ガス溶存水とが所定の割合で混合(調合)され、希ふっ酸(DHF)が生成される。
配管内調合ユニット51は、供給配管54を介して不活性ガス溶存水生成ユニット50に接続されている。配管内調合ユニット51には、供給配管54を介して不活性ガス溶存水生成ユニット50から不活性ガス溶存水が供給される。また、配管内調合ユニット51は、薬液供給配管55を介して薬液供給ユニット53に接続されている。配管内調合ユニット51には、薬液供給配管55を介して薬液供給ユニット53から薬液原液が供給される。配管内調合ユニット51は、薬液供給ユニット53から供給された薬液原液と、不活性ガス溶存水生成ユニット50から供給された不活性ガス溶存水とを混合して処理液としての薬液を調合することができる。
配管内調合ユニット51は、処理液供給管38に接続されており、この処理液供給管38を通して処理液ノズル4に処理液としての薬液を供給することができる。また、配管内調合ユニット51および不活性ガス溶存水生成ユニット50から供給された不活性ガス溶存水に薬液原液を混合させることなく、当該不活性ガス溶存水をリンス液としてそのまま処理液供給管38を通して処理液ノズル4に供給することができる。これにより、処理液ノズル4に薬液および不活性ガス溶存水を選択的に供給することができる。
配管内調合ユニット51は、薬液原液と不活性ガス溶存水とをその内部で混合することができる配管としての混合部59と、供給配管54に介装されたバルブ60および流量調整バルブ61と、薬液供給配管55に介装された薬液バルブ62および薬液流量調整バルブ63とを備えている。供給配管54および薬液供給配管55は、それぞれ混合部59に接続されている。
バルブ60が開かれることにより、流量調整バルブ61で調整された所定流量の不活性ガス溶存水を混合部59に供給することができ、薬液バルブ62を開くことにより、薬液流量調整バルブ63で調整された所定流量の薬液原液を混合部59に供給することができる。バルブ60を開いた状態で、薬液バルブ62が開かれることにより、混合部59内を流通している不活性ガス溶存水に薬液原液を注入(インジェクション)して、薬液原液と不活性ガス溶存水とを混合させることができる。したがって、混合部59に対する薬液原液の供給量と不活性ガス溶存水の供給量とを調整することにより、所定の割合に調合された薬液を生成することができる。また、薬液バルブ62を閉じた状態でバルブ60のみが開かれることにより、混合部59に対して不活性ガス溶存水のみを供給することができる。これにより、不活性ガス溶存水に薬液原液を混合させることなく、当該不活性ガス溶存水をリンス液としてそのまま処理液供給管38に供給することができる。
薬液供給ユニット53は、薬液原液を貯留する薬液タンク71と、薬液タンク71から配管内調合ユニット51に薬液原液を導く薬液供給配管55とを備えている。薬液タンク71は、密閉容器からなるものであり、薬液タンク71の内部空間は、その外部空間から遮断されている。薬液供給配管55の一端は、薬液タンク71に接続されている。薬液供給配管55には、薬液タンク71側から順にポンプ72、フィルタ73、および脱気ユニット74が介装されている。脱気ユニット74は、不活性ガス溶存水生成ユニット50と同様の構成のものであり、不活性ガスの添加を行わないようになっている。
また、薬液タンク71には、薬液供給管75が接続されている。薬液タンク71には、薬液供給管75を介して薬液原液供給源(図示せず)からの薬液原液が供給される。薬液供給管75には、薬液タンク71への薬液原液の供給および供給停止を切り換えるための薬液バルブ76が介装されている。薬液タンク71には、たとえば、薬液タンク71内の液量が所定量以下になった場合に未使用の薬液原液が供給されるようになっている。これにより、薬液タンク71に未使用の薬液原液を補充することができる。
また、薬液タンク71には、不活性ガス供給管77が接続されている。薬液タンク71には、不活性ガス供給管77を介して不活性ガス供給源(図示せず)からの不活性ガスが供給される。不活性ガス供給管77には、薬液タンク71への不活性ガスの供給および供給停止を切り換えるための不活性ガスバルブ78が介装されている。薬液タンク71には、たとえば常時、不活性ガスが供給されるようになっている。
薬液タンク71に不活性ガスを供給することにより、薬液タンク71内から空気を追い出すことができる。したがって、薬液タンク71内の空気に含まれる酸素が、薬液タンク71内に貯留された薬液原液に溶け込んで、当該薬液原液中の溶存酸素量が増加することを抑制または防止することができる。また、不活性ガスによって薬液タンク71内を加圧することにより、薬液タンク71内に貯留された薬液原液を薬液供給配管55に圧送することができる。
薬液タンク71内の薬液原液は、不活性ガスによる圧力やポンプ72による吸引力により薬液タンク71から汲み出される。そして、汲み出された薬液原液は、ポンプ72により昇圧され、フィルタ73を通過して異物が除去される。さらに、フィルタ73を通過した薬液原液は、脱気ユニット74によって脱気され、溶存酸素量が低減される。その後、溶存酸素量が低減された薬液原液が配管内調合ユニット51に供給される。
図9は、基板処理装置1に備えられた配管の図解図である。
処理液供給管38などの処理液を流通させるための全ての配管は、図9に示す構造にされている。以下では、処理液供給管38などの処理液を流通させるための全ての配管を総称して「配管79」という。
配管79は、処理液が流通する内配管80と、この内配管80を取り囲む外配管81とを備えた2重配管構造を有している。内配管80は、外配管81の内部において、内配管80と外配管81との間に介在する支持部材(図示せず)によって支持されている。内配管80は、外配管81に対して非接触状態で支持されている。内配管80と外配管81との間には筒状の空間が形成されている。内配管80および外配管81は、たとえば、フッ素樹脂(より具体的には、耐薬液性および耐熱性に優れたPFA(perfluoro alkylvinyl ether tetrafluoro ethlene copolymer)製である。PFAは、酸素を透過させることができる。
また、外配管81には、不活性ガスバルブ82が介装された不活性ガス供給管83と、排気バルブ84が介装された排気配管85とが接続されている。不活性ガスバルブ82を開くことにより、不活性ガス供給管83を介して不活性ガス供給源(図示せず。たとえば、窒素ガス)からの不活性ガスを外配管81の内部に供給することができる。これにより、内配管80と外配管81との間に不活性ガスを充填することができる。また、排気バルブ84が開かれることにより、内配管80と外配管81との間から気体を排気させることができる。
排気バルブ84が開かれた状態で不活性ガスバルブ82が開かれることにより、内配管80と外配管81との間から空気を追い出して、この間の雰囲気を不活性ガス雰囲気に置換することができる。これにより、内配管80を不活性ガスにより包囲することができる。そして、内配管80と外配管81との間の雰囲気が不活性ガス雰囲気に置換された後、不活性ガスバルブ82および排気バルブ84を閉じることにより、内配管80が不活性ガスによって包囲された状態を維持することができる。
内配管80が不活性ガスにより包囲されることにより、内配管80の内部に進入する酸素の量を低減することができる。これにより、内配管80内を流通する処理液に酸素が溶け込んで、当該処理液中の酸素濃度が上昇することを抑制または防止することができる。 図10は、基板処理装置1の電気的構成を説明するためのブロック図である。
基板処理装置1は、マイクロコンピュータを含む構成の制御装置(制御手段)131を備えている。制御装置131は、スピンモータ41、蓋部材昇降機構33、蓋部材回転機構32、チャック昇降機構100、ノズル駆動モータ139などの動作を制御する。また、基板処理装置1に備えられた各バルブ27,30,35,60〜63,76,78の開閉は、制御装置131によって制御される。
図11は、基板処理装置1によって処理されるウエハWの表面状態の一例を説明するための断面図である。
以下に説明するように、この基板処理装置1に搬入されるウエハWは、たとえば、表面にポリマー残渣(ドライエッチングやアッシング後の残渣)が付着しており、金属パターンが露出したものである。金属パターンは、銅やタングステンその他の金属の単膜であってもよいし、複数の金属膜を積層した多層膜であってもよい。多層膜の一例としては、銅膜の表面に拡散防止のためのバリアメタル膜を形成した積層膜を挙げることができる。
図11に示すように、ウエハWの表面上には、層間絶縁膜87が形成されている。層間絶縁膜87には、下配線溝88がその上面から掘り下げて形成されている。下配線溝88には、銅配線89が埋設されている。層間絶縁膜87上には、エッチストッパ膜90を介して、被加工膜の一例としての低誘電率絶縁膜91が積層されている。低誘電率絶縁膜91には、上配線溝92がその上面から掘り下げて形成されている。さらに、低誘電率絶縁膜91には、上配線溝92の底面から銅配線89の表面に達するヴィアホール93が形成されている。上配線溝92およびヴィアホール93には、銅が一括して埋め込まれる。
上配線溝92およびヴィアホール93は、低誘電率絶縁膜91上にハードマスクが形成された後、ドライエッチング処理が行われ、低誘電率絶縁膜91におけるハードマスクから露出した部分が除去されることにより形成される。上配線溝92およびヴィアホール93の形成後、アッシング処理が行われ、低誘電率絶縁膜91上から不要となったハードマスクが除去される。ドライエッチング時およびアッシング時には、低誘電率絶縁膜91やハードマスクの成分を含む反応生成物が、ポリマー残渣となって、低誘電率絶縁膜91の表面(上配線溝92およびヴィアホール93の内面を含む。)などに付着する。そのため、アッシング後には、ウエハWの表面にポリマー除去液を供給して、低誘電率絶縁膜91の表面からポリマー残渣を除去するための処理が行われる。以下では、ウエハWの表面から基板処理装置1を用いてポリマー残渣を除去するための処理例について説明する。
図12A〜図12Fは、基板処理装置1によるウエハWの処理の一例を説明するための工程図である。以下では、図1、図8、図9および図12A〜図12Fを参照して、基板処理装置1によるウエハWの処理例について説明する。
ウエハWの処理に先立って、図12Aに示すように、蓋部材7は、スピンチャック3のスピンベース43から上方に離間した離間位置に配置されている。そのため、密閉チャンバ2の上部開口5が開放されている。また、スピンチャック3がスピンドライ位置(図12Eに示す位置)まで上昇させられ、そのスピンドライ位置で待機させられている。処理液ノズル4は、スピンチャック3の側方の退避位置に退避させられている。バルブ27,30,35,60〜63,76,78は、いずれも閉じられている。
アッシング後のウエハWは、搬送ロボット(図示せず)によって基板処理装置1内に搬入されて、スピンドライ位置にあるスピンチャック3にその表面を上方に向けた状態で保持される。ウエハWの保持後、制御装置131はチャック昇降機構100を制御して、スピンチャック3を処理位置に向けて下降させる。また、制御装置131は蓋部材昇降機構33を制御して、蓋部材7を閉位置(図1参照)まで下降させる。その後、チャンバ本体6の上部開口5が蓋部材7によって閉塞される(図12B参照)。これにより、密閉チャンバ2の内部空間が外部から密閉され、密閉チャンバ2が実質的に密閉のチャンバとして機能するようになる。
次いで、図12Bに示すように、密閉チャンバ2の内部空間の空気雰囲気を不活性ガス(窒素ガス)雰囲気に置換する不活性ガスパージ処理が行われる。具体的には、制御装置131は不活性ガスバルブ30を開いて、窒素ガスを不活性ガス吐出口29から密閉チャンバ2の内部空間内に供給する。このときにおける不活性ガス吐出口29からの窒素ガスの吐出流量は、たとえば50〜300L/min、好ましくは150L/minである。不活性ガス吐出口29から吐出された窒素ガスは、密閉チャンバ2の内部空間に広がり、密閉チャンバ2内の空気を排気液溝20(図1および図4参照)の排気口を通して密閉チャンバ2外に押し出す。これにより、密閉チャンバ2内の雰囲気が窒素ガス雰囲気に置換されていく。この密閉チャンバ2内への窒素ガスの供給は、乾燥処理の終了まで続行される。
この実施形態では、窒素ガスパージの期間中、ウエハWは静止状態(非回転状態)とされている。しかしながら、制御装置131がスピンモータ41を制御することによりウエハWが回転されてもよい。
この不活性ガスパージ処理は、密閉チャンバ2の内部空間における酸素濃度が、所定の低濃度(たとえば100ppm以下)に達するまで継続される。密閉チャンバ2内の酸素濃度が所定の低濃度に達したか否かは、チャンバ本体6の隔壁9の内面に酸素濃度センサ(図示せず)を配置し密閉チャンバ2内の酸素濃度を検出することにより判定してもよいし、不活性ガス吐出口29の窒素ガスの吐出時間が所定時間に達したことにより判定してもよい。そして、密閉チャンバ2内の酸素濃度が所定の低濃度に達すると、次いで、ウエハWの表面からポリマー残渣を除去するための薬液処理(図12C参照)がウエハWに施される。
薬液処理の開始タイミングになると、制御装置131はスピンモータ41を制御して、ウエハWを所定の液処理速度(10〜500rpm、好ましくは250rpm)で回転させる。
また、制御装置131は配管内調合ユニット51を制御し、薬液としての希ふっ酸を処理液ノズル4から吐出する。具体的には、制御装置131は、薬液バルブ62およびバルブ60を開く。薬液バルブ62およびバルブ60が開かれることにより、混合部59には、薬液原液としてのふっ酸と不活性ガス溶存水とが供給される。これにより、混合部59内を流通している不活性ガス溶存水にふっ酸が注入され、前述した所定比率で調合された希ふっ酸が生成される。また、制御装置131は、希ふっ酸の混合比および吐出流量をそれぞれ所期の混合比および吐出流量(供給流量)とするために、流量調整バルブ61および薬液流量調整バルブ63の開度をそれぞれ調整する。希ふっ酸は、薬液の一例であるとともに、ポリマー除去液の一例である。この実施形態では、混合部59で生成される希ふっ酸は、たとえば、ふっ酸と純水とが1:10〜1:1800、好ましくは1:10〜1:800の混合比で混合(調合)されている。また、混合部59で生成される希ふっ酸の吐出流量(供給流量)は0.5L/min〜3L/min、好ましくは1L/minである。そして、混合部59で生成された希ふっ酸は、処理液供給管38に供給され、処理液ノズル4からウエハWの表面に向けて吐出される。この処理液ノズル4から吐出される希ふっ酸は、脱気ユニット74により酸素が脱気されたふっ酸が、不活性ガス溶存水生成ユニット50により酸素が脱気された純水によって希釈されたものである。したがって、酸素濃度が十分に低減されている。
また、図12Cに示すように、薬液処理では、制御装置131はノズル駆動モータ139を制御して、ノズルアーム15を所定の範囲で往復移動させる。これにより、処理液ノズル4からの希ふっ酸が導かれるウエハWの表面上の供給位置は、ウエハWの回転中心からウエハWの周縁部に至る範囲内を、ウエハWの回転方向と交差する直線状の軌跡を描きつつ往復移動する。また、ウエハWの表面に供給された希ふっ酸は、ウエハWの表面の全域に拡がる。これにより、ウエハWの表面の全域に、希ふっ酸がむらなく供給される。処理液ノズル4からウエハWの表面に希ふっ酸が供給されることにより、その希ふっ酸の化学的能力により、ウエハWの表面に形成されたポリマー残渣を除去することができる。ウエハWの表面に供給された希ふっ酸は、ウエハWの周縁部からウエハWの側方に向けて飛散する。このとき、ウエハWの表面から飛散した処理液は、主としてチャンバ本体6の隔壁9の内面(とくに円筒面18および廃液案内面19)、ノズルアーム15の外表面、および処理液ノズル4に付着する。
また、薬液処理が行われるとき、密閉チャンバ2の内部空間への窒素ガスの供給が行われている。そのため、密閉チャンバ2の内部空間は窒素ガス雰囲気に維持され、密閉チャンバ2の内部空間における酸素濃度の上昇が抑制または防止されている。そのため、処理液ノズル4から吐出された希ふっ酸に雰囲気中の酸素が溶け込むことを抑制し、これにより、希ふっ酸中の酸素濃度の上昇を抑制または防止することができる。したがって、ウエハWの表面に対して、酸素濃度が十分に低減された希ふっ酸を供給することができる。これにより、ウエハW上において、希ふっ酸中の溶存酸素に起因する酸化反応が生じることを抑制または防止することができる。その結果、希ふっ酸のように、ウエハWに供給される薬液が酸化物に対するエッチング作用を有するものであったとしても、ウエハW上において不所望なエッチングが生じることを抑制または防止することができる。
薬液処理が所定時間(たとえば10〜60秒間、好ましくは30秒間)に渡って行われると、次いで、ウエハWの表面から薬液を洗い流すリンス処理(図12D参照)がウエハWに施される。
具体的には、制御装置131は配管内調合ユニット51のバルブ60を開いた状態に維持しつつ薬液バルブ62を閉じる。薬液バルブ62が閉じられて、バルブ60が開いた状態にされることにより、混合部59には不活性ガス溶存水のみが供給される。したがって、処理液供給管38には不活性ガス溶存水が供給され、処理液ノズル4からは、リンス液としての不活性ガス溶存水が吐出される。
また、リンス処理においても、制御装置131はノズル駆動モータ139を制御して、ノズルアーム15を所定の範囲で往復移動させる。これにより、処理液ノズル4からの不活性ガス溶存水が導かれるウエハWの表面上の供給位置は、ウエハWの回転中心からウエハWの周縁部に至る範囲内を、ウエハWの回転方向と交差する直線状の軌跡を描きつつ往復移動する。また、ウエハWの表面に供給された不活性ガス溶存水は、ウエハWの表面の全域に拡がり、ウエハWの表面に付着している希ふっ酸が不活性ガス溶存水によって洗い流される。そして、希ふっ酸を含む不活性ガス溶存水は、ウエハWの回転によって振り切られて、その周縁部から側方に飛散する。このとき、希ふっ酸を含む不活性ガス溶存水は、主としてチャンバ本体6の隔壁9の内面(とくに円筒面18および廃液案内面19)、ノズルアーム15の外表面、および処理液ノズル4に付着する。
処理液ノズル4から吐出される不活性ガス溶存水は、不活性ガス溶存水生成ユニット50により酸素が脱気されており、溶存酸素量が十分に低減されている。さらに、不活性ガス溶存水生成ユニット50により生成された不活性ガス溶存水は、窒素ガスの添加により、時間の経過とともに酸素濃度が上昇することが抑制または防止されている。加えて、密閉チャンバ2内の雰囲気中の酸素濃度は十分に低減されている。したがって、ウエハWの表面に対して、酸素濃度が十分に低減された不活性ガス溶存水を供給することができ、ウエハW上において、不活性ガス溶存水中の溶存酸素に起因する酸化反応が生じることを抑制または防止することができる。したがって、ウエハW上に残留している希ふっ酸による酸化物のエッチングを抑制することができ、これによりウエハW上における不所望なエッチングの発生を抑制または防止することができる。
このリンス処理は、密閉チャンバ2の内部空間におけるフッ素イオンの残留量が、たとえば所定の低値(0.15ng/cm2以下)に達するまで継続される。密閉チャンバ2内のフッ素イオンの残留量が所定の低値に達したか否かは、チャンバ本体6の隔壁内面にフッ素イオンセンサ(図示せず)を配置し密閉チャンバ2内のフッ素イオンの残留量を検出することにより判定してもよいし、処理液ノズル4からの不活性ガス溶存水の吐出時間が所定時間に達したことにより判定してもよい。密閉チャンバ2内のフッ素イオンの残量が所定の低値に達すると、次いで、密閉チャンバ2内を洗浄するためのチャンバ洗浄処理が実行される。チャンバ洗浄処理については後述する。
チャンバ洗浄処理の終了後は、図12Eに示すように、ウエハWを乾燥させる乾燥処理(スピンドライ)が行われる。
制御装置131は、チャック昇降機構100を制御して、スピンチャック3を最上方のスピンドライ位置まで上昇させる。これにより、蓋部材7の基板対向面23が、スピンチャック3に保持されたウエハWの表面に近接する。このスピンドライ位置ではスピンチャック3に保持されたウエハWの表面と、蓋部材7の基板対向面23との間の間隔は、所定の狭間隔(たとえば0.1〜5.0mm。好ましくは2.5mm)である。そのため、ウエハWの表面と基板対向面23との間には微小空間が形成され、その側方の雰囲気から遮断される。
そして、スピンチャック3がスピンドライ位置まで上昇されると、制御装置131は、スピンモータ41の回転速度を加速して、スピンチャック3に保持されたウエハWを高回転速度(たとえば1000〜2500rpm。好ましくは2500rpm)で回転させる。また、乾燥処理時には、制御装置131は蓋部材回転機構32を制御して、蓋部材7をウエハWの回転に同期して、ウエハWの回転方向と同方向に回転させる。そのため、ウエハWの表面と蓋部材7の基板対向面23との間に安定気流が形成されるとともに、ウエハWの表面と基板対向面23との間の空間がその側方の雰囲気から遮断される。
さらに、不活性ガス吐出口29からの窒素ガスの吐出が継続されている。したがって、ウエハWの表面と基板対向面23との間に、ウエハWの中心部からウエハWの周縁部に向かう窒素ガスの気流が形成され、ウエハWの表面と基板対向面23との間が窒素ガスで充満される。これにより、低酸素雰囲気下でウエハWに乾燥処理を施すことができる。
この乾燥処理では、ウエハWが高回転速度で回転されることにより、ウエハWに付着しているリンス液(不活性ガス溶存水)は、ウエハWの回転による遠心力を受けてウエハWの周囲に振り切られる。これにより、ウエハWからリンス液が除去され、ウエハWが乾燥される。
また、スピンチャック3のスピンドライ位置において、乾燥処理の直前に、ウエハWの表面にIPA液を供給することもできる。図1に二点鎖線で示すように、処理液上ノズル25にIPA液が供給されるようになっている場合、ウエハWの表面の中心にIPA液を供給することができ、これにより不活性ガス溶存水(リンス液)とIPA液とを良好に置換することができ、ウエハWの表面を良好に乾燥させることができる。
乾燥処理が所定の乾燥時間に渡って行われると、制御装置131はスピンモータ41を制御して、ウエハWの回転を停止させる。また、制御装置131は、蓋部材回転機構32を駆動して蓋部材7の回転を停止させるとともに、蓋部材回転機構32を駆動して、蓋部材7をスピンチャック3のスピンベース43から上方に離間した開位置(図12A参照)まで上昇させる。これにより、密閉チャンバ2の上部開口5が開放される。また、制御装置131は不活性ガスバルブ30を閉じて、不活性ガス吐出口29からの窒素ガスの供給を停止する。
その後、開放された上部開口5を介してスピンドライ位置に位置するスピンチャック3から基板搬送ロボット(図示せず)にウエハWが引き渡され、基板搬送ロボットによってウエハWが密閉チャンバ2内から搬出される。
なお、リンス処理時において、処理液ノズル4からのリンス液を用いてリンス処理を行うのではなく、処理液上ノズル25からのリンス液を用いてリンス処理が行われていてもよい。この場合、リンス処理時には、炭酸水バルブ27が開かれて、処理液上ノズル25の処理液上吐出口26から、ウエハWの上面に向けて炭酸水が吐出される。ウエハWに供給された炭酸水は、ウエハWの回転による遠心力を受けてウエハWの表面全域に広がり、これによりウエハWの表面に付着した薬液が洗い流される。
また、処理液ノズル4からのリンス液と処理液上ノズル25からのリンス液との双方を用いてリンス処理が行われていてもよい。
次いで、密閉チャンバ2内を洗浄液(たとえば純水)で洗浄するチャンバ洗浄処理について説明する。このチャンバ洗浄処理は、基板処理装置1による処理の間に実施されてもよく、チャンバ洗浄処理時には、スピンチャック3にはウエハWは保持されておらず、スピンチャック3はチャンバ洗浄位置に位置している。
制御装置131は、チャック昇降機構100を制御して、スピンチャック3をチャンバ洗浄位置まで下降させる。また、制御装置131は、蓋部材昇降機構33を制御して蓋部材7を閉位置まで下降させるとともに、蓋部材回転機構32を制御して蓋部材を所定の回転速度で回転させる。また、制御装置131は洗浄液バルブ35を開いて、洗浄液ノズル34から蓋部材7の基板対向面23に洗浄液が供給される。この実施形態では、洗浄液として純水が用いられる(図12F参照)。
蓋部材7の基板対向面23に供給された純水は、蓋部材7の回転による遠心力を受けて、蓋部材7の基板対向面23を伝って回転半径方向の外方へと移動する。これにより、蓋部材7の基板対向面23の略全域に純水をむらなく行き渡らせることができ、蓋部材7の基板対向面23に付着している薬液および薬液を含むリンス液を、純水で洗い流すことができる。
また、蓋部材7の基板対向面23を伝って回転半径方向外方側へ移動する純水は、下面103(図3参照)と第1円錐面17(図1参照)とを介してチャンバ本体6の隔壁9の内面に案内され、チャンバ本体6の隔壁9の内面を伝って流下する。このとき、隔壁9の内面に付着している処理液(薬液や薬液を含むリンス液)が、洗浄液によって洗い流される。こうして処理液を洗い流した純水は、排気液溝20に流入し、この排気液溝20および排気液路110を通して廃液処理設備に案内される。
また、処理位置とは異なるチャンバ洗浄位置でチャンバ洗浄処理が実行される。処理位置でチャンバ洗浄位置が実行されると、薬液処理時やリンス処理時にウエハWの周縁から飛散し、チャンバ本体6の隔壁9の内面に付着した処理液(薬液や薬液を含むリンス液)がスピンチャック3にふりかかり、そのスピンチャック3を汚染するおそれがある。しかしながら、処理液処理位置とは異なるチャンバ洗浄位置では、隔壁9の内面に付着した処理液がスピンチャック3にふりかかることがない。そのため、スピンチャック3を汚染することなく密閉チャンバ2内を洗浄することができる。
なお、チャンバ洗浄処理を、ウエハWに対する一連の洗浄処理中に行うこともできる。この場合、リンス処理後乾燥処理前に行われることが望ましい。このとき、スピンチャック3にはウエハWが保持されており、チャンバ洗浄処理によってウエハWに洗浄液がかかることが考えられる。この場合、ウエハWに洗浄液を介して酸素が供給されないように、洗浄液として不活性ガス溶存水が用いられることが望ましい。また、チャンバ洗浄処理を一連の洗浄処理中に行う場合は、チャンバ洗浄処理中には、不活性ガス吐出口29から窒素ガスの供給が行われていることが望ましい。これにより、チャンバ洗浄処理中においても、密閉チャンバ2内を低酸素濃度状態に維持することができる。
また、一連の処理(ウエハWに対する洗浄処理)において、薬液処理における密閉チャンバ2における窒素ガスの供給流量は、窒素ガスパージ時と同流量であってもよいし、窒素ガスパージ時よりも大流量にされていてもよい。また、リンス処理における密閉チャンバ2における窒素ガスの供給流量は、窒素ガスパージ時と同流量であってもよいし、窒素ガスパージ時よりも大流量にされていてもよい。さらに、乾燥処理時における密閉チャンバ2における窒素ガスの供給流量は、窒素ガスパージ時と同流量であってもよいし、窒素ガスパージ時よりも大流量にされていてもよい。
以上により、この実施形態によれば、処理液ノズル4を支持するノズルアーム15が、隔壁9の通過孔4を介して、密閉チャンバ2の内外に跨って延びている。ノズルアーム15を駆動するための直線駆動機構36は、密閉チャンバ2外に配置されている。この直線駆動機構36は、ノズルアーム15における密閉チャンバ2から露出する部分に駆動力を入力し、これによりノズルアーム15を移動させる。これにより、密閉チャンバ2外の直線駆動機構36からの駆動力により、密閉チャンバ2内で処理液ノズル4を移動させることができる。直線駆動機構36を密閉チャンバ2外に配置するので、密閉チャンバ2内部空間の容積を低減できる。
密閉チャンバ2の内部空間は密閉されており、また、その内部空間は低減されている。そのため、密閉チャンバ2の内部空間の雰囲気制御を良好に行うことができる。したがって、酸素濃度が十分に低減された雰囲気下で、ウエハWに処理液による処理を施すことができる。
以下では、基板処理装置1によりウエハWを処理することにより得られた測定結果等について説明する。
図13は、不活性ガス溶存水中の酸素濃度と銅のエッチング量との関係を示す図である。この図13は、ウエハWの表面に対して希ふっ酸による薬液処理(ポリマー除去処理)を行ったときの銅のエッチング量(膜減り)の測定結果である。希ふっ酸は、ふっ酸と純水との比率が1:100に調合されたものを用いた。また、希ふっ酸に含まれるふっ酸は、酸素が脱気されていないものを用いた。この測定で用いられた希ふっ酸は、純水の割合に対してふっ酸の割合が非常に小さいので、希ふっ酸中の酸素濃度は、当該希ふっ酸を調合するのに用いた不活性ガス溶存水中の酸素濃度と略等しいとみなすことができる。薬液処理時間は、60secである。
この図13において、一番左の測定値(一番左の●の値)は、酸素濃度が12ppbの不活性ガス溶存水によって希ふっ酸を調合し、この希ふっ酸を用いて薬液処理を行ったときの銅のエッチング量である。また、左から2番目の測定値(左から2番目の●の値)は、酸素濃度が20ppbの不活性ガス溶存水によって希ふっ酸を調合し、この希ふっ酸を用いて薬液処理を行ったときの銅のエッチング量である。図13に示す測定結果から、酸素濃度が20ppb以下の不活性ガス溶存水によって調合した希ふっ酸を用いて薬液処理を行えば銅のエッチングを確実に抑制または防止できることが理解される。すなわち、酸素濃度が20ppb以下の不活性ガス溶存水によって調合した希ふっ酸であれば銅酸化物の生成を確実に抑制または防止できることが理解される。
図14は、ウエハWの上方の酸素濃度とウエハWの表面に供給された純水中の酸素濃度との関係を示す図である。
この図14は、スピンチャック3を処理位置に位置させた状態で、処理液ノズル4からスピンチャック3に保持されたウエハWの表面に向けて不活性ガス溶存水を吐出させ、ウエハWの表面に供給された不活性ガス溶存水の酸素濃度を測定した結果である。処理液ノズル4からは、酸素濃度が10ppbに調整された不活性ガス溶存水を吐出させた。
この図14において、一番左の測定値(一番左の■の値)は、ウエハWの上方の酸素濃度が0.001%(10ppm)のときにウエハWの表面に供給された不活性ガス溶存水の酸素濃度の値であり、このときの不活性ガス溶存水中の酸素濃度は12ppbとなっていた。また、左から2番目の測定値(左から2番目の■の値)は、ウエハWの上方の酸素濃度が0.01%(100ppm)のときにウエハWの表面に供給された不活性ガス溶存水の酸素濃度の値であり、このときの不活性ガス溶存水中の酸素濃度は20ppbとなっていた。
図14に示す測定結果から、酸素濃度が10ppbに調整された純水をウエハWの表面に向けて吐出させたときに、ウエハWの上方の酸素濃度が100ppm以下であれば、ウエハWの表面に供給される純水の酸素濃度を20ppb以下に維持できることが分かる。したがって、図13に示す測定結果を考慮すると、ウエハWの上方の酸素濃度を100ppm以下とし、酸素濃度が10ppb以下の希ふっ酸をウエハWの表面に向けて吐出させれば、酸素濃度が20ppb以下の希ふっ酸をウエハWの表面に供給して、希ふっ酸中の溶存酸素により銅が酸化されることを確実に抑制または防止することができる。
図15は、純水中の酸素濃度と純水中の窒素濃度との関係を示す図である。この図15において、一点鎖線で示された値は、純水から酸素を脱気した直後の酸素濃度の測定値であり、実線で示された値は、一点鎖線で示された値まで酸素が脱気された純水を、10sec以上大気に開放した後の酸素濃度の測定値である。また、純水に対して窒素ガスを添加していないときの、純水中の窒素濃度は、3ppmであった。
図15に示す測定結果から、純水中の窒素濃度が7ppm未満であると、純水中の酸素濃度が時間の経過とともに上昇してしまう。したがって、純水に窒素ガスを添加して、純水中の窒素濃度を7ppm以上にすることにより、純水中の酸素濃度が時間の経過とともに上昇することを抑制または防止することができる。これにより、酸素が脱気された純水中の酸素濃度を低い状態に維持することができる。
図16は、本発明の他の実施形態に係る基板処理装置の構成を説明するための図解的な平面図である。この図16に示す実施形態において、図1〜図15に示す実施形態に示された各部に対応する部分には、第1実施形態と同一の参照符号を付して示し、説明を省略する。この図16に示す実施形態が、図1〜図15に示す実施形態と相違する点は、直線駆動機構36に代えて直線駆動機構150を用いる点である。
この直線駆動機構150は、ノズルアーム15に連結位置を変位可能に連結された駆動アーム151と、駆動アーム151を所定の鉛直軸線C1まわりに揺動させるモータ152とを備えている。
ノズルアーム15の基端部には、連結部材153が連結されている。連結部材153は、2本のガイドシャフト154に基準線L1に沿う方向への移動がガイドされている。この連結部材153には、水平方向に延びる挿通孔155を有する回動片156が、所定の鉛直軸線C1まわりに回動自在に支持されている。この挿通孔155に駆動アーム151が出没自在に挿通している。モータ152からの回転駆動力が駆動アーム151に入力されることにより、駆動アーム151が鉛直軸線C1まわりに所定の範囲内で揺動される。連結部材153はガイドシャフト154によってガイドされているので、駆動アーム151の角度(揺動角度)変化に伴って、連結部材153は基準線L1に沿って移動する。このとき、回動片156は鉛直軸線まわりに回転して姿勢を変更するとともに、回動片156と駆動アームの基端との間の距離、すなわち鉛直軸線C1と鉛直軸線C2との距離が変化する。ノズルアーム15の移動(進出または退避)により、処理液ノズル4を、スピンチャック3に保持されたウエハWの側方の退避位置(図16に破線で図示)と、スピンチャック3に保持されたウエハWの表面上(図16に二点鎖線で図示)との間を移動させることができ、ウエハWの表面上で、処理液ノズル4からの処理液の吐出位置を移動させることができる。
図17は、本発明のさらに他の実施形態に係る基板処理装置の構成を説明するための図解的な平面図である。この図16に示す実施形態において、図1〜図15に示す実施形態に示された各部に対応する部分には、第1実施形態と同一の参照符号を付して示し、説明を省略する。この図17に示す実施形態が、図1〜図15に示す実施形態と主として相違する点は、直線駆動機構36に代えて円弧駆動機構160を用いる点である。
この実施形態では、基準線L2は、直線状ではなく所定の鉛直軸線C3を中心とする円弧状のものである。基準線L2は回転軸線C上を通っている。したがって、この実施形態では、ノズルアームとして鉛直軸線C3を中心とする円弧状をなすノズルアーム15Aが用いられており、また、通過孔14や第1および第2挿通孔123,113(図17には不図示)の内周面も平面ではなく曲面状(円弧状)をなしている。
円弧駆動機構160の基端部に連結された駆動アーム161と、駆動アーム161を所定の鉛直軸線C3まわりに揺動させるモータ162とを備えている。モータ162からの回転駆動力が駆動アーム161に入力されることにより、駆動アーム161が鉛直軸線C3まわりに揺動される、それに伴って、ノズルアーム15Aが鉛直軸線C3に移動(進出または退避)する。これにより、処理液ノズル4を、スピンチャック3に保持されたウエハWの側方の退避位置(図17に破線で図示)と、スピンチャック3に保持されたウエハWの表面上(図17に二点鎖線で図示)との間を移動させることができ、ウエハWの表面上で、処理液ノズル4からの処理液の吐出位置を移動させることができる。
以上、この発明の3つの実施形態について説明したが、この発明は、他の形態で実施することもできる。
たとえば、ノズルアーム15の断面形状が矩形形状ではなく、円形形状であってもよい。
また、蓋部材7がチャンバ本体6に対して回転不能な構成であってもよい。この場合、蓋部材回転機構32の構成は不要である。
さらには、スピンチャック3がチャンバ本体6(密閉チャンバ2)に対して昇降不能な構成であってもよい。この場合、チャック昇降機構100の構成は不要である。
その他、特許請求の範囲に記載された事項の範囲で種々の設計変更を施すことが可能である。