JP5979663B2 - 処理液選定方法、及びマスクブランクの製造方法、並びにマスクの製造方法 - Google Patents
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Description
この微小黒欠陥は、薄膜をパターニングした後の基板が露出された領域にスポット状に存在する欠陥で、サイズが20〜100nm、高さが薄膜の膜厚相当のものであり、半導体デザインルールでDRAMハーフピッチ32nmノード以降のフォトマスクを作製する場合に初めて認識されたものである。上述の微小黒欠陥は、半導体デバイスを製造するに際しては欠陥となるもので全て除去・修正しなければならないが、欠陥数が50個超となると欠陥修正の負荷が大きく、事実上欠陥修正が困難となる。また、近年の半導体デバイスの高集積化において、フォトマスクに形成する薄膜パターンの複雑化(例えば、OPC(Optical Proximity Correction)パターン)、微細化(例えば、アシストバー等のSRAF(Sub -resolution Assist Features)、狭小化において、除去・修正も限界があり問題となってきた。
また、マスクの微小黒欠陥の発生要因となるがマスクブランクの欠陥検査では検出されない潜在化したマスクブランクにおける欠陥の発生を抑制するマスクブランクの製造方法を提供することを第2の目的とする。
さらに、マスクの欠陥修正の負荷を低減し、また、修正不可能な微小黒欠陥の発生を防止できるマスクの製造方法を提供することを第3の目的とする。
そして、上述の潜在化したマスクブランクにおける欠陥が、エッチング阻害物質からなり、そのエッチング阻害物質は、マスクブランクにおける薄膜の表面を表面処理する際に使用する処理液(例えば、洗浄液)に極微量ながらも含まれていることがわかった。(エッチング阻害物質の詳細については後述する。)
また、基板上に形成した転写パターンとなる薄膜が形成されたマスクブランクを表面処理する際に使用する処理液に含まれるエッチング阻害物質の濃度を減らすことで、マスクの微小黒欠陥を減少させることができることを確認した。
(構成1)基板上にイオン主体のドライエッチングが可能な材料からなる転写パターンとなる薄膜を有するマスクブランクを複数枚準備する工程と、
エッチング阻害物質の濃度が異なる複数種の処理液を準備する工程と、
前記マスクブランクに対して前記処理液を用いて表面処理する工程と、
前記表面処理をしたマスクブランクに対して、前記薄膜をイオン主体のドライエッチングが可能なドライエッチングガスによりエッチングして除去した後、該エッチング後の前記基板表面の表面形態情報を取得する工程と、
前記基板表面の表面形態情報を、マスクの欠陥要因となる潜在化したマスクブランク欠陥情報とし、前記エッチング阻害物質の濃度と、前記基板表面の表面形態情報との対応関係を作成し、作成した対応関係の中から所望の仕様又は品質を満足する表面形態情報を選択して、該選択した表面形態情報に対応するエッチング阻害物質の濃度を特定する工程と、
この特定した濃度を有する処理液をマスクブランクの表面処理に使用する処理液として選定することを特徴とする処理液選定方法。
表面形態情報を取得するために使用した前記マスクブランクとは別のマスクブランクであって前記処理液を用いて表面処理したマスクブランクを用いてマスクを作製し、該マスクの欠陥情報と、前記基板表面の表面形態情報との対応関係を作成し、作成した対応関係の中から所望の仕様又は品質を満足するマスク欠陥情報に対応する表面形態情報を選択して得られることを特徴とする構成1記載の処理液選定方法。
(構成4)前記エッチング阻害物質は、カルシウム、マグネシウム、鉄、銅、マンガン、アルミニウム、又はそれらの化合物から選ばれる少なくとも一つを含む材料であることを特徴とする構成1乃至3の何れか一に記載の処理液選定方法。
(構成5)前記エッチング阻害物質が、カルシウム、マグネシウム、アルミニウム、またはそれらの化合物から選ばれる少なくとも一つを含む材料であることを特徴とする構成1乃至4の何れか一に記載の処理液選定方法。
(構成6)前記ドライエッチングガスは、フッ素系ガス、または実質的に酸素を含まない塩素系ガスであることを特徴とする構成1乃至5の何れか一に記載の処理液選定方法。
(構成7)前記薄膜は、タンタルを含有する材料からなることを特徴とする構成1乃至6の何れか一に記載の処理液選定方法。
(構成9)前記処理液が洗浄液であることを特徴とする構成1乃至8の何れか一に記載の処理液選定方法。
(構成10)基板上にイオン主体のドライエッチングが可能な材料からなる転写パターンとなる薄膜を有するマスクブランクを複数枚準備する工程と、
エッチング阻害物質の濃度が異なる複数種の処理液を準備する工程と、
前記マスクブランクに対して前記処理液を用いて表面処理する工程と、
前記表面処理をしたマスクブランクに対して、前記薄膜をイオン主体のドライエッチングが可能なドライエッチングガスによりエッチングして除去した後、該エッチング後の前記基板表面の表面形態情報を取得する工程と、
前記基板表面の表面形態情報を、マスクの欠陥要因となる潜在化したマスクブランク欠陥情報とし、前記エッチング阻害物質の濃度と、前記基板表面の表面形態情報との対応関係を作成し、作成した対応関係の中から所望の仕様又は品質を満足する表面形態情報を選択して、該選択した表面形態情報に対応するエッチング阻害物質の濃度を特定する工程と、
前記表面処理を施したマスクブランクとは別のマスクブランクを準備し、この別に準備したマスクブランクに対して、前記特定した濃度を有する処理液を用いて表面処理する表面処理工程と、を有することを特徴とするマスクブランクの製造方法。
表面形態情報を取得するために使用した前記マスクブランクとは別のマスクブランクであって前記処理液を用いて表面処理したマスクブランクを用いてマスクを作製し、該マスクの欠陥情報と、前記基板表面の表面形態情報との対応関係を作成し、作成した対応関係の中から所望の仕様又は品質を満足するマスク欠陥情報に対応する表面形態情報を選択して得られることを特徴とする構成10記載のマスクブランクの製造方法。
(構成14)前記エッチング阻害物質が、カルシウム、マグネシウム、アルミニウム、またはそれらの化合物から選ばれる少なくとも一つを含む材料であることを特徴とする構成10乃至13の何れか一に記載のマスクブランクの製造方法。
(構成15)前記ドライエッチングガスは、フッ素系ガス、または実質的に酸素を含まない塩素系ガスであることを特徴とする構成10乃至14の何れか一に記載のマスクブランクの製造方法。
(構成16)前記薄膜は、タンタルを含有する材料からなることを特徴とする構成10乃至15の何れか一に記載のマスクブランクの製造方法。
(構成17)前記薄膜は、タンタルと窒素とを含有するタンタル窒化物と、タンタルと酸素とを含有するタンタル酸化膜と、が積層された積層膜であることを特徴とする構成10乃至16の何れか一に記載のマスクブランクの製造方法。
(構成19)構成10乃至18の何れか一に記載のマスクブランクの製造方法により製造されたマスクブランクを用いて、前記薄膜をパターニングしてマスクを製造することを特徴とするマスクの製造方法。
また、マスクの微小黒欠陥の発生要因となるがマスクブランクの欠陥検査では検出されない潜在化したマスクブランク欠陥の発生を抑制できるマスクブランクの製造方法を提供することができる。
さらに、マスクの欠陥修正の負荷を低減し、また、修正不可能な微小黒欠陥の発生を防止できるマスクの製造方法を提供することができる。
マスク微小黒欠陥の発生要因を調べるため、2種類のマスクブランクを用意した。1つは、イオン主体のドライエッチングが可能な材料からなる転写パターンとなる薄膜が形成されたマスクブランク、もう1つは、ラジカル主体のドライエッチングが可能な材料からなる転写パターンとなる薄膜が形成されたマスクブランクである。
前者のマスクブランクとして、透光性基板上に、実質的にタンタルと窒素とからなるTaNの遮光層(膜厚:42nm)と、実質的にタンタルと酸素とからなるTaOの反射防止層(膜厚:9nm)の積層構造からなるバイナリーマスクブランク(以下、タンタル系マスクブランクと称し、そのマスクをタンタル系マスクと称す。)を、後者のマスクブランクとして、透光性基板上に、実質的にクロムと酸素と窒素と炭素とからなるCrCONの膜(38.5nm)と、実質的にクロムと酸素と窒素からなるCrONの膜(膜厚:16.5nm)の積層構造の遮光層と、実質的にクロムと酸素と窒素と炭素からなるCrCONの反射防止層(膜厚:14nm)の積層構造からなるバイナリーマスクブランク(以下、クロム系マスクブランクと称し、そのマスクをクロム系マスクと称す。)を用意した。
上述の2種類のバイナリーマスクブランクに対して、反射防止層上に付着した異物(パーティクル)や遮光層、反射防止層に混入している異物(パーティクル)の除去を目的として、界面活性剤が含有されたアルカリ性洗浄液を、マスクブランク表面に供給し、表面処理を行った。
表面処理を行ったマスクブランク表面をマスクブランク欠陥検査装置(M1350:レーザーテック社製)により欠陥検査を行った。その結果、マスクブランク表面にパーティクルやピンホールの欠陥を確認することができなかった。
後者のクロム系マスクブランクについては、マスクブランク表面にレジストパターンを形成した。次に、レジストパターンをマスクにして塩素系(Cl2)ガスと酸素(O2)ガスの混合ガスを用いたドライエッチングを行い、反射防止層と遮光層をパターニングした。最後にレジストパターンを除去して、クロム系マスクを作製した。
得られた2種類のマスクについて、マスク欠陥検査装置(KLA−Tencor社製)により欠陥検査を行った。その結果、イオン主体のドライエッチングで作製したタンタル系マスクには、微小黒欠陥が多数(50個超)存在していることが確認された。一方、ラジカル主体のドライエッチングで作製したクロム系マスクには、ほとんど微小黒欠陥は存在していなかった。尚、レジストパターンを形成する前、より詳しくは、レジスト膜を形成する前に汚染物質の除去等を目的に行うUV処理、オゾン処理、加熱処理を行っても同様の欠陥が確認された。
尚、上述のタンタル系マスクブランクについては、タンタルを含有する材料で遮光層と反射防止層を構成しているので、上述のように、実質的にタンタルと酸素とからなるTaOの反射防止層を、フッ素系ガスのドライエッチングガスでエッチングし、実質的にタンタルと窒素とからなるTaNの遮光層を、実質的に酸素を含まない塩素系ガスのドライエッチングガスでエッチングすることもできる。しかし、TaNの遮光層は、フッ素系ガスのドライエッチングガスでもエッチングできる。このため、レジストパターンをマスクにして、反射防止層及び遮光層をフッ素系ガスのドライエッチングガスでエッチングしてタンタル系マスクを作製することもできる。
上述の多数の微小黒欠陥は、フッ素系ガスのドライエッチングガスでマスクを作製したタンタル系マスクの場合においても確認された。
その結果、微小黒欠陥は、高さが遮光層と反射防止層の積層膜の膜厚とほぼ同等であることが確認され、詳しくは、サイズが23nm、高さが43nmの核に、5〜10nm厚みの表面酸化が積層したと思われる積層構造物であることが確認できた。
処理液により表面処理された上述の2種類のマスクブランク表面を飛行時間型二次イオン質量分析法(TOF-SIMS:Time-Of-Flight Secondary Ion Mass Spectrometry)により分析した。
その結果、タンタル系マスクブランクにおける薄膜の表面には、陽イオン(無機)としてカルシウム(Ca2+)が検出された。また、同様の手順で別のタンタル系マスクブランクに対し、TOF−SIMSによる分析を行ったところ、陽イオン(無機)としてカルシウム(Ca2+)のほかに、マグネシウム(Mg2+)やアルミニウム(Al3+)も検出された。一方、クロム系マスクブランクにおける薄膜の表面には、上述のカルシウム(Ca2+)、マグネシウム(Mg2+)、アルミニウム(Al3+)ともに検出されなかった。すなわち、クロム系マスクブランクにおける薄膜のカルシウム(Ca2+)、マグネシウム(Mg2+)、アルミニウム(Al3+)の各検出値は、タンタル系マスクブランクと比べて、大幅に低い値であった。
以上のTOF−SIMSとSTEMの結果から、タンタル系マスクブランクとクロム系マスクブランクとの間で、転写用マスクを作製した時に発生する微小黒欠陥の個数に大きな差が生じる理由が、そのエッチング阻害物質の付着数の違いによるものであることが明らかとなった。
(1)マスクブランクの表面処理工程により、処理液(界面活性剤)に含まれているカルシウムが、マスクブランク表面に強固に付着(図3(a))。カルシウム(エッチング阻害物質)は極めて薄いので最新のマスクブランク検査装置によっても検出されない。
(2)マスクブランク表面にレジストパターンを形成。レジストパターンが形成されていないマスクブランク(反射防止層)表面にカルシウムが残存。フッ素系ガスによるドライエッチングにより反射防止層をパターニングする場合には、カルシウムや、ドライエッチングプロセスにより生成したフッ化カルシウムは沸点が高くエッチングされないため、エッチング阻害物質となる。
(3)レジストパターンをマスクにしてフッ素系ガスによるドライエッチングで反射防止層をパターニング。このとき、エッチング阻害物質が付着した領域がマスクとなって、この領域に極薄いTaOの反射防止層の残存部分が発生(図3(b)、図3(c))。
(4)次に、塩素系ガスによるドライエッチングで遮光層をパターニング。このとき、極薄い反射防止層の残存部分がマスクとなって、遮光層がエッチングし除去され、微小黒欠陥の核が形成(図4(d))。
(5)その後、レジストパターンの除去、洗浄等を得て、核の表面が酸化され核の周りに酸化層が形成され、微小黒欠陥が形成(図4(e))。
尚、クロム系マスクに多数の微小黒欠陥が発生しなかったのは、クロム系マスクブランクとタンタル系マスクブランクの各表面のゼータ電位の測定結果から、タンタル系マスクブランクの方がクロム系マスクブランクよりも中性から弱アルカリ性領域において、ゼータ電位が数十mV大きいことが理由の1つとして考えられる。さらに、クロム系マスクブランクでは、マスク作製プロセスにおいて、ラジカル主体のドライエッチングによりマスクを作製しているので、反射防止層、遮光層が等方性のエッチング作用により反射防止層、遮光層の消失と共に微小黒欠陥も消失したものと考えられる。
微小黒欠陥の発生メカニズムについては、カルシウムについて説明をしたが、後述するエッチング阻害物質となるマグネシウム、鉄、銅、マンガン、アルミニウム、又はその化合物についても、沸点が非常に高く、ドライエッチングガスによるエッチング原理から考え、上述の発生メカニズムが適用されると考える。
以下に、マスクブランク欠陥検査では検出されない、マスクの微小黒欠陥要因となるエッチング阻害物質からなる潜在化したマスクブランク欠陥の評価手法について説明する。
マスクの微小黒欠陥要因となるエッチング阻害物質からなる潜在化したマスクブランク欠陥の評価手法は、以下の構成を要する。
(構成A)
基板上にイオン主体のドライエッチングが可能な材料からなる薄膜を有するマスクブランクの表面に、処理液を用いて表面処理した後、該表面処理をしたマスクブランクに対して、前記薄膜をイオン主体のドライエッチングが可能なドライエッチングガスによりエッチングを行う工程と、
該エッチング後の前記基板表面の表面形態情報を取得する工程と、
取得した前記表面形態情報に基づいて、マスクの欠陥要因となる潜在化したマスクブランクにおける欠陥を評価するマスクブランクの評価方法。
フッ素系ガスとしては、CHF3、CF4、SF6、C2F6、C4F8等が挙げられる。塩素系ガスとしては、Cl2、SiCl4、CHCl3、CH2Cl2、CCl4等が挙げられる。また、ドライエッチングガスとしては、上述のフッ素系ガス、塩素系ガス以外に、He、H2、Ar、C2H4等のガスを添加した混合ガスを用いることもできる。
また、イオン主体のドライエッチングが可能な材料とは、上述のフッ素系ガスや実質的に酸素を含まない塩素系ガスを用いてドライエッチングできる材料であって、具体的には、タンタル(Ta)、タングステン(W)、ジルコニウム(Zr)、ハフニウム(Hf)、バナジウム(V)、ニオブ(Nb)、ニッケル(Ni)、チタン(Ti)、パラジウム(Pd)、モリブデン(Mo)、珪素(Si)やこれらの化合物が挙げられる。さらに、光学特性やエッチング特性の制御の視点から、上述の材料に、酸素、窒素、炭素、水素、ホウ素、フッ素が含まれていても構わない。
また、加工性能の点から、薄膜の材料は、タンタルを含有する材料が好ましい。特に好ましくは、タンタルと窒素とを含有するタンタル窒化膜と、タンタルと酸素を含有するタンタル酸化膜と、が積層された積層膜が望ましい。ここで、タンタル窒化膜は、タンタルと窒素とを含有する材料であれば良く、タンタルと窒素以外に、他の元素を含んでも構わない。また、タンタル酸化膜も、上述と同様に、タンタルと酸素以外に、他の元素を含んでも構わない。
表面処理の方法としては、処理液を回転した基板上に供給しながら表面処理を行うスピン方式、処理液を溜めた処理槽内に基板を浸漬させて表面処理を行うディップ方式の何れであっても構わない。
また、上述の構成Aのマスクブランクの評価方法において、前記薄膜をエッチングするドライエッチングの条件は、マスク作製プロセスと同じ条件で行うことが好ましい。同じ条件でなくとも、イオン主体のドライエッチングが可能となるドライエッチング条件であれば構わない。
また、薄膜をエッチングした後の基板表面の表面形態情報は、薄膜をパターニングする際の通常の条件(オーバーエッチング含む)でエッチングにより薄膜が全て除去(但し凸形状部分には薄膜等の凸形状が残存する)されて基板表面が露出した状態の表面形態情報でも、エッチング途中段階のまだ薄膜が基板上に残存している状態の基板表面の表面形態情報でも構わない。潜在化したマスクブランク欠陥の検出感度の点から、エッチングにより薄膜が全て除去されて基板表面が露出した状態の表面形態情報とするのが好ましい。また、薄膜が少なくとも2以上の積層膜であって、各層がエッチング選択性を有する材料からなる場合には、少なくとも最上層の薄膜をエッチングして除去した後、該最上層をマスクとして、最上層に隣接した下層をエッチングした後の表面形態情報を取得するのが好ましい。
本発明の第一の実施の形態に係る処理液選定方法は、以下の工程1〜工程6の工程を有する。
ここで、転写パターンとなる薄膜とは、透過型マスクブランクにおいては、露光光を遮光させる機能を有する遮光膜、被転写体等との多重反射を抑制させるため、表面の反射を抑制させる機能を有する反射防止膜、パターンの解像性を高めるため露光光に対して所定の位相差を生じさせる機能を有する位相シフト膜等が挙げられ、これらの膜単独又は複数層積層させた積層膜とすることもできる。また、反射型マスクブランクにおいて、転写パターンとなる薄膜とは、露光光を吸収させる機能を有する吸収体膜、露光光や欠陥検査光における多層反射膜とコントラストを向上させるために吸収体膜上に積層し、露光光の反射を低減させる機能を有する反射低減膜、上述の吸収体膜のパターニング時の多層反射膜に対するエッチングダメージを防止するためのバッファー層などが挙げられる。
また、基板は、透過型マスクブランクの場合、露光光を透過する材料であれば良く、例えば、合成石英ガラスが挙げられ、反射型マスクブランクの場合の基板材料としては、露光光の吸収による熱膨張を防止するための材料であれば良く、例えば、TiO2−SiO2低膨張ガラスが挙げられる。そして、反射型マスクブランクにおける基板には、該基板上に露光光を反射させるための多層反射膜(Mo/Si多層反射膜)が形成された多層反射膜付き基板が含まれる。
ここで、着目すべきエッチング阻害物質は、ドライエッチングガスに対して耐性を有する有機又は無機の材料をいう。
具体的には、エッチング阻害物質は、カルシウム(Ca)、マグネシウム(Mg)、鉄(Fe)、銅(Cu)、マンガン(Mn)、アルミニウム(Al)、又はそれらの化合物から選ばれる少なくとも一つを含む材料に着目すると良く、さらに具体的には、処理液(洗浄液)に使用されるpH11以下のアルカリに比較的溶解しやすいMgやpH12以下のアルカリ溶液に比較的溶解しやすいCaに着目すると良い。また、処理液(洗浄液)に使用されるpH8以上のアルカリ溶液や、pH4以下の酸性溶液に比較的溶解しやすいAlにも着目するとよい。
ここで、上述の対応関係の作成は、エッチング阻害物質の濃度に対して、基板表面の表面形態情報における少なくとも凸形状の情報が対応付けされるように作成すれば良い。凸形状の情報としては、形状、大きさ、及び、個数又は密度の数情報が対応付けされるように作成するのが望ましい。
また、所望の仕様又は品質を満足する表面形態情報は、半導体デザインルール毎に求められるマスク仕様をクリアするため、例えば、欠陥サイズ(Defect Size)やマスク欠陥を修正した後に、CD均一性(CD Uniformity)、リニアリティ(Linearity)をクリアするために必要なマスク欠陥仕様・品質、黒欠陥を修正するための工程負荷等を考慮して適宜設定することができる。
(工程7)上述の工程1、3とは別のマスクブランクを準備し、上述の工程6で選定した処理液を用いてマスクブランク表面を表面処理する。
(工程8)上述の工程7の表面処理を行ったマスクブランクを用いて、薄膜をパターニングしてマスクを作製する。
(実施例1)
まず、本実施例で使用するマスクブランクとして、半導体デザインルールでいうDRAMハーフピッチ32nmノード対応のArFエキシマレーザー露光用のバイナリーマスクブランクを複数枚用意した。このマスクブランクは、約152mm×約152mmサイズの合成石英ガラス基板上に、実質的にタンタルと窒素とからなるTaNの遮光層(膜厚:42nm)と、実質的にタンタルと酸素とからなるTaOの反射防止層(膜厚:9nm)の積層構造からなる遮光膜(転写パターンとなる薄膜)を備える、半導体デザインルールDRAMハーフピッチ32nmノード対応のArFエキシマレーザー露光用のバイナリーマスクブランクである。
尚、処理液に含まれているカルシウム濃度は、マスクブランクにおける遮光膜の表面に供給される処理液について誘導結合プラズマ発光分光分析法(ICP-MS:Inductively Coupled Plasma-Mass Spectroscopy)により測定した。
また、マスクブランクの洗浄は、上述の洗浄液を用いたスピン洗浄により行った。尚、洗浄液B、Cを使用した洗浄後、洗浄液Aを用いたリンスも実施した。
次に、エッチング後の基板表面についてマスクブランク欠陥検査装置(M1350:レーザーテック社製)を用いて、表面形態情報の一つである凸部情報(サイズと個数)の情報を取得した。その結果、基板上(測定領域:132mm×132mm)に存在している凸部(凸欠陥)の個数を調べたところ、洗浄液Aの場合13個、洗浄液Bの場合122個、洗浄液Cの場合1768個となり、処理液Aが一番少なかった。
ここでは、レジストとしてポジ型レジストを形成するマスクブランクの洗浄に使用する洗浄液として、マスクにおけるパターン占有率を考慮し、前記凸部の個数が200個以下となる洗浄液A、Bを選定した。
次に、実施例1の洗浄液の選定において使用したマスクブランクとは別の、上述と同じ膜構成のマスクブランクを準備した。準備したマスクブランクに対して、上述で選定した洗浄液A、洗浄液Bを用いて、それぞれ洗浄処理を行った(尚、洗浄液Bの洗浄後には、洗浄液Aを用いたリンスも実施した。)。洗浄を行った後、マスクブランク欠陥検査装置(M1350:レーザーテック社製)により欠陥検査を行い、マスクブランクを作製した。欠陥検査の結果、このマスクブランク表面に60nm以上のサイズのパーティクルやピンホールの欠陥を確認することができなかった。
次に、洗浄液A、洗浄液Cを用いて洗浄処理を行った各マスクブランクにおける遮光膜の表面に、ポジ型の化学増幅型レジスト(PRL009:富士フィルムエレクトロニクスマテリアルズ社製)をスピンコーティングにより塗布した後、プリベークを行い、レジスト膜を形成した。
この得られたマスクについて、マスク欠陥検査装置(KLA−Tencor 社製)を用いて転写パターン形成領域内(132mm×104mmの内側)の欠陥検査を行ったところ、100nm以下の黒欠陥は、3個(洗浄液A)、28個(洗浄液B)であった。欠陥数が50個以下となり、マスクの欠陥修正の負荷が少なく良好な結果が得られた。
上述の実施例1の処理液選定方法において選定するに至らなかった洗浄液Cを用いて、上述に準備したマスクブランクとは別のバイナリーマスクブランクを準備して洗浄を行った以外は、実施例1、2と同様にバイナリーマスクブランク、マスクを作製した。マスクブランクの欠陥検査では、60nm以上のサイズのパーティクルやピンホールの欠陥を確認することができなかった。
マスクの欠陥検査では、多数(411個)の黒欠陥が見つかった。欠陥数が50個超となり、マスクの欠陥修正の負荷が大きく、事実上欠陥検査が困難な結果となった。
上述の実施例2、3において使用したマスクブランクを、極短紫外(Extreme UltraViolet,EUV波長 約13nm)光を用いたEUVリソグラフィで使用される反射型マスクを作製するための反射型マスクブランクとした以外は実施例2、3と同様にしてマスクを作製した。
吸収体膜としては、EUV光に対して吸収性の高い材料を用いた吸収体層と、検査光に対して反射率が低い材料を用いた反射防止層が積層された2層構造とした。そして、吸収体層としては、イオン主体のドライエッチングが可能な、実質的にタンタルとホウ素と窒素とからなるTaBNを、反射防止層として、イオン主体のドライエッチングが可能な実質的にタンタルとホウ素と酸素とからなるTaBOを使用した。
次に、反射型マスクブランクにおける吸収体膜の表面に、ポジ型の化学増幅型レジスト(PRL009:富士フィルムエレクトロニクスマテリアルズ社製)をスピンコーティングにより塗布した後、プリベークを行い、レジスト膜を形成した。
レジスト膜に対して描画・現像・リンスを行い、反射型マスクブランク表面にレジストパターンを形成した。次に、レジストパターンをマスクにしてフッ素系(CF4)ガスを用いたドライエッチングを行い、反射防止層をパターニングして反射防止層パターンを形成し、その後、塩素系(Cl2)ガスを用いたドライエッチングを行い、反射防止層パターンをマスクにして吸収体層をパターニングして吸収体層パターンを形成した。最後にレジストパターンを除去して、反射型マスクを作製した。
Claims (17)
- 基板上にイオン主体のドライエッチングが可能な材料であるタンタルを含有する材料からなる転写パターンとなる薄膜を有するマスクブランクを複数枚準備する工程と、
カルシウム又はカルシウムの化合物の少なくともいずれかからなるエッチング阻害物質の濃度が異なる複数種の処理液を準備する工程と、
前記マスクブランクの表面に対して前記処理液を用いて表面処理する工程と、
前記表面処理をしたマスクブランクに対して、前記薄膜をイオン主体のドライエッチングが可能なドライエッチングガスであるフッ素系ガスまたは実質的に酸素を含まない塩素系ガスによりエッチングして除去した後、該エッチング後の前記基板表面の表面形態情報を取得する工程と、
前記基板表面の表面形態情報を、マスクの欠陥要因となる潜在化したマスクブランク欠陥情報とし、前記基板表面の表面形態情報の一つである凸部の情報と、その表面形態情報を取得した基板の原型であるマスクブランクを表面処理した処理液との関係から、前記凸部の個数が200個以下となる処理液を選定する工程と、
を有することを特徴とする処理液選定方法。 - 前記表面形態情報の選択は、
表面形態情報を取得するために使用した前記マスクブランクとは別のマスクブランクであって前記処理液を用いて表面処理したマスクブランクを用いてマスクを作製し、該マスクの欠陥情報と、前記基板表面の表面形態情報との関係から所望の仕様又は品質を満足するマスク欠陥情報に対応する表面形態情報を選択して得られることを特徴とする請求項1記載の処理液選定方法。 - 前記エッチング阻害物質は、前記処理液に含まれるカルシウム、または、前記処理液中の界面活性剤に含まれるカルシウムであることを特徴とする請求項1又は2に記載の処理液選定方法。
- 前記処理液におけるエッチング阻害物質の濃度は、誘導結合プラズマ発光分光分析法によって測定されたものであることを特徴とする請求項1乃至3の何れか一に記載の処理液選定方法。
- 前記薄膜は、ケイ素を含有しないことを特徴とする請求項1乃至4の何れか一に記載の処理液選定方法。
- 前記薄膜は、タンタルと窒素とを含有するタンタル窒化膜と、タンタルと酸素とを含有するタンタル酸化膜と、が積層された積層膜であることを特徴とする請求項1乃至4の何れか一に記載の処理液選定方法。
- 前記タンタル酸化膜は、ケイ素を含有しないことを特徴とする請求項6記載の処理液選定方法。
- 前記処理液が洗浄液であることを特徴とする請求項1乃至7の何れか一に記載の処理液選定方法。
- 基板上にイオン主体のドライエッチングが可能な材料であるタンタルを含有する材料からなる転写パターンとなる薄膜を有するマスクブランクを複数枚準備する工程と、
カルシウム又はカルシウムの化合物の少なくともいずれかからなるエッチング阻害物質の濃度が異なる複数種の処理液を準備する工程と、
前記マスクブランクの表面に対して前記処理液を用いて表面処理する工程と、
前記表面処理をしたマスクブランクに対して、前記薄膜をイオン主体のドライエッチングが可能なドライエッチングガスであるフッ素系ガスまたは実質的に酸素を含まない塩素系ガスによりエッチングして除去した後、該エッチング後の前記基板表面の表面形態情報を取得する工程と、
前記基板表面の表面形態情報を、マスクの欠陥要因となる潜在化したマスクブランク欠陥情報とし、前記基板表面の表面形態情報の一つである凸部の情報と、その表面形態情報を取得した基板の原型であるマスクブランクを表面処理した処理液との関係から、前記凸部の個数が200個以下となる処理液を選定する工程と、
前記表面処理を施したマスクブランクとは別のマスクブランクを準備し、この別に準備したマスクブランクに対して、前記処理液を選定する工程により選定した濃度を有する処理液を用いて表面処理する表面処理工程と、を有することを特徴とするマスクブランクの製造方法。 - 前記表面形態情報の選択は、
表面形態情報を取得するために使用した前記マスクブランクとは別のマスクブランクであって前記処理液を用いて表面処理したマスクブランクを用いてマスクを作製し、該マスクの欠陥情報と、前記基板表面の表面形態情報との関係から所望の仕様又は品質を満足するマスク欠陥情報に対応する表面形態情報を選択して得られることを特徴とする請求項9記載のマスクブランクの製造方法。 - 前記エッチング阻害物質は、前記処理液に含まれるカルシウム、または、前記処理液中の界面活性剤に含まれるカルシウムであることを特徴とする請求項9又は10に記載のマスクブランクの製造方法。
- 前記処理液におけるエッチング阻害物質の濃度は、誘導結合プラズマ発光分光分析法によって測定されたものであることを特徴とする請求項9乃至11の何れか一に記載のマスクブランクの製造方法。
- 前記薄膜は、ケイ素を含有しないことを特徴とする請求項9乃至12の何れか一に記載のマスクブランクの製造方法。
- 前記薄膜は、タンタルと窒素とを含有するタンタル窒化膜と、タンタルと酸素とを含有するタンタル酸化膜と、が積層された積層膜であることを特徴とする請求項9乃至12の何れか一に記載のマスクブランクの製造方法。
- 前記タンタル酸化膜は、ケイ素を含有しないことを特徴とする請求項14記載のマスクブランクの製造方法。
- 前記処理液が洗浄液であることを特徴とする請求項9乃至15の何れか一に記載のマスクブランクの製造方法。
- 請求項9乃至16の何れか一に記載のマスクブランクの製造方法により製造されたマスクブランクを用いて、前記薄膜をパターニングしてマスクを製造することを特徴とするマスクの製造方法。
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