JP5925543B2 - マスクブランクの表面処理方法、マスクブランクの製造方法、およびマスクの製造方法 - Google Patents

マスクブランクの表面処理方法、マスクブランクの製造方法、およびマスクの製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、例えば、半導体製造過程における微細パターン転写の際等にマスクとして用いられるフォトマスク及び一定の加工処理等を施すことによってフォトマスクに形成できる中間体としてのフォトマスクブランクの表面処理方法、処理液を用いて表面処理されたフォトマスクブランクの製造方法、並びにフォトマスクの製造方法に関する。
一般に、半導体装置等の製造工程では、フォトリソグラフィ法を用いて微細パターンの形成が行われている。このフォトリソグラフィ法を実施する際における微細パターン転写工程では、マスクとしてフォトマスクが用いられる。このフォトマスクは、一般的には、中間体としてのフォトマスクブランクの遮光膜等に所望の微細パターンを形成することによって得られる。それゆえ、中間体としてのフォトマスクブランクに形成された遮光膜等の特性がほぼそのまま、得られるフォトマスクの性能を左右することになる。このフォトマスクブランクの遮光膜には、従来、Crが使用されるのが一般的であった。
ところで、近年、パターンの微細化がますます進んでおり、これに伴い、従来のレジスト膜厚であると、レジスト倒れなどの問題が起こっている。以下、この点を説明する。Crを主成分とする遮光膜の場合、EB(Electron Beam)描画等によってレジスト膜に転写パターンを形成した後のエッチングには、ウェットエッチングとドライエッチングの両方が使用可能である。しかし、ウェットエッチングの場合、エッチングの進行が等方性を有するため、近年のパターンの微細化への対応が困難になってきており、異方性の傾向を有するドライエッチングが主流となってきている。
Crを主成分とする遮光膜をドライエッチングする場合、エッチングガスとしては一般に塩素系ガスと酸素ガスの混合ガスを使用する。しかし、従来の有機系材料のレジスト膜は、酸素ガスでエッチングされやすい特性を有しており、このため有機系材料のレジスト膜のエッチング速度は、Crを主成分とする遮光膜のエッチング速度と比べて非常に早い。レジスト膜は、Crを主成分とする遮光膜のドライエッチングによるパターンニングが完了するまで残存していなければならないため、Crを主成分とする遮光膜の場合におけるレジスト膜の膜厚は、非常に厚くなってしまっていた(例えば、Crを主成分とする遮光膜の膜厚の3倍)。
近年、パターンの微細化が著しく、EB描画等によって転写パターンを形成した後のレジスト膜は、パターンが混み合った部分では、レジスト膜の幅に比べて高さが非常に高くなってしまっており、現像時等にその不安定さから倒れてしまったり、剥離してしまったりすることが発生している。このようなことが発生すると、Crを主成分とする遮光膜に転写パターンが正しく形成されず、フォトマスクとして不適格なものになってしまう。このため、レジストの薄膜化が至上命題となっていた。Crを主成分とする遮光膜の場合でレジスト膜厚を薄くするには、遮光膜の方を薄くする必要があった。しかし、Crを主成分とする遮光膜では、遮光性能が不十分になる限界の膜厚に達していた。
特許文献1には、Ta金属膜は、ArFエキシマレーザー露光で用いられる波長193nmの光に対して、Cr金属膜以上の消衰係数(光吸収率)を有することが開示されている。また、フォトマスクパターンを形成する際のマスクとして用いられるレジストへの負荷を軽減させて微細なフォトマスクパターンを高精度で形成することが可能なフォトマスクブランクとして、酸素含有塩素系ドライエッチング((Cl+O)系)では実質的なエッチングがされず、かつ酸素非含有塩素系ドライエッチング(Cl系)およびフッ素系ドライエッチング(F系)でエッチングが可能な金属膜の遮光層と、酸素非含有塩素系ドライエッチング(Cl系)では実質的なエッチングがされず、かつ酸素含有塩素系ドライエッチング((Cl+O)系)あるいはフッ素系ドライエッチング(F系)の少なくとも一方でエッチングが可能な金属化合物膜の反射防止層と、を備えているフォトマスクブランクが開示されている。
特開2006−78825号公報
フォトマスクブランクは通常、レジストを形成する前に、フォトマスクブランク表面上に存在するパーティクルの除去を目的として、洗浄水や界面活性剤が含まれた洗浄液を用いて洗浄が行われる。また、後のプロセスにおける微細パターンの剥がれや倒れを防止するために、フォトマスクブランク表面の表面エネルギーを低減させておくための表面処理が行われる。表面処理としては、ヘキサメチルジシラザン(HMDS)やその他の有機シリコン系の表面処理剤でフォトマスクブランク表面をアルキルシリル化することなどが行われる。
フォトマスクブランクの欠陥検査は、レジストを形成する前やレジストを形成した後に行われ、所望の仕様(品質)を満足するものについて、後述する工程を経てフォトマスクが製造される。フォトマスクブランク上に形成したレジスト膜に描画・現像・リンスを行い、レジストパターンを形成した後、レジストパターンをマスクにして、反射防止層を酸素含有塩素系ドライエッチングあるいはフッ素系ドライエッチングでパターニングして反射防止層パターンを形成し、さらに、反射防止層パターンをマスクにして酸素非含有塩素系ドライエッチングで遮光層パターンを形成し、最後にレジスト膜を除去してフォトマスクを製造する。製造されたフォトマスクは、マスク欠陥検査装置により、黒欠陥、白欠陥がないか検査し、欠陥が見つかった場合は適宜修正される。
特許文献1に開示されたフォトマスクブランクの中でも遮光層及び反射防止層の材料として、異方性の高いドライエッチングが可能な材料、つまり、遮光層として、酸素非含有塩素系ドライエッチングおよびフッ素系ドライエッチングでエッチング可能な遮光層と、フッ素系ドライエッチングでエッチング可能な反射防止層との組み合わせの場合、更に、遮光層と反射防止層とが互いに異なるエッチング選択性を有する材料、つまり、遮光層として、酸素非含有塩素系ドライエッチングでエッチング可能な遮光層と、フッ素系ドライエッチングでエッチング可能な反射防止層との組み合わせの場合に、フォトマスクブランクの欠陥検査では検出されないが、フォトマスクを製造した後のフォトマスクの欠陥検査において初めて検出する微小黒欠陥が存在するという問題が発生した。
この微小黒欠陥は、薄膜をパターニングして基板が露出された領域にスポット状に存在するサイズが20〜100nmで、高さが薄膜の膜厚相当のものであり、半導体デザインルールでDRAMハーフピッチ32nmノード以降のフォトマスクを作製する場合に初めて認識されたものである。上述の微小黒欠陥は、半導体デバイスを製造するに際しては致命欠陥となるもので全て除去・修正しなければならないが、欠陥数が50個超となると欠陥修正の負荷が大きく、事実上欠陥修正が困難となる。また、近年の半導体デバイスの高集積化において、フォトマスクに形成する薄膜パターンの複雑化(例えば、OPC(Optical Proximity Correction)パターン)、微細化(例えば、アシストバー等のSRAF(Sub -resolution Assist Feature))、狭小化において、除去・修正も限界があり問題となってきた。
本発明は、上述の問題を解決するものであって、マスクの微小黒欠陥の発生要因となるがマスクブランクの欠陥検査では検出されない潜在化したマスクブランクにおける欠陥の発生を抑制するマスクブランクの表面処理方法を提供することを第1の目的とする。
また、マスクの微小黒欠陥の発生要因となるがマスクブランクの欠陥検査では検出されない潜在化したマスクブランクにおける欠陥の発生を抑制するマスクブランクの製造方法を提供することを第2の目的とする。
さらに、マスクの欠陥修正の負荷を低減し、また、修正不可能な微小黒欠陥の発生を防止できるマスクの製造方法を提供することを第3の目的とする。
本発明者らは、上述のマスクの微小黒欠陥の発生要因について調査したところ、マスクブランクの欠陥検査では検出されない潜在化したマスクブランクにおける欠陥が一つの要因であることが判明した。
そして、上述の潜在化したマスクブランクにおける欠陥が、エッチング阻害物質からなり、そのエッチング阻害物質は、マスクブランクにおける薄膜の表面を表面処理する際に使用する処理液(例えば、洗浄液)に極微量ながらも含まれていることがわかった。(エッチング阻害物質の詳細については後述する。)
また、基板上に形成した転写パターンとなる薄膜が形成されたマスクブランクを表面処理する際に使用する処理液に含まれるエッチング阻害物質の濃度を減らすことで、マスクの微小黒欠陥を減少させることができることを確認した。
本発明は上述の課題を解決するための手段として、以下の構成を要する。
(構成1)基板上に転写パターンとなる薄膜を有するマスクブランクにおける薄膜の表面に処理液を用いて表面処理を行うマスクブランクの表面処理方法であって、
前記薄膜は、イオン主体のドライエッチングが可能な材料からなり、
前記処理液に含まれるエッチング阻害物質の濃度が、0.3ppb以下であることを特徴とするマスクブランクの表面処理方法。
(構成2)基板上に転写パターンとなる薄膜を有するマスクブランクにおける薄膜の表面に処理液を用いて表面処理を行うマスクブランクの表面処理方法であって、
前記薄膜は、イオン主体のドライエッチングが可能な材料からなり、
前記処理液に含まれるエッチング阻害物質の濃度を、前記表面処理をしたマスクブランクに対して、前記薄膜をイオン主体のドライエッチングが可能なドライエッチングガスによりエッチングして除去した後に前記基板表面に残存する凸部が、転写パターン形成領域内に200個以下となるように設定することを特徴とするマスクブランクの表面処理方法。
(構成3)前記エッチング阻害物質は、ドライエッチングガスに対して耐性を有する有機又は無機の材料であることを特徴とする構成1又は2記載のマスクブランクの表面処理方法。
(構成4)前記エッチング阻害物質は、カルシウム、マグネシウム、鉄、銅、マンガン、アルミニウム、又はそれらの化合物から選ばれる少なくとも一つを含む材料であることを特徴とする構成1乃至3の何れか一に記載のマスクブランクの表面処理方法。
(構成5)前記エッチング阻害物質は、カルシウム、マグネシウム、アルミニウム、又はそれらの化合物から選ばれる少なくとも一つを含む材料であることを特徴とする構成1乃至4の何れか一に記載のマスクブランクの表面処理方法。
(構成6)前記薄膜は、フッ素系ガス、または実質的に酸素を含まない塩素系ガスによるドライエッチングガスによりエッチング可能な材料であることを特徴とする構成1乃至5の何れか一に記載のマスクブランクの表面処理方法。
(構成7)前記薄膜は、タンタルを含有する材料からなることを特徴とする構成1乃至6の何れか一に記載のマスクブランクの表面処理方法。
(構成8)前記薄膜は、タンタルと窒素とを含有するタンタル窒化物と、タンタルと酸素とを含有するタンタル酸化膜と、が積層された積層膜であることを特徴とする構成1乃至7の何れか一に記載のマスクブランクの表面処理方法。
(構成9)前記処理液が洗浄液であることを特徴とする構成1乃至8の何れか一に記載のマスクブランクの表面処理方法。
(構成10)前記洗浄液は、界面活性剤を含有する洗浄液であることを特徴とする構成9記載のマスクブランクの表面処理方法。
(構成11)前記洗浄液は、脱イオン化水であることを特徴とする構成9記載のマスクブランクの表面処理方法。
(構成12)基板上に転写パターンとなる薄膜を有するマスクブランクを準備する工程と、
前記薄膜の表面に処理液を用いて表面処理を行う表面処理工程と、を有するマスクブランクの製造方法であって、
前記薄膜は、イオン主体のドライエッチングが可能な材料からなり、
前記表面処理工程は、構成1乃至11の何れか一に記載のマスクブランクの表面処理方法によって行われることを特徴とするマスクブランクの製造方法。
(構成13)構成12記載のマスクブランクの製造方法により製造されたマスクブランクを用いて、前記薄膜をパターニングしてマスクを製造することを特徴とするマスクの製造方法。
本発明によれば、マスクの微小黒欠陥の発生要因となるがマスクブランクの欠陥検査では検出されない潜在化したマスクブランクにおける欠陥の発生を抑制するマスクブランクの表面処理方法を提供することができる。
また、マスクの微小黒欠陥の発生要因となるがマスクブランクの欠陥検査では検出されない潜在化したマスクブランク欠陥の発生を抑制するマスクブランクの製造方法を提供することができる。
さらに、マスクの欠陥修正の負荷を低減し、修正不可能な微小黒欠陥の発生を防止できるマスクの製造方法を提供することができる。
微小黒欠陥を走査型透過電子顕微鏡にて明視野で観察した断面写真である。 タンタル系マスクブランクの表面に形成されたエッチング阻害物質を、走査型透過電子顕微鏡にて暗視野で観察した断面写真である。 微小黒欠陥の発生メカニズムの前半(a)〜(c)を説明するための図である。 微小黒欠陥の発生メカニズムの後半(d)〜(e)を説明するための図である。 タンタル系マスクブランクの表面にエッチング阻害物質が付着するメカニズムを説明するための図である。 クロム系マスクブランクの表面にエッチング阻害物質が付着しにくいメカニズムを説明するための図である。
本発明のマスクブランクの表面処理方法、マスクブランクの製造方法、マスクの製造方法を説明する前に、マスク微小黒欠陥の発生要因を調べるため、以下の実験・考察を行った。
マスク微小黒欠陥の発生要因を調べるため、2種類のマスクブランクを用意した。1つは、イオン主体のドライエッチングが可能な材料からなる転写パターンとなる薄膜が形成されたマスクブランク、もう1つは、ラジカル主体のドライエッチングが可能な材料からなる転写パターンとなる薄膜が形成されたマスクブランクである。
前者のマスクブランクとして、透光性基板上に、実質的にタンタルと窒素とからなるTaNの遮光層(膜厚:42nm)と、実質的にタンタルと酸素とからなるTaOの反射防止層(膜厚:9nm)の積層構造からなるバイナリーマスクブランク(以下、タンタル系マスクブランクと称し、そのマスクをタンタル系マスクと称す。)を、後者のマスクブランクとして、透光性基板上に、実質的にクロムと酸素と窒素と炭素からなるCrCONの膜(膜厚:38.5nm)と、実質的にクロムと酸素と窒素からなるCrONの膜(膜厚:16.5nm)の積層構造の遮光層と、実質的にクロムと酸素と窒素と炭素からなるCrCONの反射防止層(膜厚:14nm)の積層構造からなるバイナリーマスクブランク(以下、クロム系マスクブランクと称し、そのマスクをクロム系マスクと称す。)を用意した。
上述の2種類のバイナリーマスクブランクに対して、反射防止層上に付着した異物(パーティクル)や遮光層、反射防止層に混入している異物(パーティクル)の除去を目的として、界面活性剤が含有されたアルカリ性洗浄液を、マスクブランク表面に供給し、表面処理を行った。
表面処理を行ったマスクブランク表面をマスクブランク欠陥検査装置(M1350:レーザーテック社製)により欠陥検査を行った。その結果、マスクブランク表面にパーティクルやピンホールの欠陥を確認することができなかった。
これら2種類のマスクブランクを用いてマスクを作製した。前者のタンタル系マスクブランクについては、マスクブランク表面にレジストパターンを形成した。次に、レジストパターンをマスクにしてフッ素系(CF)ガスを用いたドライエッチングを行い、反射防止層をパターニングした。その後、塩素系(Cl)ガスを用いたドライエッチングを行い、遮光層をパターニングした。最後にレジストパターンを除去して、タンタル系マスクを作製した。
後者のクロム系マスクブランクについては、マスクブランク表面にレジストパターンを形成した。次に、レジストパターンをマスクにして塩素系(Cl)ガスと酸素(O)ガスの混合ガスを用いたドライエッチングを行い、反射防止層と遮光層をパターニングした。最後にレジストパターンを除去して、クロム系マスクを作製した。
得られた2種類のマスクについて、マスク欠陥検査装置(KLA−Tencor社製)により欠陥検査を行った。その結果、イオン主体のドライエッチングで作製したタンタル系マスクには、微小黒欠陥が多数(50個超)存在していることが確認された。一方、ラジカル主体のドライエッチングで作製したクロム系マスクには、ほとんど微小黒欠陥は存在していなかった。尚、レジストパターンを形成する前、より詳しくは、レジスト膜を形成する前に汚染物質の除去等を目的に行うUV処理、オゾン処理、加熱処理を行っても同様の欠陥が確認された。
尚、上述のタンタル系マスクブランクについては、タンタルを含有する材料で遮光層と反射防止層を構成しているので、上述のように、実質的にタンタルと酸素とからなるTaOの反射防止層を、フッ素系ガスのドライエッチングガスでエッチングし、実質的にタンタルと窒素とからなるTaNの遮光層を、実質的に酸素を含まない塩素系ガスのドライエッチングガスでエッチングすることもできる。しかし、TaNの遮光層は、フッ素系ガスのドライエッチングガスでもエッチングできる。このため、レジストパターンをマスクにして、反射防止層及び遮光層をフッ素系ガスのドライエッチングガスでエッチングしてタンタル系マスクを作製することもできる。
上述の多数の微小黒欠陥は、フッ素系ガスのドライエッチングガスでマスクを作製したタンタル系マスクの場合においても確認された。
欠陥検査により検出された微小黒欠陥について、走査型透過電子顕微鏡(STEM:Scanning Transmission Electron Microscope)にて明視野で断面観察を行った。断面観察の際には、薄膜パターンが形成された透光性基板の全面に白金合金をコーティングして行った。図1に、微小黒欠陥の断面画像を示す。
その結果、微小黒欠陥は、高さが遮光層と反射防止層の積層膜の膜厚とほぼ同等であることが確認され、詳しくは、サイズが23nm、高さが43nmの核に、5〜10nm厚みの表面酸化が積層したと思われる積層構造物であることが確認できた。
次に、マスクの微小黒欠陥発生の要因について、マスクブランク表面に欠陥検査では検出されないエッチング阻害物質の存在の有無について調べた。
処理液により表面処理された上述の2種類のマスクブランク表面を飛行時間型二次イオン質量分析法(TOF−SIMS:Time-Of-Flight Secondary Ion Mass Spectrometry)により分析した。
その結果、タンタル系マスクブランクにおける薄膜の表面には、陽イオン(無機)としてカルシウム(Ca2+)が検出された。また、同様の手順で別のタンタル系マスクブランクに対し、TOF−SIMSによる分析を行ったところ、陽イオン(無機)としてカルシウム(Ca2+)のほかに、マグネシウム(Mg2+)やアルミニウム(Al3+)も検出された。一方、クロム系マスクブランクにおける薄膜の表面には、上述のカルシウム(Ca2+)、マグネシウム(Mg2+)、アルミニウム(Al3+)ともに検出されなかった。すなわち、クロム系マスクブランクにおける薄膜のカルシウム(Ca2+)、マグネシウム(Mg2+)、アルミニウム(Al3+)の各検出値は、タンタル系マスクブランクと比べて、大幅に低い値であった。
マスクブランクの表面処理に使用する処理液に界面活性剤が含まれている場合、界面活性剤の種類によっては、一定量の不純物としてカルシウム(Ca)が含まれている。このため、TOF−SIMSにより検出されたカルシウム(Ca2+)は、今回使用した洗浄液に含まれる界面活性剤中に含まれるカルシウムであると考えられる。また、界面活性剤の種類によっては、一定量の不純物としてマグネシウム(Mg)やアルミニウム(Al)も含まれている。このため、TOF−SIMSにより検出されたマグネシウム(Mg2+)やアルミニウム(Al3+)は、今回使用した洗浄液に含まれる界面活性剤中に含まれているものと推定できる。
タンタル系マスクブランクの薄膜の表面に付着していると推察されるエッチング阻害要因物質は厚みが薄いことから、マスクブランクの欠陥検査装置では検出困難である。薄膜の全面を原子間力顕微鏡(AFM)で走査してエッチング阻害物質が付着している箇所を特定することは不可能ではないが、検出に膨大な時間を要する。このため、洗浄液による表面洗浄を行ったタンタル系マスクブランクの薄膜(タンタル系薄膜)の上に、エッチング阻害物質が付着する恐れの少ないクロム系材料からなる薄膜を100nmの膜厚で2層分積層した。このようにすることで、タンタル系薄膜にエッチング阻害物質が存在している凸部があれば、いわゆるデコレーション効果で凸部の高さが相対的に高くなり、マスクブランクの欠陥検査装置で凸欠陥として検出できるようになる。
このような手法を使い、マスクブランクの欠陥検査装置で欠陥検査を行い、全ての凸欠陥の位置を特定した。特定した複数の凸欠陥について、走査型透過電子顕微鏡(STEM:Scanning Transmission Electron Microscope)にて暗視野で断面観察を行ったところ、表面にエッチング阻害物質からなる層が形成されていることを確認することができた(図2参照)。このとき、STEMに付属するエネルギー分散型X線分光器(EDX)を用いて、エッチング阻害物質を構成する元素について分析も行った。EDXによる分析は、エッチング阻害物質の存在が確認されているタンタル系薄膜の表面上の部分(図2中のSpot1という記号で示された部分)と、参照データとして、エッチング阻害物質の存在が確認されていないタンタル系薄膜の表面上の部分(図2中のSpot2という記号で示された部分)のそれぞれに対して行った。その結果、Spot1の箇所では、Ca(カルシウム)とO(酸素)の検出強度が高かったのに対し、Spot2の箇所では、Ca(カルシウム)の検出強度が非常に小さかった。この分析結果から、Spot1には、エッチング阻害物質であるカルシウムを含有する層が存在していると推定できる。
タンタル系薄膜のほかの凸欠陥が検出された複数箇所について、同様にEDXによる分析を行ったところ、マグネシウムの検出強度が相対的に高いものが見つかった。この結果から、エッチング阻害物質であるマグネシウムを含有する層も存在していると推定できる。さらに、タンタル系薄膜のほかの凸欠陥が検出された複数箇所について、同様にEDXによる分析を行ったところ、アルミニウムの検出強度が相対的に高いものが見つかった。この結果から、エッチング阻害物質であるアルミニウムを含有する層も存在していると推定できる。
クロム系マスクブランクについても、同様にクロム系材料からなる薄膜を積層した上で、マスクブランクの欠陥検査装置で欠陥検査を行った。検出された凸欠陥について、同様にSTEMでの断面観察とEDXによる元素の特定を行ったが、図2で説明したものと同様の層は見当たらなかった。
以上のTOF−SIMSとSTEMの結果から、タンタル系マスクブランクとクロム系マスクブランクとの間で、転写用マスクを作製した時に発生する微小黒欠陥の個数に大きな差が生じる理由が、そのエッチング阻害物質の付着数の違いによるものであることが明らかとなった。
上述の2種類のバイナリーマスクブランクを用いて行ったマスク欠陥検査の結果及び、分析結果から、マスクの微小黒欠陥は以下のように発生したものと考える。以下、図3および図4を参照して考察する。なお、ここでは、合成石英ガラスからなる基板上に、TaNからなる遮光層、TaOからなる反射防止層が積層したマスクブランクを用いて、マスクを作製する場合を想定している。
(1)マスクブランクの表面処理工程により、処理液(界面活性剤)に含まれるカルシウムが、マスクブランク表面に強固に付着(図3(a))。カルシウム(エッチング阻害物質)は極めて薄いので最新のマスクブランク検査装置によっても検出されない。
(2)マスクブランク表面にレジストパターンを形成。レジストパターンが形成されていないマスクブランク(反射防止層)表面にカルシウムが残存。フッ素系ガスによるドライエッチングにより反射防止層をパターニングする場合には、カルシウムや、ドライエッチングプロセスにより生成したフッ化カルシウムは沸点が高くエッチングされないため、エッチング阻害物質となる。
(3)レジストパターンをマスクにしてフッ素系ガスによるドライエッチングで反射防止層をパターニング。このとき、エッチング阻害物質が付着した領域がマスクとなって、この領域に極薄いTaOの反射防止層の残存部分が発生(図3(b),図3(c))。
(4)次に、塩素系ガスによるドライエッチングで遮光層をパターニング。このとき、極薄い反射防止層の残存部分がマスクとなって、遮光層がエッチングし除去され、微小黒欠陥の核が形成(図4(d))。
(5)その後、レジストパターンの除去、洗浄等を得て、核の表面が酸化され核の周りに酸化層が形成され、微小黒欠陥が形成(図4(e))。
なお、クロム系マスクに多数の微小黒欠陥が発生しなかったのは、クロム系マスクブランクとタンタル系マスクブランクの各マスクブランク表面のゼータ電位の測定結果から、タンタル系マスクブランクの方がクロム系マスクブランクよりも中性から弱アルカリ性領域において、ゼータ電位が数十mV大きいことが理由の1つとして考えられる。さらに、クロム系マスクブランクでは、マスク作製プロセスにおいて、ラジカル主体のドライエッチングによりマスクを作製しているので、反射防止層、遮光層が等方性のエッチング作用により反射防止層、遮光層の消失と共に微小黒欠陥も消失したものと考えられる。
上記微小黒欠陥は、単層構造のタンタル系薄膜をイオン主体のドライエッチングでエッチングする場合においても発生する。この場合においては、エッチング阻害物質がタンタル系薄膜の表面に強固に付着し、エッチング阻害物質が付着した領域がマスクとなってエッチング終点又はその間際まで残り、等方性のエッチング作用により、エッチング阻害物質が付着した領域に極薄いタンタル系薄膜の残存部分が発生したものと考える。
微小黒欠陥の発生メカニズムについては、カルシウムについて説明をしたが、後述するエッチング阻害物質となるマグネシウム、鉄、銅、マンガン、アルミニウム、又はその化合物についても、沸点が非常に高く、ドライエッチングガスによるエッチング原理から考え、上述の発生メカニズムが適用されると考える。
本発明の実施の形態に係るマスクブランクの表面処理方法は、以下の通りである。
基板上にイオン主体のドライエッチングが可能な材料からなる転写パターンとなる薄膜を有するマスクブランクの表面に処理液を用いて表面処理を行うマスクブランクの表面処理方法であって、
前記処理液に含まれるエッチング阻害物質の濃度が、0.3ppb以下とする。
ここで、イオン主体のドライエッチングが可能な材料とは、フッ素系ガスや実質的に酸素を含まない塩素系ガスを用いてドライエッチングできる材料であって、具体的には、タンタル(Ta)、タングステン(W)、ジルコニウム(Zr)、ハフニウム(Hf)、バナジウム(Pd)、ニオブ(Nb)、ニッケル(Ni)、チタン(Ti)、パラジウム(Pd)、モリブデン(Mo)、珪素(Si)やこれらの化合物が挙げられる。さらに、光学特性やエッチング特性の制御の視点から、上述の材料に、酸素、窒素、炭素、水素、ホウ素、フッ素が含まれていても構わない。
加工性能の点から、薄膜の材料は、タンタルを含有する材料が好ましい。特に好ましくは、タンタルと窒素とを含有するタンタル窒化膜と、タンタルと酸素を含有するタンタル酸化膜と、が積層された積層膜が望ましい。ここで、タンタル窒化膜は、タンタルと窒素とを含有する材料であれば良く、タンタルと窒素以外に、他の元素を含んでも構わない。また、タンタル酸化膜も、上述と同様に、タンタルと酸素以外に、他の元素を含んでも構わない。
また、上述のフッ素系ガスとしては、CHF、CF、SF、C、C等が挙げられる。塩素系ガスとしては、Cl、SiCl、CHCl、CHCl、CCl等が挙げられる。また、ドライエッチングガスとしては、上述のフッ素系ガス、塩素系ガス以外に、He、H、Ar、C等のガスを添加した混合ガスを用いることもできる。
また、転写パターンとなる薄膜とは、透過型マスクブランクにおいては、露光光を遮光させる機能を有する遮光膜、被転写体との多重反射を抑制させるため、表面の反射を抑制させる機能を有する反射防止膜、パターンの解像性を高めるため露光光に対して所定の位相差を生じさせる機能を有する位相シフト膜等が挙げられ、これらの膜単独又は複数層積層させた積層膜とすることもできる。また、反射型マスクブランクにおいて、転写パターンとなる薄膜とは、露光光を吸収させる機能を有する吸収体膜、露光光や欠陥検査光における多層反射膜とのコントラストを向上させるために吸収体膜上に積層し、露光光の反射を低減させる機能を有する反射低減膜、上述の吸収体膜のパターニング時の多層反射膜に対するエッチングダメージを防止するためのバッファー層などが挙げられる。
また、マスクブランクを構成する膜としては、下層の材料膜をエッチングする際にエッチングマスク(ハードマスク)の働きを有するエッチングマスク膜(又はハードマスク膜)を、上述の転写パターンとなる薄膜以外に設けても良い。または、転写パターンとなる薄膜を積層膜とし、その積層膜の一部としてエッチングマスク(ハードマスク)を設けても良い。本発明では、マスクブランクを構成する膜として、エッチングマスク膜(又はハードマスク膜)が形成されたマスクブランクの場合に、最も顕著な効果が得られる。
また、基板は、透過型マスクブランクの場合、露光光を透過する材料であれば良く、例えば、合成石英ガラスが挙げられ、反射型マスクブランクの場合の基板材料としては、露光光の吸収による熱膨張を防止するための材料であれば良く、例えば、TiO−SiO低膨張ガラスが挙げられる。そして、反射型マスクブランクにおける基板とは、該基板上に露光光を反射させるための多層反射膜(Mo/Si多層反射膜)が形成された多層反射膜付き基板が含まれる。
また、処理液としては、マスクブランク上に付着した異物(パーティクル)や、転写パターンとなる薄膜等に混入している異物(パーティクル)の除去を目的として使用される洗浄液、微細パターンの剥がれや倒れを防止するために、マスクブランク表面の表面エネルギーを低減させておくための表面処理液(例えば、ヘキサメチルジシラザン(HMDS))や、その他の有機シリコン系の表面処理剤でマスクブランク表面をアルキルシリル化するための表面処理液、その他の各種機能を有する有機系の処理液(処理剤)が挙げられる。
表面処理の方法としては、処理液を回転した基板上に供給しながら表面処理を行うスピン方式、処理液を溜めた処理槽内に基板を浸漬させて表面処理を行うディップ方式の何れであっても構わない。
本発明において着目すべきエッチング阻害物質は、ドライエッチングガスに対して耐性を有する有機、又は無機の材料をいう。
具体的には、エッチング阻害物質は、カルシウム(Ca)、マグネシウム(Mg)、鉄(Fe)、銅(Cu)、マンガン(Mn)、アルミニウム(Al)、又はそれらの化合物から選ばれる少なくとも一つを含む材料に着目すると良く、さらに具体的には、処理液(洗浄液)に使用されるpH11以下のアルカリ溶液に比較的溶解しやすいMgやpH12以下のアルカリ溶液に比較的溶解しやすいCaに着目すると良い。また、処理液(洗浄液)に使用されるpH8以上のアルカリ溶液や、pH4以下の酸性溶液に比較的溶解しやすいAlにも着目するとよい。
エッチング阻害物質が、MgやCaの場合には、転写パターンとなる薄膜パターンの形成にフッ素系ガスや塩素系ガスのドライエッチングガスを使用するので、ドライエッチング時にフッ化カルシウム(沸点:2500℃)、フッ化マグネシウム(沸点:1260℃)や、塩化カルシウム(沸点:1600℃)、塩化マグネシウム(沸点:1412℃)の化合物が生成され、エッチング阻害物質となる。また、上述に挙げたエッチング阻害物質の代表的なフッ化物や塩化物の沸点は、塩化鉄(沸点:1023℃(FeCl))、塩化銅(沸点:1366℃(CuCl))、塩化マンガン(沸点:1190℃(MnCl))、フッ化アルミニウム(沸点:1260℃(AlF))である。これらのフッ化物、塩化物以外に、沸点が約300℃以上のCa、Mg、Fe、Cu、Mn、Al又はそれらの化合物であれば、エッチング阻害物質となる。
また、処理液に含まれるエッチング阻害物質の濃度は、0.3ppb以下とする。エッチング阻害物質の濃度が0.3ppbを超えると、マスクを作製した時に存在するサイズが20〜100nmの微小黒欠陥の個数が50個超と多くなり、事実上欠陥修正が困難となる等問題となる。
処理液に含まれるエッチング阻害物質の濃度は、好ましくは、0.1ppb以下、0.05ppb以下、さらに好ましくは、0.01ppb以下、さらに好ましくは0.001ppb以下が望ましい。
また、処理液に含まれるエッチング阻害物質の濃度は、マスクブランク表面に供給する直前の洗浄液について、誘導結合プラズマ発光分光分析法(ICP−AES:Inductively Coupled Plasma-Atomic Emission Spectroscopy)により測定でき、該分析方法に基づいて検出される元素(検出限界以下の元素を除く)の合計濃度をいう。
上述したように、界面活性剤を含むアルカリ性洗浄液による洗浄処理後、タンタル系マスクブランクにおける薄膜の表面にはエッチング阻害物質としてのカルシウム等が検出された。一方、クロム系マスクブランクにおける薄膜の表面には、カルシウム等がほとんど検出されなかった。以下、このような違いが生じた原因について、図5、図6を参照して考察する。図5、図6では、説明を理解しやすくするために、合成石英ガラスからなる基板とこの上に形成されたタンタル系の薄膜(図5)、クロム系の薄膜(図6)についてそれぞれ示している。なお、以下の考察は、出願時点における本発明者らの推測に基づくものであり、本発明の範囲を何ら制限するものではない。
タンタル系マスクブランクにおける薄膜の表面には、水酸基(OH基)が多数存在している。この水酸基に、洗浄液に含まれるカルシウムイオン(Ca2+)が引き寄せられる(図5(a))。そして、洗浄液による洗浄処理後、洗浄液を洗い流すための純水によるリンスの際に、薄膜の表面を覆う液体がアルカリ性(pH10)から中性域(pH7前後)に急激に変化するため、薄膜の表面に引き寄せられていたカルシウムイオンが、水酸化カルシウム(Ca(OH))となって膜表面に析出しやすくなる(図5(b))。この水酸化カルシウムが、マスクブランクにおける薄膜の表面のエッチング阻害物質となったと考えられる。
一方、クロム系マスクブランクにおける薄膜の表面には、水酸基(OH基)が少数しか存在していない。このため、この薄膜の表面には、洗浄液に含まれるカルシウムイオンがあまり引き寄せられない。もともと洗浄液に含まれる不純物のカルシウム濃度自体が低いため、膜表面近傍のカルシウムイオンの濃度は極めて低くなっている(図6(a))。その結果、洗浄液による洗浄処理後、洗浄液を洗い流すための純水によるリンスの際に、マスクブランクの表面に引き寄せられていたカルシウムイオンが、水酸化カルシウムとなる前に膜表面から洗い流されるか、あるいは、水酸化カルシウムとなってもエッチングを阻害しない程度の少数しか膜表面に析出しない(図6(b))。
なお、上述では、タンタル系マスクブランクにおける薄膜の表面に水酸化カルシウム等のカルシウムを含有するエッチング阻害物質が付着しやすいメカニズムについて説明した。水酸化マグネシウム(Mg(OH))等のマグネシウムを含有するエッチング阻害物質についても、同様のメカニズムを適用することができる。
本発明におけるマスクブランクの表面処理方法、マスクブランクの製造方法で使用する処理液に含まれるエッチング阻害物質の濃度については、マスクの微小黒欠陥の要因となるエッチング阻害物質からなる潜在化したマスクブランクの欠陥を検出することができる新規評価手法の評価結果に基づいても同様に設定することができる。
即ち、処理液に含まれるエッチング阻害物質の濃度を、処理液により表面処理をしたマスクブランクに対して、転写パターンとなる薄膜をイオン主体のドライエッチングが可能なドライエッチングガスによりエッチングして除去した後、基板表面に残存する凸部が、転写パターン形成領域内に所定の個数以下になる濃度に設定することができる。
なお、上述の薄膜をエッチングするドライエッチングの条件は、マスク作製プロセスと同じ条件で行うことが好ましい。同じ条件でなくとも、イオン主体のドライエッチングが可能となるドライエッチング条件でも構わない。
また、薄膜をエッチングした後の基板表面は、薄膜をパターニングする際の通常の条件(オーバーエッチング含む)でエッチングにより薄膜が全て除去(但し前記微小黒欠陥等の凸部が残存する)されて基板表面が露出した状態でも、エッチング途中段階のまだ薄膜が基板上に残存している状態の基板表面でも構わない。潜在化したマスクブランクの欠陥の検出感度の点から、エッチングにより薄膜が全て除去されて基板表面が露出した状態とするのが好ましい。また、薄膜が少なくとも2以上の積層膜であって、各層がエッチング選択性を有する材料からなる場合には、少なくとも最上層の薄膜をエッチングして除去した後、該最上層をマスクとして、最上層に隣接した下層をエッチングした後の表面形態情報を取得するのが好ましい。
また、上述でいう転写パターン形成領域は、実際のマスクにおいて、転写パターンとなる薄膜パターンが形成される領域(マスクブランクの主表面の中心を含む132mm×104mmの内側領域)を含む132mm×132mmの内側領域か、またはそれ以上の広い領域(例えば、142mm×142mmの内側領域)とするのが好ましい。
また、凸部の個数は、マスクにおける欠陥修正の負荷を考慮して、マスクの欠陥数が50個以下とするため、マスクに形成される転写パターンにおける抜きパターン(白パターン)のパターン占有率(転写パターン形成領域の全面積に対し、転写パターン形成領域内の薄膜が除去されている部分である抜きパターンの全面積が占める面積比率)を考慮して選定することができる。例えば、マスクブランクに形成するレジストがポジ型レジストの場合、抜きパターンのパターン占有率(転写パターン形成領域の全面積に対し、転写パターン形成領域内の薄膜が除去されている部分である抜きパターンの全面積が占める面積比率)を25%と設定し、凸部の個数を200個以下と設定することができる。好ましくは、100個以下、更に好ましくは50個以下、更に好ましくは25個以下に設定するのが望ましい。また、ネガ型レジストの場合、基板の露出面が多くなるので、上述の凸部の個数を、許容できるマスク欠陥数と同じ50個以下と設定することができる。好ましくは、25個以下に設定するのが望ましい。
次に、本発明のマスクブランクの表面処理方法、及びマスクブランクの製造方法、並びにマスクの製造方法について、以下、実施例を用いて説明する。
(実施例1〜5,比較例1〜2)
本実施例で使用するマスクブランクとして、半導体デザインルールでいうDRAMハーフピッチ32nmノード対応のArFエキシマレーザー露光用のバイナリーマスクブランクを複数枚用意した。このマスクブランクは、約152mm×約152mmサイズの合成石英ガラス基板上に、実質的にタンタルと窒素とからなるTaNの遮光層(膜厚:42nm)と、実質的にタンタルと酸素とからなるTaOの反射防止層(膜厚:9nm)の積層構造からなる遮光膜(転写パターンとなる薄膜)を備える、半導体デザインルールDRAMハーフピッチ32nmノード対応のArFエキシマレーザー露光用のバイナリーマスクブランクである。
次に、エッチング阻害物質の濃度が異なる複数種の洗浄液を用いて、上述のマスクブランクの洗浄を行った。マスクブランクの洗浄は、スピン洗浄により行った。また、洗浄液B、C、D、E、F、Gを使用した洗浄後、洗浄液Aを用いたリンスも実施した。なお、エッチング阻害物質の濃度は、マスクブランクにおける遮光膜の表面に供給する直前の洗浄液について、誘導結合プラズマ発光分光分析法(ICP−AES)法により測定を行い、検出限界以上の元素はカルシウムのみであった(以下の各実施例も同様)。
複数種の洗浄液としては、洗浄液A:DI(Deionization)水(カルシウム濃度:0.001ppb)(実施例1)、洗浄液B:界面活性剤B含有アルカリ性洗浄液(カルシウム濃度:0.01ppb)(実施例2)、洗浄液C:界面活性剤C含有アルカリ性洗浄液(カルシウム濃度:0.05ppb(実施例3)、洗浄液D:界面活性剤D含有アルカリ性洗浄液(カルシウム濃度:0.1ppb)(実施例4)、洗浄液E:界面活性剤E含有アルカリ性洗浄液(カルシウム濃度:0.3ppb)(実施例5)、洗浄液F:界面活性剤F含有アルカリ性洗浄液(カルシウム濃度:1ppb)(比較例1)、洗浄液G:界面活性剤G含有アルカリ性洗浄液(カルシウム濃度:3ppb)(比較例2)を使用した。
次に、上述の洗浄液により洗浄を行ったマスクブランクに対して、フッ素系(CF)ガスを用いたドライエッチングを行い、反射防止層を除去し、その後、塩素系(Cl)ガスを用いたドライエッチングガスを用い、遮光層を除去した。
次に、エッチング後の基板表面について、マスクブランク欠陥検査装置(M1350:レーザーテック社製)を用いて、前記微小黒欠陥等の凸部の個数を取得した。その結果、基板上(測定領域:132mm×132mmの内側)に存在している凸部の個数を調べたところ、洗浄液Aの場合13個(実施例1)、洗浄液Bの場合28個(実施例2)、洗浄液Cの場合56個(実施例3)、洗浄液Dの場合85個(実施例4)、洗浄液Eの場合122個(実施例5)、洗浄液Fの場合823個(比較例1)、洗浄液Gの場合1768個(比較例2)であった。つまり、洗浄液に含まれるカルシウム濃度が少なくなるに従って、凸部の個数も少ない結果となった。
次に、上述の実施例、比較例で使用したマスクブランクとは別の上述と同じ膜構成のマスクブランクを準備し、上述と同様に洗浄液A〜Gの洗浄液を用いて、それぞれ洗浄処理を行った。洗浄を行った後、マスクブランク欠陥検査装置(M1350:レーザーテック社製)により欠陥検査を行い、マスクブランクを作製した。欠陥検査の結果、このマスクブランク表面に60nm以上のサイズのパーティクルやピンホールの欠陥を確認することができなかった。
次に、洗浄処理を行ったマスクブランクにおける遮光膜の表面に、ポジ型の化学増幅型レジスト(PRL009:富士フィルムエレクトロニクスマテリアルズ社製)をスピンコーティングにより塗布した後、プリベークを行い、レジスト膜を形成した。
次に、レジスト膜に対して描画・現像・リンスを行い、マスクブランク表面にレジストパターンを形成した。次に、レジストパターンをマスクにしてフッ素系(CF)ガスを用いたドライエッチングを行い、反射防止層をパターニングして反射防止層パターンを形成した。次に、塩素系(Cl)ガスを用いたドライエッチングを行い、反射防止層パターンをマスクにして遮光層をパターニングして遮光層パターンを形成した。最後にレジストパターンを除去して、マスクを作製した。
この得られたマスクについて、マスク欠陥検査装置(KLA−Tencor社製)を用いて転写パターン形成領域内(132mm×104mm)の欠陥検査を行ったところ、100nm以下の黒欠陥は、3個(洗浄液A:実施例1)、7個(洗浄液B:実施例2)、9個(洗浄液C:実施例3)、21個(洗浄液D:実施例4)、28個(洗浄液E:実施例5)、106個(洗浄液F:比較例1)、411個(洗浄液G:比較例2)であった。洗浄液A〜Eの洗浄液を使用して洗浄したマスクブランクを用いて作製されたマスクは、欠陥数が50個以下となり、マスクの欠陥修正の負荷が少なく良好な結果が得られた。一方、洗浄液F〜Gの洗浄液を使用したマスクブランクを用いて作製されたマスクは、欠陥数が多数存在し、マスクの欠陥修正の負荷が大きく、事実上、欠陥修正が困難な結果となった。
(実施例6,7)
上述の実施例1において使用した洗浄液を用い、マスクブランクを、極短紫外(Extreme UltraViolet,EUV波長 約13nm)光を用いたEUVリソグラフィで使用される反射型マスクを作製するための反射型マスクブランクとした以外は実施例1、2と同様にしてマスクを作製した。
この反射型マスクブランクは、基板として、TiO−SiOの低膨張ガラス基板上に、EUV光を高反射率で反射させるための多層反射層(MoとSiを交互に40周期程度積層したMo/Si多層反射膜)と、転写パターンとなる吸収体膜をエッチングする際のエッチングストッパーの役割を果たす保護層(Ru膜)が形成された基板を使用し、該基板上に、転写パターンとなる薄膜として吸収体膜が形成されている。
吸収体膜としては、EUV光に対して吸収性の高い材料を用いた吸収体層と、検査光に対して反射率が低い材料を用いた反射防止層が積層された2層構造とした。そして、吸収体層としては、イオン主体のドライエッチングが可能な、実質的にタンタルとホウ素と窒素とからなるTaBNを使用し、反射防止層として、イオン主体のドライエッチングが可能な実質的にタンタルとホウ素と酸素とからなるTaBOを使用した。
上述の洗浄液A、Bを用いて上述の反射型マスクブランクに対して洗浄を行った。洗浄を行った後、マスクブランク欠陥検査装置(M1350:レーザーテック社製)により欠陥検査を行い、マスクブランクを作製した。
次に、反射型マスクブランクにおける吸収体膜の表面に、化学増幅型レジスト(PRL009:富士フィルムエレクトロニクスマテリアルズ社製)をスピンコーティングにより塗布した後、プリベークを行い、レジスト膜を形成した。
レジスト膜に対して描画・現像・リンスを行い、反射型マスクブランク表面にレジストパターンを形成した。次に、レジストパターンをマスクにしてフッ素系(CF)ガスを用いたドライエッチングを行い、反射防止層をパターニングして反射防止層パターンを形成した。次に、塩素系(Cl)ガスを用いたドライエッチングを行い、反射防止層パターンをマスクにして吸収体層をパターニングして吸収体層パターンを形成した。最後にレジストパターンを除去して、反射型マスクを作製した。
この得られた反射型マスクについて、マスク欠陥検査装置(KLA−Tencor 社製)を用いて転写パターン形成領域内(132mm×104mmの内側)の欠陥検査を行ったところ、サイズ100nm以下の黒欠陥は、処理液Aの場合5個(実施例6)、処理液Bの場合12個(実施例7)であった。欠陥数が50個以下となり、マスクの欠陥修正の負荷が少なく良好な結果が得られた。

Claims (12)

  1. 基板上に転写パターンとなる薄膜を有するマスクブランクにおける薄膜の表面に処理液を用いて表面処理を行うマスクブランクの表面処理方法であって、
    前記薄膜は、イオン主体のドライエッチングが可能なタンタルを含有する材料からなり、
    誘導結合プラズマ発光分光分析法によって測定したときの前記処理液に含まれるエッチング阻害物質となるカルシウム、マグネシウム及びアルミニウムの合計濃度が、前記分析法の検出限界以上かつ0.3ppb以下であることを特徴とするマスクブランクの表面処理方法。
  2. 基板上に転写パターンとなる薄膜を有するマスクブランクにおける薄膜の表面に処理液を用いて表面処理を行うマスクブランクの表面処理方法であって、
    前記薄膜は、イオン主体のドライエッチングが可能なタンタルを含有する材料からなり、
    誘導結合プラズマ発光分光分析法によって測定したときの前記処理液に含まれるエッチング阻害物質となるカルシウム、マグネシウム及びアルミニウムの合計濃度を、前記分析法の検出限界以上の濃度であり、かつ前記表面処理をしたマスクブランクに対して、前記薄膜をイオン主体のドライエッチングが可能なドライエッチングガスによりエッチングして除去した後に前記基板表面に残存する凸部の個数が、転写パターン形成領域内に200個以下となる濃度に設定することを特徴とするマスクブランクの表面処理方法。
  3. 前記エッチング阻害物質は、カルシウム、マグネシウム、アルミニウム、又はそれらの化合物から選ばれる少なくとも一つを含む材料であり、前記ドライエッチングガスに対して耐性を有する有機又は無機の材料であることを特徴とする請求項1又は2記載のマスクブランクの表面処理方法。
  4. 前記薄膜は、フッ素系ガス、または実質的に酸素を含まない塩素系ガスによるドライエッチングガスによりエッチング可能な材料であることを特徴とする請求項1乃至の何れか一に記載のマスクブランクの表面処理方法。
  5. 前記薄膜は、ケイ素を含有しないことを特徴とする請求項1乃至4の何れか一に記載のマスクブランクの表面処理方法。
  6. 前記薄膜は、タンタルと窒素とを含有するタンタル窒化膜と、タンタルと酸素とを含有するタンタル酸化膜と、が積層された積層膜であることを特徴とする請求項1乃至の何れか一に記載のマスクブランクの表面処理方法。
  7. 前記タンタル酸化膜は、ケイ素を含有しないことを特徴とする請求項記載のマスクブランクの表面処理方法。
  8. 前記処理液が洗浄液であることを特徴とする請求項1乃至の何れか一に記載のマスクブランクの表面処理方法。
  9. 前記洗浄液は、界面活性剤を含有する洗浄液であることを特徴とする請求項記載のマスクブランクの表面処理方法。
  10. 前記洗浄液は、脱イオン化水であることを特徴とする請求項記載のマスクブランクの表面処理方法。
  11. 基板上に転写パターンとなる薄膜を有するマスクブランクを準備する工程と、
    前記薄膜の表面に処理液を用いて表面処理を行う表面処理工程と、を有するマスクブランクの製造方法であって、
    前記薄膜は、イオン主体のドライエッチングが可能な材料からなり、
    前記表面処理工程は、請求項1乃至10の何れか一に記載のマスクブランクの表面処理方法によって行われることを特徴とするマスクブランクの製造方法。
  12. 請求項11記載のマスクブランクの製造方法により製造されたマスクブランクを用いて、前記薄膜をパターニングしてマスクを製造することを特徴とするマスクの製造方法。
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