以下、本発明を実施するための形態を説明する。
図1及び図2には、本発明で製造される屋根材100の実施形態の一例を示している。図1(a)は屋根材100の斜視図であり、図1(b)は屋根材100の平面図である。尚、いずれも屋根材100の中央部分の一部を省略して示している。また、図2(a)は屋根材100の側面図、図2(b)は屋根材100の側端部における断面の一部を示している。以下、図1,2により、本実施形態の屋根材100について説明する。
図1からわかるように、本実施形態の屋根材100は、本体部1と、二つの嵌合部4,5と、二つの傾斜片2,2を備えて形成されており、さらに、位置合わせ部3を有する。本体部1は略平板状に形成されている。本実施形態では、本体部1の形状は長手辺と短手辺とを有する略矩形状となっている。二つの嵌合部4,5は、本体部1の長手辺にそれぞれ形成されている。以下では、嵌合部4を「第1嵌合部4」、嵌合部5を「第2嵌合部5」ということがある。また、二つの傾斜片2,2は、図1や図2(a)からわかるように、本体部1の短手辺にそれぞれ形成されている。尚、図2(a)の側面図は、本体部1の短手辺側(傾斜片2側)から直視した図である。
第1嵌合部4は、本体部1の長手側の端部がその裏面側に折り返されるように形成されている(図2(a)参照)。第1嵌合部4は、本体部1の長手方向の略全長にわたって形成されている。
第2嵌合部5は、上片5a、下片5b及び固定片10とで形成されている。図2(a)からわかるように、下片5bは、本体部1の端部がその表面側に折り返されて形成されており、本体部1の長手方向の略全長にわたって略平坦状に形成されている。一方、上片5aは、下片5bの先端から本体部1の外方へ突出するように形成されている。上片5aも略平坦状に形成されている。第2嵌合部5は、上記のような上片5aと下片5bとで形成されていることで、本体部1の表面側へ突出するように形成される。尚、本実施形態では、下片5bの両端付近には上片5aが形成されていない。そのため、上片5aは下片5bの全長にわたって形成されてはおらずに、下片5bの全長よりも短く形成されている。
固定片10は、図2(a)に示されているように、上片5aの先端から屋根材100の外方へ突出するように形成されており、上片5aの全長にわたって形成されている。本実施形態の屋根材100では、固定片10は、傾斜部10aと、固着部10bとを有しており、略L字状に形成されている。傾斜部10aは上片5aの先端から下方(すなわち、屋根材100の裏面方向)へ傾斜するように形成されている。また、固着部10bは、傾斜部10aの先端で屈曲して、本体部1と略平行となるように形成されている。固着部10bは、本体部1と段違いになるように配置されており、本体部1よりも上方に位置している。また、固着部10bの長手辺は表面側に折り返されており、図2に示すように、固着部10bの先端部が二重に形成されている。
位置合わせ部3は、固定片10に設けることができる。本実施形態の屋根材100では、固着部10bの長手側先端の一部が切り欠き加工に切除されて、その切除部分が位置合わせ部3として形成されている。位置合わせ部3は、平面視(真上から見た場合)において、矩形状(U字状)、三角形状(V字状)、線状、円状等の各種の形状に形成される。
図3(a)には位置合わせ部3が矩形状の切り欠きで形成された場合が示されている。固定片10の長辺側先端には、その全長にわたって、180°曲げ(ヘミング曲げ)により、二枚の金属板が重なった重ね部10cが形成されている。位置合わせ部3は重ね部10cを厚み方向で貫通して形成されている。位置合わせ部3の縁部は、平面視において、固定片10の長辺側先端の長手方向と平行な長辺3aと、長辺3aに対して垂直な二つの短辺3bとで形成され、固定片10の長辺側先端に開口して形成されている。
図3(b)には位置合わせ部3が三角形状の切り欠きで形成された場合が示されている。上記と同様に、固定片10の長辺側先端には、その全長にわたって、重ね部10cが形成されている。位置合わせ部3は重ね部10cを厚み方向で貫通して形成されている。位置合わせ部3の縁部は、平面視において、固定片10の長辺側先端の長手方向に対して傾斜した二つの傾斜辺3cで形成され、固定片10の長辺側先端に開口して形成されている。
位置合わせ部3は複数形成させることができる。本実施形態では図1に示すように、2つの位置合わせ部3,3が形成されている。以下、2つの位置合わせ部3,3のうちの一方を第1位置合わせ部31、他方を第2位置合わせ部32とする。
本形態の屋根材100では、位置合わせ部3は切り欠きによって形成されているが、その他の方法で形成させてもよい。例えば、屋根材100の所定の部分にインクや塗料などでマーキングをすることで位置合わせ部3を形成することができる。しかし、後述するように、生産性などを考慮すれば、位置合わせ部3は切り欠きによって形成されていることが好ましい。
図1の屋根材100のように、位置合わせ部3が矩形状の切り欠きとして形成されている場合、その幅(対向する短辺3b間の距離)D1は約6mm程度とすることができるが、これに限定されるものではない。位置合わせ部3が三角形状の切り欠きで形成されている場合、その幅(位置合わせ部3の開口部分での寸法)D1は約6mm程度とすることができるが、これに限定されるものではない。
平面視において、位置合わせ部3と、固定片10の側端縁(短手辺)101との距離D2は、屋根材100同士の重ね合わせ寸法を100mmとする場合、56〜66mmとすることができる。また、平面視において、位置合わせ部3と、第2嵌合部5の側端縁(短手辺)102との距離D3は、76〜86mmとすることができる。位置合わせ部3が矩形状の切り欠きの場合、距離D2は、固定片10の側端縁101と、位置合わせ部3の一方の短辺(屋根材100の長手方向の中央部に近い方の短辺)3bとの間の寸法である。位置合わせ部3が矩形状の切り欠きの場合、距離D3は、第2嵌合部5の側端縁102と、位置合わせ部3の一方の短辺(屋根材100の長手方向の中央部に近い方の短辺)3bとの間の寸法である。位置合わせ部3が三角形状の切り欠きの場合、距離D2は、固定片10の側端縁101と、位置合わせ部3の頂点(二つの傾斜辺3cが交わる部分)3dとの間の寸法である。位置合わせ部3が三角形状の切り欠きの場合、距離D3は、第2嵌合部5の側端部102と、位置合わせ部3の頂点(二つの傾斜辺3cが交わる部分)3dとの間の寸法である。
傾斜片2は、本体部1の短手辺の略全長にわたって設けられている。この傾斜片2は、図2(a),(b)に示すように、本体部1の端部先端が屈曲加工されて下方へ傾斜するように形成されている。尚、図2(b)は屋根材100の長手方向に沿った切断面であって、屋根材100の側端部付近の断面図である。
傾斜片2は、前片部2b、中央部2c及び後片部2dの領域に区分されるように形成されている。具体的には、前片部2bは傾斜片2における第1嵌合部4側の領域をいい、後片部2dは傾斜片2における第2嵌合部5側の領域をいう。そして、中央部2cは前片部2bと後片部2dとの間の領域をいう。
本体部1と、傾斜片2とのなす角度(ここでは劣角のことをいう)は、例えば、120°〜150°とすることができる。さらに具体的には、中央部2cと本体部1とのなす角度を約120°、後片部2dと本体部1とのなす角度を約140°、前片部2bと本体部1とのなす角度を約140°とすることができる。この場合、後述の曲げ高さHは、中央部2cの方が前片部2bや後片部2dに比べて長くなる。
前片部2bは、中央部2cに近づくにつれて曲げ高さHが徐々に長くなるように形成されている。尚、ここでいう曲げ高さHとは、図2(b)に示すように、本体部1の面と、傾斜片2の先端(以下、傾斜片先端2aという)を通り且つ本体部1に平行な面と、の距離のことをいう。中央部2cの曲げ高さHは、中央部2cの全領域にわたって略一定に形成されている。すなわち、中央部2cの領域における側端縁部1aは、傾斜片先端2aと略平行になるように形成されている。また、後片部2dは、中央部2cに近づくにつれて曲げ高さHが徐々に長くなるように形成されている。
前片部2bの領域における傾斜片先端2aは、直線状であってもよいし、曲線状であってもよい。一方、中央部2cの領域における傾斜片先端2aは直線状に形成されることが好ましい。また、後片部2dの領域における傾斜片先端2aは、前片部2bにおける傾斜片先端2aと同様、直線状であってもよいし、曲線状であってもよい。後片部2dの領域における傾斜片先端2aが直線状である場合には、その中点付近で一度屈曲していてもよい。前片部2b、中央部2c及び後片部2dの各領域における傾斜片先端2aが上記のように形成されることで、傾斜片2は屋根材100の下方に突曲するように形成されることになる。尚、「下方に突曲する」とは、下方に向かって曲がりながら張り出す(突出する)ことをいう。
中央部2cにおける曲げ高さHは、例えば3〜7mmとすることができ、好ましくは5mm程度とすることができる。前片部2bにおける傾斜片先端2aが曲線状に形成されている場合、その曲率半径300〜500mmとすることができ、好ましくは400mm程度にすることができる。また、後片部2dにおける傾斜片先端2aが曲線状に形成されている場合、その曲率半径1000〜1500mmとすることができ、好ましくは1200mm程度にすることができる。この場合、後述のように隣接する屋根材100,100において、重ねあわせ部分の隙間の形成をより防止しやすくできる。
傾斜片2の幅寸法Wは、傾斜片2の全長にわたって4〜9mmの範囲とすることができ、好ましくは、中央部2cの幅寸法Wが6mm程度、後片部2d及び前片部2bの幅寸法Wが7mm程度にすることができる。尚、ここでいう幅寸法Wとは、図2(b)に示すように、傾斜片先端2aを通り且つ本体部1に垂直な面と、側端縁部1aと、の距離のことをいう。
前片部2bの領域における側端縁部1aの長さは40〜60mmとすることができ、好ましくは40mmとすることができる。中央部2cの領域における側端縁部1aの長さは50〜100mmとすることができ、好ましくは60mmとすることができる。後片部2dの領域における側端縁部1aの長さは80〜120mmとすることができ、好ましくは100mmとすることができる。
ここで、本体部1の縦方向の長さ寸法L2が251mmであって、図2(a)において、X1が20mmである場合、X2が40mmの点における曲げ高さHは3mm、X3が60mmの点における曲げ高さHは6mm、X4が100mmの点における曲げ高さHは3mmとすることができる。この場合、後述するように、隣接する二枚の屋根材100,100において、上側の傾斜片先端2aと下側の本体部1との間に隙間ができてしまうのをより防止しやすくなる。
図2(b)に示すように、傾斜片2は、本体部1の側端を裏面側に折り返し屈曲させ、この折り返し部分を補強片1bとして形成させてもよい。この場合、傾斜片2と本体部1の側端付近は共に二重に形成され、屋根材100の端部の剛性が向上する。
本体部1には、図1に示すように、突起部20が形成されていてもよい。本実施形態の屋根材100では突起部20は、本体部1の裏面側へ突出するように形成される。このような突起部20は、第1嵌合部4から第2嵌合部5への方向に沿って略全長にわたって形成され、本体部1の短手辺と略平行に形成されている。また、突起部20は、例えば、本体部1表面で開口する断面略U字状や断面略V字状の溝として形成され得る。本実施形態のように、突起部20は複数形成することができる。この場合、突起部20は、本体部1の短手側の両側部に形成することができる。図1の屋根材100では、両側部に同じ個数で突起部20が形成されている。もちろん、両側部の突起部20の個数は異なっていてもよい。突起部20は、リブ加工などにより本体部1の表面に形成することができる。尚、突起部20は、本体部1の表面側、すなわち本体部1の上方に突出して形成されていてもよい。また、本体部1の表面に突出する突起部20と裏面に突出する突起部20の両方を形成しても良い。
突起部20は、例えば、幅4〜10mm、本体部1の表面からの深さ0.5〜1.5mm、長さ180〜280mmとなるように形成することができる。また、突起部20は、傾斜片先端2aからの距離(図1(a)では「L3」と表記)が100〜200mmである範囲に形成するのが好ましい。
本体部1には位置確認部30が形成されていてもよい。この位置確認部30は、例えば、本体部1の表面側に突出するように形成され、第1嵌合部4から第2嵌合部5への方向に沿って本体部1の略全長にわたって形成される。また、位置確認部30は本体部1の両側部に一個ずつあるいは複数個ずつ設けることができ、いずれも、傾斜片先端2aから100mmの位置に位置確認部30を形成することができる。また、位置確認部30を本体部1の両側部に複数個ずつ設ける場合は、傾斜片先端2aから一定の間隔で形成することができ、例えば、傾斜片先端2aから100mmの間隔で位置確認部30を形成することができる。位置確認部30は、例えば、リブ加工などにより本体部1の裏面で開口させるように形成させることができ、断面略V字状や断面略U字状に形成させることができる。
屋根材100の長手方向の寸法L1は、例えば、2000mm程度の定尺とすることができるが、これに限定されるものではない。一方、屋根材100の短手方向の寸法L2は、例えば、200〜280mmとすることができ、好ましくは250mm程度とすることができる。
屋根材100は、左右対称に形成されていてもよい。すなわち、屋根材100を左右に二等分する線に対して線対称に形成されていてもよい。尚、ここでいう左右方向とは、屋根材100の長手方向と同じ方向である。屋根材100が左右対称に形成されていれば、後述のように、屋根材100を施工するにあたって、屋根の左右いずれの方向からでも施工可能となる。
屋根材100は、金属板をロール成形加工などで加工して所望の形状に形成することができる。金属板としては、鋼板、亜鉛めっき鋼板あるいはガルバリウム鋼板(登録商標)等を用いることができ、いずれの金属板においても表面や裏面に塗装処理が施されていてもよい。金属板の厚みは、例えば0.3〜0.5mmとすることができ、金属板の面積あたりの重量は、例えば4.0〜5.0kg/m2とすることができる。
また、屋根材100は、一般的にはロール成形機で製造されるが、本実施形態の屋根材100のようにR加工(曲面加工)がほとんどない場合は、ベンダー加工機でも製造することができる。また、屋根材100の端部加工はヘミング曲げ加工及びプレス加工で対応できる。
上記の位置合わせ部3が切り欠きによって形成されている場合は、あらかじめ金属板を、位置合わせ部3を形成するためのカットを行ってから曲げ加工等を行ってもよいし、曲げ加工を行った後に上記カット処理を行うようにしてもよい。しかし、製造がより容易に行え、しかも、連続生産が可能であるという観点から、あらかじめ金属板をカットしておいてから(「プレカット処理」ともいう)曲げ加工等を行うことが好ましい。
位置合わせ部3が矩形状の切り欠きで形成される場合は、まず、図4(a)のように、固定片10として加工される金属板110の端部にほぼU字状の切り込み111を形成する。この切り込み111は金属板110の端縁113に開口して形成される。次に、図4(b)のように、端縁113と平行な折り曲げ線114の位置でヘミング曲げにより金属板110の端部を表面側に折り返して重ね部10cを形成する。折り曲げ線114は端縁113から切り込み111の深さ寸法のほぼ半分位置を通るように形成されている。そして、重ね部10cの形成により約半分に折り曲げられた切り込み111から上記矩形状の切り欠きで位置合わせ部3が形成される。
位置合わせ部3が三角形状の切り欠きで形成される場合は、まず、図5(a)に示すように、固定片10として加工される金属板110の端部にV字状の切り込み111を形成する。この切り込み111は金属板110の端縁113に開口して形成される。次に、図5(b)のように、端縁113と平行な折り曲げ線114の位置でヘミング曲げにより金属板110の端部を表面側に折り返して重ね部10cを形成する。折り曲げ線114は端縁113から切り込み111の頂点111a(位置合わせ部3の頂点3dと同じ)までの深さ寸法のほぼ半分位置を通るように形成されている。そして、重ね部10cの形成により約半分に折り曲げられた切り込み111から上記三角形状の切り欠きで位置合わせ部3が形成される。
上記屋根材100を屋根の下地となる野地板等に複数枚設けることで屋根を形成することができる。屋根材100を下地に設けることを、「屋根材100を敷設する」ということもある。本実施形態の屋根材100を敷設させる場合、第1嵌合部4が屋根の傾斜面に対して下り方向側を臨むように配置させ、第2嵌合部5が屋根の傾斜面に対して上り方向側を臨むように配置させる。このように配置させると、屋根材100の固定片10が最も上り方向側に位置することになる。上記下り方向側は、「屋根の軒側」又は「屋根の水下側」と言うことができる。また、上記上り方向側は、「屋根の棟側」又は「屋根の水上側」と言うことができる。尚、下り方向側と上り方向側とを結ぶ方向を、以下では「傾斜方向」という。
屋根材100の敷設作業は、例えば、屋根材100を複数枚準備し、これらを屋根の下り方向側から上り方向側へ順に敷設させることで行うことができる。下地面上において傾斜方向と直交する方向で隣接する屋根材100,100どうしは、一方の屋根材100の傾斜片2を、他方の屋根材100の本体部1の表面に上下に重ね合わせることにより接続させる。
図6(a),(b)には、傾斜方向と直交する方向で隣接する屋根材100,100どうしの接続の様子を説明する図を示しており、(a)は隣接する屋根材100,100どうしの接続方法を説明する斜視図、(b)は、接続後の状態を示す一部の斜視図を示している。尚、図6(a)では、隣接する屋根材100,100のうち、下側に配置される屋根材100を屋根材100aとし、上側に配置される屋根材100を屋根材100bとしており、以下、必要に応じてそのように表記することがある。傾斜方向と直交する方向で隣接する屋根材100a,100bを接続させるにあたっては、屋根材100aを先に敷設させておき、次いで、屋根材100bの側部を既設の屋根材100aの側部に重ね合わせるようにする。
屋根材100aと屋根材100bとを重ねる際、互いの重なり部分の長さ、すなわち、重なり寸法を調節して位置合わせを行う必要があるが、この位置合わせは、位置合わせ部3を基準にして行えばよい。具体的には、図6(a)において一点鎖線で示しているように、屋根材100bの固定片10の側端縁101と既設の屋根材100aの位置合わせ部3とが、屋根の傾斜方向において、ほぼ同一直線上に位置するように位置決めを行う。
位置合わせ部3が矩形状の切り欠きで形成されている場合は、図7(a)のように、屋根材100bの固定片10の側端縁101と既設の屋根材100aの位置合わせ部3の側端縁(一方の短辺3b)とが、屋根の傾斜方向において、同一直線上に位置するように位置決めを行う。位置合わせ部3が三角形状の切り欠きで形成されている場合は、図7(b)のように、屋根材100bの固定片10の側端縁101と既設の屋根材100aの位置合わせ部3の尖った頂点3dとが、屋根の傾斜方向において、同一直線上に位置するように位置決めを行う。矩形状の切り欠きの位置合わせ部3の短辺3bの線で位置決めするよりも、三角形状の切り欠きの位置合わせ部3の尖った頂点3dの点で位置決めする方が、位置決めしやすい場合がある。
そして、屋根材100bを図中のブロック矢印の方向へ移動させながら、屋根材100aの上片5a及び下片5bをそれぞれ、屋根材100bの第2嵌合部5の上片5a及び下片5bに重ねるようにする。また、屋根材100aの第2嵌合部5は、屋根材100bの第2嵌合部5の裏面側で挟み込むようにして、互いの第2嵌合部5,5どうしを重ねればよい。上記のように屋根材100bを位置合わせしながら屋根材100aに重ねることで、図6(b)に示すように、屋根材100aと屋根材100bは側部どうしが上下に重なりつつ接続される。また、既設の屋根材100aの位置合わせ部3の全体は、屋根材100bの固定片10で覆い隠される状態となり、表面側からは視認されない。
上記のように、位置合わせ部3を基準にして屋根材100の施工を行うことができるので、屋根材100a,100bどうしの接続位置を容易に決めることができる。そのため、施工を速やかに行うことができ、また、施工の精度も向上させることができる。また、位置合わせ部3のほぼ全体が固定片10で覆い隠されて表面側からは位置合わせ部3が視認されにくいので、屋根の意匠性も損なわれない。
さらに、位置合わせ部3は、屋根材100の側端部からの距離が所定の長さになるように設けられているので、位置合わせ部3を基準にして二枚の屋根材100を接続させても、充分な重なり寸法が確保される。このように充分な重なり寸法が確保されることで高い止水性を有する屋根を形成することが可能となる。すなわち、重なり寸法が短いと屋根材100a,100bの間に雨水等が浸入した場合に、野地板等の下地にその雨水が浸入して屋内の雨漏りの原因となることがあるが、充分な重なり寸法が確保されていれば、下地への雨水の浸入が抑制されやすくなるのである。重なり寸法が長ければ、下地に到達するまでの間に、隣接する屋根材100a,100b間に形成されている後述の排水空間により雨水が外部に排水されるからである。
止水性を充分に確保するための重なり寸法に調節するには、少なくとも、図6(a),(b)のように屋根材100bの固定片10の側端縁101と、既設の屋根材100aの位置合わせ部3とが上記のようにほぼ同一直線上になるように配置させればよい。もちろん、屋根材100bの固定片10の側端縁101が、位置合わせ部3よりもさらに屋根材100bの内側に位置するようにして、重なり寸法をさらに長くなるようにしてもよい。この場合、屋根の止水性(防水性)がさらに向上する。高い止水性を確保するための重なり寸法は、屋根材の大きさ等に応じて異なるが、図1の形態の屋根材100であれば、例えば、80mm以上であればよく、100mm以上であればより好ましい。また、施工性や経済性の観点から、重なり寸法の最大値は、屋根材100の長手方向の長さ(図1(a)のL1)の半分であることが好ましい。
位置合わせ部3は、本体部1ではなく、図1の形態の屋根材100のように固定片10の端部に形成させれば、仮に、位置合わせ部3が切り欠きによって形成されていたとしても、屋根材100自体の防水性は損なわれない。
また、図1の形態の屋根材100のように、第1位置合わせ部31と第2位置合わせ部32とを有し、第1位置合わせ部31の嵌合部5の側端縁102からの距離D3と、第2位置合わせ部32の嵌合部5の側端縁102からの距離D3とが略同一であれば、隣接する二枚の屋根材100a,100bは、どちらを上側に重ねることができる。要するにこの場合は、左右のいずれの方向からでも屋根材100を敷設することが可能になる。従って、図6(a)及び(b)では、屋根材100aを先に敷設させ、次いで、屋根材100bを敷設させているが、これとは逆に、図6(a)及び(b)において屋根材100bを先に敷設させてから、その表面側の側部に屋根材100aを敷設させることも可能になる。もちろん、この場合にあっても、位置合わせ部3を基準に位置合わせを行いながら敷設作業ができる。また、屋根材100が左右対称に形成されている場合も、上記同様、左右のいずれの方向からでも屋根材100を敷設することが可能になり、施工性が一層向上する。
図8は、屋根材100aと屋根材100bとが接続された状態において、屋根材100を傾斜方向に沿って切断した時の断面を示している。具体的に図8は、図6(b)におけるa−a断面図であり、屋根材100bの側端部に沿った切断面である。上記のように二枚の屋根材100が上下に重ね合わされると、屋根材100aの傾斜片先端2aは、下側の屋根材100bの本体部1表面の縦方向略全長にわたって当接する。一般的に、屋根材100が下地の上に設けられると、屋根材100の自重もしくは施工時の作業者の歩行による応力によって、屋根材100に撓みが生じて傾斜方向に沿って裏面側へ突曲する形状となってしまう。しかし、上記のように、傾斜片先端2aも下方に突曲して形成されているので、図8に示すように、上側の屋根材100bの傾斜片先端2aは、下側の屋根材100aの本体部1の傾斜方向に沿って裏面側へ突曲している表面に沿って配置される。そのため、上側の屋根材100bの傾斜片先端2aと、下側の屋根材100aの本体部1との密着性が高くなり、両者の間に隙間が形成されるのを防止しやすくなる。これにより、横方向に隣接する屋根材100,100の重ね合わせ部分に雨水等が浸入しにくくなる。
屋根材100に生じる撓みの程度は、屋根材100の寸法によらず一定であるので、屋根材100が任意の寸法で形成された場合でも、屋根材100の傾斜片先端2aは、撓みに追従できる。そのため、従来では屋根材100の撓みを防止するために、ポリウレタンやポリスチレン等の断熱材により屋根材100を補強していたものであったが、本実施形態の屋根材100では、そのような断熱材を貼り合わせたりするなどして屋根材100を補強する必要もない。従って、屋根全体の重量の軽量化が図れ、敷設作業も容易になり、加えてコスト低減を図ることができる。また、上側の屋根材100の傾斜片先端2aと下側の本体部1との間における隙間が形成されにくいので、その隙間による影を形成しにくくすることができる。そのため、屋根全体の外観が損なわれにくくなり、意匠性にも優れ屋根を形成することができる。
尚、重ね合わせ寸法が上記のように100mm以上「屋根材100の長手方向の半分の長さ」以下の範囲で重ね合わせると、屋根材100の傾斜片先端2aは、撓みに追従できるものである。また、屋根材100に位置確認部30が設けられている場合では、傾斜方向と直交する方向で隣接する屋根材100,100を上下に重ね合わせた際に、重ね合わせ寸法が止水性を確保するのに充分な長さになっているかどうかを確認することができる。従って、位置合わせ部3に加えて位置確認部30を併せて形成させることで、2箇所で屋根材100の敷設位置の確認を行うことができる。すなわち、屋根材100の長手方向の端部の傾斜片先端2aは、短手方向で立体的な曲げ加工をしているため、曲線的な仕上がりとなっている。特に、中央部2cは前片部2bや後片部2dと比べ、曲げ角度が大きく、屋根材100の長手方向において1〜2mm程度短く形成されている。よって、前片部2bや後片部2dと位置確認部30とを重ねて位置合わせすると、中央部2cと位置確認部30との位置がわずかにずれた状態となる。従って、位置確認部30のみで屋根材100の敷設位置の確認を容易に且つ精度よく行うことを、現場作業で徹底するのは難しい。本実施の形態の屋根材100では、位置合わせ部3と位置確認部30との両方で屋根材100の敷設位置の確認を容易に且つ精度よく行うことができて好ましいものである。
図9に示すように、傾斜方向と直交する方向で隣接する屋根材100,100が上下に重ね合わされた状態では、両者の間に隙間Sが形成される。このように隙間Sが形成されることで、仮に二枚の屋根材100,100の間に雨水が浸入したとしても、この隙間Sを通じて雨水を排出できるようになり、結果として、屋根の防水性を高くすることができる。従って、隙間Sは、上下に重なる屋根材100,100の間の排水空間としての役割を果たすものである。
また、屋根材100に突起部20が設けられている場合、隙間Sをより大きく形成させるには、上下に重なった屋根材100,100の突起部20どうしを互いに上下に対向させずに左右にずらした状態に重ねるようにすればよい。すなわち、下側の屋根材100aの本体部1の表面の平坦部分に、上側の屋根材100bに形成された突起部20が載置するように、隣接する屋根材100,100どうしを接続させればよい。これにより、二枚の屋根材100,100の間に浸入した雨水をより排水しやすくなり、屋根の防水性をより高くすることができる。
図10(a)〜(d)により、固定片10の屋根下地6への固着及び傾斜方向で隣接する屋根材100,100の接続について詳述する。まず、第2嵌合部5を上方に伸長した状態で屋根材100を屋根下地6に載置し、ビスなどの固定具11を固定片10及び屋根下地6に打ち込んで固定片10を固定する。次に、固定した屋根材100に別の屋根材100を横方向(傾斜方向と直交する方向)に並べて載置する。このとき、上記のように、隣接する屋根材100,100は横方向にずらした状態で上下に重ね合わせることにより接続する。そして、図10(a)に示すように、固定した屋根材100の第2嵌合部5の表面に新たに配置する方の屋根材100の第2嵌合部5を被せるようにする。また、固定した屋根材100の固定片10の表面に、新たに配置する方の屋根材100の固定片10を被せるようにする。
次に、図10(b)に示すように、新たに配置した屋根材100の固定片10と、固定した屋根材100の固定片10とに固定具11を打ち込むことによって、新たに配置した屋根材100の固定片10を屋根下地6に固定する。
このようにして横一列に複数枚の屋根材100,100…を敷設した後、これら敷設した屋根材100の上り方向側に他の複数枚の屋根材100,100…を横一列に順次敷設していく。このとき、図10(c)に示すように、上り方向側の屋根材100の第1嵌合部4を、下り方向側の屋根材100(上側に被せた屋根材)の本体部1と第2嵌合部5との間に挿入する。そして、挿入した第1嵌合部4を第2嵌合部5の下面に係止する。この後、図10(d)に示すように、さらに他の上り方向側の屋根材100の第1嵌合部4を、上記上り方向側の屋根材100の第1嵌合部4と下り方向側の屋根材100の本体部1との間に挿入する。これによって、下り方向側の屋根材100の第2嵌合部5に上り方向側の屋根材100の第1嵌合部4が係止される。このように、縦方向と横方向に四枚の屋根材100が隣接する箇所では、最終的に二つの第1嵌合部4,4と二つの第2嵌合部5,5とが重なった状態となる。上記施工手順に従って、複数枚の屋根材100を順次敷設することによって、屋根を形成することができる。