以下、図面を参照しながら、本発明の実施の形態について説明する。
<第1の実施の形態>
<4色刷枚葉輪転印刷機の構成>
図1に示すように印刷機としての4色刷枚葉輪転印刷機100は、シート供給装置101と、4色の印刷ユニット102aないし102dを含む印刷ユニット102と、シート排出装置103と、制御コンソール200とを備えている。
シート供給装置101は、積載板101aに載せられたレンチキュラーレンズシート1のシート束のうち最上段にある1枚のレンチキュラーレンズシート1を吸着し搬送するサッカー装置101bと、サッカー装置101bから搬送されるレンチキュラーレンズシート1を印刷ユニット102へ搬送するフィーダボードFBとを備えている。フィーダボードFBの先端側には、レンチキュラーレンズシート1の一方の端部(くわえ側端部)の天地方向の向きを揃える前当て101cが設けられている。
4色の印刷ユニット102a〜102dは、版胴110a〜110dと、ゴム胴(転写胴)111a〜111dと、圧胴(搬送胴)112a〜112dとをそれぞれ備えている。版胴110a〜110dは、フレームに対して回転自在に支持されている。ゴム胴111a〜111dは、フレームに対して回転自在に支持され、それぞれの周面が版胴110a〜110dに対接している。圧胴112a〜112dは、フレームに対して回転自在に支持され、それぞれの周面がゴム胴111a〜111dと対接している。
各版胴110a〜110dの周面および各ゴム胴111a〜111dの周面には、互いに対向する切欠き部(図示せず)が形成されている。版胴110a〜110dの切欠き部には、刷版を装着するための版万力が設けられている。ゴム胴111a〜111dの切欠き部には、ブランケットを保持するブランケット保持装置が設けられている。
また、各圧胴112a〜112dの周面には、各ゴム胴111a〜111dの切欠き部と互いに対向する切欠き部(図示せず)が形成されている。その切欠き部には、レンチキュラーレンズシート1を受け取って搬送するためのくわえ爪装置(図示せず)が設けられている。
フレームに対して回転可能に支持された渡し胴114が、圧胴112aに対接して配置されている。フィーダボードFBと渡し胴114との間にはスイング装置(図示せず)が設けられている。スイング装置は、フィーダボードFBの先端側と渡し胴114との間を揺動自在にフレームに支持されている。スイング装置には、レンチキュラーレンズシート1のくわえ側端部を受け取って保持するくわえ爪が設けられている。
圧胴112aと圧胴112bとの間には、双方と対接した渡し胴115が配設されている。圧胴112bと圧胴112cとの間には、双方と対接した渡し胴116が配設されている。圧胴112cと圧胴112dとの間には、双方と対接した渡し胴117が配設されている。圧胴112dのシート搬送方向下流側には、圧胴112dと対接した渡し胴118が配設されている。渡し胴115〜118は、フレームに対して回転自在に支持されている。各渡し胴115〜118の周面にも、各圧胴112a〜112dの切欠き部と互いに対向する切欠き部(図示せず)が形成されている。その切欠き部には、レンチキュラーレンズシート1を受け取って搬送するためのくわえ爪装置(図示せず)が設けられている。
渡し胴118の近傍のシート排出装置103には、当該シート排出装置103に設けられた排出チェーン(図示せず)および爪竿によって搬送されるレンチキュラーレンズシート1を積載する排出用の積載板103aが設けられている。
<版胴の構成>
印刷ユニット102a〜102dにおける版胴110a〜110dは全て同一構成である。このため、ここでは版胴110aについてのみ説明する。
図2および図3に示すように、版胴110aは、左右両側端部の端軸110Rb、110Lbを有している。端軸110Rb、110Lbは、原動側フレーム141および操作側フレーム165にそれぞれ回転自在に支持されている。版胴110aの原動側フレーム141および操作側フレーム165の外側には、版胴110aの見当調整を行う版胴見当調整装置140が設けられている。
次に、図2〜図5を用いて版胴見当調整装置140の構成を説明する。版胴110a〜110dにはそれぞれ版胴見当調整装置140が設けられている。全ての版胴見当調整装置140が同じ構造であるので、ここでは版胴110aに設けられた版胴見当調整装置140を対象として説明する。
図2に示すように、版胴見当調整装置140では、原動側フレーム141に外メタル142が軸支され、この外メタル142に内メタル143を介して版胴110aの端軸110Rbが軸支されている。版胴110aの周面には、図11に示すような刷版10aが取り付けられる。外メタル142の外周円の軸心と内メタル143および版胴110aの軸心とは偏心量t1だけ偏心している。原動側フレーム141の外側に突出している端軸110Rbの端面には、外歯ギア144がボルト145により固定されている。この外歯ギア144は、後述する内歯ギア146と噛合している。
原動側フレーム141の外方には、この原動側フレーム141と平行なブラケット147が設けられている。原動側フレーム141とブラケット147の間は、複数個のステー148により連結されている。段付きのウォームホイール149が、ブラケット147の軸受孔に嵌入され、ウォームホイール149の先端ねじ部に螺合されたナット150によってブラケット147に締め付け固定されている。ブラケット147を挟んだその両側には、スラストベアリング151、152が介装されている。
ウォームホイール149の内周ねじ孔149aには、鍔を有するねじ軸153のねじ部153aが螺合されている。ねじ部153aの先端には、長孔とボルト154とによりウォームホイール149に固定されたねじ板155が螺合されている。
内歯ギア146を内周面に有する円筒状のカップリング156は、その一方の開口端に円板157が螺着されている。この円板157の孔には、ねじ軸153の一端が嵌合されて、その鍔とナット158とにより固定されている。鍔とナット158と円板157とによりスラストベアリング159、160が挟持されている。このように構成されていることにより、ねじ軸153とカップリング156とは、互いに回動自在であり、かつ、軸方向への移動が規制されている。
カップリング156の鍔部156aには、リング162とボルト163とによりヘリカルギア161が固定されている。そのヘリカルギア161が原動側のヘリカルギア164と螺合され、原動側の回転がヘリカルギア164、161、内歯ギア146、外歯ギア144を介して版胴110aに伝達される。この場合、外歯ギア144と内歯ギア146とが摺動自在に螺合しているため、カップリング156が軸方向へ移動しても支障がない。
図3に示すように、操作側フレーム165に外メタル166が回動自在に軸支されている。内メタル167は、中空状のブラケット部167aと、このブラケット部167aよりも小径の軸受部167bとにより、段状に形成されている。内メタル167の軸受部167bが、外メタル166に回動自在に嵌合されている。軸受部167bの孔には、版胴110aの端軸110Lbが回転自在に支持されている。
外メタル166の外周円軸心と版胴110aの軸心とは、図中の偏心量t2だけ偏心しており、内メタル167の外周円軸心と版胴110aの軸心とは偏心量t3だけ偏心している。偏心量t1、t2は、版胴110aのゴム胴111aに対する印圧を調整するための偏心量である。
操作側フレーム165の外方では、正面視L字状に形成されたブラケット168が、垂直部材168aを操作側フレーム165と平行になるように、操作側フレーム165側に固定されている。段付きのウォームホイール169が、垂直部材168aの軸受孔168bに嵌入され、ウォームホイール169の先端ねじ部に螺合されたナット170で締め付け固定される。ブラケット168を挟んでその両側には、スラストベアリング171、172が介装されている。
ウォームホイール169の内周ねじ孔169aには、ねじ軸173のねじ部173aが螺合されている。ねじ部173aの先端には、長孔とボルト274とによりウォームホイール169に固定されたねじ板275が螺合されている。
ねじ軸173の鍔169bは、ブラケット部167aの中空部にスラストベアリング174を介して係入されている。ねじ軸173とブラケット部167aとは、ねじ部にスラストベアリング175を介して螺合されたナット176によって締め付け固定されている。
このように構成されていることにより、ねじ軸173とブラケット部167aとは回動自在でかつ軸方向への移動が規制されている。ブラケット168には、後述する軸受箱178を介して回り止め177が支持されている。ねじ軸173の回動を規制するために、回り止め177の上端平面がねじ軸173の先端部173bに当接されている。
図2および図4に示すように、駆動側のブラケット147には、上方が開口する箱状に形成された軸受箱188が固定されている。軸受箱188にはウォーム軸189が軸支されている。ウォーム軸189には、上述したウォームホイール149と噛合するウォーム190が軸着されている。また、ウォーム軸189が、版胴見当調整用のアクチュエータとしての天地調整用モータ(図示せず)のモータ軸に接続されている。なお、版胴見当調整装置140においては、ウォーム軸189、ウォームホイール149、ねじ軸153、カップリング156およびヘリカルギア161によって、レンチキュラーレンズシート1に対する天地方向の見当を調整する天地方向調整機構が構成される。
一方、図3および図5に示すように、軸受箱178には、版胴見当調整用のアクチュエータとしての左右調整用モータ193が固定されている。この左右調整用モータ193のモータ軸にウォーム軸194が接続されている。ウォーム軸194には、ウォームホイール169と噛合するウォーム195が一体に形成されている。なお、版胴見当調整装置140においては、左右調整用モータ193、ウォームホイール169、ねじ軸173およびブラケット部167aによって、レンチキュラーレンズシート1に対する左右方向の見当を調整する左右方向調整機構が構成される。
<渡し胴の構成>
続いて、渡し胴114の構成について説明する。図6および図7に示すように、渡し胴114は、フィーダボードFBおよびスイング装置の直後に存在する最初の渡し胴である。この渡し胴114に対してコッキング調整を行うコッキング調整部としての渡胴コッキング手動調整装置213が設けられている。
渡し胴114の一方の端軸330は、原動側フレーム141の軸受孔に嵌着された軸受け332に対して回転自在に支持されている。この端軸330には原動側と駆動連結された胴ギア333が軸着されている。渡し胴114の他方の端軸334は、操作側フレーム165の軸受孔335aに嵌着された偏心軸受336に対して回転自在に支持されている。偏心軸受336の軸受孔335aと嵌合するフレーム側外周円336aの軸芯Aと、端軸側内周円336bの軸芯Bとは、偏心量t4だけ偏心している。
一方、操作側フレーム165のシート排出装置103側の端部には、ダイヤル337a付きのハンドル337が、操作側フレーム165に植設されたスタッド338によって回動自在に支持されている。また、操作側フレーム165には、レバー339がピン340によって揺動自在に枢着されている。
ハンドル337の先端ねじ部は、レバー339の揺動端側二又部に回動自在に枢着されたこま341のねじ孔に進退自在に螺合されている。また、レバー339の揺動端側二又部にはロッド342一端が枢着され、ロッド342の他端は偏心軸受336のフランジ部に形成された二又部336cに枢着されている。
ハンドル337は、偏心軸受336を回動させる操作部として用いられる。なお、図7では、図面を展開して図示した関係上、こま341が枢着された二又部と ロッド342の一端が枢着された二又部とが上下に分かれて記載されているが、実際はこれらが同じ二又部に枢着されている。ハンドル337、レバー339、ロッド342および偏心軸受336により渡胴コッキング手動調整装置213が構成される。この渡胴コッキング手動調整装置213は、刷版10aに対するレンチキュラーレンズシート1の角度を調整するシートひねり装置(コッキング調整部)としても機能する。
<制御コンソールの構成>
次に、4色刷枚葉輪転印刷機100における制御コンソール200の構成について説明する。図1および図8に示すように、制御コンソール200は載置台20を備えている。載置台20の上面には、図11および図12に示すような刷版10a、および、図13(A)および(B)に示すようなレンチキュラーレンズシート1が載置される。載置台20の端部にはフレーム20aが設けられている。
載置台20の上面には、フレーム20aから突出する2つの基準部材としての先端矩形状のストッパ(第1の基準部材)21および先端半円状のストッパ(第2の基準部材)22が互いに離間して配設されている。図8にはストッパ21およびストッパ22が載置台20の一端縁に配置されている例を示したが、ストッパ21、22の配置はこれに限られない。また、載置台20の上面には、ストッパ22の先端側に、ストッパ22の半円状の先端からの距離を示す目盛23が設けられている。この「距離」とは、載置台20の一端縁またはフレーム20aと直交する方向の距離をいう。
載置台20は、図9に示すような、CPU(Central Processing Unit)を含むマイクロコンピュータ構成の制御装置201を内蔵している。制御装置201には、作業者からの入力を受け付けるキーボード等からなる入力部202が接続されている。制御装置201には、表示部としてのモニタ211および上述した版胴見当調整装置140が更に接続されている。ただし、制御装置201には、渡し胴114の渡胴コッキング手動調整装置213は接続されていない。
図10に示すように、制御装置201は、刷版10a(図18(A))の上にレンチキュラーレンズシート1(図18(B))が重ねられた状態における刷版10aの絵柄13の境界線14とレンチキュラーレンズシート1の溝目線2との関係に基づいて、渡胴コッキング手動調整装置(コッキング調整部)213のためのコッキング調整量を算出する調整量算出部231を含む。調整量算出部231の詳細については後述する。
<版胴に装着される刷版の構成>
版胴110a〜110dには刷版10a〜10dが装着される。刷版10a〜10dの構成は全て同一であるため、ここでは版胴110aに装着される刷版10aの構成についてのみ説明する。
図11に示すように、版胴110aに装着される刷版10aは、全体として矩形をしている。刷版10aの一辺(図11では下方端縁19)には、基準ピン孔としての矩形状切欠部(第1の基準ピン孔)11およびU字状切欠部(第2の基準ピン孔)12が互いに離間して形成されている。矩形状切欠部11およびU字状切欠部12は、刷版10aが版胴110aに取り付けられる際の基準となる。矩形状切欠部11およびU字状切欠部12の形状は、それぞれストッパ21およびストッパ22の先端部の形状と同等である。また、矩形状切欠部11とU字状切欠部12との間隔は、ストッパ21とストッパ22との間隔と同等である。
刷版10aには、矩形状切欠部11およびU字状切欠部12を基準として製版された絵柄13が形成されている。絵柄13は、複数の細長い絵柄部分A1、B1、A2、B2、…、からなる。互いに隣接する絵柄部分間の境界線14が平行になっている。
図45に示したように、絵柄部分A1とB1とが一組の組合せ絵柄部分を構成し、複数の組合せ絵柄部分が絵柄13を構成している。一組の組合せ絵柄部分の横幅(A1+B1)が、レンチキュラーレンズシート1の一つのレンズの幅、すなわち図13(A)および(B)において破線で示した溝目線2間の距離と同一となっている。
刷版10aは、製版機の都合により、通常、矩形状切欠部11およびU字状切欠部12が形成された下方端縁19と平行な仮想の水平線L1に対し、絵柄13の右下端が距離tだけ上方へ傾斜した状態で製版されている。ただし、刷版10aは、仮想の水平線L1に対して絵柄13が水平となるように製版されていてもよい。
図12に示すように、刷版10aの絵柄13の左右両側には、十字状をしたトンボの見当マーク15、16が形成されている。この見当マーク15、16は刷版10aに絵柄13と同時に形成される。絵柄13と見当マーク15、16との相対的な位置関係は、4個の刷版10a〜10dの全てにおいて共通である。
また、刷版10aには、U字状切欠部12の先端側に、U字状切欠部12の先端からの距離を示す目盛17が設けられている。この「距離」とは、刷版10aの下方端縁19と直交する方向の距離をいう。後述するように、刷版10aが載置台20に載置されるとき、載置台20のストッパ22が刷版10aのU字状切欠部12に嵌る。この状態では、目盛17はストッパ22の先端からの距離を示すことになる。
<レンチキュラーレンズシートの構成>
図13(A)および(B)に示すように、刷版10aの絵柄13が転写されるレンチキュラーレンズシート1は、0.1mm〜0.7mmピッチで蒲鉾型断面の細長い複数のレンズをストライプ状に配列して連結したものである。レンチキュラーレンズシート1の表(おもて)面にはストライプ状の凹凸が形成され、レンチキュラーレンズシート1の裏面はフラットな面である。レンチキュラーレンズシート1は透明なシートである。「透明」とは無色透明に限定されるものではなく、レンチキュラーレンズシート1の裏面に施された印刷が表面から目視できるものであればよく、着色されていてもよい。
複数のレンズは、隣接するレンズ間の溝目線(境界線)2が互いに平行になるように形成されている。レンチキュラーレンズシート1は、矩形をしており、四辺を構成する端縁(上端縁1a、下端縁1b、左端縁1cおよび右端縁1d)を有する。
レンチキュラーレンズシート1の溝目線2は、その左端縁1cおよび右端縁1dに対して平行であることが理想的である。しかし、実際には、溝目線2は左端縁1cおよび右端縁1dに対して必ずしも平行ではなく、しかも断裁ロット(1ロットは約100枚程度)毎に溝目線2の方向が異なっている場合がある(図13(A)および(B))。
<4色刷枚葉輪転印刷機の調整動作>
4色刷枚葉輪転印刷機100で印刷を開始する前に、版胴110aに装着されている刷版10aの絵柄13とレンチキュラーレンズシート1との間で、天地方向(円周方向)、左右方向の見当ずれが生じている場合、天地方向、左右方向の見当調整動作を予め行う。加えて、刷版10aの絵柄13の複数の境界線14とレンチキュラーレンズシート1の複数の溝目線2とを一致させるため、渡し胴114によるコッキング調整動作を予め行う。
<版胴見当調整動作>
版胴110aに装着される刷版10aの絵柄13とレンチキュラーレンズシート1との間で天地方向の見当ずれが生じている場合の版胴110aに対する天地方向の見当調整動作、および、版胴110aに装着される刷版10aの絵柄13とレンチキュラーレンズシート1との間で左右方向(版胴110aの軸線方向)の見当ずれが生じている場合の版胴110aに対する左右方向の見当調整動作について説明する。
1色目の版胴110aに対する天地方向の見当調整動作および左右方向の見当調整動作は、4色刷枚葉輪転印刷機100の印刷動作が停止されている状態で行われる。2色目の版胴110b、3色目の版胴110cおよび4色目の版胴110dに対する天地方向の見当調整動作および左右方向の見当調整動作は、1色目の版胴110aに装着された刷版10aの見当調整動作が行われた後に順次実行される。これにより、1色目の版胴110aに装着された刷版10aから4色目の版胴110dに装着された刷版10dは、天地方向および左右方向の位置が全て揃えられることになる。
制御装置201の制御により天地調整用モータ(図示せず)が駆動し、図2および図4に示す版胴見当調整装置140における天地方向調整機構のウォーム軸189が回動すると、ウォーム190およびウォームホイール149を介してねじ軸153が回転し、ねじ部153aのねじ作用によりねじ軸153が軸方向へ移動する。ねじ軸153と軸方向に一体のカップリング156およびヘリカルギア161も軸方向へ移動し、ヘリカルギア161、164のはす歯作用により版胴110aが円周方向へ僅かに回転する。こうして版胴110aに対する天地方向の見当調整が行われる。
すなわち、版胴110aが円周方向へ回転すると、版胴110aに装着されている刷版10aも版胴110aとともに円周方向へ回転することになるので、版胴110aに装着されている刷版10aの絵柄13とレンチキュラーレンズシート1との間の天地方向の見当ずれが解消される。
この版胴110aに対する天地方向の見当調整は、レンチキュラーレンズシート1に対する1色目の絵柄13の転写のためのものである。このときの天地方向の見当調整量にしたがって、版胴110b、版胴110cおよび版胴110dに対する天地方向の見当調整が同様にして行われる。
図3および図5に示すように、制御装置201の制御により左右調整用モータ193が駆動し、版胴見当調整装置140における左右方向調整機構のウォームホイール194が回転すると、ねじ部173aのねじ作用によりねじ軸173が軸方向へ進退する。これにより、ねじ軸173およびブラケット部167aを介して一体の版胴110aが軸方向へ移動する。こうして、版胴110aに対する左右方向の見当調整が行われる。
すなわち、版胴110aが軸方向へ移動されると、版胴110aに装着されている刷版10aも版胴110aとともに軸方向へ移動することになるので、版胴110aに装着されている刷版10aの絵柄13とレンチキュラーレンズシート1との間の左右方向の見当ずれが解消される。
この版胴110aに対する左右方向の見当調整は、レンチキュラーレンズシート1に対する1色目の絵柄13の転写のためのものである。このときの左右方向の見当調整量にしたがって、版胴110b、版胴110cおよび版胴110dに対する左右方向の見当調整が同様にして行われる。
<渡胴コッキング手動調整動作>
上述した通り、1色目の刷版10aの天地方向および左右方向の見当調整動作に合わせて残り3色の刷版10b〜10dの天地方向および左右方向の見当調整動作が終了すると、1色目の刷版10a〜4色目の刷版10dは全て天地方向および左右方向において見当ずれが解消された状態となる。
ところが、図13(A)および(B)に示すように、レンチキュラーレンズシート1は、左端縁1cおよび右端縁1dに対して、レンズ間の溝目線2が必ずしも平行ではない。このため、刷版10aに形成された絵柄13の周囲の枠と、レンチキュラーレンズシート1の端縁(上端縁1a、下端縁1b、左端縁1cおよび右端縁1d)とが一致するように重ねられたとしても、絵柄13の絵柄部分A1、B1、A2、B2、…、の間の境界線14と、レンチキュラーレンズシート1のレンズ間の溝目線2とが角度的に一致せず、ずれが生じてしまう。そのため、版胴110aにおける刷版10aの絵柄13の複数の境界線14と、レンチキュラーレンズシート1の複数の溝目線2とを一致させるべく、渡し胴114の渡胴コッキング手動調整装置213を作業者が手動で操作することにより渡胴コッキング調整を行うためのコッキング調整量hp(後述する)を求める必要がある。コッキング調整量hpは、次のような手順で求められる。
まず、作業者は、4色刷枚葉輪転印刷機100における制御コンソール200の載置台20の上面に、版胴110aに装着される1色目の刷版10aを載せる。このとき、図14に示すように、載置台20のフレーム20aから突出する2つのストッパ21、22に対し、刷版10aの下方端縁19に形成された矩形状切欠部11およびU字状切欠部12を嵌め合わせて突き当てる。これにより、刷版10aが載置台20に位置決めされる。このようにして、刷版10aの刷版位置決めステップS1(図19)が行われる。
図15(A)に示すように、作業者は、載置台20に位置決めされた刷版10aの上にレンチキュラーレンズシート1を載せ、レンチキュラーレンズシート1の下端縁1bを載置台20のストッパ21、22に突き当てる。このとき、レンチキュラーレンズシート1の下端縁1bの左端がストッパ21の外側(ストッパ21から見てストッパ22とは反対側)にはみ出るようにレンチキュラーレンズシート1を載せる。レンチキュラーレンズシート1は透明部材で形成されているので、レンチキュラーレンズシート1を通して、刷版10aにおける絵柄13の複数の絵柄部分間の境界線14とレンチキュラーレンズシート1の複数のレンズ間の溝目線2との関係を目視することができる。
図15(B)に示すように、作業者は、レンチキュラーレンズシート1の下端縁1bの左端側をストッパ21に接触させたまま、レンチキュラーレンズシート1の下端縁1bの右端側をストッパ22から離れるようにレンチキュラーレンズシート1を回転させていく。すると、ある角度で、刷版10aの境界線14とレンチキュラーレンズシート1の溝目線2とが一致して重なる。
例えば、作業者は、レンチキュラーレンズシート1をストッパ21に接触させた状態で、その接触点を回転中心としてレンチキュラーレンズシート1を回転させ、レンチキュラーレンズシート1の溝目線2を刷版10aの境界線14と平行にする。このときの回転角度をθとする。レンチキュラーレンズシート1の溝目線2が刷版10aの境界線14と一致していなければ、レンチキュラーレンズシート1をストッパ21に接触させた状態で、角度θを維持しながら、レンチキュラーレンズシート1をその長さ方向に移動させて、溝目線2を境界線14に一致させる。溝目線2が境界線14に一致していれば、溝目線2は境界線14と平行である。したがって、溝目線2を境界線14に一致させることにより、溝目線2が境界線14と平行であることを容易に確認できる。なお、溝目線2が境界線14と平行であることがわかるのであれば、必ずしも溝目線2を境界線14に一致させる必要はない。
これにより、刷版10aの絵柄13に対してレンチキュラーレンズシート1が正確に位置合わせされる。このようにして、刷版10aに対するレンチキュラーレンズシート1のレンチキュラーレンズシート位置合わせステップS2(図19)が行われる。
これにより、刷版10aにおける絵柄13の絵柄部分A1、B1、A2、B2、…、が、レンチキュラーレンズシート1の溝目線2間の絵柄転写領域に正確に合わせられた状態、すなわちレンチキュラーレンズシート1の溝目線2間の絵柄転写領域に対して刷版10aの絵柄13の組合せ絵柄部分(A1+B1、A2+B2、…、)を正確に転写することができる相対的な位置(角度)関係が構築される。
このような刷版10aの絵柄13にレンチキュラーレンズシート1を位置合わせした状態で、図16に示すように、作業者は、刷版10aの表面に設けられた目盛17を目視することにより、ストッパ22の先端からレンチキュラーレンズシート1の下端縁1bまでの距離(隙間量)hsを読み取る。上述したとおり、この「距離」とは、載置台20の一端縁、フレーム20a、または、刷版10aの下方端縁19と直交する方向の距離をいう(以下同様)。このようにして距離(隙間量)hsの距離計測ステップS3(図19)が行われる。
作業者は、この距離hsを制御コンソール200の入力部202から入力する。距離hsは制御装置201へ出力され、制御装置201の調整量算出部231が距離hsに基づいて、刷版10aの絵柄13に対するレンチキュラーレンズシート1のコッキング調整量hpを算出する。
コッキング調整量hpは次のようにして算出することができる。図17(A)に示すように、載置台20のストッパ21の左端(すなわち、ストッパ21とレンチキュラーレンズシート1の下端縁1bとが当接する箇所)とストッパ22の先端(中央位置)との間の距離をLs、ストッパ22の先端からレンチキュラーレンズシート1の下端縁1bまでの距離(隙間量)をhsとする。図17(B)に示すように、渡し胴114の軸支持部間の距離(すなわち、渡し胴114の端軸330の軸受け部332と端軸334の軸受け部336との間の距離)をLp、渡し胴114の一方の端軸330の移動量(すなわちコッキング調整量)をhpとする。この場合、図17(C)に示すように、hp=Lp×sinθとなる。
一方、図17(A)に示すように、hs=Ls×tanθの関係が成り立つため、θ=arctan(hs/Ls)となる。したがって、コッキング調整量hpは、hp=Lp×sin{arctan(hs/Ls)}となり、既知の寸法Ls、Lpおよび距離計測ステップで計測された距離hsによって求められる。このようにしてコッキング調整量hpの算出ステップS4(図19)が行われる。
制御装置201は、算出されたコッキング調整量hpをモニタ211に表示する。これにより、作業者は、手動で渡し胴114のコッキング調整を行う際の指標となるコッキング調整量hpを認識することができる。このようにしてコッキング調整量hpの表示ステップS5(図19)が行われる。
作業者は、渡胴コッキング手動調整装置213におけるダイヤル337aを確認しながら、モニタ211に表示されたコッキング調整量hpに基づいてハンドル337を操作する。このハンドル337の操作に応じて、こま341を介してレバー339が揺動し、ロッド342を介して偏心軸受336がハンドル337の回動操作に応じた角度だけ回動する。これにより渡し胴114は偏心軸受336の回動に応じてひねり調整(コッキング調整)される。このようにして渡胴コッキング調整ステップS6(図19)が行われる。
渡し胴114は操作側の軸受336が偏心量t4だけ偏心しているので、偏心軸受336の偏心作用により渡し胴114の軸が圧胴112aの軸に対して傾斜し、コッキング調整量hpの分だけ、ひねり調整(コッキング調整)される。これにより、渡し胴114を介して搬送されるレンチキュラーレンズシート1もコッキング調整量hpの分だけ傾斜し、レンチキュラーレンズシート1の搬送角度が調整されることになる。
すなわち、フィーダボードFB、スイング装置を介して搬送されるレンチキュラーレンズシート1が渡し胴114のくわえ爪装置にくわえ替えされるとき、渡し胴114が渡胴コッキング手動調整装置213によりコッキング調整量hpの分だけ予めひねり調整されているので、レンチキュラーレンズシート1もコッキング調整量hpの分だけ搬送角度がひねり調整された状態で保持されて搬送される。
このように、版胴見当調整装置140における天地方向調整機構および左右方向調整機構により、版胴110a〜版胴110dの天地方向および左右方向の見当調整動作が予め行われている上、渡胴コッキング手動調整装置213により渡し胴114のコッキング調整動作が予め行われる。これにより、1色目から4色目の版胴110a〜110dの刷版10a〜10dにおける絵柄13の複数の境界線14と、レンチキュラーレンズシート1の複数の溝目線2とがそれぞれ一致した転写可能状態に予め調整される。
図18(B)に示すような溝目線2が傾斜したレンチキュラーレンズシート1は、予めひねり調整された渡し胴114を通過する際に、自身もひねり調整された状態となる。ひねり調整されたレンチキュラーレンズシート1は、予め天地方向および左右方向の見当調整が行われた版胴110aと対接したゴム胴111aと、圧胴112aとの間を通過する。この際、ゴム胴111aを介して転写される刷版10aの絵柄13の境界線14(図18(A))と、レンチキュラーレンズシート1の溝目線2(図18(B))とが、図18(C)に示すように相対的に一致した位置関係となる。したがって、刷版10aの絵柄13の組合せ絵柄部分(A1+B1、A2+B2、…、)をレンチキュラーレンズシート1の溝目線2間の絵柄転写領域に対して、ずれなく正確に転写することが可能となる。このようにして4色刷枚葉輪転印刷機100の調整動作が終了する。
版胴見当調整装置140における天地方向および左右方向の見当調整が行われ、かつ、渡し胴114によるひねり調整が行われたので、4色刷枚葉輪転印刷機100では印刷ユニット102a〜102dを介してレンチキュラーレンズシート1に対して試し刷りが行われる。その結果、印刷ユニット102a〜102dによりレンチキュラーレンズシート1に印刷された各色毎の見当マーク15、16にずれ量が存在する場合には、そのずれ量に基づいて版胴110a〜110dに対する天地方向または左右方向の見当調整や、渡し胴114に対するひねり調整の微調整を行えばよい。
本実施の形態では、版胴見当調整装置140において天地方向および左右方向の見当調整動作が終了した後に、渡胴コッキング手動調整装置213により渡し胴114のコッキング調整動作が行われるようにした場合について述べた。しかし、これに限らず、渡胴コッキング手動調整装置213により渡し胴114のコッキング調整動作が行われた後に、版胴見当調整装置140において天地方向および左右方向の見当調整動作を行うようしてもよく、また両者を同時に行うようにしてもよい。
<4色刷枚葉輪転印刷機の印刷動作>
4色刷枚葉輪転印刷機100において、シート供給装置101のサッカー装置101bにより保持されたレンチキュラーレンズシート1は、フィーダボードFBに載せられて搬送される。そして、フィーダボードFBの先端側に設けられた前当て101cに対してレンチキュラーレンズシート1の一方の端部(くわえ側端部)が当接し、天地方向が揃えられた状態で、レンチキュラーレンズシート1はスイング装置のスイング爪から渡し胴114のくわえ爪装置にくわえ替えされる。
渡し胴114は、渡胴コッキング手動調整装置213により渡し胴114のコッキング調整動作が予め行われている。このため、渡し胴114のくわえ爪装置から印刷ユニット102aの圧胴112aのくわえ爪装置にくわえ替えされたときには、レンチキュラーレンズシート1の搬送角度がコッキング調整量hpの分だけひねり調整された状態で、レンチキュラーレンズシート1は圧胴112aのくわえ爪装置に保持されて搬送される。このとき、レンチキュラーレンズシート1は裏面を外側に向けた状態で搬送される。
圧胴112aのくわえ爪装置に保持されたレンチキュラーレンズシート1は、圧胴112aの回転とともに搬送され、圧胴112aとゴム胴111aとの間を通過する。このとき、版胴110aに装着された1色目の刷版10aの絵柄13が、ゴム胴111aを介してレンチキュラーレンズシート1の裏面に転写される。
渡し胴114のコッキング調整動作が予め行われているとともに、版胴見当調整装置140における天地方向調整機構および左右方向調整機構により版胴110aの天地方向および左右方向の見当調整動作が予め行われているので、1色目の刷版10aの絵柄13の境界線14と、レンチキュラーレンズシート1の溝目線2とが一致した状態で正確に転写される。
刷版10aの絵柄13が転写されたレンチキュラーレンズシート1は、圧胴112aのくわえ爪装置から渡し胴115のくわえ爪装置にくわえ替えされ、その後、渡し胴115から印刷ユニット102bの圧胴112bへ搬送される。
印刷ユニット102bでは、印刷ユニット102aと同様に、圧胴112bのくわえ爪装置に保持されたレンチキュラーレンズシート1が、圧胴112bの回転とともに搬送され、圧胴112bとゴム胴111bとの間を通過する。このとき、版胴110bに装着された2色目の刷版10bの絵柄13が、ゴム胴111bを介してレンチキュラーレンズシート1の裏面に転写される。
以下、同様にして、印刷ユニット102c、102dにおいても、3色目、4色目の刷版10c、10dの絵柄13がゴム胴111c、111dを介してレンチキュラーレンズシート1の裏面に正確に転写され、その後、そのレンチキュラーレンズシート1が渡し胴118を介してシート排出装置103へ搬送される。
版胴110aに対する天地方向および左右方向の見当調整量にしたがって、版胴110b、版胴110cおよび版胴110dに対する天地方向および左右方向の見当調整が同様にして行われている。このため、1色目の刷版10aにおける絵柄13の境界線14から4色目の刷版10dにおける絵柄13の境界線14と、レンチキュラーレンズシート1の溝目線2とが全て一致した状態で正確に転写される。
シート排出装置103へ搬送されたレンチキュラーレンズシート1は、シート排出装置103に設けられた排出チェーン(図示せず)の爪竿を介して搬送され、排出チェーンの下方にある排出用の積載板103aの上に積み重ねられる。
ところで、上述したように1ロット目のレンチキュラーレンズシート1に対して刷版10aの絵柄13を正確に転写した後、次の2ロット目のレンチキュラーレンズシート1に対して刷版10aの絵柄13を転写する場合、1ロット目のレンチキュラーレンズシート1に対して算出したコッキング調整量hpをそのまま用いることはできない。この場合、次のようにして2ロット目のレンチキュラーレンズシート1に対するコッキング調整量hpを求める。
図20に示すように、作業者が、1ロット目のレンチキュラーレンズシート1の下端縁1bを、載置台20のストッパ21、22に突き当てる。作業者が、その1ロット目のレンチキュラーレンズシート1の上に、2ロット目のレンチキュラーレンズシート1を載置して重ねる。作業者が、1ロット目のレンチキュラーレンズシート1を動かすことなく、2ロット目のレンチキュラーレンズシート1における下端縁1bの左端側を載置台20のストッパ21に接触させたまま、2ロット目のレンチキュラーレンズシート1における下端縁1bの右端をストッパ22から離れるように、2ロット目のレンチキュラーレンズシート1を回転させていく。すると、ある角度で、2ロット目のレンチキュラーレンズシート1における複数の溝目線2が、1ロット目のレンチキュラーレンズシート1における複数の溝目線2と全て一致する。
作業者は、ストッパ22の先端から2ロット目のレンチキュラーレンズシート1における下端縁1bまでの距離(隙間量)hsを、載置台20に設けられた目盛23(図8)によって読み取り、入力部202を介して制御装置201に入力する。これにより、渡し胴114による2ロット目のレンチキュラーレンズシート1のコッキング調整量hpを得ることができる。
こうして得られる2ロット目のレンチキュラーレンズシート1のコッキング調整量hpは、1ロット目のレンチキュラーレンズシート1のコッキング調整量hpに対する差分である。刷版10aの絵柄13の境界線14とレンチキュラーレンズシート1の溝目線2との関係から求めたコッキング調整量hpを仮に「絶対的なコッキング調整量hp」と呼ぶなら、上記差分とは、1ロット目のレンチキュラーレンズシート1の絶対的なコッキング調整量hpと、2ロット目のレンチキュラーレンズシート1の絶対的なコッキング調整量との差分ということになる。この差分の値を2ロット目のレンチキュラーレンズシート1に対するコッキング調整量として用いる。
2ロット目のレンチキュラーレンズシート1のコッキング調整量hpも、4色刷枚葉輪転印刷機100の印刷動作を開始する前に予め計算しておけばよい。そうすることにより、1ロット目のレンチキュラーレンズシート1の印刷が終了した後、次の2ロット目のレンチキュラーレンズシート1の印刷を開始するまでの印刷機停止時間を極力短縮化することができる。
1ロット目のレンチキュラーレンズシート1に対する印刷が終了すると、作業者は、渡胴コッキング手動調整装置213におけるダイヤル337aを確認しながら、予め求めておいた2ロット目のコッキング調整量hp(1ロット目のコッキング調整量hpとの差分)に基づいてハンドル337を操作する。これにより、2ロット目のレンチキュラーレンズシート1に合わせて渡し胴114がひねり調整(コッキング調整)されるので、渡し胴114を介して搬送される2ロット目のレンチキュラーレンズシート1の搬送角度についてもひねり調整されることになる。
<治具版>
第1の実施の形態では、1色目の刷版10aを用いてコッキング調整量hpを求める場合について説明した。各色の刷版10a〜10dは絵柄13が異なる以外、基本的に同じ構成をしている。絵柄部分A1、B1、…、間の境界線14の傾きも、刷版10a〜10dで同一である。したがって、1色目の刷版10aの代わりに、2〜4色目の刷版10b〜10dを用いてコッキング調整量hpを求めてもよい。
また、実際に印刷に使われる刷版10a〜10dの代わりに、図21に示すような治具版10jを用いてコッキング調整量hpを求めることもできる。治具版10jとは、版胴110a〜110dに取り付けられずに、調整作業に用いられる治具としての刷版である。治具版10jは、絵柄13が異なる以外、各色の刷版10a〜10dと基本的に同じ構成をしている。絵柄部分A1、B1、…、間の境界線14の傾きも、刷版10a〜10dと同一である。
治具版10jを用いて1ロット目のレンチキュラーレンズシート1に対するコッキング調整量hpを求める方法は、上述した刷版10aを用いた方法と同じである。治具版10jを用いて2ロット目のレンチキュラーレンズシート1に対するコッキング調整量hpを求める方法について説明する。
作業者は、制御コンソール200の載置台20の上面に治具版10jを載せ、ストッパ21、22に切欠部11、12を嵌め合わせることにより治具版10jを位置決めする。この治具版10jの上に2ロット目のレンチキュラーレンズシート1を載せ、レンチキュラーレンズシート1の下端縁1bをストッパ21、22に突き当てる。そして、レンチキュラーレンズシート1の下端縁1bの左端側をストッパ21に接触させたまま、レンチキュラーレンズシート1を回転させていき、レンチキュラーレンズシート1の複数の溝目線2を治具版10jの絵柄13の複数の境界線14と一致させる。作業者は、治具版10jに設けられた目盛17を参照して、ストッパ22の先端からレンチキュラーレンズシート1の下端縁1bまでの距離(隙間量)hsを読み取り、この距離hsを入力部202から制御装置201へ入力する。
制御装置201の調整量算出部231は、入力された距離hsに基づいて、2ロット目のレンチキュラーレンズシート1のコッキング調整量hpを算出する。これは上述した絶対的なコッキング調整量hpに相当する。このため、調整量算出部231は、2ロット目のレンチキュラーレンズシート1のコッキング調整量hpと、1ロット目のレンチキュラーレンズシート1のコッキング調整量hpとの差分を算出する。制御装置201は、この差分を2ロット目のレンチキュラーレンズシート1のコッキング調整量hpとして、モニタ211に表示する。
ここで用いられる1ロット目のレンチキュラーレンズシート1のコッキング調整量hpは、刷版10aを用いて求められた値でも、治具版10jを用いて求められた値でも、どちらでもよい。刷版10aおよび治具版10jの何れを用いても、同じ値のコッキング調整量hpが求められるからである。また、1ロット目のレンチキュラーレンズシート1のコッキング調整量hpとして、調整量算出部231が算出した際に記憶しておいた値を用いてもよいし、2ロット目のレンチキュラーレンズシート1のコッキング調整量hpを算出するに当たって作業者によって入力された値を用いてもよい。
作業者は、1ロット目のレンチキュラーレンズシート1に対する印刷動作が終了した後、1ロット目のコッキング調整量hpに基づいて渡し胴114がひねり調整(コッキング調整)されている状態から、渡胴コッキング手動調整装置213におけるダイヤル337aを確認しながら、モニタ211に表示された差分にしたがってハンドル337を操作する。こうして、2ロット目のレンチキュラーレンズシート1に対する渡し胴114の渡胴コッキング調整ステップS6が行われる。
このように、作業者は、1ロット目から2ロット目にレンチキュラーレンズシート1を切り替える際、1ロット目のレンチキュラーレンズシート1向けに調整されている状態から1ロット目のコッキング調整量hpに対する差分だけレンチキュラーレンズシート1をひねり調整すればよい。このため、ロット切り替え時の機械停止時間を最小限に留めることができるだけでなく、印刷機の運転速度やロット間における溝目線2の相対的な変化量によっては機械を停止させることなくロット切り替えを行うことができる。
治具版10jを用いることにより、1ロット目のレンチキュラーレンズシート1に対する印刷中に、2ロット目のレンチキュラーレンズシート1のコッキング調整量hpを求めておくことが可能となる。
<第1の実施の形態に対応した他の実施の形態1>
上述した第1の実施の形態では、載置台20のストッパ22とレンチキュラーレンズシート1との間の距離hsを作業者が目視で計測する。この距離計測を機械的に行うことも可能である。この場合、図22に示すような制御コンソール200aを用いる。制御コンソール200aは、ストッパ22とレンチキュラーレンズシート1との位置関係を光学的に検知する距離計測手段および距離検出手段としての検知部203を備えている。検知部203としては、カメラまたは光電センサ等が用いられる。検知部203は制御装置201aに接続されている。
図23に示すように、制御装置201aは、上述した調整量算出部231に加えて、距離算出部232を含んでいる。距離算出部232は、検知部203の出力に基づいて、ストッパ22とレンチキュラーレンズシート1との間の距離hsを算出する。検知部203と距離算出部232とにより、ストッパ22からレンチキュラーレンズシート1の端縁1bまでの距離hsを検出する距離計測手段としての距離検出部204が構成される。なお、図22および図23では、図9および図10と対応する部分に同一符号を付している。その対応部分についての説明は省略する。
この場合も、渡胴コッキング手動調整動作における刷版位置決めステップS1、レンチキュラーレンズシート位置合わせステップS2が行われる。そして、図15(B)に示したように、刷版10aの絵柄13に対してレンチキュラーレンズシート1を位置合わせした状態で、検知部203によりストッパ22とレンチキュラーレンズシート1との位置関係を検知し、その検知結果を制御装置201aへ出力する。
検知部203がカメラの場合、図16に示されたような刷版10aの絵柄13に重ね合わされたレンチキュラーレンズシート1の下端縁1bがストッパ22から離れた状態の画像を検知部203で撮影し、その画像を検知結果として制御装置201aへ出力する。制御装置201aの距離算出部232は、検知部203からの画像を解析することにより、ストッパ22とレンチキュラーレンズシート1の下端縁1bとの距離(隙間量)hsを算出する。このようにして距離hsの距離計測ステップS3が行われる。
検知部203が光電センサの場合、ストッパ22から離れた位置にあるレンチキュラーレンズシート1の下端縁1bの位置を投受光器の反射光量の変化によって検知し、その検知結果を制御装置201aへ出力する。制御装置201aの距離算出部232は、検知部203からの検知結果と、予め登録されているストッパ22の位置とに基づいて、ストッパ22とレンチキュラーレンズシート1の下端縁1bとの距離hsを算出する。このようにして距離hsの距離検出ステップS3が行われる。
<第1の実施の形態に対応した他の実施の形態2>
第1の実施の形態では、作業者が、制御コンソール200の渡胴コッキング手動調整装置213を用いて、渡胴コッキング調整を手動で行う。この渡胴コッキング調整を自動で行うことも可能である。この場合、渡胴コッキング手動調整装置213の代わりに、図24に示す渡胴コッキング自動調整装置(コッキング調整部)214が用いられる。なお、図24では図6と対応する部分に同一符号を付している。
渡胴コッキング自動調整装置214は、図6に示した渡胴コッキング手動調整装置213にモータ345を追加したものである。モータ345は、ロッド342に接続され、このロッド342を介して偏心軸受336を所定の角度だけ回動させるアクチュエータである。渡胴コッキング自動調整装置214には、偏心軸受336を回動させるモータ345に指示を与えるスイッチ等が設けられており、そのスイッチが渡胴コッキング自動調整装置214を操作するための操作部として用いられる。渡胴コッキング自動調整装置214のその他の構成は、渡胴コッキング手動調整装置213の構成と同じである。モータ345、ロッド342および偏心軸受336により渡胴コッキング自動調整装置214が構成される。この渡胴コッキング自動調整装置214は、刷版10aに対するレンチキュラーレンズシート1の角度を調整するシートひねり装置(コッキング調整部)としても機能する。
図25に示すように、制御コンソール200bは、制御装置201b、入力部202、上述した検知部203、モニタ211、版胴見当調整装置140および渡胴コッキング自動調整装置214を備えている。制御装置201bには、入力部202、検知部203、モニタ211、版胴見当調整装置140および渡胴コッキング自動調整装置214が接続されている。
図26に示すように、制御装置201bは、上述した調整量算出部231および距離算出部232に加えて、制御部233を含んでいる。制御部233は、調整量算出部231により算出されたコッキング調整量hpに基づいて、渡胴コッキング自動調整装置214のモータ345を制御することにより、シートひねり装置を制御する。
渡胴コッキング自動調整動作でも、上述した渡胴コッキング手動調整動作と同様に、刷版位置決めステップS1、レンチキュラーレンズシート位置合わせステップS2が行われる。そして、検知部203および距離算出部232により、載置台20のストッパ22とレンチキュラーレンズシート1の下端縁1bとの距離(隙間量)hsを算出する距離計測ステップS3が行われる。
調整量算出部231は、予め登録されている既知の寸法Ls、Lpと、距離算出部232から出力された距離hsとから、コッキング調整量hpを算出する。このようにしてコッキング調整量hpの算出ステップS4が行われる。コッキング調整量hpは制御部233に出力される。このとき、コッキング調整量hpをモニタ211に表示することもできる(表示ステップS5)。
制御部233は、渡胴コッキング自動調整装置214のモータ345を、コッキング調整量hpに応じて駆動する。これにより、ロッド342が進退し、ロッド342の先端部に枢着された偏心軸受336がコッキング調整量hpに対応した角度だけ回動する。その結果、渡し胴114は偏心軸受336の回動に応じてひねり調整(コッキング調整)される。このようにして、渡胴コッキング自動調整装置214に対する制御装置201bの制御ステップが行われる。
<第2の実施の形態>
次に、本発明の第2の実施の形態について説明する。第2の実施の形態における4色刷枚葉輪転印刷機100の全体構成は第1の実施の形態と同一である。したがって、適宜説明を省略し、第1の実施の形態と異なる部分を中心に説明する。
第2の実施の形態における4色刷枚葉輪転印刷機100は、第1の実施の形態における渡し胴114の渡胴コッキング手動調整装置213を用いることなく、版胴見当調整装置140のひねり方向の見当を手動で調整する手動ひねり調整機構(後述する)を版胴コッキング調整装置(コッキング調整部)として用いることによりコッキング調整動作を行うものである。すなわち、第2の実施の形態では、版胴見当調整装置140が版胴コッキング調整装置を兼用する。
<版胴の構成>
第2の実施の形態における版胴110aの構成は、図2および図3に示した版胴110aの構成と同じである。しかし、版胴110aに設けられた版胴見当調整装置140には、上述した天地方向調整機構および左右方向調整機構に加えて、版胴110aのひねり方向の見当を調整する手動ひねり調整機構(版胴コッキング調整装置)が設けられている。その手動ひねり調整機構について説明する。
図27には、図3および図5と対応する部分に同一符号を付している。図27に示すように、操作側のブラケット168の上端部に、側面視U字状に形成された軸受181が固定されている。軸受181により回転軸184が軸支され、回転軸184の先端に回転軸184を回転操作するための操作部としてのハンドル187が取り付けられている。回転軸184のねじ部には、ラック185がガイド軸185aによりその回動が規制された状態で螺合している。
ラック185には扇形状のセグメントギア186が噛合されており、セグメントギア186が内メタル167の外周部に固定されている。内メタル167の軸受部167bの孔には、版胴110aの端軸110Lbが回転自在に軸支されている。なお、ハンドル187、回転軸184、軸受181、ラック185、セグメントギア186および内メタル167によって、版胴110aのひねり方向の見当を手動で調整する手動ひねり調整機構(版胴コッキング調整装置)が構成される。
<渡し胴の構成>
第2の実施の形態における渡し胴114は、渡し胴114を用いたシートひねり装置としての渡胴コッキング手動調整装置213(図6、図7)を備えていない点を除いて、第1の実施の形態における渡し胴114と同一である。
<制御コンソールの構成>
図28には、図9と対応する部分に同一符号を付している。図28に示すように、制御コンソール200の載置台20は、マイクロコンピュータ構成の制御装置201を内蔵している。第1の実施の形態と同様に、制御装置201には、キーボード等からなる入力部202、表示部としてのモニタ211、および、天地方向調整機構、左右方向調整機構および手動ひねり調整機構(版胴コッキング調整装置)として用いられる版胴見当調整装置140が接続されている。
上述したとおり、版胴見当調整装置140は、天地方向調整機構、左右方向調整機構および手動ひねり調整機構(版胴コッキング調整装置)として用いられる。しかし、制御装置201は、版胴見当調整装置140を天地方向調整機構および左右方向調整機構として機能させるために制御するだけであり、版胴見当調整装置140を手動ひねり調整機構として機能させるために直接的に制御することはしない。手動ひねり調整機構としての機能は、モニタ211に表示されたコッキング調整量hpを認識した作業者が版胴見当調整装置140を手動で操作することによって実現される。
図29に示すように、第1の実施の形態における他の実施の形態1と同様に、カメラまたは光電センサ等からなる検知部203を備えた制御コンソール200aを用いることも可能である。
<版胴に装着される刷版およびレンチキュラーレンズシートの構成>
版胴110a〜110dに装着される刷版10a〜10d、および、刷版10a〜10dの絵柄13が転写されるレンチキュラーレンズシート1は、第1の実施の形態と同一である。
<版胴見当調整動作>
版胴110aに装着されている刷版10aの絵柄13とレンチキュラーレンズシート1との間で天地方向および左右方向の見当ずれが生じている場合の版胴見当調整装置140による版胴110a〜110dに対する天地方向および左右方向の見当調整動作は、第1の実施の形態と同様である。よって、天地方向および左右方向の見当調整動作の説明を省略する。
<版胴コッキング手動調整動作>
版胴見当調整装置140による版胴110a〜110dに対する天地方向および左右方向の見当調整動作が行われた後、版胴コッキング調整装置(ハンドル187、回転軸184、軸受181、ラック185、セグメントギア186および内メタル167)を用いて、版胴110a〜110dのひねり方向の見当を手動で調整する際の版胴コッキング手動調整動作について説明する。
制御装置201は、作業者により入力部202から入力されたストッパ22とレンチキュラーレンズシート1の下端縁1bとの距離(隙間量)hsに基づいて、第1の実施の形態と同様にコッキング調整量hpを算出する(算出ステップS4)。制御装置201は、そのコッキング調整量hpをモニタ211に表示する(表示ステップS5)。
作業者は、モニタ211のコッキング調整量hpを確認し、そのコッキング調整量hpにしたがって、版胴見当調整装置140(図3および図27)の手動ひねり調整機構(版胴コッキング調整装置)におけるハンドル187を操作する。このハンドル187の操作に応じて回転軸184が回転し、回転軸184を回転させたときのねじ作用によりラック185が移動する。これにより、セグメントギア186が回動し、セグメントギア186と一体の内メタル167が回動する。
内メタル167の外周円軸心と版胴110aの軸心とは偏心量t3だけ偏心している。この偏心量t3の偏心作用によって、コッキング調整量hpの分だけ、版胴110aの軸方向の向きがひねり調整(版胴コッキング調整)され、版胴110a自体がコッキング調整量hpの分だけ傾斜する。その結果、図30に示すように、版胴110aに装着された刷版10aもコッキング調整量hpの分だけ全体的に傾斜することになる。
同様に、版胴110b〜110dに対しても、版胴見当調整装置140の手動ひねり調整機構(版胴コッキング調整装置)によって、版胴110b〜110d自体をコッキング調整量hpの分だけ傾斜させる。
このように、版胴見当調整装置140による天地方向調整機構、左右方向調整機構、および手動ひねり調整機構(版胴コッキング調整装置)により、版胴110a〜110dに対する天地方向、左右方向の見当調整動作およびひねり調整動作が予め行われる。これにより、版胴110a〜110dと対接したゴム胴111a〜111dおよび圧胴112a〜112dの間をレンチキュラーレンズシート1が通過する際、ゴム胴111a〜111dを介して転写されるべき刷版10a〜10dの絵柄13の複数の境界線14と、レンチキュラーレンズシート1の複数の溝目線2とが相対的に一致した位置関係となるように予め調整される。
したがって、コッキング調整量hpの分だけ傾斜した版胴110a〜110dに装着される刷版10a〜10dの絵柄13の組合せ絵柄部分(A1+B1、A2+B2、…、)を、渡し胴114により搬送されるレンチキュラーレンズシート1の溝目線2間の絵柄転写領域に対して正確に転写することが可能となる。
版胴見当調整装置140において天地方向、左右方向およびひねり方向の見当調整が行われたので、4色刷枚葉輪転印刷機100では印刷ユニット102a〜102dを介してレンチキュラーレンズシート1に対して試し刷りを行う。その結果、印刷ユニット102a〜102dによりレンチキュラーレンズシート1に対して印刷された各色毎の見当マーク15、16にずれ量が存在する場合には、そのずれ量に基づいて版胴110a〜110dに対する天地方向、左右方向またはひねり方向の微調整を行えばよい。
<4色刷枚葉輪転印刷機の印刷動作>
4色刷枚葉輪転印刷機100において、シート供給装置101のサッカー装置101bにより保持されたレンチキュラーレンズシート1は、フィーダボードFBに載せられて搬送される。そして、フィーダボードFBの先端部分に設けられた前当て101cに対してレンチキュラーレンズシート1の一方の端部(くわえ側端部)が当接し、天地方向が揃えられた状態で、レンチキュラーレンズシート1はスイング装置のスイング爪から渡し胴114のくわえ爪装置にくわえ替えされる。
渡し胴114のくわえ爪装置に保持されたレンチキュラーレンズシート1は、圧胴112aのくわえ爪装置にくわえ替えされる。第2の実施の形態では、渡し胴114は渡胴コッキング調整されていないので、レンチキュラーレンズシート1の搬送角度がひねり調整されることのないまま、レンチキュラーレンズシート1は圧胴112aのくわえ爪装置に保持されて搬送される。このとき、レンチキュラーレンズシート1は裏面を外側に向けた状態で搬送される。
圧胴112aのくわえ爪装置に保持されたレンチキュラーレンズシート1は、圧胴112aの回転とともに搬送され、圧胴112aとゴム胴111aとの間を通過する。このとき、版胴110aに装着された1色目の刷版10aの絵柄13が、ゴム胴111aを介してレンチキュラーレンズシート1の裏面に転写される。
版胴見当調整装置140における天地方向調整機構、左右方向調整機構およびひねり調整機構(版胴コッキング調整装置)により、版胴110aの天地方向、左右方向の見当調整動作と、コッキング調整量hpに応じたコッキング調整動作とが予め行われている。このため、1色目の刷版10aの絵柄13の境界線14と、レンチキュラーレンズシート1の溝目線2とが一致した状態で正確に転写される。
刷版10aの絵柄13が転写されたレンチキュラーレンズシート1は、圧胴112aのくわえ爪装置から渡し胴115のくわえ爪装置にくわえ替えされ、その後、渡し胴115から印刷ユニット102bの圧胴112bへ搬送される。
版胴110b〜110dの天地方向、左右方向の見当調整動作およびコッキング調整動作も、版胴見当調整装置140の天地方向調整機構、左右方向調整機構およびひねり調整機構(版胴コッキング調整装置)により予め行われている。したがって、印刷ユニット102b、102c、102dにおいても、2色目、3色目、4色目の刷版10b、10c、10dの絵柄13がゴム胴111b、111c、111dを介してレンチキュラーレンズシート1の裏面に正確に転写される。
4色の絵柄13が転写されたレンチキュラーレンズシート1は、渡し胴118を介してシート排出装置103へ搬送され、排出チェーンの爪竿を介して排出用の積載板103aの上に積み重ねられる。
なお、2ロット目のレンチキュラーレンズシート1に対するコッキング調整量hpの算出や印刷処理等については第1の実施の形態と同様であるため、ここでは説明を省略する。
<第2の実施の形態に対応した他の実施の形態>
第2の実施の形態では、作業者が、手動で版胴コッキング調整動作を行う。この版胴コッキング調整動作を自動で行うことも可能である。この場合、図3および図5に示したような、版胴見当調整用のアクチュエータとしてのひねり調整用モータ183を備えた版胴見当調整装置140が用いられる。
操作側のブラケット168の上端部には、U字状に形成された軸受181が固定されている。この軸受181およびフレーム側の軸受182により回転軸184が軸支され、この回転軸184に上述したひねり調整用モータ183が接続されている。回転軸184のねじ部には、ラック185がガイド軸185aによりその回動が規制された状態で螺合している。それ以外の構成は、第2の実施の形態と同じである。なお、ひねり調整用モータ183、回動軸184、軸受181、ラック185、セグメントギア186および内メタル167によって、版胴110aのひねり方向の見当を自動的に調整する自動ひねり調整機構(版胴コッキング調整装置、コッキング調整部)が構成される。
図31に示すように、制御コンソール200bの基本的な構成は、図29に示した制御コンソール200aと同じである。ただし、制御コンソール200bの制御装置201bは、版胴見当調整装置140の天地方向調整機構および左右方向調整機構に加えて、自動ひねり調整機構も直接的に制御する。このため、制御装置201bは、図26に示した制御装置201bと同様に、調整量算出部231および距離算出部232に加えて、制御部233を含んでいる。制御部233は、調整量算出部231により算出されたコッキング調整量hpに基づいて、ひねり調整用モータ183を制御することにより、自動ひねり調整機構を制御する。
版胴見当調整装置140における自動ひねり調整機構を用いて、版胴110aのひねり方向の見当を自動的に調整する際の版胴コッキング自動調整動作について説明する。
版胴コッキング自動調整動作でも、上述した版胴コッキング手動調整動作と同様に、刷版位置決めステップS1(図19)、レンチキュラーレンズシート位置合わせステップS2(図19)が行われる。そして、検知部203および距離算出部232により、載置台20のストッパ22とレンチキュラーレンズシート1の下端縁1bとの距離(隙間量)hsを算出する距離計測ステップS3(図19)が行われる。調整量算出部231は、予め登録されている既知の寸法Ls、Lpと、距離算出部232から出力された距離hsとから、コッキング調整量hpを算出する(算出ステップS4)。モニタ211はコッキング調整量hpを表示する(表示ステップS5)。
制御部233は、版胴見当調整装置140の自動ひねり調整機構におけるひねり調整用モータ183を、コッキング調整量hpに応じて駆動する。これにより、回転軸184が回転し、回転軸184が回転したときのねじ作用によりラック185を移動する。セグメントギア186が回動し、セグメントギア186と一体の内メタル167が回動する。偏心量t3の偏心作用によって、コッキング調整量hpの分だけ、版胴110aの軸方向の向きがひねり調整(版胴コッキング調整)され、版胴110a自体がコッキング調整量hpの分だけ傾斜する。その結果、図30に示したように、版胴110aに装着された刷版10aもコッキング調整量hpの分だけ全体的に傾斜することになる。
これにより、版胴110aと対接したゴム胴111aおよび圧胴112aの間をレンチキュラーレンズシート1が通過する際、ゴム胴111aを介して転写されるべき刷版10aの絵柄13の複数の境界線14と、レンチキュラーレンズシート1の複数の溝目線2とが相対的に一致した位置関係となる。したがって、印刷ユニット102aでは、コッキング調整量hpの分だけ傾斜した版胴110aに装着されている刷版10aの絵柄13の組合せ絵柄部分(A1+B1、A2+B2、…、)を、渡し胴114により搬送されるレンチキュラーレンズシート1の溝目線2間の絵柄転写領域に対して、正確に転写することができる。
<第3の実施の形態>
次に、本発明の第3の実施の形態について説明する。第3の実施の形態における4色刷枚葉輪転印刷機100の全体構成も第1の実施の形態と同一である。したがって、適宜説明を省略し、第1の実施の形態と異なる部分を中心に説明する。
第3の実施の形態における4色刷枚葉輪転印刷機100は、第1の実施の形態における渡胴コッキング手動調整装置213や、第2の実施の形態における版胴見当調整装置140の手動ひねり調整機構(版胴コッキング調整装置)の代わりに、フィーダボードFBの前当て101cによってレンチキュラーレンズシート1を直接傾斜させるシートひねり装置(コッキング調整部)を用いるものである。
<前当ての構成>
図32および図33に示すように、レンチキュラーレンズシート1は、フィーダボードFBの差し板401上を、矢印A方向に示すシート搬送方向へ搬送される。差し板401の先端部には、前当て101cが配設されている。前当て101cは、フィーダボードFBの差し板401よりも僅かに大きな幅を有している。前当て101cは、差し板401の先端部の上端から突出した状態で、シート搬送方向と垂直な差し板401の幅方向と平行に配置されている。前当て101cには、差し板401の幅方向に対する角度を調整することにより、前当て101cに当接するレンチキュラーレンズシート1の向きを調整するシートひねり装置としての前当てコッキング調整装置(コッキング調整部)215が設けられている。
前当てコッキング調整装置215では、差し板401の下方に設けられた軸402にホルダ403が軸着されている。ホルダ403にはプレート405がボルト406により固定されている。プレート405の端部には、前当て101cが止ねじ407によって上下方向へ調整自在に取り付けられている。前当て101cは、調節ねじ404によりシート搬送方向またはその逆方向へ移動自在に調節可能である。
図34に示すように、原動側フレーム141および操作側フレーム165には、外周面の軸芯Fと内周面の軸芯F1とにより偏心量t5のように偏心させた偏心軸受412が回動自在に軸支されている。偏心軸受412は、原動側フレーム141および操作側フレーム165に対してボルト413により止着された軸受押さえ414によって軸方向への移動が規制されている。偏心軸受412の内周側端部に形成されたU字部には、図示しない操作部に他端を連結されたロッド415がピン416によって枢着されている。
各偏心軸受412には球面軸受417が嵌着されている。球面軸受417は、軸受押え418により外部への抜けが阻止されている。球面軸受417は、球状内周面を有する外輪417aと、外輪417aの球状内周面と嵌合する球体417bとからなる。球体417bの内周面には、軸402の軸端小径部が複数個のニードル420により回動自在に軸支されている。
軸402の一方の軸端小径部には、軸402の中央大径部の一方の側壁と球面軸受417との間にスラストベアリング421が嵌装されている。軸402の他方の軸端小径部には、スラストベアリング422が球面軸受417に隣接して嵌装されている。また、軸402の他方の軸端小径部には、軸402の中央大径部の他方の側壁とスラストベアリング422との間に、軸402をスラストベアリング421側へ付勢する圧縮コイルばね423が装着されている。
原動側フレーム141および操作側フレーム165の間に位置する軸402の中央大径部には、前当て101cがホルダ403(図34中には図示されず)を介して軸着されている。また、軸402の片側軸端部にはレバー424が軸着されている。レバー424と球面軸受417との間には、スラストベアリング425が介在している。レバー424にピン424aを介して枢着されたカムフォロワ426は、操作側フレーム165に支持されて本機と同期回転するカム427に対接されている。このカム427の回転によりカムフォロワ426を介して軸402が往復回動し、前当て101cの揺動動作が行われる。
前当て101cは、図32に示すように、軸402の反時計回り方向への回転に応じて、前当て101cが実線位置から一点鎖線位置で示す退避位置へ移動し、軸402の時計回り方向への回転に応じて一点鎖線位置から実線位置で示す見当調整位置へ移動するように、揺動自在に軸402に支持されている。
<制御コンソールの構成>
図35には、図9と対応する部分に同一符号を付している。図35に示すように、制御コンソール200の載置台20は、マイクロコンピュータ構成の制御装置201を内蔵している。第1の実施の形態と同様に、制御装置201には、キーボード等からなる入力部202、表示部としてのモニタ211、および、天地方向および左右方向の見当調整を行う版胴見当調整装置140が接続されている。ただし、制御装置201には、前当てコッキング調整装置215は接続されていない。
図36に示すように、第1の実施の形態に対応した他の実施の形態1と同様に、カメラまたは光電センサ等からなる検知部203を備えた制御コンソール200aを用いることも可能である。
<版胴見当調整動作>
版胴110aに装着されている刷版10aの絵柄13とレンチキュラーレンズシート1との間で天地方向および左右方向の見当ずれが生じている場合の版胴見当調整装置140による版胴110a〜110dに対する天地方向および左右方向の見当調整動作は、第1の実施の形態と同様である。よって、天地方向および左右方向の見当調整動作の説明を省略する。
<前当てコッキング手動調整動作>
前当てコッキング調整装置215を用いて手動で前当てコッキング調整を行う際の前当てコッキング手動調整動作について説明する。
図35に示すように、制御コンソール200の制御装置201は、作業者により入力部202から入力されたストッパ22とレンチキュラーレンズシート1の下端縁1bとの距離(隙間量)hsに基づいて、第1の実施の形態と同様にコッキング調整量hpを算出する(算出ステップS4)。制御装置201は、そのコッキング調整量hpをモニタ211に表示する(表示ステップS5)。
または、図36に示すように、制御コンソール200aの制御装置201は、検知部203からの検出結果に基づいて、第1の実施の形態に対応した他の実施の形態1と同様に距離hsを求める(計測ステップS3)。制御装置201は、その距離hsに基づいてコッキング調整量hpを算出し(算出ステップS4)、そのコッキング調整量hpをモニタ211に表示する(表示ステップS5)。
作業者は、モニタ211に表示されたコッキング調整量hpを認識し、そのコッキング調整量hpにしたがって前当てコッキング調整装置215の操作部(図示せず)を操作し、片方のロッド415を所定方向(図34の紙面に対して垂直な方向)へ所定量だけ進退させる。これにより、偏心軸受412が回動し、偏心作用によって軸402が傾斜する。なお、片方のロッド415だけを進退させるのではなく、両方のロッド415を互いに逆方向へ進退させるようにしてもよい。
したがって、原動側フレーム141と直交する軸402の一端が他端よりもシート搬送方向またはその逆方向へ移動して、軸402が軸方向に対して傾斜する。この軸402の傾斜に伴って、軸402の中央大径部に軸着されたホルダ403に固定されている前当て101cがコッキング調整量hpの分だけ傾斜する。すなわち、図33に示すように、前当て101cが実線位置から一点鎖線位置へ傾斜する。もしくは、前当て101cが、この一点鎖線位置の上下が逆方向へ傾斜した状態となる。
フィーダボードFBの差し板401上を搬送されたレンチキュラーレンズシート1の一方の端部(くわえ側端部)は、コッキング調整量hpの分だけ傾斜した前当て101cに当接される。これにより、前当て101cの傾斜状態に合わせて、レンチキュラーレンズシート1も傾斜する。
このように版胴見当調整装置140による天地方向調整機構および左右方向調整機構と、前当てコッキング調整装置215とにより、版胴110aに対する天地方向および左右方向の見当調整動作と、前当て101cの傾斜調整動作とが予め行われる。これにより、前当て101cおよび渡し胴114を介して、版胴110aと対接したゴム胴111aおよび圧胴112aの間をレンチキュラーレンズシート1が通過する際、ゴム胴111aを介して転写されるべき刷版10aの絵柄13の複数の境界線14と、レンチキュラーレンズシート1の複数の溝目線2とが相対的に一致した位置関係となるように設定される。
このようにして、印刷ユニット102aでは、版胴110aに装着された刷版10aの絵柄13の組合せ絵柄部分(A1+B1、A2+B2、…、)を、フィーダボードFBの前当て101cおよび渡し胴114を介して搬送されてくるレンチキュラーレンズシート1の溝目線2間の絵柄転写領域に対して正確に転写することが可能な状態に設定される。
<4色刷枚葉輪転印刷機の印刷動作>
4色刷枚葉輪転印刷機100において、シート供給装置101のサッカー装置により保持されたレンチキュラーレンズシート1は、フィーダボードFBの差し板401に載せられて搬送され、レンチキュラーレンズシート1の一方の端部(くわえ側端部)がフィーダボードFBの先端部分に設けられた前当て101cに当接する。
前当て101cは、前当てコッキング調整装置215により予めコッキング調整量hpの分だけ傾斜させられている。この前当て101cの傾斜角度に合わせてレンチキュラーレンズシート1の天地方向の向きが傾斜し、その状態でレンチキュラーレンズシート1のくわえ側端部が後段のスイング装置のスイング爪によってくわえられる。
このとき、制御装置201がアクチュエータを介して軸402を図32中反時計回り方向へ回転させる。これにより、軸402の回転とともに前当て101cが実線で示される見当調整位置から一点鎖線で示される退避位置へ移動し、レンチキュラーレンズシート1がフィーダボードFBの差し板401からスイング装置を介して渡し胴114のくわえ爪装置にくわえ替えされる。
スイング装置のスイング爪によるレンチキュラーレンズシート1の渡し胴114への搬送中に、軸402が時計回り方向へ回転する。これにより、前当て101cが元の見当調整位置に復帰し、次のレンチキュラーレンズシート1の向きを傾斜させるために待ち受ける。
渡し胴114のくわえ爪装置に保持されたレンチキュラーレンズシート1は、圧胴112aのくわえ爪装置にくわえ替えされ、圧胴112aの回転とともに搬送され、圧胴112aとゴム胴111aとの間を通過する。このとき、予め天地方向および左右方向の見当調整が行われた版胴110aに装着されている1色目の刷版10aの絵柄13が、ゴム胴111aを介してレンチキュラーレンズシート1の裏面に転写される。
上述のとおり、溝目線2が傾斜したレンチキュラーレンズシート1(図18(B))は、フィーダボードFBの前当て101cによりコッキング調整量hpの分だけ傾斜した状態で渡し胴114経由により搬送され、版胴110aと対接したゴム胴111aおよび圧胴112aの間を通過する。その結果、ゴム胴111aを介して転写されるべき刷版10の絵柄13の複数の境界線14(図18(A))と、レンチキュラーレンズシート1の複数の溝目線2(図18(B))とが相対的に一致した位置関係となる(図18(C))。
版胴見当調整装置140における天地方向調整機構および左右方向調整機構による版胴110aの天地方向および左右方向の見当調整動作と、前当て101cによるコッキング調整量hpの分のコッキング調整動作とが予め行われているので、1色目の刷版10aの絵柄13の境界線14と、レンチキュラーレンズシート1の溝目線2とが一致した状態で正確に転写される。
こうして、版胴110aに装着された刷版10aの絵柄13の組合せ絵柄部分(A1+B1、A2+B2、…、)が、コッキング調整量hpの分だけ傾斜した状態で搬送されるレンチキュラーレンズシート1の溝目線2間の絵柄転写領域に対して、ズレなく正確に転写される。
刷版10aの絵柄13が転写されたレンチキュラーレンズシート1は、圧胴112aのくわえ爪装置から渡し胴115のくわえ爪装置にくわえ替えされ、渡し胴115から印刷ユニット102bの圧胴112bへ搬送される。
以下、同様にして、印刷ユニット102b、102c、102dにおいても、2色目、3色目、4色目の刷版10b、10c、10dの絵柄13がゴム胴111b、111c、111dを介してレンチキュラーレンズシート1の裏面に正確に転写される。その後、そのレンチキュラーレンズシート1が渡し胴118を介してシート排出装置103へ搬送され、排出チェーンの爪竿を介して排出用の積載板103aの上に積み重ねられる。
<第3の実施の形態に対応した他の実施の形態>
第3の実施の形態では、作業者が前当てコッキング調整装置215を用いて手動で前当て101cのコッキング調整動作を行う。この前当て101cのコッキング調整動作を自動で行うことも可能である。
この場合、図37における前当てコッキング調整装置(コッキング調整部)216が用いられる。前当てコッキング調整装置216は、図34に示した前当てコッキング調整装置215にモータ216aを設けたものである。モータ216aは、偏心軸受412のロッド415に接続されている。制御装置201bが前当てコッキング調整装置216を直接的に制御する。その他の構成は第3の実施の形態と同じである。なお、図37では図36との対応部分に同一符号を付している。
前当てコッキング調整装置216を用いて、前当て101cの向きを自動的に調整する際の前当てコッキング自動調整動作について説明する。
この場合も、上述した刷版位置決めステップS1(図19)、レンチキュラーレンズシート位置合わせステップS2(図19)が行われる。そして、検知部203および距離算出部232により、載置台20のストッパ22とレンチキュラーレンズシート1の下端縁1bとの距離(隙間量)hsを算出する距離計測ステップS3(図19)が行われる。調整量算出部231は、予め登録されている既知の寸法Ls、Lpと、距離算出部232から出力された距離hsとから、コッキング調整量hpを算出する(算出ステップS4)。モニタ211はコッキング調整量hpを表示する(表示ステップS5)。
制御装置201bの制御部233は、前当てコッキング調整装置216のモータ216aを、コッキング調整量hpに応じて駆動する。モータ216aに接続された片方のロッド415がコッキング調整量hpの分だけ所定方向へ進退する。これにより、原動側フレーム141と直交していた軸402の一端が他端よりもシート搬送方向またはその逆方向へ移動し、軸402全体が軸方向に対して傾斜する。軸402全体の傾斜に伴って、軸402の中央大径部に軸着されたホルダ403に固定されている前当て101cがコッキング調整量hpの分だけ傾斜する。
フィーダボードFBの差し板401の上を搬送されるレンチキュラーレンズシート1の一方の端部(くわえ側端部)が、コッキング調整量hpの分だけ傾斜した前当て101cに当接される。これにより、前当て101cの傾斜状態に合わせて、レンチキュラーレンズシート1が傾斜する。
<第4の実施の形態>
次に、図38、図39および図40を用いて、本発明の第4の実施の形態について説明する。図38および図39では、それぞれ図1および図9と対応する部分に同一符号を付している。第4の実施の形態における4色刷枚葉輪転印刷機100aは、第1の実施の形態における4色刷枚葉輪転印刷機100と、コッキング調整量hpの算出方法が異なる。
図38に示すように、4色刷枚葉輪転印刷機100aの制御コンソール200cは、載置台20の上面の上方に配設されたカメラ222を備えている。図39に示すように、カメラ222は、制御コンソール200cの制御装置201cに接続されている。制御装置201cは、CPUを含むマイクロコンピュータ構成からなり、図40に示すように角度検出部234および調整量算出部231cを含む。角度検出部234および調整量算出部231cの機能については後述する。4色刷枚葉輪転印刷機100aにおけるその他の構成は第1の実施の形態における4色刷枚葉輪転印刷機100の構成と同じであるので、その説明を省略する。
<版胴見当調整動作>
次に、4色刷枚葉輪転印刷機100aの調整動作について説明する。版胴110aに装着されている刷版10aの絵柄13とレンチキュラーレンズシート1との間で天地方向および左右方向の見当ずれが生じている場合の版胴見当調整装置140による版胴110a〜110dに対する天地方向および左右方向の見当調整動作は、第1の実施の形態と同様である。よって、天地方向および左右方向の見当調整動作の説明を省略する。
<版胴コッキング手動調整動作>
渡胴コッキング手動調整装置213を用いて渡し胴114のひねり方向の見当を手動で調整する際の版胴コッキング手動調整動作について説明する。
まず、作業者は、制御コンソール200cの載置台20の上面に、版胴110aに装着される1色目の刷版10aを載せる。このとき、図14に示したように、載置台20のフレーム20aから突出する2つのストッパ21、22に対し、刷版10aの下方端縁19に形成された矩形状切欠部11およびU字状切欠部12を嵌め合わせて突き当てる。これにより、刷版10aが載置台20に位置決めされる。このようにして、刷版10aの刷版位置決めステップS11(図42)が行われる。
図41(A)に示すように、作業者は、載置台20に位置決めされた刷版10aの上にレンチキュラーレンズシート1を載せ、レンチキュラーレンズシート1の下端縁1bを載置台20のストッパ21、22に突き当てる。このようにしてストッパ21、22により刷版10aとレンチキュラーレンズシート1とを位置決めする位置決めステップS12(図42)が行われる。
この状態で、作業者は、レンチキュラーレンズシート1の上方からカメラ222により所定の領域ARを撮像する。レンチキュラーレンズシート1は透明部材で形成されているため、図41(B)に示すように、刷版10aにおける絵柄13の複数の境界線14と、レンチキュラーレンズシート1における複数の溝目線2とがクロスしている状態の撮像画像が得られる。このようにして撮像ステップS13(図42)が行われる。撮像画像の画像データは、カメラ222から制御装置201cに出力される。
制御装置201cの角度検出部234は、この画像データに対して画像解析を行うことにより、ストッパ21、22により基準位置に位置決めされた刷版10aの絵柄13の境界線14と、ストッパ21、22に下端縁1bが突き当てられて位置決めされたレンチキュラーレンズシート1における溝目線2とのなす角度αを計算する。このようにして、境界線14と溝目線2とのなす角度αを検出する検出ステップS14(図42)が行われる。
ここで、境界線14と溝目線2とのなす角度αを検出する際に、載置面において水平線や鉛直線などの基準線を設け、その基準線に対する境界線14の角度をθ、基準線に対する溝目線2の角度をφとして、境界線14の角度θと溝目線2の角度φとの角度差βを検出しても良い。この場合、角度αと角度差βは等しい角度である。
続いて、制御装置201cの調整量算出部231cが、角度αに基づいて、刷版10aの絵柄13に対するレンチキュラーレンズシート1のコッキング調整量hpを算出する。角度αは、図17(A)〜図17(C)に示した角度θに等しい。したがって、コッキング調整量hpは、渡し胴114の軸支持部間の距離Lpを用いて、hp=Lp×sinαによって求められる。このようにしてコッキング調整量hpの算出ステップS15(図42)が行われる。なお、角度αを求めることなく、境界線14と溝目線2との関係からコッキング調整量hpを直接演算することも可能である。
制御装置201cは、算出されたコッキング調整量hpをモニタ211に表示する。これにより、作業者は、手動で渡し胴114のコッキング調整を行う際の指標となるコッキング調整量hpを認識することができる。このようにしてコッキング調整量hpの表示ステップS16(図42)が行われる。
作業者は、渡胴コッキング手動調整装置213におけるダイヤル337aを確認しながら、モニタ211に表示されたコッキング調整量hpに基づいてハンドル337を操作する。このハンドル337の操作に応じて、こま341を介してレバー339が揺動し、ロッド342を介して偏心軸受336がハンドル337の回動操作に応じた角度だけ回動する。これにより渡し胴114は偏心軸受336の回動に応じてひねり調整(コッキング調整)される。このようにして渡胴コッキング調整ステップS17(図42)が行われる。
渡し胴114は操作側の軸受336が偏心量t4だけ偏心しているので、偏心軸受336の偏心作用により渡し胴114の軸が圧胴112aの軸に対して傾斜し、コッキング調整量hpの分だけ、ひねり調整(コッキング調整)される。これにより、渡し胴114を介して搬送されるレンチキュラーレンズシート1もコッキング調整量hpの分だけ傾斜し、レンチキュラーレンズシート1の搬送角度が調整されることになる。
すなわち、フィーダボードFB、スイング装置を介して搬送されるレンチキュラーレンズシート1が渡し胴114のくわえ爪装置にくわえ替えされるとき、渡し胴114が渡胴コッキング手動調整装置213によりコッキング調整量hpの分だけ予めひねり調整されているので、レンチキュラーレンズシート1もコッキング調整量hpの分だけ搬送角度がひねり調整された状態で保持されて搬送される。
このように、版胴見当調整装置140における天地方向調整機構および左右方向調整機構により、版胴110a〜版胴110dの天地方向および左右方向の見当調整動作が予め行われているうえ、渡胴コッキング手動調整装置213により渡し胴114のコッキング調整動作が予め行われる。これにより、1色目から4色目の版胴110a〜110dの刷版10a〜10dにおける絵柄13の複数の境界線14と、レンチキュラーレンズシート1の複数の溝目線2とがそれぞれ一致した転写可能状態に予め調整される。
溝目線2が傾斜したレンチキュラーレンズシート1は、予めひねり調整された渡し胴114を通過する際に、自身もひねり調整された状態となる。ひねり調整されたレンチキュラーレンズシート1は、予め天地方向および左右方向の見当調整が行われた版胴110aと対接したゴム胴111aと、圧胴112aとの間を通過する。この際、ゴム胴111aを介して転写される刷版10aの絵柄13の境界線14と、レンチキュラーレンズシート1の溝目線2とが、相対的に一致した位置関係となっている。したがって、刷版10aの絵柄13の組合せ絵柄部分(A1+B1、A2+B2、…、)をレンチキュラーレンズシート1の溝目線2間の絵柄転写領域に対して、ずれなく正確に転写することが可能となる。このようにして4色刷枚葉輪転印刷機100aの調整動作が終了する。
その後の試刷りおよび微調整の動作については、第1の実施の形態と同じである。また、渡し胴114のコッキング調整動作を行なった後に、天地方向および左右方向の見当調整動作を行ってよいことも、第1の実施の形態と同じである。
<4色刷枚葉輪転印刷機の印刷動作>
4色刷枚葉輪転印刷機100aによる1ロット目のレンチキュラーレンズシート1に対する印刷動作は、第1の実施の形態と同じである。よって、2ロット目のレンチキュラーレンズシート1に対する印刷について説明する。
2ロット目のレンチキュラーレンズシート1のためのコッキング調整量hpの算出方法について説明する。作業者が、1ロット目のレンチキュラーレンズシート1の上に2ロット目のレンチキュラーレンズシート1を重ねた状態で、2枚のレンチキュラーレンズシート1の下端縁1bを、載置台20のストッパ21、22に突き当てる。2ロット目のレンチキュラーレンズシート1を回転させることなく、作業者が、2枚のレンチキュラーレンズシート1の上方からカメラ222により所定の領域ARを撮像する。これにより、1ロット目のレンチキュラーレンズシート1の複数の溝目線2と、2ロット目のレンチキュラーレンズシート1の複数の溝目線2とがクロスしている状態の撮像画像が得られる。
制御装置201cの角度検出部234が、この撮像画像の画像データに対して画像解析を行うことにより、1ロット目のレンチキュラーレンズシート1における溝目線2と2ロット目のレンチキュラーレンズシート1における溝目線2とのなす角度αを計算する。制御装置201cの調整量算出部231cが、角度αに基づいて、1ロット目のレンチキュラーレンズシート1に対する2ロット目のレンチキュラーレンズシート1のコッキング調整量hpを算出する。こうして得られる2ロット目のレンチキュラーレンズシート1のコッキング調整量hpは、1ロット目のレンチキュラーレンズシート1のコッキング調整量hpに対する差分である。
2ロット目のレンチキュラーレンズシート1のコッキング調整量hpも、4色刷枚葉輪転印刷機100aの印刷動作を開始する前に予め計算しておけばよい。1ロット目のレンチキュラーレンズシート1に対する印刷が終了すると、作業者は、渡胴コッキング手動調整装置213におけるダイヤル337aを確認しながら、予め求めておいた2ロット目のコッキング調整量hp(1ロット目のコッキング調整量hpとの差分)に基づいてハンドル337を操作する。これにより、2ロット目のレンチキュラーレンズシート1に合わせて渡し胴114がひねり調整(コッキング調整)されるので、渡し胴114を介して搬送される2ロット目のレンチキュラーレンズシート1の搬送角度についてもひねり調整されることになる。
図21に示した治具版10jがある場合には、治具版10jの上に2ロット目のレンチキュラーレンズシート1を重ねた状態をカメラ222で撮像することにより、制御装置201cが2ロット目のレンチキュラーレンズシート1のコッキング調整量hpを求めることができる。すなわち、角度検出部234が、撮像画像の画像データを解析し、治具版10jにおける絵柄13の複数の境界線14と、2ロット目のレンチキュラーレンズシート1における複数の溝目線2との角度αを計算する。調整量算出部231cが、この角度αに基づいて、2ロット目のレンチキュラーレンズシート1に対するコッキング調整量hpを算出する。これは上述した絶対的なコッキング調整量hpに相当する。このため、調整量算出部231cは、2ロット目のレンチキュラーレンズシート1のコッキング調整量hpと、1ロット目のレンチキュラーレンズシート1のコッキング調整量hpとの差分を算出する。制御装置201cは、この差分を2ロット目のレンチキュラーレンズシート1のコッキング調整量hpとして、モニタ211に表示する。
作業者は、1ロット目のレンチキュラーレンズシート1に対する印刷動作が終了した後、1ロット目のコッキング調整量hpに基づいて渡し胴114がひねり調整(コッキング調整)されている状態から、渡胴コッキング手動調整装置213におけるダイヤル337aを確認しながら、モニタ211に表示された差分にしたがってハンドル337を操作する。こうして、2ロット目のレンチキュラーレンズシート1に対する渡し胴114の渡胴コッキング調整ステップS17(図42)が行われる。
治具版10jを用いることにより、1ロット目のレンチキュラーレンズシート1に対する印刷中に、2ロット目のレンチキュラーレンズシート1のコッキング調整量hpを求めておくことが可能となる。
<第4の実施の形態に対応した他の実施の形態1>
第4の実施の形態では、作業者が、制御コンソール200cの渡胴コッキング手動調整装置213を用いて、渡胴コッキング調整を手動で行う。この渡胴コッキング調整を自動で行うことも可能である。この場合、第2の実施の形態に対応した他の実施の形態と同じく、渡胴コッキング手動調整装置213の代わりに、図24に示した渡胴コッキング自動調整装置214と同一構成の渡胴コッキング自動調整装置(コッキング調整部)214が用いられる。この渡胴コッキング自動調整装置214は、刷版10aに対するレンチキュラーレンズシート1の角度を調整するシートひねり装置(コッキング調整部)として機能する。
図43に示すように、制御コンソール200dは、制御装置201d、入力部202、カメラ222、モニタ211、版胴見当調整装置140および渡胴コッキング自動調整装置214を備えている。制御装置201dには、入力部202、カメラ222、モニタ211、版胴見当調整装置140および渡胴コッキング自動調整装置214が接続されている。
図44に示すように、制御装置201dは、上述した角度検出部234および調整量算出部231cに加えて、制御部233を含んでいる。制御部233は、調整量算出部231cにより算出されたコッキング調整量hpに基づいて、渡胴コッキング自動調整装置214のモータ345を制御することにより、シートひねり装置を制御する。
渡胴コッキング自動調整動作でも、上述した渡胴コッキング手動調整動作と同様に、刷版位置決めステップS11、刷版10aとレンチキュラーレンズシート1とを位置決めする位置決めステップS12、撮像ステップS13、角度αを検出する検出ステップS14、コッキング調整量hpの算出ステップS15が行われる。コッキング調整量hpは制御部233に出力される。このとき、コッキング調整量hpをモニタ211に表示することもできる(表示ステップS16)。
制御部233は、渡胴コッキング自動調整装置214のモータ345を、コッキング調整量hpに応じて駆動する。これにより、ロッド342が進退し、ロッド342の先端部に枢着された偏心軸受336がコッキング調整量hpに対応した角度だけ回動する。その結果、渡し胴114は偏心軸受336の回動に応じてひねり調整(コッキング調整)される。このようにして、渡胴コッキング自動調整装置214に対する制御装置201dの制御ステップが行われる。
<第4の実施の形態に対応した他の実施の形態2>
第4の実施の形態では、カメラ222および制御装置201c、201dの角度検出部234により、刷版10における絵柄13の境界線14とレンチキュラーレンズシート1における溝目線2とのなす角度αを計算し、この角度αに基づいてコッキング調整量hpを算出する。このようなコッキング調整量hpの算出方法は、第2の実施の形態および第2の実施の形態に対応した他の実施の形態、第3の実施の形態および第3の実施の形態に対応した他の実施の形態においても適用することができる。
<他の実施の形態>
第1〜第4の実施の形態においては、二種類の絵柄部分A1、B1、A2、B2、…、が印刷されるレンチキュラーレンズシート1を印刷対象とする場合について述べた。しかし本発明では、三種類の絵柄部分A1、B1、C1、A2、B2、C2、…、が印刷されたり、それ以上の種類の絵柄部分が印刷されるレンチキュラーレンズシートを印刷対象としてもよい。
第1〜第4の実施の形態においては、4色の印刷ユニット102a〜102dのうち最初の刷版10aの見当調整量を基準として他の刷版10b〜10dの見当調整(天地方向、左右方向)を行う場合について述べた。しかし、本発明では、図21に示した治具版10jを用い、その治具版10jに対する見当調整量を基準として4個の刷版10a〜10dの見当調整を行うようにしてもよい。
第1〜第4の実施の形態においては、制御コンソール200における2つのストッパ21、22を用いる場合について述べた。しかし、本発明では、2つ以上の基準部材を用いるようにしてもよい。
第1〜第4の実施の形態においては、基準部材としてのストッパ21およびストッパ22を用いて刷版10aを載置台20に位置決めする場合について述べた。しかし、本発明では、基準部材としてのストッパ21、22とは別に、刷版10aを載置台20に位置決めする2つの刷版位置決め部材を設けてもよい。