JP5973195B2 - プラスチックレンズ - Google Patents

プラスチックレンズ Download PDF

Info

Publication number
JP5973195B2
JP5973195B2 JP2012061913A JP2012061913A JP5973195B2 JP 5973195 B2 JP5973195 B2 JP 5973195B2 JP 2012061913 A JP2012061913 A JP 2012061913A JP 2012061913 A JP2012061913 A JP 2012061913A JP 5973195 B2 JP5973195 B2 JP 5973195B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
layer
antireflection film
plastic substrate
film
sample
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Active
Application number
JP2012061913A
Other languages
English (en)
Other versions
JP2013195649A (ja
Inventor
洋一 小郷
洋一 小郷
原田 高志
高志 原田
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Hoya Corp
Original Assignee
Hoya Corp
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Hoya Corp filed Critical Hoya Corp
Priority to JP2012061913A priority Critical patent/JP5973195B2/ja
Publication of JP2013195649A publication Critical patent/JP2013195649A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP5973195B2 publication Critical patent/JP5973195B2/ja
Active legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Landscapes

  • Eyeglasses (AREA)
  • Surface Treatment Of Optical Elements (AREA)

Description

本発明は、例えば眼鏡等に用いられるプラスチックレンズに関する。
従来、眼鏡レンズの表面には、透過率を向上させ、かつ、クリアな視界を得るために、誘電体層の多層膜からなる反射防止膜が成膜される。眼鏡レンズは、視力矯正という目的があるため、例えば、温度、湿度、屋内、屋外等の条件が異なる様々な環境下で使用される。それゆえ、反射防止膜の特性もまた、そのような様々な使用環境下で変化しないことが求められる。
近年、眼鏡レンズの素材の主流は、無機硝子から、軽量でかつ割れにくいプラスチック素材に移行している。しかしながら、有機材料であるプラスチック基材は柔軟性があるがゆえに眼鏡レンズに傷が付きやすいという問題がある。
そこで、特許文献1では、プラスチック基材上部にSiOゾルを含むハードコート材料を塗布したうえで反射防止膜の成膜を行う眼鏡レンズの製造技術が提案されている。この技術では、プラスチック基材と反射防止膜との間にハードコート層を設けることで、表面付近の硬さを高めて、眼鏡レンズに傷が付くことを防いでいる。しかしながら、このようなハードコート層を設ける構成においては、ハードコート材料を塗布する工程が加わるため、無機硝子基材を用いた場合に比べて製造工程が複雑となり、コストが増加するという問題が生じる。
特許文献2では、プラスチック基材の表面に反射防止膜を成膜する際、SiO層を下地層として設け、耐擦傷性を向上させる技術が提案されている。プラスチック基材は、溶融温度や熱変形温度が低いという特徴を有する。また、プラスチック基材には、その内部からの放出ガスの問題がある。そのため、無機硝子製の基材上に蒸着膜を形成する際に行う、温度300℃〜400℃での基材の加熱処理を、プラスチック基材に対しても同様に実施することは不可能である。したがって、有機材料からなるプラスチック基材と無機誘電体であるSiO層との密着性を保つことが難しい。
プラスチック基材に対しても温度300℃〜400℃での加熱処理が可能であれば密着性及び耐久性の優れた反射防止膜をプラスチック基材上に形成することは可能であるが、上述したプラスチック基材の特徴及び問題等があるため、一般的には、温度150℃以下の低温でプラスチック基材上に反射防止膜が成膜されている。したがって、反射防止膜をプラスチック基材の上部に直接成膜する場合、耐擦傷性と共に、密着性の問題が生じる。
そこで、従来、反射防止膜の上記問題を解消するため、様々な技術が提案されている(例えば特許文献3〜5参照)。特許文献3〜5には、プラスチック基材上に直接、密着性の良い反射防止膜を形成する技術が提案されており、特許文献3には、反射防止膜の基材側の第1層目に、金属膜を密着層として設け、その金属膜上に誘電体層からなる反射防止膜を成膜する手法が提案されている。また、特許文献4には、酸化クロム膜を密着層として成膜した後、該密着層上に反射防止膜を成膜する手法が提案されている。さらに、特許文献5には、一酸化珪素膜を密着層として成膜した後、該密着層上に反射防止膜を成膜する手法が提案されている。上述した特許文献3〜5に記載の技術で製造されたプラスチックレンズは、主に、カメラ等に内蔵される光学レンズに用いられる。
しかしながら、上記特許文献3〜5で用いられている密着層の物質はいずれも可視光の波長領域に吸収帯のある有色物質である。それゆえ、上記特許文献3〜5で提案されている反射防止膜を、目で見て透明(無色透明)であることが求められる眼鏡レンズに適用することは困難である。
特開昭57−168922号公報 特開昭56−116003号公報 特開昭60−156001号公報 特開平6−138303号公報 特開平6−208002号公報
上述のように、従来、プラスチック基材上に反射防止膜が形成されたプラスチックレンズが種々提案されているが、この技術分野、特に、眼鏡レンズの分野においては、耐擦傷性及び密着性を兼ね備えた反射防止膜付きのプラスチックレンズをより低コストで製造可能にする技術の開発が望まれている。
本発明は、上記要望に応えるためになされたものであり、本発明の目的は、耐擦傷性及び密着性を兼ね備えた反射防止膜付きのプラスチックレンズをより低コストで作製することである。
本発明のプラスチックレンズは、プラスチック基材と、プラスチック基材の表面に接して形成された無色透明性を有する導電層、及び、該導電層上に形成された金属酸化物を含む反射防止膜本体とを備える。また、本発明のプラスチックレンズでは、導電層の膜厚が5〜30nmであり、反射防止膜の膜厚が1200nm以上5000nm以下である。
本発明のプラスチックレンズでは、反射防止膜の膜厚が1200nm以上5000nm以下であるため、耐擦傷性の向上が図られる。また、プラスチック基材の表面に接して形成される層を導電層とすることにより、反射防止膜とプラスチック基材との密着性の向上が図られる。
本発明によれば、良質のプラスチックレンズをより低コストで作製することができる。
本発明の一実施形態に係るプラスチックレンズの概略構成図である。 スチールウールでプラスチックレンズの表面を20回擦った後の試料1、3、9の写真である。 試料9におけるダイヤ針引っ掻き試験の測定結果を示す図である。 試料1〜11における破壊荷重fz(g)と反射防止膜の膜厚の関係を示す図である。
以下に、本発明の一実施形態に係るプラスチックレンズの構成例を、図面を参照しながら下記の順で説明する。ただし、本発明は下記の例に限定されない。
1.プラスチックレンズの基本構成
2.評価結果
<1.プラスチックレンズの基本構成〉
[膜剥がれの原因及びその抑制原理]
上述のように、有機材料で形成されたプラスチック基材と、無機誘電体で形成された反射防止膜との密着性を保つことは容易ではない。実際、後述するように、本発明者らの評価実験(促進耐候試験)によれば、ハードコート層を設けずに反射防止膜をプラスチック基材に直接、成膜した場合には、紫外線照射処理により、反射防止膜の膜剥がれが顕著に観測された。
紫外線照射により発生する反射防止膜の膜剥がれの原因としては、例えば、次のような原因が考えられる。
反射防止膜の膜剥がれは、主に、紫外線照射後に起るため、その原因は、プラスチックレンズに紫外線光を照射したことにより、プラスチック基材内、特に、表面付近に発生する分極電荷にあると考えられる。
反射防止膜は、禁制帯幅の広い誘電体で形成されるので、紫外線光はプラスチック基材まで到達する。そして、紫外線光を吸収したプラスチック基材(基材ポリマー)には、その光エネルギーにより、局所的な分極が生じる。これにより、紫外線照射前には分子間力による弱い密着力しか作用していないプラスチック基材及び反射防止膜間の界面に、紫外線照射によるプラスチック基材側の分極による静電的な力が加わる。その結果、紫外線照射時には、プラスチック基材及び反射防止膜間の界面に加わる静電的な力により、プラスチック基材及び反射防止膜間の界面の結合が壊れ、膜剥がれが発生すると考えられる。
なお、プラスチック基材と反射防止膜との間にハードコート層を設けた場合には、ハードコート層内に無機ゾル(主に、SiOゾル)が含まれる。それゆえ、反射防止膜及びハードコート層間の界面(有機−無機界面)には、分子間力だけでなく、無機−無機間のイオン結合的な引力も作用するため、両者の界面において強固な密着力が得られると考えられる。
以上の考察から、本発明では、反射防止膜をプラスチック基材上に直接形成した際に発生する反射防止膜の膜剥がれを抑制するために、プラスチック基材が紫外線光を吸収した際に発生する局所的な分極を解消又は緩和する。
ところで、プラスチック基材は、一般に、絶縁性高分子で形成されるので、一旦、分極が発生すると、その電荷の偏りが解消し難いという性質を有する。そこで、本発明では、プラスチック基材の分極、特に、プラスチック基材の表面付近に発生した局所的な分極(電荷の偏り)を素早く解消又は緩和するために、反射防止膜のプラスチック基材側の表面に導電層を形成する。ただし、導電層としては、プラスチックレンズの無色透明性を確保するために、無色透明性を有する導電性の膜(透明導電膜)を用いる。
すなわち、本発明では、反射防止膜のプラスチック基材の接触面に透明な導電層を形成し、この導電層の導電性を利用して、プラスチック基材の表面付近に発生した電荷の偏りを元の状態に戻すようにする。これにより、本発明では、プラスチック基材及び反射防止膜間の密着性を改善する。
[プラスチックレンズの基本構成]
図1に、本発明の一実施形態に係るプラスチックレンズの基本構成を示す。なお、図1は、本実施形態のプラスチックレンズ1の概略断面図であり、図1では、説明を簡略化するため、プラスチックレンズ1の一部の概略断面を示す。
プラスチックレンズ1は、プラスチック基材10と、該プラスチック基材10上に接して形成された反射防止膜11とを備える。
プラスチック基材10は、従来、眼鏡レンズ等のプラスチックレンズで利用されているプラスチック材料で形成される。具体的には、プラスチック基材10は、例えば、アリル樹脂、ウレタン樹脂、ポリスルフィド樹脂、ポリカーボネート樹脂等の樹脂材料で形成することができる。また、プラスチック基材10を、シクロオレフィンポリマー・環状オレフィンコポリマー(COP・COC)、PMMA(Poly methyl methacrylate)等の材料で形成してもよい。
反射防止膜11は、反射防止膜本体12と、反射防止膜本体12のプラスチック基材10側の表面に形成された導電層13とを有する。なお、本実施形態では、導電層13が、反射防止膜本体12とプラスチック基材10とを密着させる密着層として作用する。
反射防止膜本体12は、無機誘電体(金属酸化物)層の多層膜で構成される。例えば、反射防止膜本体12は、高屈折材料層と、低屈折材料層とを交互に積層した多層膜で構成することができる。反射防止膜本体12を構成する無機誘電体層としては、例えば、SiO層、Nb層、Ta層、ZrO層が挙げられる。
導電層13は、無色透明性を有する導電膜(透明導電膜)で構成される。なお、導電層13は、無色透明性及び導電性を有する材料であれば、任意の材料で形成することができる。例えば、導電層13は、In及びSnOからなるITO(Indium Tin Oxide)膜で構成することができる。さらに、導電層13は、例えば、In(インジウム)、Sn(スズ)、Zn(亜鉛)、及び、Ti(チタン)のうちの少なくとも一種の元素の酸化物を含む透明導電膜で構成することができる。また、導電層13の膜厚は、例えば、5〜30nm程度とすることができる。
また、本実施形態では、反射防止膜11の膜厚を1200nm以上5000nm以下とする。後述の評価試験で詳述するが、反射防止膜11の膜厚を1200nm以上とすることで耐擦傷性の向上が図られる。また、反射防止膜11の製造工程では、5000nmよりも厚い反射防止膜を成膜するためには、おおよそ4時間以上の時間を要することから、反射防止膜11の膜厚は5000nm以下であることが好ましい。
〈2.評価結果〉
以下では、上述の実施形態において作製したプラスチックレンズの各種実施例に係る試料(試料7、9、10)と、比較例に係る試料(試料1、2、3、4、5、6、8、11)を作製し、耐擦傷性及び密着性についての評価を行った。下記の表1に、各試料における各層の構成を示す。
表1では、各試料1〜11のハードコート層(HC層)の有無、反射防止膜を構成する各層の膜厚[nm]、及び反射防止膜を構成する各層の膜厚の合計の膜厚[nm]が記載してある。また、表1の反射防止膜を構成する各層の欄の括弧内の表示は、各層を構成する材料を示す記号であり、その記号が示す材料を表1の下に示す。なお、反射防止膜は、プラスチック基材に近い側から第1層、第2層・・・とする。
試料1は、プラスチック基材と、プラスチック基材上部に設けられたハードコート層と、ハードコート層上部に設けられた反射防止膜とを備えるプラスチックレンズである。試料1では、反射防止膜は、SiO層とNb層とを交互に7層積層した多層膜で構成した。また、試料1では、反射防止膜の第1層をSiO層とし、第1層から第7層までの各層の膜厚の合計を420nmとした。
試料2は、プラスチック基材と、プラスチック基材上部に設けられたハードコート層と、ハードコート層上部に設けられた反射防止膜とを備えるプラスチックレンズである。試料2では、反射防止膜は、SiO層とTa層とを交互に7層積層した多層膜で構成した。また、試料2では、反射防止膜の第1層をSiO層とし、第1層から第7層までの各層の膜厚の合計を406nmとした。
試料3は、プラスチック基材と、プラスチック基材上部に直接設けられた反射防止膜とを備えるプラスチックレンズである。試料3では、反射防止膜は、SiO層とTa層とを交互に7層積層した多層膜で構成した。また、試料3では、反射防止膜の第1層をSiO層とし、第1層から第7層までの各層の膜厚の合計を406nmとした。
試料4は、プラスチック基材と、プラスチック基材上部に直接設けられた反射防止膜とを備えるプラスチックレンズである。試料4では、反射防止膜は、SiO層とTa層とを交互に7層積層した多層膜で構成した。また、試料4では、第1層をSiO層とし、第1層から第7層までの各層の膜厚の合計を676nmとした。
試料5は、プラスチック基材と、プラスチック基材上部に直接設けられた反射防止膜とを備えるプラスチックレンズである。試料5では、反射防止膜は、SiO層とTa層とを交互に7層積層した多層膜で構成した。また、試料5では、第1層をSiO層とし、第1層から第7層までの各層の膜厚の合計を1226nmとした。
試料6は、プラスチック基材と、プラスチック基材上部に直接設けられた反射防止膜とを備えるプラスチックレンズである。試料6では、反射防止膜は、SiO層とTa層とを交互に7層積層した多層膜で構成した。また、試料6では、第1層をSiO層とし、第1層から第7層までの各層の膜厚の合計を1776nmとした。
試料7は、プラスチック基材と、プラスチック基材表面に接して成膜される導電層、及び、その導電層上部に成膜される反射防止膜本体からなる反射防止膜とを備えるプラスチックレンズである。試料7では、第1層をITO層(導電層)で構成し、第2層から第8層で構成される反射防止膜本体を、SiO層とTa層とを交互に積層した多層膜で構成した。また、第1層から第8層までの各層の膜厚の合計を1781nmとした。
試料8は、プラスチック基材と、プラスチック基材上部に直接設けられ、膜内に導電層を一層有する反射防止膜とを備えるプラスチックレンズである。試料8では、反射防止膜は、第1層、第3層、第6層、第8層をSiO層とし、第2層、第5層及び第7層をZrO層とし、第4層をITO層(導電層)とした多層膜で構成した。また、試料8では、第1層から第8層までの各層の膜厚の合計を624nmとした。
試料9は、プラスチック基材と、プラスチック基材表面に接して成膜される導電層、及び、その導電層上部に成膜される反射防止膜本体からなる反射防止膜とを備えるプラスチックレンズである。試料9では、第1層をITO層(導電層)で構成し、第2層から第6層で構成される反射防止膜本体を、SiO層とZrO層とを交互に積層した多層膜で構成した。また、試料9では、第1層から第6層までの各層の膜厚の合計を1897nmとした。
試料10は、プラスチック基材と、プラスチック基材表面に接して成膜される導電層と、その導電層上部に成膜される反射防止膜本体とで構成したプラスチックレンズである。試料10では、第1層をITO層(導電層)で構成し、第2層から第8層で構成される反射防止膜本体を、SiO層とZrO層とを交互に積層した多層膜で構成した。また、試料10では、第1層から第8層までの各層の膜厚の合計を1958nmとした。
試料11は、プラスチック基材上に成膜される反射防止膜を、プラスチック基材表面に接して成膜される導電層と、その導電層上部に成膜される、膜内に導電層を一層有する反射防止膜本体とで構成したプラスチックレンズである。試料11では、第1層及び第5層をITO層(導電層)で構成し、第2層、第4層、第7層及び第9層を、SiO層で構成し、第3層、第6層及び第8層をZrO層で構成した。また、試料11では、第1層から第9層までの各層の膜厚の合計を629nmとした。
以上のように、試料1〜11では、プラスチック基材上部の各層の構成を異ならせている。なお、試料1〜11では、プラスチックレンズを構成するプラスチック基材として、いずれも、アリル樹脂からなるプラスチック基材を用いた。
これらの試料1〜11は、洗浄機により洗浄したプラスチック基材の上部に所望の反射防止膜を成膜することで作製した。具体的には、まず、弱アルカリ性洗剤(pH9.5以下)により、1分間、プラスチック基材を超音波洗浄した。次いで、純水により、プラスチック基材を超音波洗浄して洗剤を除去し、その後、プラスチック基材を乾燥した。
試料1及び2を作製する場合には、洗浄工程により洗浄されたプラスチック基材の上部にハードコート層を塗布した後に、真空蒸着法を用いて反射防止膜を構成する各層の膜を成膜した。一方、試料3〜11を作製する場合には、洗浄工程により洗浄されたプラスチック基材上部に、真空蒸着法により、反射防止膜を構成する各層を直接成膜した。
また、試料5、6、7、9、10では、反射防止膜の第1層又は第2層に形成されるSiO層の膜厚を特に厚くすることで、反射防止膜全体の膜厚を1200nm以上としている。
(1)評価試験1
評価試験1では、上述のようにして作製された試料1〜11においてスチールウールスクラッチ試験を行い、反射防止膜の耐擦傷性の評価を行った。
スチールウールスクラッチ試験では、各試料1〜11の反射防止膜側の面にスチールウール(日本スチールウール株式会社製、ボンスター#0000)を接触させ、1.5kgの荷重をかけた状態で、反射防止膜表面をスチールウールで20往復擦る動作を行った。1試料につき3箇所スチールウールで擦り、試料1〜11のそれぞれの表面の状態を観測した。図2は、スチールウールで表面を20往復擦った後の試料の写真である。図2では、代表して、試料1、3及び9の写真を示している。なお、図2では、試料表面の様子をわかりやすくするため、実際の写真の白黒(ネガポジ)を反転させて示している。
図2に示すように、プラスチック基材上部に、厚さ406nmの反射防止膜を直接設けた試料3では、反射防止膜表面の中央部分に複数の傷が見られた。また、プラスチック基材上にハードコート層を設け、その上部に厚さ420nmの反射防止膜を設けた試料1では、試料3に比較して傷が少ないものの、反射防止膜表面の中央部分に薄い傷が見られた。一方、プラスチック基材上部に、厚さ1897nmの反射防止膜を直接設けた試料9では、傷はほとんど見られなかった。
ここでは図示を省略するが、反射防止膜の膜厚が1000nm以下の試料では、図2の試料3の写真と同様にはっきりとした傷が見られ、耐擦傷性に劣ることがわかった。また、試料5では、反射防止膜表面に薄い傷が見られたものの、反射防止膜の膜厚が1000nm以下の試料に比較して、反射防止膜の厚膜化による耐擦傷性が向上した。反射防止膜の膜厚を1776nm以上とした試料6、7、10では、図2に示す試料9と同様、傷はほとんど見られなかった。
以上のように、プラスチック基材上部に直接反射防止膜を設けたプラスチックレンズにおいても、反射防止膜の膜厚を例えば1200nm以上とすることにより、ハードコート層を設けたプラスチックレンズと同等、若しくはそれよりも優れた耐擦傷性が得られることがわかった。
(2)評価試験2
評価試験2では、耐擦傷性を定量的に評価するため、ダイヤ針引っ掻き試験を行い、各試料1〜11の反射防止膜の破壊荷重を測定した。
ダイヤ針引っ掻き試験では、まず、ダイヤ針を、各試料1〜11の反射防止膜側の面に押し当てる。そして、反射防止膜の面に対して垂直な方向(ここでは鉛直方向)に沿って荷重をダイヤ針にかけながら、ダイヤ針を反射防止膜表面に対して水平方向に移動させていく。このとき、鉛直方向及び水平方向の荷重を変化させながらダイヤ針を移動させる。そして、ダイヤ針にかかる鉛直方向及び水平方向の荷重を逐次測定する。ダイヤ針引っ掻き試験では、ダイヤ針が反射防止膜を突き破り、プラスチック基材にダイヤ針が入り込んだときに荷重が大きく変化する点を測定することで、反射防止膜の破壊に要した荷重を定量的に測定することができる。
図3に、試料9におけるダイヤ針引っ掻き試験の測定結果を示す。図3の横軸は時間で、縦軸は、ダイヤ針に対する水平方向の荷重Fxと、鉛直方向の荷重Fzである。図3に示すように、ダイヤ針が反射防止膜を突き破りプラスチック基材に達したことによって水平方向の荷重が大きく変化する点Aが水平方向の破壊荷重fxである。その点Aに対応する鉛直方向の荷重Fzを、鉛直方向の破壊荷重fzとする。
下記の表2に、評価試験2で測定した各試料1〜11における破壊荷重fx及びfzを示す。
また、図4に、破壊荷重fzと反射防止膜の膜厚の関係を示す。図4の横軸は、反射防止膜の膜厚であり、縦軸は破壊荷重fzである。表2及び図4に示すように、ハードコート層を設けた試料1及び試料2の破壊荷重fzは、16〜20gの範囲内である。そして、図4から、反射防止膜の膜厚を1200nm以上とすることで、破壊荷重fzを、試料1及び試料2の破壊荷重fz以上とすることができることがわかる。
すなわち、ハードコート層を設けないプラスチックレンズにおいても、反射防止膜の膜厚を1200nm以上とすることで、ハードコート層を設けた従来のプラスチックレンズと同等かそれ以上の耐擦傷性を得ることができることがわかった。
(3)評価試験3
評価試験3では、上述のようにして作製された試料1〜11における反射防止膜の密着力及びその耐久性(紫外線耐久性)の評価を行った。具体的には、紫外線蛍光ランプ式の促進耐候試験機QUV(Q−Lab Corporation製)を用いて、各試料に対して所定時間(この例では1週間)の促進処理(促進耐候試験)を行い、促進処理前後の反射防止膜のプラスチック基材に対する密着力を評価した。
なお、評価試験3で用いた促進耐候試験機QUVは、耐候試験機の世界的標準機であり、例えばJIS、ISO、ASTM等の主要な国内外の規格に対応した耐候性促進試験である。また、この例では、促進試験に用いる紫外線ランプは太陽光の紫外線スペクトルを精度よく再現するランプUVA−340(Q−Lab Corporation製)を用い、その照度は0.2W/mとした。そして、この例の促進耐候試験では、促進耐候試験機QUV内の45℃に保たれた容器内に、各試料1〜11を放置した状態で、紫外線照射処理と、湿度90%の加湿処理とを4時間毎に繰り返した。
また、評価試験3において、プラスチック基材に対する反射防止膜の密着力の評価は、クロスハッチ試験で行った。クロスハッチ試験は、塗料一般試験方法 K 5600-5-6 (ISO 2409:1992)に基づき、例えば、表面を約1mm間隔で基盤目に100目クロスカットし、このクロスカットした部分に粘着テープ(商品名「セロテープ(登録商標)」ニチバン(株)製品)を強く貼り付けたのち、急速に粘着テープを剥がし、粘着テープを剥がした後の基盤目の膜剥がれの有無を調べることが行うことができる。
上述した評価試験3の結果を下記の表3に示す。
表3は、各試料1〜11の密着力の耐久性の評価結果であり、促進処理前(初期状態)と1週間の促進処理後のクロスハッチ試験結果を示す。表3中の各列に記載した数値は、クロスハッチ試験後に膜剥がれが生じていない部分の面積の割合(%)を示す。
表3に示すように、促進処理前の初期状態では、ハードコート層の有無や反射防止膜の膜厚に関係なく、膜剥がれが生じていない部分の面積の割合は90%以上であった。これに対し、1週間の促進処理後では、ハードコート層を設けた試料1及び2と、反射防止膜の第1層を導電層とした試料7、9、10、11とにおいて、90%以上の非常に高い割合で膜剥がれが生じないことがわかった。
ところで、試料8では、反射防止膜を構成する多層膜の内部(第4層)に導電層(ITO層)が設けられている。しかしながら、試料8では、1週間後の促進処理後において膜剥がれが生じない面積の割合が1.1%と低い。このことから、反射防止膜を構成する多層膜の内部に導電層を設ける構成は、密着性に対する効果を発揮しないことがわかる。
このように、プラスチック基材上部に反射防止膜を直接設けるプラスチックレンズにおいては、反射防止膜の、プラスチック基材表面に接して形成される第1層を導電層で構成することにより、ハードコート層を設けたプラスチックレンズと同様の密着性及び耐久性が得られることがわかる。
また、各試料1〜11について、分光計(オリンパス社製、USPM−RU)を使用して反射スペクトルの測定を行い、光学特性の評価も行った。この結果、試料1〜11のいずれにおいても、反射防止効果があることが確認された。したがって、反射防止膜を厚膜化したプラスチックレンズにおいても、従来のプラスチックレンズと同様、良好な反射防止効果を得ることができることがわかった。
また、各試料1〜11について、可視光帯域の透過率特性を調べた結果、どの試料においても十分な透明性が得られた。したがって、導電層を設けたプラスチックレンズにおいても、無色透明性を確保できることがわかる。
以上の評価結果から、反射防止膜の第1層を導電層で構成し、反射防止膜の膜厚を1200nm以上とした実施例に係る試料7、9、10において、耐擦傷性及び密着性の両方の特性が向上することがわかった。
以上のように、本発明のプラスチックレンズ1のように、反射防止膜のプラスチック基材側の表面に透明導電膜からなる導電層を設けることにより、プラスチック基材及び反射防止膜の界面の密着性及び耐久性を向上させることが出来る。さらに、本発明では、反射防止膜の膜厚を1200nm以上とすることで、耐擦傷性を向上させることができる。すなわち、本発明のプラスチックレンズでは、耐擦傷性と密着性とが向上する。そして、本発明のプラスチックレンズでは、プラスチック基材上部にハードコート層を設ける必要がないため、低コスト化が図られる。
1・・・プラスチックレンズ、10・・・プラスチック基材、11・・・反射防止膜、13・・・導電層、12・・・反射防止膜本体

Claims (3)

  1. プラスチック基材と、
    前記プラスチック基材の表面に接して形成された無色透明性を有し膜厚が5〜30nmである導電層、及び、該導電層上に形成された金属酸化物を含む反射防止膜本体を有する反射防止膜であって、膜厚が1200nm以上5000nm以下である反射防止膜と、
    を備えるプラスチックレンズ。
  2. 前記導電層が、インジウム、スズ、亜鉛、及び、チタンのうち少なくとも一つの元素の酸化物を含む
    請求項1に記載のプラスチックレンズ。
  3. 前記プラスチック基材が、アリル樹脂、ウレタン樹脂、ポリスルフィド樹脂、及び、ポリカーボネート樹脂のいずれかの材料で形成される
    請求項2に記載のプラスチックレンズ。
JP2012061913A 2012-03-19 2012-03-19 プラスチックレンズ Active JP5973195B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2012061913A JP5973195B2 (ja) 2012-03-19 2012-03-19 プラスチックレンズ

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2012061913A JP5973195B2 (ja) 2012-03-19 2012-03-19 プラスチックレンズ

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2013195649A JP2013195649A (ja) 2013-09-30
JP5973195B2 true JP5973195B2 (ja) 2016-08-23

Family

ID=49394676

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2012061913A Active JP5973195B2 (ja) 2012-03-19 2012-03-19 プラスチックレンズ

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP5973195B2 (ja)

Family Cites Families (6)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPS53105249A (en) * 1977-02-25 1978-09-13 Nippon Chemical Ind Coated plastic optical instruments
JPH05313001A (ja) * 1992-05-14 1993-11-26 Matsushita Electric Ind Co Ltd プラスチック製光学部品の反射防止膜
MXPA02007162A (es) * 2000-01-26 2003-09-22 Sola Int Holdings Revestimiento antiestatica, antirreflejante.
JP2005202379A (ja) * 2003-12-18 2005-07-28 Toppan Printing Co Ltd 反射防止部材
JP2006259096A (ja) * 2005-03-16 2006-09-28 Hitachi Housetec Co Ltd 反射防止膜付き基材の製造法
JP2006267561A (ja) * 2005-03-24 2006-10-05 Seiko Epson Corp 光学素子およびその製造方法

Also Published As

Publication number Publication date
JP2013195649A (ja) 2013-09-30

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP5966011B2 (ja) 眼鏡レンズおよびその製造方法
US10527760B2 (en) Ophthalmic lens comprising a thin antireflective coating with a very low reflection in the visible region
JP2009128820A (ja) 多層反射防止膜を有するプラスチックレンズおよびその製造方法
CN110895358A (zh) 包括在可见和紫外区内具有极低反射的减反射涂层的光学制品
JP5969195B2 (ja) 眼鏡レンズの製造方法
CN201917731U (zh) 一种防红外眼镜片
WO2013065715A1 (ja) 眼鏡レンズ
JP6414362B2 (ja) 偏光性積層体および眼鏡
JPWO2013118622A1 (ja) 光学製品及びその製造方法
WO2012133216A1 (ja) プラスチックレンズ
JP2018031975A (ja) 光学製品並びにプラスチック眼鏡レンズ及び眼鏡
KR102527161B1 (ko) 플라스틱 광학 제품 및 플라스틱 안경 렌즈 및 안경
KR20180078328A (ko) 안경 렌즈 및 안경
JP2004345278A (ja) 透明導電性基材、抵抗膜方式タッチパネルおよび表示素子
JP5976363B2 (ja) 光学部材
AU2016240877B2 (en) Spectacle lens, method of manufacturing the same, and spectacles
JP5973195B2 (ja) プラスチックレンズ
JP5922324B2 (ja) 光学物品およびその製造方法
KR20140006441A (ko) 반사방지막을 포함하는 투명적층체 및 그의 제조방법
ES2354351B1 (es) Lente oftálmica y/o solar y procedimiento de fabricación correspondiente.
JP7385894B2 (ja) プラスチック基材ndフィルタ及び眼鏡用プラスチック基材ndフィルタ
JP6247349B2 (ja) 眼鏡レンズ
JP2018077477A (ja) 眼鏡レンズ
CN117677893A (zh) 电致变色元件及眼镜用镜片
FR3027120A1 (fr) Dalle tactile capacitive a haute transmission dans le domaine visible et inrayable

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20150127

A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20151118

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20151124

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20160125

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20160614

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20160714

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Ref document number: 5973195

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250