JP5971906B2 - 抵抗スポット溶接方法 - Google Patents

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Description

本発明は、抵抗スポット溶接方法に関する。
重ね合わせた金属板同士を接合する方法として、抵抗スポット溶接法が一般的に用いられている。この溶接方法は、重ね合わせた複数の金属板を一対の電極(上側電極及び下側電極)により挟みながら加圧力を加えた状態で、両電極間に溶接電流を短時間流すことにより、金属板同士を溶接するという方法である。
このような抵抗スポット溶接法においては、溶接電流の値、及び、電極から金属板に加えられる加圧力の大きさを、いずれも適切なものとする必要がある。例えば溶接電流の値が小さすぎると、金属板を溶融させるのに必要なジュール熱が発生せず、溶接強度が不足してしまう。逆に溶接電流の値が大きすぎると、溶融した金属が溶接個所の周囲に飛散する「散り」と呼ばれる現象や、溶融した金属が爆発的に飛散する「爆飛」と呼ばれる現象が発生してしまう。また、電極から金属板に加えられる加圧力が大きすぎると、金属板の変形や圧痕が生じるし、逆に加圧力が小さすぎると、溶接電流の値が低くても上記の散りや爆飛が発生しやすくなってしまう。
ところが、電極から金属板に加えられる加圧力を適切な範囲に保ちながら溶接することは、以下に説明するように非常に困難であることが知られている。
電極から金属板に加えられる加圧力の発生源としては、例えばエアシリンダが用いられる。この場合、エアシリンダに対する加圧ポンプを所定の出力で動作させることにより、加圧力を発生させる。しかし、加圧ポンプの出力を一定としながら溶接した場合であっても、実際に電極から金属板に加えられる加圧力の大きさは一定とならず、経時的に変動してしまう。これは、溶接電流のジュール熱によって、金属板が溶融し液体となることや、加熱された金属板が熱膨張することの影響によるものである。しかも、これらの原因による加圧力の変動は、金属板の種類や厚さ、溶接電流の値、及び電極の形状等によってその程度が異なるため、予測することは困難である。
このような加圧力の変動に対する対策として、下記特許文献1には、溶接工程を二段階に分け、第一段(前段)の溶接時には低い加圧力を加えながら溶接を行い、第二段(後段)の溶接時には高い加圧力を加えながら溶接を行う抵抗スポット溶接方法が開示されている。すなわち、溶接中において加圧力が経時的に低くなることを予め見越しておき、加圧力を溶接途中で高くすることで、金属板に加えられる加圧力が適切な範囲を外れてしまうことを防止しようというものである。
特開2006−55898号公報
上記特許文献1に記載の溶接方法においては、第一段から第二段に切り替えて加圧力の大きさを変化させるタイミングや、それぞれの段階で加える加圧力の大きさを適切に設定するために、事前に実験を行っておく必要がある。
しかし、溶接中において金属板に対して加えられる加圧力の変動は、金属板の反りや酸化状態等、様々な要因によって影響を受けるものである。従って、実際に溶接を行う際に生じる加圧力の変動は、事前に実験を行った際における加圧力の変動とは一致しないことが多い。このため、上記特許文献1に記載の溶接方法では、散りや爆飛といった不具合の発生を確実に防止することはできないものであった。
また、溶接中において散りが発生したにも関わらず、溶接作業者がそのことに気付かないことがある。このため、散りが発生しても溶接作業が継続されてしまう結果、散りによって十分な強度を有さない抵抗スポット溶接が、継続して多数の箇所においてなされてしまう可能性もあった。
本発明はかかる事情及び知見に鑑みてなされたものであり、加圧工程及び溶接工程における金属板の変形や圧痕、散りや爆飛の発生を防止しながら、良好な溶接を行うことのできる抵抗スポット溶接方法を提供することを目的とする。
上記課題を解決するために、本発明に係る抵抗スポット溶接方法は、重ね合わせた複数の金属板を、第一の電極及び第二の電極により挟んだ状態で溶接する抵抗スポット溶接方法において、前記第一の電極及び前記第二の電極の間に、前記複数の金属板を設置する設置工程と、前記第一の電極及び前記第二の電極により、前記複数の金属板を挟んで加圧力を加える加圧工程と、前記複数の金属板に対して加圧力を加えた状態で、前記第一の電極及び前記第二の電極により前記複数の金属板に対して溶接電流を流す溶接工程と、を備え、前記加圧工程及び前記溶接工程は、前記加圧力の大きさを継続的に測定しながら行われることを特徴とする。
溶接電流を流す直前においては、金属板に対し適切な加圧力を加えた状態を保ちながら、所定のスクイズ時間の経過を待つ必要がある。本発明では、第一の電極及び第二の電極により複数の金属板を挟んで加圧力を加える加圧工程を、金属板に対して実際に加えられる加圧力の大きさを継続的に測定しながら行うこととしている。これにより、それぞれの金属板の厚さ、反り、材質等の違いに起因して、加圧工程において実際に加えられる加圧力が適正範囲を外れるようなことが生じた場合であっても、そのことを迅速に検知することができる。その結果、例えば、加圧力が適正範囲を外れたら迅速に加圧力の調整を行い、適正範囲内に戻った時点から再度スクイズ時間の経過を待つような対応が可能となる。
更に本発明では、第一の電極及び第二の電極により複数の金属板に対して溶接電流を流す溶接工程についても、金属板に対して実際に加えられる加圧力の大きさを継続的に測定しながら行うこととしている。これにより、溶接個所における金属板の溶融や、ジュール熱による金属板の熱膨張等の影響によって加圧力が変動したとしても、当該変動が生じたことを迅速に検知することができる。その結果、加圧力が適正範囲を外れた場合において、加圧力を調整して適正範囲内に戻すような対応や、溶接作業を中断する等の対応が可能となる。
また本発明に係る抵抗スポット溶接方法では、前記加圧力の測定値が、予め設定された所定の範囲を外れたことが測定された場合には、前記加圧工程又は前記溶接工程を中断することも好ましい。
この好ましい態様では、加圧力の測定値が適正な範囲を外れたことが測定された場合、その時点で行われていた加圧工程、又は溶接工程が中断される。加圧工程において、金属板に対して実際に加えられる加圧力が適正範囲を外れてしまうことの要因としては、それぞれの金属板の厚さ、反り、材質等の違いに起因する場合の他、溶接作業における加圧力の設定ミスに起因する場合もある。いずれの場合であっても、この好ましい態様では、加圧力が適正範囲を外れたら加圧工程を中断することにより、金属板に対して過度の加圧力が加わってしまうことを確実に防止することができる。
また、溶接工程において、金属板に対して実際に加えられる加圧力が適正範囲を外れてしまうことの要因としては、溶接個所における金属板の溶融や、ジュール熱による金属板の熱膨張等に起因する場合のほか、散りや爆飛が発生したことに起因する場合もある。散りや爆飛が発生すると、瞬間的に加圧力の低下として測定される。この場合は、すぐに加圧力が適正範囲内に戻ったとしても、溶接工程は中断されるべきである。この好ましい態様では、加圧力が適正範囲を外れたら溶接工程を中断することにより、散りや爆飛が発生しているにも関わらず溶接作業が継続されてしまうようなことを防止することができる。
また本発明に係る抵抗スポット溶接方法では、前記加圧工程及び前記溶接工程において、前記加圧力の測定値が所定の目標値となるように制御する加圧力制御手段を備え、前記加圧力制御手段は、前記加圧力の測定値をフィードバック値として用いるフィードバック制御を行うことも好ましい。
この好ましい態様では、加圧力の測定値をフィードバック値として用いることにより、加圧力の測定値が所定の目標値となるようにフィードバック制御を行う。従って、加圧力の測定値が種々の要因により変動したとしても、その変動に応じて適切な加圧力の調整を行うことができる。これにより、金属板が電極から受ける力の大きさを、常に適切な大きさに維持することが可能となる。
また本発明に係る抵抗スポット溶接方法では、前記加圧力の測定値に対して平坦化処理を行い、前記平坦化処理がなされた後の値を出力する平坦化手段を有しており、前記加圧力制御手段は、前記加圧力の測定値に代えて、前記平坦化手段の出力値をフィードバック値として用いることも好ましい。
加圧工程及び溶接工程における加圧力の測定値の変化は、短い周期で変動する成分を含む波形として測定される。このため、加圧力の測定値をそのままフィードバック値として用いると、加圧力の制御における操作量(例えば、エアシリンダに対する加圧ポンプの出力)も短い周期で変動することとなり、抵抗スポット溶接装置に対する負担が大きくなる。また、加圧量の制御が短い周期の変動に対して追従できず、制御が不安定になってしまう場合もある。
この好ましい態様では、加圧力の測定値に対して平坦化処理がなされた後の値をフィードバック値として用い、加圧力の測定値が所定の目標値となるようにフィードバック制御を行う。平坦化処理がなされた後の値は、短い周期で変動する成分が除去されているため、加圧力の制御における操作量が短い周期で変動することがない。このため、抵抗スポット溶接装置に対する負担が大きくなってしまうことが防止される。また、加圧量の制御が短い周期に対して追従できず、制御が不安定になってしまうことも防止される。
また本発明に係る抵抗スポット溶接方法では、前記平坦化処理は、移動平均を行う処理であることも好ましい。
この好ましい態様では、移動平均を行うという容易な方法によって、加圧力の測定値に対して平坦化処理を行うことができる。
本発明によれば、加圧工程及び溶接工程における金属板の変形や圧痕、散りや爆飛の発生を防止しながら、良好な溶接を行うことのできる抵抗スポット溶接方法が提供される。
本実施形態に係る抵抗スポット溶接方法を実施するための、溶接システムWSの構成を示す図である。 本実施形態に係る抵抗スポット溶接方法を示すフローチャートである。 加圧工程S200の詳細なステップを示したフローチャートである。 溶接工程S300の詳細なステップを示したフローチャートである。 加圧工程S200及び溶接工程S300における、加圧力の測定値PVの時間変化の様子を示したグラフである。 加圧工程S200及び溶接工程S300における、加圧力の測定値PVの時間変化の様子を示したグラフである。
以下、添付図面を参照しながら本発明の実施の形態について説明する。説明の理解を容易にするため、各図面において同一の構成要素に対しては可能な限り同一の符号を付して、重複する説明は省略する。
まず、本実施形態に係る抵抗スポット溶接方法を実施するための、溶接システムWSの構成について説明する。図1は、溶接システムWSの構成を示す図である。この溶接システムWSは、重ね合わせた複数の金属板W(W1、W2)を溶接するためのものであり、第一の電極1、第二の電極2、電極駆動装置3、加圧力センサ4、加圧力測定装置5、加圧力制御装置6、溶接電源7、及び制御装置8を有している。
第一の電極1、及び第二の電極2は、複数の金属板Wを挟んで溶接するために上下に配置された、一対の電極である。上側に配置された第一の電極1は、金属からなる棒状の電極であって、その下端にはR形状に加工された先端部1aを有している。下側に配置された第二の電極2は、金属からなる板状の電極であって、その上面には複数の金属板Wを載置するための平滑な載置面2aを有している。
電極駆動装置3は、第一の電極1を上下方向に駆動するためのモーターである。電極駆動装置3は図示しない支持機構に対して固定されている。従って、第一の電極1を下方に向けて駆動することにより、複数の金属板Wに対して加圧力を加えることが可能となっている。尚、電極駆動装置3はサーボモーターであるため、後に説明する加圧力制御装置6からの受ける指令信号に基づき、電極の変位の制御または力の制御によってその駆動力の大きさを調整することが可能となっている。
加圧力センサ4は、第一の電極1に設けられたロードセルであって、第一の電極1に対してその軸方向に係る加圧力の大きさを測定し、電気信号に変換するためのセンサである。
加圧力測定装置5は、加圧力センサ4が出力した電気信号を受け、加圧力の測定値PVに変換し出力するための装置である。加圧力の測定値PVは、加圧力制御装置6及び制御装置8に対して出力される。尚、加圧力の測定値PVは、先端部1aが上側の金属板W1に触れていない状態において0となるように調整されている。従って、加圧力の測定値PVは、複数の金属板Wが第一の電極1(及び第二の電極2)から受ける加圧力の大きさと等しい。
加圧力制御装置6は、電極駆動装置3の動作を制御する装置である。加圧力制御装置6は、電極駆動装置3に対して指令信号を出力し、電極駆動装置3の動作開始や動作停止、及び動作中の位置または駆動力を制御する。加圧力制御装置6には、加圧力測定装置5から加圧力の測定値PVが入力される。また、加圧力制御装置6には、制御装置8から、加圧力の目標値SV、動作指令MV、停止指令STも入力される。加圧力制御装置6による電極駆動装置3の具体的な制御の内容は、後に詳しく説明する。
溶接電源7は、第一の電極1と第二の電極2との間に電圧を印加し、複数の金属板Wに対して溶接電流を流すための電源装置である。制御装置8から出力指令OPを受けることにより、電圧の印加が開始される。また、制御装置8から停止指令CPを受けることにより、電圧の印加が停止される。
尚、実際の溶接システムWSにおいては、第一の電極1及び第二の電極2を冷却するための冷却装置や、温度センサ等が配置されるが、図1においてはこれらの図示を省略している。
次に、本実施形態に係る抵抗スポット溶接方法の、具体的な内容について説明する。図2は、本実施形態に係る抵抗スポット溶接方法を示すフローチャートである。図2に示すように、本実施形態に係る抵抗スポット溶接方法は、設置工程S100と、加圧工程S200と、溶接工程S300とを備える。尚、図1に示したフローチャートは、抵抗スポット溶接を一か所だけ行う場合を示したものである。従って、抵抗スポット溶接を複数個所について行う場合は、溶接個所の数だけ、図1のフローチャートで示された抵抗スポット溶接方法が繰り返される。
設置工程S100では、複数の金属板Wが第二の電極2の載置面2aの上に設置される。複数の金属板Wは、上側の金属板W1と下側の金属板W2とからなっており、これらを互いに位置合わせして重ねた状態で、溶接箇所が先端部1aの下方となるように設置される。すなわち、後の加圧工程S200において第一の電極1が下降した際、先端部1aが上側の金属板W1に触れる位置が所定の溶接箇所と一致するように、複数の金属板Wが設置される。
加圧工程S200では、第一の電極1を下降させ、第一の電極1と第二の電極2とにより複数の金属板Wを挟んで所定の加圧力を加えた状態へと移行する。
加圧工程S200の詳細を、図3を参照しながら説明する。図3は、加圧工程S200の詳細なステップを示したフローチャートである。加圧工程S200では、まず、加圧力センサ4による加圧力の測定が開始される(S201)。これは、第一の電極1及び第二の電極2により挟まれた、複数の金属板Wが受ける加圧力の大きさを継続的に測定するものであり、以後、溶接工程S300においても引き続き継続的に測定される。測定された加圧力の測定値PVは、加圧力測定装置5から、加圧力制御装置6及び制御装置8に対して継続的に出力される。
続いて、制御装置8から加圧力制御装置6に対して動作指令MVが出力される。加圧力制御装置6はこの動作指令MVを受け、第一の電極1が下降開始するように電極駆動装置3を制御する(S202)。
第一の電極1が下降を開始し、その後、先端部1aが上側の金属板W1に当接することとなる。その間、制御装置8は、加圧力の測定値PVが所定の上限値以下であるかどうかの判断(S203)、及び、加圧力の測定値PVが所定範囲内にあるかどうかの判断(S204)を繰り返し行う。
所定の上限値とは、何らかの原因で急激に強い加圧力が加えられ、上側の金属板W1の変形や圧痕が生じてしまうことを防止するために設けられている上限値である。ステップS203において、加圧力の測定値PVが所定の上限値を超えたことが判明した場合には、上側の金属板W1を保護するために,加圧工程S200はその時点で中断される(S212)。
所定範囲とは、溶接を適切に行うことが可能な範囲として、予め設定された加圧力の範囲である。ステップS204においては、加圧力が未だ所定範囲内でない場合はステップS203に戻り、加圧力が所定範囲内となることを待つ。ステップS204において加圧力が所定範囲内となった場合は、制御装置8はその時点で加圧力制御装置6に停止指令STを出力する。加圧力制御装置6はこの停止指令STを受け、第一の電極1の下降を停止するように電極駆動装置3を制御する(S205)。
その後、複数の金属板Wに対して加える加圧力の制御が開始される(S206)。ステップS206以降では、制御装置8から加圧力制御装置6に対して、加圧力の目標値SVが継続的に出力される。この加圧力の目標値SVは、溶接を適切に行うことが可能な加圧力として予め設定されている値である。
加圧力制御装置6は、加圧力測定装置5から継続的に出力される加圧力の測定値PVに対して、移動平均を行った値であるFPVを内部処理によって算出し、その最新の値を図示しない内部メモリに保持している。ここで、移動平均の算出(平坦化処理)は、このように加圧力制御装置6の内部で行ってもよいし、加圧力測定装置5と加圧力制御装置6との間に別途設けられたフィルタ装置により行ってもよい。
加圧力制御装置6はこれ以降、このFPVが加圧力の目標値SVに一致するように、電極駆動装置3を制御する。即ち、加圧力の測定値PVに対して平坦化処理を行った値であるFPVをフィードバック値として用いることにより、加圧力の測定値PVが加圧力の目標値SVとなるように制御する。かかる制御は、一般的なPID制御により行われる。
尚、加圧力の測定値PVを直接フィードバック値として用いない理由は、加圧力の測定値PVの時間変化が、短い周期で変動する成分を含む波形として測定されるためである。加圧力の測定値PVを直接フィードバック値として用いると、加圧力の制御における操作量(本実施形態においては、電極駆動装置3の駆動力)も短い周期で変動することとなり、溶接システムWSを構成する装置に対する負担が大きくなる。また、加圧量の制御が短い周期の変動に対して追従できず、制御が不安定になってしまう場合もある。本実施形態では、加圧力の測定値PVに平坦化処理を行った値であるFPVをフィードバック値として用いることにより、溶接システムWSを構成する装置に対する負担が大きくなってしまうことが防止される。また、加圧量の制御が短い周期に対して追従できず、制御が不安定になってしまうことも防止される。
ステップS206で加圧力の制御が開始された後、所定のスクイズ時間が経過することを待ってから溶接工程S300に移行するために、制御装置8によって経過時間の計測が開始される(S207)。所定のスクイズ時間が経過することを待つ間においても、制御装置8は、加圧力の測定値PVが所定の上限値以下であるかどうかの判断(S208)、及び、加圧力の測定値PVが所定範囲内にあるかどうかの判断(S209)を繰り返し行っている。これらは、それぞれステップS203、及びステップS204と同様の判断を行う工程である。
S208において加圧力の測定値PVが所定の上限値を超えた場合には、制御装置8はその時点で加圧工程S200を中断する(S212)。これは、上側の金属板W1を保護するためである。S209において加圧力の測定値PVが所定範囲外となってしまった場合は、制御装置8はその時点で経過時間の計測をリセットする(S211)。これにより、複数の金属板Wに対し適切な加圧力を加えた状態が、スクイズ時間において確実に継続したことを確認してから、溶接工程S300に移行することになる。
加圧力の測定値PVが適正範囲内の状態で所定時間が経過したら(S210)、加圧工程S200は終了し、溶接工程S300に移行する。
溶接工程S300では、第一の電極1と第二の電極2との間に所定の溶接電流を流し、複数の金属板Wの溶接が行われる。
溶接工程S300の詳細を、図4を参照しながら説明する。図4は、溶接工程S300の詳細なステップを示したフローチャートである。溶接工程S300では、加圧力センサ4による加圧力の測定、及び、加圧力制御装置6による加圧力の制御が、加圧工程S200から継続して行われている。
溶接工程S300では、まず、制御装置8から溶接電源7に対して出力指令OPが入力される。溶接電源7は出力指令OPを受けることにより、第一の電極1と第二の電極2との間に所定の溶接電流を流し、複数の金属板Wの溶接が開始される(S301)。この溶接電流が複数の金属板Wの溶接個所において流れることにより、第一の金属板W1と第二の金属板W2との境界部にはジュール熱が発生し、このジュール熱によって溶接がなされる。
溶接電流を流し始めると同時に、制御装置8によって経過時間の計測が開始される(S302)。溶接電流を流す時間を適切に管理するためである。
溶接電流を流している間、制御装置8は、加圧力の測定値PVが所定の上限値以下であるかどうかの判断(S303)、及び、加圧力の測定値PVが所定範囲内にあるかどうかの判断(S304)を繰り返し行っている。これらは、それぞれ、加圧工程S200におけるステップS203、及びステップS204と同様の判断を行う工程である。
S303において加圧力の測定値PVが所定の上限値を超えた場合には、制御装置8はその時点で溶接工程S300を中断する(S309)。これは、上側の金属板W1を保護するためである。S304において加圧力の測定値PVが所定範囲外となってしまった場合は、制御装置8はその時点で溶接工程S300を中断する(S310)。これは、溶接工程S300において加圧力の測定値PVが所定範囲外となった場合、溶接個所において散りや爆飛が生じたことが推定されるからである。
このような散りや爆飛の発生について、図5及び図6を参照しながら説明する。図5及び図6は、加圧工程S200及び溶接工程S300における、加圧力の測定値PVの時間変化の様子を示したグラフである。図5及び図6において、点線で示した上限値UL、及び下限値LLは、それぞれステップS304で説明した所定範囲の上限値、及び下限値に相当するものである。
図5においては、溶接工程S300において溶接電流を流している間、加圧力の測定値PVは、常に所定の範囲内に収まっている。これは、溶接工程S300において散りや爆飛が発生せず、抵抗スポット溶接が良好に行われたことを示している。
一方、図6においては、溶接工程S300の時刻t1において、加圧力の測定値PVが急激に低下し、下限値LLを下回っている。これは、時刻t1において溶接箇所で散りが発生し、加圧力の測定値PVの瞬間的な低下として現れたことを示している。このため、この状態で溶接工程S300を継続することは適切ではないと判断し(S304)、制御装置8はその時点で溶接工程S300を中断している(S310)。
再び、図4に戻って説明を続ける。加圧力の測定値PVが適正範囲内の状態で所定時間が経過したら(S305)、制御装置8から溶接電源7に対して停止指令CPが入力される。溶接電源7は停止指令CPを受けることにより、溶接電流を停止する(S306)。続いて、制御装置8は、加圧力制御装置6による加圧力の制御(加圧力の測定値PVが加圧力の目標値SVとなるような制御)を終了する(S307)。
その後、制御装置8から加圧力制御装置6に対して動作指令MVが出力される。加圧力制御装置6はこの動作指令MVを受け、第一の電極1が上昇開始するように電極駆動装置3を制御する(S308)。これにより、溶接によって接合された複数の金属板Wを溶接システムWSから取り外すことが可能となり、溶接工程S300は終了する。
以上に説明したように、本実施形態に係る抵抗スポット溶接方法は、重ね合わせた複数の金属板Wを、第一の電極1及び第二の電極2により挟んだ状態で溶接する抵抗スポット溶接方法において、第一の電極1及び第二の電極2の間に、複数の金属板Wを設置する設置工程S100と、第一の電極1及び第二の電極2により、複数の金属板Wを挟んで加圧力を加える加圧工程S200と、複数の金属板Wに対して加圧力を加えた状態で、第一の電極1及び第二の電極2により複数の金属板Wに対して溶接電流を流す溶接工程S300と、を備える。
加圧工程S200は、制御装置8によって加圧力の測定値PVを継続的に取得しながら行われる。このため、それぞれの金属板(W1、W2)の厚さ、反り、材質等の違いに起因して、加圧工程S200において実際に加えられる加圧力が適正範囲を外れるようなことが生じた場合であっても、そのことを迅速に検知することができる。その結果、例えば、加圧力の測定値PVが適正範囲を外れたら迅速に加圧力の調整を行い、加圧力の測定値PVが適正範囲内に戻った時点から、再度スクイズ時間の経過を待つような対応が可能となる。
また、溶接工程S300は、制御装置8によって加圧力の測定値PVを継続的に取得しながら行われる。このため、溶接個所における金属板(W1、W2)の溶融や、ジュール熱による金属板(W1、W2)の熱膨張等の影響によって加圧力の測定値PVが変動したとしても、当該変動が生じたことを迅速に検知することができる。その結果、加圧力の測定値PVが適正範囲を外れた場合において、加圧力を調整して加圧力の測定値PVを適正範囲内に戻すような対応や、溶接工程S300を中断する等の対応が可能となる。
更に本実施形態に係る抵抗スポット溶接方法では、加圧工程S200において、加圧力の測定値PVが予め設定された所定の範囲を外れたことが測定された場合には、その時点で加圧工程S200を中断している(S208、S213)。このため、金属板(W1、W2)に対して過度の加圧力が加わってしまい、上側の金属板W2に圧痕や変形が生じてしまうことを確実に防止している。
また、溶接工程S300においても、加圧力の測定値PVが予め設定された所定の範囲を外れたことが測定された場合には、その時点で溶接工程S300を中断している(S303、S309、S304、S310)。このため、金属板(W1、W2)に対して過度の加圧力が加わってしまい、上側の金属板W1に圧痕や変形が生じてしまうことを確実に防止している。更に、散りや爆飛が発生しているにも関わらず溶接工程S300が継続されてしまうようなことを防止することができる。
本実施形態に係る抵抗スポット溶接方法では、加圧工程S200及び溶接工程S300において、加圧力の測定値PVが加圧力の目標値SVとなるように制御する加圧力制御装置6(加圧力制御手段)を備える。また、加圧力制御装置6は、加圧力の測定値PVをフィードバック値として用いるフィードバック制御を行う。
これにより、加圧力の測定値PVが種々の要因により変動したとしても、その変動に応じて適切な加圧力の調整を行おうことができる。これにより、複数の金属板Wが電極から受ける力の大きさを、常に適切な大きさ(加圧力の目標値SV)に維持することができる。
本実施形態に係る抵抗スポット溶接方法では、加圧力の測定値PVに対する平坦化処理として、加圧力制御装置6の内部処理により移動平均が行われる。また、移動平均後の値として出力されたFPVが、加圧力制御装置6の内部メモリに保持される。加圧力制御装置6は、加圧力の測定値PVに代えて、内部メモリに保持されたFPVをフィードバック値として用いる。
これにより、加圧力の測定値PVの時間変化が短い周期で変動する成分を含む波形であったとしても、加圧力の制御における操作量(電極駆動装置3の駆動力)が短い周期で変動することがない。このため、溶接システムWSを構成する装置に対する負担が大きくなってしまうことが防止される。また、加圧量の制御が短い周期に対して追従できず、制御が不安定になってしまうことも防止されている。
以上、具体例を参照しつつ本発明の実施の形態について説明した。しかし、本発明はこれらの具体例に限定されるものではない。すなわち、これら具体例に、当業者が適宜設計変更を加えたものも、本発明の特徴を備えている限り、本発明の範囲に包含される。例えば、前述した各具体例が備える各要素およびその配置、材料、条件、形状、サイズなどは、例示したものに限定されるわけではなく適宜変更することができる。特に第二の電極2は板状のみならず、第一の電極1と同形状であったり、また第一の電極1に対向した配置(ダイレクト方式)の他、部材の形状によって、配置が変わったり(インダイレクト方式)、第一の電極1と同一面上にあったり(シリーズ方式)、様々な形態がある。また、前述した各実施の形態が備える各要素は、技術的に可能な限りにおいて組み合わせることができ、これらを組み合わせたものも本発明の特徴を含む限り本発明の範囲に包含される。
1:第一の電極
1a:先端部
2:第二の電極
2a:載置面
3:電極駆動装置
4:加圧力センサ
5:加圧力測定装置
6:加圧力制御装置
7:溶接電源
8:制御装置
W:複数の金属板
W1:上側の金属板
W2:下側の金属板
WS:溶接システム

Claims (4)

  1. 重ね合わせた複数の金属板を、第一の電極及び第二の電極により挟んだ状態で溶接する抵抗スポット溶接方法において、
    前記第一の電極及び前記第二の電極の間に、前記複数の金属板を設置する設置工程と、
    前記第一の電極及び前記第二の電極により、前記複数の金属板を挟んで加圧力を加える加圧工程と、
    前記複数の金属板に対して加圧力を加えた状態で、前記第一の電極及び前記第二の電極により前記複数の金属板に対して溶接電流を流す溶接工程と、を備え、
    前記加圧工程及び前記溶接工程は、前記加圧力の大きさを継続的に測定しながら行われるものであって、
    前記加圧工程は、
    前記加圧力の測定値が予め設定された所定の範囲の上限値を上回ったことが測定された場合には中断される一方、前記加圧力の測定値が前記所定の範囲の下限値を下回ったことが測定された場合には継続されるものであり、
    前記溶接工程は、
    前記加圧力の測定値が前記所定の範囲の上限値を上回ったことが測定された場合、及び、前記所定の範囲の下限値を下回ったことが測定された場合のいずれにおいても中断されるものであることを特徴とする抵抗スポット溶接方法。
  2. 前記加圧工程及び前記溶接工程において、前記加圧力の測定値が所定の目標値となるように制御する加圧力制御手段を備え、前記加圧力制御手段は、前記加圧力の測定値をフィードバック値として用いるフィードバック制御を行うことを特徴とする、請求項1に記載の抵抗スポット溶接方法。
  3. 前記加圧力の測定値に対して平坦化処理を行い、前記平坦化処理がなされた後の値を出力する平坦化手段を有しており、前記加圧力制御手段は、前記加圧力の測定値に代えて、前記平坦化手段の出力値をフィードバック値として用いることを特徴とする、請求項に記載の抵抗スポット溶接方法。
  4. 前記平坦化処理は、移動平均を行う処理であることを特徴とする、請求項に記載の抵抗スポット溶接方法。
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