JP5971852B2 - フィンガーチャック - Google Patents

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本発明は、複数の爪によりワークを把持するフィンガーチャックに関するものである。
従来、ワークの剛性が低いような場合、チャック本体の前面に複数の爪を配設してなるフィンガーチャック(たとえば特許文献1)によってワークを把持することがある。しかしながら、このようなフィンガーチャックにおいては、前後方向を軸として回転動作すると、ワークをクランプするクランプ機構(爪や爪を進退及び回動させる軸等)に作用する遠心力によって、クランプ機構に歪が生じることになる。したがって、ワークを把持した状態において回転動作した際、クランプ機構に生じた歪がワークに影響を及ぼしてワークが変形をきたす等し、結果的にワークの回転に係る真円度が悪くなってしまったり、加工精度が低下するといった問題が発生する。
そこで、従来では、回転速度を下げてクランプ機構に作用する遠心力を低減させるようにしたり、クランプ機構の剛性を向上させることにより歪が生じにくい構造としたりすることによって上記問題に対応していた。
実開平1−166010号公報
しかしながら、回転速度を下げると当然ながら加工時間が長くなり、加工効率が低下するという問題が新たに発生する。また、クランプ機構の剛性を向上するとなると、コストがかかりすぎるという問題がある。
そこで、本発明は、上記問題に鑑みなされたものであって、回転速度を下げたり、クランプ機構の剛性を向上したりすることなく、ワークの回転に係る真円度を維持することができ、精度の高い加工を行うことができるフィンガーチャックを提供しようとするものである。
上記目的を達成するために、本発明のうち請求項1に記載の発明は、チャック本体の前面に複数の爪を備えており、前記爪によってワークをクランプ/アンクランプするフィンガーチャックであって、前記爪の後面側に設けられ、クランプ時に前記ワークの表面に当接するクランプ部材が、前記ワークの表面に当接する頭部と、前記頭部から延設された柱状の基部とからなり、前記基部の周面に弾性体が取り付けられている一方、前記爪の後面側に、少なくとも前記基部を挿入可能な設置穴が設けられており、前記クランプ部材が、前記弾性体が取り付けられた前記基部を前記設置穴へ挿入することによって、前記弾性体の弾性力により設置されていることを特徴とする。
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、前記設置穴へ挿入された前記基部の先端面と前記設置穴の底面側と接触しているとともに、その接触面の少なくとも一方曲面とされていることを特徴とする。
本発明によれば、各爪の後面側に、弾性体の弾性力によって設置されるクランプ部材を設けており、該クランプ部材をワークの表面に当接させてワークをクランプするようになっている。そのため、たとえ爪や爪を進退させる機構等といったクランプ機構に遠心力による歪が生じたとしても、弾性体が変形するだけで当該歪の影響がワークにまで伝わることがない。したがって、回転速度を下げて加工効率を低下させたり、クランプ機構を剛性の高い材料や構造に変更したりすることなく、低コストでワークの回転に係る真円度、ひいては加工精度を維持することができる。
また特に請求項2に記載の発明によれば、クランプ部材の基部を設置穴へ挿入した際、基部の先端面と設置穴の底面側とを接触させるとともに、その接触面の少なくとも一方を曲面としているため、歪が発生した際にクランプ部材の爪に対する相対姿勢が変わりやすく、弾性体によってスムーズに歪を吸収することができる。
フィンガーチャックを前面側から示した説明図である。 ワークをクランプした状態における爪の先端部の断面を示した説明図である。
以下、本発明の一実施形態となるフィンガーチャックについて、図面にもとづき詳細に説明する。
図1は、フィンガーチャック1を前面側から示した説明図である。なお、フィンガーチャック1の全体的な構造(たとえば各爪3、3・・を進退及び回動させる構造等)は、特許文献1に代表されるような従来周知のフィンガーチャックと同じ構造となっており、その詳細な説明は最低限にとどめる。
フィンガーチャック1は、前後方向を軸として回転可能なチャック本体2の前面に、複数の爪3、3・・をチャック本体2の回転軸を中心とした同一円周上に配設してなる。そして、各爪3は、チャック本体2の前面から前方へ突出した回動軸5の先端に取り付けられており、前後方向へ進退するとともに前後方向を軸として回動可能となっている。また、チャック本体2内には、前後方向へ進退可能に取り付けられた進退軸(図示せず)が設けられており、該進退軸の進退移動に伴い、各爪3が回動しながら後方へ移動し各爪3の先端部後面側がワークWの径方向端面に当接してワークWをクランプするクランプ位置(実線位置)と、各爪3が回動しながら前方へ移動しワークWをアンクランプするアンクランプ位置(二点鎖線位置)との間を作動することになる。なお、4は、回動軸5を保持するためのブラケットである。また、フィンガーチャック1におけるワークWの把持動作(すなわち爪3、3・・の進退及び回動動作)やチャック本体2の回転動作は、図示しないNC装置によって制御されている。
ここで、本発明の要部となる各爪3の構成について、図2にもとづき詳細に説明する。図2は、ワークWをクランプした状態における爪3の先端部の断面を示した説明図であって、図2の上下方向がフィンガーチャック1の前後方向(図2の上側がフィンガーチャック1の前側)となる。
爪3の先端部の後面には、ワークWの端面に当接するクランプコマ10が設置されている。該クランプコマ10は、頭部11と、頭部11から前方へ突出する基部12とからなる。頭部11は、円柱状に形成されたブロック体であって、その後面周縁部はクランプ時にワークWの端面を傷つけないように面取り11aされている。さらに、頭部11の周面には、抜け止めボルト30の先端が進入可能な凹溝13が周方向へ周設されている。また、基部12は、頭部11よりも一回り小径な円柱体として頭部11と一体的に成形されており、頭部11と基部12との連結部には段部14が形成されている。さらに、基部12の周面には、前後に2つの係止溝15、15が周設されており、各係止溝15にはOリング16が嵌着されている。加えて、基部12の上端面(先端面)は、平面ではなく所定の曲率のR面17とされている。
一方、爪3の先端部の後面には、上記クランプコマ10を設置するための設置穴21が凹設されている。当該設置穴21は、基部12を挿入可能な小径部22と、頭部11を収容可能な大径部23とからなる。小径部22は、Oリング16、16を装着した基部12を挿入可能であるものの頭部11よりは小径となっている。さらに、小径部22の上下方向深さは、基部12の上下方向長さよりも僅かに長く(深く)なっており、小径部22の上端部(設置穴21の底部)には座金24が設置されている。そして、クランプコマ10を設置した際、基部12のR面17が座金24に接触するようになっている。また、大径部23は、上下方向深さが頭部11の上下方向長さよりも短く(浅く)なっており、クランプコマ10を設置した際、頭部11の下部が爪3の後面よりも下方へ突出するようになっている。さらに、大径部23の周面には、抜け止めボルト30を取り付けるための取付孔25が穿設されている。
上述したようなクランプコマ10は、爪3の設置穴21へ基部12側から挿入し、座金24に基部12のR面17が接触するまで押し込むことにより、Oリング16、16の弾性力によって設置穴21内に設置されることになる。また、抜け止めボルト30を取付孔25へ差し込み、その先端を大径部23内へ突出させて頭部11の凹溝13へ進入させることで、設置穴21から抜け止めされている。そして、このようにして設置されたクランプコマ10を備えた爪3、3・・によりワークWをクランプすると、クランプコマ10の頭部11の後面がワークWの端面に当接することになる。したがって、当該状態のままチャック本体2を回転させると、遠心力によって回動軸5やブラケット4、爪3等といったクランプ機構に歪が生じるものの、Oリング16、16に吸収され(すなわちOリング16、16が歪んでクランプコマ10の爪3に対する相対的な姿勢が変わるだけで)ワークWにまで到達しない。
以上のような構成を有するフィンガーチャック1によれば、各爪3の後面側にOリング16、16を介して設置されたクランプコマ10を備え、該クランプコマ10をワークWの端面に当接させてワークWをクランプするようになっている。そのため、たとえクランプ機構に歪が生じたとしても、Oリング16、16が変形するだけで当該歪の影響がワークWにまで伝わることがない。したがって、回転速度を下げて加工効率を低下させたり、クランプ機構を剛性の高い材料や構造に変更したりすることなく、低コストでワークWの回転に係る真円度、ひいては加工精度を維持することができる。
また、クランプコマ10の基部12の座金24との接触面をR面17としているため、歪が発生した際にクランプコマ10の爪3に対する相対姿勢が変わりやすく、Oリング16、16によってスムーズに歪を吸収することができる。
なお、本発明に係るフィンガーチャックは、上記実施形態の態様に何ら限定されるものではなく、フィンガーチャックの全体的な構成やクランプコマの設置に係る構成等について、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、必要に応じて適宜変更することができる。
たとえば、Oリング16、16を介してクランプコマ10を爪3に設置するとしているが、板バネ等の他の弾性体を介してクランプコマ10を設置するとしても何ら問題はない。また、上記実施形態の如く爪3の後面に設置穴21を形成し、クランプコマ10の基部12を設置穴21へ差し込んで設置するようなものではなく、ただ単に爪3の後面に、弾性体を介して頭部11に相当するクランプ部材を貼着したようなものであっても、クランプ機構に生じる歪のワークWへの伝達防止といった点において一応の効果を得ることはできる。
さらに、上記実施形態では、基部12の上端面をR面17としているが、逆に座金24の表面をR面としても何ら問題はないし、設置穴21内に座金24を設置せず、基部12の上端面又は設置穴21の底面をR面として形成することも可能である他、R面を省略してもよい。なお、設置穴21の底面側をR面として形成する形成しないに拘わらず座金24を設置しない場合は、基部12の上端面17との接触面を摺動可能な面に仕上げるための加工が必要となり、設置穴21の底面にR面を形成する場合の加工は非常に手間がかかるため、座金24を設置する方が、構造的にもそしてコスト面においても好ましい。
さらにまた、爪3、3・・の回動を、進退軸の進退とは独立した機構で行うようにしてもよく、たとえば作業者により適宜回動させてボルトで締め付け固定する等のような構造としてもよいし、そもそも回動することなく前後方向への進退動作のみによってワークWをクランプ/アンクランプするような構造としても何ら問題はない。
加えて、上記実施形態では、クランプコマ10の頭部11の後面を平面としているが、曲面として(すなわちR形状に)形成してもよく、曲面とした場合には、クランプコマ10のワークWに対する相対姿勢が変わりやすいため、クランプ機構に生じた歪が一層ワークWへ伝わりにくくなるというメリットがある。
1・・フィンガーチャック、2・・チャック本体、3・・爪、5・・回動軸、10・・クランプコマ(クランプ部材)、11・・頭部、12・・基部、13・・凹溝、14・・段部、15・・係止溝、16・・Oリング(弾性体)、17・・R面(曲面)、21・・設置穴、22・・小径部、23・・大径部、24・・座金、25・・取付孔、30・・抜け止めボルト。

Claims (2)

  1. チャック本体の前面に複数の爪を備えており、前記爪によってワークをクランプ/アンクランプするフィンガーチャックであって、
    前記爪の後面側に設けられ、クランプ時に前記ワークの表面に当接するクランプ部材が、前記ワークの表面に当接する頭部と、前記頭部から延設された柱状の基部とからなり、前記基部の周面に弾性体が取り付けられている一方、
    前記爪の後面側に、少なくとも前記基部を挿入可能な設置穴が設けられており、
    前記クランプ部材が、前記弾性体が取り付けられた前記基部を前記設置穴へ挿入することによって、前記弾性体の弾性力により設置されていることを特徴とするフィンガーチャック。
  2. 前記設置穴へ挿入された前記基部の先端面と前記設置穴の底面側と接触しているとともに、その接触面の少なくとも一方曲面とされていることを特徴とする請求項1に記載のフィンガーチャック。
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