JP5968383B2 - 粘着性組成物、粘着剤および粘着シート - Google Patents

粘着性組成物、粘着剤および粘着シート Download PDF

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Description

本発明は、粘着性組成物、粘着剤(粘着性組成物を架橋させた材料)および粘着シートに関するものであり、特に、偏光板等の光学部材用として好適な粘着性組成物、粘着剤および粘着シートに関するものである。
一般的に、液晶パネルにおいては、偏光板や位相差板を液晶セルのガラス基板等に接着するのに粘着剤組成物から形成された粘着剤層が使用されることが多い。しかし、偏光板や位相差板等の光学部材は熱等により収縮し易いため、熱履歴により収縮が生じ、その結果、該光学部材に積層されている粘着剤層がその収縮に追従できずに、界面で剥がれ(いわゆる浮き、剥がれ)を生じるといった問題が指摘されている。
これを防止するための方法としては、(1)粘着力が高く、かつ、形態安定性に優れた粘着剤層を偏光板等の光学部材に貼り合せることにより光学部材の収縮自体を抑えこむ方法、あるいは、(2)光学部材の収縮時の応力が小さい粘着剤層を用いる方法、が挙げられる。(1)の方法としては、特許文献1に示されているように貯蔵弾性率の高い粘着剤層を用いることが有効である。一方、(2)の方法としては、光学部材の変形に柔軟に対応できる応力緩和性に優れた粘着剤層を用いることが有効である。しかし、従来、このような応力緩和性に優れた粘着剤層を形成しようとした場合、その粘着剤層中の架橋密度を低く設計する必要があった。そうすると粘着剤層自体の強度が低下し、耐久性が悪化するといった問題があった。
そこで、特許文献2〜4では、粘着剤層の架橋密度を低くする代わりに可塑剤、流動パラフィン、ウレタンエラストマー等をアクリル系粘着剤に添加することにより、得られる粘着剤組成物を適度に柔らかくして粘着剤層に応力緩和性を付与し、それによって耐久性を得ようとしている。
しかしながら、可塑剤または流動パラフィンを添加した粘着剤組成物は、形成される粘着剤層が、経時により可塑剤や流動パラフィンをブリードアウトするという難点を有していた。そして、これにより、接着耐久性が低下したり、被着体となる液晶セルが汚染されるなど、様々な問題が懸念されていた。また、ウレタンエラストマーを添加した粘着剤組成物は、相溶性を維持しようとするとウレタンエラストマーの添加量の上限が限られる。このため、この粘着剤組成物から得られる粘着剤層では、応力緩和性の改善は不十分となる傾向がみられた。さらに、応力緩和性を向上させるためにウレタンエラストマーの添加量を多くすると、アクリル系粘着剤との相溶性が低下し、白濁等の問題が生じていた。このように、従来の技術では、光学部材用の粘着剤組成物から形成される粘着剤層の凹凸追従性および耐久性を根本的に改善することは困難であった。
ところで、液晶パネルは、薄型で消費電力が小さいという利点を有する反面、輝度や視野角の点で不十分であるという欠点がある。そこで、バックライトを使用し、さらにパネル透過光を散乱させることでこれらを解決しようとする試みがなされてきた。その一つとして、透明樹脂中に無機微粒子を分散させた光拡散粘着層を液晶セルに設けることで、視野角の拡大と表示品質を高める手法が提案されている(特許文献5)。また、反射型液晶ディスプレイにおいても、透過した光を拡散させるために、光を拡散するためのフィラーを粘着剤に配合した拡散粘着層を液晶パネルに貼り合わせた液晶表示装置が提案されている(特許文献6)。これらの液晶パネルによれば、光の拡散によって輝度むらが抑制され、均一な明るさが得られる。
しかしながら、上記のように粘着剤に光拡散微粒子を添加した場合、得られる粘着剤が剛直化して、応力緩和性が低下するという問題がある。この粘着剤において、応力緩和性を付与するために、架橋密度を低くしたり、可塑剤等を添加したりすることは、前述したように耐久性を低下させてしまう。このように、光拡散微粒子を添加した粘着剤においても、トレードオフの関係にある応力緩和性と耐久性との両立が課題であった。
特開2006−235568号公報 特開平5−45517号公報 特開平9−137143号公報 特開2005−194366号公報 特開2001−133606号公報 特開平11−223712号公報
また、近年の液晶パネルの薄型化に伴って、液晶セルを機械研磨によって薄型化することが行われるが、これによって液晶セルの表面が粗面化する。表面が粗面化した液晶セルと粘着剤層との密着性を確保するには、粗面化した表面に対する粘着剤層のディンプル埋め性(凹凸追従性)を向上させることが望ましい。この要求を満たす方法としては、粘着剤組成物に可塑剤等の低分子量成分を添加する方法が一般的に考えられる。しかしながら、低分子量成分の導入は、粘着剤層の耐久性を低下させるという問題がある。
本発明は、このような実状に鑑みてなされたものであり、光拡散性を有し、かつ、偏光板等の光学部材に適用したときに、応力緩和性・凹凸追従性および耐久性に優れる粘着性組成物、粘着剤および粘着シートを提供することを目的とする。
上記目的を達成するために、第1に本発明は、重量平均分子量が50万〜300万の第1の(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)と、重量平均分子量が8000〜30万の第2の(メタ)アクリル酸エステル重合体(B)と、架橋剤(C)と、光拡散微粒子(D)とを含有し、前記第1の(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)100質量部に対する前記第2の(メタ)アクリル酸エステル重合体(B)の割合は、5〜50質量部であり、前記第2の(メタ)アクリル酸エステル重合体(B)は、前記架橋剤(C)と反応する官能基(b1)を有するモノマーを構成成分として含有しており、さらに、前記官能基(b1)を有するモノマーの割合は、当該第2の(メタ)アクリル酸エステル重合体(B)中において5質量%以上、かつ50質量%未満であり、前記第1の(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)は、前記架橋剤(C)と反応する官能基を有するモノマーを構成成分として含有しないか、前記第2の(メタ)アクリル酸エステル重合体(B)の前記官能基(b1)よりも前記架橋剤(C)との反応性が低い官能基(a1)を有するモノマーを構成成分として含有し、前記光拡散微粒子(D)の含有量は、前記第1の(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)および前記第2の(メタ)アクリル酸エステル重合体(B)の合計100質量部に対して、5.0〜50.0質量部であることを特徴とする粘着性組成物を提供する(発明1)。
上記発明(発明1)に係る粘着性組成物を架橋して得られる粘着剤は、光拡散微粒子を含有しながらも、適切な凝集力と優れた応力緩和性とを発揮する。この優れた応力緩和性を有する粘着剤を使用することで、偏光板等の光学部材に適用したときに、凹凸追従性と耐久性の両方に優れた、光拡散性を有する粘着シートが得られる。
上記発明(発明1)においては、前記光拡散微粒子(D)の遠心沈降光透過法による平均粒径が、0.1〜20μmであることが好ましい(発明2)。
上記発明(発明1,2)においては、前記光拡散微粒子(D)と前記第1の(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)との屈折率差、および前記光拡散微粒子(D)と前記第2の(メタ)アクリル酸エステル重合体(B)との屈折率差が、ともに0.1以上0.5未満であることが好ましい(発明3)。
上記発明(発明1〜3)において、前記光拡散微粒子(D)は、遠心沈降光透過法による平均粒径が1〜10μmであるケイ素含有化合物からなることが好ましい(発明4)。
上記発明(発明1〜4)において、前記第1の(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)における前記官能基(a1)はカルボキシル基であり、前記第2の(メタ)アクリル酸エステル重合体(B)における前記官能基(b1)は水酸基であり、前記架橋剤(C)は、イソシアネート系架橋剤であることが好ましい(発明5)。
上記発明(発明1〜4)において、前記第1の(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)は、当該重合体を構成するモノマー単位としてカルボキシル基含有モノマーを含有しないか、前記官能基(a1)としてカルボキシル基含有モノマーを15質量%以下の含有量で含有することが好ましい(発明6)。
上記発明(発明1〜6)において、前記第2の(メタ)アクリル酸エステル重合体(B)は、前記官能基(b1)として水酸基含有モノマーを〜40質量%含有することが好ましい(発明7)。
上記発明(発明5)において、前記イソシアネート系架橋剤の含有量は、当該イソシアネート系架橋剤のイソシアネート基が前記第2の(メタ)アクリル酸エステル重合体(B)における前記官能基(b1)の量に対して0.1〜3.5当量となる量であることが好ましい(発明8)。
上記発明(発明1〜8)においては、さらにシランカップリング剤(E)を含有することが好ましい(発明9)。
第2に本発明は、前記粘着性組成物(発明1〜9)を架橋してなる粘着剤を提供する(発明10)。
上記発明(発明10)においては、ヘイズ値が5%以上であることが好ましい(発明11)。
上記発明(発明10,11)においては、引張試験による破断伸度が1500%以上であることが好ましい(発明12)。
第3に本発明は、基材と、粘着剤層とを備えた粘着シートであって、前記粘着剤層は、前記粘着剤(発明10〜12)からなることを特徴とする粘着シートを提供する(発明13)。
上記発明(発明13)において、前記基材は、光学部材であることが好ましい(発明14)。
第4に本発明は、2枚の剥離シートと、前記2枚の剥離シートの剥離面と接するように前記剥離シートに挟持された粘着剤層とを備えた粘着シートであって、前記粘着剤層は、前記粘着剤(発明10〜12)からなることを特徴とする粘着シートを提供する(発明15)。
上記発明(発明10〜15)に係る粘着剤または粘着シートを使用することにより、上記の光拡散性によって、透過型液晶ディスプレイにおいては、バックライトの影や画像表示素子のムラを抑制することができ、半透過型液晶ディスプレイにおいては、反射板表面の凹凸による光干渉現象に起因する表示像のにじみやボケを抑制することができる。
本発明に係る粘着性組成物を架橋させた粘着剤においては、従来は可塑剤的に使用していた低分子量の重合体で化学的な架橋構造による三次元網目構造を形成し、その三次元網目構造に、複数の高分子量の重合体を挿入させることで、高分子量の重合体同士を拘束し、高分子量の重合体間に擬似的な架橋構造を形成するものと推定される。これにより、得られる粘着剤は、光拡散微粒子を含有しながらも、優れた応力緩和性を発揮する。この優れた応力緩和性を有する粘着剤を使用することで、偏光板等の光学部材に適用したときに、凹凸追従性と耐久性の両方に優れた、光拡散性を有する粘着シートが得られる。また、本発明に係る粘着剤または粘着シートを使用することにより、上記の光拡散性によって、透過型液晶ディスプレイにおいては、バックライトの影や画像表示素子のムラを抑制することができ、半透過型液晶ディスプレイにおいては、反射板表面の凹凸による光干渉現象に起因する表示像のにじみやボケを抑制することができる。
本発明の第1の実施形態に係る粘着シートの断面図である。 本発明の第2の実施形態に係る粘着シートの断面図である。 粘着剤層の凹凸追従性試験を説明する平面図である。 粘着剤層の凹凸追従性試験を説明する概略断面図である。
以下、本発明の実施形態について説明する。
〔粘着性組成物〕
本実施形態に係る粘着性組成物は、重量平均分子量(Mw)が50万〜300万の第1の(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)と、重量平均分子量(Mw)が8000〜30万の第2の(メタ)アクリル酸エステル重合体(B)と、架橋剤(C)と、光拡散微粒子(D)とを含有し、好ましくはシランカップリング剤(E)をさらに含有する。なお、本明細書において、(メタ)アクリル酸エステルとは、アクリル酸エステル及びメタクリル酸エステルの両方を意味する。他の類似用語も同様である。また、「重合体」には「共重合体」の概念も含まれるものとする。
上記粘着性組成物を架橋して得られる粘着剤においては、第2の(メタ)アクリル酸エステル重合体(B)(低分子量ポリマー)が架橋剤(C)を介して三次元網目構造を形成するものと推定される。そして、その三次元網目構造に、第1の(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)(高分子量ポリマー)2分子以上が、直接の化学結合を伴わずに、又は極めて少ない化学結合を伴って挿入され、重合体(A)同士がある程度の自由度を有する状態で拘束された、擬似的な架橋構造を形成しているものと推定される(このように推定される構造を、以下「構造X」という場合がある。)。かかる構造Xを有する粘着剤は、光拡散微粒子(D)を含有しながらも、優れた応力緩和性を発揮する。このように優れた応力緩和性を有する粘着剤は、偏光板等の光学部材に適用したときに、凹凸追従性に優れるとともに、耐久性にも優れ、高温条件下等においても浮きや剥がれなどを防止することができる。
上記(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)または(B)は、アルキル基の炭素数が1〜20の(メタ)アクリル酸アルキルエステルと、架橋剤(C)と反応する官能基を有するモノマー(反応性官能基含有モノマー)と、所望により用いられる他のモノマーとの共重合体が好ましい。なお、第1の(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)は、上記反応性官能基含有モノマーを構成単位として含有しないものも好ましい。
アルキル基の炭素数が1〜20の(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸n−ペンチル、(メタ)アクリル酸n−ヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸n−デシル、(メタ)アクリル酸n−ドデシル、(メタ)アクリル酸ミリスチル、(メタ)アクリル酸パルミチル、(メタ)アクリル酸ステアリル等が挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
一方、反応性官能基含有モノマーとしては、分子内に水酸基を有するモノマー(水酸基含有モノマー)、分子内にカルボキシル基を有するモノマー(カルボキシル基含有モノマー)、分子内にアミノ基を有するモノマー(アミノ基含有モノマー)などが好ましく挙げられる。なお、後述の反応官能基(a1)含有モノマー、反応官能基(b1)含有モノマーおよび反応官能基(b2)含有モノマーとしては、ここで述べる反応性官能基含有モノマーが該当する。その種類の選択は、各モノマーの項目にて説明するとおりである。
水酸基含有モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸4−ヒドロキシブチルなどの(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステル等が挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
カルボキシル基含有モノマーとしては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、イタコン酸、シトラコン酸等のエチレン性不飽和カルボン酸が挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
アミノ基含有モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸アミノエチル、(メタ)アクリル酸n−ブチルアミノエチル等が挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
さらに、上記他のモノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル等の脂肪族環を有する(メタ)アクリル酸エステル、(メタ)アクリル酸フェニル等の芳香族環を有する(メタ)アクリル酸エステル、アクリルアミド、メタクリルアミド等の非架橋性の(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリル酸N,N−ジメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸N,N−ジメチルアミノプロピル等の非架橋性の3級アミノ基を有する(メタ)アクリル酸エステル、酢酸ビニル、スチレンなどが挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
第2の(メタ)アクリル酸エステル重合体(B)は、架橋剤(C)と反応する官能基(b1)を有するモノマー(反応性官能基(b1)含有モノマー)を構成成分とする。当該重合体(B)が含有する、架橋剤(C)と反応する官能基は、実質的に官能基(b1)のみであることが好ましい。なお、「実質的に官能基(b1)のみ」とは、架橋剤(C)と反応する他の官能基を、官能基(b1)と架橋剤(C)との反応性を妨げない程度に含むことを許容するものである。
すなわち、第2の(メタ)アクリル酸エステル重合体(B)は、構成成分として、上記官能基(b1)よりも架橋剤(C)との反応性が低い官能基(b2)を有するモノマー(反応性官能基(b2)含有モノマー)を含有しないことが好ましい。しかし、反応性官能基(b2)含有モノマーを構成成分として含有する場合には、質量比として反応性官能基(b1)含有モノマーの含有量の1/5以下の量、特に1/10以下の量で含有することが好ましい。
なお、第2の(メタ)アクリル酸エステル重合体(B)に使用される反応性官能基(b1)含有モノマーおよび反応性官能基(b2)含有モノマー、ならびに後述する第1の(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)に使用される反応性官能基(a1)含有モノマーの選択は、使用する架橋剤(C)との反応性の関係で決定される。詳細は後述する。
第2の(メタ)アクリル酸エステル重合体(B)が、反応性官能基(b2)含有モノマーを、質量比として反応性官能基(b1)含有モノマーの含有量の1/5を超える量で含有すると、得られる粘着剤層の耐久性が低下するおそれがある。第2の(メタ)アクリル酸エステル重合体(B)中の反応性官能基(b2)が多過ぎると、これにより形成される三次元網目構造体内にも反応性官能基(b2)が多く残存することとなり、当該三次元網目構造体と第1の(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)との相溶性に変化を生じさせることが推定される。また、反応性官能基(b2)が多く残存する三次元網目構造体は、当該三次元網目構造体に挿入されている第1の(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)の可動性を過度に制限することも推定される。その結果、得られる粘着剤の応力緩和性が低下し、耐久性が悪化する場合がある。
さらに、本実施形態に係る粘着性組成物がシランカップリング剤(E)を含有する場合、シランカップリング剤(E)は、後述する第1の(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)の反応性官能基(a1)(特にカルボキシル基)と作用し、高分子量の第1の(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)と結合する。なお、ここでいう結合は、共有結合に限られるものではなく、水素結合、疎水性相互作用、ファンデルワールス力等をも含む概念である。これにより、シランカップリング剤(E)のアルコキシシリル基部分がガラス基板と作用するため、得られる粘着剤において被着体であるガラス基板等との密着性を向上させるものと推定される。ここで、第2の(メタ)アクリル酸エステル重合体(B)が反応性官能基(b2)含有モノマーを過剰に含有すると、シランカップリング剤(E)は、第2の(メタ)アクリル酸エステル重合体(B)の反応性官能基(b2)(特にカルボキシル基)とも作用して、低分子量の第2の(メタ)アクリル酸エステル重合体(B)と結合し、被着体と結合する機会を奪うものと推定される。その結果、得られる粘着剤が被着体であるガラス基板等との密着性に劣ることとなり、それにより、粘着剤層の耐久性が低下するおそれがある。
第2の(メタ)アクリル酸エステル重合体(B)は、上記反応性官能基(b1)含有モノマーを、1質量%を超えて含有し、その上限は50質量%未満である。好ましくは、上記反応性官能基(b1)含有モノマーを5〜30質量%含有し、特に好ましくは10〜20質量%含有する。反応性官能基(b1)含有モノマーを上記範囲で含有することで、第2の(メタ)アクリル酸エステル重合体(B)の架橋の程度が好ましくなり、第1の(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)との組み合わせにおいて、得られる粘着剤の応力緩和性を向上させることができる。その結果、凹凸追従性と耐久性とを併せ持つ粘着剤が得られる。また、反応性官能基(b1)含有モノマーの含有量が1質量%以下では、第2の(メタ)アクリル酸エステル重合体(B)の架橋が十分でなく、ゲル分率が低く、それにより耐久性が低下するおそれがある。一方、反応性官能基(b1)含有モノマーの含有量が50質量%以上であると、第2の(メタ)アクリル酸エステル重合体(B)の架橋が過度になり、応力緩和性が低下するおそれがある。
ここで、アルキル基の炭素数が1〜20の(メタ)アクリル酸アルキルエステルと、架橋剤(C)と反応する官能基を有するモノマーとを重合して得られる第2の(メタ)アクリル酸エステル重合体(B)の重合態様は、ランダム共重合体であってもよいし、ブロック共重合体であってもよい。
本実施形態において、上記の第2の(メタ)アクリル酸エステル系重合体(B)は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
第2の(メタ)アクリル酸エステル重合体(B)の重量平均分子量は8000〜30万であり、好ましくは1万〜20万であり、特に好ましくは5万〜10万である。すなわち、第2の(メタ)アクリル酸エステル重合体(B)は、低分子量ポリマー成分となっている。なお、本明細書における重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により測定したポリスチレン換算の値である。
第2の(メタ)アクリル酸エステル重合体(B)の重量平均分子量が上記範囲内にあることで、本実施形態に係る粘着性組成物に特有の三次元網目構造が形成され、優れた応力緩和性に寄与することとなる。すなわち、第2の(メタ)アクリル酸エステル重合体(B)の重量平均分子量が8000未満では、良好な三次元網目構造が得られない。一方、第2の(メタ)アクリル酸エステル重合体(B)の重量平均分子量が30万を超えると、第1の(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)などとの相溶性が低下し、光学特性に劣るものとなる場合がある。また、重合体(B)により形成される三次元網目構造体中への重合体(A)の挿入が不十分となり、その結果、得られる粘着剤が耐久性およびリワーク性に劣るものとなる場合がある。
第1の(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)は、好ましくは、架橋剤(C)と反応する官能基を有するモノマーを構成成分として含有しないか、第2の(メタ)アクリル酸エステル重合体(B)の上記官能基(b1)よりも架橋剤(C)との反応性が低い官能基(a1)を有するモノマー(反応性官能基(a1)含有モノマー)を構成成分として含有し、そして特に好ましくは、上記官能基(b1)よりも架橋剤(C)との反応性が高い官能基を有するモノマーを構成成分として含有しない。
第1の(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)は、架橋剤(C)と反応する官能基を有するモノマーを含有しなくてもよい。しかし、反応性官能基(a1)含有モノマーを含有すると、好ましい場合がある。すなわち、上記重合体(A)中に反応性官能基(a1)を含有すると、第2の(メタ)アクリル酸エステル重合体(B)と架橋剤(C)との反応を促進する場合がある。あるいは、シランカップリング剤(E)を使用する場合に、第1の(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)の反応性官能基(a1)が当該シランカップリング剤(E)と作用し、得られる粘着剤の液晶セル等のガラス面への接着耐久性をさらに好適にすることができ、好ましい場合がある。
第1の(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)が上記反応性官能基(a1)含有モノマーを含有する場合、その含有量は、通常20質量%以下であり、15質量%以下であることが好ましく、特に10質量%以下であることが好ましい。反応性官能基(a1)含有モノマーの含有量が20質量%を超えると、第1の(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)のガラス転移温度(Tg)が高くなりすぎて、得られる粘着剤の応力緩和性が低下するおそれがある。なお、粘着剤にリワーク性を付与する観点からは、反応性官能基(a1)含有モノマーの含有量は15質量%以下とすることが好ましい。
また、第2の(メタ)アクリル酸エステル重合体(B)が含有する反応性官能基(b1)含有モノマーとの比較においては、第1の(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)が含有する反応性官能基(a1)含有モノマーの当該第1の(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)中における割合は、第2の(メタ)アクリル酸エステル重合体(B)が含有する反応性官能基(b1)含有モノマーの当該第2の(メタ)アクリル酸エステル重合体(B)中における割合よりも小さいことが好ましい。これにより、第1の(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)が含有する反応性官能基(a1)と架橋剤(C)との反応を抑制し、第2の(メタ)アクリル酸エステル重合体(B)が含有する反応性官能基(b1)と架橋剤(C)とを確実に反応させることができる。これにより、得られる粘着剤の応力緩和性を向上させることができる。
第1の(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)は、架橋剤(C)との反応性が第2の(メタ)アクリル酸エステル重合体(B)の反応性官能基(b1)と同等以上の官能基を分子内に有するモノマーを含有しないのが好ましい。しかし、仮に含有する場合には、当該官能基を分子内に有するモノマーの含有量は、重合体(A)中にて1質量%以下であることが好ましく、特に0.5質量%以下であることが好ましい。当該モノマーの含有量が1質量%を超えると、優先的に反応すべき第2の(メタ)アクリル酸エステル重合体(B)と架橋剤(C)との反応を阻害するおそれがある。その結果、所望の応力緩和性が得られない場合がある。
ここで、アルキル基の炭素数が1〜20の(メタ)アクリル酸アルキルエステルと、反応性官能基含有モノマーとを重合して得られる第1の(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)の重合態様は、ランダム共重合体であってもよいし、ブロック共重合体であってもよい。
本実施形態において、上記の第1の(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
第1の(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)の重量平均分子量は50万〜300万であり、好ましくは70万〜250万であり、特に好ましくは100万〜200万である。すなわち、第1の(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)は、高分子量ポリマー成分となっている。
第1の(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)の重量平均分子量が上記範囲内にあり、重合体(A)が比較的大きな分子量を有することで、上記構造Xが良好に形成されるものと推定される。
ここで、第1の(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)の重量平均分子量が50万未満であると、得られる粘着剤のゲル分率が低く、耐久性およびリワーク性に劣るものとなるおそれがある。また、第1の(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)の重量平均分子量が300万を超えると、第2の(メタ)アクリル酸エステル重合体(B)等との相溶性が悪化し、得られる粘着剤の応力緩和性が低下するおそれがある。
第1の(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)100質量部に対する第2の(メタ)アクリル酸エステル重合体(B)の割合は、5〜50質量部であり、5〜40質量部であることが好ましく、10〜30質量部であることが特に好ましい。
上記割合で第1の(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)および第2の(メタ)アクリル酸エステル重合体(B)を含有する粘着性組成物から得られる粘着剤は、上記構造Xを良好に形成するものと推定される。
架橋剤(C)としては、イソシアネート系架橋剤、エポキシ系架橋剤、アジリジン系架橋剤、金属キレート系架橋剤等が好ましく挙げられる。
イソシアネート系架橋剤は、少なくともポリイソシアネート化合物を含むものである。ポリイソシアネート化合物としては、例えば、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート等の芳香族ポリイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート等の脂肪族ポリイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、水素添加ジフェニルメタンジイソシアネート等の脂環式ポリイソシアネートなど、及びそれらのビウレット体、イソシアヌレート体、さらにはエチレングリコール、プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、トリメチロールプロパン、ヒマシ油等の低分子活性水素含有化合物との反応物であるアダクト体などが挙げられる。これらの中でも、得られる架橋構造に適度な剛性と柔軟性を与えることができるため、トリメチロールプロパンのトリレンジイソシアネート(TDI系)付加物が特に好ましい。
エポキシ系架橋剤としては、例えば、1,3−ビス(N,N’−ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサン、N,N,N’,N’−テトラグリシジル−m−キシリレンジアミン、エチレングリコールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンジグリシジルエーテル、ジグリシジルアニリン、ジグリシジルアミン等が挙げられる。
アジリジン系架橋剤としては、例えば、ジフェニルメタン−4,4'−ビス(1−アジリジンカーボキサミド)、トリメチロールプロパントリ−β−アジリジニルプロピオネート、テトラメチロールメタントリ−β−アジリジニルプロピオネート、トルエン−2,4−ビス(1−アジリジンカーボキサミド)、トリエチレンメラミン、ビスイソフタロイル−1−(2−メチルアジリジン)、トリス−1−(2−メチルアジリジン)フォスフィン、トリメチロールプロパントリ−β−(2−メチルアジリジン)プロピオネート等が挙げられる。
金属キレート系架橋剤には、金属原子がアルミニウム、ジルコニウム、チタニウム、亜鉛、鉄、スズ等のキレート化合物があるが、性能の点からアルミニウムキレート化合物が好ましい。アルミニウムキレート化合物としては、例えば、ジイソプロポキシアルミニウムモノオレイルアセトアセテート、モノイソプロポキシアルミニウムビスオレイルアセトアセテート、モノイソプロポキシアルミニウムモノオレエートモノエチルアセトアセテート、ジイソプロポキシアルミニウムモノラウリルアセトアセテート、ジイソプロポキシアルミニウムモノステアリルアセトアセテート、ジイソプロポキシアルミニウムモノイソステアリルアセトアセテート等が挙げられる。
架橋剤(C)の含有量は、当該架橋剤(C)の架橋性基(例えば、イソシアネート基)が第2の(メタ)アクリル酸エステル重合体(B)の反応性官能基(b1)(例えば、水酸基)の量に対して、通常0.05〜5当量となる量であり、好ましくは0.1〜3.5当量となる量であり、特に好ましくは0.2〜2.0当量となる量であり、さらに好ましくは0.3〜1.0当量となる量である。上記架橋性基の量が0.05当量未満の場合、得られる粘着剤のゲル分率が低く、十分な凝集力を発揮することができないおそれがある。また、上記架橋性基の量が0.1当量以上、特に0.3当量以上であれば、得られる粘着剤を耐久性のさらに優れたものにすることができる。一方、上記架橋性基の量が3.5当量以下であれば、得られる粘着剤にて光学用途での十分な粘着力を確保することができる。さらに、上記架橋性基の量が1.0当量以下であれば、架橋剤(C)を重合体(B)の三次元網目構造の形成にのみ寄与させ、重合体(A)の架橋を有効に防止することができるものと推定される。その結果、得られる粘着剤は応力緩和性に優れたものとなる。
本実施形態においては、架橋剤(C)として、第2の(メタ)アクリル酸エステル重合体(B)の反応性官能基(b1)および第1の(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)の反応性官能基(a1)の両方との反応性の関係が一致する種類の架橋剤であれば複数種類のものを併用してもよい。第2の(メタ)アクリル酸エステル重合体(B)により形成される三次元網目構造の制御を容易にする観点からは、例えばイソシアネート系架橋剤のみを用いるといったように、官能基として1種類の架橋剤のみを使用することが好ましく、さらには、化合物として1つの架橋剤のみを使用することが特に好ましい。
ここで、架橋剤(C)と、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)および(B)それぞれの反応性官能基含有モノマーとの組み合わせとしては、架橋剤(C)がイソシアネート系架橋剤の場合、重合体(A)の反応性官能基(a1)含有モノマーとしてはカルボキシル基含有モノマー、重合体(B)の反応性官能基(b1)含有モノマーとしては水酸基含有モノマーまたはアミノ基含有モノマー(特に水酸基含有モノマー)、重合体(B)の反応性官能基(b2)含有モノマーとしてはカルボキシル基含有モノマーが好ましく選択される。
一方、架橋剤(C)がエポキシ系架橋剤、アジリジン系架橋剤または金属キレート系架橋剤の場合は、重合体(A)の反応性官能基(a1)含有モノマーとしては水酸基含有モノマー、重合体(B)の反応性官能基(b1)含有モノマーとしてはカルボキシル基含有モノマー、重合体(B)の反応性官能基(b2)含有モノマーとしては水酸基含有モノマーが好ましく選択される。
架橋剤(C)と重合体(B)との間で形成される結合の柔軟性、および架橋反応の穏やかさ、さらに、重合体(A)の反応性基がシランカップリング剤(E)と適切に反応し、得られる粘着剤の接着耐久性向上に寄与することから、架橋剤(C)をイソシアネート系架橋剤、重合体(A)の反応性官能基(a1)含有モノマーをカルボキシル基含有モノマー、重合体(B)の反応性官能基(b1)含有モノマーを水酸基含有モノマーとし、反応性官能基(b2)含有モノマーを使用しないことが特に好ましい。
本実施形態に係る粘着性組成物は、光拡散微粒子(D)を含有する。この光拡散微粒子(D)による光拡散性によって、透過型液晶ディスプレイにおいては、バックライトの影や画像表示素子のムラを抑制することができ、半透過型液晶ディスプレイにおいては、反射板表面の凹凸による光干渉現象に起因する表示像のにじみやボケを抑制することができる。
光拡散微粒子(D)としては、本発明の効果を阻害することなく、得られる粘着剤に光拡散性を付与することができるものであればよく、例えば、シリカ、炭酸カルシウム、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、クレー、タルク、二酸化チタン等の無機系白色微粒子;アクリル樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリエチレン樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂等の有機系の透明または白色微粒子;無機と有機の中間的な構造を有するケイ素含有化合物からなる微粒子(例えばモメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン社製のトスパールシリーズ)などが挙げられる。中でも、アクリル樹脂微粒子および無機と有機の中間的な構造を有するケイ素含有化合物からなる微粒子、特に無機と有機の中間的な構造を有するケイ素含有化合物からなる微粒子は、上記重合体(A)および(B)に対する分散性が優れ、均一で良好な光拡散性が得られることから好ましい。以上の光拡散微粒子(D)は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
光拡散微粒子(D)の形状としては、光拡散が均一な球状の微粒子が好ましい。光拡散微粒子(D)の遠心沈降光透過法による平均粒径は、0.1〜20μmであることが好ましく、1〜10μmであることがより好ましい。特に、光拡散微粒子(D)がケイ素含有化合物からなる微粒子の場合、遠心沈降光透過法による平均粒径は1〜10μmであることが好ましい。平均粒径が0.1μm未満であると、光拡散性が低下して、液晶ディスプレイにおける上記のムラ、にじみ、ボケ等を抑制することが困難となるおそれがある。一方、平均粒径が20μmを超えると、画像のコントラストに悪影響を与えるおそれがあり、さらに、ディスプレイの画像ピッチより大きくなる場合にはギラツキが発生することがある。
なお、上記遠心沈降光透過法による平均粒径は、微粒子1.2gとイソプロピルアルコール98.8gとを十分に撹拌したものを測定用試料とし、遠心式自動粒度分布測定装置(堀場製作所社製,CAPA−700)を使用して測定したものである。
光拡散微粒子(D)と第1の(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)との屈折率差、および光拡散微粒子(D)と第2の(メタ)アクリル酸エステル重合体(B)との屈折率差は、ともに0.1以上0.5未満であることが好ましく、特に0.3〜0.5であることが好ましい。屈折率差が上記の範囲内にあることで、光拡散微粒子(D)による光拡散性が良好に発揮され、液晶ディスプレイにおける上記のムラ、にじみ、ボケ等を効果的に抑制することができる。
ここで、光拡散微粒子(D)の屈折率は、後述する試験例に示すように、屈折率標準液を使用して測定した値である。一方、重合体(A)および(B)の屈折率は、アッベ屈折計を使用して、JIS K0062に準じて測定した値である。
本実施形態に係る粘着性組成物における光拡散微粒子(D)の含有量は、第1の(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)および第2の(メタ)アクリル酸エステル重合体(B)の合計100質量部に対して、5.0〜50.0質量部であり、5〜40質量部であることが好ましく、10〜30質量部であることが特に好ましい。光拡散微粒子(D)の含有量が上記範囲内にあることで、得られる粘着剤の応力緩和性を阻害することなく、光拡散性を効果的に発揮することができる。
本実施形態に係る粘着性組成物は、好ましくは、さらにシランカップリング剤(E)を含有する。このシランカップリング剤(E)を含有すると、第1の(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)がカルボキシル基を有する場合に、シランカップリング剤(E)の有機反応性基等と第1の(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)のカルボキシル基とが反応し、他方においてシランカップリング剤(E)のアルコキシシリル基等がガラス基板等の被着体面に作用する。このため、例えば偏光板を液晶ガラスセルなどに貼合する場合に、粘着剤と液晶ガラスセルとの間の密着性がより良好となる。なお、重合体(A)の反応性官能基(a1)が、カルボキシル基以外である場合には、当該反応性官能基(a1)と作用する有機反応性基を有するシランカップリング剤(E)が適宜選択される。
このシランカップリング剤(E)としては、分子内にアルコキシシリル基を少なくとも1個有する有機ケイ素化合物であって、粘着剤成分との相溶性がよく、かつ光透過性を有するもの、例えば実質上透明なものが好適である。このようなシランカップリング剤(E)の添加量は、第1の(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)100質量部に対して0.01〜1.0質量部であることが好ましく、特に0.05〜0.5質量部であることが好ましい。
シランカップリング剤(E)の具体例としては、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン等の重合性不飽和基含有ケイ素化合物、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン等のエポキシ構造を有するケイ素化合物、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン等のアミノ基含有ケイ素化合物、3−クロロプロピルトリメトキシシラン、3−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン等が挙げられる。これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
上記粘着性組成物には、所望により、アクリル系粘着剤に通常使用されている各種添加剤、例えば粘着付与剤、帯電防止剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、軟化剤、充填剤などを添加することができる。
〔粘着性組成物の製造方法〕
上記粘着性組成物は、第1の(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)と、第2の(メタ)アクリル酸エステル重合体(B)のそれぞれを製造し、それらを混合するとともに、任意の段階で架橋剤(C)、帯電防止剤(D)及び所望によりシランカップリング剤(E)を添加することで製造することができる。
好ましい具体例としては、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)および(B)を、それぞれ別個に通常のラジカル重合法により製造する。(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)および(B)の重合は、所望により重合開始剤を使用して、溶液重合法等により行うことができる。重合溶媒としては、例えば、酢酸エチル、酢酸n−ブチル、酢酸イソブチル、トルエン、アセトン、ヘキサン、メチルエチルケトン等が挙げられ、2種類以上を併用してもよい。
重合開始剤としては、アゾ系化合物、有機過酸化物等が挙げられ、2種類以上を併用してもよい。アゾ系化合物としては、例えば、2,2'−アゾビスイソブチロニトリル、2,2'−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、1,1'−アゾビス(シクロヘキサン1−カルボニトリル)、2,2'−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2'−アゾビス(2,4−ジメチル−4−メトキシバレロニトリル)、ジメチル2,2'−アゾビス(2−メチルプロピオネート)、4,4'−アゾビス(4−シアノバレリック酸)、2,2'−アゾビス(2−ヒドロキシメチルプロピオニトリル)、2,2'−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]等が挙げられる。
有機過酸化物としては、例えば、過酸化ベンゾイル、t-ブチルパーベンゾエイト、クメンヒドロパーオキシド、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ−n−プロピルパーオキシジカーボネート、ジ(2−エトキシエチル)パーオキシジカーボネート、t-ブチルパーオキシネオデカノエート、t-ブチルパーオキシビバレート、(3,5,5−トリメチルヘキサノイル)パーオキシド、ジプロピオニルパーオキシド、ジアセチルパーオキシド等が挙げられる。
なお、上記重合工程において、2−メルカプトエタノール等の連鎖移動剤を配合することにより、得られる重合体の重量平均分子量を調節することができる。
次に、得られた重合体(A)および(B)の溶液を混合し、希釈溶媒を加える。その後、架橋剤(C)、光拡散微粒子(D)及び所望によりシランカップリング剤(E)を添加し、十分に混合することにより、溶媒で希釈された粘着性組成物(塗布溶液)を得る。
粘着性組成物を希釈して塗布溶液とするための希釈溶剤としては、例えば、ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサン等の脂肪族炭化水素、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素、塩化メチレン、塩化エチレン等のハロゲン化炭化水素、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、1−メトキシ−2−プロパノール等のアルコール、アセトン、メチルエチルケトン、2−ペンタノン、イソホロン、シクロヘキサノン等のケトン、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル、エチルセロソルブ等のセロソルブ系溶剤などが用いられる。
このようにして調製された塗布溶液の濃度・粘度としては、コーティング可能な範囲であればよく、特に制限されず、状況に応じて適宜選定することができる。例えば、粘着性組成物の濃度が10〜40質量%となるように希釈する。なお、塗布溶液を得るに際して、希釈溶剤等の添加は必要条件ではなく、粘着性組成物がコーティング可能な粘度等であれば、希釈溶剤を添加しなくてもよい。この場合、粘着性組成物がそのまま塗布溶液となる。
〔粘着剤〕
本実施形態に係る粘着剤は、上記粘着性組成物を架橋してなるものである。上記粘着性組成物の架橋は、加熱処理により行うことができる。なお、この加熱処理は、粘着性組成物の希釈溶媒等を揮発させる際の乾燥処理で兼ねることもできる。
加熱処理を行う場合、加熱温度は、50〜150℃であることが好ましく、特に70〜120℃であることが好ましい。また、加熱時間は、30秒〜3分であることが好ましく、特に50秒〜2分であることが好ましい。さらに、加熱処理後、常温(例えば、23℃、50%RH)で1〜2週間程度の養生期間を設けることが特に好ましい。
上記の加熱処理(及び養生)により、架橋剤(C)によって第2の(メタ)アクリル酸エステル重合体(B)が架橋するとともに、その三次元網目構造に第1の(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)が挿入され、上記構造Xが形成されるものと推定される。第1の(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)がカルボキシル基を有する場合には、第1の(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)はシランカップリング剤(E)と反応して、得られる粘着剤の液晶セル等のガラス基板への接着耐久性を向上させることができる。
得られる粘着剤のヘイズ値(JIS K7105に準じて測定した値)は、5%以上であることが好ましく、10%以上であることがより好ましく、40%以上であることが特に好ましく、60%以上であることがさらに好ましい。ヘイズ値が5%以上であることで、当該粘着剤は良好な光拡散性を有するものとなる。
本実施形態に係る粘着剤の粘着力は、無アルカリガラスに対する粘着力が、0.1〜50N/25mmであることが好ましく、特に0.5〜30N/25mmであることが好ましい。なお、ここでいう粘着力は、JIS Z0237に準じた180°引き剥がし粘着力(剥離速度300mm/min)をいい、被着体に貼付し、0.5MPa、50℃で20分加圧した後、23℃、50%RHの条件下で24時間放置してから測定するものとする。粘着力が上記の範囲内にあることで、偏光板等の光学部材に適用したときに、浮きや剥がれなどを防止することができる。
本実施形態に係る粘着剤の引張試験による破断伸度は、1500%以上であることが好ましく、特に2000%以上であることが好ましく、さらには2500%以上であることが好ましい。なお、上記破断伸度は、基材等の積層されていない粘着剤層単独での測定値を表す。本実施形態に係る粘着剤が、かかる大きな破断伸度を有することにより、当該粘着剤は、優れた応力緩和性を示し、凹凸追従性および耐久性の両方に優れたものになり得る。
上記引張試験は、具体的には、厚さ500μm、幅10mm、伸長方向の長さ75mm(このうち測定部位の長さは20mm)に成形した粘着剤を、23℃、50%RHの環境下で、200mm/分の速度で伸長させて行うものとする。
また、本実施形態に係る粘着剤は、上記引張試験により伸長させたときに、最大応力が、破断時(4000%伸長までに破断した場合)または4000%伸長時(4000%伸長までに破断しなかった場合)の応力以上であることが好ましい。かかる性質は、伸長と同時にその応力の緩和が生じていることに起因するものと推定される。このように優れた応力緩和性を有する粘着剤を使用することで、偏光板等の光学部材に適用したときに、凹凸追従性と耐久性の両方に優れた粘着シートが得られる。
さらに、本実施形態に係る粘着剤は、上記引張試験における最大応力が10N以下であることが好ましく、特に5N以下であることが好ましい。最大応力が大きすぎると、凹凸追従性が悪化する場合がある。なお、当該最大応力の下限値は、耐久性の観点から、0.1N以上であることが好ましく、特に0.5N以上であることが好ましい。
本実施形態に係る粘着剤は、ゲル分率が30〜90%であることが好ましく、特に40〜80%であることが好ましく、さらには45〜75%であることが好ましい。本実施形態に係る粘着剤のゲル分率、すなわち架橋の程度が上記の範囲にあることで、第2の(メタ)アクリル酸エステル重合体(B)の架橋による三次元網目構造が良好に形成され、粘着剤が凹凸追従性および耐久性の両方に優れたものになり得る。
なお、粘着剤のゲル分率は、貼付時(養生期間経過後)での値である。具体的には、粘着性組成物を剥離シートに塗布し、加熱処理した後、23℃、50%RHの環境下にて7日間保管(養生)した後のゲル分率をいう。粘着剤のゲル分率は、養生期間経過前は、その値が変動するからである。このような観点から、養生期間が経過しているかどうか不明の場合、改めて、23℃、50%RHの環境下にて7日間保管した後、ゲル分率が上記範囲内となっていればよい。
以上説明した粘着剤は、光学部材用として好ましく用いることができ、例えば、偏光板(偏光フィルム)と位相差板(位相差フィルム)などの光学部材同士の接着、あるいは偏光板(偏光フィルム)や位相差板(位相差フィルム)とガラス基板との接着に好適である。本実施形態に係る粘着剤は光拡散性を有するため、当該粘着剤を使用した透過型液晶ディスプレイにおいては、バックライトの影や画像表示素子のムラを抑制することができ、当該粘着剤を使用した半透過型液晶ディスプレイにおいては、反射板表面の凹凸による光干渉現象に起因する表示像のにじみやボケを抑制することができる。また、上記粘着剤によって形成される粘着剤層は、応力緩和性に非常に優れるため、被着体の寸法変化が大きい場合であっても、その寸法変化によって生じ得る応力を粘着剤層で吸収・緩和することができ、したがって長期にわたって被着体から剥がれ難いものとなる。さらに、本実施形態に係る粘着剤を表面が粗面化した液晶セルに接着する場合でも、当該粘着剤は凹凸追従性に優れるため、当該粘着剤はディンプルを埋めるようにして液晶セルに密着し、それより優れた光学特性が得られるとともに、接着耐久性が高いものとなる。すなわち、本実施形態に係る粘着剤は、光拡散性を有しつつ、凹凸追従性と耐久性との両立を達成するものである。
〔粘着シート〕
図1に示すように、第1の実施形態に係る粘着シート1Aは、下から順に、剥離シート12と、剥離シート12の剥離面に積層された粘着剤層11と、粘着剤層11に積層された基材13とから構成される。
また、図2に示すように、第2の実施形態に係る粘着シート1Bは、2枚の剥離シート12a,12bと、それら2枚の剥離シート12a,12bの剥離面と接するように当該2枚の剥離シート12a,12bに挟持された粘着剤層11とから構成される。なお、本明細書における剥離シートの剥離面とは、剥離シートにおいて剥離性を有する面をいい、剥離処理を施した面および剥離処理を施さなくても剥離性を示す面のいずれをも含むものである。
いずれの粘着シート1A,1Bにおいても、粘着剤層11は、前述した粘着性組成物を架橋してなる粘着剤からなる。
粘着剤層11の厚さは、粘着シート1A,1Bの使用目的に応じて適宜決定されるが、通常5〜100μm、好ましくは10〜60μmの範囲であり、例えば、光学部材、特に偏光板用の粘着剤層として使用する場合には、10〜50μm、特に10〜30μmであることが好ましい。
基材13としては、特に制限は無く、通常の粘着シートの基材シートとして用いられているものは全て使用できる。例えば、所望の光学部材の他、レーヨン、アクリル、ポリエステル等の繊維を用いた織布または不織布;上質紙、グラシン紙、含浸紙、コート紙等の紙類;アルミ、銅等の金属箔;ウレタン発泡体、ポリエチレン発泡体等の発泡体;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステルフィルム、ポリウレタンフィルム、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、トリアセチルセルロース等のセルロースフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、ポリ塩化ビニリデンフィルム、ポリビニルアルコールフィルム、エチレン−酢酸ビニル共重合体フィルム、ポリスチレンフィルム、ポリカーボネートフィルム、アクリル樹脂フィルム、ノルボルネン系樹脂フィルム、シクロオレフィン樹脂フィルム等のプラスチックフィルム;これらの2種以上の積層体などを挙げることができる。プラスチックフィルムは、一軸延伸または二軸延伸されたものでもよい。
光学部材としては、例えば、偏光板(偏光フィルム)、偏光子、位相差板(位相差フィルム)、視野角補償フィルム、輝度向上フィルム、コントラスト向上フィルム、液晶ポリマーフィルム、拡散フィルム、半透過反射フィルム等が挙げられる。中でも偏光板(偏光フィルム)は、収縮し易く、寸法変化が大きいため、凹凸追従性の観点から、本実施形態の粘着剤(上記粘着剤層11)を形成する対象として好適である。
基材13の厚さは、その種類によっても異なるが、例えば光学部材の場合には、通常10μm〜500μmであり、好ましくは50μm〜300μmである。
剥離シート12,12a,12bとしては、例えば、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリブテンフィルム、ポリブタジエンフィルム、ポリメチルペンテンフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、塩化ビニル共重合体フィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリエチレンナフタレートフィルム、ポリブチレンテレフタレートフィルム、ポリウレタンフィルム、エチレン酢酸ビニルフィルム、アイオノマー樹脂フィルム、エチレン・(メタ)アクリル酸共重合体フィルム、エチレン・(メタ)アクリル酸エステル共重合体フィルム、ポリスチレンフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリイミドフィルム、フッ素樹脂フィルム等が用いられる。また、これらの架橋フィルムも用いられる。さらに、これらの積層フィルムであってもよい。
上記剥離シートの剥離面(特に粘着剤層11と接する面)には、剥離処理が施されていることが好ましい。剥離処理に使用される剥離剤としては、例えば、アルキッド系、シリコーン系、フッ素系、不飽和ポリエステル系、ポリオレフィン系、ワックス系の剥離剤が挙げられる。
剥離シート12,12a,12bの厚さについては特に制限はないが、通常20〜150μm程度である。
上記粘着シート1Aを製造するには、剥離シート12の剥離面に、上記粘着性組成物を含む溶液(塗布溶液)を塗布し、加熱処理を行って粘着剤層11を形成した後、その粘着剤層11に基材13を積層する。その後、養生期間を設けることが好ましい。
なお、加熱処理および養生の条件については、前述した通りである。
また、上記粘着シート1Bを製造するには、一方の剥離シート12a(または12b)の剥離面に、上記粘着性組成物を含む塗布溶液を塗布し、加熱処理を行って粘着剤層11を形成した後、その粘着剤層11に他方の剥離シート12b(または12a)の剥離面を重ね合わせる。
上記塗布溶液を塗布する方法としては、例えばバーコート法、ナイフコート法、ロールコート法、ブレードコート法、ダイコート法、グラビアコート法等を利用することができる。
ここで、例えば、液晶セルと偏光板とから構成される液晶表示装置を製造するには、粘着シート1Aの基材13として偏光板を使用し、当該粘着シート1Aの剥離シート12を剥離して、露出した粘着剤層11と液晶セルとを貼合すればよい。
また、例えば、液晶セルと偏光板との間に位相差板が配置される液晶表示装置を製造するには、一例として、まず、粘着シート1Bの一方の剥離シート12a(または12b)を剥離して、粘着シート1Bの露出した粘着剤層11と位相差板とを貼合する。次いで、基材13として偏光板を使用した粘着シート1Aの剥離シート12を剥離して、粘着シート1Aの露出した粘着剤層11と上記位相差板とを貼合する。さらに、上記粘着シートBの粘着剤層11から他方の剥離シート12b(または12a)を剥離して、粘着シートBの露出した粘着剤層11と液晶セルとを貼合する。
以上の粘着シート1A,1Bによれば、粘着剤層11によって光拡散性が得られるだけでなく、粘着剤層11が応力緩和性に非常に優れるため、例えば偏光板の接着に適用した場合でも、偏光板の変形によって生じ得る応力を粘着剤層11で吸収・緩和することができ、それにより、高い耐久性が発揮されているものと推定される。また、粘着剤層11の優れた応力緩和性により、表面が粗面化した液晶セルに接着する場合でも、当該粘着剤層11は凹凸追従性に優れ、液晶セルに密着する。
以上説明した実施形態は、本発明の理解を容易にするために記載されたものであって、本発明を限定するために記載されたものではない。したがって、上記実施形態に開示された各要素は、本発明の技術的範囲に属する全ての設計変更や均等物をも含む趣旨である。
例えば、粘着シート1Aの剥離シート12は省略されてもよいし、粘着シート1Bにおける剥離シート12a,12bのいずれか一方は省略されてもよい。
以下、実施例等により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明の範囲はこれらの実施例等に限定されるものではない。
〔実施例1〕
1.重合体(A)の調製
攪拌機、温度計、還流冷却器、滴下装置および窒素導入管を備えた反応容器に、アクリル酸n−ブチル95.0質量部、アクリル酸5.0質量部、酢酸エチル200質量部、および2,2'−アゾビスイソブチロニトリル0.08質量部を仕込み、上記反応容器内の空気を窒素ガスで置換した。この窒素雰囲気下中で攪拌しながら、反応溶液を60℃に昇温し、16時間反応させた後、室温まで冷却した。ここで、得られた溶液の一部を後述する方法で分子量を測定し、重量平均分子量150万の重合体(A)の生成を確認した。
2.重合体(B)の調製
攪拌機、温度計、還流冷却器、滴下装置および窒素導入管を備えた反応容器に、アクリル酸n−ブチル85.0質量部、アクリル酸2−ヒドロキシエチル15.0質量部、酢酸エチル200質量部、2,2'−アゾビスイソブチロニトリル0.16質量部、および2−メルカプトエタノール0.3質量部を仕込み、上記反応容器内の空気を窒素ガスで置換した。この窒素雰囲気下中で攪拌しながら、反応溶液を70℃に昇温し、6時間反応させた後、室温まで冷却した。ここで、得られた溶液の一部を後述する方法で分子量を測定し、重量平均分子量6万の重合体(B)の生成を確認した。
3.粘着性組成物の調製
上記工程(1)で得られた重合体(A)100質量部(固形分換算値)と、上記工程(2)で得られた重合体(B)20質量部(固形分換算値)とを混合した後、架橋剤(C)として、重合体(B)の水酸基0.6当量に相当する量のトリメチロールプロパンのトリレンジイソシアネート(TDI系)付加物(日本ポリウレタン社製,商品名「コロネートL」)2.83質量部を添加した。最後に、光拡散微粒子(D)として、無機と有機の中間的な構造を有するケイ素含有化合物からなる微粒子(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン社製,商品名「トスパール145」,平均粒径:4.5μm,屈折率:1.42)5.0質量部、およびシランカップリング剤(E)として、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業社製,商品名「KBM403」)0.2質量部を添加し、十分に撹拌することにより、粘着性組成物の希釈溶液を得た。
ここで、当該粘着性組成物の配合を表1に示す。なお、表1に記載の略号等の詳細は以下の通りである。
[重合体(A)および(B)]
BA:アクリル酸n−ブチル
AA:アクリル酸
HEA:アクリル酸2−ヒドロキシエチル
[イソシアネート系架橋剤(C)]
コロネートL:トリメチロールプロパンのトリレンジイソシアネート付加物(日本ポリウレタン社製,商品名「コロネートL」)
[光拡散微粒子(D)]
トスパール145:無機と有機の中間的な構造を有するケイ素含有化合物からなる微粒子(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン社製,商品名「トスパール145」,平均粒径:4.5μm,屈折率:1.42)
トスパール120:無機と有機の中間的な構造を有するケイ素含有化合物からなる微粒子(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン社製,商品名「トスパール120」,平均粒径:2.0μm,屈折率:1.42)
MX500:架橋アクリル樹脂ビーズ(綜研化学社製,商品名「MX−500」,平均粒径:5μm,屈折率:1.49)
[シランカップリング剤(E)]
KBM403:3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(信越化学社製,商品名「KBM403」)
得られた粘着性組成物の希釈溶液を、ポリエチレンテレフタレートフィルムの片面をシリコーン系剥離剤で剥離処理した剥離シート(リンテック社製,SP−PET3811,厚さ:38μm)の剥離処理面に、乾燥後の厚さが25μmになるようにナイフコーターで塗布したのち、90℃で1分間加熱処理して粘着剤層を形成した。
次いで、ディスコティック液晶層付偏光フィルムからなる、偏光フィルムと視野角拡大フィルムとが一体化した偏光板を、上記粘着剤層の露出面とディスコティック液晶層の表面とが接するように、上記粘着剤層と貼合し、23℃、50%RHで7日間養生することにより、粘着剤層付き偏光板を得た。
〔実施例2〜14,比較例1〜7〕
粘着性組成物を構成する各モノマーの種類および割合、架橋剤、光拡散微粒子およびシランカップリング剤の種類および配合量、ならびに重合体(A)と重合体(B)との配合比を表1に示すように変更する以外、実施例1と同様にして粘着剤層付き偏光板を製造した。
ここで、前述した重量平均分子量(Mw)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて以下の条件で測定(GPC測定)したポリスチレン換算の重量平均分子量である。
<測定条件>
・GPC測定装置:東ソー社製,HLC−8020
・GPCカラム(以下の順に通過):東ソー社製
TSK guard column HXL−H
TSK gel GMHXL(×2)
TSK gel G2000HXL
・測定溶媒:テトラヒドロフラン
・測定温度:40℃
〔試験例1〕(ゲル分率の測定)
実施例または比較例にて粘着剤層付き偏光板の作製に使用した偏光板に替えて、ポリエチレンテレフタレートフィルムの片面をシリコーン系剥離剤で剥離処理した剥離シート(リンテック社製,SP−PET3801,厚さ:38μm)を使用し、粘着シートを作製した。具体的には、実施例または比較例の製造過程で得られた剥離シート/粘着剤層(厚さ:25μm)からなる構成体の露出している粘着剤層上に、上記剥離シートを剥離処理面側が接するように積層した。これにより、剥離シート/粘着剤層/剥離シートの構成からなる粘着シートを作製した。
得られた粘着シートを、23℃、50%RHの条件下で7日間養生した。その後、当該粘着シートを80mm×80mmのサイズにサンプリングして、その粘着剤層をポリエステル製メッシュ(メッシュサイズ200)に包み、粘着剤のみの質量を精密天秤にて秤量した。このときの質量をM1とする。
次に、上記ポリエステル製メッシュに包まれた粘着剤を、室温下(23℃)で酢酸エチルに24時間浸漬させた。その後粘着剤を取り出し、温度23℃、相対湿度50%の環境下で、24時間風乾させ、さらに80℃のオーブン中にて12時間乾燥させた。乾燥後の粘着剤のみの質量を、精密天秤にて秤量した。このときの質量をM2とする。ゲル分率(%)は、(M2/M1)×100で表される。結果を表2に示す。
〔試験例2〕(ヘイズ値の測定)
測定サンプルとして、ゲル分率の測定に用いた粘着シートと同様の粘着シート(7日間養生済み)を用意した。当該粘着シートの粘着剤層について、ヘイズメーター(日本電色工業社製,NDH2000)を用いて、JIS K7105に準じてヘイズ値(%)を測定した。結果を表2に示す。
〔試験例3〕(粘着力の測定)
実施例または比較例で得られた粘着剤層付き偏光板を裁断し、25mm幅、100mm長のサンプルを作製した。このサンプルから剥離シートを剥がし、露出した粘着剤層を介して無アルカリガラス(コーニング社製,イーグルXG)に当該サンプルを貼付したのち、栗原製作所社製オートクレーブにて0.5MPa、50℃で、20分加圧した。その後、23℃、50%RHの条件下で24時間放置してから、引張試験機(オリエンテック社製,テンシロン)を用い、剥離速度300mm/min、剥離角度180°の条件で粘着力(貼付1日後の粘着力;N/25mm)を測定した。結果を表2に示す。
〔試験例4〕(引張試験)
実施例または比較例で調製した粘着性組成物を、ポリエチレンテレフタレートフィルムの片面をシリコーン系剥離剤で剥離処理した剥離シート(リンテック社製,SP−PET3811)の剥離処理面に乾燥後の塗布厚が25μmとなるように塗布し、100℃で1分間加熱し、粘着剤層を形成した。その粘着剤層と、ポリエチレンテレフタレートフィルムの片面をシリコーン系剥離剤で剥離処理した別の剥離シート(リンテック社製,SP−PET3801)の剥離処理面とを貼り合わせて、粘着シートを得た。
上記粘着シートにおける粘着剤層の合計厚さが500μmとなるように、かつ積層体の最表層の剥離シートのみが残るように上記粘着剤層を複数層積層し、23℃、50%RHの雰囲気下で2週間放置した。その後、上記粘着剤層を複数層積層した粘着シートから10mm幅×75mm長のサンプルを切り出し、積層体の最表層に積層された剥離シートを剥し、サンプル測定部位が10mm幅×20mm長(伸長方向)になるようにサンプルをセットし、23℃、50%RHの環境下で引張試験機(オリエンテック社製,テンシロン)を用いて引張速度200mm/分で伸長させ、破断伸度(%)を測定した。また、サンプルを4000%伸長させ、4000%伸長時または破断時の応力(N)、および最大応力(N)を測定した。結果を表2に示す。
〔試験例5〕(耐久性評価)
実施例または比較例で得られた粘着剤層付き偏光板を、裁断装置(荻野製作所社製スーパーカッター,PN1−600)を用いて233mm×309mmサイズに調整した。剥離シートを剥がして、露出した粘着剤層を介して無アルカリガラス(コーニング社製,イーグルXG)に貼付したのち、栗原製作所製オートクレーブにて0.5MPa、50℃で、20分加圧した。
その後、80℃dryの環境下に投入し、500時間後に10倍ルーペを用いて、浮きや剥がれの有無を確認した。評価基準は以下の通りである。結果を表2に示す。
◎:浮きや剥がれが確認されなかった。
○:0.5mm以下の大きさの浮きや剥がれが確認された。
×:0.6mm以上の大きさの浮きや剥がれが確認された。
〔試験例6〕(凹凸追従性試験)
実施例または比較例で調製した粘着性組成物を、厚さ100μmのポリエチレンテレフタレートフィルムの片面に乾燥後の塗布厚が25μmとなるように塗布した後、100℃で1分間加熱して粘着剤層を形成し、サンプルを作製した。
図3および図4に示すように、サイズ125mm×125mm、厚さ1.1mmの無アルカリガラス板(コーニング社製,イーグルXG)の上に、サイズ25mm×25mm、厚さ50μmのポリエチレンテレフタレートフィルムを載置した。その上から、上記粘着剤層が厚さ50μmのポリエチレンテレフタレートフィルムおよび無アルカリガラス板に接するようにサンプルを貼付し、栗原製作所社製オートクレーブにて0.5MPa、50℃で、20分加圧した。そして、厚さ50μmのポリエチレンテレフタレートフィルムの端部近傍にて発生している粘着剤層の浮きの長さL(厚さ50μmのポリエチレンテレフタレートフィルムの端部から、粘着剤層と無アルカリガラス板との接着部分までの距離を任意に5点測定し、それらを平均した距離)を測定した。この浮きの長さLは、0.65mm以下であることが好ましく、特に0.60mm以下であることが好ましい。結果を表2に示す。
〔試験例7〕(微粒子分散性の評価)
実施例または比較例で調製した粘着性組成物を、ポリエチレンテレフタレートフィルムの片面をシリコーン系剥離剤で剥離処理した剥離シート(リンテック社製,SP−PET3811)の剥離処理面に乾燥後の塗布厚が25μmとなるようにナイフコーターにより塗工した。その塗工面を目視で確認し、微粒子の分散性を評価した。評価基準は以下の通りである。結果を表2に示す。
◎:微粒子の凝集物(粒径500μm以上)が全く確認されなかった。
○:微粒子の凝集物(粒径500μm以上)が若干確認された(凝集物の数/m=0.5個未満)。
×:微粒子の凝集物が確認された(凝集物の数/m=0.5個以上)。
〔試験例8〕(屈折率の算出)
実施例または比較例で使用した微粒子(光拡散微粒子(D))の屈折率は、以下の方法により測定した。スライドガラス上に微粒子を載せ、屈折率標準液を微粒子上に滴下し、カバーガラスを被せ、試料を作製した。当該試料を顕微鏡で観察し、微粒子の輪郭が最も見づらくなった屈折率標準液の屈折率を微粒子の屈折率とした。
一方、実施例または比較例で製造した重合体(A)または(B)の屈折率は、アッベ屈折計(アタゴ社製,品名「アッベ屈折計DR−M2」,Na光源,波長:589nm)を使用して、JIS K0062に準じて測定した。以上の測定結果から、重合体(A)と光拡散微粒子(D)との屈折率差、および重合体(B)と光拡散微粒子(D)との屈折率差を算出した。結果を表2に示す。
Figure 0005968383
Figure 0005968383
表2から明らかなように、実施例で得られた粘着剤層においては、十分な粘着力および光拡散性を有するとともに、優れた応力緩和性を示し、そして凹凸追従性、耐久性および微粒子分散性のいずれも優れていた。
本発明の粘着性組成物および粘着剤は、光学部材、例えば偏光板や位相差板の接着に好適であり、また、本発明の粘着シートは、偏光板や位相差板等の光学部材用の粘着シートとして好適である。
1A,1B…粘着シート
11…粘着剤層
12,12a,12b…剥離シート
13…基材

Claims (14)

  1. 重量平均分子量が50万〜300万の第1の(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)と、
    重量平均分子量が8000〜30万の第2の(メタ)アクリル酸エステル重合体(B)と、
    架橋剤(C)と、
    光拡散微粒子(D)と
    を含有し、
    前記第1の(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)100質量部に対する前記第2の(メタ)アクリル酸エステル重合体(B)の割合は、5〜50質量部であり、
    前記第2の(メタ)アクリル酸エステル重合体(B)は、前記架橋剤(C)と反応する官能基(b1)を有するモノマーを構成成分として含有しており、さらに、前記官能基(b1)を有するモノマーの割合は、当該第2の(メタ)アクリル酸エステル重合体(B)中において5質量%以上、かつ50質量%未満であり、
    前記第1の(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)は、前記架橋剤(C)と反応する官能基を有するモノマーを構成成分として含有しないか、前記第2の(メタ)アクリル酸エステル重合体(B)の前記官能基(b1)よりも前記架橋剤(C)との反応性が低い官能基(a1)を有するモノマーを構成成分として含有し、
    前記光拡散微粒子(D)の含有量は、前記第1の(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)および前記第2の(メタ)アクリル酸エステル重合体(B)の合計100質量部に対して、5.0〜50.0質量部である
    ことを特徴とする粘着性組成物。
  2. 前記光拡散微粒子(D)の遠心沈降光透過法による平均粒径が、0.1〜20μmであることを特徴とする請求項1に記載の粘着性組成物。
  3. 前記光拡散微粒子(D)と前記第1の(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)との屈折率差、および前記光拡散微粒子(D)と前記第2の(メタ)アクリル酸エステル重合体(B)との屈折率差が、ともに0.1以上0.5未満であることを特徴とする請求項1または2に記載の粘着性組成物。
  4. 前記光拡散微粒子(D)は、遠心沈降光透過法による平均粒径が1〜10μmであるケイ素含有化合物からなることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の粘着性組成物。
  5. 前記第1の(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)における前記官能基(a1)はカルボキシル基であり、
    前記第2の(メタ)アクリル酸エステル重合体(B)における前記官能基(b1)は水酸基であり、
    前記架橋剤(C)は、イソシアネート系架橋剤である
    ことを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の粘着性組成物。
  6. 前記第1の(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)は、当該重合体を構成するモノマー単位としてカルボキシル基含有モノマーを含有しないか、前記官能基(a1)としてカルボキシル基含有モノマーを15質量%以下の含有量で含有することを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の粘着性組成物。
  7. 前記第2の(メタ)アクリル酸エステル重合体(B)は、前記官能基(b1)として水酸基含有モノマーを5〜40質量%含有することを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載の粘着性組成物。
  8. 前記イソシアネート系架橋剤の含有量は、当該イソシアネート系架橋剤のイソシアネート基が前記第2の(メタ)アクリル酸エステル重合体(B)における前記官能基(b1)の量に対して0.1〜3.5当量となる量であることを特徴とする請求項5に記載の粘着性組成物。
  9. さらにシランカップリング剤(E)を含有することを特徴とする請求項1〜8のいずれか一項に記載の粘着性組成物。
  10. 請求項1〜9のいずれか一項に記載の粘着性組成物を架橋してなる粘着剤。
  11. ヘイズ値が5%以上であることを特徴とする請求項10に記載の粘着剤。
  12. 基材と、粘着剤層とを備えた粘着シートであって、
    前記粘着剤層は、請求項10または11に記載の粘着剤からなる
    ことを特徴とする粘着シート。
  13. 前記基材は、光学部材であることを特徴とする請求項12に記載の粘着シート。
  14. 2枚の剥離シートと、
    前記2枚の剥離シートの剥離面と接するように前記剥離シートに挟持された粘着剤層と
    を備えた粘着シートであって、
    前記粘着剤層は、請求項10または11に記載の粘着剤からなる
    ことを特徴とする粘着シート。
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