JP5967687B2 - スフィンゴシルホスホリルコリンに結合するアプタマー分子 - Google Patents

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Description

本発明は、スフィンゴシルホスホリルコリンに対する結合能を有するアプタマー分子に関する。
虚血性疾患、例えば、虚血性心疾患、虚血性脳卒中は、その直接の原因は、多くは、血栓、あるいは、動脈血管の攣縮である。虚血性心疾患の大半は、冠状動脈疾患であり、臨床的には、狭心症、心筋梗塞、さらには、突然心臓死の症状を伴う。
冠状動脈疾患を引き起こす、基礎疾患として、動脈硬化症、例えば、アテローム動脈硬化症、ならびに、高脂血症などの脂質代謝異常などが、指摘されている。前記の基礎疾患には、種々の内因性因子と環境因子(生活習慣など)が関与している。
虚血性疾患、例えば、急性の心筋梗塞においては、血液中に含まれる脂質代謝物、例えば、遊離脂肪酸の濃度の上昇が観測されることが報告されている。また、哺乳動物の細胞膜の構成成分の一つであるリン脂質の代謝物の血中濃度の上昇も観測されることも報告されている。
リン脂質は、脂質二重膜の構成を有する細胞膜の構成成分の一つであるとともに、生体内での信号伝達にも関与している。リン脂質は、グリセロリン脂質と、スフィンゴリン脂質に大別される。スフィンゴミエリン(Sphingomyelin:SPH)は、スフィンゴリン脂質の一種であり、ヒトにおいては、その体内に存在するスフィンゴ脂質全体量の85%程度を占めるという報告もある。スフィンゴミエリンは、主に、哺乳動物の細胞膜の外膜に存在している。
哺乳動物の細胞膜には、脂質ラフトと呼ばれる膜ミクロドメインの一種が存在している。この脂質ラフトは、スフィンゴ脂質とコレステロールに富むドメインである。脂質ラフトは、膜タンパク質あるいは膜へと移行するタンパク質を集積し、膜を介したシグナル伝達、細菌やウィルスの感染、細胞接着あるいは細胞内小胞輸送、さらに細胞内極性などに重要な役割を有する機能ドメインであることが解明されてきている。
脂質ラフトは、脂肪酸として飽和脂肪酸を含むスフィンゴリン脂質あるいはスフィンゴ糖脂質を主成分としている。飽和脂肪酸は分子が直線状であるため、立体障害が少なく、スフィンゴ脂質は互いの分子が密に会合している。一方、折れ曲がった分子である不飽和脂肪酸で構成される脂質を多く含む他の領域は、比較的緩やかに会合している。その結果、脂質ラフトは、細胞膜の他の領域と比較して、流動性が比較的低くなっている。さらに、コレステロールはスフィンゴ脂質と親和性が高く、スフィンゴ脂質の間に挟み込まれる形で存在している。このコレステロールは、膜構造の高度なパッキングを保持しつつ、脂質ラフトに流動性を与えている。
シグナル伝達物質であるsrcファミリーやGタンパク質などは、N−アシル化を受けた状態では、そのアシル基を膜ドメインに突き刺す形態で、この脂質ラフトに局在する。その結果、これらのシグナル伝達物質は、同じく、脂質ラフトに局在している受容体と会合し、シグナルを中継する。一方、前記N−アシル化タンパク質のアシル基の半減期は、タンパク質自身の半減期よりも短く、アシル化と脱アシル化のサイクルを利用して、該脂質ラフトへの局在が調節されていると推測されている。
前記スフィンゴリン脂質であるスフィンゴミエリンは、細胞膜の構成成分の一つであるが、脱アシル化を受けたその代謝産物は、細胞膜に固定されず、水溶性のリン脂質として、血液中に含まれる。
スフィンゴシルホスホリルコリン(SPC:Sphingosylphosphorylcholine)は、上記のスフィンゴミエリンにおいて、N−アシル化を行っている脂肪酸が脱アシル化を受けた構造を有している。
SPCは、カルシウム非依存性異常収縮を惹起することから、虚血性疾患、例えば、狭心症、心筋梗塞、さらには、脳卒中の要因との相関性が着目されている。すなわち、血栓、あるいは、動脈血管の攣縮に起因する、虚血性疾患、特には、狭心症、心筋梗塞、さらには、突然心臓死の発症リスクを推定する際に利用可能な、バイオマーカーの一つとなり得る。
スフィンゴシン−1−リン酸(Sphingosine-1-phosphate:S1P)は、スフィンゴミエリン中のリン酸エステルの加水分解により、コリン(H-CH2CH2-N+(CH3)3)が脱離し、さらに、N−アシル化を行っている脂肪酸が脱アシル化を受けた構造を有している。
スフィンゴシン−1−リン酸は、リゾリン脂質の一種である。細胞膜の外膜に存在する、スフィンゴミエリンから酵素により切り出されたS1Pは、細胞膜表面に発現しているGタンパク質共役受容体に結合することによって、細胞遊走などを誘起する生活活性物質である。このS1Pによる細胞遊走の誘起は、10〜100nMの低濃度でも引き起こされる。一方、循環血液中に存在するS1Pの大部分は、血中タンパク質である、HDLなどのリポタンパク質やアルブミンと結合している結果、前記の機能は抑制されていると報告されている。
S1Pは、S1Pホスファターゼ−1(SPP-1)あるいはS1Pホスファターゼ−2(SPP-2)による脱リン酸化反応を受けると、前記Gタンパク質共役受容体に対する結合能を失い、結果的に、その活性を失う。S1Pに対する受容体である、Gタンパク質共役受容体型のS1P受容体として、少なくとも5種のS1P受容体:S1P1〜S1P5の存在が報告されている。
S1Pの産生機構としては、前記のスフィンゴミエリンの代謝による機構に加えて、後述するスフィンゴシンのスフィンゴシン・キナーゼ(SphK)によるリン酸化により産生され、ABCトランスポーターを介して細胞外へ放出される機構も報告されている。
SphKにはSphK1とSphK2の2種類が存在しており、細胞に対してインターロイキン-1β(IL-1β)や血小板由来成長因子(PDGF)、血管内皮増殖因子(VEGF)、TNF-αなどの様々な刺激が加わった場合に、SphKが活性化し、S1Pの産生が促進される。前記の各種の因子による刺激を受ける、血小板やマクロファージ、赤血球などでは、SphKによるリン酸化の機構によって、S1Pが多く産生される。
その他、S1Pは、細胞外からカルシウムイオン流入を引き起こすセカンドメセンジャーの機能を有しており、そのため、様々な細胞内プロセスに関与することも知られている。S1Pは、例えば、細胞運動の制御、細胞増殖、細胞骨格の形成等を誘起する機能を有している。
スフィンゴシンは、スフィンゴミエリン中のリン酸エステルの加水分解により、ホスホリルコリン(HO-PO(OH)-O-CH2CH2-N+(CH3)3)が脱離し、さらに、N−アシル化を行っている脂肪酸が脱アシル化を受けた構造を有している。
スフィンゴシン自体は、細胞をアポトーシスに導く活性を有している。
上記の観点から、水溶性のリン脂質として、血液中に含有される、各種のスフィンゴミエリンの代謝産物の濃度と、虚血性疾患、例えば、狭心症、心筋梗塞、さらには、脳卒中の発症リスクとの相関性の研究が進められている。具体的には、虚血性疾患、例えば、狭心症、心筋梗塞、さらには、脳卒中を発症した患者から採取した血液中に含有される、各種のスフィンゴミエリンの代謝産物の濃度と、その患者の症状との相関性、その発症の直接的原因との相関性の研究が進められている。
例えば、健常者の血液中に含有されるSPCの濃度は、数nM程度と報告されている。そのため、現状、SPCの血中濃度の定量には、例えば、血漿中に含有されるSPCをクロマト法を適用して、分取した後、質量分析を利用して、その定量を行う方法が利用されている。
将来的に、SPCが、例えば、狭心症、心筋梗塞、脳卒中、さらには突然心臓死の発症リスクを予測する際に、そのバイオマーカーとして利用可能であることが解明された場合には、臨床的に応用する上では、SPCの血中濃度をより簡便に測定する手法が必要となる。具体的には、血液中に含有されるSPCの濃度を、より簡便に測定可能なバイオセンサの開発が望まれている。
血液中に含有される生体物質を特異的に検出する手段としては、従来から、検出対象の生体物質に対して、特異的な反応性を有する抗体が利用されている。
例えば、哺乳動物が共通して有している、内因性の生体物質である、リン脂質に対する自己抗体ができることによる、自己免疫疾患である、抗リン脂質抗体症候群(Anti-phospholipid antibody syndrome; APS)は知られているが、通常、内因性の生体物質である、リン脂質に対する特異的抗体の創製は極めて困難である。
従って、特異的抗体の創製が極めて困難である、内因性の生体物質に対しては、特異的な結合能を示す核酸分子であるアプタマーの作製が広く応用されつつある。哺乳動物に共通する内因性の生体物質である、スフィンゴリン脂質の一種である、スフィンゴシルホスホリルコリン(SPC)に関しても、該SPCに対する特異的な結合能を示すアプタマーの創製と、該アプタマーを利用するバイオセンサの開発が望まれる。
その際、血液中には、スフィンゴシルホスホリルコリン(SPC)に加えて、類似の分子構造を有する、スフィンゴシン−1−リン酸(S1P)ならびにスフィンゴシンが共存している。従って、これらスフィンゴシン−1−リン酸(S1P)ならびにスフィンゴシンに対する交差反応性は低く、スフィンゴシルホスホリルコリン(SPC)に対して、特異的な結合能を示すアプタマーの創製が望まれる。
本発明は前記の課題を解決するものである。すなわち、本発明の目的は、スフィンゴシルホスホリルコリン(SPC)に対して、特異的な結合能を示すアプタマーを提供することにある。特には、本発明の目的は、スフィンゴシン−1−リン酸(S1P)ならびにスフィンゴシンに対する交差反応性は低く、スフィンゴシルホスホリルコリン(SPC)に対して、特異的な結合能を示すアプタマーを提供することにある。
本発明者らは、前記の課題を解決すべく、まず、スフィンゴシルホスホリルコリン(SPC)に対して、一定以上の結合能を示す「SPCに対するRNAアプタマー分子」が実際に存在するか否かの確認を行った。さらに、仮に、一定以上の結合能を示す「SPCに対するRNAアプタマー分子」が存在する際には、その「SPCに対するRNAアプタマー分子」を構成する一本鎖核酸分子の塩基配列を特定することを試みた。
スフィンゴシルホスホリルコリン(SPC)に対して、一定以上の結合能を示す「SPCに対するRNAアプタマー分子」の探索に先立ち、スフィンゴシルホスホリルコリン(SPC)、スフィンゴシン−1−リン酸(S1P)ならびにスフィンゴシンは、pHが7前後の水溶液中において、どのような形状で溶解しているかに関して、考察した。
加えて、「RNAアプタマー分子の探索」を進める際、これら水溶性化合物を固定化する必要があり、スフィンゴシルホスホリルコリン(SPC)、スフィンゴシン−1−リン酸(S1P)ならびにスフィンゴシンに、それぞれ、ビオチン化を施した誘導体を利用している。該ビオチン化を施した誘導体に関しても、pHが7前後の水溶液中において、どのような形状で存在するかに関して、考察した。
対象分子であるスフィンゴシルホスホリルコリン(SPC)は、疎水性部分であるスフィンゴシンのヒドロキシル基(−OH)と、親水性部分であるホスホリルコリン(コリンリン酸)のリン酸基(−O−PO(OH)2)とが、リン酸エステル結合(−O−PO(OH)−O−)を形成した構造を有している。このホスホリルコリン(コリンリン酸)に由来する親水的な原子団(−CH(−OH)−CH(−NH2)−CH2−O−PO(OH)−O−CH2CH2−N+(CH33)は、pHによっては、そのリン酸エステル結合(−O−PO(OH)−O−)のイオン化が起こり、両性イオン構造(−CH(−OH)−CH(−NH2)−CH2−O−PO(O-)−O−CH2CH2−N+(CH33)に変換可能である。従って、該スフィンゴシルホスホリルコリン(SPC)は、カチオン性、または、両性界面活性剤の機能を有していると推断される。
なお、スフィンゴシン骨格のアミノ基が、N−アシル化されている、スフィンゴミエリンにおいては、該リン酸エステル結合(−O−PO(OH)−O−)のpKは、約13であると報告されている。従って、スフィンゴミエリン中に存在する、該ホスホリルコリン(コリンリン酸)に由来する親水的な原子団は、ある比率で、両性イオン構造(−O−PO(O-)−O−CH2CH2−N+(CH33)となっていると推断される。
スフィンゴシルホスホリルコリン(SPC)に対して、ビオチン化を施した、ビオチン化SPCでは、ビオチン(biotin:5-[(3aS,4S,6aR)-2-オキソヘキサヒドロ-1H- シエノ[3,4-d]イミダゾル-4-イル]ペンタン酸)を、スフィンゴシン骨格の末端に導入したアミノ基上にN−アシル化反応により結合している。従って、ビオチン化SPCの親水的な原子団は、SPCのかかる領域と、その部分構造は、実質的に同一である。すなわち、ビオチン化SPC中に存在する、該ホスホリルコリン(コリンリン酸)に由来する親水的な原子団は、ある比率で、両性イオン構造(−O−PO(O-)−O−CH2CH2−N+(CH33)となっていると推断される。
また、スフィンゴシン−1−リン酸(S1P)は、疎水性部分であるスフィンゴシンの末端のヒドロキシル基(−OH)に対して、リン酸(HO−PO(OH)2)が、リン酸エステル結合(−O−PO(OH)2)を形成した構造を有している。このリン酸エステル部分は、pHが、6〜8程度の水溶液中では、イオン化し、例えば、アニオン性原子団(−O−PO(OH)−O-)に変換される。その際、リン酸化されている部位は、−CH(−OH)−CH(−NH2)−CH2−O−の部分構造を有しており、該部分のアミノ基(−NH2)は、プロトン受容部位としての機能を具えている。結果的に、かかる分子内のプロトン供与/受容が達成されると、両性イオン構造:−CH(−OH)−CH(−+NH3)−CH2−O−PO(OH)−O-が構成される。あるいは、部分的に、さらにイオン化が進行すると、次の構造:−CH(−OH)−CH(−+NH3)−CH2−O−PO3 2-に達する。
従って、該スフィンゴシン−1−リン酸(S1P)は、疎水性部分と、前記両性イオン構造、あるいは、アニオン性の親水性部分を具えており、アニオン性界面活性剤の機能を有していると推断される。
スフィンゴシン−1−リン酸(S1P)に対して、ビオチン化を施した、ビオチン化S1Pでも、ビオチンを、スフィンゴシン骨格の末端に導入したアミノ基上にN−アシル化反応により結合している。従って、ビオチン化S1P中においても、その親水的な原子団は、S1Pのかかる領域と、その部分構造は、実質的に同一である。すなわち、分子内のプロトン供与/受容が達成されると、両性イオン構造:−CH(−OH)−CH(−+NH3)−CH2−O−PO(OH)−O-が構成される。あるいは、部分的に、さらにイオン化が進行すると、次の構造:−CH(−OH)−CH(−+NH3)−CH2−O−PO3 2-に達する。
さらには、スフィンゴシン自体も、疎水性に富む直鎖の炭化水素基部分と、親水性基であるアミノ基(−NH2)とヒドロキシル基(−OH)を具える親水性原子団(−CH(−NH2)−CH2−OH)を具えている。その際、水溶液中では、pHによっては、該アミノ基(−NH2)はイオン化し、カチオン(−+NH3)に変換される。従って、該スフィンゴシンは、疎水性部分と、非イオン性、または、カチオン性の親水性部分を具えており、非イオン性、または、カチオン性界面活性剤の機能を有していると推断される。
一方、例えば、エタノールアミン(HO−CH2CH2−NH2)は、金属表面や金属カチオンに対するキレート配位子として機能する。このキレート配位子の機能を考慮すると、エタノールアミン(HO−CH2CH2−NH2)は、多くの場合、カチオン種の形状を示していないと推断される。同様に、該スフィンゴシン中の親水性原子団(−CH(−OH)−CH(−NH2)−CH2−OH)も、多くの場合、カチオン種の形状を示していないと推断される。
スフィンゴシンに対して、ビオチン化を施した、ビオチン化スフィンゴシンでも、ビオチンを、スフィンゴシン骨格の末端に導入したアミノ基上にN−アシル化反応により結合している。従って、ビオチン化スフィンゴシンにおいても、その親水的な原子団は、スフィンゴシンのかかる領域と、その部分構造は、実質的に同一である。すなわち、該ビオチン化スフィンゴシン中の親水性原子団(−CH(−OH)−CH(−NH2)−CH2−OH)も、多くの場合、カチオン種の形状を示していないと推断される。
従って、ビオチン化SPCを利用するスクリーニング過程で、選別される「SPCに対するRNAアプタマー分子」中には、該ビオチン化SPC中の疎水性部分である、スフィンゴシンの炭化水素鎖部分との疎水的相互作用を行う部分と、ホスホコリンに由来する親水的な原子団(−CH(−OH)−CH(−NH2)−CH2−O−PO(O-)−O−CH2CH2−N+(CH33)との相互作用を有する部分を具えていると、推断される。
一般に、対象分子に対する「RNAアプタマー分子」の探索には、「ランダム一本鎖核酸分子ライブラリー」を作製し、対象分子に対する結合能に関して、SELEX法を適用するスクリーニングが利用される。
ビオチン化SPC中のSPC部分のサイズは、C−C結合距離は、1.5Å程度であることを考慮すると、30Å以下である。この程度の分子サイズの化合物と分子間結合を形成する「RNAアプタマー分子」は、5’末端の固定領域と、3’末端の固定領域との間に、ランダムな塩基配列を有する、30塩基長の部分(N30)が挿入されている形態の「ランダム一本鎖RNA分子ライブラリー」中に存在していると予測した。
本発明者らは、SELEX法を適用するスクリーニングに利用する、5’末端の固定領域と、3’末端の固定領域との間に、ランダムな塩基配列を有する、30塩基長の部分(N30)が挿入されている形態の「ランダム一本鎖RNA分子ライブラリー」として、
5’末端の固定領域:GGGAAUGGAUCCACAUCUACGAAUUC;(26塩基)
30塩基長のランダム配列部分:(N30);
3’末端の固定領域:UUCACUGCAGACUUGACGAAGCUU;(24塩基)
を具える、全長80塩基長の「ランダム一本鎖RNA分子ライブラリー」を選択した。
アガロース・ビーズ上に固定化したStreptavidinタンパク質、あるいは、Neutravidinタンパク質に、結合させたビオチン化SPCを利用して、アガロース・ビーズ上に固定化したStreptavidinタンパク質、あるいは、Neutravidinタンパク質には結合能を有さないが、前記ビオチン化SPCに対する結合能を有する「RNAアプタマー分子」を探索した。
バインディング・バッファ溶液として、HBS (50 mM HEPES pH 7.4, 150 mM NaCl) + 5 mM MgCl2 + 5 mM KClを用いて、SELEX・スクリーニング・ラウンドを延べ12ラウンド繰り返し、ビオチン化SPCに対する結合能を有する「RNAアプタマー分子」の選別を行った。
前記12ラウンドで採取された「RNAアプタマー分子」の一群に対して、表面プラズモン共鳴測定装置を利用して、ビオチン化SPCに対する結合能に関して、さらに、スクリーニングを行い、合計13ラウンドの選別を行った、ビオチン化SPCに対する結合能を有する「RNAアプタマー分子」の群を回収した。
前記合計13ラウンドの選別を終えた「RNAアプタマー分子」から、逆転写によって調製されるcDNAを、それぞれ大腸菌に導入して、クローン化を行った。各クローンについて、導入されているcDNAを鋳型として「RNAアプタマー分子」を調製し、表面プラズモン共鳴測定装置を利用して、ビオチン化SPCに対する結合能の評価を行って、少なくとも、前記バインディング・バッファ溶液中における解離定数KDが、KD≦1μMの条件を満たす「RNAアプタマー分子」を選択した。さらに、前記の選択条件を満足する「RNAアプタマー分子」について、その塩基配列を解析した。
塩基配列の解析結果に基づき、前記の選択条件を満足する「RNAアプタマー分子」の一群のクローンにおいて、その「ランダムな塩基配列」部分が一致しているクローン数が2以上存在する、クローン・ファミリーを選別した。さらに、選別されたクローン・ファミリーの「ランダムな塩基配列」部分と比較し、一塩基が相違するクローンを選別して、該クローン・ファミリーの一塩基変異型メンバーとした。
前記の選別されたクローン・ファミリーの間において、その「ランダムな塩基配列」部分を比較した結果、一つのクローン・ファミリーを除き、共通性を示す部位が存在していることを見出した。この共通性を示す部位は、実際に、「5’−CCGUUAUUGG−3’」のコンセンサス配列が、全体の塩基配列上、同じ位置に存在しており、一つのクローン・ファミリーを除き、残るクローン・ファミリーは、相互に類似する二次構造を有すると、推断された。実際に、前記の選別されたクローン・ファミリーについて、その二次構造の推定を行った結果、一つのクローン・ファミリーを除き、相互に類似する二次構造を有すると推定された。
加えて、前記「5’−CCGUUAUUGG−3’」のコンセンサス配列中の“CGUUAUU”、“CCGUU”、“CGUUA”、“CCGUUAU”の部分配列に相当する、“CXUUXXU”、“CCXUU”、“CXUUA”、“CXXUXAU”のモチーフ配列は、選別された「RNAアプタマー分子」クローンの過半数以上が有していることも、確認された。また、前記「5’−CCGUUAUUGG−3’」のコンセンサス配列を有していない、一つのクローン・ファミリーも、前記のモチーフ配列を有しており、類似する「5’−GCAUUAUUGT−3’」という部位を有していた。
前記「5’−CCGUUAUUGG−3’」のコンセンサス配列を具えているクローン・ファミリーでは、該「RNAアプタマー分子」とビオチン化SPCとの複合体は、10mMのEDTAを含む、50mM HEPES緩衝液(pH7.4)中に浸すと、速やかに解離することが確認された。従って、これらのクローン・ファミリーでは、該「RNAアプタマー分子」とビオチン化SPCとの複合体形成部位には、Mgカチオンが含有されており、該MgカチオンをEDTAにより除去すると、該複合体の解離がなされると推断された。一方、類似する「5’−GCAUUAUUGT−3’」の配列を有するクローン・ファミリーでは、該「RNAアプタマー分子」とビオチン化SPCとの複合体は、10mMのEDTAを含む、50mM HEPES緩衝液(pH7.4)中に浸しても、全く、解離の促進はなされないことが確認された。従って、このクローン・ファミリーでは、該「RNAアプタマー分子」とビオチン化SPCとの複合体形成部位には、Mgカチオンが含有されていない結果、EDTAを作用させても、該複合体の解離は全く促進されないと、推断された。
前記の選別されたクローン・ファミリーについて、推定された二次構造中において、前記「5’−CCGUUAUUGG−3’」のコンセンサス配列は、“Hair pin”ループの形状を示す領域に含まれていた。また、前記の類似する「5’−GCAUUAUUGU−3’」という部位も、“Hair pin”ループの形状を示す領域に含まれていた。すなわち、各「RNAアプタマー分子」クローン・ファミリーの「ランダムな塩基配列」部分は、前記の“Hair pin”ループの形状を示す領域を内在していた。各選別されたクローン・ファミリーについて、推定された二次構造中、前記の“Hair pin”ループの形状を示す領域を中心とする部分的な二次構造を利用して、前記ビオチン化SPCに対する結合を達成していると、推断された。一方、5’末端の固定領域と3’末端の固定領域とで構成される、二次構造部分は、前記ビオチン化SPCに対する結合に直接関与していないと、推断された。
実際に、前記の“Hair pin”ループの形状を示す領域を中心とする部分的な二次構造が形成可能な、前記「5’−CCGUUAUUGG−3’」のコンセンサス配列、または、類似の「5’−GCAUUAUUGU−3’」の部分配列を含む、55塩基長以下、30塩基長以上の一本鎖RNA分子を調製し、該一本鎖RNA分子も、ビオチン化SPCに対する結合能を具えていることを検証した。
さらに、前記の“Hair pin”ループの形状を示す領域を内在し、全体として、“Hair pin”状の二次構造を形成可能な、下記の全長62塩基長の「一本鎖RNA分子ライブラリー」を利用して、ビオチン化SPCに対する結合能を具えている「RNAアプタマー分子」の選別を行った。該全長62塩基長の「一本鎖RNA分子ライブラリー」は、
5’末端の固定領域:GGCAACCACGACAUCCGG;(18塩基)
6塩基長の第一ランダム配列部分:N123456;(6塩基)
「5’−CCGUUAUUGG−3’」のコンセンサス配列を含む
“Hair pin”ループ形成用の定常領域:UACCGUUAUUGGUG;(14塩基)
6塩基長の第二ランダム配列部分:N’6N’5N’4N’3N’2N’1;(6塩基)
3’末端の固定領域:CCGGAUGUCACACACACG;(18塩基)
を具えている。
前記全長62塩基長の「一本鎖RNA分子ライブラリー」を利用して、ビオチン化S1P、ビオチン化スフィンゴシンに対する結合能は低いが、ビオチン化SPCに対して、高い結合能を有する「RNAアプタマー分子」を探索した。
バインディング・バッファ溶液として、HBS (50 mM HEPES pH 7.4, 150 mM NaCl) + 5 mM MgCl2 + 5 mM KClを用いて、SELEX・スクリーニング・ラウンドを延べ5ラウンド繰り返し、ビオチン化SPCに対する結合能を有する「RNAアプタマー分子」の選別を行った。
前記5ラウンドで採取された「RNAアプタマー分子」の一群に対して、表面プラズモン共鳴測定装置を利用して、ビオチン化SPCに対する結合能に関して、さらに、2段階のスクリーニングを行い、合計7ラウンドの選別を行った、ビオチン化S1P、ビオチン化スフィンゴシンに対する結合能は低いが、ビオチン化SPCに対して、相対的に高い結合能を有する「RNAアプタマー分子」の群を回収した。
前記合計7ラウンドの選別を終えた「RNAアプタマー分子」から、逆転写によって調製されるcDNAを、それぞれ大腸菌に導入して、クローン化を行った。各クローンについて、導入されているcDNAを鋳型として「RNAアプタマー分子」を調製し、表面プラズモン共鳴測定装置を利用して、ビオチン化SPCに対する結合能の評価を行って、少なくとも、前記バインディング・バッファ溶液中における解離定数KDが、KD≦1μMの条件を満たす「RNAアプタマー分子」を選択した。さらに、前記の選択条件を満足する、全長62塩基長以下の「RNAアプタマー分子」について、その塩基配列を解析した。
解析された塩基配列に基づき、前記の選択条件を満足する、全長62塩基長以下の「RNAアプタマー分子」の二次構造の推定を行った。その結果、選別された、前記全長62塩基長以下の「RNAアプタマー分子」の二次構造は、前記「5’−CCGUUAUUGG−3’」のコンセンサス配列を含む、“Hair pin”ループ形状を保持していると推定された。
選別された、前記全長62塩基長以下の「RNAアプタマー分子」の塩基配列中、6塩基長の第一ランダム配列部分、「5’−CCGUUAUUGG−3’」のコンセンサス配列を含む“Hair pin”ループ形成用の定常領域、6塩基長の第二ランダム配列部分を含む、30塩基〜34塩基の部分配列を選択して、小型化された「一本鎖RNA分子」を調製した。これらの小型化された「一本鎖RNA分子」について、ビオチン化SPCに対する結合能の評価を行った。その結果、前記の小型化された「一本鎖RNA分子」も、前記バインディング・バッファ溶液中における解離定数KDが、KD≦1μMの条件を満たす「RNAアプタマー分子」に相当することが確認された。
なお、選別された、前記全長62塩基長以下の「RNAアプタマー分子」と、その部分配列を含んでいる、30塩基〜34塩基長の、小型化された「一本鎖RNA分子」は、それらとビオチン化SPCの複合体は、10mMのEDTAを含む、20mM HEPES緩衝液(pH7.4)中に浸すと、速やかに解離することが確認された。従って、これらの「一本鎖RNA分子」では、該「一本鎖RNA分子」とビオチン化SPCとの複合体形成部位には、Mgカチオンが含有されており、該MgカチオンをEDTAにより除去すると、該複合体の解離がなされると推断された。
本発明者らは、以上に述べた一連の検討の結果に基づき、本発明を完成するに至った。
本発明の第一の形態にかかるスフィンゴシルホスホリルコリン(SPC)に対する結合能を有するアプタマーは、
スフィンゴシルホスホリルコリンに対する結合能を有するRNAアプタマーであって、
該RNAアプタマーは、下記のI-1〜I-11の塩基配列からなる群から選択される塩基配列の一本鎖RNA分子である
(I-1) SPC-198:
5'-GGGAAUGGAUCCACAUCUACGAAUUC
UACCGUUAUUGGUGUCACCGAAGAUGUUA
UUCACUGCAGACUUGACGAAGCUU -3' (配列番号:1);
(I-2) SPC-203:
5'-GGGAAUGGAUCCACAUCUACGAAUUC
UUCCGUUAUUGGAGCCAAGUCGUAUCCCGA
UUCACUGCAGACUUGACGAAGCUU -3' (配列番号:2);
(I-3) SPC-209:
5'-GGGAAUGGAUCCACAUCUACGAAUUC
UACCGUUAUUGGAGCACGCGUAGUAUGGUU
UUCACUGCAGACUUGACGAAGCUU -3' (配列番号:3);
(I-4) SPC-289:
5'-GGGAAUGGAUCCACAUCUACGAAUUC
UACCGUUAUUGGAGCACGCGUAGUAUGGGU
UUCACUGCAGACUUGACGAAGCUU -3' (配列番号:4);
(I-5) SPC-261:
5'-GGGAAUGGAUCCACAUCUACGAAUUC
UACCGUUAUUGGUGUAACGUAAUUGUGA
UUCACUGCAGACUUGACGAAGCUU -3' (配列番号:5);
(I-6) SPC-267:
5'-GGGAAUGGAUCCACAUCUACGAAUUC
UACCGUUAUUGGUGUAACGUAAUUGUGG
UUCACUGCAGACUUGACGAAGCUU -3' (配列番号:6);
(I-7) SPC-215:
5'-GGGAAUGGAUCCACAUCUACGAAUUC
UACCGUUAUUGGAGCUGUCGAUUUGCUGGA
UUCACUGCAGACUUGACGAAGCUU -3' (配列番号:7);
(I-8) SPC-219:
5'-GGGAAUGGAUCCACAUCUACGAAUUC
UCCCGUUAUUGGAGUCACGCGUAGUCCUCC
UUCACUGCAGACUUGACGAAGCUU -3' (配列番号:8);
(I-9) SPC-259:
5'-GGGAAUGGAUCCACAUCUACGAAUUC
UACCGUUAUUGGAGACGCUUAGAUGUCCGA
UUCACUGCAGACUUGACGAAGCUU -3' (配列番号:9);
(I-10) SPC-213:
5'-GGGAAUGGAUCCACAUCUACGAAUUC
GCAUUGUCCGCACGCAAAGCAUUAUUGUGA
UUCACUGCAGACUUGACGAAGCUU -3' (配列番号:10);
(I-11) SPC-273:
5'-GGGAAUGGAUCCACAUCUACGAAUUC
GUCCGUUAUUGGCGCCAGCGUACAUGCGGG
UUCACUGCAGACUUGACGAAGCUU -3' (配列番号:11);
ことを特徴とするアプタマーである。
本発明の第二の形態にかかるスフィンゴシルホスホリルコリン(SPC)に対する結合能を有するアプタマーの一例は、
スフィンゴシルホスホリルコリンに対する結合能を有するRNAアプタマーであって、
該RNAアプタマーは、「5’−CCGUUAUUGG−3’」のコンセンサス配列をその一部に含む、下記のII-1〜II-8の塩基配列からなる群から選択される塩基配列の一本鎖RNA分子である
(II-1) SPC-m009:
5'-GGGAUCCACAUCUACGAAUUC
UACCGUUAUUGGUGUCACCGAAGAUGUUA
UUCC -3' (配列番号:12);
(II-2) SPC-m010:
5'-GGAUCUACGAAUUC
UACCGUUAUUGGUGUCACCGAAGAU
CC -3' (配列番号:13);
(II-3) SPC-m011:
5'-GGGAUCCACAUCUACGAAUUC
UUCCGUUAUUGGAGCCAAGUCGUAUCCCGA
UUCC -3' (配列番号:14);
(II-4) SPC-m012:
5'-GGCGAAUUC
UUCCGUUAUUGGAGCCAAGUCG
CC -3' (配列番号:15);
(II-5) SPC-m013:
5'-GGAUCCACAUCUACGAAUUC
UACCGUUAUUGGAGCACGCGUAGUAUGGGU
CC -3' (配列番号:16);
(II-6) SPC-m014:
5'-GGACGAAUUC
UACCGUUAUUGGAGCACGCGU
CC -3' (配列番号:17);
(II-7) SPC-m015:
5'-GGACAUCUACGAAUUC
UACCGUUAUUGGUGUAACGUAAUUGU
CC -3' (配列番号:18);
(II-8) SPC-m016:
5'-GGCGAAUUC
UACCGUUAUUGGUGUAACG
CC -3' (配列番号:19);
ことを特徴とするアプタマーである。
本発明の第二の形態にかかるスフィンゴシルホスホリルコリン(SPC)に対する結合能を有するアプタマーの他の例は、
スフィンゴシルホスホリルコリンに対する結合能を有するRNAアプタマーであって、
該RNAアプタマーは、「5’−CCGUUAUUGG−3’」のコンセンサス配列に類する「5’−GCAUUAUUGU−3’」の配列をその一部に含む、下記のII-9の塩基配列の一本鎖RNA分子である
(II-9) SPC-m007:
5'-G G
GUCCGCACGCAAAGCAUUAUUGUGA
UUCACUGCAGACUUGAC C C -3' (配列番号:20);
ことを特徴とするアプタマーである。
本発明の第三の形態にかかるスフィンゴシルホスホリルコリン(SPC)に対する結合能を有するアプタマーの一例は、
スフィンゴシルホスホリルコリンに対する結合能を有するRNAアプタマーであって、
該RNAアプタマーは、「5’−CCGUUAUUGG−3’」のコンセンサス配列をその一部に含む、下記のIII-1〜III-8の塩基配列からなる群から選択される塩基配列の一本鎖RNA分子である
(III-1) SPC-514:
5'- GGCAACCACGACAUCCGG
AAAGCC
UACCGUUAUUGGAG
AAAAAA
CCGGAUGUCACACACAC -3' (配列番号:21);
(III-2) SPC-520:
5'- GGCAACCACGACAUCCGG
GAAGCC
UACCGUUAUUGGAG
AAAAAA
CCGGAUGUCACACACAC -3' (配列番号:22);
(III-3) SPC-524:
5'- GGCAACCACGACAUCCGG
AAAGCC
UACCGUUAUUGGAG
UAAAAA
CCGGAUGUCACACACAC -3' (配列番号:23);
(III-4) SPC-562:
5'- GGCAACCACGACAUCCGG
CAGGCC
UACCGUUAUUGGAG
AAAAUA
CCGGAUGUCACACACAC -3' (配列番号:24);
(III-5) SPC-536:
5'- GGCAACCACGACAUCCGG
AAGGCC
UACCGUUAUUGGAG
AAUAUU
CCGGAUGUCACACACAC -3' (配列番号:25);
(III-6) SPC-501:
5'- GGCAACCACGACAUCCGG
GCGGCC
UACCGUUAUUGGAG
UAAACU
CCGGAUGUCACACACAC -3' (配列番号:26);
(III-7) SPC-569:
5'- GGCAACCACGACAUCCGG
GCGGCC
UACCGUUAUUGGAG
ACAACU
CCGGAUGUCACACACAC -3' (配列番号:27);
(III-8) SPC-511:
5'- GGCAACCACGACAUCCGG
CGGGCC
UACCGUUAUUGGAG
AUAACU
CCGGAUGUCACACACAC -3' (配列番号:28);
ことを特徴とするアプタマーである。
本発明の第三の形態にかかるスフィンゴシルホスホリルコリン(SPC)に対する結合能を有するアプタマーの他の例は、
スフィンゴシルホスホリルコリンに対する結合能を有するRNAアプタマーであって、
該RNAアプタマーは、「5’−CCGUUAUUGG−3’」のコンセンサス配列をその一部に含む、下記のIII-9〜III-12の塩基配列からなる群から選択される塩基配列の一本鎖RNA分子である
(III-9) SPC-556:
5'- GGCAACCACGACAUCCGG
CAAGCA
UACCGUUAUUGGUG
AAAAAC
CCGGAUGUCACACACAC -3' (配列番号:29);
(III-10) SPC-546:
5'- GGCAACCACGACAUCCGG
AAAGAC
UACCGUUAUUGGUG
CAAAAU
CCGGAUGUCACACACAC -3' (配列番号:30);
(III-11) SPC-551:
5'- GGCAACCACGACAUCCGG
AAAUUA
UACCGUUAUUGGUG
CAAACA
CCGGAUGUCACACACAC -3' (配列番号:31);
(III-12) SPC-583:
5'- GGCAACCACGACAUCCGG
CCAGCA
UACCGUUAUUGGUG
CAACAA
CCGGAUGUCACACACAC -3' (配列番号:32);
ことを特徴とするアプタマーである。
本発明の第三の形態にかかるスフィンゴシルホスホリルコリン(SPC)に対する結合能を有するアプタマーの他の一例は、
スフィンゴシルホスホリルコリンに対する結合能を有するRNAアプタマーであって、
該RNAアプタマーは、「5’−CCGUUAUUGG−3’」のコンセンサス配列をその一部に含む、下記のIII-13〜III-14の塩基配列からなる群から選択される塩基配列の一本鎖RNA分子である
(III-13) SPC-548:
5'- GGCAACCACGACAUCCGG
CACCUA
UACCGUUAUUGGUG
CGCAUA
CCGGAUGUCACACACAC -3' (配列番号:33);
(III-14) SPC-547:
5'- GGCAACCACGACAUCCGG
CAAACA
UACCGUUAUAGGUG
CGCAUA
CCGGAUGUCACACACAC -3' (配列番号:34);
ことを特徴とするアプタマーである。
本発明の第四の形態にかかるスフィンゴシルホスホリルコリン(SPC)に対する結合能を有するアプタマーの一例は、
スフィンゴシルホスホリルコリンに対する結合能を有するRNAアプタマーであって、
該RNAアプタマーは、「5’−CCGUUAUUGG−3’」のコンセンサス配列をその一部に含む、下記のIV-1〜IV-4の塩基配列からなる群から選択される塩基配列の一本鎖RNA分子である
(IV-1) SPC-m017:
5'- GGGG
AAAGCC
UACCGUUAUUGGAG
UAAAAA
CCCC -3' (配列番号:35);
(IV-2) SPC-m018:
5'- GGG
AAAGCC
UACCGUUAUUGGAG
UAAAAA
CCC -3' (配列番号:36);
(IV-3) SPC-m019:
5'- GGG
AAAGCC
UACCGUUAUUGGAG
UAAAAA
CC -3' (配列番号:37);
(IV-4) SPC-m020:
5'- GGG
AAAGCC
UACCGUUAUUGGAG
UAAAAA
C -3' (配列番号:38);
ことを特徴とするアプタマーである。
本発明にかかるスフィンゴシルホスホリルコリン(SPC)に対する結合能を有する「RNAアプタマー分子」は、循環血液中に含まれる、遊離のリン脂質のうち、遊離のスフィンゴリン脂質の一種であるスフィンゴシルホスホリルコリン(SPC)と特異的な複合体形成が可能である。従って、本発明にかかるスフィンゴシルホスホリルコリン(SPC)に対する結合能を有する「RNAアプタマー分子」は、遊離のスフィンゴリン脂質の一種であるスフィンゴシルホスホリルコリン(SPC)について、特異的な複合体形成を利用して、その循環血液中の濃度を定量する目的に応用可能である。
図1は、本発明の第一の実施態様にかかる、SPCに対する結合能を有する「RNAアプタマー分子」をSELEX・スクリーニング法を利用して、選別する工程における、各ラウンドにおける選別試料中に含有される「RNAアプタマー分子」の濃縮程度を、表面プラズモン共鳴測定装置を利用して、評価した結果の一例を示す図である。 図2は、SELEX・スクリーニング法を利用して選別された、SPCに対する結合能を有する「RNAアプタマー分子」のクローンにおいて、複数のクローンが見出されたクローン・ファミリーに関して、そのcDNAの塩基配列を対比した結果を示す図である。 図3は、本発明の第一の実施態様にかかる、SPCに対する結合能を有する「RNAアプタマー分子」に関して、ビオチン化SPCとの複合体形成過程、ビオチン化SPCとの複合体の解離過程の挙動について、表面プラズモン共鳴測定装置を利用して、評価した結果の一例を示す図である。 図4−1は、本発明の第一の実施態様にかかる、SPCに対する結合能を有する「RNAアプタマー分子」SPC−198に関して、ビオチン化SPCとの複合体形成過程の速度定数ka、ビオチン化SPCとの複合体の解離過程の速度定数kd、ならびに、解離定数KD=kd/kaについて、表面プラズモン共鳴測定装置を利用して、評価した結果の一例を示す図である。 図4−2は、本発明の第一の実施態様にかかる、SPCに対する結合能を有する「RNAアプタマー分子」SPC−203に関して、ビオチン化SPCとの複合体形成過程の速度定数ka、ビオチン化SPCとの複合体の解離過程の速度定数kd、ならびに、解離定数KD=kd/kaについて、表面プラズモン共鳴測定装置を利用して、評価した結果の一例を示す図である。 図4−3は、本発明の第一の実施態様にかかる、SPCに対する結合能を有する「RNAアプタマー分子」SPC−213に関して、ビオチン化SPCとの複合体形成過程の速度定数ka、ビオチン化SPCとの複合体の解離過程の速度定数kd、ならびに、解離定数KD=kd/kaについて、表面プラズモン共鳴測定装置を利用して、評価した結果の一例を示す図である。 図5−1は、本発明の第一の実施態様にかかる、SPCに対する結合能を有する「RNAアプタマー分子」SPC−289に関して、ビオチン化SPCとの複合体形成過程、ビオチン化SPCとの複合体の解離過程の挙動について、表面プラズモン共鳴測定装置を利用して、評価した結果の一例を示す図である。 図5−2は、本発明の第一の実施態様にかかる、SPCに対する結合能を有する「RNAアプタマー分子」SPC−267に関して、ビオチン化SPCとの複合体形成過程、ビオチン化SPCとの複合体の解離過程の挙動について、表面プラズモン共鳴測定装置を利用して、評価した結果の一例を示す図である。 図6−1は、本発明の第一の実施態様にかかる、SPCに対する結合能を有する「RNAアプタマー分子」SPC−198に関して、その二次構造の推定結果を示す図である。 図6−2は、本発明の第一の実施態様にかかる、SPCに対する結合能を有する「RNAアプタマー分子」SPC−203に関して、その二次構造の推定結果を示す図である。 図6−3は、本発明の第一の実施態様にかかる、SPCに対する結合能を有する「RNAアプタマー分子」SPC−289に関して、その二次構造の推定結果を示す図である。 図6−4は、本発明の第一の実施態様にかかる、SPCに対する結合能を有する「RNAアプタマー分子」SPC−267に関して、その二次構造の推定結果を示す図である。 図6−5は、本発明の第一の実施態様にかかる、SPCに対する結合能を有する「RNAアプタマー分子」SPC−213に関して、その二次構造の推定結果を示す図である。 図7−1は、SPCに対する結合能を有する「RNAアプタマー分子」SPC−198に基づき設計された、本発明の第二の実施態様にかかる一本鎖RNA分子;SPC−m009、SPC−m010の推定される二次構造を示す図である。 図7−2は、SPCに対する結合能を有する「RNAアプタマー分子」SPC−203に基づき設計された、本発明の第二の実施態様にかかる一本鎖RNA分子;SPC−m011、SPC−m012の推定される二次構造を示す図である。 図7−3は、SPCに対する結合能を有する「RNAアプタマー分子」SPC−289に基づき設計された、本発明の第二の実施態様にかかる一本鎖RNA分子;SPC−m013、SPC−m014の推定される二次構造を示す図である。 図7−4は、SPCに対する結合能を有する「RNAアプタマー分子」SPC−267に基づき設計された、本発明の第二の実施態様にかかる一本鎖RNA分子;SPC−m015、SPC−m016の推定される二次構造を示す図である。 図7−5は、SPCに対する結合能を有する「RNAアプタマー分子」SPC−213に基づき設計された、本発明の第二の実施態様にかかる、一本鎖RNA分子;SPC−m007の推定される二次構造を示す図である。 図8−1は、一本鎖RNA分子;SPC−m009、SPC−m010、SPC−m011、SPC−m012、SPC−m013、SPC−m014、SPC−m015、SPC−m016について、ビオチン化SPCに対する、複合体形成過程、複合体の解離過程の挙動を、表面プラズモン共鳴測定装置を利用して、評価した結果の一例を示す図である。 図8−2は、一本鎖RNA分子;SPC−m007について、ビオチン化SPCに対する、複合体形成過程、複合体の解離過程の挙動を、表面プラズモン共鳴測定装置を利用して、評価した結果の一例を示す図である。 図9−1は、本発明の第一の実施態様にかかる、SPCに対する結合能を有する「RNAアプタマー分子」SPC−198に関して、ビオチン化SPCに対する、複合体形成過程、複合体の解離過程の挙動、ならびに、各解離定数KD=kd/kaについて、表面プラズモン共鳴測定装置を利用して、評価した結果の一例を示す図である。 図9−2は、本発明の第一の実施態様にかかる、SPCに対する結合能を有する「RNAアプタマー分子」SPC−198に関して、ビオチン化S1Pに対する、複合体形成過程、複合体の解離過程の挙動、ならびに、各解離定数KD=kd/kaについて、表面プラズモン共鳴測定装置を利用して、評価した結果の一例を示す図である。 図9−3は、本発明の第一の実施態様にかかる、SPCに対する結合能を有する「RNAアプタマー分子」SPC−198に関して、ビオチン化スフィンゴシンに対する、複合体形成過程、複合体の解離過程の挙動、ならびに、各解離定数KD=kd/kaについて、表面プラズモン共鳴測定装置を利用して、評価した結果の一例を示す図である。 図10−1は、一本鎖RNA分子;SPC−m009、SPC−m010、SPC−m011、SPC−m012、SPC−m013、SPC−m014、SPC−m015、SPC−m016、その設計の基礎とした、SPCに対する結合能を有する「RNAアプタマー分子」について、ビオチン化SPCに対する、複合体形成過程、複合体の解離過程の挙動を、表面プラズモン共鳴測定装置を利用して、評価した結果の一例を示す図である。 図10−2は、一本鎖RNA分子;SPC−m009、SPC−m010、SPC−m011、SPC−m012、SPC−m013、SPC−m014、SPC−m015、SPC−m016、その設計の基礎とした、SPCに対する結合能を有する「RNAアプタマー分子」について、ビオチン化S1Pに対する、複合体形成過程、複合体の解離過程の挙動を、表面プラズモン共鳴測定装置を利用して、評価した結果の一例を示す図である。 図10−3は、一本鎖RNA分子;SPC−m009、SPC−m010、SPC−m011、SPC−m012、SPC−m013、SPC−m014、SPC−m015、SPC−m016、その設計の基礎とした、SPCに対する結合能を有する「RNAアプタマー分子」について、ビオチン化スフィンゴシンに対する、複合体形成過程、複合体の解離過程の挙動を、表面プラズモン共鳴測定装置を利用して、評価した結果の一例を示す図である。 図11は、本発明の第一の実施態様にかかる、SPCに対する結合能を有する「RNAアプタマー分子」SPC−198に関して、ビオチン化SPCとの複合体形成過程、該複合体の解離過程の挙動に対する、バインディング・バッファ溶液中のNaCl濃度の影響を、表面プラズモン共鳴測定装置を利用して、評価した結果の一例を示す図である。 図12は、一本鎖RNA分子;SPC−m009、SPC−m010、SPC−m011、SPC−m012、SPC−m013、SPC−m014、SPC−m015、SPC−m016について、その塩基配列の対比を行った結果を示す図である。 図13は、一本鎖RNA分子;SPC−m009、SPC−m010、SPC−m011、SPC−m012、SPC−m013、SPC−m014、SPC−m015、SPC−m016の塩基配列比較において、「ランダム配列」に由来する領域中に見出された、「5’−CCGUUAUUGG−3’」のコンセンサス配列を含む、特徴的な「ヘアピン」構造部分と、その設計の基礎とした、SPCに対する結合能を有する「RNAアプタマー分子」の5’末端の固定領域、3’末端の固定領域に由来する部位を、一本鎖RNA分子;SPC−m009の予測二次構造上に表示する図である。 図14は、SPCに対する結合能を有する「RNAアプタマー分子」SPC−198の塩基配列に基づき設計された、全長62塩基長の「一本鎖RNA分子ライブラリー」の塩基配列と、「6塩基長の第一ランダム配列部分」と「6塩基長の第二ランダム配列部分」を含む期待される二次構造を示す図である。 図15は、全長62塩基長の「一本鎖RNA分子ライブラリー」から、ビオチン化S1P、ビオチン化スフィンゴシンに対する結合能は相対的に低いが、ビオチン化SPCに対して、相対的に高い結合能を有する「RNAアプタマー分子」を、SELEX・スクリーニング法を利用して選別する工程を模式的に示す図である。 図16は、全長62塩基長の「一本鎖RNA分子ライブラリー」から、SELEX・スクリーニング法を利用して選別された、ビオチン化SPCに対する結合能を有する「RNAアプタマー分子」の各クローンについて、そのcDNAの塩基配列を対比した結果を示す図である。 図17−1は、全長62塩基長の「一本鎖RNA分子ライブラリー」から、SELEX・スクリーニング法を利用して選別された、本発明の第三の実施態様にかかる、ビオチン化SPCに対する結合能を有する「RNAアプタマー分子」について、ビオチン化SPCに対する、複合体形成過程、複合体の解離過程の挙動を、表面プラズモン共鳴測定装置を利用して、評価した結果の一例を示す図である。 図17−2は、全長62塩基長の「一本鎖RNA分子ライブラリー」から、SELEX・スクリーニング法を利用して選別された、本発明の第三の実施態様にかかる、ビオチン化SPCに対する結合能を有する「RNAアプタマー分子」について、ビオチン化S1Pに対する、複合体形成過程、複合体の解離過程の挙動を、表面プラズモン共鳴測定装置を利用して、評価した結果の一例を示す図である。 図17−3は、全長62塩基長の「一本鎖RNA分子ライブラリー」から、SELEX・スクリーニング法を利用して選別された、本発明の第三の実施態様にかかる、ビオチン化SPCに対する結合能を有する「RNAアプタマー分子」について、ビオチン化スフィンゴシンに対する、複合体形成過程、複合体の解離過程の挙動を、表面プラズモン共鳴測定装置を利用して、評価した結果の一例を示す図である。 図18−1は、SPCに対する結合能を有する「RNAアプタマー分子」SPC−198、SPCに対する結合能を有する小型化「RNAアプタマー分子」SPC−m012について、液温25℃、37℃の二温度条件における、ビオチン化SPC、ビオチン化S1P、ビオチン化スフィンゴシンに対する、複合体形成過程、複合体の解離過程の挙動を、表面プラズモン共鳴測定装置を利用して、評価した結果の一例を示す図である。 図18−2は、本発明の第三の実施態様にかかる、ビオチン化SPCに対する結合能を有する「RNAアプタマー分子」SPC−524、SPC−520について、液温25℃、37℃の二温度条件における、ビオチン化SPC、ビオチン化S1P、ビオチン化スフィンゴシンに対する、複合体形成過程、複合体の解離過程の挙動を、表面プラズモン共鳴測定装置を利用して、評価した結果の一例を示す図である。 図19は、本発明の第三の実施態様にかかる、ビオチン化SPCに対する結合能を有する「RNAアプタマー分子」のクローンにおいて、複数のクローンが見出されたクローン・ファミリーに関して、そのcDNAの塩基配列を対比した結果を示す図である。 図20は、本発明の第三の実施態様にかかる、ビオチン化SPCに対する結合能を有する「RNAアプタマー分子」SPC−524の塩基配列から推定される二次構造と、該SPC−524の推定二次構造に基づき設計された、一本鎖RNA分子;SPC−m017、SPC−m018、SPC−m019、SPC−m020の塩基配列と、その期待される二次構造を示す図である。 図21は、SPCに対する結合能を有する「RNAアプタマー分子」SPC−198、小型化された一本鎖RNA分子:SPC−m012、本発明の第三の実施態様にかかる、「RNAアプタマー分子」SPC−524と、小型化された一本鎖RNA分子;SPC−m017、SPC−m018、SPC−m019、SPC−m020について、表面プラズモン共鳴測定装置を利用して、ビオチン化SPCに対する相対的な結合量を評価した結果の一例を示す図である。図21には、SPC−m017に対して、該RNA中に含まれる、U,Cの2’−OH基をF,H,−OCH3に置換してなる、各種の修飾SPC−m017分子について、表面プラズモン共鳴測定装置を利用して、ビオチン化SPCに対する相対的な結合量を評価した結果の一例も併せて示す。
本発明にかかるSPCに対する結合能を有する「RNAアプタマー分子」に関して、より詳細に説明する。
(第一の形態)
本発明の第一の形態にかかるスフィンゴシルホスホリルコリン(SPC)に対する結合能を有するアプタマーは、水溶性のスフィンゴリン脂質である、下記のスフィンゴシルホスホリルコリン(SPC)に代えて、ビオチン化スフィンゴシルホスホリルコリン(ビオチン化SPC)を利用して、該ビオチン化SPCと複合体形成可能な一本鎖RNA分子として、選別されたものである。
具体的には、下記の5’末端の固定領域と3’末端の固定領域、それに挟まれる、30塩基長の「ランダム配列部分(N30)」を具えた一本鎖RNA分子で構成される「ランダム一本鎖RNA分子ライブラリー(RNAプール)」から、SELEX法を適用して、前記ビオチン化SPCと複合体形成可能な一本鎖RNA分子として、選択されたものである。
5’末端の固定領域:GGGAAUGGAUCCACAUCUACGAAUUC;(26塩基)
30塩基長のランダム配列部分:(N30);
3’末端の固定領域:UUCACUGCAGACUUGACGAAGCUU;(24塩基)
SELEX法を適用した、前記ビオチン化SPCとの複合体形成能に基づく、スクリーニング工程では、前記ビオチン化SPCとの複合体形成、ならびに、形成された複合体の解離は、下記の条件を採用している。
(i) 「初回ラウンド」用の「RNAプール」の調製
上記の「ランダム一本鎖RNA分子ライブラリー(RNAプール)」を構成する一本鎖RNA分子は、下記の「ランダム二本鎖DNA分子ライブラリー」を構成する、二本鎖DNA分子を転写テンプレートとして利用して、T7RNAポリメラーゼを用いて、in vitro転写によって調製する。
「ランダム二本鎖DNA分子ライブラリー」を構成する、各二本鎖DNA分子は、下記の「T7プロモーター領域」、5’末端の固定領域、30塩基長のランダム配列部分、3’末端の固定領域からなる塩基配列Rcandidate0を有している。
5’末端の「T7プロモーター領域」:GATAATACGACTCACTATA;(19塩基)
5’末端の固定領域:GGGAATGGATCCACATCTACGAATTC;(26塩基)
30ランダム配列部分:NNNNNNNNNN NNNNNNNNNN NNNNNNNNNN;
3’末端の固定領域:TTCACTGCAGACTTGACGAAGCTT;(24塩基)
そのN30ランダム配列部分は、GCの含有比率は、50%に選択されている。
(ii) ビオチン化SPCとの複合体形成条件
ビーズ分離法を利用するSELEX選択ラウンドでは、ビオチン化SPCは、市販(PIERCE社)の「アガロース・ビーズ上の固定化Streptavidinタンパク質」(Streptavidin Agarose bead: SA bead)、「アガロース・ビーズ上の固定化Neutravidinタンパク質」(Neutravidin Agarose bead: NA bead)を利用して、Streptavidinタンパク質またはNeutravidinタンパク質による、ビオチンの結合によって、前記ビーズ上に固定化する。
前記ビーズ上に固定化されている、ビオチン化SPCに対して、下記の組成のバインディング・バッファ溶液中に溶解している一本鎖RNA分子を作用させ、ビオチン化SPCとの複合体形成を行わせる。使用されるバインディング・バッファ溶液の組成は、HBS (50 mM HEPES pH 7.4, 150 mM NaCl) + 5 mM MgCl2 + 5 mM KClである。
一方、該バインディング・バッファ溶液中に溶解している、一本鎖RNA分子は、予め、“folding”処理を施す。すなわち、各一本鎖RNA分子は、その塩基配列に従って、内在する「相補的な部分塩基配列」間で構成される二本鎖構造を含む、二次構造の形成、ならびに、全体として、三次構造の形成がなされた状態とする。通常、“folding”処理を施すことにより、一本鎖RNA分子の鎖間における、「相補的な部分塩基配列」間で構成される二本鎖構造は解消され、各一本鎖RNA分子は、それぞれ、鎖内で形成される二本鎖構造のみを内在する、三次構造を有するものとなっている。
なお、三次構造を形成する過程において、一本鎖RNA分子は、場合によっては、該バインディング・バッファ溶液中に存在する二価の金属カチオン種:Mg2+に対して、「ヌクレオチド錯体」型の配位結合を形成することもある。すなわち、“folding”処理で形成される一本鎖RNA分子の三次構造中に、二価の金属カチオン種:Mg2+に対して、「ヌクレオチド錯体」型の配位結合が形成されている部位が内在されていることもある。
バインディング・バッファ溶液を固液分離により除去し、該ビーズを回収する。回収されたビーズの表面に、非選択的に付着している、一本鎖RNA分子は、前記バインディング・バッファ溶液を用いて、洗浄処理を行うことで、速やかに洗浄液中に再溶解する。一方、ビオチン化SPCとの複合体形成を介して、該ビーズ上に結合されている、一本鎖RNA分子では、洗浄液中への溶出は相対的に緩やかに進行する。その結果、前記の洗浄処理後、固液分離によって回収されるビーズとともに、ビオチン化SPCとの複合体形成している一本鎖RNA分子が回収される。
(iii) ビオチン化SPCとの複合体の解離条件
ビーズ分離法を利用するSELEX選択ラウンドでは、ビーズ上に固定化されている、ビオチン化SPCと複合体を形成している、一本鎖RNA分子を回収するため、下記の条件で、該複合体の解離を行う。
ビーズ上に固定化されている、Streptavidinタンパク質またはNeutravidinタンパク質と、ビオチン部分との結合の解離を回避し、ビオチン化SPCと一本鎖RNA分子との複合体の解離のみが進行する条件を採用する。具体的には、下記の処理を施すことで、一本鎖RNA分子の有する二次構造、ならびに三次構造を解消することで、該ビオチン化SPCと一本鎖RNA分子との複合体の解離を行っている。
ビーズ分離法を利用するSELEX選択ラウンドで回収されるビーズを、組成:HBS (50 mM HEPES pH 7.4, 150 mM NaCl) + 7M Ureaの溶出バッファ溶液、ビーズ量、カラムボリューム(CV)を基準として、その三倍容中に浸漬し、90℃で5分間加熱し、一本鎖RNA分子の“unfolding”処理を施す。該“unfolding”処理によって、一本鎖RNA分子の二次構造、ならびに三次構造は解消される結果、該一本鎖RNA分子は、変性剤の尿素の高濃度溶液中に溶出される。
溶出された、一本鎖RNA分子を含有する溶出バッファ溶液は、ビーズと固液分離され、回収される。この回収された溶出バッファ溶液中に含まれる一本鎖RNA分子は、例えば、エタノール沈澱処理を施し、遠心して、沈澱画分として分離回収する。
(iv) 表面プラズモン共鳴測定装置を利用する、スフィンゴシルホスホリルコリン(SPC)に対する結合能を有する「RNAアプタマー分子」の分離条件
ビーズ分離法を利用するSELEX選択ラウンドを繰り返した後、最終的に、ビオチン化SPCに対する結合能を有する「RNAアプタマー分子」が濃縮されたRNAプールから、表面プラズモン共鳴測定装置を利用して、SPCに対する結合能を有する「RNAアプタマー分子」を下記の条件で分離する。
表面プラズモン共鳴測定装置のセンサ・チップ上に、Streptavidinタンパク質またはNeutravidinタンパク質を固定化し、固定化されたStreptavidinタンパク質またはNeutravidinタンパク質にビオチン化SPCを結合させる。
このセンサ・チップ上に固定化された、ビオチン化SPCに、ビオチン化SPCに対する結合能を有する「RNAアプタマー分子」が濃縮されたRNAプールを作用させる。その結果、該RNAプール中に含まれる、ビオチン化SPCに対する結合能を有する「RNAアプタマー分子」は、固定化されているビオチン化SPCと複合体を形成する。該RNAプール自体は、前記バインディング・バッファ溶液中に一本鎖RNA分子を溶解したものであり、前記「RNAアプタマー分子」と、固定化されているビオチン化SPCと複合体形成は、該バインディング・バッファ溶液中において進行する。
複合体形成過程を終えた後、RNAを含まないバインディング・バッファ溶液をセンサ・チップ上に流し、RNAプール液を流し出す。このRNAを含まないバインディング・バッファ溶液を用いた洗浄過程の間に、固定化されているビオチン化SPCと複合体形成している、前記「RNAアプタマー分子」の一部も解離するが、大部分の「RNAアプタマー分子」は、複合体を形成した状態を維持している。
洗浄過程の終了後、下記の組成の溶出液をセンサ・チップ上に流し、固定化されているビオチン化SPCと複合体形成している、前記「RNAアプタマー分子」を溶出させる。この溶出過程で使用される溶出液の組成は、HBS (50 mM HEPES pH 7.4, 150 mM NaCl) + 10 mM EDTAである。
該溶出過程では、液温度25℃で、前記溶出液2μLを、センサ・チップ上に満たし、5分間インキュベーションする間に、Mg2+イオンをEDTA錯体として除去する。その結果、マグネシウムイオン依存的にビオチン化SPCと複合体形成している、一本鎖RNA分子を選択的に解離させている。すなわち、該溶出液中には、ビオチン化SPCに対して、マグネシウムイオン依存的な結合能を有する一本鎖RNA分子が回収されている。
センサ・チップ上から、前記溶出液を回収し、該回収された溶出液から、含有されている「RNAアプタマー分子」は、例えば、エタノール沈澱処理を施し、遠心して、沈澱画分として分離回収する。
一方、マグネシウムイオン非依存的な結合能を有する一本鎖RNA分子に関しては、Mg2+イオンをEDTA錯体として除去する処理は、複合体の解離を促進しないが、上記の溶出過程の間に、若干解離が進む。そのため、回収される溶出液中には、マグネシウムイオン非依存的な結合能を有する一本鎖RNA分子も僅かに含まれている。
(v) アガロース・ビーズ自体、あるいはビーズ上に固定化されている、Streptavidinタンパク質またはNeutravidinタンパク質に対する結合能を有する「一本鎖RNA分子」の除去条件
ビーズ分離法を利用するSELEX選択ラウンドでは、アガロース・ビーズ自体、あるいはビーズ上に固定化されている、Streptavidinタンパク質またはNeutravidinタンパク質に対する結合能を有する「一本鎖RNA分子」の濃縮も、不可避的に進行する。
ビオチン化SPCに対する結合能を有する「RNAアプタマー分子」の濃縮を行う際、アガロース・ビーズ自体、あるいはビーズ上に固定化されている、Streptavidinタンパク質またはNeutravidinタンパク質に対する結合能を有する「一本鎖RNA分子」の濃縮を回避するため、「Pre-selection操作」を利用する。
該「Pre-selection操作」は、ビーズ分離法を利用するSELEX選択ラウンドで利用するRNAプール溶液を、ビオチン化SPCの固定化に利用する、「アガロース・ビーズ上の固定化Streptavidinタンパク質」(SA bead)、「アガロース・ビーズ上の固定化Neutravidinタンパク質」(NA bead)に予め作用させる操作である。
「アガロース・ビーズ上の固定化Streptavidinタンパク質」(SA bead)、「アガロース・ビーズ上の固定化Neutravidinタンパク質」(NA bead)に作用させると、該RNAプール溶液中に含まれる、アガロース・ビーズ自体、あるいはビーズ上に固定化されている、Streptavidinタンパク質またはNeutravidinタンパク質に対する結合能を有する「一本鎖RNA分子」は、該ビーズ上に結合される。その結果、該ビーズと固液分離され、回収される、RNAプール溶液中に残余する、アガロース・ビーズ自体、あるいはビーズ上に固定化されている、Streptavidinタンパク質またはNeutravidinタンパク質に対する結合能を有する「一本鎖RNA分子」の濃度は、大幅に低減されている。
該「Pre-selection操作」を予め施した、RNAプール溶液を利用して、SELEX選択ラウンドを行うと、アガロース・ビーズ自体、あるいはビーズ上に固定化されている、Streptavidinタンパク質またはNeutravidinタンパク質に対する結合能を有する「一本鎖RNA分子」は濃縮を受けるが、予め、RNAプール溶液中の含有濃度を低減している結果、回収される溶出バッファ溶液中に含まれる「一本鎖RNA分子」中における、アガロース・ビーズ自体、あるいはビーズ上に固定化されている、Streptavidinタンパク質またはNeutravidinタンパク質に対する結合能を有する「一本鎖RNA分子」の比率は、相対的に低い水準となっている。
従って、該「Pre-selection操作」を利用することで、ビーズ分離法を利用するSELEX選択ラウンドを繰り返しても、アガロース・ビーズ自体、あるいはビーズ上に固定化されている、Streptavidinタンパク質またはNeutravidinタンパク質に対する結合能を有する「一本鎖RNA分子」の濃縮を実質的に回避することが可能となる。
(vi) 「2回ラウンド」以降で利用する「RNAプール」の調製
「2回ラウンド」以降で利用する「RNAプール」は、前段のラウンドで回収された「一本鎖RNA分子」より調製される、二本鎖cDNA分子を転写テンプレートとして利用して、T7RNAポリメラーゼを用いて、in vitro転写によって調製する。
回収された「一本鎖RNA分子」を鋳型として、二本鎖cDNA分子を調製する工程では、下記のForward Primer とReverse Primerを利用して、RT-PCR法を適用する。
Forward Primer:(配列番号:39)
5'- GATAATACGACTCACTATA GGGAATGGATCCACATCTACGA -3'
Reverse Primer:(配列番号:40)
5'- AAGCTTCGTCAAGTCTGCAGTGAA -3'
前記Reverse Primerは、回収される「一本鎖RNA分子」の3’末端の固定領域と相補的な塩基配列である。
5'- UUCACUGCAGACUUGACGAAGCUU -3'
3'- AAGTGACGTCTGAACTGCTTCGAA -5'
前記Forward Primerは、「T7プロモーター領域」として利用可能な塩基配列と、回収される「一本鎖RNA分子」の5’末端の固定領域の大部分とで構成されている。
「T7プロモーター領域」:5'- GATAATACGACTCACTATA -3'
5’末端の固定領域の大部分:5'- GGGAATGGATCCACATCTACGA -3'
その結果、回収された「一本鎖RNA分子」を鋳型として調製される、二本鎖cDNA分子の塩基配列は、5’末端にForward Primerに起因する領域、3’末端にReverse Primerに相補的な領域、その間に、回収された「一本鎖RNA分子」の5’末端の固定領域の一部:AUUCと「ランダム配列部分」に由来する領域とで構成されている。
Forward Primerに起因する領域:
GATAATACGACTCACTATA GGGAATGGATCCACATCTACGA
5’末端の固定領域の一部:AUUCと「ランダム配列部分」に由来する領域:
ATTC NNNNNNNNNN NNNNNNNNNN NNNNNNNNNN
Reverse Primerに相補的な領域:
TTCACTGCAGACTTGACGAAGCTT
調製された二本鎖cDNA分子を転写テンプレートとして利用して、T7RNAポリメラーゼを用いて、in vitro転写により調製される「一本鎖RNA分子」は、前段のラウンドで回収された「一本鎖RNA分子」とは、その「ランダム配列部分」の頻度分布は、本質的に同じ分布を示すものとなっている。
調製された「一本鎖RNA分子」は、in vitro転写反応溶液から回収し、上記のバインディング・バッファ溶液中に、所定の濃度で溶解して、次段ラウンドで利用する「RNAプール」とする。なお、「一本鎖RNA分子」に対して、“re-folding”処理を施す。その結果、一本鎖RNA分子の鎖間における、「相補的な部分塩基配列」間で構成される二本鎖構造は解消され、各一本鎖RNA分子は、それぞれ、鎖内で形成される二本鎖構造のみを内在する、三次構造を有するものとなっている。
(第一の実施態様)
第一の実施態様では、本発明の第一の形態にかかるスフィンゴシルホスホリルコリン(SPC)に対する結合能を有するアプタマーを選別する一連の工程の一例を以下に説明する。
第1の実施態様では、下記の表1に記載する条件を採用して、スフィンゴシルホスホリルコリン(SPC)に対する結合能を有するアプタマーの選別を行っている。
表1に示す選択条件では、ビーズ分離法を利用するSELEX選択ラウンドを12ラウンド繰り返し、ビオチン化SPCに対して結合能を有する一本鎖RNA分子の濃縮を行っている。最終的に、濃縮されたビオチン化SPCに対して結合能を有する一本鎖RNA分子から、表面プラズモン共鳴測定装置を利用する、SELEX選択ラウンドを1ラウンド行って、ビオチン化SPCに加えて、遊離のSPCに対して結合能を有する一本鎖RNA分子を選別している。
また、ビーズ分離法を利用するSELEX選択ラウンドでは、「アガロース・ビーズ上の固定化Streptavidinタンパク質」(SA bead)、「アガロース・ビーズ上の固定化Neutravidinタンパク質」(NA bead)にビオチン化SPCを結合させたものを、交互に使用している。このビーズの種類を変更することによって、初回ラウンドと、2回目のラウンドでは、アガロース・ビーズ自体、あるいはビーズ上に固定化されている、Streptavidinタンパク質またはNeutravidinタンパク質に対する結合能を有する「一本鎖RNA分子」の濃縮を抑制している。
3回目のラウンド以降では、二種類のビーズを交互に使用することに加えて、その回のラウンドで使用するビーズの種類に合わせて、該ビーズを用いる「Pre-selection操作」を実施することで、アガロース・ビーズ自体、あるいはビーズ上に固定化されている、Streptavidinタンパク質またはNeutravidinタンパク質に対する結合能を有する「一本鎖RNA分子」の濃縮を回避している。
「Pre-selection操作」に利用する、「アガロース・ビーズ上の固定化Streptavidinタンパク質」(SA bead)あるいは「アガロース・ビーズ上の固定化Neutravidinタンパク質」(NA bead)の量は、ビーズの量として、各回のラウンドで使用される「ビオチン化SPCを結合させているビーズ」の量を基準として、表1に示す量比としている。ラウンドが進むとともに、アガロース・ビーズ自体、あるいはビーズ上に固定化されている、Streptavidinタンパク質またはNeutravidinタンパク質に対する結合能を有する「一本鎖RNA分子」は、徐々に濃縮される傾向があることを考慮し、ラウンドが進むとともに、「Pre-selection操作」に利用するビーズの量を増している。
各回のラウンドにおける、ビーズ上に固定化されているビオチン化SPCと「RNAプール」を接触させる際、その液温度は、25℃とし、その時間:「Incubation Time」は、表1に示す。
なお、「Pre-selection操作」を実施する際も、その液温度は、25℃とし、その時間は、前記「Incubation Time」と等しい時間を選択している。
各回のラウンドにおける、ビーズ上に固定化されているビオチン化SPCと「RNAプール」を接触させた後、固液分離により、「RNAプール」を除去する。次いで、該ビーズに非選択的に付着している一本鎖RNA分子を洗浄除去するため、洗浄工程を設けている。該洗浄工程では、RNA分子を含まないバインディング・バッファ溶液を利用して、その液温度は、25℃とし、ビーズ量、カラムボリューム(CV)を基準として、表1に記載する、合計液量(回数)を用いて、洗浄を行っている。
最終の13回目のラウンドは、表面プラズモン共鳴測定装置を利用する、SELEX選択ラウンドである。具体的には、表面プラズモン共鳴測定装置:BIACORE 3000を利用し、そのセンサ・チップ上に、Streptavidinタンパク質を固定化し、該固定化されたStreptavidinタンパク質にビオチン化SPCを結合させている。
この13回目のラウンドで使用する「RNAプール」液は、バインディング・バッファ溶液中に一本鎖RNA分子を5μM含有している。センサ・チップ上に、この「RNAプール」液を、流速20μL/分で流し、固定化されているStreptavidinタンパク質に結合しているビオチン化SPCと、一本鎖RNA分子の複合体を形成させる。この複合体形成過程は、その液温度は、25℃とし、センサ・チップ上に「RNAプール」液を流通させる時間は、5分間としている。
洗浄過程では、RNA分子を含まないバインディング・バッファ溶液を、流速20μL/分で、5分間流し、センサ・チップ上の「RNAプール」液を除去する。該洗浄過程において、その液温度は、25℃としている。
洗浄過程の終了後、下記の組成の溶出液をセンサ・チップ上に満たし、インキュベーションすることで、固定化されているビオチン化SPCと複合体形成している、一本鎖RNA分子を溶出させる。この溶出過程で使用される溶出液の組成は、HBS (20 mM HEPES pH 7.4, 150 mM NaCl) + 10 mM EDTAである。
該溶出過程では、該溶出液2μLを、センサ・チップ上に満たし、5分間インキュベーションする間に、Mg2+イオンをEDTA錯体として除去する。その結果、マグネシウムイオン依存的にビオチン化SPCと複合体形成している、一本鎖RNA分子を選択的に解離させている。すなわち、該溶出液中には、ビオチン化SPCに対して、マグネシウムイオン依存的な結合能を有する一本鎖RNA分子が回収されている。
回収された溶出液中に含まれる一本鎖RNA分子は、エタノール沈澱処理を施し、遠心して、沈澱画分として分離回収する。該13回目のラウンドにおいて、分離回収された、一本鎖RNA分子を鋳型として、同様に、RT-PCR法を応用して、二本鎖cDNA分子を調製する。
調製された二本鎖cDNA分子を溶解する液の一部を使用して、含有される二本鎖cDNA分子を、市販のTAクローニング・キット(プロメガ株式会社)を利用して、クローニングする。具体的には、当該キットに添付される標準プロトコルに従って、RT−PCRによる増幅産物(二本鎖DNA分子)群を、クローニングベクター;pGEM−T Easyへ、ライゲーションする。このライゲーション後、クローニングベクターにより、大腸菌株Mach1(インビトロジェン)を形質転換させる。
次いで、前記クローニングベクター由来の選択マーカーを利用し、定法に従って、クローニングベクターを保持する形質転換株をコロニー選別する。
一方、調製された二本鎖cDNA分子を転写テンプレートとして利用して、T7RNAポリメラーゼを用いて、in vitro転写により、「一本鎖RNA分子」を調製し、「RNAプール」を作製する。
該13回目のラウンドを終了した時点の「RNAプール」、ならびに、8回目〜12回目の各ラウンドを終了した時点の「RNAプール」に関して、実際に、ビオチン化SPCと複合体形成する一本鎖RNA分子の含有比率の上昇(濃縮)がなされていることを、表面プラズモン共鳴測定装置を利用して、検証した。
具体的には、表面プラズモン共鳴測定装置:BIACORE 3000を利用し、そのセンサ・チップ上に、Streptavidinタンパク質を固定化し、該固定化されたStreptavidinタンパク質にビオチン化SPCを結合させている。上記13回目、ならびに、8回目〜12回目の各ラウンドを終了した時点の「RNAプール」から、それぞれ、バインディング・バッファ溶液中に一本鎖RNA分子を2μM含有している、「RNA試料」液を調製する。
13回目、ならびに、8回目〜12回目の各ラウンドの「RNA試料」液を、センサ・チップ上に、120秒間の間、流速20μL/分で流し、固定化されているStreptavidinタンパク質に結合しているビオチン化SPCと、一本鎖RNA分子の複合体を形成させる。次いで、センサ・チップ上に、RNA分子を含まないバインディング・バッファ溶液を、流速20μL/分で流し、固定化されているビオチン化SPCと複合体を形成している一本鎖RNA分子を解離させる。前記複合体の形成過程と、複合体の解離過程における、表面プラズモン共鳴シグナル強度の時間経過を、図1に纏めて示す。
8回目〜12回目の各ラウンド、さらには、13回目のラウンドと進む間に、ビオチン化SPCと複合体形成可能な一本鎖RNA分子の含有比率は、回を追う毎に、上昇していることが確認された。
上記13回目のラウンドにおいて、分離回収された、一本鎖RNA分子から作製したクローンのうち、無作為に85クローンを選び、各クローンが保持する、一本鎖RNA分子のcDNAの塩基配列を解析した。解析された85クローンが保持する、一本鎖RNA分子のcDNAの塩基配列を対比したところ、同じ塩基配列を有するクローンが複数存在している塩基配列が、9種類存在していた。また、前記9種類の塩基配列に対して、一塩基が相違する塩基配列も見出され、それを含め、下記の9種類のクローン・ファミリーが存在することが判明した。図2に、該9種類のクローン・ファミリーで見出される、一本鎖RNA分子のcDNAの塩基配列を纏めて示す。
更に、表2に、該9種類のクローン・ファミリーで見出される、一本鎖RNA分子の塩基配列中、5’末端側のForward Primerに起因する領域と3’末端側Reverse Primerに相補的な領域を除いた部分の部分塩基配列を示す。
「ランダム配列部分」を比較すると、上記の9種類のクローン・ファミリーA〜Iのうち、クローン・ファミリーHを除く、8種のクローン・ファミリーにおいて、「5’−CCGUUAUUGG−3’」の部分塩基配列が、同じ部位に存在している。
該「5’−CCGUUAUUGG−3’」の部分塩基配列と類似する部分塩基配列が、85クローンの一本鎖RNA分子の塩基配列中、その「ランダム配列部分」中に存在する可能性を調べた。
具体的には、先ず、「5’−CCGUUAUUGG−3’」の部分塩基配列中に含まれる、塩基長5〜7の「部分配列」の群に関して、
5’末端の固定領域:GGGAAUGGAUCCACAUCUACGAAUUC;(26塩基)
3’末端の固定領域:UUCACUGCAGACUUGACGAAGCUU;(24塩基)
の部分には、類似性を示す部分配列が存在しないものを、「5’−CCGUUAUUGG−3’」の部分塩基配列に特徴的な「モチーフ配列」として、選択した。
その結果、少なくとも、「CXUUXXU」、「CCXUU」、「CXUUA」、「CXXUXAU」の4種のモチーフが、「5’−CCGUUAUUGG−3’」の部分塩基配列に特徴的な「モチーフ配列」として選択された。
クローン・ファミリーHの一本鎖RNA分子の塩基配列中、その「ランダム配列部分」中には、「5’−CCGUUAUUGG−3’」の部分塩基配列と類似性を示す、「5’− GCAUUAUUGU−3’」の部分塩基配列が存在している。該「5’− GCAUUAUUGU−3’」の部分塩基配列中にも、「CXUUXXU」、「CXUUA」、「CXXUXAU」の3種のモチーフが内在されている。
85クローンの一本鎖RNA分子の塩基配列中、その「ランダム配列部分」中に、「CXUUXXU」、「CCXUU」、「CXUUA」、「CXXUXAU」の4種のモチーフが存在しているクローンを選別した。
その「ランダム配列部分」中に、「CXUUXXU」のモチーフが存在しているクローンは、85クローン中、53クローン存在していた。
その「ランダム配列部分」中に、「CCXUU」のモチーフが存在しているクローンは、85クローン中、52クローン存在していた。
その「ランダム配列部分」中に、「CXUUA」のモチーフが存在しているクローンは、85クローン中、49クローン存在していた。
その「ランダム配列部分」中に、「CXXUXAU」のモチーフが存在しているクローンは、85クローン中、49クローン存在していた。
以上の「CXUUXXU」、「CCXUU」、「CXUUA」、「CXXUXAU」の4種のモチーフの存在頻度をも考慮し、「5’−CCGUUAUUGG−3’」の部分塩基配列は、ビオチン化SPCとの複合体形成に関与する、コンセンサス配列と推断した。
上記の9種類のクローン・ファミリーA〜Iに分類される、各クローンの一本鎖RNA分子は、下記の表3に記載するIDを付したものである。
上記の9種類のクローン・ファミリーA〜Iに分類される、各クローンの一本鎖RNA分子について、実際に、ビオチン化SPCに対する結合能を有することを、表面プラズモン共鳴測定装置を利用して、検証した。
具体的には、表面プラズモン共鳴測定装置:BIACORE 3000を利用し、そのセンサ・チップ上に、Streptavidinタンパク質を固定化し、該固定化されたStreptavidinタンパク質にビオチン化SPCを結合させている。
クローン・ファミリーA〜Iに分類される、各クローンの一本鎖RNA分子について、それぞれ、バインディング・バッファ溶液中に各一本鎖RNA分子を500nM含有している、「RNA試料」液を調製する。センサ・チップ上に、この「RNA試料」液を、流速20μL/分で流し、固定化されているStreptavidinタンパク質に結合しているビオチン化SPCと、一本鎖RNA分子の複合体を形成させる。この複合体形成過程は、その液温度は、25℃とし、センサ・チップ上に「RNA試料」液を流通させる時間は、2分間としている。
次いで、複合体の解離過程では、下記の組成の、RNA分子を含まないランニング・バッファ溶液を、流速20μL/分で、4分間流し、センサ・チップ上の「RNA試料」液を除去し、複合体の解離を進める。該複合体の解離過程において、その液温度は、25℃としている。RNA分子を含まないランニング・バッファ溶液の組成は、HBS (50 mM HEPES pH 7.4, 150 mM NaCl) + 5 mM MgCl2 + 5 mM KCl + 0.005% Tween20である。
RNA分子を含まないランニング・バッファ溶液を4分間流した時点で、RNA分子を含まないランニング・バッファ溶液に代えて、下記の組成のEDTA溶液をセンサ・チップ上に、流速60μL/分で流し、残余している一本鎖RNA分子の溶出を行った。EDTA溶液の組成は、HBS (50 mM HEPES pH 7.4, 150 mM NaCl) + 10 mM EDTAである。該EDTA溶液の流入によって、センサ・チップ上に残余している、固定化されたビオチン化SPCと一本鎖RNA分子の複合体から、金属カチオン種(Mg2+)は、EDTAとの複合体を形成する結果、除去される。
この金属カチオン種(Mg2+)の除去に伴って、クローン・ファミリーHに属するクローンの一本鎖RNA分子を除き、残る8種のクローン・ファミリーA〜G,Iに属する各クローンの一本鎖RNA分子は、速やかに溶出された。一方、クローン・ファミリーHに属するクローンの一本鎖RNA分子は、金属カチオン種(Mg2+)の除去によっても、固定化されたビオチン化SPCと複合体を形成した状態に保たれている。
上記の測定を終了した後、クローン・ファミリーHに属するクローンの一本鎖RNA分子と固定化されたビオチン化SPCとの複合体を解消する手段としては、該一本鎖RNA分子の立体構造を解消することで、ビオチン化SPCに対する結合能を喪失させる処理を採用する。具体的には、センサ・チップ上に、組成50 mM NaOH + 1 M NaClの液20μLを、流速100μL/分で流し、前記一本鎖RNA分子の「アルカリ変性処理」を施す。
図3に、一本鎖RNA分子:SPC-198, SPC-243, SPC-256, SPC-203, SPC-209, SPC-289, SPC-261, SPC-267, SPC-215, SPC-216, SPC-219, SPC-259, SPC-213, SPC-273, SPC-242, SPC-246について、前記の検証を行った結果を併せてしめす。
クローン・ファミリーAに属するクローンの一本鎖RNA分子、SPC-198に関して、「RNA試料」液中に含有される該一本鎖RNA分子の濃度を、50nM、100nM、200nM、400nM、800nMの2倍希釈系列で変化させ、他の条件は上記の条件を用いて、複合体形成過程、複合体の解離過程における、表面プラズモン共鳴シグナル強度の時間的変化を測定した。図4−1に、液温度25℃における、該SPC-198に対する測定結果を示す。その測定結果に基づき、液温度25℃、バインディング・バッファ溶液の組成:HBS (20 mM HEPES pH 7.4, 150 mM NaCl) + 5 mM MgCl2 + 5 mM KClの条件において、ビオチン化SPCと該一本鎖RNA分子との複合体形成の速度定数:ka、複合体の解離の速度定数:kd、ならびに、解離定数KD=kd/kaを算出した。算出された値は、ka=(2.04±0.01)×104 (M-1-1)、kd=(4.27±0.03)×10-4 (s-1)、KD=kd/ka=20.9±0.2 (nM)であった。
クローン・ファミリーBに属するクローンの一本鎖RNA分子、SPC-203に関して、「RNA試料」液中に含有される該一本鎖RNA分子の濃度を、50nM、100nM、200nM、400nM、800nMの2倍希釈系列で変化させ、他の条件は上記の条件を用いて、複合体形成過程、複合体の解離過程における、表面プラズモン共鳴シグナル強度の時間的変化を測定した。図4−2に、液温度25℃における、該SPC-203に対する測定結果を示す。その測定結果に基づき、液温度25℃、バインディング・バッファ溶液の組成:HBS (20 mM HEPES pH 7.4, 150 mM NaCl) + 5 mM MgCl2 + 5 mM KClの条件において、ビオチン化SPCと該一本鎖RNA分子との複合体形成の速度定数:ka、複合体の解離の速度定数:kd、ならびに、解離定数KD=kd/kaを算出した。算出された値は、ka=1.41±0.01×104 (M-1-1)、kd=4.67±0.01×10-4 (s-1)、KD=kd/ka=33.2±0.2 (nM)であった。
クローン・ファミリーHに属するクローンの一本鎖RNA分子、SPC-213に関して、「RNA試料」液中に含有される該一本鎖RNA分子の濃度を、50nM、100nM、200nM、400nM、800nMの2倍希釈系列で変化させ、他の条件は上記の条件を用いて、複合体形成過程、複合体の解離過程における、表面プラズモン共鳴シグナル強度の時間的変化を測定した。図4−3に、液温度25℃における、該SPC-213に対する測定結果を示す。その測定結果に基づき、液温度25℃、バインディング・バッファ溶液の組成:HBS (20 mM HEPES pH 7.4, 150 mM NaCl) + 5 mM MgCl2 + 5 mM KClの条件において、ビオチン化SPCと該一本鎖RNA分子との複合体形成の速度定数:ka、複合体の解離の速度定数:kd、ならびに、解離定数KD=kd/kaを算出した。算出された値は、ka=5.93±0.15×103 (M-1-1)、kd=5.36±0.02×10-4 (s-1)、KD=kd/ka=90.4±2.4 (nM)であった。
クローン・ファミリーCに分類されるクローンの一本鎖RNA分子、SPC-289に関して、「RNA試料」液中に含有される該一本鎖RNA分子の濃度を、50nM、100nM、200nM、400nM、800nMの2倍希釈系列で変化させ、他の条件は上記の条件を用いて、複合体形成過程、複合体の解離過程における、表面プラズモン共鳴シグナル強度の時間的変化を測定した。図5−1に、液温度25℃における、該SPC-289に対する測定結果を示す。
図5−1に示す表面プラズモン共鳴シグナル強度の時間的変化では、その複合体の解離過程は、単一の速度定数kdで表記できず、少なくとも、二つの速度定数kdで特徴付けられる、二種の解離過程として、解析する必要があることが判明した。すなわち、kdが、10-2 (s-1)以上の「速い解離過程」と、kdが、10-3 (s-1)以下の「遅い解離過程」が存在するとして、解析する必要があることが判明した。図5−1には、複合体の解離過程に関して、単一の解離過程を仮定した場合(1:1 model)と、二種の解離過程を仮定した場合(1:2 model)について、それぞれ、カーブ・フィッティングを試みた結果を示している。
クローン・ファミリーDに属するクローンの一本鎖RNA分子、SPC-267に関して、「RNA試料」液中に含有される該一本鎖RNA分子の濃度を、50nM、100nM、200nM、400nM、800nMの2倍希釈系列で変化させ、他の条件は上記の条件を用いて、複合体形成過程、複合体の解離過程における、表面プラズモン共鳴シグナル強度の時間的変化を測定した。図5−2に、液温度25℃における、該SPC-267に対する測定結果を示す。
図5−2に示す表面プラズモン共鳴シグナル強度の時間的変化でも、その複合体の解離過程は、単一の速度定数kdで表記できず、少なくとも、二つの速度定数kdで特徴付けられる、二種の解離過程として、解析する必要があることが判明した。すなわち、kdが、10-2 (s-1)以上の「速い解離過程」と、kdが、10-3 (s-1)以下の「遅い解離過程」が存在するとして、解析する必要があることが判明した。図5−2には、複合体の解離過程に関して、単一の解離過程を仮定した場合(1:1 model)と、二種の解離過程を仮定した場合(1:2 model)について、それぞれ、カーブ・フィッティングを試みた結果を示している。
少なくとも、上記の結果を総合すると、表3に示す各クローンの一本鎖RNA分子は、ビオチン化SPCならびにSPCに対する結合能を有する「RNAアプタマー」として、利用可能であると判断される。
(第二の形態)
表3に示す各クローンの一本鎖RNA分子は、それぞれ、固有の三次構造にfoldingされた状態で、ビオチン化SPCならびにSPCと複合体を形成していると、推断される。三次構造の推定は困難であるため、該三次構造を構成する際、その基本的な構造要素となる二次構造の推定を試みた。この一本鎖RNA分子における、二次構造の推定には、特開2008−283943号公報に開示される手法を適用し、二次構造推定プログラム:VALFOLDを利用した。
図6−1に、クローン・ファミリーAに属するクローンの一本鎖RNA分子、SPC-198について、推定される二次構造を示す。推定される二次構造において、その「ランダム配列部分」に存在する、「5’−CCGUUAUUGG−3’」のコンセンサス配列は、「ヘアピン・ループ」を構成している。また、全体の二次構造の形状も、「ヘアピン」形状を呈している。
図6−2に、クローン・ファミリーBに属するクローンの一本鎖RNA分子、SPC-203について、推定される二次構造を示す。推定される二次構造において、その「ランダム配列部分」に存在する、「5’−CCGUUAUUGG−3’」のコンセンサス配列は、「ヘアピン・ループ」を構成している。また、全体の二次構造の形状も、「ヘアピン」形状を呈している。
図6−3に、クローン・ファミリーCに分類されるクローンの一本鎖RNA分子、SPC-289について、推定される二次構造を示す。推定される二次構造において、その「ランダム配列部分」に存在する、「5’−CCGUUAUUGG−3’」のコンセンサス配列は、「ヘアピン・ループ」を構成している。また、全体の二次構造の形状も、「ヘアピン」形状を呈している。
図6−4に、クローン・ファミリーDに分類されるクローンの一本鎖RNA分子、SPC-267について、推定される二次構造を示す。推定される二次構造において、その「ランダム配列部分」に存在する、「5’−CCGUUAUUGG−3’」のコンセンサス配列は、「ヘアピン・ループ」を構成している。また、全体の二次構造の形状も、「ヘアピン」形状を呈している。
図6−5に、クローン・ファミリーHに属するクローンの一本鎖RNA分子、SPC-213について、推定される二次構造を示す。推定される二次構造において、その「ランダム配列部分」に存在する、「5’− GCAUUAUUGU−3’」の部分は、「ヘアピン・ループ」状の構造を構成している。
本発明の第一の形態にかかるスフィンゴシルホスホリルコリン(SPC)に対する結合能を有するアプタマーにおいて、対象物質のSPCとの複合体形成に関与する部位は、それぞれ、“AUUC”と「ランダム配列部分(N30)」の部分が、その三次構造の形成に関与している領域に存在していると、推断される。具体的には、その三次構造を構成する際に、その構成要素として使用される二次構造のうち、“AUUC”と「ランダム配列部分(N30)」の部分が、その二次構造の形成に関与する領域に、対象物質のSPCとの複合体形成に関与する部位が存在すると、推断される。
本発明の第二の形態にかかるスフィンゴシルホスホリルコリン(SPC)に対する結合能を有するアプタマーは、上記の本発明の第一の形態にかかるRNAアプタマー分子中、“AUUC”と「ランダム配列部分(N30)」の部分が、その二次構造の形成に関与する領域部分と、実質的に同じ二次構造を形成することで、スフィンゴシルホスホリルコリン(SPC)に対する結合能を保持している。
(第二の実施態様)
第二の実施態様では、本発明の第二の形態にかかるスフィンゴシルホスホリルコリン(SPC)に対する結合能を有するアプタマーを設計する工程の一例を以下に説明する。
図6−1に示す、一本鎖RNA分子、SPC-198の推定される二次構造中、“AUUC”と「ランダム配列部分(N30)」の部分が、その二次構造の形成に関与する領域と、実質的に同じ二次構造を形成すると推定される、一本鎖RNA分子を設計した。具体的には、図7−1に示す二次構造を形成すると推定される、一本鎖RNA分子;SPC−m009、SPC−m010を作製した。
(II-1) SPC-m009:
5'-GGGAUCCACAUCUACGAAUUC
UACCGUUAUUGGUGUCACCGAAGAUGUUA
UUC C -3' (配列番号:12);
(II-2) SPC-m010:
5'-GGAUCUACGAAUUC
UACCGUUAUUGGUGUCACCGAAGAU
CC -3' (配列番号:13);
一本鎖RNA分子;SPC−m009、SPC−m010の推定される二次構造は、「5’−CCGUUAUUGG−3’」のコンセンサス配列を含む「ヘアピン・ループ」の構造を含め、一本鎖RNA分子、SPC-198の推定される二次構造の主要部を保持している。なお、5’−末端と3’−末端の部分は、二本鎖構造となるように、二つのG:C対を形成可能な塩基配列としている。
図6−2に示す、一本鎖RNA分子、SPC-203の推定される二次構造中、“AUUC”と「ランダム配列部分(N30)」の部分が、その二次構造の形成に関与する領域と、実質的に同じ二次構造を形成すると推定される、一本鎖RNA分子を設計した。具体的には、図7−2に示す二次構造を形成すると推定される、一本鎖RNA分子;SPC−m011、SPC−m012を作製した。
(II-3) SPC-m011:
5'-GGGAUCCACAUCUACGAAUUC
UUCCGUUAUUGGAGCCAAGUCGUAUCCCGA
UUCC -3' (配列番号:14);
(II-4) SPC-m012:
5'-GGCGAAUUC
UUCCGUUAUUGGAGCCAAGUCG
CC -3' (配列番号:15);
一本鎖RNA分子;SPC−m011、SPC−m012の推定される二次構造は、「5’−CCGUUAUUGG−3’」のコンセンサス配列を含む「ヘアピン・ループ」の構造を含め、一本鎖RNA分子、SPC-203の推定される二次構造の主要部を保持している。なお、5’−末端と3’−末端の部分は、二本鎖構造となるように、二つのG:C対を形成可能な塩基配列としている。
図6−3に示す、一本鎖RNA分子、SPC-289の推定される二次構造中、“AUUC”と「ランダム配列部分(N30)」の部分が、その二次構造の形成に関与する領域と、実質的に同じ二次構造を形成すると推定される、一本鎖RNA分子を設計した。具体的には、図7−3に示す二次構造を形成すると推定される、一本鎖RNA分子;SPC−m013、SPC−m014を作製した。
(II-5) SPC-m013:
5'-GGAUCCACAUCUACGAAUUC
UACCGUUAUUGGAGCACGCGUAGUAUGGGU
CC -3' (配列番号:16);
(II-6) SPC-m014:
5'-GGACGAAUUC
UACCGUUAUUGGAGCACGCGU
CC -3' (配列番号:17);
一本鎖RNA分子;SPC−m013、SPC−m014の推定される二次構造は、「5’−CCGUUAUUGG−3’」のコンセンサス配列を含む「ヘアピン・ループ」の構造を含め、一本鎖RNA分子、SPC-289の推定される二次構造の主要部を保持している。なお、5’−末端と3’−末端の部分は、二本鎖構造となるように、二つのG:C対を形成可能な塩基配列としている。
図6−4に示す、一本鎖RNA分子、SPC-267の推定される二次構造中、“AUUC”と「ランダム配列部分(N30)」の部分が、その二次構造の形成に関与する領域と、実質的に同じ二次構造を形成すると推定される、一本鎖RNA分子を設計した。具体的には、図7−4に示す二次構造を形成すると推定される、一本鎖RNA分子;SPC−m015、SPC−m016を作製した。
(II-7) SPC-m015:
5'-GGACAUCUACGAAUUC
UACCGUUAUUGGUGUAACGUAAUUGU
CC -3' (配列番号:18);
(II-8) SPC-m016:
5'-GGCGAAUUC
UACCGUUAUUGGUGUAACG
CC -3' (配列番号:19);
一本鎖RNA分子;SPC−m015、SPC−m016の推定される二次構造は、「5’−CCGUUAUUGG−3’」のコンセンサス配列を含む「ヘアピン・ループ」の構造を含め、一本鎖RNA分子、SPC-267の推定される二次構造の主要部を保持している。なお、5’−末端と3’−末端の部分は、二本鎖構造となるように、二つのG:C対を形成可能な塩基配列としている。
図6−5に示す、一本鎖RNA分子、SPC-213の推定される二次構造中、“AUUC”と「ランダム配列部分(N30)」の部分が、その二次構造の形成に関与する領域と、実質的に同じ二次構造を形成すると推定される、一本鎖RNA分子を設計した。具体的には、図7−5に示す二次構造を形成すると推定される、一本鎖RNA分子;SPC−m007を作製した。
(II-9) SPC-m007:
5'-GG
GUCCGCACGCAAAGCAUUAUUGUGA
UUCACUGCAGACUUGAC C C -3' (配列番号:20);
一本鎖RNA分子;SPC−m007の推定される二次構造は、「5’− GCAUUAUUGU−3’」を含む「ヘアピン・ループ」状の構造を含め、一本鎖RNA分子、SPC-213の推定される二次構造の主要部を保持している。なお、5’−末端と3’−末端の部分は、二本鎖構造となるように、二つのG:C対を形成可能な塩基配列としている。
上記の一本鎖RNA分子、SPC−m009、SPC−m010、SPC−m011、SPC−m012、SPC−m013、SPC−m014、SPC−m015、SPC−m016が、実際に、ビオチン化SPCと複合体を形成可能であることを、表面プラズモン共鳴測定装置を利用して、検証した。
具体的には、表面プラズモン共鳴測定装置:BIACORE 3000を利用し、そのセンサ・チップ上に、Streptavidinタンパク質を固定化し、該固定化されたStreptavidinタンパク質にビオチン化SPCを結合させている。
各一本鎖RNA分子について、それぞれ、バインディング・バッファ溶液中に各一本鎖RNA分子を500nM含有している、「RNA試料」液を調製する。センサ・チップ上に、この「RNA試料」液を、流速20μL/分で流し、固定化されているStreptavidinタンパク質に結合しているビオチン化SPCと、一本鎖RNA分子の複合体を形成させる。この複合体形成過程は、その液温度は、25℃とし、センサ・チップ上に「RNA試料」液を流通させる時間は、2分間としている。
次いで、複合体の解離過程では、下記の組成の、RNA分子を含まないランニング・バッファ溶液を、流速20μL/分で、3.5分間流し、センサ・チップ上の「RNA試料」液を除去し、複合体の解離を進める。該複合体の解離過程において、その液温度は、25℃としている。RNA分子を含まないランニング・バッファ溶液の組成は、HBS (20 mM HEPES pH 7.4, 150 mM NaCl) + 5 mM MgCl2 + 5 mM KCl + 0.005% Tween20である。
RNA分子を含まないランニング・バッファ溶液を5分間流した時点で、RNA分子を含まないランニング・バッファ溶液に代えて、下記の組成のEDTA溶液をセンサ・チップ上に、流速60μL/分で流し、残余している一本鎖RNA分子の溶出を行った。EDTA溶液の組成は、HBS (50 mM HEPES pH 7.4, 150 mM NaCl) + 10 mM EDTAである。該EDTA溶液の流入によって、センサ・チップ上に残余している、固定化されたビオチン化SPCと一本鎖RNA分子の複合体から、金属カチオン種は、EDTAとの複合体を形成する結果、除去される。
この金属カチオン種、特には、Mg2+カチオン種の除去に伴って、一本鎖RNA分子、SPC−m009、SPC−m010、SPC−m011、SPC−m012、SPC−m013、SPC−m014、SPC−m015、SPC−m016は、速やかに溶出された。
図8−1に、一本鎖RNA分子:SPC−m009、SPC−m010、SPC−m011、SPC−m012、SPC−m013、SPC−m014、SPC−m015、SPC−m016について、前記条件を用いて、複合体形成過程、複合体の解離過程における、表面プラズモン共鳴シグナル強度の時間的変化を測定した結果を併せて示す。
図8−1に示す表面プラズモン共鳴シグナル強度の時間的変化において、一本鎖RNA分子:SPC−m013、SPC−m014、SPC−m015、SPC−m016に関しては、上述のSPC−289、SPC−267と同様に、その複合体の解離過程は、単一の速度定数kdで表記できず、少なくとも、二つの速度定数kdで特徴付けられる、二種の解離過程として、解析する必要があることが判明した。すなわち、kdが、10-2 (s-1)以上の「速い解離過程」と、kdが、10-3 (s-1)以下の「遅い解離過程」が存在するとして、解析する必要があることが判明した。
図8−1に示す表面プラズモン共鳴シグナル強度の時間的変化において、一本鎖RNA分子:SPC−m009、SPC−m010、SPC−m011、SPC−m012に関しては、上述のSPC−198、SPC−203と同様に、その複合体の解離過程は、単一の速度定数kdで表記可能であると判断された。
一本鎖RNA分子、SPC−m009、SPC−m010、SPC−m011、SPC−m012に関して、「RNA試料」液中に含有される該一本鎖RNA分子の濃度を、200nM、400nM、800nMの2倍希釈系列で変化させ、他の条件は上記の条件を用いて、複合体形成過程、複合体の解離過程における、表面プラズモン共鳴シグナル強度の時間的変化を測定した。その測定結果に基づき、液温度25℃、バインディング・バッファ溶液の組成:HBS (20 mM HEPES pH 7.4, 150 mM NaCl) + 5 mM MgCl2 + 5 mM KClの条件において、ビオチン化SPCと該一本鎖RNA分子との複合体形成の速度定数:ka、複合体の解離の速度定数:kd、ならびに、解離定数KD=kd/kaを算出した。
SPC−m009に対して、算出された値は、ka=1.24±0.33×104 (M-1-1)、kd=23.1±0.08×10-4 (s-1)、KD=kd/ka=186±5.05 (nM)であった。
SPC−m010に対して、算出された値は、ka=(1.17±0.33)×104 (M-1-1)、kd=29.5±0.09×10-4 (s-1)、KD=kd/ka=252±7.04 (nM)であった。
SPC−m011に対して、算出された値は、ka=1.13±0.25×104 (M-1-1)、kd=24.9±0.06×10-4 (s-1)、KD=kd/ka=221±4.84 (nM)であった。
SPC−m012に対して、算出された値は、ka=1.11±0.17×104 (M-1-1)、kd=21.8±0.04×10-4 (s-1)、KD=kd/ka=196±2.98 (nM)であった。
複合体の解離過程の類似性を考慮すると、一本鎖RNA分子:SPC-m009、SPC-m010と、ビオチン化SPCとの複合体形成部位は、共通している判断される。さらに、一本鎖RNA分子:SPC-198とビオチン化SPCとの複合体形成部位と、一本鎖RNA分子:SPC-m009、SPC-m010と、ビオチン化SPCとの複合体形成部位は、実質的に共通していると推断される。
また、一本鎖RNA分子:SPC-m011、SPC-m012と、ビオチン化SPCとの複合体形成部位は、共通している判断される。さらに、一本鎖RNA分子:SPC-203とビオチン化SPCとの複合体形成部位と、一本鎖RNA分子:SPC-m011、SPC-m012と、ビオチン化SPCとの複合体形成部位は、実質的に共通していると推断される。
従って、一本鎖RNA分子:SPC-m009、SPC-m010、およびSPC-198ならびに、SPC-m011、SPC-m012、およびSPC-203においては、ビオチン化SPCとの複合体形成部位は、それぞれ、一本鎖RNA分子、SPC-m010、SPC-m012において推定される二次構造中に存在すると、推断される。
また、複合体の解離過程は、一本鎖RNA分子:SPC-m013、SPC-m014と、ビオチン化SPCとの複合体でも、互いに共通している判断される。すなわち、一本鎖RNA分子:SPC-m013、SPC-m014と、ビオチン化SPCとの複合体形成部位は、共通していると判断される。さらには、一本鎖RNA分子:SPC-289とビオチン化SPCとの複合体形成部位と、一本鎖RNA分子:SPC-m013、SPC-m014と、ビオチン化SPCとの複合体形成部位は、実質的に共通していると推断される。
従って、一本鎖RNA分子:SPC-m013、SPC-m014、ならびに、SPC-289においては、ビオチン化SPCとの複合体形成部位は、一本鎖RNA分子、SPC-m014において推定される二次構造中に存在すると、推断される。
また、複合体の解離過程は、一本鎖RNA分子:SPC-m015、SPC-m016と、ビオチン化SPCとの複合体でも、互いに共通している判断される。すなわち、一本鎖RNA分子:SPC-m015、SPC-m016と、ビオチン化SPCとの複合体形成部位は、共通している判断される。さらには、少なくとも「速い解離過程」を与える、一本鎖RNA分子:SPC-267とビオチン化SPCとの複合体形成部位と、一本鎖RNA分子:SPC-m015、SPC-m016と、ビオチン化SPCとの複合体形成部位は、実質的に共通していると推断される。
従って、一本鎖RNA分子:SPC-m015、SPC-m016、ならびに、SPC-267においては、少なくとも「速い解離過程」を与える、ビオチン化SPCとの複合体形成部位は、一本鎖RNA分子、SPC-m016において推定される二次構造中に存在すると、推断される。
加えて、一本鎖RNA分子、SPC−m007が、実際に、ビオチン化SPCと複合体を形成可能であることを、表面プラズモン共鳴測定装置を利用して、検証した。
具体的には、表面プラズモン共鳴測定装置:BIACORE 3000を利用し、そのセンサ・チップ上に、Streptavidinタンパク質を固定化し、該固定化されたStreptavidinタンパク質にビオチン化SPCを結合させている。
該一本鎖RNA分子、SPC-m007に関して、「RNA試料」液中に含有される該一本鎖RNA分子の濃度を、50nM、100nM、200nM、400nM、800nMの2倍希釈系列で変化させ、他の条件は上記の条件を用いて、複合体形成過程、複合体の解離過程における、表面プラズモン共鳴シグナル強度の時間的変化を測定した。図8−2に、液温度25℃における、該SPC-m007に対する測定結果を示す。
なお、クローン・ファミリーHの一本鎖RNA分子、SPC-213と同様に、該一本鎖RNA分子、SPC-m007も、EDTA溶液を利用して、金属カチオン種、特には、Mg2+カチオン種の除去を行った際、固定化されたビオチン化SPCと複合体を形成した状態に保たれていた。
図8−2に示す表面プラズモン共鳴シグナル強度の時間的変化において、一本鎖RNA分子:SPC−m007に関しては、上述のSPC−213と同様に、その複合体の解離過程は、単一の速度定数kdで表記可能であると判断された。
図8−2に示す測定結果に基づき、液温度25℃、バインディング・バッファ溶液の組成:HBS (50 mM HEPES pH 7.4, 150 mM NaCl) + 5 mM MgCl2 + 5 mM KClの条件において、ビオチン化SPCと該一本鎖RNA分子との複合体形成の速度定数:ka、複合体の解離の速度定数:kd、ならびに、解離定数KD=kd/kaを算出した。
SPC−m007に対して、算出された値は、ka=5.18±0.26×103 (M-1-1)、kd=1.23±0.03×10-3 (s-1)、KD=kd/ka=238±11.8 (nM)であった。
複合体の解離過程の類似性を考慮すると、一本鎖RNA分子:SPC-213とビオチン化SPCとの複合体形成部位と、一本鎖RNA分子:SPC-m007とビオチン化SPCとの複合体形成部位は、実質的に共通していると判断される。従って、一本鎖RNA分子:SPC-m007、ならびに、SPC-213においては、ビオチン化SPCとの複合体形成部位は、一本鎖RNA分子、SPC-m007において推定される二次構造中に存在すると、推断される。
さらに、一本鎖RNA分子:SPC-198とビオチン化SPCとの複合体形成部位には、ビオチン化SPCと類似する構造を有する、ビオチン化S1P、ビオチン化スフィンゴシンも複合体形成可能であると推測される。
実際に、一本鎖RNA分子:SPC-198は、ビオチン化SPCと同様に、ビオチン化S1P、ビオチン化スフィンゴシンとも複合体を形成可能であることを、表面プラズモン共鳴測定装置を利用して、検証した。
具体的には、表面プラズモン共鳴測定装置:BIACORE 3000を利用し、そのセンサ・チップ上に、Streptavidinタンパク質を固定化し、該固定化されたStreptavidinタンパク質に、下記のビオチン化SPC、ビオチン化S1P、ビオチン化スフィンゴシンを結合させている。
該一本鎖RNA分子、SPC-198に関して、「RNA試料」液中に含有される該一本鎖RNA分子の濃度を、25nM、50nM、100nM、200nM、400nMの2倍希釈系列で変化させ、他の条件は上記の条件を用いて、複合体形成過程、複合体の解離過程における、表面プラズモン共鳴シグナル強度の時間的変化を測定した。
図9−1、図9−2、図9−3に、液温度25℃における、該SPC-198の、ビオチン化SPC、ビオチン化S1P、ビオチン化スフィンゴシンに対する、複合体形成過程、複合体の解離過程の測定結果を、対比させて示す。
図9−1、図9−2、図9−3に示す表面プラズモン共鳴シグナル強度の時間的変化において、一本鎖RNA分子:SPC−198に関しては、上述のビオチン化SPCとの複合体と同様に、ビオチン化S1P、ビオチン化スフィンゴシンとの複合体の解離過程は、単一の速度定数kdで表記可能であると判断された。
図9−1、図9−2、図9−3に示す測定結果に基づき、液温度25℃、バインディング・バッファ溶液の組成:HBS (20 mM HEPES pH 7.4, 150 mM NaCl) + 5 mM MgCl2 + 5 mM KClの条件において、ビオチン化S1P、ビオチン化スフィンゴシンと該一本鎖RNA分子との複合体形成の速度定数:ka、複合体の解離の速度定数:kd、ならびに、解離定数KD=kd/kaを算出した。
SPC-198とビオチン化S1Pとの複合体形成・解離に対して、算出された値は、ka=1.13±0.04×104 (M-1-1)、kd=7.88±0.07×10-4 (s-1)、KD=kd/ka=69.9±2.84 (nM)であった。
SPC-198とビオチン化スフィンゴシンとの複合体形成・解離に対して、算出された値は、ka=4.97±0.04×104 (M-1-1)、kd=4.91±0.04×10-4 (s-1)、KD=kd/ka=9.88±0.11 (nM)であった。
なお、SPC-198とビオチン化SPCとの複合体形成・解離に対して、算出された値は、ka=1.29±0.02×104 (M-1-1)、kd=2.94±0.02×10-4 (s-1)、KD=kd/ka=22.8±0.33 (nM)であった。
複合体の解離過程に関して、SPC-198とビオチン化SPCとの複合体、SPC-198とビオチン化S1Pとの複合体、SPC-198とビオチン化スフィンゴシンとの複合体は、実質的に同じであると、判断される。すなわち、SPC-198とビオチン化SPCとの複合体、SPC-198とビオチン化S1Pとの複合体、SPC-198とビオチン化スフィンゴシンとの複合体において、該複合体中における、分子間の相互作用は、実質的に差違が無いと推断される。
さらに、SPC-198に加えて、SPC-203, SPC-267, SPC-289, SPC-213,ならびに、SPC-m009, SPC-m010, SPC-m011, SPC-m012, SPC-m013, SPC-m014, SPC-m015, SPC-m016においても、そのビオチン化SPCとの複合体形成部位には、ビオチン化SPCと類似する構造を有する、ビオチン化S1P、ビオチン化スフィンゴシンも複合体形成可能であると推測される。
実際に、前記一本鎖RNA分子のいずれもが、ビオチン化SPCと同様に、ビオチン化S1P、ビオチン化スフィンゴシンとも複合体を形成可能であることを、表面プラズモン共鳴測定装置を利用して、検証した。
具体的には、表面プラズモン共鳴測定装置:BIACORE 3000を利用し、そのセンサ・チップ上に、Streptavidinタンパク質を固定化し、該固定化されたStreptavidinタンパク質に、ビオチン化SPC、ビオチン化S1P、ビオチン化スフィンゴシンを結合させている。
一本鎖RNA分子:SPC-198, SPC-203, SPC-267, SPC-289, SPC-213に関しては、「RNA試料」液中に含有される該一本鎖RNA分子の濃度を、400nMとし、他の条件は上記の条件を用いて、複合体形成過程、複合体の解離過程における、表面プラズモン共鳴シグナル強度の時間的変化を測定した。また、一本鎖RNA分子:SPC-m009, SPC-m010, SPC-m011, SPC-m012, SPC-m013, SPC-m014, SPC-m015, SPC-m016に関しては、「RNA試料」液中に含有される該一本鎖RNA分子の濃度を、800nMとし、他の条件は上記の条件を用いて、複合体形成過程、複合体の解離過程における、表面プラズモン共鳴シグナル強度の時間的変化を測定した。
図10−1、図10−2、図10−3に、液温度25℃における、SPC-198, SPC-203, SPC-267, SPC-289, SPC-213,ならびに、SPC-m009, SPC-m010, SPC-m011, SPC-m012, SPC-m013, SPC-m014, SPC-m015, SPC-m016の各一本鎖RNA分子について、ビオチン化SPC、ビオチン化S1P、ビオチン化スフィンゴシンに対する、複合体形成過程、複合体の解離過程の測定結果を、対比させて示す。
各一本鎖RNA分子において、ビオチン化S1Pとの複合体の解離過程と、ビオチン化スフィンゴシンとの複合体の解離過程とを比較すると、その時間的変化は、実質的に同じであると判断される。すなわち、各一本鎖RNA分子において、一旦形成された、該一本鎖RNA分子とビオチン化S1Pとの複合体、該一本鎖RNA分子とビオチン化スフィンゴシンとの複合体中おける、一本鎖RNA分子とビオチン化S1P分子間の相互作用と、一本鎖RNA分子とビオチン化スフィンゴシン分子間の相互作用は、実質的に差違が無いと推断される。
一方、複合体の形成過程において、該一本鎖RNA分子とビオチン化S1Pとの複合体の生成量、該一本鎖RNA分子とビオチン化スフィンゴシンとの複合体の生成量には、顕著な差違が存在している。この結果は、ビオチン化S1Pのうち、複合体形成可能な形状を有するものの比率と、ビオチン化スフィンゴシンのうち、複合体形成可能な形状を有するものの比率とが、顕著に異なっていることを示唆していると、解釈される。
具体的には、ビオチン化S1Pでは、そのリン酸基(−O−PO(OH)2)は、一価のアニオン(−O−PO(OH)−O-)と二価のアニオン(−O−PO3 2-)の二つのイオン化状態を取り得るが、その一方のみが、一本鎖RNA分子と複合体形成可能であると、推測される。さらには、ビオチン化S1Pのリン酸基は、一価のアニオンとなった際、遊離のアニオン種(−O−PO(OH)−O-)と、金属カチオン種が配位した状態(例えば、−O−PO(OH)−O-:Mg2+)が想定され、また、二価のアニオンとなった際、遊離のアニオン種(−O−PO3 2-)と、金属カチオン種が配位した状態(例えば、−O−PO3 2-:Mg2+)が想定され、これらの形状の一つが、複合体形成可能であると、推測される。その場合、ビオチン化S1Pのうち、複合体形成可能な形状を有するものの比率は、液温度、液の組成に依存して、変動すると推断される。
それ対して、ビオチン化スフィンゴシンは、イオン化状態は存在していないので、ビオチン化スフィンゴシンのうち、複合体形成可能な形状を有するものの比率は、高い状態となっている。
一方、各一本鎖RNA分子において、ビオチン化SPCとの複合体の解離過程と、ビオチン化スフィンゴシンとの複合体の解離過程とを比較すると、その時間的変化は、類似しているが、若干の差違が見出される。
特に、複合体の解離過程は、単一の速度定数kdで表記できず、少なくとも、二つの速度定数kdで特徴付けられる、二種の解離過程として、解析する必要かあると判断される、一本鎖RNA分子:SPC-267, SPC-289ならびに、SPC-m013, SPC-m014, SPC-m015, SPC-m016において、「速い解離過程」と「遅い解離過程」の寄与の比率は、ビオチン化SPCとの複合体とビオチン化スフィンゴシンとの複合体との間で、有意な差違がある。
一方、複合体の解離過程が、単一の速度定数kdで表記可能であると判断される、一本鎖RNA分子:SPC-198, SPC-203, SPC-213に関しては、複合体の解離過程は、ビオチン化SPCとの複合体とビオチン化スフィンゴシンとの複合体との間で、実質的に同じであると見做すことが可能である。従って、これらの一本鎖RNA分子においては、一旦形成される複合体では、一本鎖RNA分子とビオチン化SPC分子間の相互作用と、一本鎖RNA分子とビオチン化スフィンゴシン分子間の相互作用は、実質的に差違が僅かであると推断される。
実際に、液の組成によって、複合体の形成過程において、一本鎖RNA分子とビオチン化S1Pとの複合体の生成量、一本鎖RNA分子とビオチン化スフィンゴシンとの複合体の生成量、一本鎖RNA分子とビオチン化SPCとの複合体の生成量が変動することを示唆する結果が得られている。
具体的には、複合体の形成過程に使用される、バインディング・バッファ溶液の組成として、
1×buffer:50 mM HEPES(pH 7.4) + 150 mM NaCl + 5 mM MgCl2
0.1×buffer:5 mM HEPES(pH 7.4) + 15 mM NaCl + 5 mM MgCl2
上記の二種を使用して、一本鎖RNA分子:SPC-198について、複合体の形成過程において、一本鎖RNA分子とビオチン化S1Pとの複合体の生成量、一本鎖RNA分子とビオチン化スフィンゴシンとの複合体の生成量、一本鎖RNA分子とビオチン化SPCとの複合体の生成量の相違を、表面プラズモン共鳴測定装置を利用して、観測した。
表面プラズモン共鳴測定装置:BIACORE 3000を利用し、そのセンサ・チップ上に、Streptavidinタンパク質を固定化し、該固定化されたStreptavidinタンパク質に、ビオチン化SPC、ビオチン化S1P、ビオチン化スフィンゴシンを結合させている。
該一本鎖RNA分子、SPC-198に関して、上記の二種類のバインディング・バッファ溶液を用いて、「RNA試料」液中に含有される該一本鎖RNA分子の濃度を、400nMとして、二種の「RNA試料」液を調製する。ランニング・バッファ溶液にも、上記の二種のバインディング・バッファ溶液を用い、他の条件は上記の条件を用いて、複合体形成過程、複合体の解離過程における、表面プラズモン共鳴シグナル強度の時間的変化を測定した。
図11に、上記の二種のバインディング・バッファ溶液を用いた際に測定された、液温度25℃での、複合体形成過程、複合体の解離過程における、表面プラズモン共鳴シグナル強度の時間的変化を併せて示す。
1×bufferを用いた場合と0.1×bufferを用いた場合の間で、複合体の形成過程において、
一本鎖RNA分子とビオチン化S1Pとの複合体の生成量の比は、40/320;
一本鎖RNA分子とビオチン化スフィンゴシンとの複合体の生成量の比は、510/800;
一本鎖RNA分子とビオチン化SPCとの複合体の生成量の比は、240/860
となっている。
すなわち、形成された複合体の解離過程の速度定数kdは、実質的に等しいと見做せ、
また、複合体の形成過程の速度定数kaも、僅かに相違するのみであるが、
複合体の生成量は、有意な相違が生じている。
その理由として、二種のバインディング・バッファ溶液の組成の相違に起因して、ビオチン化S1P、ビオチン化SPCにおいては、複合体の形成に関与する分子種の存在比率が有意に変化していることが推測される。
(第三の形態)
上記の本発明の第二の形態にかかるスフィンゴシルホスホリルコリン(SPC)に対する結合能を有するアプタマー:SPC-m009, SPC-m010,ならびに、SPC-m011, SPC-m012における、ビオチン化SPCとの複合体形成部位の推定結果から、SPC-m010あるいはSPC-m012の推定二次構造と類似する二次構造を有する一本鎖RNA分子は、同様にビオチン化SPCに対する結合能を有すると推断される。
実際に、SPC-m009, SPC-m010, SPC-m011, SPC-m012, SPC-m013, SPC-m014, SPC-m015, SPC-m016の各一本鎖RNA分子のcDNAの塩基配列を対比した結果を、図12に示す。その対比から、ビオチン化SPCとの複合体形成に大きな寄与を示す部分、“Critical region”が、特定された。
例えば、SPC-m009の推定二次構造において、この“Critical region”を示すと、図13に示す部位となっている。
上記推断に基づき、本発明の第三の形態にかかるスフィンゴシルホスホリルコリン(SPC)に対する結合能を有するアプタマーを、図14に示す、全長62塩基長の「一本鎖RNA分子ライブラリー」を利用して、SELEX・スクリーニング法を適用して選別している。
該全長62塩基長の「一本鎖RNA分子ライブラリー」に含まれる一本鎖RNA分子は、ビオチン化SPCとの複合体形成に大きな寄与を示す部分、“Critical region”に相当する部分配列として、SPC-198, SPC-m009, SPC-m010の推定二次構造において、“Hair pin”ループを構成する“UACCGUUAUUGGUG”を採用している。また、二本鎖構造を構成可能な部位として、5’末端側に“GACAUCCGG”、3’末端側に“CCGGAUGUC”を設けている。
(第三の実施態様)
第三の実施態様では、本発明の第三の形態にかかるスフィンゴシルホスホリルコリン(SPC)に対する結合能を有するアプタマーを選別する工程の一例を以下に説明する。
上記のように、本発明の第一の形態にかかるRNAアプタマー分子と、それから設計される、本発明の第二の形態にかかるRNAアプタマー分子においては、そのビオチン化SPCとの複合体形成部位は、ビオチン化S1P、ビオチン化スフィンゴシンとの複合体形成部位としても、機能していると推断される。
特に、上記の本発明の第一の形態にかかるRNAアプタマー分子と、本発明の第二の形態にかかるRNAアプタマー分子では、表面プラズモン共鳴測定装置を利用して、観測された、ビオチン化SPCとの複合体の生成量:PSPC、ビオチン化スフィンゴシンとの複合体の生成量:PSph、ビオチン化S1Pとの複合体の生成量:PS1Pは、通常、PSph>PSPC≫PS1Pとなっていた。
第三の実施態様では、表面プラズモン共鳴測定装置を利用して、観測される、前記三種の複合体の生成量が、PSPC>PSph≫PS1Pの関係を満たす、スフィンゴシルホスホリルコリン(SPC)に対する結合能を有するアプタマーの選別を試みている。
具体的には、ビオチン化SPCとの複合体形成に大きな寄与を有する、“Hair pin”ループの形状を示す領域を内在し、全体として、“Hair pin”状の二次構造を形成可能な、下記の全長62塩基長の「一本鎖RNA分子ライブラリー」を利用して、ビオチン化SPCに対する結合能を具えている「RNAアプタマー分子」の選別を行った。該全長62塩基長の「一本鎖RNA分子ライブラリー」は、
5’末端の固定領域:GGCAACCACGACAUCCGG;(18塩基)
6塩基長の第一ランダム配列部分:N123456;(6塩基)
「5’−CCGUUAUUGG−3’」のコンセンサス配列を含む
“Hair pin”ループ形成用の定常領域:UACCGUUAUUGGUG;(14塩基)
6塩基長の第二ランダム配列部分:N'6N'5N'4N'3N'2N'1;(6塩基)
3’末端の固定領域:CCGGAUGUCACACACACG;(18塩基)
を具えている。
第三の実施態様では、下記の表4に記載する条件を採用して、スフィンゴシルホスホリルコリン(SPC)に対する結合能を有するアプタマーの選別を行っている。
表4に示す選択条件では、ビーズ分離法を利用するSELEX選択ラウンドを5ラウンド繰り返し、ビオチン化SPCに対して結合能を有する一本鎖RNA分子の濃縮を行っている。最終的に、濃縮されたビオチン化SPCに対して結合能を有する一本鎖RNA分子から、表面プラズモン共鳴測定装置を利用する、SELEX選択ラウンドを2ラウンド行って、ビオチン化SPCに加えて、遊離のSPCに対して結合能を有する一本鎖RNA分子を選別している。
また、ビーズ分離法を利用するSELEX選択ラウンドでは、「アガロース・ビーズ上の固定化Streptavidinタンパク質」(SA bead)、「アガロース・ビーズ上の固定化Neutravidinタンパク質」(NA bead)にビオチン化SPCを結合させたものを、交互に使用している。このビーズの種類を変更することによって、アガロース・ビーズ自体、あるいはビーズ上に固定化されている、Streptavidinタンパク質またはNeutravidinタンパク質に対する結合能を有する「一本鎖RNA分子」の濃縮を抑制している。
さらに、各ラウンドで使用される「RNAプール」に対して、S1Pビーズを用いる「S1P-bead-selection操作」とスフィンゴシン・ビーズを用いる「Sphingosine-bead-selection操作」を施すことで、ビオチン化S1Pと複合体形成する一本鎖RNA分子、ならびに、ビオチン化スフィンゴシンと複合体形成する一本鎖RNA分子の含有比率を予め低減している。
図15に、「S1P-bead-selection操作」、「Sphingosine-bead-selection操作」ならびに「SPC-bead-selection工程」とで構成される、ビーズ分離法を利用するSELEX選択ラウンドの工程フローを模式的に示す。
該S1Pビーズは、「アガロース・ビーズ上の固定化Streptavidinタンパク質」(SA bead)、「アガロース・ビーズ上の固定化Neutravidinタンパク質」(NA bead)にビオチン化S1Pを結合させたものである。「S1P-bead-selection操作」では、該S1Pビーズ25μlに、25μlの「RNAプール」液を加え、10〜20分間インキュベーション後、遠心分離装置によりスピンダウンさせる。その上清を、素通り画分として、回収する。
該スフィンゴシン・ビーズは、「アガロース・ビーズ上の固定化Streptavidinタンパク質」(SA bead)、「アガロース・ビーズ上の固定化Neutravidinタンパク質」(NA bead)にビオチン化スフィンゴシンを結合させたものである。「Sphingosine -bead-selection操作」では、該スフィンゴシン・ビーズ25μlに、「S1P-bead-selection操作」で回収した、25μlの「素通り画分」を10〜20minインキュベーション後、遠心分離装置によりスピンダウンさせる。その上清を、素通り画分として、回収する。
「SPC-bead-selection工程」は、「アガロース・ビーズ上の固定化Streptavidinタンパク質」(SA bead)、「アガロース・ビーズ上の固定化Neutravidinタンパク質」(NA bead)にビオチン化SPCを結合させた「SPCビーズ」を利用して、「Sphingosine-bead-selection操作」で回収される「素通り画分」をスクリーニングする。
なお、利用されるバインディング・バッファ溶液の組成は、50 mM HEPES(pH 7.4) + 150 mM NaCl + 5 mM MgCl2 + 0.005% Tween20である。
「初回ラウンド」用の「RNAプール」の調製は、下記の手順で実施している。
上記の全長62塩基長の「一本鎖RNA分子ライブラリー(RNAプール)」を構成する一本鎖RNA分子は、下記の「二本鎖DNA分子ライブラリー」を構成する、二本鎖DNA分子を転写テンプレートとして利用して、T7RNAポリメラーゼを用いて、in vitro転写によって調製する。
「二本鎖DNA分子ライブラリー」を構成する、各二本鎖DNA分子は、下記の「T7プロモーター領域」、5’末端の固定領域、30塩基長のランダム配列部分、3’末端の固定領域からなる塩基配列Rcandidate1を有している。
5’末端の「T7プロモーター領域」:GATAATACGACTCACTATA;(19塩基)
5’末端の固定領域:GGCAACCACGACATCCGG;(18塩基)
6塩基長の第一ランダム配列部分:N123456;(6塩基)
「5’−CCGUUAUUGG−3’」のコンセンサス配列を含む
“Hair pin”ループ形成用の定常領域:TACCGTTATTGGTG;(14塩基)
6塩基長の第二ランダム配列部分:N'6N'5N'4N'3N'2N'1;(6塩基)
3’末端の固定領域:CCGGATGTCACACACACG;(18塩基)
各回のラウンドの「SPC-bead-selection工程」では、ビーズ上に固定化されているビオチン化SPCと「RNAプール」を接触させる際、その液温度は、25℃とし、その時間:「Incubation Time」は、表4に示す。
なお、「S1P-bead-selection操作」、「Sphingosine-bead-selection操作」を実施する際も、その液温度は、25℃としている。
各回のラウンドの「SPC-bead-selection工程」における、ビーズ上に固定化されているビオチン化SPCと「RNAプール」を接触させた後、固液分離により、「RNAプール」を除去する。次いで、該ビーズに非選択的に付着している一本鎖RNA分子を洗浄除去するため、洗浄工程を設けている。該洗浄工程では、RNA分子を含まないバインディング・バッファ溶液を利用して、その液温度は、25℃とし、「RNAプール」の液量(CV)を基準として、表4に記載する、合計液量(回数)を用いて、洗浄を行っている。
洗浄工程を終えた後、固液分離により、ビーズを回収する。回収された、ビーズ上に固定化されているビオチン化SPCと複合体形成している一本鎖RNA分子を、高濃度Urea溶液を利用して、溶出させ、一本鎖RNA分子のみを回収する。このUrea溶出工程で利用する、高濃度Urea溶液の組成は、7MUreaを含むHBS(50 mM HEPES(pH 7.4) + 150 mM NaCl)溶液であり、該高濃度Urea溶液中において、液温度90℃の加熱処理(boiling 処理)を、5分間行っている。該“boiling”処理を施す際、該温度条件下では、一本鎖RNA分子の二次構造、ならびに三次構造は解消される(“unfolding”される)結果、該一本鎖RNA分子は、変性剤の尿素の高濃度溶液中に溶出される。
「2回ラウンド」以降で利用する「RNAプール」は、前段のラウンドで回収された「一本鎖RNA分子」より調製される、二本鎖cDNA分子を転写テンプレートとして利用して、T7RNAポリメラーゼを用いて、in vitro転写によって調製する。
回収された「一本鎖RNA分子」を鋳型として、二本鎖cDNA分子を調製する工程では、下記のForward Primer 2 とReverse Primer 2を利用して、RT-PCR法を適用する。
Forward Primer 2:(配列番号:41)
5'- GATAATACGACTCACTATA GGCAACCACGACATCCGG -3'
Reverse Primer 2:(配列番号:42)
5'- GTGTGTGTCACATCCGG -3'
前記Reverse Primer 2は、回収される「一本鎖RNA分子」の3’末端の固定領域と相補的な塩基配列である。
5'- CCGGAUGUCACACACACG-3'
3'- GGCCTACACTGTGTGTG -5'
前記Forward Primer 2は、「T7プロモーター領域」として利用可能な塩基配列と、回収される「一本鎖RNA分子」の5’末端の固定領域の大部分とで構成されている。
「T7プロモーター領域」:5'- GATAATACGACTCACTATA -3'
5’末端の固定領域の大部分:5'- GGCAACCACGACATCCGG -3'
その結果、回収された「一本鎖RNA分子」を鋳型として調製される、二本鎖cDNA分子の塩基配列は、5’末端にForward Primer 2に起因する領域、3’末端にReverse Primer 2に相補的な領域、その間に、回収された「一本鎖RNA分子」の「6塩基長の第一ランダム配列部分」、“Hair pin”ループ形成用の定常領域、「6塩基長の第二ランダム配列部分」に由来する領域とで構成されている。
Forward Primer 1 に起因する領域:
GATAATACGACTCACTATA GGCAACCACGACATCCGG
「6塩基長の第一ランダム配列部分」、“Hair pin”ループ形成用の定常領域、「6塩基長の第二ランダム配列部分」に由来する領域:
123456UACCGUUAUUGGUG N'6N'5N'4N'3N'2N'1
Reverse Primer 2 に相補的な領域:
CCGGAUGUCACACACAC
調製された二本鎖cDNA分子を転写テンプレートとして利用して、T7RNAポリメラーゼを用いて、in vitro転写により調製される「一本鎖RNA分子」は、前段のラウンドで回収された「一本鎖RNA分子」とは、その「ランダム配列部分」の頻度分布は、本質的に同じ分布を示すものとなっている。
調製された「一本鎖RNA分子」は、in vitro転写反応溶液から回収し、上記のバインディング・バッファ溶液中に、所定の濃度で溶解して、次段ラウンドで利用する「RNAプール」とする。なお、「一本鎖RNA分子」に対して、“folding”処理を施す。その結果、一本鎖RNA分子の鎖間における、「相補的な部分塩基配列」間で構成される二本鎖構造は解消され、各一本鎖RNA分子は、それぞれ、鎖内で形成される二本鎖構造のみを内在する、三次構造を有するものとなっている。
回収された溶出液中に含まれる一本鎖RNA分子は、エタノール沈澱処理を施し、遠心して、沈澱画分として分離回収する。該7回目のラウンドにおいて、分離回収された、一本鎖RNA分子を鋳型として、同様に、RT-PCR法を応用して、二本鎖cDNA分子を調製する。
調製された二本鎖cDNA分子を溶解する液の一部を使用して、含有される二本鎖cDNA分子を、市販のTAクローニング・キット(プロメガ株式会社)を利用して、クローニングする。具体的には、当該キットに添付される標準プロトコルに従って、RT−PCRによる増幅産物(二本鎖DNA分子)群を、クローニングベクター;pGEM−T−Easy へ、ライゲーションする。このライゲーション後、クローニングベクターにより、大腸菌株Mach1(インビトロジェン)を形質転換させる。
次いで、前記クローニングベクター由来の選択マーカーを利用し、定法に従って、クローニングベクターを保持する形質転換株をコロニー選別する。
上記7回目のラウンドにおいて、分離回収された、一本鎖RNA分子から作製したクローンのうち、無作為に41クローンを選び、各クローンが保持する、一本鎖RNA分子のcDNAの塩基配列を解析した。解析された41クローンが保持する、一本鎖RNA分子のcDNAの塩基配列を対比したところ、同じ塩基配列を有するクローンが複数存在している塩基配列が、3種類存在していた。また、前記3種類の塩基配列に対して、「6塩基長の第一ランダム配列部分」、「6塩基長の第二ランダム配列部分」の部分塩基配列が類似している、塩基配列も見出された。それらを含め、3種類のクローン・ファミリーが存在することが判明した。図16に、3種類のクローン・ファミリーに分類される、一本鎖RNA分子のcDNAの塩基配列、ならびに、いずれのファミリーにも分類されない、一本鎖RNA分子のcDNAの塩基配列を纏めて示す。
なお、上記の選別工程において、EDTA溶出によって、ビオチン化SPCとの複合体から速やかに解離されており、選別された一本鎖RNA分子とビオチン化SPCとの複合体中には、Mg2+カチオン種が含まれていると、判断される。また、Mg2+カチオン種を除去することで、選別された一本鎖RNA分子とビオチン化SPCとの複合体は、速やかに解離可能な形態であると推断される。
図16に示す、クローン・ファミリー1に分類される一本鎖RNA分子;SPC-514, SPC-520, SPC-524, SPC-556, SPC-546, SPC-562, SPC-536, SPC-551, SPC-583、クローン・ファミリー2に分類される一本鎖RNA分子;SPC-501, SPC-569, SPC-511、クローン・ファミリー3に分類される一本鎖RNA分子;SPC-548, SPC-547について、実際に、ビオチン化SPCに対する結合能を有することを、表面プラズモン共鳴測定装置を利用して、検証した。
具体的には、表面プラズモン共鳴測定装置:BIACORE 3000を利用し、そのセンサ・チップ上に、Streptavidinタンパク質を固定化し、該固定化されたStreptavidinタンパク質にビオチン化SPCを結合させている。
各クローンの一本鎖RNA分子について、それぞれ、バインディング・バッファ溶液中に各一本鎖RNA分子を400nM含有している、「RNA試料」液を調製する。センサ・チップ上に、この「RNA試料」液を、流速20μL/分で流し、固定化されているStreptavidinタンパク質に結合しているビオチン化SPCと、一本鎖RNA分子の複合体を形成させる。この複合体形成過程は、その液温度は、25℃とし、センサ・チップ上に「RNA試料」液を流通させる時間は、2分間としている。
次いで、複合体の解離過程では、下記の組成の、RNA分子を含まないランニング・バッファ溶液を、流速20μL/分で流し、センサ・チップ上の「RNA試料」液を除去し、複合体の解離を進める。該複合体の解離過程において、その液温度は、25℃としている。RNA分子を含まないランニング・バッファ溶液の組成は、50 mM HEPES(pH 7.4) + 150 mM NaCl + 5 mM MgCl2である。
対比のため、SPC-198,SPC-m012に関しても、同じ条件で測定を行っている。
さらには、ビオチン化S1Pに対する結合能、ビオチン化スフィンゴシンに対する結合能に関して、同様の条件で測定を行った。
図17−1〜図17−3には、上記の3種のクローン・ファミリーの分類された、本発明の第三の実施態様にかかる、ビオチン化SPCに対する結合能を有する「RNAアプタマー分子」について、ビオチン化SPC、ビオチン化S1P、ビオチン化スフィンゴシンに対する、複合体形成過程、複合体の解離過程の挙動を、液温度25℃で、表面プラズモン共鳴測定装置を利用して、評価した結果の一例を併せて示す。
SPC-198,SPC-m012に関して、液温度25℃で、表面プラズモン共鳴測定装置を利用して、観測された、ビオチン化SPCとの複合体の生成量:PSPC、ビオチン化スフィンゴシンとの複合体の生成量:PSph、ビオチン化S1Pとの複合体の生成量:PS1Pは、PSph>PSPC≫PS1Pとなっている。
それに対して、第三の実施態様で選別された一本鎖RNA分子においては、液温度25℃で、表面プラズモン共鳴測定装置を利用して、観測される、ビオチン化SPCとの複合体の生成量:PSPC、ビオチン化スフィンゴシンとの複合体の生成量:PSph、ビオチン化S1Pとの複合体の生成量:PS1Pが、PSPC≧PSph≫PS1Pの関係を満たすものが、相当の比率で見出されている。
特に、複合体の解離過程の挙動に着目すると、第三の実施態様で選別された一本鎖RNA分子においては、ビオチン化SPCとの複合体解離の速度定数kdSPC、ビオチン化スフィンゴシンとの複合体解離の速度定数kdSph、ビオチン化S1Pとの複合体解離の速度定数kdS1Pは、見掛け上、kdSPC≪kdSph≒kdS1Pの関係となっている。
一般に、複合体の解離過程は、液温度が上昇するとともに、複合体解離の速度定数kdは増加する。この液温度の上昇に伴う、複合体解離の速度定数kdの増加の程度について、SPC-198,SPC-m012と、第三の実施態様で選別された、SPC-520, SPC-524に関して、表面プラズモン共鳴測定装置を利用して、評価を行った。
図18−1と図18−2に、SPC-198、SPC-m012、ならびに、SPC-524、SPC-520について、液温25℃、37℃の二温度条件における、ビオチン化SPC、ビオチン化S1P、ビオチン化スフィンゴシンに対する、複合体形成過程、複合体の解離過程の挙動を、表面プラズモン共鳴測定装置を利用して、評価した結果の一例を対比して示す。
SPC-524、SPC-520においては、表面プラズモン共鳴測定装置を利用して、観測される、ビオチン化SPCとの複合体の生成量:PSPC、ビオチン化スフィンゴシンとの複合体の生成量:PSph、ビオチン化S1Pとの複合体の生成量:PS1Pは、液温度37度においても、PSPC>PSph≫PS1Pの関係を満たしている。
クローン・ファミリー1に分類される一本鎖RNA分子;SPC-514, SPC-520, SPC-524, SPC-556, SPC-546, SPC-562, SPC-536, SPC-551, SPC-583、クローン・ファミリー2に分類される一本鎖RNA分子;SPC-501, SPC-569, SPC-511、クローン・ファミリー3に分類される一本鎖RNA分子;SPC-548, SPC-547について、そのcDNAの塩基配列の対比を行った結果を、図19に示す。
その対比の結果、“Hair pin”ループ形成用の定常領域の塩基配列が、本来の塩基配列である“TACCGTTATTGGTG”ではなく、“TACCGTTATTGGAG”に変異しているものが、過半数を超えていることが判る。また、“TACCGTTATTGGTG”に保持されているクローンに比べて、“TACCGUUATTGGAG”に変異しているクローンでは、表面プラズモン共鳴測定装置を利用して、観測される、ビオチン化SPCとの複合体の生成量:PSPCが相対的に高くなっていることも判明した。
(第四の形態)
上記の本発明の第三の形態にかかる一本鎖RNA分子において、図14に示す推定二次構造において特徴的な“Hair pin”ループ形成に適する、“UACCGUUAUUGGUG”が“UACCGUUAUUGGAG”に変異すると、当該部分の二次構造は、異なっていると推断される。実際に、SPC-524について、その二次構造の推定を行った結果を、図20に示す。「5’−CCGUUAUUGG−3’」のコンセンサス配列は、“Hair pin”ループを形成しているが、二重鎖構造を構成すべき部分が、部分的に異なる構造を形成すると推定された。
本発明の第四の形態にかかるスフィンゴシルホスホリルコリン(SPC)に対する結合能を有するアプタマーは、上記の本発明の第三の形態にかかるRNAアプタマー分子中、“Hair pin”ループ形成に関与する部分として、本来の“UACCGUUAUUGGUG”に代えて、“UACCGUUAUUGGAG”を用いて形成される二次構造と、実質的に同じ二次構造を形成することで、スフィンゴシルホスホリルコリン(SPC)に対する結合能を保持している。
(第四の実施態様)
第四の実施態様では、本発明の第四の形態にかかるスフィンゴシルホスホリルコリン(SPC)に対する結合能を有するアプタマーを設計する工程の一例を以下に説明する。
SPC-573は、その3’末端の固定領域の一部が欠損しているにも拘わらず、ビオチン化SPCに対する結合能を有している。従って、6塩基長の第一ランダム配列部分と6塩基長の第二ランダム配列部分とで構成される、「バルジ」部分が保持可能である限り、ビオチン化SPCに対する結合能に対して、大きな影響を及ぼさないと推断される。
図20に示す、一本鎖RNA分子、SPC-524の推定される二次構造中、少なくとも、
6塩基長の第一ランダム配列部分:AAAGCC;(6塩基)
「5’−CCGUUAUUGG−3’」のコンセンサス配列を含む
“Hair pin”ループ形成用の領域:UACCGUUAUUGGAG;(14塩基)
6塩基長の第二ランダム配列部分:UAAAAA;(6塩基)
の部分により構成される部分構造に関して、実質的に同じ部分構造を形成すると推定される、一本鎖RNA分子を設計した。具体的には、図20に示す二次構造を形成すると推定される、一本鎖RNA分子;SPC−m017、SPC−m018、SPC−m019、ならびにSPC−m020を作製した。
(IV-1) SPC-m017:
5'- GGGG
AAAGCC
UACCGUUAUUGGAG
UAAAAA
CCCC -3' (配列番号:35);
(IV-2) SPC-m018:
5'- GGG
AAAGCC
UACCGUUAUUGGAG
UAAAAA
CCC -3' (配列番号:36);
(IV-3) SPC-m019:
5'- GGG
AAAGCC
UACCGUUAUUGGAG
UAAAAA
CC -3' (配列番号:37);
(IV-4) SPC-m020:
5'- GGG
AAAGCC
UACCGUUAUUGGAG
UAAAAA
C -3' (配列番号:38);
一本鎖RNA分子;SPC−m017、SPC−m018、SPC−m019の推定される二次構造は、「5’−CCGUUAUUGG−3’」のコンセンサス配列を含む「ヘアピン・ループ」の構造を含め、一本鎖RNA分子、SPC-524の推定される二次構造の主要部を保持している。なお、5’−末端と3’−末端の部分は、二本鎖構造となるように、二つのG:C対を形成可能な塩基配列としている。
上記の一本鎖RNA分子、SPC−m017、SPC−m018、SPC−m019、さらには、SPC−m020が、実際に、ビオチン化SPCと複合体を形成可能であることを、表面プラズモン共鳴測定装置を利用して、検証した。
具体的には、表面プラズモン共鳴測定装置:BIACORE 3000を利用し、そのセンサ・チップ上に、Streptavidinタンパク質を固定化し、該固定化されたStreptavidinタンパク質にビオチン化SPCを結合させている。
各一本鎖RNA分子について、それぞれ、バインディング・バッファ溶液中に各一本鎖RNA分子を400nM含有している、「RNA試料」液を調製する。センサ・チップ上に、この「RNA試料」液を、流速20μL/分で流し、固定化されているStreptavidinタンパク質に結合しているビオチン化SPCと、一本鎖RNA分子の複合体を形成させる。この複合体形成過程は、その液温度は、25℃とし、センサ・チップ上に「RNA試料」液を流通させる時間は、2分間としている。
次いで、複合体の解離過程では、下記の組成の、RNA分子を含まないランニング・バッファ溶液を、流速20μL/分で流し、センサ・チップ上の「RNA試料」液を除去し、複合体の解離を進める。該複合体の解離過程において、その液温度は、25℃としている。RNA分子を含まないランニング・バッファ溶液の組成は、HBS (50 mM HEPES pH 7.4, 150 mM NaCl) + 5 mM MgCl2 + 5 mM KCl + 0.005% Tween20である。
複合体形成過程の終了直後(「RNA試料」液の流通開示後、130秒経過した時点)の表面プラズモン共鳴シグナル強度の測定値から、ビオチン化SPCとの複合体の生成量:PSPCを見積もった。具体的には、表面プラズモン共鳴シグナル強度を、各一本鎖RNAの塩基長(分子量に相当する)で除した値を算出し、ビオチン化SPCとの複合体の生成量:PSPC(分子数)の指標とした。
図21に、一本鎖RNA分子;SPC−m017、SPC−m018、SPC−m019、SPC−m020に関して、評価された、前記のビオチン化SPCとの複合体の生成量:PSPC(分子数)の指標値を示す。
また、同じ測定条件で、一本鎖RNA分子;SPC−198、SPC−m012、SPC−524に関して評価を行った、ビオチン化SPCとの複合体の生成量:PSPC(分子数)の指標値も、併せて、図21に示す。
その結果、一本鎖RNA分子;SPC−m017、SPC−m018、SPC−m019、SPC−m020は、実際に、ビオチン化SPCとの複合体を形成可能であることが検証された。
さらに、上記の一本鎖RNA分子中のU、ならびに、Cに対して、そのヌクレオチドのリボース骨格の2’−ヒドロキシル基(−OH)に種々の修飾を施した、修飾RNA分子を作製し、同じ測定条件で評価を行った、ビオチン化SPCとの複合体の生成量:PSPC(分子数)の指標値も、図21に示す。
前記修飾の種類は、各修飾RNA分子に付す名称の末尾に、F、FU、FC、OMe、OMeU、OMeC、d、dU、dCの符号を付して示してある。表5に、それぞれの修飾の内容を示す
各修飾RNA分子において、“Hair pin”ループ形成に関与する「5’−CCGUUAUUGG−3’」のコンセンサス配列において、当該部位のUを修飾塩基へと変換する、F、FU、OMe、OMeU、d、dUの修飾を施すと、ビオチン化SPCとの複合体の生成量:PSPC(分子数)の指標値は、顕著に減少している。
一方、“Hair pin”ループ形成に関与する「5’−CCGUUAUUGG−3’」のコンセンサス配列において、当該部位のUに修飾がなされない、FC、OMeC、dCの修飾を施した場合は、ビオチン化SPCとの複合体の生成量:PSPC(分子数)の指標値は、減少するが、その減少の程度は、相対的に僅かであると、判断される。
この結果は、「5’−CCGUUAUUGG−3’」のコンセンサス配列によって構成される“Hair pin”ループの部分構造は、当該部位のUに対する修飾の影響を受け、その結果、ビオチン化SPCに対する結合能の顕著な変化が引き起こされることを暗示している。
本発明にかかるスフィンゴシルホスホリルコリン(SPC)に対する結合能を有する「RNAアプタマー分子」は、遊離のスフィンゴリン脂質の一種であるスフィンゴシルホスホリルコリン(SPC)について、その循環血液中の濃度を定量する目的に利用可能である。

Claims (4)

  1. Mg2+イオンの非存在下において、スフィンゴシルホスホリルコリンに対する結合能を有さず、Mg2+イオンの存在下において、スフィンゴシルホスホリルコリンに対する結合能を有するRNAアプタマーであって、
    Mg2+イオンの存在下において、スフィンゴシルホスホリルコリンに対して結合させた前記RNAアプタマーが示す解離定数Kは、K≦1μMであり、
    Mg2+イオンの存在下において、スフィンゴシルホスホリルコリンに加えて、スフィンゴシン−1−リン酸とスフィンゴシンに対しても、交差反応性を有し、
    Mg2+イオンの存在下において、スフィンゴシルホスホリルコリンに対する結合能と、スフィンゴシンに対する結合能は、スフィンゴシン−1−リン酸に対する結合能より有意に優っているRNAアプタマーであり、
    該RNAアプタマーは、「5’−GGGAAUGGAUCCACAUCUACGAAUUC−3’」の5’末端の固定領域、「5’−UUCACUGCAGACUUGACGAAGCUU−3’」の3’末端の固定領域、ならびに、前記二つの固定領域の間に配置される、30塩基長のランダム配列部分に由来する領域により構成され、
    該RNAアプタマーは、下記のI-1、I-2、I-4、I-6の塩基配列からなる群から選択される塩基配列の一本鎖RNA分子である
    (I-1) SPC-198:
    5’- GGGAAUGGAUCCACAUCUACGAAUUC
    UACCGUUAUUGGUGUCACCGAAGAUGUUA
    UUCACUGCAGACUUGACGAAGCUU -3’ (配列番号:1);
    (I-2) SPC-203:
    5’- GGGAAUGGAUCCACAUCUACGAAUUC
    UUCCGUUAUUGGAGCCAAGUCGUAUCCCGA
    UUCACUGCAGACUUGACGAAGCUU -3’ (配列番号:2);
    (I-4) SPC-289:
    5’- GGGAAUGGAUCCACAUCUACGAAUUC
    UACCGUUAUUGGAGCACGCGUAGUAUGGGU
    UUCACUGCAGACUUGACGAAGCUU -3’ (配列番号:4);
    (I-6) SPC-267:
    5’ - GGGAAUGGAUCCACAUCUACGAAUUC
    UACCGUUAUUGGUGUAACGUAAUUGUGG
    UUCACUGCAGACUUGACGAAGCUU -3’ (配列番号:6);
    ことを特徴とするRNAアプタマー。
  2. Mg2+イオンの非存在下において、スフィンゴシルホスホリルコリンに対する結合能を有さず、Mg2+イオンの存在下において、スフィンゴシルホスホリルコリンに対する結合能を有するRNAアプタマーであって、
    Mg2+イオンの存在下において、スフィンゴシルホスホリルコリンに対して結合させた前記RNAアプタマーが示す解離定数Kは、K≦1μMであり、
    Mg2+イオンの存在下において、スフィンゴシルホスホリルコリンに加えて、スフィンゴシン−1−リン酸とスフィンゴシンに対しても、交差反応性を有し、
    Mg2+イオンの存在下において、スフィンゴシルホスホリルコリンに対する結合能と、スフィンゴシンに対する結合能は、スフィンゴシン−1−リン酸に対する結合能より有意に優っているRNAアプタマーであり、
    該RNAアプタマーは、「5’−CCGUUAUUGG−3’」のコンセンサス配列をその一部に含む、下記のII-1〜II-8の塩基配列からなる群から選択される塩基配列の一本鎖RNA分子である
    (II-1) SPC-m009:
    5’- GGGAUCCACAUCUACGAAUUC
    UACCGUUAUUGGUGUCACCGAAGAUGUUA
    UUCC -3’ (配列番号:12);
    (II-2) SPC-m010:
    5’- GGAUCUACGAAUUC
    UACCGUUAUUGGUGUCACCGAAGAU
    CC -3’ (配列番号:13);
    (II-3) SPC-m011:
    5’- GGGAUCCACAUCUACGAAUUC
    UUCCGUUAUUGGAGCCAAGUCGUAUCCCGA
    UUCC -3’ (配列番号:14);
    (II-4) SPC-m012:
    5’- GGCGAAUUC
    UUCCGUUAUUGGAGCCAAGUCG
    CC -3’ (配列番号:15);
    (II-5) SPC-m013:
    5’- GGAUCCACAUCUACGAAUUC
    UACCGUUAUUGGAGCACGCGUAGUAUGGGU
    CC -3’ (配列番号:16);
    (II-6) SPC-m014:
    5’- GGACGAAUUC
    UACCGUUAUUGGAGCACGCGU
    CC -3’ (配列番号:17);
    (II-7) SPC-m015:
    5’- GGACAUCUACGAAUUC
    UACCGUUAUUGGUGUAACGUAAUUGU
    CC -3’ (配列番号:18);
    (II-8) SPC-m016:
    5’- GGCGAAUUC
    UACCGUUAUUGGUGUAACG
    CC -3’ (配列番号:19);
    ことを特徴とするRNAアプタマー。
  3. Mg2+イオンの非存在下において、スフィンゴシルホスホリルコリンに対する結合能を有さず、Mg2+イオンの存在下において、スフィンゴシルホスホリルコリンに対する結合能を有するRNAアプタマーであって、
    Mg2+イオンの存在下において、スフィンゴシルホスホリルコリンに対して結合させた前記RNAアプタマーが示す解離定数Kは、K≦1μMであり、
    Mg2+イオンの存在下において、スフィンゴシルホスホリルコリンに加えて、スフィンゴシン−1−リン酸とスフィンゴシンに対しても、交差反応性を有し、
    Mg2+イオンの存在下において、スフィンゴシルホスホリルコリンに対する結合能と、スフィンゴシンに対する結合能は、スフィンゴシン−1−リン酸に対する結合能より有意に優っているRNAアプタマーであり、
    該RNAアプタマーは、「5’−GGCAACCACGACAUCCGG−3’」の5’末端の固定領域、「5’−CCGGAUGUCACACACAC−3’」の3’末端の固定領域、ならびに、前記二つの固定領域の間に配置される、「5’−CCGUUAUUGG−3’」のコンセンサス配列をその一部に含む「5’-N1N2N3N4N5N6UACCGUUAUUGGAG N’6N’5N’4N’3N’2N’1-3’」の30塩基長の領域により構成される、下記のIII-1〜III-6とIII-8の塩基配列からなる群から選択される塩基配列の一本鎖RNA分子である
    (III-1) SPC-514:
    5’- GGCAACCACGACAUCCGG
    AAAGCC UACCGUUAUUGGAG AAAAAA
    CCGGAUGUCACACACAC -3’ (配列番号:21);
    (III-2) SPC-520:
    5’- GGCAACCACGACAUCCGG
    GAAGCC UACCGUUAUUGGAG AAAAAA
    CCGGAUGUCACACACAC -3’ (配列番号:22);
    (III-3) SPC-524:
    5’- GGCAACCACGACAUCCGG
    AAAGCC UACCGUUAUUGGAG UAAAAA
    CCGGAUGUCACACACAC -3’ (配列番号:23);
    (III-4) SPC-562:
    5’- GGCAACCACGACAUCCGG
    CAGGCC UACCGUUAUUGGAG AAAAUA
    CCGGAUGUCACACACAC -3’ (配列番号:24);
    (III-5) SPC-536:
    5’- GGCAACCACGACAUCCGG
    AAGGCC UACCGUUAUUGGAG AAUAUU
    CCGGAUGUCACACACAC -3’ (配列番号:25);
    (III-6) SPC-501:
    5’- GGCAACCACGACAUCCGG
    GCGGCC UACCGUUAUUGGAG UAAACU
    CCGGAUGUCACACACAC -3’ (配列番号:26);
    (III-8) SPC-511:
    5’- GGCAACCACGACAUCCGG
    CGGGCC UACCGUUAUUGGAG AUAACU
    CCGGAUGUCACACACAC -3’ (配列番号:28);
    ことを特徴とするRNAアプタマー。
  4. Mg2+イオンの存在下、Mg2+イオンの非存在下において、スフィンゴシルホスホリルコリンに対する結合能を有するRNAアプタマーであって、
    Mg2+イオンの存在下において、スフィンゴシルホスホリルコリンに対して結合させた前記RNAアプタマーが示す解離定数Kは、K≦1μMであり、
    Mg2+イオンの存在下、Mg2+イオンの非存在下において、スフィンゴシルホスホリルコリンに対する結合能を有するRNAアプタマーであって、
    Mg2+イオンの存在下において、スフィンゴシルホスホリルコリンに加えて、スフィンゴシン−1−リン酸とスフィンゴシンに対しても、交差反応性を有し、
    Mg2+イオンの存在下において、スフィンゴシルホスホリルコリンに対する結合能と、スフィンゴシンに対する結合能は、スフィンゴシン−1−リン酸に対する結合能より有意に優っているRNAアプタマーであり、
    該RNAアプタマーは、「5’−GGGAAUGGAUCCACAUCUACGAAUUC−3’」の5’末端の固定領域、「5’−UUCACUGCAGACUUGACGAAGCUU−3’」の3’末端の固定領域、ならびに、前記二つの固定領域の間に配置される、30塩基長のランダム配列部分に由来する領域により構成され、
    該RNAアプタマーは、下記のI-10の塩基配列の一本鎖RNA分子である
    (I-10) SPC-213:
    5’-GGGAAUGGAUCCACAUCUACGAAUUC
    GCAUUGUCCGCACGCAAAGCAUUAUUGUGA
    UUCACUGCAGACUUGACGAAGCUU -3’ (配列番号:10);
    ことを特徴とするRNAアプタマー。
JP2009169459A 2009-07-17 2009-07-17 スフィンゴシルホスホリルコリンに結合するアプタマー分子 Active JP5967687B2 (ja)

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