以下に、本発明を具体化した一実施の形態について図面を参照しつつ説明する。なお、図1は建物の概略を示す縦断面図である。
図1に示すように、建物10は、建物本体11と、その建物本体11の上方に形成された屋根12とを備えている。建物本体11は、一階部分13と二階部分14とを有してなる二階建て建物である。建物10の一階部分13には第一居室15等が設けられ、二階部分14には第二居室16等が設けられている。
建物10の二階部分14には、バルコニー20が設けられている。バルコニー20は、第一居室15の上方に設けられており、いわゆるルーフバルコニーとなっている。バルコニー20は、第二居室16と隣接して設けられており、バルコニー20と第二居室16とは外壁部17によって仕切られている。図示は省略するが、外壁部17の一部には窓部(例えば掃き出し窓)が設けられ、その窓部を通じて第二居室16とバルコニー20との間の行き来が可能となっている。
バルコニー20は、バルコニー床部21と、バルコニー床部21の周縁に沿って立設されるバルコニー腰壁部22とを備える。バルコニー床部21とバルコニー腰壁部22と外壁部17とにより囲まれる空間はバルコニー空間BSとなっている。この場合、バルコニー空間BSが屋外開放空間に相当し、バルコニー腰壁部22と外壁部17とが屋外開放空間を囲んで設けられた壁部に相当する。
次に、外壁部17の下部周辺の構成について図2に基づいて説明する。図2は、外壁部17の下部周辺の構成を示す縦断面図である。
図2に示すように、バルコニー床部21は、図示しない床梁により下方から支持された床下地材23と、床下地材23上に敷設された床断熱材24とを備える。床下地材23はALC床からなり、床断熱材24は発砲ポリスチレン樹脂からなる。床断熱材24上には、バルコニー床部21の床面を形成する防水板25が敷設されている。防水板25は、耐水皮膜(例えば塩化ビニル膜)が施された鋼板よりなり、その一部が外壁部17側の端部において上方に立ち上げられ立ち上がり部25aとなっている。
外壁部17は、壁フレーム27と、壁フレーム27を挟んで両側に設けられた一対の壁面材28,29とを備える。壁フレーム27は、溝形鋼からなる複数のフレーム材が矩形枠状に連結されることにより構成されている。壁フレーム27は、各壁面材28,29よりも下方に延びてその下端部が図示しない床梁に固定され、その上端部が図示しない天井梁に固定されている。
壁フレーム27において互いに離間する縦フレーム材27aの間には長尺状のブラケット35が架け渡されている。ブラケット35は、断面コ字状をなす鋼板よりなり、そのウェブ部35aをバルコニー空間BS側に向けて(換言するとその溝部を第二居室16側に向けて)配設されている。より詳しくは、ブラケット35は、そのウェブ部35aを外壁部17の壁厚み方向において縦フレーム材27aのバルコニー空間BS側の端部に位置合わせした状態で配置されている。
外壁面材28は窯業系サイディングよりなり、バルコニー空間BSに面して設けられている。外壁面材28は、その下端側においてブラケット35のウェブ部35aの外側面(バルコニー空間BS側の面)にビス36で固定されている。この場合、ウェブ部35aの上側部分に外壁面材28の下端側が固定され、下側部分に防水板25の立ち上がり部25aが重ね合わせられている。
内壁面材29は石膏ボードよりなり、第二居室16に面して設けられている。内壁面材29は壁フレーム27にビスにより固定されている。また、内壁面材29の下縁部には巾木34が取り付けられている。
第二居室16の床部は、図示しない床梁により下方から支持された2枚の床下地材31,32と、床下地材32上に敷設された床仕上げ材33とを備える。床下地材31はALC床からなり、床下地材32はパーティクルボードからなり、床仕上げ材33はフローリング材からなる。
続いて、外壁面材28の下端と防水板25の立ち上がり部25a上端との間を通じた水の浸入を防止するための止水構造について説明する。
外壁面材28の下端部裏面とブラケット35のウェブ部35aとの間には止水シート37の上端部が介在されている。止水シート37は、塩化ビニル等の耐水性を有する材料により形成されており、外壁面材28の下端部に沿う長尺状をなしている。止水シート37の上端部には、その片面に同シート37に沿って延びる長尺薄板状のシール材38が重ね合わせられている。シール材38は、EPDM等のゴム材からなる。止水シート37の上端部はこのシール材38とともに外壁面材28とブラケット35のウェブ部35aとの間に挟み込まれており、その挟み込み状態において外壁面材28がウェブ部35aに対してビス36により固定されている。これにより、止水シート37の上端部が外壁面材28の裏面に取り付けられている。なお、詳細には、ビス36は止水シート37とシール材38との双方を貫通している。
止水シート37は、外壁面材28の下端よりも下方に垂れ下がるようにして設けられている。止水シート37における上記垂れ下がり部分は防水板25の立ち上がり部25aの外側面に重ね合わせられており、その下端部において同外側面に両面テープ(ブチルテープ等)で接着固定されている。これにより、外壁面材28の下端と防水板25の立ち上がり部25aとの間が止水シート37によって塞がれて、それら両者25a,28の間を通じて雨水等の水が外壁部17の内部に入り込むことが防止され、ひいては外壁部17の内部を通じて第一居室15又は第二居室16へ流れ込むことが防止されている。
なお、この場合、外壁部17には、防水板25の立ち上がり部25a、止水シート37及びシール材38等によって壁下防水層44が形成されている。この壁下防水層44は外壁面材28の裏面下部からバルコニー空間BSの床面(防水板25の上面)に亘って上下方向に連続して形成されており、外壁面材28の下方では外壁部17の表面(バルコニー空間BS側の面)を形成している。
外壁面材28の下方には水切部材40が設けられている。以下、水切部材40の構成について図2に加え図3を用いながら説明する。なお、図3は水切部材40を示す縦断面図である。
図2及び図3に示すように、水切部材40は、水切本体41と、水切本体41に着脱可能に取り付けられたカバー部材42とを備えて構成されている。水切部材40は、止水シート37をバルコニー空間BS側から覆うようにして設けられている。これにより、止水シート37の露出によって外壁部17の美観が損なわれることが防止されている。
水切本体41は、アルミニウム製の押し出し成型品よりなり、外壁部17の横幅方向に沿って延びる長尺状をなしている。水切本体41は、長手方向全域に亘って同一の横断面形状を有して形成されている。水切本体41は、ブラケット35のウェブ部35aに対してビス43により固定された固定板部41aと、固定板部41aの上下方向の両端部からそれぞれバルコニー空間BS側に延びる一対の横板部41b,41cと、それら各横板部41b,41cのバルコニー空間BS側の端部から互いに反対側に向けて上下方向に延びる一対の縦板部41d,41eとを有する。より詳しくは、上側縦板部41dの上端部からは斜め上向きに斜め板部41fが延びており、その斜め板部41fの上端が水切本体41の上端となっている。なおここで、固定板部41aが連結板部に相当する。
固定板部41aは、止水シート37と防水板25の立ち上がり部25aとが重ね合わせられた重ね合わせ部分53に合わせて配置されており、固定板部41aとブラケット35のウェブ部35aとの間にこの重ね合わせ部分53が挟み込まれた状態となっている。固定板部41aは、この挟み込み状態において長手方向の複数箇所でビス43によりウェブ部35aに固定されており、これにより止水シート37と立ち上がり部25aとがそれぞれ固定されている。
詳細には、止水シート37と立ち上がり部25aとの重ね合わせ部分53では、それら両者25a,37の間にEPDM等のゴム材からなる長尺薄板状のシール材39が介在されている。そして、ビス43は、これら3者25a,37,39を貫通した状態でウェブ部35aに打ち付けられている。
水切本体41では、固定板部41aと各横板部41b、41cとがコ字状をなしており、それら各板部41a〜41cにより囲まれた内側に溝部が形成されている。この溝部は、上側縦板部41dと下側縦板部41eとの間を通じてバルコニー空間BSに開放されており、これら各縦板部41d,41eの間が溝部の開口部45となっている。この開口部45を挟んで上下に並ぶ各縦板部41d,41eは互いの表面(バルコニー空間BS側の面)が同一平面上に位置するように配置されている。
開口部45には、当該開口部45を塞ぐようにしてカバー部材42が設けられている。カバー部材42は、水切本体41と同様、アルミニウム製の押し出し成形品よりなり、水切本体41の長手方向に沿って延びる長尺平板状をなしている。より詳しくは、カバー部材42は、その長さ(長手方向の長さ)が水切本体41の長さと同じとされている。このカバー部材42によりビス43が覆い隠され、ビス43の露出により水切部材40周辺の美観が損なわれることが防止されている。
カバー部材42は、その表面(バルコニー空間BS側の面)が水切本体41の各縦板部41d,41eの表面と同一平面上に位置するように取り付けられている。この場合、各縦板部41d,41eとカバー部材42とによって水切部材40の水切板部40aが構成されている。この水切板部40aは壁下防水層44と離間対向して配置されており、水切板部40aと壁下防水層44との間は水切裏空間48となっている。この水切裏空間48は、水切本体41の各横板部41b,41cによって上下方向に複数(具体的には3つ)の空間に仕切られている。
また、カバー部材42の取付状態では、各横板部41b,41cと固定板部41aとカバー部材42とにより四方が囲まれた囲み空間部49が形成されている。この囲み空間部49は、水切部材40の長手方向の両端部においてバルコニー空間BS(外部)に開放されている。
カバー部材42は、水切本体41の開口部45に着脱可能に取り付けられている。具体的には、水切本体41の各横板部41b,41cには開口部45の周縁部から突出するように係合部46が設けられ、カバー部材42にはその裏面側に突出し係合部46に係合可能な被係合部47が設けられている。そして、カバー部材42の被係合部47が水切本体41の係合部46に係合されることで、カバー部材42が開口部45に対して着脱可能に取り付けられている。
なお、カバー部材42を開口部45に着脱可能に取り付けるための構成は必ずしもかかる構成に限定されない。例えば、カバー部材42の裏面にマグネットを取り付けるとともに、水切本体41側にはマグネットが吸着される金属製のマグネット受けを取り付け、カバー部材42のマグネットを水切本体41側のマグネット受けに吸着させることでカバー部材42を開口部45に着脱可能に取り付けてもよい。
水切本体41の各横板部41b,41cにはそれぞれ、水切裏空間48に入り込んだ水を排出するための排水孔部51,52を形成されている。以下、これら排水孔部51,52について図4を用いながら説明する。図4において(a)は上側横板部41bに設けられた排水孔部51の並びを示す横断面図であり、(b)は下側横板部41cに設けられた排水孔部52の並びを示す横断面図である。なお、図4(a)が図3のA−A線断面図に相当し、図4(b)が図3のB−B線断面図に相当する。
図4(a)に示すように、水切本体41の上側横板部41bには、当該板部41bを板厚方向に貫通する複数の第1排水孔部51が設けられている。これらの排水孔部51を通じて上側横板部41bにより仕切られた両側空間が連通されている。各第1排水孔部51はそれぞれ丸孔形状をなしており、本実施形態では直径(孔径)が約5mmの丸孔とされている。各第1排水孔部51は、上側横板部41b(換言すると水切部材40)の長手方向に沿って所定の間隔で一列に配置され、詳しくは等間隔で配置されている。図4(a)では、第1排水孔部51のピッチ(間隔)をP1で示している。
一方、図4(b)に示すように、水切本体41の下側横板部41cには、当該板部41cを板厚方向に貫通する複数の第2排水孔部52が設けられている。これらの第2排水孔部52を通じて下側横板部41cにより仕切られた両側空間が連通されている。第2排水孔部52も、第1排水孔部51と同様に丸孔形状をなしており、その孔径も第1排水孔部51の孔径と同じとされている。
なお、各排水孔部51,52の形状は必ずしも丸孔形状とする必要はなく、長孔形状や四角形状等その他の形状としてもよい。また、第1排水孔部51と第2排水孔部52とで孔の形状を異ならせたり、孔の大きさを異ならせたりしてもよい。
各第2排水孔部52は、下側横板部41c(換言すると水切部材40)の長手方向に沿って所定の間隔で一列に配置されており、詳しくは等間隔で配置されている。図4(b)では、第2排水孔部52のピッチ(間隔)をP2で示している。本実施形態では、第2排水孔部52のピッチP2が第1排水孔部51のピッチP1と同じとされている(P1=P2)。なお、これら各排水孔部51、52のピッチP1,P2は30〜80mmとすることが好ましい。
第1排水孔部51と第2排水孔部52とは、横板部41b,41cの幅方向において同じ位置に配置されている。その一方で、第1排水孔部51と第2排水孔部52とは横板部41b,41c(水切部材40)の長手方向において位置をずらして配置されている。具体的には、水切部材40の長手方向において(換言すると水切部材40の平面視において)、各第2排水孔部52はそれぞれ隣り合う第1排水孔部51の略中央に配置されている。これにより、第1排水孔部51と第2排水孔部52とは上下方向に互いに重複しない位置関係で配置されている。
続いて、上述した水切部材40の排水構造の作用について説明する。
図2に示すように、外壁面材28の表面に沿って流下した水が外壁面材28の下端と水切部材40の上端との間を通じて水切板部40aの裏側(水切裏空間48)に入り込んだ場合、その水は各横板部41b,41cの排水孔部51,52を通じて下方に流れ、最終的にバルコニー空間BSに排出される。これにより、水切部材40裏に水が溜まるのを回避することができるため、溜まった水の腐食によって異臭が発生したり溜まった水が原因で第一居室15や第二居室16への水の浸入を招いたりする不都合を回避することができる。
その一方で、強風を伴う降雨があった場合等には、バルコニー空間BSの床面に沿って吹く風が外壁部17の壁際で吹き上げられ、その吹き上げられた風とともに雨水が排水孔部51,52を通じて逆流してくることが想定される。そうなると、その逆流した水が風に煽られて外壁面材28の裏面と止水シート37との間を通じて外壁部17の内部へ入り込み、そこから第一居室15や第二居室16へと流れ込むことが懸念される。
この点本実施形態では、水切板部40aの裏側に囲み空間部49が形成されており、各排水孔部51,52がそれぞれその囲み空間部49に通じているため、強風が吹き上げて雨水等の水が排水孔部51,52を通じて逆流しようとする際には、その風が囲み空間部49に一旦入り込むこととなる。この場合、この囲み空間部49において入り込んだ風の勢いを低減させることができるため、排水孔部51,52を設けた構成にあって排水孔部51,52からの水の逆流による建物内部(第一居室15や第二居室16等)への水の浸入を防止することができる。
以上、詳述した本実施形態の構成によれば、以下の優れた効果が得られる。
第1排水孔部51と第2排水孔部52とを上下方向に互いに重複しないように配置したため、排水孔部51,52を通じて水が逆流しようとする際、その水が第1排水孔部51と第2排水孔部52とを上下に勢いよく(一気に)通過してしまうのを抑制することができる。これにより、水の逆流を抑制する効果を高めることができる。
具体的には、第1排水孔部51と第2排水孔部52とを水切部材40の長手方向に位置ずれさせて配置することで、それら各排水孔部51,52を上下方向に互いに重複しないようにした。この場合、第1排水孔部51と第2排水孔部52とを水切部材40の短手方向(換言すると外壁部17の厚み方向)に位置ずれさせて配置する場合と比べ、各排水孔部51,52の位置を大きくずらすことができるため、水の逆流をより一層抑制することが可能となる。
水切本体41に、各横板部41b,41cを水切板部40aとは反対側の端部で上下に連結する固定板部41aを設け、その固定板部41aを壁下防水層44の表面に固定した。これにより、強風の吹き上げが生じた場合でも各横板部41b,41cが撓んでしまうことがないため、横板部41b,41c(さらには固定板部41a)と壁下防水層44との間に隙間が生じることを防止することができる。これにより、かかる隙間を通じて風が吹き上げたり水が逆流したりする不都合を防止することができ、建物内部への水の浸入をより確実に防止することが可能となる。
水切部材40に、水切本体41の固定板部41aと各横板部41b,41cとカバー部材42とにより囲まれた囲み空間部49を形成した。これに対して、囲み空間部を各横板部41b,41cとカバー部材42と壁下防水層44とで四方を囲んで形成することも考えられるが、この場合強風の吹き上げによって横板部41b,41cが撓んで横板部41b,41cと壁下防水層44との間に隙間が発生すると、囲み空間部に入り込んだ風がその隙間から流れ出し同空間部による風の勢いを低減させる効果が弱まるおそれがある。この点、水切部材40自体に囲み空間部49を形成した上記の構成によれば、囲み空間部49に入り込んだ風が隙間から流出するといった上記の問題が生じることがなく、囲み空間部49において風の勢いを低減させる効果を確実に発揮させることができる。よって、この場合建物内部への水の浸入を確実に防止することができる。
水切部材40に囲み空間部49を覆うカバー部材42を設け、そのカバー部材42を水切本体41に対して着脱可能に取り付けた。この場合、カバー部材42を取り外すことにより囲み空間部49をバルコニー空間BSに向けて開放させることができるため、囲み空間部49に異物や汚れが溜まった場合には同空間部49を容易に清掃することができる。
また、カバー部材42を取り外すことで囲み空間部49に通じる各排水孔部51,52の清掃も行うことができる。これにより、排水孔部51,52に異物が詰まって水の排出ができなる等の不具合が生じた場合でも簡単に排水孔部51,52から異物を取り除くことができる。したがって、排水機能を長期に亘って維持する上で好都合な構成である。
囲み空間部49を、水切部材40の長手方向の端部において外部に開放させたため、囲み空間部49に入り込んだ風をその開放部分を通じて囲み空間部49の外に導くことができる。これにより、囲み空間部49に入り込んだ風が第1排水孔部51を通じて吹き上げられるのを抑制できるため、その吹き上げに伴う水の逆流についても抑制することができる。
本発明は上記実施形態に限らず、例えば次のように実施されてもよい。
(1)第1排水孔部51と第2排水孔部52との配置態様は必ずしも上記実施形態のものに限定されない。上記実施形態では、第1排水孔部51と第2排水孔部52とを水切部材40の長手方向に位置ずれさせて配置したが、これに代えて、第1排水孔部51と第2排水孔部52とを水切部材40の短手方向(外壁部17の厚み方向)に位置ずれさせて配置してもよい。その場合にも、第1排水孔部51と第2排水孔部52とを上下方向に重複しないように配置できるため、水の逆流を抑制する効果を高めることができる。
また、図5(a)に示すように、第1排水孔部51と第2排水孔部52とを水切部材40の長手方向及び短手方向の双方に位置ずれさせて配置してもよい。この場合、第1排水孔部51と第2排水孔部52とをより一層大きくずらして配置することができるため、水の逆流をさらに抑制することができる。なお、図5(a)では、上段に第1排水孔部51の並びを示し、下段に第2排水孔部52の並びを示している(図5(b)及び(c)も同様)。
なお、第1排水孔部51と第2排水孔部52とを上下方向に重複するように配置してもよい。
(2)上記実施形態では、第1排水孔部51のピッチP1と第2排水孔部52のピッチP2とを同じとしたが、これら各排水孔部51,52のピッチP1,P2を異ならせてもよい。例えば図5(b)に示すように、第2排水孔部52のピッチP2を第1排水孔部51のピッチP1よりも大きくすることが考えられる(P2>P1)。換言すると、第2排水孔部52の個数を第1排水孔部51の個数よりも少なくすることが考えられる。第2排水孔部52は水が逆流する際には第1排水孔部51に対して上流側に位置するため、第2排水孔部52の数を少なくすることで水の逆流を効果的に抑制することが可能となる。
なお、第2排水孔部52のピッチP2を第1排水孔部51のピッチP1よりも大きくするにあたっては(P2>P1)、第1排水孔部51のピッチP1を30〜80mm、第2排水孔部52のピッチP2を50〜150mmとすることが好ましい。
また、図5(c)に示すように、第2排水孔部52の個数を第1排水孔部51の個数よりも少なくした(換言すると、第2排水孔部52のピッチP2を第1排水孔部51のピッチP1よりも大きくした)構成において、各(すべての)第2排水孔部52をそれぞれ第1排水孔部51の真下に配置するようにしてもよい。この場合、第2排水孔部52の孔径(孔の大きさ)を第1排水孔部51の孔径(孔の大きさ)よりも小さくすることが好ましい。そうすれば、各排水孔部51,52が上下に並ぶ構成にあって水の逆流を抑制することができ、外部からの粉塵の入り込みについても抑制することができる。
(3)上記実施形態では、第1排水孔部51と第2排水孔部52とをそれぞれ水切部材40の長手方向に沿って一列に並べたが、各排水孔部51,52のうち少なくともいずれかを複数列(例えば二列)に並べてもよい。複数列に並べる場合、各列を千鳥状に配列するようにしてもよい。
(4)水切部材40の構成は必ずしも上記実施形態のものに限定されない。例えば図6(a)に示すように、水切本体41に、排水孔部54を有する横板部41gをさらにもう1つ設けてもよい。つまり、水切本体41に3つの横板部41b,41c,41gを設けてもよい。この場合、囲み空間部49に加え、水切板部40a(下側縦板部41e)と各横板部41c,41gと壁下防水層44とにより囲まれた囲み空間部50が形成される。このため、2つの囲み空間部49,50でそれぞれ風の勢いを低減させることができ、水の逆流による建物内部への水の浸入を防止する効果を高めることができる。
なお、水切本体41に4つ以上の横板部を設けてもよい。すなわち、水切部材40裏に3つ以上の囲み空間部を形成してもよい。
また、水切部材40がカバー部材42を備えない構成としてもよい。図6(b)に示す水切部材55(換言すると水切本体)は、上下方向に延びる水切板部55aと、水切板部55aから裏面側に延びる2つの横板部55b,55cと、各横板部55b,55cを上下に連結するとともに上側横板部55bよりも上方に延び上端部において壁下防水層44にビス56で固定された固定板部55dとを有する。この場合、水切部材55の内部には、水切板部55aと各横板部55b,55cと固定板部55dとにより囲まれた囲み空間部57が形成され、各横板部55b,55cにはそれぞれ囲み空間部57に通じる第1排水孔部58及び第2排水孔部59が形成されている。この場合にも、囲み空間部57が水切部材55自体に形成されているため、囲み空間部57に入り込んだ風が隙間から流れ出し同空間部57による風の勢いを低減させる効果が弱まる不都合を防止することができる。
また、この場合、固定板部55dの一部により各横板部55b,55cが上下に連結され、当該一部が壁下防水層44に沿って当接されている。したがって、強風が吹き上げて横板部55b,55cが上側に撓もうとすると、横板部55b,55cに連結された当該一部が壁下防水層44に当たり横板部55b,55cの撓みが規制される。このため、横板部55b,55cと壁下防水層44との間に隙間が発生するのを大いに抑制することができ、強風が吹き上げる場合等においても建物内部への水の浸入をより確実に防止することができる。
(5)上記実施形態では、カバー部材42を水切本体41に対して着脱可能とすることで開口部45(囲み空間部49)を開閉できるようにしたが、これを変更して、カバー部材42を水切本体41に対して開口部45を開放する開状態と開口部45を閉鎖する閉状態とに開閉動作可能に取り付けるようにしてもよい。例えば図6(c)に示すように、カバー部材42を水切本体41に回動軸61を介して回動可能に取り付け、その回動軸61を中心とした回動によってカバー部材42を開閉動作させることが考えられる。この場合においても、カバー部材42を開動作させるだけで開口部45を開放させることができるため、囲み空間部49や排水孔部51,52の清掃を容易に行うことができる。
(6)例えば図7に示すように、外壁面材66が上下に延びる中空部66aを有している場合には、その中空部66aを通じて流下する水が水切部材の裏側に入り込むおそれがある。そこでかかる場合に本発明の排水構造を適用してもよい。
図7では、外壁面材66が支持フレーム67上に載置された状態で支持されており、その支持状態で外壁面材66がその裏面側でL字状の連結金具68を介して支持フレーム67に固定されている。外壁面材66の下方には、支持フレーム67のバルコニー空間BS側に長尺状のベースフレーム82が設けられている。ベースフレーム82は、コ字状をなす鋼板よりなり、そのウェブ部82aをバルコニー空間BS側に向けて配置されている。防水板25の立ち上がり部25aは、そのウェブ部82aの外側面に重ね合わせられている。
ベースフレーム82の上面は外壁面材66の下端面と所定の隙間を隔てて上下に対向しており、当該上面には止水部材69の一部が重ね合わせられている。止水部材69は、耐水性を有する鋼板が折り曲げ形成されてなるものである。止水部材69の上記重ね合わせ部69aはバルコニー空間BS側の端部にて防水板25の立ち上がり部25aの上端部と連続している。これにより、止水部材69と立ち上がり部25aとにより連続した壁下防水層44が形成されている。
止水部材69は、重ね合わせ部69aの第二居室16側(バルコニー空間BSとは反対側)の端部から上方に延び、その後その上端部から外壁面材66の下端面に沿って第二居室16側に延びるとともに、さらに外壁面材66の裏面に沿って上方に延びている。この場合、止水部材69において外壁面材66の下端面に沿う部分は外壁面材66と支持フレーム67の上面との間に挟み込まれ、止水部材69において外壁面材66の裏面に沿う部分は外壁面材66と連結金具68との間に挟み込まれている。
外壁面材66の下方には水切部材62が設けられている。水切部材62は、概ね上記実施形態の水切部材40と同じ構成を有しており、水切本体63とカバー部材64とを備える。上記実施形態のものと異なる点としては、水切本体63には、その傾斜板部の上端から第二居室16側に向かって延びる横板部63aがさらに設けられている点である。水切部材62は、その水切板部62aが防水板25の立ち上がり部25aと離間対向した状態で配置され、水切板部62aと立ち上がり部25aとの間は水切裏空間84となっている。また、水切本体63の横板部63aは、止水部材69の重ね合わせ部69aと上下に対向した状態で配置され、横板部63aと外壁面材66の下端面の間には外壁面材66の下端に沿う長尺状のシール材81が介在されている。
かかる構成では、雨水等の水が外壁面材66の中空部66aを通じて流下し止水部材69の重ね合わせ部69a上に達すると、その水が重ね合わせ部69a上を伝ってバルコニー空間BSの方に向かって流れ、その後水切裏空間84に入り込む。この場合、その入り込んだ水は第1排水孔部85及び第2排水孔部86を通じてバルコニー空間BSへと排出されるため、水切部材62裏に水が溜まることを防止することができる。また、強風が吹き上げて雨水等の水が排水孔部85,86を通じて逆流しようとする際には、その風を囲み空間部に一旦入り込ませることで風の勢いを低減させることができるため、排水孔部85,86を設けた構成にあって排水孔部85,86からの水の逆流による建物内部への水の浸入を防止することができる。
(7)上記実施形態では、バルコニー20の外壁部17側において本発明における水切部材の排水構造を適用したが、バルコニー腰壁部22側にも本発明の排水構造を適用することができる。バルコニー腰壁部22においても、強風を伴う降雨があった場合には水切部材の排水孔部を通じて雨水等の水が逆流しその水がバルコニー腰壁部22の内部に入り込むおそれがある。その場合、バルコニー腰壁部22の内部に入り込んだ水が下方に流れ落ち第一居室15を濡らすといった不都合が生じる可能性がある。したがって、外壁部17側のみならずバルコニー腰壁部22側にも本発明の排水構造を適用することが望ましい。
(8)上記実施形態では、建物10において二階部分14のバルコニー20に設けられた外壁部17に本発明を適用したが、一階部分13に設けられたバルコニーの外壁部に本発明を適用してもよい。そうすれば、排水孔部からの水の逆流により、当該バルコニーと外壁部を挟んで隣接する一階居室へ水が浸入するのを防止することができる。
(9)上記実施形態では、バルコニー空間BS(屋外開放空間に相当)の外壁部17(壁部に相当)に対して本発明を適用したが、ベランダ等他の屋外開放空間の壁部に本発明を適用してもよい。また、屋上部を有する建物でおいて、屋上空間(屋外開放空間)を囲んで設けられる壁部(例えばパラペット壁部)に対して本発明を適用してもよい。