JP5964664B2 - 熱伝導性ポリカーボネート樹脂組成物 - Google Patents
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[熱伝導性ポリカーボネート樹脂組成物]
本発明の熱伝導性ポリカーボネート樹脂組成物は、ポリカーボネート樹脂、ピッチ系黒鉛化短繊維、及び黒鉛粒子を含む熱伝導性ポリカーボネート樹脂組成物であって、熱伝導性ポリカーボネート樹脂組成物中のピッチ系黒鉛化短繊維は、アスペクト比が6〜20であり、ラマンスペクトルパラメータID/IGが0.080〜0.150であり、黒鉛粒子は、厚みと長軸方向に発生するアスペクト比が10〜50であり、ラマンスペクトルパラメータID/IGが0.050〜0.085であり、平均粒子径が5〜50μmであり、ピッチ系黒鉛化短繊維及び黒鉛粒子混合物は、BET比表面積が10m2/g以下であり、ピッチ系黒鉛化短繊維100重量部に対し黒鉛粒子を500〜2000重量部含み、ポリカーボネート樹脂100重量部に対し、ピッチ系黒鉛化短繊維及び黒鉛粒子の合計が50〜100重量部含まれていることを特徴とする熱伝導性ポリカーボネート樹脂組成物である。
本発明の熱伝導性ポリカーボネート樹脂組成物は、高い熱伝導性を得るために、ピッチ系黒鉛化短繊維を含む。その中でもメソフェーズピッチを出発材料とした黒鉛結晶構造の非常に発達したピッチ系黒鉛化短繊維を用いることが特に好ましい。ピッチ系黒鉛化短繊維の熱伝導性は黒鉛結晶の格子構造を伝播するフォノン振動に主に由来するため、熱伝導性を高めるには黒鉛結晶の結晶性を高めること、すなわち黒鉛結晶の格子構造ができるだけ欠陥少なく、かつ大きく広がるようにすることが好ましい。なお、ピッチ系黒鉛化短繊維の製法については後述する。
本発明の熱伝導性ポリカーボネート樹脂組成物中のピッチ系黒鉛化短繊維のアスペクト比は6〜20である。ピッチ系黒鉛化短繊維を熱伝導性フィラーとして用いる場合、熱伝導性ポリカーボネート樹脂組成物に優れた熱伝導率を付与するには、アスペクト比が必要である。アスペクト比が6未満の場合、当該ピッチ系黒鉛化短繊維同士が接触しにくくなり、高い熱伝導率を得にくくなることがある。逆にアスペクト比が20を超える場合、熱伝導性ポリカーボネート樹脂組成物の粘度が高くなり、成形が困難になることがある。また、ピッチ系黒鉛化短繊維とポリカーボネート樹脂との混練処理においては、ピッチ系黒鉛化短繊維の破断をゼロとすることは困難であり、実質的にアスペクト比が20を超えるケースは少ない。アスペクト比の好ましい範囲は7〜18であり、より好ましくは8〜16である。
本発明の熱伝導性ポリカーボネート樹脂組成物中のピッチ系黒鉛化短繊維のラマンスペクトルパラメータID/IGは0.080〜0.150である。ここで、ラマンスペクトルパラメータID/IGの、IDはDバンド(1360cm−1付近)の強度、IGはGバンド(1580cm−1付近)の強度である。黒鉛結晶表面のエッジ比率が大きくなるほど、ID/IGは大きくなる。黒鉛結晶表面のエッジ比率が大きいほど、黒鉛の表面活性が高くなるため、ポリカーボネート樹脂が加水分解し易くなり、熱伝導性ポリカーボネート樹脂組成物の耐久性が低くなる。ID/IGが0.150を超える場合、ポリカーボネート樹脂の加水分解が進み、熱伝導性ポリカーボネート樹脂組成物の耐久性が低くなる。ID/IGが0.080を下回るのは、ピッチ系黒鉛化短繊維の黒鉛化温度を非常に高くする必要があり、実質的に困難である。
ピッチ系黒鉛化短繊維は、繊維状のため充填性に劣る傾向にあり、熱伝導率が期待ほど発現しないことがある。この充填性を補うためのフィラーとしては、平板状、鱗片状等パッキング性を有するフィラーが挙げられる。しかし、これらフィラーの熱伝導率が優れていないと、熱伝導率に優れる熱伝導性ポリカーボネート樹脂組成物が得られない。そこで、熱伝導性に優れる黒鉛粒子を使用する。
黒鉛粒子の厚みと長軸方向に発生するアスペクト比がある程度ないと、熱伝導率に優れる熱伝導性ポリカーボネート樹脂組成物を得るのが困難になる。逆にアスペクト比が大きくなり過ぎると、充填性が悪くなり、熱伝導性フィラーの併用効果が小さくなる。本発明の熱伝導性ポリカーボネート樹脂組成物中の黒鉛粒子のアスペクト比は10〜50であり、より好ましくは15〜30である。ここで、アスペクト比とは、黒鉛粒子の長軸方向長さを粒子厚みで除した値である。長軸方向長さ及び粒子厚みは、熱伝導性ポリカーボネート樹脂組成物中のポリカーボネート樹脂を空気中で焼飛ばした残渣を、走査型電子顕微鏡で観察し、さらに複数の視野において所定粒子数を測定して、その平均値から求めることができる。熱伝導性ポリカーボネート樹脂組成物中の黒鉛粒子のアスペクト比は、原料として使用する黒鉛粒子のアスペクト比、または、黒鉛粒子とポリカーボネート樹脂の混練条件を制御することで調整できる。
本発明の黒鉛粒子の平均粒子径は5〜50μmである。黒鉛粒子の平均粒子径が5μm未満の場合、黒鉛粒子の厚みと長軸方向に発生するアスペクト比が小さくなり、熱伝導性に優れる熱伝導性ポリカーボネート樹脂組成物を得るのが困難になることがある。黒鉛粒子の平均粒子径が50μmを超える場合、黒鉛粒子がピッチ系黒鉛化短繊維同士の隙間に充填され難くなり、充填性が低下し、成形性も低下する。平均粒子径の好ましい範囲は10〜40μmであり、より好ましくは15〜30μmである。ここで、黒鉛粒子の平均粒子径は、熱伝導性ポリカーボネート樹脂組成物中のポリカーボネート樹脂を空気中で焼飛ばした残渣を、光学顕微鏡下で測長器を用い、複数の視野において所定粒子数を測定し、その平均値から求めることができる。
本発明の熱伝導性ポリカーボネート樹脂組成物中の黒鉛粒子のラマンスペクトルパラメータID/IGは0.050〜0.085である。ここで、ラマンスペクトルパラメータID/IGの、IDはDバンド(1360cm−1付近)の強度、IGはGバンド(1580cm−1付近)の強度である。黒鉛結晶表面のエッジ比率が大きくなるほど、ID/IGは大きくなる。黒鉛結晶表面のエッジ比率が大きいほど、黒鉛の表面活性が高くなるため、ポリカーボネート樹脂が加水分解し易くなり、熱伝導性ポリカーボネート樹脂組成物の耐久性が低くなる。ID/IGが0.085を超える場合、ポリカーボネート樹脂の加水分解が進み、熱伝導性ポリカーボネート樹脂組成物の耐久性が低くなる。ID/IGが0.050を下回る黒鉛粒子の入手は困難である。
黒鉛粒子として特に限定は無く、天然黒鉛としては鱗状黒鉛(塊状黒鉛、鱗片状黒鉛)、土状黒鉛、及び膨張黒鉛等、人造黒鉛としては熱分解黒鉛等が挙げられる。後述する金属含有量の観点からすると、人造黒鉛が好ましい。
本発明の熱伝導性ポリカーボネート樹脂組成物中のピッチ系黒鉛化短繊維及び黒鉛粒子混合物のBET比表面積は10m2/g以下である。BET比表面積は一般に繊維及び粒子の表面が荒れているほど大きい値となり、滑らかなほど小さい値となる。繊維及び粒子の表面が滑らかであるほど、熱伝導性ポリカーボネート樹脂組成物中の、ピッチ系黒鉛化短繊維同士、黒鉛粒子同士、及びピッチ系黒鉛化短繊維と黒鉛粒子間の接触面積が大きくなり、熱伝導性ポリカーボネート樹脂組成物の熱伝導率を向上させることができる。BET比表面積のより好ましい範囲は5m2/g以下である。
本発明の熱伝導性ポリカーボネート樹脂組成物は、ピッチ系黒鉛化短繊維100重量部に対し、黒鉛粒子を500〜2000重量部含む。ピッチ系黒鉛化短繊維と黒鉛粒子の添加量がこの比にある時、ピッチ系黒鉛化短繊維と黒鉛粒子の相互作用効果が大きく、高い熱伝導性を得ることができ、さらには、該熱伝導性ポリカーボネート樹脂組成物を成形してなる成形体のMD方向とTD方向の成形収縮率比及び熱伝導率比を小さくすることができる。ここで、MD方向とは、射出成形により成形片を作製する際の樹脂の流れる方向であり、TD方向とはMD方向に垂直な方向である。MD方向とTD方向の成形収縮率比及び熱伝導率比が小さければ、成形品の設計、成形等が容易であり、取扱いやすい熱伝導性ポリカーボネート樹脂組成物となる。該熱伝導性ポリカーボネート樹脂組成物を成形してなる成形体のMD方向及びTD方向の成形収縮率比は3以下であることが好ましく、MD方向とTD方向の熱伝導率比は2.5以下であることが好ましい。
成形収縮率は150×150×2.5mmの平板試験片を射出成形にて作製し、その平板試験片を23±2℃、50±5%RH環境下で成形直後168時間放置した前後の寸法をMD方向、TD方向毎にデジタル式読取顕微鏡で測定して求めた。成形収縮率比はMD方向の成形収縮率をTD方向の成形収縮率で除した値である。
熱伝導率はJIS K7162で規格された試験片の中央部からMD方向、TD方向毎にサンプルを切出し、レーザーフラッシュ法にて測定した。熱伝導率比はMD方向の熱伝導率をTD方向の熱伝導率で除した値である。
本発明の熱伝導性ポリカーボネート樹脂組成物には、ポリカーボネート樹脂100重量部に対し、ピッチ系黒鉛化短繊維と黒鉛粒子の合計が50〜100重量部含まれる。ピッチ系黒鉛化短繊維と黒鉛粒子の合計が50重量部未満の場合、高い熱伝導性が得られないことがある。逆にピッチ系黒鉛化短繊維と黒鉛粒子の合計が100重量部を超えると、熱伝導性ポリカーボネート樹脂組成物の流動性が低くなり、成形性が低下する傾向にある。ピッチ系黒鉛化短繊維と黒鉛粒子の合計のより好ましい範囲は60〜90重量部である。
本発明の熱伝導性ポリカーボネート樹脂組成物中の、ポリカーボネート樹脂の粘度平均分子量は16,000〜23,000であることが好ましい。粘度平均分子量が16,000未満の場合、熱伝導性ポリカーボネート樹脂組成物の耐衝撃性が弱かったり、耐久性が低かったりする。逆に23,000を超える場合、溶融粘度が高くなり、成形性が低下する傾向にある。ここで、ポリカーボネート樹脂の粘度平均分子量(M)は塩化メチレン100mlにポリカーボネート樹脂0.7gを溶解した溶液から20℃で求めた比粘度(ηsp)を次式に挿入して求めたものである。粘度平均分子量のより好ましい範囲は17,000〜20,000である。
ηsp/c=[η]+0.45×[η]2c(但し[η]は極限粘度)
[η]=1.23×10−4M0.83
c=0.7
前述のポリカーボネート樹脂は、特に限定されるものではなく、公知の方法によって製造することができる。具体的には例えば、界面重合法、溶融エステル交換法、ピリジン法、環状カーボネート化合物の開環重合法、プレポリマーの固相エステル交換法等が挙げられる。
本発明の熱伝導性ポリカーボネート樹脂組成物には、難燃性付与のために難燃剤を含むことが好ましい。難燃剤の種類は特に限定されるものではなく、公知の難燃剤、例えば、リン酸エステル系難燃剤、ハロゲン系難燃剤、シリコーン系難燃剤等を添加することができるが、耐久性、環境配慮の観点から、有機スルホン酸アルカリ(土類)金属塩が好適に用いられる。本発明における有機スルホン酸アルカリ(土類)金属塩は、パーフルオロアルキルスルホン酸とアルカリ金属またはアルカリ土類金属との金属塩のようなフッ素置換アルキルスルホン酸の金属塩、ならびに芳香族スルホン酸とアルカリ金属またはアルカリ土類金属塩との金属塩とを含む。本発明の金属塩を構成するアルカリ金属としてはリチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、及びセシウムが挙げられ、アルカリ土類金属としては、ベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、及びバリウムが挙げられる。より好適にはアルカリ金属である。アルカリ金属の中でも、難燃性と熱安定性の観点からカリウムおよびナトリウムが好ましく、特にカリウムが好ましい。カリウム塩と他のアルカリ金属からなるスルホン酸アルカリ金属塩とを併用することもできる。
有機スルホン酸アルカリ(土類)金属塩の好適な添加量は、ポリカーボネート樹脂100重量部に対し、0.001〜1重量部が好ましい。0.001重量部以上であると、十分な難燃効果が付与される。逆に1重量部以下であれば、熱伝導性ポリカーボネート樹脂組成物の熱安定性が向上し、加水分解を抑制させるので、耐久性を向上できる。添加量のより好ましい範囲は0.01〜0.2重量部である。
本発明の熱伝導性ポリカーボネート樹脂組成物の荷重たわみ温度は、130℃以上であることが好ましい。LED照明等の熱を受ける電気・電子機器で使用する場合、荷重たわみ温度が低い場合、機器が熱変形することがある。荷重たわみ温度のより好ましい範囲は140℃以上である。
本発明の熱伝導性ポリカーボネート樹脂組成物には、必要に応じて様々な機能性フィラー、添加剤、ポリカーボネート樹脂以外の樹脂等を配合することができる。機能性フィラーの例としては、熱伝導性ポリカーボネート樹脂組成物の熱伝導率を高めるものとして、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化ケイ素、酸化亜鉛等の金属酸化物、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム等の金属水酸化物、窒化ホウ素等の金属窒化物、酸化窒化アルミニウム等の金属酸窒化物、炭化珪素等の金属炭化物、金、銀、銅、アルミニウム等の金属もしくは金属合金等が挙げられる。また、2種類以上併用することも可能である。熱伝導性ポリカーボネート樹脂組成物の強度、弾性率等を補強フィラーの例としては、ガラス繊維、ガラスフレーク、タルク、マイカ、PAN系炭素繊維、カーボンナノファイバー、カーボンナノチューブ、アラミド繊維、金属繊維、金属酸化物繊維等が挙げられる。これらは2種類以上を併用することも可能である。
添加剤の例としては、酸化防止剤、熱安定剤、滴下防止剤、離型剤等が挙げられる。
酸化防止剤の好適な例としては、ヒンダードフェノール系安定剤が挙げられる。ヒンダードフェノール系安定剤を含有することにより、例えば成形加工時の色相悪化や長期間の使用における色相の悪化等を抑制する効果が発揮される。ヒンダードフェノール系安定剤としては、例えば、α−トコフェロール、ブチルヒドロキシトルエン、シナピルアルコール、ビタミンE、n−オクタデシル−β−(4’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−tert−ブチルフェル)プロピオネート、2−tert−ブチル−6−(3’−tert−ブチル−5’−メチル−2’−ヒドロキシベンジル)−4−メチルフェニルアクリレート、2,6−ジ−tert−ブチル−4−(N,N−ジメチルアミノメチル)フェノール、3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスホネートジエチルエステル、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(4−エチル−6−tert−ブチルフェノール)、4,4’−メチレンビス(2,6−ジ−tert−ブチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−シクロヘキシルフェノール)、2,2’−ジメチレン−ビス(6−α−メチル−ベンジル−p−クレゾール)2,2’−エチリデン−ビス(4,6−ジ−tert−ブチルフェノール)、2,2’−ブチリデン−ビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、4,4’−ブチリデンビス(3−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、トリエチレングリコール−N−ビス−3−(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオネート、1,6−へキサンジオールビス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、ビス[2−tert−ブチル−4−メチル6−(3−tert−ブチル−5−メチル−2−ヒドロキシベンジル)フェニル]テレフタレート、3,9−ビス{2−[3−(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ]−1,1,−ジメチルエチル}−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン、4,4’−チオビス(6−tert−ブチル−m−クレゾール)、4,4’−チオビス(3−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、2,2’−チオビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、ビス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)スルフィド、4,4’−ジ−チオビス(2,6−ジ−tert−ブチルフェノール)、4,4’−トリ−チオビス(2,6−ジ−tert−ブチルフェノール)、2,2−チオジエチレンビス−[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、2,4−ビス(n−オクチルチオ)−6−(4−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−tert−ブチルアニリノ)−1,3,5−トリアジン、N,N’−ヘキサメチレンビス−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシヒドロシンナミド)、N,N’−ビス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニル]ヒドラジン、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−tert−ブチルフェニル)ブタン、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)イソシアヌレート、トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)イソシアヌレート、1,3,5−トリス(4−tert−ブチル−3−ヒドロキシ−2,6−ジメチルベンジル)イソシアヌレート、1,3,5−トリス2[3(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ]エチルイソシアヌレート、およびテトラキス[メチレン−3−(3’,5’−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン等が挙げられる。上記ヒンダードフェノール系安定剤は、単独で、または2種以上を組み合わせて使用することができる。
ヒンダードフェノール系安定剤の好適な添加量は、ポリカーボネート樹脂100重量部に対し、0.0001〜1重量部である。0.0001重量部未満では、十分な酸化防止効果が付与されないことがある。逆に1重量部を超える場合、熱伝導性ポリカーボネート樹脂組成物の物性が低下することがある。添加量のより好ましい範囲は0.001〜0.5重量部である。
熱安定剤の好適な例としては、リン系安定剤が挙げられる。リン系安定剤は製造時または成形加工時の熱伝導性ポリカーボネート樹脂組成物の熱安定性を大きく向上させる。その結果、機械物性、帯電防止性、難燃性及び成形安定性を向上させる。リン系安定剤としては、亜リン酸、リン酸、亜ホスホン酸、ホスホン酸及びこれらのエステル、ならびに第3級ホスフィン等が挙げられる。これらの中でも特に、亜リン酸、リン酸、亜ホスホン酸、ホスホン酸、トリオルガノホスフェート化合物、及びアシッドホスフェート化合物が好ましい。なお、アシッドホスフェート化合物における有機基は、一置換、二置換、及びこれらの混合物の何れも含む。該化合物に対応する下記の例示化合物においても同様に何れも含むものとする。
リン系安定剤の好適な添加量は、ポリカーボネート樹脂100重量部に対し、0.0001〜2重量部である。0.0001重量部未満では、十分な熱安定性が付与されないことがある。逆に2重量部を超える場合、熱伝導性ポリカーボネート樹脂組成物の物性が低下することがある。添加量のより好ましい範囲は0.01〜1重量部であり、さらに好ましい範囲は0.05〜0.5重量部である。また、リン系安定剤はその100重量部中50重量部以上がトリアルキルホスフェート及び/またはアシッドホスフェート化合物であることが好ましく、特にその100重量部中50重量部以上がトリアルキルホスフェートであることが好ましい。
滴下防止剤の好適な例としては、フィブリル形成能を有する含フッ素ポリマーを挙げることができ、このようなポリマーとしてはポリテトラフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン系共重合体(例えば、テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレン共重合体等)、米国特許第4379910号公報に示されるような部分フッ素化ポリマー、フッ素化ジフェノールから製造されるポリカーボネート樹脂等を挙げることができる。中でも好ましくはポリテトラフルオロエチレン(以下PTFEと称する)である。
混合形態におけるPTFEの割合としては、PTFE混合物100重量部中、PTFEが10〜80重量部が好ましく、より好ましくは15〜75重量部である。PTFEの割合がこの範囲にある場合は、PTFEの良好な分散性を達成することができる。
滴下防止剤の好適な添加量は、ポリカーボネート樹脂100重量部に対し、0.01〜5重量部である。0.01重量部未満では、十分な滴下防止効果が付与されないことがある。逆に5重量部を超える場合、熱伝導性ポリカーボネート樹脂組成物の物性が低下することがある。添加量のより好ましい範囲は0.05〜1重量部であり、さらに好ましい範囲は0.1〜0.6重量部である。
離型剤の好適な例としては、例えば、飽和脂肪酸エステル、不飽和脂肪酸エステル、ポリオレフィン系ワックス(ポリエチレンワックス、1−アルケン重合体等、酸変性等の官能基含有化合物で変性されているものも使用できる)、シリコーン化合物、フッ素化合物(ポリフルオロアルキルエーテルに代表されるフッ素オイル等)、パラフィンワックス、蜜蝋等が挙げられる。
離型剤の添加量の好ましい範囲は、ポリカーボネート樹脂100重量部を基準として、0.005〜3重量部であり、より好ましくは0.01〜1重量部である。
本発明の熱伝導性ポリカーボネート樹脂組成物には、本発明の効果を発揮する範囲において、ポリカーボネート樹脂以外の樹脂を添加することができる。使用できる樹脂としては、例えば、ポリオレフィン類及びその共重合体(ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコール、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−プロピレン共重合体等のエチレン−α−オレフィン共重合体等)、ポリメタクリル酸類及びその共重合体(ポリメタクリル酸メチル等のポリメタクリル酸エステル等)、ポリアクリル酸類及びその共重合体、ポリアセタール類及びその共重合体、フッ素樹脂類及びその共重合体(ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン等)、ポリエステル類及びその共重合体(ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレン2,6ナフタレート、液晶性ポリマー等)、ポリスチレン類及びその共重合体(スチレン−アクリロニトリル共重合体、ABS樹脂等)、ポリアクリロニトリル類及びその共重合体、ポリフェニレンエーテル(PPE)類及びその共重合体(変性PPE樹脂等も含む)、脂肪族ポリアミド類及びその共重合体、ポリフェニレンスルフィド類及びその共重合体、ポリサルホン類及びその共重合体、ポリエーテルサルホン類及びその共重合体、ポリエーテルニトリル類及びその共重合体、ポリエーテルケトン類及びその共重合体、ポリエーテルエーテルケトン類及びその共重合体、ポリケトン類及びその共重合体、エラストマー、液晶性ポリマー、ポリイミド類及びその共重合体等が挙げられる。これらから1種を単独で添加しても、2種以上を適宜組み合わせて添加しても良い。
[ピッチ系黒鉛化短繊維の製造方法]
以下本発明に用いられるピッチ系黒鉛化短繊維の好ましい製造法について述べる。
本発明に用いられるピッチ系黒鉛化短繊維の原料としては、例えば、ナフタレンやフェナントレンといった縮合多環炭化水素化合物、石油系ピッチや石炭系ピッチといった縮合複素環化合物等が挙げられる。その中でもナフタレンやフェナントレンといった縮合多環炭化水素化合物が好ましく、特にメソフェーズピッチが好ましい。メソフェーズピッチのメソフェーズ率としては少なくとも90%以上、より好ましくは95%以上、さらに好ましくは99%以上である。なお、メソフェーズピッチのメソフェーズ率は、溶融状態にあるピッチを偏光顕微鏡で観察することで確認できる。
以下各工程の好ましい態様について説明する。
紡糸方法には、特に制限はないが、所謂溶融紡糸法を適応することができる。具体的には、口金から吐出したメソフェーズピッチをワインダーで引き取る通常の紡糸延伸法、熱風をアトマイジング源として用いるメルトブロー法、遠心力を利用してメソフェーズピッチを引き取る遠心紡糸法などが挙げられる。中でもピッチ系炭素繊維前駆体の形態の制御、生産性の高さなどの理由からメルトブロー法を用いることが望ましい。このため以下本発明に用いられるピッチ系黒鉛化短繊維の製造方法に関してはメルトブロー法について記載する。
このようにして得られたピッチ系炭素繊維前駆体ウェブは、公知の方法で不融化処理し、ピッチ系不融化繊維ウェブにする。不融化は、空気、あるいはオゾン、二酸化窒素、窒素、酸素、ヨウ素、臭素を空気に添加したガスを用いた酸化性雰囲気下で実施できるが、安全性、利便性を考慮すると空気中で実施することが望ましい。また、バッチ処理、連続処理のどちらでも処理可能であるが、生産性を考慮すると連続処理が望ましい。不融化処理は150〜400℃の温度で、一定時間の熱処理を付与することで達成される。より好ましい温度範囲は、160〜350℃である。昇温速度は1〜10℃/分が好適に用いられ、連続処理の場合は任意の温度に設定した複数の反応室を順次通過させることで、上記昇温速度を達成できる。昇温速度のより好ましい範囲は、生産性及び工程安定性を考慮して、3〜10℃/分である。
ピッチ系不融化繊維ウェブは、600〜2000℃の温度で、真空中、あるいは窒素、アルゴン、クリプトン等の不活性ガスを用いた非酸化性雰囲気中で炭化処理され、ピッチ系炭素繊維ウェブになる。炭化処理は、コスト面を考慮して、常圧かつ窒素雰囲気下での処理が望ましい。また、バッチ処理、連続処理のどちらでも処理可能であるが、生産性を考慮すれば連続処理が望ましい。
炭化処理されたピッチ系炭素繊維ウェブは、所望の繊維長にするために、切断、破砕、粉砕等の処理が実施される。また、場合によっては、分級処理が実施される。処理方式は所望の繊維長に応じて選定されるが、切断にはギロチン式、1軸、2軸及び多軸回転式等のカッターが好適に使用され、破砕、粉砕には衝撃作用を利用したハンマ式、ピン式、ボール式、ビーズ式及びロッド式、粒子同士の衝突を利用した高速回転式、圧縮・引裂き作用を利用したロール式、コーン式及びスクリュ式等の破砕機・粉砕機等が好適に使用される。所望の繊維長を得るために、切断と破砕・粉砕を多種複数機で構成してもよい。処理雰囲気は湿式、乾式のどちらでもよい。分級処理には、振動篩い式、遠心分離式、慣性力式、濾過式等の分級装置等が好適に使用される。所望の繊維長は、機種選定のみならず、ロータ・回転刃等の回転数、供給量、刃間クリアランス、系内滞留時間等を制御することによっても得ることができる。また、分級処理を用いる場合には、所望の繊維長は篩い網孔径等を調整することによっても得ることができる。詳細は後述するが、本発明で使用するピッチ系黒鉛化短繊維のアスペクト比は10〜750であることが好ましく、平均繊維径に応じて、上記手法により平均繊維長を制御する。
上記の切断、破砕、粉砕処理、場合によっては分級処理を併用して作製したピッチ系炭素短繊維は、2000〜3500℃に加熱し黒鉛化処理することで、ピッチ系黒鉛化短繊維となる。黒鉛化は、アチソン炉、電気炉等にて実施され、真空中、或いは窒素、アルゴン、クリプトン等の不活性ガスを用いた非酸化性雰囲気下等で実施される。
本発明においてピッチ系黒鉛化短繊維は、ポリカーボネート樹脂との親和性をより高め、ハンドリング性の向上を目的として、表面処理やサイジング処理をしても良い。また、必要に応じて表面処理した後にサイジング処理をしても良い。表面処理の方法として特に限定は無いが、具体的には、電着処理、めっき処理、オゾン処理、プラズマ処理、酸処理等が挙げられる。サイジング処理に用いるサイジング剤に特に限定は無いが、具体的にはエポキシ化合物、水溶性ポリアミド化合物、飽和ポリエステル、不飽和ポリエステル、酢酸ビニル、アルコール、グリコールを単独またはこれらの混合物で用いることができる。サイジング剤はピッチ系黒鉛化短繊維100重量部に対し0.01〜10重量部付着させても良い。しかし、サイジング剤付着ピッチ系黒鉛化短繊維は活性点を持つ可能性もあることから、サイジング処理は極力少ないことが好ましい。好ましい付着量は0.1〜2.5重量%である。
[混練方法]
本発明の熱伝導性ポリカーボネート樹脂組成物の製造方法における、ピッチ系黒鉛化短繊維、黒鉛粒子及びポリカーボネート樹脂との混練は、単軸押出機、二軸押出機、ニーダ等の公知の溶融混練装置を用いて好ましく実施できるが、ピッチ系黒鉛化短繊維の破断を抑制する観点で、溶融混練時の樹脂せん断力が比較的小さいタイプのスクリュ構成を取ることが好ましく、また、ピッチ系黒鉛化繊維はサイドフィーダー等から投入し、混練時間を短めに設定することが好ましい。さらに、熱伝導性ポリカーボネート樹脂組成物の耐久性の観点から、溶融混練装置は溶融混練時の樹脂から発生する低沸ガス、水分等を取り除くために、ベント部を有することが好ましい。低沸分や水分が溶融混練中の樹脂に滞留すると、粘度平均分子量が低下し、耐久性も低下してしまうことがある。
本発明の熱伝導性ポリカーボネート樹脂組成物に添加するピッチ系黒鉛化短繊維は、アスペクト比が10〜750であり、ラマンスペクトルパラメータID/IGが0.060〜0.140であり、ラマンスペクトルパラメータΔνGが23cm−1以下であり、BET比表面積が3m2/g以下であり、金属元素含有量が100ppm以下であることが好ましい。前述したように、本発明の熱伝導性ポリカーボネート樹脂組成物中のピッチ系黒鉛化短繊維のアスペクト比は6〜20であるが、溶融混練中のピッチ系黒鉛化短繊維の破断は避けられないため、混練処理前のピッチ系黒鉛化短繊維のアスペクト比は10〜750であることが好ましい。
本発明の熱伝導性ポリカーボネート樹脂組成物に使用する黒鉛粒子は、厚みと長軸方向に発生するアスペクト比が15〜100であり、平均粒子径が5〜100μmであり、ラマンスペクトルパラメータID/IGが0.045〜0.080であり、ラマンスペクトルパラメータΔνGが23cm−1以下であり、BET比表面積が10m2/g以下であり、金属元素含有量が400ppm以下であることが好ましい。前述したように、本発明の熱伝導性ポリカーボネート樹脂組成物中の黒鉛粒子の厚みと長軸方向に発生するアスペクト比は10〜50であるが、溶融混練中の黒鉛粒子の破砕は避けられないため、混練処理前の黒鉛粒子のアスペクト比は15〜100であることが好ましい。
本発明の熱伝導性ポリカーボネート樹脂組成物からなる成形体は、通常そのペレットを射出成形して得ることができる。射出成形においては、通常の成形方法だけでなく、射出圧縮成形、射出プレス成形、ガスアシスト射出成形、発泡成形(超臨界流体を注入する方法を含む)、インサート成形、インモールドコーティング成形、断熱金型成形、急速加熱冷却金型成形、二色成形、サンドイッチ成形、および超高速射出成形などを挙げることができる。また成形はコールドランナー方式およびホットランナー方式のいずれも選択することができる。
[評価方法]
本実施例における各値は、以下の評価方法に従って求めた。
ηsp/c=[η]+0.45×[η]2c(但し[η]は極限粘度)
[η]=1.23×10−4M0.83
c=0.7
本実施例における使用原料は、以下の通りである。
A−1:縮合多環炭化水素化合物よりなるピッチを主原料とした。光学的異方性割合は100%、軟化点が283℃であった。直径0.2mmの孔のノズルを使用し、スリットから加熱空気を毎分5500mの線速度で噴出させて、溶融ピッチを牽引して平均直径14.5μmのピッチ系短繊維を作製した。この時の紡糸温度は328℃であり、溶融粘度は13.5Pa・Sであった。紡出された繊維をベルト上に捕集してマットとし、さらにクロスラッピングで目付400g/m2のピッチ系炭素繊維前駆体からなるピッチ系炭素繊維前駆体ウェブとした。
このピッチ系炭素繊維前駆体ウェブを空気中で170℃から320℃まで平均昇温速度5℃/分で昇温して不融化、さらに800℃で焼成を行った。このピッチ系炭素繊維ウェブを粉砕機にて粉砕し、3000℃で黒鉛化処理した。
得られたピッチ系黒鉛化短繊維の平均繊維径は10μm、平均繊維長は170μm、アスペクト比は17であった。ラマンスペクトルデータID/IGは0.111、ΔνGは19.8cm−1、BET比表面積は0.6m2/g、金属含有量は20ppmであった。
A−2:平均繊維長が長くなるように粉砕条件を調整した以外は、A−1と同様の方法でピッチ系黒鉛化短繊維を作製した。
得られたピッチ系黒鉛化短繊維の平均繊維径は10μm、平均繊維長は3000μm、アスペクト比は300であった。ラマンスペクトルデータID/IGは0.111、ΔνGは19.8cm−1、BET比表面積は0.4m2/g、金属含有量は20ppmであった。
A−3:平均繊維長が短くなるように粉砕条件を調整した以外は、A−1と同様の方法でピッチ系黒鉛化短繊維を作製した。
得られたピッチ系黒鉛化短繊維の平均繊維径は10μm、平均繊維長は28μm、アスペクト比は2.8であった。ラマンスペクトルデータID/IGは0.111、ΔνGは19.8cm−1、BET比表面積は0.9m2/g、金属含有量は20ppmであった。
A−4:粉砕工程と黒鉛化工程の処理順序を入替えた以外は、A−1と同様の方法でピッチ系黒鉛化短繊維を作製した。
得られたピッチ系黒鉛化短繊維の平均繊維径は10μm、平均繊維長は170μm、アスペクト比は17であった。ラマンスペクトルデータID/IGは0.148、ΔνGは19.8cm−1、BET比表面積は0.6m2/g、金属含有量は20ppmであった。
B−1:人造黒鉛TIMREX SFG44(TIMCAL製、アスペクト比25、平均粒子径25μm、ラマンスペクトルデータID/IG0.062、ΔνG18.3cm−1、BET比表面積は4.1m2/g、金属含有量120ppm)
B−2:人造黒鉛TIMREX KS15(TIMCAL製、アスペクト比14、平均粒子径8μm、ラマンスペクトルデータID/IG0.066、ΔνG18.3cm−1、BET比表面積は8.5m2/g、金属含有量140ppm)
B−3:人造黒鉛TIMREX KS6(TIMCAL製、アスペクト比11、平均粒子径4μm、ラマンスペクトルデータID/IG0.072、ΔνG18.3cm−1、BET比表面積は16.5m2/g、金属含有量150ppm)
B−4:膨張黒鉛 E−40(西村黒鉛製、アスペクト比200、平均粒子径400μm、ラマンスペクトルデータID/IG0.076、ΔνG19.4cm−1、BET比表面積は3.4m2/g、金属含有量1200ppm)
C−1:直鎖状ポリカーボネート樹脂パウダー L−1225WX(帝人化成製、粘度平均分子量19,500)
C−2:直鎖状ポリカーボネート樹脂パウダー L−1225WP(帝人化成製、粘度平均分子量22,500)
(難燃剤)
D−1:パーフルオロブタンスルホン酸カリウム塩 メガファックF−114P(DIC製)
(その他添加剤)
E−1:ヒンダードフェノール系酸化防止剤 イルガノックス1076(BASF製)
F−1:離型剤 ステアリルステアレートおよびグリセリントリステアレートを主成分とする脂肪酸エステル リケマールSL900(理研ビタミン製)
表1に示すC〜F成分を所定の組成比にてタンブラーを用いて均一混合して、難燃剤及び添加剤を含むポリカーボネート樹脂混合物を作製し、得られたポリカーボネート樹脂組成物をワーナー・アンド・フライドラー製二軸押出機ZSK−58の第1供給口(スクリュ根元部)に供給し、次いで、第2供給口(サイドフィード、スクリュ中央部)からB成分を所定量を供給し、さらに、第3供給口(サイドフィード、スクリュ中央部と先端部の中間)からA成分を供給した。混練した樹脂を押出機先端から吐出し、水冷し、ペレタイザーにてペレット化することで、熱伝導性ポリカーボネート樹脂を得た。このときの混練温度、スクリュ回転数は表1に示す。
得られた熱伝導性ポリカーボネート樹脂を用いて、上述した評価方法にて各種物性の評価を実施した。
Claims (10)
- ポリカーボネート樹脂、ピッチ系黒鉛化短繊維、及び黒鉛粒子を含む熱伝導性ポリカーボネート樹脂組成物であって、熱伝導性ポリカーボネート樹脂組成物中のピッチ系黒鉛化短繊維は、アスペクト比が6〜20であり、ラマンスペクトルパラメータID/IGが0.080〜0.150であり、黒鉛粒子は、厚みと長軸方向に発生するアスペクト比が10〜50であり、ラマンスペクトルパラメータID/IGが0.050〜0.085であり、平均粒子径が5〜50μmであり、ピッチ系黒鉛化短繊維及び黒鉛粒子混合物は、BET比表面積が10m2/g以下であり、ピッチ系黒鉛化短繊維100重量部に対し黒鉛粒子を500〜2000重量部含み(ただし、500重量部を除く)、ポリカーボネート樹脂100重量部に対し、ピッチ系黒鉛化短繊維及び黒鉛粒子の合計が50〜100重量部含まれていることを特徴とする熱伝導性ポリカーボネート樹脂組成物。
- 該ポリカーボネート樹脂の粘度平均分子量が16,000〜23,000である、請求項1に記載の熱伝導性ポリカーボネート樹脂組成物。
- 該ピッチ系黒鉛化短繊維は、ラマンスペクトルパラメータΔνGが23cm−1以下である、請求項1〜2のいずれか1項に記載の熱伝導性ポリカーボネート樹脂組成物。
- 該黒鉛粒子は、ラマンスペクトルパラメータΔνGが20cm−1以下である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の熱伝導性ポリカーボネート樹脂組成物。
- さらに難燃剤を含み、該難燃剤が有機スルホン酸アルカリ(土類)金属塩である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の熱伝導性ポリカーボネート樹脂組成物。
- 荷重たわみ温度が130℃以上である、請求項1〜5のいずれか1項に記載の熱伝導性ポリカーボネート樹脂組成物。
- 該熱伝導性ポリカーボネート樹脂組成物を成形してなる成形体のMD方向及びTD方向の成形収縮率比が3以下であり、MD方向とTD方向の熱伝導率比が2.5以下である、請求項1〜6のいずれか1項に記載の熱伝導性ポリカーボネート樹脂組成物。
- ポリカーボネート樹脂、ピッチ系黒鉛化短繊維、黒鉛粒子とを混練して得る熱伝導性ポリカーボネート樹脂組成物の製造方法であって、使用するピッチ系黒鉛化短繊維が、アスペクト比が10〜750であり、ラマンスペクトルパラメータID/IGが0.060〜0.140であり、ラマンスペクトルパラメータΔνGが23cm−1以下であり、BET比表面積が3m2/g以下であり、金属元素含有量が100ppm以下である請求項1〜7のいずれか1項に記載の熱伝導性ポリカーボネート樹脂組成物の製造方法。
- 使用する黒鉛粒子が、厚みと長軸方向に発生するアスペクト比が15〜100であり、平均粒子径が5〜100μmであり、ラマンスペクトルパラメータID/IGが0.045〜0.080であり、ラマンスペクトルパラメータΔνGが20cm−1以下であり、BET比表面積が10m2/g以下であり、金属元素含有量が400ppm以下である請求項8に記載の熱伝導性ポリカーボネート樹脂組成物の製造方法。
- 請求項1〜7のいずれか1項に記載の熱伝導性ポリカーボネート樹脂組成物を成形してなる、熱伝導性ポリカーボネート樹脂成形体。
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