本発明の実施の形態を図面を用いて説明する。図1は本実施の形態の眼底撮影装置の光学系を示した図である。
レーザ光出射部1は、少なくとも第1の波長のレーザー光と第2の波長のレーザー光を出射可能である。本実施形態では図2に示すように、赤外域の波長のレーザー光を発する第1レーザー光源1aと可視域の波長のレーザー光を発する第2レーザー光源1b、ミラー100、ダイクロイックミラー101とを有する。なお、本実施形態では第1レーザ光源1aは波長790nm付近のレーザー光を発し、第2レーザー光源1bは波長490nm付近のレーザー光を発するものとしている。第1レーザー光源1aを出射した赤外域のレーザー光は、ダイクロイックミラー101を透過し、レーザー光出射部1を出て光軸L1上を進む。第2レーザー光源1bを出射した可視域のレーザー光は、ミラー100にて折り曲げられた後、ダイクロイックミラー101にて反射して第1レーザー光源から出射したレーザー光と同軸とされ、光軸L1上を進む。
レーザー光出射部1から出射した第1及び第2の波長のレーザー光は、中央に開口部を有する穴開きミラー2の開口部を通り、レンズ3を介した後、ミラー4、ミラー5、凹面ミラー6にて反射し、ポリゴンミラー7に向かう。ポリゴンミラー7にて反射された光束は、凹面ミラー8、ガルバノミラー9、凹面ミラー10にて反射した後、被検者眼Eの眼底にて集光し、眼底を2次元的に(図示するXY軸方向に)走査する。なお、本実施形態ではポリゴンミラー7はレーザー光を被検者眼Eの眼底にて水平方向に偏向させ走査するための走査手段となり、ガルバノミラー9はポリゴンミラー7による走査方向に対して直角方向にレーザー光を偏向させ走査するための走査手段となる。これらの光学部材によってレーザ光を眼底上で走査して眼底を照明する投光光学系(照射光学系)を形成する。
被検者眼Eの眼底に走査されたレーザー光の反射光は、前述した照射光学系を逆に辿り、穴開きミラー2にて反射し、下方に折り曲げられる。なお、被検眼Eの瞳位置と穴開きミラー2の開口部とは、レンズ3により共役となっている。穴開きミラー2にて反射した反射光は、レンズ11、回転板20を経てピンホール板12のピンホールに焦点を結ぶ。ピンホールにて焦点を結んだ反射光は、レンズ13を経て受光素子14に受光される。これらの光学部材により受光光学系(撮影光学系)を形成する。なお、レンズ11は被検者眼Eの眼底の観察点とピンホール板とを共役な位置に置く。また、受光素子14は本実施形態では可視域及び赤外域に感度を持つAPD(アバランシェフォトダイオード)を用いている。また、回転板20には所定の波長を選択的に透過させるためのフィルタが設けられており、光軸L2に対して直交する平面に置かれるとともに、その一部が光軸L2にかかるように配置され、駆動手段となるパルスモータ21の駆動により回転軸21aを中心に回転される。
また、図1に示すセンサ23は、回転板20の位置検出(回転角度検出)を行うために用いられ、回転板20の所定位置に設けられた遮蔽板22がセンサ23を遮蔽することにより、回転板20の基準位置を検出することができる。回転板20の回転角度は、この基準位置に基づいて調節される。
図3は回転板20の構成を示した図であり、レンズ11側から回転板20を見たときの図である。L2は撮影光学系の撮影光軸であり、Lzは回転板20の配置位置における撮影光学系の撮影光路領域を表す。
回転板20には、第1のレーザー光の照射による第1の蛍光画像を得るために所定の波長域の光を透過する第1フィルタ24と、第2のレーザー光の照射による第2の蛍光画像を得るために前記所定の波長域とは異なる波長域の光を透過する第2フィルタ25、が設けられている。
より具体的には、第1フィルタ24は、赤外蛍光撮影の一つであるICG撮影用のバリアフィルタとして用いられ、図4(a)に示すような分光透過特性を有する。ここで、第1フィルタ24は、第1レーザー光源1aから出射される赤外域のレーザー光と第2レーザー光源1bから出射される可視域のレーザー光、及び第2レーザー光源1bから出射されるレーザー光を励起光として眼底に発生する蛍光を遮断する。また、第1レーザー光源1aから出射されるレーザー光を励起光として眼底に発生する蛍光を透過する。なお、ICG(indocyanine−green−fundus−angiography)撮影は蛍光眼底造影剤としてインドシアニングリーンを用いた蛍光撮影であり、第1レーザー光源(波長790nm付近)を照射し、第1フィルタ(バリアフィルタ)を介して波長800nm〜860nm付近の蛍光を撮影し、主として脈絡膜血管の観察を行うものである。
一方、第2フィルタ25は、可視蛍光撮影用のバリアフィルタでありFAG撮影とFAF撮影に用いられ、図4(b)に示すような分光特性を有する。ここで、第2フィルタ25は、第1レーザー光源1aから出射される赤外域のレーザー光と第2レーザー光源1bから出射される可視域のレーザー光、及び第1レーザー光源1aから出射されるレーザー光を励起光として眼底に発生する蛍光を遮断する。また、第2レーザー光源1bから出射されるレーザー光を励起光として眼底に発生する蛍光を透過する。なお、FAG(fluorescein−fundus−angiography)撮影は蛍光眼底造影剤としてフルオレセインを用いた蛍光撮影であり、第2レーザー光源1b(波長490nm付近)を照射し、第2フィルタ25を介して波長510nm〜550nm付近の蛍光を撮影し、主として網膜血管の観察を行うものである。一方、FAF(fundus−auto−fluorescence:自発蛍光)撮影は網膜色素上皮のリポフスチンが第2レーザー光源1b(波長490nm付近)に自然蛍光を示す原理を利用した蛍光撮影である。FAF撮影は被検者に造影剤を注入しないが、第2レーザー光源1b(波長490nm付近)を照射し、第2フィルタ25を介して蛍光を撮影する点はFAG撮影と同様である。
上記のような分光透過特性を有する第1フィルタ24及び第2フィルタ25は、図3に示すように、2辺が円弧状で、その両端が直線の辺で結ばれた形状を有しており、回転板20の中心に対して対称に取り付けられている。なお、両フィルタは、回転板20の回転によって光軸L2上及び撮影光学系の光路Lzにかかる位置に取り付けられている。
また、図3に示すように、第1フィルタ24及び第2フィルタ25の間には、通常の眼底撮影(眼底観察)を行うために第1の波長及び第2の波長のレーザー光を通過させる開口部26が設けられている。なお、開口部26は被検者眼Eと装置との位置あわせ時や通常の眼底観察の際に光軸L2上に置かれ、被検者眼Eの眼底からの反射光を全て通し、受光素子14に導く役目を果たす。この場合、開口部26の大きさは、撮影光学系の撮影光路Lzの大きさに略一致するように設計されている。
ここで、穴開きミラー2とレンズ3の間には制御部30の制御により駆動する図示しないモーターによって光軸L1上に挿脱可能なミラー41を配置している。ミラー41はレーザー光出射部1から出射せられるレーザー光を蛍光板40aへ誘導するものである。ミラー41はレーザー出射部1からフォーカス合せ(視度補正)に使用するミラー4までの間に配置しているため、フォーカス合せ(視度補正)による光路長変化の影響がない。またポリゴンミラー7およびガルバノミラー9による走査手段の影響を受けることもない。このためミラー41および蛍光板40aへは光軸L1に沿ったレーザー光があたる。
なお、蛍光板40aは蛍光反応物質が塗布されたシートであり、第2レーザー光源1b(波長490nm付近)が投光される箇所は、波長490nm付近の励起光で蛍光を発生する蛍光反応物質が配置されている。また、蛍光板40aはレーザー光の投光によって消耗してゆくことから、蛍光反応物質を塗布した蛍光板、または蛍光板と支基からなる部品は着脱可能な構造で光学系に保持されていることが好ましい。
光軸L1上にミラー41を挿入した場合、レーザー光出射部1から発せられたレーザー光は穴開きミラー2、ミラー41を介して蛍光板40aに達する。投光したレーザー光によって蛍光板40aで発生した蛍光(拡散光)は、ミラー41、穴開きミラー2、レンズ11、回転板20、ピンホール板12、レンズ13を経て受光素子14で受光する。なお、本実施形態では光路変換手段と挿脱手段を兼ねて、挿脱可能なミラー41を光軸L1上に配置し、ミラー41を挿入した場合はレーザー光出射部から発せられたレーザー光を蛍光板40aへと導光するようにしたが、光路変換手段であるミラー41を使用せず、光路への挿脱可能な蛍光板40aを光軸L1上へ挿入する形態にしてもよい。
また、本実施形態では蛍光板40aを光軸(レーザー光)に対して傾斜するように配している。傾斜する理由は蛍光板40aで発生した蛍光を受光素子14で受光した際に、受光素子14の出力が飽和しないようにするためである。蛍光板40aを傾斜することで受光素子14に達する蛍光板30で発生した蛍光(拡散光)を低減でき、レーザー光出射部1から発するレーザー光の光量を最大に設定しても受光素子14の出力飽和は飽和しない。ここで蛍光板で発生する蛍光を減光するための手段として、蛍光板40aとミラー41の間にNDフィルタ(減光フィルタ)を配置してもよい。また、蛍光板40aとミラー41との間に開口絞りを配置してもよい。開口絞りを配置することで、蛍光板40aで発生する蛍光(拡散光)のうちミラー41に達する光束(拡散光)に制約をかけることになり、受光素子14に達する蛍光の光量を低減できる。
図5は本実施形態における眼底撮影装置の制御系を示したブロック図である。装置全体の制御を行う制御部30にはレーザー光源1a,1b、ポリゴンミラー7及びガルバノミラー9を駆動させるための駆動手段36、受光素子14、パルスモータ21、センサ23、ミラー4,5を駆動させるための駆動手段31、コントロール部32、受光素子16にて受光した信号を基に被検者眼Eの眼底の画像(正面像)を形成するための画像処理部33等が接続される。モニタ34には画像処理部33にて形成した眼底画像等が表示される。記憶手段35には撮影した眼底画像や蛍光板40aにより得られる蛍光反応情報等が記憶される。コントロール部32には、視度補正のために被検者眼Eの屈折力を入力するための入力部、撮影モードを切り替えるための切り替えダイヤル、蛍光撮影を開始するための撮影スイッチ、回転板20を回転させて光軸L2上に所望するフィルタまたは開口部を位置させるための切り換えスイッチ等、装置を操作するための各種スイッチが用意されている。
以上のような構成を有する眼底撮影装置において、その動作について説明する。ここではFAF撮影モード(自発蛍光撮影)とマニュアル撮影モード(赤外撮影)で撮影を行う方法について説明する。
装置の電源を投入すると、検者は被検者眼Eへの位置合わせを行うため、コントロール部32に設けられた図示なきモード切り替えダイアルを操作してマニュアル撮影モードを選択し、また、コントロール部32に設けられた図示なきIRレーザー光選択ボタンを押す。制御部30はパルスモータ21を駆動させて回転板20を回転させ、図3に示した開口部26が光軸L2に位置するように回転板20の回転角度を調節する。また、第1レーザー光源1aから赤外光を出射させ、これを観察用の照明光とする。この状態ではミラー41は光軸L1上から退避している。
なお、マニュアル撮影モードは前述の第1レーザー光源1aと開口部26とを組合せた赤外撮影(観察)のほか、第2レーザー光源1bと開口部26とを組合せた可視撮影(観察)を行うことができる。また、モード切り替えダイアルで、前述のマニュアル撮影モードのほか、蛍光撮影となるICG撮影モード、FAF撮影モード、FAG撮影モードを選択することが出来る。なお、ICG撮影モードは第1レーザー光源1aと第1フィルタ24とを組み合わせた蛍光撮影であり、FAF撮影モードとFAG撮影モーは第2レーザー光源1bと第2フィルタ25とを組み合わせた蛍光撮影である。ここでマニュアル撮影モードは検者がレーザー光源の選択を行うが、他の撮影モード(蛍光撮影)はレーザー光源とフィルタが自動的に選択される。
検者は予め被検者眼Eの屈折力を眼屈折力測定装置等にて測定しておき、得られた被検者眼Eの屈折力値をコントロール部32を用いて入力する。制御部30は入力された屈折力データを記憶部35に記憶させるとともに、駆動手段41を用いてミラー4,5を駆動させて視度補正を行う。視度補正が行われた状態にて、検者は図示なきジョイスティック等を用いて装置を駆動させて、被検者眼Eの眼底にレーザ光が照射され、所望する画像がモニタ34に表示されるように、被検者眼Eへの位置合わせを行う。
ここで、制御部30は、駆動手段36を駆動制御してポリゴンミラー7及びガルバノミラー9を動作させることにより、被検者眼Eの眼底上でレーザー光を二次元的に走査させる。これにより、受光素子14には、被検者眼Eの眼底上におけるレーザー光の走査位置に対応する眼底反射光が逐次受光される。ここで、画像処理部33は、受光素子14から逐次出力される受光信号に基づいて一枚の眼底画像(1フレーム分の画像)を構築し、モニタ34に表示する。そして、以上のような動作を繰り返すことにより、モニタ34の画面上において、被検者眼Eの眼底を動画にてリアルタイムで観察可能となる。
このような制御により、モニタ34には赤外光にて撮影した眼底像(動画)が表示されることとなる。検者はこの像を見て撮影部位、アライメントやピントの状態を確認するとともに、コントロール部32に設けられたIRレーザー光輝度調節ダイアルを操作して眼底画像(動画)がはっきりみえるようにする。被検者眼Eと装置とが適正な位置関係となっていれば、検者はコントロール部32に設けられた図示なきモード切り替えダイアルを操作してFAF撮影モードを選択する。
FAF撮影モードが選択されると、制御部30は駆動手段36によるポリゴンミラー7及びガルバノミラー9の動作を維持したまま第1レーザー光源1aからの赤外光の出射を停止し、光軸L2上に第2フィルタ25がくるように回転板20の回転制御を行い、続けて第2レーザー光源1bから可視光のレーザー光を出射する。第2レーザー光源1b(エキサイタ)と第2フィルタ25(バリア)の組合せにより、モニタ34で被検者眼Eの眼底で発生する蛍光(自発蛍光像)を前述のマニュアル撮影モードと同様に動画で観察できるようになる。ここで検者は自発蛍光像(動画)が見やすい明るさになるようにコントロール部32に設けられたBlueレーザー光輝度調節ダイアル(第2レーザー光源1b用)を操作し、制御部30は第2レーザー光源1bのレーザ光量を調節する。
適切な自発蛍光像(動画)を観察できたところで検者はコントロール部32に配置された撮影スイッチを押す。撮影スイッチが押されると、制御部30は、ポリゴンミラー7及びガルバノミラー9の駆動制御に連動して受光素子14から逐次出力される受光信号に基づいて一枚の眼底画像(1フレーム分の眼底の正面像)を構築し、2次元座標と階調情報を有する画像データ(静止画)として記憶部35に記憶する。続けて制御部30は光軸L1上にミラー41を挿入する。制御部30はミラー41の挿入動作が完了し、受光素子14の信号出力が安定したタイミングで受光素子14の出力信号を画像処理部33で階調情報となる蛍光反応情報(以下、蛍光板測定データと記す)として記憶部35に記憶する。このように画像データと蛍光板測定データは分離(区別)して取得する。
本実施形態では蛍光撮影を行わないマニュアル撮影モードでは被検者眼Eの正面像(画像データ)の取得を行うのみで蛍光板40aの撮影は行わない。一方で、蛍光撮影を行うFAF撮影モードでは被検者眼Eの正面像(画像データ)の取得と蛍光板40aの蛍光板測定データの取得を行う。つまり制御部30による励起光を投光し蛍光板の蛍光板測定データを得る蛍光データ取得手段を機能させるか否かの制御を、検者がコントロール部32の図示なきモード切替ダイアルで設定した撮影モードに連動させている。なお、蛍光データ取得手段を機能させるか否かを撮影モードに連動させず、コントロール部32の図示なき蛍光データ取得選択スイッチにより検者が取得を選択したときのみ蛍光データ取得手段を機能させ蛍光板測定データを取得するようにしてもよい。このようにすることで蛍光板測定データの取得を自動的に、または検者の意図に応じて行うことが可能になる。
ここで、自発蛍光像(動画)の観察時に調節したレーザー光を蛍光板40aへ投光するため、蛍光板40aで生じる蛍光の光量(受光素子14の受光量)は調節したレーザー光の光量に対応したものとなる。なお、蛍光板40aを用いた蛍光板測定データの取得は通常の被検者眼Eの眼底撮影における信号処理と同様の技術を用いて行われる。
なお上述では被検者眼Eの眼底画像の蛍光板40aの蛍光板測定データとを各々1回行うこととしたが、被検者眼Eの蛍光情報と蛍光板40aの蛍光情報を相関をもって記憶するのであればこれに限らない。例えば、被検者眼Eの撮影を複数フレームの画像として取得し画像処理部33で加算処理を行うこととした場合、蛍光板40aの撮影も複数回数行い加算処理することとしてもよいし、1回の蛍光板40aの撮影(測定)データから導いてもよい。
画像データと蛍光板測定データとを記憶した後に光軸L1上に挿入されているミラー41を光軸L1の外へと退避する。続けて、制御部30は撮影にて得られ記憶した画像データと蛍光板測定データとを基に、記録画像データを生成する。記録画像データの形態を図6(a)を用いて説明する。図6(a)に記したDaは記録画像データとなる記録画像の領域、Diは前述した撮影で得た画像データの領域、Dfは前述した撮影で得た蛍光板測定データの領域である。記録画像データ領域Da、画像データ領域Di、蛍光板測定データ領域Dfとも2次元座標で構成されており、各々の座標が階調成分を有する。ここで、記録画像領域Daには画像データと蛍光板測定データとが関連付けられて記録される。記録画像領域Daは画像データ領域Diよりも広い2次元座標の領域を有している。また蛍光板測定データ領域Dfは画像データ領域Diに重ならず、画像データと蛍光板測定データとを見比べ易い画像データ領域Diの上方に配置する。また、蛍光板測定データ領域Dfは撮影で得た蛍光板測定データの値を基とした階調値で塗り潰している。制御部30は生成した記録画像データを記憶部35に記憶する。なお、図6(a)に示した実施形態では画像データ領域Diと蛍光板測定データ領域Dfとを並べるようにしたが、画像データ領域Diの中に蛍光板測定データ領域Dfを埋め込む(重ねる)ようにしてもよいし、画像データ領域Diと蛍光板測定データ領域Dfとが接するように、或いは分離した状態で両データを並べてしてもよい。
制御部30は記憶部35に記憶した今回のFAF撮影モードで撮影した記録画像データ(図6(a))をモニタ34に表示する。検者はモニタ34に表示された記録画像データを確認し、再撮影が必要かどうかの判断を行う。再撮影が不要な場合、検者はコントロール部32に設けられたモード切り替えダイアルを操作性してマニュアル撮影モードを選択し、また、コントロール部32のIRレーザー光選択ボタンを押す。制御部30は駆動手段36によるポリゴンミラー7及びガルバノミラー9の動作を維持したまま第2レーザー光源1bからの可視光の出射を停止し、光軸L2上に開口部32がくるように回転板20の回転制御を行い、続けて第1レーザー光源1aから赤外光のレーザー光を出射する。第1レーザー光源1aと開口部32の組合せにより、モニタ34には赤外光にて撮影した眼底像(動画)が表示されることとなる。検者はコントロール部32に設けられたIRレーザー光輝度調節ダイアルを操作して眼底画像がはっきりみえるようにする。
眼底画像がはっきりみえたところで検者はコントロール部32に設けられた撮影スイッチを押す。撮影スイッチが押されると、制御部30は、ポリゴンミラー7及びガルバノミラー9の駆動制御に連動して受光素子14から逐次出力される受光信号に基づいて一枚の眼底画像(1フレーム分の眼底の正面像)を構築し、2次元座標と階調情報を有する画像データ(静止画)として記憶部35に記憶する。制御部30は撮影にて得られ記憶した画像データを基に、図6(b)に記した記録画像データを生成し、制御部30は生成した記録画像データを記憶部35に記憶する。制御部30は記憶部35に記憶した今回マニュアル撮影モードで撮影した記録画像データ(図6(b))をモニタ34に表示する。このように、マニュアル撮影モードでの赤外光を使用した撮影(静止画)はFAF撮影モードでの撮影(静止画)と異なり、光路変換手段(ミラー41挿入)を使用した蛍光板の測定を行わない。このため記憶する記録画像データには蛍光板測定データが含まれず、モニタ34にも眼底画像のみが表示される。
被検者眼Eに対する一連の撮影が完了すると、検者は記憶部35に記憶された記録画像データを呼び出す。制御部30は呼び出した記録画像データがFAF撮影モードの場合、モニタ34には図6(a)のように画像データ(自発蛍光画像)と蛍光板測定データとが並べられて表示する。ここで制御部30は記録画像データに含まれる画像データと蛍光板測定データから眼底で発生する自発蛍光の強度を算出し、解析結果をモニタ34に表示する。
例えば自発蛍光強度(強度値)は記録画像データに含まれる画像データの階調値(値範囲0〜256の任意値)を蛍光板測定データの階調値(値範囲0〜256の任意値)で除算することで得ることができる。画像データの各座標の階調値に対して自発蛍光強度を示す強度値の算出を行い、算出した強度値と閾値を組合せることで、等高線状に描かれた自発蛍光強度マップの形で解析結果としてモニタ34に表示することができる。また、検者が画像データの領域を複数箇所指定することで、指定した領域同士で上述した計算で求めた自発蛍光強度の比較を行うことができる。自発蛍光は患部箇所または全体で発生するため、このような領域指定は画像データ全体の狭い領域、または広い領域で行う。例えば疾患は眼底の後極部(黄班およびその周囲)から進行することが多いため、図6(a)や図6(b)のように眼底の後極部が画像データの中心にくるような撮影では、画像データの中央部と周辺部とを領域指定し各々領域の自発蛍光強度の平均値を算出し数値比較することで、眼底画像データの中央部と周辺部の自発蛍光の発生度合いの差を解析結果としてモニタ34に表示することができる。また、解析は1枚の記録画像データに限定されるものでなく、本実施形態で過去に撮影を行った記録画像データであれば、上述したものと同様の解析を行うことで記録画像データ同士の解析値の比較を行うことができる。解析結果をモニタ34に表示することで、検者は同一被検者の疾患の進行度合いを数値として確認することができる。
このように蛍光反応のための励起光を被検者眼Eの眼底と蛍光反応物質へ投光し、被検者眼Eの眼底で生じる蛍光反応(正面像)と蛍光反応物質(蛍光板40a)で生じる蛍光反応情報(蛍光板測定データ)とを分離して取得することで、蛍光強度を導くことができ、被検者眼Eに堆積する蛍光物質(リポフスチン等)の量や範囲を定量的に解析することができる。
なお、本実施形態では図1で示すように、フォーカス合せ(視度補正)による光路長変化の影響がない穴開きミラー2とレンズ3との間の光軸L1上に挿脱可能なミラー41を配置することとしたが、被検者眼Eの眼底と装置内部に配置された蛍光板40aとを撮影できる形態であれば同様の効果を得ることができる。例えば図7のように被検者眼Eの眼底と蛍光板40aとが略共役の位置関係になる、ガルバノミラー9と凹面ミラー10との間に蛍光板40aを配置してもよい。この場合、ポリゴンミラー7またはガルバノミラー9の走査領域(光束範囲)を拡大し、拡大した走査領域(言い換えれば眼底画像構築のための走査領域外となる走査領域)に蛍光板40aを配置することで、1回の走査によって画像データと蛍光板測定データとを分離して得ることが出来る。ここで、取得する画像データ領域と蛍光板測定データ領域の間に間隙があるように蛍光板40aを配置することが好ましいが、画像データに蛍光板測定データが重ならない(分離している)のであれば、接するように蛍光板40aを配置しても構わない。また、ミラー4、ミラー5を使用したフォーカス合せ(視度補正)による光路長の変化に連動して蛍光板を光軸方向に移動すれば、被験者眼Eの視度に依存せず眼底画像と蛍光板40aとの共役関係を維持したまま撮影することが出来る。
ここで、被検者眼Eの蛍光撮影を行うFAF撮影モードでは拡大した走査領域で得られた画像データ(自発蛍光像)と蛍光板の反応情報(蛍光情報)とを図6(a)のように記録画像データとして記憶(記録)またはモニタに表示するが、被検者眼Eの蛍光撮影を行わないマニュアル撮影モードでは拡大した走査領域で得られた画像データと蛍光板の反応情報(反射情報)のうち、画像データのみを使用して図6(b)のように記録画像データとして記憶(記録)またはモニタに表示する。このようにすることで自発蛍光の記録画像データには蛍光板の反応情報が付加されるため定量的な解析と診断を行うことができる。
また、図1に記した本実施形態の光学系ではFAF撮影モードで撮影を行う際にミラー41を光軸L1に挿入し、第2レーザー光源1bと第2フィルタ25の組合せで蛍光板40aの撮影をするようにしたが、FAF撮影モードでの撮影に限定するものではない。第2レーザー光源1bを投光することで蛍光板40aに蛍光が生じることはFAG撮影でも同様であるため、FAG撮影モードの撮影でも、被検者眼Eの眼底の撮影に合わせて蛍光板40aの撮影を行ってもよい。また図1の40bで示すように、第1レーザー光源1a(790nm)を励起光として投光した際に蛍光を生じる蛍光反応物質が塗布された蛍光板40bを新たに備え、蛍光板40aと蛍光板40bとを切り換え可能なように配置し、ICG撮影モードの撮影の際には蛍光板40aから蛍光板40bへと切り換え、被検者眼Eの眼底の撮影と合わせて蛍光板40bの撮影を行えばよい。このように蛍光撮影モードが複数ある場合においても、各々の蛍光撮影モードで使用する励起光に対応した蛍光反応物質へ切り換えることで、被検者眼Eの眼底の撮影と共に蛍光反応物質を撮影することができる。
また、本実施形態では記録画像データは図6(a)に示したように画像データと蛍光板測定データとを組合せたものとしたが、この実施形態に限定するものではない。すなわち、画像データと蛍光板測定データとを関連付けて記憶(記録)できればよい。例えば記録画像データを画像データと蛍光板測定データの2つのファイルに分け、互いを関連付けて記憶(記録)するようにしてもよい。このようにすることで、表示する際に、画像データファイルによる画像のみを表示するか、画像データファイルによる画像と蛍光板測定データファイルによる蛍光板測定データを並べて表示するかの選択を行うことが可能になる。
また制御部30が記録画像データを生成する際に、上述では解析の過程として記した画像データと蛍光板測定データとを組合せた演算を行ってもよい。この演算によって2次元画像データの各座標の階調が定量化された蛍光強度を示す画像データになる。この画像データを記憶部35に記録画像データとして記憶(記録)することで、図6(b)のように被検者眼Eの眼底情報のみが記録画像データとなり、かつ、各座標の階調値は定量化された情報になる。このような形態で記憶することで、記録画像データの容量を増やすことなく、解析時の演算を低減することもできる。
なお、本実施形態では光源にレーザー光源(1aまたは1b)を使用し、ポリゴンミラー7とガルバノミラー9により眼底上でレーザー光を走査して撮影する眼底撮影装置をあげたが、自発蛍光撮影に対応したエキサイタフィルタとバリアフィルタによって被検者眼の眼底の自発蛍光撮影が行える特許文献1に記載したような眼底カメラにも適用することができる。例えば、眼底に照明光を投光させる光学系と眼底からの反射光を受光して眼底像を撮影ための光学系と有する眼底カメラであって、照明光束と撮影光束の共通光路になる対物レンズと穴あき全反射ミラーとの間に蛍光反応情報を得るための蛍光板(蛍光反応撮影部材)を挿脱可能に配置することで、画像データ(正面像)と蛍光板測定データとを分離して取得できる。また、光干渉の技術を用いた網膜断層画像を取得する眼底撮影装置(OCT)にも適用することができる。
さらに、本件発明は被検者眼Eで発生する蛍光と、被検者眼以外の蛍光板で発生する蛍光とを撮影するものであるから、被検者眼Eの前眼部も撮影できる眼底撮影装置においても適用できる。例えば、凹面ミラー10と被検者眼Eの間に前眼部撮影用の補助レンズを追加して被検者眼Eの前眼部の蛍光撮影を行う場合においても、眼底撮影時と同様、被検者眼Eの前眼部の画像データの取得後にミラー41を光路内に挿入して蛍光板40aの撮影を行えばよい。このようにすることで被検者眼Eの前眼部の画像データと蛍光板40aの蛍光板測定データとを分離して取得することができる。