本発明の実施の形態を図面を用いて説明する。図1は本実施の形態の眼底撮影装置の光学系を示した図である。
レーザ光出射部1は、少なくとも第1の波長のレーザー光と第2の波長のレーザー光を出射可能である。本実施形態では図2に示すように、赤外域の波長のレーザー光を発する第1レーザー光源1aと可視域の波長のレーザー光を発する第2レーザー光源1b、ミラー100、ダイクロイックミラー101とを有する。なお、本実施形態では第1レーザ光源1aは波長790nm付近のレーザー光を発し、第2レーザー光源1bは波長490nm付近のレーザー光を発するものとしている。第1レーザー光源1aを出射した赤外域のレーザー光は、ダイクロイックミラー101を透過し、レーザー光出射部1を出て光軸L1上を進む。第2レーザー光源1bを出射した可視域のレーザー光は、ミラー100にて折り曲げられた後、ダイクロイックミラー101にて反射して第1レーザー光源から出射したレーザー光と同軸とされ、光軸L1上を進む。
レーザー光出射部1から出射した第1及び第2の波長のレーザー光は、中央に開口部を有する穴開きミラー2の開口部を通り、レンズ3を介した後、ミラー4、ミラー5、凹面ミラー6にて反射し、ポリゴンミラー7に向かう。ポリゴンミラー7にて反射された光束は、凹面ミラー8(8a,8b)、ガルバノミラー9、ミラー15、凹面ミラー10にて反射した後、被検者眼Eの眼底にて集光し、眼底を2次元的に(図示するXY軸方向に)走査する。なお、本実施形態ではポリゴンミラー7はレーザー光を被検者眼Eの眼底にて水平方向に偏向させ走査するための走査手段となり、ガルバノミラー9はポリゴンミラー7による走査方向に対して直角方向にレーザー光を偏向させ走査するための走査手段となる。これらの光学部材によってレーザ光を眼底上で走査して眼底を照明する投光光学系(照射光学系)を形成する。
被検者眼Eの眼底Erに走査されたレーザー光の反射光(拡散光)は、凹面ミラー10、ミラー15で反射し、ガルバノミラー9へ向かう。ガルバノミラー9で反射した光は、凹面ミラー8(8a,8b)、ポリゴンミラー7、凹面ミラー6、ミラー5、ミラー4、レンズ3を辿り穴開きミラー2に向かう。穴開きミラー2にて反射し、下方に折り曲げられる。なお、被検者眼Eの瞳位置と穴開きミラー2の開口部とは、レンズ3により共役となっている。穴開きミラー2にて反射した反射光は、レンズ11、回転板20を経てピンホール板12のピンホールに焦点(被検者眼Eの眼底と共役)を結ぶ。ピンホール板12で焦点を結んだ反射光は、レンズ13を経て受光素子14に受光される。レンズ13はピンホール板12で焦点を結んだ光を受光素子14に導光している。これらの光学部材により受光光学系(撮影光学系)を形成する。
なおピンホール板12の開口径は変更可能である。検者がコントロール部32に配置された絞り切り替えダイアルを操作し、制御部30がピンホール板12に結合された図示なきアクチュエータを制御することでピンホール板12の開口径が変化する。ピンホール板12の開口径を変更することで撮影画像の深度(受光深度幅)が変化する。
ここで、本実施形態の光学系図(図1)は、屈折力が0(ゼロ)ディオプターの被検者眼E(正視眼)を、後述する視度補正手段で視度補正を行ったときの状態を示している。視度補正を行った状態のため、観察点(眼底Er)で発した光はピンホール板12で焦点を結んでいる。よって、この状態では被検者眼Eの眼底Erと撮影光学系に配置されたピンホール板12の位置とが共役の位置関係にある。ここで、同図(図1)で記号rと記した位置は撮影光学系で被検者眼Eの眼底Erと共役となる位置を示している。また同図(図1)において撮影光学系のピンホール板12以外で被検者眼Eの眼底Erと共役となる共役位置rは、凹面ミラー10とミラー15との間、凹面ミラー8aと凹面ミラー8bとの間、ミラー4とミラー5の間にある。なお、ミラー4およびミラー5は被検者眼Eの屈折力に対応するための視度補正を行う視度補正手段であり、コントロール部32に接続された駆動手段31によって両部材は光路長を増減するように一体的に移動され、視度補正が行われる。視度補正情報は、ミラー4,5の移動量や、ミラー4,5を移動させるために用いられる情報(屈折力情報)から取得される。ミラー4およびミラー5による被験者眼Eの屈折力に対応した調節を行うと、ピンホール板12の部分以外の記号rで記した被験者眼Eの眼底Erと共役となる位置は、撮影光学系の光軸上で移動することとなる。
被検者眼Eの眼底の観察点とピンホール板とはレンズ11によって共役な位置関係となる。また、受光素子14は本実施形態では可視域及び赤外域に感度を持つAPD(アバランシェフォトダイオード)を用いている。また、回転板20には所定の波長を選択的に透過させるためのフィルタが設けられており、光軸L2に対して直交する平面に置かれるとともに、その一部が光軸L2にかかるように配置され、駆動手段となるパルスモータ21の駆動により回転軸21aを中心に回転される。なお、センサ23は、回転板20の位置検出(回転角度検出)を行うために用いられる。
図3は回転板20の構成を示した図であり、レンズ11側から回転板20を見たときの図である。L2は撮影光学系の撮影光軸であり、Lzは回転板20の配置位置における撮影光学系の撮影光路領域を表す。回転板20には、第1のレーザー光の照射による第1の蛍光画像を得るために所定の波長域の光を透過する第1フィルタ24と、第2のレーザー光の照射による第2の蛍光画像を得るために前記所定の波長域とは異なる波長域の光を透過する第2フィルタ25、が設けられている。
より具体的には、第1フィルタ24は、赤外蛍光撮影の一つであるICG撮影用のバリアフィルタとして用いられ、図4(a)に示すような分光透過特性を有する。ここで、第1フィルタ24は、第1レーザー光源1aから出射される赤外域のレーザー光と第2レーザー光源1bから出射される可視域のレーザー光、及び第2レーザー光源1bから出射されるレーザー光を励起光として眼底に発生する蛍光を遮断する。また、第1レーザー光源1aから出射されるレーザー光を励起光として眼底に発生する蛍光を透過する。なお、ICG(indocyanine−green−fundus−angiography)撮影は蛍光眼底造影剤としてインドシアニングリーンを用いた蛍光撮影であり、第1レーザー光源(波長790nm付近)を照射し、第1フィルタ(バリアフィルタ)を介して波長800nm〜860nm付近の蛍光を撮影し、主として脈絡膜血管の観察を行うものである。
一方、第2フィルタ25は、可視蛍光撮影用のバリアフィルタでありFAG撮影とFAF撮影に用いられ、図4(b)に示すような分光特性を有する。ここで、第2フィルタ25は、第1レーザー光源1aから出射される赤外域のレーザー光と第2レーザー光源1bから出射される可視域のレーザー光、及び第1レーザー光源1aから出射されるレーザー光を励起光として眼底に発生する蛍光を遮断する。また、第2レーザー光源1bから出射されるレーザー光を励起光として眼底に発生する蛍光を透過する。なお、FAG(fluorescein−fundus−angiography)撮影は蛍光眼底造影剤としてフルオレセインを用いた蛍光撮影であり、第2レーザー光源1b(波長490nm付近)を照射し、第2フィルタ25を介して波長510nm〜550nm付近の蛍光を撮影し、主として網膜血管の観察を行うものである。一方、FAF(fundus−auto−fluorescence:自発蛍光)撮影は網膜色素上皮のリポフスチンが第2レーザー光源1b(波長490nm付近)に自然蛍光を示す原理を利用した蛍光撮影である。FAF撮影は被検者に造影剤を注入しないが、第2レーザー光源1b(波長490nm付近)を照射し、第2フィルタ25を介して蛍光を撮影する点はFAG撮影と同様である。
上記のような分光透過特性を有する第1フィルタ24及び第2フィルタ25は、図3に示すように、2辺が円弧状で、その両端が直線の辺で結ばれた形状を有しており、回転板20の中心に対して対称に取り付けられている。なお、両フィルタは、回転板20の回転によって光軸L2上及び撮影光学系の光路Lzにかかる位置に取り付けられている。また、図3に示すように、第1フィルタ24及び第2フィルタ25の間には、通常の眼底撮影(眼底観察)を行うために第1の波長及び第2の波長のレーザー光を通過させる開口部26が設けられている。なお、開口部26は被検者眼Eと装置との位置あわせ時や通常の眼底観察の際に光軸L2上に置かれ、被検者眼Eの眼底からの反射光を全て通し、受光素子14に導く役目を果たす。この場合、開口部26の大きさは、撮影光学系の撮影光路Lzの大きさに略一致するように設計されている。
なお、本実施形態では撮影された蛍光画像を定量的に評価するための基準となる標準試料40を装置内の光学系光路上に配置するものとしている。本実施形態ではガルバノミラー9と凹面ミラー10との間で、0ディオプターの屈折力をもつ被検者眼Eを視度補正手段で視度補正したときの眼底Erと共役となる光路上の所定位置に標準試料40を配置するものとしている。また、標準試料40は図7で示すように所定の励起光により蛍光を発する蛍光標準部材40aと、黒標準部材40bからなる板状の部材であり、黒標準部材40bは蛍光標準部材40aの一部に重ねて固定している。蛍光標準部材40aは使用する励起光によって蛍光を発生するものを選べばよい。例えば第2レーザー光源を励起光、第2フィルタをバリアフィルタとして蛍光を取得する場合には、MICROSCOPY/MICROSCOPY EDUCATION製のFLUOR−REF Redを使用すればよい。また、黒標準部材40bは励起光を照射しても蛍光が発生しない部材を選べばよい。
標準試料40は被検者眼Eの眼底で発生する蛍光の強度を算出するために撮影する部材であり、標準試料40を撮影して得られた受光量を参照光量情報として蛍光強度を算出する際に使用する。なお、標準試料40は被検者眼Eの眼底Erを撮影したとき、記憶する撮影画像に標準試料(参照光量情報)が写り込むように、レーザー光が被検者眼Eの眼底Erを走査するときの走査光束(走査範囲)の内側で、かつ撮影画像形成に用いられる走査範囲外,或いは撮影画像の周辺部分となる走査領域の周辺部分に配置されていることが好ましい。このように標準試料40は走査光束の周辺部分に配置されるため、撮影で取得する眼底画像の注目部位(画像中心)の情報を大きく損なうことはない。
なお、本実施形態では標準試料40をレーザー光の走査範囲の内側に固定して配置するものとしているが、これ限るものではない。例えば制御部30が制御するアクチュエータなど駆動手段36によって、標準試料40をレーザー光の走査範囲に挿脱可能にしてもよい。この場合、自発蛍光撮影を行う撮影モード以外では標準試料40をレーザー光の走査範囲の外へ退避すればよい。このように制御部30が撮影モードに応じて標準試料40の写し込みを制御することで、蛍光強度の解析が不要な撮影モード(例えば赤外光撮影)では標準試料40が写り込むことがなく、自発蛍光撮影画像で標準試料40の背後に隠れてしまう眼底の情報を取得することができる。
また、本実施形態は蛍光の強度を導くため、0ディオプターの被検者眼Eに対して視度補正を行ったときに被検者眼Eの眼底Erと共役となる位置に標準試料40を配置しているが、標準試料40の光軸方向の配置位置はこれに限るものではなく、レーザ光の走査範囲内に標準試料40が配置されていればよい。
本実施形態では、後述するように視度補正手段によって−15ディオプターから+15ディオプターの屈折力をもつ被験者眼Eに対して視度補正を行うことが可能である。しかし、本実施形態では標準試料40は被検者眼が0ディオプターとしたときの共役位置となる光路上に固定配置されているため、個々の被検者眼に対する視度補正によって撮影画像に写り込む標準試料40の明るさ(階調値)が変化してしまう。このような視度補正による明るさの変化は、視度補正に対応した係数で補償することによって吸収できる。なお、視度補正によって生じる撮影画像に写り込む標準試料40の明るさの変化を抑制したい場合には、標準試料40は0ディオプターでの共役位置を基準に±5ディオプターの範囲内に配置することが好ましい。
図5は本実施形態における眼底撮影装置の制御系を示したブロック図である。装置全体の制御を行う制御部30はCPUを有し、レーザー光源1a,1b、ポリゴンミラー7及びガルバノミラー9を駆動させるための駆動手段36、受光素子14、パルスモータ21、センサ23、ミラー4,5を駆動させるための駆動手段31、コントロール部32、受光素子16にて受光した信号を基に被検者眼Eの眼底の画像(正面像)を形成するための画像処理部33等が接続される。モニタ34には画像処理部33にて形成した眼底画像等が表示される。記憶手段35には制御部30のCPUが制御および解析を行うために使用するプログラムが格納されているほか、撮影した眼底画像や標準試料40により得られる参照光量情報等が記憶される。なお、記憶手段35と制御部30と画像処理部33とは解析手段ともなり、後述する蛍光強度の演算が行われる。コントロール部32には、視度補正のために被検者眼Eの屈折力や、その他の被検者眼Eの眼情報(角膜曲率半径,眼軸長)を入力するための入力部、撮影モードを切り替えるための切り替えダイアル、蛍光撮影を開始するための撮影スイッチ、撮影画像の深度調節をするための絞り切り替えダイアル、回転板20を回転させて光軸L2上に所望するフィルタまたは開口部を位置させるための切り換えスイッチ等、装置を操作するための各種スイッチが用意されている。
以上のような構成を有する眼底撮影装置において、その動作について説明する。ここではFAF撮影モード(自発蛍光撮影)で撮影を行い、続いて解析手段によって自発蛍光画像の解析を行う方法について説明する。
装置の電源を投入すると、検者は被検者眼Eへの位置合わせを行うため、コントロール部32に設けられた図示なきモード切り替えダイアルを操作してマニュアル撮影モードを選択し、また、コントロール部32に設けられた図示なきIRレーザー光選択ボタンを押す。制御部30はパルスモータ21を駆動させて回転板20を回転させ、図3に示した開口部26が光軸L2に位置するように回転板20の回転角度を調節する。また、第1レーザー光源1aから赤外光を出射させ、これを観察用の照明光とする。
検者は予め被検者眼Eの屈折力を眼屈折力測定装置等にて予め測定しておき、得られた被検者眼Eの屈折力値をコントロール部32を用いて入力する。制御部30は入力された屈折力データを記憶部35に記憶させるとともに、駆動手段31を用いてミラー4,5を駆動させて視度補正を行う。視度補正が行われた状態にて、検者は図示なきジョイスティック等を用いて装置を駆動させて、被検者眼Eの眼底にレーザ光が照射され、所望する画像がモニタ34に表示されるように、被検者眼Eへの位置合わせを行う。
ここで、制御部30は、駆動手段36を駆動制御してポリゴンミラー7及びガルバノミラー9を動作させることにより、被検者眼Eの眼底上でレーザー光を二次元的に走査させる。これにより、受光素子14には、被検者眼Eの眼底上におけるレーザー光の走査位置に対応する眼底反射光が逐次受光される。なお、標準試料40はレーザ光の走査領域内に置かれているため、受光素子14はレーザ光の走査位置に応じて、眼底からの反射光又は標準試料40からの反射光を受光することとなる。ここで、画像処理部33は、受光素子14から逐次出力される受光信号に基づいて一枚の眼底画像(1フレーム分の画像)を標準試料40からの反射情報を含めた状態で構築し、モニタ34に表示する。そして、以上のような動作を繰り返すことにより、モニタ34の画面上において、被検者眼Eの眼底を動画にてリアルタイムで観察可能となる。
このような制御により、モニタ34には赤外光にて撮影した眼底像(動画)が表示されることとなる。検者はこの像を見て撮影部位、アライメントやピントの状態を確認するとともに、コントロール部32に設けられたIRレーザー光輝度調節ダイアルを操作して眼底画像(動画)がはっきりみえるようにする。被検者眼Eと装置とが適正な位置関係となっていれば、検者はコントロール部32に設けられた図示なきモード切り替えダイアルを操作してFAF撮影モードを選択する。
FAF撮影モードが選択されると、制御部30は駆動手段36によるポリゴンミラー7及びガルバノミラー9の動作を維持したまま第1レーザー光源1aからの赤外光の出射を停止し、光軸L2上に第2フィルタ25が位置するように回転板20の回転制御を行い、続けて第2レーザー光源1bから可視光のレーザー光を出射する。第2レーザー光源1b(エキサイタ)と第2フィルタ25(バリア)の組合せにより、モニタ34で被検者眼Eの眼底で発生する蛍光(自発蛍光像)を前述のマニュアル撮影モードと同様に動画で観察できるようになる。なお、ここで検者は自発蛍光像(動画)が見やすい明るさになるようにコントロール部32に設けられたBlueレーザー光輝度調節ダイアル(第2レーザー光源1b用)を操作し、制御部30は第2レーザー光源1bのレーザ光量を調節する。
適切な自発蛍光像(動画)を観察できたところで検者はコントロール部32に配置された撮影スイッチを押す。撮影スイッチが押されると、制御部30は、ポリゴンミラー7及びガルバノミラー9の駆動制御に連動して受光素子14から逐次出力される受光信号に基づいて一枚の眼底画像(1フレーム分の眼底の正面像)を構築し、2次元座標と階調情報を有する撮影画像(静止画)として記憶部35に記憶する。また、制御部30は撮影時の視度補正手段(ミラー4,5)の位置を視度補正情報として撮影画像(又は標準試料からの反射情報)と対応付けて記憶部35に記憶させる。なお、前述したようにレーザ光の走査範囲の光路上に標準試料40が設置されているため、得られる撮影画像は、蛍光撮影された眼底画像部分Diと標準試料からの反射像(蛍光標準画像部分Df,及び黒標準画像部分Db)とが合わせて得られることとなる(図6参照)。なお、制御部30が構築し記録する撮影画像の階調値は、受光素子14の受光信号と撮影画像の階調値との関係(階調特性)が線形特性になっている。
ここで、自発蛍光像(動画)の観察時に調節したレーザー光を標準試料40へ投光するため、標準試料40の蛍光標準部材40aで生じる蛍光の光量(受光素子14の受光量)は調節したレーザー光の光量に略対応したものとなる。なお、上述では標準試料40を写し込んだ被検者眼Eの眼底画像の撮影を1回行うこととしたが、被検者眼Eの撮影を複数フレームの画像として取得し画像処理部33で加算処理を行うこととしてもよい。
被検者眼Eに対する一連の撮影が完了すると、検者はコントロール部32に用意された図示なき操作スイッチを操作して記憶部35に記憶された撮影画像を選択する。制御部30は選択された撮影画像をモニタ34に図6のように表示する。ここで制御部30は解析手段として撮影画像に含まれる被検者眼Eの眼底を撮影した眼底画像部分Diの情報(階調値)と、眼底画像に重なるように写し込まれた蛍光標準画像部分Dfおよび黒標準画像部分Dbの情報(階調値)から、眼底で発生する自発蛍光の強度を算出し、解析結果をモニタ34に表示する。なお、撮影画像の蛍光標準画像部分Dfは個々の眼に対する視度補正によって、その階調値が変わる可能性がある。このために本実施形態では撮影時の被検者眼の視度補正情報を用いて蛍光標準画像部分Dfの階調値を補償するものとしている。このように補償された蛍光標準画像部分Dfの情報は、個々の眼の視度補正によらず同一の標準値として用いることができる。
また、このようにして得られた撮影画像(蛍光眼底画像及び蛍光/黒標準情報)を用いて定量評価する場合の解析の例を以下に示す。
自発蛍光の強度値をAF、眼底画像部分Diの任意座標の階調値をx、黒標準画像部分Dbの階調値をB、蛍光標準画像部分Dfの階調値をREF、視度補正情報に対応した係数をCd、被検者眼の眼特性に対応した係数をCs、被検者眼の水晶体の程度に対応した係数をCcとすると、眼底画像の任意座標における強度値は式1で算出することができる。
AF=(x−B)/((REF−B)*Cd)*Cs*Cc ・・・式1
なお、係数Cdは視度補正手段による視度補正位置によって変動する蛍光標準画像部分Dfの明るさ(階調値)を補償するための係数であり、後述するように被検者眼の眼底(および標準試料40)を撮影したときの視度補正情報(ミラー4,5の位置)に対応した値となる。係数Csは被検者眼の眼球の大きさなど眼底情報を補償するための係数であり、検者が被検者眼の角膜曲率半径、眼軸長の何れか一方または両方と屈折度を装置に入力し、制御部30のプログラムが入力された情報に対応した係数値を設定する。係数Ccは被検者眼の白内障の程度による影響を補償するための係数であり、例えば、検者が被検者眼の水晶体を色調などから診断し判定したエメリーリトル分類(水晶体の硬化度合いの分類)のグレード値を装置に入力し、制御部30が入力されたグレード値に対応した係数値を記憶手段35から呼び出したものである。なお、上記の式(1)では、被検者眼の眼特性や被検者眼の水晶体の程度に対応した係数をCs,Ccを用いるものとしているが、必須となるものではなく、これらの係数は許容される精度との関係で適宜選択して使用されればよい。
また、階調値Bおよび階調値REFは、検者がコントロール部32の図示なき操作レバーによって、眼底画像に写し込まれた黒標準画像部分Dbおよび蛍光標準画像部分Dfの各領域の略中心位置(座標)を指定し、制御部30が指定された座標の階調値を取得し決定される。階調値Bおよび階調値REFは参照光量を示す情報であるため、階調値Bと階調値REFの取得は1枚の撮影画像の強度を算出する際に1度行うだけでよい。また、前述では検者が階調値Bと階調値REFを取得する座標を操作して指定したが、予め参照光量情報が写し込まれる撮影画像上の位置を記憶手段35に記憶しておき、制御部30が蛍光強度を算出する際に記憶されている座標位置に基づき自動的に参照光量情報を取得してもよい。更には、参照光量情報の取得は範囲を指定することでもよく、この場合、指定した範囲の階調値を平均化すればよい。
ここで係数Cdによって蛍光標準画像部分Dfの補償が必要な理由について説明する。前述したように、撮影は被検者眼に応じた視度補正を行った後に実行される。視度補正は、検者が予め被検者眼Eの眼屈折力を眼屈折力測定装置等で測定しておき、得られた被検者眼Eの屈折力値をコントロール部32によって入力し、制御部30が照射光学系と受光光学系の共通光路に配置された視度補正手段(ミラー4,5)を該入力値に対応した位置へと駆動することにより行われる。ここで、ミラー4,5を駆動することで被検者眼Eの眼底Erとピンホール板12とは共役の位置関係となり、視度補正手段による視度補正が達成される。一方、標準試料40は凹面ミラー10とガルバノミラー9との間で、0ディオプターの被検者眼Eに対して視度補正手段で視度補正したときの眼底Erと共役となる位置に固定されている。よって、被検者眼を0ディオプターの視度補正値で撮影するときは、標準試料40とピンホール板12とが共役の位置関係にあり、標準試料40を発した光はピンホール板12の部分で焦点を結ぶ。一方、被検者眼を0ディオプター以外の視度補正値で撮影するときは、視度補正手段(ミラー4,5)の位置が0ディオプターのときの位置から変位する。したがって、視度補正量が大きくなるほど、標準試料40とピンホール板12との共役関係は崩れるため、ピンホール板12にてけられる標準試料40からの蛍光光束が多くなり、撮影される蛍光標準画像部分Dfの明るさが減少してしまう。
このような理由から、係数Cdは視度補正手段の視度補正位置に対応させ、蛍光標準画像部分Dfの変動を補償する(視度補正位置によらず一定の蛍光標準情報が得られる)ような係数値となる。ここで係数Cdの係数値は標準試料40の位置からみた撮影光学系の瞳の立体角Seが係数Cdに対して反比例するように設定すればよい。例えば、標準試料40からみた撮影光学系の瞳の立体角Seは視度補正手段(ミラー4,5)の視度補正位置によって変化するため、いくつかの視度補正位置に対してCd(=1/Se)を計算し、直線補間によって視度補正値と係数Cdとの関係を決定すればよい。直線補間の代わりに最小二乗法を用いて視度補正量と係数Cdとの関係を近似式としてもよい。または、いくつかの視度補正値で標準試料40を撮影し、上述した手段で各々の撮影画像の蛍光標準画像部分Dfの階調値と黒標準画像部分Dbの階調値を取得し、直線補間または最小二乗法を用いて式1の(REF−B)箇所、即ち1/(REF−B)の部分の計算結果値が一定となる視度補正情報に対応した係数Cdを用いてもよい。
なおピンホール板12の開口径は調節可能(変更可能)であるため、ピンホール板12の開口径によってピンホール板12でけられる標準試料40からの蛍光光束の量は変化する。よって係数Cdの係数値はピンホール板12がとり得る複数種類の開口径に対応したものとすればよい。例えば、記憶手段35に該開口径の値と該係数の値とを関連付けたテーブルを記憶しておき、制御部30が制御した開口径に対応した係数値(Cd)を該テーブルから呼び出して自発蛍光強度値AFの算出を行えばよい。ここで、ピンホール板12の開口を絞ると、光学系の収差などの影響によって撮影画像の眼底画像部分Diの明るさが変化(若干暗く)する。つまり式1の(x−B)の部分の計算結果値が小さくなる。よってピンホール板12の開口径によって変化する撮影画像の眼底画像部分Diの明るさの補償分を係数Cdに含ませてもよい。
このようにして求められた係数Cdを用いて、式1に記した自発蛍光強度値AFの算出を撮影画像の眼底画像部分Diの一部または全体に対して行うことで、定量的な自発眼底画像の解析を行うことができる。
検者が画像データの領域を複数箇所指定することで、指定した領域同士で自発蛍光強度の比較を行うことができる。自発蛍光は患部箇所または全体で発生するため、このような領域指定は画像データ全体の狭い領域、または広い領域で行う。例えば疾患は眼底の後極部(黄班およびその周囲)から進行することが多いため、図6のように眼底の後極部が画像データの中心にくるような撮影では、画像データの中央部と周辺部とを領域指定し各々領域の自発蛍光強度の平均値を算出し数値比較することで、眼底画像データの中央部と周辺部の自発蛍光の発生度合いの差を解析結果としてモニタ34に表示することができる。
また、解析は1枚の記録画像データに限定されるものでなく、本実施形態で過去に撮影を行った記録画像データであれば、前述したものと同様の解析を行うことで記録画像データ同士の解析値の比較を行うことができる。解析結果をモニタ34に表示することで、検者は同一被検者の疾患の進行度合いを数値として確認することができる。
また、算出した強度値と閾値を組合せることで、閾値が1つであれば2値化された自発蛍光強度マップの形で、閾値が複数であれば等高線状に描かれた自発蛍光強度マップの形で解析結果としてモニタ34に表示することができる。
このように被検者眼Eの眼底と標準試料とを撮影し、受光した蛍光情報に対して視度補正手段の視度補正量に対応した補償を行って蛍光強度を算出することで、被検者眼Eに堆積する蛍光物質(リポフスチン等)の量や範囲を定量的に解析することができる。
なお、本実施形態では式1で使用する階調値Bを黒標準画像部分Diの階調値を取得して決定したが、標準試料40に黒標準部材40bを配置せず、レーザー光を消灯したときの受光素子14の受光信号からなる階調値を階調値Bとして使用しても良い。また、本実施形態では視度補正手段による標準試料の階調値の変動を補償するため、蛍光強度値AFを求める式で(REF−B)に対して補償係数Cdによる乗算を行った。ここで、補償係数Cdは(REF−B)に対してではなく、蛍光標準画像Dfおよび黒標準画像部分Dbの各々に対して視度補正手段による変動を補償するようにしてもよい。
また、本実施形態では光源にレーザー光源(1aまたは1b)を使用し、ポリゴンミラー7とガルバノミラー9により眼底上でレーザー光を走査して撮影する眼底撮影装置をあげたが、自発蛍光撮影に対応したエキサイタフィルタとバリアフィルタによって被検者眼の眼底の自発蛍光撮影が行える特許文献1に記載したような眼底カメラにも適用することができる。例えば、眼底に照明光を投光させる光学系と眼底からの反射光を受光して眼底像を撮影ための光学系と有する眼底カメラであって、照明光束と撮影光束の共通光路になる対物レンズと穴あき全反射ミラーとの間の撮影光束内に蛍光反応情報を得るための標準試料(蛍光標準部材および黒標準部材)を配置することで、本実施形態の図6で示したものと同様な、眼底画像に標準試料が重畳した撮影画像を取得することができる。ここで本実施形態の式1で示した自発蛍光強度を算出する際に、撮影光学系の視度補正特性を元に標準試料データの補償を行うことで、定量的な解析を行うことができる。また、光干渉の技術を用いた網膜断層画像を取得する眼底撮影装置(OCT)にも適用することができる。
なお、眼底カメラの撮影画像(記録画像)は、一般的な表示手段がガンマ2.2の階調変換特性を有することを配慮して、撮影時の受光量と記録画像の階調値との関係がガンマ0.45の階調特性になるように画像処理を行って記録することが一般的である。このような非線形の階調特性をもった撮影画像に対して本実施形態(式1)で記した自発蛍光強度の算出を行う場合は、階調特性がガンマ1.0の特性を有するように撮影画像の階調値(x,B,REF)に対して階調変換を行った後に蛍光強度の計算を行う式(式1)へ当てはめればよい。例えば公知のルックアップテーブル手段によって、非線形特性(ガンマ0.45)をもつ階調値データを線形特性(ガンマ1.0)をもつ階調値データへと階調変換することができる。このように線形特性をもつ階調値を使用して蛍光強度の算出を行うことで、撮影画像の階調値の大小に関わらず精度の高い解析を行うことができる。
また、本実施形態は撮影および解析を行う眼底撮影装置として記したが、撮影と解析とを別の構成としても達成できる。眼底撮影装置は被検者眼Eの眼底および標準試料を撮影して蛍光画像と視度補正情報とを記録し、パーソナルコンピュータを用いた眼底画像処理装置が該記録情報(眼底画像,視度補正情報)を用いて、式1に記した蛍光強度の計算および解析を行うこととしてもよい。