JP5962028B2 - 非水系電解液及びそれを用いたリチウム二次電池 - Google Patents
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Description
通常のリチウム二次電池用の電解液は、支持電解質であるリチウム塩と非水系有機溶媒を主成分とする。用いられる非水系有機溶媒は、リチウム塩を解離させるために高い誘電率を有すること、広い温度領域で高いイオン伝導度を発現させること、及び、電池中で安定であること等が要求される。これらの要求を一つの溶媒で達成するのは困難であるので、通常は、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート等に代表される高沸点溶媒と、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート等の低沸点溶媒とを組み合わせて、非水溶媒として使用している。
また特許文献6には、特定構造を有するスルホン化合物と1,6−ジシアノヘキサンとを含有した電解液を用いることでサイクル特性が改善されることが開示されている。
に達成することが求められている。サイクル特性及び高温保存特性を改善する手法は数多く提案されているが、実用に耐えうるレベルの報告例は少ない。本発明者らが検討したところ、特許文献1〜5に開示されている技術は、保存特性改善とサイクル特性改善を両立させるには不十分であった。
する非水系電解液に存する。
このとき、該フッ素置換環状カーボネートが、一般式(1)で表されるカーボネートであることが好ましい。
さらに、該ジイソシアネートは、一般式(2)で表されるであることが好ましい。
NCO−X−NCO (2)
(式中、Xはフッ素で置換されていても良い炭素数1〜16の炭化水素基である)
また該非水系有機溶媒がさらに脂肪族カルボン酸エステルを含有することが好ましい。
本発明の非水系電解液はリチウム塩と非水系有機溶媒を主成分とする。また、本発明のリチウム二次電池は、非水系電解液と、リチウムイオンを吸蔵・放出可能な正極及び負極とを備えて構成される。また、本発明のリチウム二次電池はその他の構成要素を備えていても良い。
本発明の非水系電解液(以下適宜、「本発明における非水系電解液」という)は、リチウム塩が非水系有機溶媒(以下適宜、「本発明における非水系有機溶媒」に溶解されてなる非水系電解液であって、該非水系有機溶媒はフッ素置換環状カーボネートを含有し、さらに該非水電解液は、ジイソシアネート(以下適宜、「本発明におけるジイソシアネート」という)及びスルホキシド類、サルファイト類、スルホン類、スルホネート類、スルトン類及びスルフェート類からなる群から選ばれる一種以上の硫黄化合物(以下適宜、「本発明における硫黄化合物」という)を含有することを特徴とする非水系電解液である。
[1−1.種類]
本発明におけるフッ素置換環状カーボネートは、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネートなどの環状カーボネートの分子内のいずれかの水素原子がフッ素で置換された環状カーボネートであれば特に制限はないが、下記一般式(1)で表されるものが好ましい。
上記一般式(1)において、R1〜R4はそれぞれ独立して水素原子、フッ素原子、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のフッ素置換アルキル基であり、R1〜R4の少なくとも1つはフッ素原子または炭素数1〜4のフッ素置換アルキル基である。
ーボネート、1,1−ジフルオロエチレンカーボネート、1,2−ジフルオロエチレンカーボネート、1−フルオロ−2−メチルエチレンカーボネート、1−フルオロ−1−メチルエチレンカーボネート、1,2−ジフルオロ−1,2−ジメチルエチレンカーボネート、テトラフルオロエチレンカーボネート、モノフルオロメチルエチレンカーボネート、ジフルオロメチルエチレンカーボネート、トリフルオロメチルエチレンカーボネート、2,2,2−トリフルオロエチルエチレンカーボネートなどが挙げられる。これらの中でも、電導度向上と粘度低減をバランスよく両立し、良好なサイクル特性を与える点から、フルオロエチレンカーボネート、1,2−ジフルオロエチレンカーボネート、トリフルオロメチルエチレンカーボネートがより好ましい。
また上述した本発明におけるフッ素置換環状カーボネートは、1種類を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用しても良い。
本発明におけるフッ素置換環状カーボネートの含有量は、該非水系電解液の全体の質量に対して、通常0.01質量%以上、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.5質量%以上、さらに好ましくは1質量%以上、最も好ましくは2質量%以上、また、通常45質量%以下、好ましくは40質量%以下、より好ましくは35質量%以下である。含有量が上記範囲内にあることにより、高温保存特性が向上し、また、本発明の効果を十分に発揮しやすくなる。更に、容量維持率向上の観点から、フッ素置換環状カーボネートの含有量は5質量%以上が好ましい。
[2−1.種類]
本発明におけるジイソシアネートは、分子内にイソシアナト基を2つ有する化合物であれば特に制限はないが、下記一般式(2)で表されるものが好ましい。
NCO−X−NCO (2)
(式中、Xはフッ素で置換されていても良い炭素数1〜16の炭化水素基である)
上記一般式(2)において、Xはフッ素で置換されていても良い炭素数1〜16の炭化水素基である。Xの炭素数は好ましくは2以上、より好ましくは3以上、特に好ましくは4以上であり、また好ましくは14以下、より好ましくは12以下、特に好ましくは10以下、最も好ましくは8以下である。またXの種類については炭化水素基である限り特に限定されない。脂肪族鎖状アルキレン基、脂肪族環状アルキレン基及び芳香環含有炭化水素基のいずれであっても良いが、好ましくは脂肪族鎖状アルキレン基又は脂肪族環状アルキレン基である。
エチレンジイソシアネート、トリメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ペンタメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ヘプタメチレンジイソシアネート、オクタメチレンジイソシアネート、デカメチレンジイソシアネート、ドデカメチレンジイソシアネート、テトラデカメチレンジイソシアネート、等の直鎖ポリメチレンジイソシアネート類;メチルテトラメチレンジイソシアナート、ジメチルテトラメチレンジイソシアナート、トリメチルテトラメチレンジイソシアナート、メチルヘキサメチレンジイソシアナート、ジメチルヘキサメチレンジイソシアナート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアナート、メチルオクタメチレンジイソシアナート、ジメチルオクタメチレンジイソシアナート、トリメチルオクタメチレンジイソシアナート、等の分岐アルキレンジイソシアネート類;1,4−ジイソシアナト−2−ブテン、1,5−ジイソシアナト−2−ペンテン、1,5−ジイソシアナト−3−ペンテン、1,6−ジイソシアナト−2−ヘキセン、1,6−ジイソシアナト−3−ヘキセン、1,8−ジイソシアナト−2−オクテン、1,8−ジイソシアナト−3−オクテン、1,8−ジイソシアナト−4−オクテン、等のジイソシアナトアルケン類;1,3−ジイソシアナト−2−フルオ
ロプロパン、1,3−ジイソシアナト−2,2−ジフルオロプロパン、1,4−ジイソシアナト−2−フルオロブタン、1,4−ジイソシアナト−2,2−ジフルオロブタン、1,4−ジイソシアナト−2,3−ジフルオロブタン、1,6−ジイソシアナト−2−フルオロヘキサン、1,6−ジイソシアナト−3−フルオロヘキサン、1,6−ジイソシアナト−2,2−ジフルオロヘキサン、1,6−ジイソシアナト−2,3−ジフルオロヘキサン、1,6−ジイソシアナト−2,4−ジフルオロヘキサン、1,6−ジイソシアナト−2,5−ジフルオロヘキサン、1,6−ジイソシアナト−3,3−ジフルオロヘキサン、1,6−ジイソシアナト−3,4−ジフルオロヘキサン、1,8−ジイソシアナト−2−フルオロオクタン、1,8−ジイソシアナト−3−フルオロオクタン、1,8−ジイソシアナト−4−フルオロオクタン、1,8−ジイソシアナト−2,2−ジフルオロオクタン、1,8−ジイソシアナト−2,3−ジフルオロオクタン、1,8−ジイソシアナト−2,4−ジフルオロオクタン、1,8−ジイソシアナト−2,5−ジフルオロオクタン、1,8−ジイソシアナト−2,6−ジフルオロオクタン、1,8−ジイソシアナト−2,7−ジフルオロオクタン、等のフッ素置換ジイソシアナトアルカン類;1,2−ジイソシアナトシクロペンタン、1,3−ジイソシアナトシクロペンタン、1,2−ジイソシアナトシクロヘキサン、1,3−ジイソシアナトシクロヘキサン、1,4−ジイソシアナトシクロヘキサン、1,2−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、1,3−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、1,4−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、ジシクロヘキシルメタン−2,2'−ジイソシアナート、ジシクロヘキシルメタン−2
,4'−ジイソシアナート、ジシクロヘキシルメタン−3,3'−ジイソシアナート、ジシクロヘキシルメタン−4,4'−ジイソシアナート、等のシクロアルカン環含有ジイソシ
アネート類;1,2−フェニレンジイソシアナート、1,3−フェニレンジイソシアナート、1,4−フェニレンジイソシアナート、トリレン−2,3−ジイソシアナート、トリレン−2,4−ジイソシアナート、トリレン−2,5−ジイソシアナート、トリレン−2,6−ジイソシアナート、トリレン−3,4−ジイソシアナート、トリレン−3,5−ジイソシアナート、1,2−ビス(イソシアナトメチル)ベンゼン、1,3−ビス(イソシア
ナトメチル)ベンゼン、1,4−ビス(イソシアナトメチル)ベンゼン、2,4−ジイソシ
アナトビフェニル、2,6−ジイソシアナトビフェニル、2,2'−ジイソシアナトビフ
ェニル、3,3'−ジイソシアナトビフェニル、4,4'−ジイソシアナト−2−メチルビフェニル、4,4'−ジイソシアナト−3−メチルビフェニル、4,4'−ジイソシアナト−3,3'−ジメチルビフェニル、4,4'−ジイソシアナトジフェニルメタン、4,4'−ジイソシアナト−2−メチルジフェニルメタン、4,4'−ジイソシアナト−3−メチル
ジフェニルメタン、4,4'−ジイソシアナト−3,3'−ジメチルジフェニルメタン、1
,5−ジイソシアナトナフタレン、1,8−ジイソシアナトナフタレン、2,3−ジイソシアナトナフタレン、1,5−ビス(イソシアナトメチル)ナフタレン、1,8−ビス(イ
ソシアナトメチル)ナフタレン、2,3−ビス(イソシアナトメチル)ナフタレン等の芳香
環含有ジイソシアネート類;
などが挙げられる。これらの中でも、詳細は[11.メカニズム]の項で詳述するように、S=O基含有有機化合物とともに形成したハイブリッド被膜の安定性が高いという観点から、
分岐アルキレンジイソシアネート類;1,2−ジイソシアナトシクロペンタン、1,3−ジイソシアナトシクロペンタン、1,2−ジイソシアナトシクロヘキサン、1,3−ジイソシアナトシクロヘキサン、1,4−ジイソシアナトシクロヘキサン、1,2−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、1,3−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、1,4−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、ジシクロヘキシルメタン−2,2'−ジイソシアナート、ジシクロヘキシルメタン−2,4'−ジイソシアナート、ジシクロヘキシルメタン−3,3'−ジイソシアナート、ジシクロヘキシルメタン−4,4'−ジイソシアナート、等のシクロアルカン環含有ジイソシアネート類;
が好ましく、さらには
ン−4,4'−ジイソシアナート、から選ばれるシクロアルカン環含有ジイソシアネート
類;
が特に好ましい。
また上述した本発明におけるジイソシアネートは、1種類を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用しても良い。
本発明におけるジイソシアネートの含有量は、該非水電解液の全体の質量に対して、通常0.001質量%以上、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.1質量%以上、さらに好ましくは0.3質量%以上、また、通常5質量%以下、好ましくは4.0質量%以下、より好ましくは3.0質量%以下、さらに好ましくは2質量%以下である。含有量が多すぎると、負極抵抗が上昇して容量が低下する傾向がある。また、含有量が小さすぎると、本発明の効果を十分に発揮できない可能性がある。
[3−1.種類]
本発明における硫黄化合物は、スルホキシド類、サルファイト類、スルホン類、スルホネート類、スルトン類及びスルフェート類からなる群から選ばれる。
スルホキシド類を例示すると、ジメチルスルホキシド、ジエチルスルホキシド、ジプロピルスルホキシド、ジブチルスルホキシド、ジフェニルスルホキシド、メチルフェニルスルホキシド、フェニルビニルスルホキシド、テトラメチレンスルホキシドなどが挙げられる。
スルホン類を例示すると、ジメチルスルホン、ジエチルスルホン、ジプロピルスルホン、ジフェニルスルホン、ジビニルスルホンなどの対称鎖状スルホン類;メチルエチルスルホン、メチルプロピルスルホン、メチルフェニルスルホン、メチルビニルスルホン、エチルフェニルスルホン、エチルビニルスルホン、フェニルビニルスルホンなどの非対称鎖状スルホン類;スルホラン、スルホレンなどの環状スルホン類が挙げられる。
スルフェート類を例示すると、ジメチルスルフェート、ジエチルスルフェート、ジプロピルスルフェート、ジブチルスルフェート、ジアミルスルフェート、ジフェニルスルフェート、1,3,2−ジオキサチオラン−2,2−ジオキシド、1,3,2−ジオキサチアン−2,2−ジオキシドなどなどが挙げられる。
また上述した本発明における硫黄化合物は、1種類を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用しても良い。
本発明における硫黄化合物の含有量は、該非水電解液の全体の質量に対して、通常0.001質量%以上、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.1質量%以上、さらに好ましくは0.3質量%以上、特に好ましくは0.5質量%以上、最も好ましくは1.0質量%以上、また、通常10質量%以下、好ましくは8質量%以下、より好ましくは5質量%以下、さらに好ましくは4質量%以下、特に好ましくは3質量%以下である。含有量が多すぎると、負極抵抗が上昇して容量が低下する傾向がある。また、含有量が小さすぎると、本発明の効果を十分に発揮できない可能性がある。
[4.鎖状カルボン酸エステル]
本発明では、さらに鎖状カルボン酸エステル(以下適宜、「本発明における鎖状カルボン酸エステル」という)を含有しているとサイクル特性改善の点で好ましい。
本発明における鎖状カルボン酸エステルは、エステル基で環状構造を形成していない、
いわゆる鎖状のカルボン酸エステルである限り特に限定されない。塩素、フッ素、臭素などのハロゲン原子を含有したもの、シアノ基、アミノ基、アミド基、エーテル基などの置換基を有していても良い。これらを例示すると、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸n-プロピル、酢酸イソプロピルなどの酢酸エステル類、モノフルオロ酢酸メチル、モノフルオロ酢酸エチル、モノフルオロ酢酸n-プロピル、モノフルオロ酢酸イソプロピルなどのモノフルオロ酢酸エステル類、ジフルオロ酢酸メチル、ジフルオロ酢酸エチル、ジフルオロ酢酸n-プロピル、ジフルオロ酢酸イソプロピルなどのジフルオロ酢酸エステル類、トリフルオロ酢酸メチル、トリフルオロ酢酸エチル、トリフルオロ酢酸n-プロピル、トリフルオロ酢酸イソプロピルなどのトリフルオロ酢酸エステル類、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸n-プロピル、プロピオン酸イソプロピルなどのプロピオン酸エステル類、酪酸メチル、酪酸エチル、酪酸n-プロピル、酪酸イソプロピルなどの酪酸エステル類、などが挙げられ、好ましいものとして、酢酸エチル、酢酸n-プロピル、酢酸イソプロピル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸n-プロピル、プロピオン酸イソプロピル、酪酸エチル、酪酸n-プロピル、酪酸イソプロピルが挙げられ、より好ましいものとして、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチルが挙げられる。
また上述した本発明における鎖状カルボン酸エステルは、1種類を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用しても良い。
本発明における鎖状カルボン酸エステルの含有量は、該非水系電解液の全体の質量に対して、通常5質量%以上、好ましくは10質量%以上、より好ましくは15質量%以上、また、通常60質量%以下、好ましくは55質量%以下、より好ましくは50質量%以下である。含有量が5質量%以上であることで、電解液の粘度が低くなり、さらにはリチウム塩の解離も促進される結果、電解液の電導度が向上するので好ましい。また、含有量が60質量%以下であることで、鎖状カルボン酸エステルの負極上での分解反応が抑制されるので好ましい。
[5−1.種類]
本発明における非水系有機溶媒は上述した様にフッ素置換環状カーボネートを含有するが、その他に含有する溶媒について特に制限はなく、公知の有機溶媒を用いることが可能である。これらを例示すると、フッ素置換されていない環状カーボネート類、鎖状カーボネート類、環状エステル(ラクトン化合物)類、鎖状エーテル類、環状エーテル類、含窒素有機溶媒などが挙げられる。なかでも高いイオン導電性を発現させる溶媒として、環状カーボネート類、鎖状カーボネート類、環状エステル類、鎖状エーテル類、環状エーテル類、含窒素有機溶媒が好ましい。
どのカーボネート類;ビス(トリフルオロメチル)カーボネート、メチルトリフルオロメチルカーボネート、ビス(モノフルオロエチル)カーボネート、メチルモノフルオロエチルカーボネート、ビス(トリフルオロエチル)カーボネート、メチルトリフルオロエチルカーボネートなどのハロゲン置換カーボネート類が挙げられる。これらの中でもジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、メチルプロピルカーボネート及びエチルプロピルカーボネートからなる群から選ばれた少なくとも1種であることが好ましく、さらにはジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネート及びジエチルカーボネートからなる群から選ばれた少なくとも1種であることが特に好ましい。
また、鎖状エーテル類の具体例を挙げると、1,2−ジメトキシエタン、1,2−ジエトキシエタン、ジエチルエーテル等が挙げられる。
また、含窒素有機溶媒の具体例を挙げるとN−メチルピロリドン、N−エチルピロリドン、N−ビニルピロリドン、アセトニトリルが挙げられる。
本発明における非水系有機溶媒では、フッ素置換環状カーボネート及び鎖状カルボン酸エステル以外の非水系有機溶媒としては、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用しても良いが、2種以上の溶媒が混合して使用されることが好ましい。
また本発明における非水系有機溶媒では、フッ素置換環状カーボネート及び鎖状カルボン酸エステル以外の非水系有機溶媒の含有量は特に限定されるものではない。フッ素置換環状カーボネート及び鎖状カルボン酸エステル以外の非水系有機溶媒として好ましく使用されるのは環状カーボネート及び鎖状カーボネートであり、その含有量と鎖状カルボン酸エステルの含有量との合計量が、通常20質量%以上、好ましくは30質量%以上、より好ましくは40質量%以上、また、通常80質量%以下、好ましくは75質量%以下である。
リチウム塩は電解質として用いられる。リチウム塩の種類に特に制限はなく、無機リチウム塩及び有機リチウム塩のいずれを用いても良い。 具体的には以下のものが挙げられ
る。
例えば、LiPF6、LiBF4、LiClO4、LiAlF4、LiSbF6、LiTaF6、LiWF7等の無機リチウム塩;LiWOF5等のタングステン酸リチウム類;HCO2Li、CH3CO2Li、CH2FCO2Li、CHF2CO2Li、CF3CO2Li、CF3CH2CO2Li、CF3CF2CO2Li、CF3CF2CF2CO2Li、CF3CF2CF2CF2CO2Li等のカルボン酸リチウム塩類; FSO3Li、CH3SO3Li、CH2FSO3Li、CHF2SO3Li、CF3SO3Li、CF3CF2SO3Li、CF3CF2CF2SO3Li、CF3CF2CF2CF2SO3Li等のスルホン酸リチウム塩類; LiN(FCO)2、LiN(FCO)(FSO2)、LiN(FSO2)2、LiN(FSO2)(CF3SO2)、LiN(CF3SO2)2、LiN(C2F5SO2)2、リチウム環状1,2−パーフルオロエタンジスルホニルイミド、リチウム環状1,3−パーフルオロプロパンジスルホニルイミド、LiN(CF3SO2)(C4F9SO2)等のリチウムイミド塩類; LiC(FS
O2)3、LiC(CF3SO2)3、LiC(C2F5SO2)3等のリチウムメチド塩類; リチウムジフルオロオキサラトボレート、リチウムビス(オキサラト)ボレート等のリチウムオキサラトボレート塩類; リチウムテトラフルオロオキサラトフォスフェート、リチウムジフルオロビス(オキサラト)フォスフェート、リチウムトリス(オキサラト)フォスフェート等のリチウムオキサラトフォスフェート塩類; その他、LiPF4(CF3)2、LiPF4(C2F5)2、LiPF4(CF3SO2)2、LiPF4(C2F5SO2)2、LiBF3CF3、LiBF3C2F5、LiBF3C3F7、LiBF2(CF3)2、LiBF2(C2F5)2、LiBF2(CF3SO2)2、LiBF2(C2F5SO2)2等の含フッ素有機リチウム塩類;等が挙げられる。
明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、本発明の非水系電解液に対して、通常、0.01質量%以上、好ましくは0.1質量%以上であり、一方その上限は通常30質量%以下、好ましくは20質量%以下である。
本発明にかかる非水系電解液は、負極上に被膜を形成させ、電池特性を改善させる目的で、さらにモノフルオロリン酸塩、ジフルオロリン酸塩及び炭素−炭素不飽和結合を有する環状カーボネートからなる1種以上を含有していることが好ましい。モノフルオロリン酸塩及びジフルオロリン酸塩としては、モノフルオロリン酸ナトリウム、モノフルオロリン酸リチウム、モノフルオロリン酸カリウム、 ジフルオロリン酸ナトリウム、ジフルオ
ロリン酸リチウム、ジフルオロリン酸カリウムが好ましく、さらにはモノフルオロリン酸リチウム、ジフルオロリン酸リチウムが特に好ましい。
本発明における炭素−炭素不飽和結合を有する環状カーボネートは、更に分子内にフッ素置換を有していてもよい。炭素−炭素不飽和結合及びフッ素置換を有する環状カーボネートの例としては、フルオロビニレンカーボネート、1,2−ジフルオロビニレンカーボネート、1−フルオロ−2−メチルビニレンカーボネート、1−フルオロ−2−フェニルビニレンカーボネート等のビニレンカーボネート誘導体類;1−フルオロ−2−ビニルエチレンカーボネート等のビニルエチレンカーボネート誘導体類が挙げられる。
また、炭素−炭素不飽和結合を有する環状カーボネートの炭素数は通常3以上、また、通常20以下、好ましくは15以下である。さらに、炭素−炭素不飽和結合を有する環状カーボネートの分子量は通常80以上であり、また、通常250以下、好ましくは150以下である。炭素数や分子量が上記範囲内であることにより、電解液に対する溶解性を保ち、本発明の効果を十分に発現できる。
本発明における非水系電解液は、本発明の効果を著しく損なわない範囲において、非水系電解液の濡れ性、過充電特性等を改善する目的で他の助剤を含有させても良い。
助剤の例としては、エリスリタンカーボネート、スピロ−ビス−ジメチレンカーボネート、メトキシエチル−メチルカーボネート等のカーボネート化合物;無水コハク酸、無水グルタル酸、無水マレイン酸、無水フェニルマレイン酸、無水シトラコン酸、無水グルタコン酸、無水イタコン酸、無水ジグリコール酸、シクロヘキサンジカルボン酸無水物、シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物及びフェニルコハク酸無水物等のカルボン酸無水物;2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン、3,9−ジビニル−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン等のスピロ化合物;1−メチル−2−ピロリジノン、1−メチル−2−ピペリドン、3−メチル−2−オキサゾリジノン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、N−メチルスクシンイミド、スクシノニトリル、アジポニトリル、ピメロニトリル等の含窒素化合物;ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン、シクロヘプタン等の炭化水素化合物、フルオロベンゼン、ジフルオロベンゼン、ヘキサフルオロベンゼン、t−ブチルベンゼン、t−アミルベンゼン、ビフェニル、o−ターフェニル、2−フルオロビフェニル、4−フルオロビフェニル、2,4−ジフルオロビフェニル、フルオロベンゼン、2,4−ジフルオロベンゼン、シクロヘキシルベンゼン、ジフェニルエーテル、2,4−ジフルオロアニソール、3,5−ジフルオロアニソール、ベンゾトリフルオライド等の芳香族化合物等が挙げられる。これらの中でも無水コハク酸、無水グルタル酸、無水マレイン酸、無水シトラコン酸、無水イタコン酸等の環状酸無水物;スクシノニトリル、アジポニトリル、ピメロニトリル等のジニトリルが好ましい。
、非水系電解液中における助剤の濃度は、本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、通常0.01質量%以上、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.3質量%以上また、通常5質量%以下、好ましくは3質量%以下、より好ましくは2質量%以下である。なお、助剤を2種以上併用する場合は、これらの濃度の合計が上記範囲内に収まるようにすることが好ましい。
非水系電解液は、本発明のリチウム二次電池に用いる際、通常は液体状態で存在するが、例えば、これを高分子によってゲル化して、半固体状電解質にしてもよい。ゲル化に用いる高分子は任意であるが、例えばポリフッ化ビニリデン、ポリフッ化ビニリデンとヘキサフルオロプロピレンとの共重合体、ポリエチレンオキサイド、ポリアクリレート、ポリメタクリレートなどが挙げられる。なお、ゲル化に用いる高分子は1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用しても良い。
本発明における非水系電解液の製造方法は特に制限は無いが、例えば、フッ素置換環状カーボネートを含有した非水系有機溶媒にリチウム塩を加え、さらに本発明におけるジイソシアネート及び硫黄化合物を該非水電解液の質量に対してそれぞれ0.001〜5質量%及び0.001〜10質量%となるように添加することにより調製することができる。
脱水の手段としては特に制限はないが、例えば、脱水する対象が非水系有機溶媒などの液体の場合は、モレキュラーシーブ等を用いればよい。また脱水する対象が電解質などの固体の場合は、分解が起きる温度以下で乾燥させればよい。
本発明の効果が得られるメカニズムは定かではないが、以下のように考えられる。
本発明におけるジイソシアネートは電池作製の初期充電時にその一部が反応し、負極上に保護被膜を形成する。しかしながらこの保護被膜はフッ素置換環状カーボネートを含有した溶媒に徐々に溶解してしまうために、負極を持続的に保護できないという問題点を抱えている。被膜による保護をうけない負極においては、溶媒等の還元分解が進行して抵抗の増大を招き、充電時にリチウムが析出して容量低下へとつながる。
題点はフッ素置換環状カーボネートを所定量以上含有した溶媒を用いた場合に限られる。
この問題点は、電解液中にさらに本発明における硫黄化合物を存在させることで解決する。本発明における硫黄化合物は、初期充電時に本発明におけるジイソシアネートが反応する際に、その一部が反応し、負極被膜中に取り込まれる。すなわち硫黄化合物が存在することで負極上にジイソシアネートと硫黄化合物とに由来するハイブリッド被膜を形成する。このハイブリッド被膜はフッ素置換環状カーボネートを含有した溶媒に対して溶解しにくいために、負極上での反応が抑制され充電時にリチウムが析出しにくくなる。したがってサイクル特性の向上へとつながる。また負極被膜の熱安定性が向上した結果、高温時の保存試験特性も向上する。
本発明のリチウム二次電池は、上述した本発明の非水系電解液と、リチウムイオンを吸蔵・放出可能な正極及び負極とを備えて構成される。また、本発明のリチウム二次電池はその他の構成を備えていても良い。例えば、リチウム二次電池は、通常、スペーサを備えている。
〔1−1.正極活物質〕
以下に正極に使用される正極活物質について述べる。
(組成)
正極活物質としては、電気化学的にリチウムイオンを吸蔵・放出可能なものであれば特に制限されないが、例えば、リチウムと少なくとも1種の遷移金属を含有する物質が好ましい。具体例としては、リチウム遷移金属複合酸化物、リチウム含有遷移金属リン酸化合物が挙げられる。
また、上記正極活物質の表面に、これとは異なる組成の物質が付着したものを用いてもよい。表面付着物質としては酸化アルミニウム、酸化ケイ素、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化ホウ素、酸化アンチモン、酸化ビスマス等の酸化物、硫酸リチウム、硫酸ナトリウム、硫酸カリウム、硫酸マグネシウム、硫酸カルシウム、硫酸アルミニウム等の硫酸塩、炭酸リチウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム等の炭酸塩、炭素等が挙げられる。
本発明においては、正極活物質の表面に、これとは異なる組成の物質が付着したものをも「正極活物質」という。
正極活物質の粒子の形状は、従来用いられるような、塊状、多面体状、球状、楕円球状、板状、針状、柱状等が挙げられるが、中でも一次粒子が凝集して、二次粒子を形成して成り、その二次粒子の形状が球状ないし楕円球状であるものが好ましい。通常、電気化学素子はその充放電に伴い、電極中の活物質が膨張収縮をするため、そのストレスによる活物質の破壊や導電パス切れ等の劣化がおきやすい。そのため一次粒子のみの単一粒子活物質であるよりも、一次粒子が凝集して、二次粒子を形成したものである方が膨張収縮のストレスを緩和して、劣化を防ぐため好ましい。また、板状等軸配向性の粒子であるよりも球状ないし楕円球状の粒子の方が、電極の成形時の配向が少ないため、充放電時の電極の膨張収縮も少なく、また電極を作成する際の導電材との混合においても、均一に混合されやすいため好ましい。
正極活物質のタップ密度は、好ましくは0.5g/cm3以上、より好ましくは1.0
g/cm3以上、さらに好ましくは1.5g/cm3以上、最も好ましくは1.7g/cm3以上である。該正極活物質のタップ密度が上記下限を下回ると正極活物質層形成時に、
必要な分散媒量が増加すると共に、導電材や結着剤の必要量が増加し、正極活物質層への正極活物質の充填率が制約され、電池容量が制約される場合がある。タップ密度の高い複合酸化物粉体を用いることにより、高密度の正極活物質層を形成することができる。タップ密度は一般に大きいほど好ましく、特に上限はないが、大きすぎると、正極活物質層内における電解液を媒体としたリチウムイオンの拡散が律速となり、負荷特性が低下しやすくなる場合があるため、上限は、好ましくは2.7g/cm3以下、より好ましくは2.
5g/cm3以下である。
なお、本発明では、タップ密度は、正極活物質粉体5〜10gを10mlのガラス製メスシリンダーに入れ、ストローク約20mmで200回タップした時の粉体充填密度(タップ密度)g/ccとして求める。
正極活物質の粒子のメジアン径d50(一次粒子が凝集して二次粒子を形成している場合には二次粒子径)は好ましくは0.3μm以上、より好ましくは1.2μm以上、さらに好ましくは1.5μm以上、最も好ましくは2μm以上であり、上限は、好ましくは20μm以下、より好ましくは18μm以下、さらに好ましくは16μm以下、最も好ましくは15μm以下である。上記下限を下回ると、高タップ密度品が得られなくなる場合があり、上限を超えると粒子内のリチウムの拡散に時間がかかるため、電池性能の低下をきた
したり、電池の正極作成、即ち活物質と導電材やバインダー等を溶媒でスラリー化し、薄膜状に塗布する際に、スジを引く等の問題を生ずる場合がある。ここで、異なるメジアン径d50をもつ該正極活物質を2種類以上混合することで、正極作成時の充填性をさらに向上させることができる。
一次粒子が凝集して二次粒子を形成している場合には、該正極活物質の平均一次粒子径としては、好ましくは0.05μm以上、より好ましくは0.1μm以上、さらに好ましくは0.2μm以上であり、上限は、好ましくは2μm以下、より好ましくは1.6μm以下、さらに好ましくは1.3μm以下、最も好ましくは1μm以下である。上記上限を超えると球状の二次粒子を形成し難く、粉体充填性に悪影響を及ぼしたり、比表面積が大きく低下するために、出力特性等の電池性能が低下する可能性が高くなる場合がある。逆に、上記下限を下回ると、通常、結晶が未発達であるために充放電の可逆性が劣る等の問題を生ずる場合がある。
なお、本発明では、一次粒子径は、走査電子顕微鏡(SEM)を用いた観察により測定される。具体的には、10000倍の倍率の写真で、水平方向の直線に対する一次粒子の左右の境界線による切片の最長の値を、任意の50個の一次粒子について求め、平均値をとることにより求められる。
正極活物質のBET比表面積は、好ましくは0.4m2/g以上、より好ましくは0.
5m2/g以上、さらに好ましくは0.6m2/g以上であり、上限は50m2/g以下、
好ましくは40m2/g以下、さらに好ましくは30m2/g以下である。BET比表面積がこの範囲よりも小さいと電池性能が低下しやすく、大きいとタップ密度が上がりにくくなり、正極活物質層形成時の塗布性に問題が発生しやすい場合がある。
なお、本発明では、BET比表面積は、表面積計(例えば、大倉理研製全自動表面積測定装置)を用い、試料に対して窒素流通下150℃で30分間、予備乾燥を行なった後、大気圧に対する窒素の相対圧の値が0.3となるように正確に調整した窒素ヘリウム混合ガスを用い、ガス流動法による窒素吸着BET1点法によって測定した値で定義される。
正極活物質の製造法としては、無機化合物の製造法として一般的な方法が用いられる。特に球状ないし楕円球状の活物質を作成するには種々の方法が考えられるが、例えば、リン酸等のリン原料物質と、組成式(1)におけるMの原料物質を水等の溶媒中に溶解ないし粉砕分散して、攪拌をしながらpHを調節して球状の前駆体を作成回収し、これを必要に応じて乾燥した後、LiOH、Li2CO3、LiNO3等のLi源を加えて高温で焼成
して活物質を得る方法等が挙げられる。
わせが挙げられる。ここで、組成式(1)の正極活物質及び/又は前記表面付着物質で被覆された組成式(1)の正極活物質は、正極活物質全体の30質量%以上であることが好
ましく、50質量%以上であることがより好ましい。組成式(1)の正極活物質及び/又は前記表面付着物質で被覆された組成式(1)の正極活物質の使用割合が少なくなると、電池容量が小さくなる場合がある。なお、「組成式(1)の正極活物質及び/又は前記表面付着物質で被覆された組成式(1)の正極活物質」と「組成式(1)の正極活物質及び/又は前記表面付着物質で被覆された組成式(1)の正極活物質以外の正極活物質」を総称して「正極活物質」という。
以下に、正極の構成について述べる。本発明において、正極は、正極活物質と結着剤とを含有する正極活物質層を、集電体上に形成して作製することができる。正極活物質を用いる正極の製造は、常法により行うことができる。即ち、正極活物質と結着剤、並びに必要に応じて導電材及び増粘剤等を乾式で混合してシート状にしたものを正極集電体に圧着するか、又はこれらの材料を液体媒体に溶解又は分散させてスラリーとして、これを正極集電体に塗布し、乾燥することにより、正極活物質層を集電体上に形成されることにより正極を得ることができる。
この範囲を上回ると集電体/活物質界面付近への電解液の浸透性が低下し、特に高電流密度での充放電特性が低下し高出力が得られない場合がある。また下回ると活物質間の導電性が低下し、電池抵抗が増大し高出力が得られない場合がある。
導電材としては、公知の導電材を任意に用いることができる。具体例としては、銅、ニッケル等の金属材料;天然黒鉛、人造黒鉛等の黒鉛(グラファイト);アセチレンブラック等のカーボンブラック;ニードルコークス等の無定形炭素等の炭素材料等が挙げられる。なお、これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。導電材は、正極活物質層中に、通常0.01質量%以上、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは1質量%以上であり、また上限は、通常50質量%以下、好ましくは30質量%以下、より好ましくは15質量%以下含有するように用いられる。含有量がこの範囲よりも低いと導電性が不十分となる場合がある。逆に、含有量がこの範囲よりも高いと電池容量が低下する場合がある。
正極活物質層の製造に用いる結着剤としては、特に限定されず、塗布法の場合は、電極製造時に用いる液体媒体に対して溶解又は分散される材料であればよいが、具体例としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリメチルメタクリレート、ポリイミド、芳香族ポリアミド、セルロース、ニトロセルロース等の樹脂系高分子;SBR(スチレン−ブタジエンゴム)、NBR(アクリロニトリル−ブタジエンゴム)、フッ素ゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、エチレン−プロピレンゴム等のゴム状高分子;スチレン・ブタジエン・スチレンブロック共重合体又はその水素添加物、EP
DM(エチレン・プロピレン・ジエン三元共重合体)、スチレン・エチレン・ブタジエン・エチレン共重合体、スチレン・イソプレン・スチレンブロック共重合体又はその水素添加物等の熱可塑性エラストマー状高分子;シンジオタクチック−1,2−ポリブタジエン、ポリ酢酸ビニル、エチレン・酢酸ビニル共重合体、プロピレン・α−オレフィン共重合体等の軟質樹脂状高分子;ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、ポリテトラフルオロエチレン、フッ素化ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン・エチレン共重合体等のフッ素系高分子;アルカリ金属イオン(特にリチウムイオン)のイオン伝導性を有する高分子組成物等が挙げられる。なお、これらの物質は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
スラリーを形成するための溶媒としては、正極活物質、導電材、結着剤、並びに必要に応じて使用される増粘剤を溶解又は分散することが可能な溶媒であれば、その種類に特に制限はなく、水系溶媒と有機系溶媒のどちらを用いてもよい。水系媒体としては、例えば、水、アルコールと水との混合媒等が挙げられる。有機系媒体としては、例えば、ヘキサン等の脂肪族炭化水素類;ベンゼン、トルエン、キシレン、メチルナフタレン等の芳香族炭化水素類;キノリン、ピリジン等の複素環化合物;アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;酢酸メチル、アクリル酸メチル等のエステル類;ジエチレントリアミン、N,N−ジメチルアミノプロピルアミン等のアミン類;ジエチルエーテル、プロピレンオキシド、テトラヒドロフラン(THF)等のエーテル類;N−メチルピロリドン(NMP)、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等のアミド類;ヘキサメチルホスファルアミド、ジメチルスルホキシド等の非プロトン性極性溶媒等が挙げられる。
正極集電体の材質としては特に制限されず、公知のものを任意に用いることができる。具体例としては、アルミニウム、ステンレス鋼、ニッケルメッキ、チタン、タンタル等の金属材料;カーボンクロス、カーボンペーパー等の炭素材料が挙げられる。中でも金属材料、特にアルミニウムが好ましい。
集電体と正極活物質層の厚さの比は特には限定されないが、(電解液注液直前の片面の正極活物質層の厚さ)/(集電体の厚さ)の値が20以下であることが好ましく、より好ましくは15以下、最も好ましくは10以下であり、下限は、0.5以上が好ましく、より好ましくは0.8以上、最も好ましくは1以上の範囲である。この範囲を上回ると、高電流密度充放電時に集電体がジュール熱による発熱を生じる場合がある。この範囲を下回ると、正極活物質に対する集電体の体積比が増加し、電池の容量が減少する場合がある。
本発明の非水系電解液を用いる場合、高出力かつ高温時の安定性を高める観点から、正極活物質層の面積は、電池外装ケースの外表面積に対して大きくすることが好ましい。具体的には、二次電池の外装の表面積に対する正極の電極面積の総和が面積比で15倍以上とすることが好ましく、さらに40倍以上とすることがより好ましい。外装ケースの外表面積とは、有底角型形状の場合には、端子の突起部分を除いた発電要素が充填されたケース部分の縦と横と厚さの寸法から計算で求める総面積をいう。有底円筒形状の場合には、端子の突起部分を除いた発電要素が充填されたケース部分を円筒として近似する幾何表面積である。正極の電極面積の総和とは、負極活物質を含む合材層に対向する正極合材層の幾何表面積であり、集電体箔を介して両面に正極合材層を形成してなる構造では、それぞれの面を別々に算出する面積の総和をいう。
正極板の厚さは特に限定されないが、高容量かつ高出力の観点から、芯材の金属箔厚さを差し引いた合材層の厚さは、集電体の片面に対して下限として、好ましくは10μm以上、より好ましくは20μm以上で、上限としては、好ましくは500μm以下、より好ましくは450μm以下である。
また、上記正極板の表面に、これとは異なる組成の物質が付着したものを用いてもよい。表面付着物質としては酸化アルミニウム、酸化ケイ素、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化ホウ素、酸化アンチモン、酸化ビスマス等の酸化物、硫酸リチウム、硫酸ナトリウム、硫酸カリウム、硫酸マグネシウム、硫酸カルシウム、硫酸アルミニウム等の硫酸塩、炭酸リチウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム等の炭酸塩、炭素等が挙げられる。
以下に負極に使用される負極活物質について述べる。負極活物質としては、電気化学的にリチウムイオンを吸蔵・放出可能なものであれば、特に制限はない。具体例としては、炭素質材料、合金系材料、リチウム含有金属複合酸化物材料等が挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、また2種以上を任意に組み合わせて併用してもよい。
負極活物質としては、炭素質材料、合金系材料、リチウム含有金属複合酸化物材料等が挙げられる。
負極活物質として用いられる炭素質材料としては、
(1)天然黒鉛、
(2)人造炭素質物質並びに人造黒鉛質物質を400〜3200℃の範囲で1回以上熱処理した炭素質材料、
(3)負極活物質層が少なくとも2種以上の異なる結晶性を有する炭素質からなり、かつ/又はその異なる結晶性の炭素質が接する界面を有している炭素質材料、
(4)負極活物質層が少なくとも2種以上の異なる配向性を有する炭素質からなり、かつ/又はその異なる配向性の炭素質が接する界面を有している炭素質材料、
から選ばれるものが、初期不可逆容量、高電流密度充放電特性のバランスがよく好ましい。また、(1)〜(4)の炭素質材料は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
金、酸化物や炭化物、窒化物等が、単位質量当りの容量及び環境負荷の観点から好ましい。
上記金属酸化物が、一般式(A)で表されるリチウムチタン複合酸化物であり、一般式(A)中、0.7≦x≦1.5、1.5≦y≦2.3、0≦z≦1.6であることが、リチウムイオンのドープ・脱ドープの際の構造が安定であることから好ましい。
[一般式(1)中、Mは、Na、K、Co、Al、Fe、Ti、Mg、Cr、Ga、Cu、Zn及びNbからなる群より選ばれる少なくとも1種の元素を表わす。]
上記の一般式(A)で表される組成の中でも、
(a)1.2≦x≦1.4、1.5≦y≦1.7、z=0
(b)0.9≦x≦1.1、1.9≦y≦2.1、z=0
(c)0.7≦x≦0.9、2.1≦y≦2.3、z=0
の構造が、電池性能のバランスが良好なため特に好ましい。
〔2−2.炭素質材料の物性〕
負極活物質として炭素質材料を用いる場合、以下の物性を有するものであることが望ましい。
炭素質材料の学振法によるX線回折で求めた格子面(002面)のd値(層間距離)が、0.335nm以上であることが好ましく、また、通常0.360nm以下であり、0.350nm以下が好ましく、0.345nm以下がさらに好ましい。また、学振法によるX線回折で求めた炭素質材料の結晶子サイズ(Lc)は、1.0nm以上であることが好ましく、中でも1.5nm以上であることがさらに好ましい。
炭素質材料の体積基準平均粒径は、レーザー回折・散乱法により求めた体積基準の平均粒径(メジアン径)であり、通常1μm以上であり、3μm以上が好ましく、5μm以上がさらに好ましく、7μm以上が特に好ましく、また、通常100μm以下であり、50μm以下が好ましく、40μm以下がより好ましく、30μm以下がさらに好ましく、25μm以下が特に好ましい。
失を招くことになる場合がある。また、上記範囲を上回ると、塗布により電極を作製する際に、不均一な塗面になりやすく、電池製作工程上望ましくない場合がある。
体積基準平均粒径の測定は、界面活性剤であるポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノラウレートの0.2質量%水溶液(約10mL)に炭素粉末を分散させて、レーザー回折・散乱式粒度分布計(堀場製作所社製LA−700)を用いて行なう。該測定で求められるメジアン径を、本発明の炭素質材料の体積基準平均粒径と定義する。
炭素質材料のラマンR値は、アルゴンイオンレーザーラマンスペクトル法を用いて測定した値であり、通常0.01以上であり、0.03以上が好ましく、0.1以上がさらに好ましく、また、通常1.5以下であり、1.2以下が好ましく、1以下がさらに好ましく、0.5以下が特に好ましい。
また、炭素質材料の1580cm−1付近のラマン半値幅は特に制限されないが、通常10cm−1以上であり、15cm−1以上が好ましく、また、通常100cm−1以下であり、80cm−1以下が好ましく、60cm−1以下がさらに好ましく、40cm−1以下が特に好ましい。
・アルゴンイオンレーザー波長 :514.5nm
・試料上のレーザーパワー :15〜25mW
・分解能 :10〜20cm−1
・測定範囲 :1100cm−1〜1730cm−1
・ラマンR値、ラマン半値幅解析:バックグラウンド処理、
・スムージング処理 :単純平均、コンボリューション5ポイント
炭素質材料のBET比表面積は、BET法を用いて測定した比表面積の値であり、通常0.1m2・g−1以上であり、0.7m2・g−1以上が好ましく、1.0m2・g−1以上がさらに好ましく、1.5m2・g−1以上が特に好ましく、また、通常100m2・g−1以下であり、25m2・g−1以下が好ましく、15m2・g−1以下がさらに好ましく、10m2・g−1以下が特に好ましい。
炭素質材料の球形の程度として円形度を測定した場合、以下の範囲に収まることが好ましい。なお、円形度は、「円形度=(粒子投影形状と同じ面積を持つ相当円の周囲長)/(粒子投影形状の実際の周囲長)」で定義され、円形度が1のときに理論的真球となる。
炭素質材料の粒径が3〜40μmの範囲にある粒子の円形度は1に近いほど望ましく、また、0.1以上が好ましく、中でも0.5以上が好ましく、0.8以上がより好ましく、0.85以上がさらに好ましく、0.9以上が特に好ましい。高電流密度充放電特性は、円形度が大きいほど向上する。従って、円形度が上記範囲を下回ると、負極活物質の充填性が低下し、粒子間の抵抗が増大して、短時間高電流密度充放電特性が低下する場合がある。
炭素質材料のタップ密度は、通常0.1g・cm−3以上であり、0.5g・cm−3以上が好ましく、0.7g・cm−3以上がさらに好ましく、1g・cm−3以上が特に好ましく、また、2g・cm−3以下が好ましく、1.8g・cm−3以下がさらに好ましく、1.6g・cm−3以下が特に好ましい。タップ密度が、上記範囲を下回ると、負
極として用いた場合に充填密度が上がり難く、高容量の電池を得ることができない場合がある。また、上記範囲を上回ると、電極中の粒子間の空隙が少なくなり過ぎ、粒子間の導電性が確保され難くなり、好ましい電池特性が得られにくい場合がある。
炭素質材料の配向比は、通常0.005以上であり、0.01以上が好ましく、0.015以上がさらに好ましく、また、通常0.67以下である。配向比が、上記範囲を下回ると、高密度充放電特性が低下する場合がある。なお、上記範囲の上限は、炭素質材料の配向比の理論上限値である。
・ターゲット:Cu(Kα線)グラファイトモノクロメーター
・スリット :
発散スリット=0.5度
受光スリット=0.15mm
散乱スリット=0.5度
・測定範囲及びステップ角度/計測時間:
(110)面:75度≦2θ≦80度 1度/60秒
(004)面:52度≦2θ≦57度 1度/60秒
炭素質材料のアスペクト比は、通常1以上、また、通常10以下であり、8以下が好ましく、5以下がさらに好ましい。アスペクト比が、上記範囲を上回ると、極板化時にスジ引きや、均一な塗布面が得られず、高電流密度充放電特性が低下する場合がある。なお、上記範囲の下限は、炭素質材料のアスペクト比の理論下限値である。
電極の製造は、本発明の効果を著しく損なわない限り、公知のいずれの方法を用いることができる。例えば、負極活物質に、バインダー、溶媒、必要に応じて、増粘剤、導電材、充填材等を加えてスラリーとし、これを集電体に塗布、乾燥した後にプレスすることに
よって形成することができる。
また、合金系材料を用いる場合には、蒸着法、スパッタ法、メッキ法等の手法により、上述の負極活物質を含有する薄膜層(負極活物質層)を形成する方法も用いられる。
負極活物質を保持させる集電体としては、公知のものを任意に用いることができる。負極の集電体としては、例えば、アルミニウム、銅、ニッケル、ステンレス鋼、ニッケルメッキ鋼等の金属材料が挙げられるが、加工し易さとコストの点から特に銅が好ましい。
集電体の厚さは、通常1μm以上、好ましくは5μm以上であり、通常100μm以下、好ましくは50μm以下である。負極集電体の厚さが厚過ぎると、電池全体の容量が低下し過ぎることがあり、逆に薄過ぎると取り扱いが困難になることがあるためである。
集電体と負極活物質層の厚さの比は特に制限されないが、「(非水系電解液注液直前の片面の負極活物質層厚さ)/(集電体の厚さ)」の値が、150以下が好ましく、20以下がさらに好ましく、10以下が特に好ましく、また、0.1以上が好ましく、0.4以上がさらに好ましく、1以上が特に好ましい。集電体と負極活物質層の厚さの比が、上記範囲を上回ると、高電流密度充放電時に集電体がジュール熱による発熱を生じる場合がある。また、上記範囲を下回ると、負極活物質に対する集電体の体積比が増加し、電池の容量が減少する場合がある。
負極活物質を結着するバインダーとしては、非水系電解液や電極製造時に用いる溶媒に対して安定な材料であれば、特に制限されない。
具体例としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリメチルメタクリレート、芳香族ポリアミド、ポリイミド、セルロース、ニトロセルロース等の樹脂系高分子;SBR(スチレン・ブタジエンゴム)、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、フッ素ゴム、NBR(アクリロニトリル・ブタジエンゴム)、エチレン・プロピレンゴム等のゴム状高分子;スチレン・ブタジエン・スチレンブロック共重合体又はその水素添加物;EPDM(エチレン・プロピレン・ジエン三元共重合体)、スチレン・エチレン・ブタジエン・スチレン共重合体、スチレン・イソプレン・スチレンブロック共重合体又はその水素添加物等の熱可塑性エラストマー状高分子;シンジオタクチック−1,2−ポリブタジエン、ポリ酢酸ビニル、エチレン・酢酸ビニル共重合体、プロピレン・α−オレフィン共重合体等の軟質樹脂状高分子;ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン、フッ素化ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン・エチレン共重合体等のフッ素系高分子;アルカリ金属イオン(特にリチウムイオン)のイオン伝導性を有する高分子組成物等が挙げられる。これらは、1種を単独で用いても、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
ある。また、上記範囲を下回ると、負極電極の強度低下を招く場合がある。
スラリーを形成するための溶媒としては、負極活物質、バインダー、並びに必要に応じて使用される増粘剤及び導電材を溶解又は分散することが可能な溶媒であれば、その種類に特に制限はなく、水系溶媒と有機系溶媒のどちらを用いてもよい。
水系溶媒としては、水、アルコール等が挙げられ、有機系溶媒としてはN−メチルピロリドン(NMP)、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、酢酸メチル、アクリル酸メチル、ジエチルトリアミン、N,N−ジメチルアミノプロピルアミン、テトラヒドロフラン(THF)、トルエン、アセトン、ジエチルエーテル、ジメチルアセトアミド、ヘキサメチルホスファルアミド、ジメチルスルホキシド、ベンゼン、キシレン、キノリン、ピリジン、メチルナフタレン、ヘキサン等が挙げられる。
特に水系溶媒を用いる場合、増粘剤に併せて分散剤等を含有させ、SBR等のラテックスを用いてスラリー化することが好ましい。なお、これらの溶媒は、1種を単独で用いても、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
増粘剤は、通常、スラリーの粘度を調製するために使用される。増粘剤としては、特に制限されないが、具体的には、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、エチルセルロース、ポリビニルアルコール、酸化スターチ、リン酸化スターチ、カゼイン及びこれらの塩等が挙げられる。これらは、1種を単独で用いても、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
負極活物質に対する増粘剤の割合が、上記範囲を下回ると、著しく塗布性が低下する場合がある。また、上記範囲を上回ると、負極活物質層に占める負極活物質の割合が低下し、電池の容量が低下する問題や負極活物質間の抵抗が増大する場合がある。
負極活物質を電極化した際の電極構造は特に制限されないが、集電体上に存在している負極活物質の密度は、1g・cm−3以上が好ましく、1.2g・cm−3以上がさらに好ましく、1.3g・cm−3以上が特に好ましく、また、2.2g・cm−3以下が好ましく、2.1g・cm−3以下がより好ましく、2.0g・cm−3以下がさらに好ましく、1.9g・cm−3以下が特に好ましい。集電体上に存在している負極活物質の密度が、上記範囲を上回ると、負極活物質粒子が破壊され、初期不可逆容量の増加や、集電体/負極活物質界面付近への非水系電解液の浸透性低下による高電流密度充放電特性悪化を招く場合がある。また、上記範囲を下回ると、負極活物質間の導電性が低下し、電池抵抗が増大し、単位容積当たりの容量が低下する場合がある。
負極板の厚さは用いられる正極板に合わせて設計されるものであり、特に制限されないが、芯材の金属箔厚さを差し引いた合材層の厚さは通常15μm以上、好ましくは20μm以上、より好ましくは30μm以上、また、通常300μm以下、好ましくは280μm以下、より好ましくは250μm以下が望ましい。
また、上記負極板の表面に、これとは異なる組成の物質が付着したものを用いてもよい。表面付着物質としては酸化アルミニウム、酸化ケイ素、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化ホウ素、酸化アンチモン、酸化ビスマス等の酸化物、硫酸リチウム、硫酸ナトリウム、硫酸カリウム、硫酸マグネシウム、硫酸カルシウム、硫酸アルミニウム等の硫酸塩、炭酸リチウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム等の炭酸塩等が挙げられる。
正極と負極との間には、短絡を防止するために、通常はセパレータを介在させる。この場合、本発明の非水系電解液は、通常はこのセパレータに含浸させて用いる。
セパレータの材料や形状については特に制限されず、本発明の効果を著しく損なわない限り、公知のものを任意に採用することができる。中でも、本発明の非水系電解液に対し安定な材料で形成された、樹脂、ガラス繊維、無機物等が用いられ、保液性に優れた多孔性シート又は不織布状の形態の物等を用いるのが好ましい。
一方、無機物の材料としては、例えば、アルミナや二酸化ケイ素等の酸化物、窒化アルミや窒化ケイ素等の窒化物、硫酸バリウムや硫酸カルシウム等の硫酸塩が用いられ、粒子形状もしくは繊維形状のものが用いられる。
〔4−1.電極群〕
電極群は、上記の正極板と負極板とを上記のセパレータを介してなる積層構造のもの、及び上記の正極板と負極板とを上記のセパレータを介して渦巻き状に捲回した構造のもののいずれでもよい。電極群の体積が電池内容積に占める割合(以下、電極群占有率と称する)は、通常40%以上であり、50%以上が好ましく、また、通常90%以下であり、80%以下が好ましい。
集電構造は、特に制限されないが、本発明の非水系電解液による高電流密度の充放電特性の向上をより効果的に実現するには、配線部分や接合部分の抵抗を低減する構造にすることが好ましい。この様に内部抵抗を低減させた場合、本発明の非水系電解液を使用した効果は特に良好に発揮される。
外装ケースの材質は用いられる非水系電解液に対して安定な物質であれば特に制限されない。具体的には、ニッケルめっき鋼板、ステンレス、アルミニウム又はアルミニウム合金、マグネシウム合金等の金属類、又は、樹脂とアルミ箔との積層フィルム(ラミネートフィルム)が用いられる。軽量化の観点から、アルミニウム又はアルミニウム合金の金属、ラミネートフィルムが好適に用いられる。
保護素子として、異常発熱や過大電流が流れた時に抵抗が増大するPTC(Positive Temperature Coefficient)、温度ヒューズ、サーミスター、異常発熱時に電池内部圧力や内部温度の急激な上昇により回路に流れる電流を遮断する弁(電流遮断弁)等を使用することができる。上記保護素子は高電流の通常使用で作動しない条件のものを選択することが好ましく、保護素子がなくても異常発熱や熱暴走に至らない設計にすることがより好ましい。
本発明の非水系電解液二次電池は、通常、上記の非水系電解液、負極、正極、セパレータ等を外装体内に収納して構成される。この外装体は、特に制限されず、本発明の効果を著しく損なわない限り、公知のものを任意に採用することができる。具体的に、外装体の材質は任意であるが、通常は、例えばニッケルメッキを施した鉄、ステンレス、アルミニウム又はその合金、ニッケル、チタン等が用いられる。
また、外装体の形状も任意であり、例えば円筒型、角形、ラミネート型、コイン型、大型等のいずれであってもよい。
[正極の製造]
正極活物質であるリチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物(LiNi1/3Co1/3Mn1/3O2)94質量部とポリフッ化ビニリデン(以下適宜、「PVdF」という)3質量部とアセチレンブラック3質量部とを混合し、N−メチルピロリドンを加えてスラリー状にしたものを、アルミニウムからなる集電体の両面に塗布・乾燥して正極を得た。
負極活物質であるグラファイト粉末94質量部とPVdF6質量部とを混合し、N−メチルピロリドンを加えスラリー状にしたものを、銅からなる集電体の片面に塗布・乾燥して負極を得た。
[リチウム二次電池の製造]
上記の正極、負極、及びポリエチレン製セパレータを、負極、セパレータ、正極、セパレータ、負極の順に積層した。こうして得られた電池要素を筒状のアルミニウムラミネートフィルムで包み込み、後述する電解液を注入した後で真空封止し、シート状の非水系電解液二次電池を作製した。更に、電極間の密着性を高めるために、ガラス板でシート状電池を挟んで加圧した。
25℃の恒温槽中、0.2Cに相当する電流で4.1Vまで定電流−定電圧充電(以下適宜、「CCCV充電」という)した後、0.2Cで3Vまで放電した。これを3回繰り返し初期のフォーメーションを行なった。次いで、0.2Cで4.4VまでCCCV充電した後、0.2Cで3Vまで再度放電し、初期放電容量を求めた。なお充電時のカット電流は0.05Cとした。
ここで、1Cとは電池の基準容量を1時間で放電する電流値を表し、例えば、0.2Cとはその1/5の電流値を表す。
容量評価の終了した電池を25℃の恒温槽中、0.2Cで4.4Vまで充電した後に、
85℃の高温槽に3日間保存した。その後、電池を25℃まで冷却後、直ちにエタノール浴に漬けて浮力を測定(アルキメデスの原理)することにより発生したガス量を求めた。
容量評価の終了した電池を45℃の恒温槽に入れ、0.5Cで4.4VまでCCCV充電し、0.5Cで3Vまで定電流放電する充放電サイクルを100回繰り返した。100サイクル目の放電容量維持率を下記の計算式より求めた。
[数1]
100サイクル目の容量回復率(%)=〔100回目の放電容量(mAh/g)/1回目の放電容量(mAh/g)〕×100
LiPF6、フルオロエチレンカーボネート、エチレンカーボネート、ジメチルカーボ
ネート、エチルメチルカーボネート、1,3−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン及び1,3−プロパンスルトンを質量比で16.5/20/10/44/7/0.5/2となるように混合して非水系電解液とした。得られた非水系電解液を用いて、上述した方法にしたがってリチウム二次電池を作製し、容量評価試験、保存特性評価試験を行なった。結果を表1に示す。
LiPF6、フルオロエチレンカーボネート、エチレンカーボネート、ジメチルカーボ
ネート、エチルメチルカーボネート、1,3−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン及び1,3−プロパンスルトンを質量比で16.5/20/10/44/7/1.5/1となるように混合して非水系電解液とした。得られた非水系電解液を用いて、実施例1と同様に二次電池を作製し、評価試験を行なった。結果を表1に示す。
1,3−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンの代わりにテトラメチレンジイソシアネートを用いた以外は実施例1と同様に二次電池を作製し、評価を行なった。結果を表1に示す。
<実施例4>
1,3−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンの代わりにヘキサメチレンジイソシアネートを用いた以外は実施例1と同様に二次電池を作製し、評価を行なった。結果を表1に示す。
1,3−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンの代わりにオクタメチレンジイソシアネートを用いた以外は実施例1と同様に二次電池を作製し、評価を行なった。結果を表1に示す。
<実施例6>
1,3−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンの代わりにジシクロヘキシルメタン−4,4'−ジイソシアナートを用いた以外は実施例1と同様に二次電池を作製し、評
価を行なった。結果を表1に示す。
LiPF6、フルオロエチレンカーボネート、エチレンカーボネート、ジメチルカーボ
ネート、エチルメチルカーボネート、1,3−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン及び1,3−プロパンスルトンを質量比で16.5/10/19/45/7/0.5/2となるように混合して非水系電解液とした。得られた非水系電解液を用いて、実施例1と同様に二次電池を作製し、評価試験を行なった。結果を表1に示す。
LiPF6、フルオロエチレンカーボネート、エチレンカーボネート、ジメチルカーボ
ネート、エチルメチルカーボネート、1,3−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン及び1,3−プロパンスルトンを質量比で16.5/30/5/40/6/0.5/2となるように混合して非水系電解液とした。得られた非水系電解液を用いて、実施例1と同様に二次電池を作製し、評価試験を行なった。結果を表1に示す。
1,3−プロパンスルトンの代わりにエチレンサルファイトを用いた以外は実施例1と同様に二次電池を作製し、評価を行なった。結果を表1に示す。
<実施例10>
1,3−プロパンスルトンの代わりに1,3−プロペンスルトンを用いた以外は実施例1と同様に二次電池を作製し、評価を行なった。結果を表1に示す。
LiPF6、フルオロエチレンカーボネート、エチレンカーボネート、プロピオン酸メ
チル、1,3−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン及び1,3−プロパンスルトンを質量比で17.5/22/10/48/0.5/2となるように混合して非水系電解液とした。得られた非水系電解液を用いて、実施例1と同様に二次電池を作製し、評価試験を行なった。結果を表1に示す。
LiPF6、フルオロエチレンカーボネート、エチレンカーボネート、ジメチルカーボ
ネート、プロピオン酸エチル、1,3−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン及び1,3−プロパンスルトンを質量比で17.5/22/10/8/40/0.5/2となるように混合して非水系電解液とした。得られた非水系電解液を用いて、実施例1と同様に二次電池を作製し、評価試験を行なった。結果を表1に示す。
フルオロエチレンカーボネートの代わりに1,2−ジフルオロエチレンカーボネートを用いた以外は実施例1と同様に二次電池を作製し、評価を行なった。結果を表1に示す。
<実施例14>
LiPF6、フルオロエチレンカーボネート、エチレンカーボネート、ジメチルカーボ
ネート、エチルメチルカーボネート、ヘキサメチレンジイソシアネート及び1,3−プロパンスルトンを質量比で16.5/3/27/44/7/0.5/2となるように混合して非水系電解液とした。得られた非水系電解液を用いて、実施例1と同様に二次電池を作製し、評価試験を行なった。結果を表1に示す。
1,3−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンを用いることなく、LiPF6、
フルオロエチレンカーボネート、エチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネート及び1,3−プロパンスルトンを質量比で16.5/20/10/44.5/7/2となるように混合して非水系電解液とした。得られた非水系電解液を用いて、実施例1と同様に二次電池を作製し、評価試験を行なった。結果を表1に示す。
1,3−プロパンスルトンを用いることなく、LiPF6、フルオロエチレンカーボネ
ート、エチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネート及びヘキサメチレンジイソシアネートを質量比で16.5/20/10/46/7/0.5とな
るように混合して非水系電解液とした。得られた非水系電解液を用いて、実施例1と同様に二次電池を作製し、評価試験を行なった。結果を表1に示す。
LiPF6、フルオロエチレンカーボネート、エチレンカーボネート、ジメチルカーボ
ネート、エチルメチルカーボネート、ヘキサメチレンジイソシアネート及び無水スルホ安息香酸を質量比で16.5/3/27/44/7/0.5/2となるように混合して非水系電解液とした。得られた非水系電解液を用いて、実施例1と同様に二次電池を作製し、評価試験を行なった。結果を表1に示す。
Claims (4)
- リチウム塩が非水系有機溶媒に溶解されてなる非水系電解液であって、該非水系有機溶媒は、フッ素置換環状カーボネートを、該非水系電解液の全体の質量に対して0.01〜45質量%含有し、さらに該非水系電解液が、1,3−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン及びジシクロヘキシルメタン−4,4’−ジイソシアネートのうち少なくとも一方のシクロアルカン環含有ジイソシアネート類を、該非水電解液の全体の質量に対して0.001
〜5質量%含有し、スルホキシド類、サルファイト類、スルホン類、スルホネート類、ス
ルトン類及びスルフェート類からなる群から選ばれる一種以上の硫黄化合物を、該非水電解液の全体の質量に対して0.001〜10質量%含有することを特徴とする非水系電解液。 - 非水系有機溶媒がさらに鎖状カルボン酸エステルを含有することを特徴とする請求項1又は2に記載の非水系電解液。
- リチウムイオンを吸蔵・放出可能な負極及び正極、並びに非水系電解液を含む非水系電解液電池であって、該非水系電解液が請求項1ないし3のいずれか1項に記載の非水系電解液であることを特徴とするリチウム二次電池。
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