以下に説明する本発明が適用された実施の形態に記載の電力変換装置およびこの装置を使用したシステムは、製品化のために解決することが望ましい色々な課題を解決している。これら実施の形態が解決している色々な課題の一つに、上述の発明が解決しようとする課題の欄に記載した小型化、高出力化に係る課題があり、また上述の発明の効果の欄に記載した小型化、高出力化の向上の効果に止まらず、上記課題や効果以外に色々な課題を解決し、色々な効果を達成することができる。
さらに、上述の発明が解決しようとする課題の欄に記載した小型化、高出力化の課題、また上述の発明の効果の欄に記載した小型化、高出力化の効果を達成する構成についても、上述の課題を解決するための手段の欄に記載した構成だけで無く、他の構成によっても上記課題が解決でき、上記効果を得ることができる。
すなわち小型化、高出力化の課題や効果に関して上述した構成以外の構成によって、大きくは小型化、高出力化に関する課題解決や効果達成につながるが、より具体的に見れば異なっている観点において課題が解決され、効果が得られている。以下その代表的なものを幾つか列挙する。さらにそれ以外については実施の形態の説明の中で述べる。
本発明の目的を解決するための電流変換装置の構成の1つは次の通りである。
パワー半導体素子と、前記パワー半導体素子と電気的に接続される導体板と、第1放熱部を有するとともに前記導体板を挟んで前記第1放熱部と対向する第2放熱部を有する金属製ケースと、を備え、前記第1放熱部との間に表面側流路の空間を形成するように前記第1放熱部と対向した位置に配置されるとともに前記金属製ケースの外面に接合される表面側カバーと、前記第2放熱部との間に裏面側流路の空間を形成するように前記第2放熱部と対向した位置に配置されるとともに前記金属製ケースの外面に接合される裏面側カバーと、前記金属製ケースの一辺側に前記表面側流路及び前記裏面側流路と繋がる入口部と、前記金属製ケースの前記一辺側に前記表面側流路及び前記裏面側流路と繋がる出口部と、を有するパワー半導体モジュール。前記パワー半導体モジュールを用いた電力変換装置。パワー半導体モジュール放熱面をカバーで覆うことで形成された流路を冷媒が流れる、冷媒流路一体型のパワー半導体モジュールとなることで、冷媒流路を含めた構造の小型化が可能となり、さらに、電力変換装置全体の設計自由度の向上し、電力変換装置全体レイアウト最適化によりさらに全体構造の小型を達成することができる。本発明のパワー半導体モジュールは、第一放熱部と第二放熱部を有する略直方体の形状をしており、この放熱部を冷媒により冷却するための流路入口及び出口を略直方体の一辺に集約する構成とすることで、電力変換装置の冷媒流路との連結構造が小型化、簡素化することができる。
電力変換装置の小型化の課題を解決するための構成を次に記載する。直流電流を平滑化するコンデンサ回路部と、冷却冷媒を流す流路を形成する流路形成体と、前記コンデンサ回路部から出力される直流電流が供給されかつ3相の交流電流をモータに供給する、本発明のパワー半導体モジュールと、前記コンデンサ回路部と前記流路形成体と前記パワー半導体モジュールを収納するケースと、前記コンデンサ回路部及び前記直流端子に対して電気的に直列または並列に接続される電気回路素子と、を備え、前記流路形成体は略直方体の平板の形状で、前記パワー半導体モジュールと連結する冷媒出入口および、前記コンデンサの下面から冷却が可能な、コンデンサ搭載部を有している。前記パワー半導体モジュールは、第1相の交流電流を出力する第1パワー半導体モジュールと第2相の交流電流を出力する第2パワー半導体モジュールと第3相の交流電流を出力する第3パワー半導体モジュールを含んで構成され、前記第1パワー半導体モジュール及び前記第2パワー半導体モジュールは前記流路形成体に隣接して接合され、前記第3パワー半導体モジュールは前記コンデンサ回路部を介して前記第1パワー半導体モジュールと向かい合うように前記流路形成体に固定され、前記電気回路素子は、前記コンデンサ回路部を介して前記第2パワー半導体モジュールと向かい合う位置に配置される。この構成により、相毎に設けられたパワー半導体モジュールをコンデンサ回路部の一方の側面に2つ、他方の側面に1つ設けるように配置しても、パワー半導体モジュールとコンデンサ回路部とが整然と構成されかつ冷媒流路の冷却性能を十分に引き出すことできる。
以下、図を参照して本発明を実施するための形態について説明する。図1は、ハイブリッド自動車(以下「HEV」と記述する)の制御ブロックを示す図である。エンジンEGNおよびモータジェネレータMG1は車両の走行用トルクを発生する。また、モータジェネレータMG1は回転トルクを発生するだけでなく、モータジェネレータMG1に外部から加えられる機械エネルギーを電力に変換する機能を有する。
モータジェネレータMG1は、例えば同期機あるいは誘導機であり、上述のごとく、運転方法によりモータとしても発電機としても動作する。モータジェネレータMG1を自動車に搭載する場合には、小型で高出力を得ることが望ましく、ネオジウムなどの磁石を使用した永久磁石型の同期電動機が適している。また、永久磁石型の同期電動機は誘導電動機に比べて回転子の発熱が少なく、この観点でも自動車用として優れている。
エンジンEGNの出力側の出力トルクは動力分配機構TSMを介してモータジェネレータMG1に伝達され、動力分配機構TSMからの回転トルクあるいはモータジェネレータMG1が発生する回転トルクは、トランスミッションTMおよびデファレンシャルギアDEFを介して車輪に伝達される。一方、回生制動の運転時には、車輪から回転トルクがモータジェネレータMG1に伝達され、供給されてきた回転トルクに基づいて交流電力を発生する。発生した交流電力は後述するように電力変換装置200により直流電力に変換され、高電圧用のバッテリ136を充電し、充電された電力は再び走行エネルギーとして使用される。
次に電力変換装置200について説明する。インバータ回路140は、バッテリ136と直流コネクタ138を介して電気的に接続されており、バッテリ136とインバータ回路140との相互において電力の授受が行われる。モータジェネレータMG1をモータとして動作させる場合には、インバータ回路140は直流コネクタ138を介してバッテリ136から供給された直流電力に基づき交流電力を発生し、交流コネクタ188を介してモータジェネレータMG1に供給する。モータジェネレータMG1とインバータ回路140からなる構成は第1電動発電ユニットとして動作する。
なお、本実施形態では、バッテリ136の電力によって第1電動発電ユニットを電動ユニットとして作動させることにより、モータジェネレータMG1の動力のみによって車両の駆動ができる。さらに、本実施形態では、第1電動発電ユニットを発電ユニットとしてエンジンEGNの動力或いは車輪からの動力によって作動させて発電させることにより、バッテリ136の充電ができる。
なお、電力変換装置200は、インバータ回路140に供給される直流電力を平滑化するためのコンデンサモジュール500を備えている。
電力変換装置200は、上位の制御装置から指令を受けたりあるいは上位の制御装置に状態を表すデータを送信したりするための通信用のコネクタ21を備えている。電力変換装置200は、コネクタ21から入力される指令に基づいて制御回路172でモータジェネレータMG1の制御量を演算し、さらにモータとして運転するか発電機として運転するかを演算し、演算結果に基づいて制御パルスを発生し、その制御パルスをドライバ回路174へ供給する。ドライバ回路174は、供給された制御パルスに基づいて、インバータ回路140を制御するための駆動パルスを発生する。
次に、図2を用いてインバータ回路140の電気回路の構成を説明する。なお、以下で半導体素子として絶縁ゲート型バイポーラトランジスタを使用しており、以下略してIGBTと記す。上アームとして動作するIGBT328及びダイオード156と、下アームとして動作するIGBT330及びダイオード166とで、上下アームの直列回路150が構成される。インバータ回路140は、この直列回路150を、出力しようとする交流電力のU相、V相、W相の3相に対応して備えている。
これらの3相は、この実施の形態ではモータジェネレータMG1の電機子巻線の3相の各相巻線に対応している。3相のそれぞれの上下アームの直列回路150は、直列回路の中点部分である中間電極169から交流電流を出力する。この中間電極169は、交流端子159及び交流端子188を通して、モータジェネレータMG1への交流電力線である交流バスバー802と接続される。
上アームのIGBT328のコレクタ電極153は、正極端子157を介してコンデンサモジュール500の正極側のコンデンサ端子506に電気的に接続されている。また、下アームのIGBT330のエミッタ電極は、負極端子158を介してコンデンサモジュール500の負極側のコンデンサ端子504に電気的に接続されている。
上述のように、制御回路172は上位の制御装置からコネクタ21を介して制御指令を受け、これに基づいてインバータ回路140を構成する各相の直列回路150の上アームあるいは下アームを構成するIGBT328やIGBT330を制御するための制御信号である制御パルスを発生し、ドライバ回路174に供給する。
ドライバ回路174は、上記制御パルスに基づき、各相の直列回路150の上アームあるいは下アームを構成するIGBT328やIGBT330を制御するための駆動パルスを各相のIGBT328やIGBT330に供給する。IGBT328やIGBT330は、ドライバ回路174からの駆動パルスに基づき、導通あるいは遮断動作を行い、バッテリ136から供給された直流電力を三相交流電力に変換し、この変換された電力はモータジェネレータMG1に供給される。
IGBT328は、コレクタ電極153と、信号用エミッタ電極155と、ゲート電極154を備えている。また、IGBT330は、コレクタ電極163と、信号用のエミッタ電極165と、ゲート電極164を備えている。ダイオード156が、コレクタ電極153とエミッタ電極155との間に電気的に接続されている。また、ダイオード166が、コレクタ電極163とエミッタ電極165との間に電気的に接続されている。
スイッチング用パワー半導体素子としては金属酸化物半導体型電界効果トランジスタ(以下略してMOSFETと記す)を用いてもよい、この場合はダイオード156やダイオード166は不要となる。スイッチング用パワー半導体素子としては、IGBTは直流電圧が比較的高い場合に適していて、MOSFETは直流電圧が比較的低い場合に適している。
コンデンサモジュール500は、正極側のコンデンサ端子506と負極側のコンデンサ端子504と正極側の電源端子509と負極側の電源端子508とを備えている。バッテリ136からの高電圧の直流電力は、直流コネクタ138を介して、正極側の電源端子509や負極側の電源端子508に供給され、コンデンサモジュール500の正極側のコンデンサ端子506および負極側のコンデンサ端子504から、インバータ回路140へ供給される。
一方、交流電力からインバータ回路140によって変換された直流電力は、正極側のコンデンサ端子506や負極側のコンデンサ端子504からコンデンサモジュール500に供給され、正極側の電源端子509や負極側の電源端子508から直流コネクタ138を介してバッテリ136に供給され、バッテリ136に蓄積される。
制御回路172は、IGBT328及びIGBT330のスイッチングタイミングを演算処理するためのマイクロコンピュータ(以下、「マイコン」と記述する)を備えている。マイコンへの入力情報としては、モータジェネレータMG1に対して要求される目標トルク値、直列回路150からモータジェネレータMG1に供給される電流値、及びモータジェネレータMG1の回転子の磁極位置がある。
目標トルク値は、不図示の上位の制御装置から出力された指令信号に基づくものである。電流値は、電流センサ180による検出信号に基づいて検出されたものである。磁極位置は、モータジェネレータMG1に設けられたレゾルバなどの回転磁極センサ(不図示)から出力された検出信号に基づいて検出されたものである。本実施形態では、電流センサ180は3相の電流値を検出する場合を例に挙げているが、2相分の電流値を検出するようにし、演算により3相分の電流を求めても良い。
制御回路172内のマイコンは、目標トルク値に基づいてモータジェネレータMG1のd軸,q軸の電流指令値を演算し、この演算されたd軸,q軸の電流指令値と、検出されたd軸,q軸の電流値との差分に基づいてd軸,q軸の電圧指令値を演算し、この演算されたd軸,q軸の電圧指令値を、検出された磁極位置に基づいてU相、V相、W相の電圧指令値に変換する。そして、マイコンは、U相、V相、W相の電圧指令値に基づく基本波(正弦波)と搬送波(三角波)との比較に基づいてパルス状の変調波を生成し、この生成された変調波をPWM(パルス幅変調)信号としてドライバ回路174に出力する。
ドライバ回路174は、下アームを駆動する場合、PWM信号を増幅したドライブ信号を、対応する下アームのIGBT330のゲート電極に出力する。また、ドライバ回路174は、上アームを駆動する場合、PWM信号の基準電位のレベルを上アームの基準電位のレベルにシフトしてからPWM信号を増幅し、これをドライブ信号として、対応する上アームのIGBT328のゲート電極にそれぞれ出力する。
また、制御回路172内のマイコンは、異常検知(過電流、過電圧、過温度など)を行い、直列回路150を保護している。このため、制御回路172にはセンシング情報が入力されている。例えば、各アームの信号用のエミッタ電極155及び信号用のエミッタ電極165からは各IGBT328とIGBT330のエミッタ電極に流れる電流の情報が、対応する駆動部(IC)に入力されている。これにより、各駆動部(IC)は過電流検知を行い、過電流が検知された場合には対応するIGBT328,IGBT330のスイッチング動作を停止させ、対応するIGBT328,IGBT328、IGBT330を過電流から保護する。
直列回路150に設けられた温度センサ(不図示)からは直列回路150の温度の情報がマイコンに入力されている。また、マイコンには直列回路150の直流正極側の電圧の情報が入力されている。マイコンは、それらの情報に基づいて過温度検知及び過電圧検知を行い、過温度或いは過電圧が検知された場合には全てのIGBT328,IGBT330のスイッチング動作を停止させる。
図3は、電力変換装置200の外観斜視図である。図4は、電力変換装置200のケース10の内部構成を説明するために、理解を助けるために電力変換装置200を分解した斜視図である。
冷媒を流入するための入口配管13と冷媒を流出するための出口配管14が、ケース10の同一側面上に配置される。ケース10の下面には、開口16が形成される。流路形成体12は、開口16を塞ぐようにケース10の下面に取り付けられる。入口配管13からの流路は、流路形成体12の冷媒流入口486aに連結され、かつ、出口配管14から繋がる流路は、流路形成体12の冷媒流出口486bに連結されている。流路形成体12には、開口部487a〜487fが形成されている。開口部487a〜487fは、挿入されたパワー半導体モジュール300a〜300cとそれぞれ連結される。入口配管13より流入した冷媒は、流路形成体12に形成された開口部487a〜487fをそれぞれ経由して、パワー半導体モジュール300a〜300c内と、冷媒流出口486bを通り最終的に出口配管14より流出する。流路形成体12とパワー半導体モジュール300a〜300cとの連結方法及び冷媒経路については図10において後述する。
流路形成体12上部には、コンデンサモジュール500を収納するための収納空間405が形成される。これにより、流路形成体12内に流れる冷媒によってコンデンサモジュール500は冷却される。
またコンデンサモジュール500の外側面に沿ってパワー半導体モジュールが載置されているので、コンデンサモジュール500とパワー半導体モジュール300との配置が整然と整い、全体がより小型となる。流路形成体12に固定されるパワー半導体モジュール300a、300b、300cとの距離が略一定となるので、平滑コンデンサとパワー半導体モジュール回路との回路定数が3相の各層においてバランスし易くなり、スパイク電圧を低減し易い回路構成となる。本実施の形態では、冷媒としては水が最も適している。しかし、水以外であっても利用できるので、以下冷媒と記す。
コンデンサモジュール500の上方には、バスバーアッセンブリ800が配置される。バスバーアッセンブリ800は、交流バスバーや保持部材を備えており、電流センサ180を保持している。
流路形成体12の主構造はアルミ材の鋳造で作ることにより、冷却効果に加え機械的強度を強くする効果がある。さらに流路形成体12とケース10を同一のアルミ材の鋳造で作ることにより、機械的強度を強くする効果がある。また、電力変換装置12全体の熱伝導が良くなり冷却効率が向上する。
ドライバ回路基板22は、バスバーアッセンブリ800の上方に配置される。またドライバ回路基板22と制御回路基板20の間には金属ベース板11が配置される。
金属ベース板11は、ケース10に固定される。当該金属ベース板11は、ドライバ回路基板22及び制御回路基板20に搭載される回路群の電磁シールドの機能を奏すると共にドライバ回路基板22と制御回路基板20とが発生する熱を逃がし、冷却する作用を有している。
さらに制御回路基板20の機械的な共振周波数を高める作用を奏する。すなわち金属ベース板11に制御回路基板20を固定するためのねじ止め部を短い間隔で配置することが可能となり、機械的な振動が発生した場合の支持点間の距離を短くでき、共振周波数を高くできる。エンジン等から伝わる振動周波数に対して制御回路基板20の共振周波数を高くできるので、振動の影響を受け難く、信頼性が向上する。
蓋8は、金属ベース板11に固定されて、制御回路基板20を外部からの電磁ノイズから保護する。
本実施形態に係るケース10は、は略直方体の形状を為しているが、ケース10の一側面側から突出収納部10aが形成されている。当該突出収納部10aには、DCDCコンバータから延ばされる端子や、直流側のバスバーアッセンブリ900や、抵抗器450が収納される。ここで抵抗器450は、コンデンサモジュール500のコンデンサ素子に蓄えられた電荷を放電するための抵抗素子である。このようにバッテリ136とコンデンサモジュール500との間の電気回路部品を突出収納部10aに集約しているため、配線の複雑化を抑制することができ、装置全体の小型化に寄与することができる。
なお、蓋18は、DCDCコンバータから延ばされる端子を接続するための作業用の窓17を塞ぐための部材である。
このように、電力変換装置200の底部に流路形成体12を配置し、次にコンデンサモジュール500,バスバーアッセンブリ800,基板等の必要な部品を固定する作業を上から順次行えるように構成されており、生産性と信頼性が向上する。
図5乃至図9を用いてインバータ回路140に使用されるパワー半導体モジュール300a〜300cの詳細構成を説明する。さらに図10を用いて、パワー半導体モジュール300と流路形成体12およびケースの連結構造および、冷媒の流れを説明する。上記パワー半導体モジュール300a〜300cはいずれも同じ構造であり、代表してパワー半導体モジュール300aの構造を説明する。尚、図5乃至図9において信号端子325Uは、図2に開示したゲート電極154および信号用エミッタ電極155に対応し、信号端子325Lは、図2に開示したゲート電極164およびエミッタ電極165に対応する。また直流正極端子315Bは、図2に開示した正極端子157と同一のものであり、直流負極端子319Bは、図2に開示した負極端子158と同一のものである。また交流端子320Bは、図2に開示した交流端子159と同じものである。
図5は、モジュール回路部301の組立工程を説明するための図である。
図6は、モジュール回路部301と補助モジュール配線部601を、接続部370で接合した状態の斜視図である。
図7は、図6に示す状態に、第一封止樹脂348及び配線絶縁部608を形成したパワー半導体モジュール300aを示す図である。図7(a)は斜視図であり、図7(b)は断面Dで切断して方向Eから見たときの断面図である。
図8は、図7に示す状態にさらに、モジュールケース304を取り付けたパワー半導体モジュール300aを示す図である。図8(a)は斜視図であり、図8(b)は図7(b)と同様に断面Dで切断して方向Eから見たときの断面図である。
図9は、図8に示す状態にさらに第二封止樹脂351及び表面側カバー460a、裏面側カバー460bを形成したパワー半導体モジュール300aを示す図である。図9(a)は斜視図であり、図9(b)は図7(b)、図8(b)と同様に断面Dで切断して方向Eから見たときの断面図である。図9(c)は断面Iで切断して方向Jから見たときの断面図である。図9(d)は図9(c)に示すフィン勘合部307aの拡大図である。
図5に示すように、直流正極側の導体板315および交流出力側の導体板320と、素子側信号接続端子327Uおよび327Lとは、共通のタイバー372に繋がれた状態で、これらが略同一平面状の配置となるように一体的に加工される。導体板315には、上アーム側のIGBT328のコレクタ電極と上アーム側のダイオード156のカソード電極が固着される。導体板320には、下アーム側のIGBT330のコレクタ電極と下アーム側のダイオード166のカソード電極が固着される。IGBT328,330およびダイオード155,166の上には、導体板318と導体板319が略同一平面状に配置される。
導体板318には、上アーム側のIGBT328のエミッタ電極と上アーム側のダイオード156のアノード電極が固着される。導体板319には、下アーム側のIGBT330のエミッタ電極と下アーム側のダイオード166のアノード電極が固着される。各パワー半導体素子は、各導体板に設けられた素子固着部322に、金属接合材160を介してそれぞれ固着される。金属接合材160は、例えばはんだ材や銀シート及び微細金属粒子を含んだ低温焼結接合材、等である。
各パワー半導体素子は板状の扁平構造であり、当該パワー半導体素子の各電極は表裏面に形成されている。
図5に示されるように、パワー半導体素子の各電極は、導体板315と導体板318、または導体板320と導体板319によって挟まれる。つまり、導体板315と導体板318は、IGBT328及びダイオード156を介して略平行に対向した積層配置となる。同様に、導体板320と導体板319は、IGBT330及びダイオード166を介して略平行に対向した積層配置となる。
また、導体板320と導体板318は中間電極329を介して接続されている。この接続により上アーム回路と下アーム回路が電気的に接続され、上下アーム直列回路が形成される。上述したように、導体板315と導体板318の間にIGBT328及びダイオード156を挟み込むと共に、導体板320と導体板319の間にIGBT330及びダイオード166を挟み込み、導体板320と導体板318を中間電極329を介して接続する。その後、IGBT328の制御電極328Aと素子側信号接続端子327Uとをボンディングワイヤ371により接続すると共に、IGBT330の制御電極330Aと素子側信号接続端子327Lとをボンディングワイヤ371により接続する。
図6に示されるように、接続部370の補助モジュール配線部601側には、補助モジュール側直流正極接続端子315C、補助モジュール側直流負極接続端子319C、補助モジュール側交流接続端子320C、補助モジュール側信号接続端子326Uおよび補助モジュール側信号接続端子326Lが一列に並べて配置される。
一方、接続部370のモジュール回路部301側には、多面体形状を有する第一封止樹脂348(図7(b)参照)の一つの面に沿って、素子側直流正極接続端子315D、素子側直流負極接続端子319D、素子側交流接続端子320D、素子側信号接続端子327Uおよび素子側信号接続端子327Lが一列に並べて配置される。こうして接続部370において各端子が一列に並ぶような構造とすることで、トランスファーモールドによるモジュール一次封止体302の製造が容易となる。
ここで、図7においてモジュール一次封止体302の第一封止樹脂348から外側に延出して形成される部分をその種類ごとに一つの端子として見た時の各端子の位置関係について述べる。以下の説明では、直流正極配線315A(直流正極端子315Bと補助モジュール側直流正極接続端子315Cを含む)および素子側直流正極接続端子315Dにより構成される端子を正極側端子と称し、直流負極配線319A(直流負極端子319Bと補助モジュール側直流負極接続端子319Cを含む)および素子側直流負極接続端子315Dにより構成される端子を負極側端子と称し、交流配線320A(交流端子320Bと補助モジュール側交流接続端子320Cを含む)および素子側交流接続端子320Dにより構成される端子を出力端子と称し、信号配線324U(信号端子325Uと補助モジュール側信号接続端子326Uを含む)および素子側信号接続端子327Uにより構成される端子を上アーム用信号端子と称し、信号配線324L(信号端子325Lと補助モジュール側信号接続端子326Lを含む)および素子側信号接続端子327Lにより構成される端子を下アーム用信号端子と称する。
補助モジュール配線部601側において、補助モジュール側直流正極接続端子315C、補助モジュール側直流負極接続端子319Cは、直流正極端子315B、直流負極端子319Bとは反対側の直流正極配線315A、直流負極配線319Aの先端部にそれぞれ形成されている。また、補助モジュール側交流接続端子320Cは、交流配線320Aにおいて交流端子320Bとは反対側の先端部に形成されている。補助モジュール側信号接続端子326U、326Lは、信号配線324U、324Lにおいて信号端子325U、325Lとは反対側の先端部にそれぞれ形成されている。
一方、モジュール回路部301側において、素子側直流正極接続端子315D、素子側直流負極接続端子319D、素子側交流接続端子320Dは、導体板315、319、320にそれぞれ形成されている。また、素子側信号接続端子327U、327Lは、ボンディングワイヤ371によりIGBT328、330とそれぞれ接続されている。
図7に示されるように、補助モールド体600は、補助モジュール配線部601と樹脂材料で成形された配線絶縁部608によって形成される。配線絶縁部608は、補助モジュール配線部601の一部(直流正極配線315A、直流負極配線319A、交流配線320A、信号配線324Uおよび信号配線324L)を相互に絶縁された状態で一体に成形される。直流正極端子315B、直流負極端子319B、交流端子320B、信号端子325Uおよび信号端子325Lは、配線絶縁部608から外側に突出して形成されている。
配線絶縁部608は、各配線を支持するための支持部材としても作用し、これに用いる樹脂材料は、絶縁性を有する熱硬化性樹脂かあるいは熱可塑性樹脂が適している。これにより、直流正極配線315A、直流負極配線319A、交流配線320A、信号配線324Uおよび信号配線324Lの間の絶縁性を確保でき、高密度配線が可能となる。
また、直流正極配線315Aと直流負極配線319Aは、配線絶縁部608を間に挟んで対向した状態で互いに積層され、略平行に延びる形状を成している。こうした配置および形状とすることで、パワー半導体素子のスイッチング動作時に瞬間的に流れる電流が、対向してかつ逆方向に流れる。これにより、電流が作る磁界が互いに相殺する作用をなし、この作用により低インダクタンス化が可能となる。なお、交流配線320Aや信号端子325U,325Lも、直流正極配線315A及び直流負極配線319Aと同様の方向に向かって延びている。
導体板315は、パワー半導体素子が固着される面とは反対側の面に放熱面315Sを有する。導体板318は、パワー半導体素子が固着される面とは反対側の面に放熱面318Sを有する。導体板319は、パワー半導体素子が固着される面とは反対側の面に放熱面319Sを有する。導体板320は、パワー半導体素子が固着される面とは反対側の面に放熱面320Sを有する。
モジュール一次封止体302は、モジュール回路部301を第一封止樹脂348によって封止して形成される。第一封止樹脂348は、放熱面315S、318S、319S、320Sが露出した状態で形成される。さらに第一封止樹脂348は図7に示すように、多面体形状(ここでは略直方体形状)を有している。
素子側直流正極接続端子315D等の端子は、上述の通り、第一封止樹脂348から突出して形成されている。第一封止樹脂348からの各突出部分(素子側直流正極接続端子315D、素子側直流負極接続端子319D、素子側交流接続端子320D、素子側信号接続端子327Uおよび素子側信号接続端子327L)は、第一封止樹脂348の一つの面に沿って一列に並べられている。このような構成としたことで、第一封止樹脂348でパワー半導体素子を封止してモジュール一次封止体302を製造する時の型締めの際に、パワー半導体素子と当該端子との接続部分への過大な応力や金型の隙間が生じるのを防ぐことができる。
補助モールド体600は、モジュール一次封止体302と接続部370において金属接合される。接続部370におけるモジュール一次封止体302と補助モールド体600との金属接合には、たとえばTIG溶接などを用いることができる。
図8に示されるように、モジュールケース304は一面に挿入口306と他面に底部を有する筒形状に形成される。モジュールケース304は、図8(a)に示されるように、他の面より広い面である第1面308Aと第2面308B(図示されていない)がそれぞれ対向した状態で形成される。第1面308A及び第2面308Bと繋ぐ3つの面は、当該第1面308A及び第2面308Bより狭い幅で密閉された面を構成し、残りの一辺の面に挿入口306が形成される。挿入口306は、フランジ304Bによって、その外周を囲まれている。
モジュールケース304は、熱伝導性を有する部材、例えばアルミ合金材料(Al,AlSi,AlSiC,Al−C等)で構成され、かつ、つなぎ目の無い状態で一体に成形される。モジュールケース304の形状は、正確な直方体である必要が無く、角が曲面を成していても良い。
モジュールケース304の第1面308Aには、第一放熱部310Aが形成される。そしてモジュールケース304の第2面308Bには、第二放熱部310Bが形成される。第一放熱部310Aと第二放熱部310Bはそれぞれ対向して配置されている。
第一放熱部310Aは、モジュールケース304の内面とは反対の面に、第一放熱面309Aを有する。第一放熱面309Aには、フィン305Aが形成される。第二放熱部310Bも同様に、モジュールケース304の内面とは反対の面に、第二放熱面309Bを有する。第二放熱面309Bには、フィン305Bが形成される。
さらに第一放熱部310A及び第二放熱部310Bの外周には、厚みが極端に薄くなっている薄肉部304Aが形成されている。
モジュールケース304の内部には、モジュール一次封止体302が挿入口306から挿入される。モジュール一次封止体302は、当該モジュール一次封止体302の放熱面318S、319Sが第一放熱部310Aに対向し、かつ当該モジュール一次封止体302の放熱面315S、320Sが第二放熱部310Bに対向するように配置される。すなわち本構造においては、各パワー半導体素子(IGBT328、IGBT330、ダイオード156、ダイオード166)が、第一放熱面309A及び第二放熱面309Bと対向して配置されている。
また、モジュールケース304の内面とモジュール一次封止体302の放熱面318S,319Sとの間には、絶縁部材333Aが挟まれる。同様に、モジュールケース304の内面と放熱面315S,320Sとの間には、絶縁部材333Bが挟まれる。モジュール一次封止体302とモジュールケース304は絶縁部材333A、333Bを介して熱圧着される。この際、薄肉部304Aは、フィン305A及び305Bを加圧することで簡単に変形する程度まで厚みを極端に薄くしてあるため、モジュール一次封止体302が挿入された後の生産性が向上する。
上述のように、モジュール一次封止体302の放熱面を、絶縁部材333A及び333Bを介してモジュールケース304の内壁に熱圧着することにより、モジュール一次封止体302の放熱面とモジュールケース304の内壁の間の空隙を少なくすることができ、パワー半導体素子の発生熱を効率良くフィン305A及び305Bへ伝達できる。さらに絶縁部材333A、333Bにある程度の厚みと柔軟性を持たせることにより、熱応力の発生を絶縁部材333A、333Bで吸収することができ、温度変化の激しい車両用の電力変換装置に使用するのに良好となる。
また、本発明における構成では、略直方体形状を有するモジュールケース304の挿入口306に対向する面(底面)側の一辺の近くに、第1面308Aと第2面308Bを繋いで貫通する第一貫通孔462a及び第二貫通孔462bが形成されている。これら第一貫通孔462aと第二貫通孔462bは、壁470によって隔てられている。また、第一貫通孔462a及び第二貫通孔462bは、壁304Cによって、モジュールケース304の内面と隔てられている。そして、モジュールケース304の底面には、冷媒流入口463aと冷媒流出口463bが形成されている。冷媒流入口463aは、第一貫通孔462aへ繋がるように貫通している。冷媒流出口463bは、第二貫通孔462bへ繋がるように貫通している。
また、モジュールケース304は、図4に示した流路形成体12にネジを用いて固定するための固定部471、472を形成する。固定部471は、第1面308A及び第2面308Bと繋がる側面上に形成される。当該固定部471が形成される面は、第二貫通孔462bよりも第一貫通孔462aに近い方の側面である。固定部472は、固定部471が形成される面と対向する面上に形成される。固定部471及び472は、当該固定部の下面が、冷媒流入口463a及び冷媒流出口463bが形成されるモジュールケースの底面と同一平面を為すように形成されている。
このように、冷媒の入出口をパワー半導体モジュールの一辺に集約することで、小型化と組立性の向上を図ることができる。冷媒の入出口は、モジュールケース304の底面側の辺に限らず、直流正極端子315Bと直流負極端子319B、交流端子320Bが突出している一辺以外のどの三辺にも、設けることができる。
図9に示すように、モジュールケース304の内部に残存する空隙には、第二封止樹脂351が充填される。接続部370は、第二封止樹脂351によりモジュールケース304のフランジ304Bで囲まれる空間内において封止される。これにより、接続部370とモジュールケース304との間で必要な絶縁距離を安定的に確保することができるため、封止しない場合と比較してパワー半導体モジュール300aの小型化が実現できる。
正極側端子と負極側端子は、モジュールケース304から積層状態で外に延出している。このような構成としたことで、正極側端子と負極側端子の各々を流れる反対方向の電流により、互いに打ち消しあう方向の磁束が発生されるため、低インダクタンス化を図ることができる。
モジュールケース304の外には、コンデンサモジュール500と電気的に接続するための直流正極端子315B(157)と直流負極端子319B(158)がそれぞれ形成されている。また、モータジェネレータMG1あるいはMG2に交流電力を供給するための交流端子320B(159)が形成されている。本実施形態では、図6に示す如く、直流正極端子315Bは導体板315と接続され、直流負極端子319Bは導体板319と接続され、交流端子320Bは導体板320と接続される。
モジュールケース304の外にはさらに、ドライバ回路174と電気的に接続するための信号端子325U(154,155)と信号端子325L(164,165)がそれぞれ形成されている。本実施形態では、図6に示す如く、信号端子325UはIGBT328と接続され、信号端子325LはIGBT330と接続される。
また、第一放熱部310Aを覆うように表面側カバー460aが形成され、第二放熱部310Bを覆うように裏面側カバー460bが形成されている。また、当該表面側カバー460a及び裏面側カバー460bは、第一貫通孔462a及び第二貫通孔462bも覆って形成されている。
表面側カバー460aは、モジュールケース304の第1面308Aに接合される。表面側カバー460aと第1面308Aとの接合部は、第1面308Aの外周付近に位置する。裏面側カバー460bは、モジュールケース304の第2面308Bに接合される。裏面側カバー460bと第2面308Bの接合部は、第2面308Bの外周付近に位置する。
このような構成により、表面側カバー460aと第一放熱面309Aの間には表面側流路空間が形成され、裏面側カバー460bと第二放熱面309Bの間には裏面側流路空間が形成される。表面側流路空間は、インバータ回路の上アームを構成するIGBT328及びダイオード156に対向する第一表面側流路空間455Aと、インバータ回路の下アームを構成するIGBT330及びダイオード166に対向する第二表面側流路空間456Aの、二つの流路空間を有する。裏面側流路空間も同様に、インバータ回路の上アームを構成するIGBT328及びダイオード156に対向する第一裏面側流路空間455Bと、インバータ回路の下アームを構成するIGBT330及びダイオード166に対向する第二裏面側流路空間456Bの、二つの流路空間を有する。
ここで、第一表面側流路空間455Aと第一貫通孔462aとを繋ぐ空間を、表面側流路入口空間457Aと称し、第一裏面側流路空間455Bと第一貫通孔462aとを繋ぐ空間を、裏面側流路入口空間457Bと称する。
また、図9(c)に示されるように、第二表面側流路空間456Aと第二貫通孔462bとを繋ぐ空間を、表面側流路出口空間458Aと称し、第二裏面側流路空間456Bと第二貫通孔462bとを繋ぐ空間を、裏面側流路出口空間458Bと称する。
冷媒分岐部459Aは、冷媒流入口463a、第一貫通孔462a、及び壁304Cによって形成される。冷媒分岐部459Aにおける冷媒の流れを、図9(b)を用いて以下に説明する。
図9(b)には、冷媒流入口463aから流入する冷媒の流れ485を図示している。冷媒流入口463aから流入した冷媒は壁304Cへ向かって流れる。壁304Cへ衝突した冷媒は、分岐される。分岐された一方の冷媒は、第一貫通孔462aを通って表面側カバー460aに向かって流れる。表面側カバー460aに衝突した冷媒は、表面側流路入口空間457Aを経由して、第一表面側流路空間455Aへと流れる。分岐された他方の冷媒は、第一貫通孔462aを通って裏面側カバー460bに向かって流れる。裏面側カバー460bに衝突した冷媒は、裏面側流路入口空間457Bを経由して、第一裏面側流路空間455Bへと流れる。
冷媒合流部459Bは、冷媒流出口463b、第二貫通孔462b、及び壁304Cによって形成される。冷媒合流部459Bにおける冷媒の流れを、図9(c)を用いて以下に説明する。
図9(c)には、図9(b)と同様に、冷媒の流れ485が図示されている。冷媒合流部459Bにおいて冷媒は、冷媒分岐部459Aにおける冷媒とは逆方向に流れる。すなわち、第二表面側流路空間456Aを流れる冷媒は、表面側流路出口空間458Aへと流れ、続いて第二貫通孔462bへと流れる。一方、第二裏面側流路空間456Bを流れる冷媒は、裏面側流路出口空間458Bへと流れ、続いて第二貫通孔462bへと流れる。第二表面側流路空間456Aから第二貫通孔462bへと流入した冷媒と、第二裏面側流路空間456Bから第二貫通孔462bへと流入した冷媒は、第二貫通孔462b内において合流する。その後、冷媒は冷媒流出口463bを介してパワー半導体モジュール300aの外に流出される。
図9(b)及び図9(c)に示したように、フィン305Aの先端部と表面側カバー460aが接触し、同様にフィン305Bの先端部と裏面側カバー460bが接触している。このような構成とすることで、フィン305A、305Bの先端部を流れる冷媒バイパス流を防ぐことができるため、冷却効率を損なうことがない。
また、図9(d)に示したように、表面側カバー460aにはあらかじめ、フィン305Aの先端部と勘合しうる凹部307が形成されている。図示されていないが、裏面側カバー460bにも同様に、フィン305Bの先端部と勘合しうる凹部307が形成されている。フィン305A及びフィン305Bの先端部と勘合して冷媒流路を形成することによっても冷媒バイパス流を防止する効果が期待され、冷却効率の損失を防ぐことができる。
本実施形態におけるパワー半導体モジュール300aの表面側カバー460aと裏面側カバー460bは、特に限定されるわけではないが、樹脂製、金属製、無機化合物の何れの材料も用いることができる。
また前記表面側カバー460a及び裏面側カバー460bの形成方法は、モジュールケース304との間で冷媒の流出が起きないよう高いシール性を確保する必要がある。表面側カバー460aとモジュールケース304の接合や、裏面側カバー460bとモジュールケース304の接合には、有機系、金属系、無機ガラス、あるいはこれらの混合物からなる接着剤を用いることができる。
また、表面側カバー460a及び裏面側カバー460bが金属製の場合には、これら表面側カバー460a及び裏面側カバー460bを、モジュールケース304と溶接によって接合することができる。
また、表面側カバー460a及び裏面側カバー460bが樹脂製の場合には、これら表面側カバー460a及び裏面側カバー460bを、モジュールケース304の上に直接射出成形することが可能である。
シール性や生産性、軽量化の観点から、表面側カバー460a及び裏面側カバー460bの材料は樹脂組成物が望ましく、射出成形や融着などの工法を組み合わせて行うことが望ましい。
これらの工法および、その他のパワー半導体モジュールの構成に関しては、図12において後述する。
図10を用い、ケース10と流路形成体12とパワー半導体モジュール300が連結された構造と冷媒の流れを説明する。図10(a)は、パワー半導体モジュール300と流路形成体12およびケース10の連結構造の断面で、図9(b)の断面Fで切断して方向Gから見たときと同じ部位の断面である。図10(b)は、本実施形態のパワー半導体モジュール300のフィン305Aのフィンのレイアウトを変えた例である。
表面側カバー460aは、当該表面側カバー460aと一体に形成された第一放熱面側流路仕切り板461aを有する。第一放熱面側流路仕切り板461aは、表面側カバー460aから第一放熱面309Aに向かって突出した形状で形成されている。第一放熱面側流路仕切り板461aの先端部は、第一放熱面309Aに接触している。第一放熱面側流路仕切り板461aによって、表面側流路空間は、第一表面側流路空間455Aと第二表面側流路空間456Aの二つの流路空間に分けられる。
また、第一放熱面側流路仕切り板461aの先端部は、モジュールケース304の第1面308Aにも接触している。このような構成により、第一貫通孔462aに繋がる表面側流路入口空間457Aと、第二貫通孔462bに繋がる表面側流路出口空間458Aとは、空間的に隔てられる。
尚、第一放熱面側流路仕切り板461aは表面側カバー460aにあらかじめ形成され、第二放熱面側流路仕切り板461bは裏面側カバー460bにあらかじめ形成されていることが、製造プロセス上簡素化でき望ましい。
流路形成体12は、流路形成部材12a及び流路形成部材12bにより構成される。流路形成部材12aと流路形成部材12bは、シール部材481aを介して連結されている。
流路形成部材12aには、冷媒流入口486a、冷媒流出口486b(図4参照)、開口部487a〜487f(487e、487fは図4参照)が設けられている。また、流路形成部材12bには壁31a、31b、31cが形成されている。
流路形成部材12aと、流路形成部材12bと、壁31a及び31bと、によって流路空間30aが形成される。また、流路形成部材12aと、流路形成部材12bと、壁31b及び31cと、によって流路空間30bが形成される。また、流路形成部材12aと、流路形成部材12bと、壁31cと、によって流路空間30cが形成される。
ケース10には、入口配管13に繋がる入口空間10bが形成されている。入口空間10bと流路空間30aは、冷媒流入口486aを介して繋がれる。ケース10と流路形成部材12aの間には、冷媒の流出を防ぐために、シール部材460aが設けられる。
パワー半導体モジュール300aの固定部471及び472がネジ484によって流路形成部材12aに固定されることによって、パワー半導体モジュール300aは流路形成部材12aに固定される。
開口部487aは、パワー半導体モジュール300aの底面部に設けられた冷媒流入口463aと繋がる位置に形成される。流路空間30aと、表面側流路入口空間457A及び裏面側流路入口空間457B(図9参照)とは、開口部487aと、冷媒流入口463aと、第一貫通孔462aと、を介して繋がれる。パワー半導体モジュール300aと流路形成部材12aの間には、開口部487aと冷媒流入口463aの間からの冷媒の流出を防ぐために、シール部材480bが設けられる。
また、開口部487bは、冷媒流出口463bと繋がる位置に形成される。流路空間30bと、表面側流路出口空間458A及び裏面側流路出口空間とは、開口部487bと、冷媒流出口463bと、第二貫通孔462bと、を介して繋がれる。パワー半導体モジュール300aと流路形成部材12aの間には、開口部487bと冷媒流出口463bの間からの冷媒の流出を防ぐために、シール部材480cが設けられる。
同様に、パワー半導体モジュール300bの固定部471及び472がネジ484によって流路形成部材12aに固定することによって、パワー半導体モジュール300bは流路形成部材12aに固定される。
開口部487cは、パワー半導体モジュール300bの底面部に設けられた冷媒流入口463aと繋がる位置に形成される。流路空間30bと、表面側流路入口空間457A及び裏面側流路入口空間457B(図9(b)参照)とは、開口部487cと、冷媒流入口463aと、第一貫通孔462aと、を介して繋がれる。パワー半導体モジュール300bと流路形成部材12aの間には、開口部487cと冷媒流入口463aの間からの冷媒の流出を防ぐために、シール部材480dが設けられる。
開口部487dは、冷媒流出口463bと繋がる位置に形成される。流路空間30cと、表面側流路出口空間458A及び裏面側流路出口空間458Bとは、開口部487dと、冷媒流出口463bと、第二貫通孔462bと、を介して繋がれる。パワー半導体モジュール300bと流路形成部材12aの間には、開口部487dと冷媒流出口463bの間からの冷媒の流出を防ぐために、シール部材480eが設けられる。
図示されていないが、パワー半導体モジュール300cも同様の方法で、流路形部材12aに固定、連結されている。
図10(a)には、冷媒の流れ485a〜485nが図示してある。入口配管13より流入した冷媒は、冷媒の流れ485aのように、冷媒流入口486a経由して、流路形成体12に導入される。その後、冷媒は、冷媒の流れ485bのように、流路空間30aを、冷媒流入口486a側から開口部487a側に向かって流れる。その後、冷媒は、冷媒の流れ485cのように、開口部487a、冷媒流入口463aを通ってパワー半導体モジュール300aに導入される。その後、図9(b)において上述したように、冷媒は、第一貫通孔462aを経由して、表面側流路入口空間457Aと裏面側流路入口空間457Bとに分岐される。
その後、309第一表面側流路空間455Aにおいては、冷媒の流れ485dのように、ダイオード156、IGBT328と対向する位置を冷媒が流れる。続いて、冷媒の流れ485eのように、冷媒は第一放熱面側流路仕切り板461aを回りこむ。その後、冷媒の流れ485fのように、冷媒はIGBT330、ダイオード166と対向する第二表面側流路空間456Aを流れる。そして、冷媒は表面側流路出口空間458Aへと流れる。
表面側流路空間とモジュールケース304を挟んで対向する面に形成された裏面側流路空間においても同様に、表面側の冷媒流路と並行して流れる。すなわち、冷媒は裏面側流路入口空間457B(図9(b)参照)から、裏面側流路出口空間へ、冷媒の流れ485d、485e、485fの順に流れる。
その後、表面側流路出口空間458Bと裏面側流路出口空間は、第二貫通孔462Bにおいて合流する。その後、合流した冷媒は冷媒流出口463bを流れる。その後、冷媒は、冷媒の流れ485gのように流路形成部材12aに形成された開口部487bを通り、流路形成体12に流入する。
その後、冷媒は、冷媒の流れ485hに示すように、流路空間30bを、開口部487b側から開口部487c側に向かって流れる。その後、冷媒は、冷媒の流れ485iのように、開口部485cを通り、パワー半導体モジュール300bに導入される。パワー半導体モジュール300bに導入された冷媒は、上記パワー半導体モジュール300aと同様の経路を、冷媒の流れ485j、485k、485lに示されるように流れる。その後、冷媒は、冷媒の流れ485mのように、開口部485dを通り、流路形成体12に流入する。
その後、冷媒は、冷媒の流れ485nに示すように、流路空間30cを流れる。
本実施形態におけるパワー半導体素子(IGBT328、330、およびダイオード156、166)は、表面側流路空間により,第一放熱面309Aを介して、表面から冷却される。そして同時に、IGBT328、330、およびダイオード156、166は、裏面側流路空間により、第二放熱面309Bを介して、裏面からも冷却される。このように、パワー半導体素子が表裏面から同時に冷却されることで、小型で高放熱なパワーモジュールを達成することができる。
パワー半導体モジュールの表面側と裏面側の両方に冷媒を流すための流路空間を形成する場合、パワー半導体モジュールに表面側入口部、表面側出口部、裏面側入口部及び裏面側出口部が必要になる。これら4つの出入口部が、本実施形態のような流路形成体12と接続される場合、パワー半導体モジュールと流路形成体12との間に4つの接続部が必要になり、接続信頼性の維持や生産性の向上を図ることが困難になる。
そこで、本実施形態に係るパワー半導体モジュールでは、冷媒分岐部459Aが表面側入口部と表面側出口部を繋ぎ、冷媒合流部459Bが裏面側入口部と裏面側出口部を繋いでいる。これにより、パワー半導体モジュール300aと流路形成体12との間の入口側接続部が1つに集約され、またパワー半導体モジュール300aと流路形成体12との間の出口側接続部が1つに集約される。したがって、パワー半導体モジュール300aと流路形成体12との間の接続部における接続信頼性の維持や生産性の向上を図ることできる。
本実施形態におけるパワー半導体モジュール300aのフィン305A、305Bのフィン形状は特に限定されるわけではないが、ピン形状のものが望ましい。パワー半導体モジュール300a内の表面側流路空間を流れる冷媒は、第一放熱面側流路仕切り板461aの周りを回りこむように流れていく。また、裏面側流路空間を流れる冷媒は、第二放熱面側流路仕切り板461bの周りを回りこむように流れていく。この際表面側流路空間及び裏面側流路空間外周側を流れる冷媒の流速が遅くなり、圧損の増加や冷却性の低下の原因となる場合がある。
その場合は、図10(b)に示すように、第一放熱面309Aの外周部313において、フィン305Aの配置密度を、内周部である第一放熱面側流路仕切り板461a付近におけるフィン305Aの配置密度に比べて低くする。また、第二放熱面309B側も同様の構成とする。このような構成によって、冷媒が外周部を流れやすくすることが望ましい。
以上のように本実施形態のパワー半導体モジュールは、モジュールの表裏面の放熱面のそれぞれに対して冷媒流路が形成されており、冷媒流路を含めた小型化が可能である。さらに、直流および交流の各種端子や信号端子等が設けられている辺とは反対側の辺に、冷媒流入口および冷媒流出口が設けられていることにより、電気的な配線と冷媒流路の干渉を避けることができる。
図11は、コンデンサモジュール500の構造を説明するための斜視図である。コンデンサケース502は、その内部に複数のフィルムコンデンサを備える略直方体形状のケースである。フィルムコンデンサは、樹脂封止材550によってコンデンサケース502内に封止される。また、フィルムコンデンサは樹脂封止材550内において、負極導体板及び正極導体板に電気的に接続されている。
コンデンサケース502の長辺側には、コンデンサ端子503a、503b、503cが設けられる。コンデンサ端子503a、503bは、コンデンサケース502の一辺側に設けられ、コンデンサ端子503cは、コンデンサ端子503a、503bとはコンデンサケース502を挟んで対向する辺側に設けられる。また、コンデンサ端子503cは、コンデンサケース502を挟んでコンデンサ端503aと向かい合って配置されている。
コンデンサ端子503aはパワー半導体モジュール300aに接続され、コンデンサ端子503bはパワー半導体モジュール300bに接続され、コンデンサ端子503cはパワー半導体モジュール300cに接続される。
コンデンサ端子503aは、負極側コンデンサ端子504a、正極側コンデンサ端子506a、絶縁部材517aにより構成される。絶縁部材517aは、負極側コンデンサ端子504aと正極側コンデンサ端子506aとの間に設けられる。
コンデンサ端子503bは、負極側コンデンサ端子504b、正極側コンデンサ端子506b、絶縁部材517bにより構成される。絶縁部材517bは、負極側コンデンサ端子504bと正極側コンデンサ端子506bとの間に設けられる。
コンデンサ端子503cは、負極側コンデンサ端子504c、正極側コンデンサ端子506c、絶縁部材517cにより構成される。絶縁部材517cは、負極側コンデンサ端子504cと正極側コンデンサ端子506cとの間に設けられる。
これらコンデンサ端子503a、503b、503cは、樹脂封止材550の露出面から突出して形成されている。負極側コンデンサ端子504a、504b、504cは、樹脂封止材550の内部において、フィルムコンデンサの負極導体板に電気的に接続される。また、正極側コンデンサ端子506a、506b、506cは、樹脂封止材550の内部において、フィルムコンデンサの正極導体板に電気的に接続される。当該負極導体板及び正極導体板の間にも、コンデンサ端子503a等と同様に、絶縁部材が設けられている。このように負極導体板と正極導体板とで積層導体板を構成することにより、低インダクタンス化が実現される。
コンデンサケース502における、コンデンサ端子503a、503bが設けられている長辺側の側面には、パワー半導体モジュール300a、300bが配される。パワー半導体モジュール300a、300bは、各々の表面側流路空間が表面側カバー460aを挟んでコンデンサケース502に対向するように、配される。
パワー半導体モジュール300aの直流負極端子319Bは、コンデンサ端子503aの負極側コンデンサ端子504aと接続され、パワー半導体モジュール300aの直流正極端子315Bは、コンデンサ端子503aの正極側コンデンサ端子506aと接続される。パワー半導体モジュール300bの直流負極端子319B及び直流正極端子315Bも同様に、コンデンサ端子503bに接続される。
また、コンデンサケース502を挟んで、パワー半導体モジュール300aと対向する位置には、パワー半導体モジュール300cが配される。パワー半導体モジュール300cは、当該パワー半導体モジュール300cの表面側流路空間が表面側カバー460aを挟んでコンデンサケース502に対向するように、配される。パワー半導体モジュール300cの直流負極端子319B及び直流正極端子315Bも、パワー半導体モジュール300a、300bと同様に、コンデンサ端子503cに接続される。
また、コンデンサケース502の長辺側の一側面には、突出収納部502aが形成される。突出収納部502aが形成される形成される辺は、コンデンサ端子503cが設けられる辺と同一の辺側である。また、突出収納部502aは、コンデンサケース502を挟んでパワー半導体モジュール300bと対向する位置に形成される。
突出収納部502aには、ノイズ除去用のコンデンサが収納される。また、突出収納部502aにおいて、電源端子508、509が樹脂封止材550の露出面から突出して形成される。当該電源端子508、509は、樹脂封止材550の露出面から突出し、突出収納部502aが形成されているコンデンサケースの一側面の法線方向に折れ曲がり、そして樹脂封止材550の露出面とは反対面に向かって折れ曲がっている。
電源端子508、509には、バッテリ136から直流電力が供給される。ノイズ除去用コンデンサは、電源端子508、509に電気的に接続されており、かつ、グラウンドとも電気的に接続されている。バッテリ136から供給される直流電力に重畳するノイズは、このノイズ除去用コンデンサにより除去する。
また、電源端子508は樹脂封止材550の内部において、積層導体板の負極導体板と電気的に接続される。電源端子509は樹脂封止材550の内部において、積層導体板の正極導体板と電気的に接続される。すなわち、電源端子508、509とフィルムコンデンサとは、積層導体板を介して電気的に接続されている。
また、ノイズ除去用コンデンサは、コンデンサケース502内のフィルムコンデンサに比べて小型である。そのため、突出収納部502aの高さは、コンデンサケース502の高さよりも低く形成されている。
また、コンデンサケース502には、当該コンデンサケース502の外周部に、螺子を貫通させるための孔520a〜520dが設けられる。孔520a〜520dには、コンデンサモジュール500を流路形成体12に固定するため、螺子が貫通される。
コンデンサモジュール500を上述のような構成としたことにより、パワー半導体モジュール300cは、コンデンサモジュール500を介してパワー半導体モジュール300aと向かい合うように流路形成体12に固定される。さらにノイズ除去用コンデンサは、コンデンサモジュール500を介してパワー半導体モジュール300bと向かい合う位置に配置される。これにより、相毎に設けられたパワー半導体モジュール300a〜300cを、コンデンサモジュール500の一方の側面に2つ、他方の側面に1つ設けるように配置しても、パワー半導体モジュール300a〜300cとコンデンサモジュール500とが整然と構成され、かつ冷媒流路19の冷却性能を十分に引き出すことできる。
さらに前述した通り、電源端子508及び509は、ノイズ除去用コンデンサが収容される突出収納部502aから突出している。そのため、電源端子508及び509は、パワー半導体モジュール300a〜300cのいずれよりもノイズ除去用コンデンサに近い配置となり、パワー半導体モジュール300a〜300cに対するノイズの影響を低減している。
図12に本実施形態におけるパワー半導体モジュール300aの断面構造を、図12(a)に示す。図12(a)に示す図は、図9(b)と同じく、図9(a)を断面Dで切断して方向Eから見たときの断面図となっている。また、図12(b)に他の実施形態であるパワー半導体モジュール300dの断面模式図を示す。
本実施形態における表面側カバー460a及び裏面側カバー460bは、樹脂組成物であることが望ましい。樹脂組成物は熱硬化性樹脂および熱可塑性樹脂どちらも用いることができ、どちらか一方に限定するものではないが、望ましくは、ポリフェニレンスルフィド(PPS)を用いることが量産性の点で望ましい。
樹脂組成物は、接着剤を介してモジュールケース304と接合できるほか、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂とも直接モジュールケース304上に接合することができる。熱可塑性樹脂を用いる場合は、熱可塑性樹脂を溶融させるために、図12(a)に示す溶融エネルギー印加方向464より、レーザーや熱などのエネルギーを照射する。これによりモジュールケース304は加熱され、熱可塑性樹脂を融着することができる。また熱硬化性樹脂の場合には、半硬化状態の樹脂を加熱硬化することで、接合することが可能となる。
冷媒流路の気密性を確保するため、モジュールケース304と表面側カバー460aの密着性およびモジュールケース304と裏面側カバー460bの密着性が重要である。本実施形態では、モジュールケース304の表面にあらかじめ表面処理をすることが望ましい。表面処理の方法としては、モジュールケース304が金属製などの場合、電解脱脂洗浄、プラズマ洗浄処理、シランカップリン剤による処理、酸やアルカリによる表面の粗面化処理等を行うことが望ましい。モジュールケース304が有機表面処理アルミニウム製の場合は、アルマイト処理などの表面酸化処理を行うことが望ましい。
パワー半導体モジュールのカバー材料として樹脂組成物を用いることで、フィン305A、305Bの加工時の高さばらつきを、柔軟性のある樹脂組成物Aの変形により吸収することができる。これにより、冷媒流路の間隔が一定となるため、冷媒バイパス流を防止する効果が期待され、冷却効率の損失を防ぐことができる。
さらに、予め樹脂組成物Aに、放熱フィン305A、305Bのレイアウトに合わせた凹形状の窪みを形成し、フィン305A、305Bと嵌めあう形状にしておくことが好適である。こうすることでフィン305A、305Bの加工の精度をそれほど高くしなくても、安定したこのため冷媒流路の形状が得られることができる。
図12(b)には、他の実施形態によるパワー半導体モジュール300dの断面模式図を示す。このパワー半導体モジュール300dは、量産性にすぐれた樹脂組成物の射出成形により成形されるパワー半導体モジュールを提供する。
まず、第一放熱面側内面樹脂カバー465aと第二放熱面側内面樹脂カバー465bを、樹脂組成物Aを用いてあらかじめ成形する。第一放熱面側内面樹脂カバー465aは、第一放熱部310A、第一貫通孔462a、第二貫通孔462b(不図示)を覆うようにケース状に成形され、第1面308A上に配される。第二放熱面側内面樹脂カバー465bは、第二放熱部310B、第一貫通孔462a、第二貫通孔462b(不図示)を覆うようにケース状に成形され、第2面308B上に配される。
その後、第一放熱面側内面樹脂カバー465aと第二放熱面側内面樹脂カバー465bを覆って樹脂組成物Bが射出成形される。これにより、表面側カバー460a及び裏面側カバー460bが一体に形成される。
この際、樹脂組成物Bは、樹脂組成物Aよりも融点が低いものを用いる。このようにすることで、樹脂組成物Aを溶融することなく、樹脂組成物Bによる射出成形が可能である。樹脂組成物Aと樹脂組成物Bの組み合わせは特に限定されるわけではないが、例えば、樹脂組成物Aとしてポリエーテルエーテルケトン、樹脂組成物Bとしてポリフェニレンスフィドの組み合わせが好適である。
図13に、表面側カバー460a及び裏面側カバー460bを一体形成したパワー半導体モジュール300dの斜視図を示す。表面側カバー460aと裏面側カバー460bは、境界面460cを境に、便宜上表面側カバー460aと裏面側カバー460bを区別して記載している。境界面460cは、モジュールケース304の第1面308A及び308Bに繋がる面のうち、固定部471が形成される面及び固定部472が形成される面と対向する位置にある。
図12(a)の実施例におけるパワー半導体モジュール300aにおいては、樹脂組成物で構成される表面側カバー460a及び裏面側カバー460bは、金属材料で構成されるモジュールケース304に接合される。このような構成においては、表面側カバー460a及び裏面側カバー460bは、別々にモジュールケース304に固定されるため、例えば表面側カバー460aや裏面側カバー460bがモジュールケース304から脱落若しくは接合部の一部が剥離するなど、カバー内の気密性が失われる恐れがある。
一方、図13の実施例におけるパワー半導体モジュール300dにおいて、表面側カバー460a及び裏面側カバー460bは、射出成形で一体に形成される。
つまり、樹脂組成物で構成される表面側カバー460a及び裏面側カバー460bは、異種材料である金属材料から構成されるモジュールケース304と接合されるだけではなく、同種材料の一体形成によってモジュールケース304に固定される。
一般的に、金属と樹脂組成物の接合面を有する構造よりも、同種の樹脂構造による一体構造の方が、気密性や接合部の長期安定性の点において優れる。第一放熱面側内面樹脂カバー465a及び第二放熱面側内面樹脂カバー465bは、一体成形された樹脂組成物によって周囲からモジュールケース304に束縛されるため、例えば表面側カバー460a又は裏面側カバー460bの一方がモジュールケース304から脱落するなどの事態はより発生し難くなる。
したがって、表面側カバー460a及び裏面側カバー460bを一体成形することで、気密性や接続の長期信頼性が向上する。
また、表面側カバー460a及び裏面側カバー460bを一体に形成することで、射出形成プロセス時間を短くすることができる。
以上の工法により、冷媒水路が一体となった、パワー半導体モジュールの量産性の向上が達成される。
図14に本発明の他の実施例のパワー半導体モジュール300eを示す。図14(a)に示す外観斜視図のHの方向からの模式図を図14(b)に示す。
図14(b)に示すように、このパワー半導体モジュール300eでは、モジュールケース304の冷媒流入口463a及び冷媒流出口463bが設けられている一面に、冷媒流路取付孔473a〜473dが設けられている。冷媒流路取付孔473a及び473bは、冷媒流入口463aを挟んで互いに対向する位置に形成される。冷媒流路取付孔473c及び473dは、冷媒流出口463bを挟んで互いに対向する位置に形成される。
そのほかのパワー半導体モジュール構造は、図9に示したパワー半導体モジュール300aと同一である。
図15に示すのは、流路形成体12を用いずにパワー半導体モジュール300eを連結した冷媒流路構造の例である。図15(a)は、パワー半導体モジュール300e同士を連結する際に用いる冷媒流路配管466aの断面図である。図15(b)は、冷媒流路配管466aを用いて、パワー半導体モジュール300eを連結した例であり、図14(a)に示した方向Hから見たときの外観図である。
冷媒流路配管466aは、配管入口部467bと配管出口部467aを有している。当該冷媒流路配管466aは、配管入口部467bと配管出口部467aを繋いでU字型の冷媒流路467を形成している。冷媒は、配管入口部467bから冷媒流路467を流れ、その後配管出口部467aへ流れる。
配管出口部467aは、冷媒流路配管466aをパワー半導体モジュール300eに接続する際に、パワー半導体モジュール300eの底面に形成された冷媒流入口463aに挿入される部位である。配管入口部467bは、冷媒流出口463bに挿入される部位である。配管出口部467a及び配管入口部467bには、冷媒の流出を防ぐため、シール部材468aが設けられる。
冷媒流路配管466aには、鍔部468bが形成される。鍔部468bには、ネジを貫通させるための孔が形成される。冷媒流路配管466aのパワー半導体モジュール300eへの取り付けは、ネジ469を鍔部468bに形成された孔を介して冷媒流路取付孔473a〜473dに埋め込むことで行う。
本連結例においては、パワー半導体モジュール300e同士は、長手方向に直列に連結される。冷媒は、冷媒の流れ485に示されるように、パワー半導体モジュール300eの長手方向に沿って、冷媒流路配管466aの中を流れる。
このように、冷媒流路配管466aを用いることで、流路形成体12を用いることなく、冷媒流路を形成することが可能となる。流路形成体12の配置にとらわれることなく、多彩なパワー半導体モジュールのレイアウトが可能となるため、設計の自由度が高くなり、最適レイアウトにより電力変換装置全体の小型化が可能となる。
また、本連結例においてはパワー半導体モジュール同士が長手方向に直列に連結されており、パワー半導体モジュール300eの表面側カバー若しくは裏面側カバーに、例えばコンデンサモジュールやバスバーのような電力変換装置内の他の構成部品を隣接して配置することが面積を大きく確保することができる。このような構成とすることで、パワー半導体素子の冷却と同時に、パワー半導体モジュール外部の構成部品も冷却することができ、電力変換装置全体の冷却効率の向上を図ることができる。
図16に示すのは、流路形成体12を用いずにパワー半導体モジュール300eを連結した、図15とは異なる冷媒流路構造の例である。
図16(a)は、パワー半導体モジュール300e同士を連結する際に用いる冷媒流路配管466bの断面図である。図16(b)は、冷媒流路配管466bを用いて、パワー半導体モジュール300eを連結した例であり、図14(a)に示した方向Hから見たときの外観図である。図16(b)においては、パワー半導体モジュール300eが短手方向に積層された状態で、冷媒流路が連結されている。
図15と共通の符号を付してある部材については、同様の作用効果を有する。図16が図15と異なる点は、冷媒流路配管466bと、パワー半導体モジュール300e同士の積層状態である。図16(b)においては、第一のパワー半導体モジュール300eの裏面側カバー460bと第二のパワー半導体モジュール300eの裏面側カバー460bが向かい合うように配置し、さらに第二のパワー半導体モジュール300eの表面側カバー460aと第三のパワー半導体モジュール300eの表面側カバー460aが向かい合うように配置している。
冷媒は、冷媒の流れ485に示されるように、第一のパワー半導体モジュール300eの冷媒流出口463bから、第二のパワー半導体モジュール300eの冷媒流入口463aへと、パワー半導体モジュール300eの短手方向と平行に流れる。
このように、冷媒流路配管466bを用いることで、流路形成体12を用いることなく、冷媒流路を形成することが可能となる。流路形成体12の配置にとらわれることなく、多彩なパワー半導体モジュールのレイアウトが可能となるため、設計の自由度が高くなり、最適レイアウトにより電力変換装置全体の小型化が可能となる。
また、本連結例のような構成においては、例えば第一のパワー半導体モジュール300eの裏面側カバー460bと第二のパワー半導体モジュール300eの裏面側カバー460bのように、パワー半導体モジュールのカバー内の冷媒同士が対向して流れており、パワー半導体モジュール外部から表面側カバー若しくは裏面側カバーを介しての熱の吸収が抑制され、冷却に用いられる冷媒の温度を低く保つことができる。その結果、パワー半導体素子の冷却効率を向上させることができる。
以上のように、パワー半導体モジュール300eにおいては、流路形成体12以外でも、冷媒流路配管466a、466bを用いることで多彩なパワー半導体モジュールのレイアウトが可能となり、設計の自由度が高くなり、最適レイアウトにより電力変換装置の全体の小型化が可能となる。冷媒流路配管466a、466bは、金属、無機セラミックス、樹脂材料などを用いることができる。配管の耐久性や形状の自由度から、金属あるいは樹脂材料を用いることが望ましい。
図17乃至図19に本発明におけるパワー半導体モジュールの他の形態であるパワー半導体モジュール300fを示す。
図17は、図7で示す状態に、モジュールケース304を取り付けた状態である。図17(a)は斜視図であり、図17(b)は断面Dで切断して方向Eから見たときの断面図である。
図8のパワー半導体モジュール300aと異なる点について述べる。図8のパワー半導体モジュール300aにおいては、第一貫通孔462aと第二貫通孔462bが壁470によって隔てられているが、パワー半導体モジュール300fにおいてはこれらが一体に貫通孔492として形成されている。さらに、パワー半導体モジュール300aにおいては冷媒流入口463aと冷媒流出口463bが形成されているが、パワー半導体モジュール300fにおいてはこれらが形成されていない。また、パワー半導体モジュール300aの固定部471、472は、当該固定部の下面がモジュールケース304の底面と同一平面を為しているが、パワー半導体モジュール300fにおける固定部471、472は、当該固定部の下面がモジュールケース304の底面よりも突出して形成されている。その他の点については、図17のパワー半導体モジュール300fは、図8のパワー半導体モジュール300aと同様の構成を為している。
図18は、図17で示すパワー半導体モジュール300fに対して、表面側カバー490a、裏面側カバー490b、第一壁491a、第二壁492bを接合する手順を示す図である。図18(a)は、図17(b)に示される状態に、第一壁491a及び第二壁492bを接合する様子を示す図である。図18(b)は、モジュールケース304に第一壁491a及び第二壁492bが接合され、続いて表面側カバー490a及び裏面側カバー490bを接合する様子を示す図である。図18(c)は、モジュールケース304の第1面308Aにおいて、第一壁491aが接合される位置を示す図である。図18(d)は、モジュールケース304に表面側カバー490a及び裏面側カバー490bを接合した状態を示す図である。図18(e)は、モジュールケース304と表面側カバー490aが接合される位置を示す図である。
図18(a)、図18(b)に示されるように、第一壁491a及び第二壁492bはモジュールケース304に接合される。第1壁491aは、接合部495aを介して、第1面308Aに接合される。第2壁491bは、接合部495aを介して、第2面308Bに接合される。また、図18(b)に示されるように、第一壁491aはフィン305Aと接触しており、第二壁492bはフィン305Bと接触している。これにより、第一壁491a及び第二壁492bはモジュールケース304との間に接合部495bを形成している。
図18(c)を用いて接合部495aが形成される位置について説明する。第1面308Aにおいて、第一放熱面307A(第一放熱部310A)を挟んで、貫通孔492とは反対側の領域には、接合部495aは形成されない。それ以外の領域について、第一放熱面307A(第一放熱部310A)と貫通孔492を囲む三辺に、接合部495aが形成される。第二壁491bと第2面308Bの接合も、第一壁491aと同様に形成される。
図18(d)に示されるように、表面側カバー490a及び裏面側カバー490bはモジュールケース304に接合される。第1面308Aと表面側カバー490aの接合、若しくは第2面308Bと裏面側カバー490bの接合は、接合部495cを介して形成される。さらに、接合部495cは、モジュールケース304の第1面308Aや第2面308Bだけでなく、当該モジュールケース304の底面まで及んで形成される。また、表面側カバー490aと裏面側カバー490bは、接合部495dを介して接合される。
表面側カバー490aには、当該表面側カバー490aの外面のうち、モジュールケース304の底面側の一面において、冷媒をケース内に導入するための冷媒流入口493aが形成されている。裏面側カバー490bには、当該裏面側カバー490bの外面のうち、モジュールケース304の底面側の一面において、冷媒をケース内から排出するための冷媒流出口493bが形成されている。
図18(e)を用いて接合部495cが形成される位置について説明する。図18(e)に示されるように、接合部495cは、接合部495aを囲むように、第1面308Aの外周部に形成される。略長方形形状の第1面308Aの外周部のうち、接合部495aが形成される三辺側においては、接合部495cは、接合部495aとの間に隙間が生じないように形成することが望ましい。接合部495aが形成されていない一辺側には、表面側カバー490aと第1壁491aのいずれとも接触しない領域である非接合部495eを設ける。裏面側カバー490bと第2面308Bの接合も同様にして形成される。
そして表面側カバー490aとモジュールケース304は、当該モジュールケース304の底面においても接合部495cを形成している。裏面側カバー490bも同様である。モジュールケース304の底面側まで覆うように形成された表面側カバー490a及び裏面側カバー490bは、モジュールケース304の底面側において熱融着などにより接合され、接合部495dを形成する。
接合部495dは図18(e)に示されるように、固定部471におけるモジュールケース304の底面から突出している部位と、固定部472におけるモジュールケース304の底面から突出している部位との間の空間において形成される。
図19は、図18で示す手順によりモジュールケース304に対して、表面側カバー490a、裏面側カバー490b、第一壁491a、第二壁492bを形成したパワー半導体モジュール300fを示す図である。図19(a)は斜視図であり、図19(b)は図17(b)と同様に断面Dで切断して方向Eから見たときの断面図である。
図19(b)に示されるように、表面側カバー490aと第1壁491aの間には、第一流路空間496aが形成される。第1壁491aと第一放熱面309Aの間には、第二流路空間496bが形成される。第二放熱面309Bと第2壁491bの間には、第三流路空間496cが形成される。第2壁491bと裏面側カバー490bの間には、第四流路空間496dが形成される。また、第1壁491aの接合部495aが形成されていない一辺側の端部と、表面側カバー490aの冷媒流入口493aが形成される面と対向する面との間には、第一空間494aが形成される。第一空間494aは、第一流路空間496aと第二流路空間496bを繋ぐように形成されている。第2壁491bの接合部495aが形成されていない一辺側の端部と、裏面側カバー490bの冷媒流出口493bが形成される面と対向する面との間には、第二空間494bが形成される。第二空間494bは、第三流路空間496cと第四流路空間496dを繋ぐように形成されている。
図19(b)を用いて流路形成体等に連結された場合の、パワー半導体モジュール300f内の冷媒の流れ488a〜488iを説明する。冷媒は、冷媒の流れ488aのように冷媒流入口493aより流入する。その後、第一流路空間496aを冷媒の流れ488bのように流れる。その後、第一空間494aを冷媒の流れ488cのように経由して、第二流路空間496bに流れ込む。第二流路空間496bを流れる冷媒は、冷媒の流れ488dのように流れて第一放熱面309Aを冷却する。その後、冷媒は、冷媒の流れ488eのように貫通孔492を通り、第三流路空間496cに流れ込む。第三流路空間496cを流れる冷媒は、冷媒の流れ488fのように流れて第二放熱面309Bを冷却する。その後、冷媒は、第二空間494bを冷媒の流れ488gのように流れる。その後、冷媒は、第四流路空間を冷媒の流れ488hのように流れる。その後、冷媒流出口493bから冷媒の流れ488iのようにパワー半導体モジュール外へ排出される。
本実施例に係るパワー半導体モジュール300fでは、図10に示す第一放熱面側流路仕切り板461aや第二放熱面側流路仕切り板461bを有していない。これにより、放熱面上の流路空間内を流れる冷媒は、ほぼ一定の流速で流れ、面内の流速のばらつきが小さく抑えることができる。したがって、冷却の効率に優れたパワー半導体モジュールを提供することができる。さらに、流路仕切り板が存在しない分、放熱面と冷媒の接触面積をより多く設けることができる。したがって、本実施例に係るパワー半導体モジュール300fは、冷却の効率に優れる。
また、図5や図10に示すように、パワー半導体モジュール内部において、上アーム側のパワー半導体素子(IGBT328とダイオード156)と下アーム側のパワー半導体素子(IGBT330とダイオード166)が放熱面内に横並びで配置されている。図10に示すパワー半導体モジュール300aにおいては、冷媒は、上アーム側のパワー半導体素子を冷却した後、下アーム側の半導体素子を冷却するという順番になっており、上アーム側のパワー半導体素子の冷却効率よりも下アーム側の半導体素子の冷却効率が低下する恐れがあった。しかし本実施例によれば、これら上アーム側のパワー半導体素子と下アーム側の半導体素子が、冷媒の流れる方向に対して並列に配置されているため、これらを均一に冷却することができる。
さらに、第一放熱面309Aと表面側カバー490aとの間に、第1壁491aを設けることで、第一流路空間496aと第二流路空間496bの2つの流路空間が形成されている。同様に、第二放熱面309Bと裏面側カバー490bとの間に、第2壁491bを設けることで、第三流路空間496cと第四流路空間496dの2つの流路空間が形成されている。このように、モジュールケースの放熱面とパワー半導体モジュール外気との間に、複数の空間層を設けることで、例えば外気温が高い状況においても、パワー半導体素子はモジュール外部からの温度影響を受けにくい。したがって、パワー半導体素子は安定して駆動することができるため、長期信頼性が向上する。
図20及び図21にパワー半導体モジュール300fと、流路形成体12の配置例を示す。図20は、複数のパワー半導体モジュール300fを、パワー半導体モジュール300fの短手方向に隣接して、流路形成体12上に配置する例である。図21は、パワー半導体モジュール300fとコンデンサモジュール500の配置例である。
図20に示す実施例においては、流路形成部材12aには、開口部487g〜487lが設けられている。
開口部487gは、第一のパワー半導体モジュール300fの底面部に設けられた冷媒流入口493aと繋がる位置に形成される。第一のパワー半導体モジュール300fと流路形成部材12aの間には、開口部487gと冷媒流入口493aの間からの冷媒の流出を防ぐために、シール部材480fが設けられる。
開口部487hは、第一のパワー半導体モジュール300fの底面部に設けられた冷媒流出口493bと繋がる位置に形成される。第一のパワー半導体モジュール300fと流路形成部材12aの間には、開口部487hと冷媒流出口493bの間からの冷媒の流出を防ぐために、シール部材480gが設けられる。
開口部487iは、第二のパワー半導体モジュール300fの底面部に設けられた冷媒流入口493aと繋がる位置に形成される。第二のパワー半導体モジュール300fと流路形成部材12aの間には、開口部487iと冷媒流入口493aの間からの冷媒の流出を防ぐために、シール部材480hが設けられる。
開口部487jは、第二のパワー半導体モジュール300fの底面部に設けられた冷媒流出口493bと繋がる位置に形成される。第二のパワー半導体モジュール300fと流路形成部材12aの間には、開口部487jと冷媒流出口493bの間からの冷媒の流出を防ぐために、シール部材480iが設けられる。
開口部487kは、第三のパワー半導体モジュール300fの底面部に設けられた冷媒流入口493aと繋がる位置に形成される。第三のパワー半導体モジュール300fと流路形成部材12aの間には、開口部487kと冷媒流入口493aの間からの冷媒の流出を防ぐために、シール部材480jが設けられる。
開口部487lは、第三のパワー半導体モジュール300fの底面部に設けられた冷媒流出口493bと繋がる位置に形成される。第三のパワー半導体モジュール300fと流路形成部材12aの間には、開口部487lと冷媒流出口493bの間からの冷媒の流出を防ぐために、シール部材480kが設けられる。
本実施例における冷媒の流れ485a〜485nを説明する。入口配管13より流入した冷媒は、冷媒の流れ485aのように、冷媒流入口486a経由して、流路形成体12に導入される。その後、冷媒は、冷媒の流れ485oのように、流路形成体12内を、冷媒流入口486a側から開口部487g側に向かって流れる。その後、開口部487gから第一のパワー半導体モジュール300fへ、冷媒の流れ488aのように導入される。第一のパワー半導体モジュール300f内では、図19において前述した通り、冷媒の流れ488a〜488iのように流れる。その後、再び流路形成体12に導入された冷媒は、冷媒の流れ485pのように流れ、第二のパワー半導体モジュール300fに導入される。その後は第一のパワー半導体モジュール300fと同様に、モジュール内部を流れる。その後、再び流路形成体12に導入された冷媒は、冷媒の流れ485qのように流れ、第三のパワー半導体モジュール300fに導入される。その後は、第一、第二のパワー半導体モジュール300fと同様に、モジュール内部を流れる。その後、再び流路形成体12に導入された冷媒は、冷媒の流れ485rに示すように流れる。
パワー半導体モジュール300fの配置においては、パワー半導体モジュール300eと同様、冷媒流路配管466a、466bのような、冷媒流路配管を用いて連結することも可能である。
本実施例においては、パワー半導体モジュール裏面側カバーと、他のパワー半導体モジュールの表面側カバーとが、隣接して配置されているため、図16(b)に示した配置例と同様に、パワー半導体モジュール外部からの熱の吸収が抑制され、冷媒に温度を安定して保つことができる。
図20に示す実施例においては、パワー半導体モジュール300eとコンデンサモジュール500は流路形成体12上に隣り合うように配置されている。流路形成部材12aには、開口部487m、487nが設けられている。
開口部487mは、パワー半導体モジュール300fの底面部に設けられた冷媒流入口493aと繋がる位置に形成される。パワー半導体モジュール300fと流路形成部材12aの間には、開口部487mと冷媒流入口493aの間からの冷媒の流出を防ぐために、シール部材480lが設けられる。
開口部487nは、パワー半導体モジュール300fの底面部に設けられた冷媒流出口493bと繋がる位置に形成される。パワー半導体モジュール300fと流路形成部材12aの間には、開口部487nと冷媒流出口493bの間からの冷媒の流出を防ぐために、シール部材480mが設けられる。
本実施例においては、冷媒は、入口配管13より流入し、冷媒の流れ485aのように、冷媒流入口486a経由して、流路形成体12に導入される。その後、冷媒は、冷媒の流れ485sのように、流路形成体12内を、冷媒流入口486a側から開口部487m側に向かって流れる。その後、開口部487mからパワー半導体モジュール300fへ導入される。パワー半導体モジュール300f内では、図19において前述した通り、冷媒の流れ488a〜488iのように流れる。その後、再び開口部487nから流路形成体12へ導入された冷媒は、冷媒の流れ485tのように流れる。
本実施例においては、パワー半導体モジュール300fとコンデンサモジュール500が隣接して配置されているため、パワー半導体モジュール300fの直流端子とコンデンサ端子542とを、接続する配線を短くすることができる。したがって、低インダクタンスでの接続が可能となる。
さらに、流路形成体12上のパワー半導体モジュール300fの冷却と同時に、冷媒の流れ485tのように流れる冷媒によって、コンデンサモジュール500も冷却可能である。パワー半導体モジュール300eおよびコンデンサモジュール500の一方の面においてモジュールの冷却を行い、他方の面に電気接続機能を集約することで、流路形成体12上での配置自由度が向上し、電気特性と冷却特性の両方を最適化することができる。また、パワー半導体モジュールとコンデンサモジュールを隣接して配置することにより、流路形成体12からの冷却だけでなく、パワー半導体モジュールの裏面側カバーを介しての冷却も期待される。
また、コンデンサモジュールの冷却効率を高めるために、パワー半導体モジュール300fの裏面側カバー490bと、コンデンサモジュール500の外面を接触して配置してもよい。このような構成においては、パワー半導体モジュールの裏面側カバーを介しての更なる冷却効率の向上が期待される。
以上のように、本発明の冷媒流路一体の小型パワー半導体モジュールを用いることで、設計自由度が向上し、電力変換装置の全体最適レイアウトにより小型化が可能となる。