JP5951409B2 - 溶接システムおよび溶接方法 - Google Patents
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Description
ここで,狭開先の厚板をレーザ溶接する溶接装置が開示されている(特許文献1参照)。
大型構造物での狭開先溶接においては,溶接品質等の関係で,TIG溶接を用いる場合が多いが,溶接速度が必ずしも充分ではない。
MIG溶接を用いると,溶接速度は上がるが,アークが不安定になり,溶接品質が低下し易くなる(開先側部や積層境界(積層した溶接ビード間)での融合不良)。
ここで,シールドガスに酸化性ガス(O2等)を添加し,アークを安定化することができる(MAG溶接)。しかし,酸化性ガスにより,溶接ビードが酸化され,酸化スケールの除去等が必要となったり,溶接強度が低下したりする可能性がある。
実施形態に係る溶接システム100は,溶接対象10をレーザおよびアーク放電で溶接するシステム(ハイブリッドシステム)である。
狭開先(ナロウギャップ)は,例えば,厚板の端部を板厚に比し小さな間隔で,対向または接触させた小さい角度を有する間隙(開先)をいう。
具体的には,母材11,12の厚さH1と開先13の底部15での母材11,12の間隔W1において次の条件を満たす場合,狹開先とすることができる。
H1≦100mmの場合,W1≦20mm
H1>100mmの場合,W1≦30mm
このとき,開先13の側部16(母材11,12)のなす角度θ1は小さく,例えば,20°以下とする。
コリメータレンズ112は,焦点距離f1を有し,光ファイバ115の端部から放射されるレーザ光を平行光に変換する。
L=f2×(W−Wb)/(Wa−Wb)
Wb=λ/(2πNA)×f2/f1 ……式(1)
L:焦点外しの距離(mm)
W:加工点ビーム径(mm),
Wa:集光レンズ113への入射時のビーム径(mm)
Wb:焦点Pfでのビーム径(mm)(スポット径)
λ:レーザ光の波長(mm)
NA:光ファイバ115のNA値
f1:コリメータレンズ112の焦点距離(mm)
f2:集光レンズ113の焦点距離(mm)
電源制御部230は,溶接電源220を制御し,溶接ワイヤWWに印加される電圧等を調節する。
シールド部材310は,加工点P1,P2の周囲を覆い,シールドガスG1で満たすことで,溶接対象10の酸化等を防止する。また,溶接対象10から反射されるレーザ光を受け止め,周囲に漏れることを防止する。
溶接システム100による溶接の手順を説明する。図11〜図18は,溶接処理時の溶接対象10を表す断面図である。図11は,溶接前の溶接対象10を表し,図12〜図18は,溶接の進行に伴い変化した溶接対象10を表す。また,図19は,溶接後の溶接対象10溶接対象10を表す断面写真である。
1)レーザによる溶解(図11,図12)
レーザ光を照射するレーザヘッド110をロボット装置140により移動させる。
溶接対象10の開先13に沿って,開先幅W1よりも大きい加工点ビーム径Wのレーザ光が移動する。この結果,開先13の底部15および側部16の一部が溶融され,プールPL11が形成される。
溶接トーチ210は,トーチ移動機構240により,レーザヘッド110に固定される。このとき,レーザの加工点P1とアーク溶接の加工点P2の距離LLが例えば,3mm〜10mmとなるように設定される。
1)開先幅W1,開先中心Cと溶接ワイヤWWの距離Dの検出
開先幅W1,および開先中心Cと溶接ワイヤWWの距離Dを検出する。既述のように,溶接の進行に伴い,開先幅W1等が変化する可能性がある。
溶接と並行に検出する場合,溶接のためのレーザヘッド110の移動(走査)時に加工点P1より前での開先幅W1等を検出する。また,溶接と別個に検出するときには,レーザヘッド110,溶接トーチ210での溶接動作を停止した状態で,距離計330および撮像装置350を開先に沿って動作させ,開先に沿う開先幅W1および距離の変化を検出する。
開先幅W1に応じた加工点ビーム径Wとなるよう,Z軸方向でのレーザヘッド110と溶接対象10の距離(距離LL)を調節する。また,加工点ビーム径Wに応じたレーザ出力になるよう調節する。
レーザ光を照射させたレーザヘッド110をロボット装置140により移動させる。
溶接対象10の溶接線に沿って,開先幅よりも大きい加工点ビーム径のレーザ光が移動する。この結果,開先13の底部15および側部16の一部が溶融され,プールPL12が形成される。
レーザ光の照射に続いて,アーク溶接がなされ,プールPL12上にプールPL22が形成される。プールPL12とプールPL22は一体となり,冷却され,ビードB2が形成される。
開先幅W1=8mm,開先角度θ1=2〜6°,開先深さH1=30mmのステンレス鋼を狭開先多層盛り突合せ溶接した。加工点ビーム径Wを開先幅W1よりも+2〜6mm大きくした6000〜40000W/cm2のエネルギ密度を有するレーザ光を先行させた。このレーザ光で,開先13の側部16と前パスのビードを溶融させる。その後,レーザ光よりも距離LL=3mm〜10mm程度離した位置にMIGアークを後続させる。この結果,融合不良がなく,安定したアーク溶接を行い,多層盛りの積層が可能となる。
図20は,開先幅W1に対して,好ましい総入熱量Pの範囲の一例を示す。この例では,開先幅W1=8mmの場合,4.5〜32[kJ/cm]の総入熱量Pが好ましいことが分かる。この範囲の総入熱量Pで,融合不良がなく,安定したアーク溶接が可能であった。
例えば,溶接速度60cm/min,MIG電流250A,MIG電圧21Vの条件で MIG単独で溶接した場合,ビード幅9mm,溶込み深さ1mmである。これに副プロセスのレーザ溶接を加えた場合,ビード幅12mm,溶込み深さ3mmまで増加することが確認できた。
比較例1として,ビームを絞った(例えば,加工点ビーム径=φ0.2〜φ0.6mm)レーザ光の照射後に,MIG溶接することを考える。この場合,加工点ビーム径Wが絞られることで,レーザ光はいわゆるキーホール溶接の状態になり,キーホール型のプール(狭く,深いプール)が形成される。このプールが固まらない内に,MIGアーク溶接する。
さらにキーホール型のプールPL1xは,細く,深いため,Arガスが抜け難く,ブローホールが発生し易くなる。このため,比較例1の手法により多層盛り溶接を行う場合,母材に溶ける種類のシールドガスを選択する必要がある。
比較例2として,TIG溶接を考える。TIG溶接では,充分大きな溶接速度を得るのが困難である。例えば,溶接速度が8cm/min,1層あたり積層厚さ3mm程度と溶接効率が十分とは言い難い。また,入熱が MIGアークと比較し大きい為(TIG溶接:約15,000J/cm,MIG溶接:約7000J/cm),溶接による変形量が大きくなり易い。
Claims (11)
- 狭開先で突き合わされた1対の溶接対象の,開先の幅よりも大きい加工点ビーム径を有するレーザ光を出射するレーザヘッドと,
溶接ワイヤに電圧を印加してアーク溶接する溶接トーチと,
前記レーザヘッドと,前記溶接トーチとの間隔を調節する間隔調節機構と,
前記間隔が調節されたレーザヘッドおよび溶接トーチを前記開先に沿って移動させ,前記ヘッドから出射されるレーザ光で前記開先内を溶融し,前記溶融された前記開先内を前記溶接トーチでアーク溶接して,溶接ビードを形成させる,移動部と,
を具備する溶接システム。 - 前記開先の幅を検出する幅検出部と,
前記検出された開先の幅に基づいて,前記レーザ光の加工点ビーム径を調節するビーム径調節部と,
をさらに具備する請求項1記載の溶接システム。 - 前記開先の中心と前記溶接ワイヤとの位置関係を検出する位置関係検出部と,
前記検出された位置関係に基づいて,前記溶接トーチの位置を調節する位置調節部と,
をさらに具備する請求項1または2に記載の溶接システム。 - 前記レーザ光の加工点と前記アーク溶接の加工点を覆う覆いと,
前記覆い内にシールドガスを供給するガス供給部と,
前記溶接対象から反射されたレーザ光を受ける遮光部材と,
前記遮光部材を冷却する冷却機構と,
をさらに具備する請求項1乃至3のいずれか1項に記載の溶接システム。 - 前記アーク溶接が,MIGアーク溶接である
請求項1乃至4のいずれか1項に記載の溶接システム。 - 前記レーザ光の加工点と前記アーク溶接の加工点の距離が3mm以上10mm以下である
請求項1乃至5のいずれか1項に記載の溶接システム。 - 前記溶接対象が,ステンレス鋼,炭素鋼,低合金鋼,非鉄合金のいずれかである
請求項1乃至6のいずれか1項に記載の溶接システム。 - 狭開先で突き合わされた1対の溶接対象の,開先の幅よりも大きい加工点ビーム径を有する,レーザ光の加工点を前記開先に沿って移動させ,前記開先内を溶融させる工程と,
電圧を印加された溶接ワイヤからのアーク放電による加工点を前記開先に沿って移動させ,前記レーザ光で溶融された開先内をアーク溶接して,溶接ビードを形成する工程と,
を具備する溶接方法。 - 前記開先の幅よりも大きい,加工点ビーム径を有するレーザ光で,前記溶接ビードを有する前記開先内を溶融させる工程と,
前記溶融された開先内をアーク溶接し,前記溶接ビード上に,第2の溶接ビードを形成する工程と,
をさらに具備する請求項8記載の溶接方法。 - 前記レーザ光の加工点と前記アーク溶接の加工点の距離が3mm以上10mm以下である
請求項8または9に記載の溶接方法。 - 前記アーク溶接が,MIGアーク溶接である
請求項8乃至10のいずれか1項に記載の溶接方法。
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