JP5945657B2 - ペースト状潤滑剤組成物 - Google Patents
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Description
一方、粘着性を有する潤滑剤としてはグリースが知られているが、グリースは、適度な粘度を有することで潤滑させたい部位に保持される。本明細書において、適度な粘度を有することで対象部位で保持されることを「ダレない」、粘度が低いために対象部位に保持されずに流れてしまうことを「ダレる」と言うことがある。グリースの特性として、高温時にはダレずに、低温時には固まらないことが最も重要なことである。例えば、自動車部品は、寒冷地など温度が大きく変化する地域でも用いられるため、自動車が初期始動から通常運転になるまで急激な温度変化が予測される。
したがって、自動車部品用のグリースとしては、温度依存性が小さいものが望ましい。自動車部品用の金属・プラスチック等の摺動部品に使用されるグリースは、特に保持特性(ダレ防止性)が求められる。
従来より、この分野の潤滑剤としては、鉱油やシリコン油に金属セッケンを微結晶として添加したもの、又は鉱油やシリコン油に金属セッケンを濃厚懸濁液として添加したグリースに代表される。しかし、これらは、広い温度範囲での良好な粘度特性を示す潤滑剤は存在せず、潤滑特性および固着性について問題があった。すなわち、従来の潤滑剤は、高温時には粘度が低下し、ダレてしまい、低温時には固体状となり、潤滑性能を十分に発揮できなかった。
これらを解決するための手段として、シリコン油に金属セッケンを懸濁させたグリース等があるが、シリコン油は不純物として低沸点物質が残るため、その成分が揮発する結果、接点等に付着して通電不良を起こし誤動作を引き起こす原因となっている。そのほかに従来の潤滑剤組成物として特許文献1〜9に示すものが知られている。
また、試験条件は、80℃/100hrとして行うが、各成分の役割(広範囲での温度)については一切記載がない。また、基油が2種構成である必要性については一切記載はない。
また、現在使用されているグリースの多くは基油に鉱物油を使用しているため、環境に悪い。一方、耐熱性や低温度特性を向上させるために基油にシリコン油を使う場合が多いが、低分子量成分のシロキサン(具体的には、環状ジメチルシロキサン、フェニルメチルシリコーン等)が揮散し接点不良を起こすなど問題となっている。なお、シリコン油以外にフッ素油が使用されるフッ素グリースも存在するが、更に高価なものとなる。また、従来のグリースでは、滴点が200℃以上のものが主流であるが、実際には80℃以上もしくは−30℃以下の条件化下でグリースとしての機能を損なうものが多い。
本発明のペースト状潤滑剤組成物は、有機無機素材に区別なく、摺動面の潤滑に係わる精密部品・自動車用・産業用等様々な分野への用途を目的とする。特に、広範囲な温度変化でも一定の性能を要求するする分野が好ましい。
一般に、グリース潤滑剤組成物の基油は鉱油、温度特性の向上にシリコン油を使用し、増粘剤としては金属セッケンが構成の主流であり、増稠剤や接点不良を起こさない基油の検討はあるが、特に低温度用に対応する基油と高温度用に対応する基油を特定し、広範囲で良好な摺動性を有する成分を詳細に検討した例は一切ない。
本発明は、成分(A)の基油構成が低温度用成分(A−1成分)と高温度用成分(A−2成分)の2種の組み合わせで効果が発揮することを見出した。
本ペースト状潤滑剤組成物に使用する成分構成は、高温度側では流動化(だれない)せず、低温度側では固化しない成分を組み合わせることで、広範囲な温度での摺動性が得られることが判った。とりわけ、低温度側での摺動特性を良好にする成分が基油(A−1成分)の特性であり、流動点が−30℃以下の成分であることが不可欠であることを明らかにした。さらには、接点不良を起こさないためには、成分(A)が揮発性成分を含まない構成が好ましく、全成分が揮発性成分を含まない構成がさらに望ましい。しかし、各成分の精製度によって多少含まれる場合もあるため、ここでいう揮発性成分を含まないとは、実質的に揮発して悪影響を及ぼさないような含有量であれば厳密にゼロである必要はなく、例えば0.1重量%以下が目安として挙げられる。
本発明のペースト状潤滑剤組成物に含まれる成分(A)基油は、低温度で固化しないA−1成分(低温用)と、高温度で流動化しないA−2成分(高温用)の2種の成分を含む。
また、成分(A)のA−1成分の分子量が500以下で、且つ流動点が−30℃以下の炭化水素であり、A−2成分の分子量が2000以上で、且つ動粘度が9000cSt (40℃) 以上の炭化水素であることがより望ましい。
また、A−1成分とA−2成分の含有量については、A−1成分とA−2成分の合計量が、本潤滑剤組成物において10から70重量%であることが望ましい。
さらにまた、A−1成分とA−2成分の比が、70:30〜40:60であることが望ましく、55:45〜55:45がより望ましく、50:50がもっとも望ましい。
A−1成分とA−2成分の代表的な物質としては以下が挙げられる。
A−1成分(低温用)
トリメリット酸トリ2エチルヘキシル、テトラオレイン酸ペンタエリスリトール、トリオクタン酸トリメチロールプロパン、トリデカン酸トリメチロールプロパンおよびポリオールエステル、ペンタエリスリトールエステル、しょ糖エステル等のエステル類、天然油脂等が挙げられ、炭化水素系では、流動パラフィン、直鎖パラフィン油、および環状パラフィン油、ポリブテン(分子量が100以上のもの)、スクアラン(天然)等が挙げられる。
A−2成分(高温用)
スクアラン、イソパラフィン、αオレフィン、α−オレフィン(共)重合体、エチレン−α−オレフィン(共)重合体等の天然および合成の炭化水素、また、これらのオリゴマーおよび重合物(高分子)、界面活性剤等が挙げられる。界面活性剤類としては、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド、ポリアルキレングリコール等からなる群から選ばれる非イオン系界面活性剤の他、アニオン系、カチオン系、両性界面活性剤、その他、天然・合成の高級アルコール(炭素数が6以上のもの)、ワックス等が挙げられる。
成分(B)滴点向上剤の金属セッケン(金属塩)としては以下の(1)〜(5)の群から選ばれるいずれか1以上であればよい。
(1)アルキル基の構造が直鎖、側鎖(分岐鎖)、環状を有する
(2)(1)のオリゴマー又は重合物
(3)(1)のアルキル鎖中に官能基(−OH,−SO3,−SO4,−COOH)が結合したもの
(4)(1)のアルキル基の末端もしくは(1-3)のアルキル鎖中にカルボキシル基を1以上有する低級(C1〜C7)及び高級脂肪酸(C8〜C22)
(5)(4)のカルボキシル基に、重金属類(Ca, Al, Mg)またはアルカリ土類金属が結合している金属セッケン(金属塩)
等が代表例で、その他、キレート剤(EDTA)、アミノ酸(βアラニン型、ベタイン型)のN、O又はアミノ酸の分子中に結合するエチレンオキシド(-(EO)n-)、−OH、−COOH等と結合する有機金属錯体、また、(1)から(5)の1種以上の混合物等が代表例で、有機金属錯体となるものであれば、これに限定されない。
また、成分(B)滴点向上剤の平均粒径としては、100μm以下であることが望ましい。100μm以上だとつぶつぶ状となり、均一な潤滑剤組成物ができない。さらに、摺動時にざらつき感があり潤滑性能上好ましくない。従って、均一であって、摺動時もざらつき感が無く、潤滑性能に優れた潤滑剤組成物を得るためには、滴点向上剤の平均粒径は100μm以下であることが望ましい。
成分(C)固化防止剤は、潤滑剤組成物が低温時に固化しないようにするために添加するものであって、融点が30℃以上である必要がある。上記のとおり、A−1成分と本成分(C)との混合物が−30℃以下で結晶化(以下、「固化」とする)せずに流動性を有することができるように固化を防止する必要があるからである。また、成分(C)固化防止剤の含有量は5から30重量%であることが望ましい。
成分(C)固化防止剤は、具体的には、以下(1)〜(8)の群から選ばれる1以上が挙げられる。
(1)高級脂肪酸(C8〜C22)とアルキルアミン(C8〜C22)で結合される高級脂肪酸アミドで、アルキルアミンがモノアミン以上、1級、2級、3級および環状構造のもの
(2)高級脂肪酸(C8〜C22)を二量化したダイマー酸のカルボキシル基に1以上のアルキルアミン(C8〜C22)で結合される高級脂肪酸アミド
(3)上記(1),(2)の高級脂肪酸のアルキル基鎖中に結合する1以上のカルボキシル基と1以上のアルキルアミンとが結合した高級脂肪酸アミド
(4)上記(1)から(3)の高級脂肪酸アミドの分子鎖中にカルボキシル基以外の官能基(水酸基, りん酸, スルフォン酸, プロピレンおよび/又はエチレンオキシド等)を有するもの
(5)高級アルコール(C8〜C22)および/又はそのエステルの分子鎖中に結合する1以上のカルボキシル基とアルキルアミンとが結合する高級脂肪酸アミド
(6)(4)の官能基と結合した塩、アミド、エステル
(7)エチレンオキシドの末端にカルボキシル基が結合する、ポリエチレン・アルキルエーテルカルボン酸とアルキルアミンとが結合したポリエチレン・アルキルエーテルカルボン酸アミド
(8)上記(1)から(7)のいずれかと結合したエステル、重合物、塩、それらの混合物等が代表例で、その他、天然ワックス(ウールグリース)、動植物油脂、非イオン界面活性剤・アニオン界面活性剤・カチオン界面活性剤・両性界面活性剤に付加するエチレンオキシド(−(EO)n)および/又はプロピレンオキシド(−(PO)n) のモル数(n)が10以下のもの等も含まれ、融点が30℃以上であればこれに限定されない。
本発明の潤滑剤組成物は、潤滑性能に影響を与えない範囲で、また使用の目的に応じて潤滑剤に通常ふくまれる成分を含むことができる。たとえば、分散剤、安定剤、固体潤滑剤、極圧剤、2次特性向上剤、酸化防止剤、防錆剤、等が挙げられる。
分散剤および安定剤は、必要に応じて添加すればよく、たとえば、ソルビタンアルキルエステルが挙げられる。添加量としては、1〜20重量%の範囲であればよい。
固体潤滑剤は、必要に応じて添加すればよく、金属酸化物、無機物、有機物かどうかに係わらず固体状であればいずれでもよい。そのうちでも代表的なものとしては、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、金属(Ca, Na, K, Li等)セッケン、グラファイト, ナノダイヤ, MoS2等が挙げられる。
ジアルキルジチオりん酸亜鉛(ZnDTP)、塩素化脂肪酸エステル、ジチオカルバミン酸モリブデン(有機モリブデン)、また、PRTR、RoHS指令等の規制物質に該当しないパラフィンワックス系塩素化パラフィン等も含み、硫黄化合物としては、炭化水素、動植物油脂、合成油等のアルキル鎖又は官能基の部分硫化物等が挙げられるが、一例でありこれに限定されない。
本発明の潤滑剤組成物の性能をより向上させるための二次特性向上の添加剤の例としては、酸化防止剤、錆び止め剤等を添加することが望ましい。ただしこれらに限定されるものではない。
ジブチルヒドロキシトルエン等が代表例で、各種有機物の酸化防止に効果を有するものであれば、これに限定されない。
芳香族アミン、脂肪族アルキルアミン・ベンゾトリアゾール等が代表例で、各種金属に効果を有するものであれば、これに限定されない。
以下、本発明について実施例をもとに具体的に説明するが本発明はなんらこれに限定されるものではない。
各試験に用いる潤滑剤組成物は、以下の手順にしたがって作製した。
成分(A)基油、成分(C)固化防止剤、固体潤滑剤、酸化防止剤等を所定量混合し、80℃に加温して均一になるまで撹拌した。次に、80℃の温度を保った状態で、成分(B)滴点向上剤を所定量添加し、ニーダーを用いて攪拌した。最後に、混合物の温度が20〜30℃に下がった時点で各成分を確実に均一化させるために、再度ニーダーを用いて攪拌し本ペースト状潤滑剤組成物を得た。
成分(A)基油のエチレンα-オレフィン(共)重合体(流動点−15℃、40℃で600cStのもの、分子量:2800〜8000):48.9重量%、成分(B)滴点向上剤のカルシウムステアレート(粒径70μ以下のもの):30重量%、成分(C)固化防止剤のオレイン酸アミド:20重量%、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE):1重量%、酸化防止剤:0.1重量%の比率で混合しペースト状潤滑剤組成物(試料−1)を得た。
成分(A)基油のスクアラン(流動点−38℃のもの):48.9重量%、成分(B)滴点向上剤のカルシウムステアレート(粒径70μ以下のもの):40重量%、成分(C)固化防止剤のオレイン酸アミド:10重量%、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE):1重量%、酸化防止剤:0.1重量%の比率で混合しペースト状潤滑剤組成物(試料−2)を得た。
成分(A)基油のポリαオレフィン(流動点−69℃、40℃で20cStのもの、分子量:1500〜30000):48.9重量%、成分(B)滴点向上剤のカルシウムステアレート(粒径70μ以下のもの):30重量%、成分(C)固化防止剤のオレイン酸アミド20重量%、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE):1重量%、酸化防止剤:0.1重量%の比率で混合しペースト状潤滑剤組成物(試料−3)を得た。
成分(A)基油のポリαオレフィン(流動点−69℃、40℃で20cStのもの):48.9重量%、成分(B)滴点向上剤のカルシウムステアレート(粒径300μ):30重量%、成分(C)固化防止剤のオレイン酸アミド:20重量%、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE):1重量%、酸化防止剤:0.1重量%の比率で混合しペースト状潤滑剤組成物(試料−4)を得た。
成分(A)基油のシリコンオイル(A-1)(流動点−55℃、粘度40℃で50cStのもの):25重量%、エチレン−α−オレフィン(共)重合体(流動点−15℃、40℃で600cStのもの、分子量:2800〜8000)(A-2):23.9重量%、成分(B)滴点向上剤のカルシウムステアレート(粒径70μ以下のもの):30重量%、成分(C)固化防止剤のオレイン酸アミド:20重量%、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE):1重量%、酸化防止剤:0.1重量%の比率で混合しペースト状潤滑剤組成物(試料−5)を得た。
成分(A)基油にエチレン−α−オレフィン(共)重合体(A-2)(流動点−15℃、粘度40℃で600cStのもの、分子量:2800〜8000):25重量%、ポリブテン(A-1)(流動点−40℃以下、粘度40℃で11cStのもの):25重量%、成分(B)滴点向上剤にカルシウムステアレート(粒径70μ以下のもの):20重量%、成分(C)固化防止剤にオレイン酸アミド:20重量%、分散剤としてソルビタンアルキルエステル:8重量%、固体潤滑剤にポリテトラフルオロエチレン(PTFE):1重量%、酸化防止剤:1重量%の比率で混合しペースト状潤滑組成物(試料−6)を得た。
1.試験方法
1−1.摩擦係数(μ)の測定
本発明の基本特性である潤滑性能は摩擦係数(μ)を低温(−30℃)、室温(22〜24℃)、高温(80℃)の3水準、荷重1,090Nで測定することにより評価した。
摩擦係数の測定には曾田式振子試験機を使用し、各試料を試験ピン側に均一に塗り測定した。
低温は、曾田式振子試験機の油カップの下にペルチェ素子を装着して−30℃に冷却して測定した。室温は、22〜24℃で測定した。高温は、曾田式振子試験機に付属するヒーターで油カップ80℃に加熱して測定した。
1−2.滴点の測定方法
滴点測定は、JIS K 2220に準じた方法で行った。すなわち、滴点の測定は,規定の試料容器にグリースをつめ,一定条件で加熱し,試料容器の孔からグリースが軟化して滴下したときの温度を求めた。
1−3.蒸発量の測定方法
蒸発量の測定は、JIS K 2220に準じた方法で行った。すなわち、蒸発量の測定は、200gの各試料を銅製試料容器にとり,蒸発器中に入れて、これを99℃の恒温浴中に浸し,加熱空気を22時間通じた後の蒸発減量を重量%として算出した。
1−4.評価対象試料
・上記試験例で得られた試料−1〜試料−6のペースト状潤滑剤組成物
・市販のシリコン油系グリース
東レ・ダウコーニング株式会社製 SH44M-100TUBE
本発明の潤滑剤組成物と市販品の上記試験結果を表3に示す。
1.試験方法
1−1.摺動荷重の測定
自動車のダッシュボードに使用されるピストン式摺動部品に評価対試料を塗布後、−30℃(低温)、20℃(室温)、80℃(高温)の各温度条件下において、除々に荷重を加え、ピストンが動き始める時の摺動荷重を測定した。摺動速度は、いずれも往復1分とした。
ピストン式摺動部品としては、長さ100mm、直径15mmのプラスティク製(ポリエチレン)注射器を用いた。注射器はプランジャーと固定された注射筒からなり、注射筒には圧力センサーを取り付けて、プランジャー部に、評価対象試料を万遍なく塗り、プランジャーを押した時の荷重を測定した。また、プランジャーの円筒部には往復運動をするカムを装着して押した。
高温(80℃)での実験は恒温槽に、低温(−30℃)での実験は冷凍庫内にそれぞれ上述した往復運動する装置を装着した注射器を入れて行った。
1−2.劣化試験
80℃に設定した恒温槽に、ピストンに評価対象試料を塗布した状態で入れ、200時間加熱した後、恒温槽から取出し室温になるまで放置した後に摺動荷重を測定した。
1−3.評価対象
実施例1の「1.試験方法 1−4.評価対象試料」に同じ
2.試験結果
上記試験結果を表4に示した。なお、摺動荷重(g)と曾田式振子摩擦試験機の摩擦係数との相関性について調べた結果、R2=0.78と良好であることを確認した。
(3−1)試料−1
摺動荷重は、80℃で310g、20℃で380g、−30℃で1080gと−30℃において高く、−30℃で摺動部よりキー音が発生し、摺動性に劣る結果にあった。また、劣化試験では試料が固化していたことから摺動荷重は2600であった。
(3−2)試料−2
摺動荷重は、80℃で180g、20℃で360g、−30℃で550gと各温度において良好な結果が得られ、−30℃においてキー音の発生も無かったことから、基油(A)は流動点が−30℃以下であることが望ましい。また、劣化試験では試料が固化していたことから摺動荷重は2800であった。
(3−3)試料−3
摺動荷重は、80℃で130g、20℃で340g、−30℃で500gと各温度において、良好な結果が得られ、−30℃においてキー音の発生も無かったことから、基油(A)の流動点は−30℃以下であることが望ましい。また、劣化試験では試料が固化していたことから摺動荷重は3100であった。
(3−4)試料−4
本試料の(B)滴点向上剤の粒径は300μmであり、潤滑剤組成物としてザラザラ感があった。
摺動荷重は、80℃で1120g、20℃で1550g、−30℃で2160gと各温度において摺動荷重も高く、特に−30℃では摺動部よりキー音が発生し、摺動性に劣る結果にあったことから、滴点向上剤の粒径は100μm以下のものが望ましい。また、劣化試験では試料が固化していたことから摺動荷重は4200であった。
(3−5)試料−5
本試料は、接点不良の原因として課題となっているシリコン油を使用し、本発明のペースト状潤滑剤組成物と比較した参考試料である。
摺動荷重は、−30℃〜80℃の試験、劣化試験の全てにおいて良好であった。劣化試験では試料が流動していたことから摺動荷重は820であった。しかし、本組成物は、シリコン成分を含むため、繰り返し摺動試験を行えば本成分中のシリコン油中に含まれる低沸点物質が蒸発し、接点不良が発生することは明らかである。
(3−6)試料−6(本発明)
本試料は、本発明のペースト状潤滑剤組成物である。
摺動荷重は、80℃で180g、20℃で360g、−30℃で550gと各温度において、良好な結果が得られ、劣化試験で850であった。特に−30℃においてキー音の発生も無かった。
基油成分は分子量が500以下で、且つ流動点が−30℃以下の炭化水素と、分子量が2000以上で、且つ動粘度が9000cSt (40℃) 以上の炭化水素の組み合わせが好ましい。
(3−7)市販品について(参考例)
比較のため、揮発成分を含むシリコン油を使用した市販の潤滑剤組成物は、−30℃〜80℃の試験において良好な潤滑性を得たが、シリコン油中には低沸点成分を含むため、繰り返し摺動試験を行えば本成分が蒸発し、接点不良が発生することは明らかで、成分(A)基油にシリコン油を使用することは望ましくない。
(3−8)まとめ
潤滑剤組成物の試料−1〜4及びシリコンレス(シリコン油の無添加)の市販品グリース(市販のリチウムグリース、高真空用グリース)で劣化試験を行ったところ全く摺動せず、潤滑性が無い状態に等しかった。試験後の摺動部分及び各潤滑剤の状態を確認したところ、摺動部分に潤滑剤の付着が無く、各潤滑剤は固化しており、潤滑剤が摺動部分に伸展しないことが確認された。
これに対して、本発明の潤滑剤組成物である試料−5、6はこのような現象は起こらず、良好な摺動性を示した。以上より、成分(A)基油には流動点が−30℃以下の基油(A−1)の他に、長時間の熱安定性(劣化試験)とペースト状潤滑剤を固化させないためのエチレン−α−オレフィン共重合体(A−2)の2種の組み合わせにより、全ての温度条件での潤滑性能(摺動性能)を満たすことが分かった。
また、接点不良を起こす揮発成分を含まない基油を用いれば、車載、家電、プリンター等に使用される摺動用の潤滑剤に適し、環境へもやさしい潤滑剤組成物を提供できる。
Claims (1)
- 成分(A):基油,成分(B):カルシウムステアレート,成分(C):オレイン酸アミドを混合することにより得られるペースト状潤滑剤組成物であって、
以下の(1)〜(3)の特徴を有する前記組成物(ただし、グリース組成物を除く)。
(1)成分(A)は、A−1成分とA−2成分の2種の成分を含み、
A−1成分は、−30℃で固化せず、分子量が500以下で流動点が−30℃以下の炭化水素であり、
A−2成分は、80℃で流動化せず、分子量が2000以上で、動粘度が9000cSt (40℃) 以上の炭化水素であり、
A−1成分とA−2成分の合計量が10〜70重量%であり、かつ、A−1成分とA−2成分の比が、70:30〜40:60である
(2)成分(B)は、含有量が20から40重量%であり、平均粒子径が100μm以下である
(3)成分(C)の含有量は10から20重量%である
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