以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。なお、各図において互いに同一又は相当する部材には同一あるいは類似の符号を付し、重複した説明は省略する。
まず図1を参照して、本発明の第1の実施の形態に係る吸放湿ユニットとしての吸放湿パネル10、及び本発明の第2の実施の形態に係る調湿システム1を説明する。図1は、吸放湿パネル10を備える調湿システム1の概略構成図である。調湿システム1は、吸放湿パネル10と、吸放湿パネル10に供給する熱媒体としての冷温水CHの温度を調節する温調機器21と、制御装置31とを備えている。吸放湿パネル10は、調湿対象室Rに設置されている。
吸放湿パネル10は、調湿部材としての調湿板13と、熱媒体流路形成部材としての変温板15とを備えている。調湿板13は、調湿材料としての珪藻土を板状に形成したものである。
ここで図2を参照して、調湿材料について説明する。図2は、調湿材料の相対湿度(%)と吸湿量(mg/g)との概略関係を示すグラフである。図2のグラフは、調湿材料が25℃のときの特性を示している。図2中、実線の曲線Ldは珪藻土の特性を示しており、一点鎖線の曲線Lcは活性炭の特性を示しており、二点鎖線の曲線Lsはシリカゲルの特性を示している。ここでいう相対湿度は、調湿材料の内部の空気流通路に存在する空気の相対湿度である。つまり、調湿材料の構造を概念で表現すると、調湿材料の内部には、底部が膨らんだ微細な窪み(細孔)が多数存在し(多孔質構造)、各細孔の周囲には各細孔に通ずる空気流通路が張り巡らされているところ、この空気流通路に存在する空気の相対湿度がここでいう相対湿度である。以下、調湿材料の相対湿度というときは、調湿材料の内部の空気流通路中の空気の相対湿度を意味するものとする。調湿材料の単位質量当たりの水蒸気の吸湿量は、その調湿材料が保有している水蒸気の量(含水量)であり、細孔容積と関係するため、各調湿材料によって異なる。
図2中、曲線Lda、Lca、Lsaは、各調湿材料が水蒸気を吸着する際の特性を示している。曲線Lde、Lce、Lseは、各調湿材料が水蒸気を放出(脱着)する際の特性を示している。各調湿材料とも、相対湿度が上昇するほど水蒸気の吸着量が上昇し、相対湿度が低下するほど水蒸気の吸着量が低下(放出量が上昇)する特性を有している。また、各調湿材料とも、水蒸気を吸着するときの相対湿度よりも低い相対湿度で水蒸気の放出をする特性となっている。調湿材料が所定量の水蒸気の吸着を行う相対湿度は、細孔半径と関連するため、各調湿材料によってそれぞれ定まっており、これが所定の相対湿度となる。図2から分かるように、概ね、珪藻土、活性炭、シリカゲルの順に、より高い相対湿度で水蒸気を吸着あるいは放出する。
再び図1に戻って吸放湿パネル10の説明を続ける。本実施の形態では、調湿板13が珪藻土で形成されているため、比較的高い相対湿度で水蒸気を吸着し、吸着時の相対湿度よりも低いものの比較的高い相対湿度で水蒸気を放出する特性を有している。調湿板13は、矩形(長方形又は正方形)の板状に形成されている。板状に形成された調湿板13は、所定の厚さを有している。所定の厚さについては後述する。
変温板15は、調湿板13の一方の面に設けられ、その一方の面の温度を変化させる部材である。つまり、変温板15は、変温装置の一形態である。変温板15は、角パイプが複数本並列に配設されることで全体として矩形の板状に形成されている。変温板15を構成する各角パイプの内部が、熱媒体流路としての冷温水流路15rとなっている。冷温水流路15rには、冷温水CHが流れる。冷温水CHは、状況に応じて冷水にも温水にもなり得る液体である。全体として板状に形成された変温板15の面の大きさは、典型的には、調湿板13の面の大きさと同じになっている。変温板15は、一方の面全体で、調湿板13の一方の面全体に接するように配設されている。本実施の形態では、変温板15の他方の面全体にも、別の調湿板13の一方の面全体が接触配置されている。換言すれば、変温板15は、2つの調湿板13で両面が挟まれて構成されている。
変温板15に調湿板13が配設された吸放湿パネル10は、冷温水流路15rに冷温水CHが流れると、冷温水CHの熱(冷熱又は温熱)が調湿板13に伝達され、調湿板13の温度が変化するように構成されている。調湿板13の温度が変化すると、調湿板13内部の空気流通路に存在する空気の温度も変化することとなる。空気に含まれる水分量が変化しない場合、空気の温度が変化すると相対湿度も変化する。ここで、調湿板13の温度が変化して、調湿板13内の空気流通路の空気の温度も変化すると、相対湿度が変化することとなる。つまり、調湿板13は、冷却されると相対湿度が上昇し、加熱されると相対湿度が低下することとなる。調湿板13の相対湿度が上昇すると、空気流通路に存在する空気中の水蒸気が細孔内に入り込み、水蒸気が移動した空気流通路に存在する空気には水蒸気分圧の差により調湿板13周囲の空気の水蒸気が入り込むことで調湿板13は周囲の空気の水蒸気を吸着し、逆に調湿板13の相対湿度が低下すると水蒸気は上述の逆方向に移動して放出される。このようにして、調湿板13の温度の変化に伴って、相対湿度が変化すると、その相対湿度に見合った吸湿量(図2参照)に相当する水分を調湿板13が保有するように、調湿板13が水蒸気を吸着又は放出することとなる。
調湿板13が保有できる水分の量は、調湿板13の質量、換言すれば体積に依存する。したがって、調湿板13は、調湿対象室Rを所望の湿度にするために調湿対象室Rから除去すべき水分量を吸着できる体積(面積及び厚さ)とするとよい。ここで、調湿板13は、一方の面に変温板15が設けられており、他方の面は調湿対象室Rの空気に触れているので、変温板15側の面と空気に触れる面との間に温度差が生ずる。つまり、調湿板13は、厚さ方向に、温度勾配、ひいては相対湿度の勾配が形成されることとなる。調湿板13に吸着保持させる水分量は、上述の厚さ方向の温度勾配を考慮した、冷温水CHによって冷却できる温度に対応する調湿板13の相対湿度における吸湿量によって決まる。このように決定された調湿板13の厚さが所定の厚さとなる。
温調機器21は、電気や熱等の外部からのエネルギー(外部エネルギー)を用いて、変温板15に供給する冷温水CHの温度を調節する機器であり、典型的には冷凍機あるいはチリングユニットが用いられる。温調機器21は、変温板15で調湿板13との熱交換により調湿対象室R内の温度に近づいた冷温水CHを導入して温度を調節するように構成されている。温調機器21は、冷温水CHを冷却するときは、内部を循環する冷媒(不図示)が冷凍サイクル中で蒸発する際に冷温水CHから蒸発潜熱を奪うことにより冷温水CHを冷却し、冷温水CHを加熱するときは、内部を循環する冷媒(不図示)がヒートポンプサイクル中で凝縮する際に発生する凝縮熱を冷温水CHが受熱することにより冷温水CHを加熱するように構成されている。
温調機器21と吸放湿パネル10とは、温調機器21から吸放湿パネル10へ冷温水CHを導く往管28と、吸放湿パネル10から温調機器21へ冷温水CHを導く還管29とで接続されている。本実施の形態では、往管28が往ヘッダ18を介して吸放湿パネル10に接続されており、還管29が還ヘッダ19を介して吸放湿パネル10に接続されている。往ヘッダ18は、図1では便宜上一部省略しているが、変温板15の一方の側面に複数現れる冷温水流路15rのそれぞれと、可撓管18fで接続されている。還ヘッダ19は、変温板15の他方の側面に複数現れる冷温水流路15rのそれぞれと、可撓管19fで接続されている。還管29には、冷温水CHを流動させる冷温水ポンプ25が配設されている。冷温水ポンプ25は、流量調節手段としてのインバータ25vが設けられており、吐出流量(ひいては吸放湿パネル10に供給される冷温水CHの流量)を変えることができるように構成されている。流量調節手段は、インバータ25vのほか、二方弁等を用いてもよい。
制御装置31は、調湿システム1の運転を制御する構成部材である。制御装置31は、温調機器21と信号ケーブルで接続されており、温調機器21の発停及び温調機器21から導出される冷温水CHの温度調節を行うことができるように構成されている。また、制御装置31は、冷温水ポンプ25のインバータ25vと信号ケーブルで接続されており、冷温水ポンプ25の発停及び吐出流量の調節を行うことができるように構成されている。また、制御装置31は、調湿対象室R内に設置されたリモコン31rと信号ケーブルで接続されており、上述の調湿システム1の運転の指令を調湿対象室Rから制御装置31に伝えることができるように構成されている。リモコン31rでは、指令を即時に制御に反映させることのほか、タイマーにより設定された時間にあらかじめ決められた運転を行わせることができるように構成されている。
引き続き図1を参照して、調湿システム1及び吸放湿パネル10の作用を説明する。ここでの説明では、調湿対象室Rが宿泊施設の客室であるとし、14時半から翌日の11時までは除湿運転とし、11時から14時までは吸放湿パネル10が吸着した水蒸気を放出させる再生運転を行うこととして説明をする。制御装置31には、上述の時間帯に除湿運転及び再生運転を行うようにあらかじめ設定されている。制御装置31は、14時半になったら、冷温水ポンプ25を起動させて、冷温水CHを、温調機器21、往管28、吸放湿パネル10の変温板15、還管29の間で循環させる。冷温水CHの流動が開始されたら、制御装置31は、温調機器21を冷凍運転で起動させ、冷温水CHを冷却する運転をさせる。これにより、温調機器21からは、冷却された冷温水CHが供給される。本実施の形態では、冷温水CHが、概ね15℃〜20℃に冷却される。
温調機器21から導出された冷温水CHは、冷温水ポンプ25により、往ヘッダ18を介して吸放湿パネル10の変温板15に導入される。変温板15に導入された冷温水CHは、還ヘッダ19に向かって冷温水流路15rを流れる。このとき、冷温水CHが保有する冷熱が調湿板13に伝達され、調湿板13は冷やされる。冷やされた調湿板13は、変温板15側が、調湿対象室R内の空気に触れる側よりも温度が低くなっている。調湿板13は、温度が低くなると相対湿度が上昇する。そして、調湿板13の相対湿度が、図2に示す吸湿量が上昇している相対湿度まで上昇すると、調湿板13は、調湿対象室R内の空気中の水蒸気を吸着する。冷温水CHは、調湿板13が水蒸気を吸着する相対湿度になる温度まで冷却可能な温度に設定される。これにより、調湿対象室R内は、空気中の水蒸気量が減少して相対湿度が低下する。
吸放湿パネル10は、調湿板13が変温板15に冷やされることによって、放射パネルとしても機能することになり、調湿対象室R内の顕熱を処理して放射冷房を行うこともできる。このとき、調湿板13が空気中の水蒸気を吸着する際に凝縮熱が発生することがあるが、調湿板13による水蒸気の吸着は物理吸着であるので、化学吸着により除湿を行う装置のような高い発熱はなく、調湿板13は吸湿しながら温度が低下することとなる。調湿板13は、吸湿させる際に露点温度まで冷却しなくて済むため、吸放湿パネル10が放射パネルとして機能する際も冷えすぎることが抑制される。また、調湿板13は、冷却されると吸湿するため、放射冷却可能なように冷却しても、空気に接触する表面が結露することを回避することができる。また、結露を回避することができるため、結露に伴う微生物(細菌、真菌等)の発生等の衛生面の懸念が低減される。
冷温水流路15rを流れて調湿板13を冷やすことにより温度が上昇した冷温水CHは、還ヘッダ19に収集される。還ヘッダ19に流入した冷温水CHは、還管29を介して温調機器21に導入される。温調機器21に導入された冷温水CHは、再び冷却され、吸放湿パネル10に向けて導出される。除湿運転中に、調湿板13による吸湿量を調節したい場合は、温調機器21から導出される冷温水CHの温度を変え、及び/又は、インバータ25vで変温板15に供給される冷温水CHの流量を変えて、調湿板13に伝達される熱量を変化させて調湿板13の相対湿度を変えればよい。図2から明らかなように、調湿板13が水蒸気を放出するときの相対湿度は、吸湿するときの相対湿度よりも低い方にずれているので、調湿板13の温度が上昇して相対湿度が低下しても、一旦吸着した水蒸気が直ちに放出されることがない。したがって、調湿板13に吸湿させたいときは調湿板13を冷却し、吸湿を停止したいときは調湿板13の冷却を停止することで、比較的容易に応答よく調湿対象室Rの湿度を調節することができる。
11時になったら、制御装置31は、除湿運転を停止し、再生運転を開始する。制御装置31は、再生運転を開始したら、温調機器21から導出される冷温水CHを加熱する運転に切り替える。これにより、温調機器21からは、加熱された冷温水CHが供給される。本実施の形態では、冷温水CHが、概ね40℃〜60℃に加熱される。温調機器21から導出された冷温水CHは、吸放湿パネル10の変温板15に導入される。変温板15に導入された冷温水CHは、還ヘッダ19に向かって冷温水流路15rを流れる際に、冷温水CHが保有する温熱が調湿板13に伝達され、調湿板13は加熱される。加熱され、温度が上昇した調湿板13は、相対湿度が低下する。そして、調湿板13の相対湿度が、図2に示す吸湿量が低下している相対湿度まで低下すると、調湿板13は、吸着していた水蒸気を放出する。これにより、調湿板13は、再生され、次の除湿運転の際に新たに吸着可能な水分量が増大する。なお、調湿板13から脱着した水蒸気は、調湿対象室R内に放出されるので、高湿の空気を屋外に排出するために、再生運転は窓を開けて(換気しながら)行うとよい。
以上で説明したように、本発明の実施の形態に係る吸放湿パネル10では、調湿板13が吸着する水分量をコントロールすることができる。一般に、調湿材料を壁等に用いて湿度調節を行う場合は、調湿対象室R内の相対湿度によって吸放湿できる水分量が決まってしまい、コントロールすることができなかった。本実施の形態に係る吸放湿パネル10では、調湿板13が吸放湿する水分量をコントロールすることができるので、状況に応じた快適な湿度調節を行うことができる。
以上の説明では、調湿板13が珪藻土で形成されているとしたが、調節する湿度に適した吸放湿特性を有する別の調湿材料を用いて形成されていてもよい。また、調湿板13が珪藻土の単一材料で形成されているとしたが、複数の材料で形成されていてもよい。
図3(A)は、変形例に係る吸放湿パネル10Aの構成を示す側面図である。吸放湿パネル10Aは、調湿板13Aが、第1の調湿板としての珪藻土板11と、第2の調湿板としての活性炭板12との2種類の材料から形成されている点が、調湿板13(図1参照)が珪藻土の単一材料で形成されている吸放湿パネル10(図1参照)と異なっている。珪藻土板11は、第1の調湿材料としての珪藻土によって板状に形成された調湿板である。活性炭板12は、第2の調湿材料としての活性炭によって板状に形成された調湿板である。珪藻土板11及び活性炭板12は、平面の形状が、共に、変温板15と同じ大きさの矩形に形成されている。調湿板13Aは、珪藻土板11の一方の面に活性炭板12の一方の面が接合されて構成されている。吸放湿パネル10Aは、調湿板13Aの珪藻土板11の他方の面(活性炭板12に接合されている面と反対側の面)が、変温板15の一方の面全体に接触するように配置されて構成されている。換言すれば、吸放湿パネル10Aは、珪藻土板11が、活性炭板12と変温板15とに挟まれて構成されている。
上述のように構成された吸放湿パネル10Aを、調湿システム1(図1参照)の吸放湿パネル10に代えて設置したシステムでは、温調機器21から導出された冷温水CHが、変温板15に導入され、冷温水流路15rを流れるのは、吸放湿パネル10(図1参照)と同様である。除湿運転の際、冷却された冷温水CHが冷温水流路15rを流れると、冷温水CHが保有する冷熱がまず珪藻土板11に伝達され、熱伝導により珪藻土板11の活性炭板12に接する面まで冷やされると、珪藻土板11から活性炭板12に冷熱が伝達されて活性炭板12も冷やされる。調湿板13A全体として見れば、変温板15に接する珪藻土板11の温度が最も低く、活性炭板12の調湿対象室内の空気に触れる側ほど温度が高くなるように、厚さ方向に温度勾配が形成されることとなる。調湿板13Aは、温度が低くなるほど相対湿度が上昇するため、珪藻土板11の方が、活性炭板12よりも相対湿度が上昇している。ここで、活性炭板12は、珪藻土板11と比較して、低い相対湿度で水蒸気を吸着する(図2参照)。
本実施の形態では、調湿板13Aが冷却されてくると、まず、活性炭板12が水蒸気を吸着する相対湿度となって調湿対象室内の空気中の水蒸気を吸着する。さらに調湿板13Aが冷やされて珪藻土板11が水蒸気を吸着する相対湿度となると、活性炭板12が保持している水蒸気を珪藻土板11が吸着する。活性炭板12の水蒸気が珪藻土板11に移動すると、活性炭板12が吸着できる水蒸気量が増加し、再び活性炭板12は調湿対象室内の空気中の水蒸気を吸着する。調湿板13A全体で見ると、活性炭板12がまず吸湿のきっかけをつくり、その後、珪藻土板11が活性炭板12を介して調湿対象室内の空気中の水蒸気を吸着保持すると把握することができる。これにより、調湿対象室内は、空気中の水蒸気量が減少して相対湿度が低下する。また、吸放湿パネル10Aも、調湿板13Aが変温板15に冷やされることによって、放射パネルとしても機能することとなるのはいうまでもない。
調湿板13Aは、吸放湿特性の異なる2種類の調湿材料を有しているため、除湿運転の際、調湿板13Aが水蒸気を吸着する相対湿度の範囲を広げることができ、湿度コントロールの自由度を高めることができる。また、調湿板13Aは、活性炭板12が調湿対象室内の空気に接する側に設けられているので、珪藻土板11が水蒸気の吸着を開始するよりも早いタイミングで水蒸気の吸着を開始させることができる。
吸放湿パネル10Aにおいても、吸放湿パネル10(図1参照)と同様、除湿運転中に、調湿板13Aによる吸湿量を調節したい場合は、変温板15に供給される冷温水CHの温度及び/又は流量を変え、調湿板13Aに伝達される熱量を変化させて、調湿板13Aの相対湿度を変えればよい。他方、再生運転を行う場合は、加熱された冷温水CHが冷温水流路15rに供給される。加熱された冷温水CHが冷温水流路15rを流れると、冷温水CHが保有する温熱がまず珪藻土板11に伝達されて珪藻土板11が加熱され、次いで珪藻土板11から活性炭板12に温熱が伝達されて活性炭板12も加熱される。調湿板13A全体として見れば、変温板15に接する珪藻土板11の温度が最も高く、活性炭板12の調湿対象室内の空気に触れる側ほど温度が低くなるように、厚さ方向に温度勾配が形成されることとなる。珪藻土板11及び活性炭板12は、それぞれ、図2に示す吸湿量が低下している相対湿度まで低下すると、吸着していた水蒸気を放出する。これにより、調湿板13Aは、再生され、次の除湿運転の際に新たに吸着可能な水分量が増大する。
次に図3(B)は、別の変形例に係る吸放湿パネル10Bの構成を示す側面図である。吸放湿パネル10Bは、調湿板13Bが、第1の調湿材料としての珪藻土及び第2の調湿材料としての活性炭の2種類の調湿材料から形成されている点は調湿板13A(図3(A)参照)と同様であるが、珪藻土及び活性炭がそれぞれ別体の板状部材として形成されたものが貼り合わせられたものではなく、珪藻土及び活性炭が混合して一体の板状部材として形成されている点が調湿板13A(図3(A)参照)と異なっている。調湿板13Bは、珪藻土と活性炭とを混合したものを焼成して形成されている。吸放湿パネル10Bは、上述のように構成された調湿板13Bが、一方の面が変温板15に接触し、他方の面が調湿対象室内の空気に接する態様で、変温板15に取り付けられて構成されている。
上述のように構成された吸放湿パネル10Bを、調湿システム1(図1参照)の吸放湿パネル10に代えて設置したシステムでは、除湿運転の際、冷却された冷温水CHが冷温水流路15rを流れると、冷温水CHが保有する冷熱が調湿板13Bに伝達され、調湿板13Bは冷やされる。調湿板13Bは、冷やされることにより、変温板15に接する側の温度が最も低く、調湿対象室内の空気に触れる側ほど温度が高くなるように、厚さ方向に温度勾配が形成されることとなる。調湿板13Bは、温度が低くなるほど相対湿度が上昇するため、変温板15に接する側の方が、調湿対象室内の空気に触れる側よりも相対湿度が上昇している。
本実施の形態では、調湿板13Bが冷却されてくると、まず、調湿板13B中の活性炭成分が水蒸気を吸着する相対湿度となって調湿対象室内の空気中の水蒸気を吸着する。さらに調湿板13Bが冷やされて調湿板13B中の珪藻土成分が水蒸気を吸着する相対湿度となると、調湿板13B中の珪藻土成分が調湿対象室内の空気中の水蒸気を吸着する。これにより、調湿対象室内は、空気中の水蒸気量が減少して相対湿度が低下する。調湿板13Bは、吸放湿特性の異なる2種類の調湿材料を有しているため、除湿運転の際、調湿板13Bが水蒸気を吸着する相対湿度の範囲を広げることができ、湿度コントロールの自由度を高めることができる。なお、吸放湿パネル10Bも、調湿板13Bが変温板15に冷やされることによって、放射パネルとしても機能することとなるのはいうまでもない。また、除湿運転中、調湿板13Bによる吸湿量を調節したい場合に、変温板15に供給される冷温水CHの温度及び/又は流量を変え、調湿板13Bに伝達される熱量を変化させ、調湿板13Bの相対湿度を変えればよいのは、吸放湿パネル10A(図3(A)参照)と同様である。
他方、再生運転を行う場合は、加熱された冷温水CHが冷温水流路15rに供給される。加熱された冷温水CHが冷温水流路15rを流れると、冷温水CHが保有する温熱が調湿板13Bに伝達され、調湿板13Bは加熱される。調湿板13Bは、加熱されることにより、変温板15に接する側の温度が最も高く、調湿対象室内の空気に触れる側ほど温度が低くなるように、厚さ方向に温度勾配が形成されることとなる。調湿板13Bが加熱されると、まず、調湿板13B中の珪藻土成分が水蒸気を放出する相対湿度となり、珪藻土成分に吸着されていた水蒸気を放出する。さらに調湿板13Bが加熱されて調湿板13B中の活性炭成分が水蒸気を放出する相対湿度となると、活性炭成分に吸着されていた水蒸気を放出する。これにより、調湿板13Aは、再生され、次の除湿運転の際に新たに吸着可能な水分量が増大する。
これまで説明したように、調湿板13、13A、13Bは、相対湿度を低下させることにより、吸着していた水蒸気を放出するが、この特性を利用して、吸放湿パネル10、10A、10Bを加湿装置として利用することもできる。
図4は、加湿装置としての利用に適した吸放湿パネル(以下「加湿装置40」という。)の正面図である。加湿装置40は、前述した吸放湿パネル10(図1参照)と、水供給装置としての滴下装置44とを備えている。滴下装置44は、吸放湿パネル10の幅と同程度の長さを有する直管の側面に、散水用の散水孔44hが長手方向に沿って複数形成されて構成されている。滴下装置44は、調湿板13の表面に水を散布することができるように、吸放湿パネル10の上方に設けられている。また、加湿装置40には、滴下装置44から散布されて調湿板13に吸着されなかった水分を回収するドレンパン46が底部に設けられている。加湿装置40は、吸放湿パネル10に滴下装置44及びドレンパン46を付加したものとして調湿システム1(図1参照)の構成要素となり、以下の作用説明では適宜図1も参照することとする。
上述のように構成された加湿装置40は、以下のように用いることができる。例えば、冬季に宿泊施設で加湿を行いたい場合、宿泊者が入室する前に、滴下装置44から水分を滴下させて、調湿板13に水分を十分に吸着させておく。宿泊者が入室する時間になり、加湿運転の指令が発せられると、制御装置31は、温調機器21及び冷温水ポンプ25を起動させ、加熱した冷温水CHを冷温水流路15rに供給する。加熱した冷温水CHが冷温水流路15rを流れると、変温板15を介して調湿板13が加熱される。すると、調湿板13の相対湿度が低下し、あらかじめ調湿板13に吸着させていた水分が放出され、調湿対象室R内の空気を加湿する。このとき、吸放湿パネル10は、調湿板13が変温板15に加熱されることによって、放射パネルとしても機能することになり、調湿対象室R内の顕熱を処理して放射暖房を行うこともできる。なお、上記では、加湿装置40の構成部材として、吸放湿パネル10を用いることとしたが、吸放湿パネル10A、10Bを採用してもよい。
次に図5を参照して、本発明の第3の実施の形態に係る空気湿度調節装置としての調湿装置50を説明する。調湿装置50は、空気の湿度を調節することができる装置であり、前述した吸放湿パネル10(図1参照)と、空気を送る送風機56と、これらを収容する空間形成部材としてのケース57とを備えている。ケース57は、直方体に形成されており、一方の端には空気を導入する導入口57aが、他方の端には空気を導出する導出口57bが、それぞれ形成されている。送風機56は、導入口57aの近傍でケース57内に配設されている。吸放湿パネル10は、送風機56と導出口57bとの間でケース57内に配設されている。吸放湿パネル10は、表面(調湿板13が空気に触れる面)が、送風機56から吐出された空気の流れ方向と極力平行になる向きで、複数配設されている。設けられる吸放湿パネル10の数は、湿度調節される空気の流量に対する水分の吸放湿量に見合った接触面積を与えることができるようにする観点から決定すればよい。複数設けられた吸放湿パネル10は、隣接した吸放湿パネル10の間に、送風機56から吐出された空気が通過するための、所定の間隔gを空けて配列されている。所定の間隔gは、送風機56から吐出された空気が通過する際の圧力損失が許容範囲内で、送風機56から吐出される空気の流量に対する吸放湿パネル10に接触する空気の割合が、所望の吸放湿能力を発揮できる割合となるように決定するとよい。
上述のように構成された調湿装置50では、空気を除湿する際に、冷却した冷温水CHを変温板15に供給することで調湿板13の相対湿度を上昇させる。すると、送風機56から吐出された空気は、隣接する吸放湿パネル10の間を通過する際に調湿板13に水分が吸着されるため、除湿される。空気の除湿量を調節するときは、変温板15に供給される冷温水CHの温度及び/又は流量を変え、調湿板13に伝達される熱量を変化させて調湿板13の相対湿度を変えればよい。前述のように、調湿板13が水蒸気を放出するときの相対湿度は吸湿するときの相対湿度よりも低い方にずれているので(図2参照)、調湿板13の温度が上昇して相対湿度が低下しても、一旦吸着した水蒸気が直ちに放出されることがないので、安定した湿度調節を行いやすい。調湿装置50による空気の除湿は、除湿する際に、目標とする空気の状態(温度、湿度)における絶対湿度となる露点温度まで冷却しなくて済むため、除湿のために変温板15に供給する冷温水CHの温度を、いわゆる冷却除湿再熱を行う際の温度まで下げなくてよく、省エネルギーとなる。
なお、調湿装置50の送風機56と吸放湿パネル10との間に空気を加熱する加熱器(不図示)を設け、空気を加熱してから除湿することとしてもよい。除湿する前の空気を加熱することとすると、冷却除湿再熱を行う場合の再熱時に生じ得る、水分の再蒸発に伴う湿度の上昇を回避することができる。また、調湿装置50においても、加湿装置40(図4参照)に設けられていた滴下装置44(図4参照)と同様の滴下装置(不図示)を吸放湿パネル10の上方に設けてもよい。このとき、滴下される水分のうち調湿板13に吸着されなかった水分を排出するドレン管及び必要に応じてドレンパンも設けるとよい。調湿装置50に滴下装置を設けると、吸放湿パネル10の間gに空気を流す際に、あらかじめ水分を吸着させていた調湿板13を加熱して相対湿度を低下させることで水分を放出させ、送風機56から供給された空気を加湿することができる。なお、上記では、調湿装置50の構成部材として、吸放湿パネル10を用いることとしたが、吸放湿パネル10A、10Bを採用してもよい。
以上の説明では、変温板15が、角パイプが複数本並列に配列されて構成されているとしたが、断面円形のパイプが板状の伝熱材料に埋設配列されて構成されていてもよい。また、以上の説明では変温装置が冷温水CH(熱媒体)の熱により温度が変化する変温板15であるとしたが、電気ヒータやペルチェクーラー等の、電気エネルギーによって変温させるものであってもよい。
以上の説明では、変温板15の両面に調湿板13(13A、13B)が設けられているとしたが、吸着させたい水蒸気の量に応じて、変温板15の一方の面にのみ調湿板13(13A、13B)が設けられることとしてもよい。変温板15の一方の面にのみ調湿板13(13A、13B)を設けることとする場合、変温板15の他方の面には結露防止の観点から断熱材を貼り付けるとよい。
以上の説明では、調湿部材が矩形板状の調湿板13(13A、13B)であり、変温装置が矩形板状の変温板15であるとしたが、調湿部材は筒状に形成されていてもよい。筒状に形成される調湿部材は、典型的には円筒状であるが、これに限らず、軸直角断面における輪郭が、楕円、あるいは四角形や三角形等の多角形状であってもよい。
図6に、本発明の第1の実施の形態の変形例に係る吸放湿ユニットとしての吸放湿ポール110を示す。吸放湿ポール110は、調湿部材としての調湿管113と、変温装置としての変温管115とを備えている。調湿管113は、調湿材料としての珪藻土が所定の厚さの円筒状に形成されて構成されている。所定の厚さは、調湿板13(図1参照)と同様に、調湿材料の特性と、空気中から除去すべき水分量を吸着できる体積(長さ及び厚さ)とを考慮して決定される。調湿管113は、除去すべき水分量を吸着できる体積に見合った長さ及び厚さを有しており、内面及び外面が形成されている。なお、調湿管113は、調湿板13A、13B(図3参照)と同様に、吸放湿特性の異なる2種類(3種類以上であってもよい)の調湿材料が積層あるいは混合されて構成されていてもよい。変温管115は、冷温水CH(流体の熱媒体)を内部に流す配管(熱媒体流路形成部材)で構成されている。変温管115は、調湿管113の内面に嵌合されて配設されている。変温管115は、典型的にはその軸線が調湿管113の軸線と一致するように、換言すれば調湿管113と同心円状に、配設されている。変温管115は、冷温水CHと調湿管113との間の熱伝達を向上させる観点からは、鋼管や銅管等の熱伝導率が比較的大きい金属配管が用いられるとよく、耐腐食性及び/又は施工容易性の観点からは、ポリエチレン管や塩ビ管等の合成樹脂配管が用いられるとよい。以下に、吸放湿ポール110を用いて構成された空気湿度調節装置を説明する。
図7は、本発明の第3の実施の形態の変形例に係る空気湿度調節装置としての調湿装置を示す図であり、(A)は第1の変形例に係る調湿装置150の概略斜視図、(B)は第2の変形例に係る調湿装置250の概略斜視図である。調湿装置150は、調湿装置50(図5参照)と比較して、調湿装置50において配列されていた吸放湿パネル10(図5参照)が、吸放湿ポール110(図6参照)に置き換わっている。調湿装置150においても、調湿装置50と同様に所定の間隔gを空けて、吸放湿ポール110が複数配列されている。それぞれの吸放湿ポール110は、ケース57内の空気の流れ方向に対して、軸線が直交するように配設されている。上記以外の調湿装置150の構成は、調湿装置50と同様である。上記のように構成された調湿装置150の作用は、調湿装置50と同様である。調湿装置150では、吸放湿ポール110の設置数の増減を容易に行うことができ、設定する定格吸放湿能力の調節を容易に行うことができる。
図7(B)に示す調湿装置250は、吸放湿ポール110と、空間形成部材としてのダクト257とを備えている。ダクト257は、いわゆる丸ダクト(軸直角断面が円形のダクト)である。吸放湿ポール110は、典型的にはその軸線がダクト257の軸線と一致するように、換言すればダクト257と同心円状に、ダクト257内に配設されている。吸放湿ポール110の外面とダクト257の内面との間には、空気が流れる空間Sが形成されている。空間Sの大きさは、ここを流すべき空気の流量に応じて決定される。ダクト257に収容された吸放湿ポール110は、調湿管113よりも変温管115の方が長く、調湿管113の両端から変温管115が延びている。調湿管113の両端から延びた変温管115は、典型的には直角に曲げられてダクト257を貫通してダクト257の外に突き出ており(図7(B)では一方のみ図示)、冷温水配管(不図示)に接続可能に構成されている。調湿装置250は、典型的には、空気を供給先まで導くサプライダクト(不図示)に挿入配置され、ダクト257の外に突き出た変温管115と、冷温水CHを供給する温調機器(調湿システム1(図1参照)が備える温調機器21に相当)とが冷温水管(不図示)を介して接続される。
このように設置された調湿装置250では、サプライダクト(不図示)の系統に設けられたファン(不図示)によってサプライダクトを流れる空気に対して、この空気Aが調湿装置250を通過する際に、変温管115を流れる冷温水CHによって冷却又は加熱された調湿管113の相対湿度に応じて水蒸気の吸着又は放出が行われる。このようにして、調湿装置250を通過する空気Aの湿度が調節される。なお、図7(B)に示す調湿装置250は、軸直角断面が円形の吸放湿ポール110、及びダクト257を備えているとしたが、吸放湿パネル10(図1参照)を角ダクト(軸直角断面が矩形のダクト)に収容した構成としてもよい。あるいは、吸放湿ポール110を角ダクトに収容した構成や、吸放湿パネル10(図1参照)を丸ダクト257に収容した構成としてもよい。
次に図8に本発明の第3の実施の形態の第3の変形例に係る空気湿度調節装置としての調湿装置300を示す。図8(A)は調湿装置300の概略斜視図、(B)は調湿装置300の概略水平断面図である。調湿装置300は、第1の吸放湿ユニット群としての給気吸放湿ポール群311と、第2の吸放湿ユニット群としての排気吸放湿ポール群312と、給気吸放湿ポール群311及び排気吸放湿ポール群312を支持する支持板としての天板354及び底板355と、モータ365とを備えている。天板354及び底板355は、それぞれ、円板状に形成されている。天板354及び底板355は、各面同士が平行になるように、吸放湿ポール110の長さ分離れて、配設されている。離間した天板354及び底板355の間には、両者に直交する平板状の、給気流路壁351、排気流路壁352、及び中央仕切壁353が設けられていると共に、天板354及び底板355の両中心間を接続する回動軸356が設けられている。回動軸356は、天板354を貫通して外側に延びており、その突き出た先端にモータ365が接続されている。モータ365は、正逆両方向に回転できるように構成されている。モータ365は、制御装置331と信号ケーブルで接続されている。天板354及び底板355は、制御装置331から指令を受けたモータ365の回転により、回動軸356まわりに正逆回動可能に構成されている。
中央仕切壁353は、天板354及び底板355の各中心上を通るように配設されている。これにより、中央仕切壁353には、回動軸356が貫通している。給気流路壁351は、中央仕切壁353に対して、所定の距離(本実施の形態では天板354の半径の3/4程度)離れて平行に配設されている。排気流路壁352は、中央仕切壁353を対称面として給気流路壁351に関して面対称となるように配設されている。天板354及び底板355並びに中央仕切壁353及び給気流路壁351に囲まれて、角筒状の給気流路301が形成されている。天板354及び底板355並びに中央仕切壁353及び排気流路壁352に囲まれて、角筒状の排気流路302が形成されている。給気流路壁351、排気流路壁352、中央仕切壁353、天板354、及び底板355は、空間形成部材を構成する。本実施の形態では、中央仕切壁353を区画面として、給気流路301と排気流路302とが隣接して形成されている。
給気吸放湿ポール群311は、吸放湿ポール110(図6参照)が複数配列されて構成されている。給気吸放湿ポール群311は、各吸放湿ポール110の軸線が平行になり、隣接する吸放湿ポール110の外面同士の間に空気が流れる隙間が形成され、各吸放湿ポール110の軸線が天板354及び底板355の面に対して直交するように、各吸放湿ポール110が給気流路301に配列されて構成されている。給気吸放湿ポール群311を構成する各吸放湿ポール110(以下「給気吸放湿ポール110S」と呼ぶこともある)は、変温管115が直列に接続されるように、隣接する給気吸放湿ポール110Sの変温管115同士が接続管316で接続されている。給気吸放湿ポール群311の、直列に接続された変温管115は、一方の端部に往管318が接続され、他方の端部に還管319が接続されている。往管318及び還管319は、共に、フレキシブル管が用いられており、天板354及び底板355の回転により相互の位置が入れ替わったとしても追従できる長さに形成されている。往管318及び還管319のそれぞれの他端は、流体の熱媒体としての冷水C及び温水Hを生成することができる温調機器(図示はしないが調湿システム1(図1参照)の温調機器に相当)に接続されている。
排気吸放湿ポール群312は、複数の吸放湿ポール110が、給気吸放湿ポール群311と同様の配列で、排気流路302に配設されて構成されている。排気吸放湿ポール群312を構成する各吸放湿ポール110(以下「排気吸放湿ポール110R」と呼ぶこともある)は、給気吸放湿ポール群311と同様に、接続管326によって変温管115が直列に接続され、両端にはフレキシブル管で構成された往管328及び還管329がそれぞれ接続されている。接続管326、往管328、及び還管329は、それぞれ、給気吸放湿ポール群311まわりの接続管316、往管318、及び還管319に相当し、材質等もこれらと同様のものが用いられている。往管328及び還管329は、天板354及び底板355の回転により相互の位置が入れ替わったとしても追従できる余長を有している。往管328及び還管329のそれぞれの他端は、往管318及び還管319が接続された温調機器(不図示)に接続されている。この温調機器(不図示)は、冷水C及び温水Hの系統に四方弁を有しており、往管318及び還管319に冷水Cを流して往管328及び還管329に温水Hを流す状態と、往管318及び還管319に温水Hを流して往管328及び還管329に冷水Cを流す状態とを切り替えることができるように構成されている。
また、調湿装置300は、平面視(図8(B)参照)において、給気吸放湿ポール群311及び排気吸放湿ポール群312が設けられた天板354及び底板355の外側に、第1の空気導入部としての給気導入部381Aと、第1の空気導出部としての給気導出部381Bと、第2の空気導入部としての排気導入部382Aと、第2の空気導出部としての排気導出部382Bとが設けられている。給気導入部381A、給気導出部381B、排気導入部382A、及び排気導出部382Bは、それぞれ、内部に空気を流す風導で構成されており、給気流路301及び排気流路302と同じ断面形状を有している。給気流路301及び排気流路302が基準位置にあるとき、給気導入部381Aは給気流路301の一端に連接するように配設されており、給気導出部381Bは給気流路301の他端に連接するように配設されており、排気導入部382Aは給気導出部381Bに隣接して排気流路302の一端に連接するように配設されており、排気導出部382Bは給気導入部381Aに隣接して排気流路302の他端に連接するように配設されている。給気導入部381A、給気導出部381B、排気導入部382A、及び排気導出部382Bの、天板354及び底板355に対向する部分は、天板354及び底板355の輪郭に沿った円弧状に形成されている。
調湿装置300は、天板354及び底板355が基準位置から回動軸356まわりに180度回転したときに、給気導入部381A及び給気導出部381Bが排気流路302と連通し、排気導入部382A及び排気導出部382Bが給気流路301と連通するように構成されている。天板354と底板355との間には、円筒状のローラー368が、給気流路壁351の両端、排気流路壁352の両端、及び中央仕切壁353の両端に、合計6個設けられている。各ローラー368は、回転軸線まわりに回転することができ、その回転軸線が回動軸356と平行になるように、かつ、平面視(図8(B)参照)において一部が天板354及び底板355の円周からわずかに外側に出るように、天板354及び底板355に枢支されている。他方、給気導入部381A、給気導出部381B、排気導入部382A、排気導出部382Bには、給気流路301及び排気流路302が基準位置にある状態で各ローラー368に対向するように、円筒状のシール部材388が設けられている。シール部材388は、給気導入部381A及び排気導出部382Bが隣接する部分、並びに給気導出部381B及び排気導入部382Aが隣接する部分は、それぞれ1つのシール部材388が兼用されているため、合計6個設けられている。各シール部材388は、円筒状の軸線が、ローラー368の回転軸線と平行になるように配設されている。調湿装置300は、給気流路301及び排気流路302が基準位置及びここから180度回転した位置にあるときに、各ローラー368と各シール部材388とが密着して、これらの間から空気がリークしないように構成されている。
上述のように構成された調湿装置300は、典型的には、湿度を調節する対象の調湿対象室(不図示)に供給空気SAを導くサプライダクトSDに対して挿入されるように給気導入部381A及び給気導出部381Bが接続され、調湿対象室から導出されたレタン空気RAを導くレタンダクトRDに対して挿入されるように排気導入部382A及び排気導出部382Bが接続される。そして、調湿装置300が作動する際、まず、給気流路301及び排気流路302が基準位置にある状態で、給気吸放湿ポール110Sの変温管115に冷水Cが供給され、排気吸放湿ポール110Rの変温管115に温水Hが供給される。ここで、冷水Cの温度は、調湿システム1(図1参照)における冷却された冷温水CHの温度と同様であり、温水Hの温度は調湿システム1における加熱された冷温水CHの温度と同様である。給気吸放湿ポール群311における各調湿管113は、冷水Cの供給によって冷却され、相対湿度が、図2に示す吸湿量が上昇している相対湿度まで上昇させられる。他方、排気吸放湿ポール群312における各調湿管113は、温水Hの供給によって加熱され、相対湿度が、図2に示す吸湿量が低下している相対湿度まで低下させられる。
そして、供給空気SAが給気導入部381Aから給気流路301に流入して給気流路301を流れる際、給気吸放湿ポール群311における各調湿管113は、給気流路301を流れる供給空気SA中の水蒸気を吸着する(除湿作用)。給気流路301において水蒸気が調湿管113に吸着されて絶対湿度が低下した供給空気SAは、給気導出部381Bに導出され、サプライダクトSDを介して調湿対象室に供給される。他方、排気吸放湿ポール群312における各調湿管113が既に水蒸気を吸着している場合、レタン空気RAが排気導入部382Aから排気流路302に流入して排気流路302を流れる際、排気吸放湿ポール群312における各調湿管113は、排気流路302を流れるレタン空気RAに水蒸気を放出し、仮に図2に示す吸湿量が上昇している相対湿度まで相対湿度が上昇させられたときに、再び水蒸気を吸着することができるように再生される(再生作用)。排気流路302において水蒸気が調湿管113から放出されて絶対湿度が上昇したレタン空気RAは、排気導出部382Bに導出され、レタンダクトRDを介して屋外あるいは空調機(不図示)のミキシングチャンバに導かれる。
制御装置331は、給気流路301及び排気流路302に空気が流れ始めてから所定の時間が経過したら、モータ365を作動させて天板354及び底板355を180度回転させる。ここでの所定の時間は、調湿対象室の設計温湿度条件に基づいて決定された供給空気SAからの吸湿量と、調湿管113の特性及び体積とから算出された、調湿管113が供給空気SAから水蒸気の吸着を継続することができる時間である。天板354及び底板355を基準位置から180度回転させることにより、それまで給気導入部381A及び給気導出部381Bと連通していた給気流路301が排気導入部382A及び排気導出部382Bと連通し、それまで排気導入部382A及び排気導出部382Bと連通していた排気流路302が給気導入部381A及び給気導出部381Bと連通することとなる。換言すれば、給気流路301と排気流路302とが相互に入れ替わることとなる。また、制御装置331は、天板354等を回転させる際、温調機器(不図示)の四方弁を切り替えて、給気吸放湿ポール群311における各変温管115に温水Hが供給され、排気吸放湿ポール群312における各変温管115に冷水Cが供給されるようにする。
給気流路301及び排気流路302の相互切り替え、並びに変温管115への冷水C及び温水Hの供給の相互切り替えが行われた調湿装置300は、排気吸放湿ポール群312における調湿管113が、冷却されて図2に示す吸湿量が上昇している相対湿度まで相対湿度が上昇させられ、給気吸放湿ポール群311における調湿管113が、加熱されて図2に示す吸湿量が低下している相対湿度まで相対湿度が低下させられる。そして、サプライダクトSDを流れてきた供給空気SAが、排気流路302を通過する際、排気吸放湿ポール群312における調湿管113に水蒸気が吸着されて絶対湿度が低下し(除湿作用)、他方、レタンダクトRDを流れてきたレタン空気RAは給気流路301を通過する際に、給気吸放湿ポール群311における調湿管113から水蒸気を奪い、給気吸放湿ポール群311における調湿管113から水蒸気を放出させる(再生作用)。制御装置331は、給気流路301及び排気流路302の切り替えから所定の時間が経過したら、再びモータ365を作動させて、天板354及び底板355を180度逆回転させ、給気流路301及び排気流路302を基準位置に戻すと共に、変温管115への冷水C及び温水Hの供給を相互に切り替える。これにより、再び給気吸放湿ポール群311で除湿作用を行うことができ、排気吸放湿ポール群312で再生作用を行うことができることとなり、以後、上述の作用を繰り返す。調湿装置300は、上述の要領により、供給空気SAの除湿、及び除湿を行っていない方の調湿管113の再生を、連続的に行うことができる。
以上で説明した調湿装置300によれば、調湿管113が吸放湿する水分量をコントロールすることができると共に、空気流路の切り替えにより連続的に空気中の水分の吸着を行うことができるので、状況に応じた快適な湿度調節を連続的に行うことができる。なお、以上の調湿装置300の説明では、空気流路切替手段が、給気流路301及び排気流路302を形成する天板354及び底板355を回転させる構成であるとしたが、サプライダクトSD及びレタンダクトRDのそれぞれに給気流路301及び排気流路302に接続された分岐ダクトを設けておき、この分岐ダクトにダンパを設け、ダンパの切り替えにより空気流路を切り替えることとしてもよい。しかしながら、給気流路301及び排気流路302を回転させて切り替える調湿装置300の構成とすると、ダンパで空気流路を切り替える構成に比べ、ダンパ及びそのダンパを作動させるモータの数を抑制することができ、ダクト設置スペース又は空気の縮流による抵抗の増大を抑制することができるため好ましい。
また、以上の調湿装置300の説明では、往管318及び還管319並びに往管328及び還管329に四方弁が内蔵された温調機器(不図示)が接続されているとしたが、往管318及び還管319と、往管328及び還管329とが、それぞれ別体の温調機器に接続されて個別に冷水C及び温水Hの供給を制御するように構成されていてもよい。あるいは、四方弁を有するヒートポンプ(圧縮機)を回動する天板354上に設置し、給気吸放湿ポール群311及び排気吸放湿ポール群312を構成する各吸放湿ポール110の変温管115に冷水C又は温水Hではなく冷媒が流れるように構成してもよい。このように構成すると、ヒートポンプの四方弁を切り替えることで、除湿側に低温冷媒を、加熱側に高温冷媒を、常に流すことが可能となる。
また、以上の調湿装置300の説明では、給気流路301及び排気流路302に空気が流れ始めてから所定の時間が経過したときに、天板354及び底板355を180度回転させて、給気流路301と排気流路302とを相互に入れ替えることとしたが、湿度センサを、給気導出部381B又は調湿対象室等の供給空気SAの湿度を検知することができる適切な位置に設置しておき、湿度センサが検知した値が所定の湿度以上になったときに、調湿装置300における除湿能力が低下したと判断して、空気流路の切り替えを行うこととしてもよい。
以上の各実施の形態の説明では、調湿材料として珪藻土及び活性炭を用いることとしたが、シリカゲル等、調節したい湿度の条件に適した特性を持つ調湿材料を適宜用いてもよい。
本発明の説明に関連して(特に以下の請求項に関連して)用いられる名詞及び同様な指示語の使用は、本明細書中で特に指摘したり、明らかに文脈と矛盾したりしない限り、単数及び複数の両方に及ぶものと解釈される。語句「備える」、「有する」、「含む」及び「包含する」は、特に断りのない限り、オープンエンドターム(すなわち「〜を含むが限らない」という意味)として解釈される。本明細書中の数値範囲の具陳は、本明細書中で特に指摘しない限り、単にその範囲内に該当する各値を個々に言及するための略記法としての役割を果たすことだけを意図しており、各値は、本明細書中で個々に列挙されたかのように、明細書に組み込まれる。本明細書中で説明されるすべての方法は、本明細書中で特に指摘したり、明らかに文脈と矛盾したりしない限り、あらゆる適切な順番で行うことができる。本明細書中で使用するあらゆる例又は例示的な言い回し(例えば「など」)は、特に主張しない限り、単に本発明をよりよく説明することだけを意図し、本発明の範囲に対する制限を設けるものではない。明細書中のいかなる言い回しも、請求項に記載されていない要素を、本発明の実施に不可欠であるものとして示すものとは解釈されないものとする。
本明細書中では、本発明を実施するため本発明者が知っている最良の形態を含め、本発明の好ましい実施の形態について説明している。当業者にとっては、上記説明を読めば、これらの好ましい実施の形態の変形が明らかとなろう。本発明者は、熟練者が適宜このような変形を適用することを期待しており、本明細書中で具体的に説明される以外の方法で本発明が実施されることを予定している。したがって本発明は、準拠法で許されているように、本明細書に添付された請求項に記載の内容の修正及び均等物をすべて含む。さらに、本明細書中で特に指摘したり、明らかに文脈と矛盾したりしない限り、すべての変形における上記要素のいずれの組合せも本発明に包含される。