JP5945335B2 - 層状粘土鉱物、それを含むワニス及び有機−無機複合材料、当該有機−無機複合材料を用いた電気的装置、半導体装置及び回転機コイル - Google Patents

層状粘土鉱物、それを含むワニス及び有機−無機複合材料、当該有機−無機複合材料を用いた電気的装置、半導体装置及び回転機コイル Download PDF

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Description

本発明は、電気絶縁性に優れるケイ素含有オリゴマーを含む、層間修飾された層状粘土鉱物、それを含むワニス及び有機−無機複合材料、当該有機−無機複合材料を用いた電気的装置、半導体装置及び回転機コイルに関する。
電気・電子機器のパワー密度は年々増加し、インバーターや発電機の動作環境は高温化、高電界化が進んでいる。それに伴い、これらを構成する絶縁樹脂材料については、高耐熱化、高耐電圧化が課題となっている。
モンモリロナイト、スメクタイトに代表される層状粘土鉱物(クレイ)は電気絶縁性に優れ、ポリオレフィン、ナイロン、ポリスチレン、エポキシ樹脂等の様々な樹脂材料との組み合わせにより難燃化、低誘電率化、絶縁寿命向上、高強度化、低熱膨張化等の優れた特性を付与できることが知られている。
例えば、特許文献1は、アンモニウムイオンで有機化処理したクレイとポリオレフィンとを複合化すると、難燃化が向上したことを記載する。特許文献2は、4級アンモニウムイオンで層間修飾した層状粘土鉱物を含むエポキシ樹脂の絶縁寿命が向上したことを記載する。非特許文献1は、ホスホニウムイオンで層間修飾したモンモリロナイトによるエポキシ樹脂は低熱膨張化が向上したことを記載する。そして、非特許文献2は、1,2−アミノラウリン酸を層間修飾したモンモリロナイトはナイロンの強度を向上させたことを記載する。
特開2006−265507号公報 特開2005−251543号公報
"酸無水物硬化エポキシ樹脂/クレイナノコンポジットの物性に及ぼす新規ホスホニウム変性ベントナイトの影響"、ネットワークポリマー、(2009)、vol.30、No.2、p69−76 "粘土鉱物/有機高分子ナノハイブリッド材料の開発"、日本化学会誌、(2000)、No.9、p605−611
しかし、従来の層間修飾法によるクレイ分散技術では、組み合わせる樹脂の種類に応じた適切な層間修飾剤を選定する必要があり、樹脂の組み合わせ及び作製できる樹脂の種類が制限されていたという問題があった。また、従来の方法で得られるクレイは、剥離が不十分であり、その結果、電気絶縁性や材料強度等といったクレイに求められる機能が十分に発現されないという問題があった。そこで、本発明は、組み合わせる樹脂の種類を選ばずに樹脂中へ高分散できるケイ素含有オリゴマーを含む、層間修飾された層状粘土鉱物と、その層状粘土鉱物を用いたワニス及び有機−無機複合材料、当該有機−無機複合材料を用いた電気的装置、半導体装置及び回転機コイルを提供することを目的とする。
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意研究を行った。そして、層状粘土鉱物を適当なカチオン性化合物で層間修飾して、アルコキシシランの加水分解反応により生成するケイ素系オリゴマーを挿入すると、当該層状粘土鉱物の層間距離が拡大すること及び当該層状粘土鉱物を樹脂へ添加すると電気絶縁性が大きく向上する有機−無機複合材料が得られることを見出して、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は以下のとおりである。
(1) ケイ素含有オリゴマーを含む、層間修飾された層状粘土鉱物であって、前記層状粘土鉱物がスメクタイト群、マイカ群、バーミキュライト群及び雲母群からなる群から選ばれる少なくとも1種又はそれ以上である、前記層間修飾された層状粘土鉱物である。好ましくは、前記ケイ素含有オリゴマーの粒径は0.1μm〜100nmである。また、好ましくは、前記層状粘土鉱物の厚みは0.05μm〜10μmである。
(2) (1)記載の層間修飾された層状粘土鉱物において、前記層状粘土鉱物が0.1wt%〜10wt%、ケイ素含有オリゴマーが0.1wt%〜30wt%含まれる、層間修飾された層状粘土鉱物である。
(3) (1)又は(2)記載の層間修飾された層状粘土鉱物において:前記層間修飾された層状粘土鉱物の層間に(1,10フェナントロリン)銅錯体がイオン交換されており、かつ、ケイ素含有オリゴマーがベンゼン環を含むか;又は、前記層間修飾された層状粘土鉱物の層間にカチオン化された脂肪族アミン類がイオン交換されており、かつ、ケイ素含有オリゴマーが長鎖アルキル基を含む;層間修飾された層状粘土鉱物である。
(4) (1)〜(3)いずれか1項記載の層間修飾された層状粘土鉱物及びモノマーを含む、ワニスである。
(5) (4)記載のワニスにおいて、前記モノマーがビスフェノールA型エポキシプレポリマー、4,4’−エチリデンジフェニルジシアナート、3、3’−4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、p-フェニレンジアミンからなる群から選ばれる少なくとも1種又はそれ以上である、ワニスである。
(6) (1)〜(3)いずれか1項記載の層間修飾された層状粘土鉱物及び樹脂、又は、(4)若しくは(5)記載のワニスを含む、有機−無機複合材料である。
(7) (6)記載の有機−無機複合材料において、前記樹脂がエポキシ樹脂、シアネートエステル樹脂、ポリイミド樹脂からなる群から選ばれる少なくとも1種以上である、有機−無機複合材料である。
(8) 半導体素子及び封止材を含む半導体装置であって、前記封止材は(6)又は(7)記載の有機−無機複合材料を含み、前記半導体素子が前記封止材で封止される、半導体装置である。
(9) 導体と絶縁材料を含む電線であって、前記導体が、(4)若しくは(5)記載のワニス又は(6)又は(7)記載の有機−無機複合材料を含む前記絶縁材料で被覆されている、前記電線である。
(10) 導体と絶縁材料を含む回転機コイルであって、前記絶縁材料が巻回された前記導体は、(4)若しくは(5)記載のワニス又は(6)又は(7)記載の有機−無機複合材料で含浸されている、前記回転機コイルである。
本発明のケイ素含有オリゴマーを含む、層間修飾された層状粘土鉱物は、絶縁破壊強度が高く、組み合わせる樹脂の種類を選ばずに樹脂中へ高分散させることができるため、幅広いワニス、有機−無機複合材料及び電気的装置に適用することができる。
図1は、層状粘土鉱物に銅錯体を導入する方法の概略説明図である。 図2は、アルコキシシランの加水分解反応を利用して層状粘土鉱物の層間を拡大する方法の概略説明図である。 図3は、本発明の有機−無機複合材料が適用されるパワー半導体装置の断面模式図である。 図4は、本発明に係る層状粘土鉱物と樹脂原料を含むワニスを用いて作製した絶縁電線の断面模式図である。 図5は、本発明の有機−無機複合材料が適用される回転機コイルの構成を示す断面模式図である。 図6は、絶縁破壊電圧測定装置の模式図である。 図7は、未処理の層状粘土鉱物のXRD測定結果及び蛍光X線測定結果を示す図である。 図8は、実施例1〜11で得られる銅錯体を導入した層状粘土鉱物のXRD測定結果及び蛍光X線測定結果を示す図である。 図9は、実施例4で得られるアルコキシシランの加水分解反応を利用して層間を拡大した層状粘土鉱物のXRD測定結果を示す図である。 図10は、実施例4で得られる有機−無機複合材料のXRD測定結果を示す図である。 図11は、実施例4で得られる有機−無機複合材料の断面SEM写真及び元素分析結果を示す図である。
本発明は、適当なカチオン性化合物で層間修飾した層状粘土鉱物に対して、さらにアルコキシシランの加水分解反応により生成するケイ素系オリゴマーで層間距離を拡張した層状粘土鉱物及び当該層状粘土鉱物を含む有機−無機複合材料、当該有機−無機複合材料を用いた電気的装置、半導体装置及び回転機コイルを提供する。以下、本発明を詳細に説明する。
(1)本発明のケイ素含有オリゴマーを含む、層間修飾された層状粘土鉱物
本発明のケイ素含有オリゴマーを含む、層間修飾された層状粘土鉱物は、層状粘土鉱物の層間に上記ケイ素含有オリゴマーが挿入されており、層間が拡がっていることを特徴とする。
<層状粘土鉱物>
層状粘土鉱物とは、適量の水を含んでいるときに粘性と可塑性を示す微粒の天然物で、整然とした層状構造であるような鉱物をいう。その化学成分としては、主としてケイ酸・アルミナ・水のほか、鉄(Fe)、マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、ナトリウム(Na)及びカリウム(K)等も含まれるがこれらに限定されない。主な鉱物としては層状粘土層状ケイ酸塩鉱物(フィロケイ酸塩鉱物)があるが、方解石、苦灰石、長石類、石英、沸石(ゼオライト)類などの鉱物等もあげられる。
本発明の層状粘土鉱物としては、例えばスメクタイト群、マイカ群、バーミキュライト群、雲母群からなる鉱物群から選ばれる少なくとも1種以上があげられる。スメクタイト群に属する層状粘土鉱物としては、モンモリロナイト、ヘクトライト、サポナイト、ソーコナイト、バイデライト、ステブンサイト、ノントロナイト等があげられるが、これらに限定されない。マイカ群に属する層状粘土鉱物としては、クロライト、フロゴパイト、レピドライト、マスコバイト、バイオタイト、パラゴナイト、マーガライト、テニオライト、テトラシリシックマイカ等があげられるが、これらに限定されない。バーミキュライト群に属する層状粘土鉱物としては、トリオクタヘドラルバーミキュライト、ジオクタヘドラルバーミキュライト等があげられるが、これらに限定されない。雲母群に属する層状粘土鉱物としては、白雲母、黒雲母、パラゴナイト、レビトライト、マーガライト、クリントナイト、アナンダイト等があげられるが、これらに限定されない。本発明の層状粘土鉱物としては、天然物でも合成物でもよく、また、上記の鉱物を単独で又は2種類以上併用して用いることができる。
<カチオン性化合物で層間修飾された層状粘土鉱物>
本発明に関する層状粘土鉱物は、カチオン性化合物で層間修飾されていてもよい。本発明のカチオン性化合物で層間修飾された層状粘土鉱物とは、カチオン性化合物が層状粘土鉱物の層間及び/又は表面にイオン結合している鉱物をいう。層状粘土鉱物は、通常、層間にナトリウムイオン等アルカリ金属イオンやアルカリ土類金属イオン等の無機陽イオンが坦持されている。この無機陽イオンをイオン交換反応等により他のイオンと置き換えることにより、様々な物質を層状粘土鉱物の層間に担持させることができる。これを層間修飾という。
層状粘度鉱物の層間を拡げるために、層状粘度鉱物にケイ素含有オリゴマーを挿入する。このケイ素含有オリゴマーには、カチオン性化合物と親和性がある置換基がある。そこで、層状粘度鉱物の層間に予めカチオン性化合物を修飾しておけば、ケイ素含有オリゴマーを層間に挿入することができる。つまり、本発明の層状粘度鉱物はカチオン性化合物で層間修飾されるのが好ましい。
本発明で用いられるカチオン性化合物は、層状粘度鉱物の層間距離を拡げるためのフェニル基を含むケイ素含有オリゴマーと親和性が高い化合物をいい、アミノ基を有するアルコキシシラン、アルキルアミン類、アリールアミン類、第4級アンモニウム化合物及びジメチルドデシルアミン等の第3級アミン化合物等の有機カチオン性化合物;アルミニウム、銅、亜鉛、カリウム、カルシウムなどの無機イオン;メチレンブルー、ローダミンB、フタロシアニン、またアミン変性されたヘパリンやタンパク質やDNA分子等があげられるが、これらに限定されない。好ましくは、有機カチオン性化合物で、ジメチルドデシルアミン、ジエチレントリアミン、トリエチルテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ジエチルアミノプロピルアミン、N-アミノエチルピベラジン、メンセンジアミン、イソフオロンジアミン、m−キシレンジアミン、メタフェニレンジアミン、ジアミノジフェニルメタン、ジアミノジフェニルスルフォン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3−(N−フェニル)アミノプロピルトリメトキシシラン、等を塩酸等の強酸でカチオン化した有機カチオン化合物、アミンを配位子とする金属錯体で、エチレンジアミン、ジアミノプロパン、ジエチレントリアミン、トリエチルテトラミン、テトラエチレンペンタミン、1,10フェナントロリンを配位子とする銅錯体であり、さらに好ましくは、1,10フェナントロリンを配位子とする銅錯体である。本発明では、上記カチオン性化合物を単独で又は2種類以上併用して用いることができる。
本発明のカチオン性化合物で層間修飾を行う方法は、カチオン性化合物を層状粘土鉱物の層間及び/又は表面に物理的、化学的方法により吸着及び/又は結合させる方法等である。例えば、層状粘土鉱物と塩酸でカチオン化したジメチルドデシルアミンを混合して加熱しながら攪拌すると、イオン交換反応によりナトリウムイオンが層間から脱離し、カチオン化したジメチルドデシルアミンが層間又は表面に坦持した層状粘土鉱物が得られる。また、アミンを配位子とする金属錯体の水溶液と層状粘土鉱物を混合、攪拌すると、同様にイオン交換反応が起こり、層間にカチオン性金属錯体が坦持した層状粘土鉱物が得られる(図1)。
<ケイ素含有オリゴマー>
本発明では、このようにして得られたカチオン性化合物で層間修飾された層状粘土鉱物にケイ素系オリゴマーを析出させて、層間を拡張した層状粘土鉱物を獲得することを特徴とする(図2)。当該ケイ素含有オリゴマーはアルコキシシランを加水分解反応することにより生成させることができる。具体的には、上記層状粘土鉱物と適当なアルコキシシランとを有機溶剤中で混合攪拌した後、アルカリ触媒又は酸触媒存在下で加水分解反応を行い、層状粘土鉱物にケイ素系オリゴマーを析出させる。ここで、ケイ素系オリゴマーの高分子量化に伴い、原料であるアルコキシシランと比べて、そのモル体積が数十から数百倍となり、加水分解反応の進行に伴い、層状粘土鉱物の層間が拡張されるのである。このように、本発明のケイ素含有オリゴマーは、層状粘土鉱物の層間距離を拡張する、いわゆるスぺーサーとして機能する。
ケイ素系オリゴマーの原料となるアルコキシシランとしては、テトラエトキシシラン、テトラメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、メルカプトプロピルトリメトキシシラン、アミノプロピルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、ヘキシルトキエトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、p−スチリルトリメトキシシラン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン等があげられるが、これらに限定されない。このうち、層状粘土鉱物との親和性の観点からは、フェニルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、p−スチリルトリメトキシシラン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシランなどのベンゼン環を有するアルコキシシランか、又はエチルトリメトキシシラン、n−プロピルトリメトキシシラン、イソブチルトリメトキシシラン、n−ヘキシルトリメトキシシラン、n−オクチルトリエトキシシラン、n−デシルトリメトキシシラン等のアルキル基を有するアルコキシシランが好ましい。これらのアルコキシドを単独又は2種類以上の混合物として用いることができる。また、上記アルコキシシランと共に、チタニウムテトラエトキシド、チタニウムテトライソプロポキシド、アルミニウムプロポキシド、ジルコニウムブトキシド、等などのケイ素以外の金属元素を含むアルコキシドを含んでもよい。
本発明の好ましいケイ素含有オリゴマーを含む、層間修飾された層状粘土鉱物としては、層状粘土鉱物の層間に(1,10フェナントロリン)銅錯体がイオン交換されており、かつ、ケイ素含有オリゴマーがベンゼン環を含むような層状粘土鉱物か又は、層状粘土鉱物の層間にカチオン化した脂肪族アミン類がイオン交換されており、かつ、ケイ素含有オリゴマーが長鎖アルキル基を含むような層状粘土鉱物があげられるが、これらに限定されない。
本発明で用いるケイ素含有オリゴマーの粒径は、層間を拡大できるような粒径であればいかなる大きさにも設計できるが、好ましくは、0.1nm〜100nm、さらに好ましくは、1.61nm〜2.02nmである。
層間は公知の方法で測定することができるが、例えば、高分解能X線回折装置を用いて測定できる。当該測定方法は、例えば、X線源をCu、X線出力を50kV−250mA、走査範囲を0.5≦2θ≦60degと設定して、XRDパターンを測定する。得られたXRDパターンをブラッグの式
2dsinθ=nλ
(ここで、dは層間隔、θは回折角度、nは反射次数、λはX線波長=0.154nmをそれぞれ示す)
を用いることにより、層間隔を算出することができる。
本発明のケイ素含有オリゴマーを含む、層間修飾された層状粘土鉱物は、優れた絶縁破壊強度や絶縁破壊電圧を示すようないかなる厚みにも設計することができる。好ましくは、その厚みは0.05〜10μmである。厚みは公知の方法で測定することができるが、例えば、層状粘土鉱物を樹脂等に埋め込んで固定化し、研磨することにより層状粘土鉱物の断面を露出させ、電子顕微鏡で直接計測する方法で測定できる。
本願発明のケイ素含有オリゴマーを含む、層間修飾された層状粘土鉱物のうち、ケイ素含有オリゴマーと層間修飾された層状粘土鉱物は、層間が拡大されるのであれば、いかなる比率でも存在してよい。例えば、層間修飾された層状粘土鉱物が0.1wt%〜10wt%、ケイ素含有オリゴマーが0.1wt%〜30wt%である。
(2)本発明のワニス
本発明のワニスは、上記ケイ素含有オリゴマーを含む、層間修飾された層状粘土鉱物及びモノマーを含み、これらの物質を硬化反応させる前の状態をいう。
本発明のワニスに用いられるモノマーとしては、具体的には、例えば、ビスフェノールA型エポキシプレポリマー、ビスフェノールF型エポキシプレポリマー、オルトクレゾールノボラック型エポキシプレポリマー、無水メチルハイミック酸、2−エチル−4−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−エチル−4−メチルイミダゾール、4,4’−エチリデンジフェニルジシアナート、4,4’−ジシアナートビフェニル、3,3’,5,5’−テトラメチル−4,4’−ジシアナートビフェニル、3、3’−4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、p−フェニレンジアミン、ピロメリット酸二無水物、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、フェノール化合物、ホルムアルデヒド、尿素、ポリオール、ジイソシアネート、メタクリル酸メチル、スチレン、テレフタル酸及びエチレングリコールからなる群から選ばれる少なくとも1種又はそれ以上であるが、これらに限定されない。
本発明のワニスは、ケイ素含有オリゴマーを含む、層間修飾された層状粘土鉱物を樹脂原料と混合して、十分に攪拌することで作製することができ、いかなる公知の方法を用いてもよい。樹脂原料としては、モノマー、硬化剤、硬化触媒等あげられるが、これらに限定されない。さらに、樹脂原料の粘度を下げる目的で有機溶剤を加えてもよい。攪拌方法としては、遊星ボールミルやビーズミル等の機械的せん断を加える方法を用いてもよい。
本発明のワニスを用いて、高い絶縁破壊電圧を示す絶縁電線を提供することができる。
(3)本発明の有機−無機複合材料
本発明の有機−無機複合材料は、上記本発明のケイ素含有オリゴマーを含む、層間修飾された層状粘土鉱物及び樹脂を含む。上記のように、電気絶縁性に優れる層状粘土鉱物は樹脂材料との組み合わせて用いると、当該樹脂に難燃化、低誘電率化、絶縁寿命向上、高強度化、低熱膨張化等の特性を付与できる。ここで、層間距離が広がった層状粘度鉱物を樹脂と混合すると、樹脂中に層状粘度鉱物が高度に分散される。その結果、当該樹脂の上記特性を高めることができる。本発明では、『(1)本発明のケイ素含有オリゴマーを含む、層間修飾された層状粘土鉱物』で説明した層間に上記ケイ素含有オリゴマーが挿入されて層間が拡がった層状粘土鉱物を樹脂と混合して、耐電圧特性に優れた有機−無機複合材料を提供するものである。
<樹脂>
本発明の樹脂原料としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、オルトクレゾールノボラック型エポキシ樹脂などのグリシジルエーテル化合物、フェノール樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、シアネートエステル樹脂等があげられるが、これらに限定されない。これらを単独又は2種類以上の混合物として用いることができる。
<有機−無機複合材料の作製方法>
本発明の有機−無機複合材料は公知のいかなる方法をも用いて作製することができる。例えば、上記『(2)本発明のワニス』に記載したワニスを触媒等の他の物質と共にアルミニウム製等の金型に注入し、電気炉で加熱硬化することにより有機−無機複合材料を得ることができる。
(4)本発明の半導体装置
本発明の半導体装置は、半導体素子及び封止材を含む半導体装置であって、前記封止材は、上記『(3)本発明の有機−無機複合材料』で記載した本発明の有機−無機複合材料を含み、前記半導体素子は前記封止材で封止されている。
本発明の半導体装置とは、公知のいかなる半導体装置をも含む。
本発明の半導体素子とは、半導体における電子部品又は電子部品の機能中心部の素子をいい、テレビ受像機、携帯電話、コンピュータといった電気製品・電子機器に内蔵され、自動車や各種産業機器などにもコンピュータ等などの形で組み込まれている。本発明に関する半導体素子としては、トランジスタや集積回路(IC・LSI)、抵抗、コンデンサなどが含まれるが、これらに限定されない。
本発明の封止材とは、半導体パッケージを構成する材料の一つで、空気酸化や不純物混入を防ぐために用いる樹脂のうち、上記本発明の有機−無機複合材料を含むものをいう。
図3に、本発明の半導体装置の1例であるパワー半導体装置の断面模式図を示す。図3に示したパワー半導体装置では、パワー半導体素子401の裏面側電極が絶縁基板406上の回路配線部材402に接合材404によって電気的に接続され、パワー半導体素子401の主電極がリード部材403にワイヤ405によって電気的に接続されている。絶縁基板406の裏面側にはパワー半導体素子401で発生した熱を外部に逃がすための放熱板が設けられている。そして、回路配線部材402、リード部材403、放熱板407の一部が露出した状態でパワー半導体素子401の周囲が封止樹脂(封止材)408で封止される。この封止樹脂(封止材)408に本発明の有機−無機複合材料を適用することができる。
本発明の有機−無機複合材料は、絶縁破壊強度が高いため、部分放電によるチップと配線のショートを防止でき、パワー半導体装置の高寿命化に寄与することができる。なお、図3に示したパワー半導体装置の構造は一例であり、他の構造の半導体装置においても半導体素子401の周囲を覆う封止樹脂として本発明の有機−無機複合材料を適用できることはいうまでもない。
(5)本発明の電線
本発明の電線は、導体と絶縁材料を含む電線であって、前記導体が、上記『(2)本発明のワニス』で記載した本発明のワニス又は上記『(3)本発明の有機−無機複合材料』で記載した本発明の有機−無機複合材料を含む前記絶縁材料で被覆されている。
本発明の電線とは、金属等の線状導体を含み、2点間で電気を伝導するためのもので、絶縁や保護のための被覆がされているものをいう。また、高圧配電線、高圧引込線、低圧架空電線、低圧引込線、屋内配線等の電力用電線、電気機器用電線、通信用電線、地中電線路用、屋内配線、消防設備用、制御回路用、電力機器用、船舶用、アンダーカーペット配線用等のケーブル及び小型電気製品のコンセントにつないで用いられるコード等が含まれるが、これらに限定されない。また、単線、撚線、撚対線、シールド線等のいかなる形状の電線をも含む。本発明の電線に含まれる導体とは、移動可能な電荷を含み電気を通しやすい、電気伝導率(導電率)の高い材料をいい、例えば、銅、銀、アルミニウム、光ファイバ又はこれらの合金等があげられるが、これらに限定されない。絶縁材料には、上記本発明のワニス又は有機−無機複合材料の他、ポリエチレン、架橋ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、カプトン、ゴム状重合体、油浸紙、テフロン(登録商標)、シリコーン、フッ素樹脂等の電気や熱を通しにくい性質を有する物質が含まれていてもよい。
図4に、本発明の電線の1例である本発明のワニスを用いて作製した絶縁電線の断面図を示す。当該絶縁電線は、例えば、導体501に本発明のワニスを含む絶縁被覆502を形成して、焼き付けることにより製造できる。
本発明に関するワニスや有機−無機複合材料を含む膜は、高い絶縁破壊電圧を示すため、耐サージ特性に優れる絶縁電線を得ることができる。
(6)本発明の回転機コイル
本発明の回転機コイルは、導体と絶縁材料を含み、前記絶縁材料が巻回された前記導体は、上記『(2)本発明のワニス』で記載した本発明のワニス又は上記『(3)本発明の有機−無機複合材料』で記載した本発明の有機−無機複合材料を含む前記絶縁材料で含浸されている。
本発明の回転機コイルとは、絶縁被覆された導体がコイル状に巻かれたものであり、磁石と組み合わせることにより、モーターや発電機に用いられる。
図5に、本発明の回転機コイルの1例である回転機コイルの構成を示す。
本発明の回転機コイルは、例えば、導体601に絶縁テープを巻回して、加熱乾燥した後、本発明のワニスを真空含浸してから、加熱硬化して絶縁被覆602を形成するプロセスにより作製することができる。
本発明の回転機コイルは、上記のように絶縁性が高い樹脂で被覆されているため、耐熱寿命が高い。
次に、本発明を実施例及び比較例によって説明するが、本発明は下記に限定されるものではない。
(実施例1〜10)
純水400mlに層状粘土鉱物(以下、「クレイ」と記載する場合もある)としてクニミネ工業株式会社製のクニピアF(登録商標)を5g添加し、80℃に保持しながら2時間攪拌した。これによりクニピアFが水中に白濁した状態で分散した乳白色の分散液を得る。別途、純水400mlに、1,10−フェナントロリンが配位した銅錯体3.25gを溶解させておき、上記で得たクレイの分散液に投入した。さらに80℃で2時間攪拌して、クレイの層間のナトリウムイオンが各金属錯体とイオン交換反応して、クレイの層間に各金属錯体が置換した層間修飾クレイを得た。この反応機構を図1に示す。
以上の方法でクレイの層間に金属錯体を担持させた後、減圧濾過によりクレイを分離した。このとき、濾液は青、赤又は黒色を呈していることを確認した。再度、クレイを純水中に分散して、濾液の色が透明になるまで再分散と減圧濾過を繰り返し、分散液中の未反応の銅錯体やナトリウムイオン、塩素イオンなどを完全に除去した。
洗浄後のクレイを75℃で12時間、減圧乾燥し、水分を完全に除去した。乾燥したクレイは担持した銅錯体の種類に応じて青、赤又は黒色を呈していることを確認した。また、蛍光X線分析により、乾燥したクレイ中にはナトリウム、塩素が除去されていることを確認した。
クレイ0.4gをヘキサン40mlに超音波分散させた。さらにフェニルトリエトキシシランとテトラエトキシシランを加えて、一昼夜放置した。このとき、フェニルトリエトキシシランとテトラエトキシシランの添加量を1:1とし、総添加量が異なる試料を4種類作製して実験を行った。この分散液に、水5g、25%アンモニア水3g、エタノール30mlの混合液を加え、マグネチックスターラーを用いて室温で4時間攪拌した。攪拌後、アスピレータを用いて80℃で溶媒除去し、エタノール洗浄と溶媒除去を3回繰り返した。最後にロータリーポンプを用いて80℃で2時間真空乾燥した。得られた処理粉体の重量を秤量し、ケイ素系オリゴマーとクレイの比率を求めた。
上記処理粉体とロンザ社製のプリマセットLECy(化合物名:4,4’−エチリデンジフェニルジシアナート)と東京化成工業製の4−ノニルフェノールを秤量し、メノウボールを入れたメノウ製容器に投入し、ボールミルで2時間攪拌した。処理粉体の添加量は1〜15wt%まで変化させた。ボールミルの回転速度を450rpmとし、5分間隔で反転させるモードに設定した。以上より、金属錯体が層間修飾されたクレイが樹脂原料中に分散したワニスを得た。ワニスを100℃→120℃→150℃→200℃で各1時間ずつ加熱し、最後に250℃で6時間加熱し、有機−無機複合材料を得た。
(実施例11)
実施例2と同様の方法で作製した処理粉体とビスフェノールA型エポキシ樹脂(JER828;ジャパンエポキシ製)、酸無水物(MHAC−P;日立化成製)及びイミダゾール硬化触媒(2EMZ-CN;四国化成製)を混合し、ボールミルで2時間攪拌した。ボールミルの回転速度を450rpmとし、5分間隔で反転させるモードに設定した。得られたワニスを100℃→120℃→150℃で各1時間加熱した後、最後に180℃で2時間加熱して、有機−無機複合材料を得た。
(実施例12)
3、3’−4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物と水、あるいはメタノール、エタノール中で加熱し、テトラカルボン酸、あるいはカルボン酸エステルを合成した。冷却後、p−フェニレンジアミンを加えて加熱し、ポリアミック酸を合成した。合成したポリアミック酸をN−メチル−2−ピロリドン、ジメチルスルホキシド、N,N’ジメチルアセトアミド、N,N’ジメチルホルムアミド等の溶剤に溶解し、実施例2と同様の方法で作製した処理粉体を混合し、ボールミルで2時間攪拌した。ボールミルの回転速度を450rpmとし、5分間隔で反転させるモードに設定した。得られたワニスを100℃で1時間加熱後、400℃30分間加熱し、有機−無機複合材料を得た。
(比較例1)
処理粉体を添加しなかった以外は、実施例1と同様にして樹脂硬化物を得た。
(比較例2の作製)
処理粉体を添加しないこと以外は実施例2と同様にして樹脂硬化物を得た。
(測定・評価)
(1)XRD測定(層間距離評価)
実施例1〜11、比較例1〜2の処理粉体及び有機−無機複合材料中のクレイ層間距離は、高分解能X線回折装置(株式会社リガク製、型式:ATX−G)を用いて測定した。測定条件は、X線源はCu、X線出力は50kV−250mA、走査範囲は0.5≦2θ≦60degとした。測定したXRDパターンからブラッグの式(2dsinθ=nλ、d:層間隔、θ:回折角度、n:反射次数、λ:X線波長=0.154nm)を用いて層間隔を算出した。
(2)絶縁破壊電圧測定(絶縁破壊強度評価)
実施例1〜12及び比較例1〜2の有機−無機複合材料の絶縁破壊電圧は、以下のように測定した。測定には耐圧測定装置(株式会社佐々木電工社製)を用いた。図6に該測定装置の模式図を示す。電極板として片面に直径80mm、深さ1mmの窪みを形成した100mm×100mm×5mmtのアルミニウム板707を用い、窪みの中に樹脂原料を1〜2g流し込み、各実施例に記載した硬化条件で加熱した。アルミニウム板707上の有機−無機複合材料704の表面に直径5mmの球状電極705を置き、アルミニウム板707と球状電極705間に商用周波数(50Hz)の電圧を徐々に昇圧(昇圧速度:1kV/sec)しながら印加し、短絡電流が流れた時の電圧を破壊電圧VTOP(kV)とした。測定試料704、球状電極705及びアルミニウム板707はポリプロピレンケース701に充填した電気絶縁油(フロリナート(登録商標)住友スリーエム株式会社製、FC−77)702中に浸漬した。
TOPから実効電圧VRMS(絶縁破壊電圧)=VTOP/√2を計算し、VRMSを膜厚(0.05mm)で割り絶縁破壊強度とした。
図7には実施例1〜12で用いた未処理の層状粘土鉱物(クニピアF(登録商標))のXRD測定結果及び蛍光X線測定結果を示す。XRDスペクトルより、2θ=7.183°に層状粘土鉱物の層間隔に相当する回折ピークが見られた。ブラッグの式より層間隔は1.23nmであった。また、蛍光X線測定より、層状粘土鉱物にはナトリウムが含まれていた。
図8には実施例1〜12において、銅錯体で層間修飾した層状粘土鉱物のXRD測定結果及び蛍光X線測定結果を示す。XRDスペクトルより、2θ=5.646°に層状粘土鉱物の層間隔に相当する回折ピークが見られた。ブラッグの式より層間隔は1.56nmであり、未処理の層間隔より0.33nm拡大した。この場合、蛍光X線測定より層状粘土鉱物にはナトリウムは検出されず、銅が検出された。これより、層間のナトリウムイオンが銅錯体とイオン交換したことにより層間隔が拡大したと考えられる。
図9には実施例4において、銅錯体でイオン交換した後、アルコキシシランで分散処理した層状粘土鉱物のXRD測定結果を示す。XRDスペクトルより、2θ=5.264°に層状粘土鉱物の層間隔に相当する回折ピークが見られた。ブラッグの式より層間隔は1.68nmであった。これより、アルコキシシランで分散処理することにより、層間隔が0.13nm拡大したことが示された。
図10には、実施例4において作製した有機−無機複合材料のX線回折結果を示す。2θ=5.187°に層状粘土鉱物の層間隔に相当する回折ピークが見られた。ブラッグの式より層間隔は1.70nmであった。図9の分散処理した層状粘土鉱物と比べて0.02nmの増加がみられただけであった。
表1には各種条件で分散処理した層状粘土鉱物の層間隔及び有機−無機複合材料中の層状粘土鉱物の層間隔と絶縁破壊強度を示す。分散処理するときのアルコキシシランの配合量により、層状粘土鉱物の層間隔を1.61nm〜2.02nmまで制御可能であった。また、有機−無機複合材料中の層間隔は、1.64nm〜4.51nmまで制御可能であった。
分散処理した層状粘土鉱物を0.5wt%〜30wt%添加することにより、有機−無機複合材料の絶縁破壊強度は樹脂単独と比べて著しく向上することが示された。
図11は、実施例4で作製した有機−無機複合材料の断面SEM写真及び元素分析の結果を示す。元素分析から、アルミニウムのピーク位置にはケイ素のピークが見られることが示された。一方、アルミニウムが存在しない部分にもケイ素と酸素のピークが見られる場所が存在することが示された。アルミニウムは層状粘土鉱物の構成元素であることから、樹脂中には、層状粘土鉱物と酸化ケイ素が共存する部分と、酸化ケイ素単独の部分が存在することが考えられた。また、高倍率SEM写真の解析から、樹脂中に見られる約100nmの粒子は酸化ケイ素であり、0.1〜3μm程度の層状粘土鉱物の周囲を酸化ケイ素粒子が被覆する構造になっていると考えられた。このような構造になった原因について以下に考察する。
アンモニア触媒存在下でアルコキシシランの加水分解反応を行うと、反応液はpH=12程度のアルカリ性になるため、生成した酸化ケイ素粒子(等電点pH=2)の表面は負電荷を形成していると考えられた。層状粘土鉱物の表面にはカチオン性の銅錯体が坦持しているため、負に帯電した酸化ケイ素粒子は銅錯体が坦持された層状粘土鉱物表面に吸着される。従って、実施例4では、層状粘土鉱物の層間以外で析出した過剰な酸化ケイ素粒子が静電的な作用により層状粘土鉱物に吸着したと考えられた。
以上より、有機−無機複合材料の絶縁破壊強度が向上した原因としては、酸化ケイ素が静電的な相互作用で層状粘土鉱物に吸着することにより層状粘土鉱物が電気的に中和されたため、絶縁破壊強度が向上したことがあげられる。
(実施例13の作製)
本発明の有機−無機複合材料を用いてパワー半導体装置を作製した。まず、実施例4のワニス中にフィラとしてシリカを80wt%、シランカップリング剤としてKBM403(信越化学工業株式会社製)を5重量部、離型剤としてヘキストワックスE(クラリアントジャパン株式会社製)を2重量部、着色剤としてカーボンブラックを1重量部加え、溶融混錬して封止樹脂原料を作製した。別途、パワー半導体素子が搭載されたモジュールを作製し、封止樹脂原料を用いてポッティング法によりモジュール全体を被覆し、100℃→120℃→150℃→200℃で各1時間、250℃で6時間加熱硬化して樹脂封止した。
図3に作製したパワー半導体装置の模式図を示す。パワー半導体素子401の裏面側電極が絶縁基板406上の回路配線部材402に接合材404によって電気的に接続され、パワー半導体素子401の主電極がリード部材403にワイヤ405によって電気的に接続されている。絶縁基板406の裏面側にはパワー半導体素子401で発生した熱を外部に逃がすための放熱板が設けられている。そして、回路配線部材402、リード部材403、放熱板407の一部が露出した状態でパワー半導体素子401の周囲が封止樹脂408で封止されている。
比較例3として、層状粘土鉱物を含まない樹脂で封止したパワー半導体装置を作製した。パワーサイクル(PC)試験(ΔTc=170℃、20℃⇔190℃)のサイクル寿命を評価した結果を表2に示す。表2において、α1はT以下の温度での熱膨張係数を示し、α2はT超の温度での熱膨張係数を示す。なお、表2中、YDCN−750は,o−クレゾールノボラック型エポキシ樹脂で東都化成株式会社の商品名である。
サイクル寿命評価の結果、実施例13のパワーサイクル寿命は20000回であったのに対し、比較例3のパワーサイクル寿命は、4000回であった。以上より、パワー半導体装置に本発明の有機−無機複合材料を用いることで、パワーサイクル寿命が向上することが示された。これは、封止材として本発明の有機−無機複合材料を用いると部分放電電圧に伴う絶縁劣化が抑制されるからである。
(実施例14及び比較例4の作製)
実施例14として、電線に本発明の層状粘土鉱物と樹脂原料を含むワニスを塗布し、加熱するプロセスによりエナメル線を試作した。150℃の加速寿命評価を実施した結果、500hの絶縁破壊電圧の減少率は初期値の5%であった。
比較例4として市販の絶縁被覆材を用いてエナメル線を試作した。150℃の加速寿命評価を実施した結果、500hの絶縁破壊電圧の減少率は初期値の60%であった。以上より、エナメル線被覆材として本発明の有機−無機複合材料を用いることで、耐電圧性に優れたエナメル線が得られることが示された。
(実施例15及び比較例5の作製)
実施例15として、導体に絶縁テープを巻回し、加熱乾燥した後、本発明の層状粘土鉱物と樹脂原料を含むワニスを真空含浸し、加熱硬化するプロセスにより回転機コイルを得た。この回転機コイルを150℃の加速寿命評価を実施した結果、500hの絶縁破壊電圧の減少率は初期値の10%であった。
比較例5として市販の含浸樹脂を用いて回転機コイルを作製し、150℃の加速寿命評価を実施した結果、500hの絶縁破壊電圧の減少率は初期値の60%であった。
以上より、本発明の有機−無機複合材料を含浸樹脂として用いることで、耐熱寿命に優れた回転機コイルを得られることが示された。
本発明のケイ素含有オリゴマーを含む、層間修飾された層状粘土鉱物を含む有機−無機複合材料は、絶縁破壊強度が高いため、部分放電によるチップと配線のショートを防止することができ、パワー半導体装置の高寿命化に寄与することができる。
本発明の層間修飾された層状粘土鉱物及びモノマーを含む、ワニスを用いた膜は、高い絶縁破壊電圧を示すため、耐サージ特性に優れる絶縁電線を提供できる。
本発明のワニスを真空含浸し、加熱硬化して絶縁被覆を形成することにより回転機コイルを得ることができる。この回転機コイルは、絶縁性が高い樹脂で被覆されているため、耐熱寿命が高く、有用である。
401 パワー半導体素子
402 回路配線部材
403 リード部材
404 接合材
405 ワイヤ
406 絶縁基板
407 放熱板
408 封止材
501 導体
502 絶縁被覆
601 導体
602 絶縁被覆
701 PPケース
702 電気絶縁油
703 有機-無機複合材料
704 球状電極
705 対向電極(アルミニウム製)

Claims (9)

  1. ケイ素含有オリゴマーを含む、層間修飾された層状粘土鉱物であって、
    前記層状粘土鉱物がスメクタイト群、マイカ群、バーミキュライト群及び雲母群からなる群から選ばれる少なくとも1種又はそれ以上であり、
    前記層間修飾された層状粘土鉱物の層間に(1,10フェナントロリン)銅錯体がイオン交換されている場合は前記ケイ素含有オリゴマーがベンゼン環を含む、又は、
    前記層間修飾された層状粘土鉱物の層間にカチオン化された脂肪族アミン類がイオン交換されている場合は前記ケイ素含有オリゴマーが長鎖アルキル基を含む、
    前記層間修飾された層状粘土鉱物。
  2. 請求項1記載の層間修飾された層状粘土鉱物において、前記層状粘土鉱物が0.1wt%〜10wt%、前記ケイ素含有オリゴマーが0.1wt%〜30wt%含まれる、層間修飾された層状粘土鉱物。
  3. 請求項1又は2記載の層間修飾された層状粘土鉱物及びモノマーを含む、ワニス。
  4. 請求項3記載のワニスにおいて、前記モノマーがビスフェノールA型エポキシプレポリマー、4,4’−エチリデンジフェニルジシアナート、3,3’−4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、p-フェニレンジアミンからなる群から選ばれる少なくとも1種又はそれ以上である、ワニス。
  5. 請求項1又は2記載の層間修飾された層状粘土鉱物及び樹脂、又は、請求項3若しくは4記載のワニスを含む、有機−無機複合材料。
  6. 請求項5記載の有機−無機複合材料において、前記樹脂がエポキシ樹脂、シアネートエステル樹脂、ポリイミド樹脂からなる群から選ばれる少なくとも1種以上である、有機−無機複合材料。
  7. 半導体素子及び封止材を含む半導体装置であって、前記封止材は請求項5又は6記載の有機−無機複合材料を含み、前記半導体素子が前記封止材で封止される、半導体装置。
  8. 導体と絶縁材料を含む電線であって、前記導体が、請求項3若しくは4記載のワニス又は請求項5又は6記載の有機−無機複合材料を含む前記絶縁材料で被覆されている、前記電線。
  9. 導体と絶縁材料を含む回転機コイルであって、前記絶縁材料が巻回された前記導体は、請求項3若しくは4記載のワニス又は請求項5又は6記載の有機−無機複合材料で含浸されている、前記回転機コイル。
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