配列の簡単な説明
配列番号1は、B9A5(親)、B9L9.3およびB9L32.2(後代)、抗FZD10抗体のB9重鎖可変領域のアミノ酸配列である。
配列番号2は、B9A5(親)抗FZD10抗体のA5軽鎖可変領域のアミノ酸配列である。
配列番号3は、B9L9.3抗FZD10抗体のL9.3軽鎖可変領域のアミノ酸配列である。
配列番号4は、B9L32.2抗FZD10抗体のL32.2軽鎖可変領域のアミノ酸配列である。
配列番号5は、B9A5(親)、B9L9.3およびB9L32.2(後代)、抗FZD10抗体のB9 VHCDR1のアミノ酸配列である。
配列番号6は、B9A5(親)、B9L9.3およびB9L32.2(後代)、抗FZD10抗体のB9 VHCDR2のアミノ酸配列である。
配列番号7は、B9A5(親)、B9L9.3およびB9L32.2(後代)、抗FZD10抗体のB9 VHCDR3のアミノ酸配列である。
配列番号8は、B9A5親抗FZD10抗体のA5 VLCDR1のアミノ酸配列、ならびにまた親DTLacO VLCDR1のアミノ酸配列である。
配列番号9は、B9L9.3抗FZD10抗体のL9.3 VLCDR1のアミノ酸配列である。
配列番号10は、B9L32.2抗FZD10抗体のL32.2 VLCDR1のアミノ酸配列である。
配列番号11は、B9A5(親)、B9L9.3およびB9L32.2(後代)、抗FZD10抗体のA5、L9.3およびL32.2 VLCDR2のアミノ酸配列である。
配列番号12は、B9A5(親)、B9L9.3およびB9L32.2(後代)、抗FZD10抗体のA5、L9.3およびL32.2 VLCDR3のアミノ酸配列、ならびにまた親DTLacO VLCDR3のアミノ酸配列である。
配列番号13は、親DTLacO重鎖可変領域のアミノ酸配列である。
配列番号14は、親DTLacOのVHCDR1のアミノ酸配列である。
配列番号15は、親DTLacOのVHCDR2のアミノ酸配列である。
配列番号16は、親DTLacOのVHCDR3のアミノ酸配列である。
配列番号17は、親DTLacOの軽鎖可変領域のアミノ酸配列である。
配列番号18は、親DTLacOのVLCDR2のアミノ酸配列である。
配列番号19は、配列番号1のアミノ酸配列をコードするポリヌクレオチドであり、B9A5(親)、B9L9.3およびB9L32.2(後代)、抗FZD10抗体のB9重鎖可変領域をコードする。
配列番号20は、配列番号2(B9A5抗体のA5軽鎖可変領域)のアミノ酸配列をコードするポリヌクレオチドである。
配列番号21は、配列番号3(B9L9.3抗体のL9.3軽鎖可変領域)のアミノ酸配列をコードするポリヌクレオチドである。
配列番号22は、配列番号4(B9L32.2抗体のL32.2軽鎖可変領域)のアミノ酸配列をコードするポリヌクレオチドである。
配列番号23は、親DTLacO重鎖可変領域のアミノ酸配列をコードするポリヌクレオチドである。
配列番号24は、親DTLacO軽鎖可変領域のアミノ酸配列をコードするポリヌクレオチドである。
配列番号25、26および27はリンカーのアミノ酸配列である。
配列番号28は、ヒトFZD10アミノ酸配列を示す。
配列番号29は、ヒトIgラムダ定常領域を含む、ヒト化L9.3軽鎖のアミノ酸配列である。
配列番号30は、ヒト化L9.3軽鎖のアミノ酸配列(シグナル配列を含む)をコードするポリヌクレオチドである。
配列番号31は、ヒトIgG1定常領域を含む、ヒト化B9重鎖のアミノ酸配列である。
配列番号32は、ヒト化B9重鎖のアミノ酸配列(シグナル配列を含む)をコードするポリヌクレオチドである。
配列番号33は、ヒトIgG1定常領域(CH1−ヒンジ−CH2−CH3)のアミノ酸配列をコードするポリヌクレオチドである。
配列番号34は、ヒトIgG1定常領域(CH1−ヒンジ−CH2−CH3)のアミノ酸配列である。
配列番号35は、ヒトラムダ軽鎖定常領域のアミノ酸配列をコードするポリヌクレオチドである。
配列番号36は、ヒトラムダ軽鎖定常領域のアミノ酸配列である。
配列番号37は、ヒト化L9.3軽鎖VJ領域のアミノ酸配列である。
配列番号38は、CDRが「X」で示されるヒトVλサブグループIIIコンセンサス配列のアミノ酸配列である。
配列番号39は、ヒト化B9重鎖VDJ領域のアミノ酸配列である。
配列番号40は、CDRが「X」で示されるヒトVHサブグループIIIコンセンサス配列のアミノ酸配列である。
詳細な説明
本発明の実施形態は、FZD10、Wntファミリー受容体タンパク質(例えば、配列番号28)に結合する抗体に関する。特に、本明細書に記載される抗体は予想外に高アフィニティーでFZD10に特異的に結合し、ある特定の実施形態では、異常なまたは変化したFZD10発現、および特にFZD10過剰発現(例えば、正常な細胞もしくは無病細胞においておよび/または正常な細胞もしくは無病細胞上で検出可能である発現のレベルよりも大きさにおいてより大きなレベルで検出可能なFZD10発現)と関連する疾患などの、FZD10発現と関連する疾患の処置に治療的有用性を有する。そのような疾患には様々な形態のがんが含まれ、制限なく、滑膜肉腫、結腸直腸癌、胃癌、慢性骨髄性白血病(CML)および急性骨髄性白血病(AML)ならびに他のがんが含まれる。例示的抗体またはその抗原結合断片またはその相補性決定領域(CDR)のアミノ酸配列は、配列番号1〜12に記載されており、配列番号19〜22に記載されるポリヌクレオチド配列によりコードされている。
本発明のある特定の実施形態は、FZD10、Wntファミリー受容体タンパク質(例えば、配列番号28)に結合して、FZD10過剰発現細胞のまたは胚性幹細胞もしくはその後代などのFZD10+幹細胞の生存、複製、分化または脱分化(例えば、上皮細胞−間葉細胞移行)を変化させる(例えば、一部の実施形態において阻害するステップを含む、統計学的に有意な方法で増大させるまたは減少させる)および/あるいはFZD10過剰発現細胞による腫瘍増殖を阻害する抗体を使用する方法に関する。本明細書に記載される方法は、種々のがんなどのFZD10の発現(典型的には過剰発現)と関連する疾患の処置におよび抗FZD10抗体単独でのまたは他の薬剤と組み合わせての投与を含む処置レジメンの同定に有用である。本抗FZD10抗体が、例えば、抗FZD10抗体誘導の前にまたはその後でそのような細胞をin vivoで導入することにより胚性幹細胞またはその後代などのFZD10+幹細胞の発生に有利に影響を及ぼして、心筋細胞へと発生して梗塞により損傷を受けた心筋の修復をもたらす、あるいは内皮細胞および/または平滑筋細胞へと発生して循環器疾患もしくはがんもしくは他の関連状態において脈管修復をもたらし得る方法も本明細書に記載されている。例示的抗FZD10抗体またはその抗原結合断片またはその相補性決定領域(CDR)のアミノ酸配列は、配列番号1〜12に記載されており、配列番号20〜23に記載されるポリヌクレオチド配列によりコードされている。
ある特定の実施形態ではおよび非限定的理論に従えば、本明細書に記載される抗FZD10抗体は、単独でまたは他の薬剤と組み合わせてがん幹細胞(CSC)に接触させて腫瘍増殖を阻害しえる。さらに非限定的理論に従えば、がん幹細胞は、充実性腫瘍の細胞または新しい腫瘍の形成を開始する能力およびがんを養子宿主に移す能力により特徴付けられる造血がんの細胞であってもよい。(Parkら、2009年 Molec. Therap. 17巻:219頁)。例えば、特定種類のドナー腫瘍由来のヒトCSCの細胞表面マーカー表現型は、細胞表面マーカー発現に基づいて単離された候補CSCの異種移植片を免疫不全マウスに移植し、ドナー腫瘍と同じ種類のレシピエント腫瘍の確立および成長が起こるかどうかを決定することにより決定しえる。同上文献。「単離された」細胞は、その細胞が本来存在していた自然環境から取り出された細胞またはin vitroで維持され、成長しまたは産生されたそのような細胞の後代である。
新しい腫瘍を開始する、およびin vivoでの累代移植を介して新しい腫瘍を開始する単離された腫瘍細胞の能力は、多種多様なモデル系について裏付けられてきた。例えば、Parkら、2009年Molec. Therap. 17巻:219頁; Curtinら、2010年Oncotarget 1巻:563頁; De Almeidaら、2007年Canc. Res. 67巻:5371頁; Ettenbergら、2010年Proc. Nat. Acad. Sci. USA 107巻:15473頁; Fukukawaら、2009年Oncogene 28巻:1110頁;Fukukawaら、2008年Canc. Sci. 99巻:432頁; Heら、2004年Neoplasia 6巻:7頁; Huら、2009年Canc. Res. 69巻:6951頁; Nagayamaら、2009年Canc. Sci. 100巻:405頁; Hagayamaら、2005年Oncogene 24巻:6201頁; Nagayamaら、2002年Canc. Res. 62巻:5859頁; Podeら、2011年Oncogene 30巻:1664頁; Youら、2004年Canc. Res. 64巻:56385頁などを参照されたい。
これらのおよび関連する系では、移植された腫瘍細胞(複数の腫瘍細胞を含む腫瘍断片を含む)は、該移植された細胞が複製して、測定可能な成長を統計学的に有意な方法で検出することができる腫瘍を生じるのが観察される場合は養子宿主(例えば、レシピエント多細胞生物、好ましくは脊椎動物、さらに好ましくはマウス、ラット、ウサギ、モルモット、イヌ、ネコ、ヤギ、ヒツジ等のような哺乳動物)において腫瘍を確立すると見なしえる。典型的には、養子宿主における腫瘍は、養子移入細胞が得られた腫瘍に表現型で類似する。確立した充実性腫瘍は、多くの場合、細胞表面マーカー発現、細胞骨格成分発現および組織化、形態、血管網および/または基底膜の存在ならびに他の特長などの特徴的表現型を示す場合がある。
したがって、ある特定の実施形態では、本発明は、FZD10過剰発現細胞による腫瘍増殖を阻害するための方法であって、単離されたFZD10過剰発現腫瘍細胞を本明細書に記載される抗FZD10抗体に、該抗体の該細胞への特異的結合に十分な条件下でかつそれに十分な時間接触させるステップを含み、接触させるステップが養子試験宿主(例えば、抗FZD10抗体も受け入れる宿主生物)への腫瘍細胞の移植前に、移植中にまたは移植後に行われ、養子試験宿主において確立される腫瘍組織のレベルが、FZD10過剰発現腫瘍細胞が抗FZD10抗体に接触されることなく移植される養子対照宿主において確立される腫瘍組織のレベルと比べて減少している方法を提供する。
したがって、本明細書に記載される実施形態のうちのいくつかに従えば、これらおよび/または関連する系を使用して、FZD10過剰発現細胞による腫瘍増殖の、抗FZD10抗体による阻害を決定するまたはFZD10過剰発現細胞の生存、複製、分化および/もしくは脱分化(例えば、上皮細胞−間葉細胞移行)の抗FZD10抗体による阻害を決定する方法が明確に想定されている。
本明細書に記載される抗FZD10抗体は、第1のWntリガンド(例えば、WNT7aおよび/またはWNT7b)と該Wntリガンドに対する第1の受容体(例えば、FZD10)との間の特異的相互作用を実質的に障害する第1の薬剤として単独で使用しえる。さらにまたは代わりに、本明細書に記載される抗FZD10抗体は、1つまたは複数のさらなる薬剤と組み合わせて使用しえる。ある特定のそのような実施形態では、さらなる薬剤(複数可)は、少なくとも1つの第2のWntリガンド(例えば、Dkk−1、Dkk−2またはDkk−4などのDKKファミリーメンバー;sFRP−1、sFRP−2、sFRP−3、sFRP4またはsFRP−5などの分泌Frizzled関連タンパク質(sFRP);Wnt阻害因子1(WIF−1);Norrin;R−スポンジン;DkkL1;等)と該Wntリガンドに対する第2の受容体(例えば、FZD1、FZD2、FZD3、FZD4、FZD5、FZD6、FZD7、FZD8、FZD9、LRP5、LRP6、ROR1、ROR2、RYK、MuSKおよびグリピカン3などのグリピカン;例えば、Schulte 2010年 Pharmacol. Rev. 62巻:632頁; RaoおよびKuehl、2010年Circ. Res. 106巻:1798頁; Filmusら、2008年Genome Biol. 9巻:224頁; ChienおよびMoon、2007年Front. Biosci. 12巻:448頁を参照されたい;表1も参照されたい)との間の特異的相互作用を実質的に障害する第2の薬剤を含みうる。そのような第2のWntリガンドと該Wntリガンドに対するそのような第2の受容体との間の特異的相互作用を実質的に障害する(例えば、少なくとも約50、55、60、65、70、75、80、85、90、95パーセントまたはそれよりも多くの統計学的に有意な方法で阻害する)そのような第2の薬剤の非限定的例は表1に提示されており、遺伝子ノックアウトモデルは、例えば、確立したsiRNA技術を使用して、関連遺伝子発現の抑制のための標的を同定すると理解される(例えば、Wangら、2011年 Mini Rev. Med. Chem.11巻:114頁; Petroccaら、2011年 J. Clin. Oncol. 29巻:747頁; Shiら、2011年 Expert Opin. Biol. Ther. 11巻:5頁; Nijweningら、2010年 IDrugs 13巻:772頁)。
したがって、本明細書で開示されているある特定の実施形態は、FZD10過剰発現細胞の生存、複製、分化および上皮細胞−間葉細胞移行のうちの少なくとも1つを変化させる(例えば、統計学的に有意な方法で増大させるまたは減少させるおよび一部の実施形態では阻害する)ための方法であって、該細胞を本明細書に記載される抗FZD10抗体に、該細胞への該抗体の特異的結合に十分な条件下でかつそれに十分な時間接触させるステップを含む方法を想定している。細胞生存、複製、分化および上皮細胞−間葉細胞移行を決定するための基準は公知であり、当業者であれば十分に理解している。細胞分裂、細胞生存、アポトーシス、増殖および分化と関連している経路を含む、生物学的シグナル伝達のための経路は、ある特定の例では「生物学的シグナル伝達経路」または「誘導性シグナル伝達経路」と称されることもあり、細胞におけるこれらのおよび類似する過程の制御に関与している細胞分子成分および細胞外分子成分間での一時的もしくは安定な会合または相互作用を含むことがある。対象の特定の経路(複数可)に応じて、そのような経路(複数可)の誘導を決定するための1つまたは複数の適切なパラメータは、当技術分野で認められた基準に基づいて選択してもよい。
例えば、細胞複製または増殖に関連するシグナル伝達経路では、例えば、増殖中の細胞によるトリチウム標識チミジンの細胞DNAへの取り込み、細胞呼吸活動の検出可能な(例えば、蛍光光度または比色)指示薬(例えば、代謝的活性細胞におけるテトラゾリウム塩(黄色)3−(4,5−ジメチルチアゾール−2−イル)−2,5−ジフェニルテトラゾリウムブロマイド(MTT)または3−(4,5−ジメチルチアゾール−2−イル)−5−(3−カルボキシメトキシフェニル)−2−(4−スルホフェニル)−2H−テトラゾリウム(MTS)のホルマザン色素(紫色)への変換)のモニタリング、または細胞数計測などを含む、複製または増殖を定量化するための種々の周知の方法が利用可能である。
同様に、細胞生物学技術では、顕微鏡的技法、生化学的技法、分光光度的技法、分光学的技法、光散乱技法、フローサイトメトリー技法および細胞蛍光を含む細胞数計測技法または他の技法(例えば、トリパンブルー(Trypan Blue)などの生体染色色素、ヨウ化プロピジウムなどのDNA結合フルオロフォア、代謝指示薬、等)による生存能決定を含む多数の公知の方法のうちのいずれかにより細胞生存を評価するための、ならびにアポトーシス(例えば、アネキシンV結合、DNA断片化アッセイ、カスパーゼ活性化、マーカー解析、例えば、ポリ(ADP−リボース)ポリメラーゼ(PARP)、等)を決定するための複数の技法が公知である。
他のシグナル伝達経路は、特定の細胞表現型、例えば、遺伝子発現の特定の誘導(例えば、転写産物もしくは翻訳産物として、またはそのような産物のバイオアッセイにより、または細胞質因子の核局在化として検出可能である)、細胞内メディエーター(例えば、活性化キナーゼもしくはホスファターゼ、環状ヌクレオチドのもしくは生理学的に活性なイオン種の変化したレベル、1つもしくは複数の特定のリン酸化基質のリン酸化の程度の変化したレベル、等)の変化した(例えば、統計学的に有意な増大または減少)レベル、変化した細胞周期プロファイル、または変化した細胞形態などに関連しているため、本明細書に提供される特定の刺激に対する細胞応答性を容易に同定して、特定の細胞が生存、複製、分化または脱分化イベントを起こしているまたは起こしたかどうかを決定することができる(例えば、上皮細胞−間葉細胞移行;例えば、Hlubekら、2007年 Front. Biosci. 12巻:458頁を参照されたい)。
被験体における悪性状態の存在は、当技術分野では公知であり、それについての診断および分類の基準が確立している、例えば、新形成細胞、腫瘍細胞、非接触阻害されたまたは腫瘍形成的に形質転換した細胞など(例えば、黒色腫、癌、例えば、腺癌、扁平上皮癌、小細胞癌、燕麦細胞癌等、肉腫、例えば、軟骨肉腫、骨肉腫等)を含む被験体における形成異常細胞、がん性細胞および/または形質転換細胞の存在を指している(例えば、HanahanおよびWeinberg、2011年Cell 144巻:646頁; HanahanおよびWeinberg 2000年Cell 100巻:57頁; Cavalloら、2011年Canc. Immunol. Immunother. 60巻:319頁; Kyrigideisら、2010年J. Carcinog. 9巻:3頁)。本発明により想定されている好ましい実施形態では、例えば、そのようながん細胞は、急性骨髄性白血病、乳がん、髄芽腫、神経膠芽腫、頭頸部扁平上皮癌、結腸がん、黒色腫、前立腺がん、膵臓がん、非小細胞肺がん、B細胞リンパ芽球性白血病、T細胞リンパ芽球性白血病、骨髄腫、肝細胞癌、奇形癌、ウィルムス腫瘍、滑膜癌、結腸直腸癌、結腸腺癌または胃腺癌の細胞であり得、それには、これらの種類のがんのいずれも開始することができ、逐次的に移植することができるがん幹細胞が含まれる(例えば、Parkら 2009年 Molec. Therap. 17巻:219頁を参照されたい)。
ある特定の想定された実施形態に従えば、本明細書に記載される抗FZD10mAbは、異なる特殊化した免疫機能を有する免疫エフェクター細胞を、多種多様な細胞表面抗原のその差次的発現に基づいて互いに区別することができることが周知である、治療的状況において望ましい免疫エフェクター細胞機能(複数可)を有利に動員することができる。免疫エフェクター細胞には、天然にまたは遺伝子操作の結果としてそのような能力を有する細胞を含めて、免疫系機能の構成要素である活性を直接媒介することができる任意の細胞が挙げられる。
ある特定の実施形態では、免疫エフェクター細胞は、一般に「Fc受容体」(FcR)と称されるクラスの受容体を含む、免疫グロブリン定常領域に対する受容体などの免疫グロブリンに対する細胞表面受容体を含む。限定されたサブセットの免疫グロブリン重鎖アイソタイプと相互作用する特定の能力もしくはFcドメインと様々なアフィニティーで相互作用する特定の能力を有し、かつ/またはある特定の条件下、限定されたサブセットの免疫エフェクター細胞上で発現されることがあるFcRを含む、多数のFcRが構造的および/または機能的に特徴付けられており、当技術分野では周知である(例えば、Kijimoto-Ochichaiら、2002年 Cell Mol. Life Sci. 59巻:648頁; Davisら、2002年Curr. Top. Microbiol. Immunol. 266巻:85頁; Pawankar、2001年Curr. Opin. Allerg. Clin. Immunol. 1巻:3頁; Radaevら、2002年Mol. Immunol. 38巻:1073頁; Wurzburgら、2002年Mol. Immunol. 38巻:1063頁; Sulicaら、2001年Int. Rev. Immunol. 20巻:371頁; Underhillら、2002年Ann. Rev. Immunol. 20巻:825頁; Coggeshall、2002年Curr. Dir. Autoimm. 5巻:1頁; Mimuraら、2001年Adv. Exp. Med. Biol. 495巻:49頁; Baumannら、2001年Adv. Exp. Med. Biol. 495巻:219頁; Santosoら、2001年Ital. Heart J. 2巻:811頁; Novakら、2001年Curr. Opin. Immunol. 13巻:721頁; Fossatiら、2001年Eur. J. Clin. Invest. 31巻:821頁)。
抗体依存性細胞媒介性細胞傷害(ADCC)を媒介することができる細胞は、本発明に従えば免疫エフェクター細胞の好ましい例である。他の好ましい例には、ナチュラルキラー(NK)細胞、腫瘍浸潤Tリンパ球(TIL)、細胞傷害性Tリンパ球(CTL)およびアレルギー応答機構を備えた細胞などの顆粒球細胞が挙げられる。したがって、免疫エフェクター細胞には、骨髄系統およびリンパ系統内の分化の様々な段階の細胞を含み、Tリンパ球、Bリンパ球、NK細胞、単球、マクロファージ、樹状細胞、好中球、好塩基球、好酸球、マスト細胞、血小板、赤血球ならびに前駆体(precursor)、前駆細胞(progenitor)(例えば、造血幹細胞)、静止状態の、活性化されたおよび成熟型のそのような細胞などの、1つまたは複数種類の機能的細胞表面FcRを発現し得る(しかし、その必要はない)造血起源の細胞が挙げられるが、これらに限定されない。他の免疫エフェクター細胞として、免疫機能を媒介することができる非造血起源の細胞、例えば、内皮細胞、ケラチノサイト、線維芽細胞、破骨細胞、上皮細胞および他の細胞を挙げることができる。免疫エフェクター細胞として、細胞毒性もしくは細胞増殖抑制性イベントまたはエンドサイトーシスイベント、食作用イベントもしくは飲作用イベントを媒介する、あるいはアポトーシスの誘導をもたらす、あるいは微生物免疫または微生物感染の中和をもたらす細胞、あるいはアレルギー反応、炎症反応、過敏反応および/または自己免疫反応を媒介する細胞も挙げられ得る。
抗体およびその抗原結合断片
「抗体」とは、免疫グロブリン分子の可変領域(本明細書ではまた、可変ドメインとも称する)内に位置する少なくとも1つのエピトープ認識部位を介して、炭水化物、ポリヌクレオチド、脂質、ポリペプチドなどの標的への特異的結合が可能な免疫グロブリン分子である。本明細書で用いられる通り、用語「抗体」は、無傷のポリクローナル抗体または無傷のモノクローナル抗体だけでなく、また、これらの断片(単一可変領域抗体(dAb)、または他の公知の抗体断片(Fab、Fab’、F(ab’)2、Fvなど)など、単鎖抗体(ScFv)、これらの合成改変体、天然に存在する改変体、必要とされる特異性を有する抗原結合断片を伴う抗体部分を含む融合タンパク質、ヒト化抗体、キメラ抗体、および必要とされる特異性を有する抗原結合部位または抗原結合断片(エピトープ認識部位)を含む他の任意の操作もしくは修飾された立体配置の免疫グロブリン分子も包含する。遺伝子融合により構築される「ダイアボディー」、多価断片、または多重特異性断片(WO94/13804;Holligerら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA、90巻、6444〜6448頁、1993年)も、本明細書で想定される特定の形態の抗体である。本明細書にはまた、CH3ドメインへと接合されたscFvを含むミニボディーも包含される(Huら、Cancer Res.、56巻、3055〜3061頁、1996年);例えば、Wardら、Nature、341巻、544〜546頁(1989年);Birdら、Science 242巻、423〜426頁、1988年;Hustonら、PNAS USA、85巻、5879〜5883頁、1988年;PCT/US92/09965;WO94/13804;Holligerら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA、90巻、6444〜6448頁、1993年;Y. Reiterら、Nature Biotech 14巻、1239〜1245頁、1996年;Huら、Cancer Res. 56巻、3055〜3061頁、1996年も参照されたい)。ナノボディーおよびマキシボディー(maxibody)もまた意図される(例えば、米国特許第6,765,087号;米国特許第6,838,254号;WO06/079372;WO2010/037402を参照されたい)。
本明細書で用いられる「抗原結合断片」という用語は、対象の抗原に結合する免疫グロブリン重鎖および/または軽鎖の少なくとも1つのCDRを含有するポリペプチド断片を指し、この抗原は、本明細書に記載される特に好ましい実施形態では、FZD10受容体に結合する。この点で、本明細書で記載される抗体の抗原結合断片は、FZD10に結合する抗体に由来する、本明細書で示されるVH配列および/またはVL配列の1、2、3、4、5、または6つ全てのCDRを含みうる。本明細書で記載されるFZD10特異的抗体の抗原結合断片は、FZD10への結合が可能である。ある特定の実施形態では、抗原結合断片または抗原結合断片を含む抗体が、FZD10を発現させる標的細胞の死滅化を媒介する。他の実施形態では、抗原結合断片の結合が、FZD10リガンド(例えば、Wntタンパク質)のFZD10受容体への結合を防止または阻害し、さもなければリガンドの受容体への結合から結果として生じる生物学的応答を遮断する。ある特定の実施形態では、抗原結合断片が、ヒトFZD10に特異的に結合し、かつ/またはその生物学的活性を阻害もしくはモジュレートする。
「抗原」という用語は、抗体などの選択的結合剤による結合が可能であり、加えて、動物において、この抗原のエピトープへの結合が可能な抗体を産生するのに用いることが可能な分子または分子の部分を指す。抗原は、1つまたは複数のエピトープを有しうる。
「エピトープ」という用語は、免疫グロブリンまたはT細胞受容体への特異的結合が可能である、任意の決定基、好ましくはポリペプチド決定基を包含する。エピトープとは、抗体が結合する抗原の領域である。ある特定の実施形態では、エピトープ決定基に、アミノ酸、糖側鎖、ホスホリルまたはスルホニルなど、分子の化学的に活性な表面の組み分け(grouping)が含まれ、ある特定の実施形態では、特定の三次元構造特徴および/または特定の電荷特徴を有しうる。ある特定の実施形態では、抗体は、タンパク質および/または高分子の複合混合物中でその標的抗原を優先的に認識する場合に、抗原に特異的に結合するという。抗体は、ある実施形態によれば、抗体−抗原結合についての平衡解離定数が10−6M未満もしくはそれに等しいか、または10−7M未満もしくはそれに等しいか、10−8M未満もしくはそれに等しい場合に、特異的に抗原に結合するといわれることができる。一部の実施形態では、平衡解離定数が10−9M未満もしくはそれに等しい場合もあり、10−10M未満もしくはそれに等しい場合もある。
タンパク質分解酵素であるパパインは、IgG分子を優先的に切断して、いくつかの断片であって、これらのうちの2つ(F(ab)断片)の各々が、無傷の抗原結合部位を包含する共有結合的ヘテロ二量体を含む、いくつかの断片をもたらす。酵素であるペプシンは、IgG分子を切断して、いくつかの断片であって、両方の抗原結合部位を含むF(ab’)2断片を含めた、いくつかの断片をもたらすことが可能である。本発明のある特定の実施形態に従って用いられるFv断片は、IgMの優先的なタンパク質分解的切断により産生させうるが、まれな場合には、IgG免疫グロブリン分子またはIgA免疫グロブリン分子のタンパク質分解的切断により産生させることもできる。しかし、Fv断片は、より一般的には、当技術分野において公知の組換え法を用いて誘導される。Fv断片は、天然抗体分子の抗原認識能および抗原結合能の大半を保持する抗原結合部位を含めた、非共有結合的VH::VLヘテロ二量体を包含する(Inbarら(1972年)、Proc. Nat. Acad. Sci. USA、69巻:2659〜2662頁;Hochmanら(1976年)、Biochem、15巻:2706〜2710頁;およびEhrlichら(1980年)、Biochem、19巻:4091〜4096頁)。
ある特定の実施形態では、単鎖Fv抗体またはscFV抗体が想定される。例えば、カッパボディー(Illら、Prot. Eng.、10巻:949〜57頁(1997年));ミニボディー(Martinら、EMBO J、13巻:5305〜9頁(1994年);ダイアボディー(Holligerら、PNAS、90巻:6444〜8頁(1993年));またはヤヌシン(Trauneckerら、EMBO J、10巻:3655〜59頁(1991年)、およびTrauneckerら、Int. J. Cancer Suppl.、7巻:51〜52頁(1992年))は、所望の特異性を有する抗体の選択について本出願の教示に従い、標準的な分子生物学法を用いて調製することができる。さらに他の実施形態では、本開示のリガンドを包含する二重特異性抗体またはキメラ抗体を作製することができる。例えば、キメラ抗体が、異なる抗体に由来するCDR領域およびフレームワーク領域を含みうるのに対し、1つの結合ドメインを介してFZD10に特異的に結合し、第2の結合ドメインを介して第2の分子に特異的に結合する二重特異性抗体を生成させることができる。これらの抗体は、組換え分子生物学法を介して産生させることもでき、物理的に併せてコンジュゲートすることもできる。
単鎖Fv(scFv)ポリペプチドとは、共有結合的に連結されたVH::VLヘテロ二量体であって、ペプチドをコードするリンカーにより連結されたVH−コード遺伝子およびVL−コード遺伝子を含めた遺伝子融合体から発現するヘテロ二量体である(Hustonら(1988年)、Proc. Nat. Acad. Sci. USA、85巻(16号):5879〜5883頁)。天然では凝集した(しかし、化学的には分離される)軽ポリペプチド鎖および重ポリペプチド鎖を、抗体のV領域から、抗原結合部位の構造と実質的に類似した三次元構造へとフォールドするsFv分子へと転換するために、化学構造を識別する多数の方法が記載されている。例えば、Hustonらによる米国特許第5,091,513号および同第5,132,405号;ならびにLadnerらによる米国特許第4,946,778号を参照されたい。
抗体のdAb断片は、VHドメインからなる(Ward, E. S.ら、Nature、341巻、544〜546頁(1989年))。
ある特定の実施形態では、本明細書で開示される抗体(例えば、FZD10特異的抗体)は、ダイアボディーの形態である。ダイアボディーとは、各ポリペプチドが、免疫グロブリン軽鎖の結合領域を含む第1のドメインと、免疫グロブリン重鎖の結合領域を含む第2のドメインとを含むポリペプチドの多量体であって、2つのドメインが連結されている(例えば、ペプチドリンカーによって)が、互いと会合して抗原結合部位を形成することは可能でなく、抗原結合部位が、多量体内の一方のポリペプチドの第1のドメインの、多量体内の別のポリペプチドの第2のドメインとの会合により形成される多量体である(WO94/13804)。
二重特異性抗体を用いる場合、これらは、多様なやり方(Holliger, P.およびWinter G.、Current Opinion Biotechnol.、4巻、446〜449頁(1993年))で製造しうる、例えば、化学的に調製されるか、またはハイブリッド体であるハイブリドーマから調製される、従来の二重特異性抗体の場合もあり、上記で言及した二重特異性抗体断片のうちのいずれかの場合もある。ダイアボディーおよびscFvは、そのような抗体の投与を受ける被験体において、惹起された免疫応答(例えば、抗イディオタイプ反応)の可能性または重篤度を潜在的に低減する可変領域だけを用いて、Fc領域なしに構築することができる。
二重特異性完全抗体と対比される二重特異性ダイアボディーはまた、それらを容易に構築し、E.coliにおいて発現させうるため、特に有用でもありうる。適切な結合特異性を有するダイアボディー(および抗体断片など、他の多くのポリペプチド)は、ファージディスプレイ(WO94/13804)を用いて、ライブラリーから容易に選択することができる。ダイアボディーの一方のアームを、例えば、抗原Xを指向する特異性により定常に保つ場合、他方のアームを変化させて適切な特異性を有する抗体を選択するライブラリーを作製することができる。二重特異性完全抗体は、KIH(knobs−into−holes)操作により作製することができる(Ridgewayら、Protein Eng.、9巻、616〜621頁、1996年)。
ある特定の実施形態では、本明細書で記載される抗体を、UniBody(登録商標)の形態で提供することができる。UniBody(登録商標)とは、ヒンジ領域を除去したIgG4抗体である(GenMab、Utrecht、The Netherlandsを参照されたい;また、例えば、US20090226421も参照されたい)。この所有権のある抗体技術は、現行の低分子抗体フォーマットより治療域(therapeutic window)が長いと予測される、安定的なより低分子の抗体フォーマットを創出する。IgG4抗体は、不活性であり、したがって、免疫系とは相互作用しないと考えられる。完全ヒトIgG4抗体は、抗体のヒンジ領域を消失させて、対応する無傷のIgG4と比べて顕著な安定性特性を有する半分子断片を得ることにより改変することができる(GenMab、Utrecht)。IgG4分子を二等分することにより、UniBody(登録商標)には、コグネイト抗原(例えば、疾患の標的)に結合しうる1つのエリアだけが残され、したがって、UniBody(登録商標)は、標的細胞における1つの部位だけに一価結合する。ある特定のがん細胞の表面抗原では、この一価結合は、同じ抗原特異性を有する二価抗体を用いるときに見られうるようながん細胞の成長を刺激しえず、よって、UniBody(登録商標)技術は、従来の抗体による処置に対して不応性でありうる一部の種類のがんのための処置の選択肢をもたらしうる。UniBody(登録商標)は、普通のIgG4抗体の約半分のサイズである。このようにサイズが小さいことは、より大型の充実性腫瘍にわたる分子のより良好な分布を可能とし、潜在的に有効性を増大させるので、一部の形態のがんを処置する場合に大きな有益性でありうる。
ある特定の実施形態では、本開示の抗体は、ナノボディーの形態をとりうる。ナノボディーは、単一の遺伝子によりコードされ、ほぼ全ての原核生物宿主および真核生物宿主、例えば、E.coli(例えば、米国特許第6,765,087号を参照されたい)、かび(例えば、Aspergillus属またはTrichoderma属)、および酵母(例えば、Saccharomyces属、Kluyvermyces属、Hansenula属、またはPichia属(例えば、米国特許第6,838,254号を参照されたい))において効率的に産生される。産生工程は拡大可能であり、数キログラム分量のナノボディーが産生されている。ナノボディーは、保管寿命の長い、すぐに使用可能な液剤として製剤化することができる。Nanoクローン法(例えば、WO06/079372を参照されたい)とは、B細胞の自動式ハイスループット選択に基づき、所望の標的に対するナノボディーを生成させる所有権のある方法である。
ある特定の実施形態では、本明細書で記載される抗体およびそれらの抗原結合断片は、CDRに対する支持体をもたらし、互いと比べたCDRの空間関係を規定する、重鎖フレームワーク領域および軽鎖フレームワーク領域(FR)のセットの間にそれぞれ置かれる、重鎖CDRおよび軽鎖CDRのセットを包含する。本明細書で用いられる「CDRセット」という用語は、重鎖V領域または軽鎖V領域のうちの3つの超可変領域を指す。重鎖または軽鎖のN末端から順に、これらの領域を、それぞれ「CDR1」、「CDR2」、および「CDR3」と称する。したがって、抗原結合部位は、重鎖V領域および軽鎖V領域の各々に由来するCDRセットを含む6つのCDRを包含する。本明細書では、単一のCDR(例えば、CDR1、CDR2、またはCDR3)を含むポリペプチドを「分子的認識単位」と称する。多数の抗原−抗体複合体の結晶学的解析により、CDRのアミノ酸残基は、結合した抗原との広範な接触であって、抗原との最も広範な接触が重鎖CDR3との接触である、抗原との接触を形成することが裏付けられている。したがって、分子的認識単位は、抗原結合部位の特異性の主要な一因をなす。
本明細書で用いられる「FRセット」という用語は、重鎖V領域または軽鎖V領域のCDRセットのCDRを枠付ける4つの隣接アミノ酸配列を指す。一部のFR残基は、結合した抗原に接触しうるが、FR、特に、CDRに直接隣接するFR残基は、V領域を抗原結合部位へとフォールドさせる主要な一因をなす。FR内では、ある特定のアミノ残基およびある特定の構造的特徴が極めて高度に保存される。この点で、全てのV領域配列は、約90アミノ酸残基の内部のジスルフィドループを含有する。V領域が結合部位へとフォールドすると、CDRは、抗原結合表面を形成する突出ループモチーフとして提示される。一般に、CDRループがある特定の「カノニカル」構造(CDRの正確なアミノ酸配列にかかわらず)へとフォールドする形状に影響を与える、FRの保存された構造領域が存在することが認知されている。さらに、ある特定のFR残基は、抗体の重鎖と軽鎖との相互作用を安定化させる非共有結合的なドメイン間接触に関与することも公知である。
免疫グロブリン可変領域の構造および位置は、Kabat, E. A.ら、Sequences of Proteins of Immunological Interest、4版、US Department of Health and Human Services、1987年、および現在ではインターネット(immuno.bme.nwu.edu)で入手可能なその改定版を参照することにより決定することができる。
「モノクローナル抗体」とは、均一な抗体集団をいい、ここで、モノクローナル抗体は、エピトープの選択的結合に関係するアミノ酸(天然に存在するアミノ酸および天然に存在しないアミノ酸)で構成される。モノクローナル抗体は、高度に特異的であり、単一のエピトープを指向する。「モノクローナル抗体」という用語は、無傷のモノクローナル抗体および全長モノクローナル抗体だけでなく、また、それらの断片(Fab、Fab’、F(ab’)2、Fvなど)、単鎖抗体(ScFv)、それらの改変体、抗原結合部分を含む融合タンパク質、ヒト化モノクローナル抗体、キメラモノクローナル抗体、ならびに必要とされる特異性およびエピトープに結合する能力を有する抗原結合断片(エピトープ認識部位)を含む他の任意の修飾された立体配置の免疫グロブリン分子も包含する。抗体の供給源または抗体が作製される様式(例えば、ハイブリドーマ、ファージ選択、組換え発現、トランスジェニック動物などによる)に関して限定することは意図しない。この用語は、完全な免疫グロブリンの他、上記の断片なども包含する。
「ヒト化」抗体とは、一般に組換え法を用いて調製され、抗原結合部位がヒト以外の種に由来する免疫グロブリンに由来し、残りの免疫グロブリン分子の構造がヒト免疫グロブリンの構造および/または配列に基づくキメラ分子を指す。抗原結合部位は、定常ドメインへと融合させた完全可変領域を含む場合もあり、可変ドメインにおける適切なフレームワーク領域へと移植したCDRだけを含む場合もある。エピトープ結合部位は、野生型の場合もあり、1つまたは複数のアミノ酸置換により修飾される場合もある。このキメラ構造は、ヒト個体における免疫原としての非ヒト起源の定常領域は消失させるが、外来の可変領域に対する免疫応答の可能性は残る(LoBuglio, A. F.ら(1989年)、Proc Natl Acad Sci USA、86巻:4220〜4224頁;Queenら、PNAS(1988年)、86巻:10029〜10033頁;Riechmannら、Nature(1988年)、332巻:323〜327頁)。本発明のある特定の実施形態に従う例示的ヒト化抗体は、配列番号29、31、37、39に提供されるヒト化配列を含む。
別の手法は、ヒト由来の定常領域をもたらすことだけでなく、また、それらをヒト形態に可能な限り酷似させて作り変えるように、可変領域の修飾にも同様に焦点を絞る。上記にも留意したように、重鎖および軽鎖両方の可変領域は、問題のエピトープに応じて変化し、結合能を決定する3つの相補性決定領域(CDR)であって、所与の種において比較的保存されてCDRの足場をもたらすと推定される4つのフレームワーク領域(FR)に挟まれるCDRを含有することが公知である。特定のエピトープに対する非ヒト抗体を調製する場合、非ヒト抗体に由来するCDRを、改変されるヒト抗体に存在するFRに移植することにより、可変領域を「作り変える」または「ヒト化する」場合がある。この手法の多様な抗体への適用は、Sato, K.ら(1993年)、Cancer Res、53巻:851〜856頁;Riechmann, L.ら(1988年)、Nature、332巻:323〜327頁;Verhoeyen, M.ら(1988年)、Science、239巻:1534〜1536頁;Kettleborough, C. A.ら(1991年)、Protein Engineering、4巻:773〜3783頁;Maeda, H.ら(1991年)、Human Antibodies Hybridoma、2巻:124〜134頁;Gorman, S. D.ら(1991年)、Proc Natl Acad Sci USA、88巻:4181〜4185頁;Tempest, P. R.ら(1991年)、Bio/Technology、9巻:266〜271頁;Co, M. S.ら(1991年)、Proc Natl Acad Sci USA、88巻:2869〜2873頁;Carter, P.ら(1992年)、Proc Natl Acad Sci USA、89巻:4285〜4289頁;およびCo, M. S.ら(1992年)、J Immunol、148巻:1149〜1154頁により報告されている。一部の実施形態では、ヒト化抗体は、全てのCDR配列を保存する(例えば、マウス抗体に由来する6つのCDR全てを含有するヒト化マウス抗体)。他の実施形態では、ヒト化抗体は、1つまたは複数のCDR(1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、6つ)であって、元の抗体に対して変化させたCDR、また、元の抗体からの1つまたは複数のCDR「に由来する」1つまたは複数のCDRとも呼ばれるCDRを有する。
ある特定の実施形態では、本開示の抗体は、キメラ抗体でありうる。この点で、キメラ抗体は、異なる抗体の異種Fc部分に作動可能に連結するか、または他の形で融合させた抗FZD10抗体の抗原結合断片で構成される。ある特定の実施形態では、異種Fcドメインは、ヒト起源である。他の実施形態では、異種Fcドメインは、IgA(サブクラスIgA1およびIgA2を含めた)、IgD、IgE、IgG(サブクラスIgG1、IgG2、IgG3、およびIgG4を含めた)、およびIgMを含めた親抗体とは異なるIgクラスに由来しうる。さらなる実施形態では、異種Fcドメインは、異なるIgクラスのうちの1つまたは複数に由来するCH2ドメインおよびCH3ドメインで構成されうる。ヒト化抗体について上記で言及した通り、キメラ抗体の抗FZD10抗原結合断片は、本明細書で記載される抗体のCDRのうちの1つまたは複数(例えば、本明細書で記載される抗体の1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、または6つのCDR)だけを含む場合もあり、可変ドメイン(VL、VH、またはこれらの両方)の全体を含む場合もある。
ある特定の実施形態では、FZD10結合抗体は、本明細書で記載される抗体のCDRのうちの1つまたは複数を含む。この点で、場合によっては、所望の特異的結合をなお保持しながら、抗体のVHCDR3だけを移動させうることが示されている(Barbasら、PNAS(1995年)、92巻:2529〜2533頁)。また、McLaneら、PNAS(1995年)、92巻:5214〜5218頁、Barbasら、J. Am. Chem. Soc.(1994年)、116巻:2161〜2162頁も参照されたい。
Marksら(Bio/Technology、1992年、10巻:779〜783頁)は、抗体可変ドメインのレパートリーを作製する方法であって、可変ドメインの5’端を指向するかまたはこれに隣接するコンセンサスプライマーを、ヒトVH遺伝子の第3のフレームワーク領域に対するコンセンサスプライマーと共に用いて、CDR3を欠くVH可変ドメインのレパートリーを提供する方法について記載している。Marksらは、どのようにしてこのレパートリーを、特定の抗体のCDR3と組み合わせうるかについてもさらに記載している。類似の技法を用いて、本明細書で記載されている抗体のCDR3に由来する配列を、CDR3を欠くVHドメインまたはVLドメインのレパートリーと共にシャッフルし、シャッフルされた完全VHドメインまたは完全VLドメインを、コグネイトVLドメインまたはコグネイトVHドメインと組み合わせて、FZD10に結合する抗体またはその抗原結合断片をもたらすことができる。次いで、適した抗体またはそれらの抗原結合断片を選択しうるように、WO92/01047のファージディスプレイシステムなど、適した宿主システムにおいてレパートリーを提示することができる。レパートリーは、少なくとも約104の個別のメンバーから、これを数桁上回る、例えば、約106〜108または1010以上のメンバーまでからなりうる。また、Stemmer(Nature、1994年、370巻:389〜391頁)は、類似のシャッフリング法またはコンビナトリアル法も開示しており、この技法を、β−ラクタマーゼ遺伝子との関連で記載しているが、この手法を抗体の生成に用いうることを観察している。
さらなる代替法は、1つまたは複数の選択されたVH遺伝子および/またはVL遺伝子に対するランダム変異誘発であって、可変ドメインの全体において変異を発生させる変異誘発を用いて、本明細書で記載される本発明の実施形態の1つまたは複数のCDRに由来する配列を保有する新規のVH領域またはVL領域を生成させることである。このような技法は、エラープローンPCRを用いたGramら(1992年、Proc. Natl. Acad. Sci.USA 89巻:3576〜3580頁)により記載されている。用いうる別の方法は、変異誘発をVH遺伝子またはVL遺伝子のCDR領域へと方向付けることである。このような技法は、Barbasら(1994年、Proc. Natl. Acad. Sci.、USA、91巻:3809〜3813頁)およびSchierら(1996年、J. Mol. Biol.、263巻:551〜567頁)により開示されている。
ある特定の実施形態では、本明細書で記載される抗体の特異的VHおよび/または特異的VLを用いて、相補的な可変ドメインのライブラリーをスクリーニングして、FZD10に対するアフィニティーの増大など、所望の特性を伴う抗体を同定することができる。このような方法は、例えば、Portolanoら、J. Immunol.(1993年)、150巻:880〜887頁;Clarksonら、Nature(1991年)、352巻:624〜628頁に記載されている。
また、他の方法を用いてCDRを混合および適合させて、FZD10への結合などの所望の結合活性を有する抗体を同定することもできる。例えば、Klimkaら、British Journal of Cancer(2000年)、83巻:252〜260頁は、マウスVLと、CDR3およびFR4をマウスVHから保持したヒトVHライブラリーとを用いるスクリーニング工程について記載している。抗体を得た後、VHをヒトVLライブラリーに対してスクリーニングして、抗原に結合する抗体を得た。Beiboerら、J. Mol. Biol.(2000年)、296巻:833〜849頁は、マウス重鎖の全体とヒト軽鎖ライブラリーとを用いるスクリーニング工程について記載している。抗体を得た後、1つのVLを、マウスのCDR3を保持したヒトVHライブラリーと組み合わせた。抗原に結合することが可能な抗体を得た。Raderら、PNAS(1998年)、95巻:8910〜8915頁は、上記のBeiboerらの工程と同様の工程について記載している。
当技術分野では、記載したばかりのこれらの技法が、それら自体としては、そのようなものとして公知である。しかし、本開示に基づいて、当業者は、当技術分野の日常的な方法を用いて、本明細書で記載される本発明のいくつかの実施形態に従い、抗体またはそれらの抗原結合断片を得るのに、このような技法を用いることが可能である。
本明細書ではまた、FZD10抗原に特異的な抗体または抗原結合ドメインを得る方法であって、本明細書で示されるVHドメインのアミノ酸配列に1つまたは複数のアミノ酸を付加、欠失、置換、または挿入することにより、このVHドメインのアミノ酸配列改変体であるVHドメインをもたらすステップを含む、方法も開示される。場合によっては、このようにしてもたらされたVHドメインは、1つまたは複数のVLドメインと組み合わされうる。次いで、VHドメインまたは1つもしくは複数のVH/VLの組合せを調べて、FZD10の特異的結合メンバー、またはFZD10に特異的であり、場合によって、1つもしくは複数の好ましい特性、好ましくは、FZD10を発現させる細胞に対する細胞傷害を媒介する能力もさらに伴う抗体の抗原結合ドメインを同定されうる。前記VLドメインは、本明細書で実質的に示されるアミノ酸配列を有しうる。本明細書で開示されるVLドメインの1つまたは複数の配列改変体を、1つまたは複数のVHドメインと組み合わせる類似の方法も使用することができる。
抗体またはポリペプチドに「特異的に結合する」か、またはこれに「優先的に結合する」(本明細書では互換的に用いられる)エピトープとは、当技術分野において十分に理解された用語であり、当技術分野ではまた、このような特異的な結合または優先的な結合を決定する方法も周知である。分子は、それが、特定の細胞または物質と、他の細胞または物質との場合より高頻度で、迅速に、長い持続期間にわたり、かつ/または大きなアフィニティーで反応または会合する場合、「特異的結合」または「優先的結合」を呈示するという。抗体は、それが、他の物質に結合する場合より大きなアフィニティー、アビディティーで、容易に、かつ/または長い持続期間にわたり結合する場合、標的に「特異的に結合する」か、またはこれに「優先的に結合する」。例えば、FZD10エピトープに特異的または優先的に結合する抗体とは、1つのFZD10エピトープに、他のFZD10エピトープまたはFZD10以外のエピトープに結合する場合より大きなアフィニティー、アビディティーで、容易に、かつ/または長い持続期間にわたり結合する抗体である。また、この定義を読み取ることにより、例えば、第1の標的に特異的または優先的に結合する抗体(または部分もしくはエピトープ)が、第2の標的に特異的または優先的に結合する場合もあり、結合しない場合もあることも理解される。したがって、「特異的結合」または「優先的結合」は、必ずしも排他的結合を要求するわけではない(排他的結合を包含しうるが)。一般に、結合に対する言及は、優先的結合を意味するが、必ずしもそうであるわけではない。
免疫的結合とは一般に、免疫グロブリン分子と、この免疫グロブリンが特異的である抗原との間で、例えば、例示として述べるものであり、限定として述べるものではないが、静電引力もしくは静電斥力、イオン性引力もしくはイオン性斥力、親水性引力もしくは親水性斥力、および/または疎水性引力もしくは疎水性斥力、立体的な強制力(steric force)、水素結合、ファンデルワールス力、ならびに他の相互作用の結果として生じる種類の非共有結合的相互作用を指す。免疫的結合による相互作用の強度またはアフィニティーは、この相互作用の解離定数(Kd)で表すことができ、より低値のKdがより大きなアフィニティーを表す。選択したポリペプチドの免疫的結合特性は、当技術分野で周知の方法を用いて定量化することができる。このような一方法は、抗原結合部位/抗原の複合体形成および解離の速度を測定するステップを伴い、この速度は、複合体パートナーの濃度、相互作用のアフィニティー、およびいずれの方向の速度にも等しく影響を与える幾何学的パラメータに依存する。こうして、「オン速度定数」(Kon)および「オフ速度定数」(Koff)のいずれも、濃度ならびに実際の会合速度および解離速度を計算することにより決定することができる。Koff/Konの比は、アフィニティーと関連しない全てのパラメータの解消を可能とし、したがって、解離定数Kdと等しい。一般に、Daviesら(1990年)、Annual Rev. Biochem.、59巻:439〜473頁を参照されたい。
免疫的に活性であるかまたは「免疫的活性を維持する」エピトープに言及する場合の「免疫的に活性な」という用語は、抗体(例えば、抗FZD10抗体)が、異なる条件下で、例えば、エピトープを還元条件および変性条件にかけた後でエピトープに結合する能力を指す。
本出願のある特定の好ましい実施形態に従う抗体またはその抗原結合断片は、本明細書で記載される任意の抗体であって、(i)抗原に特異的に結合し、かつ、(ii)本明細書で開示されるVHドメインおよび/もしくはVLドメインを含むか、または本明細書で開示されるVH CDR3、もしくはこれらのうちのいずれかの改変体を含む抗体と、FZD10への結合について競合する抗体またはその抗原結合断片でありうる。結合メンバー間の競合は、in vitroにおいて、例えば、ELISAを用いて、かつ/または特定のレポーター分子であって、他のタグ付けされない結合メンバー(複数可)の存在下において検出され、同じエピトープもしくは重複エピトープに結合する特異的結合メンバーの同定を可能としうるレポーター分子を1つの結合メンバーへとタグ付けすることにより、簡単にアッセイすることができる。
したがって、本明細書では、本明細書の実施例に記載される抗体(例えば、クローンB9L9.3、B9L9.32.2)など、本明細書で記載される、FZD10に結合する抗体と、競合する抗体の抗原結合部位を含む特異的な抗体またはその抗原結合断片が提供される。
免疫グロブリンの定常領域は、可変領域よりも配列多様性が少なく、重要な生化学イベントを誘発する多数の天然のタンパク質への結合を担う。ヒトでは、IgA(サブクラスIgA1およびIgA2を包含する)、IgD、IgE、IgG(サブクラスIgG1、IgG2、IgG3、およびIgG4を包含する)、およびIgMを含めた、抗体の5つの異なるクラスが存在する。V領域にも微妙な差違が存在しうるが、これらの抗体クラスの間の識別特徴はそれらの定常領域である。
抗体のFc領域は、多数のFc受容体およびリガンドと相互作用し、エフェクター機能と称する一連の重要な機能的能力を付与する。IgGの場合、Fc領域は、IgのCH2ドメインおよびCH3ドメイン、ならびにCH2へと通じるN末端のヒンジを含む。IgGクラスのFc受容体の重要なファミリーは、Fcガンマ受容体(FcγR)である。これらの受容体は、抗体と免疫系の細胞性アームとの間のコミュニケーションを媒介する(Raghavanら、1996年、Ann.Rev.Cell Dev.Biol、12巻:181〜220頁;Ravetchら、2001年、Ann.Rev.Immunol、19巻:275〜290頁)。ヒトでは、このタンパク質ファミリーは、アイソフォームであるFcγRIa、FcγRIb、およびFcγRIcを含めたFcγRI(CD64);アイソフォームであるFcγRIIa(アロタイプであるH131およびR131を含めた)、FcγRIIb(FcγRIIb−1およびFcγRIIb−2を含めた)、およびFcγRIIcを含めたFcγRII(CD32);ならびにアイソフォームであるFcγRIIIa(アロタイプであるV158およびF158を含めた)およびFcγRIIIb(アロタイプであるFcγRIIIb−NA1およびFcγRIIIb−NA2を含めた)を含めたFcγRIII(CD16)を包含する(Jefferisら、2002年、Immunol Lett、82巻:57〜65頁)。これらの受容体は、典型的に、Fcへの結合を媒介する細胞外ドメイン、膜貫通領域、および細胞内の一部のシグナル伝達イベントを媒介しうる細胞内ドメインを有する。これらの受容体は、単球、マクロファージ、好中球、樹状細胞、好酸球、マスト細胞、血小板、B細胞、大型顆粒リンパ球、ランゲルハンス細胞、ナチュラルキラー(NK)細胞、およびT細胞を含めた多様な免疫細胞において発現する。Fc/FcγR複合体の形成により、これらのエフェクター細胞は、抗原が結合した部位へと動員され、この結果として典型的に、細胞内ではシグナル伝達イベントがもたらされ、炎症メディエーターの放出、B細胞の活性化、エンドサイトーシス、食作用、および細胞傷害性の攻撃など、その後の重要な免疫応答がもたらされる。
細胞傷害エフェクター機能および食作用エフェクター機能を媒介する能力は、抗体が標的とする細胞を破壊する強力な機構である。FcγRを発現させる非特異的な細胞傷害性細胞が、標的細胞に結合した抗体を認識し、その後標的細胞の溶解を引き起こす細胞媒介性反応を、抗体依存性細胞媒介性細胞傷害(ADCC)と称する(Raghavanら、1996年、Ann.Rev.Cell Dev.Biol、12巻:181〜220頁;Ghetieら、2000年、Ann.Rev.Immunol、18巻:739〜766頁;Ravetchら、2001年、Ann.Rev.Immunol、19巻:275〜290頁)。FcγRを発現させる非特異的な細胞傷害性細胞が、標的細胞に結合した抗体を認識し、その後標的細胞の食作用を引き起こす細胞媒介性反応を、抗体依存性細胞媒介性食作用(ADCP)と称する。全てのFcγRは、Fc上の同じ領域である、Cg2(CH2)ドメインのN末端および上流のヒンジに結合する。この相互作用は、構造的に十分特徴付けられており(Sondermannら、2001年、J Mol Biol、309巻:737〜749頁)、ヒトFcγRIIIbの細胞外ドメインに結合したヒトFcのいくつかの構造が解明されている(pdb受託コード:1E4K)(Sondermannら、2000年、Nature、406巻:267〜273頁)(pdb受託コード:1IISおよび1IIX)(Radaevら、2001年、J Biol Chem、276巻:16469〜16477頁)。
異なるIgGサブクラスは、FcγRに対して異なるアフィニティーを有し、IgG1およびIgG3は、典型的に、IgG2およびIgG4の場合より実質的に良好に、FcγR受容体に結合する(Jefferisら、2002年、Immunol Lett、82巻:57〜65頁)。全てのFcγRは、IgG Fcの同じ領域に結合するが、アフィニティーが異なる:高アフィニティーで結合するFcγRIのIgG1に対するKdが10−8M−1であるのに対し、低アフィニティーの受容体であるFcγRIIおよびFcγRIIIは一般に、それぞれ、10−6および10−5で結合する。FcγRIIIaの細胞外ドメインとFcγRIIIbの細胞外ドメインとは96%同一であるが、FcγRIIIbは、細胞内のシグナル伝達ドメインを有さない。さらに、FcγRI、FcγRIIa/c、およびFcγRIIIaが、免疫複合体によりトリガーされる活性化の正の制御因子であり、免疫受容体チロシンベースの活性化モチーフ(ITAM)を有する細胞内のドメインを有することを特徴とするのに対し、FcγRIIbは、免疫受容体チロシンベースの阻害モチーフ(ITIM)を有し、したがって、阻害性である。したがって、前者を活性化受容体と称し、FcγRIIbを、阻害性受容体と称する。異なる免疫細胞ではまた、受容体の発現パターンおよび発現レベルも異なる。複雑性のさらに別のレベルは、ヒトプロテオームにおける多数のFcγR多型の存在である。臨床的な重要性を伴う特に関与性の多型は、V158/F158 FcγRIIIaである。ヒトIgG1は、F158アロタイプに対する場合より大きなアフィニティーでV158アロタイプに結合する。このアフィニティーの差違、ならびに、おそらくはADCCおよび/またはADCPに対するその効果は、抗CD20抗体であるリツキシマブ(IDEC Pharmaceuticals Corporationの登録商標であるRituxan(登録商標))の有効性の重大な決定因子であることが示されている。V158アロタイプを伴う患者は、リツキシマブ処置に対する応答が良好であるが、低アフィニティーのF158アロタイプを伴う患者の応答は良好でない(Cartronら、2002年、Blood、99巻:754〜758頁)。ヒトのうちの約10〜20%はV158/V158ホモ接合性であり、45%はV158/F158ヘテロ接合性であり、ヒトのうちの35〜45%はF158/F158ホモ接合性である(Lehrnbecherら、1999年、Blood、94巻:4220〜4232頁;Cartronら、2002年、Blood、99巻:754〜758頁)。したがって、ヒトのうちの80〜90%は応答が良好ではない、すなわち、少なくとも1つのF158 FcγRIIIa対立遺伝子を有する。
Fc領域はまた、補体カスケードの活性化にも関係する。古典的な補体経路では、C1が、そのC1qサブユニットにより、抗原(複数可)と複合体を形成したIgGまたはIgMのFc断片に結合する。本発明のある特定の実施形態では、Fc領域に対する修飾が、本明細書で記載されるFZD10特異的抗体の補体系を活性化する能力を変化させる(増強または減殺する)修飾を含む(例えば、米国特許第7,740,847号を参照されたい)。補体の活性化を評価するためには、補体依存性細胞傷害(CDC)アッセイを実施することができる(例えば、Gazzano−Santoroら、J. Immunol. Meth.202巻:163頁(1996年)を参照されたい)。例えば、多様な濃度の(Fc)改変体ポリペプチドおよびヒト補体を、緩衝液で希釈することができる。(Fc)改変体抗体、希釈したヒト補体、および抗原(FZD10)を発現させる細胞の混合物を、平底の組織培養用96ウェルプレートに添加し、37℃および5%CO2で2時間にわたりインキュベートさせて、補体媒介性細胞溶解を促進することができる。次いで、50マイクロリットルのアラマーブルー(Accumed International)を各ウェルに添加し、37℃で一晩にわたりインキュベートすることができる。吸光度は、励起を530nmとし、発光を590nmとする96ウェル蛍光測定器を用いて測定することができる。結果は、相対蛍光単位(RFU)で表すことができる。試料濃度は、標準曲線から算出することができ、改変体でない抗体と比較した活性パーセントを、対象の改変体抗体について報告することができる。
したがって、ある特定の実施形態では、本発明は、ADCC、ADCP、CDCの増強、または特定のFcγRに対する結合アフィニティーの増強などの機能的特性を変化させた、修飾Fc領域を有する抗FZD10抗体を提供する。Fc領域の例示的な修飾には、例えば、Stavenhagenら、2007年、Cancer Res.、67巻:8882頁において記載される修飾が含まれる。本明細書で想定される他の修飾Fc領域は、例えば、発行された米国特許第7,317,091号;同第7,657,380号;同第7,662,925号;同第6,538,124号;同第6,528,624号;同第7,297,775号;同第7,364,731号;米国出願公開第US2009092599号;同第US20080131435号;同第US20080138344号;および国際出願公開第WO2006/105338号;同第WO2004/063351号;同第WO2006/088494号;同第WO2007/024249号において記載されている。
抗FZD10抗体の所望の機能的特性は、ADCCアッセイ(実施例の節を参照されたい)、ADCPアッセイ、アフィニティー/結合アッセイ(例えば、表面プラズモン共鳴、競合的阻害アッセイ)、細胞傷害性アッセイ、細胞生存度アッセイ(例えば、Trypan Blue、ヨウ化プロピジウムなどの色素排除を用いるアッセイ)、in vitroモデルまたはin vivoモデル(例えば、細胞増殖および/またはコロニー形成アッセイ、アンカー形成依存性増殖アッセイ、標準的なヒト腫瘍異種移植モデル)を用いるがん細胞および/または腫瘍の成長阻害が含まれるがこれらに限定されない、当業者に公知の多様な方法を用いて評価することができる(例えば、Culp PAら、Clin. Cancer Res.、16巻(2号):497〜508頁を参照されたい)。他のアッセイでは、本明細書で記載される抗体が、細胞増殖、細胞分化(例えば、幹細胞および前駆細胞の分化)、およびある特定の細胞型では、免疫制御機能など、通常のFZD10を介する応答を遮断する能力を調べることができる。このようなアッセイは、当業者に公知の十分に確立されたプロトコール(例えば、Current Protocols in Molecular Biology(Greene Publ. Assoc. Inc. & John Wiley & Sons, Inc.、NY、NY);Current Protocols in Immunology(John E. Coligan、Ada M. Kruisbeek、David H. Margulies、Ethan M. Shevach編、Warren Strober、2001年、John Wiley & Sons、NY、NY)を参照されたい)を用いて実施することもでき、市販のキットを用いて実施することもできる。
一実施形態では、本明細書に記載される抗FZD10抗体は、FZD10受容体へのWNT7aおよび/またはWNT7b、またはFZD10に対する他の任意のリガンドの結合をも遮断する。結合アッセイおよび競合阻害アッセイを使用して、本明細書に記載される抗体またはその改変体(variant)もしくは抗原結合断片の遮断活性を決定することができる。
ある特定の実施形態では、本明細書に記載される抗FZD10抗体はFZD10に結合して、カノニカルWntシグナル伝達経路における下流シグナル伝達イベントを遮断するまたは阻害する。特定の実施形態では、抗FZD10抗体により与えられるWntシグナル伝達阻害のレベルは、本明細書に開示される抗FZD10抗体の非存在下でのWntシグナル伝達のレベルと比べて、少なくとも約10%、少なくとも約25%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、65%、70%、75%、80%、85%、少なくとも約90%または少なくとも約95%の、Wnt7aおよび/またはWnt7bによるシグナル伝達のレベルにおける統計学的に有意な減少でありえる。
したがって、本開示は、カノニカルWntシグナル伝達経路の構成要素をモジュレートする抗FZD10抗体を提供する。モジュレートするとは、Wntシグナル伝達経路の構成要素の活性、タンパク質レベル、遺伝子発現レベルまたはリン酸化状態を統計学的に有意な方法で(例えば、適切な対照を使用して測定した場合、統計学的に有意な方法で阻害することまたは統計学的に有意な方法で増大させること)変えることを意味する。カノニカルWntシグナル伝達経路の構成要素には、LRP(LRP5、LRP6などの低密度リポタンパク質受容体関連タンパク質)、アキシン、カゼインキナーゼ(CK1、CK2)、グリコーゲンシンターゼキナーゼ3β(Gsk3b)結合腫瘍タンパク質のFrat/GBPファミリー、微小管アフィニティー制御キナーゼ(MARK;PAR−1)、Dishevelled、グリコーゲンシンターゼキナーゼ3b(GSK−3b)、大腸腺腫性ポリポーシスタンパク質(APC;ポリポーシス2.5の欠失(DP2.5)とも称される)、βカテニン、DNA結合タンパク質(転写因子)の(T細胞因子)/LEF−1(リンパ系エンハンサー因子1)ファミリー、βカテニン−TCFおよびβカテニン−TCFにより制御される遺伝子が挙げられるがこれらに限定されない。βカテニンは、活性型では、DNA結合タンパク質のTCF/LEF−1(リンパ系エンハンサー因子1)ファミリーに対する転写活性化因子である。TCF応答性遺伝子の例にはc−mycおよびサイクリンD1が挙げられる。
ある特定の実施形態では、Wntシグナル伝達経路の構成要素の調節は、前記経路の1つまたは複数の構成要素のリン酸化状態の調節を含み得る。ある特定の実施形態では、FZD10受容体への本発明の抗FZD10抗体の結合により、Dishevelledのリン酸化の減少、c−Junのリン酸化の減少およびβカテニンのリン酸化の増加のうちの1つまたは複数が、統計学的に有意な方法で引き起こされ得る。
抗体がWntシグナル伝達を阻害するかどうかを決定するためのin vivoおよびin vitroアッセイは当技術分野では公知である。例えば、ホタルルシフェラーゼレポーター遺伝子の上流にTCF結合ドメインの複数のコピーを含有するTCF/Lucレポーターベクターを利用する細胞ベースのルシフェラーゼレポーターアッセイを使用して、カノニカルWntシグナル伝達レベルをin vitroで測定することができる(Gazitら、1999年、Oncogene 18巻; 5959〜66頁)。そのようなアッセイは、本明細書の実施例4においても記載されている。FZD10結合抗体が存在する1つまたは複数のWnt(例えば、トランスフェクト細胞により発現されるまたはWnt順化培池により提供されるWnt(複数可))の存在下でのWntシグナル伝達のレベルは、FZD10結合抗体が存在しないシグナル伝達のレベルと比較される。カノニカルWntシグナル伝達の阻害を評価するそのようなルシフェラーゼレポーターアッセイの使用の非限定的な特定の例は、本明細書の実施例に提供されている。TCF/lucレポーターアッセイに加えて、カノニカルWntシグナル伝達に対するFZD10結合抗体の効果は、c−myc(Heら、Science 281巻:1509〜12頁(1998年))、サイクリンD1(Tetsuら、Nature 398巻:422〜6頁(1999年))および/またはフィブロネクチン(Gradlら、Mol. Cell Biol. 19巻:5576〜87頁(1999年))などのベータカテニン制御遺伝子の発現レベルに対する前記抗体の効果を測定することによりin vitroまたはin vivoで測定することができる。ある特定の実施形態では、Wntシグナル伝達に対する本明細書に記載される抗体の効果は、Dishevelled−1、Dishevelled−2、Dishevelled−3、LRP5、LRP6および/またはβカテニンのリン酸化状態に対する前記抗体の効果を測定することによっても評価することができる。他の実施形態では、Wntシグナル伝達に対するFZD結合抗体の効果は、Wntシグネチャーにおける1つまたは複数の遺伝子の発現レベルに対するFZD結合抗体の効果を評価することにより決定される。カノニカルWntシグナル伝達経路の構成要素の調節を決定するための他のアッセイおよび市販のシステムは当業者には公知である。
ある特定の実施形態では、本発明は、本明細書で記載される抗体またはその抗原結合断片をコードする単離核酸、例えば、CDRまたはVHドメインもしくはVLドメインをコードする核酸をさらに提供する。核酸は、DNAおよびRNAを包含する。これらの実施形態および関連する実施形態は、本明細書で記載されるFZD10に結合する抗体をコードするポリヌクレオチドを包含しうる。本明細書で用いられる「単離ポリヌクレオチド」という用語は、ゲノム起源、cDNA起源、もしくは合成起源、またはこれらの一部の組合せであるポリヌクレオチドであって、その起源により、(1)その単離ポリヌクレオチドが天然において見出されるポリヌクレオチドの全部もしくは一部と会合していないか、(2)天然では連結されないポリヌクレオチドに連結されているか、または(3)天然でより長大な配列の一部としては生じないポリヌクレオチドを意味するものとする。
「作動可能に連結された」という用語は、この用語が適用される構成要素が、適した条件下でそれらがそれらの固有の機能を果たすことを可能とする関係にあることを意味する。例えば、タンパク質コード配列に「作動可能に連結された」転写制御配列は、タンパク質コード配列の発現を、制御配列の転写活性と適合可能な条件下で達成するように、タンパク質コード配列にライゲーションされる。
本明細書で用いられる「制御配列」という用語は、それらがライゲーションされるかまたは作動可能に連結されるコード配列の発現、プロセシング、または細胞内局在化に影響を及ぼしうるポリヌクレオチド配列を指す。このような制御配列の性質は、宿主生物に依存しうる。具体的な実施形態では、原核生物の転写制御配列は、プロモーター、リボソーム結合部位、および転写終結配列を包含しうる。他の具体的な実施形態では、真核生物の転写制御配列は、転写因子、転写エンハンサー配列、転写終結配列、およびポリアデニル化配列の1つまたは複数の認識部位を含むプロモーターを包含しうる。ある特定の実施形態では、「制御配列」は、リーダー配列および/または融合パートナー配列を包含しうる。
本明細書で言及される「ポリヌクレオチド」という用語は、一本鎖または二本鎖の核酸ポリマーを意味する。ある特定の実施形態では、ポリヌクレオチドを含むヌクレオチドは、リボヌクレオチドの場合もあり、デオキシリボヌクレオチドの場合もあり、ヌクレオチドのいずれかの種類の修飾形態の場合もある。前記修飾には、ブロモウリジンなどの塩基修飾、アラビノシドおよび2’,3’−ジデオキシリボースなどのリボース修飾、ならびにホスホロチオエート、ホスホロジチオエート、ホスホロセレノエート、ホスホロジセレノエート、ホスホロアニロチオエート、ホスホルアニラデート、およびホスホルアミデート(phosphoroamidate)などのヌクレオチド間連結修飾が含まれる。「ポリヌクレオチド」という用語は、特に、DNAの一本鎖形態および二本鎖形態を包含する。
「天然に存在するヌクレオチド」という用語は、デオキシリボヌクレオチドおよびリボヌクレオチドを包含する。「修飾ヌクレオチド」という用語は、糖基などが修飾または置換されたヌクレオチドを包含する。「オリゴヌクレオチド連結」という用語は、ホスホロチオエート、ホスホロジチオエート、ホスホロセレノエート、ホスホロジセレノエート、ホスホロアニロチオエート、ホスホルアニラデート、ホスホルアミデートなどのオリゴヌクレオチド連結を包含する。例えば、それらの開示が任意の目的で参照により本明細書に組み込まれる、LaPlancheら、1986年、Nucl. Acids Res.、14巻:9081頁;Stecら、1984年、J. Am. Chem. Soc.、106巻:6077頁;Steinら、1988年、Nucl. Acids Res.、16巻:3209頁;Zonら、1991年、Anti−Cancer Drug Design、6巻:539頁;Zonら、1991年、OLIGONUCLEOTIDES AND ANALOGUES: A PRACTICAL APPROACH、87〜108頁(F. Eckstein編)、Oxford University Press、Oxford England;Stecら、米国特許第5,151,510号;UhlmannおよびPeyman、1990年、Chemical Reviews、90巻:543頁を参照されたい。オリゴヌクレオチドは、オリゴヌクレオチドまたはそのハイブリダイゼーションの検出を可能とする検出可能な標識を包含しうる。
「ベクター」という用語は、コード情報を宿主細胞へと導入するのに用いられる任意の分子(例えば、核酸、プラスミド、またはウイルス)を指すのに用いられる。「発現ベクター」という用語は、宿主細胞の形質転換に適し、挿入された異種核酸配列の発現を誘導し、かつ/または制御する核酸配列を含有するベクターを指す。発現には、転写、翻訳、および、イントロンが存在する場合は、RNAスプライシングなどの過程が含まれるがこれらに限定されない。
当業者が理解する通り、ポリヌクレオチドは、タンパク質、ポリペプチド、ペプチドなどを発現させる、またはこれらを発現させるように適合させる場合もある、ゲノム配列、ゲノム外およびプラスミドによりコードされる配列、ならびにより小型の作出された遺伝子セグメントを包含しうる。このようなセグメントは、天然で単離される場合もあり、当業者が合成的に改変する場合もある。
これもまた当業者が十分に理解する通り、ポリヌクレオチドは、一本鎖(コード鎖またはアンチセンス鎖)の場合もあり、二本鎖の場合もあり、DNA(ゲノムDNA、cDNA、または合成DNA)分子の場合もあり、RNA分子の場合もある。RNA分子は、イントロンを含有し、DNA分子に一対一で対応するHnRNA分子、およびイントロンを含有しないmRNA分子を包含しうる。本開示に従うポリヌクレオチドには、さらなるコード配列または非コード配列を存在させることもできるが存在させなくともよく、ポリヌクレオチドは、他の分子および/または支持物質に連結することもできるが連結しなくともよい。ポリヌクレオチドは、天然配列を含む場合もあり、このような配列の改変体または誘導体をコードする配列を含む場合もある。
したがって、これらの実施形態および関連する実施形態によれば、配列番号19〜22のうちのいずれか1つに示されるポリヌクレオチド配列、配列番号19〜22のうちのいずれか1つに示されるポリヌクレオチド配列の相補体、ならびに配列番号19〜22のうちのいずれか1つに示されるポリヌクレオチド配列の縮重改変体の一部または全部を含むポリヌクレオチドが提供される。ある特定の好ましい実施形態では、本明細書の別の個所で記載される通り、本明細書で示されるポリヌクレオチド配列が、FZD10に結合する抗体またはそれらの抗原結合断片をコードする。
他の関連する実施形態では、ポリヌクレオチド改変体が、本明細書の配列番号19〜22で開示される配列に対して実質的な同一性を有することが可能であり、例えば、本明細書で記載される方法(例えば、以下で記載される、標準的なパラメータを用いるBLAST解析)を用い、本明細書で開示される配列など、基準のポリヌクレオチド配列と比較して、少なくとも70%の配列同一性、好ましくは少なくとも75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、または99%以上の配列同一性を含む改変体でありうる。当業者は、これらの値を適切に調整して、コドンの縮重性、アミノ酸の類似性、リーディングフレームの位置決定などを考慮することにより、2つのヌクレオチド配列によりコードされるタンパク質の対応する同一性を決定しうることを認識するであろう。
ポリヌクレオチド改変体は、好ましくは、改変体のポリヌクレオチドによりコードされる抗体の結合アフィニティーが、本明細書で具体的に示されるポリヌクレオチド配列によりコードされる抗体と比べて実質的に減殺されないように、1つまたは複数の置換、付加、欠失、および/または挿入を含有することが典型的である。
他のある特定の関連する実施形態では、ポリヌクレオチド断片が、本明細書で開示される配列のうちの1つまたは複数と同一であるかまたは相補的な、多様な長さの配列の連続的なストレッチを含むか、または本質的にこれらからなることが可能である。例えば、本明細書で開示される配列のうちの1つまたは複数のうちの少なくとも約5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、110、120、130、140、150、200、300、400、500、または1000以上の連続ヌクレオチド、ならびにこれらの間の全ての中間の長さを含むか、または本質的にこれらからなるポリヌクレオチドが提供される。この文脈における「中間の長さ」とは、200〜500;500〜1,000などを通した全ての整数を含め、50、51、52、53など;100、101、102、103など;150、151、152、153など、引例値の間の任意の長さを意味することが容易に理解される。本明細書で記載されるポリヌクレオチド配列は、一方または両方の末端において、天然配列において見出されないさらなるヌクレオチドにより伸長させることができる。このさらなる配列は、開示される配列のいずれかの末端または開示される配列の両方の末端における1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、または20ヌクレオチドからなる可能性がある。
別の実施形態では、中程度〜高度なストリンジェンシーの条件下で、本明細書で提供されるポリヌクレオチド配列、またはその断片、もしくはその相補的配列にハイブリダイズすることが可能なポリヌクレオチドが提供される。分子生物学の技術分野では、ハイブリダイゼーション法が周知である。例示を目的として述べると、本明細書で提供されるポリヌクレオチドの、他のポリヌクレオチドとのハイブリダイゼーションを調べるのに適する中程度にストリンジェントな条件には、5倍濃度のSSC、0.5%のSDS、1.0mMのEDTA(pH8.0)溶液中の前洗浄;50℃〜60℃、5倍濃度のSSC中、一晩にわたるハイブリダイジングの後;0.1%のSDSを含有する2倍濃度のSSC、0.5倍濃度のSSC、および0.2倍濃度のSSCの各々による、65℃で20分間ずつ2回にわたる洗浄が含まれる。当業者は、ハイブリダイゼーションのストリンジェンシーは、ハイブリダイゼーション溶液の塩含量および/またはハイブリダイゼーションを実施する温度を変化させることなどにより容易に操作しうることを理解するであろう。例えば、別の実施形態では、適した高度にストリンジェントなハイブリダイゼーション条件には、ハイブリダイゼーション温度を、例えば、60〜65℃または65〜70℃へと上昇させることを例外として、上記の条件が含まれる。
ある特定の実施形態では、上記のポリヌクレオチド、例えば、ポリヌクレオチド改変体、断片、およびハイブリダイズする配列が、FZD10に結合する抗体またはその抗原結合断片をコードする。他の実施形態では、このようなポリヌクレオチドが、特に本明細書で示される抗体配列の少なくとも約50%、好ましくは少なくとも約70%、より好ましくは少なくとも約90%でFZD10に結合する抗体またはその抗原結合断片もしくはCDRをコードする。さらなる実施形態では、このようなポリヌクレオチドが、本明細書で示される抗体より大きなアフィニティーでFZD10に結合する、例えば、特に本明細書で示される抗体配列の、定量的に少なくとも約105%、106%、107%、108%、109%、または110%で結合する、抗体またはその抗原結合断片もしくはCDRをコードする。
代表的なポリペプチド(例えば、本明細書で提供される改変体のFZD10特異的抗体、例えば、本明細書で提供される抗原結合断片を有する抗体タンパク質)の三次元構造の決定は、選択された天然または非天然のアミノ酸による1つまたは複数のアミノ酸の置換、付加、欠失、または挿入を、このようにして導かれる構造的改変体が本明細書で開示される分子種の空間充填特性を保持するかどうかを決定する目的で事実上モデル化しうるように、日常的な方法を介して行うことができる。例えば、Donateら、1994年、Prot. Sci.、3巻:2378頁;Bradleyら、Science、309巻:1868〜1871頁(2005年);Schueler−Furmanら、Science、310巻:638頁(2005年);Dietzら、Proc. Nat. Acad. Sci. USA、103巻:1244頁(2006年);Dodsonら、Nature、450巻:176頁(2007年);Qianら、Nature、450巻:259頁(2007年);Ramanら、Science、327巻:1014〜1018頁(2010年)を参照されたい。本明細書で提供されるFZD10特異的抗体およびそれらの抗原結合ドメインの合理的なデザインなど、これらの実施形態および関連する実施形態のために用いうるコンピュータアルゴリズムの一部のさらなる非限定的な例には、生体高分子系の高性能シミュレーションのためにデザインされた並列分子動力学コードであるNAMD、ならびに3D画像およびビルトインスクリプト記述を用いて生体高分子系を表示、動画表示、および解析するための分子画像化プログラムであるVMDが含まれる(Phillipsら、Journal of Computational Chemistry、26巻:1781〜1802頁、2005年;Humphreyら、「VMD − Visual Molecular Dynamics」、J. Molec. Graphics、1996年、14巻、33〜38頁を参照されたい;また、ks.uiuc.edu/Research/vmd/におけるTheoretical and Computational Biophysics Group、University of Illinois at Urbana−Champagneのウェブサイトも参照されたい)。当技術分野では、他の多くのコンピュータプログラムが公知であり、当業者に利用可能であり、エネルギーを最小化したコンフォメーションの空間充填モデル(ファンデルワールス半径)から原子の寸法を決定することを可能とする:異なる化学基に対する高アフィニティー領域を決定し、これにより、結合を増強しようとするGRID、数学的アライメントを計算するモンテカルロ探索、およびCHARMM(Brooksら(1983年)、J. Comput. Chem.、4巻:187〜217頁)、ならびに力の場の計算および解析を評価するAMBER(Weinerら(1981年)、J. Comput. Chem.、106巻:765頁)(また、Eisenfieldら(1991年)、Am. J. Physiol.、261巻:C376〜386頁;Lybrand(1991年)、J. Pharm. Belg.、46巻:49〜54頁;Froimowitz(1990年)、Biotechniques、8巻:640〜644頁;Burbamら(1990年)、Proteins、7巻:99〜111頁;Pedersen(1985年)、Environ. Health Perspect.、61巻:185〜190頁;およびKiniら(1991年)、J. Biomol. Struct. Dyn.、9巻:475〜488頁も参照されたい)。また、Schroedinger(Munich、Germany)製などの、多様で適切な計算用コンピュータプログラムも市販されている。
本明細書で記載されるポリヌクレオチドまたはそれらの断片は、コード配列それ自体の長さにかかわらず、プロモーター、ポリアデニル化シグナル、さらなる制限酵素部位、多重クローニング部位、他のコードセグメントなど、他のDNA配列と組み合わせることができ、その結果、その全体の長さが大幅に変化しうる。したがって、ほぼ任意の長さの核酸断片であって、全長が調製の容易さおよび意図される組換えDNAプロトコールにおける使用により限定されることが好ましい核酸断片を用いうることが想定される。例えば、全長が約10,000、約5000、約3000、約2,000、約1,000、約500、約200、約100、約50塩基対の長さなど(全ての中間の長さを含めた)である例示的なポリヌクレオチドセグメントは、有用であると想定される。
ポリヌクレオチド配列を比較する場合、下記の通りに対応が最大となるようにアライメントしたときに、2つの配列におけるヌクレオチド配列が同じであれば、2つの配列を「同一である」という。2つの配列の間の比較は、典型的に、配列を比較ウインドウ(comparison window)にわたり比較して、局所的な配列類似性の領域を同定および比較することにより実施される。本明細書で用いられる「比較ウインドウ」とは、少なくとも約20、通常は30〜約75、40〜約50の連続的な位置のセグメントであって、配列を、同数の連続的な位置を有する基準配列と、これら2つの配列を最適にアライメントした後で比較しうるセグメントを指す。
比較のための最適の配列アライメントは、バイオインフォーマティックスソフトウェアのLasergeneスイート(DNASTAR,Inc.、Madison、WI)におけるMegalignプログラムでデフォルトのパラメータを用いて実行することができる。このプログラムは、以下の参考文献において記載されているいくつかのアライメントスキームを具体化する:Dayhoff, M.O.(1978年)、A model of evolutionary change in proteins − Matrices for detecting distant relationships、Dayhoff, M.O.(編)、Atlas of Protein Sequence and Structure、National Biomedical Research Foundation、Washington DC、5巻、補遺3巻、345〜358頁;Hein J.、Unified Approach to Alignment and Phylogenes、626〜645頁(1990年);Methods in Enzymology、183巻、Academic Press, Inc.、San Diego、CA;Higgins, D.G.およびSharp, P.M.、CABIOS、5巻:151〜153頁(1989年);Myers, E.W.およびMuller W.、CABIOS、4巻:11〜17頁(1988年);Robinson, E.D.、Comb. Theor、11巻:105頁(1971年);Santou, N. Nes, M.、Mol. Biol. Evol.、4巻:406〜425頁(1987年);Sneath, P.H.A.およびSokal, R.R.、Numerical Taxonomy − the Principles and Practice of Numerical Taxonomy、Freeman Press、San Francisco、CA(1973年);Wilbur, W.J.およびLipman, D.J.、Proc. Natl. Acad., Sci. USA、80巻:726〜730頁(1983年)。
代替的に、比較のための最適の配列アライメントは、SmithおよびWaterman、Add. APL. Math、2巻:482頁(1981年)による局所的な同一性アルゴリズムを介して実行することもでき、NeedlemanおよびWunsch、J. Mol. Biol.、48巻:443頁(1970年)による同一性アライメントのアルゴリズムを介して実行することもでき、PearsonおよびLipman、Proc. Natl. Acad. Sci. USA、85巻:2444頁(1988年)による類似性の検索法を介して実行することもでき、これらのアルゴリズム(Wisconsin Genetics Software Package、Genetics Computer Group(GCG)、575 Science Dr.、Madison、WIによるGAP、BESTFIT、BLAST、FASTA、およびTFASTA)のコンピュータ化された実装により実行することもでき、目視により実行することもできる。
配列同一性および配列類似性のパーセントを決定するのに適するアルゴリズムの好ましい一例は、BLASTアルゴリズムおよびBLAST 2.0アルゴリズムであり、それぞれ、Altschulら、Nucl. Acids Res.、25巻:3389〜3402頁(1977年)、およびAltschulら、J. Mol. Biol.、215巻:403〜410頁(1990年)において記載されている。例えば、本明細書で記載されるパラメータによりBLASTおよびBLAST 2.0を用いて、2つ以上のポリヌクレオチド間における配列同一性のパーセントを決定することができる。BLAST解析を実施するためのソフトウェアは、National Center for Biotechnology Informationを介して公開されている。例示的な一例では、ヌクレオチド配列には、パラメータM(マッチする残基対に対するリウォードスコア;常に>0)およびN(ミスマッチする残基に対するペナルティースコア;常に<0)を用いて累積スコアを計算することができる。各方向へのワードヒットの伸長は、累積アライメントスコアがその最大達成値から分量Xだけ低下する場合;1つもしくは複数の負のスコアをもたらす残基アライメントが累積するために、累積スコアがゼロ以下になる場合;またはいずれかの配列の末端に達した場合に停止させる。BLASTアルゴリズムのパラメータであるW、T、およびXは、アライメントの感度および速度を決定する。BLASTNプログラム(ヌクレオチド配列の場合)では、デフォルトとして、ワード長(W)11、期待値(E)10、およびBLOSUM62スコアリングマトリックス(HenikoffおよびHenikoff、Proc. Natl. Acad. Sci. USA、89巻:10915頁(1989年)を参照されたい)によるアライメント(B)50、期待値(E)10、M=5、N=−4、および両方の鎖の比較を用いる。
ある特定の実施形態では、「配列同一性の百分率」は、最適にアライメントした2つの配列を、少なくとも20の位置の比較ウインドウにわたって比較することにより決定し、ここで、比較ウインドウにおけるポリヌクレオチド配列の一部が、2つの配列の最適のアライメントのための基準配列(付加も欠失も含まない)と比較して20パーセント以下、通常は5〜15パーセント、または10〜12パーセントの付加または欠失(すなわち、ギャップ)を含みうる。百分率は、両方の配列で同一な核酸塩基が生じてマッチした位置数をもたらす位置数を決定し、マッチした位置数を基準配列における位置の総数(すなわち、ウインドウのサイズ)で除し、結果に100を乗じて配列同一性の百分率をもたらすことにより計算する。
当業者は、遺伝子コードの縮重性の結果として、本明細書で記載される抗体をコードする多くのヌクレオチド配列が存在することを認識するであろう。これらのポリヌクレオチドのうちの一部は、FZD10に結合する抗体をコードする、本明細書で記載されるポリヌクレオチド配列など、天然のポリヌクレオチド配列または元のポリヌクレオチド配列のヌクレオチド配列と最小限の配列同一性を保有する。にもかかわらず、本開示では、コドン使用の差違に起因して変化するポリヌクレオチドが明示的に想定される。ある特定の実施形態では、哺乳動物における発現のためにコドンを最適化した配列が、特に想定される。
したがって、本発明の別の実施形態では、本明細書で記載される抗体の改変体および/または誘導体を調製するために、部位特異的変異誘発などの変異誘発手法を使用することができる。この手法では、それらをコードする根底的なポリヌクレオチドの変異誘発を介して、ポリペプチド配列における特定の修飾を行うことができる。これらの技法は、配列改変体を調製して調べる簡便な手法、例えば、1つまたは複数のヌクレオチド配列の変更をポリヌクレオチド内に導入することにより、前出の検討事項のうちの1つまたは複数を組み込むことを提供する。
部位特異的変異誘発は、特異的なオリゴヌクレオチド配列であって、所望の変異を有するDNA配列をコードする他、横断される欠失接合部の両側において安定的な二重鎖を形成するのに十分なサイズおよび配列の複雑性を有するプライマー配列をもたらすのに十分な数の隣接するヌクレオチドもコードするオリゴヌクレオチド配列の使用を介する変異体の産生を可能とする。選択したポリヌクレオチド配列における変異を使用して、ポリヌクレオチドそれ自体の特性を改善するか、変化させるか、低下させるか、修飾するか、もしくは他の形で変更することもでき、かつ/またはコードされるポリペプチドの特性、活性、組成、安定性、もしくは一次配列を変化させることもできる。
ある特定の実施形態では、本発明者らは、開示されるポリヌクレオチド配列の変異誘発であって、抗体もしくはその抗原結合断片の結合アフィニティー、または特定のFc領域のADCC機能、またはFc領域の特定のFcγRに対するアフィニティーなど、コードされるポリペプチドの1つまたは複数の特性を変化させる変異誘発を想定する。当技術分野では、部位特異的変異誘発法が周知であり、ポリペプチドおよびポリヌクレオチドの両方の改変体を創出するのに広く用いられている。例えば、部位特異的変異誘発は、DNA分子の特定の部分を変化させるのに用いられることが多い。このような実施形態では、典型的に約14〜約25ヌクレオチドくらいの長さを含むプライマーを使用し、配列接合部の両側において約5〜約10残基を変化させる。
当業者により認識される通り、部位特異的変異誘発法では、一本鎖形態および二本鎖形態の両方で存在するファージベクターを使用することが多かった。部位指向的変異誘発において有用な典型的ベクターには、M13ファージなどのベクターが含まれる。これらのファージは、市販品の入手が容易であり、当業者にはそれらの使用が一般に周知である。二本鎖プラスミドはまた、対象の遺伝子をプラスミドからファージへと導入するステップを排除する部位指向的変異誘発でも日常的に使用されている。
一般に、本明細書に従う部位指向的変異誘発は、まず所望のペプチドをコードするDNA配列をその配列内に包含する、一本鎖ベクターを得るか、または二本鎖ベクターの2つの鎖を溶融させて解離させることにより実施する。所望の変異配列を保有するオリゴヌクレオチドプライマーは、一般に合成により調製する。次いで、変異保有鎖の合成を完結させるために、このプライマーを、一本鎖ベクターとアニールさせ、E.coliポリメラーゼIのKlenow断片などのDNA重合化酵素に供する。こうして、一方の鎖が元の非変異配列をコードし、第2の鎖が所望の変異を保有するヘテロ二重鎖が形成される。次いで、このヘテロ二重鎖ベクターを用いて、E.coli細胞などの適切な細胞を形質転換し、変異配列の構成を保有する組換えベクターを包含するクローンを選択する。
部位指向的変異誘発を用いて選択されるペプチドをコードするDNAセグメントの配列改変体を調製することにより、潜在的に有用な分子種を産生させる手段がもたらされるが、ペプチドの配列改変体およびそれらをコードするDNA配列を取得し得る他のやり方も存在するので、これは、限定的であることを意味するわけではない。例えば、所望のペプチド配列をコードする組換えベクターを、ヒドロキシルアミンなどの変異原性剤で処理して、配列改変体を得ることができる。これらの方法およびプロトコールに関する特定の詳細は、各々がその目的で参照により本明細書に組み込まれる、Maloyら、1994年;Segal、1976年;ProkopおよびBajpai、1991年;Kuby、1994年;ならびにManiatisら、1982年の教示において見出される。
本明細書で用いられる「オリゴヌクレオチド指向的変異誘発手順」という用語は、増幅など、特定の核酸分子の濃度のその初期濃度と比べた上昇、または検出可能なシグナル濃度の上昇を結果としてもたらす、鋳型依存的工程およびベクターを介する増殖を指す。本明細書で用いられる「オリゴヌクレオチド指向的変異誘発手順」という用語は、プライマー分子の鋳型依存的な伸長を伴う工程を指すことを意図する。鋳型依存的工程という用語は、RNA分子またはDNA分子の核酸合成であって、核酸の新たに合成される鎖の配列が、相補的な塩基対合についての周知の規則(例えば、Watson、1987年を参照されたい)により規定される核酸合成を指す。典型的に、ベクターを介する方法は、核酸断片のDNAベクターまたはRNAベクターへの導入、ベクターのクローン増幅、および増幅された核酸断片の回収を伴う。このような方法の例は、参照によりその全体において本明細書に具体的に組み込まれる、米国特許第4,237,224号により提供されている。
ポリペプチド改変体を産生させるための別の手法では、米国特許第5,837,458号において記載される、再帰的配列組換えを用いることができる。この手法では、組換えおよびスクリーニングまたは選択の反復的サイクルを実施して、例えば、結合アフィニティーを増大させた個別のポリヌクレオチドの改変体を「進化」させる。また、ある特定の実施形態では、本明細書で記載される少なくとも1つのポリヌクレオチドを含むプラスミド、ベクター、転写カセットまたは発現カセットの形態における構築物も提供する。
ある特定の関連する実施形態に従い、本明細書で記載される1つまたは複数の構築物を含む組換え宿主細胞と;任意の抗体、CDR、VHドメインもしくはVLドメイン、またはその抗原結合断片をコードする核酸と;コードされる産物を産生させる方法であって、それをコードする核酸からの発現を含む方法とが提供される。発現は、核酸を含有する組換え宿主細胞を適切な条件下で培養することにより好都合に達成しうる。発現による産生の後、抗体またはその抗原結合断片は、任意の適した技法を用いて単離および/または精製し、次いで、所望の通りに用いることができる。
本明細書で提供される抗体またはそれらの抗原結合断片、ならびにコード核酸分子およびベクターは、例えば、それらの天然の環境から、実質的に純粋または均一な形態で単離および/または精製することもでき、核酸の場合、所望の機能を伴うポリペプチドをコードする配列以外の起源の核酸または遺伝子を含まないかまたは実質的に含まずに単離および/または精製することもできる。核酸は、DNAを含む場合もあり、RNAを含む場合もあり、完全に合成する場合もあり、部分的に合成する場合もある。本明細書で示されるヌクレオチド配列に対する言及は、配列を指定したDNA分子を包含し、配列を指定したRNA分子を包含する(この場合、文脈により別段に要求されない限り、UをTで置換する)。
多様な異なる宿主細胞においてポリペプチドをクローニングして発現させるための系が周知である。適した宿主細胞には、細菌系、哺乳動物細胞系、酵母系、およびバキュロウイルス系が含まれる。異種ポリペプチドを発現させるのに当技術分野で利用可能な哺乳動物細胞系には、チャイニーズハムスター卵巣細胞、HeLa細胞、ベビーハムスター腎臓細胞、NSOマウス黒色腫細胞、および他の多くの細胞が含まれる。一般的な好ましい細菌宿主は、E.coliである。
当技術分野では、E.coliなどの原核細胞における抗体および抗原結合断片の発現が十分に確立されている。総説には、例えば、Pluckthun, A.、Bio/Technology、9巻:545〜551頁(1991年)を参照されたい。当業者にはまた、培養物中の真核細胞における発現も、抗体またはそれらの抗原結合断片を産生させるための選択肢として利用可能であり、近年の総説、例えば、Ref, M. E.(1993年)、Curr. Opinion Biotech.、4巻:573〜576頁;Trill, J. J.ら(1995年)、Curr. Opinion Biotech、6巻:553〜560頁を参照されたい。
必要に応じて、プロモーター配列、ターミネーター配列、ポリアデニル化配列、エンハンサー配列、マーカー遺伝子、および他の配列を含めた適切な調節配列を含有する適したベクターを選ぶまたは構築することができる。ベクターは、必要に応じて、プラスミドの場合もあり、ウイルス、例えば、ファージの場合もあり、ファージミドの場合もある。さらなる詳細については、例えば、Molecular Cloning: a Laboratory Manual:2版、Sambrookら、1989年、Cold Spring Harbor Laboratory Pressを参照されたい;分子生物学の方法に関する以下で引用した追加の参考文献も参照されたい。例えば、核酸構築物の調製、変異誘発、配列決定、DNAの細胞への導入、および遺伝子発現、ならびにタンパク質の解析において核酸を操作するための多くの公知の技法およびプロトコールは、Current Protocols in Molecular Biology、2版、Ausubelら編、John Wiley & Sons、1992年、またはこれに対するその後の改定版において詳細に記載されている。
「宿主細胞」という用語は、本明細書で記載される抗体のうちの1つまたは複数をコードする核酸配列を導入されたか、または導入された可能性がある細胞、および本明細書で記載される任意の抗体をコードする遺伝子など、選択された対象の遺伝子をさらに発現させるか、またはこれを発現させることが可能な細胞を指すのに用いられる。この用語は、選択された遺伝子が存在する限りにおいて、後代が形態または遺伝子組成において元の親細胞と同一の場合であれ、そうでない場合であれ、親細胞の後代を包含する。したがってまた、このような核酸を宿主細胞へと導入するステップを含む方法も想定される。導入では、任意の利用可能な技法を使用しうる。真核細胞の場合、適した技法には、リン酸カルシウムによるトランスフェクション、DEAE−デキストラン、電気穿孔、リポソームを介するトランスフェクション、およびレトロウイルスもしくは他のウイルス、例えば、ワクシニア、または、昆虫細胞の場合、バキュロウイルスを用いる形質導入が含まれうる。細菌細胞の場合、適した技法には、塩化カルシウムによる形質転換、電気穿孔、およびバクテリオファージを用いるトランスフェクションが含まれうる。導入後、例えば、遺伝子を発現させるための条件下で宿主細胞を培養することにより、核酸からの発現を引き起こすかまたは可能とすることができる。一実施形態では、核酸を、宿主細胞のゲノム(例えば、染色体)内に組み込む。組込みは、標準的な技法に従い、ゲノムとの組換えを促進する配列を包含することにより促進することができる。
ある特定の実施形態では、本発明はまた、本明細書で記載されるFZD10特異的抗体など、特定のポリペプチドを発現させるために、上記で言明された構築物を発現系において用いるステップを含む方法も提供する。「形質導入」という用語は、1つの細菌から別の細菌への、通常はファージによる遺伝子の移入を指すのに用いられる。「形質導入」はまた、レトロウイルスによる真核細胞配列の獲得および移入も指す。「トランスフェクション」という用語は、細胞による外来DNAまたは外因性DNA取込みを指すのに用いられ、外因性DNAが細胞膜の内側に導入されたとき、細胞は「トランスフェクト」されている。当技術分野では、多数のトランスフェクション法が周知であり、本明細書で開示されている。例えば、Grahamら、1973年、Virology、52巻:456頁;Sambrookら、2001年、MOLECULAR CLONING, A LABORATORY MANUAL、Cold Spring Harbor Laboratories;Davisら、1986年、BASIC METHODS IN MOLECULAR BIOLOGY、Elsevier;およびChuら、1981年、Gene、13巻:197頁を参照されたい。このような技法は、1つまたは複数の外因性DNA部分を適した宿主細胞へと導入するのに用いることができる。
本明細書で用いられる「形質転換」という用語は、細胞の遺伝子特徴の変更を指し、新規のDNAを含有するように改変されたとき、細胞は形質転換されている。例えば、その天然状態から遺伝子的に改変される場合、細胞は形質転換される。トランスフェクションまたは形質導入後において、形質転換DNAは、細胞の染色体へと物理的に組み込まれることにより細胞のDNAと組換わる場合もあり、複製されることなくエピソームエレメントとして一過性に維持される場合もあり、プラスミドとして独立に複製される場合もある。DNAが細胞分裂により複製される場合、細胞は安定的に形質転換されたと考えられる。核酸分子、ポリペプチド、宿主細胞などの生物学的物質との関連で用いられる場合の「天然に存在する」または「天然の」という用語は、天然において見出され、ヒトにより操作されていない物質を指す。同様に、本明細書で用いられる「天然に存在しない」または「非天然の」とは、天然において見出されないか、またはヒトにより構造的に修飾されるかもしくは合成された物質を指す。
「ポリペプチド」、「タンパク質」、および「ペプチド」、ならびに「糖タンパク質」という用語は、互換的に用いられ、いかなる特定の長さにも限定されないアミノ酸のポリマーを意味する。この用語は、ミリスチル化、硫酸化、グリコシル化、リン酸化、およびシグナル配列の付加または欠失などの修飾を除外しない。「ポリペプチド」または「タンパク質」という用語は、1つまたは複数のアミノ酸鎖であって、各鎖が、ペプチド結合により共有結合的に連結されたアミノ酸を含み、前記ポリペプチドまたはタンパク質が、天然タンパク質、すなわち、天然に存在する細胞、および、特に非組換え細胞により産生されたタンパク質、または遺伝子操作された細胞もしくは組換え細胞により産生されたタンパク質の配列を有する、ペプチド結合により非共有結合的および/または共有結合的に併せて連結された複数の鎖を含むことが可能であり、天然タンパク質のアミノ酸配列を有する分子、または天然配列の1つもしくは複数のアミノ酸の欠失、これらに対する付加、および/もしくはこれらに対する置換を有する分子を含みうるアミノ酸鎖を意味する。「ポリペプチド」および「タンパク質」という用語は、特に本開示のFZD10に結合する抗体、または抗FZD10抗体の1つもしくは複数のアミノ酸の欠失、これらに対する付加、および/もしくはこれらに対する置換を有する配列を包含する。したがって、「ポリペプチド」または「タンパク質」は、アミノ酸鎖のうちの1つ(「単量体」と呼ばれる)を含む場合もあり、複数(「多量体」と呼ばれる)を含む場合もある。
本明細書で言及されるタンパク質に関する「単離」という用語は、対象タンパク質が、(1)典型的には天然においてそれと共に見出される少なくとも数種の他のタンパク質を含まないこと、(2)同じ供給源に由来する他のタンパク質、例えば、同じ種に由来する他のタンパク質を本質的に含まないこと、(3)異なる種に由来する細胞を介して発現すること、(4)それが天然において会合するポリヌクレオチド、脂質、炭水化物、または他の物質のうちの少なくとも約50パーセントから分離されていること、(5)「単離タンパク質」が天然において会合するタンパク質の部分と会合(共有結合的相互作用を介する場合もあり、非共有結合的相互作用を介する場合もある)していないこと、(6)それが天然において会合しないポリペプチドと作動可能に会合(共有結合的相互作用を介する場合もあり、非共有結合的相互作用を介する場合もある)していること、または(7)天然において発生しないことを意味する。このような単離タンパク質は、ゲノムDNA、cDNA、mRNA、または他のRNAによりコードされる場合もあり、合成起源の場合もあり、これらの任意の組合せの場合もある。ある特定の実施形態では、単離タンパク質が、その天然の環境において見出されるタンパク質もしくはポリペプチドまたは他の夾雑物であって、その使用(治療的使用、診断的使用、予防的使用、研究のための使用、または他の形の使用)に干渉するタンパク質もしくはポリペプチドまたは他の夾雑物を実質的に含まない。
「ポリペプチド断片」という用語は、単量体の場合もあり、多量体の場合もあるポリペプチドであって、天然に存在するポリペプチドまたは組換えにより産生させたポリペプチドのアミノ末端の欠失、カルボキシル末端の欠失、および/または内部の欠失もしくは置換を有するポリペプチドを指す。ある特定の実施形態では、ポリペプチド断片は、少なくとも5〜約500アミノ酸長のアミノ酸鎖を含みうる。ある特定の実施形態では、断片が、少なくとも5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、110、150、200、250、300、350、400、または450アミノ酸長であることが認識される。特に有用なポリペプチド断片は、抗体の抗原結合ドメインまたは抗原結合断片を含めた機能的ドメインを包含する。抗FZD10抗体の場合、有用な断片には、CDR領域、特に、重鎖または軽鎖のCDR3領域、重鎖または軽鎖の可変ドメイン、抗体鎖の部分または2つのCDRを含めたそのちょうどの可変領域などが含まれるがこれらに限定されない。
FZD10特異的抗体を生成させる方法
本発明のある特定の実施形態に従う抗体は、DT40ニワトリB細胞リンパ腫系列に基づくin vitro系を用いて生成させることができる。DT40ニワトリB細胞リンパ腫系列は、ex vivoにおける抗体進化のために用いられてきた(Cumbers, S.J.ら、Nat Biotechnol、20巻、1129〜1134頁(2002年);Seo, H.ら、Nat Biotechnol、23巻、731〜735頁(2005年))。DT40細胞は、それぞれ、鋳型による変異および鋳型によらない変異を創出する、多様化の2つのはっきり異なる生理学的経路である、遺伝子転換および体細胞超変異を利用しうるので、膨大なV領域配列の潜在的多様性を駆使する(Maizels, N.、Immunoglobulin gene diversification、Ann.Rev.Genet、39巻:23〜46頁(2005年))。しかし実のところ、抗体進化のためのDT40細胞の有用性は、多様化が(他の形質転換されたB細胞系における場合と同様)生理学的速度の1%未満で生じるために、限定されている。多様化は、相同組換え経路を無効化することにより数倍加速化しうる(Cumbersら、前出)が、このようにして操作された細胞は、効率的な遺伝子ターゲティングを実行する能力を失う。多様化はまた、ヒストン脱アセチル化酵素阻害剤であるトリコスタチンAで細胞を処理することによっても加速化しうる(Seoら、前出)が、結果として得られる変異は、もっぱら鋳型による変異であり、潜在的な多様性は制限され、必要とされるアフィニティーまたは特異性を有する抗体を産生させることはできない。
本明細書で抗体を生成させるのに用いられるDT40細胞を改変して、さらなる遺伝子改変能、または遺伝子転換および体細胞超変異の両方が変異誘発に寄与する可能性を犠牲にすることなしに、Ig遺伝子の多様化速度を加速化する。これは、免疫グロブリン(Ig)遺伝子の多様化を、強力なE.coliラクトースオペレーター/リプレッサー制御ネットワークの制御下に置くことにより実現された。強力なE.coliラクトースオペレーターが約100重合化した反復配列からなる多量体(PolyLacO)を、相同遺伝子ターゲティングにより、再配列して発現させたIgλ遺伝子およびIgH遺伝子の上流に挿入した。次いで、ラクトースリプレッサーのオペレーターDNAに対する高アフィニティー(KD=10−14M)を利用して、ラクトースリプレッサータンパク質(LacI)に融合させた制御因子を、LacO制御エレメントへとテザーして、多様化を制御することができる。PolyLacOがIgλだけに組み込まれたDT40 PolyLacO−λR細胞は、任意の操作前の親DT40細胞と比べて、Ig遺伝子の多様化速度の5倍の増大を呈示した(Cummings, W.J.ら、PLoS Biol、5巻、e246頁(2007年))。多様化は、Igλ遺伝子およびIgH遺伝子の両方を標的としたPolyLacOを保有するように操作された細胞(「DTLacO」)においてさらに上昇した。
重鎖遺伝子および軽鎖遺伝子の両方においてPolyLacOを保有する、操作されたDTLacO系を、ex vivoにおける抗体発見の出発点として用いることができる。例えば、実施例において記載される通り、107〜1010個のDTLacO LacI−HP1細胞による多様化集団から出発して、FZD10に結合する細胞を、FZD10を保有する固体のマトリックス(Dynal磁気ビーズ)における選択ラウンドおよびFACSにより濃縮した。当業者により認識される通り、他の選択方法(例えば、FZD10に対する抗体の結合特異性に基づく)もまた用いることができる。次いで、本明細書で記載される標準的な技法を用いて、所望の結合特徴を有する組換えキメラモノクローナル抗体を生成させる。
次いで、ある特定の実施形態(例えば、本明細書で記載される抗FZD10抗体の改変体を生成させるための実施形態;本明細書で記載される抗FZD10抗体の結合を遮断する抗体を生成させるための実施形態)では、パニングおよび細胞:標的細胞間結合が含まれるがこれらに限定されない多様なハイスループット手法のうちのいずれかを用いて、抗原特異的DTLacO細胞の選択について調べることができる。例えば、低い百分率でFZD10特異的細胞を含有する多様なDTLacO集団を、プラスチック製のマトリックスに結合させた、複数の可溶性抗原の標的アレイと共にインキュベートすることにより、パニングを実行することができる。パニングにより、FZD10特異的DTLacO細胞が著明に濃縮される。DTLacO:標的細胞による選択は、低百分率のCFSE標識したDTLacO FZD10結合細胞または選択されていないDTLacOを含有した多様なDTLacO集団を、対象の抗原を発現させる標的細胞、例えば、細胞表面において天然FZD10または組換えFZD10を構成的または一過性に発現させるFZD10発現細胞と共に共インキュベートし、次いで、フローサイトメトリーにより、標的細胞へと結合したDTLacO細胞を定量化することにより実行することができる。DTLacOの標的細胞との相互作用は、はるかに小型の遊離DTLacO細胞に由来するシグナルが前方散乱に基づき消失するドットプロット上のCFSE陽性イベントとして明らかである。
ある特定の実施形態(例えば、本明細書で記載される抗FZD10抗体の結合を遮断する抗体を生成させるための実施形態)では、抗体を、WO2009029315およびUS2010093033においてさらに記載されるのと同様に、特定のポリペプチドの多様性を生成させるためのin vitro系を用いて調製することができる。特に、これらの適用は一般に、標的遺伝子の多様化の可逆的誘導を可能にする、本明細書の上記で記載したDT40細胞系など、改変B細胞に関する。例示的なB細胞はDT40 B細胞系であるが、ヒトB細胞を含めた他のB細胞の使用が想定される。DT40とは、その培養中の重鎖免疫グロブリン(Ig)遺伝子および軽鎖免疫グロブリン(Ig)遺伝子を、構成的に変異させることが公知のニワトリB細胞系である。他のB細胞と同様、この構成的な変異誘発は、Ig遺伝子のV領域を変異の標的とし、したがって、発現する抗体分子のCDRを変異の標的とする。DT40細胞における構成的な変異誘発は、各機能的V領域の上流に位置する一連の非機能的V遺伝子セグメント(V偽遺伝子;ΨV)をドナー配列として用いる遺伝子転換を介して起こる。ΨV領域の欠失は、多様化機構の切換えであって、遺伝子転換から、ヒトB細胞において一般に観察される機構である体細胞超変異への切換えを引き起こすことが既に示されている。DT40はまた、特定の遺伝子を修飾するか、欠失させるか、もしくは挿入した改変細胞、または特定の対象の遺伝子が内因性遺伝子を置き換えた改変細胞、特に、内因性の再配列されたIg遺伝子を置き換えた改変細胞の創出を可能とする効率的な相同組換えを支援することも示されている。
WO2009029315およびUS2010093033において記載される系は、これらの特性および他の特性を利用して、標的配列を多様化するためのプラットフォームを創出している。より具体的に述べると、その最も広範な形態において、これらの文献では、標的遺伝子の多様化の可逆的誘導を可能にする改変B細胞が記載されている。細胞は、対象の標的遺伝子に作動可能に連結した「シス制御エレメント」を包含するように改変する。細胞は、「テザー因子(tethering factor)」に融合させた「多様化因子」を包含するようにさらに改変する。テザー因子の機能は、シス制御エレメントに結合し、これにより、多様化因子を標的遺伝子の発現を制御する領域へともたらすことである。多様化因子の役割は、標的配列の多様化(変異)を加速化または制御することである。標的遺伝子をIg遺伝子座へと挿入してからは、多様化因子−テザー因子融合タンパク質を用いることにより、変異をそのコード領域へと標的化し、制御する。一般に、シス制御エレメントは、テザー因子の、シス制御エレメントへの、配列特異的な形での結合を可能とし、遺伝子(対象の遺伝子)の発現または多様化を制御する領域に位置付けられる任意のDNA配列でありうる。シス制御エレメントには、20塩基対のLacO結合部位による約100の反復配列を含む重合化ラクトースオペレーター(PolyLacO)が含まれる。シス制御エレメントは、Igλ軽鎖遺伝子座およびIgH遺伝子座のΨV領域内に位置付けられる。テザー因子には、高アフィニティーでLacOに結合するLacリプレッサー(LacI)が含まれる。シス制御エレメントのこの挿入は、改変DT40細胞系における通常の鋳型による変異誘発(遺伝子転換)過程には影響を及ぼさない。
WO2009029315およびUS2010093033による系の誘導性の側面は、テザー因子(LacI)−多様化因子融合タンパク質の発現およびLacIのLacOからの放出を引き起こす低分子である、IPTGの使用を介して生じる。10μMという少量のIPTGを伴う改変DT40細胞の培養物は、LacIのPolyLacOからの放出を引き起こし、細胞の増殖には影響を及ぼさない。多くの異なる多様化因子が想定され、これらには、クロマチン構造、転写活性化因子、および他の遺伝子制御因子、デアミナーゼ、DNAの修復および複製に関係するタンパク質、レソルバーゼおよびヘリカーゼ、細胞周期制御因子、核膜孔複合体タンパク質、およびユビキチン化に関係するタンパク質に影響を及ぼす因子が含まれる。異なるテザー因子−多様化因子構築物には、以下が含まれる:1)LacI−HP1:ヘテロクロマチンタンパク質であるHP1は、近傍遺伝子のクロマチン構造の閉鎖を促進する。したがって、LacIが改変DT40細胞内のPolyLacOに結合すると、テザーされたHP1タンパク質は、ドナーΨV配列の、クロマチン解放状態からクロマチン複製阻害状態への転移を引き起こした。これは、ΨV領域の欠失と機能的に同等であり、下流のIg Vλ遺伝子座の鋳型による変異誘発から、この標的とされる領域の体細胞超変異への切換えも同様に結果としてもたらした。2)LacI−VP16:VP16とは、ヒストンアセチルトランスフェラーゼ複合体を動員することにより機能する強力な転写活性化因子である。LacI−VP16融合体のPolyLacO経路への結合は、許容性のクロマチン構造および遺伝子転換により標的とされるVλ領域の変異誘発の増大を結果としてもたらした。3)LacI−Nup153:Nup153とは、核膜孔タンパク質であり、LacI−Nup153融合タンパク質は、改変DT40細胞内のIgH遺伝子座を核膜孔へとテザーするように機能した。Ig遺伝子の多様化は、核外搬出シグナルを保持する活性化誘導デアミナーゼ(AID)により媒介されて核周縁部で始まることが示されているので、LacI−Nup153融合タンパク質のPolyLacO経路への結合の効果は、核膜孔に対する遺伝子の近接性を増大させることにより多様化を加速化することであった。記載された実験は、クローンの多様化速度が5.7倍加速化されることを示す。4)E47−LacI:E47とは、E2Aのアイソフォームであり、リンパ球発生の多くの側面に対する制御因子である。このタンパク質は、それがクラススイッチ組換えならびにAID遺伝子の発現を制御する活性化マウスB細胞において誘導される。E2A遺伝子の不活化は、Igλ遺伝子の多様化を損なう。同様に、E47の異所性発現は、Igλ遺伝子の多様化を促進する。したがって、E47−LacI融合タンパク質の、改変DT40細胞内のPolyLacOシス制御エレメントへの結合は、標的とされる下流の遺伝子の多様化の増大を結果としてもたらした。5)HIRA−LacI:HIRAとは、ヒストンのシャペロンである。その機能の1つは、H3.3ヒストン改変体を含有するヌクレオソームを組み立てることである。PolyLacO改変DT40細胞におけるHIRA−LacI融合タンパク質の発現は、多様化を11倍に増大させた。この加速化は、鋳型による変異(遺伝子転換)レベルの上昇に起因することが示された。
WO2009029315およびUS2010093033において記載される改変B細胞は、変異タンパク質を生成させるのに用いることができ、ある特定の実施形態では、例えば、本明細書で記載される抗体の、それらのコグネイト抗原への特異的結合を、競合的阻害を介して遮断する抗体など、抗FZD10抗体を生成させるのに用いることができる。
FZD10機能のモジュレーター、アゴニスト、またはアンタゴニストである、本明細書で記載されるFZD10結合抗体またはその抗原結合断片は、想定される実施形態内に明示的に包含される。これらのアゴニスト、アンタゴニスト、およびモジュレーターである抗体またはその抗原結合断片は、FZD10の抗原決定部位またはFZD10のエピトープ断片もしくはエピトープ改変体のうちの1つまたは複数と相互作用する。ある特定の実施形態では、本明細書に記載されるFZD10結合抗体は、FZD10の細胞外ドメイン(ECD)におけるエピトープに結合する。ある特定の実施形態では、本明細書の抗体はfrizzled受容体ファミリーの他のメンバーとは交差反応しない(例えば、ある特定の実施形態では、本明細書に記載される抗体は、FZD9、FZD8、FZD7、FZD6、FZD5、FZD4、FZD3、FZD2またはFZD1には結合しない)。他の実施形態では、本明細書に記載される抗FZD10抗体は、1つまたは複数の他のfrizzled受容体ファミリータンパク質と交差反応し得る。
当業者により認識される通り、標準的な技術を含め、FZD10などの特定の抗原に結合する抗体を作製する多くの公知の方法が存在し、例えば、HarlowおよびLane、Antibodies: A Laboratory Manual、Cold Spring Harbor Laboratory、1988年を参照されたい。一般に、本明細書で明示的に開示されるFZD10結合抗体の、それらのコグネイト抗原への結合を特異的に遮断する抗体などの抗体は、本明細書で記載されるモノクローナル抗体の生成を含めた細胞培養法により産生させることもでき、組換え抗体の産生を可能とするための、抗体遺伝子の、適した細菌細胞宿主または哺乳動物細胞宿主へのトランスフェクションを介して産生させることもできる。ある特定の実施形態では、ポリペプチド抗原を含む免疫原(例えば、配列番号28に示されるアミノ酸配列を含むヒトFZD10タンパク質)を最初に、多種多様な哺乳動物(例えば、マウス、ラット、ウサギ、ヒツジ、またはヤギ)のうちのいずれかへと注射する。このステップでは、ポリペプチドが、修飾を伴わない免疫原として働きうる。代替的に、特に、比較的短いポリペプチドでは場合によって、ポリペプチドを、ウシ血清アルブミンまたはキーホールリンペットヘモシアニンなどのキャリアタンパク質へと接合すると、優れた免疫応答を誘発することができる。免疫原は、好ましくは1回または複数回の追加の免疫化を組み込む所定のスケジュールに従い動物宿主へと注射し、動物から定期的に採血する。次いで、ポリペプチドに特異的なポリクローナル抗体を、例えば、適した固体の支持体と共役させたポリペプチドを用いるアフィニティークロマトグラフィーにより、このような抗血清から精製することができる。
ある特定の実施形態では、例えば、KohlerおよびMilstein、Eur. J. Immunol.、6巻:511〜519頁、1976年による技法、およびこれに対する変法を用いて、対象の抗原ポリペプチドに特異的なモノクローナル抗体を調製することができる。略述すると、これらの方法は、所望の特異性(すなわち、対象のポリペプチドとの反応性)を有する抗体を産生させることが可能な不死化細胞系の調製を伴う。このような細胞系は、例えば、上記の通りに免疫化した動物から得られる脾臓細胞から産生させることができる。次いで、例えば、骨髄腫細胞の融合パートナー、好ましくは免疫化した動物と同系の融合パートナーと融合させることにより脾臓細胞を不死化させる。多様な融合法を使用することができる。例えば、脾臓細胞および骨髄腫細胞を、非イオン性洗浄剤と数分間にわたり組み合わせ、次いで、ハイブリッド細胞の成長は支援するが、骨髄腫細胞の成長は支援しない選択培地上に低密度で播種する。好ましい選択法では、HAT(ヒポキサンチン、アミノプテリン、チミジン)選択を用いる。十分な期間の後、通常は約1〜2週間後、ハイブリッド体のコロニーを観察する。単一のコロニーを選択し、それらの培養上清をポリペプチドに対する結合活性について調べる。反応性および特異性の高いハイブリドーマが好ましい。
モノクローナル抗体は、ハイブリドーマコロニーを成長させる上清から単離することができる。加えて、マウスなど、適した脊椎動物宿主の腹腔へのハイブリドーマ細胞系の注射など、収量を増強する多様な技法も用いることができる。次いで、モノクローナル抗体を、腹水または血液から採取することができる。クロマトグラフィー、ゲル濾過、沈殿、および抽出など、従来の技法により夾雑物を抗体から除去することができる。精製工程、例えば、アフィニティークロマトグラフィーステップでは、ポリペプチドを用いることができる。
使用方法および医薬組成物
本明細書では、FZD10に結合する抗体を用いる処置方法が提供される。一実施形態では、本発明の抗体を、FZD10の不適切な発現と関連する疾患であって、本開示の文脈では、例えば、存在するタンパク質の量の変化(例えば、統計学的に有意な増大または減少)、もしくは変異体タンパク質の存在、またはこれらの両方に起因する、異常なFZD10を特徴とする疾患および障害を包含することを意味する疾患を有する患者に投与する。過剰量は、FZD10の分子レベルにおける通常の検出可能な発現と比べた過剰発現、作用部位における通常の検出可能な出現と比べて長期にわたるかもしくは累積的な出現、または通常の検出可能な活性と比べた活性の増大(例えば、統計学的に有意な方法での増大)が含まれるがこれらに限定されない任意の原因に起因しうる。FZD10のこのような過剰量は、FZD10の正常な発現、出現、または活性と比べて測定することができ、前記測定は、本明細書で記載される抗体の開発および/または臨床試験において重要な役割を果たしうる。
特に、本抗体は、FZD10の発現と関連する多様ながんの処置に有用である。例えば、本発明の一実施形態は、治療有効量の、本明細書で開示されるFZD10特異的抗体をがん患者に投与することにより、滑膜肉腫、結腸直腸癌、胃癌、慢性骨髄性白血病(CML)、急性骨髄性白血病(AML)、黒色腫、唾液腺癌、乳がん、肝細胞癌、卵巣がん、子宮頸がん、非小細胞肺がん(NSCLC;腺癌および扁平上皮癌の両方)、腎臓がん、頭頸部がん、膀胱がん、子宮がん、食道がん、膵臓がん、および多形膠芽腫が含まれるがこれらに限定されないがんを処置するための方法を提供する。投与後、統計学的に有意な方法で(すなわち、当業者に公知の適切な対照と比べて)がんを阻害するか、がんの進行および/または転移を防止するかまたは遅延させる量を有効であると考える。
ある特定の実施形態では、本明細書に記載される抗体はFZD10に結合し、そのリガンドの結合およびそれに続くシグナル伝達イベントを遮断する。したがって、ある特定の実施形態では、本明細書に記載される抗体は、WNT7aおよびWNT7bなどのFZD10に対するリガンドの異常な発現と関連する疾患の処置に有用である。
別の実施形態は、治療有効量(例えば、投与後、統計学的に有意な方法で、すなわち、当業者に公知の適切な対照と比べてがんを阻害するか、がんの転移を防止するかまたは遅延させる量)の、本明細書で開示されるFZD10特異的抗体をがん患者に投与することにより、滑膜肉腫、結腸直腸癌、胃癌、慢性骨髄性白血病(CML)、急性骨髄性白血病(AML)、黒色腫、唾液腺癌、乳がん、肝細胞癌、卵巣がん、子宮頸がん、結腸直腸がん、非小細胞肺がん(NSCLC;腺癌および扁平上皮癌の両方)、腎臓がん、頭頸部がん、膀胱がん、子宮がん、胃がん、食道がん、膵臓がん、および多形膠芽腫が含まれるがこれらに限定されないがんの転移を防止するための方法を提供する。
別の実施形態は、治療有効量の、本明細書で開示されるFZD10特異的抗体をがん患者に投与することにより、滑膜肉腫、結腸直腸癌、胃癌、黒色腫、唾液腺癌、乳がん、肝細胞癌、卵巣がん、子宮頸がん、結腸直腸がん、非小細胞肺がん(NSCLC;腺癌および扁平上皮癌の両方)、腎臓がん、頭頸部がん、膀胱がん、子宮がん、胃がん、食道がん、膵臓がん、および多形膠芽腫が含まれるがこれらに限定されないがんを防止するか、またはその発生の可能性を低減するための方法を提供する。
別の実施形態は、カノニカルWnt経路を介するシグナル伝達を阻害するのに十分な量の本明細書に開示されるFZD10特異的抗体にFZD10を発現している細胞を接触させることにより、該細胞においてカノニカルWnt経路シグナル伝達を阻害するための方法を提供する。
想定されるある特定の実施形態では、本明細書で開示されるFZD10特異的抗体が、患者に投与される唯一の治療的に活性な薬剤である。代替的に、他のある特定の実施形態では、本明細書で開示される抗体を、細胞傷害剤、化学療法剤、サイトカイン、成長阻害剤、抗ホルモン剤、抗炎症剤、キナーゼ阻害剤、抗血管新生剤、心臓保護剤、または他の治療剤が含まれるがこれらに限定されない、1つまたは複数の他の治療剤と組み合わせて投与する。このような分子は、意図される目的に有効な量で組み合わせて存在させるのに適する。熟達した医療従事者は、本明細書で有用な他の治療剤の1つまたは複数の適切な用量を経験的に決定することができる。抗体は、1つまたは複数の他の処置レジメンと共に併用投与することができる。例えば、抗体は、化学療法、放射線療法、または化学療法および放射線療法の両方と共に患者に投与することができる。一実施形態では、抗体を、治療的利益をもたらすことが当技術分野で公知の1つまたは複数の他の抗体と共に投与することができる。
ある特定の想定される実施形態では、本明細書に記載される抗FZD10抗体は、1つまたは複数のさらなるWNT阻害剤(複数可)と同時にまたは順次におよび任意の順番でも投与することができる。Wntシグナル伝達の公知のアンタゴニストには、Dickkopfタンパク質(Dkk−1、−2および−4)、分泌Frizzled関連タンパク質(sFRP;sFRP−1、2および5ならびにsFRP−3および4)、Wnt阻害因子1(WIF−1)、Norrin、R−スポンジン;およびDKKL1が挙げられる。したがって、さらに上記のように、ある特定のそのような実施形態では、さらなる薬剤(複数可)は、少なくとも1つの第2のWntリガンド(例えば、Dkk−1、Dkk−2またはDkk−4などのDKKファミリーメンバー;sFRP−1、sFRP−2、sFRP−3、sFRP4またはsFRP−5などの分泌Frizzled関連タンパク質(sFRP);Wnt阻害因子1(WIF−1);Norrin;R−スポンジン;DkkL1;等)と前記Wntリガンドに対する第2の受容体(例えば、FZD1、FZD2、FZD3、FZD4、FZD5、FZD6、FZD7、FZD8、FZD9、LRP5、LRP6、ROR1、ROR2、RYK、MuSKおよびグリピカン3などのグリピカン;例えば、Schulte 2010年 Pharmacol. Rev. 62巻:632頁; RaoおよびKuehl、2010年Circ. Res. 106巻:1798頁; Filmusら、2008年Genome Biol. 9巻:224頁; ChienおよびMoon、2007年Front. Biosci. 12巻:448頁を参照されたい;表1も参照されたい)との間の特異的相互作用を実質的に障害する第2の薬剤を含みうる。
一実施形態では、本明細書で記載される抗体を化学療法剤と共に投与する。「化学療法剤」とは、がんの処置において有用な化合物を意味する。化学療法剤の例には、チオテパおよびシクロホスファミド(CYTOXAN(登録商標))などのアルキル化剤;ブスルファン、インプロスルファン、およびピポスルファンなどのアルキルスルホナート;ベンゾドーパ、カルボコン、メツレドーパ、およびウレドーパなどのアジリジン;アルトレタミン、トリエチレンメラミン、トリエチレンホスホルアミド、トリエチレンチオホスホルアミド(triethylenethiophosphaoramide)、およびトリメチロールメラミン(trimethylolomelamine)を含めたエチレンイミンおよびメチルメラミン(methylamelamines);クロランブシル、クロルナファジン、クロロホスファミド、エストラムスチン、イホスファミド、メクロレタミン、塩酸メクロレタミンオキシド、メルファラン、ノベンビキン、フェネステリン、プレドニムスチン、トロホスファミド、ウラシルマスタードなどのナイトロジェンマスタード;カルムスチン、クロロゾトシン、ホテムスチン、ロムスチン、ニムスチン、ラニムスチンなどのニトロソウレア(nitrosureas);アクラシノマイシン、アクチノマイシン、アントラマイシン(authramycin)、アザセリン、ブレオマイシン、カクチノマイシン、カリケアマイシン、カラビシン、カミノマイシン、カルジノフィリン、クロモマイシン、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、デトルビシン、6−ジアゾ−5−オキソ−L−ノルロイシン、ドキソルビシン、エピルビシン、エソルビシン、イダルビシン、マルセロマイシン、マイトマイシン、ミコフェノール酸、ノガラマイシン、オリボマイシン、ペプロマイシン、ポトフィロマイシン、ピューロマイシン、ケラマイシン、ロドルビシン、ストレプトニグリン、ストレプトゾシン、ツベルシジン、ウベニメクス、ジノスタチン、ゾルビシンなどの抗生物質;メトトレキサートおよび5−フルオロウラシル(5−FU)などの代謝拮抗物質;デノプテリン、メトトレキサート、プテロプテリン、トリメトレキサートなどの葉酸類似体;フルダラビン、6−メルカプトプリン、チアミプリン、チオグアニンなどのプリン類似体;アンシタビン、アザシチジン、6−アザウリジン、カルモフール、シタラビン、ジデオキシウリジン、ドキシフルリジン、エノシタビン、フロクスウリジン、5−FUなどのピリミジン類似体;カルステロン、プロピオン酸ドロモスタノロン、エピチオスタノール、メピチオスタン、テストラクトンなどのアンドロゲン;アミノグルテチミド、ミトタン、トリロスタンなどの抗副腎剤(anti−adrenals);フォリン酸(frolinic acid)などの葉酸補充剤;アセグラトン;アルドホスファミドグリコシド;アミノレブリン酸;アムサクリン;ベストラブシル;ビサントレン;エダトレキサート;デフォファミン;デメコルシン;ジアジクオン;エルフロルニチン(elformithine);酢酸エリプチニウム;エトグルシド;硝酸ガリウム;ヒドロキシウレア;レンチナン;ロニダミン;ミトグアゾン;ミトキサントロン;モピダモール;ニトラクリン;ペントスタチン;フェンメトラジン(phenamet);ピラルビシン;ポドフィリン酸(podophyllinic acid);2−エチルヒドラジド;プロカルバジン;PSK.RTM;ラゾキサン;シゾフラン;スピロゲルマニウム;テヌアゾン酸;トリアジクオン;2,2’,2’’−トリクロロトリエチルアミン;ウレタン;ビンデシン;ダカルバジン;マンノムスチン;ミトブロニトール;ミトラクトール;ピポブロマン;ガシトシン;アラビノシド(「Ara−C」);シクロホスファミド;チオテパ;タキサン、例えば、パクリタキセル(TAXOL(登録商標)、Bristol−Myers Squibb Oncology、Princeton、N.J.)およびドセタキセル(TAXOTERE(登録商標)、Rhne−Poulenc Rorer、Antony、France);クロランブシル;ゲムシタビン;6−チオグアニン;メルカプトプリン;メトトレキサート;シスプラチンおよびカルボプラチンなどの白金類似体;ビンブラスチン;白金;エトポシド(VP−16);イホスファミド;マイトマイシンC;ミトキサントロン;ビンクリスチン;ビノレルビン;ナベルビン;ノバントロン;テニポシド;ダウノマイシン;アミノプテリン;ゼローダ;イバンドロネート;CPT−11;トポイソメラーゼ阻害剤であるRFS 2000;ジフルオロメチルオルニチン(DMFO);レチノイン酸;エスペラミシン;カペシタビン;チミジル酸シンターゼ阻害剤(Tomudexなど);セリコキシブ(CELEBREX(登録商標))またはMK−0966(VIOXX(登録商標))などのcox−2阻害剤;ならびに上記のうちのいずれかの薬学的に許容される塩、酸、または誘導体が含まれるがこれらに限定されない。また、例えば、タモキシフェン、ラロキシフェン、アロマターゼ阻害剤、4(5)−イミダゾール、4−ヒドロキシタモキシフェン、トリオキシフェン、ケオキシフェン、LY 117018、オナプリストン、およびトレミフェン(Fareston)を含めた抗エストロゲン剤;ならびにフルタミド、ニルタミド、ビカルタミド、ロイプロリド、およびゴセレリンなどの抗アンドロゲン剤;ならびに上記のうちのいずれかの薬学的に許容される塩、酸、または誘導体など、腫瘍に対するホルモンの作用を制御または阻害するように作用する抗ホルモン剤も含まれる。
化学療法剤または他の細胞傷害剤は、プロドラッグとして投与することができる。本明細書で用いられる「プロドラッグ」とは、親薬物と比較して腫瘍細胞に対してより細胞傷害性ではなく、酵素的に活性化するか、または活性のより大きな親形態へと転換することが可能な、薬学的に活性な物質の前駆体形態または誘導体形態を意味する。例えば、Wilman、1986年、Biochem.Soc.Trans.615th Meeting Belfast、14巻:375〜382頁;およびStellaら、「Prodrugs: A Chemical Approach to Targeted Drug Delivery」、Directed Drug Delivery、Borchardtら(編):247〜267頁、Humana Press、1985年を参照されたい。本明細書で想定されるある特定の実施形態では、本明細書で記載されるFZD10特異的抗体と共に用いうるプロドラッグに、活性のより大きな遊離細胞傷害性薬へと転換されうる、ホスフェートを含有するプロドラッグ、チオホスフェートを含有するプロドラッグ、スルフェートを含有するプロドラッグ、ペプチドを含有するプロドラッグ、D−アミノ酸で修飾されたプロドラッグ、グリコシル化されたプロドラッグ、ベータ−ラクタムを含有するプロドラッグ、場合によって置換されたフェノキシアセトアミドを含有するプロドラッグ、または、場合によって置換されたフェニルアセトアミドを含有するプロドラッグ、5−フルオロシトシンプロドラッグ、および他の5−フルオロウリジンプロドラッグが含まれうるがこれらに限定されない。本FZD10特異的抗体と共に用いられるプロドラッグ形態へと誘導体化しうる細胞傷害性薬の例には、前述の化学療法剤のうちのいずれかが含まれるがこれらに限定されない。
本FZD10特異的抗体は、他の処置レジメンと組み合わせることができる。例えば、一実施形態では、抗体により処置される患者はまた、放射線療法も施されうる。放射線療法は、当技術分野で一般に使用され、当業者に公知のプロトコールに従い投与することができる。このような療法には、当技術分野で許容される放射性同位元素であるセシウム、イリジウム、ヨウ素、またはコバルトへの照射による曝露が含まれるがこれらに限定されない。放射線療法は、全身照射の場合もあり、肺、膀胱、または前立腺など、体内または体表における特定の部位または組織へと局所的に方向付ける場合もある。典型的に、放射線療法は、パルスで、約1〜2週間の期間にわたり投与する。しかし、放射線療法は、より長期間にわたり投与する場合もある。例えば、放射線療法は、頭頸部がんを有する患者に約6〜約7週間にわたり投与する場合もある。場合によって、放射線療法は、単回線量として投与する場合もあり、複数回の逐次線量として投与する場合もある。熟達した医療従事者は、本明細書で有用な放射線療法の1回または複数回の適切な線量を経験的に決定することができる。別の実施形態に従い、本FZD10特異的抗体および1つまたは複数の他の抗がん療法を使用して、ex vivoにおいてがん細胞を処置することができる。このようなex vivoにおける処置は、骨髄移植において有用な場合があり、特に、自系骨髄移植において有用でありうることが想定される。例えば、がん細胞を含有する細胞または組織(複数可)の、抗体および上記の抗がん療法などの1つまたは複数の他の抗がん療法による処置を使用して、レシピエント患者における移植前のがん細胞を枯渇させるか、または実質的に枯渇させることができる。当然ながら、本明細書で記載される抗体を、手術などのさらに他の治療法と組み合わせて使用しうることが想定される。
代替的な実施形態では、本明細書で記載される抗体を、サイトカインと共に投与することができる。本明細書で用いられる「サイトカイン」とは、1つの細胞集団により放出されるタンパク質であって、別の細胞に対して細胞間メディエーターとして作用するタンパク質についての総称的な用語を意味する。このようなサイトカインの例は、リンホカイン、モノカイン、および従来のポリペプチドホルモンである。サイトカインには、ヒト成長ホルモン、N−メチオニルヒト成長ホルモン、およびウシ成長ホルモンなどの成長ホルモン;副甲状腺ホルモン;チロキシン;インスリン;プロインスリン;リラキシン;プロリラキシン;卵胞刺激ホルモン(FSH)、甲状腺刺激ホルモン(TSH)、および黄体形成ホルモン(LH)などの糖タンパク質ホルモン;肝増殖因子;線維芽細胞増殖因子;プロラクチン;胎盤ラクトゲン;腫瘍壊死因子−アルファおよび腫瘍壊死因子−ベータ;ミュラー管阻害物質;マウスゴナドトロピン関連ペプチド;インヒビン;アクチビン;血管内皮細胞増殖因子;インテグリン;トロンボポエチン(TPO);NGF−ベータなどの神経増殖因子;血小板増殖因子;TGF−アルファおよびTGF−ベータなどのトランスホーミング増殖因子(TGF);インスリン様増殖因子Iおよびインスリン様増殖因子II;エリスロポエチン(EPO);骨誘導因子;インターフェロン−アルファ、インターフェロン−ベータ、およびインターフェロン−ガンマなどのインターフェロン;マクロファージ−CSF(M−CSF)、顆粒球マクロファージ−CSF(GM−CSF)、および顆粒球−CSF(G−CSF)などのコロニー刺激因子(CSF);IL−1、IL−1アルファ、IL−2、IL−3、IL−4、IL−5、IL−6、IL−7、IL−8、IL−9、IL−10、IL−11、IL−12、IL−15などのインターロイキン(IL);TNF−アルファまたはTNF−ベータなどの腫瘍壊死因子;ならびにLIFおよびkitリガンド(KL)を含めた他のポリペプチド因子が含まれる。本明細書で用いられるサイトカインという用語は、天然の供給源または組換え細胞培養物に由来するタンパク質、および天然配列サイトカインの生物学的に活性な同等物を包含する。
本明細書で記載されるFZD10特異的抗体を伴う投与には、他の多様な治療剤も用いることができる。一実施形態では、抗体を、抗炎症剤と共に投与する。抗炎症剤または抗炎症薬には、ステロイドおよびグルココルチコイド(ベタメタゾン、ブデソニド、デキサメタゾン、酢酸ヒドロコルチゾン、ヒドロコルチゾン、ヒドロコルチゾン、メチルプレドニゾロン、プレドニゾロン、プレドニゾン、トリアムシノロンを含めた)、アスピリン、イブプロフェン、ナプロキセンを含めた非ステロイド系抗炎症薬(NSAIDS)、免疫選択的抗炎症性誘導体(imSAIDS)(例えば、Baoら、Neurosci.2006年7月7日、140巻(3号):1011〜22頁;Mathisonら、BMC Immunol.、2003年3月4日;4巻:3頁を参照されたい)、メトトレキサート、スルファサラジン、レフルノミド、抗TNF薬、シクロホスファミド、およびミコフェノール酸塩が含まれるがこれらに限定されない。
本明細書で記載されるFZD10特異的抗体を伴う投与には、他の多様な治療剤も用いることができる。一実施形態では、抗体を、抗血管新生剤と共に投与する。本明細書で用いられる「抗血管新生剤」とは、血管の発生を遮断するか、またはこれにある程度干渉する化合物を意味する。例えば、抗血管新生因子は、低分子またはタンパク質、例えば、血管新生の促進に関係する増殖因子もしくは増殖因子受容体に結合する抗体またはサイトカインでありうる。本明細書で好ましい抗血管新生因子は、血管内皮細胞増殖因子(VEGF)に結合する抗体である。代替的な実施形態では、抗体を、適応免疫応答を誘導するかまたは増強する治療剤、例えば、CTLA−4を標的とする抗体と共に投与する。代替的な実施形態では、抗体をチロシンキナーゼ阻害剤と共に投与する。本明細書で用いられる「チロシンキナーゼ阻害剤」とは、チロシンキナーゼのチロシンキナーゼ活性をある程度阻害する分子を意味する。このような阻害剤の例には、PD 153035、4−(3−クロロアニリノ)キナゾリンなどのキナゾリン;ピリドピリミジン;ピリミドピリミジン;CGP 59326、CGP 60261、およびCGP 62706などのピロロピリミジン;ピラゾロピリミジンである4−(フェニルアミノ)−7H−ピロロ[2,3−d]ピリミジン;クルクミン(ジフェルロイルメタン、4,5−ビス(4−フルオロアニリノ)フタルイミド);ニトロチオフェン部分を含有するトリホスチン;PD−0183805(Warner−Lambert);アンチセンス分子(例えば、ErbBをコードする核酸に結合するアンチセンス分子);キノキサリン(米国特許第5,804,396号);トリホスチン(米国特許第5,804,396号);ZD6474(Astra Zeneca);PTK−787(Novartis/Schering A G);C1−1033(Pfizer)などのpan−ErbB阻害剤;Affinitac(ISIS 3521;Isis/Lilly);メシル酸イマチニブ(ST1571、Gleevec(登録商標);Novartis);PKI 166(Novartis);GW2016(Glaxo SmithKline);C1−1033(Pfizer);EKB−569(Wyeth);Semaxinib(Sugen);ZD6474(AstraZeneca);PTK−787(Novartis/Schering AG);INC−1−C11(Imclone);または以下の特許公開:米国特許第5,804,396号;PCT WO99/09016(American Cyanimid);PCT WO98/43960(American Cyanamid);PCT WO97/38983(Warner−Lambert);PCT WO99/06378(Warner−Lambert);PCT WO99/06396(Warner−Lambert);PCT WO96/30347(Pfizer,Inc);PCT WO96/33978(AstraZeneca);PCT WO96/3397(AstraZeneca);PCT WO96/33980(AstraZeneca)、ゲフィチニブ(IRESSA(商標)、ZD1839、AstraZeneca)、およびOSI−774(Tarceva(登録商標)、OSI Pharmaceuticals/Genentech)のうちのいずれかにおいて記載される阻害剤が含まれるがこれらに限定されない。
想定される別の実施形態では、本明細書で記載されるFZD10特異的抗体を、本明細書ではコンジュゲートと称する、別の治療用化合物とコンジュゲートすることもでき、これに作動可能に連結することもできる。コンジュゲートは、細胞傷害剤、化学療法剤、サイトカイン、抗血管新生剤、チロシンキナーゼ阻害剤、毒素、放射性同位元素、または他の治療的に活性な薬剤でありうる。化学療法剤、サイトカイン、抗血管新生剤、チロシンキナーゼ阻害剤、および他の治療剤については上記で記載したが、これらの前述の治療剤の全てを、抗体コンジュゲートとして用いることができる。
代替的な実施形態では、抗体を、それらの断片および/または改変体を含めた、細菌起源、真菌起源、植物起源、または動物起源の低分子毒素および酵素的に活性な毒素が含まれるがこれらに限定されない毒素とコンジュゲートするか、またはこれに作動可能に連結する。低分子毒素には、サポリン(Kurodaら、The Prostate、70巻:1286〜1294頁(2010年);Lipら、2007年、Molecular Pharmaceutics、4巻:241〜251頁;Quadrosら、2010年、Mol Cancer Ther、9巻(11号);3033〜40頁;Polito L.ら、2009年、Brit.Jl Haematol.147巻、710〜718頁)、カリケアマイシン、マイタンシン(米国特許第5,208,020号)、トリコテセン(trichothene)、およびCC1065が含まれるがこれらに限定されない。毒素には、RNアーゼ、ゲロニン、エンジイン、リシン、アブリン、ジフテリア毒素、コレラ毒素、Pseudomonas属外毒素(PE40)、Shigella属毒素、Clostridium perfringens毒素、およびヤマゴボウ抗ウイルスタンパク質が含まれるがこれらに限定されない。
ある特定の関連する実施形態では、抗体を、1つまたは複数のマイタンシン分子(例えば、抗体分子1つ当たり約1〜約10のマイタンシン分子)とコンジュゲートされうる。例えば、マイタンシンを、May−SS−Meへと転換することができ、これをMay−SH3へと還元して、修飾抗体と反応させ(Chariら、1992年、Cancer Research、52巻:127〜131頁)て、マイタンシノイド−抗体コンジュゲートを生成させることができる。別の対象のコンジュゲートは、1つまたは複数のカリケアマイシン分子とコンジュゲートした抗体を含む。抗生物質のカリケアマイシンファミリーは、ピコモル濃度以下で二本鎖DNAの切断をもたらすことが可能である。また、カリケアマイシンの構造的類似体も用いることができる(Hinmanら、1993年、Cancer Research、53巻:3336〜3342頁;Lodeら、1998年、Cancer Research、58巻:2925〜2928頁)(米国特許第5,714,586号;米国特許第5,712,374号;米国特許第5,264,586号;米国特許第5,773,001号)。アウリスタチンE(AE)およびモノメチルアウリスタチンE(MMAE)など、ドラスタチン10の類似体も、本明細書で開示される抗体またはその改変体のコンジュゲートとして用いることができる(Doroninaら、2003年、Nat Biotechnol、21巻(7号):778〜84頁;Franciscoら、2003年、Blood、102巻(4号):1458〜65頁)。酵素的に活性な有用な毒素には、ジフテリアA鎖、ジフテリア毒素の非結合活性断片、外毒素A鎖(Pseudomonas aeruginosaに由来する)、リシンA鎖、アブリンA鎖、モデシンA鎖、アルファ−サルシン、Aleurites fordiiのタンパク質、ジランチン(dianthin)タンパク質、Phytolaca americanaのタンパク質(PAPI、PAPII、およびPAP−S)、Momordica charantia阻害剤、クルシン、クロチン、Sapaonaria officinalis阻害剤、ゲロニン、ミトゲリン、レストリクトシン、フェノマイシン、エノマイシン、およびトリコテセンが含まれるがこれらに限定されない。例えば、PCT WO93/21232を参照されたい。本開示は、コンジュゲートまたは融合体を、本明細書で記載されるFZD10特異的抗体と、核酸分解活性を伴う化合物、例えば、リボヌクレアーゼ、またはデオキシリボヌクレアーゼ(DNアーゼ)などのDNAエンドヌクレアーゼとの間で形成させる実施形態もさらに想定する。
代替的な実施形態では、本明細書で開示される抗体は、放射性同位元素にコンジュゲートするかまたはこれに作動可能に連結して、放射性コンジュゲートを形成することができる。放射性コンジュゲート抗体を産生させるには、多様な放射性同位元素が利用可能である。例には、90Y、123I、125I、131I、186Re、188Re、211At、および212Biが含まれるがこれらに限定されない。
他のある特定の実施形態では、本明細書で記載される抗体を、細胞毒(例えば、細胞増殖抑制剤または殺細胞剤)、治療剤、または放射性元素(例えば、アルファ放射体、ガンマ放射体など)などの治療用部分とコンジュゲートすることができる。細胞毒または細胞傷害剤には、細胞に対して有害な任意の薬剤が含まれる。例には、パクリタキセル/パクリタキソール、サイトカラシンB、グラミシジンD、臭化エチジウム、エメチン、マイトマイシン、エトポシド、テノポシド、ビンクリスチン、ビンブラスチン、コルヒチン、ドキソルビシン、ダウノルビシン、ジヒドロキシアントラシンジオン、ミトキサントロン、ミトラマイシン、アクチノマイシンD、1−デヒドロテストステロン、グルココルチコイド、プロカイン、テトラカイン、リドカイン、プロプラノロール、およびピューロマイシン、ならびにこれらの類似体または同族体が含まれる。1つの好ましい例となる細胞毒は、サポリン(Advanced Targeting Systems、San Diego、CAから入手可能)である。治療剤には、代謝拮抗物質(例えば、メトトレキサート、6−メルカプトプリン、6−チオグアニン、シタラビン、5−フルオロウラシルデカルバジン)、アルキル化剤(例えば、メクロレタミン、チオテパ(thioepa)クロランブシル、メルファラン、カルムスチン(BSNU)およびロムスチン(CCNU)、シクロホスファミド(cyclothosphamide)、ブスルファン、ジブロモマンニトール、ストレプトゾトシン、マイトマイシンC、ならびにシスジクロロジアミン白金(II)(DDP;シスプラチン)、アントラサイクリン(例えば、ダウノルビシン(旧称:ダウノマイシン)およびドキソルビシン)、抗生物質(例えば、ダクチノマイシン(旧称:アクチノマイシン)、ブレオマイシン、ミトラマイシン、およびアントラマイシン(AMC))、および抗有糸分裂剤(例えば、ビンクリスチンおよびビンブラスチン)が含まれるがこれらに限定されない。
さらに、ある特定の実施形態では、FZD10特異的抗体(本明細書で提供される抗原結合断片など、その機能的断片を含めた)を、放射性金属イオンをコンジュゲートするのに有用な放射性物質または大環状キレート化剤などの治療用部分とコンジュゲートすることができる。ある特定の実施形態では、大環状キレート化剤が、リンカー分子を介して抗体へと付着されうる1,4,7,10−テトラアザシクロドデカン−N,N’,N’’,N’’’−テトラ酢酸(DOTA)である。当技術分野では、このようなリンカー分子が一般に公知であり、Denardoら、1998年、Clin Cancer Res.、4巻:2483〜90頁;Petersonら、1999年、Bioconjug. Chem.、10巻:553号;およびZimmermanら、1999年、Nucl. Med. Biol.、26巻:943〜50頁において記載されている。
さらに別の実施形態では、抗体を、腫瘍のプレターゲティングにおいて使用される「受容体」(ストレプトアビジンなど)であって、抗体−受容体コンジュゲートが患者に投与された後、清澄化剤(clearing agent)を用いて、結合しなかったコンジュゲートが循環から除去され、次いで、細胞傷害剤(例えば、放射性ヌクレオチド)とコンジュゲートされた「リガンド」(例えば、アビジン)の投与が行われる受容体とコンジュゲートすることができる。代替的な実施形態では、抗体依存性酵素介在性プロドラッグ療法(ADEPT)を使用するために、抗体を、酵素とコンジュゲートするか、またはこれに作動可能に連結する。ADEPTは、抗体を、プロドラッグ(例えば、ペプチジル系化学療法剤;PCT WO81/01145を参照されたい)を、活性な抗がん薬へと転換するプロドラッグ活性化酵素とコンジュゲートすることにより用いることもでき、これに作動可能に連結することにより用いることもできる。例えば、PCT WO88/07378および米国特許第4,975,278号を参照されたい。ADEPTに有用な免疫コンジュゲートの酵素成分には、それを活性のより大きな細胞傷害性形態へと転換するようなやり方でプロドラッグに作用することが可能な任意の酵素が含まれる。これらの実施形態および関連する実施形態による方法において有用な酵素には、ホスフェートを含有するプロドラッグを遊離薬物へと転換するのに有用なアルカリホスファターゼ;スルフェートを含有するプロドラッグを遊離薬物へと転換するのに有用なアリールスルファターゼ;非毒性の5−フルオロシトシンを抗がん薬である5−フルオロウラシルへと転換するのに有用なシトシンデアミナーゼ;ペプチドを含有するプロドラッグを遊離薬物へと転換するのに有用なセラチア菌プロテアーゼ、サーモリシン、スブチリシン、カルボキシペプチダーゼ、およびカテプシン(カテプシンBおよびLなど)などのプロテアーゼ;D−アミノ酸の置換基を含有するプロドラッグを転換するのに有用なD−アラニルカルボキシペプチダーゼ;グリコシル化されたプロドラッグを遊離薬物へと転換するのに有用なβ−ガラクトシダーゼおよびノイラミニダーゼ(neuramimidase)などの炭水化物切断酵素;α−ラクタムで誘導体化された薬物を遊離薬物へと転換するのに有用なベータ−ラクタマーゼ;およびそれらのアミン窒素において、それぞれ、フェノキシアセチル基またはフェニルアセチル基により誘導体化された薬物を遊離薬物へと転換するのに有用な、ペニシリンVアミダーゼまたはペニシリンGアミダーゼなどのペニシリンアミダーゼが含まれるがこれらに限定されない。代替的に、当技術分野ではまた「アブザイム」としても公知の酵素活性を伴う抗体を用いて、プロドラッグを遊離の活性薬物へと転換することもできる(例えば、Massey、1987年、Nature、328巻:457〜458頁を参照されたい)。抗体−アブザイムコンジュゲートは、アブザイムを腫瘍細胞集団へと送達するために調製することができる。
また、本明細書で記載されるFZD10特異的抗体の他の修飾も想定される。例えば、抗体を、多様な非タンパク質性ポリマー、例えば、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリプロピレングリコール、ポリオキシアルキレン、またはポリエチレングリコールとポリプロピレングリコールとのコポリマーのうちの1つと連結することができる。別の実施形態では、抗体を、分化誘導剤または薬物、およびこれらの誘導体と共役させることができる。例となる薬物には、メトトレキサート、ならびにピリミジン類似体およびプリン類似体が含まれうるがこれらに限定されない。例となる分化誘導剤には、ホルボールエステルおよび酪酸が含まれうるがこれらに限定されない。
本発明のある特定の実施形態では、多様なリンカーを用いて、抗体コンジュゲートを生成させることができる。本明細書では、「リンカー」、「リンカー配列」、「スペーサー」、「テザー配列」、またはこれらの文法的同等物が、2つの分子を接続し、2つの分子を好ましい立体配置に置くように働くことが多い分子または分子群(単量体またはポリマーなど)を意味する。多数の戦略を用いて、分子を併せて共有結合的に連結することができる。これらには、タンパク質またはタンパク質ドメインのN末端とC末端とのポリペプチド連結、ジスルフィド結合を介する結合、および化学架橋試薬を介する連結が含まれるがこれらに限定されない。
このような一実施形態では、リンカーが、組換え法またはペプチド合成により生成させるペプチド結合である。2つのポリペプチド鎖が接続される特定の場合に適したリンカーの選択は、2つのポリペプチド鎖の性質(例えば、それらが天然でオリゴマー化するのかどうか)、公知の場合は、接続されるN末端とC末端との距離、ならびに/またはタンパク質分解および酸化に対するリンカーの安定性が含まれるがこれらに限定されない1つまたは複数の多様なパラメータに依存しうる。さらに、リンカーは、可撓性をもたらすアミノ酸残基を含有しうる。したがって、リンカーペプチドは、以下のアミノ酸残基:Gly、Ser、Ala、またはThrのうちの1つまたは複数を主に包含しうる。リンカーペプチドは、2つの分子を、所望の活性を保持するように、互いに対して適正なコンフォメーションをとるようなやり方で連結するのに適当な長さを有するべきである。この目的に適する長さには、少なくとも1アミノ酸残基であり、かつ、30アミノ酸残基以下である長さが含まれる。リンカーは、約1〜30アミノ酸の長さであることが好ましく、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、および20アミノ酸の長さのリンカーが好ましい。
リンカーペプチドに包含させるのに選択されるアミノ酸残基は、ポリペプチドの活性にそれほど干渉しない特性を呈示しうることが望ましい。したがって、リンカーペプチド全体で、ポリペプチドの活性と不整合であるか、または内部フォールディングに干渉するか、単量体のうちの1つまたは複数におけるアミノ酸残基であって、受容体の単量体ドメインの結合を大きく妨げるアミノ酸残基と結合または他の相互作用を形成する電荷を呈示すべきではない。有用なリンカーには、グリシン−セリンポリマー(例えば、(GS)n、(GSGGS)n(配列番号25)、(GGGGS)n(配列番号26)、および(GGGS)n(配列番号27)を含めた[配列中、nは、少なくとも1つの整数である])、グリシン−アラニンポリマー、アラニン−セリンポリマー、およびShakerカリウムチャネルのためのテザーなどの他の可撓性リンカー、ならびに当業者により認識される多種多様な他の可撓性リンカーが含まれる。
一部の実施形態では、グリシン−セリンポリマーは、これらのアミノ酸の両方が、比較的構造化されておらず、したがって、構成要素間の中性のテザーとして働きうるので好ましい。第2に、セリンは親水性であり、したがって、球状のグリシン鎖となりうるポリマーを可溶化させることが可能である。第3に、同様な鎖が、単鎖抗体など、組換えタンパク質のサブユニットを接合するのに有効であることが示されている。適したリンカーはまた、2つのポリペプチド鎖の間のギャップを架橋しうる天然に存在するモチーフについての、公知の三次元構造のデータベースをスクリーニングすることによっても同定することができる。
好ましい実施形態では、リンカーが、ヒト患者に投与するときに免疫原性ではない。したがって、リンカーは、それらが低免疫原性であるか、または免疫原性が低いと考えられるように選ぶことができる。例えば、ヒトにおいて天然で存在するリンカーを選ぶことができる。好ましい実施形態では、リンカーが、抗体のヒンジ領域の配列、すなわち、抗体のFab領域とFc領域とを連結する配列を有するが、代替的に、リンカーは、ヒンジ領域の一部を含む配列または抗体のヒンジ領域と実質的に同様な配列も有する。適したリンカーを得る別のやり方は、単純なリンカー、例えば、(Gly4Ser)n(配列番号26)を、ランダム変異誘発を介して最適化することによるやり方である。代替的に、適したポリペプチドリンカーを規定したら、さらなるリンカーポリペプチドを創出して、連結されるドメインとより最適な形で相互作用するアミノ酸を選択することができる。
用いうる他の種類のリンカーには、人工のポリペプチドリンカーおよびインテインが含まれる。別の実施形態では、2つの分子を連結するようにジスルフィド結合をデザインする。別の実施形態では、リンカーが、化学架橋剤である。例えば、N−スクシンイミジル−3−(2−ピリジルジチオール)プロピオネート(SPDP)、スクシンイミジル−4−(N−マレイミドメチル)シクロヘキサン−1−カルボキシレート、イミノチオラン(IT)、イミドエステルの二官能性誘導体(ジメチルアジピデートHCLなど)、活性エステル(スベリン酸ジスクシンイミジルなど)、アルデヒド(グルタルアルデヒド(glutareldehyde)など)、ビス−アジド化合物(ビス(p−アジドベンゾイル)ヘキサンジアミンなど)、ビス−ジアゾニウム誘導体(ビス−(p−ジアゾニウムベンゾイル)−エチレンジアミンなど)、ジイソシアネート(トルエン(tolyene)2,6−ジイソシアネートなど)、およびビス活性フッ素化合物(1,5−ジフルオロ−2,4−ジニトロベンゼンなど)が含まれるがこれらに限定されない多様な二官能性タンパク質の共役剤を用いることができる。例えば、Vitettaら、1971年、Science、238巻:1098号において記載される通りに、リシン抗毒素を調製することができる。
化学リンカーは、同位元素のキレート化を可能にしうる。例えば、炭素14標識した1−イソチオシアナトベンジル−3−メチルジエチレントリアミン五酢酸(MX−DTPA)は、放射性核種を抗体へとコンジュゲートするための例となるキレート化剤である(PCT WO94/11026を参照されたい)。リンカーは、切断可能であり、細胞における細胞傷害性薬の放出を容易とする。例えば、酸不安定性リンカー、ペプチダーゼ感受性リンカー、ジメチルリンカー、またはジスルフィド含有リンカー(Chariら、1992年、Cancer Research、52巻:127〜131頁)を用いることができる。代替的に、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリプロピレングリコール、ポリオキシアルキレン、またはポリエチレングリコールとポリプロピレングリコールとのコポリマーが含まれるがこれらに限定されない多様な非タンパク質性ポリマーをリンカーとして用いることができる、すなわち、本明細書で開示される抗体を融合パートナーへと連結するのに用いる場合もあり、抗体を所望のコンジュゲート部分へと連結して免疫コンジ
ュゲートを形成するのに用いる場合もある。
当業者には、ホモ官能性およびヘテロ官能性の両方である多様な二官能性または多官能性試薬(Pierce Chemical Co.、Rockford、ILのカタログにおいて記載される試薬など)をリンカー基として使用しうることが明らかであろう。共役は、例えば、アミノ基、カルボキシル基、スルフヒドリル基、または酸化炭水化物残基を介して行うことができる。このような方法について記載する参考文献には、例えば、Rodwellらによる米国特許第4,671,958号など、多数の参考文献が存在する。治療剤が免疫コンジュゲートの抗体部分から遊離するとより強力となる場合は、細胞へと内部移行されている間、または内部移行時に切断可能となるリンカー基を用いることが望ましい。多数の異なる切断可能なリンカー基が記載されている。細胞内のこれらのリンカー基からの薬剤放出の機構には、ジスルフィド結合の還元による切断(例えば、Spitlerによる米国特許第4,489,710号)、感光性の結合に対する照射による切断(例えば、Senterらによる米国特許第4,625,014号)、誘導体化されたアミノ酸側鎖の加水分解による切断(例えば、Kohnらによる米国特許第4,638,045号)、血清補体を介する加水分解による切断(例えば、Rodwellらによる米国特許第4,671,958号)、および酸触媒加水分解(例えば、Blattlerらによる米国特許第4,569,789号)が含まれる。
2つ以上の薬剤を抗体と共役させることが所望されうる。一実施形態では、薬剤の複数の分子を、1つの抗体分子と共役させる。別の実施形態では、2つ以上の種類の薬剤を、1つの抗体と共役させることができる。具体的な実施形態にかかわらず、2つ以上の薬剤を伴う免疫コンジュゲートは、多様なやり方で調製することができる。例えば、2つ以上の薬剤を抗体分子へと直接共役させることもでき、複数の付着部位をもたらすリンカーを用いることもできる。代替的に、キャリアを用いることもできる。
キャリアは、直接またはリンカー基を介する共有結合の形成を含め、多様なやり方で薬剤を保有しうる。適したキャリアには、アルブミンなどのタンパク質(例えば、Katoらによる米国特許第4,507,234号)、ペプチドおよびアミノデキストランなどの多糖(例えば、Shihらによる米国特許第4,699,784号)が含まれる。キャリアはまた、非共有結合の形成またはリポソーム小胞内などのカプセル化によっても薬剤を保有しうる(例えば、米国特許第4,429,008号および同第4,873,088号)。放射性核種による薬剤に特異的なキャリアには、放射性ハロゲン化低分子およびキレート化化合物が含まれる。例えば、米国特許第4,735,792号は、代表的な放射性ハロゲン化低分子およびそれらの合成について開示している。放射性核種のキレートは、金属または金属酸化物である放射性核種に結合させるためのドナー原子としての窒素原子および硫黄原子を含有するキレート化化合物が含まれるキレート化化合物から形成することができる。例えば、Davisonらによる米国特許第4,673,562号は、代表的なキレート化化合物およびそれらの合成について開示している。
毒素または薬物などの治療剤は、抗体と直接的または間接的に(例えば、本明細書で開示されるリンカー基を介して)共役させる(例えば、共有結合形成させる)ことができる。例えば、一実施形態では、治療剤を、アビジン−ビオチン系または他の類似の系を介して間接的に共役させる。各々が他方と反応することが可能な置換基を所有する場合は、薬剤と抗体との直接的反応が可能である。例えば、一方におけるアミノ基またはスルフヒドリル基などの求核基は、他方における無水物または酸ハロゲン化物などのカルボニル含有基と反応することができる場合もあり、良好な脱離基(例えば、ハロゲン化物)を含有するアルキル基と反応することができる場合もある。
治療用部分を抗体とコンジュゲートする技法は周知であり、例えば、Amonら、「Monoclonal Antibodies For Immunotargeting Of Drugs In Cancer Therapy」、Monoclonal Antibodies And Cancer Therapy」、Reisfeldら(編)、1985年、243〜56頁、Alan R. Liss, Inc.;Hellstromら、「Antibodies For Drug Delivery」、Controlled Drug Delivery(2版)、Robinsonら(編)、1987年、623〜53頁、Marcel Dekker, Inc.;Thorpe、「Antibody Carriers Of Cytotoxic Agents In Cancer Therapy: A Review」、Monoclonal Antibodies ’84: Biological And Clinical Applications、Pincheraら(編)、1985年、475〜506頁;「Analysis, Results, And Future Prospective Of The Therapeutic Use Of Radiolabeled Antibody In Cancer Therapy」、Monoclonal Antibodies For Cancer Detection And Therapy、Baldwinら(編)、1985年、303〜16頁、Academic Press;およびThorpeら、Immunol. Rev.62巻:119〜58頁、1982年を参照されたい。
純粋形態または適切な医薬組成物中での、本明細書で記載されるFZD10特異的抗体の投与は、類似の有用性を供給するのに許容される薬剤の投与方式のうちのいずれかを介して実行することができる。医薬組成物は、抗体または抗体を含有する組成物(例えば、FZD10特異的抗体−サポリン抗毒素などの免疫コンジュゲート)を、生理学的に許容される適切なキャリア、希釈剤、または賦形剤と組み合わせることにより調製することができ、錠剤、カプセル剤、散剤、顆粒剤、軟膏剤、液剤、坐剤、注射剤、吸入剤、ゲル剤、マイクロスフェア、およびエアゾール剤など、固体形態、半固体形態、液体形態、または気体形態の調製物へと製剤化することができる。加えて、他の薬学的に活性な成分(本明細書の別の個所で記載される他の抗がん剤を含めた)、ならびに/または塩、緩衝剤、および安定化剤などの適した賦形剤を組成物内に存在させることもできるがそうしなくともよい。投与は、経口経路、非経口経路、経鼻経路、静脈内経路、皮内経路、皮下経路、または局所経路を含め、異なる多様な経路を介して達成することができる。好ましい投与方式は、処置または防止される状態の性質に依存する。投与後、がんを軽減するか、がんを阻害するか、がんの進行および/または転移を防止するかまたは遅延させる量を有効であると考える。
ある特定の実施形態では、投与される量が、生存可能な腫瘍の量の統計学的に有意な減少、例えば、腫瘍塊の少なくとも50%の減少または走査寸法の変化(例えば、統計学的に有意な減少)により示される腫瘍の退縮を結果としてもたらすのに十分である。処置の正確な投与量および持続期間は、処置される疾患の関数であり、公知の試験プロトコールを用いて経験的に決定することもでき、当技術分野で公知のモデル系において組成物を調べ、そこから外挿することにより決定することもできる。また、対照臨床検査も実施することができる。投与量はまた、緩和させる状態の重症度によって変わりうる。医薬組成物は一般に、望ましくない副作用を最小化しながら、治療的に有用な効果を発揮するように製剤化および投与する。組成物は、一度に投与することもでき、時間間隔を置いて投与される多数回のより小用量へと分割することもできる。任意の特定の対象には、特定の投与量レジメンを、個別の必要に従い、経時的に調整することができる。
FZD10特異的抗体を含有する組成物は、単独で投与することもでき、放射線療法、化学療法、移植、免疫療法、ホルモン療法、光力学療法など、他の公知のがん処置と組み合わせて投与することもできる。組成物はまた、細菌感染、特に、細胞内の細菌感染を処置するのに用いられる抗生物質と組み合わせても投与することができる。
したがって、限定せずに述べると、これらの医薬組成物および類縁の医薬組成物を投与する典型的な経路には、経口経路、局所経路、経皮経路、吸入経路、非経口経路、舌下経路、口腔内経路、直腸内経路、膣内経路、および鼻内経路が含まれる。本明細書で用いられる非経口という用語には、皮下注射、静脈内注射法または静脈内注入法、筋肉内注射法または筋肉内注入法、胸骨内注射法または胸骨内注入法が含まれる。本発明のある特定の実施形態に従う医薬組成物は、組成物を患者へと投与したときに、その中に含有される活性成分が生体に利用可能になるように製剤化する。被験体または患者に投与される組成物は、1つまたは複数の投薬単位であって、例えば、錠剤が単一の投薬単位の場合もあり、エアゾール形態における本明細書で記載されるFZD10特異的抗体の容器が複数の投薬単位を保持する場合もある投薬単位の形態をとりうる。このような剤形を調製する実際の方法は当業者に公知であるか、または明らかであろう(例えば、Remington、The Science and Practice of Pharmacy、20版(Philadelphia College of Pharmacy and Science、2000年)を参照されたい)。いずれにせよ、投与される組成物は、本明細書の教示に従う被験体の疾患または状態を処置するための治療有効量の本開示の抗体を含有する。
医薬組成物は、固体形態の場合もあり、液体形態の場合もある。一実施形態では、組成物が、例えば、錠剤形態または粉末形態であるように、キャリア(複数可)は微粒子である。キャリア(複数可)は液体であることが可能であり、組成物は、例えば、経口油、注射液、または、例えば、吸入投与において有用なエアゾールでありうる。経口投与用に意図される場合、医薬組成物は、固体形態または液体形態であることが好ましく、半固体、半液体、懸濁液、およびゲル形態が、本明細書で固体または液体として考えられる形態内に包含される。
経口投与用の固体組成物として、医薬組成物を、散剤、顆粒剤、圧縮錠、丸剤、カプセル剤、チューインガム、ウェハーなどへと製剤化することができる。このような固体組成物は典型的に、1つまたは複数の不活性希釈剤または可食性キャリアを含有する。加えて、以下のうちの1つまたは複数を存在させることができる:カルボキシメチルセルロース、エチルセルロース、微結晶セルロース、トラガカントガム、またはゼラチンなどの結合剤;デンプン、ラクトース、またはデキストリンなどの賦形剤;アルギン酸、アルギン酸ナトリウム、Primogel、トウモロコシデンプンなどの崩壊剤;ステアリン酸マグネシウムまたはSterotexなどの滑沢剤;コロイド状二酸化ケイ素などの流動促進剤(glidant);スクロースまたはサッカリンなどの甘味剤;ペパーミント、サリチル酸メチル、またはオレンジ香料などの着香剤(flavoring agent);および着色剤。医薬組成物が、カプセル形態、例えば、ゼラチンカプセル剤の場合、それは、上記の種類の物質に加えて、ポリエチレングリコールまたは油などの液体キャリアを含有しうる。
医薬組成物は、液体の形態、例えば、エリキシル剤、シロップ剤、液剤、乳剤、または懸濁剤でありうる。2つの例として、液体は、経口投与用の場合もあり、注射による送達用の場合もある。経口投与用が意図される場合、好ましい組成物は、本化合物に加えて、甘味剤、防腐剤、色素/着色剤、および香味増強剤のうちの1つまたは複数も含有する。注射により投与することが意図される組成物では、界面活性剤、防腐剤、湿潤剤、分散剤、懸濁化剤、緩衝剤、安定化剤、および等張剤のうちの1つまたは複数が包含されうる。
それらが溶液であれ、懸濁液であれ、他の同様の形態であれ、液体の医薬組成物は、以下のアジュバントのうちの1つまたは複数を包含しうる:滅菌希釈剤、例えば、注射用水、食塩溶液、好ましくは生理食塩水、リンゲル溶液、等張性塩化ナトリウム、溶媒もしくは懸濁媒として働きうる合成モノグリセリドもしくは合成ジグリセリドなどの固定油、ポリエチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコール、または他の溶媒;ベンジルアルコールまたはメチルパラベンなどの抗菌剤;アスコルビン酸または亜硫酸水素ナトリウムなどの抗酸化剤;エチレンジアミン四酢酸などのキレート化剤;酢酸塩、クエン酸塩、またはリン酸塩などの緩衝剤、および塩化ナトリウムまたはデキストロースなどの張度を調整するための薬剤。非経口調製物は、ガラス製またはプラスチック製のアンプル、使い捨てシリンジ、または複数の用量バイアル内に封入することができる。生理食塩水は、好ましいアジュバントである。注射用医薬組成物は、滅菌であることが好ましい。
非経口投与用または経口投与用を意図される液体の医薬組成物は、適した投与量が得られるように、本明細書で開示されるFZD10特異的抗体の量を含有するべきである。典型的に、この量は、組成物中に少なくとも0.01%の抗体である。経口投与用が意図される場合、この量は、組成物重量の0.1〜約70%であるように変わりうる。ある特定の経口医薬組成物は、約4%〜約75%の抗体を含有する。ある特定の実施形態では、非経口投薬単位が、希釈前の0.01〜10重量%の抗体を含有するように、本発明に従う医薬組成物および医薬調製物を調製する。
医薬組成物は、局所投与用を意図することもでき、この場合、キャリアは、溶液基剤、エマルジョン基剤、軟膏基剤、またはゲル基剤を含むことが適切でありうる。基剤は、例えば、以下のうちの1つまたは複数を含みうる:ワセリン、ラノリン、ポリエチレングリコール、蜜蝋、鉱油、水およびアルコールなどの希釈剤、ならびに乳化剤および安定化剤。増粘剤は、局所投与用の医薬組成物中に存在させることができる。経皮投与用を意図する場合、組成物は、経皮パッチを包含する場合もあり、イオン導入デバイスを包含する場合もある。医薬組成物は、例えば、直腸内で溶融して薬物を放出する、坐剤の形態での直腸内投与を意図する場合もある。直腸内投与用の組成物は、適した非刺激性賦形剤としての油性基剤を含有しうる。限定せずに述べると、このような基剤には、ラノリン、ココアバター、およびポリエチレングリコールが含まれる。
医薬組成物は、固体または液体の投薬単位の物理的形態を改変する多様な物質を包含しうる。例えば、組成物は、活性成分の周囲にコーティングシェルを形成する物質を包含しうる。コーティングシェルを形成する物質は、典型的に不活性であり、例えば、糖、セラック、および他の腸溶性のコーティング剤から選択することができる。代替的に、活性成分は、ゼラチンカプセル内に包み込むこともできる。固体形態または液体形態の医薬組成物は、本発明の抗体に結合し、これにより化合物の送達の一助となる薬剤を包含しうる。この能力において作用しうる適した薬剤には、他のモノクローナル抗体もしくはポリクローナル抗体、1つもしくは複数のタンパク質、またはリポソームが含まれる。医薬組成物は、本質的にエアゾールとして投与しうる投薬単位からなる場合がある。エアゾールという用語は、コロイド状のもの〜加圧パッケージからなる系の範囲にわたる多様な系を指し示すのに用いられる。送達は、液化ガスまたは圧縮ガスを介する場合もあり、活性成分を分注する適したポンプシステムを介する場合もある。活性成分(複数可)を送達するために、エアゾールは、単相系で送達することもでき、二相系で送達することもでき、三相系で送達することもできる。エアゾールの送達は、併せてキットを形成しうる、必要な容器、アクチベーター、バルブ、部分容器などを包含する。当業者は、必要以上の実験なしに、好ましいエアゾールを決定することができる。
医薬組成物は、製薬技術分野で周知の方法により調製することができる。例えば、注射により投与することを意図される医薬組成物は、溶液を形成するように、本明細書で記載されるFZD10特異的抗体、ならびに場合によって、塩、緩衝剤、および/または安定化剤のうちの1つまたは複数を含む組成物を、滅菌蒸留水と組み合わせることにより調製することができる。界面活性剤を添加して、均一な溶液または懸濁液の形成を容易にすることができる。界面活性剤とは、水性送達系における抗体の溶解または均一な懸濁を容易にするように、抗体組成物と非共有結合的に相互作用する化合物である。
組成物は、使用される特定の化合物(例えば、FZD10特異的抗体)の活性;化合物作用の代謝安定性および長さ;患者の年齢、体重、全般的な健康、性別、および食事;投与方式および投与期間;排泄速度;薬物の組合せ;特定の障害または状態の重症度;ならびに療法を受ける被験体を含めた多様な因子に依存して変わる治療有効量で投与することができる。一般に、治療的に有効な毎日の用量は、約0.001mg/kg(すなわち、0.07mg)〜約100mg/kg(すなわち、7.0g)(70kgの哺乳動物の場合)であり、好ましくは、治療有効用量は、約0.01mg/kg(すなわち、0.7mg)〜約50mg/kg(すなわち、3.5g)(70kgの哺乳動物の場合)であり、より好ましくは、治療有効用量は、約1mg/kg(すなわち、70mg)〜約25mg/kg(すなわち、1.75g)(70kgの哺乳動物の場合)である。
本明細書で記載されるFZD10特異的抗体を含む組成物はまた、1つまたは複数の他の治療剤の投与と同時に投与することもでき、この前に投与することもでき、この後で投与することもできる。このような組合せ療法は、本発明の化合物および1つまたは複数のさらなる活性薬剤を含有する単一の医薬投薬製剤の投与の他、本発明の抗体を含む組成物およびその固有の別個の医薬投薬製剤における各活性薬剤の投与も包含しうる。例えば、本明細書で記載される抗体および他の活性薬剤は、錠剤またはカプセル剤など、単一の経口投与組成物中で併せて患者に投与することもでき、各薬剤を別個の経口投薬製剤により投与することもできる。別個の投薬製剤を用いる場合、抗体および1つまたは複数のさらなる活性薬剤を含む組成物は、本質的に同時に、すなわち、共時的に投与することもでき、別個に時間をずらして、すなわち、逐次的、かつ、任意の順序で投与することもでき、組合せ療法は、これら全てのレジメンを包含することが理解される。
本明細書で記載されるFZD10特異的抗体を含む組成物は、がんなど、本明細書で記載される疾患に罹患する個体に投与することができる。ヒト疾患を処置するためにin vivoで用いる場合は一般に、本明細書で記載される抗体を、投与前に医薬組成物へと組み込む。医薬組成物は、本明細書の別の個所で記載される通り、生理学的に許容されるキャリアまたは賦形剤と組み合わせた、本明細書で記載される抗体のうちの1つまたは複数を含む。医薬組成物を調製するには、有効量の1つまたは複数の化合物を、特定の投与方式に適することが当業者に公知である任意の医薬キャリア(複数可)または医薬賦形剤と混合する。医薬キャリアは、液体の場合もあり、半液体の場合もあり、固体の場合もある。非経口適用、皮内適用、皮下適用、または局所適用に用いられる溶液または懸濁液には、例えば、滅菌希釈剤(水など)、食塩溶液、固定油、ポリエチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコール、または他の合成溶媒;抗微生物剤(ベンジルアルコールおよびメチルパラベンなど);抗酸化剤(アスコルビン酸および亜硫酸水素ナトリウムなど);ならびにキレート化剤(エチレンジアミン四酢酸(EDTA)など);緩衝剤(酢酸塩、クエン酸塩、およびリン酸塩など)が含まれうる。静脈内投与する場合、適したキャリアには、生理食塩水またはリン酸緩衝食塩水(PBS)、ならびにグルコース、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、およびこれらの混合物などの増粘剤および可溶化剤を含有する溶液が含まれる。
本明細書で記載されるFZD10特異的抗体を含む組成物は、徐放製剤またはコーティングなど、体内からの急速な消失から抗体を保護するキャリアと共に調製することができる。このようなキャリアには、インプラントおよびマイクロカプセル化送達系、ならびにエチレン酢酸ビニル、ポリ無水物、ポリグリコール酸、ポリオルトエステル、ポリ乳酸、および当業者に公知の他のポリマーなどの生体分解性ポリマー、生体適合性ポリマーなどであるが
これらに限定されない、制御放出製剤が含まれる。
本発明の様々な他の実施形態は、FZD10を発現している細胞または組織の存在を検出するための診断的適用に部分的に関する。したがって、本開示は、FZD10を発現している細胞または組織の検出などの、試料においてFZD10を検出する方法を提供する。そのような方法は、免疫組織化学(IHC)、免疫細胞化学(ICC)、in situハイブリダイゼーション(ISH)、ホールマウントin situハイブリダイゼーション(WISH)、蛍光DNA in situハイブリダイゼーション(FISH)、フローサイトメトリー、酵素免疫アッセイ(EIA)および酵素結合免疫アッセイ(ELISA)が挙げられるがこれらに限定されない、種々の公知の検出フォーマットにおいて適用することができる。
ISHは、標識された相補的DNAまたはRNA鎖(すなわち、一次結合剤)を用いて、細胞もしくは組織の一部または切片(in situ)において、または組織が全く小さい場合は組織全体(ホールマウントISH)において特定のDNAまたはRNA配列の位置を突き止める一種のハイブリダイゼーションである。当業者であれば、このISHは、一次結合剤として抗体を用いて組織切片においてタンパク質の位置を突き止める免疫組織化学とは異なっていることを認識するであろう。DNA ISHは、ゲノムDNA上で使用して、染色体の構造を決定することができる。蛍光DNA ISH(FISH)は、例えば、医学診断において使用して、染色体の完全性を評価することができる。RNA ISH(ハイブリダイゼーション組織化学)は、組織切片またはホールマウント内でmRNAおよび他の転写物を測定し位置を突き止めるのに使用される。
様々な実施形態では、本明細書に記載される抗体は、直接的にまたは間接的に検出しうる検出可能な標識とコンジュゲートしている。これに関して、抗体「コンジュゲート」とは、検出可能な標識に共有結合している抗FZD10抗体を指す。本発明では、DNAプローブ、RNAプローブ、モノクローナル抗体、その抗原結合断片、および単鎖可変断片抗体またはエピトープタグ付き抗体などのその抗体誘導体は全て検出可能な標識に共有結合していてもよい。「直接的検出」では、1つの検出可能な抗体、すなわち、検出可能な一次抗体のみが使用される。したがって、直接的検出とは、検出可能な標識とコンジュゲートしている抗体それ自体が、第2の抗体(二次抗体)を加える必要なく検出されうることを意味する。
「検出可能な標識」とは、試料における前記標識の存在および/または濃度を示す検出可能な(例えば、視覚的に、電子的にまたは他の方法で)シグナルを出すことができる分子または材料のことである。検出可能な標識は、抗体とコンジュゲートすると、これを使用して特異的抗体が向かう標的の位置を突き止めかつ/または定量化することができる。それによって、試料における標的の存在および/または濃度は、検出可能な標識から出るシグナルを検出することにより検出することができる。検出可能な標識は直接的にまたは間接的に検出することができ、異なる特異的抗体とコンジュゲートしたいくつかの異なる検出可能な標識を組み合わせて用いて1つまたは複数の標的を検出することができる。
直接的に検出しうる検出可能な標識の例には、蛍光色素および放射性物質および金属粒子が挙げられる。これとは対照的に、間接的検出は、一次抗体の適用後に、1つまたは複数のさらなる抗体、すなわち、二次抗体の適用を必要とする。したがって、前記検出は、検出可能な一次抗体への二次抗体または結合剤の結合を検出することにより実施される。二次結合剤または二次抗体の添加を必要とする検出可能な一次結合剤または一次抗体の例には、酵素的検出可能な結合剤およびハプテン検出可能な結合剤または抗体が挙げられる。
一部の実施形態では、検出可能な標識は、第1の結合剤を含む核酸ポリマーとコンジュゲートしている(例えば、ISH、WISHまたはFISH工程において)。他の実施形態では、検出可能な標識は第1の結合剤を含む抗体とコンジュゲートしている(例えば、IHC工程において)。
本開示の方法において使用される抗体とコンジュゲートしうる検出可能な標識の例には、蛍光標識、酵素標識、放射性同位体、化学発光標識、電気化学発光標識、生物発光標識、ポリマー、ポリマー粒子、金属粒子、ハプテン、および色素が挙げられる。
蛍光標識の例には、5−(および6)−カルボキシフルオレセイン、5−または6−カルボキシフルオレセイン、6−(フルオレセイン)−5−(および6)−カルボキシアミドヘキサン酸、フルオレセインイソチオシアネート、ローダミン、テトラメチルローダミン、ならびにCy2、Cy3およびCy5などの色素、必要に応じて、AMCA、PerCPを含む置換クマリン、R−フィコエリトリン(RPE)およびアロフィコエリトリン(APC)を含むフィコビリタンパク質、Texas Red、Princeton Red、緑色蛍光タンパク質(GFP)およびこれらの類似体、ならびにR−フィコエリトリンまたはアロフィコエリトリンのコンジュゲート、被覆CdSeナノ微結晶のような半導体材料に基づく粒子などの無機蛍光標識が挙げられる。
ポリマー粒子標識の例には、ポリスチレン、PMMAまたはシリカのマイクロ粒子またはラテックス粒子が挙げられ、これらの粒子は蛍光色素、または色素、酵素もしくは基質を含有するポリマーミセルもしくはカプセルで包埋させることができる。
金属粒子標識の例には、銀染色により変換することができる、金粒子および被覆金粒子が挙げられる。ハプテンの例には、DNP、フルオレセインイソチオシアネート(FITC)、ビオチン、およびジゴキシゲニンが挙げられる。酵素標識の例には、西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)、アルカリホスファターゼ(ALPまたはAP)、β−ガラクトシダーゼ(GAL)、グルコース−6−リン酸デヒドロゲナーゼ、β−N−アセチルグルコサミニダーゼ(acetylglucosamimidase)、β−グルクロニダーゼ、インベルターゼ、キサンチンオキシダーゼ、ホタルルシフェラーゼおよびグルコースオキシダーゼ(GO)が挙げられる。西洋ワサビペルオキシダーゼに対する一般的に用いられる基質の例には、3,3’−ジアミノベンジジン(DAB)、ニッケル強化されたジアミノベンジジン、3−アミノ−9−エチルカルバゾール(AEC)、ベンジジンジヒドロクロリド(BDHC)、Hanker−Yates試薬(HYR)、Indophane blue(IB)、テトラメチルベンジジン(TMB)、4−クロロ−1−ナフトール(CN)、α−ナフトールピロニン(α−NP)、o−ジアニシジン(OD)、5−ブロモ−4−クロロ−3−インドリルホスフェート(BCIP)、ニトロブルーテトラゾリウム(NBT)、2−(p−ヨードフェニル)−3−p−ニトロフェニル−5−フェニルテトラゾリウムクロライド(INT)、テトラニトロブルーテトラゾリウム(TNBT)、5−ブロモ−4−クロロ−3−インドキシル−ベータ−D−ガラクトシド/フェロ−フェリシアン化物(BCIG/FF)が挙げられる。
アルカリホスファターゼに対する一般的に用いられる基質の例には、ナフトール−AS−B 1−ホスフェート/ファーストレッド(fast red) TR(NABP/FR)、ナフトール−AS−MX−ホスフェート/ファーストレッド TR(NAMP/FR)、ナフトール−AS−B1−ホスフェート/−ファーストレッド TR(NABP/FR)、ナフトール−AS−MX−ホスフェート/ファーストレッド TR(NAMP/FR)、ナフトール−AS−B1−ホスフェート/ニューフクシン(new fuschin)(NABP/NF)、ブロモクロロインドリルホスフェート/ニトロブルーテトラゾリウム(BCIP/NBT)、5−ブロモ−4−クロロ−3−インドリル−b−d−ガラクトピラノシド(BCIG)が挙げられる。
発光標識の例には、ルミノール、イソルミノール、アクリジニウムエステル、1,2−ジオキセタンおよびピリドピリダジンが挙げられる。電気化学発光標識の例には、ルテニウム誘導体が挙げられる。放射性標識の例には、ヨウ化物、コバルト、セレニウム、トリチウム、炭素、硫黄およびリンの放射性同位元素が挙げられる。
検出可能な標識は、本明細書に記載される抗体にまたは対象の生物学的マーカー、例えば、抗体、核酸プローブ、もしくはポリマーに特異的に結合する他の任意の分子に連結させることができる。さらに、当業者であれば、検出可能な標識は、第2、および/または第3、および/または第4、および/または第5の結合剤または抗体などにもコンジュゲートすることができることは十分に理解されるであろう。さらに、当業者であれば、対象の生物学的マーカーを特徴付けるのに用いられるそれぞれのさらなる結合剤または抗体は、シグナル増幅ステップとして働きうることを十分に理解されるであろう。前記生物学的マーカーは、例えば、検出可能な物質が例えば色素、コロイド金粒子、発光試薬である光学顕微鏡法、蛍光顕微鏡法、電子顕微鏡法を使用して視覚的に検出されうる。生物学的マーカーに結合している視覚的に検出可能な物質は、分光光度計を用いても検出しうる。検出可能な物質が放射性同位元素である場合、検出は、視覚的にオートラジオグラフィーによっても、または非視覚的にシンチレーション計数器を用いても可能である。例えば、Larsson、1988年、Immunocytochemistry: Theory and Practice、(CRC Press、Boca Raton、Fla.); Methods in Molecular Biology、80巻 1998年、John D. Pound(編)(Humana Press、Totowa、N.J.)を参照されたい。
ある特定の実施形態は、試料においてFZD10またはFZD10を発現している細胞もしくは組織を検出するためのキットであって、本明細書に記載される少なくとも1つの抗体、ポリペプチド、ポリヌクレオチド、ベクターまたは宿主細胞を含有するキットを提供する。ある特定の実施形態では、キットは、バッファ、酵素、標識、基質、本発明の抗体が結合されているビーズまたは他の表面などならびに使用のための指示を含んでいてもよい。
本明細書の全体において、文脈により別段に要求されない限り、「〜を含む(comprise)」という語、または「〜を含む(comprises)」もしくは「〜を含む(comprising)」などの変化形は、言明された要素もしくは整数または要素もしくは整数の群の包含は含意するが、他の任意の要素もしくは整数または要素もしくは整数の群の除外は含意しないと理解される。
文脈により別段であることが明確に規定されない限り、本明細書で用いられる単数形の「ある(a)」、「ある(an)」、および「その」は、複数態を包含する。したがって、例えば、「ある細胞」への言及は、単一の細胞の他、2つ以上の細胞も包含し、「ある薬剤」への言及は、1つの薬剤の他、2つの以上の薬剤も包含するなどである。
別段に明示的に言明されない限り、本明細書に記載される各実施形態は、変更すべき部分を変更して、他の全ての実施形態にも適用されるものとする。
組換えDNA、オリゴヌクレオチド合成、ならびに組織培養および形質転換(例えば、電気穿孔、リポフェクション)のための標準的な技法を用いることができる。酵素反応および精製技法は、製造業者の仕様に従い実施することもでき、当技術分野において一般的に実現される通りに実施することもでき、本明細書で記載される通りに実施することもできる。これらの技法および手順ならびに関連する技法および手順は一般に、当技術分野において周知の従来の方法に従い、本明細書全体で引用されて論じられる、微生物学、分子生物学、生化学、分子遺伝学、細胞生物学、ウイルス学および免疫学の技法における、多様な一般的参考文献およびより特定の参考文献において記載される通りに実施することができる。例えば、Sambrookら、MOLECULAR CLONING: A LABORATORY MANUAL、3版、2001年、Cold Spring Harbor Laboratory Press、Cold Spring Harbor、N.Y.;Current Protocols in Molecular Biology(John Wiley and Sons,2008年7月更新); Short Protocols in Molecular Biology: A Compendium of Methods from Current Protocols in Molecular Biology, Greene Pub. Associates and Wiley−Interscience; Glover, DNA Cloning: A Practical Approach, vol. I & II (IRL Press, Oxford Univ. Press USA, 1985);Current Protocols in Immunology(John E. Coligan、Ada M. Kruisbeek、David H. Margulies、Ethan M. Shevach、Warren Strober編、2001年、John Wiley & Sons、NY、NY);Real−Time PCR: Current Technology and Applications,Julie Logan, Kirstin EdwardsおよびNick Saunders編, 2009, Caister Academic Press, Norfolk, UK; Anand, Techniques for the Analysis of Complex Genomes, (Academic Press, New York, 1992); Guthrie and Fink, Guide to Yeast Genetics and Molecular Biology (Academic Press, New York, 1991); Oligonucleotide Synthesis (N. Gait編, 1984); Nucleic Acid Hybridization (B. HamesおよびS. Higgins編, 1985); Transcription and Translation (B. HamesおよびS. Higgins編,1984); Animal Cell Culture (R. Freshney編,1986); Perbal, A Practical Guide to Molecular Cloning (1984); Next−Generation Genome Sequencing (Janitz, 2008 Wiley−VCH); PCR Protocols (Methods in Molecular Biology) (Park, Ed.,3版, 2010 Humana Press); Immobilized Cells And Enzymes(IRL Press, 1986); the treatise,Methods In Enzymology(Academic Press, Inc., N.Y.);Gene Transfer Vectors For Mammalian Cells(J. H. MillerおよびM. P. Calos編,1987, Cold Spring Harbor Laboratory);Harlow and Lane,Antibodies, (Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, N.Y., 1998); Immunochemical Methods In Cell And Molecular Biology(MayerおよびWalker編,Academic Press, London, 1987);Handbook Of Experimental Immunology, Volumes I−IV (D. M. WeirおよびCC Blackwell編,1986); Riott,Essential Immunology,6版(Blackwell Scientific Publications, Oxford, 1988); Embryonic Stem Cells: Methods and Protocols (Methods in Molecular Biology) (Kurstad Turksen編,2002); Embryonic Stem Cell Protocols: Volume I: Isolation and Characterization (Methods in Molecular Biology) (Kurstad Turksen編,2006); Embryonic Stem Cell Protocols: Volume II: Differentiation Models (Methods in Molecular Biology) (Kurstad Turksen編,2006); Human Embryonic Stem Cell Protocols (Methods in Molecular Biology) (Kursad Turksen編,2006); Mesenchymal Stem Cells: Methods and Protocols (Methods in Molecular Biology) (Darwin J. Prockop, Donald G. Phinney, and Bruce A. Bunnell編,2008); Hematopoietic Stem Cell Protocols (Methods in Molecular Medicine)(Christopher A. Klug, and Craig T. Jordan編,2001); Hematopoietic Stem Cell Protocols (Methods in Molecular Biology)(Kevin D. Bunting編,2008) Neural Stem Cells: Methods and Protocols (Methods in Molecular Biology)(Leslie P. Weiner編,2008)を参照されたい。
特定の定義を提供しない限り、本明細書で記載される分子生物学、分析化学、有機合成化学、ならびに創薬化学および製薬化学との関連で用いられる用語法ならびにこれらの実験室における手順および技法は、周知の手順および技法であり、当技術分野において一般的に用いられている。標準的な技法は、組換え技術、分子生物学法、微生物学法、化学合成、化学的分析、医薬の調製、製剤化、および送達、ならびに患者の処置に用いることができる。
文脈により別段に要求されない限り、本明細書および特許請求の範囲全体で、「含む(comprise)」という単語ならびに「含む(comprises)」および「含む(comprising)」などのその変化形は、開放された包括的意味で、すなわち、「包含するが限定されない」として解釈されるべきである。「からなる(consisting of)」は、「からなる(consisting of)」という語句に続くものは何でも包含しかつ典型的にはこれに限定されることを意味する。「基本的にからなる(consisting essentially of)」は、前記語句の後に列挙された任意の要素をも包含し、前記列挙されている要素について本開示において明記されている活性または作用に干渉しないしそれに寄与もしない他の要素に限定されることを意味する。したがって、「基本的にからなる(consisting essentially of)」という語句は、前記列挙された要素が必要とされているまたは必須であること、しかし他のどんな要素も必要とされず、前記要素が前記列挙されている要素の活性または作用に影響を及ぼすか否かに応じて、存在する場合もあれば存在しない場合もあることを示している。
本明細書および添付されている特許請求の範囲では、単数形の「1つ(a)」、「1つ(an)」および「その(the)」は、文脈により別段に明確に指示されない限り、複数のリファレンスを包含する。本明細書で用いられている通り、特定の実施形態では、「約(about)」または「およそ(approximately)」という用語は、数値に先行している場合、前記値プラスまたはマイナス5%、6%、7%、8%もしくは9%の範囲を示している。他の実施形態では、「約(about)」または「およそ(approximately)」という用語は、数値に先行している場合、前記値プラスまたはマイナス10%、11%、12%、13%もしくは14%の範囲を示している。さらに他の実施形態では、「約(about)」または「およそ(approximately)」という用語は、数値に先行している場合、前記値プラスまたはマイナス15%、16%、17%、18%、19%もしくは20%の範囲を示している。
「一実施形態(one embodiment)」または「実施形態(an embodiment)」または「態様(an aspect)」への本明細書全体を通しての言及は、前記実施形態に関連して記載される特定の特長、構造または特徴は、本発明の少なくとも1つの実施形態に包含されていることを意味する。したがって、本明細書全体を通して様々な場所での「一実施形態では(in one embodiment)」または「実施形態では(in an embodiment)」という語句の出現は、必ずしも全てが同じ実施形態を指しているわけではない。さらに、前記特定の特長、構造または特徴は、1つまたは複数の実施形態において、任意の適切な方法で組み合わせてもよい。
(実施例1)
ex vivoにおける多様化系を用いるFZD10特異的抗体の生成
DT40ニワトリB細胞リンパ腫系列は、ex vivoにおける抗体進化の有望な出発点であることが示されている(Cumbers, S.J.ら、Nat Biotechnol、20巻、1129〜1134頁(2002年);Seo, H.ら、Nat Biotechnol、23巻、731〜735頁(2005年))。DT40細胞は、培養物中で頑健に増殖し、倍加時間が8〜10時間であり(ヒトB細胞系の20〜24時間と比較して)、極めて効率的な相同遺伝子ターゲティングを支援する(Buerstedde, J.M.ら、Embo J、9巻、921〜927頁(1990年))。DT40細胞は、それぞれ、鋳型による変異および鋳型によらない変異を創出する、多様化の2つのはっきり異なる生理学的経路である、遺伝子転換および体細胞超変異を利用しうるので、膨大なV領域配列の潜在的多様性を駆使する(Maizels, N.、Annu Rev Genet、39巻、23〜46頁(2005年))。しかし実のところ、抗体進化のためのDT40細胞の有用性は、多様化が(他の形質転換されたB細胞系における場合と同様)生理学的速度の1%未満で生じるために限定されている。多様化は、相同組換え経路を無効化することにより数倍加速化しうる(Cumbers, S.J.ら、前出)が、このようにして操作された細胞は、効率的な遺伝子ターゲティングを実行する能力を失っている。多様化はまた、ヒストン脱アセチル化酵素阻害剤であるトリコスタチンAで細胞を処置することによっても加速化しうる(Seoら、前出)が、結果として得られる変異は、もっぱら鋳型による変異であり、潜在的な多様性は制限され、必要とされるアフィニティーまたは特異性を有する抗体を産生させることはできない。
この実施例では、DT40細胞を操作して、さらなる遺伝子改変能、または遺伝子転換および体細胞超変異の両方が変異誘発に寄与する可能性を犠牲にすることなしに、高度に多様な初代レパートリーを作製し、その細胞内のIg遺伝子の多様化速度を加速化した。これは、Ig遺伝子の多様化を、強力なE.coliラクトースオペレーター/リプレッサー制御ネットワークの制御下に置くことにより実現された。ここで実証される通り、これらの操作された細胞は、多様化を加速するだけではなく、主要なレパートリーおよびアフィニティー/機能的抗体成熟から逸脱する変異を制御する多様化経路の実験的制御をも可能にした。
強力なE.coliラクトースオペレーターが約100重合化した反復配列からなる多量体(PolyLacO)を、相同遺伝子ターゲティングにより、再配列して発現させたIgλ遺伝子およびIgH遺伝子の上流に挿入した。次いで、ラクトースリプレッサーのオペレーターDNAに対する高アフィニティー(kD=10−14M)を利用して、ラクトースリプレッサータンパク質(LacI)に融合させた制御因子を、LacO制御エレメントへとテザーして、多様化を制御することができる。PolyLacOがIgλだけに組み込まれたDT40 PolyLacO−λR細胞は、任意の操作前の親DT40細胞と比べて、Ig遺伝子の多様化速度の5倍の増大を呈示した(Cummings, W.J.ら、PLoS Biol、5巻、e246頁(2007年))。多様化は、Igλ遺伝子およびIgH遺伝子の両方を標的としたPolyLacOを保有するように操作された細胞(「DTLacO」)においてさらに上昇することが予測された。これは、LacI−HP1制御因子によるトランスフェクションの3週間後にsIgM−細胞の割合をアッセイすることにより操作された候補系列について確認され、これにより、多様化速度が、親DT40 PolyLacO−λR LacI−HP1系列に特徴的な2.8%と比べて2.5〜9.2倍上昇したことが示された。加速化は、個別のトランスフェクタントの変動アッセイにより、1つの系列について再確認された。sIgM−細胞の百分率は、2.5%〜52.5%の範囲であり、DTLacO細胞におけるメジアンは13.0%であった。このメジアンは、DT40 PolyLacO−λR LacI−HP1トランスフェクタントにおける場合(2.8%)より4.7倍高く、DT40親系列(Cummings, W.J.ら、PLoS Biol、5巻、e246頁(2007年))に匹敵する対照細胞(DT40 PolyLacO−λR GFP−LacI)における場合(0.6%)より21.7倍高い。この変動アッセイでは累積sIgM喪失改変体を測定する(Luria, S.E.およびDelbrueck, M.、Genetics、28巻、492〜511頁(1943年))ために予測される通り、一部の個別のクローンは、メジアンと大幅に異なる多様化速度を呈示した。したがって、重鎖遺伝子および軽鎖遺伝子の両方をPolyLacOエレメントの標的とすることにより、多様化は、DT40親細胞系と比べて21.7倍に加速化された。
細胞表面受容体FZD10は、WNT7aおよびWNT7bに対するGタンパク質共役受容体である。マウスのFZD10ポリペプチドとヒトFZD10ポリペプチドの間には93%のアミノ酸配列同一性が存在する。正常組織では、このタンパク質の発現は生体臓器においては非常に低いかまたは存在せず、このタンパク質は胃および結腸の表在粘膜、腎臓の近位尿細管および遠位尿細管、子宮内膜間質ならびに胎盤では低レベルで存在する。このタンパク質は、滑膜肉腫(92%; Nagayamaら、2002年 Cancer Res. 62巻:5859頁)、胃癌(40%; Kirikoshiら、2001年 Int. J. Oncol. 19巻:767頁)および結腸直腸癌(25%; Nagayamaら、2009年 Cancer Sci. 100巻:405頁)などの種々のがんにおいて発現されていることが明らかにされてきた。FZD10発現の特異的siRNAノックダウンにより、結果としてin vitroで滑膜肉腫細胞成長が阻害され、ポリクローナル抗FZD10抗体はin vitroでFZD10過剰発現滑膜肉腫細胞に対してADCCを媒介し、in vivoでは滑膜肉腫異種移植片腫瘍成長を阻害することが示された(Nagayamaら、2005年 Oncogene 24巻:6201頁)。放射標識された抗FZD10モノクローナル抗体は抗原担持腫瘍細胞により内部に取り入れられin vivoにおいて滑膜肉腫異種移植片腫瘍成長を劇的に抑制した(Fukukawaら、2008年 Cancer Sci. 99巻:437頁)。
重鎖遺伝子および軽鎖遺伝子の両方においてPolyLacOを保有する、操作されたDTLacO系は、様々なLacl制御融合タンパク質でトランスフェクトされると、重鎖および軽鎖V領域を急速に多様化する能力を有した。次に、この多様なDTLacO集団はex vivoでの抗体発見のための出発点として用いられた。抗FZD10抗体選択および成熟戦略を示す概略図は図1に示されている。ヒトIgG Fc(R&D Systems)に融合されたFZD10の細胞外N末端ドメインを使用して、FZD10特異的結合ついてDTLacO細胞を調べた。
この実施例では、以下の方法を用いた。
細胞の培養および遺伝子ターゲティング:別段に示さない限り、細胞系は、ATCCから購入した。DT40に由来する細胞系は、既に記載した通りに維持およびトランスフェクトし(Yabuki, M.、Fujii, M.M.、およびMaizels, N.、Nat Immunol、6巻、730〜736頁(2005年))、他の細胞系は、元の供給源により指定される通りに維持およびトランスフェクトした。PolyLacO制御エレメント(Robinett, C.C.ら、J Cell Biol、135巻、1685〜1700頁(1996年))は、ラクトースオペレーター(LacO)の約100の反復配列からなり、再配列して発現させた軽鎖対立遺伝子においてPolyLacOを保有するようにあらかじめ操作されたDT40 PolyLacO−λR細胞の、再配列して発現させた重鎖対立遺伝子を標的とした(Cummings, W.J.ら、PLoS Biol、5巻、e246頁(2007年);Yabuki, M.、Ordinario, E.C.、Cummings, W.J.、Fujii, M.M.、およびMaizels, N.、J Immunol、182巻、408〜415頁(2009年);Cummings, W.J.、Bednarski, D.W.、およびMaizels, N.、PLoS ONE、3巻、e4075頁(2008年))。遺伝子ターゲティングは、ターゲティング構築物であるpPolyLacO−ΨVHを用いて記載される通りに(Yabukiら、前出)実行した。この構築物を生成させるため、ΨVHアレイに由来する4kbの断片をDT40のゲノムDNAから増幅し、pSV40/Zeo2ベクター(Invitrogen)のBglII−BamHI部位へとクローニングし、PolyLacOおよびヒスチジノール耐性マーカーの断片をΨVH断片へと挿入した。構築物は、制限解析、PCRおよび部分的配列決定により検証し、反復配列の安定性を維持するために、組換え欠損E.coli株であるStbl2(Invitrogen)において増殖させた。DT40 PolyLacO−λR細胞のトランスフェクション後、PCRおよびサザンブロット法により安定なトランスフェクタントを選択およびスクリーニングした。Creリコンビナーゼの一過性発現によりloxPに挟まれた選択マーカーを欠失させ、LacI−HP1を安定的にトランスフェクトした細胞において加速化される多様化について調べた(Cummingsら、2007年、前出)。LacI−HP1またはE47−LacIを安定的に発現させるDTLacO細胞(Yabukiら、前出)を、抗原特異的系統の選択に用いた。
抗原および抗原結合についての選択:初期選択は、多様化DTLacO集団を、抗原と複合体化させたビーズに結合させることにより実施し、その後、蛍光標識した可溶性抗原を用いるFACSにより選択した(Cumbersら、前出;およびSeoら、前出)。FZD10を認識した細胞を選択するため、抗原は、DynalプロテインG磁気ビーズに結合されるかまたはPECy5標識された抗ヒトIgG(Fc)で検出される、組換えヒトFZD10−Fc融合タンパク質とした。
結合アッセイ、アフィニティーアッセイ、および機能性アッセイ:組換え抗体は、PCRで増幅したV領域を、293F細胞におけるヒトIgG1の発現を支援するベクターへとクローニングすることにより生成させた(Cummingsら、2007年、前出)。飽和結合反応速度は、FZD10特異的DTLacO細胞を、多様な濃度の蛍光標識した可溶性抗原で染色することにより、またはFZD10でトランスフェクトした細胞または内因的にFZD10を発現させるがん細胞系を、多様な濃度の組換えキメラ抗FZD10 mAbで染色することにより決定した。細胞表面におけるFZD10結合をアッセイするため、細胞を、全て3pM〜800nMの濃度の、キメラmAbクローンであるB9A5(親)、B9l32.2およびB9L9.3(子孫)または二次抗体単独で染色し、免疫細胞蛍光測定法(immunocytofluorimetry)により解析した。
図1に示される抗体発見概略図では、親クローンのアフィニティーよりも大きなアフィニティーを有する多様化されたDTLacOクローンが同定された。所定のどのクローンでも上昇した表面IgMは、より高いアフィニティー結合を暗示することにより誤らせ得ることを念頭に置いて、親クローンよりも大きなアフィニティーを有するクローンを同定する戦略は、標識標的と抗IgMの二重染色を行い、出発親DTLacOと比べて高い標的染色を有するクローンを選択することであり、より高い表面IgM染色を有するクローンは避けられた。この選択戦略は図2に示されている。
DTLacOスクリーニングおよび選択戦略により、親クローンであるB9A5、ならびに2つの高アフィニティー結合後代クローン、B9L32.2およびB9L9.3が同定された。両方の後代クローンにより、FZD10+滑膜肉腫細胞系であるSYO−1へのより高いアフィニティー結合が明らかにされた。SYO−1細胞に結合するB9L32.2およびB9L9.3のKDは、それぞれ40nMおよび0.22nmであった(図3を参照されたい)。
B9A5、B9L32.2およびB9L9.3クローンは配列決定され、クローニングされて、さらなる機能的特徴付けのために使用されるキメラ抗体を生成させた。B9A5の重鎖および軽鎖のアミノ酸配列は、それぞれ配列番号1および配列番号2に与えられている。B9L9.3の重鎖および軽鎖のアミノ酸配列は、それぞれ配列番号1および配列番号3に与えられている。B9L32.2の重鎖および軽鎖のアミノ酸配列は、それぞれ配列番号1および配列番号4に与えられている。
図4におけるB9親クローンおよび後代クローンの重鎖配列および軽鎖配列のアライメントにより、3つの抗体全てが同じ重鎖配列を有しているが、異なる軽鎖CDR1領域配列を有していることが示された。
(実施例2)
抗FZD10mAb−毒素コンジュゲートはFZD10を発現している細胞には致死性である
リボソーム不活性化タンパク質であるサポリン(分子量30kDa)は、内部移行される抗体により送達されると、腫瘍細胞には毒性である(例えば、Flavell、D.J.ら British J Cancer 83巻、1755〜1761頁(2000年); Yip、W.L.ら Mol Pharmaceutics 4巻、241〜251頁(2007年); Daniels、T.R.ら Mol Cancer Ther 6巻、2995〜3008頁(2007年); Kuroda、Kら Prostate 70巻、1286〜1294頁(2010年)を参照されたい)。ストレプトアビジンとサポリンの化学的コンジュゲート(ストレプトアビジン−ZAP)は、Advanced Targeting Systems(San Diego、CA)から購入された。B9L9.3−サポリンコンジュゲートは以下の手順により生成された:B9L9.3は、EZ−Link Sulfo−NHS−LC−ビオチン化キット(Thermo Fisher Scientific、Rockford、IL)を用い、製造業者の指示に従ってビオチン化された。ストレプトアビジン−ZAPは、室温で30分間、前記成分を1対1のモル比でインキュベートすることによりビオチン化B9L9.3に連結された。陰性のアイソタイプ対照として、ヒトVEGFR2に特異的なキメラ抗体は同様にストレプトアビジン−ZAPとコンジュゲートされ、下に記載されるアッセイに適用された。
B9L9.3−サポリンの、標的にされる毒性を試験するために、前記コンジュゲートは293−FZD10発現細胞に様々な濃度で添加され、細胞生存率が決定された。略述すると、細胞は96ウェル組織培養プレートのそれぞれのウェルに播種された。一晩のインキュベーション後、細胞は培養培地で2度洗浄された。それに続いて、培養培地における様々な濃度のB9L9.3−サポリンまたはアイソタイプ対照は3通りのウェルに添加され、プレートは37℃、5%CO2で72時間インキュベートされた。細胞生存の定量的評価では、MultiTox Gloキット(Promega)を用いて相対的生存率がアッセイされた。図5に示される通りに、B9L9.3−サポリン結合体化抗体はFZD10を発現している細胞を、0.8nMのIC50で効果的に死滅させた。
(実施例3)
抗FZD10mAbは腫瘍細胞をADCCにより死滅させる
さらなる実験により、B9L9.3 FZD10特異的抗体がADCCを介してがん細胞を死滅させることが示された。2つの滑膜肉腫細胞系が試験された。SYO−1細胞はAkira Kawai博士(National Cancer Center、Tokyo、Japan)より寄贈された。B9L9.3を有する細胞を染色しフロー細胞蛍光光度法により検出することによって決定される場合、ATCCから購入されたSW982細胞集団の小サブセット(HTB−93)はFZD10を発現した。FZD10+集団はFACSにより単離され、in vitroで増殖され、それに続く実験で用いられた。ADCCをアッセイするため、図6に記されるSYO−1細胞およびFZD10+ SW982細胞は、指示された濃度のmAb B9L9.3抗体またはアイソタイプ対照抗体と一緒にインキュベートされ、続いて全末梢血単核球と一緒にインキュベートされ(エフェクター対標的比 15対1)、がん細胞からのBATDA(ビス(アセトキシメチル)2,2’:6’2”−ターピリジン(terpyridine)−6,6”−ジカルボキシレート)放出(Delfia EuTDA;Perkin Elmer)により特異的溶解百分率が決定された。前記抗体のFc領域における2つのアミノ酸置換(Lazarら、2006年. PNAS 103巻:4005頁を参照されたい)または5つのアミノ酸置換(Stavenhagenら、2007年、Cancer Res. 67巻:8882頁を参照されたい)のいずれかを有する前記抗体の2つの改変体がADCCを増強することが見出された。
(実施例4)
抗FZD10mAb B9L9.3はカノニカルWnt経路シグナル伝達を阻害する
カノニカルWnt経路シグナル伝達に対するB9L9.3 抗FZD10mAbの効果を決定する実験が行われた(例えば、Wnt経路シグナル伝達の概説については、Katoh、2007年 Stem Cell Rev. 3巻:30頁を参照されたい)。TOP/FOPflashルシフェラーゼシステムを用いる実験戦略は図7Aに概要が述べられている。FZD10を安定的に発現している293 FreeStyle細胞(Invitrogen)は、FZD10リガンド、WNT7b、コレセプターLRP5、およびTOPflashまたはFOPflash TCFレポータープラスミド(Millipore)のどちらかで一過性にトランスフェクトされた。次に、組換えmAbが最終濃度20μg/mLまで添加された。37℃で24時間後、ルシフェラーゼ活性が、Bright−Glo Luciferase Assay System(Promega)を用いて3通りにアッセイされた。図7Bに示される通りに、mAb B9L9.3はカノニカルWnt経路シグナル伝達を効果的に遮断した。
(実施例5)
抗FZD10mAb B9L9.3のヒト化
B9L9.3キメラ抗体を、最初はマウス抗体のヒト化について記載され(Queen Cら、Proc Natl Acad Sci USA.(1989年)12月、86巻(24号):10029〜33頁)、近年ではTsurushitaおよびVasquez(2004年)ならびにAlmagroおよびFransson(2008年)(Tsurushita Nら、J Immunol Methods.、2004年12月、295巻(1〜2号):9〜19頁;Almagro JCおよびFransson、J. Front Biosci.(2008年)、13巻:1619〜33頁)により総説されているCDR移植手法を用いてヒト化した。
コンセンサスのヒトフレームワーク配列を、B9L9.3のVHおよびVLの両方について選んだが、これらは、いずれの場合においても、対応するB9L9.3の可変領域配列に対する同一性レベルが最高の亜群コンセンサス配列であった。B9L9.3のVHをヒト化するため、ヒト亜群III VH配列のコンセンサス配列(Kabat EAら(1991年))、Sequences of Proteins of Immunological Interest、5版、NIH Publication No.91〜3242)を、アクセプターフレームワーク配列として選んだ。B9L9.3のVLをヒト化するため、ヒト亜群IIIラムダ可変配列のコンセンサス配列(Kabatら、前出)を、アクセプターフレームワークとして選んだ。しかし、CDRのアクセプターフレームワークへの単純な移植は通常、リガンドに対するアフィニティーの低減を結果としてもたらし、フレームワーク配列内の1つまたは複数の残基を、元の抗体内のその位置において見出されるアミノ酸で置き換えることの所望性が示唆される。特に、抗原に接触するか、または近傍のCDR(「ベニヤ帯域」の残基)のコンフォメーションを変化させる可能性があるフレームワーク配列内の残基は、元の残基に戻してリガンドに対する完全なアフィニティーを保持することがしばしば有益でありうる(Foote, JおよびWinter, G.、J Mol Biol.(1992年)、224巻:487〜99頁)。したがって、B9L9.3のベニヤ帯域の残基を含む全ての残基を、元のB9L9.3抗体中に見出される残基と同一にした。したがって、ヒト化VHの49、67および94位の各々におけるヒト残基を、B9L9.3中に見出される残基へと変更しながらまた、ヒト化VLの46、47、66、69、および71位でも、ヒトからニワトリへの同様の置換えを行った(Kabatによる番号付けシステム;Kabatら、前出)。
ニワトリのラムダ軽鎖は、ヒトラムダ軽鎖の1位および2位において見出される2つのアミノ末端残基(Kabatによる番号付け)を逸失している。さらに、哺乳動物抗体における軽鎖のN末端は、L−CDR1に近接する。したがって、ヒト化VLのN末端におけるさらなる2つの残基が、立体障害を介して抗原の結合に干渉しうることが可能であると考えられた。したがって、これら2つのアミノ酸はヒト化軽鎖において欠失していた。表2に示される通り、その結果得られたヒト化抗体は元のキメラ抗体B9L9.3のアフィニティーに非常に近いアフィニティーを有していた(図9も参照されたい)。
カノニカルWnt経路シグナル伝達を阻害するヒト化B9L9.3 mAbの能力は、キメラB9L9.3 mAbの能力と比較された。実験方法は、Bright−Glo Luciferase Assay SystemではなくDual−Glo Luciferase Assay System(Promega)を用いてルシフェラーゼ活性を測定したこと以外は、実施例4に記載される通りであった。図10に示される通り、ヒト化mAbは、カノニカルWnt経路を遮断する点ではそのキメラ前駆体と同程度の効果であった。
B9L9.3のヒト化重鎖のポリヌクレオチド配列(リーダー配列を含む)は、配列番号32に与えられており、配列番号31に与えられる成熟アミノ酸配列をコードする。B9L9.3のヒト化軽鎖をコードするポリヌクレオチド配列は、配列番号30に与えられており(リーダー配列を含む)、配列番号29に与えられる成熟アミノ酸配列をコードする。ヒト化B9L9.3軽鎖のフレームワーク配列は94%ヒトである。ヒト化B9L9.3重鎖のフレームワーク配列は96%ヒトである(図8を参照されたい)。
要約すれば、実施例1〜5に記載される実験からの結果により、抗FZD10 mAbがDTLacO細胞において抗体アフィニティーおよび機能的成熟の劇的有効性を例証していることが実証された。前記工程により、細胞結合なしから2か月で0.22nMまでのアフィニティー成熟、治療抗体を生成するための他の公知の方法に勝る著しい改善;滑膜肉腫細胞系であるSYO−1およびSW−982に結合するB9L9.3 mAbが可能になった。B9L9.3 mAbはADCCによりおよび抗体−毒素コンジュゲートとして標的細胞を死滅させ、mAb B9L9.3はカノニカルWnt経路シグナル伝達も遮断した。さらなる実験により、B9L32.2 mAbが滑膜肉腫細胞系であるSYO−1およびSW−982にも結合することが示された。したがって、これらの抗体はFZD10の異常発現と関連する疾患の処置のための治療的有用性を示した。
(実施例6)
がんの抗FZD10媒介阻害
本明細書に記載される抗FZD10抗体は、FZD10過剰発現細胞の生存、複製、分化、および脱分化(上皮細胞−間葉細胞移行)のうちの1つまたは複数を阻害する、かつ単離されたFZD10過剰発現細胞による腫瘍増殖を阻害するその能力について、確立された方法に従って試験される。例えば、Parkら、2009年 Molec. Therap. 17巻:219頁; Curtinら、2010年Oncotarget 1巻:563頁; De Almeidaら、2007年Canc. Res. 67巻:5371頁; Ettenbergら、2010年Proc. Nat. Acad. Sci. USA 107巻:15473頁; Fukukawaら、2009年Oncogene 28巻:1110頁; Fukukawaら、2008年Canc. Sci. 99巻:432頁; Heら、2004年Neoplasia 6巻:7頁; Huら、2009年Canc. Res. 69巻:6951頁; Nagayamaら、2009年Canc. Sci. 100巻:405頁; Hagayamaら、2005年Oncogene 24巻:6201頁; Nagayamaら、2002年Canc. Res. 62巻:5859頁; Podeら、2011年Oncogene 30巻:1664頁; Youら、2004年Canc. Res. 64巻:56385頁を参照されたい。
異種移植片モデルにおけるFZD10+細胞腫瘍増殖および細胞複製の阻害:典型的には、および用いられている特定のFZD10過剰発現細胞に応じて、約102から107のFZD10+細胞の異種移植片が免疫無防備状態の養子宿主に導入され、抗FZD10抗体療法の効果が決定される。
一例では、5×106のSYO−1ヒト滑膜肉腫FZD10+細胞(Fukukawa 2008年; Hanaokaら、2009年 Ann. Nucl. Med. 23巻:479頁; Kawaiら、2004年Canc. Lett. 204巻:105頁)またはヒトFZD10+奇形腫細胞(PA−1、NTera−2、Tera−2、De Almeidaら、2007年Canc. Res. 67巻:5371頁; Snowら、2009年 BMC Canc. 9巻:383頁)またはFZD10+非小細胞肺癌細胞(NSCLC、Guggerら、2008年Dis. Markers 24巻:41頁)またはFZD10+結腸直腸がん細胞(SW480、Nagayamaら、2009年Cancer Sci. 100巻:405頁)またはFZD10+胃がん細胞(TMK1、MKN74、Kirikoshiら, 2001年Int. J. Oncol. 19巻:767頁)は、皮下注射により免疫不全マウス(Balb/c nu/nu)に移植され、腫瘍直径は測量用キャリパーにより毎日測定され、測定値を用いて腫瘍容積を計算する(Nagayamaら、2005年 Oncogene 24巻:6201頁)。
確立した腫瘍(0.016〜1.3cm3の容積)を有する動物は、抗FZD10抗体(15mg/kg)、90Y−結合体化抗FZD10抗体、または無関係な結合特異性を有するアイソタイプがマッチした対照抗体(抗CD20)の単回静脈内注射を受ける処置群に無作為に割り当てられる。動物の他の実験群は、非標識抗FZD10抗体および非標識抗LRP6抗体を受ける(Ettenbergら、2010年 Proc. Nat. Acad. Sci. USA 107巻:15473頁)。腫瘍容積に対する効果は、60日間の腫瘍直径の毎日測定により決定される。
FZD10+細胞生存の阻害。FZD10+細胞においてアポトーシスを誘導する本明細書に記載される抗FZD10抗体の能力は、基本的にはHeら(2004年 Neoplasia 6巻:7頁)、Pode-Shakkedら(2011年 Oncogene 30巻:1664頁)およびYouら(2004年 Canc. Res. 64巻:5385頁)により記載される手順を用いて試験される。試験細胞には、SYO−1ヒト滑膜肉腫FZD10+細胞(Fukukawa 2008年; Hanaokaら、2009年 Ann. Nucl. Med. 23巻:479頁; Kawaiら、2004年Canc. Lett. 204巻:105頁)、ヒトFZD10+奇形腫細胞(PA−1、NTera−2、Tera−2、De Almeidaら、2007年Canc. Res. 67巻:5371頁; Snowら、2009年 BMC Canc. 9巻:383頁)、FZD10+非小細胞肺癌細胞(NSCLC、Guggerら、2008年Dis. Markers 24巻:41頁)、FZD10+結腸直腸がん細胞(SW480、Nagayamaら、2009年Cancer Sci. 100巻:405頁)およびFZD10+胃がん細胞(TMK1、MKN74、Kirikoshiら、2001年Int. J. Oncol. 19巻:767頁)が挙げられる。試験条件には、FZD10+細胞を抗FZD10抗体単独にまたは他のWntリガンド−受容体相互作用の阻害剤と組み合わせて接触させることが挙げられ(例えば、抗LRP6;Ettenbergら、2010年);対照条件には、前記細胞を無関係な特異性のアイソタイプがマッチした対照抗体または抗体なしで接触させることが挙げられる。
脱分化/上皮−間葉移行:転写活性化因子であるベータカテニンは、上皮−間葉移行の脱分化プロセスを受けている腫瘍細胞の核内に蓄積する(EMT; Hlubekら、2007年 Front. Biosci. 12巻:458頁)。FZD10+細胞は本明細書に記載される抗FZD10抗体の非存在下または存在下でWntリガンドであるWNT7aおよび/またはWNT7bに曝露され、細胞核へのベータカテニンの移動は多数の公知の方法のいずれによっても特徴付けられる(例えば、Uematsuら、2003年 Canc. Res. 63巻:4547頁による転写因子Tcfの活性化;またはc−myc、サイクリンDもしくはサバイビン転写の活性化、例えば、Curtinら、2010年 Oncotarget 1巻:563頁を参照されたい)。
(実施例7)
前駆体細胞成長および分化に対する抗FZD10抗体媒介効果
この実施例は、当技術分野で認められたin vitroおよびin vivoモデルを含めた、胚性幹細胞および他の組織前駆体細胞において細胞成長および/または分化イベントを変化させる(例えば、統計学的に有意な方法で増大させるまたは減少させる)ための本明細書に記載される抗FZD10抗体の使用を記載する。組織再生および修復のためおよび組織または臓器移植のための方法を含めて、これらのおよび関連する方法は、ヒト組織成長および分化を制御することが望ましい状況において用途を見出す。
手短な背景として、FZD10は、ヒトを含む種々の脊椎動物の胚生期に複数の発生中の組織において発現されるが、FZD10の発現は、出生後の生物における正常組織では高度に限定される。例えば、胎仔マウスでは、Fzd10は肢芽、ミュラー管、および神経管において発現される(Nunnallyら、2004年 Dev. Genes Evol. 214巻:144頁; Kempら、2007年 Dev. Dynam. 236巻:2011頁)。胎生期7日目、Fzd10は、原腸胚の原始線条において発現されるが、移動中の中胚葉では発現されておらず、中胚葉誘導における役割を示唆している(Kempら、2007年)。マウスが成熟するにしたがって、発現は、出生後日数20日から成体期まで、Fzd10は内包においてのみ見出されるまでは、極めて特定の神経構造に制限される(Yanら、2009年 Gene Expression Patterns 9巻:173頁)。子宮では、Fzd10は子宮内膜発生に関与しているようである(Hayashiら、2011年 Biol. Reprod. 84巻:308頁)。
FZD10の発生上の役割は非哺乳類脊椎動物においても観察され、この受容体の進化的保存に重要性を添えている。Fzd10は、胚性ニワトリ肢芽間葉において発現される(Kawakamiら、2000年 Develop. Growth Differ. 42巻:561頁)。加えて、Fzd10は、発生中のトリの様々な頭蓋顔面構造において他のいくつかのFzdとともに発現される(Geetha-Loganathanら、2009年 Dev. Dynam. 238巻:1150頁)。クセノプス(Xenopus)発生では、Fzd10は、一次感覚ニューロンが発生する背側神経外胚葉の領域において発生中のカエルで発現されている。Fzd10が過剰発現すると、その結果この野での感覚ニューロンの数が増加し、Fzd10ノックダウンは感覚ニューロンの発生を阻害し(Garcia-Moralesら、2009年 Dev. Biol. 335巻:143頁)、神経発生におけるFzd10の重要性が実証された。ゼブラフィッシュでは、Naseviciusら(2000年 Mechs. Develop. 92巻:311頁)は、RT−PCRを用いて、Fzd10が後方尾、神経管背側(dorsal neural tube)、および脳において初期発生中に発現され、後期胚発生において発現は脳に限局されることを実証した。
本明細書に記載される抗FZD10抗体による細胞成長および/または分化の変化(例えば、統計学的に有意な増大または減少)を評価するため、ヒト胚性幹細胞の分化は、記載される分化誘導方法を用いて、内皮細胞分化系列(例えば、Liら、2009年 PLoS One 4巻(12号):e8443頁)、平滑筋細胞分化系列(例えば、Xieら、2011年 Arterioscelr. Thromb. Vasc. Biol. 31巻(7号):1485頁; Ramkisoensingら、2011年 PLoS One 6巻(9号):e24164頁)、または心筋細胞分化系列(例えば、Caoら、2008年 PLoS One 3巻(10号):e3474頁)に沿って、本明細書に記載される抗FZD10抗体の存在下または非存在下、選択的に達成される。内皮分化系列細胞分化の状況では、誘導されたFZD10+ヒト胚性幹細胞またはその後代による内皮細胞管形成の誘導の本明細書に記載される抗FZD10抗体による変化は、Huら(2009年 Canc. Res. 69巻:6951頁)に記載される方法に従って達成される。別々の研究で、FZD10+ヒト胚性幹細胞またはその後代は、Huら(2009年 Chin. Med. J. (Engl) 122巻:548頁; 2009年 Clin. Exp. Pharmacol. Physiol. (2009年12月 電子出版)PMID 20039910)によりモデル化された方法に従って、導入され誘導されて心筋細胞へと発生し梗塞で損傷した心筋のin vivo修復をもたらす。
予備研究では、誘導性分化を起こしている細胞によるFZD10の発現は本明細書に記載される抗FZD10抗体を用いてモニターされ、免疫蛍光顕微鏡法およびフロー免疫細胞蛍光光度法(flow immunocytofluorimetry)を含む免疫蛍光法により細胞表面発現をモニターする。発生時間にわたるFZD10発現は、必要に応じて、定量的RT−PCR、ウエスタンイムノブロッティング、および/または本明細書に記載される抗FZD10抗体(例えば、本明細書に記載されるB9L9.3抗体)を用いた細胞の特異的抗体染色によってもモニターされる。
次に、細胞成長および分化研究は、記載されている手順(Liら、2009年; Xieら、2011年; Ramkisoensingら、2011年; Caoら、2008年)を修正して、FZD10発現の期間に先立っておよび/またはその間に細胞を飽和濃度未満のまたは飽和濃度の抗FZD10抗体(例えば、本明細書に記載されるB9L9.3抗体)に接触させるステップを包含することにより行われる。細胞成長および分化パラメータ(例えば、成長速度、分化率、および生存率)に対する抗FZD10抗体の効果はin vivoおよびin vitroで観察され、無関係な結合特異性のアイソタイプがマッチした抗体で処置される対照群において行われる観察結果と比較される。
例えば、ヒトH9胚性幹細胞(WiCell Research institute、Madison、WI)は、mTeSRI培地(Stem Cell Technologies、Vancouver、BC、Canada)においてMatrigel被覆表面上でLiら(2009年)により記載される通りに成長し、分化は、細胞を塩基性FGF(bFGF、20ng/mL、R&D Systems,Inc.、Minneapolis、MN)およびVEGF(50ng/mL、R&D Systems)を補充した培地において超低付着培養プレート(Corning,Inc.、Corning、NY)に移して懸濁胚様体を形成させることにより誘導される。分化誘導後12日目、細胞は1.5mg/mLのI型ラット尾コラーゲンを含有する培地に懸濁され、37℃で30分間インキュベートされて、コラーゲンゲル重合を可能にし、三次元細胞外マトリックス培養物を得る。培養物に、bFGF(20ng/mL)およびVEGF(50ng/mL)を含有する培地を補充し、ここで胚様体出芽が起こり、ひき続いて3日間にわたり抗FZD10抗体の非存在下または存在下で培養を維持する。様々な時点で、マトリックス培養物の試料は、記載(Liら、2009年)の通りにフロー免疫細胞蛍光光度法、DiI−ac−LDL取り込み、およびRNA分析による前記細胞の(内皮)細胞表面マーカー発現表現型の特徴付けのために採取される。マトリックス培養細胞試料は、また記載(Liら、2009年)の通りに免疫無防備状態(SCID)試験マウスの皮膚にin vivoでまたは直接心筋内注射により埋め込まれ、続いて記載(Liら、2009年)の通りにin vivoイメージングおよびコンダクタンス測定、および外植片の組織学的精密検査が行われる。胚性幹細胞培養物の成長速度、分化率、および生存率に対するならびに移植細胞に対する効果を含めて、抗FZD10抗体の効果が記述される。
同様に、本明細書に記載される抗FZD10抗体(例えば、本明細書に記載されるB9L9.3抗体)にまたは無関係な結合特異性の対照のアイソタイプがマッチした抗体にin vitroでまたはin vivoで曝露される胚性幹細胞は、平滑筋細胞分化系列(例えば、Xieら、2011年 Arterioscelr. Thromb. Vasc. Biol. 31巻(7号):1485頁; Ramkisoensingら、2011年 PLoS One 6巻(9号):e24164頁)または心筋細胞分化系列(例えば、Caoら、2008年 PLoS One 3巻(10号):e3474頁)に沿って分化するよう誘導され、平滑筋細胞または心筋細胞の成長および分化マーカーなどの細胞成長速度、分化率、および生存率に対する前記抗体の効果はその中に記載されている確立した方法に従って決定される(例えば、Xieら、2011年 Arterioscelr. Thromb. Vasc. Biol. 31巻(7号):1485頁; Ramkisoensingら、2011年 PLoS One 6巻(9号):e24164頁;Caoら、2008年 PLoS One 3巻(10号):e3474頁)。例えば、Caoら(2008年)により記載される電気生理学的特性、細胞質ゾルカルシウム陽イオン濃度、および移植特徴の測定値は、抗FZD10抗体(例えば、B9L9.3)に接触させる細胞および無関係な特異性のアイソタイプがマッチした対照抗体に接触させる細胞について比較される。
上記の多様な実施形態を組み合わせて、さらなる実施形態を提供することができる。本明細書で言及されており、かつ/または出願データシートで列挙されている米国特許、米国特許出願公開、米国特許出願、外国特許、外国特許出願、および非特許刊行物の全ては、参照によりそれらの全体において本明細書に組み込まれる。必要な場合は、多様な特許、出願、および、刊行物の概念を用いて、なおさらなる実施形態をもたらすために、実施形態の態様を改変することができる。
上記の詳細な説明に照らして、実施形態にこれらの変更および他の変更を施すことができる。一般に、以下の特許請求の範囲では、用いられる用語が、特許請求の範囲を、本明細書および特許請求の範囲で開示される特定の実施形態へと限定するものとみなすべきではなく、このような特許請求の範囲が権利を付与される全範囲の同等物を伴う全ての可能な実施形態を包含するとみなすべきである。したがって、特許請求の範囲は、本開示により限定されるものではない。