JP5944959B2 - 血液凝固検査方法 - Google Patents
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Description
本発明は、血液や血漿の凝固能を測定する血液凝固検査方法に関するものである。
血液凝固活性は、外因系の凝固因子の欠損のスクリーニングや肝機能の異常、さらに経口投与による抗凝血薬療法のモニタリングに用いられる指標などを得るための重要な項目である。
このような血液凝固検査に、フィブリノゲン(Fibrinogen)測定がある。フィブリノゲンは、凝固血栓を形成する中心的な役割を担う以外に、出血の際の血小板凝集、炎症や外傷における創傷治癒に関与している。急性の炎症が発生もしくは組織の破壊が起こると、血液中のフィブリノゲン濃度は増減する。例えば、悪性腫瘍や重症殺菌感染症の二次発症として有名な播種性血管内凝固症候群(DIC)が発病した場合、全身で血液凝固が起こるため、凝固因子が消費されてフィブリノゲンも低下する。
また、フィブリノゲンは肝臓で合成されているため、肝硬変や肝臓がんで肝臓の合成機能に異常をきたしてもフィブリノゲン濃度が減少する。これらに対し、フィブリノゲン濃度が増加するのは、体内に炎症や組織の変性が生じた場合であり、感染症や急性心筋梗塞の疑いがある際などに見られる。従って、フィブリノゲン測定は、上述のスクリーニング検査として重要である。
フィブリン(Fibrin)測定には、凝固トロンビン(Thrombin)時間法、フィブリン塊による物理的測定法、比濁法、光学的方法、免疫学的方法などが挙げられる。凝固トロンビン時間法は、十分量のトロンビンを血漿に加えた時の凝固時間を光散乱方式により測定し、フィブリノゲン量に換算する方法である。フィブリノゲン→フィブリンに転換する速度は、主としてフィブリノゲン濃度に依存するため、フィブリノゲンが高濃度なものほどトロンビン時間が短く、低濃度ほど延長する傾向があるのを利用する。
物理的に測定する方法として、かくはん抵抗式、熱伝導式、水晶振動子式、磁気ビーズによる凝集測定法などが発明されているが、現在一般にトロンビン時間(光散乱方式)およびかくはん抵抗が多く用いられている。かくはん抵抗式の場合、検体を活性化剤と一緒に導入してフィンでかくはんし、この抵抗の上昇から凝固時間を得る方法である。
光散乱方式は、試験用容器内で、血漿に凝固活性化を促す成分を含む試薬を混合し、容器に対し光を入射してその散乱光量変化を測定して凝固時間を得る方法である。散乱光から凝固時間を得るためには、散乱光量をそのまま利用、微分値を利用、あるいは散乱光量がある一定値に達するまでの時間を求める方法がある(特許文献1参照)。
また、発明者らにより、マイクロ流路を備えるチップを用い、表面プラズモン共鳴(SPR)測定法で流速を測定することにより凝固活性を検査する方法が提案されている。この検査では、まず、凝固活性化剤(トロンビン)を混合することによって完全に活性化した血漿試料を測定直前に調製する。次いで、予め緩衝液を満たしてある流路内に調製した血漿試料を導入することで、血漿試料が流路内を進む流速を凝固時間に変換して求めている。このようなマイクロ流路を用いた流速測定によれば、少量の検体で迅速な凝固活性が測定できるという利点がある。
しかしながら、上述した流速による血液凝固検査では、正確な検査ができないという問題が発生している。血液凝固検査では、凝固活性化剤により血漿中に凝固活性物質を発生させた上で、主にフィブリンから構成される凝固物質に由来する粘性増加による流速の変化を測定している。このため、測定に使用した測定容器は不溶化したタンパク質が非特異的に吸着し、表面が汚染される。特にフィブリンはタンパク質の多くの残渣の同時相互作用を一度に可能とするような分子量の大きなタンパク質であるため、他のタンパク質と比較して非特異吸着力は高い。
このように、血液凝固検査では、検査に用いている流路内が汚染されるため、この汚染により流速が変化することになる。汚染による流速の変化は、大きな測定誤差を招き、正確な測定値が得られなくなる。このような問題を解消するためには、例えば、流路内を洗浄し、流路内を常に均一で清浄な状態に維持しておくことが考えられる。このような洗浄の技術として、例えば流路内あるいはマイクロ流路チップ毎にアルカリ洗浄液などのタンパク質除去溶媒に浸す方法、また物理的な手法として、洗浄液の噴射、超音波洗浄などを組み合わせる方法(特許文献2参照)が挙げられる。
しかしながら、洗浄を行っている間は検査ができないため、複数の検査を連続的に行う場合などは、検査のスループットが大幅に低下することになる。上述した方法では、測定において10秒〜30秒の反応時間を有するため、この時間が律速となり、スループットの向上を阻害している。また、洗浄を回避するためには、チップの使用を1回に限定し、測定毎に新規のチップとする方法があるが、これでは、測定におけるコストの上昇が問題となる。また、流速の測定により血液凝固検査を行う技術では、粘度に依存する流速を測定しているため、凝固能が同じでも粘度が異なる検体を測定する場合、これらの凝固能を正しく区別できない。
上述した問題に対し、発明者らにより、直線状のマイクロ流路に凝固活性剤、検体の順に導入し、流路内を凝固活性剤,接触領域,検体の順に移送させ、これらが測定箇所を通過する過程で、凝固活性剤および接触領域の屈折率を時系列的に測定し、測定された凝固活性剤の屈折率である第1屈折率値と、測定された接触領域の第2屈折率値との比較により検体の血液凝固能を測定する方法を提案している。この方法によれば、凝固反応が発生する領域は接触領域に限定され、発生する凝固活性物質の量を抑制できるので、凝固活性物質による汚染が抑制でき、上述した方法に比較してより正確な測定が可能となっている。また、微細な流路内を通過する接触領域周辺の屈折率を測定するのみであるため,測定に必要な時間は非常に短く、測定処理能力を高めることができる。
納谷 昌之 他、「プリズム一体型チップを用いる高S/N SPRセンサ」、FUJIFILM RESEARCH & DEVELOPMENT、NO.50, pp.51-54, 2005.
しかしながら、上述した測定方法では、マイクロ流路内に形成される接触領域という非常に小さな領域における反応を観察しているため、検体における対象物質の量が少なく凝固反応が少ない場合などは、2つの屈折率値の差が小さく、検出しにくい状態が発生する。
本発明は、以上のような問題点を解消するためになされたものであり、マイクロ流路を用いた血液凝固検査で、より高感度に測定ができるようにすることを目的とする。
本発明に係る血液凝固検査方法は、凝固活性剤に屈折率をより高くする屈折率調整剤を添加した凝固試薬を用意する第1工程と、流路の延在方向に直列に配列して隣り合う部分が接触して流路を流れる状態に、血漿を含む検体および凝固試薬を、凝固試薬を先にした状態で流路に導入する第2工程と、流路の途中に設けられた測定箇所を、凝固試薬,凝固試薬と検体との接触領域,検体の順に通過する過程で、凝固試薬および接触領域の屈折率を時系列的に測定する第3工程と、測定された凝固試薬の屈折率である第1屈折率値と、測定された接触領域の最も小さい屈折率である第2屈折率値との比較により検体の血液凝固能を測定する第4工程とを備える。
上記血液凝固検査方法において、測定箇所における表面プラズモン共鳴測定により測定される表面プラズモン共鳴角度を屈折率値として用いればよい。
以上説明したように、流路内を先に流れている凝固活性剤により屈折率を高くする屈折率調整剤を添加したので、マイクロ流路を用いた血液凝固検査で、より高感度に測定ができるという優れた効果が得られる。
以下、本発明の実施の形態について図を参照して説明する。図1は、本発明の実施の形態における血液凝固検査方法を説明するフローチャートである。まず、ステップS101で、凝固活性剤に屈折率をより高くする屈折率調整剤を添加した凝固試薬を用意する(第1工程)。例えば、凝固活性剤にはトロンビンが含まれ、ここに、屈折率調整剤として雪印乳業製のブロックエースを添加する。
次に、ステップS102で、流路の延在方向に直列に配列して隣り合う部分が接触して流路を流れる状態に、血漿を含む検体および凝固試薬を、凝固試薬を先にした状態で流路に導入する(第2工程)。流路は、例えば、表面プラズモン共鳴測定装置に装着して用いられる測定チップに形成されているマイクロ流路である。このマイクロ流路の導入口より、凝固試薬を導入し、次いで、検体を導入すればよい。このように順に導入することで、流路内において、先に導入されている凝固試薬の液の後端と、後に導入した検体の液の前端とが接触する箇所に、両者が混合する接触領域が形成される。なお、検体は、予め加温し、検体中の血漿が活性化した状態としておき、これを導入する。
次に、ステップS103で、流路の途中に設けられた測定箇所を、凝固試薬,凝固試薬と検体との接触領域,検体の順に通過する過程で、凝固試薬および接触領域の屈折率を時系列的に測定する(第3工程)。次に、ステップS104で、時系列的な測定により得られた結果の中で、凝固試薬の屈折率である第1屈折率値と、接触領域の最も小さい屈折率である第2屈折率値との比較により検体の血液凝固能を測定する(第4工程)。
上述した表面プラズモン共鳴測定装置で用いる測定チップでは、マイクロ流路の途中の測定箇所においては、測定装置側にAuの層が形成されている。よく知られているように、表面プラズモン共鳴測定では、上述した測定領域の下面に照射した光の反射光の強度により、測定領域に接触している液体の屈折率を測定する。液体が接触したAu層の表面における、エバネッセント波と表面プラズモン波との共鳴が起こる角度で反射率が低くなる谷が観測される。この共鳴が起こる表面プラズモン共鳴角度(SPR角度)は、Au層に接する液体の屈折率に依存する。従って、測定される反射光の強度の変化により、流路の測定領域を通過する液体の屈折率の変化が求められる。
ステップS103における測定の中で、まず、凝固試薬の屈折率は、測定箇所を凝固試薬が通過するまでほぼ一定の状態で測定される(第1屈折率値)。これに対し、接触領域の屈折率は、接触領域が測定箇所を通過する過程で、一度低下してから上昇する。この後、検体の屈折率は、測定領域を検体が通過するまで一定の状態で測定される。接触領域は、凝固試薬に近い領域と、中央領域と、検体に近い領域とに分類できる。この中で、中央領域において、屈折率が最も小さくなる箇所が存在する。この屈折率が最も小さくなる箇所の屈折率(第2屈折率値)と第1屈折率値との比較により、検体の血液凝固能が測定できる。この測定において、本発明では、凝固試薬には屈折率を高くする屈折率調整剤が添加されているので、第2屈折率値と第1屈折率値との差を、屈折率調整剤を添加しない場合に比較して大きくすることができる。この結果、より高感度な測定を可能としている。
以下、第1屈折率値と第2屈折率値とにより検体(血漿)の血液凝固能が測定できることについて、より詳細に説明する。
まず、図2に示すように、基板201と流路基板203との間に形成されたマイクロ流路204を、凝固試薬211と検体212とが直列に流れていく場合、凝固試薬211と検体212との境界部分である接触領域213では、拡散による混合が起こる。なお、図2では、基板201の上にAu層202が形成された状態を示している。また、図2の(b)は、図2の(a)におけるマイクロ流路204底部のAu層202との界面近傍を拡大して示している。また、図2の(c)は、図2の(a)における領域221を拡大して示している。
このような2液を直列して送液している状態で、2つの物質の間で化学反応などが発生しない場合、接触領域213では、単に2液の中間の組成となる。例えば、凝固試薬211では検体212における凝固反応が起きない場合、接触領域213では、凝固試薬211と検体212との中間の組成となる。血漿や生化学試薬は、タンパク質を多く含むため、一般に測定される溶液の屈折率は、凝固試薬より大きくなる。このため、凝固反応が起きない場合、マイクロ流路204を凝固試薬211と検体212とが流れていく状態で測定される屈折率の変化は、図3に示すようになる。
図3に示すように、測定時間が経過すると、はじめは凝固試薬211の屈折率が測定される。次いで、接触領域213の測定では、凝固試薬211と検体212との中間の組成で徐々に検体212の屈折率に近づいていく。この後、検体212の屈折率が測定される状態となる。ここで、検体212における屈折率は、タンパク質の濃度に大きく依存するため、異なる血漿成分では測定される屈折率値が異なることになる。
一方、検体212に含まれる血漿が、凝固試薬211により凝固反応が起きる場合、接触領域213では上述した状態とは異なる屈折率変化となる。例えば、図2の(c)に示すように、接触領域213では、凝固試薬211に含まれるトロンビン222が血漿中に含まれるフィブリノゲン223を不溶性タンパク質であるフィブリン224に変換する生化学反応を引き起こす。さらに、このフィブリン224同士がポリマーを形成することで血栓が生じる。
このような接触領域213における屈折率変化を観測すると、図4に示すように、凝固試薬211および検体212よりも屈折率が低くなる領域が観測される。この現象は、直線のマイクロ流路204内に粒子が流れる時、速度勾配の大きい接触領域213の流れの中に生成される前述したようなフィブリン224などによる粒子の周囲に生じる循環流による揚力(サフマン力)によるものと考えられる。
直径dの球形粒子が揚力により流れと直角方向に移動するときに、粒子に作用する流体抵抗をストークスの抵抗法則で表すと、粒子の移動速度vpはサフマンの関係式より以下のように表される。
式(1)において、vは、液体の動粘性係数、uは流れ方向の液体平均速度、upは流れ方向の粒子速度を示す。式(1)より、流れ方向の粒子速度と流れ方向の液体平均速度が等しい(up=u)時は、揚力による粒子の移動は無視できる。しかしながら、粒子速度が流体速度と異なる場合、揚力による粒子の移動は無視できない。粒子速度が流体速度よりも大きくなる場合、粒子は流路の壁方向に移動する。一方、粒子速度が流体速度よりも小さくなる場合は、粒子は主流方向に移動する。このため、粒子速度が流体速度と異なる場合、粒子は、境界層である接触領域の外側に移動していく。
粒子速度は、流動体(流体)の流速から受ける推進力および抵抗力に影響を受ける。流体中の物体(粒子)が流れている流体から受ける抵抗力には、以下に示すニュートンの抵抗法則が知られている。
式(2)において、ρは液体密度、Cdは効力係数、Sは物体の投影面積、Vは速度を示す。式(2)から、流体内の物体が大きくなり投影面積が大きくなると、物体の流体に対する抵抗力は増し、これにより粒子速度が減少するためサフマン力が大きくなる。サフマン力が大きくなると、粒子に対する流速の早い流路中心部へ移動する力が強くなる。
加えて、液中の物質は浮力の影響を受ける。浮力Fbは、流体の密度ρf,物体の体積V,重力加速度gを用い「Fb=ρfVg」により表される。従って、物体の表面積が増加すると浮力も大きくなり、流路内壁より離れる力が大きくなる。
凝固試薬と検体の2液の送液が進行し、液液界面での凝固反応が進むにつれて、不溶化フィブリンは増加し、また、ポリマー化により体積が急速に増加する。このため、図2に示すように、液体流速よりも小さい粒子速度となったフィブリン224は、マイクロ流路204の内壁であるAu層202上には沈降せずにマイクロ流路204の中心部へ移動する。これらの結果、測定箇所のAu層202上(内壁部分)においては、周囲のフィブリン224が急速に消化された残りの接触領域213における成分の屈折率が測定結果に反映され、屈折率が低下する状態が観測されるものと考えられる。
[実施例]
以下、実施例を用いてより詳細に説明する。まず、測定に用いた測定チップ400およびSPR装置500について説明する。測定チップ400は、図5,図6に示すように、BK7ガラスからなる基板401と、膜厚50nm程度のAu層402と、流路基板403とから構成されている。Au層402は、例えば、スパッタリング法などのよく知られた堆積技術により形成すればよい。
以下、実施例を用いてより詳細に説明する。まず、測定に用いた測定チップ400およびSPR装置500について説明する。測定チップ400は、図5,図6に示すように、BK7ガラスからなる基板401と、膜厚50nm程度のAu層402と、流路基板403とから構成されている。Au層402は、例えば、スパッタリング法などのよく知られた堆積技術により形成すればよい。
また、流路基板403は、マイクロ流路404となる溝部,導入口405,および排出口406を備える。例えば、ポリジメチルシロキサン(PDMS)から流路基板403を形成すればよい。溝部は、深さ(高さ)50μm程度とすればよい。また、導入口405の口径は、3mmとし、排出口406の口径は、1.5mmとした。これらは、例えば、よく知られた生検トレパンにより形成すればよい。また、基板401と流路基板403とは個別に作製し、最後に、マイクロ流路404が測定領域に重なるように測定チップ400を組み立てた。
Au層402を形成した基板401および流路溝を形成した流路基板403の各々の貼り合わせ面を、酸素ガスのプラズマ(反応イオン)の照射により活性化させた後、各々の貼り合わせ面を当接させて貼り合わせることで、両者を一体とした。プラズマの照射は、プラズマ処理装置の処理室内で実施する。プラズマは、出力70Wのマイクロ波により生成し、また、処理室内には酸素を100sccmで供給し、処理室内における酸素分圧は10Paとした。なお、sccmは流量の単位であり、0℃・1013hPaの流体が1分間に1cm3流れることを示す。また、プラズマの照射は、5秒程度実施した。
また、排出口406には、負圧機構421が接続され、マイクロ流路404内の液体を、排出口406を介して牽引(吸引)可能としている。負圧機構421は、例えば、ステンレスパイプで接続された廃液タンクおよび負圧ポンプ(MFCS−VAC,Fluigent社製)などから構成されている。
測定においては、SPR装置500の測定プリズム502に形成されている測定面503上に、屈折率がBK7ガラスと等しいマッチングオイル(不図示)を塗布し、この上に測定チップ400の基板401裏面を配置する。また、SPR装置500の光源501から出射される光の光軸上に、測定チップ400の測定領域が重なる状態に配置する。SPR装置500は、例えば、エヌ・ティ・ティ・アドバンステクノロジ株式会社製の「Smart SPR SS−100」である。
光源501から出射された光を集光してプリズム502に入射させ、プリズム502の測定面503に密着させている測定チップ400の測定領域に照射する。測定チップ400の測定領域となるマイクロ流路404にはAu層402が形成されており、Au層402の裏面に、測定チップ400を透過してきた集光光が照射される。
このようにして照射された集光光は、流速測定対象の流体が接触したAu層402の裏面で反射し、いわゆるCCDイメージセンサーなどの撮像素子よりなるセンサー504で光電変換されて強度(光強度)が得られる。このようにして得られた光強度の変化により屈折率の変化が求められる。
マイクロ流路404に、まず、トロンビン凝固活性剤に屈折率調整剤を添加した凝固試薬411(10マイクロリットル)を供給して満たす。マイクロ流路404内の容量は、1〜2マイクロリットル程度である。次いで、図6の(b),(c)に示すように、凝固試薬411が満たされているマイクロ流路404の一端の導入口405より血漿からなる検体412(10マイクロリットル)を導入し、マイクロ流路404の他端の排出口406より、一定の圧力(負圧)で凝固試薬411を牽引すればよい。排出口406に負圧機構421を接続し、凝固試薬411を吸引すればよい。このようにすることで、マイクロ流路404内で他端側(導入口405側)に凝固試薬411が存在し、一端側(排出口406側)に検体412が存在し、凝固試薬411の終端と検体412の先端とが接触する状態で、これらがマイクロ流路404内を他端の方向に輸送される状態となる。
ここで、接触している接触領域413では、検体412に凝固試薬411が添加されることになり、接触領域413では、凝固反応が起こり得る状態となっている。このため、上述したように、凝固試薬411と検体412が配列してマイクロ流路404に流れる状態として接触領域413が形成された時点より、接触領域413では、凝固反応が開始されることになる。
上述したように、検体412の先端と凝固試薬411の終端とが接触して接触領域413を形成し、これらが図6に示すようにマイクロ流路404内を輸送されている状態で、マイクロ流路404内の流体の屈折率(SPR角度)の変化を測定する。マイクロ流路404内の所定の測定領域431においてSPR角度を測定する。このSPR角度の測定においては、接触領域413が測定領域431を通過しているときのSPR角度の変化を測定する。測定領域431には、センサー504の検出領域が対応している。センサー504の検出領域には、複数のフォトダイオード素子が、流れの方向に並んで配置されており、測定領域431では、各フォトダイオード素子の位置(ピクセル位置)毎に、光強度の変化(SPR角度)が測定される。
なお、基板401の屈折率をn、Au層402の誘電率をεm、試料の誘電率をεs、基板401とAu層402との界面に入射する光の入射角度をθとすると、「n(ω/c)sinθ=(ω/c)[εm×εs/(εm+εs)]1/2・・(1)」が成り立つ条件の時に、入射角度と、基板401とAu層402との界面に誘起されるプラズモンの共鳴が起こる(非特許文献1参照)。この角度θが、SPR角度である。
また、プラズモンの共鳴が起きると反射する光が減衰するため、この状態がセンサー504のいずれかのフォトダイオード素子の検出値の変化として現れる。従って、検出光強度が低下したフォトダイオード素子のピクセル位置(ピクセル値)により、SPR角度が求められ、結果として屈折率が得られる。例えば、上記ピクセル値より、例えば、「屈折率値=ピクセル値×1.2739×10-4+1.3188(光源波長770nm)」などの換算式により、屈折率値が得られる。
上述した実施例における測定結果について説明する。まず、測定領域431内の3つの観測地点におけるSPR角度変化について、図7に示す。図7は、測定領域431を接触領域413が通過する過程で測定されたSPR角度変化を示す特性図である。なお、図7においては、縦軸の「SPR角度」として、測定に用いたSPR装置におけるイメージセンサー(撮像装置)におけるピクセルの位置を示すピクセル値を代用している。
図7の(a)は、センサー504の1個目のフォトダイオード素子で検出された結果を示している。図7の(a)は、測定領域431の導入口405側の開始端において検出された結果を示している。
図7の(b)は、センサー504の240個目のフォトダイオード素子で検出された結果を示している。図7の(b)は、測定領域431の中央において検出された結果を示している。
図7の(c)は、センサー504の480個目のフォトダイオード素子で検出された結果を示している。図7の(c)は、測定領域431の排出口406側の終了端において検出された結果を示している。
図7に示すように、各測定地点において凝固試薬の屈折率と検体(血漿)の屈折率が遷移する接触領域で、低屈折率領域が表れていることが分かる。
ここで、図8に示すように、屈折率が低下している接触領域に対し、幅および深さのパラメータを設定する。深さは、測定された凝固試薬の屈折率である第1屈折率値から見た、接触領域で測定される最も小さい第2屈折率値であり、「第1屈折率値−第2屈折率値」の値である。このため、第1屈折率値と第2屈折率値との差が大きいほど、深さは大きい値となる。
図9は、センサー504を構成する複数のフォトダイオード素子の位置に対応させた測定領域の位置(pixel)に対応する、深さ(a),幅(b)のパラメータの変化を示す特性図である。
図9の(a)に示すように、接触領域の開始点より排出口の側(下流)に行くに従って、深さが大きい値となり、接触領域の中央地点で最も大きい値となる。図9の(b)に示す「幅」は、接触領域の移動(流れ)に伴い単調に広がっていく。これに対し、図9の(a)に示す「深さ」は、接触領域が移動していくなかで、ある位置から先(下流)では、一定の値に達して飽和する傾向を示しており、接触領域で起きている凝固反応の過程が反映されているものと考えられる。このことより、深さ(第1屈折率値−第2屈折率値)は、凝固活性に依存した数値を表し、指標になり得るものと考えられる。なお、図9の(a)において、ピクセル位置200付近の変化は、ノイズであるものと考えられる。
次に、実際に実施した測定実験の結果について説明する。はじめに、測定において凝固活性剤として用いるトロンビン凝固活性剤の希釈状態と、測定の結果得られる前述した「深さ」の変化について図10を用いて説明する。図10は、トロンビン凝固活性剤の希釈度に対する「深さ」の変化を示す特性図である。ここでは、屈折率調整剤を用い、トロンビン凝固活性剤の希釈度(濃度)を変化させた(30,40,50,60,70%)。図10に示すように、希釈度が60%をピークとして「深さ」は最大値を示し、これより高い濃度では、「深さ」が減少している。
これは、接触領域に発生した凝固反応によって生じたフィブリンによるポリマー(フィブリン網)の緻密さに依存するものと考えられる。例えば、凝固活性剤の濃度が高い場合、強固で緻密なフィブリン網が形成され、接触領域の形成および2液間の分子移動が阻害され、継続的な凝固反応を抑制し、接触領域における屈折率の低下が阻害されるものと考えられる。
図11は、標準検体(活性度86%)と屈折率調整剤を添加している凝固試薬とを用いた実験において、繰り返し測定した結果を屈折率差(第1屈折率値−第2屈折率値)で示した特性図である。各測定間では、アルカリ洗浄液をマイクロ流路内に1回通すのみの洗浄を行った。図11に示すように、19回連続した結果、測定値(谷の深さ)のバラつきは、CV=3.5%と低く抑えることができた。
次に、標準検体(活性度86%)を薄め液によって希釈して活性の異なる検体(64%,43%,22%)を調製し、本発明の実施の形態による上述した測定で測定した結果(屈折率差)で検量線を作製した。図12は、作成した検量線を示す特性図である。なお、図12における縦軸の「屈折率差」は、図8を用いて説明した「深さ」に対応している。また、図12においては、縦軸の「屈折率差」として、測定に用いたSPR装置におけるイメージセンサー(撮像装置)のピクセル値の差を代用している。
ここで、接触領域における屈折率が低下する部分は、検体成分のフィブリン以外の組成の屈折率により大きく影響を受けるため、水などの低屈折溶液を薄め液として採用すると、希釈した分が深さに加算される。このため、上述した検量線を求める測定では、薄め液として標準検体と同じ屈折率のグルコース溶液を用いた。また、凝固活性剤としてトロンビン凝固活性剤を使用した。
検量線を作製した結果、検体(血漿)活性度が高くなるに従って、第1屈折率値と第2屈折率値との差が大きくなることが確認できた。これは、第1屈折率値と第2屈折率値との差が、フィブリン消費量に大きく依存し、多くフィブリンが産生される高活性検体の方が、低屈折率領域全体の屈折率が低下するためと考えられる。また、屈折率調整剤を用いずに作成した検量線に比較し、より大きな傾きが得られている。
以上に説明したように、本発明によれば、凝固活性剤に屈折率調整剤を添加した凝固試薬,接触領域,検体の順に通過する過程で、凝固試薬および接触領域の屈折率を時系列的に測定し、測定された凝固試薬の屈折率である第1屈折率値と、測定された接触領域の最も小さい屈折率である第2屈折率値との比較により検体の血液凝固能を測定するようにしたので、マイクロ流路を用いた血液凝固検査で、より高感度に測定ができるようになる。また、屈折率低下剤を添加した測定では、流路表面における汚染が、より抑制されていることが判明した。このため、洗浄をすることなく連続して測定できる回数を、より多くすることが可能となった。
なお、本発明は以上に説明した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想内で、当分野において通常の知識を有する者により、多くの変形および組み合わせが実施可能であることは明白である。例えば、屈折率調整剤は、ブロックエースに限らず、デキストランを用いてもよい。屈折率調整剤は、構成する分子が血漿の凝固活性能を刺激しないものであることが望ましい。例えば、血中に多く存在するアルブミン(質量66000ダルトン)の大きさに近い質量の分子から構成された屈折率調整剤を用いればよい。
また、フィブリノゲン測定に限らず、フィブリンを産生させる凝固活性剤を用いることで、他の凝固測定方法も同様に行える。例えば、PT(プロトロンビン時間:Prothrombin Time)測定法、また、APTT凝固活性剤を混合した検体を用い、凝固活性剤に塩化カルシウムを用いることで、APTT(活性化部分トロンボプラスチン時間:Activated Partial Thromboplastin Time)測定法などに対応させることができる。
また、時系列的な屈折率(屈折率変化)の測定は、表面プラズモン共鳴測定に限るものではなく、全反射測定で測定してもよい。例えば、マイクロ流路の測定領域にAu層を形成せずに透明な状態としておけば、流路下面の透明部分における全反射が起きる入射角度(臨界角)を測定すればこれを屈折率の指標値とすることができる。
201…基板、202…Au層、203…流路基板、204…マイクロ流路、211…凝固活性剤、212…検体、213…接触領域、221…領域、222…トロンビン、223…フィブリノゲン、224…フィブリン。
Claims (2)
- 凝固活性剤に屈折率をより高くする屈折率調整剤を添加した凝固試薬を用意する第1工程と、
流路の延在方向に直列に配列して隣り合う部分が接触して前記流路を流れる状態に、血漿を含む検体および前記凝固試薬を、前記凝固試薬を先にした状態で前記流路に導入する第2工程と、
前記流路の途中に設けられた測定箇所を、前記凝固試薬,前記凝固試薬と前記検体との接触領域,前記検体の順に通過する過程で、前記凝固試薬および前記接触領域の屈折率を時系列的に測定する第3工程と、
測定された前記凝固試薬の屈折率である第1屈折率値と、測定された前記接触領域の最も小さい屈折率である第2屈折率値との比較により前記検体の血液凝固能を測定する第4工程と
を備えることを特徴とする血液凝固検査方法。 - 請求項1記載の血液凝固検査方法において、
前記測定箇所における表面プラズモン共鳴測定により測定される表面プラズモン共鳴角度を前記屈折率値として用いることを特徴とする血液凝固検査方法。
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