JP6466801B2 - 血液凝固検査方法 - Google Patents

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Description

本発明は、血液や血漿の凝固能を測定する血液凝固検査方法に関するものである。
血液凝固活性は、外因系の凝固因子の欠損のスクリーニングや肝機能の異常、さらに経口投与による抗凝血薬療法のモニタリングに用いられる指標などを得るための重要な項目である。
このような血液凝固検査には、PT(プロトロンビン時間:Prothrombin Time)測定法、APTT(活性化部分トロンボプラスチン時間:Activated Partial Thromboplastin Time)測定法、およびフィブリノゲンテストなどが主に用いられている。これらの測定・テストは、病院内の大型分析装置を用いて実施されている。また、検体血漿と凝固試薬(凝固活性剤)を混合してからマイクロ流路に導入し、凝固反応により不溶化が進み、マイクロ流路における検体血漿および凝固試薬の進行が停止した位置から、血液凝固能を測定する手法も開発されている(特許文献1,特許文献2参照)。
また、発明者らにより、マイクロ流路を備えるチップを用い、表面プラズモン共鳴(SPR)測定法で流速を測定することにより凝固活性を検査する方法が提案されている。この検査では、まず、凝固活性化剤(エラグ酸および塩化カルシウム)を混合することによって完全に活性化した血漿試料を測定直前に調製する。次いで、予め緩衝液を満たしてある流路内に調整した血漿試料を導入することで、血漿試料が流路内を進む流速を凝固時間に変換して求めている(特許文献3,特許文献4参照)。
ところで、上述したような血液凝固検査では、凝固活性化剤により血漿中に凝固活性物質を発生させた上で、主にフィブリンから構成される凝固物質に由来する粘性増加による光散乱,光透過特性,粘性増加などを測定している。このため、測定に使用した測定容器は不溶化したタンパク質が非特異的に吸着し、表面が汚染される。特にフィブリンはタンパク質の多くの残渣の同時相互作用を一度に可能とするような分子量の大きなタンパク質であるため、他のタンパク質と比較して非特異吸着力は高い。
このように、血液凝固検査では、検査に用いている流路内などが汚染されて測定誤差を招くため、チップを使い捨ての状態で用いており、1測定当たりの測定コストが嵩み、また、廃棄物が増加するという問題がある。
上述した問題を解消するためには、例えば、流路内を洗浄し、流路内を常に均一で清浄な状態に維持しておくことで、検体毎の測定誤差を無くして正確な測定を可能として繰り返し使用に対応させることが考えられる。このためには、強力な洗浄が必要となり、例えば流路内あるいはマイクロ流路チップ毎にアルカリ洗浄液などのタンパク質除去溶媒に浸す方法、また物理的な手法として、洗浄液の噴射、超音波洗浄などを組み合わせる方法(特許文献5参照)が挙げられる。
しかしながら、洗浄を行っている間は検査ができないため、複数の検査を連続的に行う場合などは、検査のスループットが大幅に低下することになる。上述した方法では、測定において10秒〜30秒の反応時間を有するため、この時間が律速となり、スループットの向上を阻害している。また、洗浄を回避するためには、チップの使用を1回に限定し、測定毎に新規のチップとする方法があるが、これでは、測定におけるコストの上昇が問題となる。
上記問題に対し、発明者らにより、直線状のマイクロ流路に検体、凝固活性剤の順に導入し、流路内を検体,接触領域,凝固活性剤の順に移送させ、これらが測定箇所を通過する過程で、凝固活性剤および接触領域の屈折率を時系列的に測定し、測定された凝固活性剤の屈折率である第1屈折率値と、測定された接触領域の第2屈折率値との比較により検体の血液凝固能を測定する方法を提案している(特許文献6参照)。この方法によれば、凝固反応が発生する領域は接触領域に限定され、発生する凝固活性物質の量を抑制できるので、凝固活性物質による汚染が抑制でき、上述した方法に比較してより正確な測定が可能となっている。また、微細な流路内を通過する接触領域周辺の屈折率を測定するのみであるため,測定に必要な時間は非常に短く、測定処理能力を高めることができる。
欧州特許第0394070号公報 特開2011−232137号公報 特開2011−232137号公報 特開2013−053959号公報 特開2010−133727号公報 特開2014−228433号公報 特開2014−228432号公報
納谷 昌之 他、「プリズム一体型チップを用いる高S/N SPRセンサ」、FUJIFILM RESEARCH & DEVELOPMENT、NO.50, pp.51-54, 2005. M. van Geffen, W. L. van Heerde, "Global haemostasis assays, from bench to bedside", Thrombosis Research, vol.129, pp.681-687, 2012. http:/www.info.pmda.go.jp/downfiles/md/PDF/480585/480585_28B2X10007000090_A_01_01.pdf
しかしながら、上述した測定技術では、測定結果が流速の変動により変化するため、高い測定精度を得るためには、高い精度で流速を制御する必要があり、測定が容易ではなく、装置コストがかかるなどの問題があった。
本発明は、以上のような問題点を解消するためになされたものであり、より容易な測定により、血液や血漿の凝固能がより高い精度で検査できるようにすることを目的とする。
本発明に係る血液凝固検査方法は、流路の延在方向に直列に配列して隣り合う部分が接触して流路を流れる状態に、血液の成分を含む検体および凝固活性剤を流路に導入する第1工程と、流路の途中に設けられた測定箇所に凝固活性剤と検体との接触領域が到達した時点で凝固活性剤および検体の流れを停止し、接触領域におけるフィブリンの状態を測定する第2工程と、測定されたフィブリンの状態により検体の血液凝固能を判定する第3工程とを備える。
上記血液凝固検査方法において、第2工程では、接触領域における表面プラズモン共鳴測定により測定される表面プラズモン共鳴角度の時間変化により判定される凝固活性剤と検体との界面位置の時間変化により、接触領域におけるフィブリンの状態を測定する
上記血液凝固検査方法において、第2工程では、接触領域における透過光強度の時間変化により接触領域におけるフィブリンの状態を測定する
上記血液凝固検査方法において、血液の成分は、血漿である。
以上説明したように、本発明によれば、流路の途中に設けられた測定箇所に凝固活性剤と検体との接触領域が到達した時点で凝固活性剤および検体の流れを停止し、接触領域におけるフィブリンの状態を測定するようにしたので、より容易な測定により、血液や血漿の凝固能がより高い精度で検査できるという優れた効果が得られる。
図1は、本発明の実施の形態における血液凝固検査方法を説明するためのフローチャートである。 図2Aは、測定チップ200およびSPR装置220の構成を示す斜視図である。 図2Bは、測定チップ200の構成を示す断面図である。 図3は、SPR測定による血液凝固検査方法を説明する説明図である。 図4は、マイクロ流路に凝固活性剤を供給し始めてからのSPR測定結果を示す特性図である。 図5は、流路に凝固活性剤を導入した後、標準検体を導入してSPR測定による測定を実施した結果を示す特性図である。 図6は、流路に凝固活性剤を導入した後、低凝固能検体を導入してSPR測定による測定を実施した結果を示す特性図である。 図7は、流路に凝固活性剤を導入した後、血清を導入してSPR測定による測定を実施した結果を示す特性図である。 図8は、SPR角度の分布から判断される界面位置(導入口から界面までの距離)の経過時間をプロットした結果を示す特性図である。 図9は、接触領域における透過光強度の時間変化により接触領域におけるフィブリンの状態を測定するための装置構成を示す構成図である。
以下、本発明の実施の形態について図を参照して説明する。図1は、本発明の実施の形態における血液凝固検査方法を説明するためのフローチャートである。この検査方法は、まず、第1工程S101で、流路の延在方向に直列に配列して隣り合う部分が接触して流路を流れる状態に、血液の成分を含む検体およびフィブリンを生産させる凝固活性剤を流路に導入する。凝固活性剤は、トロンボモジュリン,エラグ酸,カオリン,セライトなどの接触因子を活性化する化学物質およびカルシウムイオンを含む。また、流路は、例えば、ポリジメチルシロキサン(PDMS)などの材料から構成された測定チップに形成されているマイクロ流路である。
次に、第2工程S102で、流路の途中に設けられた測定箇所に凝固活性剤と検体との接触領域が到達した時点で凝固活性剤および検体の流れを停止し、接触領域におけるフィブリンの状態を測定する。接触領域における光学的な測定方法によりフィブリンの状態を測定すれば良い。次に、第3工程S103で、測定されたフィブリンの状態により検体の血液凝固能を判定する。
第2工程S102では、例えば、接触領域における表面プラズモン共鳴(SPR)測定により測定される表面プラズモン共鳴(SPR)角度の時間変化により判定される凝固活性剤と検体との界面位置の時間変化により、接触領域におけるフィブリンの状態を測定すればよい。
血漿などの血液成分を含む検体と凝固活性剤との接触領域では、接触領域を挟み凝固活性剤の溶液と検体の溶液との間で様々な分子が拡散する中で、検体中に含まれるプロトロンビンがトロンビンに変換され、産生されたトロンビンがフィブリノゲンを不溶性タンパク質であるフィブリンに変換する。このようにして生成されるフィブリンの量は、検体に含まれていたフィブリノゲンが全て消費されるまで時間の経過と共に増加していく。
上述したように、流れが停止されている状態の接触領域でフィブリンが生成される過程において、SPR測定により判定される凝固活性剤と検体との界面位置が、時間経過と共に変化する。この変化の状態は、フィブリンの生成量(検体に含まれていたフィブリンの量)に対応しており、SPR測定により判定される界面位置の時間変化より、血液凝固能を判定することができる。
なお、測定の後、産生されたフィブリンは、ポンプ圧を高めるなどにより速やかに流路内から排出させ、また、流路内を洗浄することなどにより、流路内への固着を防ぐようにするとよい。測定終了後に行う洗浄は、洗浄液を流路に通過させることにより可能である(特許文献7参照)例えば、1%次亜塩素酸ナトリウムおよび0.1%のオクチルフェノールエトキシレート(オクトキシノール)を洗浄液として流路に通過させた後に、水を3回導入して流路内部をリンス処理すればよい。
上述したSPR測定は、例えば、図2A,図2Bに示す測定チップ200およびSPR装置220を用いることで実施できる。測定チップ200は、BK7ガラスからなる基板201と、膜厚50nm程度のAu層202と、流路基板203とから構成されている。Au層202は、例えば、スパッタリング法などのよく知られた堆積技術により形成すればよい。
また、流路基板203は、マイクロ流路204となる溝部,導入口205,および排出口206を備える。例えば、PDMSから流路基板203を形成すればよい。溝部は、幅1mm、深さ(高さ)400μm程度とすればよい。また、導入口205の口径は、3mmとし、排出口206の口径は、1.5mmとした。これらは、例えば、よく知られた生検トレパンにより形成すればよい。また、基板201と流路基板203とは個別に作製し、最後に、マイクロ流路204が測定領域に重なるように測定チップ200を組み立てた。
Au層202を形成した基板201および流路溝を形成した流路基板203の各々の貼り合わせ面を、酸素ガスのプラズマ(反応イオン)の照射により活性化させた後、各々の貼り合わせ面を当接させて貼り合わせることで、両者を一体とした。プラズマの照射は、プラズマ処理装置の処理室内で実施する。プラズマは、出力70Wのマイクロ波により生成し、また、処理室内には酸素を100sccmで供給し、処理室内における酸素分圧は10Paとした。なお、sccmは流量の単位であり、0℃・1013hPaの流体が1分間に1cm3流れることを示す。また、プラズマの照射は、5秒程度実施した。
また、排出口206には、負圧機構207が接続され、マイクロ流路204内の液体を、排出口206を介して牽引(吸引)可能としている。負圧機構207は、例えば、ステンレスパイプで接続された廃液タンクおよび負圧ポンプ(MFCS−VAC,Fluigent社製)などから構成されている。
測定においては、SPR装置220の測定プリズム222に形成されている測定面223上に、屈折率がBK7ガラスと等しいマッチングオイル(不図示)を塗布し、この上に測定チップ200の基板201裏面を配置する。また、SPR装置220の光源221から出射される光の光軸上に、測定チップ200の測定領域が重なる状態に配置する。SPR装置220は、例えば、エヌ・ティ・ティ・アドバンステクノロジ株式会社製の「Smart SPR SS−100」である。
光源221から出射された光を、シリンドリカルレンズ(不図示)などにより長さ4.8mmのライン状に集光してプリズム222に入射させ、プリズム222の測定面223に密着させている測定チップ200の測定領域に照射する。測定チップ200の測定領域となるマイクロ流路204にはAu層202が形成されており、Au層202の裏面に、測定チップ200を透過してきた集光光が照射される。
このようにして照射された集光光は、流速測定対象の流体が接触したAu層202の裏面で反射し、いわゆるCCDイメージセンサーなどの撮像素子よりなるセンサー224で光電変換されて強度(光強度)が得られる。センサー224は、例えば、480ピクセルの受光部を備えるライン型の撮像素子である。このようにして得られた光強度の変化により屈折率の変化が求められる。
次に、測定チップ200を用いた測定について図3を用いて説明する。マイクロ流路204に、まず、37℃で1分間加熱したトロンビン凝固活性剤311(10マイクロリットル)を供給して満たす。例えば、図3の(a)に示すように、マイクロシリンジ321により、トロンビン凝固活性剤311を導入口205に供給し、図3の(b)に示すように、マイクロ流路204内が、トロンビン凝固活性剤311で満たされ、導入口205が空になった状態とする。
次に、導入口205が空になったことを確認した後、図3の(c)に示すように、自動分注装置322などを用い、37℃で1分加熱した1マイクロリットルの検体312を導入口205に連続的に滴下し、マイクロ流路204の他端の排出口206より、負圧機構207により一定の圧力(負圧)で凝固活性剤311を牽引する。
これらのことにより、図3の(d)に示すように、マイクロ流路204内に、凝固活性剤311と検体312とが接触する接触領域313を形成する。接触領域313は、導入口205に検体312が滴下されると、マイクロ流路204の導入口205側の開口端で形成される。形成された接触領域313は、負圧機構207による牽引で、トロンビン凝固活性剤311および検体312ともに、マイクロ流路204内を他端の方向に輸送される。この牽引を途中で停止し、マイクロ流路204内の液体の輸送を停止させることで、接触領域313の移動を停止させ、マイクロ流路204内の所定箇所に、接触領域313を配置する。牽引を停止して液体の輸送を停止すれば、接触領域313の移動も停止することは確認している。
ここで、接触している接触領域313では、検体312に凝固活性剤311が添加されることになり、接触領域313では、凝固反応が起こり得る状態となっている。このため、上述したように、凝固活性剤311と検体312が接触して接触領域313が形成された時点より、接触領域313では、凝固反応が開始される。また、この凝固反応は、マイクロ流路204内の所定箇所に接触領域313を配置された後も継続していくことになる。
上述したように、検体312の先端と凝固活性剤311の終端とが接触して接触領域313を形成し、これらが図3の(d)に示すようにマイクロ流路204内の所定箇所に配置されている状態で、マイクロ流路204内の接触領域313が含まれる領域の屈折率(SPR角度)の時間変化を測定する。より詳細には、マイクロ流路204の導入口205側の開口端から接触領域313の停止(配置)位置までの領域(測定領域)における、SPR角度の時系列変化を測定する。測定領域に、センサー224の検出領域を対応させればよい。センサー224の検出領域には、複数(480個)のフォトダイオード素子が、流路204の延在方向に10μm間隔で並んで配置されており、測定領域では、各フォトダイオード素子の位置(ピクセル位置)毎に、光強度の変化(SPR角度)が測定される。
なお、基板201の屈折率をn、Au層202の誘電率をεm、試料の誘電率をεs、基板201とAu層202との界面に入射する光の入射角度をθとすると、「n(ω/c)sinθ=(ω/c)[εm×εs/(εm+εs)]1/2」が成り立つ条件の時に、入射角度と、基板201とAu層202との界面に誘起されるプラズモンの共鳴が起こる(非特許文献1参照)。この角度θが、SPR角度である。
また、プラズモンの共鳴が起きると反射する光が減衰するため、この状態がセンサー224のいずれかのフォトダイオード素子の検出値の変化として現れる。従って、検出光強度が低下したフォトダイオード素子のピクセル位置(ピクセル値)により、SPR角度が求められる。また、上記ピクセル値より、例えば、「屈折率値=ピクセル値×1.2739×10-4+1.3188(光源波長770nm)」などの換算式により、屈折率値が得られる。
ここで、以下に示すSPR測定を用いた血液凝固検査では、流路最上流点から、SPR角度の時間変化により判定される凝固活性剤と検体との界面位置までの距離により、検体の凝固活性度を判定している。
まず、マイクロ流路に凝固活性剤を供給し始めてからのSPR測定において、測定されるSPR角度が急激に増加している箇所を、マイクロ流路の導入口側の開口端である流路最上流点としている。例えば、図4に示す測定結果が得られた場合、検出領域開始点より20ピクセル(0.01×20=0.2mm)の箇所に、流路最上流点が存在していることが分かる。
次に、SPR角度の時間変化による凝固活性剤と検体との界面位置の判定について説明する。まず、マイクロ流路最上流地点において、2液目である検体の導入開始時刻を屈折率変化開始時間から算出する。次に、検体の導入開始時点から5秒、7.5秒、10秒、12.5秒、15秒経過した時点で測定された流路内のSPR角度を参照し、各時点において単純移動平均平滑化を適用する。平滑化したデータにおいて、下流からみて1ピクセル毎の変化量が、導入直後の下流100ピクセル間のSPR誤差よりも大きくなる地点(本検討の場合>0.3を適用)となる地点を算出し、この地点を界面の位置とした。
次に、実際の測定結果をもとに、SPR測定による血液凝固検査について説明する。以下では、流路に凝固活性剤を導入した後、検体を導入して測定を実施している。また、標準検体(活性度86%),標準検体を希釈して異なる活性(活性度33%相当)とした低凝固能検体、活性度が0%の血清の各々について測定を実施した。測定の結果を、図5,図6,図7に示す。図5は、標準検体の測定結果を示し、図6は、低凝固能検体の測定結果を示し、図7は、血清の測定結果を示している。
また、各図において、(a)は、SPR装置の検出領域で検出された時間経過によるSPR角度推移の全体の状態を示している。また、各図において、(b)は、検体を導入した直後(0sec.)、5秒後、10秒後、15秒後の各時点における、測定領域(検出領域)の各位置におけるSPR角度を示す。なお、「検体導入」の時点より所定の時間経過後、「水導入」の時点で、導入口より水を導入して流路内より凝固活性剤,検体などを排出させている。
導入した検体の容量から考えて、接触領域は、検出領域の340ピクセル以上には移動せずに停止している。しかしながら、測定されるSPR角度の分布から判断される界面は、時間の経過と共に移動している。これは、流路内の流れを停止しても、接触領域を阪井に凝固活性剤と検体との間の分子の拡散が生じるためである。この界面の移動状態(移動度)は、接触領域で生じるフィブリンの生産効率により変化する。
不溶性のフィブリンの生産効率が高いほど、上述した分子の拡散が阻害され、測定されるSPR角度の分布から判断される界面の移動が発生しにくい(移動速度が遅い)ものと考えられる。例えば、図5に示すように、フィブリンの生産効率が最も高い標準検体の場合、判断される界面は10秒経過以降ほぼ移動していない。これに対し、フィブリンが全く生産されない血清の場合、図7に示すように、障害物がないため、10秒経過以降も大きく移動している。
上述したように、SPR測定の場合、SPR角度の分布から判断される界面の移動の状態(SPR角度の時間変化により判定される凝固活性剤と検体との界面位置の時間変化)により、検体の凝固能が検査できる。
上述したSPR角度の分布から判断される界面位置(導入口から界面までの距離)の経過時間をプロットした結果を図8に示す。図8に示すように、凝固活性が高いほど、導入口から界面までの距離が短いことが分かる。このように、SPR角度の時間変化により判定される凝固活性剤と検体との界面位置の移動した距離を測定することにより、検体の凝固活性度を算出することができる。
ところで、第2工程における接触領域におけるフィブリンの状態の測定は、上述したSPR測定に限るものではない。例えば、接触領域における透過光強度の時間変化により接触領域におけるフィブリンの状態を測定することもできる。
図9に示すように、光が透過する材料から構成されたマイクロ流路401と、マイクロ流路401を横切る光を出射する光源402と、光源402から出射して、マイクロ流路401の検出箇所411を透過した光を検出する検出部403とを備える測定装置を用いれば良い。マイクロ流路401に、マイクロ流路401の延在方向に直列に配列して隣り合う部分が接触して流れる状態に、検体21および凝固活性剤422を導入し、測定箇所411に接触領域423が到達した時点で流れを停止する。この状態で、光源402から出射して接触領域423を透過した光の状態(光強度の時間変化)を検出部403により検出(測定)する。
フィブリンは水に不溶であり、フィブリンが生成されることにより接触領域423の光学特性が変化し、生成されるフィブリンの増加と共に、接触領域423における透過光強度が変化する。従って、検出部403で測定される透過光強度の変化は、フィブリンの生成量(検体に含まれていたフィブリンの量)に対応しており、接触領域423の透過光強度変化により血液凝固能を判定することができる(非特許文献2,非特許文献3参照)。
以上に説明したように、本発明によれば、流路の途中に設けられた測定箇所に凝固活性剤と検体との接触領域が到達した時点で凝固活性剤および検体の流れを停止し、接触領域におけるフィブリンの状態を測定するようにした。この結果、測定結果が、流速変動の影響を受けることが全くない。また、接触領域を移動させずに停止させているので、短い測定箇所であっても、長い時間をかけて測定することが可能となり、より長い時間における反応の状態が確認できるようになる。これにより、十分な凝固反応を起こさせた状態の測定が可能となる。このように、本発明によれば、より容易な測定により、血液や血漿の凝固能がより高い精度で検査できるようになる。
また、不溶化成分であるフィブリンによる汚染を流路内部に大きく拡散せずに最小限の駆動力で凝固能を調べることができ、汚染を小さくとどめることができる。このため、流路内に洗剤を導入するだけで洗浄を完了させることができるなど、洗浄がより容易となり、チップの繰り返し使用がより実現的になる。
なお、本発明は以上に説明した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想内で、当分野において通常の知識を有する者により、多くの変形および組み合わせが実施可能であることは明白である。例えば、本発明は、主要凝固測定項目(PT測定,APTT測定,Fib測定)において適応可能である。
201…基板、202…Au層、203…流路基板、204…マイクロ流路、205…導入口、206…排出口、207…負圧機構、221…光源、222…測定プリズム、2223…測定面、224…センサー。

Claims (3)

  1. 流路の延在方向に直列に配列して隣り合う部分が接触して前記流路を流れる状態に、血液の成分を含む検体および凝固活性剤を前記流路に導入する第1工程と、
    前記流路の途中に設けられた測定箇所に前記凝固活性剤と前記検体との接触領域が到達した時点で前記凝固活性剤および前記検体の流れを停止し、前記接触領域におけるフィブリンの状態を測定する第2工程と、
    測定されたフィブリンの状態により前記検体の血液凝固能を判定する第3工程と
    を備え
    前記第2工程では、前記接触領域における表面プラズモン共鳴測定により測定される表面プラズモン共鳴角度の時間変化により判定される前記凝固活性剤と前記検体との界面位置の時間変化により、接触領域におけるフィブリンの状態を測定することを特徴とする血液凝固検査方法。
  2. 流路の延在方向に直列に配列して隣り合う部分が接触して前記流路を流れる状態に、血液の成分を含む検体および凝固活性剤を前記流路に導入する第1工程と、
    前記流路の途中に設けられた測定箇所に前記凝固活性剤と前記検体との接触領域が到達した時点で前記凝固活性剤および前記検体の流れを停止し、前記接触領域におけるフィブリンの状態を測定する第2工程と、
    測定されたフィブリンの状態により前記検体の血液凝固能を判定する第3工程と
    を備え、
    前記第2工程では、前記接触領域における透過光強度の時間変化により接触領域におけるフィブリンの状態を測定する
    ことを特徴とする血液凝固検査方法。
  3. 請求項1または2記載の血液凝固検査方法において、
    前記血液の成分は、血漿であることを特徴とする血液凝固検査方法。
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