JP5833716B1 - 血液凝固検査方法および血液凝固検査用流路チップ - Google Patents

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Abstract

【課題】マイクロ流路を用いたAPTT測定法による血液凝固検査で、正確な測定ができるようにする。【解決手段】第1流路103は、基板101の上に形成された直線状の管である。第1流路103は、内壁が血漿を含む検体および第1凝固活性剤溶液に対して内壁が90度より小さい接触角を有して毛管力が作用する管径とされ、第1流路103の一端に第1導入部102が接続し、他端に第2導入部104が接続している。第2流路105は、第2導入部104を介し、第1流路103の延長線上に形成された直線状の管である。第2流路105は、水に対して90度より小さい接触角を有して毛管力が作用する管径とされている。第2流路105には、測定箇所112が配置される。【選択図】 図1

Description

本発明は、血液や血漿の凝固能を測定する血液凝固検査方法および血液凝固検査用流路チップに関するものである。
血液凝固活性は、外因系の凝固因子の欠損のスクリーニングや肝機能の異常、さらに経口投与による抗凝血薬療法のモニタリングに用いられる指標などを得るための重要な項目である。
このような血液凝固検査には、PT(プロトロンビン時間:Prothrombin Time)測定法、APTT(活性化部分トロンボプラスチン時間:Activated Partial Thromboplastin Time)測定法、およびフィブリノゲンテストなどが主に用いられている。これらの測定・テストは、病院内の大型分析装置を用いて実施されている。この中で、APTT測定による検査では、凝固反応のトリガーとして、血液が凝固する主にタンパク質(トロンボモジュリンやエラグ酸)およびカルシウムイオンを血漿に混合し、混合開始から凝固完了までの時間(凝固点)を測定し、標準血漿の結果と比較して遅延時間を見積もっている。
この内外因性血液凝固ルートの血液凝固活性を測定するPT法は、現在国際標準化(PT−INR)もされており再現性が高く信頼性の高い検査項目とされている。PT法を物理的に実施する方法として、まず、撹拌抵抗式がある。撹拌抵抗式は、試料(検体)を活性化剤と一緒に導入してフィンで撹拌し、撹拌の抵抗の上昇から血液凝固時間を測定する方法である。
また、PT測定法を実施する方法として光散乱法がある(特許文献1,2,3参照)。光散乱法は、測定容器内で、対象となる血漿に凝固活性化を促す成分を含む試薬を混合し、容器に対し光を入射させ、入射した光の散乱光の光量変化を測定して血液凝固時間を測定する方法である。散乱光量から血液凝固時間を得る方法としては、散乱光量をそのまま利用する方法、散乱光量の微分値を利用する方法、散乱光量がある一定値に達するまでの時間を求める方法がある(特許文献1参照)。
上述した撹拌抵抗式および光散乱法が、血液凝固の検査に現在一般に多く用いられている。これらの他に、熱伝導式、水晶振動子式、磁気ビーズによる凝集測定法(特許文献4参照)などが開発されている。
APTT測定法においては、発明者らにより、マイクロ流路を備えるチップを用い、表面プラズモン共鳴(SPR)測定法で流速を測定することにより凝固活性を検査する方法が提案されている。この検査では、まず、エラグ酸などの凝固活性化剤を混合することによって完全に活性化した血漿試料を測定直前に調製する。次いで、予め塩化カルシウム溶液を満たしてある流路内に調整した血漿試料を導入することで、血漿試料が流路内を進む流速を凝固時間に変換して求めている(特許文献5参照)。また、血漿試料が流路内を移動する過程における屈折率の変化により、凝固能を検査する方法も開発されている。このようなマイクロ流路を用いた流速測定によれば、少量の検体で迅速な凝固活性が測定できるという利点がある。
特開平06−027115号公報 特表2009−506332号公報 特開平09−266798号公報 特表平09−502800号公報 特開2011−232137号公報
ところで、APTT測定法では、血漿にエラグ酸を混合して活性化させた後、この混合液に塩化カルシウム溶液を加えてさらに活性化させている。上述したマイクロ流路を用いる検査では、まず、マイクロ流路導入部に塩化カルシウム溶液を導入し、次いで血漿とエラグ酸との混合溶液を導入し、マイクロ流路に流通させ、マイクロ流路の途中に設けられた測定箇所で、流速や屈折率変化を測定する。
ところが、上述したように各溶液の導入は、ピペットなどを用いて実施されるが、血漿にエラグ酸溶液を加えるときに、気泡が発生しやすい状態となっている。この気泡がマイクロ流路に入り込み、測定箇所を流れていくと、正確な測定を阻害し、測定エラーを引き起こすという問題があった。
本発明は、以上のような問題点を解消するためになされたものであり、マイクロ流路を用いたAPTT測定法による血液凝固検査で、正確な測定ができるようにすることを目的とする。
本発明に係る血液凝固検査方法は、基板の上に形成され、内壁が血漿を含む検体および第1凝固活性剤溶液に対して内壁が90度より小さい接触角を有して毛管力が作用する管径とされた直線状の第1流路と、基板の上に形成されて第1流路の一端に接続された第1導入部と、基板の上に形成されて第1流路の他端に接続された第2導入部と、基板の上に第1流路の延長線上に形成され、水に対して内壁が90度より小さい接触角を有して毛管力が作用する管径とされ、一端が第2導入部に接続された直線状の第2流路と、第2流路の他端に接続された排出口とを備え、第1流路,第2流路,および第2導入部は、基板を共通の底面とし、第1流路が第2導入部に接続する第1流路接続面と、第2流路が第2導入部に接続する第2流路接続面とは、向かい合って配置されている血液凝固検査用流路チップを用い、第2導入部が空の状態で、第1導入部に検体を投入して第1流路の第1流路接続面まで検体で満たし、排出口より水を投入して第2流路の第2流路接続面まで水で満たし、第2流路において水に対して生じる毛細管力よりも小さな力で排出口より水を吸引する状態とする第1ステップと、第1ステップに続き、第2導入部が空の状態で、第1導入部に第1凝固活性剤溶液を投入して第1流路内の検体に第1凝固活性剤溶液を混合して混合検体とする第2ステップと、第2導入部に第2凝固活性剤溶液を投入し、第1流路接続面で混合検体と第2凝固活性剤溶液が接触し、第2流路接続面で水と第2凝固活性剤溶液が接触する状態とし、第1導入部の側より、混合検体,第2凝固活性剤溶液,水が、各々の隣り合う部分が接触して第2流路を流れる状態とする第3ステップと、混合検体と第2凝固活性剤溶液との接触領域が第2流路に設けられた測定箇所を通過していく過程における接触領域の移動速度、または接触領域で生じる屈折率変化を測定する第4ステップと、測定された移動速度または屈折率変化により、検体の血液凝固能を判定する第5ステップとを備える。
上記血液凝固検査方法において、第2導入部は、基板の法線方向に延在する流路から構成すればよい。また、第2導入部は、基板の平面に平行に延在する流路から構成し、基板の平面の法線方向の流路高さを、第1流路および第2流路より高くするものとしてもよい。
また、本発明に係る血液凝固検査用流路チップは、基板の上に形成され、内壁が血漿を含む検体および第1凝固活性剤溶液に対して内壁が90度より小さい接触角を有して毛管力が作用する管径とされた直線状の第1流路と、基板の上に形成されて第1流路の一端に接続された第1導入部と、基板の上に形成されて第1流路の他端に接続された第2導入部と、基板の上に第1流路の延長線上に形成され、水に対して内壁が90度より小さい接触角を有して毛管力が作用する管径とされ、一端が第2導入部に接続された直線状の第2流路と、第2流路の他端に接続された排出口と、第2流路に設けられた測定箇所とを備え、第1流路,第2流路,および第2導入部は、基板を共通の底面とし、第1流路が第2導入部に接続する第1流路接続面と、第2流路が第2導入部に接続する第2流路接続面とは、向かい合って配置されている。
上記血液凝固検査用流路チップにおいて、第2導入部は、基板の法線方向に延在する流路から構成されていればよい。また、第2導入部は、基板の平面に平行に延在する流路から構成され、基板の平面の法線方向の流路高さが、第1流路および第2流路より高くされているものとしてもよい。
以上説明したことにより、本発明によれば、マイクロ流路を用いたAPTT測定法による血液凝固検査で、正確な測定ができるようになるという優れた効果が得られる。
図1は、本発明の実施の形態1において用いられる血液凝固検査用流路チップの構成を示す平面図(a)および断面図(b)である。 図2Aは、本発明の実施の形態1における血液凝固検査方法を説明する各ステップにおける状態を示す構成図である。 図2Bは、本発明の実施の形態1における血液凝固検査方法を説明する各ステップにおける状態を示す構成図である。 図2Cは、本発明の実施の形態1における血液凝固検査方法を説明する各ステップにおける状態を示す構成図である。 図2Dは、本発明の実施の形態1における血液凝固検査方法を説明する各ステップにおける状態を示す構成図である。 図3は、本発明の実施の形態2において用いられる血液凝固検査用流路チップの構成を示す平面図(a)および断面図(b),(c)である。 図4Aは、本発明の実施の形態2における血液凝固検査方法を説明する各ステップにおける状態を示す構成図である。 図4Bは、本発明の実施の形態2における血液凝固検査方法を説明する各ステップにおける状態を示す構成図である。 図4Cは、本発明の実施の形態2における血液凝固検査方法を説明する各ステップにおける状態を示す構成図である。 図4Dは、本発明の実施の形態2における血液凝固検査方法を説明する各ステップにおける状態を示す構成図である。
以下、本発明の実施の形態について図を参照して説明する。
[実施の形態1]
はじめに、本発明の実施の形態1について、図1,図2A〜図2Dを用いて説明する。図1は、本発明の実施の形態1において用いられる血液凝固検査用流路チップの構成を示す平面図(a)および断面図(b)である。また、図2A〜図2Dは、本発明の実施の形態1における血液凝固検査方法を説明する各ステップにおける状態を示す構成図である。ここでは、断面を模式的に示している。
血液凝固検査用流路チップは、第1導入部102,第1流路103,第2導入部104,第2流路105,排出口106を備える。
第1流路103は、基板101の上に形成された直線状の管である。第1流路103は、内壁が血漿を含む検体および第1凝固活性剤溶液に対して内壁が90度より小さい接触角を有して毛管力が作用する管径とされている。このように構成された第1流路103の一端に第1導入部102が接続し、他端に第2導入部104が接続している。第1凝固活性剤は、例えばエラグ酸(C1468)などの接触因子活性化物質である。
第2流路105は、第1流路103の延長線上に形成された直線状の管である。第2流路105は、水に対して90度より小さい接触角を有して毛管力が作用する管径とされている。このように構成された第2流路105の一端が、第2導入部104に接続され、他端が、排出口106に接続されている。また、第2流路105には、測定箇所112が配置される。この例では、基板101の表面にAu層111が形成され、よく知られた表面プラズモン共鳴(SPR)測定法により、測定箇所112を通過する流体の流速、および屈折率変化が測定可能とされている。
ここで、第1流路103,第2流路105,および第2導入部104は、基板101を共通の底面として形成されている。なお、この例では、BK7ガラスからなる基板101と、膜厚50nm程度のAu層111と、溝および貫通穴などにより各流路,導入部,排出口などが形成された流路基板101aとから上記チップが構成され、表面に形成されているAu層111を含めて全体で基板101としている。従って、この例では、第1流路103,第2流路105,および第2導入部104は、Au層111の表面を共通の底面としていることになる。
加えて、第1流路103が第2導入部104に接続する第1流路接続面131と、第2流路105が第2導入部104に接続する第2流路接続面132とは、向かい合って配置されている。このため、第1流路103および第2流路105は、途中に第2導入部104が形成されている連続した流路ともいえる。
なお、流路基板101aは、例えば、ポリジメチルシロキサン(PDMS)から形成すればよい。例えば、流路とする溝部は、幅1mm、深さ(高さ)50μm程度とすればよい。また、基板101と流路基板101aとは個別に作製し、最後に、所定の流路部が測定箇所112に重なるように組み立てればよい。また、第1導入部102,第2導入部104,排出口106は、流路基板101aを貫通して形成されており、基板101の平面に対して垂直な方向に形成された筒状の中空構造である。この中空構造は、大地の側の底部に各流路が接続し、この底部より離れる側に開口端が配置される。従って、例えば第1導入部102に投入された液体中の気泡は、所定時間後に開口端側に上昇していくため、第1流路103に流れ込むことがない。また、実施の形態1では、第2導入部104は、基板101の法線方向に延在する流路から構成されていることになる。
上述した血液凝固検査用流路チップでは、まず、第2導入部104が空の状態で、第1導入部102に検体を投入(導入)すると、検体は第1流路103に滲入する。第1流路103に滲入した検体の先端部は、いずれ第1流路接続面131に到達する。ここで、第1流路103は、検体および第1凝固活性剤溶液に対して内壁が90度より小さい接触角を有して毛管力が作用する管径とされている。このため、第1流路103に滲入した検体は、第1流路接続面131に到達すると、検体に接触していた第1流路103の内壁が存在しなくなり、到達した検体先端面(メニスカス)は、これ以上進行できない状態となる。このことは、検体に第1凝固活性剤溶液が混合されていても同様である。
また、第2導入部104が空の状態で、排出口106より水を供給すると、水は、第2流路105に滲入する。第2流路105に滲入した水の先端部は、いずれ第2流路接続面132に到達する。ここで、第2流路105は、水に対して内壁が90度より小さい接触角を有して毛管力が作用する管径とされている。このため、第2流路105に滲入した水は、第2流路接続面132に到達すると、水に接触していた第2流路105の内壁が存在しなくなり、到達したメニスカスは、これ以上進行できない状態となる。
以上のことにより、第2導入部104が空の状態では、各々導入された検体(検体と第1凝固活性剤溶液との混合液)および水が、第2導入部104に入り込むことがない。これらの構成は、上記材料構成により実現できる。
なお、これらのことは、第1導入部102に供給された液量により働く重力が、第1流路接続面131に形成される液先端面により発生する毛管力を超えない範囲の場合である。また、排出口106に供給された液量による働く重力が、第2流路接続面132に形成される液先端面により発生する毛管力を超えない範囲の場合である。検体などに対して毛細管力が発生する程度の径の流路による血液凝固検査用流路チップでは、第1導入部102や排出口106より供給できる液量には大きな制限があり、これにより発生する重力が、上記毛細管力を超えることはないものと考えられる。
次に、実施の形態1における血液凝固検査方法について図2A〜図2Dを用いて説明する。この血液凝固検査方法では、上述した血液凝固検査用流路チップを用いて実施される。
まず、図2Aに示すように、第2導入部104が空の状態で、第1導入部102に検体121を投入して第1流路103の第1流路接続面131まで検体121で満たす。また、排出口106より水122を投入して第2流路105の第2流路接続面132まで水122で満たす。加えて、第2流路105において水122に対して生じる毛細管力よりも小さな力で、排出口106より水122を吸引する状態とする(第1ステップ)。
例えば、排出口106に図示しない負圧機構を接続し、上記条件となる設定により、第2流路105内の水122を、排出口106を介して牽引(吸引)すればよい。負圧機構は、例えば、ステンレスパイプで接続された廃液タンクおよび負圧ポンプ(MFCS−VAC,Fluigent社製)などから構成すればよい。
この状態では、第2導入部104が空の状態であるため、前述したように、第1流路103内の検体121の気液界面である先端面(メニスカス)は、第1流路接続面131より先には進行できない。また、同様に、第2流路105内の水122も、この気液界面である先端面が、第2流路接続面132より先には進行できない。
次に、第2導入部104が空の状態で、第1導入部102に第1凝固活性剤溶液を投入して第1流路103内の検体121に第1凝固活性剤溶液を混合し、図2Bに示すように、第1流路103の第1流路接続面131まで混合検体123で満たされた状態とする(第2ステップ)。例えば、一般的なAPTT測定法で用いられるエラグ酸などの凝固活性剤であれば、液温を37℃程度としておけば、これらは速やかに混合される。血液凝固検査用流路チップの全体を37℃に温度制御しておけばよい。
以上のように第1凝固活性剤溶液を混合してから所定時間後に、図2Cに示すように、第2導入部104に第2凝固活性剤溶液124を投入し、第1流路接続面131で混合検体123と第2凝固活性剤溶液124が接触し、第2流路接続面132で水122と第2凝固活性剤溶液124が接触する状態とする。このことにより、図2Dに示すように、第1導入部102の側より、混合検体123,第2凝固活性剤溶液124,水122が、各々の隣り合う部分が接触して第2流路105を流れる状態となる(第3ステップ)。第2凝固活性剤溶液124は、例えば塩化カルシウム溶液など、カルシウムイオンを含んだ溶液である。
前述したように、第2流路105においては、内部の水122が、ここで発生する毛細管力よりも小さな力で排出口106の方向に吸引されている。この状態で、上述したように第2凝固活性剤溶液124が投入されると、第1流路接続面131と第2流路接続面132との空間が液体で満たされる。これにより、検体121の先端面、および水122の先端面が、液体である第2凝固活性剤溶液124に触れ、気液界面が消滅する。
この結果、水122に対する吸引力と毛細管力との釣り合いが解消され、水122が排出口106の側に移送される状態となる。これにより、まず、第2凝固活性剤溶液124が、第2流路105に流れ込む。次いで、混合検体123が、第2流路105に流れ込む。これらのことにより、混合検体123,第2凝固活性剤溶液124,水122が、各々の隣り合う部分が接触して第2流路105を流れ、測定箇所112を通過していく状態となる。また、前述したように、混合検体123に発生した気泡は、第1導入部102の開口端側に上昇しており、第1流路103に流れ込むことがなく、第2流路105に流れ込むこともない。
以上の結果、混合検体123と第2凝固活性剤溶液124との接触領域141が第2流路105に設けられた測定箇所112を通過していく過程で、接触領域141の移動速度、または接触領域141で生じる屈折率変化を測定する(第4ステップ)。次いで、測定された移動速度または屈折率変化により、検体121の血液凝固能を判定する(第5ステップ)。上述したように、実施の形態1によれば、気泡の混入が無い状態で測定できるので、マイクロ流路を用いたAPTT測定法による血液凝固検査で、正確な測定ができる。
[実施の形態2]
次に、本発明の実施の形態2について、図3,図4A〜図4Dを用いて説明する。図3は、本発明の実施の形態2において用いられる血液凝固検査用流路チップの構成を示す平面図(a)および断面図(b)である。また、図4A〜図4Dは、本発明の実施の形態2における血液凝固検査方法を説明する各ステップにおける状態を示す構成図である。ここでは、断面を模式的に示している。
血液凝固検査用流路チップは、第1導入部202,第1流路203,第2導入部204,第2流路205,排出口206を備える。また、実施の形態2では、第2導入部204に接続する導入口207を備える。
第1流路203は、基板201の上に形成された直線状の管である。第1流路203は、内壁が血漿を含む検体および第1凝固活性剤溶液に対して内壁が90度より小さい接触角を有して毛管力が作用する管径とされている。このように構成された第1流路203の一端に第1導入部202が接続し、他端に第2導入部204が接続している。第1凝固活性剤は、例えばエラグ酸などの接触因子活性化物質である。
第2流路205は、第1流路203の延長線上に形成された直線状の管である。第2流路205は、水に対して90度より小さい接触角を有して毛管力が作用する管径とされている。このように構成された第2流路205の一端が、第2導入部204に接続され、他端が、排出口206に接続されている。また、第2流路205には、測定箇所212が配置される。この例では、基板201の表面にAu層211が形成され、SPR測定法により、測定箇所212を通過する流体の流速、および屈折率変化が測定可能とされている。
ここで、第1流路203,第2流路205,および第2導入部204は、基板201を共通の底面として形成されている。また、実施の形態2では、第2導入部204は、第2導入部204は、基板201の平面に平行に延在する流路から構成し、基板201の平面の法線方向の流路高さを、第1流路203および第2流路205より高くしている。
なお、実施の形態2でも、BK7ガラスからなる基板201と、膜厚50nm程度のAu層211と、各流路,導入部,排出口などが形成された流路基板201aとから上記チップが構成され、表面に形成されているAu層211を含めて全体で基板201としている。従って、この例では、第1流路203,第2流路205,および第2導入部204は、Au層211の表面を共通の底面としていることになる。
加えて、第1流路203が第2導入部204に接続する第1流路接続面231と、第2流路205が第2導入部204に接続する第2流路接続面232とは、向かい合って配置されている。このため、第1流路203および第2流路205は、途中に第2導入部204が形成されている連続した流路ともいえる。
なお、流路基板201aは、例えば、PDMSから形成すればよい。例えば、第1流路203,第2流路205とする溝部は、幅1mm、深さ(高さ)50μm程度とすればよい。また、第2導入部204は、これらより大きな径とすればよい。また、基板201と流路基板201aとは個別に作製し、最後に、所定の流路部が測定箇所212に重なるように組み立てればよい。また、第1導入部202,導入口207,排出口206は、流路基板201aを貫通して形成されており、基板201の平面に対して垂直な方向に形成された筒状の中空構造である。この中空構造は、大地の側の底部に各流路が接続し、この底部より離れる側に開口端が配置される。従って、例えば第1導入部202に投入された液体中の気泡は、所定時間後に開口端側に上昇していくため、第1流路203に流れ込むことがない。
上述した血液凝固検査用流路チップでは、まず、第2導入部204が空の状態で、第1導入部202に検体を投入(導入)すると、検体は第1流路203に滲入する。第1流路203に滲入した検体の先端部は、いずれ第1流路接続面231に到達する。ここで、第1流路203は、検体および第1凝固活性剤溶液に対して内壁が90度より小さい接触角を有して毛管力が作用する管径とされている。このため、第1流路203に滲入した検体は、第1流路接続面231に到達すると、検体に接触していた第1流路203の内壁が存在しなくなり、到達した検体先端面(メニスカス)は、これ以上進行できない状態となる。このことは、検体に第1凝固活性剤溶液が混合されていても同様である。
また、第2導入部204が空の状態で、排出口206より水を供給すると、水は、第2流路205に滲入する。第2流路205に滲入した水の先端部は、いずれ第2流路接続面232に到達する。ここで、第2流路205は、水に対して内壁が90度より小さい接触角を有して毛管力が作用する管径とされている。このため、第2流路205に滲入した水は、第2流路接続面232に到達すると、水に接触していた第2流路205の内壁が存在しなくなり、到達したメニスカスは、これ以上進行できない状態となる。
以上のことにより、第2導入部204が空の状態では、各々導入された検体(検体と第1凝固活性剤溶液との混合液)および水が、第2導入部204に入り込むことがない。これらの構成は、上記材料構成により実現できる。
なお、これらのことは、第1導入部202に供給された液量により働く重力が、第1流路接続面231に形成される液先端面により発生する毛管力を超えない範囲の場合である。また、排出口206に供給された液量による働く重力が、第2流路接続面232に形成される液先端面により発生する毛管力を超えない範囲の場合である。検体などに対して毛細管力が発生する程度の径の流路による血液凝固検査用流路チップでは、第1導入部202や排出口206より供給できる液量には大きな制限があり、これにより発生する重力が、上記毛細管力を超えることはないものと考えられる。
次に、実施の形態2における血液凝固検査方法について図4A〜図4Dを用いて説明する。この血液凝固検査方法では、上述した血液凝固検査用流路チップを用いて実施される。
まず、図4Aに示すように、第2導入部204が空の状態で、第1導入部202に検体221を投入して第1流路203の第1流路接続面231まで検体221で満たす。また、排出口206より水222を投入して第2流路205の第2流路接続面232まで水222で満たす。加えて、第2流路205において水222に対して生じる毛細管力よりも小さな力で、排出口206より水222を吸引する状態とする(第1ステップ)。
例えば、排出口206に図示しない負圧機構を接続し、上記条件となる設定により、第2流路205内の水222を、排出口206を介して牽引(吸引)すればよい。負圧機構は、例えば、ステンレスパイプで接続された廃液タンクおよび負圧ポンプ(MFCS−VAC,Fluigent社製)などから構成すればよい。
この状態では、第2導入部204が空の状態であるため、前述したように、第1流路203内の検体221の気液界面である先端面(メニスカス)は、第1流路接続面231より先には進行できない。また、同様に、第2流路205内の水222も、この気液界面である先端面が、第2流路接続面232より先には進行できない。
次に、第2導入部204が空の状態で、第1導入部202に第1凝固活性剤溶液を投入して第1流路203内の検体221に第1凝固活性剤溶液を混合し、図4Bに示すように、第1流路203の第1流路接続面231まで混合検体223で満たされた状態とする(第2ステップ)。例えば、一般的なAPTT測定法で用いられるエラグ酸などの凝固活性剤であれば、液温を37℃程度としておけば、これらは速やかに混合される。血液凝固検査用流路チップの全体を37℃に温度制御しておけばよい。
以上のように第1凝固活性剤溶液を混合してから所定時間後に、図4Cに示すように、第2導入部204に第2凝固活性剤溶液224を投入し、第1流路接続面231で混合検体223と第2凝固活性剤溶液224が接触し、第2流路接続面232で水222と第2凝固活性剤溶液224が接触する状態とする。図3に示した導入口207より第2凝固活性剤溶液を導入すればよい。このことにより、図4Dに示すように、第1導入部202の側より、混合検体223,第2凝固活性剤溶液224,水222が、各々の隣り合う部分が接触して第2流路205を流れる状態となる(第3ステップ)。第2凝固活性剤溶液224は、例えば塩化カルシウム溶液など、カルシウムイオンを含んだ溶液である。
前述したように、第2流路205においては、内部の水222が、ここで発生する毛細管力よりも小さな力で排出口206の方向に吸引されている。この状態で、上述したように第2凝固活性剤溶液224が投入されると、第1流路接続面231と第2流路接続面232との空間が液体で満たされる。これにより、検体221の先端面、および水222の先端面が、液体である第2凝固活性剤溶液224に触れ、気液界面が消滅する。
この結果、水222に対する吸引力と毛細管力との釣り合いが解消され、水222が排出口206の側に移送される状態となる。これにより、まず、第2凝固活性剤溶液224が、第2流路205に流れ込む。次いで、混合検体223が、第2流路205に流れ込む。これらのことにより、混合検体223,第2凝固活性剤溶液224,水222が、各々の隣り合う部分が接触して第2流路205を流れ、測定箇所212を通過していく状態となる。また、前述したように、混合検体223に発生した気泡は、第1導入部202の開口端側に上昇しており、第1流路203に流れ込むことがなく、第2流路205に流れ込むこともない。
以上の結果、混合検体223と第2凝固活性剤溶液224との接触領域241が第2流路205に設けられた測定箇所212を通過していく過程で、接触領域241の移動速度、または接触領域241で生じる屈折率変化を測定する(第4ステップ)。次いで、測定された移動速度または屈折率変化により、検体221の血液凝固能を判定する(第5ステップ)。上述したように、実施の形態2においても、気泡の混入が無い状態で測定できるので、マイクロ流路を用いたAPTT測定法による血液凝固検査で、正確な測定ができる。
以上に説明したように、本発明では、第1導入口において一方の凝固活性剤を検体に混合して流路に導入し、測定箇所を設けた流路に到達する前に配置されている第2流路より他方の凝固活性剤を導入するようにした。この結果、測定箇所を設けた流路への気泡の混入が防げるようになる。また、上記混合を、少ない試料で効果的に実施できるため、測定ごとの混合状態の違いによる測定誤差が抑制できるようになる。このように、本発明によれば、マイクロ流路を用いたAPTT測定法による血液凝固検査で、正確な測定ができるようになる。また、検体と凝固活性剤との混合における加熱を、チップにおいて実施できるので、測定時間の短縮も実現できるようになる。
なお、本発明は以上に説明した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想内で、当分野において通常の知識を有する者により、多くの変形および組み合わせが実施可能であることは明白である。例えば、各流路は、断面矩形に限るものではなく、断面円形の流路であってもよい。また、第1凝固活性剤を塩化カルシウムなどのカルシウムイオン供給源とし、第2凝固活性剤をエラグ酸などの接触因子活性化物質としてもよい。
101…基板、101a…流路基板、102…第1導入部、103…第1流路、104…第2導入部、105…第2流路、106…排出口、111…Au層、112…測定箇所、131…第1流路接続面、132…第2流路接続面、141…接触領域。

Claims (6)

  1. 基板の上に形成され、内壁が血漿を含む検体および第1凝固活性剤溶液に対して内壁が90度より小さい接触角を有して毛管力が作用する管径とされた直線状の第1流路と、
    前記基板の上に形成されて前記第1流路の一端に接続された第1導入部と、
    前記基板の上に形成されて前記第1流路の他端に接続された第2導入部と、
    前記基板の上に前記第1流路の延長線上に形成され、水に対して内壁が90度より小さい接触角を有して毛管力が作用する管径とされ、一端が前記第2導入部に接続された直線状の第2流路と、
    前記第2流路の他端に接続された排出口と
    を備え、
    前記第1流路,前記第2流路,および前記第2導入部は、前記基板を共通の底面とし、
    前記第1流路が前記第2導入部に接続する第1流路接続面と、前記第2流路が前記第2導入部に接続する第2流路接続面とは、向かい合って配置されている
    血液凝固検査用流路チップを用い、
    前記第2導入部が空の状態で、前記第1導入部に前記検体を投入して前記第1流路の前記第1流路接続面まで前記検体で満たし、前記排出口より水を投入して前記第2流路の前記第2流路接続面まで水で満たし、前記第2流路において水に対して生じる毛細管力よりも小さな力で前記排出口より前記水を吸引する状態とする第1ステップと、
    前記第1ステップに続き、前記第2導入部が空の状態で、前記第1導入部に前記第1凝固活性剤溶液を投入して前記第1流路内の前記検体に前記第1凝固活性剤溶液を混合して混合検体とする第2ステップと、
    前記第2導入部に第2凝固活性剤溶液を投入し、前記第1流路接続面で前記混合検体と前記第2凝固活性剤溶液が接触し、前記第2流路接続面で水と前記第2凝固活性剤溶液が接触する状態とし、前記第1導入部の側より、前記混合検体,前記第2凝固活性剤溶液,前記水が、各々の隣り合う部分が接触して前記第2流路を流れる状態とする第3ステップと、
    前記混合検体と前記第2凝固活性剤溶液との接触領域が前記第2流路に設けられた測定箇所を通過していく過程における前記接触領域の移動速度、または前記接触領域で生じる屈折率変化を測定する第4ステップと、
    測定された移動速度または屈折率変化により、前記検体の血液凝固能を判定する第5ステップと
    を備えることを特徴とする血液凝固検査方法。
  2. 請求項1記載の血液凝固検査方法において、
    前記第2導入部は、前記基板の法線方向に延在する流路から構成することを特徴とする血液凝固検査方法。
  3. 請求項1記載の血液凝固検査方法において、
    前記第2導入部は、前記基板の平面に平行に延在する流路から構成し、前記基板の平面の法線方向の流路高さを、前記第1流路および前記第2流路より高くすることを特徴とする血液凝固検査方法。
  4. 基板の上に形成され、内壁が血漿を含む検体および第1凝固活性剤溶液に対して内壁が90度より小さい接触角を有して毛管力が作用する管径とされた直線状の第1流路と、
    前記基板の上に形成されて前記第1流路の一端に接続された第1導入部と、
    前記基板の上に形成されて前記第1流路の他端に接続された第2導入部と、
    前記基板の上に前記第1流路の延長線上に形成され、水に対して内壁が90度より小さい接触角を有して毛管力が作用する管径とされ、一端が前記第2導入部に接続された直線状の第2流路と、
    前記第2流路の他端に接続された排出口と、
    前記第2流路に設けられた測定箇所と
    を備え、
    前記第1流路,前記第2流路,および前記第2導入部は、前記基板を共通の底面とし、
    前記第1流路が前記第2導入部に接続する第1流路接続面と、前記第2流路が前記第2導入部に接続する第2流路接続面とは、向かい合って配置されている
    ことを特徴とする血液凝固検査用流路チップ。
  5. 請求項4記載の血液凝固検査用流路チップにおいて、
    前記第2導入部は、前記基板の法線方向に延在する流路から構成されていることを特徴とする血液凝固検査用流路チップ。
  6. 請求項4記載の血液凝固検査用流路チップにおいて、
    前記第2導入部は、前記基板の平面に平行に延在する流路から構成され、前記基板の平面の法線方向の流路高さが、前記第1流路および前記第2流路より高くされていることを特徴とする血液凝固検査用流路チップ。
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