JP5943713B2 - 表面被覆切削工具 - Google Patents

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本発明は、焼入れ鋼等の高硬度鋼の切削加工において、硬質被覆層がすぐれた切削性能を発揮する表面被覆切削工具(以下、被覆工具という)に関する。
従来、鋼、鋳鉄等の鉄系被削材の切削加工には、被削材との親和性の低い工具材料として、立方晶窒化硼素(以下、cBN)基超高圧焼結材料が用いられているが、cBNの特性を生かすため、切削工具の基体材料にcBN層を被覆形成した被覆工具も良く知られている。
例えば、特許文献1に示すように、炭化タングステン基合金等を基体とし、この基体表面に、周期律表の第4族金属(Ti、Zr、Hf)、第5族金属(V、Nb、Ta)、前記第4族金属及び第5族金属の窒化物又は硼化物或いは硼窒化物の内から選ばれるいずれか1種以上の成分よりなる中間層を形成し、中間層の表面に、cBNを主成分とする表面層を被覆した被覆工具が知られており、この被覆工具は高硬度、耐摩耗性、耐熱性等を備えることが知られている。
また、特許文献2に示すように、超硬合金、サーメット等の基体に、中間層と外層とを被覆した被覆工具において、外層に隣接する中間層上部は、Zr、Hf、V、Ta、Nb、Cr、Mo、Wの硼化物、炭化硼素およびこれらの相互固溶体の中の少なくとも1種から構成し、また、外層は、cBNから構成した被覆工具が知られており、この被覆工具は耐剥離性、耐摩耗性に優れることが知られている。
特開2010−99916号公報 特開平8−165558号公報
近年の切削加工装置のFA化はめざましく、一方で切削加工に対する省力化および省エネ化、さらに低コスト化が要請される傾向にあるが、上記従来の被覆工具においては、通常条件下での切削加工に用いた場合には特段の問題は生じない。しかし、これを、焼入れ鋼等の高硬度鋼の切削に用いた場合には、工具基体とcBN層との付着強度が十分でないため、特に切削初期に、これが原因で、チッピング、欠損を発生しやすく、そのため、比較的短時間で使用寿命に至り、長期の使用に亘って、十分な耐摩耗性を発揮することができない。
したがって、長期の使用に亘って、すぐれた切削性能を発揮させるためには、工具基体とcBNからなる硬質被覆層の付着強度を向上させることが大きな課題となっている。
本発明者等は、炭化タングステン基超硬合金または炭窒化チタン基サーメットを工具基体材料とし、cBNからなる硬質被覆層を形成した被覆工具において、基体と硬質被覆層間の付着強度を確保・向上させるための下部層および中間層について鋭意研究したところ、次のような知見を得た。
本発明は、炭化タングステン基超硬合金または炭窒化チタン基サーメットからなる工具基体表面に、硬質被覆層としてのcBN層を被覆形成するにあたり、工具基体表面とcBN層との間に、下部層および中間層を介在形成し、かつ、該下部層を所定の層厚を有する炭化ジルコニウム層からなる層、中間層を所定の層厚を有する硼化ジルコニウムと窒化ジルコニウムと酸化ジルコニウムの混合層からなる中間層で構成することにより、衝撃により発生する応力を緩和し、工具基体とcBN層とが強固な付着強度を備えるようになることを見出したのである。そして、本発明の被覆工具は、上記下部層および中間層を工具基体表面とcBN層との間に介在形成することによって、焼入れ鋼等の高硬度鋼の切削に用いた場合でも、特に、切削初期にチッピング、欠損等を発生することはなく、長期の使用に亘って、すぐれた切削性能を発揮するとともに、工具寿命の延命化が図られることを見出したのである。
本発明は、上記知見に基づいてなされたものであって、
「(1) 炭化タングステン基超硬合金または炭窒化チタン基サーメットで構成された工具基体の表面に、工具基体側から順に、下部層、中間層および上部層からなる硬質被覆層が形成されている表面被覆切削工具において、
(a)下部層は、0.5〜10.0μmの平均層厚を有する炭化ジルコニウム層、
(b)中間層は、0.1〜2.0μmの平均層厚を有する硼化ジルコニウムと窒化ジルコニウムと酸化ジルコニウムの混合層からなり、該層の断面の5〜90面積%を酸化ジルコニウムが占め、
(c)上部層は、0.1〜10.0μmの平均層厚を有する立方晶窒化硼素層であって、該層は、結晶粒の平均短径が10〜300nmの柱状晶組織を有し、
また、Cu管球を用いた薄膜X線回折により入射角度0.5°にて測定した場合、(111)のピークの半価幅が1.5度以下であり、
さらに、ナノインデンテーション硬さが50〜75GPaであることを特徴とする表面被覆切削工具。
(2) 上記中間層において、その断面の60〜90面積%を、層状の酸化ジルコニウムが占めていることを特徴とする前記(1)に記載の表面被覆切削工具。
(3) 上記中間層において、その断面の5〜40面積%を、粒径が0.5μm以下の粒状の酸化ジルコニウムが占めていることを特徴とする前記(1)に記載の表面被覆切削工具。」
を特徴とするものである。
本発明について、以下に説明する。
図1および図2に示すように、まず、本発明の被覆工具の硬質被覆層の層構造は、工具基体6側から、下部層3、中間層2、上部層1の順に構成されている。
下部層:
下部層である炭化ジルコニウム層は、高温において安定であり、硬度も高く、かつ、工具基体と中間層である硼化ジルコニウムと窒化ジルコニウムと酸化ジルコニウムの混合層からなる層との強固な密着性を確保する。しかし、炭化ジルコニウム層の層厚が0.5μm未満の場合には、付着強度の維持ができず、一方、その層厚が10.0μmを超える場合には、炭化ジルコニウム層の内部残留応力が高くなり、高速切削加工時に剥離を生じる恐れがある。
したがって、本発明では、下部層である炭化ジルコニウム層の層厚を0.5〜10.0μmと定めた。
中間層:
中間層は硼化ジルコニウムと窒化ジルコニウムと酸化ジルコニウムより構成される。中間層中の酸化ジルコニウムは、耐熱性に優れ、衝撃により発生する応力を緩和し、チッピング、欠損の発生を抑制する。酸化ジルコニウムは中間層内に層状または粒状に形成される。中間層の断面(以下、「縦断面」を、単に、「断面」という)に占める酸化ジルコニウムの面積割合が5面積%未満の場合、衝撃により発生する応力を緩和する効果が小さく、90面積%を超えると、中間層の強度が低下するため、中間層の断面に占める酸化ジルコニウムの面積割合を5〜90面積%とした。
図1に示すように酸化ジルコニウムが層状に形成される場合には、切削時に発生する熱に対する耐熱性が高く、耐摩耗性の向上に効果が強く表れる。ただ、中間層の断面に占める酸化ジルコニウムの面積割合が60面積%未満では、切削時の耐熱性がわずかではあるが低下するため、耐熱性、耐摩耗性の観点を特に重視した場合には、中間層の断面に占める酸化ジルコニウムの好ましい面積割合は60〜90面積%である。
図2に示すように酸化ジルコニウムが粒状に形成される場合には、刃先に断続的な力が働く場合の応力が緩和されることにより、切れ刃にチッピング、欠損の発生を抑制する効果が得られる。ただ、中間層の断面に占める酸化物の面積割合が5%未満あるいは40面積%を超えると応力緩和の効果がわずかではあるが小さくなり、断続切削に用いた場合に刃先にチッピングを生じやすい傾向が現れ、また粒径が0.5μmを超えた場合も、断続切削時に刃先にチッピングが生じやすい傾向がみられる。このため、耐チッピング性等の耐異常損傷性を重視した場合には、中間層の断面に占める酸化ジルコニウムの好ましい面積割合は5〜40面積%であり、また、酸化ジルコニウムの粒径は0.5μm以下である。
中間層の断面に占める酸化ジルコニウムの面積割合が40面積%を超え60面積%未満の場合は、中間層の酸化ジルコニウムの粒径が0.5μmを超え、粒状の酸化ジルコニウムが層に近い状態として形成される。この状態においても耐摩耗性の向上や断続切削におけるチッピング、欠損の発生を抑制する効果が認められる。
中間層に形成される硼化ジルコニウムは層状または粒状に形成され、中間層の断面に占める硼化ジルコニウムの面積割合は10面積%以下である。中間層に形成される窒化ジルコニウムは層状に形成され、中間層の断面に占める窒化ジルコニウムの面積割合は90面積%以下の範囲で形成される。
中間層の層厚が0.1μm未満の場合には、下部層と上部層間の付着強度を確保することができず、一方、その層厚が2.0μmを超える場合には、耐摩耗性が低下する。したがって、本発明では、中間層の層厚を0.1〜2.0μmと定めた。
下部層および中間層の形成法:
下部層は、例えば、Arガス雰囲気中で、DCスパッタ法でZr金属層を超硬合金基体の表面に蒸着し、その後、このZr金属層を真空加熱装置で真空加熱処理することで、超硬合金基体中の炭素がZr金属層に拡散・固溶し、Zr金属層が炭化されることで形成される。他にCVD法などで炭化ジルコニウムを蒸着することも可能である。
中間層は、例えば、微量の酸素を含むArガス雰囲気中で、DCスパッタ法によりZr金属層を下部層の表面に蒸着することで、微量酸素を含むZr金属層が形成される。その後、この微量酸素を含むZr金属層の表面上へ、例えば、DCアークジェットプラズマ装置でcBN層を蒸着することによって形成することが可能である。
即ち、Zr金属層の表面にcBN層が蒸着される際に、Zr金属層の硼化、窒化および酸化が同時に進行することによって形成される。また、中間層内の酸化ジルコニウムの形態は、中間層蒸着時のArガスに含まれる酸素濃度により制御される。すなわち、Arガスに含まれる酸素濃度が高い場合は中間層内の酸化ジルコニウムが層状に形成され、酸素濃度が低い場合は酸化ジルコニウムが粒状に形成される。
上部層(cBN層):
上部層であるcBN層は、上記のとおり、Zr金属層の表面に、例えば、DCアークジェットプラズマ装置によって形成することができるが、形成したcBN層の層厚が、0.1μm未満の場合には、長期の使用にわたって、すぐれた耐摩耗性を発揮することができず、一方、その層厚が10.0μmを超える場合には、チッピングを発生しやすくなるので、上部層であるcBN層の層厚は、0.1〜10.0μmと定めた。
cBN層は、例えば下記のように蒸着される。下部層および中間層が蒸着された基体を冷却機構を備えたチャンバー内のホルダーに固定し、真空排気装置にて10−1Pa以下までチャンバー内を減圧後、Hを15sccm、Arガスを20slm導入し、アーク電流およびアーク電圧を制御し、アークジェットプラズマをチャンバー内に発生させ、基体に−60〜−80Vの高周波バイアスを印加し、基体の表面をプラズマによりクリーニング処理をした後、Heガスで10%に希釈されたBFガスを43〜48sccm、Nガスを0.6〜1.0slm導入し、チャンバー内の圧力を6650Paに維持する。蒸着時の基体温度を830〜1050℃の範囲に、より好ましくは880〜970℃の範囲になるように、アーク電流およびアーク電圧を制御し、基体に印加するバイアスを−60〜−80Vの範囲で所定時間制御することにより、本発明のcBN層が中間層上に蒸着される。
図3に本発明で得られた上部層の断面の透過電子顕微鏡像の模式図を示す。本発明のcBN層の結晶粒の平均短径が10〜300nmの柱状晶組織を有することが透過電子顕微鏡により確認できる。またcBN層の結晶はcBNより構成されることが電子線回折像によって確認できる。基体に印加するバイアスを−30〜−50V、蒸着時の基体の温度を1050℃超え1100℃未満の範囲でcBN層を蒸着する条件(高温、低バイアス条件)では、cBN層の結晶粒の平均短径が300nmを超え、cBN層の剥離、工具基体の変形および切削時にcBN層の結晶粒の脱落を生じやすい。
また基体に印加するバイアスを−60〜−80V、蒸着時の基体の温度を750℃以上830℃未満の範囲でcBN層を蒸着する条件(低温条件)では、cBN層の結晶の平均短径が10nm未満となるため、cBN層の耐摩耗性そのものも低く、切削性能が低下する。このためcBN層の平均短径を10〜300nmとした。
基体に印加するバイアスを−30〜−50V、蒸着時の基体の温度を750℃以上830℃未満の範囲でcBN層を蒸着する条件(低温、低バイアス条件)では、cBN層について、Cu管球を用いた薄膜X線回折により入射角度0.5°にて測定した場合、低温、低バイアス条件におけるcBNの(111)のピークの半価幅は1.5度を越え、結晶性が低下し、十分な耐摩耗性を発現しない。このためcBNの(111)ピークの半価幅を1.5度以下とした。また低温、低バイアス条件におけるcBN層のナノインデンテーション硬さは50GPa未満となり、十分な耐摩耗性を発現しない。また、cBN層のナノインデンテーション硬さが75GPaを超えるものは、今回の試験では得られていないが、得られたとしても、cBN層の残留応力が高いために、チッピングまたは剥離を生じやすくなるため、cBN層のナノインデンテーション硬さを50〜75GPaとした。
上記のとおり、本発明の被覆工具の硬質被覆層は、下部層と中間層と上部層で構成され、さらに、下部層が炭化ジルコニウム、中間層が硼化ジルコニウムと窒化ジルコニウムと酸化ジルコニウムから構成されることによって、工具基体と上部層であるcBN層の付着強度が高められ、その結果、焼入れ鋼等の高硬度鋼の切削に用いた場合でも、チッピング、欠損等の発生の恐れはなく、長期の使用にわたって、すぐれた切削性能を発揮し、工具寿命の大幅な延長を図ることが可能である。
この発明の被覆工具の硬質被覆層の層構造の一例を示す概略説明図である。 この発明の被覆工具の硬質被覆層の層構造の他の例を示す概略説明図である。 この発明で得られた上部層の透過電子顕微鏡像の模式図を示す。 工具基体上に下部層、中間層を形成後、さらに上部層を蒸着した一つの例の硬質被覆層の断面(模式図は図1参照)のSEM像である。 図4の白線内をオージェ電子分光分析法により面分析測定を実施した結果である。 工具基体上に下部層、中間層を形成後、さらに上部層を蒸着した他の例の硬質被覆層の断面(模式図は図2参照)のSEM像である。 図6の白線内をオージェ電子分光分析法により面分析測定を実施した結果である。
以下に、本発明の被覆工具を実施例に基づいて説明する。
なお、ここでは工具基体材料として超硬合金基体を使用した場合について説明するが、工具基体として、サーメットを使用することももちろん可能である。また下部層としてCVD法などで炭化ジルコニウムを蒸着することも可能である。
(a) 原料粉末として、いずれも0.5〜1.0μmの平均粒径を有するWC粉末、TiC粉末、VC粉末、TaC粉末、NbC粉末、Cr32粉末、およびCo粉末を用意し、これら原料粉末を、表1に示される配合組成に配合し、ボールミルで24時間湿式混合し、乾燥した後、100MPaの圧力で圧粉体にプレス成形し、この圧粉体を6Paの真空中、温度:1400℃に1時間保持の条件で焼結し、所定寸法に外周加工した後、切刃部に幅:0.13mm、角度25°のホーニング加工を施し、仕上げ研磨を施すことにより、いずれもWC基超硬合金からなり、かつISO規格SPGN090308のインサート形状をもった超硬合金製工具基体1〜10を製造した。

(b) ついで、上記超硬合金製工具基体1〜10をDCスパッタ装置に装入し、超硬合金製工具基体の温度を100〜200℃に維持し、アルゴンガスの雰囲気で圧力を0.3〜0.4Paに維持し、表2に示す所定時間Zr金属層を蒸着し、
(c) ついで、真空加熱装置内に装入し、上記(b)で蒸着したZr金属層を1100℃にて1時間真空加熱処理し、超硬合金製工具基体の炭素を中間層に拡散させて、炭化ジルコニウム層を形成させ、
(d) ついで、DCスパッタ装置に装入し、超硬合金製工具基体の温度を100〜200℃に維持し、中間層内に酸化ジルコニウムを層状に形成させる場合は、アルゴン内の酸素ガスの濃度が80〜100ppm、中間層内に酸化ジルコニウムを粒状に形成させる場合はアルゴンガス内の酸素ガスの濃度が10〜50ppmに調整された混合ガスを導入し、かつ圧力を0.3〜0.4Paに維持する、表3に示す条件で、表4に示す所定時間微量の酸素を含むZr金属層を蒸着し、
(e) ついで、DCアークジェットプラズマ装置内に装入し、上記(d)で蒸着したZr金属層の表面に、Ar、H混合ガスを流入させて圧力を6650Paに維持し、8kWのDCアークジェットプラズマで、Zr金属層の表面をクリーニングした後、Heガスで10%に希釈されたBFガスを43〜48sccm、Nガスを0.6〜1.0slm導入し、蒸着時の基体温度を830〜1050℃の範囲になるように、アーク電流、アーク電圧を制御し、超硬合金製工具基体に−60〜−80VのRFバイアスを印加する、表5の条件で、cBN層を形成することにより、炭化ジルコニウムからなる下部層と硼化ジルコニウムと窒化ジルコニウムと酸化ジルコニウムの混合層からなる中間層を形成するとともに、所定層厚のcBNからなる上部層を形成することにより、本発明の被覆工具1〜15(以下、本発明工具1〜15という)を製造した。




比較のために、
(a’) 上記超硬合金製工具基体1〜10をDCスパッタ装置に装入し、超硬合金製工具基体の温度を100〜200℃に維持し、表6に示される所定時間Zr金属層を蒸着形成し、
(b’) ついで、真空加熱装置内に装入し、上記(a’)で蒸着したZr金属層を表6に示す所定の温度で1時間真空加熱処理し、超硬合金製工具基体の炭素を中間層に拡散させて、炭化ジルコニウム層を形成させ、
(c’) ついで、DCスパッタ装置に装入し、超硬合金製工具基体の温度を100〜200℃に維持し、アルゴンガス内の酸素ガスの濃度が10〜150ppmに調整された混合ガスを導入し、圧力を0.3〜0.4Pa維持する表3に示す条件で、表7に示す所定時間微量の酸素を含むZr金属層を蒸着し、
(d’) ついで、DCアークジェットプラズマ装置内に装入し、上記(c’)で蒸着したZr金属層の表面に、Ar、H混合ガスを流入させて圧力を6650Paに維持し、8kWのDCアークジェットプラズマでZr金属層の表面をクリーニングし、Heガスで10%に希釈されたBFガスを43〜48sccm、Nガスを0.6〜1.0slm導入し、蒸着時の基体温度を750〜1100℃の範囲になるように、アーク電流、アーク電圧を制御し、超硬合金製工具基体に−30〜−80VのRFバイアスを印加する、表8の条件で、cBN層を形成することにより、比較被覆工具1〜16(以下、比較例工具1〜16という)を製造した。また、参考のため超硬合金製工具基体に対して上記工程(b)〜(d)を行わず、工程(e)を実施したがcBN層が蒸着終了後に剥離を生じたため、評価は実施されなかった。



本発明工具1〜15および比較例工具1〜16のcBN層において、透過電子顕微鏡を用いて基体表面の方向に5μm、層厚方向に5μmの領域を観察し、透過電子顕微鏡で得られた任意の10個の結晶粒における基体表面の方向の結晶の粒径を測定した結果の相加平均を平均短径とした。cBN層の平均短径を測定したところ、本発明工具1〜15については、いずれも所定の平均短径であることを確認した。
本発明工具1〜15および比較例工具1〜16のcBN層において、Cu管球を用いた薄膜X線回折により入射角度0.5°にてcBNの(111)のピークの半価幅を測定した。
本発明工具1〜15および比較例工具1〜16のcBN層のナノインデンテーション硬さをナノインデンテーションを用い、cBN層の層厚に対する押し込み深さが1/10を超えない荷重で測定し、各試料の20ヶ所の平均値を示した。
また、本発明工具1〜15および比較例工具1〜16の各層の層厚を走査型電子顕微鏡を用いて断面測定し、5ヶ所の相加平均値を層厚とした。下部層および中間層の組成は、界面より層厚方向に0.2μmの領域をオージェ電子分光分析法により測定したところ、所定の層材質で構成されていることを確認した。また、中間層の断面を十分に測定することが可能な領域、例えば基体表面の方向に4μm層厚方向に4μmの中間層の領域において、オージェ電子分光分析法により面分析測定し、測定範囲内の中間層の断面における酸化物、硼化物、窒化物のそれぞれの面積割合を計測し、本発明工具1〜5の中間層の断面における酸化ジルコニウムが層状に形成され、本発明工具6〜10の断面における酸化ジルコニウムが粒状に形成され、本発明工具11〜15の中間層の断面における酸化ジルコニウムが層状または粒状に形成されていることを確認した。
図4に、工具基体6上に下部層3、中間層2(酸化ジルコニウムは層状)を形成後、さらに上部層1を蒸着した一つの例の硬質被覆層の断面(模式図は図1参照)のSEM像を示す。
また、図5に、図4の白線内をオージェ電子分光分析法により面分析測定を実施した結果を示す。図5によれば、中間層2に酸素が層状に確認される。また下部層3に炭素が確認された。
図6に、工具基体6上に下部層3、中間層2(酸化ジルコニウムは粒状)を形成後、さらに上部層1を蒸着した他の例の硬質被覆層の断面(模式図は図2参照)のSEM像を示す。
また、図7に、図6の白線内をオージェ電子分光分析法により面分析測定を実施した結果を示す。図7によれば、中間層2に酸素が粒状に確認され、下部層3に炭素が確認された。
これらの測定値および酸化物の状態を表9、表10に示す。


上記の本発明工具1〜15および比較例工具1〜16を用い、以下の切削条件1、2で切削加工試験を実施した。
《切削条件1》
被削材:JIS・SCM415(HRC59)の丸棒、
切削速度: 130 m/min、
送り: 0.12 mm/rev、
切込み: 0.13 mm、
切削時間: 3 分
の条件での、高速乾式連続切削加工試験(通常の切削速度は、100m/min)
《切削条件2》
被削材:JIS・SCr420(HRC60)の4溝スリット入り丸棒、
切削速度: 110 m/min、
送り: 0.11mm/rev、
切込み: 0.12mm、
切削時間: 3 分
の条件での、高速乾式断続切削加工試験(通常の切削速度は90m/min)を行い、切刃の逃げ面摩耗幅を測定した。
上記切削条件1、2による切削加工試験の測定結果を表11に示した。

表9〜11に示される結果から、本発明の被覆工具1〜5は、工具基体の上に、下部層として炭化ジルコニウム層、中間層として硼化ジルコニウムと窒化ジルコニウムと層状の酸化ジルコニウムの混合層、上部層であるcBN層を被覆形成していることから、焼入れ鋼等の高硬度鋼の高速乾式連続切削加工に用いた場合でも、長期の使用にわたって、すぐれた耐摩耗性を発揮し、工具寿命の大幅な延長が図られている。
本発明の被覆工具6〜10は、工具基体の上に、下部層として炭化ジルコニウム層、中間層として硼化ジルコニウムと窒化ジルコニウムと粒状の酸化ジルコニウムの混合層、上部層であるcBN層を被覆形成していることから、焼入れ鋼等の高硬度鋼の高速乾式断続切削加工に用いた場合でも、すぐれた耐チッピング性、耐欠損性を示し、工具寿命の大幅な延長が図られている。
本発明の被覆工具11〜15は、工具基体の上に、下部層として炭化ジルコニウム層、中間層として硼化ジルコニウムと窒化ジルコニウムと層状または粒状の酸化ジルコニウム、上部層であるcBN層を被覆形成していることから、焼入れ鋼等の高硬度鋼の高速乾式連続及び断続切削加工に用いた場合でも、すぐれたチッピング性、耐欠損性を示すとともに、長期の使用にわたって、すぐれた耐摩耗性を発揮し、工具寿命の大幅な延長が図られている。
これに対して、比較例の被覆工具1〜16においては、工具基体とcBN層との付着強度が劣るため、チッピング、剥離、欠損等を発生し、比較的短時間で使用寿命に至ることが明らかである。
上述のように、この発明の被覆工具は、高硬度鋼の切削加工用の切削工具として好適であり、切削加工装置の高性能化、並びに切削加工の省力化および省エネ化、さらに低コスト化に十分満足に対応できるものであるが、各種の鋼や鋳鉄などの通常の切削条件での切削加工にも勿論使用可能である。
1 上部層
2 中間層
3 下部層
4 硼化ジルコニウムと窒化ジルコニウムが混合した層
5 酸化ジルコニウム
6 工具基体
7 cBN層の結晶粒
8 cBN層の結晶粒の短径
9 クロスセクションポリッシャー(CP)加工後の堆積物


Claims (3)

  1. 炭化タングステン基超硬合金または炭窒化チタン基サーメットで構成された工具基体の表面に、工具基体側から順に、下部層、中間層および上部層からなる硬質被覆層が形成されている表面被覆切削工具において、
    (a)下部層は、0.5〜10.0μmの平均層厚を有する炭化ジルコニウム層、
    (b)中間層は、0.1〜2.0μmの平均層厚を有する硼化ジルコニウムと窒化ジルコニウムと酸化ジルコニウムの混合層からなり、該層の断面の5〜90面積%を酸化ジルコニウムが占め、
    (c)上部層は、0.1〜10.0μmの平均層厚を有する立方晶窒化硼素層であって、該層は、結晶粒の平均短径が10〜300nmの柱状晶組織を有し、
    また、Cu管球を用いた薄膜X線回折により入射角度0.5°にて測定した場合、(111)のピークの半価幅が1.5度以下であり、
    さらに、ナノインデンテーション硬さが50〜75GPaであることを特徴とする表面被覆切削工具。
  2. 上記中間層において、その断面の60〜90面積%を、層状の酸化ジルコニウムが占めていることを特徴とする請求項1に記載の表面被覆切削工具。
  3. 上記中間層において、その断面の5〜40面積%を、粒径が0.5μm以下の粒状の酸化ジルコニウムが占めていることを特徴とする請求項1に記載の表面被覆切削工具。
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