JP5321356B2 - 表面被覆切削工具 - Google Patents
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Description
さらに、被覆工具と被削材間の潤滑性を高め切削抵抗を低減するために、硬質被覆層の最表面に潤滑層を形成することも知られている。
「(1) 炭化タングステン基超硬合金、炭窒化チタン基サーメットまたは立方晶窒化ほう素基超高圧焼結材料からなる工具基体の表面に、硬質被覆層として、チタンの窒化物層、チタンの炭窒化物層、チタンとアルミニウムの複合窒化物層のうちから選ばれる少なくとも一層が、0.5〜5μmの合計平均層厚で蒸着形成されている表面被覆切削工具において、
上記硬質被覆層の最表面に、さらに、100〜500nmの膜厚の非晶質二酸化珪素膜が形成されていることを特徴とする表面被覆切削工具。
(2) 上記チタンとアルミニウムの複合窒化物層は、
組成式:(Ti1−XAlX)N
で表した場合、Xが0.15〜0.65(但し、原子比)を満足する前記(1)に記載の表面被覆切削工具。」
に特徴を有するものである。
TiN層、TiCN層、TiAlN層:
この発明の被覆工具は、表面被覆切削工具としての工具特性の向上を図るために、よく知られている硬質被覆層である、チタンの窒化物(TiN)層、チタンの炭窒化物(TiCN)層、チタンとアルミニウムの複合窒化物(TiAlN)層のうちの少なくとも一層からなる硬質被覆層を、例えば、アークイオンプレーティング等により、0.5〜5μmの合計平均層厚で蒸着形成する。
ここで、硬質被覆層の合計平均層厚が0.5μm未満では、長期の使用に亘ってすぐれた耐摩耗性を発揮することができず、一方、合計平均層厚が5μmを超えると、チッピング、欠損等の異常損傷を発生しやすくなるので、硬質被覆層の合計平均層厚は0.5〜5μmと定める。
また、硬質被覆層であるTiN層はすぐれた高温強度および硬さを有し、また、TiCN層は、C成分を含有することにより、より一層の硬さ向上が期待され、さらに、TiAlN層は、Al成分を含有することにより、高温硬さと耐酸化性の向上が期待され、これらの硬質被覆層の形成によって、被覆工具の耐摩耗性が担保され、また長寿命化が図られている。
なお、硬質被覆層としてTiAlN層を蒸着形成する場合には、TiAlN層を、
組成式:(Ti1−XAlX)N
で表した場合、Xが0.15〜0.65(但し、原子比)を満足するTiAlN層とすることが必要である。
即ち、上記TiAlN層において、Tiとの合量に占めるAlの含有割合Xが0.65を超えると、結晶構造の変化により、高温強度が低下し欠損が生じやすくなり、一方、Alの含有割合Xが0.15未満になると、高温硬さと耐熱性が低下し、その結果、耐摩耗性の低下がみられるようになることから、Tiとの合量に占めるAlの含有割合Xの値を0.15〜0.65(但し、原子比)と定めた。
上記のTiN層、TiCN層、TiAlN層のうちの少なくとも一層からなる硬質被覆層の最表面に、潤滑膜として、100〜500nmの膜厚の非晶質二酸化珪素(以下、a−SiO2で示す)膜を、例えば、
雰囲気ガス:Ar
雰囲気圧力:0.8〜2 Pa、
工具基体温度:30〜120 ℃、
スパッタ電力:1000〜1200 W、
バイアス電圧:−100〜−200 V、
の条件でスパッタリングを行うことにより形成する。
硬質被覆層の最表面に蒸着形成されたa−SiO2膜は、TiN層、TiCN層、TiAlN層との密着性に優れ、また、高速切削加工時における高硬度鋼等の被削材との潤滑性に優れるため、チッピング、欠損等の異常損傷の発生を抑制し、さらに、a−SiO2膜が、それ自体すぐれた耐酸化性を備えるため、高熱発生を伴う高速切削条件下でも硬質被覆層の酸化による強度低下、硬度低下を抑えるため、境界損傷での酸化を抑制し、長期の使用に亘って、すぐれた耐摩耗性を発揮すると同時に、すぐれた仕上げ面精度を維持することができる。
硬質被覆層の最表面に蒸着形成されたa−SiO2膜の膜厚が100nm未満では、長期の使用に亘って、上記の優れた特性を発揮することができず、一方、膜厚が500nmを超えても、膜厚に見合った潤滑性、耐酸化性の改善効果が得られなくなることから、a−SiO2膜の膜厚は100〜500nmと定めた。
また、非晶質二酸化珪素a−SiO2膜は、均質で等方性かつ結晶粒界や格子欠陥が存在せず、強度的にすぐれるため上記効果が得られるのであって、結晶質二酸化珪素膜では上記効果は得られない。
ここでは、工具基体として、立方晶窒化ほう素基超高圧焼結材料を用いた場合の具体例について説明するが、工具基体としては、炭化タングステン基超硬合金、炭窒化チタン基サーメット等を用いることができるのは改めて言うまでもない。
(b)装置内に、カソード電極(蒸発源)として硬質被覆層形成用兼ボンバード用の金属Tiを配置し、あるいは、硬質被覆層形成用の目標組成に対応した成分組成をもったTi−Al合金を配置し、
(c)装置内を排気して0.1Pa以下の真空に保持しながら、ヒーターで装置内を500℃に加熱した後、Tiボンバード処理を行い、
(d)その後、装置内に反応ガスとして窒素ガスを導入して3Paの反応雰囲気とすると共に、前記回転テーブル上で自転しながら回転する工具基体に−100Vの直流バイアス電圧を印加し、かつ金属Ti(あるいはTi−Al合金)とアノード電極との間に100Aの電流を流してアーク放電を発生させ、もって前記工具基体の表面に、表4に示される目標層厚のTiN層、TiCN層あるいは目標組成および目標層厚のTiAlN層を硬質被覆層として蒸着形成し、
(e)ついで、装置内を排気して0.1Pa以下の真空に保持しながら、Arガスを導入して、0.7Paの雰囲気とすると共に、前記テーブル上で自転しながら回転する工具基体に−200Vのバイアス電圧を印加し、表2に示されるスパッタリング条件で硬質被覆層の表面にa−SiO2膜を蒸着して、表4に示される所定膜層の潤滑膜を蒸着形成することにより、
本発明の被覆工具1〜10(本発明工具1〜10という)をそれぞれ製造した。
上記本発明工具1〜10の製造工程(a)〜(d)と同様な方法で、目標層厚のTiN層、TiCN層あるいは目標組成および目標層厚のTiAlN層を硬質被覆層として蒸着形成した後、表3に示される条件で表5に示される膜厚のSiO2膜からなる潤滑膜を形成することにより、比較例の被覆工具1〜10(比較例工具1〜10という)をそれぞれ製造した。
また、TiAlN層からなる硬質被覆層について、その組成を透過型電子顕微鏡を用いてのエネルギー分散型X線分析法により測定したところ、それぞれ目標組成と実質的に同じ組成を示した。
さらに、本発明工具1〜10および比較例工具1〜10の潤滑膜については、透過型電子顕微鏡を用いて組織観察(倍率:50万倍)したところ、本発明工具1〜10の潤滑膜は、非晶質であることが確認されたが、比較例工具1〜10の潤滑膜については、非晶質の形成は見られず、結晶質SiO2膜の形成が確認された。
[切削条件A]
被削材:JIS・SCM420(硬さ:HRC60)の丸棒、
切削速度: 260 m/min.、
切り込み: 0.10 mm、
送り: 0.15 mm/rev.、
切削時間: 7.2 分、
の条件での浸炭焼入れ合金鋼の湿式連続高速切削加工試験(通常の切削速度は180m/min.)、
[切削条件B]
被削材:JIS・SCr420(硬さ:HRC61)の丸棒、
切削速度: 240 m/min.、
切り込み: 0.10 mm、
送り: 0.15 mm/rev.、
切削時間: 7.2 分、
の条件での浸炭焼入れクロム鋼の湿式連続高速切削加工試験(通常の切削速度は180m/min.)、
[切削条件C]
被削材:JIS・SUJ2(硬さ:HRC61)の丸棒、
切削速度: 285 m/min.、
切り込み: 0.10 mm、
送り: 0.12 mm/rev.、
切削時間: 7.2 分、
の条件での焼入れ軸受鋼の湿式連続高速切削加工試験(通常の切削速度は170m/min.)、
そして、上記の各切削加工試験における被削材の仕上げ面精度について、JIS・B0601−1994に従い、Rz(μm)を測定した。
この測定結果を表6に示す。
なお、比較例工具1〜10については、切削時間終了後、切削条件A、Bでは被削材の仕上げ面精度(Rz(μm))が3.0μmから、また、切削条件Cでは2.0μmから外れてしまっていたため、上記所定の基準値を超えたときの切削時間を寿命(分)と判断し、表6には、比較例工具1〜10の寿命(分を記載した。
Claims (2)
- 炭化タングステン基超硬合金、炭窒化チタン基サーメットまたは立方晶窒化ほう素基超高圧焼結材料からなる工具基体の表面に、硬質被覆層として、チタンの窒化物層、チタンの炭窒化物層、チタンとアルミニウムの複合窒化物層のうちから選ばれる少なくとも一層が、0.5〜5μmの合計平均層厚で蒸着形成されている表面被覆切削工具において、
上記硬質被覆層の最表面に、さらに、100〜500nmの膜厚の非晶質二酸化珪素膜が形成されていることを特徴とする表面被覆切削工具。 - 上記チタンとアルミニウムの複合窒化物層は、
組成式:(Ti1−XAlX)N
で表した場合、Xが0.15〜0.65(但し、原子比)を満足する請求項1に記載の表面被覆切削工具。
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